JP7091610B2 - 表面保護膜、及び表面保護フィルム - Google Patents

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本発明は、表面保護フィルム用粘着剤組成物、表面保護膜、及び表面保護フィルムに関する。
液晶表示装置、有機ELディスプレイ(OLED)等の画像表示装置の製造工程において、製造効率の向上、及び打痕又は傷の発生抑制のために、被着体に表面保護フィルムを貼り付けて、被着体を保護することがある(例えば、特許文献1)。
このような表面保護フィルムは、通常、支持体と、粘着層と、粘着層の表面を保護するセパレーターとを有する。表面保護フィルムは、セパレーターを剥離して粘着層を露出させた後に、光学部材、電子部材等の被着体に貼り付けられ、その後、表面保護の必要がなくなった時点で被着体から剥離される(例えば、特許文献2、3)。被着体への負荷を少なくするため、また、被着体上への糊残り、樹脂屑等の異物の発生を抑制するため、表面保護フィルムは極僅かな力での剥離を可能にする微粘着性を有することが望ましい。微粘着性を有する粘着層を形成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤等が用いられている。
表面保護フィルムの粘着層には、微粘着性だけでなく、被着体に貼り合せる際に気泡が入りにくくするために、被着体に対するなじみ性(濡れ性)も要求される。被着体が、例えば、プリズムシート、アンチグレア処理した偏光板のように、表面に凹凸を有する光学部材である場合、なじみ性が十分でないと、表面の凹凸に粘着剤が追従できずに気泡が混入したり、光学部材と粘着層の接着面積が減ることにより粘着力が低下し、使用中に表面保護フィルムが浮いたり剥がれたりすることがある。
特開2015-218296号公報 特開2005-306996号公報 特開2005-309071号公報
Wendy D. Cornell, et al. (1995), "A Second Generation Force Field forthe Simulation of Proteins, Nucleic Acids, and Organic Molecules", J. Am. Chem.Soc. 117, 5179-5197 Jorgensen WL, Tirado-Rives J (1988), "The OPLS Force Field for Proteins.Energy Minimizations for Crystals of Cyclic Peptides and Crambin", J. Am. Chem.Soc. 110 (6): 1657-1666
表面保護フィルムの粘着層の粘着性となじみ性は、粘着層の形成に使用される架橋剤の量によって制御するこができる。架橋剤の量が増加すると、粘着層は、固くなって被着体への粘着力が低下するが、なじみ性は低下する傾向がある。また、架橋剤の量が低減すると、粘着層の被着体へのなじみ性は向上するが、被着体への粘着力が増加する傾向がある。したがって、架橋剤の量の調整だけでは、表面保護フィルムの微粘着性となじみ性の両立に限界があった。
そこで、本発明の一側面の目的は、適切な微粘着性を有しながら、被着体へのなじみ性に優れた粘着層を有する表面保護フィルムを提供することにある。
本発明の一側面は、エチレン性不飽和基と該エチレン性不飽和基に結合した側鎖基とを有する(メタ)アクリルモノマーをモノマー単位として含む(メタ)アクリルポリマーを含有する、表面保護フィルム用粘着剤組成物を提供する。(メタ)アクリルモノマーのうち少なくとも一部における側鎖基が、低二面角エネルギーを示す部分構造を2~50個有する低二面角エネルギーの側鎖基である。低二面角エネルギーの側鎖基は、0.02以上の拡散指数を示す末端基を有していてもよい。
上記本発明に係る表面保護フィルムは、適切な微粘着性を有しながら、被着体へのなじみ性に優れた粘着層を有することができる。
本発明者らは、被着体へ粘着剤がなじむ機構を図1のように考えた。図1の(a)のように粘着剤5が被着体7が接触した後、粘着剤5は、被着体7との接触点を起点に変形して図1の(b)のように被着体7上に広がることで、被着体7の表面になじむと考えられる。すなわち、粘着剤又は粘着層が変形し易いことが、高いなじみ性の発現に寄与すると考えられる。
さらに、本発明者らは、粘着剤の変形のし易さには、粘着剤に含まれるポリマー(特に(メタ)アクリルポリマー)が有する側鎖基のしなやかさが関係すると考えた。図2は、(メタ)アクリルポリマー分子の拡散を示す模式図である。(メタ)アクリルポリマー50は、主鎖51及び主鎖に結合した側鎖基53を有しており、側鎖基53の末端基53aがある方向Dに拡散するように運動したとき、これに追従して側鎖基53が動き、さらに側鎖基53の動きに追従して主鎖51が動き、その結果、(メタ)アクリルポリマー50、又は粘着層全体が変形すると考えられる。したがって、粘着層全体の変形のし易さのためには、側鎖基53の末端基53aの運動が主鎖51に伝わるために、側鎖基53はある程度のしなやかさを有していることが必要と本発明者らは考えた。さらに、変形の開始となる側鎖基53の末端基53aがある一定以上の運動性を持つことも、粘着層の変形のし易さと関係すると本発明者らは考えた。微粘着性を示すようなある程度固い粘着層であっても、側鎖基の運動性に基づく変形のし易さによって、良好ななじみ性を有することができると考えられる。
低二面角エネルギーの側鎖基は、オキシアルキレン基を有する基であってもよい。
本発明の別の一側面は、上記表面保護フィルム用粘着剤組成物を含む粘着層を備え、粘着層中の(メタ)アクリルポリマーが架橋されていてもよい、表面保護膜を提供する。表面保護膜は、支持体を更に備え、支持体の片面上又は両面上に上記表面保護膜が設けられた表面保護フィルムであってもよい。また、上記表面保護フィルムは、上記支持体と接する面とは反対側の面にセパレーターを有してもよい。
この表面保護フィルムは、粘着層が上記粘着剤組成物を含み、(メタ)アクリルポリマーが架橋されているため、被着体への汚染が低減された適切な微粘着性を有しながら、被着体へのなじみ性の点でも優れている。
本発明の一側面によれば、適切な微粘着性を有しながら、被着体へのなじみ性に優れた粘着層を有する表面保護フィルムが提供される。粘着層の適切な微粘着性によって、被着体への汚染等が低減される。本発明に係る表面保護フィルムは、汚染、部材への負荷、気泡の混入が深刻な問題となり易い、光学、電子部品関連の技術分野における表面保護フィルムとして有用である。さらに、(メタ)アクリルポリマーを構成するモノマーの種類と共重合比、架橋剤の種類及びその量等を適宜調節することにより、耐熱性、耐候性がより優れた表面保護フィルムを得ることができる。
被着体へ粘着剤がなじむ機構を示す模式図である。 (メタ)アクリルポリマー分子の拡散を示す模式図である。 表面保護フィルムの一実施形態を示す断面図である。 粘着層の被着体に対するなじみ性を評価する方法を示す模式図である。 粘着層の被着体に対するなじみ性を評価する方法を示す模式図である。 二面角の定義を示す模式図である。 部分構造の二面角エネルギーの文献値を示す表である。 図7中の記号の定義を示す表である。 末端基の拡散指数の計算方法を説明するための模式図である。 末端基の拡散指数の計算方法を説明するためのグラフである。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、(メタ)アクリルポリマーは、アクリルポリマー及び/又はメタクリルポリマーを意味する。(メタ)アクリレートはアクリレート及び/又はそれに対応するメタクリレートを意味する。
