JP3046174B2 - 意匠効果の優れた銀付調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

意匠効果の優れた銀付調人工皮革およびその製造方法

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JP3046174B2
JP3046174B2 JP5074998A JP7499893A JP3046174B2 JP 3046174 B2 JP3046174 B2 JP 3046174B2 JP 5074998 A JP5074998 A JP 5074998A JP 7499893 A JP7499893 A JP 7499893A JP 3046174 B2 JP3046174 B2 JP 3046174B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、靴、衣料、袋物などの
用途に使用された場合、折り曲げると伸長部分、および
圧縮部分の色の明度が変化し、自然なムラを発生させる
ような意匠効果の優れた銀付調人工皮革、およびその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、繊維質と高分子弾性体とからなる
人工皮革は、皮革の代替物として靴アッパー材、靴副材
料、衣料材料などの用途に多く使用され、現在ではこれ
らの用途には無くてはならない材料となっている。これ
らの人工皮革は、これらの表面形態により、スェードタ
イプ、ヌバックタイプ、および銀付タイプに大別され
る。この中でも、銀付タイプは、一般的なものとして
靴、ボール、衣料、袋物、家具などの用途に巾広く使用
されている。これらの銀付調人工皮革は、天然皮革の表
面形成を模倣して用途に応じて色、柄などに変化をつけ
るなど種々の工夫がなされ意匠性が高められる努力がな
されている。その中でも、折り曲げると皮革内部のオイ
ルの移動により色の明度に変化をもたらして自然なムラ
の発生するオイルアップ調の天然皮革の表面仕上げが各
用途で望まれ、従来、種々の検討がなされてきた。しか
し、従来のものは、いずれも表面の強度が弱く実用化に
は程遠いものであった。
【0003】その中でも、ワックスとセルロース系の樹
脂の混合物を皮革代替物の表面に塗布したものは、その
皮革代替物の表面樹脂との接着性が劣り、使用中に脱落
したり、剥離するなど、靴用途はもちろんのこと、家
具、衣料、袋物用途にも実用強度は無かった。これらの
ものは、ワックスとセルロース系の樹脂の混合物が屈曲
など変形されることにより、微クラックを生じて白化し
明度が変化する現象を利用しているので、これらのもの
が最表面に形成されれば当然、粉化脱落することにな
る。また、ワックスとセルロース系の樹脂層の表面に強
度のある保護樹脂膜を形成したとしても、皮革代替物の
表面とワックスとセルロース系樹脂の混合物の層との界
面から剥離が生じることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、靴、
衣料用途などに使用、着用された場合に、従来の欠点を
完全に解決し充分な表面強度を有するオイルアップ調の
銀付調人工皮革を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、繊維質、ある
いは繊維質と高分子弾性体とからなる基体(イ)の片面
に、厚さが50μm〜400μmの多孔質ポリウレタン
層(ロ)が形成され、その表面に、仕上げポリウレタン
被膜(ハ)が形成されてなる銀付調人工皮革において、
多孔質ポリウレタン層(ロ)の仕上げポリウレタン被膜
(ハ)側の界面において0.5μm〜80μmの径の開
放孔が1cm2 当たり500個以上存在し、該開放孔の
中には融点が40℃〜100℃のワックス、あるいは該
ワックスを主体とした混合物が埋め込まれるように存在
し、かつ多孔質ポリウレタン層(ロ)と仕上げポリウレ
タン被膜(ハ)との界面における接着面積が全体面積に
対し70%以上であることを特徴とする意匠効果の優れ
た銀付調人工皮革である。
【0006】また、本発明は、繊維質、あるいは繊維質
と高分子弾性体とからなる基体(イ)の片面に、厚さが
50μm〜400μmの湿式法による多孔質ポリウレタ
ン層(ロ)を形成し、その表面に、仕上げポリウレタン
被膜(ハ)を形成して人工皮革を製造する方法におい
て、多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面の密度の高いス
キン層を機械的に研削して径が0.5μm〜80μmの
開放孔を開口させたのち、融点が50℃〜100℃のワ
ックスもしくは該ワックスを主体とした混合物の、有機
溶剤溶液を該開放孔に埋め込むように塗布、乾燥し、そ
の後、仕上げポリウレタン被膜(ハ)を形成させること
を特徴とする前記意匠効果の優れた銀付調人工の製造方
法である。
【0007】さらに、本発明は、繊維質、あるいは繊維
質と高分子弾性体とからなる基体(イ)の片面に、厚さ
が50μm〜400μmの湿式法による多孔質ポリウレ
タン層(ロ)を形成し、その表面に、仕上げポリウレタ
ン被膜(ハ)を形成して人工皮革を製造する方法におい
て、多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に、ポリウレタ
ンの、良溶剤、貧溶剤、良溶剤と貧溶剤の混合溶剤、ま
たは良溶剤と非溶剤の混合溶剤のいずれかをグラビアメ
ッシュロールで塗布して表面に径が0.5μm〜80μ
mの開放孔を発生させたのち、融点が50℃〜100℃
のワックスもしくは該ワックスを主体とした混合物の、
有機溶剤溶液を該開放孔に埋め込むように塗布、乾燥
し、その後、仕上げポリウレタン被膜(ハ)を形成させ
