明 細 書
血液凝固第 vm因子の機能代替抗体
技術分野
[0001] 本発明は、酵素反応を増強する補因子である血液凝固第 vm因子の作用を代替す る多重特異性抗体、および該抗体の作製方法、並びに、該抗体を有効成分として含 有する医薬組成物に関する。
背景技術
[0002] 抗体は血中での安定性が高ぐ抗原性も低いことから医薬品として注目されている 。その中には二種類の抗原を同時に認識できる二重特異性抗体がある。二重特異 性抗体は提唱されて久しい。しかしながらこれまでに、 NK細胞、マクロファージ、 T細 胞の retargetingを目的とするなど、二種類の抗原結合部位を単に繋ぐだけの抗体し か報告されていない (非特許文献 3参照)。例えば、臨床試験が行なわれている MDX -210は、 Fe y RIを発現している monocyte等を HER- 2/neuを発現している癌細胞に re targetingする二重特異性抗体であるに過ぎない。従って現在まで、二重特異性抗体 を、酵素反応を増強する補因子の代替手段として利用した例はな力つた。
[0003] 補因子は、酵素が機能を有するために必要とされる補助分子であり、非蛋白性ある いは蛋白性の成分で、酵素に結合し、その触媒反応のために必要とされる。補因子 としては、例えば、血液凝固第 vm因子 (F.vm)、活性ィ匕血液凝固第 vm因子 (F.VIII a)、血液凝固第 V因子 (F.V)、活性ィ匕血液凝固第 V因子 (F.Va)、組織因子 (TF)、ト ロンボモデュリン(TM)、プロテイン S (PS)、プロテイン Z(PZ)、へパリン、補体 C4b、補 体制御タンノ ク H因子 (Complement Regulatory Factor H)、 Membrane Cofactor Prot ein (MCP)、 Complement Receptor 1 (CR1)等が挙げられる。
[0004] これらのうち、 F.VIII/F.VIIIaは、十分な活性化血液凝固第 IX因子 (F.IXa)の活性発 現に必要な補因子である。 Scheiflinger Fらは、ある種の抗 F.IX/F.IXa抗体に、 chrom ogenic assayにお 、て F.IXaによる血液凝固第 X因子 (F.X)活性ィ匕を促進する作用が あることを見出している(特許文献 1参照)。しかしながら、 F.VIII欠乏血漿の凝固回復 能測定においては、この抗体単独による凝固回復能は示されておらず、外来的に F.I
Xaを添加した状態でのみ凝固回復能を示して 、る。
[0005] F.VIIIaは、 F.IXaと相互作用するだけでなく F.Xとも相互作用することが知られている
(非特許文献 1および 2参照)。この点で、 Scheiflinger Fらの抗体は、 F.VIII/F.VIIIaの 機能を十分に代替しているといえず、その活性も不十分であると推測される。
[0006] 特許文献 1 :国際公開第 01/19992号
非特許文献 l :Mertens Kら著、「Thromb. Haemost.」、 1999年、 Vol.82, p.209-217 非特許文献 2 : Lapan KAら著、「Thromb. Haemost.」、 1998年、 Vol.80, p.418-422 非特許文献 3 : Segal DMら著、「Journal of Immunological Methods] , 2001年、 Vol.24 8、 p.1-6
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、酵素反応を増強する補因子である血液凝固第 VIII因子の作用を代替す る多重特異性抗体の提供を課題とする。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは鋭意研究を行った結果、 F.IX/F.IXa及び F.Xの双方に特異的に結合 し、 F.VIIIaの補因子作用、すなわち F.IXaによる F.X活性ィ匕を促進する作用を代替す る種々の二重特異性抗体を見出すことに成功した。
[0009] さらに本発明者らは、これらの抗体の中から、 F.VIII欠乏ヒト血漿を用いた凝固時間 測定系にお 、て、抗体無添加時に比べて凝固時間を 50秒以上短縮させた抗体 (A44
/B26)について、その抗体の L鎖を A44の L鎖で共通化したところ、共通化前の抗体(
A44HL-B26HL)に比べて活性が減弱するものの、 A44Lにて共通化が可能であること を明らかにした。
[0010] また、 A44由来の L鎖のフレームワーク (Fr)に A44の L鎖および B26の L鎖由来の CD Rを組み合わせた L鎖 (ハイブリッド L鎖)を作製し、これらを用いた L鎖共通化により F. VIII活性の回復を試みたところ、 CDR1,2,3が BBA(G) (CDR1,2,3がそれぞれ、 B26の L 鎖由来の CDR、 B26の L鎖由来の CDR、 A44の L鎖由来の CDR)の組み合わせの場 合、 F.VIII活性は A44/B26の活性を大きく上回り、抗体無添加時に比べて凝固時間 を 70秒以上短縮させることができた。この抗体は、 F.VIII(0.1、 lU/mL)の作用を減弱
させず相加的に作用していた。この他にも CDR1,2,3が ABA(G)、 BAA(G)の場合に、 抗体無添加時に比べて凝固時間を 60秒以上短縮させることができた。
[0011] また A50、 A69と!、う A44に相同性の高!、抗体の H鎖を B26H及び上記ハイブリッド L 鎖との組み合わせで活性を評価したところ、 A44Hを用いた場合よりもさらに高 ヽ活性 を有する抗体を得ることができた。さらに A44L、 B26L、 A50L、 A69Lの CDRを組み合 わせたハイブリッド L鎖を作製し、これらを用いて活性を確認したところ、上記の A44/ B26由来ハイブリッド L鎖 (BBA(G))を超えな ヽものの高 ヽ活性を有する抗体を得るこ とができた。
[0012] また A69Hと B26Hに種々のハイブリッド L鎖 (BBA、 aAA、 AAa、 ABa、 BBa、 aBA、 BAA 、 BAa、 ABA)を組み合わせて活性を評価したところ、高い活性を有する抗体が取得 でき、特に BBAまたは BBaの組み合わせの場合、抗体無添カ卩時に比べて凝固時間を 80秒以上短縮させることができた。
[0013] さらに、これら抗体のヒト化について検討したところ、(1)ヒト化 A69H、(2)ヒト化した B26H、 (3)ヒト化したノヽイブリツド L鎖の組合せにより元の抗体と同等の活性を達成す ることがでさた。
[0014] 上述のように、本発明は、血液凝固第 VIII因子の作用を代替する高活性の多重特 異性抗体の作製に成功し、本発明を完成させた。
[0015] また本発明は、該抗体の L鎖の共通化により低下した活性を回復もしくは向上させ る方法を提供する。
[0016] 即ち本発明は、酵素反応を増強する補因子である血液凝固第 VIII因子の機能を代 替する多重特異性抗体、および該抗体の作製方法、並びに、該抗体の L鎖の共通 化により低下した活性を回復もしくは向上させる方法に関し、より具体的には、 〔1〕 血液凝固第 IX因子および Zまたは活性化血液凝固第 IX因子を認識する第一 のドメイン、および血液凝固第 X因子を認識する第二のドメインを含む、血液凝固第 V III因子の機能を代替し得る多重特異性抗体であって、第一のドメインは血液凝固第 I X因子または活性ィ匕血液凝固第 IX因子に対する抗体の H鎖の全部または一部を含 む第一のポリペプチドを含み、第二のドメインは血液凝固第 X因子に対する抗体の H 鎖の全部または一部を含む第二のポリペプチドを含み、第一のドメインおよび第二の
ドメインは更に抗体の L鎖の全部または一部であって共通の配列を有する第三のポリ ペプチドを含む多重特異性抗体、
〔2〕 第三のポリペプチドが血液凝固第 IX因子、活'性ィ匕血液凝固第 IX因子または血 液凝固第 X因子に対する抗体の L鎖の全部または一部の配列を含む〔1〕に記載の多 重特異性抗体、
〔3〕 第三のポリペプチドが 2以上の抗体の各 L鎖の CDR1, 2, 3からそれぞれ独立に 選択される CDR1, 2, 3からなる抗原結合部位またはこれと機能的に同等な抗原結合 部位を含む〔1〕に記載の多重特異性抗体、
〔4〕 第一のポリペプチドが下記 (al)または(a2)または (a3)の CDRのアミノ酸配列か らなる抗原結合部位またはこれと機能的に同等の抗原結合部位を含み、第二のポリ ペプチドが下記 (b)のアミノ酸配列力もなる抗原結合部位またはこれと機能的に同等 の抗原結合部位を含む〔1〕に記載の多重特異性抗体:
(al) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 3、 5、 7 (A44の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列 (a2) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 21、 5、 22 (A69の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列 (a3) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 16、 17、 18 (A50の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配 列
(b) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 26、 28、 30 (B26の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列
〔5〕 血液凝固第 IX因子および Zまたは活性化血液凝固第 IX因子、並びに血液凝 固第 X因子を認識する血液凝固第 VIII因子の機能を代替し得る多重特異性抗体で あって、血液凝固第 VIII因子の代替機能力 抗体溶液 50 μ F.VIII欠乏血漿 (Biom erieux) 50 μ L及び ΑΡΤΤ試薬(Dade Behring) 50 μ Lの混合液を 37°Cで 3分間加温し た後、 20 mMの CaCl 50 Lを同混合液に加え、凝固するまでの時間を測定する活
2
性ィ匕部分トロンボプラスチン時間 (APTT)試験において、抗体無添加時に比べた凝 固時間の短縮が 50秒以上である多重特異性抗体、
〔6〕 抗血液凝固第 IXZlXa因子抗体の H鎖の抗原結合部位またはこれと機能的に 同等な抗原結合部位と、抗血液凝固第 X因子抗体の H鎖の抗原結合部位またはこ れと機能的に同等な抗原結合部位とを含む〔5〕に記載の多重特異性抗体、
〔7〕 抗血液凝固第 IX/IXa因子抗体における下記(al)または(a2)または (a3)の CDR のアミノ酸配列力 なる抗原結合部位またはこれと機能的に同等の抗原結合部位と、 抗血液凝固第 X因子抗体における下記 (b)に記載の CDRのアミノ酸配列力 なる抗 原結合部位またはこれと機能的に同等の抗原結合部位とを含む〔6〕に記載の多重 特異性抗体:
(al) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 3、 5、 7 (A44の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列 (a2) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 21、 5、 22 (A69の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列 (a3) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 16、 17、 18 (A50の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配 列
(b) H鎖 CDR1、 2、 3が配列番号: 26、 28、 30 (B26の H鎖 CDR)に記載のアミノ酸配列
〔8〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む組 成物、
〔9〕 出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の予防および/または治療 に用いられる医薬組成物である、〔8〕に記載の組成物、
〔10〕 出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患力 血液凝固第 VIII因子 および/または活性ィ匕血液凝固第 VIII因子の活性の低下ないし欠損によって発症お よび/または進展する疾患である、〔9〕に記載の組成物、
〔11〕 血液凝固第 VIII因子および/または活性ィ匕血液凝固第 VIII因子の活性の低下 ないし欠損によって発症および/または進展する疾患力 血友病 Αである、〔10〕に記 載の組成物、
〔12〕 血液凝固第 VIII因子および/または活性ィ匕血液凝固第 VIII因子の活性の低下 ないし欠損によって発症および/または進展する疾患力 血液凝固第 VIII因子および /または活性ィ匕血液凝固第 VIII因子に対するインヒビターが出現している疾患である 、〔10〕に記載の組成物、
〔13〕 血液凝固第 VIII因子および/または活性ィ匕血液凝固第 VIII因子の活性の低下 ないし欠損によって発症および/または進展する疾患力 後天性血友病である、〔10
〕に記載の組成物、
〔14〕 血液凝固第 vm因子および/または活性ィ匕血液凝固第 vm因子の活性の低下 によって発症および/または進展する疾患力 フォンビルブランド病である、〔10〕に 記載の組成物、
〔15〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体、または〔8〕〜〔 14〕のいずれかに記載の 組成物を投与する工程を含む、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患 を予防および/または治療する方法、
〔16〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体の、〔8〕〜〔 14〕のいずれかに記載した組 成物の製造のための使用、
〔17〕 少なくとも〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体、または〔8〕〜〔 14〕のいずれか に記載の組成物を含む、 [15]に記載の予防および/または治療する方法に用いるた めのキット、
〔18〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体、または〔8〕〜〔14〕のいずれかに記載の 組成物を投与する工程を含む、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患 を、血液凝固第 VIII因子と併用して予防および/または治療する方法、
〔19〕 少なくとも〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗体、または〔8〕〜〔 14〕のいずれか に記載の組成物を含み、かつ血液凝固第 VIII因子を含む〔15〕に記載の予防および /または治療する方法に用いるためのキット、
〔20〕 第一の H鎖、第二の H鎖および共通の L鎖を有する二重特異性抗体の作製方 法であって、以下の工程を含む方法:
(1)第一の抗原に対する第一の抗体と、第二の抗原に対する第二の抗体とを用意す る工程;
(2)第一の抗体および第二の抗体の可変領域を有する第一の抗原および第二の抗 原に対する二重特異性抗体を作製する工程;
(3)前記 (2)で作製した二重特異性抗体の抗原への結合活性または抗体の生物活 性を測定する工程;
(4)第一の抗体の H鎖および第二の抗体の H鎖を、第一の抗体または第二の抗体の L鎖で共通化して共通 L鎖抗体を作製する工程;
(5)前記 (4)で作製した共通 L鎖抗体の抗原への結合活性または抗体の生物活性を
測定する工程;
(6)前記 (4)で作製した共通 L鎖の 1または 2個または 3個の CDRを、第一の抗体、第 二の抗体または他の抗体であって第一の抗体または第二の抗体の CDRのアミノ酸配 列に対して高い相同性を有する抗体の CDRにより置換して共通 L鎖抗体を作製する 工程;
(7)前記 (6)で作製した共通 L鎖抗体と、前記 (2)で作製した元の二重特異性抗体ま たは前記 (4)で作製した共通 L鎖抗体とを抗原への結合活性または抗体の生物活性 につ!/ヽて比較し、所望の活性を有する共通 L鎖抗体を選択する工程;および
(8)前記(7)で選択した共通 L鎖抗体にっ 、て、必要に応じて前記(6)および(7)の 工程を反復して前記 (2)で作製した元の二重特異性抗体と同等以上の活性を有す る共通 L鎖抗体を得る工程、
〔21〕 前記(6)および(7)の工程が 2回以上反復される〔20〕に記載の方法、
[22] 〔20〕または〔21〕の方法により得られる共通の L鎖を有する二重特異性抗体、 〔23〕 前記 (6)の他の抗体が第一の抗原もしくは第二の抗原に対する抗体である〔2 0〕に記載の方法、
〔24〕 前記(6)および(7)の工程が 2回以上反復される〔23〕に記載の方法、
〔25〕 〔23〕または〔24〕の方法により得られる共通の L鎖を有する二重特異性抗体、
〔26〕 前記(6)の抗体が第一の抗体または第二の抗体である〔20〕に記載の方法、
[27] 前記(6)および(7)の工程が 2回以上反復される〔26〕に記載の方法、
〔28〕 〔26〕または〔27〕の方法により得られる共通の L鎖を有する二重特異性抗体、 を提供するものである。
さらに本発明は、以下の〔29〕および〔30〕を提供するものである。
〔29〕 第一のポリペプチドが H鎖可変領域を含み、第二のポリペプチドが H鎖可変 領域を含み、第三のポリペプチドが L鎖可変領域を含み、各ポリペプチドの可変領域 の組合わせが以下の通りである請求項 1に記載の多重特異性抗体:
(al)第一のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 130 (hA69a)に記載のアミノ酸 配列
(bl)第二のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 132 (hB26-F123e4)に記載の
アミノ酸配列
(cl)第三のポリペプチドの L鎖可変領域が配列番号: 134 (hAL-F123j4)に記載のァ ミノ酸配列;
(a2)第一のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 136 (hA69-PFL)に記載のアミ ノ酸配列
(b2)第二のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 138 (hB26-PF)に記載のアミ ノ酸配列
(c2)第三のポリペプチドの L鎖可変領域が配列番号: 140 (hAL-s8)に記載のァミノ 酸配列;
(a3)第一のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 142 (hA69-KQ)に記載のアミ ノ酸配列
(b3)第二のポリペプチドの H鎖可変領域が配列番号: 138 (hB26-PF)に記載のアミ ノ酸配列
(c3)第三のポリペプチドの L鎖可変領域が配列番号: 144 (hAL-AQ)に記載のァミノ 酸配列。
〔30〕第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドがヒ HgG4定常領域を含み、第三 のポリペプチドがヒト κ定常領域を含む〔29〕に記載の多重特異性抗体。
図面の簡単な説明
[図 l]pcDNA4- g4Hの挿入領域を表した図である。
[図 2]pcDNA4- g4Lおよび pIND-g4Lの挿入領域を表した図である。
[図 3]pIND-g4Hの挿入領域を表した図である。
[図 4]抗 F.IXa抗体 XB12と抗 F.X抗体 SB04、 SB21、 SB42、 SB38、 SB30、 SB07、 SB05、 SB06、 SB34により作製した抗 F.IXa/抗 F.X二重特異性抗体の、 F.VIIIa様活性を測 定した結果を示す図である。抗体溶液の濃度は 10 g/mL (最終濃度 1 μ g/mL)であ る。結果、 9種の二重特異性抗体で F.VIIIa様活性の上昇を示し、 XB12/SB04, XB12 /SB21、 XB12/SB42, XB12/SB38、 XB12/SB30、 XB12/SB07, XB12/SB05、 XB12/S B06、 XB12/SB34の順に活性が強かった。
[図 5]抗 F.IXa抗体 XT04と抗 F.X抗体 SB04、 SB21、 SB42、 SB38、 SB30、 SB07、 SB05、
SB06、 SB34により作製した抗 F.IXa/抗 F.X二重特異性抗体または XT04抗体の、 F.VI Ila様活性を測定した結果を示す図である。抗体溶液の濃度は 10 g/mL (最終濃度 1 μ g/mL)である。結果、 XT04/SB04, XT04/SB21, XT04/SB42, XT04/SB38, XT04 /SB30、 XT04/SB07, XT04/SB05, XT04/SB06, XT04/SB34は F.VIIIa様活性の上昇 を示した。
[図 6]図 4の中で最も活性の高かった XB12/SB04について、様々な濃度での F.VIIIa 様活性を測定した結果を示す図である。結果、 XB12/SB04は濃度依存的に F.VIIIa 様活性の上昇を示した。
[図 7]XB12/SB04、 XB12/SB21, XB12/SB42, XB12/SB38、 XB12/SB30、 XB12/SB07 、 XB12/SB05, XB12/SB06, XB12/SB34存在下での、凝固時間を測定した結果を示 す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は XB12/SB06に関しては 1. 7 μ g/mL,それ以外は 10 μ g/mLである。結果、 XB12/SB04、 XB12/SB21, XB12/SB 42、 XB12/SB38、 XB12/SB30、 XB12/SB07, XB12/SB05、 XB12/SB06、 XB12/SB34 は、抗体非存在下と比較して、凝固時間の短縮効果を示した。
[図 8]XT04/SB04、 XT04/SB21, XT04/SB42, XT04/SB38, XT04/SB30, XT04/SB07 、 XT04/SB05, XT04/SB06, XT04/SB34存在下での、凝固時間を測定した結果を示 す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は XT04/SB06に関しては 5 μ g/mL,それ以外は 10 μ g/mLである。結果、 XT04/SB04、 XT04/SB21, XT04/SB4 2、 XT04/SB38, XT04/SB30, XT04/SB07, XT04/SB05, XT04/SB06は、抗体非存 在下と比較して、凝固時間の短縮効果を示した。 XT04/SB34は凝固時間の短縮は 認められなかった。
[図 9]図 7、図 8の中で最も凝固時間の短縮効果の高かった XB12/SB04について、様 々な濃度での凝固時間を測定した結果を示す図である。結果、 XB12/SB04は濃度 依存的に凝固時間の短縮効果を示した。図中の抗体濃度は抗体溶液と F.VIII欠乏 血漿を混合後の数値を表す。
[図 10]SB04または SB06の GST-APウェスタンブロッテイングの結果を示す写真である 。転写された GST-APに対し、 1は SB04、 2は SB06、 3は抗体を含まないサンプルと反 応させたものである。結果、 SB04のみ GST-APとの結合反応が検出された。
[図 ll]pELBGlacIベクターを表した図である。 ColElori: ColEl系プラスミド複製開始 領域、 flori: flファージ複製開始領域、 lad:ラタトースリプレッサータンパク質コード 領域、 P :ラタトースプロモーター、 pelBss:大腸菌 PelBタンパクシグナル配列、 scFv:
lac
一本鎖抗体分子コード領域、 gene III: flファージ Genelllタンパク質コード領域、 Amp r:アンピシリン耐性遺伝子。 Sfi I:制限酵素 Sfi I切断部位。
[図 12]抗 F.IXa抗体 (A19,A25,A31,A38,A39,A40,A41,A44,A50,A69,XB12)と抗 F.X抗 ίΦ(Β2,Β5,Β9,Β10,Β11,Β12,Β13,Β14,Β15,Β16,Β18,Β19,Β20,Β21,Β23,Β25,Β26,Β27, B31,B34-1,B34-2,B35,B36,B38,B42,SB04,SB15,SB27)とを組み合わせて発現させた 二重特異性抗体の培養上清を用いて F.VIIIa様活性を測定した結果を示す図である 。 +は F.VIIIa様活性が 0.1以上である場合を表す。
[図 13]抗 F.IXa抗体 (A19,A25,A31,A38,A39,A40,A41,A44,A50,A69,XB12)と抗 F.X抗 体 (B2,B5,B9,B10,B11,B12,B13,B14,B15 ,B16,B18,B19,B20 ,B21,B23,B25,B26 ,B2 7,B31,B34-1,B34-2,B35,B36,B38,B42,SB04,SB15,SB27)とを組み合わせて発現させ た二重特異性抗体の精製物を用いて血漿凝固アツセィを行った結果を示す図であ る。抗体無添カ卩時と比較し、抗体添カ卩時の凝固時間の短縮が 10秒〜 20秒を +、 20 秒〜 40秒を + +、 40秒〜 50秒を + + +、そして 50秒以上を + + + +で表す。
