JPWO2013099915A1 - 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードの製造方法、画像表示装置および照明装置 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、こうした有機EL層は、発光層のほかに、必要に応じて電子注入層、電子輸送層、ホール注入層、ホール輸送層などにより構成されることとなる。
また、有機発光ダイオードは、発光層からの光を外部に取り出す面たる光取り出し面の違いにより、ボトムエミッション型とトップエミッション型とに分けられる。
また、こうしたトップエミッション型の有機発光ダイオードでは、上記したような陽極をトップ(つまり、光が取り出される側に陽極が設けられたものである。)のトップエミッション型の有機発光ダイオードの他に、陰極をトップにした構成のトップエミッション型の有機発光ダイオードが知られている。
即ち、この陰極トップのトップエミッション型の有機発光ダイオードでは、基板(ガラスなどの透明な基板に限らない。)上に、金属材料からなる反射層、ITOなどの透明導電材料からなる陽極、発光層を含む有機EL層、金属材料からなる陰極を順次形成し、さらに陰極上にITOなどの透明導電材料により層を形成し、基板側とは反対側、つまり陰極側から光が取り出される。つまり、陰極トップのトップエミッション型の有機発光ダイオードにおいては、陰極面が光取り出し面となっている。このため、陰極トップのトップエミッション型の有機発光ダイオードにおいては、陰極の金属層は光が透過可能なように薄膜に形成されている。
こうした有機発光ダイオードの特徴としては、視野角依存性が少ない、消費電力が少ない、非常に薄く作製することができるといった利点がある一方、発光層からの光を外部に取り出す効率たる光取り出し効率が低いといった問題点がある。
この光取り出し効率とは、光取り出し面(ボトムエミッション型では基板面であり、陽極トップのトップエミッション型では陽極面であり、陰極トップのトップエミッション型では陰極面である。)から有機発光ダイオードの外部、つまり、自由空間中に放射される光量の割合を意味する。
有機発光ダイオードにおいては、発光層からの光が全方向に出射するため、その光の多くが屈折率の異なる複数の層の界面で全反射を繰り返す導波モードとなり、層内を導波するうちに熱に変換されたり、各層における他の層と隣接していない側面から放射されるなどして光取り出し効率が低下してしまっていた。
また、発光層と金属により形成される陰極との間の距離が近いことから、発光層からの近接場光の一部は陰極の表面で表面プラズモンに変換されて失われ、光取り出し効率が低下してしまっていた。
従来、ボトムエミッション型の単色有機発光ダイオードに関して、単一周期を持つ格子からなる微細凹凸構造(対応波長は狭帯域である。)を素子内に導入する方法が知られていた。この単一格子によって、ボトムエミッション型の単色有機発光ダイオード素子内の陰極表面(発光層側)に生じる表面プラズモンを伝搬光に変換して取り出し、結果的にボトムエミッション型の単色有機発光ダイオードの光取り出し効率を向上するというものである。
例えば、特願2010−246653では、周期微細凹凸構造のピッチと取り出し波長の関係を示しており、有機発光ダイオードを構成する発光材料の最大波長に対応した周期微細凹凸構造のピッチを知ることができた。また、ボトムエミッション型素子の層構成をボトム側とトップ側とを反転させた構造を有する陽極トップエミッション型素子の場合も特許文献5として示す国際公開第2012/060404号パンフレットに示した周期微細凹凸構造のピッチと取り出し波長の関係が成り立つ。
実際に、有機発光ダイオードを利用したアクティブマトリックス型のディスプレイに関しては、陰極トップエミッション型素子が使用されるため、光取り出し効率を高めるための最適な微細凹凸構造が不明であることは著しく不便であった。
また、有機発光ダイオードの光取り出しに関しては、上記の他に重要な問題が知られている。即ち、有機発光ダイオードの層構成の型を問わず、単色有機発光ダイオードの光取り出し効率を向上するために、単一周期構造を有する格子からなる微細凹凸構造を素子内に導入する場合において、微細凹凸構造のピッチと取り出し波長とのマッチングが正確でないと取り出し効率向上の効果が得られないという問題点があった。
これは、ボトムエミッション型素子、陽極トップエミッション型素子、陰極トップエミッション型素子のすべてに共通する課題である。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、単色用微細凹凸構造(単一周期)の長所と白色用微細凹凸構造の長所とを併せ持つ新規単色用微細凹凸構造を提案するものである。
即ち、この特許文献1〜5には、金属層(陰極)の表面に一次元または二次元の周期的微細凹凸構造を設けることにより、当該周期的微細凹凸構造が回折格子として機能し、金属層(陰極)表面の表面プラズモンを輻射させる。これにより、表面プラズモンとして失われていたエネルギーが光として取り出され、光取り出し効率が向上することとなる。
上記の特許文献のうち特許文献4においては、粒子単層膜からなる2次元結晶体をエッチングマスクとしたドライエッチング法によって作製された凹凸構造である周期格子構造を有する有機発光ダイオード用基板を作製し、該有機発光ダイオード用基板上に陽極導電層、有機EL層、陰極導電層を順次積層する方法が開示されている。
つまり、単色有機発光ダイオード用基板表面上に周期格子構造を形成すると、有機発光ダイオード用基板表面上に形成された周期格子構造の形状が各電極層や有機EL層の積層時に各層に順次転写されるため、陰極導電層の発光層側の表面には有機発光ダイオード用基板表面の周期格子構造が複写された形状の周期格子構造が形成され、光取出し効率を向上させることができるようになる。
従来においては、所望の波長である特定の単一波長の光を効率的に取り出し、強い光を得ることを目的として、凹凸構造の周期が一定となるように周期格子構造を作製するようにしていた。
こうした背景には、周期格子構造である微細凹凸構造たる凹凸の周期が一定、即ち、凹凸の間隔が一定であるほど、ある波長に対する光の取り出し効率が向上するという理由があったためである。
即ち、凹凸構造の周期が一定となるように有機発光ダイオード用基板表面の周期格子構造を形成した場合には、凹凸構造の高さ分布を2次元フーリエ変換して得られるパワースペクトルとしては正六角形の頂点の位置に並んだデルタ関数状の点列が得られるものである。
そして、凹凸構造の周期が一定となる周期格子構造の高さ分布のパワースペクトルのプロファイルを図1(a)の(a−3)に示している。
また、パワースペクトルのプロファイルとは、上記パワースペクトルにおいて波数の一定となる円周上でパワースペクトル強度を積分したものを、波数を横軸としてプロットしたものである。
パワースペクトル空間の各点の座標は、波数ベクトルK=(Kx、Ky)に対応する。波数ベクトルの絶対値K=|K|=(Kx 2+Ky 2)1/2を波数と呼ぶ。また、波数は、空間周波数に2πを掛けたものに等しい。
こうした高さ分布のパワースペクトルのプロファイルは、図1(a)の(a−3)に示すように、特定の波数で強度が高く、かつ、鋭いピークを備えており、当該特定の波数を持つ表面プラズモンが回折され光に変換されることを示している。その結果、その表面プラズモンと同じ振動数を持つ光の光取出し効率が高いことを示している。
しかしながら、その一方で、光取出し効率が高い微細凹凸構造は周期のずれの許容範囲が狭いため、微細凹凸構造がわずかに変化しただけで取り出し波長が目的の発光波長からずれるおそれがあるという問題点があった。
そのため、白色光の光取り出し効率を上げたい場合など、広帯域の光を得ることが目的である場合、凹凸構造の周期が一定の2次元格子構造を有する有機発光ダイオード用基板では、所望の光を得ることは難しいことが指摘されていた。
なお、広帯域の光を得ることが目的である場合とは、取り出す光の波長が可視光領域全体(380nm〜780nm)にわたる白色有機発光ダイオードを作製する場合や、それよりもさらに広帯域の光、例えば、可視光〜近赤外領域全体(380nm〜2500nm)にわたる光を取り出す場合などである。
また、周期的微細凹凸構造に関する第2の従来技術として示す図1(b)は、図1(b)の(b−1)に示すように複数の粒子径(例えば、2種類以上)の粒子を混合して形成した粒子単層膜からなる2次元結晶体をエッチングマスクとしたドライエッチング法により、ピッチが不揃いの凹凸構造を有する有機発光ダイオード用基板を作製した場合の例を示し、こうしたピッチが不揃いの凹凸構造を有する有機発光ダイオード用基板表面の高さ分布のパワースペクトルが図1(b)の(b−2)に示されている。
即ち、ピッチが不揃いとなるように有機発光ダイオード用基板表面の凹凸構造を形成した場合には、高さ分布のパワースペクトルとしては円状の領域に分布を示すものが得られる。
このピッチが不揃いとなる凹凸構造を有する有機発光ダイオードより得られたピッチが不揃いの凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルのプロファイルは、図1(b)の(b−3)に示すように、広帯域の波数域においてある程度の強度を備えているが、その絶対値は凹凸構造の周期が一定となるものと比較して高くないものであった。
しかし、凹凸構造の高さを単純に高くすることでパワースペクトル強度を得ようとすると、表面プラズモンが局在化してしまう傾向が現れること、および、素子内の短絡が発生しやすくなることという新たな問題が発生するため好ましくない。
つまり、ピッチが不揃いとなる凹凸構造を有する有機発光ダイオードによれば、可視光から近赤外域において任意の広帯域波長域の電磁波の取出し効率に優れた有機発光ダイオードを実現でき、微細凹凸構造がわずかに変化しただけで取り出し波長が目的の発光波長からずれるおそれはないものの、取り出される光の強度が弱いという新たな問題点を招来するものであった。
[数4]
D=P ・・・(4)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による有機発光ダイオードの第1の実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、本発明を用いるものである限り、必ずしも対象とする有機発光ダイオードの構造および方式を限定するものではない。
ここで、図2には、本発明による有機発光ダイオードの第1の実施の形態を示す概略構成説明図が示されている。
この図2に示す有機発光ダイオード10は、一般に陰極トップのトップエミッション型と称されるタイプの単色有機発光ダイオードであり、基板12上に反射層22と陽極導電層14と有機EL層16と陰極導電層18とが順次積層されている。
そして、陽極導電層14と陰極導電層18とには、電源20により電圧を印加することができるようになされている。
この有機発光ダイオード10においては、陽極導電層14と陰極導電層18とに電圧を印加すると、陽極導電層14から有機EL層16にホールが注入されるとともに、陰極導電層18から有機EL層16に電子が注入され、陰極導電層18側から有機EL層で発生した光が取り出されるようになる。
こうした有機発光ダイオード10の反射層22は、有機EL層16からの光を反射して基板12から当該光が取り出されないように設けられた層である。従って、反射層22は、可視光を反射する金属材料により構成されており、例えば、AgあるいはAlを用いて構成される。また、こうした反射層22の厚さは、例えば、100〜200nmが好ましい。
なお、反射層22を含む有機発光ダイオード10を構成する各層の厚さは、分光エリプソメーター、接触式段差計あるいは原子力間顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))などにより測定することができる。
そして、有機EL層16は、陽極導電層14上に、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3、電子輸送層16−4、電子注入層16−5の順で積層されている。
なお、これらの層は、一層の役割が一つの場合もあるし、二つ以上の役割を兼ねる場合もあり、例えば、電子輸送層16−4と発光層16−3とを一つの層で兼ねることができるものである。
つまり、有機EL層16は、少なくとも、有機発光材料を含有する発光層16−3を含む層であればよく、発光層16−3のみから構成されてもよいが、一般的には、発光層16−3以外の他の層が含まれるものである。こうした発光層16−3以外の層は、発光層16−3の機能を損なわない限り、有機材料から構成されるものであっても無機材料から構成されるものであってもよい。
本実施の形態においては、有機EL層16をホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3、電子輸送層16−4および電子注入層16−5の5層から構成されるものとした。これらの層の中で最も重要な層は発光層16−3であり、例えば、ホール注入層16−1や電子注入層16−5は省略することも可能である。また、電子輸送層16−4は発光層16−3を兼ねることもできる。
有機EL層16の各層を構成する材料は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
また、蛍光性色素化合物やりん光発光性材料を他の物質(ホスト材料)にドープしたものを用いてもよい。この場合には、ホスト材料としてはホール輸送層16−2を構成する材料や電子輸送層16−4を構成する材料あるいは専用のホスト材料を用いるようにする。
ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2ならびに電子輸送層16−4を構成する材料としては、それぞれ有機材料が一般的に用いられる。
ホール注入層16−1を構成する材料としては、例えば、4,4’、4”−tris(N,N−2naphthylphenylamino)triphenylamine(2−TNATA)などの化合物が挙げられる。
また、ホール輸送層16−2を構成する材料としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−(1−1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N’−Diphenyl−N−N’−di(m−tolyl)benzidine(TPD)などの芳香族アミン化合物などが挙げられる。
さらに、電子輸送層16−4を構成する材料としては、例えば、2,5−Bis(1−naphthyl)−1,3,4−oxadiazole(BND)、2−(4−tert−Butylphenyl)−5−(4−biphenylyl)−1,3,4−oxadiazole(PBD)などのオキサジオール系化合物、Tris(8−quinolinolate)aluminium(Alq)などの金属錯体系化合物などが挙げられる。
さらにまた、電子注入層16−5を構成する材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
こうした電子注入層16−5を電子輸送層16−4と陰極導電層18との間に設けると、仕事関数の差を少なくすることができ、陰極導電層18から電子輸送層16−4に電子が移行しやすくなる。
なお、陰極導電層18としてMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金を使用すると、電子注入層16−5を設けなくても、電子注入効果を得ることが可能となる。
こうした有機EL層16の全体の厚さとしては、例えば、30〜500nmが好ましい。
金属層18−1は、Ag、Agの含有率が70%以上の合金、AlまたはAlの含有率が70%以上の合金からなり、当該合金としては、例えば、上記したMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金が挙げられる。
この金属層18−1の厚さとしては、例えば、10〜30nmが好ましく、有機EL層16からの光を透過可能としている。
透明導電層18−2は、陽極導電層14と同様に、可視光を透過する透明導電材料により構成されており、こうした透明導電材料としては、特に限定されず、透明導電材料として公知のものを用いることができる。具体的には、透明導電層18−2に用いる透明導電材料としては、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))あるいは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))などが挙げられる。
このとき、陰極導電層18を金属層18−1のみとすると、金属層18−1が薄層であるため体積抵抗が大きくなる。
このため有機発光ダイオード10においては、陰極導電層18として金属層18−1とともに透明導電層18−2を補助電極層として設けることにより導電性の向上を図っている。
こうした透明導電層18−2の厚さは、例えば、50〜200nmが好ましい。
具体的には、基板12を構成する材料として、透明体の無機材料としては、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのアルカリガラス、白板ガラスなどの各種ガラス、マイカなどの透明無機鉱物などが挙げられ、不透明体の無機材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属、各種セラミックスなどが挙げられる。有機材料としては、シクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂フィルム、当該樹脂フィルム中にセルロースナノファイバーなどの微細繊維を混入した繊維強化プラスチック材料などが挙げられる。有機材料についても透明体、不透明体の両方が使用可能である。
また、基板12の陽極導電層14が積層される側の表面12aには、複数の凸部12bを周期的に二次元に配列した構造(以下、「周期的に二次元に配列した構造」を、「二次元格子構造」と適宜に称することとする。)が設けられている。
この二次元格子構造が形成された基板12上に反射層22、陽極導電層14、有機EL層16、陰極導電層18が順次積層されることで、各層の表面(つまり、基板12が位置する側と反対側の面である。)には、基板12の表面12aと同様の複数の凸部による2次元格子構造が形成されることとなる。
具体的には、金属層18−1について着目すると、金属層18−1の表面18−1a(つまり、透明導電層18−2が位置する側の面である。)には、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bと同等の二次元格子構造を形成して複数の凸部が形成される。一方、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、有機EL層16が位置する側の面であり、陰極導電層18の裏面18aである。)には、基板12の表面12aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部18bが周期的に二次元に配列した構造、つまり、複数の凹部18bによる二次元格子構造が形成されることとなる。
こうした二次元格子構造が設けられることで、陰極導電層18における金属層18−1において励起される表面プラズモンが伝搬光として取り出される。
発光層16−3で発光分子から発光する際には、ごく近傍に近接場光が発生するものであるが、この近接場光は、発光層16−3と金属層18−1との距離が非常に近いため、金属層18−1の表面18−1aおよび裏面18−1cで伝搬型の表面プラズモンに変換される。
こうした金属表面の伝搬型表面プラズモンは、入射した電磁波(近接場光など)により生じる自由電子の粗密波が表面電磁場を伴うものである。平坦な金属表面に存在する表面プラズモンの場合、当該表面プラズモンの分散曲線と光(空間伝搬光)の分散直線とは交差しないため、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができない。これに対し、金属表面に格子構造が形成されていると、当該格子構造によって回折された表面プラズモンの分散曲線が空間伝搬光の分散曲線と交差するようになり、表面プラズモンを輻射光として取り出すことができる。
このように、二次元格子構造が設けられていることにより、表面プラズモンとして失われていた光のエネルギーが取り出されるようになる。こうして取り出されたエネルギーは、輻射光として陰極導電層18における金属層18−1から放射される。
