JP3400204B2 - アニリン調の色調を有する皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

アニリン調の色調を有する皮革様シートおよびその製造方法

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JP3400204B2 JP25358095A JP25358095A JP3400204B2 JP 3400204 B2 JP3400204 B2 JP 3400204B2 JP 25358095 A JP25358095 A JP 25358095A JP 25358095 A JP25358095 A JP 25358095A JP 3400204 B2 JP3400204 B2 JP 3400204B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面が天然皮革特
有のアニリン感を有し、銀面とその下の基体層との間で
一体感のある風合いを有し、さらに通気性、透湿性に優れ
た銀面付き皮革様シートおよびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来より銀面を有する皮革様シートの製
造方法に関して多くの提案がなされてきた。それら提案
の多くは、繊維質シートの一面に弾性重合体の湿式膜あ
るいは乾式膜を付与し銀面を形成する方法である。ま
た、通気・透湿性を有する銀面付き皮革様シートの製造
方法についても多くの提案がなされてきた。それらの方
法は、繊維質シート表面に、弾性重合体に発泡剤、添加
剤、凝固調節剤等を添加して湿式法または乾式法等によ
り形成された通気性多孔質層を積層する方法、あるいは
レーザー等により表面の弾性重合体層に穴を開ける方法
等である。また、天然皮革調のシートの製造方法につい
ては、シートの表面に柄模様をプリントする方法、模様
のシボを付与し染色后、凹凸面の凸面をカレンダーで平
滑化する方法等が提案されている。
【0003】また天然皮革調の外観で通気・透湿性を有
する皮革様シートの製造方法として、弾性重合体を含有
する繊維質シートを熱溶融するか或いは溶剤を付与し
て、該シートの表面を構成する繊維および弾性重合体を
ともに溶かして表面を平滑化し銀面を形成する方法も提
案されている(例えば特公昭48―535号公報、特公
昭48―536号公報、特公昭48―537号公報
等)。さらに繊維絡合体の表面に極細繊維立毛面を形成
し、繊維の溶剤あるいは膨潤剤を付与し熱プレスで繊維
を接合して表面を平滑化し、さらにその表面に弾性重合
体の被覆層を設ける皮革様シ-ト状物の製造方法がも知
られている(特開平2―154078号公報)。また、天
然皮革調の色調を有する皮革様シートの製造方法につい
ては、シートの表面に柄模様のプリントをする方法や皮
革模様のシボを付与し、染色後に凹凸面の凸面をカレン
ダーで平滑化する方法などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来よ
り提案されている方法のうち、繊維質シート表面に弾性
重合体からなる多孔質層を付与する方法あるいは表面の
被覆層にレーザー等により穴をあける方法は、銀面が天
然皮革に類似し、かつ平滑性が良好であるという長所を
有しているが、外観が単調でゴム感があり風合いが硬く
高級感に欠けるという欠点を有している。また、通気・
透湿性についても十分満足できるものではない。さらに
アニリン調の色調を有するものが得られないという欠点
も有している。
【0005】また繊維質シートを構成する繊維および弾
性重合体を熱溶融あるいは溶剤等により溶解して平滑化
し銀面を形成する方法は、通気・透湿性の点に関しては
満足できるものの、天然皮革特有のアニリン感に乏しく
さらに表面がゴムライクとなり、高級感に欠けるもので
あった。さらにシートの表面に柄模様のプリントする方
法や皮革模様のシボを付与し染色後に凹凸面の凸面をカ
レンダーで平滑化する方法の場合には、柄が単調で色の