[図 14]図 13の中で凝固時間の短縮効果の高力つた A44/B26について、様々な濃度 での凝固時間を測定した結果を示す図である。抗体無添加時の凝固時間は 113秒で ある。結果、 A44/B26は濃度依存的に凝固時間の短縮効果を示した。図中の抗体濃 度は抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の数値を表す。
[図 15]図 13の中で凝固時間の短縮効果の高力つた A69/B26について、様々な濃度 での凝固時間を測定した結果を示す図である。抗体無添加時の凝固時間は 109.6秒 である。結果、 A69/B26は濃度依存的に凝固時間の短縮効果を示した。図中の抗体 濃度は抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の数値を表す。
[図 16]A44/B26または XB12/SB04と F.VIIIの共存下での、凝固時間を測定した結果 を示す図である。結果、 A44/B26または XB12/SB04と F.VIIIの混合溶液は、 F.VIII単 独と比較して、凝固時間の短縮効果を示した。
[図 17]A44/B26または XB12/SB04存在下での、インヒビター血漿における凝固時間
を測定した結果を示す図である。結果、 A44/B26または XB12/SB04は抗体非存在下 と比較して、凝固時間の短縮効果を示した。
[図 18]XB12/SB04とヒトイ匕 XB12/ヒト化 SB04について、様々な濃度での凝固時間を測 定した結果を示す図である。抗体無添加時の凝固時間は 111.3秒である。測定の結 果、ヒト化 XB12/ヒトイ匕 SB04は XB12/SB04と同程度の凝固時間の短縮効果を示した。 図中の抗体濃度は抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の数値を表す。
[図 19]L鎖発現用ベクター pCAGG- kappaの構造を示す図である。
[図 20]A44/B26/AAAを組み合わせた二重特異性抗体の凝固時間を測定した結果 を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は 30 g/mLである。
[図 21]A44/B26に BAA(G), ABA(G), BBA(G)を組み合わせた二重特異性抗体の凝 固時間を測定した結果を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度 は 30 μ g/mLである。
[図 22]B26/AAAに A50,A69を組み合わせた二重特異性抗体の凝固時間を測定した 結果を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は 30 g/mLである
[図 23]A69/B26/AAAを組み合わせた二重特異性抗体の凝固時間を測定した結果 を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は 30 g/mLである。
[図 24]A69/B26に BBA, aAA, AAa, ABa, BBa, aBA, BAA, BAa, ABAを組み合わせ た二重特異性抗体の凝固時間を測定した結果を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠 乏血漿を混合後の濃度は 30 g/mLである。
[図 25]A69/B26に BBA(G), AAa(G), BAa(G), ABa(G), BBa(G)を組み合わせた二重 特異性抗体の凝固時間を測定した結果を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿 を混合後の濃度は 30 g/mLである。
[図 26]A69/B26に aAA(G), aBA(G)を組み合わせた二重特異性抗体の凝固時間を測 定した結果を示す図である。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は 30 g/m Lである。
圆 27]キメラ二重特異性抗体とヒト化二重特異性抗体の凝固時間を測定した結果を 示している。各抗体の定常領域は Knobs-into-holes技術を使用している。抗体溶液と
F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度は 30 μ g/mLである。
[図 28]2種類のヒト化二重特異性抗体の凝固時間を測定した結果を示している。各抗 体は野生型の定常領域を使用している。抗体溶液と F.VIII欠乏血漿を混合後の濃度 は 30 μ g/mLである。
[図 29]A69/B26/BBAに XB12、 SB04、 XB12と SB04、 XB12/SB04を混合したときの血 漿凝固時間の結果を示している。混合後の各抗体濃度は 20 g/mLである。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 本明細書中に記載される多重特異性抗体とは、少なくとも 2種類の異なる抗原に対 して特異的に結合することができる抗体である。好まし 、多重特異性抗体として 2つ の抗原に対して特異的に結合することができる二重特異性抗体 (bispedfic antibody; BsAb) (二種特異性抗体と呼ばれる場合もある)を挙げることができる。
[0019] 本発明において、「異なる抗原」とは必ずしも抗原自体が異なる必要はなぐ抗原決 定基が異なる場合等も本発明の「異なる抗原」に含まれる。従って、例えば、単一分 子内の異なる抗原決定基も本発明の異なる抗原に含まれ、このような単一分子内の 異なる抗原決定基を各々認識する 2つの抗体は、本発明にお ヽて異なる抗原を認識 する抗体として扱われる。また、本発明において「共通軽鎖」とは、異なる 2種以上の 重鎖と会合し、それぞれの抗原に対して結合能を示し得る軽鎖である。ここで、「異な る重鎖」とは、好ましくは異なる抗原に対する抗体の重鎖を指すが、それに限定され ず、アミノ酸配列が互いに異なって 、る重鎖を意味する。
[0020] 本発明における多重特異性抗体 (好ましくは、二重特異性抗体)は、 2種以上の異 なる抗原に対して特異性を有する抗体もしくは抗体断片からなる分子である。本発明 の抗体は特に制限されな 、が、モノクローナルであることが好まし!/、。
[0021] また、本発明の多重特異性抗体は、共通軽鎖 (L鎖)を有することを特徴とする。
[0022] 本発明における多重特異性抗体は、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換 え型抗体であることが好ましい。(例えば、 Borrebaeck CAK and Larrick JW, THERA PEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MAC MILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。組換え型抗体は、それをコードする DNA をハイプリドーマ、または抗体を産生する感作リンパ球等の抗体産生細胞力 クロー
ユングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得 ることがでさる。
[0023] さらに、本発明における抗体は、その抗体断片や抗体修飾物であってよ!、。抗体断 片としては、ダイァボディ (diabody;Db)、線状抗体、一本鎖抗体 (以下、 scFvとも記載 する)分子などが含まれる。ここで、 「Fv」断片は最小の抗体断片であり、完全な抗原 認識部位と結合部位を含む。「FV」断片は 1つの重 (H)鎖可変領域 (VH)および軽 (L )鎖可変領域 (VL)が非共有結合により強く連結されたダイマー (VH-VLダイマー)で ある。各可変領域の 3つの相補鎖決定領域(complementarity determining region; CD R)が相互作用し、 VH-VLダイマーの表面に抗原結合部位を形成する。 6つの CDRが 抗体に抗原結合部位を付与している。し力しながら、 1つの可変領域 (または、抗原に 特異的な 3つの CDRのみを含む Fvの半分)であっても、全結合部位よりも親和性は低 いが、抗原を認識し、結合する能力を有する。
[0024] また、 Fab断片(F(ab)とも呼ばれる)はさらに、 L鎖の定常領域および H鎖の定常領 域 (CH1)を含む。 Fab'断片は、抗体のヒンジ領域からの 1またはそれ以上のシスティ ンを含む H鎖 CH1領域のカルボキシ末端由来の数残基を付加的に有する点で Fab断 片と異なっている。 Fab'-SHとは、定常領域の 1またはそれ以上のシスティン残基が遊 離のチオール基を有する Fab'を示すものである。 F(ab')断片は、 F(ab') ペプシン消
2
化物のヒンジ部のシスティンにおけるジスルフイド結合の切断により製造される。化学 的に結合されたその他の抗体断片も当業者には知られている。
[0025] ダイアポディは、遺伝子融合により構築された二価 (bivalent)の抗体断片を指す (Hoi liger P et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 6444-6448 (1993)、 EP404,097号、 W093/ 11161号等)。ダイァボディは、 2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーであり、ポ リペプチド鎖は各々、同じ鎖中で L鎖可変領域 (VL)及び H鎖可変領域 (VH)が、互い に結合できない位に短い、例えば、 5残基程度のリンカ一により結合されている。同一 ポリペプチド鎖上にコードされる VLと VHとは、その間のリンカ一が短いため単鎖可変 領域フラグメントを形成することが出来ず二量体を形成するため、ダイァボディは 2つ の抗原結合部位を有することとなる。
[0026] 一本鎖抗体または scFv抗体断片には、抗体の VHおよび VL領域が含まれ、これら
の領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、 Fvポリペプチドはさらに VH および VL領域の間にポリペプチドリンカ一を含んでおり、これにより scFvは、抗原結 合のために必要な構造を形成することができる(scFvの総説については、 Pluckthm The Pharmacology of Monoclonal Antibodies』Vol. l丄《3 (Rosenburg ana Moore ed (Spr inger Verlag, New York) pp.269- 315, 1994)を参照)。本発明におけるリンカ一は、そ の両端に連結された抗体可変領域の発現を阻害するものでなければ特に限定され ない。
[0027] IgGタイプ二重特異性抗体は IgG抗体を産生するハイプリドーマ二種を融合すること によって生じる hybrid hybridoma(quadroma)によって分泌させることが出来る(Milstein C et al. Nature 1983, 305: 537-540)。また目的の二種の IgGを構成する L鎖及び H 鎖の遺伝子、合計 4種の遺伝子を細胞に導入することによって共発現させることによ つて分泌させることが出来る。
[0028] この際 H鎖の CH3領域に適当なアミノ酸置換を施すことによって H鎖についてへテ 口な組合せの IgGを優先的に分泌させることも出来る(Ridgway JB et al. Protein Engin eering 1996, 9: 617—621、 Merchant AM et al. Nature Biotechnology 1998, 16: 677- 681)。
[0029] また、 L鎖に関しては、 H鎖可変領域に比べて L鎖可変領域の多様性が低 、ことか ら、両 H鎖に結合能を与え得る共通の L鎖が得られることが期待され、本発明の抗体 は、共通の L鎖を有することを特徴とするものである。この共通 L鎖と両 H鎖遺伝子を 細胞に導入することによって IgGを発現させることで効率の良 、二重特異性 IgGの発 現が可能となる。
[0030] また、 Fab'を化学的に架橋することによつても二重特異性抗体を作製し得る。例え ば一方の抗体から調製した Fab 'を 0- PDM(ortho- phenylenedi- maleimide)にてマレイ ミド化し、これともう一方の抗体力 調製した Fa を反応させることにより、異なる抗体 由来 Fa 同士を架橋させ二重特異性 F(a ) を作製することが出来る(Keler T et al
2
. Cancer Research 1997, 57: 4008-4014)。また Fa -チォ-トロ安息香酸 (TNB)誘導 体と Fa -チオール (SH)等の抗体断片をィ匕学的に結合する方法も知られて 、る (Bre nnan M et al. Science 1985, 229: 8ト 83)。
[0031] 化学架橋の代わりに Fos, Junなどに由来するロイシンジッパーを用いることも出来る 。 Fos, Junはホモダイマーも形成する力 ヘテロダイマーを優先的に形成することを利 用する。 Fosロイシンジッパーを付カ卩した Fa と Junのそれを付カ卩したもう一方の Fa を発現調製する。温和な条件で還元した単量体 Fab ' -Fos, Fab ' -Junを混合し反応さ せることによって二重特異性 F(a ) が形成できる(Kostelny SA et al. J of Immunolo
2
gy, 1992, 148: 1547-53)。この方法は Fa には限定されず、 scFv, Fvなどにおいても 応用可能である。
[0032] ダイアポディにおいても二重特異性抗体を作製し得る。二重特異性ダイァボディは 二つの cross- over scFv断片のへテロダイマーである。つまり二種の抗体 Α,Β由来の V Ηと VLを 5残基前後の比較的短 ヽリンカ一で結ぶことによって作製された VH (A)-VL (B), VH (B)-VL (A)を用いてヘテロダイマーを構成することによって出来る(Holliger P et al. Proc of the National Academy of Sciences of the USA 1993, 90: 6444-6448)
[0033] この際、二種の scFvを 15残基程度の柔軟な比較的長いリンカ一で結ぶ (一本鎖ダイ ァボディ: Kipriyanov SM et al. J of Molecular Biology. 1999, 293: 41—56)、適当なァ ミノ酸置換 (knobs- into- holes: Zhu Z et al. Protein Science. 1997, 6: 781- 788)を行う こと〖こよって目的の構成を促進させることも出来る。
[0034] 二種の scFvを 15残基程度の柔軟な比較的長いリンカ一で結ぶことによって作製で きる sc(Fv) も二重特異性抗体となり得る(Mallender WD et al. J of Biological Chemis
2
try, 1994, 269: 199-206)。
[0035] 抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール (PEG)等の各種分子と結合し た抗体を挙げることができる。本発明の抗体修飾物においては、結合される物質は 限定されない。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施 すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野にぉ 、て既に確立されて!ヽ る。
[0036] 本発明の抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体など、その由来は限定されない。
またキメラ抗体やヒト化抗体などの遺伝子改変抗体でもよい。
[0037] ヒト抗体の取得方法は既に知られており、例えば、ヒト抗体遺伝子の全てのレパート
リーを有するトランスジエニック動物を目的の抗原で免疫することで目的のヒト抗体を 取得することができる(国際特許出願公開番号 WO 93/12227, WO 92/03918, WO 9 4/02602, WO 94/25585, WO 96/34096, WO 96/33735参照)。
[0038] 遺伝子改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。具体的には、たと えばキメラ抗体は、免疫動物の抗体の H鎖、および L鎖の可変領域と、ヒト抗体の H鎖 および L鎖の定常領域力 なる抗体である。免疫動物由来の抗体の可変領域をコー ドする DNAを、ヒト抗体の定常領域をコードする DNAと連結し、これを発現ベクターに 組み込んで宿主に導入し産生させることによって、キメラ抗体を得ることができる。
[0039] ヒト化抗体は、再構成 (reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は 、免疫動物由来の抗体の CDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによつ て構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られて 、る。
[0040] 具体的には、マウス抗体の CDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;
FR)を連結するように設計した DNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有す るように作製した数個のオリゴヌクレオチド力も PCR法により合成する。得られた DNA を、ヒト抗体定常領域をコードする DNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで 、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号 EP 2394 00、国際特許出願公開番号 WO 96/02576参照)。 CDRを介して連結されるヒト抗体 の FRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必 要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するよう に抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K e t al, Cancer Research 1993, 53: 851-856)。また、様々なヒト抗体由来のフレームヮ ーク領域に置換してもよい(国際特許出願公開番号 WO 99/51743参照)。
[0041] 本発明の多重特異性抗体は、血液凝固線溶関連因子の血液凝固第 IX因子 (F.IX) および Zまたは活性ィ匕血液凝固第 IX因子 (F.IXa)、および、血液凝固第 X因子 (F.X) を認識し、補因子の F.VIII/F.VIIIaの機能を代替する活性を有する抗体であって、共 通の L鎖を有することを特徴とする。また、本発明の抗体は、通常、抗 F.IXa抗体にお ける可変領域と、抗 F.X抗体における可変領域とを含む構造を有する。
[0042] 本発明における多重特異性抗体は、血液凝固第 IX因子および Zまたは活性化血
液凝固第 IX因子を認識する第一のドメイン、および血液凝固第 X因子を認識する第 二のドメインを含み、第一のドメインおよび第二のドメインは更に抗体の共通の L鎖の 全部または一部の配列を有する第三のポリペプチドを含む抗体である。
[0043] 即ち、本発明の抗体の好ましい態様においては、血液凝固第 IX因子および Zまた は活性ィ匕血液凝固第 IX因子を認識する第一のドメイン、および血液凝固第 X因子を 認識する第二のドメインを含む、血液凝固第 vm因子の機能を代替し得る多重特異 性抗体であって、第一のドメインは血液凝固第 IX因子または活性ィ匕血液凝固第 IX因 子に対する抗体の H鎖の全部または一部を含む第一のポリペプチドを含み、第二の ドメインは血液凝固第 X因子に対する抗体の H鎖の全部または一部を含む第二のポ リペプチドを含み、第一のドメインおよび第二のドメインは更に抗体の L鎖の全部また は一部であって共通の配列を有する第三のポリペプチドを含む多重特異性抗体を提 供する。
[0044] 活性化血液凝固第 VIII因子(F.VIIIa)は、 F.IXaと F.Xの両方に結合することによって 、 F.IXaによる F.Xの活性ィ匕を増強する。上記の酵素 F.IXa、基質 F.Xの両方を認識す る二重特異性抗体の中には、 F.Xの活性ィ匕を増強する作用を有するものがある。この ような抗体の中には、補因子 F.VIII/F.VIIIaの作用機能を代替する作用を有するもの が存在すると考えられる。
[0045] なお、本発明における F.VIII/F.VIIIaは、トロンビン等の蛋白分解酵素により限定分 解を受けるが、 F.VIII/F.VIIIaの補因子活性を有している限り、その形態は問わない。 また、変異 F.VIII/F.VIIIaや、遺伝子組換技術により人為的に改変した F.VIII/F.Vina に関しても、 F.VIII/F.VIIIaの補因子活性を有している限り、本発明の F.VIII/F.VIIIa に含まれる。
[0046] 本発明における「第三のポリペプチド」は、好ましくは、血液凝固第 IX因子 (F.IX)、 活性ィ匕血液凝固第 IX因子 (F.IXa)または血液凝固第 X因子 (F.X)に対する抗体の L 鎖の全部または一部の配列を含むものである。
[0047] さらに、本発明における「第三のポリペプチド」は、 2以上の抗体の各 L鎖の CDR1、 2 、 3からそれぞれ独立に選択される CDR1、 2、 3からなる抗原結合部位、またはこれと 機能的に同等な抗原結合部位を含むものであることが好ましい。
[0048] 本発明の抗体の第一のポリペプチドの H鎖 CDR1、 2、 3は、好ましい態様として具体 的には、後述の実施例に記載の A44または A69の H鎖 CDR1、 2、 3の各配列(配列番 号: 3、 5、 7または 21、 5、 22)のアミノ酸配列力もなる抗原結合部位、またはこれらと 機能的に同等の抗原結合部位を挙げることができる。
[0049] また、第二のポリペプチドの H鎖 CDR1、 2、 3は、好ましい態様として具体的には、後 述の実施例に記載の B26の H鎖 CDR1、 2、 3の各配列(配列番号: 26、 28、 30)に記 載のアミノ酸配列力 なる抗原結合部位、またはこれらと機能的に同等の抗原結合 部位を挙げることができる。
[0050] 本発明に記載の A44、 A50、 A69、 B26の H鎖可変領域のアミノ酸配列はそれぞれ、 以下の配列番号で示される。
A44:配列番号: 1
A50 :配列番号: 15
A69 :配列番号: 20
B26 :配列番号: 24
[0051] また、 A44、 A50、 A69、 B26の H鎖 CDRの塩基配列(括弧内は該塩基配列によって コードされるアミノ酸配列)は、 CDR1、 2、 3の順にそれぞれ、以下のような配列番号で 示される。
A44:配列番号: 2 (3)、 4 (5)、 6 (7)
A50 :配列番号: 109 (16)、 110 (17)、 111 (18)
A69 :配列番号: 112 (21)、 113 (5)、 114 (22)
B26 :配列番号: 25 (26)、 27 (28)、 29 (30)
[0052] また、本発明記載の A44、 A50、 A69、 B26の L鎖可変領域のアミノ酸配列はそれぞ れ、以下の配列番号で示される。
A44:配列番号: 8
A50 :配列番号: 115
A69 :配列番号: 116
B26 :配列番号: 31
[0053] また、 A44、 A50、 A69、 B26の L鎖 CDRの塩基配列(括弧内は該塩基配列によってコ
ードされるアミノ酸配列)は、 CDR1、 2、 3の順にそれぞれ、以下のような配列番号で 示される。
44:配列番号:9(10)、 11(12)、 13(14)
A50:配列番号: 117(10)、 118(12)、 119(19)
A69:配列番号: 120(23)、 121(12)、 122(14)
B26:配列番号: 32 (33)、 34(35)、 36(37)
[0054] なお、 CDR1を表すアミノ酸配列は以下のとおりである。
A44:配列番号: 3、 10
A50:配列番号: 16、 10
A69:配列番号: 21、 23
B26:配列番号: 26、 33
[0055] CDR2を表すアミノ酸配列は以下のとおりである。
A44:配列番号: 5、 12
A50:配列番号: 17、 12
A69:配列番号: 5、 12
B26:配列番号: 28、 35
[0056] CDR3を表すアミノ酸配列は以下のとおりである。
A44:配列番号: 7、 14
A50:配列番号: 18、 19
A69:配列番号: 22、 14
B26:配列番号: 30、 37
[0057] 本発明で開示されて!ヽる可変領域を用いて全長抗体を作製する場合、定常領域 は特に限定されず、当業者に公知の定常領域を用いることが可能であり、例えば、 Se quences of proteins of immunological interest, (1991), U.¾. Department or Health an d Human Services. Public Health Service National Institutes of Healthや、 An efficien t route to human bispecific IgG, (1998). Nature Biotechnology vol.16, 677-681、等 に記載されて 、る定常領域を用いることができる。