このとき、金属層18−1から輻射される光は指向性が高く、適切な設計をすればその大部分が光取り出し面たる陰極導電層18の表面18c(つまり、透明導電層18−2における金属層18−1が位置する側と反対側の面である。)に向かう。そのため、有機発光ダイオード10においては、光取り出し面から高強度の光が出射し、光取り出し効率が向上することとなる。
こうした二次元格子構造の好ましい具体例としては、配列方向が2方向で、その交差角度が90°であるもの(正方格子)、配列方向が3方向で、その交差角度が60°であるもの(三角格子(六方格子ともいう。))などが挙げられ、三角格子構造が特に望ましい。これは、配列方向が多い方が、回折光を得られる条件が多くなり、高効率で表面プラズモンを回折できるためである。
こうした二次元格子構造において三角格子構造を形成するには、粒子が二次元的な六方最密充填配置を取る粒子単層膜を形成し、当該粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行うことにより、簡単に取得することができる。なお、こうした粒子単層膜による三角格子構造を形成する方法については、後述する。
ここで、裏面18aに形成される凹部18bの深さD1としては、15nm≦D1≦180nmとし、30nm≦D1≦100nmが好ましく、D1<15nmあるいはD1>180nmであるときには、光取り出し効率の向上効果が不十分となってしまう。
上記した凹部18bの深さD1の範囲は、以下の理由に基づく。
即ち、凹部18bの深さD1が15nm未満であると(つまり、D1<15nmのときである。)、二次元格子構造として十分な表面プラズモンの回折波を生成できなくなり、表面プラズモンを輻射光として取り出す効果が低下する。
また、凹部18bの深さD1が180nmを超えると(つまり、D1>180nmのときである。)、表面プラズモンが局在型の性質を持ち始め、伝搬型ではなくなってくるため、輻射光の取り出し効率が低下する。さらに、この場合には、有機発光ダイオード10の反射層22、陽極導電層14、有機EL層16、陰極導電層18を順次積層する際に、凹凸が急峻であるため陽極導電層14と陰極導電層18とが短絡する可能が高くなってくるため好ましくない。
凹部18bの深さD1は、基板12の表面12aに形成された凸部12bの高さH1と同じとなっているため、凸部12bの高さをAFMにより測定することで間接的に定量することができる。
例えば、まず、二次元格子構造内の無作為に選択された5μm×5μmの領域1カ所についてAFM像を取得し、次に、取得したAFM像の対角線方向に線を引き、この線と交わった凸部12bの最大高さをそれぞれ単独に算出する。その後、算出した凸部12bの高さの平均値を算出する。こうした処理を無作為に選択された合計25カ所の5μm×5μmの領域について同様に実行し、各領域における凸部12bの平均値を算出し、得られた25カ所の領域における平均値をさらに平均した値を凸部12bの高さとする。
この凸部12bの形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、円錐形状、円錐台形状)、正弦波形状、ドーム形状あるいは、それらを基本とした派生形状などが挙げられる。
この場合、陰極導電層18の裏面18a(つまり、金属層18−1の裏面18−1cである。)に形成された複数の凹部18bによる二次元格子構造は、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造に対応したものとなる(図3(a)(b)を参照する。)。
即ち、陰極導電層18の裏面18aに形成された複数の凹部18bにおける隣り合う凹部18b間の中心間距離P1(以下、「隣り合う凹部18b間の中心間距離P1」を、「凹部18bの中心間距離P1」と称することとする。)は、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bにおける隣り合う凸部12b間の中心間距離P2(以下、「隣り合う凸部12b間の中心間距離P2」を、「凸部12bの中心間距離P2」と称することとする。)と一致し、凹部18bの深さD1は凸部12bの高さH1と一致するものとなる。
このため、基板12の表面12aに形成された凸部12bの中心間距離P2および凸部12bの高さH1をそれぞれ測定することで、陰極導電層18の裏面18aに形成された凹部18bの中心間距離P1および凹部18bの深さD1を測定することができる。
なお、こうした凹部18bの中心間距離P1は、凸部12bの中心間距離P2をレーザー回折法で測定することにより間接的に測定することができ、また、凹部18bの深さD1は、凸部12bの高さH1をAFMにより測定することにより間接的に測定することができる。
まず、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造の作製方法には、例えば、電子ビームリソグラフィー、機械式切削加工、レーザー加工、二光束干渉露光、縮小露光などを用いることができる。また、原盤を先に作製しておけば、ナノインプリント法による微細凹凸構造の転写・複製も可能である。
こうした手法のうち、二光束干渉露光およびナノインプリント法以外の手法は、大面積に周期格子構造を作製するのに適さないため、工業的な利用面において面積の制約を受ける。
また、二光束干渉露光は、ある程度の小面積は作製可能であるが、一辺が数cm以上の大面積の場合には、光学セットアップ全体に対する振動、風、熱収縮、膨張、空気の揺らぎ、電圧変動などの様々な外乱要因が影響して、均一で正確な周期格子構造を作製することは極めて困難である。
そこで、有機発光ダイオード10における基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造の作製方法としては、粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング方法(以下、「粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行う方法」を、「粒子単層膜を用いたエッチング方法」と称することとする。)が好ましい。
この粒子単層膜においては、粒子が二次元に最密充填しているため、これをエッチングマスクとして基板原板(つまり、二次元格子構造を形成する前の基板12のことである。)表面をドライエッチングすることにより、高精度な三角格子(六方格子)状の二次元格子構造を形成することができる。
このような二次元格子構造を有する基板を用いて形成された陰極導電層18の裏面18aの二次元格子構造も同様に高精度となることから、こうした方法を用いることによって、大面積の場合であっても高効率で表面プラズモンの回折波を得ることができ、光取り出し効率が向上した高輝度の有機発光ダイオード10を得ることができる。
この粒子単層膜を用いたエッチング方法では、基板原板の表面を粒子単層膜で被覆する被覆工程と、当該粒子単層膜をエッチングマスクとして用いて基板原板をドライエッチングする工程(ドライエッチング工程)とを行うことにより基板12に複数の凸部12bによる二次元格子構造を形成するようにしている。
以下、上記した被覆工程およびドライエッチング工程について詳細に説明することとする。
基板原板の表面を粒子単層膜により被覆する被覆工程は、水槽に、その液面上で粒子を展開させるための液体(以下、「液面上に粒子を展開させるための液体」を、「下層液」と適宜に称する。)を入れ、この下層液の液面に有機溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下し、滴下した分散液から有機溶剤を揮発させることにより、粒子からなる粒子単層膜を下層液の液面上に形成する粒子単層膜形成工程と、粒子単層膜を基板12上に移し取る移行工程とを行うことにより実施される。
なお、以下の説明では、下層液として親水性の液体を使用し、分散液においては有機溶剤および粒子としてそれぞれ疎水性のものを使用する場合について説明する。なお、下層液として疎水性の液体を使用してもよく、その場合には、粒子として親水性のものを使用する。
この工程では、まず、揮発性が高く疎水性の高い有機溶剤(例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサンなどである。)中に、表面が疎水性の粒子を加えて分散液を調製する。また、水槽を用意し、当該水槽に下層液として水(以下、下層液としての水を「下層水」と適宜に称する。)を入れる。
そして、調製した分散液を水槽に貯留された下層水の液面に滴下すると、分散液中の粒子が分散媒によって下層水の液面に展開する。その後、この分散媒である有機溶剤が揮発することにより、粒子が二次元的に最密充填した粒子単層膜が形成される。
なお、粒子単層膜の形成に用いる粒子の粒径は、形成しようとする凸部12bの中心間距離P2を考慮して設定される。即ち、使用する粒子の粒径により、基板12の表面12aに形成される凸部12bの中心間距離P2が決定され、凸部12bの中心間距離P2が決定されることにより、凹部18bの中心間距離P1が決定されることとなる。
ここで、粒子単層膜を形成する粒子の粒径の決定方法について、図4を参照しながら説明することとする。
この粒子単層膜を形成する粒子の粒径については、取り出したい表面プラズモンモードによって異なる格子ピッチ(つまり、凹部18bの中心間距離P1であり、凸部12aの中心間距離P2に相当する。)から算出される。
はじめに、凹凸のない従来より公知のトップエミッション型有機発光ダイオードについて検討すると、この素子には基板上に様々な薄膜層が堆積されているが、計算においては反射金属層界面での表面プラズモンの影響を避けるため、反射金属層とそれより基板側の層を無視し、陽極導電層より上の空気までを含めた層構成に対して計算を行うものとする。
図4に示すように、陽極導電層から空気までがL層で成り立っているとすると、第一層は陽極導電層となり、第L層は空気となる。第l(エル)層の厚さはdlとし、その比誘電率はεlで与えられているものとする。第1層の厚さおよび第L層の厚さであるd1およびdLは無限大である。
ここで、第M層が表面プラズモンを担持する金属層であるとし、まず、この層の両側の界面を伝搬する表面プラズモンの伝搬定数を求める。
この金属層の界面を伝搬する表面プラズモンモードは2つ存在する。一方は、エネルギーが主として第(M−1)層と第M層との界面に集中するモードであり、もう一方は、主として第M層と第(M+1)層との界面に集中するモードである。以下、前者をM−モード、後者をM+モードと称することとする。これらの2つのモードの伝搬定数は、系の固有方程式を解くことによって得られる。
層構造が有する伝搬モード(表面プラズモンモードと導波路モード)は、伝搬定数で特徴づけられる。この伝搬定数は、伝搬モードの波数の界面に平行な成分(以下、面内波数と称する。)に関する。
この層構造中におかれた振動双極子のエネルギーは、これらの各モードに散逸する。従って、双極子からの散逸エネルギーの面内波数依存性を調べれば、この層構造がどのようなモードを有するのかが分かる。
図4には、有機発光ダイオードの層構造および当該層構造中の双極子を示す説明図が示されている。この図4においては、l=N層内に双極子がおかれている。d−およびd+はそれぞれ双極子から基板側界面までの距離および金属側界面までの距離を示す。
まず、(M−1)/M界面より基板側20nm程度の距離に界面に垂直に双極子を1個おく。双極子がおかれる層は、所望の取り出し角周波数ωにおいて吸収を持たない必要がある。双極子のモーメントをμとし、取り出し角周波数ωで振動しているものとする。この双極子が第N層にあり、そこから(N−1)/N界面までの距離d−とし、N層の厚さをdNとすると、N/(N+1)界面までの距離はd+=dN−d−となる。
この双極子のエネルギー散逸の面内波数(k||)依存性は、下記の(5)式で与えられる。
W−(k||)の極大が各伝搬モードに対応し、その極大を与える面内波数がそのモードの伝搬定数の実部となっている。
次に、双極子をM/(M+1)界面より空気側20nm程度のところにおき、同様の計算を行う。この計算によって得られるエネルギー散逸W+(k||)はW−(k||)と同じ位置に極大を持つ。ただし、その極大値は異なる。
これらの極大のうち、波数の大きい方から2つのモードが表面プラズモンモードに対応する。この2つの極大を与える面内波数におけるエネルギー散逸の極大値はW−とW+で異なる。
W−において大きい方の極大値を示す面内波数をk−、W+において大きい方の極大値を示す面内波数をk+とすると、k−がM−モードの伝搬定数で、k+がM+モードの伝搬定数となっている。
格子ピッチP(つまり、凹部18bの中心間距離P1であり、凸部12aの中心間距離P2に相当する。)は、取り出したい表面プラズモンモードによって異なる式で与えられる。
具体的には、格子ピッチP0は、二次元格子構造として三角格子構造を形成する場合には、下記の(6)式で与えられる。
また、格子ピッチP0は、二次元格子構造として正方格子構造を形成する場合には、下記の(7)式で与えられる。
なお、上記した(6)式および(7)式で与えられる格子ピッチPと粒子の粒径(つまり、直径)Dは等しいものとなる。
即ち、取り出される表面プラズモンモードは、二次元格子構造として三角格子構造を形成する場合と、正方格子構造をとる場合とでは異なるものであり、上記した(6)式を満足する格子ピッチP0で三角格子構造を作製した場合および上記した(7)式を満足する格子ピッチP0で正方格子構造を作製した場合には、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができるようになる。
ただし、どのような発光材料もその発光スペクトルにおいては半値全幅として値に幅を有するものであるため、そうした幅に対応するように格子ピッチPは、
上記(1)式に与えられる範囲の変動許容値をもつものとする。
具体的には、有機発光ダイオード10を基板12上に形成された反射層22側からIZO(陽極導電層14に相当する。)/2−TNATA[膜厚30nm](ホール注入層16−1に相当する。)/NPD[膜厚70nm](ホール輸送層16−2に相当する。)/PH−1にIr(piq)3を5%濃度でドープしたもの[膜厚30nm](発光層16−3に相当する。)/Alq3[膜厚30nm](電子輸送層16−4に相当する。)/Ag[膜厚10nm](金属層18−1に相当する。)/IZO[膜厚110nm](透明導電層18−2に相当する。)/Airとするとき、図5に示すようなエネルギー散逸を示す。
図5において、破線は、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、陰極導電層18の裏面18aである。)より基板側20nmの距離に双極子をおいたときのエネルギー散逸を示し、一方、実線は、金属層18−1の表面18−1aより空気側20nmの距離に双極子をおいたときのエネルギー散逸を示すものである。
基板側および空気側のいずれかに双極子をおいた場合、面内波数k||=15.6μm−1とk||=43.6μm−1の位置にそれぞれピークが認められる。これらのピークが表面プラズモンモードに対応する。
k||=15.6μm−1のピークの高さは基板側に双極子をおいた場合のピークR(Log10[W(k||)/(ωμ2/8πεN)]=5.0507)が空気側に双極子をおいた場合のピークQ(Log10[W(k||)/(ωμ2/8πεN)]=4.8804)と比較して高く、k||=43.6μm−1のピークでは、その高さは逆となり、基板側に双極子をおいた場合のピークF(Log10[W(k||)/(ωμ2/8πεN)]=4.0663)が空気側に双極子をおいた場合のピークG(Log10[W(k||)/(ωμ2/8πεN)]=4.6284)と比較して低くなっている。
このことから、前者(k||=15.6μm−1)は金属層18−1の裏面18−1c(陰極導電層18の裏面18a)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードで、後者(k||=43.6μm−1)は金属層18−1の表面18−1a(つまり、透明導電層18−2が位置する側の面である。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードであることがわかる。
即ち、k−=15.6μm−1となり、k+=43.6μm−1となり、この伝搬定数を利用して上記した(6)式、(7)式および(1)式から粒子の粒径を算出することとなる。
このように粒径の変動係数が小さく、粒径のばらつきが小さい粒子を使用すると、形成される粒子単層膜に粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくくなり、配列のずれが小さい粒子単層膜を形成することができる。
こうした粒子単層膜の配列のずれが小さいと、最終的に陰極導電層18の裏面18a(金属層18−1の裏面18−1c)に形成される二次元格子構造における配列のずれも小さくなる。そして、二次元格子構造のずれが小さいほど、陰極導電層18における金属層18−1において表面プラズモン共鳴が効率的に光に変換されるため好ましい。
取得したい格子ピッチに基づいて、上記した(6)式などから、この粒子の粒径を算出することができる。
粒子は、下層液として水(または、親水性の液体)を使用する場合には、表面が疎水性であるものが好ましい。粒子の表面が疎水性であれば、水槽の下層液の液面上に粒子の分散液を展開させて粒子単層膜を形成する際に、下層液として水を用いて容易に粒子単層膜を形成できるとともに、粒子単層膜を基板12上に容易に移行させることができる。
上記において示した粒子材料のうち、ポリスチレンなどの有機高分子の粒子材料では、表面が疎水性であるため、そのまま使用することができるが、金属や金属酸化物の粒子材料では、表面を疎水化剤により疎水性にすることにより使用することができる。こうした疎水化剤としては、例えば、界面活性剤、アルコキシシランなどが挙げられる。
界面活性剤を疎水化剤として使用する方法は、幅広い材料の疎水化に有効であり、金属や金属酸化物などの粒子材料に対して適している。
このような界面活性剤を用いた疎水化処理は、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で疎水化処理を行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの少なくとも1種類からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を行えばよい。このように粒子を分散させた後に界面活性剤を加えると、当該粒子の表面をより均一に疎水化することができる。
このような疎水化処理後の分散液は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
疎水化対象の粒子が水分散体の状態である場合には、この水分散体に界面活性剤を加えて水相で粒子表面の疎水化処理を行った後、有機溶剤を加えて疎水化処理済みの粒子を油相抽出する方法も有効である。こうして得られた分散液(つまり、有機溶剤中に粒子が分散した分散液である。)は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
なお、この分散液の粒子分散性を高めるためには、有機溶剤の種類と界面活性剤の種類とを適切に選択し、組み合わせるようにする。粒子分散性の高い分散液を使用することによって、粒子が凝集することを抑制することができ、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜が得られやすくなる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1/3〜1/15倍の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子材料やSiO2、Al2O3、TiO2などの粒子材料を疎水化する際に有効である。なお、これらの粒子材料に限らず、基本的には、水酸基などを表面に有する粒子であればどのような粒子材料に対しても適用することができる。
アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランフェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤としてアルコキシシランを用いる場合には、アルコキシシラン中のアルコキシシリル基シラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。従って、アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で行うことが望ましい。
