JPWO2016027787A1 - 粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、マスキングフィルム用粘着剤、耐熱粘着フィルム用粘着剤、マスキング用耐熱粘着フィルム、およびその使用方法 - Google Patents

粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、マスキングフィルム用粘着剤、耐熱粘着フィルム用粘着剤、マスキング用耐熱粘着フィルム、およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

高温条件下でも適度な粘着力を維持することができるとともに、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力で剥離できるマスキング用耐熱粘着フィルムなどに用いることができる粘着剤組成物を提供する。ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物であって、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位の含有量が、10〜45重量%であり、帯電防止剤を含有しないことを特徴とする粘着剤組成物。

Description

本発明は、粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、マスキングフィルム用粘着剤、耐熱粘着フィルム用粘着剤、マスキング用耐熱粘着フィルム、およびその使用方法に関し、詳細には、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力で剥離できるマスキング用耐熱粘着フィルムなどに用いることができる粘着剤組成物、これを架橋させてなる粘着剤、該粘着剤からなるマスキングフィルム用粘着剤、該粘着剤からなる耐熱粘着フィルム用粘着剤、該粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有するマスキング用耐熱粘着フィルム、および該マスキング用耐熱粘着フィルムの使用方法に関する。
フレキシブルプリント配線(FPC)基板は携帯電話などの情報端末電子機器に用いられており、近年、高性能化による回路の精密化、電子機器の小型軽量化によって、FPC基板を含む積層板の薄膜化小型化が進んでいる。その結果、積層板の強度が低下し破損し易くなっているので、その破損を防ぐために、製造工程中は保護フィルムで保護する必要が生じている。しかし、製造工程中に高温にさらされるので、保護フィルムの粘着剤層が積層板に固着して、保護フィルムの剥離時に積層板が破損したり、糊残りによる汚染が生じることがある。また、高温条件下では粘着力が低下して浮きを生じることがあるので、保護フィルムとして十分な保護能力を発揮できない問題もある。
また、スマートフォンなどの携帯情報端末に使用されるタッチパネルの構成部材であるITO透明電極層を製造する工程においては、積層板上にITO透明電極層を形成したのち、保護フィルムを貼り付け、保護フィルムを貼り付けたままの状態で、150〜200℃の条件下で加熱するアニール処理の工程が含まれる。この製造工程中に高温にさらされるので、保護フィルムの粘着剤層が積層板に固着して、保護フィルムの剥離時にITO透明電極層が破損したり、糊残りによる汚染が生じることがある。また、高温条件下では粘着力が低下して浮きを生じることがあるので、保護フィルムとして十分な保護能力を発揮できない問題もある。即ち、近年では耐熱工程後に被着体汚染が起こらないことに加え、例えばITO透明電極層などの薄膜をマスキングする分野では、薄膜の破損を防止するため、剥離時に小さい力でマスキング用耐熱粘着フィルムを剥がせることが求められている。
これらの問題を解決するために、次のような技術が開示されている。
特許文献1には、重量平均分子量が45万〜150万のヒドロキシル基含有アクリル系樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを、前記ヒドロキシル基含有アクリル系樹脂中の水酸基量に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基量が0.6〜1.6倍(モル比)となる範囲で含み、さらに、前記ヒドロキシル基含有アクリル系樹脂100重量部に対して、ヒドロキシル基含有アクリル系樹脂およびイソシアネート系架橋剤と非反応性であり、式量もしくは数平均分子量が300以上1500以下のエステル化合物を3〜20重量部含む粘着剤組成物が開示されている。
特許文献2には、FPC用基材などのフィルムないしシートにラミネートされて当該フィルムないしシートを補強する耐熱性微粘着フィルム・シート用の粘着剤組成物であって、この粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーに対して、イソシアネート樹脂および金属キレート剤を配合したものであることを特徴とする耐熱性微粘着剤組成物が開示されている。
特開2007−327036号公報 特開2003−261849号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、数平均分子量が300以上1500以下という低分子量の化合物が用いられているので、その化合物自体が被着体汚染の原因物質になる可能性があり、また粘着剤層が高温条件下において凝集力低下を引き起こし、被着体に粘着剤が残る可能性もある。
特許文献2の技術では、金属キレート剤が用いられているので、金属イオンが被着体汚染の原因物質になる可能性がある。また、金属キレートによる架橋は、イソシアネートやエポキシ等の共有結合による架橋と異なり、イオン結合による架橋であるので、結合が乖離し易く、より高温条件下での耐熱性に劣り糊残りが生じる可能性がある。
そこで、本発明では、このような背景下において、高温条件下でも適度な粘着力を維持することができるとともに、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力(例えば粘着力(対BA板)が1.0N/25mmを下回る)で剥離できるマスキング用耐熱粘着フィルムなどに用いることができる粘着剤組成物の提供を目的とするものである。
また、本発明は、この粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤、該粘着剤からなるマスキングフィルム用粘着剤、該粘着剤からなる耐熱粘着フィルム用粘着剤、該粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有するマスキング用耐熱粘着フィルム、および該マスキング用耐熱粘着フィルムの使用方法の提供をも目的とするものである。
しかるに本発明者が鋭意検討を重ねた結果、ポリオキシエチレン構造含有モノマー由来の構造単位を特定量有するアクリル系樹脂を粘着剤組成物として用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に到達した。