ることを特徴とする前記意匠効果の優れた銀付調人工皮
革の製造方法である。
【0008】本発明の人工皮革を構成する繊維質とは、
従来公知の天然繊維、再生繊維、合成繊維からなる織
物、編物、不織布などである。天然繊維としては綿、
麻、羊毛、絹などが例として挙げられ、再生繊維として
はレーヨン、アセテートなどが例として挙げられ、合成
繊維としてはポリエステル、ナイロン、アクリルなどが
例として挙げられる。合成繊維では、単糸繊度が0.5
デニール以下、好ましくは0.01デニール〜0.2デ
ニールの極細繊維を使用することが本発明の人工皮革の
風合い、優雅さを高める意味で好ましい。
【0009】本発明の高分子弾性体とは、従来公知の皮
革代替物として使用される高分子弾性体である。例え
ば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンポリウレ
ア、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブ
タジエンゴムなどがあり、これらは水系エマルジョン、
または有機溶剤溶液として前記繊維質に含浸したのち、
凝固されて繊維質と高分子弾性体とからなる基体(イ)
とされる。
【0010】これらの繊維質、あるいは繊維質と高分子
弾性体とからなる基体(イ)の片面に形成される多孔質
ポリウレタン層(ロ)は、従来公知のポリウレタンはす
べて適用することができ、従来公知の成形方法によって
形成されたものが適用できる。例えば、ポリウレタンの
有機溶剤溶液を繊維質、あるいは繊維質と高分子弾性体
とからなる基体(イ)の片面にコーティングしたのち、
ポリウレタンの非溶剤でかつポリウレタンを溶解してい
る有機溶剤と混和性のある凝固浴中で凝固を生じさせる
方法、あるいはポリウレタンの有機溶剤溶液、あるいは
分散液に水を微分散させたW/Oタイプのエマルジョン
を繊維質、あるいは繊維質と高分子弾性体とからなる基
体(イ)の片面にコーティングしたのち、有機溶剤を選
択的に蒸発させてポリウレタンを凝固させる方法などが
ある。
【0011】本発明の多孔質ポリウレタン層(ロ)の厚
さは、開放孔の中にワックス、あるいは該ワックスを主
体とした混合物を存在させるためにある程度の厚さが必
要であり、また耐摩耗性、面平滑性、クッション性、ボ
リューム感を得るためにも必要であり、適切な厚さは5
0μm〜400μm、好ましくは70μm〜300μm
である。厚さが50μmに満たない場合には、開放孔の
中にワックス、あるいは該ワックスを主体とした混合物
を均一に入れることが困難となることや繊維質の生地目
が表面に現れ表面のスムース感が得られにくいことなど
の理由で好ましくない。一方、厚さが400μmを超え
ると、ゴムライクな人工皮革になることや、生産性が低
下することなどの点で好ましくない。
【0012】本発明では、多孔質ポリウレタン層(ロ)
の開放孔の中に均一にワックス、あるいは該ワックスを
主体とした混合物を入れるため、多孔質ポリウレタン層
(ロ)の最表面の緻密層を除去して開放孔を開口させな
ければならない。この開口された開放孔の径は、0.5
μm〜80μm、好ましくは.10μm〜50μmであ
り、その数は1cm2 当たり500個以上、好ましくは
5,000個〜30,000個であるとともに、開放部
の面積は全面積の30%未満、好ましくは0.1%〜1
0%、すなわち開放されていない面積が全面積に対し7
0%以上、好ましくは90%〜99.9%でなければな
らない。開放孔の径が0.5μmに満たない場合には、
ワックス、あるいは該ワックスを主体とした混合物を入
れることが困難となり本発明の目的とする折り曲げ時の
明度変化が得られないので好ましくない。一方、開放孔
の径が80μmを超えると、その数が少ない場合には本
発明の目的とする折り曲げ時の明度変化が得られず、そ
の数が多い場合には多孔質ポリウレタン層(ロ)と仕上
げポリウレタン被膜(ハ)との接着面積が小さくなり、
仕上げポリウレタン被膜(ハ)が剥離するといった問題
が生じるため好ましくない。また、開放孔の数が1cm
2 当たり500個に満たない場合には、折り曲げ時の明
度変化が小さく本発明の目的が達せられない。以上の条
件を満たした上に、多孔質ポリウレタン層(ロ)と仕上
げポリウレタン被膜(ハ)との界面接着力を十分に得る
ために、開口されていない面積、すなわち接着面積が全
面積に対し70%以上でなければならない。70%未満
の場合には、靴などの製品として着用された場合に仕上
げポリウレタン被膜(ハ)が剥離するなどの問題が生じ
るため好ましくない。
【0013】なお、多孔質ポリウレタン層(ロ)は、染
料、顔料などにより着色されていることにより本発明の
目的とする折り曲げ時の明度変化をより効果的にするこ
とができる。着色方法としては、多孔質ポリウレタン層
(ロ)を形成する溶液に直接着色剤を混合する方法、あ
るいは多孔質ポリウレタン層(ロ)形成後に染色などに
より着色する方法、後述する多孔質ポリウレタン層
(ロ)の表面に開放孔を形成させる溶剤の中に染料など
の着色剤を添加する方法、開放孔形成後の表面に開放孔
を残存させたまま着色させる方法、ワックス、あるいは
該ワックスを主体とした混合物に着色剤を添加する方
法、仕上げポリウレタン被膜(ハ)に着色剤を添加する
方法、仕上げポリウレタン被膜(ハ)形成後に染色など
により着色する方法などがある。上記の組み合わせによ
り、本発明の意匠外観をより高めることができる。
【0014】開放孔を開孔させる方法としては、サンド
ペーパーを使用した研削機によって多孔質ポリウレタン
層(ロ)の緻密層を除去する方法がある。この方法にお
いても、開放孔の径は、0.5μm〜80μmとする。
しかしながら、この方法では、基体(イ)の厚さムラな