このように、水中で疎水化を行う場合には、例えば、界面活性剤などの分散剤を併用して、疎水化前の粒子の分散状態を安定化するのが好ましい。なお、分散剤の種類によってはアルコキシシランの疎水化効果を低減することもあるため、分散剤とアルコキシシランとの組合わせは適切に選択する。
アルコキシシランにより疎水化する具体的方法としては、まず、水中に粒子を分散させておき、これとアルコキシシラン含有水溶液(つまり、アルコキシシランの加水分解物を含む水溶液である。)とを混合し、室温から40℃の範囲で適宜撹拌しながら所定時間、好ましくは6〜12時間反応させる。
このような条件で反応させることによって、反応が適度に進行し、十分に疎水化された粒子の分散液を取得することができる。このとき、反応が過度に進行すると、シラノール基同士が反応して粒子同士が結合してしまい、分散液の粒子分散性が低下し、得られる粒子単層膜は、粒子が部分的にクラスター状に凝集した2層以上のものになりやすい。一方、反応が不十分であると、粒子表面の疎水化も不十分となり、得られる粒子単層膜は粒子間のピッチが広がったものになりやすい。
疎水化対象の粒子とアルコキシシランの比率としては、疎水化対象の粒子の質量に対してアルコキシシランの質量が1/10〜1/100倍の範囲が好ましい。
所定時間反応後、この分散液に対して上記した揮発性有機溶剤のうちの1種類以上を加え、水中で疎水化された粒子を油相抽出する。この際、添加する有機溶剤の体積は、有機溶剤添加前の分散液に対して0.3〜3倍の範囲が好ましい。
こうして得られた分散液(つまり、有機溶剤中に粒子が分散した分散液である。)は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
なお、こうした疎水化処理においては、処理中の分散液の粒子分散性を高めるために、撹拌、超音波照射などを実施することが好ましく、分散液の粒子分散性を高めることによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制することができ、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜が取得しやすくなる。
分散液の粒子の濃度は1〜10質量%とすることが好ましく、また、分散液の下層水への滴下速度を0.001〜0.01ml/秒とすることが好ましい。
分散液中の粒子の濃度や滴下量が上記したような範囲であると、粒子が部分的に凝集して2層以上となる、粒子が存在しない欠陥箇所が生じる、粒子間のピッチが広がるなどの傾向が抑制され、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得しやすくなる。
粒子単層膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましく、下層水中から液面に向けて超音波を照射しながら粒子単層膜形成工程を行うと、粒子の最密充填が促進され、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得することができる。
この際、超音波の出力は、1〜1200Wが好ましく、50〜600Wがより好ましい。また、超音波の周波数は特に制限はないが、例えば、28kHz〜5MHzが好ましく、700kHz〜2MHzがより好ましい。
また、超音波照射によって下層水の液面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が大きすぎたり、超音波振動子と発振器のチューニング条件によって当該液面の波高が高くなりすぎると、粒子単層膜が当該液面で破壊される可能性がある。
こうしたことから超音波の周波数を適切に設定すると、形成されつつある単粒子膜を破壊することなく、効果的に粒子の最密充填を促進することができる。しかし、粒径が、例えば、100nm以下などの小さな粒子になると、粒子の音響学的固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果の通りの超音波振動を与えることは困難となる。
この場合には、粒子2量体、3量体、・・・20量体程度までの質量に対する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることができる。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の充填率向上効果は発現する。
超音波の照射時間は、粒子の再配列が完了するのに十分であればよく、粒径、超音波の周波数、下層水の温度などによって所要時間が変化する。しかし、通常の作製条件では、10秒間〜60分間で行うことが好ましく、3〜30分間で行うことがより好ましい。
超音波照射によって得られる利点は粒子の最密充填化(つまり、ランダム配列を六方最密化することである。)のほかに、分散液調整時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などについてもある程度の修復効果を有する。
特に、例えば、コロイダルシリカのように球形であって、粒径の均一性の高い粒子が下層水の液面に浮いた状態で3つ集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用し、3つの粒子は正三角形を基本とする配置で安定化する。
仮に、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、つまり、粒子が当該液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、粒子単層膜は形成されない。従って、粒子と下層水は一方が疎水性である場合には、他方を親水性にして粒子群が下層水の液面下に潜らないようにすることが重要である。
下層液としては、以上の説明のように水を使用することが好ましく、水を使用すると、比較的大きな表面自由エネルギーが作用して、いったん生成した粒子の最密充填配置が液面上安定的に持続しやすくなる。
移行工程では、粒子単層膜形成工程により下層水の液面上に形成された粒子単層膜を、単層状態のままエッチング対象物である基板原板上に移し取る。
粒子単層膜を基板原板上に移し取る具体的な方法は、特に制限されるものではなく、例えば、疎水性の基板原板を粒子単層膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて粒子単層膜に接触させ、ともに疎水性である粒子単層膜と基板原板との親和力により、粒子単層膜を基板原板に移行させて、基板原板に粒子単層膜を移し取る方法を用いることができる。
より具体的には、粒子単層膜を形成する前に、予め水槽の下層水内に基板原板を略水平方向に配置しておき、粒子単層膜を下層水の液面上に形成した後に当該液面を徐々に降下させることにより、基板原板上に粒子単層膜を移し取るようにする。
こうした方法によれば、特別な装置を使用せずに粒子単層膜を基板原板上に移し取ることができるが、より大面積の粒子単層膜であっても、その二次元的な最密充填状態を維持したまま基板原板上に移し取りやすいという点では、所謂、LBトラフ法を採用することが好ましい。
LBトラフ法では、水槽(トラフ)内の下層水中に基板原板を当該下層水の液面に対して略垂直方向に浸漬しておき、その状態で上記した粒子単層膜形成工程を行い、当該液面上に粒子単層膜を形成する。
このとき、粒子単層膜は、粒子単層膜形成工程により下層水の液面上で既に単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(つまり、下層水の温度である。)や基板原板の引き上げ速度などを多少変動しても、粒子単層膜が崩壊して多層化するなどのおそれはない。
移行工程の温度条件たる下層水の温度は、通常、季節や天候により変動する環境温度に依存し、およそ10〜30℃程度である。
また、この際の水槽として、粒子単層膜の表面圧を計測するウィルヘルミープレートなどを原理とする表面圧力センサーと、粒子単層膜を下層水の液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを具備するLBトラフ装置を使用すると、より大面積の粒子単層膜をより安定的に基板原板上に移し取ることができる。
こうしたLBトラフ装置によれば、表面圧力センサーにより粒子単層膜の表面圧を計測しながら、粒子単層膜を好ましい拡散圧(密度)に圧縮することができ、また、基板原板の方に向けて一定の速度で移動させることができる。このため、粒子単層膜の下層水の液面から基板原板上への移行が円滑に進行し、小面積に粒子単層膜しか基板原板上に移行できないなどの不具合が生じにくくなる。
好ましい拡散圧としては、5〜80mNm−1であり、より好ましくは10〜40mNm−1である。このような拡散圧であると、各粒子がより高密度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得しやすい。また、基板原板を引き上げる速度としては、0.5〜20mm/分が好ましい。
固定処理により粒子単層膜を基板原板上に固定することによって、この後のドライエッチング時に粒子が基板原板上を移動してしまう可能性が抑えられ、より安定的に高精度に基板原板表面をエッチングすることができるようになる。なお、ドライエッチングが進むにつれて、各粒子の粒径が徐々に小さくなるため、基板原板上を移動する可能性は大きくなるため、こうした固定工程は有効である。
こうした固定処理方法としては、バインダーを使用する方法や焼結法がある。バインダーを使用する方法では、粒子単層膜が形成された基板原板の当該粒子単層膜側にバインダー溶液を供給して粒子単層膜と基板原板との間にこれを浸透させる。
バインダーの使用量としては、粒子単層膜の質量の0.001〜0.002倍が好ましい。このような範囲であれば、バインダーが多すぎて粒子間にバインダーが詰まってしまい、粒子単層膜のエッチングの精度に悪影響を与えるという問題を生じることがなく、十分に粒子を固定することができるものである。
バインダー溶液を多く供給してしまった場合には、バインダー溶液が浸透した後に、スピンコーターを使用したり、基板を傾けたりしてバインダー溶液の余剰分を除去すればよい。
バインダー溶液の材料の種類としては、先に疎水化剤として示したアルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどを用いることが可能であり、バインダー溶液が浸透した後には、バインダーの種類に応じて適宜加熱処理を行うようにする。例えば、アルコキシシランをバインダーとして使用した場合には、40〜80℃で3〜60分間加熱処理することが好ましい。
また、固定処理方法として焼結法を用いる場合には、粒子単層膜が形成された基板原板を加熱して、粒子単層膜を構成している各粒子を基板に融着させればよい。加熱温度は、粒子の材料と基板の材料とに応じて決定すればよいが、粒径が1μm以下の粒子はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。
焼結時に加熱温度が高すぎると粒子の融着面積が大きくなり、その結果、粒子単層膜としての形状が変化するなど、精度に悪影響を与える可能性がある。
また、加熱を空気中で行うと、基板や各粒子が酸化する可能性があるため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素を含む雰囲気下で焼結を行う場合には、後述するドライエッチング工程で酸化層を考慮した条件を設定することが必要となる。
[数8]
S(%)=|B−A|×100/A ・・・(8)
A:粒子の平均粒径
B:粒子単層膜における粒子間の平均ピッチ
この(8)式において、Aの「粒子の平均粒径」とは、粒子単層膜を構成する粒子の平均一次粒径のことであり、粒子動的光散乱法により算出した粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから常法により求めることができる。また、Bの「粒子単層膜における粒子間の平均ピッチ」とは、粒子単層膜における隣り合う2つの粒子の頂点と頂点の距離の平均値である。なお、粒子が球形であれば、隣り合う粒子の頂点と頂点との距離は、隣り合う粒子の中心と中心の距離と等しいものとなる。
粒子単層膜における粒子間の平均ピッチは、AFMにより凸部12aの中心間距離P2と同様にして求められる。
この粒子の配列のずれSが10%以下である粒子単層膜は、各粒子が二次元に最密充填し、粒子の間隔が制御されていて、その配列の精度は高いものとなる。
上記したようにして粒子単層膜で被覆された基板表面を、ドライエッチングすることにより、複数の凸部12bが周期的に二次元に配列した構造を有する基板12を取得することができる。
具体的には、ドライエッチングを開始すると、まず、粒子単層膜を構成している各粒子の隙間をエッチングガスが通り抜けて基板原板の表面に到達し、エッチングガスが到達した部分において当該エッチングガスにより基板表面がエッチングされて凹部が形成され、各粒子が位置する部分において凸部が現れる。
その後、さらにドライエッチングを継続すると、各凸部上の粒子もエッチングガスにより徐々にエッチングされて小さくなるとともに、基板原板表面の凹部も深くなる。そして、最終的に各粒子はエッチングガスにより消失し、それとともに基板原板の表面に複数の凸部が周期的に二次元に配列した構造が形成される。このようにして基板12の表面12aに複数の凸部12bを形成し、当該複数の凸部12により基板12上に二次元格子構造を形成することとなる。
ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF6、F2、CF4、C4F8、C5F8、C2F6、C3F6、C4F6、CHF3、CH2F2、CH3F、C3F8、Cl2、CCl4、SiCl4、BCl2、BCl3、BC2、Br2、Br3、HBr、CBrF3、HCl、CH4、NH3、O2、H2、N2、CO、CO2などが挙げられるが、本発明の効果を阻害しない範囲でこれらに限定されることはない。粒子単層膜を構成する粒子や基板の材質などに応じて、これらのうち1種類以上を使用することができる。
使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で10W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数などの仕様に特に制限はない。
このドライエッチング工程でのエッチング選択比(つまり、基板のエッチング速度/粒子単層膜のエッチング速度である。)が1.0以下となるように各種条件(粒子単層膜を構成する粒子材料、基板の材質、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間など)を設定することが好ましい。
また、電場のバイアスパワーを数十から数百Wに設定すると、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子が加速されて高速でほぼ垂直に基板に入射する。従って、基板に対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
基板の材質とエッチングガスの種類との組み合わせにもよるが、ドライエッチングでは、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングも並行して生じる。ラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングを行う。
また、ラジカルは電荷を持たないため、バイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることはできず、エッチングガスのチャンバー内濃度でエッチング速度をコントロールする。荷電粒子による異方性エッチングを行うためには、ある程度のガス圧を維持しなければならないので、反応性ガスを用いる限りラジカルの影響はゼロにできない。しかし、基板を冷却することでラジカルの反応速度を遅くする手法は広く用いられており、その機構を備えた装置も多いので、それを利用することが好ましい。
さらに、ドライエッチング工程において、主としてバイアスパワーを調整し、かつ状況に応じて、所謂、堆積ガスを併用することで、基板表面の凸部の中心間距離と当該凸部の高さとの比(中心間距離/高さ)が比較的低い二次元格子構造を形成することができる。
[数9]
S’(%)=|C−A|×100/A ・・・(9)
A:使用した粒子単層膜を構成する粒子の平均粒径
C:基板表面に形成された凸部の中心間距離
なお、上記したようにして形成された、表面に複数の凸部が周期的に二次元に配列した構造を有する基板を鋳型として用い、この鋳型表面の構造を基板原板に転写することにより基板12を作製してもよい。
鋳型表面の構造の転写は、公知の方法、例えば、上記した特許文献4に開示されている、ナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法などの方法により実施することができる。
転写回数が増えると、微細凹凸の形状は鈍化するので、元の原盤からの実用的な派生的な転写回数としては5回以内が好ましい。
これら各層の積層方法は、特に限定されず、一般的な有機発光ダイオードの製造に用いられている公知の技術を利用することができる。例えば、陽極導電層14および透明導電層18−2は、それぞれ、スパッタリング法、真空蒸着法などによって形成することができる。また、反射層22、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3、電子輸送層16−4、電子注入層16−5および金属層18−1は、それぞれ真空蒸着法によって形成することができる。
これら各層の厚さは非常に薄いため、上記のようにして各層を順次積層することで、基板12の表面12aにおける複数の凸部12bによる二次元格子構造が透明導電層18−2まで反映され、反射層22および金属層18−1において、基板12の表面12に形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造に対応した複数の凸部または凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
作製する有機発光ダイオード10としては、基板/Ag[膜厚50nm]/IZO[膜厚20nm]/2−TNATA[膜厚30nm]/NPD[膜厚70nm]/Ir(piq)3@PH−1(5%)[膜厚30nm]/Alq3[膜厚30nm]/MgAg[膜厚10nm]/IZO[膜厚110nm]とする。
即ち、この有機発光ダイオード10は、石英ガラスにより形成された基板12と、Agにより形成された厚さ50nmの反射層22と、IZOにより形成された厚さ20nmの陽極導電層14と、2−TNATAにより形成された厚さ30nmのホール注入層16−1と、NPDにより形成された厚さ70nmのホール輸送層16−2と、Ir(piq)3を5%ドープしたPH−1により形成された厚さ30nmの発光層16−3と、Alq3(tris(8−hydroxyquinolinato)aluminium)により形成された厚さ30nmの電子輸送層16−4と、MgAg(Agの含有率が70%以上のマグネシウム合金)により形成された厚さ10nmの金属層18−1と、IZOにより形成された厚さ110nmの透明導電層18−2とにより構成されている。
この有機発光ダイオード10を作製するために、まず、基板12の表面12aに複数の凸部12bによる二次元格子構造を作製する際に必要となる粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出する。
即ち、有機発光ダイオード10において、陰極導電層18のうち金属層18−1の厚さを10nmとしたときのエネルギー散逸の強度を上記した(2)式によって求める。
ここでは、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、陰極導電層18の裏面18aである。)に生じる表面プラズモンのエネルギーを伝搬光として取り出すときの粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出することとする。
上記した(2)式において、波数の大きい方から2つ目のモード(ピーク)が金属層18−1の裏面18−1c(陰極導電層18の裏面18a)に生じる表面プラズモンのエネルギー散逸強度であるため、このピークを与える面内波数k||を求める。