図3は、表面保護フィルムの一実施形態を示す断面図である。図3に示す表面保護フィルム1は、支持体11と、支持体11の主面上に設けられた粘着層12と、粘着層12の支持体11とは反対側の面を覆うセパレーター13とを備える。
粘着層12は、被着体への適切な密着性、及び貼付後の剥離性の観点から、微粘着性を有することが好ましい。具体的には、粘着層12のガラス板に対する粘着力が、0.005N/25mm以上1N/25mm以下、0.01N/25mm以上0.2N/25mm以下、又は0.01N/25mm以上0.1N/25mm以下であってもよい。粘着力が上記下限値以上であると、使用中に剥れ等の問題が発生することを抑制できる傾向がある。粘着力が上記上限値以下であると、剥離時に粘着層の一部が被着体(表示装置の基板等)に転写されて異物として残ることを抑制できる可能性がある。
ここで粘着力は、ガラス板に貼り付けられた粘着層を、剥離角度(ガラス板の主面と粘着層を引っ張る方向とがなす角度)180度、剥離速度0.3m/分で剥離する剥離試験において測定される応力の最大値を意味する。粘着力を測定するためのガラス板としては、ケイ酸塩を主成分とするものが用いられ、離型処理が施されていない表面に粘着層が貼り付けられる。粘着層に5880N/mの圧力を印加することで粘着層がガラス板に貼り付けられ、貼り付け後、室温で30分間放置してから、剥離試験が行われる。
上記剥離試験によって測定される粘着力は、剥離速度が大きくなると大きくなる場合があるが、粘着層12の粘着力は、剥離速度が0.3m/分であるとき、及び剥離速度が1.0m/分であるときの両方の剥離試験において、上記数値範囲内であってもよい。これにより、過度の粘着力に起因する異物の発生及び部材の損傷といった問題をより回避できる傾向がある。
粘着層12は、被着体に対する良好ななじみ性を有する。図4及び5は、なじみ性の評価方法の例を示す模式図である。図4に示されるように、正方形の主面を有する被着体3上に、表面保護フィルムを、粘着層12が被着体3側となる向きで載せ、支持体11側から表面保護フィルムの中心部を、被着体の主面に垂直な方向Aに沿って押すことで、粘着層12を被着体3の主面になじませる。言い換えると、粘着層12を被着体3の主面全体にわたって被着体3に密着させる。この過程において、図4の支持体11を方向Aからみた上面図である図5に示されるように、粘着層12と被着体3が密着している密着領域12aが最初は粘着層12の中心部だけであるのが、粘着層12が被着体3の主面に濡れ拡がることで、密着領域12aが被着体3の主面の4辺それぞれに達する。表面保護フィルムを被着体に載せてから、密着領域12aが被着体3の主面の4辺それぞれに達するまでの時間が短いことは、粘着層の被着体に対するなじみ性が高いことを意味する。
粘着層12の厚さは、特に制限されないが、5μm以上200μm以下、10μm以上150μm以下、又は50μm以上100μm以下であってもよい。粘着層の厚さがこれら範囲にあると、微粘着性と樹脂屑発生の抑制を更に高いレベルで両立することができる。粘着層が上記上限値以下であると、剥離時に粘着層が部分的に被着体上に異物として残存することを抑制できる傾向がある。
粘着層12は、帯電防止性を有していてもよい。粘着層12が帯電防止性を有すると、空気中の異物の付着、及び静電気の発生を抑制できる傾向がある。帯電防止性は、OLED等の画像表示装置を製造するために表面保護フィルムを用いる場合に特に有効である。
粘着層12は透明であってもよい。具体的には、粘着層12のヘイズが1%以下であってもよい。
粘着層12は、例えば、以下に説明するような、粘着剤組成物の膜において(メタ)アクリルポリマーを架橋することによって形成することができる。言い換えると、粘着層12は、粘着剤組成物の硬化物を含む硬化膜であることができる。
以下、粘着層12を形成するために用いることのできる粘着剤組成物について説明する。
一実施形態に係る粘着剤組成物は、エチレン性不飽和基と該エチレン性不飽和基に結合した側鎖基とを有する(メタ)アクリルモノマーをモノマー単位として含む(メタ)アクリルポリマーを含有する。(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマーを主なモノマー単位として含む。ここで「主なモノマー単位」は、(メタ)アクリルポリマーの全体質量を基準として、50質量%以上を占めるモノマー単位を意味する。
(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル基中の反応性部位としてのエチレン性不飽和基(CR=CH-、Rは水素原子又はメチル基を示す。)と、エチレン性不飽和基に結合した側鎖基とからなる。例えば、(メタ)アクリロイル基(CR=CH-C(=O)-)を有する(メタ)アクリルモノマーの場合、エチレン性不飽和基に結合したカルボニル基も側鎖基に含まれる。
(メタ)アクリルポリマーを構成する(メタ)アクリルモノマーのうち少なくとも一部における側鎖基が、低二面角エネルギーを示す部分構造を2~50個有する側鎖基である。なお、「低二面角エネルギー」とは、「0kcal/molより大きく1.00kcal/mol未満の二面角エネルギー」とし、二面角は、連続して直列に結合した4個の原子を基に算出される。本明細書において、側鎖基中の1個の原子が、低二面角エネルギーを示す2以上の部分構造に含まれていてもよい。言い換えると、低二面角エネルギーを示す2以上の部分構造が、同一の原子を共有していてもよい。
図6は、二面角の定義を示す模式図である。二面角φは、4個の原子A,B,C及びDが連続して直列に結合しているとき(ここでのBはホウ素原子に限られず、Cは炭素原子に限られない)、3個の原子A,B及びCを含む平面1と、3個の原子B,C及びDを含む平面2とが成す角度である。二面角エネルギーは、二面角φが0~360度の範囲でエネルギー的に最も安定した立体配座を基準として、そこから立体配座がねじれたときに損失されるエネルギーの最大値である。
各種部分構造(分子構造)の二面角エネルギーは、例えば非特許文献1を参照して知ることができる。図7は、非特許文献1に記載される各部分構造の二面角エネルギーを示す表である。表1中の分子構造の項目において、記号Xは任意の原子であり、その他記号の意味は、非特許文献1を参照して図8に示す。
図7によると、二面角エネルギー(dihedral angle energy)が0kcal/molより大きく1.00kcal/mol未満である部分構造の例は、X-CT-OH-X、X-CT-SH-X、X-OH-P-X、X-OS-P-X、C-N-CT-C、CT-CT-C-N、CT-CT-N-C、CT-CT-OS-CT、CT-S-S-CT、N-CT-C-N、OH-CT-CT-OH、OS-CT-N*-CK、OS-CT-N*-CM、及びOS-P-OS-CTを含む。
二面角エネルギー(dihedral angle energy)が、0kcal/molより大きく1.00kcal/mol未満である部分構造は、より具体的には、例えば下記式[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、又は[7]で示される2価の基であってもよい。式[1]中のXは、任意の2価の基を示す。
Figure 0007091610000001
Figure 0007091610000002
Figure 0007091610000003
Figure 0007091610000004
Figure 0007091610000005
Figure 0007091610000006
Figure 0007091610000007