深みが不足し、天然皮革の外観を有しておらず一見して
天然皮革調とは異質の外観である。本発明は、表面が天
然皮革特有のアニリン感を有し、基体層と銀面とが天然
皮革のように一体感を有し、さらに通気性・透湿性に優
れた銀面付き皮革様シートおよびその製造方法を提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、平均
単繊維繊度0.1デニール以下の極細繊維またはその束
状物を主体として構成された不織布とその内部に含有さ
れた弾性重合体からなる基体層、およびその表面には、
該基体層の極細繊維に連なる、極細繊維形成樹脂と同一
の樹脂からなる銀面を有し、該銀面が実質的に最表面と
なっており、かつ該銀面は、平滑部分と非平滑部分より
構成され、該銀面の平滑部分が非平滑部分よりも濃色に
着色されていることを特徴とする皮革様シートである。
【0007】また本発明は、その好適な製造方法とし
て、平均単繊維繊度0.1デニール以下の極細ナイロン
繊維またはその束状繊維を主体として構成された不織布
と弾性重合体からなり、少なくともその一面に立毛が形
成された繊維質シートの表面に、該立毛繊維を溶解また
は膨潤させるフェノール系化合物を3〜50重量%含有
する混合溶液を塗布したのち、熱ロールにより該塗布面
をプレス処理して被膜を形成し、さらに染色仕上げを行
うことを特徴とする皮革様シートの製造方法が、上記の
皮革様シートの好適な製造方法であることを見いだし
た。
【0008】以下に、本発明の皮革様シートの製造方法
について説明する。本発明の方法において、最も大きな
特徴点は、表面に溶剤あるいは膨潤剤を塗布するに先立
って繊維質シートの表面が毛羽立てられていること、お
よび溶剤あるいは膨潤剤として、フェノール系化合物を
3〜50重量%含有する混合溶液を用いることにある。
特にフェノール系化合物としてレゾルシンを用い、さら
に混合溶剤が、水に可溶で立毛繊維を溶解しない有機溶
剤を20〜80重量%含有する場合には、特に優れた高
級感ある天然皮革に極めて類似したアニリン調の表面色
調が得られる。
【0009】本発明の皮革様シートの製造方法に用いら
れる極細繊維基体層は、溶剤あるいは分解剤に対する溶
解性あるいは分解性の異なる少なくとも二種類の熱可塑
性重合体からなり、一方の熱可塑性重合体が海成分とな
り、他の一方の熱可塑性重合体が該海成分中に繊維長さ
方向に伸びる島成分となっている海島型繊維から、海成
分を溶剤あるいは分解剤により除去して得られる繊維か
らなるものである。島成分として使用する重合体は、6
―ナイロン、66―ナイロン、610―ナイロン11
―ナイロンなどのナイロン類からなる群から選ばれた少
なくとも一種類の重合体である。ナイロン類の場合に
は、特に高級感あるアニリン調の色調が得られる。
【0010】また最終的には除去される海成分重合体と
しては、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、
エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン
系共重合体、塩化ビニル系共重合体などからなる群から
選ばれた少なくとも一種類の重合体が挙げられる。ナイ
ロン成分中には必要により、顔料、染料、各種安定剤な
どが添加されていてもよい。また繊維としては、ナイロ
ンを一成分とする多成分系繊維であって、繊維を構成す
る一成分の膨潤剤で処理または物理的あるいは機械的に
処理して各成分に分割することにより極細繊維またはそ
の束状物に変性する、いわゆる分割型繊維であってもよ
い。
【0011】これら島成分重合体と海成分重合体を組み
合わせ、溶解除去成分あるいは分解除去成分を海成分
(鞘成分)とし、極細繊維として利用する成分を島成分
(芯成分)とした極細繊維発生型の海島構造繊維に紡糸
し、得られた繊維は、必要に応じて延伸、熱固定、捲
縮、切断して極細繊維発生型繊維のステープル繊維また
はフィラメント繊維とする。好ましくはステープル繊維
である。そして極細繊維発生型繊維は湿式法または乾式