なお、この計算では、ピーク強度は目的ではなくk||を求めることが目的であるため、ωμ2/8πεNは寄与しない項として計算から除外し、上記した(5)式における
の計算を行う。
上記した(10)式に代入する数値として、d+=20nm、d−=10nm、r+とr−は通常の多層薄膜の反射係数を求める式により計算され、kz=(εN(ω/c)2−k|| 2)0.5となる。なお、上記した通常の多層薄膜の反射係数を求める式としては、非特許文献の「プラズモニクス−基礎と応用」岡本隆之・梶川浩太郎著、講談社サイエンティフィク(2010年10月1日出版)、P16−22を参照する。
そして、上記した(10)式をk||を変数とする関数として計算すると、図6に示すような結果が得られる。
図6において面内波数の大きい方から2つ目のモード(ピーク)のk||は15.6μm−1となっている。この値を上記した(6)式に代入すると、この波数に対応する微細凹凸構造(つまり、二次元格子構造のことである。)を作製するための粒子の粒径Dは、454nmと算出された。
なお、この具体例においては、粒子単層膜を用いたエッチング方法について説明するため、(6)式を用いて粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出するようにしているが、粒子単層膜を用いたエッチング方法以外の方法により有機発光ダイオード10を作製する場合には、上記した(6)式あるいは(7)式を用いて格子ピッチPを算出し、算出した格子ピッチPとなるようにして各種条件を調整して作製すればよい。
上記した(6)式で算出した粒子の粒径Dの値に基づいて、平均粒径が451.2nmで、粒径の変動係数が4.0%であるコロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を作製した。なお、平均粒径および粒径の変動係数は、Malvern Instruments Ltd製のZetasizer Nano−ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから算出した。
そして、反応終了後の分散液に、当該分散液の5倍の体積のメチルイソブチルケトンを加えて撹拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.05質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を粒子単層膜の表面圧を計測する表面圧センサーと、粒子単層膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中に貯留された液面(下層液として水を使用し、水温は26.5℃とした。)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽に貯留された下層水には、予め有機発光ダイオード10の基板12として用いるための透明の石英基板(30mm×30mm×1.0mm、両面鏡面研磨処理済)を略鉛直方向に浸漬している。
疎水化コロイダルシリカ分散液を下層水の液面に滴下し始めた時点から、下層水中から液面に向けて、出力100W、周波数1500kHzの条件で超音波を10分間照射することにより、疎水化したコロイダルシリカ粒子が二次元的に最密充填するのを促すとともに、当該分散液中の有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを揮発させて、当該下層水の液面に粒子単層膜を形成した。
その後、形成した粒子単層膜を可動バリアにより、拡散圧が22〜30mNm−1になるまで圧縮し、基板12を3mm/分の速度で引き上げて、基板12の一方の面に当該粒子単層膜を移し取った。なお、基板12の一方の面とは、二次元格子構造を形成しようとする面のことである。
こうして粒子単層膜が形成された基板12を取得すると、次に、当該基板12に対してCHF3ガスによりドライエッチング処理を行った。
このドライエッチング処理の条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W(13.56MHz)、ガス流量50〜200sccmとした。
ドライエッチング処理を行った後の基板12の一方の面をAFMで観察したところ、断面形状が円錐台形形状であり(図7(b)を参照する。)、平面配置は凸部が三角格子状に配列した微細凹凸構造が形成されていた(図7(a)を参照する。)。
また、AFM像から無作為に選択された25カ所の5μm×5μmの領域における当該微細凹凸構造の凸部の平均値を算出し、当該25カ所それぞれの平均値をさらに平均することにより求めた当該微細凹凸構造における凸部の平均高さhは、30.9nmであった。さらに、上記した(11)式を用いて算出した結果、配列のずれSは4.9%であった。さらにまた、平均高さhと中心間距離p’の平均値との比(平均高さh/中心間距離p’)は0.078であった。
その後、微細凹凸構造が形成された基板12の一方の面に、反射層22としてAgを50nmの厚さで蒸着法により成膜した。また、反射層22上に、陽極導電層14としてIZOを20nmの厚さでスパッタリング法により成膜した。さらに、ホール注入層16−1として2−TNATAを30nmの厚さで蒸着法によって成膜した。
次に、ホール注入層16−1上に、ホール輸送層16−2として4,4’−bis[N−1−napthyl]−N−phenyl−amino]−biphenyl(α−NPD)を70nmの厚さで蒸着法によって成膜し、その後、ホール輸送層16−2上に、発光層16−3としてIr(piq)3をホスト材料PH1(SFC社製)に5%濃度でドープしたものを30nmの厚さで蒸着法によって成膜した。
さらに、発光層16−3上に、電子輸送層16−4としてAlq3を30nmの厚さで蒸着法によって成膜し、さらにまた、電子輸送層16−4上に、金属層18−1としてMg/Ag=10/90(質量比)のマグネシウム/銀合金を10nmの厚さで蒸着法によって成膜し、また、金属層18−1上に、透明導電層18−2としてIZOを110nmの厚さでスパッタリング法により成膜して、有機発光ダイオード10を作製した。
なお、蒸着およびスパッタリングの際にマスクを使用することにより、発光エリアは2×2mmに作製した。
また、有機発光ダイオード10を粒子単層膜を用いたエッチング方法により作製する場合には、上記した(4)式により粒子単層膜を形成するための粒子の粒径を算出するようにした。
これにより、本発明による有機発光ダイオード10においては、表面プラズモンモードに応じて、基板12の表面12aに複数の凸部12bによる二次元格子構造を形成することができる。
従って、本発明による有機発光ダイオード10においては、表面プラズモンモードに対する光取り出し効率を最適化することができ、従来の技術による有機発光ダイオードに比べて光取り出し効率を向上させることができる。
そして、こうした有機発光ダイオード10を利用して画像表示装置を作製することにより、長寿命、小電力の画像表示装置を作製することができる。
さらに、こうした有機発光ダイオード10を利用して照明装置を作製することにより、長寿命、小電力の照明装置を作製することができる。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による有機発光ダイオードの第2の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
なお、本実施の形態においても、以下の説明においては、本発明を用いるものである限り、必ずしも対象とする有機発光ダイオードの構造および方式を限定するものではない。
まず、図8には、本発明による有機発光ダイオードの第2の実施の形態を示す概略構成断面説明図が示されている。
なお、図8に示す本発明による有機発光ダイオード100に関する説明においては、説明の便宜上、単色の有機発光ダイオード100を構成する各層の高さ方向における上方側の表面を上面と適宜に称し、各層の高さ方向における下方側の表面を下面と適宜に称する。
ここで、本発明による第2の実施の形態による有機発光ダイオードは、粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング法により、表面に複数の凹部または凸部が二次元に配列した凹凸構造が設けられた有機発光ダイオード用基板を作製する基板作製工程と、上記凹凸構造上に、少なくとも、陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含むエレクトロルミネッセンス層(EL層)と、金属層を含む陰極導電層とを、陰極導電層の表面に凹凸構造が複写されるように積層する積層工程とを有するものである。
即ち、最終的に得られる有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における波長2λ1−λpeakおよび2λ2−λpeakに対応する表面プラズモンの伝搬定数の実部をそれぞれk1およびk2としたとき、上記界面の高さ分布のパワースペクトルが波数K1=k1と波数K2=k2との間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内でのスペクトル強度の積分値が全波数にわたるスペクトル強度の50%以上の強度の値を有するように微細凹凸構造を作製する。
これにより、上記有機発光ダイオードより生じる光について、可視光〜近赤外領域(380nm〜2500nm)において、任意の波長を中心としたある程度広がりを持った狭帯域の光の取出し効率を安定的に得ることができる。
なお、上記「ある程度の広がり」とは、例えば、有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2としたとき、概ね、陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における波長λmin=2λ1−λpeakからλmax=2λ2−λpeakの間の広がりをもった狭帯域の光であることを意味する。
ここで、金属層表面の伝搬型表面プラズモンは、表面近傍の自由電子の粗密波が、表面電磁場を伴うものである。
平坦な金属層表面に存在する表面プラズモンの場合、該表面プラズモンの分散曲線と光(空間伝搬光)の分散直線とは交差しないため、表面プラズモンを光として取り出すことはできないものである。
一方、金属層表面にナノメートルオーダーの2次元微細凹凸構造があると、該微細凹凸構造によって回折された空間伝搬光の分散曲線が表面プラズモンの分散曲線と交差するようになり、表面プラズモンのエネルギーを輻射光として取り出すことができる。
従って、金属層の有機EL層側の面に二次元凹凸構造が設けられていることで、表面プラズモンとして失われていた光のエネルギーが取り出され、取り出されたエネルギーは、輻射光として金属層表面から放射される。
このとき、微細凹凸構造が周期性をもつ場合、金属層から輻射される光は指向性が高く、その大部分が光取出し面(有機発光ダイオードの有機発光ダイオード用基板側またはその反対側の表面)に向かう。そのため、光取出し面から高強度の光が出射し、光取出し効率が向上する。
従来の有機発光ダイオードにおいては、上記した二次元凹凸構造を周期性の高い格子構造としていた。
例えば、上記特許文献4では、単一の粒子径の粒子を用いて配列のずれの少ない粒子単層膜を形成し、これをエッチングマスクとしたドライエッチング法によって周期格子構造を有する有機発光ダイオード用基板を作製することで、金属層の有機EL層側の面に周期格子構造を形成している。
本発明の第2の実施の形態のように、凹部または凸部の間隔の分布にある程度の幅を持たせることにより、微細凹凸構造と取り出し波長とのマッチングにおいて、微細凹凸構造が多少変化したとしても、常に取り出し波長に対応する凹凸の周期構造を有するようになり、ある程度広がりを持った狭帯域の電磁波の光取出しが安定的に行われるように寄与するものである。
より具体的には、本発明の第2の実施の形態による有機発光ダイオードについて、図9(a−1)の例に示すように、例として異なる粒子径を有する3種の粒子A、粒子B、粒子Cにより形成した粒子単層膜を用いてドライエッチング法を行い、有機発光ダイオード用基板に凹凸構造を形成すると、そうした凹凸構造を有する有機発光ダイオード用基板表面の高さ分布のパワースペクトルは図9(a−2)に示されるようになる。即ち、パワースペクトルは、従来技術として示した図1(a)の(a−2)に示すような円環上に並んだデルタ関数状の点列ではなく、図9(a−2)に示す幅のある円環状の領域に分布を示す像が得られるものである。
また、こうしたランダムな二次元凹凸構造を有する本発明による有機発光ダイオードによれば、図9(a−3)の高さ分布のパワースペクトルのプロファイルに示すような、ある程度広がりを持った狭帯域で、かつ、強度の大きい光を得ることができる。
図8に示す本発明による有機発光ダイオード100は、一般にボトムエミッション型と称されているタイプの層構成を有する有機発光ダイオードである。
より詳細には、有機発光ダイオード100は、有機発光ダイオード用基板たる透明基板102を底部として、透明基板102の上方側における表面上に透明導電体からなる陽極導電層104を積層し、陽極導電層104の上面に複数の発光層などより形成されるEL層106を積層し、EL層106の表面上に金属からなる陰極導電層(金属層)108を積層することにより形成されるものである。
また、本発明による有機発光ダイオード100においては、透明基板102の表面である陽極導電層104との界面には、それぞれ異なる直径を有する3種類の凸部102a、凸部102b、凸部102cを複数配置し、凹凸構造を形成する。
こうした凹凸構造を形成する凸部102a、凸部102b、凸部102cは、二次元にランダムに配列されており、その結果凹凸構造のパワースペクトルは、ある程度の幅を持つようになる。即ち、こうしたパワースペクトルの円環状の幅は、従来技術として示した図1(a)の(a−2)に示すデルタ関数状の点列に比べて太くなる。
また、EL層106は、単一の有機発光材料からなり、各層としては、ホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、有機発光材料で構成される発光層106−3、電子輸送層106−4および電子注入層106−5を、陽極導電層104の表面上に順次積層することにより構成される。
こうしたEL層106を構成する各層は、一層が一つの役割を担う場合と二つ以上の役割を兼ねる場合とがある。
例えば、一層が二つ以上の役割を兼ねる場合としては、一層で電子輸送層と発光層との両方の役割を兼ねる場合などが挙げられる。
一方、陽極導電層104、EL層106の各層であるホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3、電子輸送層106−4、電子注入層106−5、陰極導電層108の各層の下面には、上記において説明した凹凸構造が反転した形状を有する二次元凹凸構造が形成されるようになる。
また、上記有機発光ダイオード100においては、陽極導電層104と陰極導電層108とに対して電圧が印加できるように電源110が接続されている。
こうした電源110から、陽極導電層104および陰極導電層108に電圧が印加されると、陽極導電層104と陰極導電層108とのそれぞれの層から、EL層106にホールおよび電子が注入される。
そして、注入されたホールおよび電子は発光層106−3で結合して励起子が生成され、こうした励起子が再結合する際に発光するものである。
以上の構成において、本発明による有機発光ダイオード100が実現されるものであるが、こうした有機発光ダイオード100を構成する各層を作製するための材料および形状などの特徴について、以下に詳細に説明することとする。
(2−2−1)透明基板
はじめに、透明基板102を作製するための材料としては、有機発光ダイオード100より取り出す目的の波長の光を透過させるものであればよいものであり、無機材料および有機材料をはじめとし、それらを組み合わせた材料などを用いて作製することができる。
例えば、第1の実施の形態で透明材料として例示された無機材料および有機材料を用いることが可能である。
こうした透明基板に用いる材料の選択基準は、有機発光ダイオードの用途によるものであるが、一般に、透明基板102の材料としては可視光透過率が高い材料が使用される。
具体的には、可視光領域(波長380nm〜780nm)でスペクトルに偏りを与えないものが望まれることから、該可視光透過率は70%以上が好ましいものであり、また、80%以上がより好ましいものであり、また、90%以上がさらに好ましいものである。
なお、トップエミッション素子の場合は、基板材料は必ずしも透明である必要はないことも付記しておく。
次に、透明基板102の形状について説明すると、透明基板102の表面には、直径がそれぞれ異なる凸部102a、凸部102b、凸部102cを複数配置し、二次元にランダムに配列した凹凸構造を設けるようにする(図10(b)を参照する。)。
こうした透明基板102の凹凸構造を有する面上に、陽極導電層104、EL層106(ホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3、電子輸送層106−4、電子注入層106−5)が順次積層される。各層は、凹凸構造に面して積層されるため、各層の上面に透明基板102表面と同様の凹凸構造が形成されるものである。
そのため、最終的にEL層106上に陰極導電層108を積層すると、他の層と同様に陰極導電層108の上面には、透明基板102表面の凹凸構造と同じ凹凸構造が形成され、また、陰極導電層108の下面には、透明基板102表面の凹凸構造が反転した形状の二次元凹凸構造、凹部108a、凹部108b、凹部108cが複数、二次元にランダムに配列した二次元凹凸構造(以下、「逆凹凸構造」と適宜に称する。)が形成される(図10(a)を参照する。)。
上記した逆凹凸構造における凹部108a、凹部108b、凹部108cのそれぞれの直径および深さは、透明基板102表面の凹凸構造における凸部102a、凸部102b、凸部102cそれぞれの直径および高さと一致する。
また、逆凹凸構造における凹部108a、凹部108b、凹部108cの配列パターンは、透明基板102表面の凹凸構造における凸部102a、凸部102b、凸部102cの配列パターンと一致する。
こうした凸部もしくは凹部をある程度ランダムに二次元に配列させることで、高さ分布のパワースペクトルのプロファイルに対応したある程度広がりを持った狭帯域の光の取出しが安定的に行われるようになる。
ここで、理想的な二次元格子とは、少なくとも二方向に一定の間隔で配列された構造であり、例えば、三角格子状(六方格子状)、正方格子状などの形状となることが考えられるが、本発明における凹凸構造は、このような三角格子や正方格子の配列がある程度不均一化(ランダム化)したものに相当する。
なお、上記「ある程度」とは、数値的に規定される範囲をもつものではなく、状態を意味しているものである。
そして、「ある程度ランダム」「ある程度不均一」とは、凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが特定の波数でデルタ関数的なピークを持つのではなく、例えば、波数K1およびK2を含む波数領域において広く分布しているような微細凹凸構造の乱雑さを意味する。凹凸面の高さ分布のパワースペクトルが波数K1および波数K2の間において十分に有限の値を与えるような微細凹凸構造の乱雑さを意味する。
さらに、高精度に配列した周期構造では、ある特定波長の光を取り出す場合、その取り出し波長と微細凹凸構造の周期とが完全に一致していれば光の取出し効率は向上するものであるが、微細凹凸構造の周期がわずかにでもずれていれば光の取出し効率は不良となる。
ここで、粒子単層膜を形成する粒子の粒径の具体的な決定方法について、図4を参照しながら説明することとする。
まず、波長λの光に対応する表面プラズモンの波数(伝搬定数)の求め方について示す。
この表面プラズモンの波数の求め方は、凹凸のない場合の有機発光ダイオードの層構成に対するものと同じであり、また、有機発光ダイオードはボトムエミッション型、トップエミッション型双方とも考え方は同じである。
ここで、有機発光ダイオードの層を構成するひとつの層である第l(エル)層について、その厚さをdlであるものとし、また、その比誘電率はεlで与えられているものとする。
第L層の厚さdLは無限大となる。また、第一層の厚さd1も無限大として差し支えない。
次に、l=Mである第M層が表面プラズモンを担持する金属層であるとすると、まず、この第M層の両側の界面を伝搬する表面プラズモンの伝搬定数を求める。
ここで、この金属層の界面を伝搬する表面プラズモンモードは2つ存在する。