低二面角エネルギーの側鎖基は、ポリオキシアルキレン基を含む基であってもよい。ポリオキシアルキレン基を含む側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマーは、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(商品名Phosmer M、ユニケミカル株式会社製)、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名Phosmer PE、ユニケミカル株式会社製)、及びN-エトキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってもよい。
(メタ)アクリルポリマーは、低二面角エネルギーの側鎖基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリルモノマーをモノマー単位として含むことができる。(メタ)アクリルポリマーにおける、低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリルポリマー全体の質量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5.0質量%であることがより好ましく、0.3~3.0質量%であることがさらに好ましい。
低二面角エネルギーの側鎖基は、分子動力学シミュレーションによって計算される0.02以上の拡散指数を示す末端基を有していてもよい。分子動力学シミュレーションの計算のために、古典分子動力学シミュレーションの汎用パッケージであるLAMMPS(http://lammps.sandia.gov/)を使用する。力場にはOPLS(非特許文献2参照)で割り当てられるエネルギーパラメータ及び電荷を用いる。計算系として、システムサイズが500Å×200Å×200Åで周期境界条件を課した、180個のモノマー単位からなる4本の(メタ)アクリルポリマーを、真空状態の空間中に重ならないように配置し、空間を1×10フェムト秒間で100Å×50Å×50Åまで等速度で圧縮する。その際に、300Kの温度が維持されるようにランジェバン熱浴を用いて温度制御を行う。このようにして得られた系を用い、300Kの一定温度で5×10フェムト秒までシミュレーションを行い、各原子の初期位置からの移動距離の2乗を計算する。
分子動力学シミュレーションでは、(メタ)アクリルモノマーに由来する側鎖基の末端基の原子の初期の位置からの移動距離を求める。具体的には、図9に示すように、(メタ)アクリルポリマー中における、(メタ)アクリルモノマーに由来する側鎖基の末端基の原子に関して、初期からの経過時間をT(n=1,2,3,・・・)とし、原子のTn後の位置と初期の位置の間の直線距離D(n=1,2,3,・・・)を、原子の初期の位置からの移動距離とする。
次いで、図10に例示されるように、経過時間T(フェムト秒)と、原子の初期の位置からの移動距離D(オングストローム)を両対数グラフ上にプロットした。経過時間TaとTb(Ta<Tb)の間のプロットに対して累乗近似を行い、累乗近似曲線を作成する。本明細書では特に、Taが6×10フェムト秒で、Tb=1×10フェムト秒であるときの累乗近似曲線の傾きを拡散指数とする。
ここで本明細書において、拡散指数を計算するための「側鎖基の末端基の原子」として、側鎖基の最末端に位置する原子から数えて2番目の原子が選択される。例えば、下記式[8]で示されるメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの場合、「側鎖基の末端基の原子」は、末端の水素原子から数えて2番目の原子である炭素原子(末端のメトキシ基中の炭素原子)である。式中のnは1以上の整数である。
Figure 0007091610000008
一般に、同一の低二面角エネルギーを示す部分構造が繰り返される側鎖基の場合、鎖長が長いと末端基の拡散指数が小さくなる傾向がある。
(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが多い。(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度は、-100℃~-5℃であることが好ましく、-80℃~-10℃であることがより好ましい。(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度が0℃以下であると、適切な粘着力が得られ易い。(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度は、モノマーの種類及び共重合比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
(メタ)アクリルポリマーは、優れた粘着特性の観点から、低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマーの他に、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主なモノマー単位として含んでいてもよい。(メタ)アクリルポリマーにおける、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリルポリマーの全体質量を基準として、50~99.9質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、及びn-テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリルポリマーは、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、及びn-テトラデシル(メタ)アクリレート~なる群より選ばれる少なくとも1種の、炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー単位として含んでいてもよい。炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、粘着力の容易な制御、及び再剥離性の向上に寄与し得る。
(メタ)アクリルポリマーは、本発明の趣旨を損なわない範囲で、以上例示したモノマーに加えて、その他のモノマーをモノマー単位として更に含んでいてもよい。例えば、その他のモノマーによって、(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度を0℃以下(通常は-100℃以上)に制御して、粘着層の剥離性を調整することができる。
その他のモノマーとしては、例えば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等の凝集力、耐熱性向上に寄与し得るモノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上及び架橋化基点として機能する官能基を有するモノマーを適宜用いることができる。ガラス転移温度の調整のために、その他のモノマーとして、重合性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーを適宜用いることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、及びビニルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルが挙げられる。
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びラウリン酸ビニルが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、及びその他の置換スチレンが挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸が挙げられる。なかでも、特にアクリル酸、及びメタクリル酸が好ましい。
酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び上記カルボキシル基含有モノマーの無水物体が挙げられる。
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、及びジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミドが挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
イミド基含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びイタコンイミドが挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルが挙げられる。
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2官能脂肪族ウレタンアクリレート(例えば、商品名EBECRYL230、ダイセル・オルネクス株式会社製)、2官能芳香族ウレタンアクリレート(例えば、商品名EBECRYL210、ダイセル・オルネクス株式会社製)、3官能脂肪族ウレタンアクリレート(例えば、商品名EBECRYL8311、ダイセル・オルネクス株式会社製)、4官能脂肪族ウレタンアクリレート(例えば、商品名EBECRYL8210、ダイセル・オルネクス株式会社製)、6官能脂肪族ウレタンアクリレート(例えば、商品名EBECRYL8301R、ダイセル・オルネクス株式会社製)が挙げられる。
以上例示したその他のモノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。以上例示したその他のモノマーのなかでも、架橋の制御が容易に行えることから、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。その他のモノマーに由来するモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリルポリマーの全体質量を基準として、0~40質量%であることが好ましく、0~35質量%であることがより好ましく、0~30質量%であることが更に好ましい。その他のモノマーを用いることにより、例えば、より良好な接着性を得ることができる。
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、10万~500万、15万~400万、又は20万~300万であることが好ましい。(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が10万より小さいと、粘着層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じ易くなる傾向がある。(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が500万を超えると、粘着層の流動性が低下して、被着体(例えば、偏光板)への濡れ性が低下して、表面保護フィルムのはがれの原因となる可能性がある。ここで、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によって測定される、標準ポリスチレン換算値を意味する。
(メタ)アクリルポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の公知の方法であってよい。(メタ)アクリルポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等、いずれでもよい。
(メタ)アクリルポリマーを架橋することで、さらに耐熱性に優れた粘着層が形成される。そのため、粘着剤組成物は、(メタ)アクリルポリマーを架橋するための架橋剤を含有していてもよい。架橋剤は、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、及びアジリジン誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことができる。なかでも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物及びエポキシ化合物が好ましい。架橋剤は一般に、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性の官能基を2以上有する。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。この場合、(メタ)アクリルポリマーは、架橋剤と反応する官能基を有するモノマー単位を含んでいてもよい。架橋剤と反応する官能基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基又はこれらの組み合わせであることができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
イソシアネート化合物の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、商品名コロネートHL、日本ポリウレタン工業株式会社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(例えば、商品名デュラネートAE700-100、旭化成株式会社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(例えば、商品名デュラネートAE710-100、旭化成株式会社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業株式会社製)などのイソシアネート付加物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(例えば、商品名TETRAD-X、三菱瓦斯化学株式会社製)、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(例えば、商品名TETRAD-C、三菱瓦斯化学株式会社製)が挙げられる、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
メラミン樹脂としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。メラミン系樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アジリジン誘導体としては、例えば、市販品として、HDU、TAZM、TAZO(いずれも、相互薬工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、架橋すべき(メタ)アクリルポリマーとの組み合わせ、表面保護フィルムの使用用途等の観点から適宜選択される。粘着層の耐熱性の観点から、一般に、架橋剤の含有量は、(メタ)アクリルポリマー100質量部に対し、0.01~15質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量部よりも少ないと、架橋剤による架橋が十分に形成され難く、耐熱性が低下する可能性、及び、凝集力が低下して糊残りの原因となる可能性がある。架橋剤の含有量が15質量部を超えると、粘着層の被着体への濡れ性が低下し、表面保護フィルムのはがれの原因となる傾向がある。