[0058] 本発明の好ましい態様における二重特異性抗体については、 F.XIa(F.IX活性ィ匕酵
素)、 F.IX、 F.X、 F.Xaの合成基質 (S- 2222)、リン脂質力も成る測定系で、 F.VIII/F.VI IIa (F.IXaによる F.X活性ィ匕の補因子)を代替する活性を評価した。その結果を以つて 、 F.VIII/F.VIIIa代替活性を有する二重特異性抗体として、原則本測定系で 0.1以上 の F.VIIIa様活性を示したものを選択した。なお、ここでいう F.VIIIa様活性とは、抗体 溶液または抗体発現培養上清の 30分間または 60分間の吸光度変化値から、溶媒ま たは抗体非発現培養上清の 30分間または 60分間の吸光度変化値を引いた値である
[0059] 上記で選択された二重特異性抗体あるいはその類縁の二重特異性抗体に関して は、 F.VIII欠乏ヒト血漿を用いた凝固時間測定系を用い、凝固回復能を測定した。そ の結果、抗体無添加時に比べて、凝固時間を短縮する二重特異性抗体を得た。ここ で 、う凝固時間は実施例 7に示したように、 F.VIII欠乏ヒト血漿を用いた活性ィ匕部分ト ロンボプラスチン時間を測定したものである。それら二重特異性抗体の中で、好まし い二重特異性抗体は 10秒以上の、より好ましい二重特異性抗体は 20秒以上の、さら に好まし 、二重特異性抗体は 40秒以上の、最も好まし!/、二重特異性抗体は 50秒以 上の凝固時間短縮能を有して 、た。
[0060] 即ち、本発明の好ま U、態様としては、血液凝固第 IX因子および/または活性ィ匕 血液凝固第 IX因子、並びに血液凝固第 X因子を認識する血液凝固第 vm因子の機 能を代替し得る多重特異性抗体である。
[0061] 本発明の多重特異性抗体の F.VIII代替機能は、 F.VIII欠乏ヒト血漿を用いた凝固 時間測定系にお 、て、抗体無添加時に比べた凝固時間の短縮を測定することにより 示すことができる。ここでいう凝固時間は、例えば、実施例 21に示す F.VIII欠乏ヒト血 漿を用いた凝固時間測定系における、活性ィ匕部分トロンボプラスチン時間 (APTT)を 意味する。本発明の多重特異性抗体の一態様は、 50秒以上の凝固時間短縮能を有 する抗体であり、好ましくは 60秒以上、より好ましくは 70秒以上、更に好ましくは 80秒 以上の凝固時間短縮能を有して 、る。
[0062] 本発明の上記多重特異性抗体は、好ましくは、抗血液凝固第 IXZlXa因子抗体の H鎖 CDRまたはこれと機能的に同等な CDRと、抗血液凝固第 X因子抗体の H鎖 CDR またはこれと機能的に同等な CDRとを含む抗体である。
[0063] また本発明の抗体は、抗血液凝固第 IX/IXa因子抗体における、配列番号: 3、 5、 7 (A44の H鎖 CDR)に記載の H鎖 CDR1、 2、 3のアミノ酸配列、または配列番号: 21、 5 、 22 (A69の H鎖 CDR)に記載の H鎖 CDR1、 2、 3のアミノ酸配列力 なる抗原結合部 位またはこれと機能的に同等の抗原結合部位と、抗血液凝固第 X因子抗体における 配列番号: 26、 28、 30 (B26の H鎖 CDR)に記載の H鎖 CDR1、 2、 3のアミノ酸配列か らなる抗原結合部位またはこれと機能的に同等の抗原結合部位とを含む抗体である ことが好ましい。
[0064] なお、本発明において、抗原結合部位が機能的に同等であるとは、本明細書に記 載された各種 CDRを含む抗原結合部位と同様の結合特性を有することを 、う。つまり 、以下に示す安定化を目的としたアミノ酸残基の置換によっても同様の抗原決定基( ェピトープ)を認識する場合は、機能的に同等とする。
[0065] また、本願の抗体(クローン)については、脱アミド化、メチォニン酸化などの回避や 抗体の構造安定化を目的に以下のようにアミノ酸残基を置換してもよ 、。
本発明の抗体は、必要に応じて、脱アミド化、メチォニン酸ィ匕などの回避や抗体の 構造安定ィ匕を目的にアミノ酸残基を改変してもよい。
[0066] 脱アミド化、メチォニン酸ィ匕などの回避を目的として、 Nと Mを改変してもよい。また、 A44、 A69の H鎖 CDR3内の NG配列の G、 B26の H鎖 CDR2の NT配列の Tを改変しても よい。また、 Met酸ィ匕回避のために Mを改変してもよい。また、ターン構造改善による 熱安定性向上のため、 A44、 A69の H鎖 CDR2の最後の RD配列の D、 A50の H鎖 CDR2 の KV配列の Vを改変してもよい、改変する場合は特に G、 S、 Tへの改変が好ましい。 同じく A44L鎖の L鎖 CDR3、 kabat95の Yを Pに改変してもよい。また、疎水コア改善に よる熱安定'性向上のため、 B26L鎖の L鎖 CDR1、 kabat33の Vを Lに改変してもよい。さ らに、 VH/VL界面の乱れを修正するために、 A44、 A50、 A69の H鎖 CDR3の最後の L DY配列の L、 FDY配列の Fを改変してもよい。同じく A44、 A50、 A69の L鎖 CDR3の最 後の IT配列の I、 LT配列の Lを改変してもよい。また、 B26L鎖の CDR2の RYS配列の Y を改変してもよい。
[0067] 以下に A44、 A50、 A69、 B26の各 CDRの配列と置換の可能性の考えられるアミノ酸 残基を下線にて示す。
A44 H鎖 CDR1 SSWMH (配列番号: 3)
A50 H鎖 CDR1 TYWMH (配列番号: 16)
A69 H鎖 CDR1 DYYMH (配列番号: 21)
B26 H鎖 CDR1 D MD (配列番号: 26)
[0068] A44, A69 H鎖 CDR2 YINPSSGYTKYNRKFRD (配列番号: 5)
A50 H鎖 CDR2 YI PSSGYTKY QKFKV (配列番号: 17)
B26 H鎖 CDR2 DINT SGGSIYNQKFKG (配列番号: 28)
[0069] A44 H鎖 CDR3 GGNGYYFDY (配列番号: 7)
A50 H鎖 CDR3 GNLGYFFDY (配列番号: 18)
A69 H鎖 CDR3 GGNGYYLDY (配列番号: 22)
B26 H鎖 CDR3 RRSYGYYFDY (配列番号: 30)
[0070] A44, A50 L鎖 CDR1 KASQDVGTAVA (配列番号: 10)
A69 L鎖 CDR1: KASQDVSTAVA (配列番号: 23)
B26 L鎖 CDR1: KASQNVGTAVA (配列番号: 33)
[0071] A44, A50, A69 L鎖 CDR2 : WASTRHT (配列番号: 12)
B26 L鎖 CDR2: SASYRYS (配列番号: 35)
[0072] A44, A69 L鎖 CDR3: QQYSNY1T (配列番号: 14)
A50 L鎖 CDR3: QQYSSYLT (配列番号: 19)
B26 L鎖 CDR3: QQYNSYPLT (配列番号: 37)
[0073] さらに本発明は、 L鎖が共通化される前の二重特異性抗体に対して、 L鎖の共通化 によって低下した活性を回復させる、あるいは、元の活性より向上させる方法に関す る。本発明は、この方法を利用して本発明の二重特異性抗体を作製する方法を提供 する。
[0074] 即ち本発明は、第一の H鎖、第二の H鎖および共通の L鎖を有する二重特異性抗 体の作製方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
(1)第一の抗原に対する第一の抗体と、第二の抗原に対する第二の抗体とを用意す る工程;
(2)第一の抗体および第二の抗体の可変領域を有する第一の抗原および第二の抗
原に対する二重特異性抗体を作製する工程;
(3)前記 (2)で作製した二重特異性抗体の抗原への結合活性または抗体の生物活 性を測定する工程;
(4)第一の抗体の H鎖および第二の抗体の H鎖を、第一の抗体または第二の抗体の L鎖で共通化して共通 L鎖抗体を作製する工程;
(5)前記 (4)で作製した共通 L鎖抗体の抗原への結合活性または抗体の生物活性を 測定する工程;
(6)前記 (4)で作製した共通 L鎖抗体の 1または 2個または 3個の CDRを、第一の抗 体、第二の抗体または第一の抗体または第二の抗体の CDRのアミノ酸配列に対して 高い相同性を有する抗体の CDRにより置換して共通 L鎖抗体を作製する工程;
(7)前記 (6)で作製した共通 L鎖抗体と、前記 (2)で作製した元の二重特異性抗体ま たは前記 (4)で作製した共通 L鎖抗体とを抗原への結合活性または抗体の生物活性 につ!/ヽて比較し、所望の活性を有する共通 L鎖抗体を選択する工程;および
(8)前記(7)で選択した共通 L鎖抗体にっ 、て、必要に応じて前記(6)および(7)の 工程を反復して前記 (2)で作製した元の二重特異性抗体と同等以上の活性を有す る共通 L鎖抗体を得る工程
[0075] 本発明の上記方法においては、まず、 L鎖が共通化されていない二重特異性抗体 の作製を行う。
[0076] 本発明の二重特異性抗体を得る方法は特に制限されず、どのような方法で取得さ れてもよい。一例を示せば、酵素 A及び基質 Bに対する補因子機能代替二重特異性 抗体を得る場合、酵素 A、基質 Bそれぞれを免疫動物に免疫し、抗酵素 A抗体及び 抗基質 B抗体を取得する。その後、抗酵素 A抗体の H鎖と L鎖及び抗基質 B抗体の H 鎖と L鎖を含む二重特異性抗体を作製する。ここで、抗酵素 A抗体と抗基質 B抗体は それぞれ複数種得られていることが望ましぐこれらを用いてなるべく多くの組合せの 二重特異性抗体を作製することが好ましい。二重特異性抗体を作製後、補因子機能 代替活性を有する抗体を選択する。
[0077] 酵素あるいは基質に対する抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。
例えば、免疫動物に対して抗原を免疫することにより調製することができる。動物を免
疫する抗原としては、免疫原性を有する完全抗原と、免疫原性を有さない不完全抗 原 (ハプテンを含む)が挙げられる。本発明においては、本発明の補因子機能代替 抗体が補因子として作用すると考えられる酵素あるいは基質を、上記抗原 (免疫原) として使用する。免疫する動物として、例えば、マウス、ラット、ノ、ムスター、モルモット 、ゥサギ、 -ヮトリまたはァカゲザル等を用いることができる。これら動物に対して、抗 原を免疫することは、当業者においては、周知の方法によって行うことができる。本発 明にお 、て好ましくは、免疫された動物または該動物の細胞力 抗体の L鎖および H 鎖の可変領域の回収を行う。この操作は、当業者においては一般的に公知の技術を 用いて行うことができる。抗原によって免疫された動物は、とりわけ脾臓細胞において 該抗原に対する抗体を発現する。従って、例えば、免疫された動物の脾臓細胞から mRNAを調製し、該抗体の可変領域に対応するプライマーを用いて、 RT-PCRにより L 鎖および H鎖の可変領域の回収を行うことができる。
[0078] 詳細には、動物に酵素、基質それぞれを免疫する。免疫原とする酵素、基質は、蛋 白質全体、もしくは該蛋白質の部分ペプチドであってもよい。また、動物を免疫する のに用いる免疫原としては、場合により抗原となるものを他の分子に結合させ可溶性 抗原とすることも可能であり、また、場合によりそれらの断片を用いてもよい。
[0079] 免疫されたマウスの脾臓力 脾細胞を単離し、マウスミエローマ細胞と融合し、ハイ プリドーマを作製する。抗原に結合するハイブリドーマをそれぞれ選択し、可変領域 に対応するプライマーなどを用いて RT- PCRにて L鎖、 H鎖の可変領域を回収するこ とが出来る。 CDRに対応するプライマー、 CDRよりも多様性の低いフレームワークに 対応するプライマー、あるいはシグナル配列と CH1もしくは L鎖定常領域 (CL)に対応 するプライマーを用いることもできる。
[0080] あるいは、免疫された動物の脾細胞力 mRNAを抽出し、可変領域付近に対応する プライマーを用いて RT-PCRにて L鎖、 H鎖可変領域の cDNAを回収する。また、 in vit roにおいてリンパ球を免疫することもできる。これを用いて scFvもしくは Fabを提示する ライブラリーを構築する。パンユングによって抗原結合抗体クローンを濃縮'クローン 化し、可変領域を得ることが出来る。この際、ヒトゃ免疫していない動物の末梢血単 核球、脾臓、扁桃腺などに由来する mRNAを材料とする同様のライブラリーを用いて
スクリーニングを行うことも可能である。
[0081] その可変領域を用いて抗体発現ベクターを作製する。抗酵素抗体発現ベクターと 抗基質抗体発現ベクターを同一の細胞に導入し、抗体を発現させることにより二重特 異性抗体を得ることができる。
[0082] 次 、で、本発明の上記方法にぉ 、ては、作製された二重特異性抗体の抗原への 結合活性または抗体の生物活性を測定する。例えば、補因子機能代替活性を有す る抗体の選択としては、以下のような方法により行うことができる。
[0083] (1)該酵素 ·該基質を含む反応系を用い、該抗体を加えることによる該酵素活性 (基 質分解能)の上昇を指標とし、選択する。
(2)該酵素 '該基質'該補因子が関わる生体機能を測定するあるいは模倣する系を 用い、該補因子非存在条件下にて該抗体を加えることによる機能回復活性を指標と し選択する。
[0084] より具体的には、例えば血液凝固因子欠乏ヒト血漿を用いた凝固時間測定系によ つて、被検抗体の凝固能を測定することにより「活性」を測定することができる。
[0085] 得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋 白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばァフィ二ティーク口 マトグラフィ一等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組合せれば、抗体 を分離、精製することができる (Ant¾odies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and Da vid Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)力 これらに限定されるものではな い。ァフィユティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテイン Aカラム、プロ ティン Gカラムなどが挙げられる。
[0086] 本発明の二重特異性抗体の好ま 、態様にぉ 、ては、代替する補因子が F.VIII/F .Villaであり、すなわち酵素および基質の組合せ力 血液凝固線溶関連因子の F.IXa 、及び F.Xであるため、好ましくは、抗 F.IXa抗体における可変領域と、抗 F.X抗体に おける可変領域とを含む構造を有する。
[0087] より詳細には、例えば、 F.VIII/F.VIIIa機能代替二重特異性抗体は、以下の方法で 作製することができる。
[0088] 市販の F.IXa及び F.Xをそれぞれマウスの皮下に免疫する。抗体価の上昇した免疫 マウスの脾臓力 脾細胞を単離し、マウスミエローマ細胞と融合し、ハイプリドーマを 作製する。抗原 (F.IXa、 F.X)に結合するハイブリドーマをそれぞれ選択し、可変領域 に対応するプライマーを用いて RT-PCRにて L鎖、 H鎖の可変領域を回収する。 L鎖 可変領域は CLを含む L鎖発現ベクターに、 H鎖可変領域は H鎖定常領域を含む H鎖 発現ベクターにそれぞれ組み込む。また、この免疫マウスの脾臓カゝら mRNAを抽出し 、可変領域に対応するプライマーを用いて RT-PCRにて L鎖、 H鎖可変領域の cDNA を回収する。これら可変領域を用いて scFvを提示するファージライブラリーを構築す る。次いで、パンユングによって抗原結合抗体クローンを濃縮'クローンィ匕し、その可 変領域を用いて抗体発現ベクターを作製し、抗 F.IXa抗体 (H鎖、 L鎖)の発現べクタ 一と抗 F.X抗体 (H鎖、 L鎖)の発現ベクターを同一の細胞に導入し、抗体を発現させ ることにより二重特異性抗体を得ることができる。
[0089] 本発明の上記方法においては、次いで、第一の抗体 (例えば、抗 F.IXa抗体)の H 鎖および第二の抗体 (例えば、抗 F.X抗体)の H鎖を、第一の抗体または第二の抗体 の L鎖で共通化して第一の共通 L鎖抗体を作製し、該共通 L鎖抗体の抗原への結合 活性または抗体の生物活性を測定する。
[0090] また、共通の L鎖は、特にこの方法に限定されるものではないが、例えば以下の(1) 〜 )の工程のようにして取得することも可能である。
(1)抗原 Aに対する抗体 A、及び抗原 Bに対する抗体 Bをそれぞれ選択し、
(2)該抗体の H鎖 (好ましくは Fd部分、即ち VH及び CH1を含む領域)をコードする遺 伝子の発現ベクターを導入して各 H鎖の分泌株 Ha (抗体 Aの H鎖を分泌)及び Hb (抗 体 Bの H鎖を分泌))を用意し、
(3)別に、 L鎖がファージの表面蛋白との融合蛋白質として発現されるライブラリーを 構築し、
(4)該 L鎖ライブラリーを前記大腸菌 Haに導入して抗体 Aの H鎖と様々な L鎖力 成る 抗体 (H鎖が Fd部分の場合は Fab)を表面に提示したファージライブラリーを分泌させ、
(5)該ライブラリーから、抗原 Aによるバニングにてクローンを濃縮し、
(6)得られたクローンをさらに大腸菌 Hbに感染させ、抗体 Bの H鎖と様々な L鎖力 成
る抗体 (H鎖が Fd部分の場合は Fab)を表面に提示したファージライブラリーを得、 (7)該ライブラリーを抗原 Bによるバニングによってクローンを濃縮する。
[0091] 上記(1)〜 )の工程を繰り返すことによって、二重特異性抗体の作成に利用可能 な異なる H鎖に対応し、抗原に対し高!ヽァフィ-ティーを示す共通 L鎖を得ることがで きる。
[0092] より詳細には、以下の(a)〜(e)に示す工程のようにして共通 L鎖を得ることができる
(a)所望の抗原に対して結合する抗体の H鎖を分泌する宿主を製造する工程
(b)抗体 L鎖ライブラリーを工程 (a)の宿主に導入し、前記 H鎖及び前記 L鎖により構 成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(c)工程 (a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージ ライブラリーを選択する工程
(d)工程 (c)において選択されたファージライブラリーを、工程 (a)の抗原とは異なる所 望の抗原に対して結合する抗体の H鎖を分泌する宿主に対して導入し、該 H鎖及び L鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(e)工程 (d)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージ ライブラリーを選択する工程
[0093] さらに、以下の(a)〜(e)に示す工程のようにしても共通 L鎖を得ることができる。
(a)所望の抗原に対して結合する抗体の H鎖を分泌する宿主を製造する工程
(b)抗体 L鎖ライブラリーを工程 (a)の宿主に導入し、前記 H鎖及び前記 L鎖により構 成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(c)工程 (a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージ ライブラリーを選択する工程
(d)工程 (c)にお 、て選択されたファージライブラリーを、工程 (a)の H鎖とは異なるァ ミノ酸配列を有する H鎖を分泌する宿主に対して導入し、該 H鎖及び L鎖により構成さ れる抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(e)工程 (d)記載の H鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示する ファージライブラリーを選択する工程
[0094] 続いて、上述のようにして作製した共通 L鎖抗体の 1または 2個または 3個の CDRを 、第一の抗体、第二の抗体または第一の抗原もしくは第二の抗原に対する他の抗体 であって第一の抗体または第二の抗体の CDRのアミノ酸配列に対して高い相同性を 有する抗体の CDRにより置換して共通 L鎖抗体を作製する。
[0095] この CDRの「置換」は、当業者においては、公知の技術、例えば、 CDRシャフリング 法によって適宜、実施することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方 法によって行うことが可能である。
[0096] この共通 L鎖抗体と、工程 (2)の L鎖の共通化前の元の二重特異性抗体、または前 記の工程 (4)で作製した共通 L鎖抗体とを抗原への結合活性または抗体の生物活 性につ ヽて比較し、所望の活性を有する共通 L鎖抗体を選択する。
[0097] 本発明において「所望の活性」とは、例えば、 L鎖を共通化する前の抗体と比較して 同等もしくは増強されているような「活性」を指す。より具体的には、 L鎖が共通化され る前の抗体の有する補因子 F.VIII/F.VIIIaとしての活性力 同等もしくは増強されて いるような活性を言う。従って上記工程においては、例えば、補因子 F.VIII/F.VIIIaと しての活性が、同等もしくは増強されて 、るような共通 L鎖抗体を選択する。
[0098] 上記方法にお!、ては、必要に応じて、前記の工程 (7)で選択した共通 L鎖抗体に ついて、前記の工程 (6)および(7)の工程を反復し、前記の工程(2)で作製した元の 二重特異性抗体と同等もしくはそれ以上の活性を有する共通 L鎖抗体を取得する。 なお、上記「反復」は、特に制限されないが、好ましくは、 2回以上反復される。
[0099] 本発明の上記方法によって作製された共通の L鎖を有する二重特異性抗体もまた 、本発明に含まれる。
[0100] 本発明における抗体の 1つの態様としては、補因子 F.VIIIの機能を代替する作用を 有することから、本発明の抗体は、該補因子の活性 (機能)低下に起因する疾病に対 して、有効な薬剤となることが期待される。上記疾病として、例えば、出血、出血を伴 う疾患、もしくは出血に起因する疾患等を挙げることができる。特に、 F.VIII/F.VIIIaの 機能低下や欠損は、血友病と呼ばれる出血異常症を引き起こすことで知られる。
[0101] 血友病のうち、先天性の F.VIII/F.VIIIa機能低下または欠損による出血異常症は、 血友病 Aと呼ばれる。血友病 A患者が出血した場合、 F.VIII製剤の補充療法が行わ
れる。また、激しい運動や遠足の当日、頻回に関節内出血を来たす場合、あるいは 重症血友病に分類される場合には、 F.VIII製剤の予防投与が行われることがある(Nil sson IMら著、「J. Intern. Med.」、 1992年、 Vol.232, p.25- 32および Lofqvist T (oはゥ ムラウトが付く)ら著、「J. Intern. Med.」、 1997年、 Vol.241、 p.395- 400)。この F.VIII製 剤の予防投与は、血友病 A患者の出血エピソードを激減させるため、近年、大きく普 及しつつある。出血エピソードを減らすことは、致死性及び非致死性の出血の危険 及びそれに伴う苦痛を低下させるだけでなぐ頻回の関節内出血に起因する血友病 性関節障害を未然に防ぐ。その結果、血友病 A患者の QOL向上に大きく寄与する。
[0102] F.VIII製剤の血中半減期は短ぐ約 12〜16時間程度である。それ故、継続的な予 防のためには、 F.VIII製剤を週に 3回程度投与する必要がある。これは、 F.VIII活性と して、概ね 1%以上を維持することに相当する(第 24回日本血栓止血学会学術集会 学術専門部会血友病標準化検討部会ミニシンポジウム、 2001年)。また、出血時の 補充療法においても、出血が軽度な場合を除き、再出血を防ぎ、完全な止血を行う ため、一定期間、 F.VIII製剤を定期的に追加投与する必要がある。
[0103] また、 F.VIII製剤は、静脈内に投与される。静脈内投与実施には、技術的な困難さ が存在する。特に年少の患者に対する投与においては、投与に用いられる静脈が細 い故、困難さが一層増す。
[0104] 前述の、 F.VIII製剤の予防投与や、出血の際の緊急投与においては、多くの場合、 家庭療法'自己注射が用いられる。頻回投与の必要性と、投与の際の技術的困難さ は、投与に際し患者に苦痛を与えるだけでなぐ家庭療法'自己注射の普及を妨げる 要因となっている。従って、現存の血液凝固第 VIII因子製剤に比し、投与間隔が広 い薬剤、あるいは投与が簡単な薬剤が、強く求められていた。
[0105] さらに、血友病 A患者、特に重症血友病 A患者には、インヒビターと呼ばれる F.VIII に対する抗体が発生する場合がある。インヒビターが発生すると、 F.VIII製剤の効果 力 Sインヒビターにより妨げられる。その結果、患者に対する止血管理が非常に困難に なる。
[0106] このような血友病 Aインヒビター患者が出血を来たした場合は、通常、大量の F.VIII 製剤を用いる中和療法力、複合体製剤(complex concentrate)あるいは F. Vila製剤を