一方は、エネルギーが主として第M層の直下の層である第(M−1)層と第M層との界面に集中するモードであり、もう一方は、エネルギーが主として第M層と第M層の直上の層である第(M+1)層との界面に集中するモードである。以下、前者をM−モード、後者をM+モードと適宜に称することとする。これらの2つのモードにおける表面プラズモンの伝搬定数は、系の固有方程式を解くことによって得られる。
一般に、この固有方程式は解析的に解くことはできず、非線形最適化の手法を用いて数値的に解くしかない。パラメーター総数が多くなるに従い、この計算は困難になってくる。
表面プラズモンの伝搬定数は、複素数であり、上記の固有方程式は、この複素伝搬定数を正確に与える。しかし、ここで必要となるものは、表面プラズモンの伝搬定数の実部だけであるため、この場合には、簡易的な計算により求める方法が適用できる。
この層構造中に振動双極子を配置すると、そのエネルギーは、この層構造が有する各モードに散逸する。それぞれのモードは異なる伝搬定数、即ち、面内波数を有するため、双極子からの散逸エネルギーの面内波数依存性を調べれば、この層構造がどの伝搬モードを有するのかが分かる。
ここで、双極子の散逸エネルギーの面内波数依存性の具体的な計算手順は、以下の通りである。
まず、(M−1)/M界面より基板側20nm程度の距離に界面に垂直に双極子を1個おくものとする。なお、双極子がおかれる層は、所望の取り出し角周波数ωにおいて吸収を持たないか、もしくは、吸収が小さいものとする。この双極子が置かれた層を第N層とする。図4には、有機発光ダイオードの層構造が示されており、l=Nである第N層には、当該層構造中におかれた双極子を示す説明図が示されている。この図4においては、第N層内に双極子が置かれている。
ここで、矢印d−およびd+は、双極子から第N層の下方側界面および第N層の上方側界面までの距離をそれぞれ示したものである。
また、双極子のモーメントをμとし、取り出し角周波数ωで振動しているものとする。
上記の各種値を用いた場合、この双極子のエネルギー散逸の面内波数(k||)依存性は、下記の(5)式で与えられる。
上記エネルギー散逸の面内波数依存性W−(k||)の極大が各伝搬モードに対応し、その極大を与える面内波数がそのモードの伝搬定数の実部となっている。
次に、双極子をM/(M+1)界面より空気側20nm程度のところにおき、同様の計算を行う。この計算によって得られるエネルギー散逸の面内波数依存性W+(k||)は、W−(k||)と同じ位置に極大を持つ。ただし、その極大値は異なる。
これらの極大のうち、波数の大きい方から2つのモードが表面プラズモンモードに対応する。
この2つの極大を与える面内波数におけるエネルギー散逸の極大値はW−とW+とで異なる。W−において大きい方の極大値を示す面内波数をk−とし、W+において大きい方の極大値を示す面内波数をk+とすると、k−がM−モードの伝搬定数で、k+がM+モードの伝搬定数となっている。
なお、図11には、有機発光ダイオードの金属層の裏面より基板側20nmの距離に双極子をおいたときのエネルギー散逸と、有機発光ダイオードの金属層の裏面より空気側20nmの距離に双極子をおいたときのエネルギー散逸の計算結果を示したエネルギー散逸図を図示している。
ここで、エネルギー散逸図とは、素子に置いた双極子のエネルギーがどの面内波数に散逸するかをグラフ化したものであり、これにより、表面プラズモンや導波モードなどの面内波数がわかる。
この素子の有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における波長λmin=2λ1−λpeakおよびλmax=2λ2−λpeakに対応する表面プラズモンの伝搬定数の実部を求める。
まず、λminに対応する表面プラズモンの波数k1を求める。λminに対応する角振動数、各層の誘電率および式(5)を用いてW−を計算する。ボトムエミッション型の場合、陰極導電層の空気側の表面プラズモンは光取り出しに寄与しないため、計算では陰極導電層の厚さは無限大とする。
このようにしてW−を算出して得られたエネルギー散逸図の最も右側のピークの波数がk1である。
次に、λmaxに対応する表面プラズモンの波数k2を同様の方法で求める。即ち、λmaxに対応する角振動数、各層の誘電率および式(5)を用いてW+を計算する。
このようにしてW+を算出して得られたエネルギー散逸図の最も右側のピークの波数がk2である。
このようにして求めた表面プラズモンの波数k1およびk2で決まる上記界面の凹凸面の高さ分布のパワースペクトルが波数K1=k1および波数K2=k2の間で有限の値をもつような凹凸構造をボトムエミッション型有機発光ダイオード内部に作製する。
本発明では、この波数範囲内でのスペクトル強度の積分値が全体のスペクトル強度の50%以上の強度を有するように調整する。
なお、一般に、上記スペクトル強度の積分値が全体のスペクトル強度の50%以下の強度であった場合、取り出されるエネルギーの絶対量が少なくなるものであるが、本発明による有機発光ダイオードでは、上記スペクトル強度の積分値が全体のスペクトル強度の50%以上の強度を有するため、取り出し効率を低下させることなく、一定の効果を得られるものである。
こうした凸部102a、凸部102b、凸部102cの平均高さは、15nm以上180nm以下が好ましく、また、20nm以上100nm以下がより好ましいものである。
ここで、平均高さが15nm未満、または、180nmを超えるものであった場合、有機発光ダイオード100からの光の取出し効率向上の効果が不充分となる。
この理由について以下に説明すると、凸部の平均高さが15nm未満であると、凸部の高さが低すぎるため二次元凹凸構造として十分な表面プラズモンの回折波を生成できなくなるため、表面プラズモンを輻射光として取り出す効果が低下することとなる。
また、凸部の平均高さが180nmを超えるものであると、凸部の高さが高すぎるため陽極導電層104、EL層106、陰極導電層108を積層する際に、凹凸が急峻であるため、陽極導電層104と陰極導電層108とが短絡する可能性も高くなる。
こうした理由により、凸部の平均高さは、15nm以上180nm以下とすることを本発明の要件としている。
具体的には、まず、凹凸構造の領域のうち、無作為に選択された5μm×5μmのある領域について、AFM像を取得する。
図12には、本発明による有機発光ダイオード用基板に形成された凹凸構造をAFMにより測定したAFM像を示す説明図を示している。こうしたAFM像においては、凸部の高低に応じてAFM像における明度が異なるものであり、凸部の高さが高い部分では明度が高く、一方、凸部の高さが低い部分では明度が低い。
なお、こうしたAFM像の取得方法については、公知の技術であることから、その説明は省略するものとする。
次に、こうして取得した5μm×5μmのAFM像上の対角線方向に直線を引き、この直線と交わった凸部102a、凸部102b、凸部102cのそれぞれの高さを測定し、凸部の高さの測定値の平均値を求める。
ここで、高さの測定は以下のように行う。即ち、基板面を、基板面に対して垂直方向(積層方向)から観察し、ある凸部X0に注目したとき、凸部X0を取り囲むように隣接する他の凸部X1、X2、X3・・・Xnが存在する。X0とX1の間の鞍部の鞍点をx1、同様に他の凸部との鞍部の鞍点をx2、x3・・・xnとし、これらの平均高さと、凸部X0の中心の高さとの差として求められる。
こうした処理を、無作為に選択された5μm×5μmの領域合計25カ所に対して行い、各領域における凸部の高さの平均値を求める。そして、得られた25カ所の領域における平均値をさらに平均した値を算出し、平均高さとする。
本発明においては、凸部の平均高さ15nm以上180nm以下の範囲に収まるようにする。
また、凸部の作製方法については後に詳説するが、凸部の平均高さは粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行う際のドライエッチング条件により調節することが可能である。
なお、逆凹凸構造を形成する凹部108a、凹部108b、凹部108cの直径および平均深さは、それぞれ、凸部102a、凸部102b、凸部102cの直径および平均高さと同じである(図10(a)(b)を参照する。)。そのため、凹部の平均深さは、凸部の平均高さから間接的に定量できるものである。
一方、本発明の光取出し効果を与えない場合、例えば、単一粒子径の粒子を用いて形成された凹凸構造を有する粒子単層膜をエッチングマスクとして形成された凹凸構造の場合、該パワースペクトル強度は1つの波数のみに値を持つようになり、波数K1および波数K2の間の幅を持つ波数域全体には分布しないため、取り出し波長と凹凸構造のわずかなミスマッチが起きた場合は安定的に光取り出し効果を得ることが難しくなる。
次に、陽極導電層102は、目的の光を透過するような透明導電体より構成されるものである。
こうした透明導電材料は、例えば、第1の実施の形態において例示した材料を用いることができる。
また、第2の実施の形態においては、陽極導電層102の厚さは30〜500nmとする。
なお、有機発光ダイオード100を構成する各層の厚さは、分光エリプソメーター、接触式段差計、AFM等により測定できるものである。
第2の実施の形態においては、EL層106を複数の層より構成するものであり、詳細には、ホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3、電子輸送層106−4および電子注入層106−5とを積層して構成するものである。
こうしたEL層106の構成は、少なくとも、有機発光材料を含有する発光層を含むようにし、発光層のみから構成されるようにしてもよいが、一般的には、発光層以外の他の層を設けることでホールと電子を効率よく注入し発光効率を高める工夫を行う。
また、ホール注入層106−1や電子注入層106−5は層構成によっては省略可能であり、電子輸送層106−4は発光層106−3を兼ねることもできる。
これらの層を構成する材質は、公知のものを使用することが可能である。
上記のうち、発光層106−3を構成する有機発光材料としては、これまで、有機ELの発光層を構成する有機発光材料として公知のものが利用されてきた。
こうした有機発光材料としては、例えば、蛍光および/または燐光を発生する有機半導体化合物、該有機半導体化合物を他の物質(ホスト材料)にドープした化合物、該有機半導体化合物にドーピング材料をドープした化合物等が挙げられる。
ここで、蛍光および/または燐光を発生する有機化合物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等の材料が知られており、いずれの材料を用いてもよいものである。
そして、色素系の有機化合物の具体的な例としては、例えば、前述のDPAVB、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh](以下、クマリンC545Tと略記する。)、ジスチルアリーレン誘導体である4,4’−bis(2,2−diphenyl−ethen−1yl)biphenyl(以下、DPVBiと略記する。)等が挙げられる。
また、金属錯体系の有機化合物の具体的な例としては、例えば、前述のAlq、ZnPBO、Tris[1−phenylisoquinoline−C2,N]iridium(III)(以下、Ir(piq)3と略記する。)等が挙げられる。
また、ホスト材料としては、例えば、後述するホール輸送材料、電子輸送材料等が利用できる。
さらに、ドーピング材料としては、発光効率の向上、発生する光の波長を変化させる等の目的で用いられるもので、例えば、ジスチルアリーレン誘導体である4,4’−bis(9−ethyl−3−carbazovinylene)−1,1’−biphenyl(以下、BcZVBiと略記する。)等が挙げられる。
ホール注入層106−1を構成する材料、即ち、ホール注入材料としては、例えば、前述の2−TNATA等が挙げられる。
また、ホール輸送層106−2を構成する材料、即ち、ホール輸送材料としては、例えば、前述のTPD、CuPc、4,4’−bis[N−1−napthyl]−N−phenyl−amino]−biphenyl(以下、α−NPDと略記する。)等の芳香族アミン化合物などが挙げられる。
また、電子輸送層106−4を構成する材料、即ち、電子輸送材料としては、例えば、上述したAlq、BND、PBD等のオキサジオール系化合物等の金属錯体系化合物などが挙げられる。
また、電子注入層106−5を構成する材料としては、フッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
なお、本実施の形態においては、EL層106として電子注入層106−5を用いたが、電子注入層106−5を採用することは必須ではない。しかしながら、電子輸送層106−4と陰極導電層108との間に電子注入層106−5を設けると、仕事関数の差を少なくすることが可能であるため、陰極導電層108から電子輸送層106−4に電子が移行しやすくなるという効果がある。
ただし、陰極導電層108としてMg/Ag=10/90〜90/10等のマグネシウム合金を使用することにより、電子注入層の代わりとなるため、こうした場合は、電子注入層106−5を設けなくとも電子注入効果が得られるものである。
なお、上記材料により作製されたEL層106は、通常、その全体の厚さを30〜500nmであるように形成することが好ましい。
本実施の形態による有機発光ダイオード100の陰極導電層108は、金属材料により構成される。
こうした金属材料としては、例えば、Ag、Au、Al、または、それらのうちのいずれかを主成分とする合金が挙げられる。
ここで「主成分とする」とは、当該合金中、Ag、Au、Alの金属が占める割合が70質量%以上存在することを意味する。
さらに、合金の場合、合金の主成分以外の金属としては、Mg等が挙げられる。
具体的には、例えば、Mg/Ag=10/90〜90/10(質量比)等のマグネシウム合金が挙げられる。
なお、上記材料により作製された陰極導電層108は、通常、その厚さを50〜3000nmであるように形成することが好ましい。
以上において、本発明による有機発光ダイオード100を構成する各層の材料について説明したが、こうした有機発光ダイオード100を構成する各層の作製方法について、以下に詳細に説明することとする。
なお、本実施の形態においては、有機発光ダイオード100の製造方法として積層方式を採用するものとする。
ここで、積層方式とは、有機発光ダイオード100の底部となる層から順に1層ずつ積層していく手法であり、本実施の形態においては、まず、直径がそれぞれ異なる3種類の凸部102a、102b、102cが複数、二次元にランダムに配列した凹凸構造が表面に設けられた透明基板102を作製する(本明細書においては、こうした工程について「基板作製工程」と適宜に称する。)。
次に、透明基板102の凹凸構造上に、陽極導電層104と、EL層106(ホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3(赤色発光層)、電子輸送層106−4、電子注入層106−5)と、陰極導電層108とを順次積層させていく(本明細書においては、こうした工程について「積層工程」と適宜に称する。)ものである。
以下、基板作製工程と積層工程とについて、それぞれ詳細に説明する。
はじめに、透明基板102は、基板上に粒子径の異なる複数の粒子の混合物(以下、混合粒子と適宜に称する。)を用いて形成した粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行うドライエッチング法により作製する。
ここで、粒子単層膜をエッチングマスクとするドライエッチング法は、粒子単層膜を水面上に製膜し、上記第1の実施の形態において説明したLB法の原理を用いて基板原板表面上に移行し、こうした単層膜をエッチングマスクとして基板原板表面をドライエッチングすることにより、凹凸構造を有する透明基板を作製する方法であり、例えば、上記した特許文献4に詳細に開示されている。
従来法では、粒子間隔の制御が高精度で行われた2次元的最密充填格子を得るために、単一の粒子径の粒子を用いている。
つまり、単一の粒子径の粒子を用いて形成された粒子単層膜においては、粒子が2次元に最密充填しているため、これをエッチングマスクとして基板原板表面をドライエッチングすると、凹凸構造として高精度な三角格子状(六方格子状)の二次元格子構造が形成される。
このような高精度な三角格子状(六方格子状)の二次元格子構造を有する基板を用いて形成された陰極導電層の表面は、同様に高精度な二次元格子構造であることから、これを使用することによって、大面積である場合であっても高効率で表面プラズモンの回折波を得ることができるため、光取出し効率が向上し、高輝度の有機発光ダイオードを得ることが可能となるものである。
しかしながら、従来法で製造された二次元格子構造を有する基板上に構成された有機発光ダイオードは、特定の単一の波長において光の取出し効率が向上するように最適化されており凹凸構造のピッチの製造バラつきによっては発光層の発光波長と取り出し波長とがずれてしまい、取り出し効率の向上が得られない場合があった。
そのため、本発明においては、粒子単層膜を構成する粒子として、異なる粒子径を有する複数種類(ここでは3種類を例にとって説明している。)の粒子による混合粒子を用いるようにした。
ここで、選択する粒径は互いにある程度近いものを用いるのが本発明の効果を得るのに効果的であるが、粒径の近似に関する目安として具体的な規定はない。結局、微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1および波数K2の間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内でのスペクトル強度の積分値が全体のスペクトル強度の50%以上の強度を有するように複数の粒径を組み合わせれば良い。
こうして形成される粒子単層膜による凹凸構造は、上記において説明したように、直径がそれぞれ異なる凸部102a、凸部102b、凸部102cが複数、二次元にランダムに配列したものとなる。
そして、こうした凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルは波数K1からK2の間に有限の値を与えるため、凹凸構造のピッチの製造バラつきが多少生じたとしても、取り出し波長と凹凸構造との関係がずれることなく、安定的に光取り出し効率に優れた格子を提供するものとなる。
より詳細には、透明基板102は、透明基板102の原型となる基板原板(凹凸構造を形成する前の透明基板)の表面に、混合粒子からなる粒子単層膜を被覆する工程(以下、こうした工程を「被覆工程」と適宜に称する。)と、粒子単層膜を用いたドライエッチング工程とを行うことにより作製できる。
以下、被覆工程とドライエッチング工程とについて、それぞれ詳細に説明する。
被覆工程は、第1の実施の形態において説明したように、水槽に混合粒子を展開させるための下層液を入れ、該下層液の液面に溶剤中に混合粒子が分散した分散液を滴下し、溶剤を揮発させることにより混合粒子からなる粒子単層膜を液面上に形成する粒子単層膜形成工程と、粒子単層膜を基板上に移し取る移行工程とを行うことにより実施できる。
つまり、基板原板の表面に被覆するエッチングマスクを被覆する被覆工程においては、はじめに粒子単層膜のみを作製し(粒子単層膜形成工程)、粒子単層膜形成工程により作製された粒子単層膜を基板原板表面上に移し取るようにするものである(移行工程)。
なお、以下の説明においては、下層液として親水性のものを使用し、分散液においては有機溶剤および混合粒子として疎水性のものを使用する場合について例を示したが、下層液として疎水性の液体を使用してもよく、その場合には、混合粒子として親水性のものを使用する、
以下、粒子単層膜形成工程と移行工程とについて、それぞれ詳細に説明する。
上記したように、被覆工程においては、基板原板表面に被覆する粒子単層膜を作製する粒子単層膜形成工程を行うが、本実施の形態においては、粒子単層膜形成工程として、水槽(トラフ)に貯留された所定の溶媒表面上に混合粒子を含有する溶剤を展開させることにより、粒子単層膜を得る手法について説明する。
はじめに、水槽(トラフ)を用意し、下層液となる所定の液体を入れる。本実施の形態においては、上記水槽に貯留する所定の液体として水を用いるものとする。
次に、所定の有機溶剤等の溶剤中に、3種の異なる粒径を有する粒子よりなる混合粒子を分散させることにより分散液を調製する。
ここで、こうした3種の粒子の材料としては、表面が疎水性で、かつ、粒子径がそれぞれ異なる3種の粒子A、粒子B、粒子C(粒子径は、「粒子A>粒子B>粒子C」とする。)を用いるようにする。