粘着剤組成物は、架橋剤として、活性エネルギー線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーを含んでいてもよい。この場合、活性エネルギー線等を照射することにより粘着剤組成物中に架橋構造体を形成させる。活性エネルギー線反応性不飽和結合を有する官能基は、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びビニルベンジル基から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。多官能モノマーが有する活性エネルギー線反応性不飽和結合の数は、一般に10個以下が好適である。多官能化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
多官能モノマーの含有量は、架橋すべき(メタ)アクリルポリマーとのバランスにより、さらには、表面保護フィルムの使用用途によって適宣選択される。粘着層の耐熱性の観点から、多官能モノマーの含有量は、一般的には、(メタ)アクリルポリマー100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましい。また柔軟性、接着性の点から、多官能モノマーの含有量は、(メタ)アクリルポリマー100質量部に対して、10質量部以下であってもよい。
粘着剤組成物は、光ラジカル重合による効率的な硬化のために、光重合開始剤を更に含有していてもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合を開始させる化合物であれば、特に制限されない。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、α線、β線、及びγ線を含む。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン化合物、アントラキノン化合物、ベンゾイル化合物、スルホニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、オニウム塩化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物等を使用することができる。光重合開始剤は、分子内水素引き抜き型光重合開始剤であってもよい。
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等の芳香族ケトン化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、β-(アクリジン-9-イル)(メタ)アクリル酸等のエステル化合物;9-フェニルアクリジン、9-ピリジルアクリジン、1,7-ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モリホリノフェニル)-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)などが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
粘着剤組成物における光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリルポリマー100質量部に対して、0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~6質量部が降り好ましく、0.5質量部~5質量部がさらに好ましい。光重合性化合物の含有量がこの範囲であることで、特に良好な光重合性が得られる。
粘着剤組成物は、帯電防止剤を含有していてもよい。粘着フィルムが画像表示装置の製造のために用いられる場合、粘着剤組成物及びこれから形成される粘着層が帯電防止剤を含有させることで、静電気に起因する各種の欠陥を防ぐことができる。例えば、液晶表示装置の製作工程の大部分はガラス基板上で行われるが、ガラス基板は不導体であるため、瞬間的に発生する電荷が基板の下方に分散され難い。そのため、ガラス基板上に形成された絶縁膜、及び薄膜トランジスタ等の各種部材が静電気により損傷する場合がある。
帯電防止剤は、粘着層の表面抵抗率を低下させるものであれば特に制限されない。帯電防止剤は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びイオン性液体から選ばれるイオン性物質であることができる。
アルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオンと、過塩素酸、六フッ化リン酸、四フッ化ホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、有機ホウ素等のアニオンとを含む塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム等のアルカリ土類金属のカチオンと、上記アニオンとを含む塩が挙げられる。イオン解離性の点から過塩素酸リチウム、又はトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを選択してもよい。アルカリ金属塩の市販品としては、PEL-100(日本カーリット株式会社製、過塩素酸リチウム10質量部、ポリオキシプロピレングリコール90質量部)、PEL-25(日本カーリット株式会社製、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム5質量部、過塩素酸リチウム10質量部、ポリオキシエチレングリコール-ポリオキシプロピレングリコール共重合体85質量部)が挙げられる。
帯電防止剤は、カチオン性帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、又はイオン導電性付与剤であってもよい。
カチオン性帯電防止剤は、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基等のカチオン性基を有する。
アニオン系帯電防止剤は、例えば、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、スルホン酸塩基等のアニオン性基を有する。
両性帯電防止剤としては、アミノ酸系、又はアミノ硫酸エステル系等の帯電防止剤がある。
ノニオン系帯電防止剤としては、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等の帯電防止剤がある。
イオン伝導性付与剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド又はその共重合体等のマトリックス高分子と、ナトリウム又はリチウム等のアルカリ金属塩との複合物が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせることもできる。
粘着剤組成物における帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリルポリマー100質量部に対して、0.01質量部~30質量部が好ましく、0.1質量部~20質量部がより好ましく、0.1質量部~10質量部がさらに好ましい。帯電防止剤の含有量がこの範囲であることで、特に良好な表面抵抗率が得られる。
粘着剤組成物は、その他の添加剤を更に含有していてもよい。例えば、可塑剤、防汚剤、難燃剤、分散剤、着色剤、顔料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面平滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、チクソトロピー化剤、無機又は有機の充填剤などを、用途に応じて適宜添加することができる。
粘着剤組成物の25℃での粘度が、50mPa・s以上10000mPa・s以下であってもよい。粘着剤組成物の25℃での粘度がこの範囲であると、塗工性の点で、より優れた効果が得られる。塗工性が優れると、厚い粘着層を形成し易い。同様の理由から、粘着剤組成物の25℃での粘度が500mPa・s以上5000mPa・s以下、又は1000mPa・s以上3000mPa・s以下であってもよい。
