JP4180755B2 - 立毛加工性に優れたシート状物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の繊維立毛密度に優れ、染色異色性のないスエード調人工皮革等の立毛シートを得るに適した立毛加工性に優れたシート状物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維等の極細繊維と高分子弾性重合体とからなるスエード調人工皮革の製造方法としては、該極細繊維からなる繊維質基材に高分子弾性重合体を含浸した後に起毛加工し、次いで染色処理する方法が一般的である。しかし、このような方法では表面に高分子弾性重合体が残留しやすいため、該重合体と極細繊維との染色性の違いから、染色後の製品に表面異色性が現れやすいという問題がある。特に極細繊維がポリエステル繊維で高分子弾性重合体がポリウレタンエラストマーであるスエード調人工皮革の場合には、分散染料で染色するのが一般的であるが、通常分散染料による染色では染色堅牢度を向上させる目的で染色後還元洗浄が施されるため、ポリウレタンエラストマー中に吸着された分散染料が還元されてポリエステル繊維とポリウレタンエラストマーとの間に染色異色性が現れやすい。一方、極細繊維がナイロン繊維で高分子弾性重合体がポリウレタンエラストマーの場合には、含金染料で繊維とポリウレタンエラストマーとを同時に染色するのが一般的であるが、両者を同一色に染色することが困難であるため、上記と同じく染色異色性が現れやすい。
【0003】
このようなスエード調人工皮革等の立毛シートの表面異色性の問題を改善するため、従来立毛シートの立毛密度を上げる方法、繊維質基材の表面層における高分子重合体の含浸量を低減させる方法等の各種方法が提案されている。例えば、特公昭47−44606号公報には繊維質基材の立毛面となる側を糊剤処理する方法、また、特公昭53−35122号公報には糊剤処理した後さらに加熱ロールで圧縮固定する方法により、立毛面となる部分の高分子弾性重合体含浸量を少なくすることが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、繊維質基材の厚み方向への該糊剤の浸透深さを制御することが困難であり、また繊維質基材の目付斑に対応して糊剤の付着斑が発生しやすいという問題がある。さらには、使用した糊剤を除去する工程が必要となるため、工程が繁雑になると共にコストも高くなるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する問題点を鑑みなされたもので、その目的は、糊剤処理を施さなくても、表面立毛密度が向上すると共に表面の高分子弾性重合体含浸量が低減した立毛シートを得ることができ、染色しても表面の染色異色性が発現しない立毛シートを得るに適した立毛加工性に優れたシート状物およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、上記目的は、溶剤溶解性および軟化点温度の異なる高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)とからなる極細繊維化可能な複合繊維から形成された繊維質基材と、該繊維質基材の空隙に含有せしめた高分子弾性重合体とから構成されるシート状物において、該シート状物の少なくとも一方の面には、前記複合繊維の低軟化点重合体成分(B)の融着による厚さ0.05〜0.50mmの融着層が存在し、且つ該融着層には前記高分子弾性重合体が実質的に含有されていないシート状物により達成できることが見出された。
【0007】
さらに別の目的は、溶剤溶解性および軟化点温度の異なる高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)とからなる極細繊維化可能な複合繊維から形成された繊維集合体の少なくとも一方の面を、該低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度以上、高軟化点重合体成分(A)の軟化点温度以下で且つ低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度+70℃以下の温度に加熱した面に接触させ、該接触面の表面層の複合繊維を少なくとも一部融着