法で繊維ウエブとする。繊維ウエブは所望する皮革様シ
ートの厚みに応じて積層し、ニードルパンチ法、高圧流
体噴射法などにより繊維絡合処理を行い繊維絡合不織布
とする。繊維絡合不織布目付は、目的とする製品の厚
み、繊維中の除去成分の量などによって決められるが、
一般には100〜1500g/m2の範囲内である。さ
らに、熱固定処理、収縮処理、糊付け、あるいは樹脂の
予備含浸処理、面平滑化処理、厚み合わせ、厚み方向に
二分割処理などの中から必要な準備処理を行って繊維絡
合不織布とする。
【0012】極細繊維発生型繊維の繊度は、利用しよう
とする極細繊維の繊度および不織布の地合いなどから決
められるものであるが、一般には単繊度1〜15デニー
ルの範囲である。繊度が太くなると良好な不織布が得ら
れないばかりではなく、1本の繊維中の極細繊維の繊度
が太くなって好ましいものではなくなる。
【0013】次に上記のようにして得られた繊維絡合不
織布に弾性重合体を含有させる。使用する弾性重合体と
しては、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル系エ
ラストマー、ポリアミドエラストマー、シリコンエラス
トマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素
添加物などのエラストマー、アクリロニトリルブタジエ
ン共重合体、スチレンブタジエン共重合体などのゴム系
重合体から選ばれた少なくとも―種類の弾性重合体が挙
げられる。これら弾性重合体は、溶剤に溶解あるいは分
散剤に分散させた状態で繊維絡合不織布に含浸させる。
湿式法或いは乾式法等により弾性重合体を凝固させ、繊
維絡合不織布の内部に含有させる。必要に応じて弾性重
合体液には、着色剤、凝固調節剤、界面活性剤、各種安
定剤などが添加されてしてもよい。
【0014】ここで内部に含有させる弾性重合体の量は
含浸させる弾性重合体の濃度や量を調節することにより
自由に選択できる。含有させる量としては、繊維絡合不
織布の重量に対して10〜60重量%である。しかる後
に、重合体の溶剤あるいは分散剤は、重合体の非溶剤あ
るいは溶剤―非溶剤の液中で処理する湿式法、湿熱ある
いは乾熱で処理する乾式凝固法で多孔質状または非多孔
質状に凝固し、水洗、乾燥して繊維絡合不織布に弾性重合
体または弾性重合体を主体とした重合体を含有せしめた
繊維質シートとする。通常は含浸させた弾性重合体液が
凝固されるまでに繊維絡合不織布の表面に移行する、い
わゆるマイグレーションと称する現象が生じ、絡合不織
布の表面が弾性重合体により覆われることとなる。しか
しながら、本発明の製造方法において、表面の繊維が重
合体に実質的に覆われないことが極めて重要であり、そ
のために本発明方法では、弾性重合体を含有させた繊維
質シート表面を、後述するように毛羽立てる操作を行っ
ている。
【0015】次に繊維質シートの構成繊維(海島構造繊
維あるいは分割型繊維)を極細繊維またはその束状物の
状態にする。もちろん、上記弾性重合体を含有させるに
先立って、この処理を行ってもよい。弾性重合体を含有
せしめる前の繊維絡合不織布、または弾性重合体を含有
せしめた後の繊維質シートを、構成繊維の海成分または
鞘成分を溶剤あるいは分解剤で処理して海成分または鞘
成分を除去することによって島成分または芯成分が残
り、極紬繊維またはその束状物に換わる。また分割型繊
維では繊維を構成する一成分の膨潤剤または/および物
理的あるいは機械的に処理して各成分に分割することに
より極細繊維またはその束状物に換わる。
【0016】また極細繊維の絡合不織布の他の製造方法
として、ナイロン系重合体をメルトブローン法またはフ
ラッシュ紡糸法等で紡糸して直接に極細繊維のウエブと
し絡合処理して作る方法もある。極細繊維の繊度は皮革
様シートの表面性能から決められるが、高級感あるアニ
リン調の色調および優れた表面状態を得るためには、極
細繊維の平均単繊度は0.1デニール以下であらねばな
らない。0.1デニール以下とするための方法としては