粘着剤組成物の膜(表面保護膜ともいう)中で、(メタ)アクリルポリマーを架橋してもよい。あるいは、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着層を、支持体等に転写することも可能である。
粘着剤組成物の膜を形成する方法としては、通常の塗工方式又は印刷方式を適用することができる。具体的には、例えば、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットオリフィスコーティング、エアドクターコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、ブレードコーティング、ダムコーティング、及びダイコーティング等のコーティング、並びに、グラビア印刷等の凹版印刷、及びスクリーン印刷等の孔版印刷を含む印刷が利用できる。粘着剤組成物の粘度は、必要に応じて、ラジカル重合成分の配合、及び溶剤の添加のような方法によって調節することができる。
粘着層を形成するために塗工される粘着剤組成物は、有機溶剤を含有していても、含有していなくてもよい。
粘着剤組成物を硬化させるための活性エネルギー線として、紫外線、電子線等を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、窒素雰囲気下で行うこともできる。これにより、粘着剤組成物の硬化性が向上する傾向がある。同様の目的で、未硬化の粘着剤組成物の膜にセパレーター13を積層してから、そこに活性エネルギー線を照射してもよい。粘着剤組成物が熱ラジカル重合開始剤を含有する場合、加熱により粘着剤組成物を硬化させてもよい。硬化の前に、必要により溶剤が膜から除去される。
支持体11は、プラスチックフィルム20と、プラスチックフィルム20の片面上に形成された帯電防止層30とを有してもよい。
プラスチックフィルム20は、透明プラスチックフィルムであってもよい。支持体は、プラスチックフィルムを有するものに限られないが、プラスチックフィルムは、粘着剤組成物の塗工性及び粘着層の平滑性の点で特に有利である。プラスチックフィルム20は延伸プラスチックフィルムであってもよい。これにより、フィルムの巻取り性、加工性の点で、より優れた効果が得られる。
プラスチックフィルム20の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド又はこれらの組み合わせを含むフィルムが挙げられる。プラスチックフィルム20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、又はポリ塩化ビニルのフィルムであってもよい。
プラスチックフィルム20又は支持体11の厚さは、特に制限されないが、10μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上又は40μm以上であってもよく、200μm以下、150μm以下、125μm以下又は100μm以下であってもよい。支持体11の厚さがこの範囲であることで、フィルムの巻取り性、加工性の点で、より優れた効果が得られる。プラスチックフィルムの厚さが上記下限値以上であると、強度が向上する。プラスチックフィルムの厚さが上記上限値以下であると、柔軟性が向上する傾向がある。プラスチックフィルムの柔軟性が高いと、基材フィルムが被着体の複雑な形状にも追従し易くなる傾向がある。その結果、工程中に粘着フィルムが被着体から部分的に剥離することを抑制することができる傾向がある。
図3の表面保護フィルムにおいて、帯電防止層30は、プラスチックフィルム20の粘着層12とは反対側の面上に設けられているが、粘着フィルムの帯電を適切に抑制できればよく、帯電防止層の数及び位置は特に限られない。例えば、プラスチックフィルム20の両面上に帯電防止層が設けられていてもよい。また、セパレーター13がその片面又は両面に帯電防止層を有していてもよい。帯電防止層が設けられていなくてもよい。
帯電防止層30は、例えば、イオン性界面活性剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、金属微粒子、非金属導電性微粒子(カーボンナノチューブ等)、導電性ポリマー、及びイオン性液体から選ばれるイオン性物質又は導電性物質のような帯電防止剤を主成分として含む膜であることができる。帯電防止層における帯電防止剤の含有量が、帯電防止層100質量部に対して50質量部以上100質量部以下であってもよい。帯電防止層30の厚さは、特に制限されないが、例えば0.01μm以上100μm以下であってもよい。
支持体11の粘着層12側の表面に、帯電防止処理、コロナ処理、プラズマ処理、密着付与性プライマー処理が施されていてもよい。
セパレーター13は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、又はアクリル樹脂などの任意の樹脂を含むプラスチックフィルムであることができる。セパレーター13は、プラスチックフィルムと、その片面又は両面上に設けられた帯電防止層とを有していてもよい。この場合の帯電防止層は、支持体11の帯電防止層30と同様の構成を有することができる。セパレーター13の片面又は両面に、離型処理、密着付与処理又は帯電防止処理が施されていてもよい。
セパレーター13の厚さは、特に制限されないが、10μm以上300μm以下であってもよい。
表面保護フィルム1を使用する際には、支持体11又はセパレーター13を剥離し、露出した粘着層12を所望の部位に貼り付けることができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.評価方法
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線による換算値として測定した。GPC法の測定条件は以下の通りである。
・装置:HLC-8320GPC(RI検出器内蔵、東ソー株式会社製)
・検出器:RI(示差屈折計)
・溶媒:純正1級THF(テトラヒドロフラン)
・ガードカラム:TSK-guardcolumnSuperMP(HZ)-H(1本)
・ガードカラムサイズ:4.6mm(ID)×20mm
・カラム:TSK-GELSuperMulitiporeHZ-H(3本連結、カラムサイズ:4.6mm(ID)×150mm、東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・試料濃度:0.01g/5mL
・注入量:10μL
・流量:0.35mL/min
(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度
(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度を、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から求めた。DSCの測定条件は以下のとおりである。
・装置:DSC Q2000(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)
・測定雰囲気:窒素
・流量:50mL/分
・昇温開始温度:-100℃
・昇温終了温度:100℃
・昇温速度:10℃/分
・試料量:1g
2.(メタ)アクリルポリマーの調製