させて表面に融着層を有する繊維質基材となし、次いで該繊維質基材の非融着層部に高分子弾性重合体を含浸処理するシート状物の製造方法により達成できることが見出された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の繊維質基材を形成するに使用される極細繊維化可能な複合繊維とは、溶剤溶解性および熱軟化点温度の異なる高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)とからなるもので、例えば低軟化点重合体成分(B)を溶解除去等の極細繊維化処理することによって極細繊維とすることができるもの(通常は高軟化点重合体成分(A)が極細繊維となる)をいい、上記2種の重合体を通常の複合紡糸して得た複合繊維、2種を混合した後に紡糸した混合紡糸繊維等、いずれであってもよい。なお、ここでいう軟化点温度はJIS K6760法にしたがって測定したもので、高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)との間の軟化点温度差は70℃以上が適当である。該温度差が小さくなりすぎると、後述する融着層を有する繊維質基材を製造する際の条件の許容範囲が狭くなる。なお、該温度差があまりに大きくなりすぎると、複合繊維を紡糸する際に低軟化点重合体成分(B)が熱分解する場合があるので、該温度差の上限は該低軟化点重合体成分が熱分解しない温度、特に250℃以下であることが好ましい。一方、溶剤溶解性が同じである場合には、後述する極細繊維化処理ができなくなるので好ましくない。
【0009】
極細繊維の一方成分である高軟化点重合体成分(A)としては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを挙げることができる。
【0010】
また、極細繊維の他方成分である低軟化点重合体(B)としては、上記高軟化点重合体成分(A)よりも軟化点が低く且つ溶剤に対する溶解性が異なるものであれば任意であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高分子量ポリエチレングリコール、ポリアクリレート等が挙げられる。さらには、ポリアミドやポリエステルであってもよい。
【0011】
かかる複合繊維は、例えば短繊維にした後にカードとクロスレイヤーでウェブとなし、次いでニードルパンチングを施して絡合不織布等の繊維集合体となす。引続いて、得られた繊維集合体の少なくとも一面を、例えば低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度以上、高軟化点重合体成分(A)の軟化点温度以下で且つ低軟化点重合体成分(B)の軟化点+70℃以下の温度に加熱した面に接触させ、該接触面の表面層の複合繊維を少なくとも一部融着させて、低軟化点重合体成分(B)の熱融着による厚さ0.05〜0.50mm、好ましくは0.05〜0.40mm、特に好ましくは0.05〜0.20mmの融着層を少なくとも一方の面に有する繊維質基材となす。なお、ここでいう融着層とは、複合繊維間の低軟化点重合体が互に融着し合って、実質的に空隙を有さない層を形成している状態をいう。融着層がかかる状態にあるので、後に高分子弾性重合体溶液を含浸処理する際、該溶液が融着層に実質的に含浸されないようになるのである。
【0012】
ここで繊維集合体の面に接触させる加熱面の温度は、低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度以下の場合には融着層が形成されず、一方低軟化点重合体成分(B)の軟化点+70℃以上の温度では加熱面に得られる繊維質基材が付着するなどの不都合を生じ、また高軟化点重合体成分(A)の軟化点温度を超える場合には得られる繊維質基材の機械的特性が不十分となるので好ましくない。好ましい温度範囲は、低軟化点重合体成分(B)の軟化点+10℃の温度以上、低軟化点重合体成分(B)の軟化点+55℃の温度以下、より好ましくは低軟化点重合体成分(B)の軟化点+20℃の温度以上、低軟化点重合体成分(B)の軟化点+45℃の温度以下である。
【0013】