種々の方法があるが、例えば海島繊維を構成する海成分
ポリマーと島成分ポリマーの紡糸温度における溶融粘度
を調節することにより達成される。すなわち海成分ポリ
マーの溶融粘度と島成分ポリマーの溶融粘度を近づける
ほど、島成分ポリマーは海成分ポリマー中に細かく分散
することとなり、島成分から得られる極細繊維の細さが
細くなる。特に極細繊維束状物においては平均単繊度
0.1〜0.001デニールの範囲がさらに好ましい。
【0017】なお、本発明でいう平均単繊度とは、1本
の極細繊維束状物のトータルデニールをそれを構成する
極細繊維の本数で割ることにより得られ、また極細繊維
が束状となっていない場合には、シートの断面電子顕微
鏡写真から任意に選び出した繊維100本のトータルデ
ニールを100で割った値である。本発明においては、
不織布を構成する繊維としては、極細繊維束状物が好ま
しく、特に極細繊維100〜10000本から構成され
ている束状物が好ましい。
【0018】本発明方法においては、このようにして得
られた弾性重合体含有極細繊維質シートの表面に極細繊
維の立毛を形成させることが重要である。繊維立毛面の
形成は、サンドペーパーまたはサンド布帛で極細繊維基
体層の表面をバフィングすることにより得られる。この
工程は、繊維立毛の形状が本発明の特徴であるアニリン
感を左右する重要な役割を持っているため重要である。
毛足の長さ、立毛面の密度はサンドペーパーの番手、接触
圧力、回転速度などを自由に条件を選択することで達成
できるが、いずれにしても繊維立毛はほぼ均一でスエー
ド調のライティングエフェクトのある外観が好ましい。
すなわち、ライティングエフェクトが得られる立毛密
度、立毛長さとすることが好ましい。さらに立毛繊維を
櫛掛け、ブラシ掛けなどによって繊維を一方向に引き揃
えたり、引き揃えた繊維立毛を乱さないために、繊維を
溶融しない程度の温度に加熱した加熱ロールや加熱板な
どによってプレスし熱セットしてもよい。
【0019】銀面の形成は、このようにして得られた表
面立毛繊維に可溶剤あるいは膨潤剤を付与して立毛面の
立毛繊維を自己接着せしめることにより得られる。表面
の立毛繊維の立毛面の立毛繊維同士を自己接着させる溶
剤あるいは膨潤剤としては、製造方法における立毛繊維
がナイロンであることより、リチウム塩、カルシウムの
アルコール溶液、ベンジルアルコール、フェノール系化
合物、氷酢酸などが種々の化合物があるが、本発明方法
においては、高級感あるアニリン調の色調を得るため
に、フェノール系化合物、特に好ましくはレゾルシンを
使用する。
【0020】そしてフェノール系化合物は、立毛繊維を
溶解又は膨潤しない液体であってフェノール系化合物を
溶解する液体との混合液として用いられる。フェノール
系化合物を溶解する液体としては、イソプロピルアルコ
ール、イソブチルケトン等の繊維を溶解または膨潤させ
ないアルコール類、メチルエチルケトン、メチルブチル
ケトン等のケトン類や水が代表例として挙げられる。特
に水とアルコール類が好ましい。水に可溶で立毛繊維を
溶解しない液体として有機溶剤を用いる場合には、混合
液中に占めるこれら有機溶剤の量は20〜80重量%、
特に30〜60重量%が高級感あるアニリン調の色調を
得る上で好ましい。なかでも、フェノール系化合物と、
水と、立毛繊維を溶解又は膨潤しない液体であってフェ
ノール系化合物及び水を溶解する有機系の液体、例えば
イソプロピルアルコールとを含む多成分混合物が好まし
い。これらの場合においても、混合液中におけるフェノ
ール系化合物の含有量は、3〜50重量%であり、水の
含有量は30〜70重量%、そして上記有機溶媒の含有
量は70〜30重量%が好ましい。
【0021】フェノール系化合物の含有量が3重量%よ
りも少ない場合には立毛繊維の接着が起こらず、所期の
目的物が得られず、また50重量%より多い場合には表
面の立毛繊維の自己接着が多過ぎて、アニリン調が得ら
れにくく、また表面タックが激しく作業性が悪化する。
また上記有機溶剤の含有量が20重量%より少ない場合
には立毛表面に均一に塗布することが難しく天然皮革調