用いるバイパス療法が、実施される。しかしながら、中和療法では、大量の F.vm製剤 の投与が、逆に、インヒビター (抗 F.VIII抗体)力価を上げてしまう場合がある。また、 バイパス療法では、複合体製剤や F.VIIa製剤の短血中半減期 (約 2〜 8時間)が問 題となっている。その上、それらの作用機序力 F.VIII/F.VIIIaの機能、すなわち F.IX aによる F.X活性ィ匕を触媒する機能に非依存であるため、場合によっては、止血機構 をうまく機能させられず、不応答になってしまうケースがある。そのため、血友病 Aイン ヒビター患者では、非インヒビター血友病 A患者に比し、十分な止血効果を得られな い場合が多いのである。従って、インヒビターの存在に左右されず、且つ F.VIII/F.VII laの機能を代替する薬剤が、強く求められていた。
[0107] ところで、 F.VIII/F.VIIIaに関係する出血異常症として、血友病、抗 F.VIII自己抗体 を有する後天性血友病のほかに、フォンビルブランド因子 (vWF)の機能異常または 欠損に起因するフォンビルブランド病が知られている。 vWFは、血小板が、血管壁の 損傷部位の内皮下組織に正常に粘着するのに必要であるだけでなぐ F.VIIIと複合 体を形成し、血漿中 F.VIIIレベルを正常に保つのにも必要である。フォンビルブランド 病患者では、これらの機能が低下し、止血機能異常を来たしている。
[0108] さて、(0投与間隔が広ぐ GO投与が簡単であり、(m)インヒビターの存在に左右され ず、(iv) F.VIII/F.VIIIa非依存的にその機能を代替する医薬品の創製には、抗体を 利用する方法が考えられる。抗体の血中半減期は、一般に、比較的長ぐ数日から 数週間である。また、抗体は、一般に、皮下投与後に血中に移行することが知られて いる。すなわち、一般に抗体医薬品は、上記の (0、 GOを満たしている。
[0109] 本発明では、本発明に記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む(医薬) 組成物を提供する。例えば、本発明の抗体が F.IXもしくは F.IXa、および F.Xの両方を 認識し、 F.VIIIの機能を代替する抗体は、例えば、出血、出血を伴う疾患、もしくは出 血に起因する疾患の予防および Zまたは治療のための医薬品(医薬組成物)もしく は薬剤となることが期待される。
[0110] 本発明において、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患とは、好まし くは血液凝固第 vm因子および Zまたは活性化血液凝固第 vm因子の活性の低下な いし欠損によって発症および Zまたは進展する疾患である。このような疾患としては、
例えば上記の血友病 A、血液凝固第 vm因子および Zまたは活性化血液凝固第 vm 因子に対するインヒビターが出現している疾患、後天性血友病、フォンビルブランド 病を挙げることができるが、これら疾患に特に制限されない。
[0111] 治療または予防目的で使用される本発明の抗体を有効成分として含む医薬組成 物は、必要に応じて、それらに対して不活性な適当な薬学的に許容される担体、媒 体等と混和して製剤化することができる。例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦 形剤、酸化防止剤 (ァスコルビン酸等)、緩衝剤 (リン酸、クェン酸、他の有機酸等)、防 腐剤、界面活性剤 (PEG、 Tween等)、キレート剤 (EDTA等)、結合剤等を挙げることが できる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グ ロブリン等の蛋白質、グリシン、グルタミン、ァスパラギン、アルギニン及びリシン等の アミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、マン-トールやソルビトール等の糖ァ ルコールを含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水 、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、 D-ソルビトール、 D-マンノース 、 D-マン-トール、塩ィ匕ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコー ル (エタノール等)、ポリアルコール (プロピレングリコール、 PEG等)、非イオン性界面活 性剤 (ポリソルベート 80、 HCO— 50)等と併用してもよい。
[0112] また、必要に応じ本発明の抗体をマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼ ラチン、ポリ^チルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグ デリバリーシステム(リボソーム、アルブミンミクロスフエア、マイクロエマルジヨン、ナノ 粒子及びナノカプセル等)とすることもできる("Remington's Pharmaceutical Science 1 6th edition", Oslo Ed. (1980)等参照)。さら〖こ、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公 知であり、本発明の抗体に適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res. 15: 267- 277 (1981); Langer, Chemtech. 12: 98-105 (1982);米国特許第 3, 773,919号;欧州特 許出願公開 (EP)第 58,481号; Sidman et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983);EP第 13 3, 988号)。
[0113] 本発明の抗体または医薬組成物は、血液凝固第 vm因子と併用することができる。
本発明の抗体または医薬組成物は、血液凝固第 vm因子と同時に投与してもよぐま たは、時期をずらして投与してもよい。また、本発明の抗体または医薬組成物と血液
凝固第 VIII因子を組み合わせたキットとして実施してもよい。さらに、本発明の抗体ま たは医薬組成物と血液凝固第 vm因子を併用する場合は、 ヽずれかを単独で用いる 場合に比べて、所望により各々の投与量を少なくすることも可能である。
[0114] 本発明の二重特異性抗体または医薬組成物は 2種以上を併用することが可能であ り、また、他の F.IX/F.IXaおよび F.Xに対する二重特異性抗体、抗 F.IXZF.IXa抗体、 抗 F.X抗体またはこれらの組み合せと併用することができる。本発明の二重特異性抗 体または医薬組成物の 2種以上を併用する場合、または、他の F.IX/F.IXaおよび F.X に対する二重特異性抗体、抗 F.IXZF.IXa抗体、抗 F.X抗体またはこれらの組み合せ と併用する場合は、同時に投与してもよぐまたは、時期をずらして投与してもよい。ま た、本発明の二重特異性抗体または医薬組成物の 2種以上、または、他の F.IX/F.IX aおよび F.Xに対する二重特異性抗体、抗 F.IXZF.IXa抗体、抗 F.X抗体またはこれら の組み合せと組み合わせたキットとして実施してもよい。さらに、本発明の二重特異 的抗体または医薬組成物の 2種以上を併用する場合、または、他の F.IX/F.IXaおよ び F.Xに対する二重特異性抗体、抗 F.IXZF.IXa抗体、抗 F.X抗体またはこれらの組 み合せと併用する場合は、いずれかを単独で用いる場合に比べて、所望により各々 の投与量を少なくすることも可能である。
[0115] 本発明の医薬組成物の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、 患者の症状、疾患の種類や進行の程度等を考慮して、最終的には医師の判断により 適宜決定されるものである力 一般に大人では、 1日当たり、 0.1〜2000mgを 1〜数回 に分けて投与することができる。より好ましくは l〜1000mg/日、更により好ましくは 50 〜500mgZ日、最も好ましくは 100〜300mgZ日である。これらの投与量は患者の体 重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選 択することが可能である。投与期間も、患者の治癒経過等に応じて適宜決定すること が好ましい。
[0116] また、本発明の抗体をコードする遺伝子を遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝 子治療を行うことも考えられる。投与方法としては、 nakedプラスミドによる直接投与の 他、リボソーム等にパッケージングする力 レトロウイルスベクター、アデノウイルスべク ター、ワクシニアウィルスベクター、ボックスウィルスベクター、アデノウイルス関連べク
ター、 HVJベクター等の各種ウィルスベクターとして形成するか(Adolph『ウィルスゲノ ム法』, CRC Press, Florid (1996)参照)、または、コロイド金粒子等のビーズ担体に被 覆 (WO93/17706等)して投与することができる。し力しながら、生体内において抗体 が発現され、その作用を発揮できる限りいかなる方法により投与してもよい。好ましく は、適当な非経 P経路 (静脈内、腹腔内、皮下、皮内、脂肪組織内、乳腺組織内、吸 入または筋肉内の経路を介して注射、注入、またはガス誘導性粒子衝撃法 (電子銃 等による)、点鼻薬等粘膜経路を介する方法等)により十分な量が投与される。 ex viv oにおいてリボソームトランスフエクシヨン、粒子衝撃法 (米国特許第 4,945,050号)、ま たはウィルス感染を利用して血液細胞及び骨髄由来細胞等に投与して、該細胞を動 物に再導入することにより本発明の抗体をコードする遺伝子を投与してもよい。遺伝 子治療では、本発明の抗体をコードする任意の遺伝子を使用することが可能であり、 例えば、前述の A44、 A69、 B26の CDRをコードする塩基配列を含む遺伝子が挙げら れる。
[0117] また本発明は、本発明の抗体もしくは組成物を投与する工程を含む、出血、出血を 伴う疾患、または出血に起因する疾患の予防および Zまたは治療するための方法を 提供する。抗体もしくは組成物の投与は、例えば、前記の方法により実施することが できる。
[0118] また本発明は、本発明の抗体の、本発明の(医薬)組成物の製造のための使用に 関する。
[0119] さらに本発明は、少なくとも本発明の抗体もしくは組成物を含む、上記方法に用い るためのキットを提供する。該キットには、その他、注射筒、注射針、薬学的に許容さ れる媒体、アルコール綿布、絆創膏、または使用方法を記載した指示書等をパッケ ージしておくこともできる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書 に組み入れられる。
実施例
[0120] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限 されるものではない。
〔実施例 1〕 Factor IXa (F.IXa)に対する非中和抗体の作製
1-1.免疫およびハイプリドーマ作製
BALB/cマウス(雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 8匹および MRL/lp rマウス(雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 5匹に、 human Factor IXa jS (Enzyme Research Laboratories, In )を以下の通り免疫した。初回免疫として FCA ( フロイント完全アジュバント H37 Ra (Difco laboratories) )でェマルジヨン化した Factor I Xa βを 40 μ g/head皮下投与した。 2週間後に FIA (フロイント不完全アジュバント(Difc 0 laboratories) )でェマルジヨン化した Factor IXa βを 40 μ g/head皮下投与した。以 後 1週間間隔で追加免疫を 3〜7回行った。 Factor \ΧΆ βに対する血清抗体価の上昇 を 1-2に示した ELISA (Enzyme linked immunosorbent assay)で確認後、最終免疫と して PBS(-)(カルシウムイオン、マグネシウムイオンを含まない phosphate buffered salin e)に希釈した Factor IXa βを 40 μ g/head静脈内投与した。最終免疫の 3日後、マウス の脾臓を摘出し、その一部は実施例 10— 2で使用し、残りの脾臓細胞とマウスミエ口 一マ細胞 P3X63Ag8U. l (P3Ulと称す、 ATCC CRL- 1597)を、 PEG1500 (ロシュ'ダイ ァグノスティックス)を用いた常法に従い細胞融合した。 10 % FBS(Invitrogen)を含む R PMI1640培地(Invitrogen) (以下、 10 % FBS/RPMI1640と称す)に懸濁した融合細胞を 96 well culture plateに播種し、融合 1 , 2, 3, 5日後に HAT選択培地(10 % FBS/RPMI 1640 / 2 % HAT 50x concentrate (大日本製薬)/ 5 % BM- Condimed HI (ロシュ'ダイ ァグノスティックス) )への置換を行うことにより、ノ、イブリドーマの選択培養を行った。 融合後 8日目または 9日目に採取した培養上清を用いて、 1-2に示した ELISAにより F actor IXaに対する結合活性を測定することにより、 Factor IXa結合活性を有するハイ プリドーマを選択した。続いて 1-3に示した方法で Factor IXaの酵素活性に対する中 和活性を測定し、 Factor IXaに対する中和活性を有さないハイプリドーマを選択した 。 ノ、イブリドーマは、 96 well culture plateに 1 wellあたり 1個の細胞を播種することによ る限界希釈を 2回行ってクローンィ匕した。顕微鏡観察により単一コロニーであることが 確認された細胞について、卜2、 1-3に示した ELISAおよび中和活性測定を行い、ク ローンを選択した。 1-4に示した方法により、クローンィ匕した抗体の腹水を作製し、腹 水から抗体を精製した。精製抗体が、 APTT (活性ィ匕部分トロンボプラスチン時間)を
延長させな 、ことを、 1-5に示した方法で確認した。
[0122] 1-2. Factor IXa ELISA
Coating buffer (100 mM sodium bicarbonate, pH 9.6, 0.02 % sodium azide)で 1 μ g/ mLに希釈した Factor IXa βを、 Nunc— Immuno plate (Nunc— Immuno ' 96 Micro Well plates MaxiSorp™ (Nalge Nunc International) )に 100 μ L/wellで分注後、 4°Cでー晚 インキュベーションした。 Tween (R) 20を含む PBS (-)で 3回洗浄後、 diluent buffer (50 m M Tris-HCl, pH 8.1, 1 % bovine serum albumin, 1 mM MgCl , 0.15 M NaCl, 0.05 %
2
Tween (R) 20, 0.02 % sodium azide)で plateを室温で 2時間 blockingした。 Bufferを除去 後、 plateに diluent bufferで希釈したマウスの抗血清またはハイブリドーマの培養上清 を 100 L/well添カ卩し、室温で 1時間インキュベーションした。 Plateを 3回洗浄後、 dilu ent bufferで 1/2000希釈したアルカリホスファターゼ標識ャギ抗マウス IgG (H+L) (Zym ed Laboratories)を 100 L/well添カ卩し、室温で 1時間インキュベーションした。 Plateを 6回洗浄後、発色基質 Blue- Phos™ Microwell Phosphatase Substrate (Kirkegaard & P erry Laboratories)を 100 L/well添カ卩し、室温で 20分インキュベーションした。 Blue- Phos Stop Solution (Kirkegaard & Perry Laboratoriesノ 100 μ L/well添カロしに後、 5 95nmにおける吸光度を Microplate Reader Model 3550 (Bio- Rad Laboratories)で測 定した。
[0123] 1-3. Factor IXa中和活性測定
Phospholipid (Sigma-Aldrich)を注射用蒸留水で溶解し、超音波処理を施すこと〖こ より、 400 g/mLの phospholipid溶液を調製した。 0.1 %ゥシ血清アルブミンを含むトリ ス緩衝生理食塩液(以下、 TBSB) 40 μ Lと 30 ng/mL Factor IXa β (Enzyme Research Laboratories) 10 μ Lと 400 μ g/mL phospholipid溶液 5 Lと 100 mM CaCl、 20 mM M
2 gClを含む TBSB 5 μ Lとハイブリドーマ培養上清 10 μ Lを 96穴プレート中で混和し、
2
室温で 1時間インキュベーションした。この混合溶液に、 50 μ g/mL Factor X (Enzyme Research Laooratones) 20 μ Lおよび 3 U/mL Factor VIII (Amrican diagnostica) 10 μ Lを加え、室温で 30分間反応させた。これに 10 Lの 0.5 M EDTAを添カ卩することによ り反応を停止させた。この反応溶液に、 Lの S-2222溶液(Chromogenix)を添カロし 、室温で 30分間インキュベーションした後、測定波長 405 nm、対照波長 655 nmにお
ける吸光度を Microplate Reader Model 3550 (Bio- Rad Laboratories, Inc.)により測定 した。
[0124] 1-4.腹水の作製および抗体の精製
榭立したノヽイブリドーマの腹水作製は常法に従って行った。すなわち、 in vitroで培 養したハイプリドーマ 2 X 106個を、あらかじめプリスタン(2,6,10,14-tetramethylpentad ecane;和光純薬工業)を 2回腹腔内に投与しておいた BALB/cマウス (雄、実験開始 時 5〜7週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一)または BALB/cヌードマウス (雌、実験開始時 5 〜6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一および日本クレア)の腹腔内に移植した。移植後 1 〜4週目で腹部が肥大したマウス力 腹水を回収した。
腹水力らの饥体 製 ίま Protein G Sepharose 4 Fast Flow (Amersham Biosciences )カラムを用いて行った。 Binding Buffer (20 mM sodium acetate, pH 5.0)にて 2倍希 釈した腹水をカラムにアプライし、 10カラム容量の Binding Bufferで洗浄した。 5カラム 容量の Elution Buffer (0.1 M glycine- HCl, pH 2.5)にて抗体を溶出し、 Neutralizing B uffer (l M Tris- HCl, pH 9.0)で中和した。これを Centriprep™ lO (Millipore)にて濃縮 し、 TBS (50 mM Tris-buffered Saline)に溶媒を置換した。抗体濃度は、 280 nmの吸 光度から、 A(l %,1 cm) = 13.5として算出した。吸光度の測定は、 DU-650 (Beckman Coulter)にて測定した。
[0125] 1-5. APTT (活性ィ匕部分トロンボプラスチン時間)の測定
APTTは CR- A (Amelung)を接続した KClOA (Amelung)により測定した。 TBSBで希 釈した抗体溶液 50 μ L、標準ヒト血漿(Dade Behring) 50 μ L及び APTT試薬(Dade B ehring) 50 μ Lの混合液を 37°Cで 3分間加温した。 20 mMの CaCl (Dade Behring) 50
2
μ Lを同混合液に加えることにより凝固反応を開始させ、凝固時間を測定した。
[0126] 〔実施例 2〕 Factor X (F.X)に対する非中和抗体の作製
2-1.免疫およびハイプリドーマ作製
BALB/cマウス(雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 8匹および MRL/lp rマウス(雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 5匹に、 human Factor X (En zyme Research Laboratories)を以下の通り免疫した。初回免疫として FCAでエマノレ ジョン化した Factor Xを 40 μ g/head皮下投与した。 2週間後に FIAでェマルジヨン化し
た Factor Xを 20または 40 g/head皮下投与した。以後 1週間間隔で追加免疫を合計 3〜6回行った。 Factor Xに対する血清抗体価の上昇を 2_2に示した ELISAで確認後 、最終免疫として PBS (-)に希釈した Factor Xを 20または g/head静脈内投与した 。最終免疫の 3日後、マウスの脾臓を摘出し、その一部を実施例 10— 2で使用し、残 りの脾臓細胞とマウスミエローマ細胞 P3U1を、 PEG1500を用いた常法に従い細胞融 合した。 10 % FBS/RPMI1640培地に懸濁した融合細胞を 96 well culture plateに播種 し、融合 1, 2, 3, 5日後に HAT選択培地への置換を行うことにより、ハイプリドーマの 選択培養を行った。融合後 8日目に採取した培養上清を用いて 2-2に示した ELISA により Factor Xに対する結合活性を測定した。 Factor X結合活性を有するハイブリド 一マを選択し、 2-3に示した方法で Factor Xaの酵素活性に対する中和活性を測定 した。 Factor Xaに対する中和活性を有さないハイプリドーマを、限界希釈を 2回行うこ とによりクローンィ匕した。 1-4に示した方法により、クローンィ匕した抗体の腹水を作製し 、腹水から抗体を精製した。精製抗体が、 APTTを延長させないことを、 1—5に示し た方法で確認した。
[0127] 2-2. Factor X ELISA
Coating bufferで 1 μ g/mLに希釈し 7こ Factor Xを、 Nunc— Immuno plateに 100 μ L/we 11で分注後、 4°Cでー晚インキュベーションした。 Tween(R) 20を含む PBS (-)で 3回洗浄 後、 diluent bufferで plateを室温で 2時間 blockingした。 Bufferを除去後、 plateに diluent bufferで希釈したマウスの抗血清またはハイブリドーマの培養上清を添カ卩し、室温で 1時間インキュベーションした。 Plateを 3回洗浄後、 diluent bufferで 1/2000希釈したァ ルカリホスファターゼ標識ャギ抗マウス IgG (H+L)を添カ卩し、室温で 1時間インキュべ ーシヨンした。 Plateを 6回洗浄後、発色基質 Blue- Phos™ Phosphate Substrate (Kirkeg aard & Perry Laboratories)を 100 μ L/well添カ卩し、室温で 20分インキュベーションし た。 Blue— Phos Stop Solution (Kirkegaard & Perry Laboratories)を 100 μ L/well添 加した後、 595 nmにおける吸光度を Microplate Reader Model 3550 (Bio- Rad Labora tories)で測定した。
[0128] 2- 3. Factor Xa中和活性測定
TBSBで 1/5希釈したハイプリドーマ培養上清 10 μ Lと 40 μ Lの 250 pg/mL Factor Xa
(Enzyme Research Laboratories)を含む TBCP (2.78 mM CaCl
2、 22.2 μ Mリン脂質( フォスファチジルコリン:フォスファチジルセリン = 75: 25、 Sigma-Aldrich)を含む TBSB )を混和し、室温で 1時間インキュベーションした。この混合溶液に、 20 g/mLプロトロ ンビン(Enzyme Research Laboratories)および 100 ng/mL活性化凝固第 V因子(Fact or Va (Haematologic Technologies) )を含む TBCPを 50 μ L添カ卩して室温で 10分間反 応させた。 0.5 M EDTAを 10 L添加することにより反応を停止させた。この反応溶液 に、 1 mM S- 2238溶液(Chromogenix)を 50 /z L添カ卩し、室温で 30分間インキュベーシ ヨンした後、 405 nmにおける吸光度を Microplate Reader Model 3550 (Bio- Rad Labor atories)で測定した。
[0129] 〔実施例 3〕 キメラ二重特異性抗体発現ベクターの構築
3-1ノ、イブリドーマからの抗体可変領域をコードする DNA断片の調製