繊維質基材の融着層の厚さが0.05mm未満の場合には、最終的に得られる立毛製品の立毛長が短くなりすぎて染色異色性が発現するので好ましくない。逆に0.50mmを超える場合には、最終的に得られる立毛製品の立毛長が長くなりすぎて外観品位が低下し、人工皮革用としては好ましくなくなる。なお、この融着層の厚さは、接触加熱面の温度、接触時間、接触時の負荷圧力等を適宜選択することにより制御可能である。
【0014】
本発明のシート状物は、例えば上記のようにして製造された少なくとも一方の面に融着層を有する、極細繊維化可能な複合繊維から形成された繊維質基材の空隙部に高分子弾性重合体を含有せしめたものである。
【0015】
好ましく用いられる高分子弾性重合体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ウレアエラストマー、ポリアクリル酸エステル系エラストマー、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等が挙げられる。なかでも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ウレアエラストマー等のポリウレタン系エラストマーが好ましい。これらのポリウレタン系エラストマーは、平均分子量500〜4000のポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリカーボネートグリコール等から選ばれた少なくとも1種のポリマーグリコールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソフォロンジイソシアナート等の有機ジイソシアナートと、低分子グリコール、ジアミン、ヒドラジン、有機酸ヒドラジット、アミノ酸ヒドラジット等のヒドラジン誘導体から選ばれた少なくとも1種の鎖伸長剤とを反応させて得られたものである。なお、この高分子弾性重合体中には、着色剤等の添加剤を配合していてもよい。
【0016】
このような高分子弾性重合体の、前記融着層を除いた繊維質基材部分の複合繊維重量(したがって本発明のシート状物の融着層以外の部分の複合繊維重量と同一)に対する含有量は、10〜120重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲とするのが適当である。該弾性重合体の含有量が10重量%未満の場合には、皮革様の風合を有する立毛シートを得ることが困難になってペパーライクなものとなりやすく、逆に120重量%を超える場合では、ゴムライクなものとなって同じく皮革様の風合を有する立毛シートは得難くなる。
【0017】
次に、上記高分子弾性重合体を前記繊維質基材中の空隙部に含有させる方法としては、例えば、該弾性重合体を有機溶剤溶液または分散液(水性エマルジョンを含む)となして該繊維質基材に含浸させ、次いで該高分子弾性重合体を繊維質基材中で凝固させればよい。高分子弾性重合体を凝固させるための具体的方法としては、従来公知の湿式凝固法、乾式凝固法のいずれをも採用することができる。なお、高分子弾性重合体の溶剤溶液は、非融着層に均一に浸透させることが好ましい。
【0018】
ここで使用される高分子弾性重合体の有機溶剤溶液の溶剤としては、前記高軟化点重合体成分(A)および低軟化点重合体成分(B)を実質的に溶解しないものであれば任意で、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を挙げることができる。該溶液の好ましい濃度範囲は8〜20重量%であり、該溶液には多孔調整剤、着色剤等の任意の添加剤を配合しても構わない。
【0019】
以上に説明した本発明のシート状物は、使用した極細繊維化可能な複合繊維の種類に適した従来公知の方法により極細繊維化処理する。例えば極細繊維となる方の重合体が高軟化点重合体成分(A)である場合には、低軟化点重合体(B)を溶解するが高軟化点重合体成分(A)は溶解し難い溶剤で処理して低軟化点重合体(B)を溶解除去して極細繊維化する。低軟化点重合体(B)成分がポリエチレン等のポリオレフィンの場合には、これを溶解除去する溶解除去する溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン等が好ましい。
【0020】
かくして得られるシートは、前記繊維質基材の融着層を有する側に高分子弾性重合体が実質的に存在しない極細繊維の層を有しているので、表面立毛密度の高いスエード調人工皮革用基材として極めて好適である。