例えば、アクリル系樹脂の構成モノマーとして、ポリオキシエチレン構造を含有するモノマー成分を特定量含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂を耐熱粘着フィルム用の粘着剤組成物として用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物であって、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位の含有量が、10〜45重量%であり、帯電防止剤を含有しないことを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
また、本発明の要旨は、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)を含有してなる共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物であって、共重合成分中におけるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)の含有量が、10〜45重量%であることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
また、本発明の要旨は、本発明の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤、本発明の粘着剤からなることを特徴とするマスキングフィルム用粘着剤、本発明の粘着剤からなることを特徴とする耐熱粘着フィルム用粘着剤、本発明の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とするマスキング用耐熱粘着フィルム、本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面に貼り付け、100℃以上の加熱工程に付した後、そのマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面から剥離することを特徴とするマスキング用耐熱粘着フィルムの使用方法にも関するものである。
なお、本発明における「粘着フィルム」とは、粘着シート、粘着フィルム、粘着テープを概念的に包含するものである。
本発明の粘着剤組成物は、ポリオキシエチレン構造含有モノマー由来の構造単位を特定量含有するアクリル系樹脂、例えば、ポリオキシエチレン構造を含有するモノマー成分を特定量含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂を含有するので、本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤層を有するマスキング用耐熱粘着フィルムを用いた場合、常温条件下で粘着剤層が軟らかく被着体へのなじみ性が良くなり、貼付時に被着体表面の微小凹凸へ追従し、粘着剤層と被着体が隙間なく密着する。そのため、高温条件下で粘着剤層が軟質化しても、すでに隙間がほとんどないため接触面積が増大しない。この効果により、被着体に貼り付けたマスキング用耐熱粘着フィルムが高温に晒された後でも、マスキング用耐熱粘着フィルムを剥離した際に糊残りなどの被着体汚染が生じ難く、かつ小さな力でマスキング用耐熱粘着フィルムを剥離することができるのである。
本発明の粘着剤組成物及びこれを架橋させてなる粘着剤によれば、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に汚染が生じ難く、かつ小さな力で剥離することができるマスキング用耐熱粘着フィルムを製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)を含有してなるものである。本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位を有するものであり、例えば、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)を含有する共重合成分を共重合して得られるものである。アクリル系樹脂(A)は、官能基含有モノマー(a3)由来の構造単位、およびその他の共重合性モノマー(a4)由来の構造単位から適宜選択された構造単位をさらに有していてもよい。例えば、共重合成分に含有される他の共重合成分として、官能基含有モノマー(a3)、およびその他の共重合性モノマー(a4)から適宜選択されたモノマーを用いることができる。
本発明で用いられるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)は、2個以上のオキシエチレン構造を有するモノマーである。
ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)のオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は、通常、2個以上、好ましくは2〜20個、特に好ましくは2〜15個、更に好ましくは2〜10個である。かかる繰り返し単位数が小さすぎると被着体へのなじみ性が悪くなる傾向があり、大きすぎると加熱後の被着体汚染が増大する傾向がある。
ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)としては、共重合性の点でポリオキシエチレン構造含有(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましく、例えば、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
上記の中でも、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)としては、例えば下記一般式(1)で示されるポリオキシエチレン構造含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
Figure 2016027787
(式中、Xはエチレン基、Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基、Rは水素原子またはメチル基、nは2以上の整数である。)
上記一般式(1)中のXはエチレン基である。
上記一般式(1)中のYは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかである。これらの中でも、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、特に好ましくは水素原子、アルキル基、フェニル基であり、更に好ましくは、アルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が比較的短いものが好ましく、具体的には炭素数が通常1〜15であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6のアルキル基である。更に具体的には、一般式(1)のYはメチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。
上記アリール基としては、通常、炭素数6〜20、好ましくは6〜15のものが用いられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、これらの中でもフェニル基が好ましい。
上記アラルキル基としては、通常、炭素数7〜20、好ましくは7〜15のものが用いられ、具体的にはベンジル基等が挙げられる。