どにより全面を均一に研削することは難しい場合があ
り、軽く研削した場合は20μm以下の小さい径で開孔
するが開孔しない部分も発生するので、好ましくは全面
が開孔するような厚さを研削除去する必要がある。この
場合は、比較的大きい径の10μm以上、好ましくは2
0〜50μmの開放孔が得られる。
【0015】他に開孔させる方法としては、多孔質ポリ
ウレタン層(ロ)の表面に、ポリウレタンの、良溶剤、
貧溶剤、良溶剤と貧溶剤の混合溶剤、または良溶剤と非
溶剤の混合溶剤のいずれかをグラビアメッシュロールで
塗布することである。ここで、ポリウレタンの良溶剤と
は、実際に使用するポリウレタンを溶解し得る良溶剤を
意味し、例えば芳香族系の有機ジイソシアネートから合
成されたポリウレタンであればジメチルホルムアミド、
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの極性溶剤が挙げ
られる。ポリウレタンの貧溶剤とは、同じく実際に使用
するポリウレタンを溶解はしないが膨潤はさせ得る溶剤
であり、例えばメチルエチルケトンなどのケトン類、イ
ソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエンな
どの芳香族系溶剤が挙げられる。ポリウレタンの非溶剤
とは、同じく実際に使用されるポリウレタンを溶解、膨
潤をさせないものであり、例えば水などが代表的であ
る。
【0016】これらの溶剤を選択することにより、実際
に使用されるポリウレタンに対する溶解性を調整するこ
とができ、適度な開放孔を発現させることができる。こ
の場合、溶解性が強すぎる溶剤を使用すると、一旦は開
放孔が発現するが、その強過ぎる溶解性のため溶剤の蒸
発乾燥の過程で再び開放孔が閉ざされてしまう。また、
逆に溶解性が弱過ぎる溶剤を使用すると、開放孔は発現
しない。
【0017】適正に選択された溶剤が、グラビアメッシ
ュロールで多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に塗布さ
れる。この場合、グラビアメッシュロールのメッシュの
大きさが、形成される開放孔の径の大きさに大きく影響
を及ぼす。すなわち、メッシュの細かいロールを用いれ
ば相対的に小さい径の開放孔が得られるし、メッシュの
粗いロールを用いれば相対的に大きい径の開放孔が得ら
れる。また、塗布圧も形成される開放孔の径の大きさに
影響を及ぼす。すなわち、塗布圧が大きければ、得られ
る開放孔は径が大きく、塗布圧が小さければ、得られる
開放孔は径が小さいものとなる。以上のように、適正な
溶剤の選択、グラビアメッシュロールの選択、塗布圧の
適正化により、多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に本
発明の0.5μm〜80μm、好ましくは5μm〜40
μmの径の開放孔を発現させることができる。
【0018】多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に0.
5μm〜80μmの開放孔を発現させたのち、その表面
にワックス、あるいは該ワックスを主体とした混合物
の、有機溶剤溶液が塗布、乾燥され実質的に開放孔の中
に埋没される。ワックスとしては、融点が40℃〜10
0℃、好ましくは50℃〜80℃の天然物、合成物が使
用される。融点が40℃に満たないものを使用した場合
には、夏などの気温の高い季節、あるいは室温の高い場
所で使用されるとワックスが溶融状態になり本発明の目
的とする折り曲げ時の明度変化が得られないので好まし
くない。一方、融点が100℃を超えるワックスを使用
した場合には、折り曲げ時に一旦明度変化したものが元
に戻りにくくなり好ましくない。融点が40℃〜100
℃のワックスを使用することにより、折り曲げ時に明度
変化したものをヘアードライヤーなどで加熱することに
より簡単に元の明度に戻すことができるため靴などの製
品として使用された場合に非常に効果的であり、本発明
の大きな特徴でもある。
【0019】ここで、天然ワックスの具体例としては、
牛脂、豚脂、鯨脂などの動物性油脂などが挙げられる。
また、合成ワックスとしては、ポリウレタン樹脂と併用
して使用されるため、ポリウレタンとの親和性を有する
ポリウレタン基変性のワックスが好ましい。合成ワック
スの具体例としては、ウレタン基変性のポリエステル、
ウレタン基変性のポリエーテルなどが挙げられる。さら
に、ワックスを主体とした混合物とは、上記の天然ワッ
クス、合成ワックスとニトロセルロース系樹脂などの脆
性を有する樹脂との混合物などが挙げられる。これらの
ワックスなどは、有機溶剤溶液として塗布、乾燥される
と透明な被膜を形成するが、常温では折り曲げなどの機
械的な力が加わると粉砕白化し、その状態を保ったまま
加熱すると再び透明化する現象を生じる。この原理を利
用しているため、ワックス、あるいはワックスを主体と
した混合物はあらかじめ適切に選定しなければならな
い。
【0020】ワックス、あるいはワックスを主体とした
混合物は、有機溶剤にて溶解されて塗料として前記の開
放孔が形成された多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に
塗装されるが、有機溶剤としては、多孔質ポリウレタン
層(ロ)を溶解しないものが好ましい。なぜならば、多
孔質ポリウレタン層(ロ)に対して溶解性が大きいと、
多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面にあらかじめ形成さ
れていた開放孔の中に塗料が入る前に孔壁を溶解して開
放孔が閉じてしまうからである。溶解性が小さい程、多
孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に発現させた開放孔を
維持でき、開放孔の中に塗料を入れることができること
となる。また、融点が40℃〜100℃のワックス、あ
るいはワックスを主体とした混合物と、有機溶剤からな
る塗料は、塗布されたのち、有機溶剤を蒸発させるが、
この場合、加温蒸発されると、蒸発後、ワックス、ある
いはワックスを主体とした混合物は溶融状態になるので
乾燥機のガイドロールなどの基体の表面に接する箇所
に、ワックス、あるいはワックスを主体とした混合物が
付着するなど好ましくない状態となる。従って、加温蒸
発条件は、40℃以下の乾燥が好ましく、そのためには
揮発性の大きい有機溶剤が好ましい。以上のことから、
塗料を構成する有機溶剤としては、多孔質ポリウレタン
層(ロ)が芳香族ジイソシアネートから合成されたもの
であれば、トルエン、酢酸エチル、メタノールなどの揮
発性が大きくポリウレタンを溶解しないものが好まし
い。
【0021】ワックス、あるいはワックスを主体とした
混合物と有機溶剤からなる塗料は、グラビア塗布機、ド
クターナイフコーターなどの一般的な塗布方法で多孔質
ポリウレタン層(ロ)上に塗布される。塗布量として
は、開放孔以外の多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面に
塗布されると、仕上げポリウレタン被膜(ハ)との接着
の障害となるので、開放孔の中に入る量で十分なため微
量で良い。従って、その塗布量は、具体的には5g/m
2 〜80g/m2 程度が好ましい。塗布方法としては、
いずれも塗布機の圧力を高めた方が開放孔に入り易い。
また、溶剤乾燥のため加温する場合は、表面側からでは
なく、裏面側から加温する方が開放孔の中に塗料を誘導
しやすくなるので好ましい。さらに、後述する仕上げポ
リウレタン被膜(ハ)を形成した後に、加熱エンボスロ
ールで表面を加圧することも、開放孔にワックス、ある
いはワックスを主体とした混合物を誘導する意味では効
果的である。
【0022】ワックス、あるいはワックスを主体とした
混合物が塗布されたのち、その表面に仕上げポリウレタ
ン被膜(ハ)が形成される。仕上げポリウレタン被膜
(ハ)を構成するポリウレタンとしては、従来公知のも
のはすべて使用可能であるが、製品の変色などを考慮に
入れ、例えば1,6−ヘキサンジイソシアネートなどの
脂肪族系ジイソシアネートから合成されたポリウレタ
ン、あるいはイソホロンジイソシアネート、4,4′−
メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの
脂環族系ジイソシアネートから合成されたポリウレタン
が好ましい。なお、仕上げポリウレタン被膜(ハ)に
は、顔料、染料などの着色剤、揆水剤、酸化防止剤、防
黴剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0023】仕上げポリウレタン被膜(ハ)を着色する
場合には、染料、透明性顔料などの隠蔽性の小さい着色
剤を使用する方が仕上げポリウレタン被膜(ハ)の下層
にあるワックス、あるいはワックスを主体とした混合物
による明度変化が外から見えやすいので好ましい。ま
た、表面の耐摩耗性を付与するため耐摩耗性の優れたポ
リウレタンなどを使用し、2種類以上のポリウレタン被
膜(ハ)を積層することも可能である。さらに、仕上げ
ポリウレタン被膜(ハ)に柄プリントを施すことによ
り、意匠効果を高めることができる。仕上げポリウレタ
ン被膜(ハ)の形成方法としてはグラビア塗布機による
方法、離型紙上にポリウレタン被膜を形成してラミネー
ト接着する方法、スプレー法による被膜形成、ダイレク
トコーティング方法など従来公知の方法が採用できる。
塗布量としては、従来の人工皮革の仕上げポリウレタン
被膜の範囲、すなわち固形膜厚として1g/m2 〜10
0g/m2 、好ましくは3g/m2 〜20g/m2 程度
である。
【0024】本発明では、表面の意匠効果を高めるた
め、通常、人工皮革の製造において行われているように
エンボスロールにより各種柄を施すことができる。エン
ボスを施す工程としては、仕上げポリウレタン被膜
(ハ)の形成後が多孔質ポリウレタン層(ロ)と仕上げ
ポリウレタン被膜(ハ)との接着強力を高めるため好ま
しいが、開放孔発現処理の前、後でも可能である。しか
し、開放孔発現処理の後に熱エンボス法で柄を付与する
場合は、開放孔が熱により溶融して小さくなることがあ
るので注意しなければならない。また、開放孔発現処理
前に行うと多孔質ポリウレタン層(ロ)の表面の緻密な
部分の密度がさらに高まり、開放孔発現処理が困難にな
る場合があるので注意しなければならない。スムース調
にする場合は柄エンボスロールに替えて鏡面ロールを使
用することも可能である。
【0025】以上のような方法により、本発明の折り曲
げ時に明度が変化するオイルアップ調の人工皮革が製造
される。このように、多孔質ポリウレタン層(ロ)の開
放孔の中にワックス、あるいはワックスを主体とした混
合物を埋め込み、多孔質ポリウレタン層(ロ)とその開
放孔を仕上げポリウレタン被膜(ハ)で被覆した本発明
の人工皮革は、折り曲げた時や機械的な力が加えられた
時にワックス、あるいはワックスを主体とした混合物が
白化してその部分が他の部分に比較して明度が高まり、
自然な明度ムラが表面に発生して高級な意匠外観が得ら
れるものとなり、靴甲革、衣料本体、衣料部品、カバ
ン、家具シート、車輌シート、帽子など種々の用途に使
用することができ、従来の人工皮革にはない自然なムラ
感のある製品を得ることができる。なお、このムラは、
放置しておけば自然に回復し、また、ヘアードライヤー
などで加温すれば完全に回復し、常温で再度折り曲げな