のアニリン調の色調が得られにくく、また80重量%を
越える場合には、塗布した液が基体の内部まで浸透しや
すく、これまたアニリン感が得られにくくなる。
【0022】立毛面に塗布する方法としてはグラビアコ
ート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレー
法、転写法等のいずれでもよいが、塗布の均一性からグ
ラビアコート法が好ましい。塗布の均一性を上げるため
にあらかじめ立毛面を撥水処理しておいてもよい。塗布
量としては、繊維の立毛形状によって自由に選択できる
が、好ましくはフェノール化合物の塗布量が2〜10g
/m2、特に好ましくは3〜10g/m2となる量であ
る。このように塗布したのち乾燥して、塗布液を蒸発さ
せる。
【0023】さらに熱ロールで自己接着立毛繊維面を溶
融し銀面化する。エンボスロールで皮革模様のしぼを付
与すればさらに良好な外観となる。表面を銀面化したシ
ートは、金属錯塩染料を使用し、通常の染色機にて染色
し、皮革様シートとする。
【0024】このようにして得られた皮革様シートは、
平均単繊維繊度0.1デニール以下の極細繊維またはそ
の束状物を主体として構成された不織布とその内部に含
有された弾性重合体からなる基体層、およびその表面に
は、該基体層の極細繊維に連なる、極細繊維形成樹脂と
同一の樹脂からなる銀面を有し、該銀面が実質的に最表
面となっており、かつ該銀面は、平滑部分と非平滑部分
より構成され、該銀面の平滑部分が非平滑部分よりも濃
色に着色されていることを特徴とする皮革様シートであ
る。
【0025】この皮革様シート状物の表面は自己接着の
程度により微妙な濃淡が発生し、表面が天然皮革特有の
アニリン感を有し、さらに銀面とその下の基体が一体感
を有し、さらに銀面には実質的に弾性重合体が存在しな
いことよりゴム感を与えない。さらに本発明の皮革様シ
ートにおいては、上記銀面は立毛繊維同士が溶融接着す
ることにより形成されたものであることよりシート表面
を全面的に被覆しておらず、したがって高い通気・透湿
性を有している。本発明の皮革様シートでは、この通気
・透湿性を保つために、立毛繊維から形成された銀面が
シートの最表面となっている必要がある。もし、従来の
皮革様シートのように、この銀面にさらに樹脂層が積層
される場合には、通気・透湿性が妨げられることとな
り、さらに、アニリン調の色調効果も低下することとな
る。なお、本発明において、銀面の表面に撥水剤、撥油
剤、滑り剤などを塗布することは、もちろん構わない。
このような本発明の皮革様シートは優れた高級感ある天
然皮革様のアニリン調の色調を有しており、さらに通気
・透湿性や柔軟性においても極めてすぐれていることよ
り、紳士、婦人靴のライニング、ベルト時計バンド、カ
ジュアル靴のアッパー等に使用される。
【0026】
【実施例】次に、本発明の内容を実施例により具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。なお、実施例中の部数および%はことわりの
ない限り重量に関するものである。なお透湿度はJIS
−K6549により、また透気度はJIS−L1018
により測定した。
【0027】実施例1 高流動性ポリエチレン(海成分)、6―ナイロン(微細
繊維束状物成分)からなる繊度6デニールの海島型混合
紡糸繊維を繊維長51mmにカットして得たステープル
繊維を用い、乾式繊維ウエブを作り、クロスラップ法で
積層ウエブとし、ニードルパンチ法で繊維絡合し熱処理
し不織布とした。この不織布にポリエステル系ポリウレ
タンの13%ジメチルホルムアミド溶液を含浸し、表面
に付着したウレタン溶液をナイフで除去した後、ジメチ
ルホルムアミド水溶液中で凝固した。次いで、温水洗浄
にて溶剤のジメチルホルムアミドを除去した後、熱トル
エンにて繊維中のポリエチレンを溶解除去して極細繊維
束の平均本数400本/束、平均繊度0.005デニー
ルの6―ナイロン極細繊維の束状物からなる絡合不織布
に多孔質ポリウレタンが含有されている繊維質シートを
得た。