なお、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基は、置換基を有するものであってもよく、置換基としては、通常、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
上記一般式(1)中のRは、水素原子またはメチル基である。nは2以上の整数であり、好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜15、更に好ましくは2〜10である。
好ましいポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)としては、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
共重合成分中におけるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)の含有量は、通常、10〜45重量%であり、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。含有量が少なすぎると、加熱工程後の粘着力が高くなる傾向があり、多すぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向がある。
なお、アクリル系樹脂(A)におけるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位の含有量は、H−NMRで測定して算出することができる。
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)は、脂肪族式又は脂環式のアルキルエステルを有する(メタ)アクリレートである。アルキルエステルにおけるアルキルの炭素数は、通常1〜20であり、好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜6である。炭素数が多過ぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向がある。
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
共重合成分中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の含有量は、通常、40〜90重量%であり、好ましくは45〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。含有量が少なすぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向があり、多すぎると、加熱工程後の粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
なお、アクリル系樹脂(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位の含有量は、H−NMRで測定して算出することができる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)中、炭素数が1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2−1)の含有量が80重量%以上であることが加熱工程後の被着体汚染に優れる点で好ましく、特に好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、殊に好ましくは95重量%以上である。
上記官能基含有モノマー(a3)としては、後述の架橋剤(B)と反応することにより架橋点となりうる官能基を含有するモノマーであればよく、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;
2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で、水酸基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。これら官能基含有モノマー(a3)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
共重合成分中における官能基含有モノマー(a3)の含有量は、通常、0.1〜30重量%であり、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜15重量%である。含有量が少なすぎると、架橋度が低下し、被着体汚染が増大する傾向があり、多すぎると、貼付直後の粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
なお、アクリル系樹脂(A)における官能基含有モノマー(a3)由来の構造単位の含有量は、H−NMRで測定して算出することができる。
本発明で用いられることがあるその他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート系モノマー;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン等の1つの芳香環を含有するモノマー;
ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらの共重合性モノマーのうち、加熱工程後の被着体汚染を減少させる点で(メタ)アクリルアミド系モノマーが好ましい。
これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
共重合成分中におけるその他の共重合性モノマー(a4)の含有量は、通常、0〜40重量%であり、好ましくは0.001〜30重量%、特に好ましくは0.01〜25重量%である。含有量が多すぎると、粘着特性が低下しやすい傾向がある。
なお、アクリル系樹脂(A)におけるその他の共重合性モノマー(a4)由来の構造単位の含有量は、H−NMRで測定して算出することができる。
かくして、上記ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、必要に応じて官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)を共重合成分として含有する重合成分を重合することによって、ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位、必要に応じて官能基含有モノマー(a3)由来の構造単位、その他の共重合性モノマー(a4)由来の構造単位を有するアクリル系樹脂(A)を製造することができる。
アクリル系樹脂(A)の重合に際しては、例えば、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法を採用することができる。例えば、有機溶媒中に、上記ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、官能基含有モノマー(a3)、及びその他の共重合性モノマー(a4)等の重合性モノマー、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合を行なう。