どでムラが発生する可逆的なものであり、その価値は測
り知れないものである。
【0026】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。なお、実施例中に「部」、「%」とあるの
は、いずれも重量基準であり、また特性測定値は下記の
方法により得られたものである。なお、開放孔の孔径、
開放孔の数は、走査電子顕微鏡により測定したものであ
り、接着面積は開放孔の面積から計算で求めたものであ
る。
【0027】実施例1 <基体−1の作成>目付330g/m2 、厚さ1.0m
mのポリエステル繊維からなる不織布に13%濃度のポ
リエステル系ポリウレタン(P,P′−ジフェニルメタ
ンジイソシアネートより合成されたもの)−ジメチルホ
ルムアミド溶液(顔料が添加され茶色に調色)を含浸さ
せた含浸基布の片面に、18%濃度のポリウレタン(上
記含浸用ポリウレタンと同じものであり、同じ顔料が添
加され茶色に調色されたもの)−ジメチルホルムアミド
溶液を650g/m2 の目付でコーティングしたのち、
水浸凝固、水洗、乾燥して基体−1を作成した。得られ
た基体は、表面が茶色で多孔質ポリウレタン層の厚さが
280μmで、繊維質層の厚さが1.0mmで構成され
ていた。
【0028】<開放孔発現処理>基体−1の表面に、メ
チルエチルケトン40%、ジメチルホルムアミド60%
の混合液をグラビア塗布機(110メッシュのロール使
用)で4kg/cm2 の圧で塗布して乾燥した。得られ
た基体−1の表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、
約30μmの開放孔が1cm2 当たり2,800個形成
されていた。開放孔を除く多孔質ポリウレタンの表面積
は、全面積に対し98.0%であった。
【0029】<ワックスの塗布>開放孔発現処理の施さ
れた基体−1の表面に、融点が50℃〜80℃のウレタ
ン変性ワックスをトルエンに溶解した溶液〔大日本イン
キ化学工業(株)製;ハウラック クリヤー U−14
00)をグラビア塗布機(200メッシュのロール使
用)で塗布、常温乾燥を2回繰り返した。ワックスの塗
布量は、4.5g/m2 であった。
【0030】<仕上げポリウレタン被膜の形成>下記の
組成で作成した塗料−1を、前記の開放孔発現処理、ワ
ックス塗布した基体の表面にグラビア塗布機(110メ
ッシュのロール使用)で塗布、乾燥を3回繰り返し、次
に加熱エンボスロールで毛穴調に柄付けし、さらにその
表面に下記組成の塗料−2をグラビア塗布機(110メ
ッシュのロール使用)で塗布、乾燥を3回繰り返し、人
工皮革−1を得た。仕上げポリウレタン被膜の塗布量
は、総計9g/m2 であった。
【0031】得られた人工皮革−1は、表面が茶色であ
り、折り曲げたり揉んだりすると、その表面の伸長部と
圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生し、高級
なオイルアップ調の天然皮革に見られるような意匠外観
となった。なお、この人工皮革−1を100℃の乾燥機
の中に15秒間曝したら、元の明度に戻った。この人工
皮革を靴アッパー材に用いてカジュアルシューズを製靴
したところ、靴底との接着強度は2.8kg/cmと強
く、自然のムラ感のある模様が入り、従来の人工皮革を
用いて製靴したカジュアルシューズに比較して自然感が
全く異なり高級感のあるものであった。
【0032】(塗料−1) クリスボンNY320 100部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 ハウラック ブラウン U1355 30部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 イソプロピルアルコール 50部 メチルエチルケトン 40部 ジメチルホルムアミド 10部 (塗料−2) ハウラックA3454 100部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 ハウラックA1008マット 5部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 イソプロピルアルコール 50部 メチルエチルケトン 40部 ジメチルホルムアミド 10部
【0033】実施例2 <基体−2の作成>ポリエステルと6−ナイロンが交互
に隣接する分割可能な繊維を分割してなる極細繊維(平
均単糸デニール=0.1デニール)75%とレーヨン繊
維(単糸デニール=0.8デニール)25%との混合繊
維からなる不織布(目付300g/m2 、厚さ1.3m
m)に13%濃度のポリエステル/ポリエーテル系ポリ
ウレタン(P,P′−ジフェニルメタンジイソシアネー
トより合成されたもの)−ジメチルホルムアミド溶液
(顔料が添加されグリーン色に調色)を含浸させた含浸
基布の片面に、20%濃度のポリウレタン(上記含浸用
ポリウレタンと同じものであり、同じ顔料が添加されグ
リーン色に調色されたもの)−ジメチルホルムアミド溶
液を400g/m2 の目付でコーティングしたのち、水
浸凝固、水洗、乾燥して基体−2を作成した。得られた
基体は、表面がグリーン色であり多孔質ポリウレタン層
の厚さが210μmで、繊維質層の厚さが1.3mmで
構成されていた。
【0034】<開放孔発現処理>基体−2の表面に、メ
チルエチルケトン30%、ジメチルホルムアミド70%
の混合液をグラビア塗布機(200メッシュのロール使
用)で3kg/cm2 の圧力で塗布して乾燥した。得ら
れた基体−2の表面を走査電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、約25μmの開放孔が1cm2 当たり3,600個