(メタ)アクリルポリマー(A)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマー(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、商品名「ファンクリルFA-400M」、日立化成株式会社製、平均オキシアルキレン基数:9)2.0質量部と、その他のモノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート88質量部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート10質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、酢酸エチル100質量部とを仕込んだ。フラスコ内の反応液を緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、反応液の温度を80℃付近に保ちながら7時間、重合反応を進行させて、(メタ)アクリルポリマー(A)の溶液(濃度50質量%)を調製した。(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量は26万、ガラス転移温度(Tg)は-70℃であった。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに由来する側鎖基の末端基の拡散指数は0.0963であった。なお、上記メトキシポリエチレングリコールメタクリレートは、上記(メタ)アクリルポリマー中において、低二面角エネルギーを示す部分構造となる。
(メタ)アクリルポリマー(B)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマー(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、商品名「ブレンマーPME-1000」、日油株式会社製、平均オキシアルキレン基数:23)2質量部と、その他のモノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート88質量部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート10質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、酢酸エチル100質量部とを仕込んだ。フラスコ内の反応液を緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、反応液の温度を80℃付近に保ちながら7時間、重合反応を進行させて、(メタ)アクリルポリマー(B)の溶液(濃度50質量%)を調製した。(メタ)アクリルポリマー(B)の重量平均分子量は26万、ガラス転移温度(Tg)は-70℃であった。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに由来する側鎖基の末端基の拡散指数は0.0134であった。
なお、上記メトキシポリエチレングリコールメタクリレートは、上記(メタ)アクリルポリマー中において、低二面角エネルギーを示す部分構造となる。
(メタ)アクリルポリマー(C)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマー(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、商品名「ファンクリルFA-2000M」、日立化成株式会社製、平均オキシアルキレン基数:45)2質量部と、その他のモノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート88質量部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート10質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、酢酸エチル100質量部とを仕込んだ。フラスコ内の反応液を緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、反応液の温度を80℃付近に保ちながら7時間、重合反応を進行させて、(メタ)アクリルポリマー(C)の溶液(濃度50質量%)を調製した。(メタ)アクリルポリマー(C)の重量平均分子量は26万、ガラス転移温度(Tg)は-72℃であった。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに由来する側鎖基の末端基の拡散指数は-0.005であった。なお、上記メトキシポリエチレングリコールメタクリレートは、上記(メタ)アクリルポリマー中において、低二面角エネルギーを示す部分構造となる。
(メタ)アクリルポリマー(D)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート90質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート10質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、酢酸エチル100質量部とを仕込んだ。フラスコ内の反応液を緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、反応液の温度を80℃付近に保ちながら7時間、重合反応を進行させて、(メタ)アクリルポリマー(D)の溶液(濃度50質量%)を調製した。(メタ)アクリルポリマー(D)の重量平均分子量は26万、ガラス転移温度(Tg)は-69℃であった。
3.表面保護フィルム
実施例1
(メタ)アクリルポリマー(A)の溶液(濃度50質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈した。希釈された溶液100質量部に、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(商品名「デュラネートAE700-100」、旭化成株式会社製)0.8質量部、及び架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ0.005質量部を加え、常温(25℃)下で約1分間撹拌して、粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「コスモシャインA4300」、膜厚75μm、東洋紡株式会社製)上に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ20μmの粘着層を形成した。次いで、粘着層の表面に、セパレータとして離型処理されたPETフィルム(セラピールBKE、膜厚38μm、東レフィルム加工株式会社製)を貼り合わせた。その後、粘着層を50℃で2日間養生して、表面保護フィルムを得た。
実施例2
(メタ)アクリルポリマー(B)の溶液(濃度50質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈した。希釈された溶液100質量部に、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(商品名「デュラネートAE700-100」、旭化成株式会社製)0.8質量部、及び架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ0.005質量部を加え、常温(25℃)下で約1分間撹拌して、粘着剤溶液を調製した。
上記粘着剤溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「コスモシャインA4300」、膜厚75μm、東洋紡株式会社製)上に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ20μmの粘着層を形成した。次いで、粘着層の表面に、離型処理されたPETフィルム(セラピールBKE、膜厚38μm、東レフィルム加工株式会社製)を貼り合わせた。その後、粘着層を50℃で2日間養生して、表面保護フィルムを得た。