抗 F.IXa抗体あるいは抗 F.X抗体を産生するハイブリドーマから、 QIAGEN(R) RNeasy (R) Mini Kit (QIAGEN)を用いて説明書記載の方法に従い全 RNAを抽出した。全 RN Aを 40 μ Lの滅菌水に溶解した。精製された RNA 1〜2 μ gを铸型に、 Superscript cD NA合成システム(Invitrogen)を用いて説明書記載の方法に従!、RT-PCR法により一 本鎖 cDNAを合成した。
[0130] 3-2.抗体 H鎖可変領域の PCRによる増幅と配列解析
マウス抗体 H鎖可変領域 (VH) cDNAの増幅用プライマーとして、 Krebberらの報告( J. Immunol. Methods 1997;201:35-55)に記載の HBプライマー混合物、および HFプ ライマー混合物を用意した。各 0.5 Lの 100 M HBプライマー混合物および 100 M HFプライマー混合物を用いて、反応液 25 μ L (3-1で調製した cDNA溶液 2.5 μ 1、 KOD plus buffer (東洋紡績)、 0.2 mM dNTPs, 1.5 mM MgCl , 0.75 units DNA polym
2
erase KOD plus (東洋紡績))を調製した。 PCRは、サーマルサイクラ一 GeneAmp PC R system 9700 (Parkin Elmer)を用いて、 cDNA断片の増幅の効率性に応じて、条件 A (98°Cで 3分間加熱後、 98°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒力 なる反応を 1サイクル として 32サイクル)ないし条件 B (94°Cで 3分間加熱後、 94°C 20秒、 46°C 20秒、 68°C 3 0秒からなる反応を 1サイクルとして 5サイクル、さらに 94°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30 秒カゝらなる反応を 1サイクルとして 30サイクル)のいずれかの条件で行った。 PCR後、
反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断 片を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用い、添付説明書記載の方法で精製 し、滅菌水 30 μ 1で溶出した。各 DNA断片の塩基配列は、 BigDye Terminator Cycle S equencing Kit (Applied Biosystems)を用い、 DNAシークェンサ一 ABI PRISM 3100 G enetic Analyzer (Applied Biosystems)にて、添付説明書記載の方法に従い決定した 。本方法により決定した配列群を解析ソフト GENETYX- SV/RC Version 6.1 (Genetyx )にて比較解析し、異なる配列を有するものを選択した。
[0131] 3-3.クローユング用抗体可変領域 DNA断片の調製
クローニング用制限酵素 Sfi I切断サイトを抗体可変領域増幅断片の両末端へ付カロ するために、以下の操作を行った。
Sfi I切断部位付加 VH断片(Sfi I-VH)増幅のために、プライマー HBの(Gly4Ser)2- リンカ一配列を Sfi I切断部位を有するに示す配列(配列番号: 42)へ変更したもの( プライマー VH- 5, end)を用意した。各 0.5 1の 10 M配列特異的プライマー VH- 5 , endおよび 10 Mプライマー scfor (J. Immunol. Methods 1997; 201 : 35- 55)を用い て、反応液 20 L ( 3-2で調製した精製 VH cDNA増幅断片溶液 1 μ 1, KOD plus buffe r (東洋紡績)、 0.2 mM dNTPs, 1.5 mM MgCl , 0.5 units DNA polymerase KOD plus
2
(東洋紡績))を調製した。 PCRは、サーマルサイクラ一 GeneAmp PCR system 9700 ( Parkin Elmer)を用いて、断片の増幅の効率性に従い、条件 A (98°Cで 3分間加熱後、 98°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒からなる反応を 1サイクルとして 32サイクル)ないし 条件 B (94°Cで 3分間加熱後、 94°C 20秒、 46°C 20秒、 68°C 30秒力 なる反応を 1サイ クルとして 5サイクル、さらに 94°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒からなる反応を 1サイク ルとして 30サイクル)のいずれかの条件で行った。 PCR後、反応液を 1 %ァガローズゲ ル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断片を QIAquick Gel Extracti on Kit (QIAGEN)にて添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 Lで溶出した。
[0132] マウス抗体 L鎖可変領域 (VL) cDNA断片増幅のために、まず Krebberらの報告 (J. I mmunol. Methods 1997; 201 : 35- 55)記載の各 0.5 μ Lの 100 μ M LBプライマー混合 物および 100 M LFプライマー混合物を用いて、反応液 25 L (3-lで調製した c-D NA溶液 2.5 μ L, KOD plus buffer (東洋紡績)、 0.2 mM dNTPs, 1.5 mM MgCl , 0.75
units DNA polymerase KOD plus (東洋紡績))を調製した。 PCRは、サーマルサイクラ 一 GeneAmp PCR system 9700 (Parkin Elmer)を用いて、断片の増幅の効率性に従 い、 94°Cで 3分間加熱後、 94°C 20秒、 46°C 20秒、 68°C 30秒力 なる反応を 1サイク ルとして 5サイクル、さらに 94°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒からなる反応を 1サイクル として 30サイクルの条件で行った。 PCR後、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に 供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断片を QIAqucick Gel Extractio Kit (QIAGE N)にて添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 Lで溶出した。該断片はその C 末端にプライマー LF由来の(Gly4Ser)3-リンカ一配列が付加された状態にある。該 断片 C末端へ Sfi I切断部位を付加する目的で、プライマー LFの(Gly4Ser)3-リンカ一 配列を Sfi I切断部位を有するに示す配列(配列番号: 43)へ変更したもの(プライマ 一 VL-3' end)を用意した。 Sfi I切断部位付加 VL断片(Sfi I-VL)増幅のために、各 0. 5 μ Lの 10 μ M VL- 3, endプライマー混合物および 10 M scbackプライマーを用いて 、反応液 20 L (精製 VL cDNA増幅断片溶液 1 μ L, KOD plus buffer (東洋紡績)、 0 .2 mM dNTPs, 1.5 mM MgCl , 0.5 units DNA polymerase KOD plus (東洋紡績))を
2
調製した。 PCRは、サーマルサイクラ一 GeneAmp PCR system 9700 (Parkin Elmer)を 用いて、 94°Cで 3分間加熱後、 94°C 20秒、 46°C 20秒、 68°C 30秒からなる反応を 1サ イタルとして 5サイクル、さらに 94°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒からなる反応を 1サイ クルとして 30サイクルの条件で行った。 PCR後、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳 動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断片を QIAquick Gel Extraction Kit (QI AGEN)を用い、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 Lで溶出した。
[0133] 精製 Sfi I-VHおよび Sfi I-VL断片は Sfi I (宝酒造)にて添付説明書記載の方法に従 い反応液を調製し、 50°Cで一晩消化を行った。その後、反応液を QIAquick PCR Puri fication Kit (QIAGEN)を用いて添付説明書記載の方法で精製し、該キット添付の Buf fer EB 30 μ Lで溶出した。
[0134] 3-4.二重特異性 IgG抗体発現用プラスミド
目的の二重特異性 IgG抗体を産生する際に、各 H鎖のへテロ分子を形成させるた めに IgGlの knobs- into- holes技術(Ridgway et al., Protein Eng. 1996; 9: 617- 621)を 参考に IgG4の CH3部分へのアミノ酸置換体を作製した。タイプ a (IgG4 y a)は Y349C
、 T366W置換体であり、タイプ b (IgG4 y b)は E356C、 T366S、 L368A、 Y407Vの置換 体である。さらに、両置換体のヒンジ領域にも置換 (-ppcpScp- - & -ppcpPcp-)を導 入した。本技術により、殆どへテロ体となり得る力 L鎖についてはその限りでなぐ不 必要な抗体分子の生成がその後の活性測定へ影響を及ぼしかねな、。そのため、 本方策では各特異性を有する抗体分子片腕 (HL分子と称する)を別々に発現させ細 胞内で目的型二重特異性 IgG抗体を効率的に作らせる為に各 HL分子に対応する発 現ベクターとして異なる薬剤で誘導力 Sかかるものを用いた。
[0135] 抗体分子片腕 (便宜上右腕 HL分子と称する)の発現用として、テトラサイクリン誘導 型ベクター pCDNA4 (Invitrogen)へ H鎖な!/ヽし L鎖それぞれの該領域(図 1な!、し図 2 )、すなわち動物細胞用シグナル配列(IL3ss) (Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1984; 81 : 1075)の下流に適当なマウス抗体可変領域 (VHな!、し VL)とヒト IgG4 γ a定常領域( 配列番号: 44)な 、し κ定常領域 (配列番号: 45)を組み込んだもの(pcDNA4-g4H ないし pcDNA4- g4L)を作製した。まず、 pcDNA4をそのマルチクローユングサイトに存 在する制限酵素切断サイト Eco RVおよび Not 1 (宝酒造)で消化した。適当な抗体可 変領域を有するキメラ二重特異性抗体右腕 H鎖な ヽし L鎖発現ユニット (それぞれ約 1 .6 kbないし約 1.0 kb)を Xho 1 (宝酒造)で消化した後に、 QIAquick PCR Purification Kit (QIAGEN)にて添付説明書記載の方法で精製し、 DNA polymerase KOD (東洋紡 績)を用いて添付説明書記載の反応液組成にて 72°C10分間反応させ、末端を平滑 化した。該平滑化末端断片を QIAquick PCR Purification Kit (QIAGEN)にて添付説 明書記載の方法で精製し、 Not 1 (宝酒造)で消化した。該 Not I-blunt断片 (それぞれ 約 1.6 kbないし 1.0 kb)と該 Eco RV-Not Iで消化した pcDNA4を、 Ligation High (東洋 紡績)を用いて添付説明書記載の方法に従い連結反応を行った。該反応液により大 腸菌 DH5 a株(Competent high DH5 a (東洋紡績) )を形質転換した。得られたアン ピシリン而性クローンより QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN)を用いて各々プラスミ ド DNAを単離した。
[0136] もう一方の片腕 (便宜上左腕 HL分子と称する)はエタダイソン類似体誘導型べクタ 一 pIND (Invitrogen)へ H鎖ないし L鎖それぞれを(図 3ないし図 2)、すなわち動物細 胞用シグナル配列(IL3ss) (EMBO. J. 1987; 6: 2939)の下流に適当なマウス抗体可
変領域 (VHな 、し VL)とヒト IgG4 γ b定常領域 (配列番号: 46)な 、し κ定常領域 (配 列番号: 45)を組み込んだもの(pIND- g4Hな!、し pIND- g4L)を前述の方法に則り作 製し、各々のプラスミド DNAを単離した。
[0137] 3-5.二重特異性抗体発現ベクター構築
3- 4で調製されたテトラサイクリン誘導型発現プラスミド (PCDNA4- g4Hな 、し pcDNA 4-g4L)を Sfi Iで消化し、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供した。もともと有し て 、た抗体可変領域部分 (VHな 、し VL (図 1な 、し図 2参照))が除かれた断片 (約 5 kb)を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用い、添付説明書記載の方法で精 製し、滅菌水 30 Lで溶出した。該断片と、それぞれに対応する 3-3で調製された Sfi I消化抗 F.IXa抗体由来 Sfi I-VHないし Sfi I-VL断片を Quick Ligation Kit (New Engla nd Biolabs)を用いて添付説明書記載の方法に従い連結反応を行った。該反応液に より大腸菌 DH5 α株(Competent high DH5 a (東洋紡績))を形質転換した。また、 Sfi I消化エタダイソン類似体誘導型発現プラスミド (実施例 3- 4、 pIND- g4Hな ヽし pIND- g4L)から、上述と同様の手法で抗体可変領域部分 (VHな 、し VL (図 3な 、し図 2参 照))を除いた断片と、それぞれに対応する 3-3で調製された Sfi I消化抗 F.X抗体由 来 Sfi I-VHないし Sfi I-VL断片を、同様の手法にて組込んだ。
[0138] 得られた各々のアンピシリン耐性形質転換体は、挿入断片を挟み込むようなプライ マーを用いて、コロニー PCR法にて目的断片の挿入を確認した。まず、抗 F.IXa抗体 キメラ H鎖ないし L鎖発現ベクターのために、挿入部位上流に存在する CMV Forward priming siteヘア-一ルする 21- merのプライマー CMVF (配列番号: 47)と挿入部位 下流に存在する BGH Reverse priming siteヘア-一ルする 18- merのプライマー BGH R (配列番号: 48)を合成した (Sigma Genosys)。抗 F.X抗体キメラ H鎖ないし L鎖発現 ベクターのために、挿入部位上流ヘアニールする 24-merのプライマー EcdF (配列番 号: 49)と挿入部位下流に存在する BGH Reverse priming siteヘアニールする 18- me rのプライマー BGHR (配列番号: 48)を合成した(Sigma Genosys)。コロニー PCRのた めに、反応液 20 L (各 10 μ Μプライマー 0.2 μ L、 KOD dash buffer (東洋紡績)、 0.2 mM dNTPs、 0.75 units DNA polymerase KOD dash (東洋紡績))を調製した。該反応 液へ、形質転 ·細胞を適量投入し PCRを行った。 PCRは、サーマルサイクラ一 Gen
eAmp PCR system 9700 (Parkin Elmer)を用いて、 96°Cで 1分間加熱後、 96°C 10秒、 55°C 10秒、 72°C 30秒力 なる反応を 1サイクルとして 30サイクル反応させる条件より 行った。 PCR後、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供し、 目的サイズの増幅断 片が得られたクローンを選択した。該 PCR産物は、 ExoSAP-IT (Amersham Bioscience s)を用いて添付説明書に従い、過剰のプライマーと dNTPsの不活性ィ匕を行った。各 D NA断片の塩基配列は、 BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosyste ms)を用い、 DNAシークェンサ一 ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer (Applied Biosyst ems)にて添付説明書記載の方法に従い決定した。本方法により決定した配列群を 解析ソフト GENETYX- SV/RC Version 6.1 (Genetyx)にて解析し、 VHについて挿入 欠失変異等の入っていない目的クローンを、また、 VLについてハイプリドーマで使用 された P3U1由来偽 VL遺伝子とは異なり挿入欠失変異等のはいっていない目的クロ ーンを選択した。
[0139] 該目的クローンから、 QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN)を用いて各々プラスミド DNAを単離し、 100 Lの滅菌水へ溶解した。抗 F.IXa抗体キメラ H鎖発現ベクター、 抗 F.IXa抗体キメラ L鎖発現ベクター、抗 F.X抗体キメラ H鎖発現ベクター、そして抗 F. X抗体キメラ L鎖発現ベクターを、それぞれ pcDNA4- g4IXaHnゝ pcDNA4- g4IXaLnゝ pi ND-g4XHnそして pIND-g4XLnと名付けた。各プラスミド溶液は、使用するまで 4°Cで 保存した。
[0140] 〔実施例 4〕 キメラ二重特異性抗体の動物細胞での発現
4-1.DNA溶液の調製
抗体右腕 HL分子発現用ベクター(pcDNA4- g4IXaHnそして pcDNA4- g4IXaLn)は テトラサイクリンにより発現誘導がかかる。テトラサイクリンが存在しな 、状況下で発現 を完全に抑制する為に Tetリプレッサーをコードするプラスミド pcDNA6/TR(Invitrogen )が要求される。また、抗体左腕 HL分子発現用ベクター(pIND- g4XHnそして pIND-g 4XLn)は昆虫ホルモンであるエタダイソン類似体 (ボナステロン A)により発現誘導が かかる。このとき、ボナステロン Aと反応し誘導を行うエタダイソンレセプターとレチノィ ド Xレセプターをコードするプラスミド pVgRXR (Invitrogen)が要求される。従って、動 物細胞のトランスフエクシヨンの為に計 6種類のプラスミド DNA混液を調製した。細胞
培養液 1 mLの為に、 pcDNA4- g4IXaHn、 pcDNA4- g4IXaLn、 pIND- g4XHnそして pIN D- g4XLnを各 218.8 ng、 pcDNA6/TRそして pVgRXRを各 1312.5 ng用いた。
[0141] 4- 2.動物細胞のトランスフ クシヨン
ヒト胎児腎癌細胞由来 HEK293H株(Invitrogen)を 10 % FCS (MOREGATE)を含む D MEM培地 (Invitrogen)へ懸濁し、 5 X 105個/ mLの細胞密度で接着細胞用 12-wellプレ ート(CORNING)の各 wellへ 1 mLずつ蒔きこみ COインキュベーター(37°C、 5 % CO
2 2
)内で培養した。 4-1で調製したプラスミド DNA混液をトランスフエクシヨン試薬、 Lipofe ctamine 2000 (Invitrogen) 7 μ Lと Opti- MEM I培地(Invitrogen) 250 μ Lの混液へ加え て室温 20分間静置したものを各 wellの細胞へ投入し、 4〜5時間、 COインキュベータ
2
一(37°Cにて 5 % CO )内でインキュベートした。
2
[0142] 4-3.二重特異性 IgG抗体の発現誘導
前項のようにトランスフエクシヨンした細胞培養液力も培地を吸引除去し、 1 μ g/mL のテトラサイクリン(和光純薬工業)を含む 1 mL CHO-S-SFM- II (Invitrogen)培地を 投入し、 COインキュベーター(37°C、 5 % CO )内で 1日培養して、抗体右腕 HL分子
2 2
の第一次発現誘導を行った。その後、培地を吸引除去し、一旦 1 mL CHO-S-SFM-I I培地にて洗浄した後、 5 μ Μのポナステロン A (Invitrogen)を含む 1 mL CHO-S-SFM -Π培地を投入し、 COインキュベーター(37°C、 5 % CO )内で 2日な!、し 3日培養して
2 2
、抗体左腕 HL分子の第二次発現誘導を行い培地中へ二重特異性 IgG抗体を分泌さ せた。培養上清は回収された後、遠心分離 (約 2000 g、 5分間、室温)して細胞を除 去し、必要に応じて Microcon(R) YM- 50 (Millipore)で濃縮を行った。該サンプルは使 用するまで 4°Cで保存した。
[0143] 〔実施例 5〕 ヒ HgG濃度の定量
Goat affinity purined antibody to human IgG Fc (し appel) coating bufferにて 1 μ g/ mUこ調製し、 Nunc- Immuno plateに固相化した。 Diluent buffer (D.B.)にてブロッキン グ処理した後、 D.B.を用いて適当に希釈した培養上清サンプルを添加した。また、抗 体濃度算出のためのスタンダードとして、 1000 ng/mLから 2倍系列で D.B.にて 11段階 希釈したヒ HgG4 (ヒト型化抗 TF抗体、 WO 99/51743参照)を同様に添加した。 3回洗 净したのち、 Goat anti-human IgG, alkaline phosphatase (Biosource International)
反応させた。 5回洗浄したのち、 Sigma 104(R) phosphatase substrate (Si gma— Aldrich) を基質として発色させ、吸光度リーダー Model 3550 (Bio-Rad Laboratories)〖こより、参 照波長 655 nmとして 405 nmの吸光度を測定した。 Microplate Manager III (Bio-Rad L aboretories)ソフトウェアを用いて、スタンダードの検量線力も培養上清中のヒ HgG濃 度を算出した。
[0144] 〔実施例 6〕 F.VIIIa (活性ィ匕凝固第 Vin因子)様活性アツセィ
二重特異性抗体の F.VIIIa様活性は、以下の酵素アツセィで評価した。また、以下 の反 J心は全て至温で行つ 7こ。 3.75 μ g/mLの Factor IX (Enzyme Research Laboraton es) 40 μ Lと抗体溶液 10 μ Lの混合液を 96穴プレート中で 1時間インキュベーションし た。さらにその混合揿に、 10 ng/mLの Factor XIa (Enzyme Research Laboratories) 10 μ L, 50 μ g/mLの Factor X (Enzyme Research Laboratories) 20 μ L, 400 μ g/mLの ph を含む TBSB (以下、 T
BSB-Sと称す) 15 /z Lを添加し、酵素反応を開始させた。 30分間反応させたのち、 0.5 M EDTA 10 μ Lをカ卩えることにより停止させた。
[0145] 発色基質溶液 50 μ Lをそれぞれのゥヱルに加えた後、 0分、 30分の 405 nm (参照波 長 655 nm)における吸光度を Model 3550 Microplate Reader (Bio Rad Loboratories) により測定した。 F.VIIIa様活性は、抗体添加の 30分間の吸光度変化値から抗体無添 加の 30分間の吸光度変化値を引いた値で表した(図 4および 5参照)。
[0146] Phospholipidの溶媒には TBSB、 Factor XIa、 Factor IX及び Factor Xの溶媒には TB SB-Sを用いた。発色基質溶液は、添付説明書に従い溶解したテストチーム発色基質 S-2222 (Chromogenix)とポリブレン液 (0.6 mg/L hexadimethrine bromide (Sigma) )の 1 : 1混合液である。
さらに、最も活性の高力つた XB12/SB04について、 F.VIIIa様活性の濃度依存性を 測定した (図 6)。
[0147] 〔実施例 7〕 血漿凝固アツセィ
血友病 A血液の凝固能を二重特異性抗体が是正するか明らかにするために、 F.VII I欠乏血漿を用いた活性ィ匕部分トロンボプラスチン時間 (APTT)に対する同抗体の影 響を検討した。様々な濃度の抗体溶液 L、 F.VIII欠乏血漿 (Biomerieux^O /z L
及び APTT試薬(Dade Behring) 50 Lの混合液を 37°Cで 3分間加温した。凝固反応 は 20 mMの CaCl (Dade Behring^O /z Lを同混合液に加えることにより開始させた。 C
2
R-A(Amelung)が接続された KClOA(Amelung)により凝固するまでの時間を測定した (図 7および 8)。
さらに、最も凝固時間の短縮効果の高力つた XB12/SB04について濃度依存性を測 定した(図 9)。