上記で得られるアクリル系樹脂(A)におけるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位の含有量は、10〜45重量%であり、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。含有量が少なすぎると、加熱工程後の粘着力が高くなる傾向があり、多すぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向がある。
アクリル系樹脂(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位の含有量は、通常、40〜90重量%であり、好ましくは45〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。含有量が少なすぎると、加熱工程後の被着体汚染が増大する傾向があり、多すぎると、加熱工程後の粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
アクリル系樹脂(A)における官能基含有モノマー(a3)由来の構造単位の含有量は、通常、0.1〜30重量%であり、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜15重量%である。含有量が少なすぎると、架橋度が低下し、被着体汚染が増大する傾向があり、多すぎると、貼付直後の粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
アクリル系樹脂(A)におけるその他の共重合性モノマー(a4)由来の構造単位の含有量は、通常、0〜40重量%であり、好ましくは0.001〜30重量%、特に好ましくは0.01〜25重量%である。含有量が多すぎると、粘着特性が低下しやすい傾向がある。
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常、10万〜250万、好ましくは20万〜220万、特に好ましくは40万〜200万である。重量平均分子量が低すぎると、粘着剤層の耐熱性が低下し、被着体汚染が増大する傾向があり、高すぎると、希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で不利となる傾向がある。
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、通常20以下であり、好ましくは15以下、特に好ましくは10以下であり、下限は通常1.1である。分散度が高すぎると、粘着剤層の耐熱性が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100〜2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
また測定に際してポリマーを誘導体化してもよいし溶離液の種類を適宜変更してもよい。
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、通常−70〜0℃であり、好ましくは−65〜−5℃、特に好ましくは−60〜−10℃である。ガラス転移温度が高すぎると、加熱工程後の粘着力が高くなる傾向があり、ガラス転移温度が低すぎると、耐熱性が低下し、被着体汚染が増大する傾向がある。
ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Figure 2016027787
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーaのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーaの重量分率
Tgb:モノマーbのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーbの重量分率
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーnの重量分率(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)を必須成分として含有するものであり、この組成物をそのままで、またはこの組成物に架橋剤(B)を含有させて架橋させることによって、粘着剤とすることができる。粘着剤組成物を架橋させるに際しては、該粘着剤組成物に架橋剤(B)をさらに含有させることが好ましい。
かかる架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、耐熱粘着フィルムの基材との密着性を向上させる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
これらの中でも耐熱性の点でヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体や2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、テトラメチルキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が好ましい。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、1,3′−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等の脂肪族あるいは芳香族を含むビスオキサゾリン化合物、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリン等が挙げられる。
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
また、これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤(B)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部であり、好ましくは0.5〜20重量部、特に好ましくは1〜15重量部である。架橋剤(B)が少なすぎると、粘着剤の凝集力が低下し、糊残りの原因となる傾向があり、多すぎると、粘着剤の架橋が進みすぎて、粘着力が低下するので、被着体との間に浮きを生じてしまう傾向がある。
また、架橋反応は活性エネルギー線を照射することによって行なうこともできる。この場合、多官能(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、かかる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレートが好適である。なお、活性エネルギー線照射による架橋は、架橋剤による架橋と併用することが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤を含有しないことを特徴とする。
本発明において「帯電防止剤を含有しない」とは、通常、帯電防止剤を全く含有しないものであるが、粘着剤組成物が帯電防止性能を持たない程度に含有する場合があってもよく、具体的には、粘着剤組成物中、帯電防止剤の含有量が好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下であってもよい。