形成されていた。開放孔を除く多孔質ポリウレタンの表
面積は、全面積に対し98.2%であった。
【0035】<ワックスの塗布>開放孔発現処理の施さ
れた基体−2の表面に、融点が50℃〜80℃のウレタ
ン変性ワックスをトルエンに溶解した溶液〔大日本イン
キ化学工業(株)製;ハウラック クリヤー U−14
00〕をグラビア塗布機(200メッシュのロール使
用)で塗布、常温乾燥を2回繰り返した。ワックスの塗
布量は、4.6g/m2 であった。
【0036】<仕上げポリウレタン被膜の形成>血筋柄
の形成された離型紙の表面に、下記の組成で作成した塗
料−3を100g/m2 の目付けでコーティング、乾燥
し、次にその表面に下記の組成で作成した接着用塗料を
70g/m2 の目付けでコーティング、乾燥して、前記
のワックス塗装を施した基体−2をワックス塗装側に接
着させるように重ねた。接着剤が十分に強度を有するま
で放置したのち、離型紙を剥ぎとり、人工皮革−2を得
た。
【0037】得られた人工皮革−2は、表面がグリーン
色であり、折り曲げたり揉んだりすると、その表面の伸
長部と圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生
し、高級なオイルアップ調の天然皮革に見られるような
意匠外観となった。なお、この人工皮革−2を100℃
の乾燥機の中に15秒間曝したら、元の明度に戻った。
この人工皮革を靴アッパー材として用いカジュアルシュ
ーズを製靴したところ、靴底との接着強度は3.5kg
/cmと強く、自然のムラ感のある模様が入り、従来の
人工皮革を用いて製靴したカジュアルシューズに比較し
て自然感が全く異なり高級感のあるものであった。
【0038】(塗料−3) レザミンNPU5NL 100部 〔大日精化工業(株)製〕 ハウラックA1320 グリーン 5部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 イソプロピルアルコール 20部 トルエン 20部 ジメチルホルムアミド 20部 (接着用塗料) クリスボンTA265 50部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 クリスボンTA290 50部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 クリスボン アクセルT 3部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 コロネート2094 12部 〔日本ポリウレタン工業(株)製〕 メチルエチルケトン 70部 ジメチルホルムアミド 30部
【0039】実施例3 実施例2で得られた表面がグリーン色の基体−2の多孔
質ポリウレタン層の表面の緻密層を、200メッシュの
サンドペーパーで研削して中の開放孔を露出させ、40
μm〜60μmの径の開放孔を1cm2 当たり2,40
0個形成させたのち(開放孔を除く多孔質ポリウレタン
の表面積は全面積に対し96.1%であった)、実施例
1と同様に融点が50℃〜80℃のウレタン変性ワック
スをトルエンに溶解した溶液〔大日本インキ化学工業
(株)製;ハウラック クリヤーU−1400)をグラ
ビア塗布機(200メッシュのロール使用)で塗布、常
温乾燥を2回繰り返し、次に下記の組成で作成した塗料
−4を実施例1と同様の操作でグラビア塗布機(110
メッシュのロール使用)で塗布、乾燥を3回繰り返し、
次に加熱エンボスロールで毛穴調に柄付けし、さらにそ
の表面に塗料−2をグラビア塗布機(110メッシュの
ロール使用)で塗布、乾燥を3回繰り返し、人工皮革−
3を得た。なお、ワックスの塗布量は5.2g/m2
仕上げポリウレタン被膜の塗布量は総計11g/m2
あった。
【0040】得られた人工皮革−3は、表面がグリーン
色であり、多孔質ポリウレタン層と仕上げポリウレタン
被膜との接着力は3kg/cm以上あり、折り曲げたり
揉んだりするとその表面の伸長部と圧縮部が微妙に明度
変化して自然なムラが発生し、高級なオイルアップ調の
天然皮革に見られるような意匠外観となった。なお、こ
の人工皮革−3を100℃の乾燥機の中に15秒間曝し
たら、元の明度に戻った。この人工皮革を用いてハンド
バッグを作成したところ、従来の人工皮革を用いて作成
したハンドバッグに比較して自然感が全く異なり高級感
が優れたものであった。
【0041】(塗料−4) クリスボンNY320 100部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 ハウラックA1320 グリーン 15部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 イソプロピルアルコール 50部 メチルエチルケトン 40部 ジメチルホルムアミド 10部
【0042】実施例4 実施例1で得られた表面が茶色の基体−1の多孔質ポリ
ウレタン層の表面の緻密層を、200メッシュのサンド
ペーパーで研削して中の開放孔を露出させ約40μm〜
60μmの径の開放孔を1cm2 当たり2,400個形
成させたのち(開放孔を除く多孔質ポリウレタンの表面
積は、全面積に対し96.1%であった)、実施例1と
同様に融点が50℃〜80℃のウレタン変性ワックスを
トルエンに溶解した溶液〔大日本インキ化学工業(株)
製;ハウラック クリヤー U−1400)をグラビア
塗布機(200メッシュのロール使用)で塗布、常温乾
燥を2回繰り返し、次に下記の組成で作成した塗料−5
を実施例2と同様の操作で血筋柄の形成された離型紙の
表面にコーティング、乾燥し、その表面に実施例2で作
成した接着用塗料をコーティング、乾燥した表面にワッ
クス塗装側に接着させるように重ねた。接着剤が十分に