[0148] 〔実施例 8〕 抗体精製
実施例 4に記載の方法で得られた 10mLの培養上清を Centricon(R) YM-50 (Millipor e)により、 1 mLまで濃縮した。これに 10 μ Lの 10 % BSA、 10 μ Lの 1 % Tween(R) 20及び 100 μ Lの rProtein A Sepharose Fast Flow (Amersham Biosciences;を添ノ JUし、 4°C でー晚転倒混和した。その溶液を 0.22 μ mのフィルターカップ Ultrafree(R)- MC (Millipo re)に移し、 0.01 % Tween(R)20を含む TBS 500 μ Lにて 3回洗浄後、 rProtein A Sepharo se™榭脂を 100 しの 0.01 % Tween(R) 20を含む 10 mM HC1, pH 2.0に懸濁して 3分間 静置したのち、抗体を溶出させた。直ちに、 5 μ Lの 1M Tris-HCl , pH 8.0をカ卩えて中 和した。 Microplate Manager III (Bio-Rad Laboretories)ソフトウェアを用いて、スタン ダードの検量線カゝら培養上清中のヒ HgG濃度を算出した。抗体濃度は実施例 5に従 い定量した。
[0149] 〔実施例 9〕抗 F.X抗体の GST-AP ウェスタンブロッテイング
F.Xの活性化ペプチド (AP)とグルタチオン Sトランスフェラーゼ (GST)との融合タンパ ク (GST-AP)を発現する組換え大腸菌を構築した。ヒト F.Xの全長翻訳領域をカバー する cDNAをヒト肝臓 Marathon- Ready cDNA(Clontech)から PCR法により増幅後、これ を铸型にさらに AP領域 (Leytus et al., Biochemistry 1986; 25: 5098)をコードする領域 を PCR法により増幅し pGEM- Tベクター (Promega)へサブクローユングし GST- APをコ ードする pGEX- F10APを得た。該プラスミドを形質転換した大腸菌を培養し、 OD 600 =0.8にて 1 mM IPTGを添カ卩し GST- APの発現誘導を行った。培養液を遠心 (3,000 x g , 30分間、 4°C)後、菌体を回収し使用に供するまで- 20°Cにて保存した。
[0150] その菌体ペレットを培養量の 1/20量の PBSで再懸濁し、懸濁液 0.1 mLに対し、 2.4 mLの割合で SDS- PAGEサンプルバッファー(IWAKI)を加え、 95°C、 5分間ボイルした
。 SDS-PAGE mini (14 %)ゲル(旭テクノグラス)の各ゥヱルにその反応溶液 10 μ Lをカロ え、電気泳動を行った。電気泳動後のゲルをセミドライブロッター (BIO-RAD)を用い て Immobilon— P™ Transfer Membrane (MILLIPORE)へ転写し、 BT— PBS (2 % BSAと 0. 05 % Tween(R) 20を含む PBS)でブロッキングした。ブロッキング終了後、実施例 1—4で 精製された抗 F.Xマウス抗体 SB04または SB06を BT-PBSで 2 μ g/mLに希釈したものと 1時間反応させた。 0.05 % Tween(R) 20を含む PBSで洗浄後、 BT-PBSで 2000倍希釈し たアルカリホスファターゼ標識ャギ抗マウス IgG (H+L) (Zymed Laboratories)と 1時間 反応させた。 0.05 % Tween(R) 20を含む PBSで洗浄後、発色基質 BCIP/NBT Phosphat ase Substrate (Kirkegaard & Perry Laboratories)で発色させた (図 10を参照)。
[0151] 〔実施例 10〕 免疫マウス脾臓由来 scFvライブラリーからの二重特異性抗体の取得 10 - 1.抗原および免疫
BALB/cマウス(雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 3匹、 MRL/lprマウ ス (雄、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 3匹、および C57BL/6Nマウス (雄 、免疫開始時 6週齢、 日本チヤ一ルス'リバ一) 3匹に、抗原である Factor IXa j8 (Enzy me Research Laboratories, Inc.)もし、 Factor X (enzyme Research Laboratories, I nc.)を以下の通り免疫した。初回免疫として FCA (フロイント完全アジュバント H37 Ra ( Difco laboratories) )でェマルジヨン化した抗原を 40 g/head皮下投与した。 2週間後 に FIA (フロイント不完全アジュバント(Difco laboratories) )でェマルジヨン化した抗原 を 40 /z g/head皮下投与した。以後 1週間間隔で追加免疫を 3回行い、最終免疫の 8 日後にマウスより脾臓を摘出した。
[0152] 10 - 2.ファージライブラリーの構築
実施例 1 1および 2— 1で作出した免疫マウス摘出脾臓の一部、ならびに実施例 1 0— 1にて作出した免疫マウスからの摘出脾臓を Trizol Reagent (Invitrogen)へ投入( 50 mg spleen/ml of the reagent)し、ガラスホモジナイザーを用いて均質化した。その 後、試薬添付マニュアル記載の方法に従い、 Total RNAを抽出した。抽出溶液から P olyATract System 1000キット (Promega)を用いて添付マニュアル記載の方法に従い p olyA(+)RNAを抽出した。 RT— PCR(SuperScript III First-Strand Synthesis System for RT-PCR, Invitrogen)にて c-DNAを合成し、使用に際するまで- 20°Cで保存した。
マウス抗体重鎖可変領域 (VH)および軽鎖可変領域 (VL)cDNAの増幅用プライマ 一として、実施例 3— 2および 3— 3で用いた HBプライマー混合物、 HFプライマー混 合物、 LBプライマー混合物、そして LFプライマー混合物を用意した。 VH増幅用とし て各 1 μ Lの 100 Μ ΗΒプライマー混合物および 100 μ M HFプライマー混合物を用 いて、反応液 50 L (cDNA溶液 2.5 μ 1、 KOD plus buffer (東洋紡績)、 0.2 mM dNTPs , 1.5 mM MgCl , 3.75 units DNA polymerase KOD plus (東洋紡績))を調製した。ま
2
た、 VL増幅用として各 1 μ Lの 100 M LBプライマー混合物および 100 μ M LFプラ イマ一混合物を用いて、上記と同様の組成反応液 (50 L)を調製した。 PCRは、サー マルサイクラ一 GeneAmp PCR system 9700 (Parkin Elmer)を用いて、 98°Cで 3分間加 熱後、 98°C 20秒、 58°C 20秒、 72°C 30秒力 なる反応を 1サイクルとして 32サイクルを 行った。 PCR後、反応液を 2 %ァガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 4 00 bp)の増幅断片を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用い、添付説明書記 載の方法で精製し、滅菌水 50 1で溶出した。次に scFv断片を増幅するために、反応 液 100 μ L (VH断片溶液 3 μ 1、 VL断片溶液 3 μ 1、 KOD plus buffer (東洋紡績)、 0.2 m M dNTPs, 1 mM MgCl , 5 units DNA polymerase KOD plus (東洋紡績))を 10本調
2
製し、 lstPCR (94°Cで 3分間加熱後、 94°C 1分、 63°C 4分、力もなる反応を 1サイクル として 7サイクル)を行った後、 63°Cに保温した状態で各チューブへ 10 μ M scforプラ イマ一、および 10 μ M scbackプライマーを各 2.5 μ 1ずつ添カ卩し、さらに 2nd PCR(94°C で 35秒加熱後、 94°C 2分、 63°C 2分、カゝらなる反応を 1サイクルとして 30サイクル)を行 つた。 PCR後、反応液を QIAquick PCR purification kit (QIAGEN)にて精製し、精製 産物を制限酵素 Sfi 1(宝酒造)にて 50°Cで一晩消化を行った。消化物は 2 %ァガロー ズゲル電気泳動に供した後、 目的のサイズ (約 800 bp)の増幅断片を QIAquick Gel E xtraction Kit (QIAGEN)を用い、添付説明書記載の方法で精製し適量の滅菌水にて 溶出した。ファージ gene IIIタンパク上に scFvを提示させるため、ファージミドベクター として、 pELBGlacI (図 11参照)を用いた。該ベクター 10 gを制限酵素 Sfi 1(宝酒造)に て 50°Cでー晚消化を行った後、 目的のサイズ (約 5 kb)の切断断片を QIAquick Gel E xtraction Kit (QIAGEN)を用い、添付説明書記載の方法で精製し適量の滅菌水にて 溶出した。精製 PCR産物と精製ベクター断片を、 Ligation High (東洋紡績)を用いて
添付説明書記載の方法に従い、 16°C—晩連結反応を行った。該反応液により大腸 菌 XLlblue electrocompetent cell (Stratagene)あるいはエレクト口マックス DH12s(Invit rogen)を添付説明書記載の方法に従いエレクトポレーシヨン法による形質転換を行つ た。得られたアンピシリン耐性形質転換体を全て回収し、組換え大腸菌ライブラリーと して使用に供するまで- 20°Cにて保存した。
[0154] 該大腸菌ライブラリー (2 X 109cfo)を 50 mL 2xYTAG (100 μ g/mLアンピシリン、 2 % グルコースを含む 2χΤΥ)に植菌し、 OD 600 0.4〜0.5まで 37°Cにて培養した。 4 x 1011 のヘルパーファージ VCSM13(Stratagene)をカ卩ぇ 37°C、 15分間静置して感染させた。 ここに 450 mL 2xYTAK (100 μ g/mLアンピシリン、 25 μ g/mLカナマイシンを含む 2χΤ Υ)、 25 L 1 mol/L IPTGを添カ卩し、 30°C 10時間培養した。遠心分離にて培養上清 を回収し、 100 mL PEG- NaCl溶液(10 %ポリエチレングリコール 8000, 2.5 mol/L Na CI)を混合後、 4°C、 60分間静置した。 10,800 x g、 30分間遠心にてファージを沈殿さ せ、沈殿物を 40 mLの水に懸濁し、 8 mL PEG- NaCl溶液を混合後、 4°C、 1時間静置 した。 10,800 X g、 30分間遠心にてファージを沈殿させ 5 mL PBSに懸濁しファージラ イブラリーを得た。該ファージは使用に際するまで、 4°Cにて保存した。
[0155] 10 - 3.パンユング法による結合ファージ濃縮
Factor IXa j8もしくは Factor Xを No— Weigh Premeasured NHS— PEO— Biotin Microt
4
ubes (Pierce)を用いてピオチン標識した。 10— 2で作成されたファージライブラリー溶 液 600 μ 1に 100 pmolのピオチン標識 Factor IXa βもしくは Factor Xを加え、 60分間 抗原と接触させた。 5% M-PBS (5%w/vスキムミルクを含む PBS)で洗浄した Dynabeads M-280 Streptavidin (DYNAL) 600 μ Lを加え、 15分間結合させた。ビーズ結合ファ ージを 1 mLの PBST (0.1 % Tween-20を含む PBS)にて何回か洗浄した後、 PBSにて洗 浄した。 0.8 mLの 0.1 mol/Lグリシン/ HCl (pH 2.2)中にビーズを 5分間懸濁し、ファ 一ジを溶出した。
[0156] あるいは、ィムノプレート (MaxiSorp, Nunc)へ固相化した Factor IXa j8もしくは Factor
X (10 μ g/well χ 5)に、 2.5 % w/vスキムミルクで 15分間インキュベートしたファージラ イブラリー (80 1/well X 5)を加え、 60分間抗原と接触させた。抗原結合ファージを 1 m Lの PBST (0.1 % Tween- 20を含む PBS)にて何回か洗浄した後、 PBSにて洗浄した。 0.
8 mLの 0.1 mol/Lグリシン/ HCl (pH 2.2)にて 5分間インキュベートし、ファージを溶出 した。
[0157] 回収したファージ溶液に 45 μ L 2 mol/L Trisを添カ卩して中和し、対数増殖期 (OD 6 00 = 0.4〜0.5) XL1- Blue 10 mLに添加、 37°C、 30分間静置することで感染させた。こ れを 2xYTAGプレートに広げ、 30°Cで培養した。コロニーを回収し、 2xYTAGに植菌、 OD 600 = 0.4〜0.5まで 37。Cにて培養した。培養液 10 mLに 5 μ L lmol/L IPTG, 1011 pfoヘルパーファージ (VCSM13)を添加し 37°C 30分間静置した。遠心集菌後、 2xYT AK 100 mLに再懸濁し、 30°C、 10時間培養した。遠心分離にて培養上清を回収し、 2 0 mL 10 % PEG- 5 mol/L NaCl溶液を混合後、 4°C、 20分間静置した。 10,800 x g、 30 分間遠心にてファージを沈殿させ、 2 mL PBSに懸濁したものを次のパンユングに供 した。
[0158] 10 -4.ファージ ELISA
上記のシングルコロニーを 100 L 2xYTAGに植菌し、 30°Cでー晚培養した。この 5 μ Lを 500 μ L 2xYTAGに植菌、 37°C、 5時間培養後、ヘルパーファージ 2 x 108pfoを 投入し 37°Cにて 30分間静置、さらに 37°Cにて 30分間攪拌培養後、 0.5 mM IPTGを含 む 2xYTAKを 120 L添カ卩した。 30°Cにてー晚培養し、遠心上清を ELISAに供した。ビ ォチン標識抗原のパンユングにて得られたクローンの ELISAのために、 1.0 g/mLの ピオチン標識抗原でコートした StreptaWell 96マイクロタイタープレート(Roche)を用 いた。また、ネイティブ抗原のパンユングにて得られたクローンの ELISAのために、 1.0 /z g/mLのネイティブ抗原を固相化したィムノプレート (MaxiSorp, Nunc)を用いた。 PBS Tにて洗浄し抗原を除いた後、ブロッキングバッファ一として 2 % M-PBS 200 μ Lある いは 2 % BSA-PBS(2%w/v BSAを含む PBS)で室温 1時間ブロッキングした。バッファー を除き、ここに培養上清を加え 60分間静置しファージを結合させた。洗浄後、結合フ ァージはブロッキングバッファ一にて希釈した HRP結合抗 M13抗体(Amersham Pharm acia Biotech)と TMB基質(Zymed)で検出し、 1 mol/L H SO添加により反応を停止し
2 4
た後、プレートリーダーにて A450の値を測定した。
[0159] 10 - 5.配列決定とクローン選択
ELISAにて陽性であったクローンの組換え大腸菌 2xYTAG培養液力もプライマー PB
G3-F1 (5'- CAGCTATGAAATACCTATTGCC - 3'Z配列番号: 38)と PBG3- Rl (5' - CTTTTCATAATCAAAATCACCGG - 3'Z配列番号: 39)を用いて PCRにて scFv 領域を増幅し、その塩基配列決定した。培養液 1 L、 10 X KOD Dash緩衝液 1.5 μ L 、 10 μ mol/Lプライマーを 0.2 μ Lづっ、 KOD Dashポリメラーゼ(東洋紡績、 2.5 U/ μ L) 0.3 μ Lを含む PCR反応液 15 μ Lを、サーマルサイクラ一 GeneAmp PCR system 97 00(Perkin Elmer)で 96°C、 10秒、 55°C、 10秒、 72°C、 30秒、 30サイクルの増幅を行った 。 PCR後、 5 μ Lの反応液に ExoSAP- IT (アマシャム)を 3 μ L添加し、 37°C、 15分間、 引き続き 80。C、 15分間保温した。このサンプルについて PBG3-F2 (5'- ATTGCCTAC GGCAGCCGCT - 3'/配列番号: 40)あるいは PBG3- R2 (5,- AAATCACCGGAAC CAGAGCC -3'Z配列番号: 41)をプライマーとして BigDye Terminator Cycle Seque ncing kit (Applied Biosystems)にて反応を行い、 Applied Biosystems PRISM 3700 D NA Sequencerで泳動した。塩基配列力 推定されるアミノ酸配列の CDR3の異なるク ローンを抗 Factor IXaについて 52クローン、及び抗 Factor Xについて 33クローンを選 択した。
[0160] 10-6.二重特異性 IgG抗体発現ベクターの構築
scFv抗体を IgG型として発現させるために、実施例 3— 3、 3—4、そして 3— 5に示す 同様の方策にて抗体可変領域 (VH,VL)を誘導型発現ベクターにクロー-ングを行つ た。抗 F.IXa抗体可変領域 (VHおよび VL)はテトラサイクリン誘導型ベクター (それぞ れ pcDNA4- g4Hおよび pcDNA4- g4L)へ組み込まれた。抗 F.X抗体可変領域 (VHお よび VL)はエタダイソン類似体誘導型ベクター(それぞれ pIND-g4Hおよび pcDNA4- g4L)へ組み込まれた。 目的クローンから QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN)を用 いて各々プラスミド DNAを単離し、 100 μ Lの滅菌水へ溶解した。
[0161] 10- 7.キメラ二重特異性抗体の動物細胞での発現
実施例 4— 1に示す同様の方策で調製された DNA溶液を用いて、実施例 4— 2およ び 4 3に示す同様の方策にて動物細胞で発現させ、培養上清を回収した。該サン プルは使用するまで 4°Cで保存した。
[0162] 〔実施例 11〕 抗体精製
実施例 10— 7に記載の方法で得られた 10 mLの培養上清に 100 μ Lの rProtein A S
epharose™ Fast Flow (Amersham Biosciences)を添カ卩し、 4。Cでー晚転倒混和した。 その溶液を 0.22 μ mのフィルターカップ Ultrafree(R)- MC (Millipore)に移し、 0.01 % Tw een(R) 20を含む TBS 500 μ Lにて 3回洗浄後、 rProtein A Sepharose™榭脂を 100 μ L の 0.01 % Tween(R) 20を含む 10 mM HC1, pH 2.0に懸濁して 3分間静置したのち、抗 体を溶出させた。直ちに、 5 μ Lの 1M Tris-HCl , pH 8.0をカ卩えて中和した。 Microplat e Manager III (Bio-Rad Laboretories)ソフトウェアを用いて、ヒ HgG4 (ヒト型化抗 TF抗 体、 WO 99/51743参照)の検量線から培養上清中のヒ HgG濃度を算出した。抗体濃 度は実施例 5に従い定量した。
[0163] 〔実施例 12〕 F.VIIIa (活性化凝固第 VIII因子)様活性アツセィ
二重特異性抗体の F.VIIIa様活性は、以下の酵素アツセィで評価した。また、以下 の反 J心 fま全て至温で行つ 7こ。 15 μ g/mLの Factor IX (Enzyme Research Laboratories ) 10 μ Lと 100 mM CaClと 20 mM MgClを含む TBSB 5 μ Lと実施例 10— 7記載の方
2 2
法で得られた培養上清 50 μ Lの混合液を 96穴プレート中で 1時間インキュベーション し 7こ。さらにその混合揿'に、 10 ng/mLの Factor XIa (Enzyme Research Laboratories) 10 μ L, 50 μ g/mLの Factor X (Enzyme Research Laboratories) 20 μ L, 400 μ g/mLの phospholipid 5 Lを添カ卩し、酵素反応を開始させた。 30分間反応させたのち、 0.5 M EDTA 10 Lをカ卩えることにより停止させた。
[0164] 発色基質溶液 50 μ Lをそれぞれのゥヱルに加えた後、 0分、 60分の 405 nm (参照波 長 655 nm)における吸光度を Model 3550 Microplate Reader (Bio Rad Loboratories) により測定した。 F.VIIIa様活性は、抗体発現培養上清の 60分間の吸光度変化値から 抗体非発現培養上清の 60分間の吸光度変化値を引いた値で表した (図 12を参照)
Phospholipid, Factor XIa、 Factor IX及び Factor Xの溶媒には TBSBを用いた。発色 基質溶液は、添付説明書に従い溶解したテストチーム発色基質 S-2222 (Chromogeni X)とポリブレン液(0.6 mg/L hexadimethrine bromide (Sigma) )の 1 : 1混合液である。
[0165] 〔実施例 13〕 血漿凝固アツセィ
実施例 11の方法に従い調製した二重特異性抗体が血友病 A血液の凝固能を回復 するか明らかにするために、 F.VIII欠乏血漿を用いた活性ィ匕部分トロンボプラスチン
時間 (APTT)に対する同抗体の影響を、実施例 7で示す同様の方法で評価した(図 1 3を参照)。さらに、凝固時間の短縮効果の高かった A44/B26、 A69/B26について濃 度依存性を測定した (図 14、図 15を参照)。
[0166] 〔実施例 14〕 二重特異性 IgG抗体と F. VIIIとの併用検討
二重特異性抗体と F.VIIIとの併用検討は、以下の血漿凝固アツセィ条件で評価し た。 25 μ g/mL抗体溶液 40 μ L、 F.VIII欠乏血漿(Biomerieux) 50 μ Lの混合液を室 温で、 30分間インキュベーションした。さらにその混合液に、 1 U/mLの遺伝子組換え 型血液凝固第 Vin因子製剤コージネイト (R)FS (BAYER) lO ^ L及び APTT試薬 (Dade Behring^O /z Lを加え、 37°Cで 3分間加温した。凝固反応は 20 mMの CaCl (Dade Be
2
1ΐΓή¾) 50 /ζ Lを同混合液に加えることにより開始させた。 CR-A (Amelung)が接続され た KClOA(Amelung)により凝固するまでの時間を測定した(図 16を参照)。
[0167] 〔実施例 15〕 インヒビター血漿における二重特異性 IgG抗体の効果
インヒビター血漿における二重特異性 IgG抗体の効果は、以下の血漿凝固アツセィ 条件で評価した。 F.VIII欠乏血漿(Biomerieux) 50 μ Lに 100 μ g/mL抗ヒト F.VIII中和 抗体(Catalog Number:MAB3440、 CHEMICON) 10 μ Lの混合液を室温で、 30分間ィ ンキュベーシヨンした。この血漿をインヒビター血漿として用いた。このインヒビター血 漿に、 25 μ g/mL抗体溶液 40 μ L及び APTT試薬(Dade Behring) 50 μ Lを加え、 37°C で 3分間加温した。凝固反応は 20 mMの CaCl (Dade Behring) 50 Lを同混合液に
2
加えることにより開始させた。 CR-A(Amelung)が接続された KClOA(Amelung)により 凝固するまでの時間を測定した(図 17を参照)。
[0168] 〔実施例 16〕 二重特異性抗体のヒトイ匕
実施例 1〜7で取得した二重特異性抗体の中で、血液凝固時間の短縮効果が最も 高かった XB12(マウス抗 FactorlXa抗体)/ SB04(マウス抗 FactorX抗体)につ!/、て、以下 のようにヒト化を実施した。
[0169] 16— 1.ヒト抗体の相同性検索
一般公開されて ヽる Kabat Database (ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/databases/kabat/) および IMGT Database (http:〃 imgt.cines.fr/)よりヒト抗体アミノ酸配列データを入手 し、構築した Databaseを用いてマウス XB12-H鎖可変領域、マウス XB12- L鎖可変領
域、マウス SB04-H鎖可変領域、マウス SB04-L鎖可変領域に分けてホモロジ一検索 を行った。その結果、以下に示すヒト抗体配列と高い相同性を持つことが確認された ことからヒト化抗体のフレームワーク領域 (以下、 FR)に使用することにした。
(1) XB12- H鎖可変領域: KABATID- 020619 (Kabat Database)
(Marietteら、 Arthritis Rheum. 1993 ; 36 : 1315-1324)
(2) XB12- L鎖可変領域: EMBL Accession No. X61642(IMGT Database)
(Markら、 J Mol Biol. 1991; 222: 581-597.)
