JPWO2012114403A1 - 有機el表示パネルおよび有機el表示装置 - Google Patents

有機el表示パネルおよび有機el表示装置 Download PDF

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Abstract

低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる有機EL表示パネル110および有機EL表示装置100を提供することを目的として、基板10、第1電極20、補助配線30、ホール注入層40、機能層および第2電極90を具備し、前記ホール注入層40および前記第2電極90の各々は、前記第1電極20の上方および前記補助配線30の上方に連続して形成され、前記第2電極90と前記補助配線30とは、前記ホール注入層40を介して電気接続された有機EL表示パネル110において、前記ホール注入層40は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である構成とする。

Description

本発明は、電気的発光素子である有機電界発光素子(以下「有機EL素子」と称する)を用いた有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置に関する。
近年、有機半導体を用いた各種機能素子の研究開発が進められており、代表的な機能素子として有機EL素子が挙げられる。有機EL素子は、電流駆動型の発光素子であり、陽極および陰極とからなる一対の電極対の間に有機材料からなる発光層を含む機能層を設けた構成を有する。そして、電極対間に電圧を印加し、陽極から機能層に注入されるホールと陰極から機能層に注入される電子とを再結合させ、これにより発生する電界発光現象によって発光する。有機EL素子は、自己発光を行うため視認性が高くかつ完全固体素子であるため耐衝撃性に優れることから、各種有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置における発光素子や光源としての利用が注目されている。
有機EL素子の発光光率を向上させるためには、電極から機能層へキャリア(ホールおよび電子)を効率よく注入することが重要である。一般に、キャリアを効率よく注入するためには、それぞれの電極と機能層との間に注入の際のエネルギー障壁を低くするための注入層を設けるのが有効である。このうち機能層と陽極との間に配設されるホール注入層には、銅フタロシアニンやPEDOT(導電性高分子)などの有機物、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物が用いられている。また、機能層と陰極との間に配設される電子注入層には、金属錯体やオキサジアゾールなどの有機物、バリウムなどの金属が用いられている。
中でも、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物をホール注入層として用いた有機EL素子に関しては、ホール注入効率の改善や寿命の改善が報告されており(特許文献1、非特許文献1)、その改善にはホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造により形成される電子準位が影響しているとの報告がある(非特許文献2)。
一方、有機EL表示パネルの大判化に伴い、パネルを構成する各有機EL画素の、電極から電源に繋がる配線部の低抵抗化が必要とされている。特に、トップエミッション型のアクティブマトリクス有機EL表示パネルにおいては、ITO、IZO等の透明電極材料を共通電極に用いる必要があるが、これらは比較的高抵抗のため、配線部としてはなるべく多用しないのが望ましい。
これについて、例えば、特許文献2には、トップエミッション型の有機EL素子として、第2電極(共通電極)が補助配線に接続された構造の配線部を有する有機EL素子が開示されており、比較的高抵抗の共通電極の使用をなるべく抑えた配線部を実現している。ここで、補助配線とは、電源から共通電極へ電子を供給する構造を有する低抵抗配線のことである。
補助配線は、発光部を遮らないよう非発光部に設けるのが好ましい。また、補助配線を非発光部に設ける場合、共通電極の上部と下部のどちらに設けてもよいが、下部に設ける構造は、薄膜トランジスタや画素電極などの形成工程を利用して補助配線も同時に形成できるため、より好ましい構造であると言える。
特開2005−203339号公報 特開2002−318556号公報
Jingze Li et al.,Synthetic Metals 151,141(2005). Kaname Kanai et al.,Organic Electronics 11,188(2010). J.B.Pedley et al.,Journal of Physical and Chemical Reference Data 12,967(1984). I.N.Yakovkin et al.,Surface Science 601,1481(2007). 渡邊寛己 他,有機EL討論会第7回例会予稿集 17(2008). Hyunbok Lee et al.、 Applied Physics Letters 93、 043308(2008). 中山泰生 他、 有機EL討論会第7回例会予稿集 5(2008).
ところで、有機EL素子の製造工程においては、二酸化炭素、水、有機物などの大気中に含まれる分子および工程中に発生する不純物の分子などに由来する主に炭素を含む吸着物が問題になると考えられる。具体的には、電極やホール注入層など有機EL素子を構成する各層の積層工程において、下層の表面に吸着物が吸着した状態でその上に上層が積層されると、それら層間に吸着物が埋設されてしまい、素子の駆動電圧が増大したり寿命が低下したりするおそれがある。
一方、共通電極の下部に補助配線を有する有機EL素子においては、一般には画素電極(陽極)と補助配線を同一膜で形成した後パターニングを行う。その後、ホール注入層を積層する。
ここで、銅フタロシアニンやPEDOTなどのホール注入層は、補助配線の上には形成しないことが望まれる。なぜなら、これらのホール注入層は一般に高抵抗であるばかりでなく、補助配線の上に形成すると、補助配線から共通電極への電子の供給を阻害するからである。
具体的には、これらのホール注入層は、その最高被占軌道の結合エネルギーが、一般に陽極に使われるITOなどのフェルミレベルに近接するように設計されており、逆に最低空軌道の結合エネルギーは、当該フェルミレベルからは相当離れている。このため、陽極からこれらのホール注入層へは、ホール注入は比較的容易であるものの、電子注入は困難である。このことは発光部においては有利に働くが、補助配線と共通電極の接続部においては、陽極と同一の材料を用いた補助配線から、これらのホール注入層を介しての共通電極への電子の供給が出来ず、配線部の高抵抗化の原因となる。
またホール注入層に用いられる材料の中には、電子に対して化学的に不安定で、長時間電子を流し続けるとそれ自身が分解、劣化するものも多く、結果としてパネル特性の低下を招く恐れがある。