【0021】
かかるスエード調人工皮革用基材は、従来公知の方法により該弾性重合体を含有しない極細繊維層を起毛することにより、表面立毛密度が高く、しかも染色しても表面の染色異色性が発現しない優れた立毛シート(スエード調人工皮革)にすることが可能である。
【0022】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
[実施例1]
高軟化点重合体成分(A)として軟化点温度が238℃のポリエチレンテレフタレートを複合繊維の島成分、低軟化点重合体成分(B)として軟化点温度が85℃の低密度ポリエチレンを複合繊維の海成分とし、島成分太さ0.17dtex(0.15de)、島数19本、配合重量比(高軟化点重合体成分(A):低軟化点重合体成分(B))=60:40となるように複合紡糸し、繊度5.3dtex(4.8de)、繊維長51mmの複合繊維を得た。得られた複合繊維をカードとクロスレイヤーによってウェブにした後、ニードルパンチングを施して目付400g/m2の絡合繊維集合体を作成した。
【0024】
この絡合繊維集合体を150℃の熱風オーブン中で予備加熱した後、プレスロールで見かけ密度が0.30g/cm3、厚さが1.3mmとなるようにロールプレスした。次いで、一方が120℃の加熱ロールであるプレスロール(ロール間隔は圧縮時密度が0.8g/cm3となる間隔に調整)を通してプレス処理し、片方の表面にポリエチレン融着層が形成された繊維質基材を形成した。プレス後の厚さは1.10mm、見かけ密度が0.36g/cm3であり、融着層の厚さは0.108mmであった。なお、該融着層の厚さは、電子顕微鏡(日本電子データム(株)製JSM−6100型)で該繊維質基材の断面写真を撮って測定した(n=9の平均値)。
【0025】
得られた繊維質基材に、濃度15重量%のポリウレタンエラストマージメチルホルムアミド溶液を含浸し、次いで10重量%ジメチルホルムアミド水溶液に浸漬して凝固させた。引続いて温度40℃の温水中で十分洗浄して、高分子弾性重合体含浸シート状物を得た。得られた高分子弾性重合体含浸シート状物の非融着層部の複合繊維とポリウレタンエラストマーの重量比は100:30であり、また、断面を前記電子顕微鏡で測定した結果、融着層にはポリウレタンエラストマーは含有されていなかった。
【0026】
得られたシート状物を、温度80℃のトルエン中にディップし次いでニップする工程を繰り返して、ポリエチレンを溶解除去し、複合繊維の極細繊維化処理を施した。その後温度110℃のスチーム中で、シート状物中に含まれているトルエンを除去した後に温度120℃の熱風乾燥機中で乾燥した。得られた極細繊維の平均繊度は0.17dtex(0.15de)であった。得られた人工皮革用基材は表面が極細繊維で覆われ、含浸ポリウレタンの表面露出のないものであった。
【0027】
この人工皮革用基材の表面に、400メッシュのサンドペーパーでバッフィング処理を施した後、得られた立毛基材を液流染色機を使用して分散染料で染色し、次いでハイドロサルファイトで還元洗浄処理した。
【0028】
得られた立毛シートは表面にポリウレタンが露出していないため、染色異色性のない鮮やかな色を発し、また表面が立毛密度の高い立毛層で被覆されシャープなチョークマーク性を有する優れたスエード調人工皮革であった。
【0029】
[実施例2]
高軟化点重合体成分(A)として軟化点温度が180℃のナイロン6を複合繊維(混合紡糸繊維)の島成分、低軟化点重合体成分(B)として軟化点温度が79℃の低密度ポリエチレンを複合繊維(混合紡糸繊維)の海成分とし、島成分太さ約3.3/1000〜1.1/100dtex(3/1000〜1/100de)、島数約600本、混合重量比(高軟化点重合体成分(A):低軟化点重合体成分(B)=50:50となるように混合紡糸し、繊度5.3dtex(4.8de)、繊維長51mmの混合紡糸繊維を得た。得られた混合紡糸繊維をカードとクロスレイヤーによってウェブにした後、ニードルパンチングを施して目付400g/m2の絡合繊維集合体を作成した。
【0030】