かかる帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤;脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤;カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドや塩化リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘着付与樹脂等の添加剤を更に含有していてもよく、これらの添加剤は1種または2種以上を併用して用いてもよい。特に酸化防止剤は粘着剤層の安定性を保つのに有効である。酸化防止剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜5重量%である。なお、添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されていても良い。
本発明の粘着剤組成物はアクリル系樹脂(A)を主成分とするものであることが好ましい。ここで「主成分とする」とは、上記アクリル系樹脂(A)が粘着剤組成物全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。なお、上限としては通常99.9重量%である。
また、本発明の粘着剤組成物は、酸を実質的に含まないことが好ましく、これにより、金属等の被着体の腐食を低減することができる。ここで「酸を実質的に含まない」とは、具体的には、酸価が5mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下を意味する。
本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤のゲル分率は、通常、40〜100%、好ましくは60〜100%、特に好ましくは80〜100%、更に好ましくは90〜100%、殊に好ましくは97〜100%である。
ゲル分率が低すぎると粘着剤の凝集力が低下し、糊残りを生じて、被着体汚染の原因となる傾向がある。
なお、粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること、組成物中の水酸基の組成比を調整すること等により達成される。また、かかる架橋剤と官能基量との割合は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
また、粘着剤組成物が架橋剤(B)を含有しない場合は、粘着剤組成物を180℃で5分の条件下で加熱処理した後のゲル分率が、通常30%〜100%、好ましくは40〜100%、特に好ましくは50〜100%であり、180℃で1時間の条件下で加熱処理した後のゲル分率が、通常70%〜100%、好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%である。加熱処理後ゲル分率が低すぎると過熱条件下での粘着剤の凝集力が低下し、糊残りを生じて、被着体汚染の原因となる傾向がある。
本発明においては、上記粘着剤組成物からマスキングフィルム用粘着剤または耐熱粘着フィルム用粘着剤を調製し、基材であるフィルム上に粘着剤層を積層形成することにより、マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルム(以下、総括して粘着フィルムということもある。)を得ることができる。なお、粘着剤層を構成する粘着剤は、上記粘着剤組成物そのままでもよく、また架橋剤(B)にて架橋されたものでもよい。
粘着剤層を積層形成する基材としては、例えば、金属、ポリエステル系樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂、ポリイミドおよびその誘導体、エポキシ樹脂等からなる単層または積層構造のフィルムが挙げられる。マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムには、粘着剤層の基材とは反対側の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムを実用に供する際には、上記離型フィルムを剥離して用いられる。上記離型フィルムとしては、シリコン系の離型フィルム、オレフィン系の離型フィルム、フッ素系の離型フィルム、長鎖アルキル系離の型フィルム、アルキッド系の離型フィルムを用いることができる。
上記のマスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムを製造するに際して、架橋剤(B)を含有する本発明の粘着剤組成物を架橋させる方法については、〔1〕基材上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型フィルムを貼合し、エージング処理を行なう方法、〔2〕離型フィルム上に、粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、基材を貼合し、エージング処理を行なう方法により行なうことできる。これらの中でも、〔2〕の方法が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
ここで、通常耐熱性を付与した粘着フィルムのエージング処理には、高温度・長時間のエージングを要するものであるが、本発明ではアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを使用することで、より低温度・短時間でエージング処理を完了することができる。
上記エージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常、0〜150℃、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃、時間は通常、30日以下、好ましくは14日以下、特に好ましくは7日以下であり、具体的には、例えば23℃で3〜10日間、40℃で1〜7日間等の条件で行なうことができる。
粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが好適に用いられる。
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なうことができる。
マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムにおける粘着剤層の厚みは、通常5〜300μm、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは10〜30μmである。この粘着剤層が薄すぎると粘着物性が安定し難くなる傾向があり、厚すぎると粘着フィルム全体が厚すぎて、使い勝手が悪くなる傾向がある。
マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムの粘着剤層の1Hzにおける損失弾性率由来のガラス転移温度(Tg)が、通常0℃以下、好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−45℃以下である。損失弾性率由来のTgが高すぎると、粘着剤が固くなり、加熱後の粘着力が高くなる傾向があり、低すぎると、耐熱汚染性が悪化する傾向がある。なお、通常、損失弾性率由来のTgの下限値は−56℃である。
マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムの粘着剤層の1Hzにおける損失正接(tanδ)由来のガラス転移温度(Tg)が、通常0℃以下、好ましくは−15℃以下、特に好ましくは−27℃以下である。tanδ由来のTgが高すぎると、粘着剤が固くなり、加熱後の粘着力が高くなる傾向があり、低すぎると、耐熱汚染性が悪化する傾向がある。なお、通常、損失正接由来のTgの下限値は−40℃である。
マスキングフィルム、耐熱粘着フィルムまたはマスキング用耐熱粘着フィルムの粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜調整されるが、例えばSUS−BA板、ハードコート処理されたPETフィルム、ガラス等に貼り付ける場合には、初期粘着力が0.01〜1.0N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.8N/25mm、更に好ましくは0.1〜0.5N/25mmである。
また、上記粘着剤層の粘着力は、耐熱後の粘着力が0.01〜1.0N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.9N/25mm、更に好ましくは0.1〜0.8N/25mmである。
本発明によるマスキング用耐熱粘着フィルムは、例えば、FPC基板等の回路基板やITO透明電極層を一時的に表面保護するための一時表面保護用耐熱粘着フィルムとして、または製造工程中で製品を一時的に保持・補強のために固定するための仮固定用耐熱粘着フィルムとして、利用することができる。
マスキング用耐熱粘着フィルムの被着対象である被着体としては、下記に示す材料の基材が例示される。
アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、マグネシウム、ニッケル、チタン等の金属板あるいは金属箔;
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、エステルアクリレート等のポリエステル系樹脂;
ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルフォン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−イソブチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイノノマー、ポリプロピレン、ポリアロマーポリブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;
ポリスチレン、ポリαメチルスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート共重合体;
ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアルキル(メタ)アクリレートやメチルメタクリレート−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−α−メチルスチレン共重合体等のアクリル系樹脂;
ポリ塩化ビニル、可塑化ポリ塩化ビニル、ABS変性ポリ塩化ビニル、後塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−アクリル樹脂アロイ、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル重合体およびその誘導体;
ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ビニロン等のポリ酢酸ビニル、およびその誘導体;
ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルケトン;
ポリホルムアルデヒド、アセタールコポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、塩素化ポリエーテル、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサオド等のポリエーテル;
ポリテロラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等のフッ化樹脂;
ポリカーボネート、ポリカーボネートABSアロイ;
ナイロン、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6/6,6共重合体、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12、ナイロン−11、ナイロン−12等のナイロン(ポリアミド)類;
ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン系プラスチック;
ポリイミドおよびその誘導体、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、高アクリルニトリル共重合体;
けい素樹脂、半無機および無機高分子;
フェノール樹脂、フェノール−フルフラール樹脂、変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂およびその誘導体;
フラン樹脂、キシレン樹脂、アニリン樹脂、アセトンホルムアルデヒド樹脂等のホルマリン樹脂;
不飽和ポリエステルとアルキッド樹脂;
ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂複合材料、脂環エポキシ樹脂、エポキシノボラック、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート等のエポキシ樹脂;
ポリウレタン、発泡ウレタン、ウレタンアクリレート等のポリウレタン;
ジアリルフタレート樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリアリルスルホン、アリルジグリコールカーボネート、ポリアリルエーテル、ポリアリレート等のアリル樹脂;
セルロース系プラスチック、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース、ニトロセルロースとセルロイド等のセルロース系樹脂。