そして、それらの粒子A、粒子B、粒子Cを分散させる所定の溶剤としては、揮発性が高く、かつ、疎水性の高い溶剤(例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等である。)を用いるようにする。
上記溶剤中に3種の粒子A、粒子B、粒子Cを加えて混合し、3種の粒子A、粒子B、粒子Cが溶剤中に分散した分散液を調製するものである。
こうした分散液の粒子濃度(粒子A、粒子B、粒子Cの合計の濃度)は、1〜10質量%とすることが好ましい。
そして、上記粒子A、粒子B、粒子Cを分散させた分散液を、上記水槽内の下層液表面に滴下して該水槽内の下層液液面上に展開する。
こうした分散液の下層水の液面への滴下速度は、0.001〜0.01ml/秒とすることが好ましい。
なお、分散液中の粒子の濃度や滴下速度を上記に記載した範囲で行うと、粒子が部分的にクラスター状に凝集して2層以上となることや、粒子が存在しない欠陥箇所が生じることなどの傾向が抑制された粒子単層膜が得られやすいものである。
そして、上記滴下後に、所定の時間を経過させることにより分散液のうち有機溶剤が揮発し、混合粒子A、粒子B、粒子Cがランダムに2次元に密集した粒子単層膜が、水槽内の下層液面上に形成される。
具体的には、粒子Bは上述の発光スペクトルピークλpeakに対応する粒径を有するものを選定し、粒子Aと粒子Cを適宜混合することにより、結果として得られる凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1から波数K2の間で有限の値をとるように調整する。
本発明においては混合粒子を用いているため、凹凸構造中の複数の凸部の直径や中心間の距離にばらつきが生じる。こうしたばらつきは、ばらつきがない場合と比較して、スペクトル強度が有限の値を持つ波数の範囲が広くなるのを利用する。
そして、スペクトル強度が有限の値を持つ波数の範囲は、凹凸構造中の複数の凸部の直径や、隣接する凸部との中心間の距離のばらつきの程度、3種の粒子A、粒子B、粒子Cそれぞれの粒度分布、平均粒子径、3種の粒子A、粒子B、粒子Cの混合比率などによって調節できる。
上記条件を踏まえると、3種の粒子A、粒子B、粒子Cの粒子径は、いずれも、10nm以上2000nm以下の範囲内であることが好ましく、50nm以上1700nm以下の範囲内であることがより好ましい。
また、各粒子の粒子径は、一次粒子径の値であり、動的光散乱法により求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから公知の方法により求めることができる。あるいは、粒子をAFM像またはSEM像にて直接観察して粒径を計測してもよい。
なお、ここでは3種の粒子径の粒子を用いた例を示しているが本発明はこれに限定されるものではなく、粒子径が異なる粒子は2種以上であればよい。
狭帯域において取り出し効率の向上効果を均等化する観点からは、2種〜5種程度であることが好ましい。
これらは2種以上を併用してもよい。
この3種の粒子A、粒子B、粒子Cの材料や後述するドライエッチング条件を選択することにより、形成される凸部102a、凸部102b、凸部102cの高さや形状を調節することができ、結果的に凹部108a、凹部108b、凹部108cの深さや形状を調節することができる。
また、他の条件としては、本実施の形態においては、上記下層液として水を使用するため、3種の粒子A、粒子B、粒子Cの表面は、疎水性の材料より構成されることが好ましい。
3種の粒子の表面が疎水性であれば、上述したように水槽(トラフ)の下層液の液面上に粒子の分散液を展開させて粒子単層膜を形成する際に、下層液として水を用いて容易に粒子単層膜を形成できる上に粒子単層膜を基板表面に容易に移動させることができる。
上記で例示した3種の粒子の材料うち、ポリスチレンなどの有機高分子の粒子は表面が疎水性であるため、そのまま使用できるものであるが、金属粒子や金属酸化物粒子のうち表面が親水性のものにおいては疎水化剤により表面を疎水性に変えることで使用できる。
ここで、疎水化剤としては、例えば、界面活性剤、アルコキシシランなどが挙げられる。
上記界面活性剤は、幅広い材料の疎水化に有効であり、粒子が金属、金属酸化物などからなる場合に好適である。
こうした疎水化剤としての界面活性剤は、例えば、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好適に使用できる。また、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども使用できる。
このような界面活性剤を用いた疎水化処理の方法としては、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの1種以上からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を続ければよい。このように、あらかじめ粒子を分散させておき、それから界面活性剤を加えると、表面をより均一に疎水化することができる。このような疎水化処理後の分散液は、そのまま、下層水の液面に滴下するための分散液として使用することもできる。
疎水化対象の粒子が水分散体の状態である場合には、この水分散体に界面活性剤を加えて水相で粒子表面の疎水化処理を行った後、有機溶剤を加えて疎水化処理済みの粒子を油相抽出する方法も有効である。こうして得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。
なお、この分散液の粒子分散性を高めるためには、有機溶剤の種類と界面活性剤の種類とを適切に選択し、組み合わせることが好ましい。粒子分散性の高い分散液を使用することによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、各粒子が2次元に密集した粒子単層膜がより得られやすくなる。例えば、有機溶剤としてクロロホルムを選択する場合には、界面活性剤として臭素化デシルトリメチルアンモニウムを使用することが好ましい。その他にも、エタノールとドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせ、メタノールと4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの組み合わせ、メチルエチルケトンとオクダデカン酸との組み合わせなどを好ましく例示できる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1〜20%の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子や、SiO2、Al2O3、TiO2などの酸化物粒子を疎水化する際に有効である。
ただし、これら粒子に限らず、基本的には、水酸基等を表面に有する粒子であればいかなる粒子に対して適用することができる。
アルコキシシランとしては、例えば、第1の実施の形態において挙げた材料の他に、3−アミノプロピルトリメトキシシランや3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤としてアルコキシシランを用いる場合には、アルコキシシラン中のアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。よって、アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で行うことが望ましい。
アルコキシシランにより疎水化する具体的方法としては、前述した第1の実施の形態における方法と同様であるが、反応時間としては、室温から40℃の範囲で適宜攪拌しながら所定時間、好ましくは0.5〜12時間反応させるものとする。
また、第1の実施の形態において説明したように、アミン系以外のアルコキシシランは、酸性またはアルカリ性の条件下で加水分解するため、例えば、0.1〜2.0質量%濃度の酢酸水溶液を添加する方法によれば、加水分解促進の他に、シラノール基安定化の効果も得られるため好ましい。
疎水化対象の粒子とアルコキシシランの比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、アルコキシシランの質量が1〜20倍の範囲が好ましい。
所定時間反応後、この分散液に対して、前述の揮発性有機溶剤のうちの1種以上を加え、水中で疎水化された粒子を油相抽出する。この際、添加する有機溶剤の体積は、有機溶剤添加前の分散液に対して0.3〜3倍の範囲が好ましい。油相抽出して得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。なお、こうした疎水化処理においては、処理中の分散液の粒子分散性を高めるために、撹拌、超音波照射など実施することが好ましい。分散液の粒子分散性を高めることによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、粒子単層膜がより得られやすくなる。
まず、下層水から水面に向けて超音波を照射しながら粒子単層膜形成工程を行うと、粒子の凝集状態を低減する効果が得られる。この際、超音波の出力は第1の実施の形態において説明した出力と同じ条件を採用することができる。また、超音波の照射時間については、粒子の単層化の促進に十分であればよいものであり、粒径、超音波の周波数、水温などによって所要時間が変化するものであるが、第1の実施の形態において説明した照射時間を採用することができる。
一般的に振動数(ここでは超音波の周波数を指す。)が高すぎると、水分子のエネルギー吸収が始まり、水面から水蒸気または水滴が立ち上る現象が起きるため、本発明において用いるLB法にとって好ましくない。また、一般的に振動数が低すぎると、下層水中のキャビテーション半径が大きくなり、水中に泡が発生して水面に向かって浮上してくる。このような泡が粒子単層膜の下に集積すると、水面の平坦性が失われるため本発明の実施に不都合となる。また、超音波照射によって水面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が高すぎたり、超音波振動子と発振機のチューニング条件によって水面の波高が高くなりすぎたりすると、粒子単層膜が水面波で破壊される可能性がある。
以上のことから超音波の周波数を適切に設定すると、形成されつつある粒子単層膜を破壊することなく、効果的に粒子の単層化を促進することができる。しかし、粒径が例えば100nm以下など小さな粒子になると固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果のとおりの超音波振動を与えるのは困難になる。
このような場合は、粒子2量体、3量体、・・・20量体程度までの質量に対応する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることが出来る。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の単層化は促進される。
超音波照射によって得られる利点は粒子の単層化促進の他に、粒子分散液調製時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などもある程度修復する効果がある。
上記において説明したように、3種の粒子A、粒子B、粒子Cをランダムに配置した粒子単層膜としては、上記材料により作製することが好ましい。
ここで、粒子単層膜の形成原理について説明すると、上記した粒子単層膜の形成は、粒子の自己組織化によるものである。
その原理は、粒子が水面上に浮いており、かつ、互いにランダムに動ける状態から、粒子同志が集結する状態になる際、粒子間に存在する分散媒に起因して表面張力が作用し、その結果、粒子同士はバラバラの状態で存在するのではなく、水面上で密集した単層構造を自動的に形成するというものである。このような表面張力による密集構造の形成は、別の表現をすると横方向の毛細管力による粒子同士の相互吸着とも言える。
例えば、3種の粒子が水面上に浮いた状態で集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用し、3種の粒子は三角形(粒径が異なる粒子同士では正三角形とはならない)を基本とする配置で安定化することにより、粒子単層膜が形成されるものである。
仮に、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、すなわち、粒子が液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、粒子単層膜は形成されない。
よって、粒子と下層水は、一方が疎水性である場合には他方を親水性にして、粒子群が液面下に潜ることを回避することが重要である。
そのため、下層液としては、以上の説明のように水を使用することが好ましく、水を使用すると、比較的大きな表面自由エネルギーが作用して、一度生成した粒子の密集した単層構造が液面上に安定的に持続しやすくなる。
次に、上記粒子単層膜形成工程により作成した粒子単層膜を基板原板表面に移し取る移行工程について説明する。
この移行工程では、粒子単層膜形成工程により下層水の液面上に形成された粒子単層膜について、単層状態のままエッチング対象物である基板原板上への移行が行われる。
粒子単層膜を基板原板上に移行させる具体的な方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、第1の実施の形態における移行工程と同様に、疎水性の基板原板を粒子単層膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて粒子単層膜に接触させ、ともに疎水性である粒子単層膜と基板原板との親和力により粒子単層膜が基板原板に移行させて移し取る方法や、粒子単層膜を形成する前にあらかじめ水槽の下層水内に基板原板を略水平方向に配置しておき、粒子単層膜を液面上に形成した後に液面を徐々に降下させることにより、基板原板上に粒子単層膜を移し取る方法などがある。
これらの方法によれば、特別な装置を使用せずに粒子単層膜を基板上に移行させることができるが、より大面積の粒子単層膜であってもその粒子の密集状態を維持したまま基板原板上に移行させやすい点を考慮すると、第1の実施の形態において説明したLBトラフ法を採用することが好ましい。
本実施の形態において用いるLBトラフ法は、第1の実施の形態において説明したLBトラフ法と同様の手法であるため、その説明は省略する。
なお、第2の実施の形態においても、粒子単層膜を圧縮する際に好ましい拡散圧としては、5〜80mNm−1であり、より好ましくは、10〜40mNm−1である。このような拡散圧であると、各粒子が隙間無く密集した粒子単層膜が得られやすい。
また、基板原板を引き上げる速度は、0.5〜20mm/分が好ましい。
上記のようにして、上記した移行工程によれば、基板原板表面を粒子単層膜で被覆することができる。
必要に応じて、第1の実施の形態に示した方法と同様の方法および同様の条件で、移行工程の後、さらに、粒子単層膜を基板原板上に固定するための固定工程を行ってもよい。
以上のようにして粒子単層膜で被覆した基板原板表面を、ドライエッチングすることにより透明基板102を得る。
粒子単層膜で被覆した基板原板表面に対してドライエッチングを施すことにより、具体的には、ドライエッチングを開始とともに、粒子単層膜を構成している各粒子の隙間をエッチングガスが通り抜けて基板原板の表面に到達し、その部分に凹部が形成され、各粒子に対応する位置にそれぞれ凸部が現れるようになる。
さらに、引き続きドライエッチングを続けると、各凸部上の粒子も徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、基板原板表面に刻まれる凹部も深くなっていき、最終的に、基板表面に凹凸構造を有する透明基板102が作製されるものである。
こうしたドライエッチング工程は、第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法で行うことが可能であり、このドライエッチング工程によれば、バイアスパワー、ガス流量、堆積ガスの種類と量などのドライエッチング条件を調節することによって、形成される凸部102a、102b、102cの平均高さおよび形状を調節できる。
また、ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、第1の実施の形態において例示した気体が挙げられるが、本発明の効果に影響しない気体であればよく、こうした気体であれば上記気体に限定されることはないものである。
そして、粒子単層膜を構成する粒子や基板原板の材料などに応じて、上記気体のうち1種以上を選択して使用するようにする。
また、上記ドライエッチングの処理はエッチング装置を用いて行うものとするが、本実施の形態において使用可能なエッチング装置としては、異方性エッチングが可能な反応性イオンエッチング装置やイオンビームエッチング装置などであって、かつ、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものを使用するものとする。
こうしたエッチング装置であれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数等の装置における仕様は特に制限しないものとする。
また、本発明においては、ドライエッチング工程でのエッチング選択比(基板原板のエッチング速度/粒子単層膜のエッチング速度)が、上記微細凹凸構造に必要な構造深さを得られるように、エッチングの各条件である、粒子単層膜を構成する粒子の材料、基板原板の材料、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間などを設定することが好ましい。
そのため、例えば、粒子単層膜エッチングマスクを構成する粒子としてコロイダルシリカ粒子を選択し、基板として石英基板を選択してこれらを組み合わせた場合、エッチングガスにArやCF4などのガスを用いることで、比較的低い振幅とピッチの比のエッチングをすることができる。
また、電場のバイアスパワーを数十から数千Wに設定すると(ドライエッチング装置の電極面積による。)、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子は加速されて、高速でほぼ垂直に基板に入射する。よって、基板に対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
さらに、ドライエッチングでは、基板の材料とエッチングガスの種類の組み合わせによっては、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングが並行して起こる場合がある。こうしたラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングが行われる。
ラジカルは電荷を持たないためバイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることはできず、エッチングガスのチャンバー内濃度でコントロールするものである。
また、荷電粒子による異方性エッチングを行うためにはある程度のガス圧を維持しなければならないので、反応性ガスを用いる限り等方的エッチングの影響はゼロに出来ない。
しかしながら、基材を冷却することでラジカルの反応速度を遅くする手法は広く用いられており、その機構を備えた装置も多いので、状況に応じてそうした装置を利用することが好ましい。
また、ドライエッチング工程において、主としてバイアスパワーと圧力を調整し、かつ、状況に応じていわゆる堆積ガスを併用することにより、基板原板表面に、凸部底面の直径と高さとの比(凸部底面の直径/高さ)が比較的低い二次元格子構造を形成することができる。
より詳細には、予め、直径がそれぞれ異なる凸部102a、102b、102cが複数、二次元にランダムに配列した凹凸構造が表面に設けられた基板を形成し、該基板を鋳型として透明基板102を作製する。
こうした鋳型表面の凹凸構造を基板原板に偶数回転写すると、基板原板表面に、直径がそれぞれ異なる凸部102a、凸部102b、凸部102cが複数、二次元にランダムに配列した凹凸構造が刻まれ、凹凸構造を有する透明基板が得られるものである。
また、該鋳型表面の凹凸構造を基板原板に奇数回転写すると、基板原板表面に、直径がそれぞれ異なる凹部が複数、二次元にランダムに配列した凹凸構造を有する透明基板が得られる。この透明基板表面の凹凸構造は、鋳型表面の凹凸構造が反転した形状となる。