【0028】この繊維質シートを二分割にスライスし、
厚さ0.8mm、平均目付250g/m2の二枚の繊維
質シートを得た。この繊維質シートを構成する繊維とポ
リウレタンとの重量比は62.2:37.8であった。
次に、この繊維質シートの表面を600番のサンドペー
パーでバフィングし、極紬繊維の立毛面を形成させ、毛
ロールにて立毛繊維を順目方向に揃え立毛繊維質シート
を得た。この立毛面を手で触れると明らかにライティン
グ効果を有していた。次に立毛繊維の表面にレゾルシン
を20%含有するイソプロピルアルコール:水=50:
50の、レゾルシン−イソプロピルアルコール−水から
なる三者系混合溶液を140メッシュのグラビアロール
で4g/m2(レゾルシン換算)塗布し、温度140℃の
熱風乾燥機で乾燥した後、16O℃のエンボスロールに
て表面にキッド調の型押することにより、表面の立毛繊
維の大部分が自己接着した平滑な銀面を有した皮革様シ
ートを得た。このシートを、ウインス染色機を用いて茶
色系の金属錯塩染料の染液で、90℃、1時間染色し、
ソーピング、水洗、乾燥して銀面を有する皮革様シート
を得た。
【0029】このようにして得られた皮革様シートは、
その表面に、該基体層の極細繊維に連なる、極細繊維形
成樹脂(6−ナイロン)と同一の樹脂からなる銀面を有
し、該銀面が実質的に最表面となっており、かつ該銀面
は、平滑部分と非平滑部分より構成され、該銀面の平滑
部分が濃い茶色に、また非平滑部分が薄い茶色に染色さ
れており、個々の平滑部分の大きさは約1mm2程度で
あった。この皮革様シートは風合いが良好で天然皮革特
有のアニリン感を有し、また透湿性は2500g/m2
/24hr、通気性は2.3cc/cm2/秒であり、
優れた性能を有していた。
【0030】実施例2 繊維質シートの表面を320番のペーパーでバフィング
する以外は実施例1と同じ方法で銀面を有する皮革様シ
ートを得た。バフィングにより得られる立毛面の状態
は、実施例1のものと比べて若干粗めであるが毛足が長
く、ライティング効果を有するものであった。このよう
にして得られた皮革様シートの表面状態は、上記実施例
1のものと比べて平滑部分の面積が若干増す点を除き、
同一であった。この皮革様シートは銀感、平滑性は実施
例1のものより若干落ちるが、おちついた外観で天然皮
革特有のアニリン感を有し、また透湿性は2000g/
2/24hr、透気性は2.0cc/cm2/秒であ
り、優れた性能を有していた。
【0031】実施例3 極細繊維束の平均本数が1000本/束で、平均繊度
0.001デニールの6―ナイロン極細繊維束からなる
絡合不織布を用いる以外は実施例1と同じ方法で皮革様
シートを得た。この皮革様シートは、実施例1のものと
同様な表面状態および色調を有していた。そして、この
皮革様シートは、天然皮革に極めて類似した銀面と基体
とが一体感のある風合いであり、天然皮革特有の高級感
あるアニリン調の色調を有し、透湿性は2000g/m
2/24hr、通気性は2.0cc/cm2/秒であり、
優れた性能を有していた。
【0032】実施例4 レゾルシンを20%含有するイソプロピルアルコールと
水との量比を30:70に変更した以外は実施例1と同
じ方法で皮革用シートを得た。この皮革用シートは実施
例1のものと同様な表面状態および色調を有し、平滑性
および艶感はさらに向上し、アニリン感の強い外観を有
し、透湿性は2000g/m2/24hr、通気性は1.
8cc/cm2/秒であり、極めて優れた性能を有して
いた
【0033】実施例5 レゾルシンを20%含有するイソプロピルアルコールと
水との量比を70:30に変更した以外は実施例1と同
じ方法で銀面を有する皮革用シートを得た。この皮革用
シートは、その表面に、該基体層の極細繊維に連なる、
極細繊維形成樹脂(6−ナイロン)と同一の樹脂からな
る銀面を有し、該銀面が実質的に最表面となっており、
かつ該銀面は、平滑部分と非平滑部分より構成され、
銀面の平滑部分が濃い茶色に、また非平滑部分が薄い茶
色に染色されており、個々の平滑部分の大きさは約0.