特に、耐熱性を有する材料として、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、マグネシウム、ニッケル、チタン等の金属板あるいは金属箔等;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、エステルアクリレート等のポリエステル系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;ポリイミドおよびその誘導体;ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂複合材料、脂環エポキシ樹脂、エポキシノボラック、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート等のエポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物を用いて得られるマスキング用耐熱粘着フィルムの用途としては、プリント基板、特にフレキシブルプリント基板等の工程用キャリアフィルム;加熱工程のあるフィルムや箔のカール、シワ、汚染防止の為の保護フィルム;プリント基板ハンダメッキ用保護フィルム;耐熱トランス等の絶縁および耐熱保護用フィルム;電子回路基板のハンダリフロー工程中のマスキング用フィルム;各種の仮固定や部品保護用フィルム;スルーホールのシール用フィルム;ITO透明電極層等のタッチパネル関連部材の表面保護フィルム等の用途が挙げられ、耐熱を要するマスキング用途や仮固定用途全般に広く用いることが可能である。特に、本発明の粘着剤組成物を用いて製造されたマスキング用耐熱粘着フィルムが好ましい。
本発明の粘着剤組成物を用いて製造された本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムの使用方法としては、例えば、被着体の製造工程中に加熱工程が含まれる場合、加熱工程に付する被着体を一時的に表面保護する方法が挙げられる。例えば、被着体の使用方法として、本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面に貼り付け、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上の加熱工程に付した後、そのマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面から剥離する工程を有していてもよい。
本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムは、高温条件下で使用した後、被着体から剥離した際に被着体に糊残りなどの汚染が生じ難いので、被着体の製造工程における汚染の可能性が低減される。また、本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムは、高温条件下で使用した後の剥離時に小さい力で剥がすことができるので、被着体表面の破損を防止することができ、例えばITO透明電極層などの薄膜の破損を防止することができる。更に、本発明のマスキング用耐熱粘着フィルムは、金属の被着体に腐食を生じさせ難いので、最終製品に不具合を生じる可能性も低減される。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「%」および「部」とあるのは重量基準を意味する。また、ガラス転移温度(Tg)は、上述の方法に従って測定を行った。
<アクリル系樹脂(A)溶液の製造>
〔製造例1:アクリル系樹脂(A−1)〕
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル119部、アセトン34.8部とアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込み、撹拌しながら昇温し、70℃になったら、エトキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートEC−A」、EO繰り返し単位数2個)(a1)20部、ブチルアクリレート(BA)(a2)73.8部、メチルメタクリレート(MMA)(a2)1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(a3)5部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)(a4)0.2部とアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.026部を混合溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に、重合途中に、酢酸エチル2部にAIBN0.060部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら前記温度で還流下7時間重合させた後、酢酸エチルで希釈して、アクリル系樹脂(A−1)の35%溶液を得た。
〔製造例2〜20〕
表1に示す配合にて製造例1と同様にしてアクリル系樹脂(A−2)〜(A−12)、(A’−1)〜(A’−8)の溶液を調製した。
Figure 2016027787
・ECA:エトキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートEC−A」、EO繰り返し単位数2個)
・2MTG:メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコートMTG」、EO繰り返し単位数3個)
・AME400:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(日油社製、商品名「ブレンマーAME400」、EO繰り返し単位数9個)
・2MEA:メトキシエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学製、商品名「2−MTA」、EO鎖繰り返し単位数1個)
・BA:ブチルアクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・AAc:アクリル酸
・DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
・BMAA:N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド(笠野興産社製、商品名「アマイドNBM−2」
<実施例1〜12、比較例1〜8>
〔粘着剤組成物の調製〕
製造例1〜11、製造例13〜19で得られたアクリル系樹脂(A−1)〜(A−11)、(A’−1)〜(A’−7)の固形分100部に対して、架橋剤(B−1)(東ソー株式会社製のイソシアネート系架橋剤、「コロネートHX」)を表2に記載のとおりに配合し、粘着剤組成物を調製した。
また、製造例12、20で得られたアクリル系樹脂(A−12)、(A’−8)の固形分100部に対して、架橋剤(B−2)(三菱ガス化学社製のエポキシ系架橋剤、「テトラッドC」)を表2に記載のとおりに配合し、粘着剤組成物を調製した。
〔粘着力測定、および耐熱汚染性評価用の粘着フィルムの作製〕
上記で調製した粘着剤組成物を乾燥後の厚さが約25μmになるように、基材としてのポリイミドフィルム(厚さ25μm)に塗布した後、100℃で2分間乾燥させた。その後、塗工面に、離型処理されたPETを貼着して塗工面を保護し、温度40℃の雰囲気下で7日間養生し、粘着フィルムを得た。
得られた粘着フィルムを用いて下記の評価を行い、その結果を表2にまとめた。
〔粘着力:貼付直後〕
被着体としてステンレス板(SUS304BA板)に、25mm×100mmの上記粘着フィルムを23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価)
○:0.5N/25mm未満
△:0.5N/25mm以上、1.0N/25mm未満
×:1.0N/25mm以上
〔粘着力:加熱後〕