ただし、転写回数が増えると微細凹凸の形状は鈍化するので、実用的な転写回数としては1〜4回が好ましい。
こうした鋳型表面の構造の転写は、公知の技術であり、例えば、上記特許文献4に開示されているような、ナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法等の方法を用いて実施することができる。
次に、本実施の形態による有機発光ダイオード100を構成する各層を積層させる工程について、以下に説明する。
本実施の形態による有機発光ダイオード100は、上記のようにして作製した凹凸構造を有する透明基板102の表面上に、陽極導電層104、EL層106たるホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3、電子輸送層106−4、電子注入層106−5、陰極導電層108を順次積層することで取得することができる。
こうした各層の積層方法は、特に限定されないものであり、一般的な有機発光ダイオードの製造において用いられている公知の技術を利用できる。
例えば、陽極導電層104および陰極導電層108は、それぞれ、スパッタリング法、真空蒸着法などによって形成できる。
また、EL層106の各層は、真空蒸着法によって形成される。
さらにまた、陽極導電層104、EL層106の厚さは非常に薄いため、上記のように各層を順次積層していくと、透明基板102表面の凹凸構造が各層に複製されていく。
そのため、該EL層106上に積層された陰極導電層108は、裏面に、該凹凸構造が反転した形状を有するものとなる。
以上のようにして作製された本発明による有機発光ダイオードを、少なくともその一部に用いるように画像表示装置を構成することにより、従来の画像表示装置よりもその画面を安定的に明るくすることが可能となる。
また、以上のようにして作製された本発明による有機発光ダイオードを、少なくともその一部に用いるように照明装置を構成することにより、従来の照明装置よりも安定的に明るく照射することが可能となる。
従って、本発明の第2の実施の形態による有機発光ダイオード100は、取出し波長を可視光〜近赤外領域全体(380nm〜2500nm)の任意の波長に設定できる。
そして、こうした有機発光ダイオード100を利用して画像表示装置を作製することにより、長寿命、小電力の画像表示装置を作製することができる。
さらに、こうした有機発光ダイオード100を利用して照明装置を作製することにより、長寿命、小電力の照明装置を作製することができる。
上記した2つの実施の形態において説明した、素子構成を陰極トップエミッション型とした有機発光ダイオード10および素子構成をボトムエミッション型とした有機発光ダイオード100について、光取り出し効率および発光効率について図13に示す具体例を挙げながら以下に説明する。
まず、実施例1とした有機発光ダイオード10では、粒子単層膜を構成する粒子として、粒径524nmの粒子のみを用いて粒子単層膜を形成するものとする。
そして、こうした粒子単層膜により形成された凹凸構造を有する基板を備えた有機発光ダイオード10が、発光スペクトルのピークがλpeak=620nm、また、発光スペクトルの半値全幅が85nmである光を発光することが目的であるものとすると、微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルのプロファイル(以下、「微細凹凸構造のスペクトル」と適宜に称する。)は、Kpeak=13.83μm−1にピークを有するものとなる。その際、微細凹凸構造のスペクトルの半値全幅は1.04μm−1である。
ここで、上記Kpeakは、さらに、図13(b)に示すように、微細凹凸構造のスペクトルについて横軸を波数としたスペクトルを示す場合の波数のピークがKpeakとなる。
なお、こうした有機発光ダイオード10の微細凹凸構造のスペクトルを概念的に示した場合、図14(b)に示すようになる。
ここで、図14(a)には、波数10.13μm−1、半値全幅1.391μm−1とする発光材料のスペクトルに対応する表面プラズモンスペクトルを横軸を波数として示している。上記有機発光ダイオード10は、微細凹凸構造のスペクトルにおいて波数10.13μm−1の光を発光するように素子構造を設計されているため、上記図14(a)に示す発光材料のスペクトルと同じ波数の位置にピークを有する。
こうした図14(a)のスペクトルと、図14(b)に示す実施例1のスペクトルとを比較すると、凹凸形状を有する基板を備えた有機発光ダイオード10であるため、図14(a)のスペクトルと同じ波長の光を発するものでありながら、狭帯域の光を得ることが可能である。
こうした凹凸形状を持たない有機発光ダイオードの特徴として、発光スペクトルのピークkpeak=10.13μm−1、該ピークの半値全幅が1.391μm−1である光を発光する比較例1の有機発光ダイオードの場合、表面プラズモンが発する光は観察されないことにより、光取り出し効率の向上は得られない。
次に、有機発光ダイオード10の光取り出し効率を求める。
可視光領域(380nm〜780nm)における発光スペクトルに対応する表面プラズモンスペクトルと、有機発光ダイオード10より得られる微細凹凸構造のスペクトルとの重なりについて説明する。
この2つのスペクトルは、重なりの割合が大きいほど発光波長に対応した光の取り出し効率が高いものとなる。
こうした重なりの割合を算出する場合、はじめに、発光材料のスペクトルを表面プラズモンの波数を横軸に用いて書き換える。
ここで、例えば図14(a)に示されるように、発光材料のスペクトルを表面プラズモンの波数に換算するためには、実施例1や実施例2で用いた手法が利用できる。
ここで、図15(a)には、発光材料の表面プラズモンの波数を横軸としたスペクトル強度Im(以下、「発光材料のスペクトル強度Im」と適宜に称する。)を実線で示し、微細凹凸構造のスペクトル強度Isを一点鎖線で示し、2つのスペクトルを重ねた状態の一例を示している。
このように2つのスペクトル強度の重なる領域を積分することにより重なる割合Aを求めるものであるが、図15(a)の重なり方の場合は、図15(b)に示すような簡略化により、以下の式(11)を用いて重なる割合Aを算出することができるものである。
[数11]
A=(k0−K3)2/(K0−k3)2 ・・・(11)
ここで、図15(a)における発光材料のスペクトル強度Imにおいて、ピークにおける波数をkpとする。また、発光材料のスペクトル強度Imの半値全幅における波数をそれぞれk1およびk2とする。
即ち、半値全幅はkp−k2間の距離とkp−k1間の距離の和であり、k1−k2間の距離と表すことができる。
さらに、発光材料のスペクトル強度Imの半値幅の点k2より、半値幅と同じ距離だけ伸ばした点をk3とし、また、発光材料のスペクトル強度Imの半値幅の点k1より、半値幅と同じ距離だけ伸ばした点をk0とする。
同様に、図15(a)における微細凹凸構造のスペクトル強度Isにおいても、ピークにおける波数をKpとする。また、微細凹凸構造のスペクトル強度Isの半値全幅における波数をそれぞれK1およびK2とする。そして、半値全幅はKp−K2間の距離とKp−K1間の距離の和であり、K2−K1間の距離と表すことができる。
さらに、微細凹凸構造のスペクトル強度Isの半値幅の点K2より、半値幅と同じ距離だけ伸ばした点をK3とし、また、微細凹凸構造のスペクトル強度Isの半値幅の点K1より、半値幅と同じ距離だけ伸ばした点をK0とする。
上記発光材料のスペクトル強度Imに対応する矩形関数をIm’とし、上記微細凹凸構造のスペクトル強度Isに対応する矩形関数をIs’とする。
上記式(11)によれば、発光材料のスペクトルの矩形関数Im’による点k3から点k0までの範囲の矩形と、微細凹凸構造のスペクトルの矩形関数Is’による点K3から点K0までの範囲の矩形とが重なる部分Aを算出することができるものである。
こうして算出した重なる部分Aが、図13(a)に示す表の「スペクトル強度Imとスペクトル強度Isとが重なる割合A(%)」を表すものとなる。
スペクトル強度Imとスペクトル強度Isのスペクトル強度の重なり方には図15(b)の他に、図15(c)〜図15(f)に示す場合があり、全部で5通りのパターンがある。
従って、図15(c)〜15(f)の重なり方の場合は、それぞれに対応する重なる割合Aを求める場合、以下の式(12)、(13)、(14)および(15)をそれぞれ用いる。
[数12]
A=(K0−k3)2/(k0−K3)2 ・・・(12)
[数13]
A=(K0−K3)2/(k0−k3)2 ・・・(13)
[数14]
A=(k0−k3)2/(K0−K3)2 ・・・(14)
[数15]
A=0 ・・・(15)
こうした重なる割合Aは、微細凹凸構造のスペクトルのピークが発光材料のスペクトルのピークとずれていたとしても、重なる割合A(%)の値が大きければ発光材料のスペクトルと微細凹凸構造のスペクトルとが重なる部分が大きくなるため、光取り出し効率がよいこととなる。
ここで、実施例1の例では、上記可視光領域における発光材料のスペクトルに対応する表面プラズモンスペクトルと微細凹凸構造のスペクトルとが重なる割合Aは非常に小さかった。
この場合、例えば、図14(a)に示す波長620nmの発光材料のスペクトルに対応する表面プラズモンスペクトルに対して、図14(b)に示す実施例1の有機発光ダイオード10の微細凹凸構造のスペクトルとが重なる割合Aは非常に小さく、発光材料のスペクトルに微細凹凸構造のスペクトルが包含される状態である。
こうした実施例1の有機発光ダイオード10は、波長620nmの波長の光のみを取り出すように素子構造を設計されたものとなっている。
なお、実施例1の有機発光ダイオード10の電流効率は、比較例1の有機発光ダイオードに対して2.38倍の輝度を有するものであった。
次に、上記実施例1の有機発光ダイオード10と、比較例1の有機発光ダイオードとの電力効率について比較する。それぞれについて、12.5mA/cm2の単位電流量における電力効率(lm/W)を測定したところ、実施例1の有機発光ダイオード10では0.37lm/Wの電力効率となり、比較例1の有機発光ダイオードでは0.13lm/Wの電力効率となった。
なお、実施例1の有機発光ダイオード10の電力効率は、比較例1の有機発光ダイオードに対して2.85倍の電力効率であった。
そして、こうした粒子単層膜により形成された凹凸構造を有する基板を備えた有機発光ダイオード100は、発光スペクトルのピークがλpeak=620nm、また、発光スペクトルの半値全幅が85nmの光を発光することが目的であるが、微細凹凸構造による発光材料のスペクトル、即ち、微細凹凸構造のスペクトルは、Kpeak=17.49μm−1にピークを有するものとなる。その際、微細凹凸構造のスペクトルの半値全幅は3.59μm−1である。
さらに、図13(c)に示すように、微細凹凸構造のスペクトルを横軸に波長としてスペクトルを示す場合の波長のピークがKpeakとなる。
なお、こうした有機発光ダイオード100の微細凹凸構造のスペクトルを概念的に示したものを図14(d)に示している。
実施例1と同様に、図14(d)に示す実施例2のスペクトルは、凹凸形状を有する基板を備えた有機発光ダイオード100であるが、微細凹凸構造のスペクトルのピークは、図14(a)に示す発光材料のスペクトルとは異なるピークを有する。
こうした比較例2の凹凸形状を有する有機発光ダイオードについても、ピークはλpeak=620nm、かつ、半値全幅が85nmの発光スペクトルを有するものとし、その微細凹凸構造のスペクトルは図14(e)に概念的に示される。
次に、有機発光ダイオード100の光取り出し効率を求める。
ここで、可視光領域(380nm〜780nm)における発光材料のスペクトルに対応する表面プラズモンスペクトルと、有機発光ダイオード100より得られる微細凹凸構造のスペクトルとの重なりについて検討する。
こうした重なりの割合を算出する場合、はじめに、上記実施例1の場合と同様に、発光材料のスペクトルを対応する表面プラズモンの波数で表す。
そして、上記において得られた発光材料のスペクトル強度Imと有機発光ダイオード100の微細凹凸構造のスペクトル強度Isとを重ね、実施例1の場合と同様に、式(13)を用いて図15(b)に示される重なる部分Aの値を求める。
実施例2の例では、上記可視光領域における発光材料のスペクトル強度Im’と微細凹凸構造のスペクトル強度Is’とが重なる割合が82.5%であった。
また、1種類の粒子より形成された凹凸構造を有する有機発光ダイオードである比較例2の場合、その重なる割合は35.2%であった。
この場合、図14(a)に示す波長620nmの発光材料のスペクトルの表面プラズモンスペクトルと、図14(d)に示す実施例2の有機発光ダイオード100の微細凹凸構造のスペクトルとが重なる割合が82.5%であり、3種類の粒子により形成された凹凸構造を有することにより、スペクトルのピークがブロード化し、微細凹凸構造のスペクトルのピークは620nmからはずれているものの、620nmの光に対して82.5%をカバーすることが可能である。
一方、比較例2においては、スペクトルのピークが狭帯域となり、さらにそのスペクトルのピークは620nmからははずれているため、620nmの光に対して35.2%しかカバーできていない。
なお、実施例2の有機発光ダイオード100の電流効率は、比較例2の有機発光ダイオードに対して1.63倍の輝度を有するものであった。
次に、上記実施例2の有機発光ダイオード100と、比較例2の有機発光ダイオードとの電力効率について比較する。それぞれについて、12.5mA/cm2の単位電流量における電力効率(lm/W)を測定したところ、実施例2の有機発光ダイオード100では0.32lm/Wの電力効率となり、比較例2の有機発光ダイオードでは0.19lm/Wの電力効率となった。
なお、実施例2の有機発光ダイオード100の電力効率は、比較例2の有機発光ダイオードに対して1.68倍の電力効率であった。
上記において説明したように、本発明による第1の実施の形態および第2の実施の形態によれば、上記に示した光取り出し効率および発光効率を実現することが可能である。
さらに、その他の効果としては、本発明の第2の実施の形態の製造方法により製造された有機発光ダイオードが有する他の効果について以下に説明すると、通常、比較例1のように平らな基板を有する有機発光ダイオードを用いて発光させた場合、ランバート則に従って光の強度が等方的に広がるような特徴を有する。
また、実施例1のように1種類の粒径による凹凸構造の基板を有する有機発光ダイオード10は、発光する波長と表面プラズモンの波長とを合わせているため、指向性が高くなり、ある一方向に強く発光し、他の方向への発光が弱くなるという特徴を有する。例えば、正面方向に強く発光する格子を使用した場合、横方向へ発光する光が弱くなるものである。
しかしながら、本発明の第2の実施の形態による有機発光ダイオード100によれば、凹凸構造を有する基板構造をしているものの、実施例1の光の指向性とは異なり、実施例1の場合よりも発光する光の指向性が緩和され、等方的に発光するという特徴を有するようになる効果が生じる。
(1)上記した第1の実施の形態においては、陰極導電層18を構成する金属層18−1を、Ag、Agの含有率が70%以上の合金、AlまたはAlの含有率が70%以上の合金により構成するものとしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、金属層18−1を有機発光ダイオードの陰極導電層として用いられる公知の金属を用いるようにしてもよい。
例えば、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3、電子輸送層16−4および電子注入層16−5のうち2つ以上の層の機能を1つの層が兼ね備えてもよい。
また、発光層16−3は必須であるが、その他の層、例えば、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、電子輸送層16−4、電子注入層16−5を省略するようにしてもよい。
この場合、最も単純な構成として、有機EL層16を発光層16−3のみから構成するようにしてもよい。
なお、電子注入層16−5を省略して、当該電子注入層16−5の機能を陰極導電層18が兼ね備える場合には、金属層18−1を、例えば、Mg/Ag=10/90などのマグネシウム合金で構成するようにすればよい。
具体的には、基板に凹型の微細凹凸構造を作製する手法としては、ナノインプリント方を用いて基板上に塗布された樹脂層に反転型を作製する方法などが利用できる。
また、基板上に作製した粒子マスク(上記した計算式により算出された粒径の粒子により作製された粒子単層膜のことである。)上にCr、Niなどの金属を蒸着した後に粒子を除去し、基板上に残る金属蒸着層(粒子があった場所に穴が空いたメッシュ構造をしている。)をマスクとして基板をドライエッチングし、金属がなかった場所に凹構造を作製する方法などが利用できる。
なお、こうして形成された表面に複数の凹部が周期的に二次元に配列した構造を有する基板を鋳型として用い、この鋳型表面の構造を基板原板に転写することにより、基板12の表面12aに二次元格子構造を作製するようにしてもよい。
そして、こうした多種類の粒子径の混合物を使用する場合、その粒子径の変動係数が20%以下であるようにすることが好ましい。
また、粒度分布が広い粒子であれば、1種類の粒子径でも本発明の主旨の効果を得ることが可能である。
ここで、1種類の粒子径で粒子マスクを構成する場合、その粒子径の変動係数は、10〜500%の範囲で可能である。
粒子径の変動係数が0〜10%のものと10〜500%のものを組み合わせて粒子マスクを構成しても本発明の主旨の効果を得ることが可能である。
さらにまた、発光層106−3以外の層については、ホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、電子輸送層106−4、電子注入層106−5を省略することも可能であり、EL層106を、最も単純な構成の有機EL層である発光層106−3のみから構成するようにしてもよいものである。
陰極導電層108は、例えば、陰極導電層18をMg/Ag=10/90等のマグネシウム合金で構成するようにすることで電子注入効果が得られるため、電子注入層の機能を兼ね備えることが可能である。
そうした場合、電子注入層106−5を設けずに、電子注入層の機能を備えた陰極導電層18を用いるようにすればよいものである。
即ち、透明基板102上に、陰極導電層108、EL層106、陽極導電層104の順で積層してもよい。
こうした場合、EL層106を構成するホール注入層106−1、ホール輸送層106−2、発光層106−3、電子輸送層層106−4、電子注入層106−5の積層順も反転させる。
こうした多層構造の陰極導電層である場合、少なくとも1層を金属層であるようにすればよいものであり、金属層以外の他の層は、金属材料から作製されるものであっても、金属以外の導電材料から作製されるものであってもよい。
ここで、金属以外の導電材料の例としては、例えば、陽極導電層104を構成する材料として挙げたITO、IZO、ZnO、ZTO等が挙げられる。
トップエミッション方式である場合、積層上面は、陰極導電層であっても陽極導電層であっても良いものである。
ただし、いずれの場合でも、有機EL層側から放射された光を透過するために、透明または半透明の材料で作製される必要がある。
また、トップエミッション方式の場合、基板は透明基板に限定されない。
(i) ボトムエミッション方式
ボトムエミッション方式では、上記本実施の形態において説明したように、光取り出し面は透明基板であるようにする。
積層順としては、透明基板、陽極導電層、有機EL層、陰極導電層の順に積層するようにし、有機EL層としては、陽極導電層側から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層するようにする。
また、透明基板は表面に凹凸構造を有するようにし、陽極導電層は透明導電体層であるものとし、陰極導電層は金属層であるようにする。
第2の実施の形態による技術を用いた第1のトップエミッション方式では、図16に示すように、光取り出し面は陰極導電層であるようにする。
積層順としては、基板、反射層、陽極導電層、有機EL層、陰極導電層A、陰極導電層Bの順に積層するようにし、有機EL層としては、陽極導電層側から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層するようにする。
また、基板は表面に凹凸構造を有するようにし、陽極導電層は透明導電体層であるものとし、陰極導電層Aは半透明の金属層であるようにし、陰極導電層Bは透明導電体層であるようにする。