(3) SB04-H鎖可変領域: KABATID- 025255 (Kabat Database)
(Demaisonら、 Immunogetetics 1995 ;42 : 342-352)
(4) SB04- L鎖可変領域: EMBL Accession No. AB064111(IMGT Database) (Unpublis hed data)
(l)-(4)のヒト抗体の FRに各マウス抗体の相補性抗原決定領域 (以下、 CDR)を移植し たヒト化抗体を作製した。
[0170] また、 NCBIより一般公開されている相同性検索 Web site (http://www.ncbi. nlm.nih .gov/BLAST/)を使用して、(1)-(4)のヒト抗体に相同性の高いヒト抗体の分泌シグナ ル配列を検索した。検索により得られた以下に示す分泌シグナル配列を使用した。
(1) XB12- H鎖可変領域: GenBank Accession No. AF062120
(2) XB12- L鎖可変領域: GenBank Accession No. M74019
(3) SB04- H鎖可変領域: GenBank Accession No. BC019337
(4) SB04- L鎖可変領域: GenBank Accession No. AY204756
[0171] 16 - 2.ヒト化抗体遺伝子発現ベクターの構築
分泌シグナル配列から抗体可変領域にいたるアミノ酸配列をコードする塩基配列 にお!/、て、 50base程度の合成オリゴ DNAを 3,末端側が約 20base程度ハイブリダィズ するように交互に 12本作製した。さらに、抗体可変領域遺伝子の 5 '末端側にハイプリ ダイズし、 Xhol切断配列を有するプライマーと抗体可変領域遺伝子の 3 '末端側にハ イブリダィズし、 Sfil切断配列を有するプライマーを作製した。
[0172] 2.5 μ Μに調製した合成オリゴ DNAを各 1 μ Lで混合し、 lx TaKaRa Ex Taq Buffer, 0 .4 mM dNTPs, 0.5 units TaKaRa Ex Taq (全て宝酒造)をカ卩え、反応液 48 μ Lになるよ
うに調製した。 94°C 5分保温した後に、 94°C 2分、 55°C 2分、 72°C 2分からなる反応 を 2サイクル行い、各合成オリゴ DNAのアッセンブルおよび伸長反応を実施した。次 に、抗体遺伝子の 5,末端側および 3,末端側にハイブリダィズするプライマー (各 10 μ Μ)を 1 μ L添加し、 94°C 30秒、 55°C 30秒、 72°C 1分からなる反応を 35サイクル行い、 72°C 5分反応させ、抗体可変領域遺伝子を増幅した。 PCR後、反応液全量を 1 %ァ ガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断片を QIAquick G el Extraction Kit (QIAGEN)を用いて、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 μ 1で溶出した。該断片を pGEM- T Easy Vector Systems (Promega)を用いて、添付説 明書記載の方法でクローユングを行った。各 DNA断片の塩基配列は、 BigDye Termi nator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用い、 DNAシークェンサ一 ABI P RISM 3700 DNA Sequencer (Applied Biosystems)にて、添付説明書記載の方法に従 い決定した。
正しいヒトイ匕抗体可変領域遺伝子配列であることが確認されたプラスミドを Xholおよ び Sfilで消化した後に、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイ ズ(約 400 bp)の DNA断片を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いて、添付 説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 1で溶出した。また、実施例 3— 4で作製し たテトラサイクリン誘導型発現プラスミド (pcDNA4-g4H、 pcDNA4-g4L)およびェグダ ィソン類似体誘導型発現プラスミド(pIND- g4H、 PIND-g4L)を Xholおよび Sfilで消化 した後に、抗体定常領域を含む断片(約 5 kb)を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAG EN)を用いて、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 1で溶出した。 Xholおよ び Sfilで消化したヒト化 XB12抗体遺伝子断片 (H鎖可変領域 (以下 VH)または L鎖可変 領域 (以下 VL》と Xholおよび Sfilで消化したテトラサイクリン誘導型発現プラスミド (pcD NA4- g4H、 pcDNA4-g4L)を Rapid DNA Ligation Kit (Roche Diagnostics)を用いて添 付説明書記載の方法で連結反応を行った。また、 Xholおよび Sfilで消化したヒト化 SB 04抗体遺伝子断片 (H鎖可変領域または L鎖可変領域)と Xholおよび Sfilで消化したェ グダイソン類似体誘導型発現プラスミド(pIND- g4H、 pIND- g4L)を Rapid DNA Ligatio n Kit (Roche Diagnostics)を用いて添付説明書記載の方法で連結反応を行った。各 反応液の一部を用いて大腸菌 DH5 α株(東洋紡績)を形質転換した。
[0174] 16 - 3.ヒト化二重特異性抗体の調製
4種類のヒト化抗体発現ベクターと pcDNA6/TR、 pVgRXRを用いて、実施例 4— 2、 4 3に示す方法で HEK293Hへ遺伝子導入および発現誘導を行った。さらに、実施例 8、 5に示す方法で抗体精製および抗体濃度の定量を実施した。
[0175] 16 -4.ヒトイ匕二重特異性抗体の活性評価および抗体配列の改変
調製したヒト化-種特異性抗体およびキメラ-種特異性抗体 (XB12/SB04)の血漿 凝固能を評価するために、実施例 7の方法に従って、 F.VIII欠乏血漿を用いて APTT に対する抗体の影響を検討した。血液凝固能が低下したヒト化-種特異性抗体につ いて、活性上昇を目指して、ヒト抗体 FRのアミノ酸の改変した。また、熱安定性低下な どが危惧される XB12抗体 VHの CDR3のシスティン残基についてもァラニン残基に改 変した。具体的には、 QuikCnange Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene) 用 いて、添付説明書記載の方法でヒト化抗体発現ベクターに変異を導入した。 FR配列 のアミノ酸改変および血液凝固能の評価を繰り返すことで XB12/SB04と同等の活性 を有するヒトイ匕-種特異性抗体 (ヒト化 XB12抗体 (VH:hXB12f- A, VL:hXBVL) /ヒトイ匕 SB04抗体 (VH:hSB04e, VL:hSBVL- F31)を取得した(図 18)。
[0176] 〔実施例 17〕 二重特異性 IgG4抗体 H鎖発現用プラスミドの構築
さらに、 CDRシャフルされた L鎖を用いた A44と B26の二重特異性抗体の発現を実 施した。
CAGGプロモーターの下流に、 2つの Sfilサイトを挟んだ動物細胞シグナル配列とヒト IgGlCHl直前のイントロン、さらにその下流にヒト IgG4定常領域 cDNAを有するベクタ 一 pCAGGss_g4CHを構築した。これら Sfil間にシグナル配列プロセシング部位とスプ ライシング 'ドナー配列に挟まれた VH遺伝子を挿入することによって IgG4H鎖として 分泌させる動物細胞用発現ベクターを構築することが出来る。さらに H鎖がヘテロな 組み合わせである IgG4を優先的に発現させるために、 IgGlの knobs-into-holes(Prot ein Engineering vol.9, 617-621, 1996)を参考に IgG4の CH3部分へのアミノ酸置換体 を用いた。タイプ aは Y349C、 T366W置換体、タイプ bは E356C、 T366S、 L368A、 Y407 Vの置換体である。さらに H鎖のダイマー形成促進のためにヒンジにもアミノ酸置換 (- ppcpScp-→-ppcpPcp_)を導入した。シグナル配列はタイプ aにはマウス IL- 3、タイプ
bにはヒト IL- 6のものをそれぞれ用いて構築した(pCAGG- IL3ss- g4CHPa, pCAGG- 1 L6ss-g4CHPb)。 pCAGG- IL3ss- g4CHPaの Sfilサイトに上記実施例で得られた抗体 A 44の VH断片を挿入して pCAGG-chiA44-g4aを、抗体 A69の VH断片を挿入して pCA GG- chiA69- g4aを得た。一方、 pCAGG- IL6ss- g4CHPbの Sfilサイトに同じく抗体 B26 の VH断片を挿入し、 pCAGG- chiB26- g4bを得た。
[0177] 〔実施例 18〕 CDR交換 L鎖発現ベクターの構築
CAGGプロモーターの下流に、 2つの Sfilサイトを挟んだマウス IL-3シグナル配列とヒ ト kappa定常領域直前のイントロン、さらにその下流にヒト kappa鎖定常領域 (CL)エタ ソンを有するベクター pCAGG- kappa (pCAGG- IL3ss- hlgG light)を構築した(図 19)。 これら Sfil間にシグナル配列プロセシング部位とスプライシング ·ドナー配列に挟まれ た VL遺伝子を挿入することによって kappa鎖として分泌させる動物細胞用発現べクタ 一を構築することが出来る。
[0178] A44抗体 L鎖のフレームワーク、 CDR及び A50, A69, B26抗体 L鎖の CDRを組み合 わせた L鎖可変領域をコードする DNAを合成するために、 60塩基程度の合成オリゴ D
NAを末端が約 20 base程度ハイブリダィズするように交互に作製した。さら〖こ、 VL遺 伝子の 5'末端側にハイブリダィズし、シグナル配列プロセシング部位と Sfilサイトを有 するプライマー scbackと、 VL遺伝子の 3'末端側にハイブリダィズし、スプライシング' ドナー配列と Sfilサイトを有するプライマー scforを作製した。
[0179] A44LF1 (配列番号: 50)
GCCATGGCGGACTAC
CCACATCAGTAGGAGAC
A44LR1 (配列番号: 51)
GGCTACAGCAGTCCC
GTCTCCTACTGATGTGGA
A44LF2 (配列番号: 52)
GTGGGGACTGCT
CTACTGATTTAC
A44LR2 (配列番号: 53)
TTTAGG
A44LF3 (配列番号: 54) GGAGTO ACCATT
A44LR3 (配列番号: 55) ACAGAQ GAAATC
A44LF4 (配列番号: 56) CTGG GGACC
A44LR4 (配列番号: 57) GGAATTCGGCCCCi CACCACCGAACGT
A44LR4Gly (配列番号: 58) GGAATTCGGCCCCi CACCACCGAACGT
B26LRl_A44fr (配列番号: 59) GGCTACAGCAGTCCCCAC GTCTCCTACTGATGTGGA
B26LR2_A44fr (配列番号: 60) GAAGCG TTTAGG
B26LF4— A44fr (配列番号:61) CTGGCAGAT GTGGGACC
A69LR1— A44fr (配列番号: 62)
GTCTCCTACTGATGTGGA
A50LF4— A44fr (配列番号: 63)
GGACC
scback (配列番号: 64)
TTACTCGCGGCCCAGCCGGCCATGGCGGACTACAAAG
scfor (配列番号: 65)
GGAATTCGGCCCCCGAG
[0180] 10 μ Mに調製した合成オリゴ DNAを下記表 1の組み合わせで各 1 μ L混合し、 lx酵 素添付 Buffer, 0.33 mM dNTPs, 2.5単位 Proof Start Polymerase(Qiagen社製)もしく は LATaq (宝酒造)力も成る反応液 45 Lを調製した。 94°C 5分保温した後に、 94°C 1 分、 63°C 4分からなる反応を 7サイクル行い、続けて、 5 /z M scback, 5 M scfor溶液 を 5 μ L添加し、 94°C 30秒、 55°C 30秒、 72°C 30秒からなる反応を 30サイクル行い、 V L遺伝子を増幅した。
[0181] [表 1]
CD
B26LR2Af A44LF444寸 A44LF3 A44LF2r_ 寸 寸
_l 」
寸 A44LR2 A44LF4 A44LF3 A44LF1 寸 寸
寸 寸 寸
< < <
44L B2R2f AR1 A44LF2 A44LF1 A44LF46LA44r_
A44LR1 A44LR2 A44LF4 A44LR4 A44LR3 A44LF3 ί
A44LR2 A44LR1 A44LF2 A44LR4 A44LF3
B26LR1f2A44 A44LR4 A44LF3 A44LFr_
A44LR10 B26LR2A44f A44LR4 A44LR3 A44LF2 A5LF4A44frr__
2 A50F什 B26LR2A44f B6LR1A44f A44LF1L4A44 A44LR4 A44LR3 A44LF3rr__—
A69LR1A44f A44LR3 A44LF2 A44LF4 A44LR2 A44LR4r_
A6L什9R1 A44 A4LF2 A44LF4 A44LR4 A44LR3 A44LF34— CM csi CSJ
u_ u. U- _J 」 」
LF B26LR1 A44fG A A44LF2 A444 A44LR4l44LF3r 寸
y一 寸 寸
寸 寸 寸
< < <
26f A44LR2 BLR1A44 A44LR4Gl A44LR3 A44LF1 A44LF4ry_
A44LR1 A44LF2 A44LF1 A44LF4 A44LR4Gl A44LR3 A44LF3y
U- U- L- u_ Li_ IX. u. u.
_l _l _l _l _l _l
寸 寸 寸 寸 寸 寸 A44LR1G A44LF2 A44LF1 A44LF4 A44LR2 A44LR4 I y 」 」 」 」
寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 寸 < < < < < 4LR1 A44LR2 A4G44LR3 A44LF3 A44LF1 A44LR4l Ay < < < <
A44LR3 A44LR2し
寸
寸 A44LR1 A4LF24
<
1
寸 B26R2f A50LF4A44fLA44 A44LR4GI A44LR3 A44LF3rry__ 寸 ϋ. u.