被着体としてステンレス板(SUS304BA板)に、25mm×100mmの上記粘着フィルムを23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、200℃条件下で1時間放置し23℃に戻した。さらに23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて2時間放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価)
○:0.8N/25mm未満
△:0.8N/25mm以上、1.0N/25mm未満
×:1.0N/25mm以上
〔耐熱汚染性〕
得られた耐熱粘着フィルムを用いて25mm×100mmの大きさの試験片を作製し(切り出し)、この試験片を被着体(SUS304BA板)に2kgローラーを2往復させる方法で圧着し、表2に記載の温度と時間で放置し23℃に戻した。さらに23℃、相対湿度50%雰囲気下で2時間放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離した後の被着体表面の様子を観察し、以下の基準で評価した。
(評価)
◎:全く汚染が確認されなかった。
○:汚染がほとんど確認されなかった。
△:僅かに汚染が確認された。
×:明らかに汚染が確認された。
〔弾性率測定用の粘着フィルムの作製〕
次に、上記で得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが約150μmになるように、離型処理されたPET基材に塗布した後、常温で5分間乾燥させ、その後80℃で5分間乾燥させた。その後、塗工面に、離型処理されたPETを貼着して塗工面を保護し、温度40℃の雰囲気下で7日間養生し、粘弾性測定用の粘着フィルムを得た。
得られた粘弾性測定用の粘着フィルムを用いて下記の評価を行い、その結果を表2にまとめた。
〔粘着剤層のガラス転移温度〕
粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製 DVA−255)を用いて、測定周波数1Hzで、−100〜200℃まで昇温速度3℃/minで、粘弾性測定用の粘着フィルムを昇温しながら、連続的に損失弾性率を測定した。損失弾性率が最も高くなる温度を、損失弾性率由来のガラス転移温度とした。また、損失正接(tanδ)が最も高くなる温度を、損失正接(tanδ)由来のガラス転移温度とした。
Figure 2016027787
実施例1〜12の粘着フィルムでは、貼付直後の粘着力は勿論のこと、200℃で1時間という高温条件下で使用した後においても粘着力が過大にならず、小さな力で被着体から剥離することができ、また被着体から剥離した際に汚染が生じ難いことが分かる。
一方、アクリル系樹脂(A)を構成する共重合成分中に、本発明で規定するポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)が含有されていなかったり、あるいはその含有量が少なかったりする比較例1〜6、8では、貼付直後の粘着力は過大ではないものの、高温条件下で使用した後において粘着力が過大となり、小さな力で被着体から剥離するのが困難であることが分かる。また、本発明で規定するポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)の含有量が多すぎる比較例7では、高温条件下での使用後においても粘着力が過大にはならないものの、被着体から剥離した際に明らかに汚染が確認され、被着体汚染が大きいことが分かる。
本発明の粘着剤組成物は、FPC基板等の回路基板やITO透明電極等のタッチパネル関連部材の製造工程に含まれる加熱工程においてマスキングや固定を行なうためのマスキング用耐熱粘着フィルムに好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位、および
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)由来の構造単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物であって、
    ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)由来の構造単位の含有量が、10〜45重量%であり、
    帯電防止剤を含有しないことを特徴とする粘着剤組成物。
  2. ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)、および
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)を含有してなる共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物であって、
    共重合成分中におけるポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)の含有量が、10〜45重量%であり、
    帯電防止剤を含有しないことを特徴とする粘着剤組成物。
  3. ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)が、ポリオキシエチレン構造含有(メタ)アクリレート系モノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
  4. ポリオキシエチレン構造含有モノマー(a1)のオキシエチレン鎖の繰り返し単位数が2〜20個であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  5. 共重合成分が水酸基含有モノマーおよび/またはカルボキシル基含有モノマーを含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  6. 共重合成分が(メタ)アクリルアミド系モノマーを含有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  7. アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が10万〜250万であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  8. 架橋剤(B)を更に含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  9. 請求項8に記載の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  10. 請求項9に記載の粘着剤からなることを特徴とするマスキングフィルム用粘着剤。
  11. 請求項9に記載の粘着剤からなることを特徴とする耐熱粘着フィルム用粘着剤。
  12. 請求項9に記載の粘着剤からなる粘着剤層をフィルム上に有することを特徴とするマスキング用耐熱粘着フィルム。
  13. 請求項12に記載のマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面に貼り付け、100℃以上の加熱工程に付した後、そのマスキング用耐熱粘着フィルムを被着体表面から剥離することを特徴とするマスキング用耐熱粘着フィルムの使用方法。
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