第2の実施の形態による技術を用いた第2のトップエミッション方式では、図17に示すように、光取り出し面は陽極導電層であるようにする。
積層順としては、基板、陰極導電層、有機EL層、陽極導電層の順に積層するようにし、有機EL層としては、陰極導電層側から順に、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層の順に積層するようにする。
また、基板は表面に凹凸構造を有するようにし、陰極導電層は金属層であるものとし、陽極導電層は透明導電体層であるようにする。
上記のうち、(ii)に示した第1のトップエミッション方式において、反射層は、基板側から光が出ないようにするため、および、基板側に向かった光を積層側に反射して取り出すために設けられる。反射層は一般的には金属で構成される。該金属としては、例えば、アルミニウム、銀、その他の各種金属が使用できる。
また、陰極導電層Aは、積層上面から光を取り出すために半透明とされている。陰極導電層Aの透明性は膜厚によって調整される。陰極導電層Aの厚さは、通常、半透明とするために、10〜50nm程度とされる。陰極導電層Aを構成する金属としては、陰極導電層108を構成する金属として挙げたものと同様のものが挙げられるが、好ましくは、金、銀、アルミニウムより選択される金属が用いられる。この際、電子注入層の機能を併せ持つように、マグネシウムを10〜90%の濃度で混入しても良い。
また、陰極導電層Bは、陰極導電層Aのみでは厚さが薄すぎて充分な電流を得られないために設けられるものである。陰極導電層Bを構成する透明導電体としては、例えば、陽極導電層104を構成する材料として挙げたITO、IZO、ZnO、ZTO等が挙げられる。
図18には、拡散フィルムとしてピラミッドフィルム202を配設した有機発光ダイオード200を図示している。ここで、ピラミッドフィルム202は、ピラミッド状の凹凸形状を一定のピッチで配列したものである。なお、配列は1次元配列でも2次元配列でもよいものである。
こうした有機発光ダイオード200は、図8に示す有機発光ダイオード100とは、基板102の下方側にピラミッドフィルム202を配設していることのみが構成上異なる。
詳細には、有機発光ダイオード200の基板102の下方側の面とピラミッドフィルム202とを粘着剤で固定するようにする。
そして、こうした基板102、粘着剤およびピラミッドフィルム202は、それぞれ互いに同じ屈折率とすることが好ましい。
こうしたピラミッドフィルム202などの拡散フィルムを設けることにより、基板モードの光、即ち、基板中を伝搬する光の取り出し効率が向上する。
なお、上記拡散フィルムとしては、ピラミッドフィルムの他に、マイクロレンズのフィルムが挙げられる。
上記有機発光ダイオード200に用いる拡散フィルムの凹凸のピッチは、1μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20μmのピッチのものを用いるとよい。
また、上述したように、拡散フィルムの凹凸の配列は、1次元配列でも2次元配列でもよいものであるが、2次元配列がより好ましい。
12、102 基板
14、104 陽極導電層
16、106 有機EL層
16−1、106−1 ホール注入層
16−2、106−2 ホール輸送層
16−3、106−3 発光層
16−4、106−4 電子輸送層
16−5、106−5 電子注入層
18、108 陰極導電層
18−1 金属層
18−2 透明導電層
20、110 電源
22 反射層
Claims (23)
- 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記透明導電層側と接している面に、複数の凸部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成されたトップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記面に形成された凸部における隣り合う凸部間の中心間距離Pは、前記面における複素数で表される表面プラズモンの伝搬定数の実部をkとすると、前記中心間距離Pは式(1)の範囲の値であるようにするものとし、前記式(1)におけるP0は、前記二次元格子構造として三角格子構造を形成するときは、次式(2)を満たし、前記二次元格子構造として正方格子構造を形成するときは、次式(3)を満たす
ことを特徴とする有機発光ダイオード。
- 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記透明導電層側と接している面に、複数の凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成されたトップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記面に形成された凹部における隣り合う凹部間の中心間距離Pは、前記面における複素数で表される表面プラズモンの伝搬定数の実部をkとすると、前記中心間距離Pは式(1)の範囲の値であるようにするものとし、前記式(1)におけるP0は、前記二次元格子構造として三角格子構造を形成するときは、次式(2)を満たし、前記二次元格子構造として正方格子構造を形成するときは、次式(3)を満たす
ことを特徴とする有機発光ダイオード。
- 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記有機エレクトロルミネッセンス層と接している面に複数の凸部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成されたトップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記面に形成された凸部における隣り合う凸部間の中心間距離Pは、前記面における複素数で表される表面プラズモンの伝搬定数の実部をkとすると、前記中心間距離Pは式(1)の範囲の値であるようにするものとし、前記式(1)におけるP0は、前記二次元格子構造として三角格子構造を形成するときは、次式(2)を満たし、前記二次元格子構造として正方格子構造を形成するときは、次式(3)を満たす
ことを特徴とする有機発光ダイオード。
- 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記有機エレクトロルミネッセンス層と接している面に複数の凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成されたトップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記面に形成された凹部における隣り合う凹部間の中心間距離Pは、前記面における複素数で表される表面プラズモンの伝搬定数の実部をkとすると、前記中心間距離Pは式(1)の範囲の値であるようにするものとし、前記式(1)におけるP0は、前記二次元格子構造として三角格子構造を形成するときは、次式(2)を満たし、前記二次元格子構造として正方格子構造を形成するときは、次式(3)を満たすものとし、
ことを特徴とする有機発光ダイオード。
- 基板上に、少なくとも、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる陰極導電層とが順次積層され、
前記陰極導電層の前記有機エレクトロルミネッセンス層と接している面に、複数の凹凸部によるランダムな微細凹凸構造が形成された、ボトムエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、波長2λ1−λpeakおよび2λ2−λpeakに対応する陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における表面プラズモンの伝搬定数の実部をそれぞれk1およびk2としたとき、
前記界面の前記微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1と波数K2との間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内のスペクトル強度の積分値が全波数にわたるスペクトル強度の50%以上の強度の値を有する
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記有機エレクトロルミネッセンス層と接している面に、複数の凹凸部によるランダムな微細凹凸構造が形成された、トップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、波長2λ1−λpeakおよび2λ2−λpeakに対応する陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における表面プラズモンの伝搬定数の実部をそれぞれk1およびk2としたとき、
前記界面の前記微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1と波数K2との間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内のスペクトル強度の積分値が全波数にわたるスペクトル強度の50%以上の強度の値を有する
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 基板上に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とが順次積層され、
前記半透過金属層の前記透明導電層と接している面に、複数の凹凸部によるランダムな微細凹凸構造が形成された、トップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、波長2λ1−λpeakおよび2λ2−λpeakに対応する陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層と接している面における表面プラズモンの伝搬定数の実部をそれぞれk1およびk2としたとき、
前記界面の前記微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1と波数K2との間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内のスペクトル強度の積分値が全波数にわたるスペクトル強度の50%以上の強度の値を有する
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 基板上に、少なくとも、金属材料からなる陰極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、透明導電材料からなる陽極導電層とが順次積層され、
前記陰極導電層の前記有機エレクトロルミネッセンス層と接している面に、複数の凹凸部によるランダムな微細凹凸構造が形成された、トップエミッション型の有機発光ダイオードであって、
前記有機発光材料より得られる光の発光スペクトルのピークλpeakの半値を与える波長のうち、短い方の波長をλ1、長い方の波長をλ2とし、波長2λ1−λpeakおよび2λ2−λpeakに対応する陰極導電層と有機エレクトロルミネッセンス層との界面における表面プラズモンの伝搬定数の実部をそれぞれk1およびk2としたとき、
前記界面の前記微細凹凸構造の高さ分布のパワースペクトルが波数K1と波数K2との間で有限の値を持ち、かつ、この波数範囲内のスペクトル強度の積分値が全波数にわたるスペクトル強度の50%以上の強度の値を有する
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードにおいて、
前記金属層を形成する金属材料は、AgまたはAlまたはAgの含有率が70質量%以上の合金またはAlの含有率が70質量%以上の合金である
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 請求項1、2、3、4または9のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードにおいて、
前記凹部の深さならびに前記凸部の高さは、15〜180nmである
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 請求項1、2、3、4、9または10のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを製造する有機発光ダイオードの製造方法であって、
前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を作製し、
複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成された前記基板の表面に、前記反射層と、前記陽極導電層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層と、前記陰極導電層とを順次積層する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項11に記載の有機発光ダイオードの製造方法において、
所定の粒子が二次元に最密充填した粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング法によって、前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を形成する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項11に記載の有機発光ダイオードの製造方法において、
所定の粒子が二次元に最密充填した粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング法によって、複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した構造が形成された鋳型を作製し、
前記鋳型に形成された複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を転写して、前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を形成する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項12または13のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードの製造方法において、
前記所定の粒子において、粒径Dは、次式(4)を満たす
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。
[数4]
D=P ・・・(4) - 請求項5、6、7または8のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードにおいて、
前記金属層を形成する金属材料は、Ag、AlもしくはAgの含有率が10質量%以上の合金またはAlの含有率が10質量%以上の合金である
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 請求項5、6、7、8または15のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードにおいて、
前記凹部の深さならびに前記凸部の高さは、15〜180nmである
ことを特徴とする有機発光ダイオード。 - 請求項5、6、7、8、15または16のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを製造する有機発光ダイオードの製造方法であって、
前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を作製し、複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成された前記基板の表面に、少なくとも、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる陰極導電層とを、前記凸部または凹部が複写されるように順次積層する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項5、6、7、8、15または16のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを製造する有機発光ダイオードの製造方法であって、
前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を作製し、複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成された前記基板の表面に、少なくとも、金属材料からなる反射層と、透明導電材料からなる陽極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、金属材料からなる半透過金属層および透明導電材料からなる透明導電層が積層された陰極導電層とを、前記凸部または凹部が複写されるように順次積層する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項5、6、7、8、15または16のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを製造する有機発光ダイオードの製造方法であって、
前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を作製し、複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成された前記基板の表面に、少なくとも、金属材料からなる陰極導電層と、有機発光材料を含有する発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、透明導電材料からなる陽極導電層とを、前記凸部または凹部が複写されるように順次積層する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項17乃至19のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードの製造方法において、
平均粒子径の異なる複数の粒子の混合物を用いて形成した粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング法によって、前記基板の表面に複数の凸部または凹部がランダムに二次元に配列した二次元格子構造を形成する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項17乃至20のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードの製造方法において、
所定の粒子が二次元に最密充填した粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング法によって、複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した構造が形成された原盤を作製し、
前記原盤から電鋳法、ナノインプリント法、射出成型法またはUVエンボス法のいずれかの方法で作製した転写体を鋳型とし、
前記鋳型からナノインプリント法、射出成型法またはUVエンボス法のいずれかの方法により、前記鋳型に形成された複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を転写して、前記基板の表面に複数の凸部または凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造を形成する
ことを特徴とする有機発光ダイオードの製造方法。 - 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または16のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを備える画像表示装置。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または16のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードを備える照明装置。
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