この絡合繊維集合体を150℃の熱風オーブン中で予備加熱した後、プレスロールで見かけ密度が0.30g/cm3、厚さが1.3mmとなるようにプレスした。次いで、一方が110℃の加熱ロールであるプレスロール(ロール間隔は圧縮時密度が0.8g/cm3となる間隔に調整)を通してプレス処理し、片方の表面にポリエチレン融着層が形成された繊維質基材を形成した。プレス後の厚さは1.10mm、見かけ密度が0.36g/cm3であり、融着層の厚さは0.095mmであった。
【0031】
得られた繊維質基材に、濃度15重量%のポリウレタンエラストマージメチルホルムアミド溶液を含浸し、次いで10重量%ジメチルホルムアミド水溶液に浸漬して凝固させた。引続いて温度40℃の温水中で十分洗浄して、高分子弾性重合体含浸シート状物を得た。得られた高分子弾性重合体含浸シート状物の非融着層部の複合繊維とポリウレタンエラストマーの重量比は100:40であり、また、断面を前記電子顕微鏡で測定した結果、融着層にはポリウレタンエラストマーは含有されていなかった。
【0032】
得られたシート状物を、温度80℃のトルエン中にディップし次いでニップする工程を繰り返して、ポリエチレンを溶解除去し、複合繊維の極細繊維化処理を施した。その後温度110℃のスチーム中で、シート状物中に含まれているトルエンを除去した後に温度120℃の熱風乾燥機中で乾燥した。得られた極細繊維の平均繊度は0.0056dtex(0.005de)であった。得られた人工皮革用基材は表面が極細繊維で覆われ、含浸ポリウレタンの表面露出のないものであった。
【0033】
この人工皮革用基材の表面に、400メッシュのサンドペーパーでバッフィング処理を施した後、得られた立毛基材を液流染色機を使用して含金染料で染色した。得られた立毛シートは表面にポリウレタンが露出していないため、染色異色性のない鮮やかな色を発し、また表面が立毛密度の高い立毛層で被覆されシャープなチョークマーク性を有する優れたスエード調人工皮革であった。
【0034】
[比較例1]
実施例1で使用したと同じ絡合繊維不織布を150℃の熱風オーブン中で予備加熱した後、プレスロールで見かけ密度が0.30g/cm3、厚さが1.3mmとなるようにプレスした。次いで、実施例1とは異なって、加熱ロールを通してプレス処理することなく、該絡合不織布に濃度15重量%のポリウレタンエラストマージメチルホルムアミド溶液を含浸し、次いで10重量%ジメチルホルムアミド水溶液に浸漬して凝固させた。引続いて温度40℃の温水中で十分洗浄して、複合繊維とポリウレタンエラストマーの重量比が100:40の高分子弾性重合体含浸シート状物を得た。
得られたシート状物を、温度80℃のトルエン中にディップし次いでニップする工程を繰り返して、ポリエチレンを溶解除去し、複合繊維の極細繊維化処理を施した。その後温度110℃のスチーム中で、シート状物中に含まれているトルエンを除去した後に温度120℃の熱風乾燥機中で乾燥した。得られた極細繊維の平均繊度は0.17dtex(0.15de)であった。
得られた人工皮革用基材の表面に、400メッシュのサンドペーパーでバッフィング処理を施した後、得られた立毛基材を液流染色機を使用して分散染料で染色し、次いでハイドロサルファイトで還元洗浄処理した。
得られた立毛シートは表面にポリウレタンが露出しているため、染色異色性が発現して不鮮明なものであった。
【0035】
[比較例2]
実施例1において、120℃の加熱ロールを通してのプレス処理を80℃の加熱ロールを通してのプレス処理に代えて、厚さが1.20mm、見かけ密度が0.33g/cm3、で融着層が実質的に存在しない繊維質基材とする以外は実施例1と同様にした。
得られた立毛シートは表面にポリウレタンが露出しているため、染色異色性が発現して不鮮明なものであった。
【0036】
[比較例3]
実施例1において、120℃の加熱ロールを通してのプレス処理を、低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度(85℃)+70℃以上である160℃の加熱ロールを通してのプレス処理に代えたところ、ロール表面に低軟化点重合体成分(B)であるポリエチレンが付着し、また得られる繊維質基材表面の凹凸も激しくなって、その後の操作を満足に行うことはできなかった。
【0037】
[比較例4]