」
ο G A44LR3 A44LF1 A44LF4 A44LR4ly -J
寸
< 什 < B26LR2A44f A69LR1 A44 A44LF3 A44LF2 A44LR3r—_
CD CD CD C3 CD CD
< < < as ca ca ca < : < < < < CO CO CO CO < < ca CQ < < < QQ CQ < n QQ : QQ < cn < CQ
QQ < <c < QQ < CO ca to ca CQ < < QQ < CQ O (0 PCR後、反応液全量を QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen)を用いて、添付説明
書記載の方法で精製し、滅菌水で溶出した。該断片を制限酵素 sm (東洋紡績)にて 処理した後、 2 %ァガローズゲル電気泳動に供した。約 0.4 kbの増幅断片を QIAquic k Gel Extraction Kit (Qiagen)を用いて、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水で 溶出した。 Ligation High (東洋紡績)を用いて、 Sfil処理した上記 L鎖発現ベクター pCA GG-kappaと Ligationした。各反応液の一部を用いて大腸菌 DH5 α株(東洋紡績)を 形質転換した。塩基配列は、 BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Bios ystems)を用い、 DNAシークェンサ一 ABI PRISM 3700 DNA Sequencer (Applied Bios ystems)にて、添付説明書記載の方法に従い決定し、確認した。 BBA断片を挿入して PCAGG-A44BBAを、他の VL断片も同様にして発現ベクターを得た。各抗体可変領 域配列を以下の配列番号に示した。
[表 2] アミノ酸配
(D AAA (DCAGG - A44L) 66 67
(2) BBA (DCAGG-A44BBA) 68 69
(3) BAA (DCAGG - A44BAA) 70 71
(4) ABA (DCAGG-A44ABA) 72 73
(5) AAa (DCAGG- A44AAa) 74 75
(6) BAa (DCAGG- A44BAa) 76 77
(7) ABa (DCAGG-A44ABa) 78 79
(8) BBa (DCAGG-A44BBa) 80 81
(9) aAA (DCAGG-A44aAA) 82 83
(10) aBA (DCAGG-A44aBA) 84 85
(11 )AAA (G) (DCAGG-A44LG) 86 87
I (DCAGG-A44BBAG) 88 89 m3) BAA (G) I (DCAG6-A44BAAG) 90 91
(DCAGG-A44ABAG) 92 93
I (DCAGG-A44AAaG) 94 95 tl 6) BAa (G) (DCAGG-A44BAaG) 96 97
(17) ABa (G) (pCAGG-A44ABaG) 98 99
(18) BBa (G) (DCAGG-A44BBaG) 100 101
(19) aAA (G) (DCAGG-A44aAAG) 102 103
I (DCAGG-A44aBAG) 104 105
[0184] 〔実施例 19〕 抗体の調製
ヒト胎児腎癌細胞由来 HEK293を 10 % FCS (Moregate)を含む DMEM培地 (Invitroge n)へ懸濁し、接着細胞用 10 cm径ディッシュ(Corning)に 6 X 106個の細胞を播種し CO インキュベーター(37°C, 5 % CO )内で一晩培養した。実施例 18の任意の L鎖発現
2 2
ベクターと実施例 17の pCAGG- chiB26- g4bと pCAGG- chiA44- g4aもしくは pCAGG- chiA69-g4aの 2種の H鎖発現ベクター (30 g)と 1.5 mLの OPTI-MEMI培地の混合液 をトランスフエクシヨン試薬 Lipofectamine 2000 (Invitrogen) 60 Lと Opti- MEM I培地( Invitrogen) 1.5 mLの混合液へ加えて室温 20分間静置したものをディッシュへ加え、 C 0インキュベーター (37°C, 5 % CO )内で 3日間培養した。得られた培養上清に 100
2 2
μ Lの rProtein A bepharoseTM Fast Flow (Amersnam Biosciences)を添刀 Uし、 4。しで ー晚転倒混和した。遠心操作により榭脂を沈殿させ、 0.01 % Tween(R) 20を含む TBS にて 3回洗浄後、榭脂を 100 μしの 0.01 % Tween(R) 20を含む 10 mM HC1, 150 mM N aCl pH 2.0に懸濁して 3分間静置したのち、抗体を溶出させた。直ちに、 5 μ Lの 1 Μ Tris-HCl , 150 mM NaCl pH 8.0をカ卩えて中和した。
[0185] 〔実施例 20〕 IgG濃度の定量
Goat affinity purined antibody to human IgG Fc (し appel) PBSに飞 1 μ g/mLに鋼 製し、 Nunc-Immuno plateに固相化した。 2 % BSAを含む PBSにてブロッキング処理し た後、この Bufferを用いて適当に希釈した培養上清サンプルを添加した。また、抗体 濃度算出のためのスタンダードとして、 1 g/mLから 2倍系列で D.B.にて 11段階希釈 したヒ HgG4 (ヒト型化抗 TF抗体、 WO 99/51743参照)を同様に添加した。 3回洗浄し 7このち、 Goat anti— numan IgG, alkaline phosphatase (Biosource International)を反 i させた。 5回洗净したのち、 Sigma 104(R) phosphatase substrate (Sigma- Aldrich)を基 質として発色させ、吸光度リーダー SUNRISE RAINBOW (TECAN)〖こより、参照波長 6 55 nmとして 405 nmの吸光度を測定した。 LS- PLATEmanager2001 (TECAN)ソフトゥ エアを用いて、スタンダードの検量線力も培養上清中のヒ HgG濃度を算出した。
[0186] 〔実施例 21〕 血漿凝固アツセィ
血友病 A血液の凝固能を二重特異性抗体が是正するか明らかにするために、 F.VII I欠乏血漿を用いた活性ィ匕部分トロンボプラスチン時間 (APTT)に対する同抗体の影
響を検討した。様々な濃度の抗体溶液 L、 F.VIII欠乏血漿 (Biomerieux^O /z L 及び APTT試薬(Dade Behring) 50 Lの混合液を 37°Cで 3分間加温した。凝固反応 は 20 mMの CaCl (Dade Behring^O /z Lを同混合液に加えることにより開始させた。 C
2
R-A (Amelung)が接続された KClOA (Amelung)により凝固するまでの時間を測定した (図 20〜26)。その結果、抗体無添加時に比べて、二重特異性抗体は凝固時間を 短縮した。
[0187] 〔実施例 22〕ノ、イブリツド L鎖を持つ二重特異性抗体のヒトイ匕
血液凝固時間の短縮効果が最も高かった抗 FactorlXa抗体 A69-VH、抗 FactorX 抗体 B26_VH、ハイブリッド L鎖 (BBA)の組み合わせ力 成る二重特異性抗体につい て、以下のようにヒト化を実施した。
[0188] 22— 1.ヒト抗体の相同性検索
——般公開されている Kabat Database (ftp://ftp. ebi. ac. uk/ pub/ aatabases/kaoat/) および IMGT Database (http:〃 imgt. cines. fr/)よりヒト抗体アミノ酸配列データを入 手し、構築した Databaseを用いてマウス A69-H鎖可変領域 (アミノ酸配列:配列番号: 20)、マウス B26- H鎖可変領域(アミノ酸配列:配列番号: 24)、マウス BBA- L鎖可変 領域 (アミノ酸配列:配列番号: 69)に分けてホモロジ一検索を行った。その結果、以 下に示すヒト抗体配列と高い相同性を持つことが確認されたことからヒト化抗体のフレ ームワーク領域 (以下、 FR)に使用することにした。
(1) A69- H鎖可変領域: KABATID- 000064 (Kabat Database)
(Kippsら、 J Clin Invest. 1991 ; 87 : 2087-2096)
(2) B26- H鎖可変領域: EMBL Accession No. AB063872(IMGT Database)
(Unpublished data)
(3) BBA-L鎖可変領域: KABATID- 024300 (Kabat Database)
(Welschofb, J Immunol Method. 1995 ; 179 : 203-214)
(l)-(3)のヒト抗体の FRに各マウス抗体の相補性抗原決定領域 (以下、 CDR)を移植し たヒト化抗体を作製した。
[0189] また、 NCBIより一般公開されている相同性検索 Web site (http:〃 www. ncbi. nlm. nih. gov/BLAST/)を使用して、(1)-(3)のヒト抗体に相同性の高いヒト抗体の分泌シグ
ナル配列を検索した。検索により得られた以下に示す分泌シグナル配列を使用した
(1) A69- H鎖可変領域: GenBank Accession No. AF062257
配列番号:123 (塩基配列)、配列番号: 124 (アミノ酸配列)
(2) B26- H鎖可変領域: GenBank Accession No. AAC 18248
配列番号: 125 (塩基配列)、配列番号: 126 (アミノ酸配列)
(3) BBA- L鎖可変領域: GenBank Accession No. AAA59100
配列番号:127 (塩基配列)、配列番号: 128 (アミノ酸配列)
[0190] 22- 2.ヒト化抗体遺伝子発現ベクターの構築
分泌シグナル配列から抗体可変領域にいたるアミノ酸配列をコードする塩基配列 において、 50 base程度の合成オリゴ DNAを 3,末端が約 20 base程度ハイブリダィズす るように交互に 12本作製した。合成オリゴ DNAは、 5,末端力も 3,末端までがヒト抗体 配列になるように、もしくは 5 '末端がヒト抗体配列であり 3 '末端がマウス抗体配列にな るように設計した。さらに、抗体可変領域遺伝子の 5'末端にァニールし、 Xhol切断配 列を有するプライマーと抗体可変領域遺伝子の 3,末端側にァニールし、 Sfil切断配 列を有し且つイントロン配列の 5'末端配列をコードするプライマーを作製した。
[0191] 2.5 μ Μに調製した合成オリゴ DNAを各 1 μ Lで混合し、 lx TaKaRa Ex Taq Buffer, 0 .4 mM dNTPs, 0.5 units TaKaRa Ex Taq (全て宝酒造)をカ卩え、反応液 48 μ Lになるよ うに調製した。 94°C 5分保温した後に、 94°C 2分、 55°C 2分、 72°C 2分からなる反応 を 2サイクル行い、各合成オリゴ DNAのアッセンブルおよび伸長反応を実施した。次 に、抗体遺伝子の 5,末端および 3,末端にァニールするプライマー (各 10 M)を 1 μ L 添加し、 94°C 30秒、 55°C 30秒、 72°C 1分力 なる反応を 35サイクル行い、 72°C 5分 反応させ、抗体可変領域遺伝子を増幅した。 PCR後、反応液全量を 1 %ァガローズゲ ル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の増幅断片を QIAquick Gel Extracti on Kit (QIAGEN)を用いて、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水 30 1で溶出し た。該断片を pGEM- T Easy Vector Systems (Promega)を用いて、添付説明書記載の 方法でクローユングを行った。各 DNA断片の塩基配列は、 BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用い、 DNAシークェンサ一 ABI PRISM 3700
DNA Sequencerまたは ABI PRISM 3730xL DNA Sequencer (Applied Biosystems)に て、添付説明書記載の方法に従い決定した。
正しいヒトイ匕抗体可変領域遺伝子配列であることが確認された H鎖可変領域断片 挿入プラスミドを Xholおよび Sfilで、 L鎖可変領域断片挿入プラスミドを EcoRIで消化し た後に、反応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の DNA断片を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いて、添付説明書記載の方 法で精製し、滅菌水 30 1で溶出した。その後、調製した可変領域遺伝子を、以下に 示す方法にて実施例 17で作製した 2本の H鎖がヘテロダイマーを形成する IgG4を優 先的に発現させるため動物細胞用発現ベクター (pCAGG-IL3ss-g4CHPa, pCAGG-I L6ss-g4CHPb)に挿入した。 pCAGG- IL3ss- g4CHPaを Xholおよび Sfil (ともに宝酒造) で消化した後に、 1 %ァガローズゲル電気泳動に供してベクター領域断片を回収する ことでマウス IL-3シグナル配列を含む断片を除き、上記で得られたヒト化 A69-H鎖可 変領域遺伝子断片を挿入してヒト化 A69-H鎖発現ベクター(定常領域は Y349C、 T36 6W置換体)を作製した。同様に、 pCAGG- IL6SS- g4CHPbを Xholおよび Sfil (宝酒造) で消化した後に、 1 %ァガローズゲル電気泳動に供してベクター領域断片を回収する ことでマウス IL-6シグナル配列を含む断片を除き、上記で得られたヒト化 B26-H鎖可 変領域遺伝子断片を挿入してヒト化 B26-H鎖発現ベクター(定常領域は E356C、 T36 6S、 L368A、 Y407Vの置換体)を作製した。同様に、調製した H鎖可変領域遺伝子を 実施例 17で作製した野生型の定常領域遺伝子をもつ動物細胞用発現ベクター (pC AGGss- g4CH)に挿入した。 pCAGGss- g4CHを Xholおよび Sfilで消化した後に、 1 %ァ ガローズゲル電気泳動に供してベクター領域断片を回収することでシグナル配列を 含む断片を除き、上記で得られたヒト化 H鎖可変領域遺伝子断片を挿入してヒト化 H 鎖発現ベクター (定常領域は野生型)を作製した。また、実施例 18で作製した L鎖発 現ベクター (pCAGG- IL3ss- hlgG light)を EcoRIで消化した後に、 1 %ァガローズゲル 電気泳動に供してベクター領域断片を回収することでマウス IL-3シグナル配列を含 む断片を除き、上記で得られたヒト化 BBA-L鎖可変領域遺伝子断片を挿入してヒト化 BBA-L鎖発現ベクター発現プラスミドを作製した。連結反応は Rapid DNA Ligation K it (Roche Diagnostics)を用い、大腸菌 DH5ひ株(東洋紡績)を形質転換した。
[0193] 22- 3.ヒト化二重特異性抗体の調製
ヒト化二重特異性抗体の発現は、実施例 4 2に記載した方法か以下の方法を用 いて行った。ヒト胎児腎癌細胞由来 HEK293H株(Invitrogen)を 10 % Fetal Bovine Ser um (Invitrogen)を含む DMEM培地 (Invitrogen)へ懸濁し、 5〜6 X 105個/ mLの細胞密 度で接着細胞用ディッシュ(直径 10 cm, CORNING)の各ディッシュへ 10 mLずつ蒔き こみ COインキュベーター(37°C、 5 % CO )内で一昼夜培養した後に、培地を吸引除
2 2
去し、 1 %の Fetal Bovine Serumを含む CHO- S-SFM- II培地 6.9 mLを添カ卩した。 22— 2で調製したプラスミド DNA混合液(合計 13.8 g)を 1 μ g/mL Polyethylenimine (Poly sciences Inc.) 20.7 μ Lと CHO- S- SFMII培地 690 μ Lと混合して室温 10分間静置した ものを各ディッシュの細胞へ投入し、 4〜5時間、 COインキュベーター(37°Cにて 5 %
2
CO )内でインキュベートした。その後、 1 %の Fetal Bovine Serumを含む CHO- S- SFM
2
-Π (Invitrogen)培地 6.9 mLを添カ卩して、 3日間 COインキュベーター内で培養した。
2
培養上清を回収した後、遠心分離 (約 2000 g、 5分間、室温)して細胞を除去し、さら に 0.22 μ mフィルター MILLEX(R)-GV (Millipore)を通して滅菌した。該サンプルは使 用するまで 4°Cで保存した。
[0194] つづ 、て、実施例 11に示す方法で抗体精製および実施例 5に示す方法または以 下に示す方法で抗体濃度の定量を実施した。 BiacorelOOO(BIACORE)を使用し、 Sen sor Chip CM5(BIACORE)に ProteinAを固定化した。具体的にはメーカーのプロトコ ールに従い、活性化したセンサーチップに 10 mM酢酸ナトリウム水溶液 (pH 4.0, BIA CORE)で 50 μ g/mLに希釈した ProteinA(SIGMA)溶液を 5 μ L/分で 30分間反応させ、 その後ブロッキング操作を実施して ProteinA固定ィ匕センサーチップを作製した。この センサーチップを用いて、 Biacore 1000(BIACORE)を使用して培養上清および精製 品の濃度を測定した。センサーチップの固定および濃度測定には HBS-EP Buffer(BI ACORE)を使用した。また、濃度測定時の標準品として 4000 ng/mLから 2倍系列で H BS-EP Bufferにて 6段階希釈したヒト IgG4 (ヒト型化抗 TF抗体、 WO 99/51743参照) を使用した。
[0195] 22-4.ヒトイ匕二重特異性抗体の活性評価および抗体配列の改変
調製したヒト化二重特異性抗体およびキメラ二重特異性抗体 (A69/B26/BBA)の血
漿凝固能を評価するために、実施例 21の方法に従って、 F. VIII欠乏血漿を用いて A PTTに対する抗体の影響を検討した。血液凝固能が低下したヒト化二重特異性抗体 について、活性上昇を目指してヒト抗体 FRのアミノ酸を改変した。また、発現分泌時 にはヒト化 A69/ヒト化 BBA抗体,ヒト化 B26/ヒト化 BBA抗体、ヒト化 A69/ヒト化 B26/ヒト 化 BBA二重特異性抗体の 3種類の抗体が発現するが、この 3種類の抗体を分離し、 二重特異性抗体のみ精製することを目的として、ヒト化 A69 H鎖可変領域の等電点を 下降させ、ヒト化 B26 H鎖可変領域の等電点を上昇させるアミノ酸改変を行った。また 、同時に H鎖ァミノ末端のピロダルタミルイ匕を防ぐためのアミノ酸改変、 CDR配列の脱 アミド化を抑制するためのアミノ酸改変、熱安定性を上昇させるためのアミノ酸改変を 夹施した。具体的には、 Quikし hange; te— Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を 用いて、添付説明書記載の方法でヒト化抗体可変領域に変異を導入した。 目的のヒ ト化抗体可変領域遺伝子配列であることが確認された H鎖可変領域断片挿入プラス ミドを Xholおよび Sfilで、 L鎖可変領域断片挿入プラスミドを EcoRIで消化した後に、反 応液を 1 %ァガローズゲル電気泳動に供した。 目的のサイズ (約 400 bp)の DNA断片 を QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いて、添付説明書記載の方法で精製 し、滅菌水 30 1で溶出した。その後、実施例 22— 2に示す方法で抗体定常領域遺 伝子と連結し、抗体発現プラスミドを作製した。実施例 22— 3に示す方法でヒト化二 重特異性抗体の調製し、実施例 21に示す方法で血液凝固活性を評価した。
FR配列のアミノ酸改変および血液凝固活性の評価を繰り返すことでキメラ二重特 異性抗体 (A69/B26/BBA)と同等の活性を有するヒト化二重特異性抗体 (ヒト化 A69 (h A69a) Iヒト化 B26 (hB26- F123e4)/ヒト化 BBA (hAL- F123j4)およびヒト化 A69 (hA69- PFL) /ヒト化 B26 (hB26-PF)/ヒト化 BBA (hAL-s8) )を取得した。図 27に定常領域配 列に knobs- into- holes技術 (Protein Engineering vol.9, 617-621, 1996)を用いてへテ 口ダイマーを形成させたヒト化二重特異性抗体の血液凝固活性を示した。各ヒト化抗 体の可変領域配列を以下の配列番号に示した。
(1)ヒトイ匕 A69抗体 VH (hA69a) 配列番号:129 (塩基配列)、配列番号: 130 (ァミノ 酸配列)
(2)ヒト化 B26抗体 VH (hB26-F123e4) 配列番号: 131 (塩基配列)、配列番号: 132 (
アミノ酸配列)
(3)ヒトイ匕 BBA抗体 VL (hAL-F123j4) 配列番号:133 (塩基配列)、配列番号: 134 ( アミノ酸配列)
(4)ヒトイ匕 A69抗体 VH (hA69-PFL) 配列番号:135 (塩基配列)、配列番号: 136 (ァ ミノ酸配列)
(5)ヒト化 B26抗体 VH (hB26-PF) 配列番号: 137 (塩基配列)、配列番号: 138 (アミ ノ酸配列)
(6)ヒト化 BBA抗体 VL (hAL-s8) 配列番号:139 (塩基配列)、配列番号: 140 (ァミノ 酸配列)
[0197] 22- 5.野生型定常領域をもつヒト化二重特異性抗体の活性評価および抗体配列 の改変
L鎖を共通化した二重特異性抗体は、動物細胞における発現分泌時に 3種類の抗 体が発現することが考えられる。本実施例の抗体にぉ 、てもヒト化 A69/ヒト化 BBA抗 体,ヒト化 B26/ヒト化 BBA抗体、ヒト化 A69/ヒト化 B26/ヒト化 BBA二重特異性抗体の 3 種類の抗体が発現することが予想された。この 3種類の抗体を分離し、二重特異性抗 体のみ精製することを目的として、ヒト化 A69 H鎖可変領域の等電点を下降させ、ヒト ィ匕 B26 H鎖可変領域の等電点を上昇させるアミノ酸改変を行った。その結果、所望の 二重特異性抗体の分離が可能になったことから、野生型定常領域を持つヒト化二重 特異性抗体を調製し、凝固活性評価を実施した。熱安定性向上のために、実施例 2 2— 4に示したヒト化二重特異性抗体(ヒト化 A69 (hA69- PFL) /ヒト化 B26 (hB26- PF)/ ヒト化 BBA(hAL-s8) )のヒト化 A69およびヒト化 BBAの可変領域アミノ酸配列を改変し た。各ヒト化抗体の可変領域配列を以下の配列番号に示した。
(7)ヒトイ匕 A69抗体 VH (hA69-KQ) 配列番号: 141 (塩基配列)、配列番号: 142 (アミ ノ酸配列)
(8)ヒト化 BBA抗体 VL (hAL-AQ) 配列番号: 143 (塩基配列)、配列番号: 144 (アミ ノ酸配列)
[0198] 実施例 22— 2に示す方法で野生型定常領域遺伝子 (ヒ HgG4定常領域ないし K定 常領域)と連結し、抗体発現プラスミドを作製した。
実施例 22— 3に示す方法でヒト化二重特異性抗体の調製し、陽イオン交換クロマト グラフィー分析を用いて二重特異性抗体を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィー 分析条件は以下のとおりであり、ヒト化 A69のホモ会合体、ヒト化 A69とヒト化 B26のへ テロ会合体である目的の二重特異性抗体、ヒト化 B26のホモ会合体の 3種類のピーク が得られることから、二重特異性抗体のピークを分取することで、二重特異性抗体を 精製した。二重特異性抗体が含まれる画分を Amicon Ultra, MWCO 10000 (Millipor e)による濃縮後、 20 mM sodium acetate, 150 mM NaCl, pH 6.0に対してー晚冷所で 透析を行い、濃度定量を行った。
[0199] カラム: ProPac WCX— 10, 4 X 250 mm, (Dionex)
移動相: A: 10 mmol/L NaH PO /Na HPO , pH 6.25
2 4 2 4
B: 10 mmol/L NaH PO /Na HPO , 500 mmol/L NaCl, pH 6.25
2 4 2 4
流速: 1.0 mL/min
グラジェント: 10 %B(5 min)→(40 min)→60 %B→(5 min)→100 %B (5 min) 検出: 220 nm
[0200] 精製した二重特異性抗体を用いて実施例 21に示す方法で血液凝固活性を評価し た。図 28に示すとおり実施例 22— 4でキメラ抗体と同等の活性を示したヒト化抗体 (ヒ ト化 A69 (hA69- PFL) /ヒト化 B26 (hB26- PF)/ヒト化 BBA (hAL- s8) )と新たに調製した ヒト化抗体(ヒト化 A69 (hA69- KQ) /ヒト化 B26 (hB26- PF)/ヒト化 BBA(hAL- AQ) )は同 等の血液凝固活性を有することが確認された。
[0201] 〔実施例 23〕 2種以上の抗体の併用
二重特異性抗体と 1種以上の他の抗体の併用による効果を血漿凝固アツセィにより 確認した。抗体溶液 50 μ L、 F.VIII欠乏血漿(Biomerieux) 100 μ L、 0.3 %カオリン溶 液(Biomerieux^O /z Lを混合し、 37°Cで 3分間加温した。凝固反応は 20 mMの CaCl
2
(Dade Behring) 100 Lを同混合液に加えることにより開始させた。 CR-A (Amelung) が接続された KC10A (Amelung)により凝固するまでの時間を測定した。二重特異性 抗体 (A69/B26/BBA)に抗 F.IXa抗体(XB12)、抗 F.X抗体(SB04)、 XB12と SB04、二 重特異性抗体 (XB12/SB04)を混合したときの血漿凝固時間の結果を図 29に示す。 混合後の各抗体濃度は 20 g/mLである。
産業上の利用可能性
本発明により酵素および該酵素の基質の両方を認識する抗体であって、血液凝固 第 VIII因子の機能を代替する高活性の多重特異性抗体が提供された。
本発明の多重特異性抗体は、血中での安定性が高ぐ抗原性も低いと考えられる こと力 、医薬品となるものと大いに期待される。