5mm2程度であった。そして平滑性、艶感、アニリン
感は実施例1のものより若干落ちるが、落ち着いた外観
で透湿性、透気性もそれぞれ2500g/m2/24h
r、2.5cc/cm2/秒であり、極めて優れた性能
を有していた。
【0034】比較例1 実施例1で得られた立毛繊維質シートの立毛面に顔料を
添加したポリウレタン溶液をグラビアにて約10g/m
2 (固形分)塗布した後、160℃のエンボスロールに
て表面にキッド調の型押し、銀面を有したシートを得
た。このシートをウインス染色機を用い、茶色系の金属
錯塩染料の染液で、90℃、1時間染色し、ソーピン
グ、水洗、乾燥し銀面を有する皮革様シートを得た。こ
の皮革様シートは風合いは硬く、アニリン感を有さず、
また透湿性、通気性もそれぞれ800g/m2/24h
r、0.1cc/cm2/秒であり、低いものであっ
た。
【0035】比較例2 実施例1で得られた繊維質シートの表面に、茶色系の顔
料を添加したポリウレタンエマルジョン溶液を、グラビ
ア法にて約l5g/m2(固形分)塗布し、さらに易染
性ポリウレタン溶液をグラビア法にて約2g/m2(固
形分)塗布した後、キッド模様のエンボシングを行い、
ウインス染色機を用い、茶色系の金属錯塩染料の染液
で、9OCC、1時間染色し、ソーピング、水洗、乾燥
し銀面を有する皮革様シートを得た。この皮革様シート
は風合いは良好であるが、アニリン感に乏しく、また透
湿性、通気性もそれぞれ400g/m2/24hr、
0.001cc/cm2/秒と低いものであった。
【0036】比較例3 易染性ポリウレタン溶液の塗布方法を、柄グラビアロー
ルで約lg/m2(固形分)塗布する方法に変更した以
外は比較例3と同じ方法で皮革様シートを得た。この皮
革様シートは、風合いは良好であるが、柄が単調で天皮
特有のアニリン感とは異質であり、透湿性、週気性も低
いものであった。
【0037】比較例4 繊維質シートの表面をバフィングしない以外は実施例1
と同じ方法により銀面を有する皮革様シートを得た。こ
の皮革様シートは、表面の血筋状の繊維が目立ち、さら
に銀面に弾性重合体が存在することよりゴムライクな風
合いのする高級感に乏しいものであった。
【0038】比較例5 立毛繊維の表面にレゾルシン60%含有するイソプロピ
ルアルコール溶液を140メッシュのグラビアロールで
g/m 2 (固形分)塗布した以外は実施例1と同じ方
法で銀面を有する皮革様シートを得た。この皮革様シー
トは平滑性は良好であったが、表面が硬く、またエンボス
時引っ付きが発生し、生産性に問題のあるものであった。
【0039】
【発明の効果】本発明の皮革用シートは、高級感ある天
然皮革に類似したアニリン調の色調、平滑性、艶感等の
外観を有し、また銀面にポリウレタン等の樹脂により全
面被覆されていないため、銀面と基体層との間で一体感
があり、かつゴムライクな感じを与えず、さらに通気お
よび透湿性に優れている。したがって本発明の皮革様シ
ートは、靴、ジャケット、コート、手袋等に極めて優れ
ている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06N 3/00 - 3/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均単繊維繊度0.1デニール以下の極
    細繊維またはその束状物を主体として構成された不織布
    とその内部に含有された弾性重合体からなる基体層、お
    よびその表面には、該基体層の極細繊維に連なる、極細
    繊維形成樹脂と同一の樹脂からなる銀面を有し、該銀面
    が実質的に最表面となっており、かつ該銀面は、平滑部
    分と非平滑部分より構成され、該銀面の平滑部分が非平
    滑部分よりも濃色に着色されていることを特徴とする皮
    革様シート。
  2. 【請求項2】 平均単繊維繊度0.1デニール以下の極
    細ナイロン繊維またはその束状物を主体として構成され
    た不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、
    少なくともその一面に立毛が形成された繊維質シートの
    表面に、該立毛繊維を溶解または膨潤させるフェノール
    系化合物を3〜50重量%含有する混合溶液を塗布した
    のち、熱ロールにより該塗布面をプレス処理して被膜を
    形成し、さらに染色仕上げを行うことを特徴とする皮革
    様シートの製造方法。
  3. 【請求項3】フェノール系化合物を含有する混合溶液
    が、水に可溶で立毛繊維を溶解しない有機溶剤を20〜
    80重量%含有する請求項に記載された皮革様シート
    状物の製造方法。
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