実施例1における、150℃の熱風オーブン中で予備加熱した後にプレス処理した見かけ密度が0.30g/cm3、厚さが1.3mmの絡合繊維不織布を用い、一方が120℃の加熱ロールであるプレスロールを通してのプレス処理を施すことなく、その表面に、濃度15重量%のポリビニルアルコール水溶液(糊剤)をナイフコーターにて30g/m2の割合で塗布した後に乾燥させた。
得られた糊剤塗布該絡合不織布に濃度15重量%のポリウレタンエラストマージメチルホルムアミド溶液を含浸し、次いで10重量%ジメチルホルムアミド水溶液に浸漬して凝固させた。引続いて温度40℃の温水中で十分洗浄して、複合繊維とポリウレタンエラストマーの重量比が100:40の高分子弾性重合体含浸シート状物を得た。
得られたシート状物を、実施例1と同様にしてポリエチレンを除去し、パッフィング処理を施した後に染色、還元洗浄処理を施して立毛シートを得た。
得られた立毛シートは、比較例1のものと比較するとその染色異色性の程度は改善されているが、実施例1のものと比較すると、染色異色性の程度は悪く不鮮明なものであった。
【0038】
[比較例5]
実施例1において、加熱ロールでのプレス処理におけるプレスロール間隔を広げる以外は実施例1と同様にして、厚さが1.20mm、見かけ密度が0.33g/cm3、融着層厚さが0.04mmの繊維質基材を得た。
得られた繊維質基材を実施例1と同様に処理して立毛シートを得たが、該表面にはポリウレタンが露出しているため、染色異色性の点で未だ不十分であった。
【0039】
[比較例6]
実施例1において、加熱ロールでのプレス処理におけるプレスロール間隔を狭める以外は実施例1と同様にして、厚さが1.00mm、見かけ密度が0.40g/cm3、融着層厚さが0.60mmの繊維質基材を得た。
得られた繊維質基材を実施例1と同様に処理して立毛シートを得たが、該表面の立毛が長すぎるため、品位に劣っていた。
【0040】
【発明の効果】
本発明のシート状物によれば、表面に立毛密度が高い立毛層を有する立毛シートを容易に得ることができ、しかも該立毛シート表面には繊維との染色性が異なる高分子弾性重合体の量が少なくできるので、染色しても染色異色性のない優れたもの(スエード調人工皮革等)が得られる。また、従来の糊剤処理法が有していた製造コストや糊剤除去等の問題を完全に解消することができる。
Claims (5)
- 溶剤溶解性および軟化点温度の異なる高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)とからなる極細繊維化可能な複合繊維から形成された繊維質基材と、該繊維質基材の空隙に含有せしめた高分子弾性重合体とから構成されるシート状物において、該シート状物の少なくとも一方の面には、前記複合繊維の低軟化点重合体成分(B)の融着による厚さ0.05〜0.50mmの融着層が存在し、且つ該融着層には前記高分子弾性重合体が実質的に含有されていないことを特徴とする立毛加工性に優れたシート状物。
- 融着層以外のシート状物部分の複合繊維重量に対する高分子弾性重合体の含有量が10〜120重量%である請求項1記載の立毛加工性に優れたシート状物。
- 高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度差が70℃以上である請求項1または2記載の立毛加工性に優れたシート状物。
- 溶剤溶解性および軟化点温度の異なる高軟化点重合体成分(A)と低軟化点重合体成分(B)とからなる極細繊維化可能な複合繊維から形成された繊維集合体の少なくとも一方の面を、該低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度以上、高軟化点重合体成分(A)の軟化点温度以下で且つ低軟化点重合体成分(B)の軟化点温度+70℃以下の温度に加熱した面に接触させ、該接触面の表面層の複合繊維を少なくとも一部融着させて表面に融着層を有する繊維質基材となし、次いで該繊維質基材の非融着層部に高分子弾性重合体を含浸処理することを特徴とする立毛加工性に優れたシート状物の製造方法。
- 請求項1記載のシート状物を、低軟化点重合体成分(B)は溶解するが高軟化点重合体成分(A)は実質的に溶解しない溶剤で処理して極細化可能な複合繊維を極細繊維となし、次いで該シート状物の融着層が存在していた面を起毛加工する立毛シートの製造方法。
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