実施例3
(メタ)アクリルポリマー(C)の溶液(濃度50質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈した。希釈された溶液100質量部に、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(商品名「デュラネートAE700-100」、旭化成株式会社製)0.8質量部、及び架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.005質量部を加え、常温(25℃)下で約1分間撹拌して、粘着剤溶液を調製した。
粘着剤溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(「コスモシャインA4300」、膜厚75μm、東洋紡株式会社製)上に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ20μmの粘着層を形成した。次いで、粘着層の表面に、離型処理されたPETフィルム(セラピールBKE、膜厚38μm、東レフィルム加工株式会社製)を貼り合わせた。その後、粘着層を50℃で2日間養生して、表面保護フィルムを得た。
比較例1
(メタ)アクリルポリマー(D)の溶液(濃度50質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈した。希釈された溶液100質量部に、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(商品名「デュラネートAE700-100」、旭化成株式会社製)0.8質量部、及び架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ0.005質量部を加え、常温(25℃)下で約1分間撹拌して、粘着剤溶液を調製した。
粘着剤溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「コスモシャインA4300」、膜厚75μm、東洋紡株式会社製)上に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ20μmの粘着層を形成した。次いで、粘着層の表面に、離型処理されたPETフィルム(セラピールBKE、膜厚38μm、東レフィルム加工株式会社製)を貼り合わせた。その後、粘着層を50℃で2日間養生して、表面保護フィルムを得た。
(低二面角エネルギーの側鎖基の末端基の拡散指数)
低二面角エネルギーの側鎖基の末端基の拡散指数は、分子動力学シミュレーションによって計算した。分子動力学シミュレーションでは、(メタ)アクリルポリマーを合成する際のモノマーの混合比と同じ共重合比を有し、180個のモノマー単位からなる(メタ)アクリルポリマーについて計算した。
(粘着層の粘着力)
実施例1~3及び比較例1の表面保護フィルムの粘着層を、ソーダ石灰ガラス板(大型スライドグラス、「水縁磨t1.3」(商品名)、S9213、松浪硝子工業株式会社製)に、ゴムロールを用いて圧力5880N/m、速度2mm/分で貼り付け、その状態で室温で30分放置した。その後、剥離角度180度、剥離速度0.3m/分で粘着層をガラス板から引き剥がす剥離試験を行った。幅25mm当たりの応力の最大値を粘着層の粘着力として記録した。
(粘着層のなじみ性)
図4及び図5に示した方法によって、粘着層のなじみ性を評価した。被着体3として、300mm四方の偏光板(「NPF-SIG1423DU」、日東電工株式会社製)を用いた。偏光板の中心に粘着層12の一部を接触させた時点から、中心を指で押さえながら、偏光板と粘着層の密着領域が300mm四方に濡れ広がるまでの時間を測定した。
Figure 0007091610000009
表1に評価結果を示す。実施例の表面保護フィルムの粘着層は、適切な微粘着性を有しながら、被着体(偏光板)へのなじみ性の点で比較例よりも優れていた。特に、低二面角エネルギーの側鎖基の末端基が0.02以上の拡散指数を示す(メタ)アクリルポリマーを含有する実施例1の粘着層は、粘着力が0.01N/25mm以上0.1N/25mm以下となる、より良好な微粘着性を有するとともに、なじみ性の点でもより一層優れていた。
以上の実験結果ら、本発明の粘着剤組成物は、適切な微粘着性を有しながら、被着体へのなじみ性に優れた粘着層を形成できることが確認できた。
本発明に係る表面保護フィルムは、微粘着性が必要とされる表面保護フィルムとして有用である。
1…表面保護フィルム、11…支持体、12…粘着層、13…セパレーター、20…プラスチックフィルム、30…帯電防止層。

Claims (6)

  1. 表面保護フィルム用粘着剤組成物を含む粘着層を備える表面保護膜であって、
    前記表面保護フィルム用粘着剤組成物が、エチレン性不飽和基と該エチレン性不飽和基に結合した側鎖基とを有する(メタ)アクリルモノマー、及び炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー単位として含む(メタ)アクリルポリマーと、前記(メタ)アクリルポリマーを架橋するための架橋剤と、を含有し、
    前記(メタ)アクリルモノマーが、前記炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートではないものであり、
    前記(メタ)アクリルモノマーのうち少なくとも一部における前記側鎖基が、低二面角エネルギーを示す部分構造を2~50個有する低二面角エネルギーの側鎖基であり、
    前記低二面角エネルギーの側鎖基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するモノマー単位の含有量が、前記(メタ)アクリルポリマーの全体質量を基準として0.1~5.0質量%であり、
    前記炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量が、前記(メタ)アクリルポリマーの全体質量を基準として60~95質量%であ
    前記架橋剤の含有量が、前記(メタ)アクリルポリマー100質量部に対し、0.01~15質量部であり、
    前記粘着層中の(メタ)アクリルポリマーが架橋されており、
    前記粘着層のガラス板に対する粘着力が0.005N/25mm以上1N/25mm以下であり、前記粘着力が、前記ガラス板に貼り付けられた粘着層を、剥離角度180度、剥離速度0.3m/分で剥離する剥離試験において測定される応力の最大値である、
    表面保護膜
  2. 前記低二面角エネルギーの側鎖基が、0.02以上の拡散指数を示す末端基を有する、請求項1に記載の表面保護膜
  3. 前記低二面角エネルギーの側鎖基が、ポリオキシアルキレン基を有する基である、請求項1又は2に記載の表面保護膜
  4. 前記(メタ)アクリルポリマーが、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、及びビニルエーテル類から選ばれるその他のモノマーをモノマー単位として更に含前記(メタ)アクリルモノマーが前記その他のモノマーではないものである、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の表面保護膜
  5. 支持体、前記支持体の片面上又は両面上に設けられた請求項1~4のいずれか一項に記載の表面保護膜とを備える、表面保護フィルム。
  6. 前記表面保護膜の前記支持体と接する面とは反対側の面にセパレーターを有する、請求項に記載の表面保護フィルム。
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