強度を有するまで放置したのち、離型紙を剥ぎとり、人
工皮革−4を得た。なお、ワックスの塗布量は4.3g
/m2 、仕上げポリウレタン被膜の塗布量は総計75g
/m2 であった。
【0043】得られた人工皮革−4は、表面が茶色であ
り、多孔質ポリウレタン層と仕上げポリウレタン被膜と
の接着力は3kg/cm以上あり、折り曲げたり揉んだ
りするとその表面の伸長部と圧縮部が微妙に明度変化し
て自然なムラが発生し、高級なオイルアップ調の天然皮
革に見られるような意匠外観となった。なお、この人工
皮革−4を100℃の乾燥機の中に15秒間曝したら、
元の明度に戻った。この人工皮革を用いて家具ソファー
を作成したところ、従来の人工皮革を用いて作成した家
具ソファーに比較して自然感が全く異なり高級感のある
ものであった。
【0044】(塗料−5) レザミンNPU5NL 100部 〔大日精化工業(株)製〕 ハウラック ブラウン U1355 20部 〔大日本インキ化学工業(株)製〕 イソプロピルアルコール 20部 トルエン 20部 ジメチルホルムアミド 20部
【0045】比較例1 実施例2で得られた表面がグリーン色の基体−2の多孔
質ポリウレタン層に、実施例1と同様に融点が50℃〜
80℃のウレタン変性ワックスをトルエンに溶解した溶
液〔大日本インキ化学工業(株)製;ハウラック クリ
ヤー U−1400〕をグラビア塗布機(200メッシ
ュのロール使用)で塗布、常温乾燥を2回繰り返し、次
に実施例3で作成した塗料−4を実施例1と同様の操作
でグラビア塗布機(110メッシュのロール使用)で塗
布、乾燥を3回繰り返し、次に加熱エンボスロールで毛
穴調に柄付けし、さらにその表面に塗料−2をグラビア
塗布機(110メッシュのロール使用)で塗布、乾燥を
3回繰り返し、人工皮革−5を得た。なお、ワックスの
塗布量は4.4g/m2 、仕上げポリウレタン被膜の塗
布量は総計8.0g/m2 であった。
【0046】得られた人工皮革−5は、表面がグリーン
色であり、多孔質ポリウレタン層と仕上げポリウレタン
被膜との接着力は0.5kg/cm以下であり、折り曲
げたり揉んだりするとその表面の伸長部と圧縮部が微妙
に明度変化して自然なムラが発生するものの、仕上げポ
リウレタン被膜が多孔質ポリウレタン層から剥離し易か
った。さらに、へアードライヤーなどで加熱して折り曲
げたり揉んだりすると、仕上げポリウレタン被膜が完全
に剥離してしまい、実用的な強度は有していなかった。
【0047】実施例5 実施例1で作成した基体−1(開放孔発現処理前)の表
面に、メチルエチルケトン50%、ジメチルホルムアミ
ド50%の混合液をグラビア塗布機(200メッシュの
ロール使用)で2kg/cm2 の圧力で塗布して乾燥し
た。得られた基体の表面を走査電子顕微鏡で観察したと
ころ、約2μmの開放孔が1cm2 当たり1,800個
形成されていた。開放孔を除く多孔質ポリウレタン層の
表面積は、全面積に対し99.994%であった。
【0048】この開放孔発現処理の施された基体の表面
に、実施例1と同様の操作でワックスの塗布、仕上げポ
リウレタン被膜の塗布形成を施し、人工皮革−6を得
た。この場合のワックス塗布量は4.0g/m2 であ
り、仕上げポリウレタン被膜の塗布量は総計9g/m2
であった。得られた人工皮革−6は、表面が茶色であ
り、折り曲げたり揉んだりすると、その表面の伸長部と
圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生し、高級
なオイルアップ調の天然皮革に見られるような意匠外観
となったが、ワックスが完全に開放孔の中に入り込んで
おらず、基体表面と仕上げポリウレタン被膜が部分的に
剥離するものとなり、やや表面強度に不安を感じるもの
となった。
【0049】比較例2 実施例1で作成した表面が茶色の基体−1(開放孔発現
処理前)の多孔質ポリウレタン層の表面の緻密な層を、
180メッシュのサンドペーパーで研削を2回繰り返し
て、中の開放孔を露出させ、約85〜90μmの開放孔
を1cm2 当たり2,300個形成させた(開放孔を除
く多孔質ポリウレタン層の表面積は、全面積に対し45
%であった)。次いで、この開放孔発現処理の施された
基体の表面積に、実施例1と同様の操作でワックスの塗
布、仕上げポリウレタン被膜の塗布形成を施し、人工皮
革−7を得た。この場合のワックス塗布量は4.9g/
2 であり、仕上げポリウレタン被膜の塗布量は総計9
g/m2 であった。得られた人工皮革−7は、表面が茶
色であり、折り曲げたり揉んだりすると、その表面の伸
長部と圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生し
たが、仕上げポリウレタン被膜が基体層表面の多孔質ポ
リウレタン層の表面から離脱する状態となり、本発明の
目的を達成し得なかった。
【0050】比較例3 実施例1で作成した基体−1(開放孔発現処理前)の表
面に、メチルエチルケトン90%、ジメチルホルムアミ
ド10%の混合液をグラビア塗布機(200メッシュの
ロール使用)で4kg/cm2 の圧力で塗布して乾燥し
た。得られた基体の表面を走査電子顕微鏡で観察したと
ころ、約12μmの開放孔が1cm2 当たり400個形
成されていた。開放孔を除く多孔質ポリウレタン層の表
面積は、全面積に対し99.95%であった。
【0051】この開放孔発現処理の施された基体の表面
積に、実施例1と同様の操作でワックスの塗布、仕上げ
ポリウレタン被膜の塗布形成を施し、人工皮革−8を得
た。この場合のワックス塗布量は4.1g/m2 であ
り、仕上げポリウレタン被膜の塗布量は総計9g/m2
であった。得られた人工皮革−8は、表面が茶色であ
り、折り曲げたり揉んだりすると、その表面の伸長部と
圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生したが、
仕上げポリウレタン被膜が基体表面の多孔質ポリウレタ
ン層の表面から剥離する状態となり、本発明の目的は達
し得なかった。
【0052】比較例4 実施例1で作成した開放孔発現処理された基体−1の表
面に、融点が20〜35℃のウレタン変性ワックスをト
ルエンに溶解した溶液を、グラビア塗布機(200メッ
シュのロール使用)で塗布乾燥を2回繰り返した。ワッ
クス塗布量は5.5g/m2 であった。次に、実施例1
と同様の操作で、仕上げポリウレタン被膜の形成、加熱
エンボスロールでの毛穴調の柄つけを施し、人工皮革−
9を得た。仕上げポリウレタン被膜の塗布量は、総計9
g/m2 であった。得られた人工皮革−9は、表面が茶
色であり、25℃の室温で折り曲げたり揉んだりして
も、表面は何ら変化を示さなかった。5℃の室温で折り
曲げたり、揉んだりすると、ようやくその表面の伸長部
と圧縮部が微妙に明度変化して自然なムラが発生するも
のであり、本発明の目的を達しているものとは言えなか
った。
【0053】比較例5 実施例1で作成した開放孔発現処理された基体−1の表
面に、融点が115〜125℃のウレタン変性ワックス
をトルエンに溶解した溶液を、グラビア塗布機(200
メッシュのロール使用)で塗布乾燥を2回繰り返した。
ワックス塗布量は4.1g/m2 であった。次に、実施
例1と同様の操作で、仕上げポリウレタン被膜の形成、
加熱エンボスロールでの毛穴調の柄つけを施し、人工皮
革−10を得た。仕上げポリウレタン被膜の塗布量は、
総計9g/m2 であった。得られた人工皮革−10は、
表面が茶色であり、折り曲げたり、揉んだりすると、そ
の表面の伸長部と圧縮部が微妙に明度変化して自然なム
ラが発生したが、その状態はヘアードライヤーなどでの
簡単な加熱では元の状態には戻らず、元の状態に戻すに
はかなりの時間をかけて加熱する必要があり、本発明の
目的を達しているものとは言えなかった。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、靴、衣料、袋物などの
用途に使用された場合、折り曲げると伸長部分および圧
縮部分の色の明度が変化し、自然なムラを発生させるよ
うな意匠効果に優れ、かつ充分な表面強度を有するオイ
ルアップ調の意匠効果の優れた銀付調人工皮革が得られ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06N 3/18 D06N 3/18 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06N 3/14 D06N 3/18 B32B 3/22 B32B 5/18 B32B 27/12 B32B 27/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維質、あるいは繊維質と高分子弾性体
    とからなる基体(イ)の片面に、厚さが50μm〜40
    0μmの多孔質ポリウレタン層(ロ)が形成され、その
    表面に、仕上げポリウレタン被膜(ハ)が形成されてな
    る銀付調人工皮革において、多孔質ポリウレタン層
    (ロ)の仕上げポリウレタン被膜(ハ)側の界面におい
    て0.5μm〜80μmの径の開放孔が1cm2 当たり
    500個以上存在し、該開放孔の中には融点が40℃〜
    100℃のワックス、あるいは該ワックスを主体とした
    混合物が埋め込まれるように存在し、かつ多孔質ポリウ
    レタン層(ロ)と仕上げポリウレタン被膜(ハ)との界
    面における接着面積が全体面積に対し70%以上である
    ことを特徴とする意匠効果の優れた銀付調人工皮革。
  2. 【請求項2】 繊維質、あるいは繊維質と高分子弾性体
    とからなる基体(イ)の片面に、厚さが50μm〜40
    0μmの湿式法による多孔質ポリウレタン層(ロ)を形
    成し、その表面に、仕上げポリウレタン被膜(ハ)を形
    成して人工皮革を製造する方法において、多孔質ポリウ
    レタン層(ロ)の表面の密度の高いスキン層を機械的に
    研削して径が0.5μm〜80μmの開放孔を開口させ
    たのち、融点が50℃〜100℃のワックスもしくは該
    ワックスを主体とした混合物の、有機溶剤溶液を該開放
    孔に埋め込むように塗布、乾燥し、その後、仕上げポリ
    ウレタン被膜(ハ)を形成させることを特徴とする請求
    項1記載の意匠効果の優れた銀付調人工の製造方法。
  3. 【請求項3】 繊維質、あるいは繊維質と高分子弾性体
    とからなる基体(イ)の片面に、厚さが50μm〜40
    0μmの湿式法による多孔質ポリウレタン層(ロ)を形
    成し、その表面に、仕上げポリウレタン被膜(ハ)を形
    成して人工皮革を製造する方法において、多孔質ポリウ
    レタン層(ロ)の表面に、ポリウレタンの、良溶剤、貧
    溶剤、良溶剤と貧溶剤の混合溶剤、または良溶剤と非溶
    剤の混合溶剤のいずれかをグラビアメッシュロールで塗
    布して表面に径が0.5μm〜80μmの開放孔を発生
    させたのち、融点が50℃〜100℃のワックスもしく
    は該ワックスを主体とした混合物の、有機溶剤溶液を該
    開放孔に埋め込むように塗布、乾燥し、その後、仕上げ
    ポリウレタン被膜(ハ)を形成させることを特徴とする
    請求項1記載の意匠効果の優れた銀付調人工皮革の製造
    方法。
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