そこで、これらのホール注入層は、パターニング成膜により、補助配線の上には形成されないようにする必要がある。このようなパターニング成膜の方法としては、1)マスク蒸着やスクリーン印刷、インクジェット印刷等を用いて、画素電極上に選択成膜する方法と、2)全面成膜形成した後に、フォトリソグラフィーやドライエッチング等を用いて、補助配線上のみを選択除去する方法とがある。しかしながら、いずれの方法によっても、工程数の増加は製造コストを増大させ、またパーティクルの増加などに繋がり歩留まりの低下を招く。さらにパターニングの際のレジスト残渣等が補助配線上に抵抗成分として残り、配線部の更なる高抵抗化に繋がる恐れがある。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであって、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された補助配線と、前記第1電極の上方に形成され、少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層と前記第1電極との間に介在し前記機能層へのホール注入を行うホール注入層と、前記機能層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記ホール注入層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成され、前記第2電極と前記補助配線とは、前記ホール注入層を介して電気接続され、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置は、ホール注入層が、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下であるため、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる。
すなわち、前記フェルミ面近傍に隆起した形状が存在することから、画素部のホール注入層と機能層との間のホール注入障壁を小さく抑えることができると共に、画素部の画素電極とホール注入層、および配線部の補助配線とホール注入層、ホール注入層と共通電極の間においては、ほとんど障壁なくキャリアの授受ができる。また、前記数密度の比が、0.83以下であることから、ホール注入層表面から吸着物が除去された構成となっている。以上のことから、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルを説明するための図である。 本発明の一態様に係る有機EL表示装置の全体構成を示す図である。 本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する断面図である。 本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する断面図である。 実施の形態に係る有機EL素子の製造方法の要部を説明するための図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのXPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのXPSスペクトルを示す図である。 ホールオンリー素子の構成を示す模式的な断面図である。 ホールオンリー素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 評価デバイスとしての有機EL素子の構成を示す模式的な断面図である。 作製した有機EL素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 実施の形態に係るメタルハライドランプの分光分布を示す図である。 酸化タングステン表面の構造を説明するための図である。 ホール注入層の成膜条件に対するホールオンリー素子の駆動電圧の依存性を示すグラフである。 ホールオンリー素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 有機EL素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 有機EL素子の電流密度と発光強度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 光電子分光測定用のサンプルの構成を示す模式的な断面図である。 酸化タングステン層のUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステン層のUPSスペクトルを示す図である。 図23のUPSスペクトルの微分曲線を示す図である。 大気曝露した酸化タングステン層のUPSスペクトルを示す図である。 本発明の酸化タングステン層のUPSスペクトルおよびXPSスペクトルを併せて示す図である。 本発明の酸化タングステン層とα−NPD層の界面エネルギーダイアグラムである。 ホール注入層と機能層の注入サイトの効果を説明するための図である。 成膜条件Cの酸化タングステン層とα−NPD層の界面エネルギーダイアグラムである。 純水洗浄したIZO陽極と機能層の界面エネルギーダイアグラムである。 純水洗浄後ドライエッチング処理したIZO陽極と機能層の界面エネルギーダイアグラムである。 IPA洗浄したITO陽極と機能層の界面エネルギーダイアグラムである。 IPA洗浄後酸素プラズマ処理したITO陽極と機能層の界面エネルギーダイアグラムである。 純水洗浄したIZO陽極と本発明のホール注入層の界面エネルギーダイアグラムである。 純水洗浄後ドライエッチング処理したIZO陽極と本発明のホール注入層の界面エネルギーダイアグラムである。 IPA洗浄したITO陽極と本発明のホール注入層の界面エネルギーダイアグラムである。 IPA洗浄後酸素プラズマ処理したITO陽極と本発明のホール注入層の界面エネルギーダイアグラムである。 アルミニウム陽極と本発明のホール注入層の界面エネルギーダイアグラムである。 実施の形態2に係る有機EL表示パネルの構成を示す模式的な断面図(a)と、ホール注入層付近の部分拡大図(b)である。 実施の形態2に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する工程図である。 実施の形態2に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する工程図である。 実施の形態2に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する工程図である。 実施の形態2の変形例に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する工程図である。 実施の形態2の変形例に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する工程図である。
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された補助配線と、前記第1電極の上方に形成され、少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層と前記第1電極との間に介在し前記機能層へのホール注入を行うホール注入層と、前記機能層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記ホール注入層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成され、前記第2電極と前記補助配線とは、前記ホール注入層を介して電気接続され、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である。
本態様によると、ホール注入層が酸化タングステンを含んで構成されている。さらに、このホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である。
このフェルミ面近傍に隆起した形状が存在することで、画素部のホール注入層と機能層との間のホール注入障壁を小さく抑えることができると共に、画素部の画素電極とホール注入層、および配線部の補助配線とホール注入層、ホール注入層と共通電極の間においては、ほとんど障壁なくキャリアの授受ができる。また、このフェルミ面近傍の隆起した形状を維持したまま、ホール注入層の表面の吸着物が除去されている。その結果、ホール注入効率が高く、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる。
また、本態様によると、配線部の補助配線とホール注入層、ホール注入層と共通電極の間はほとんど障壁なくキャリアの授受ができることから、補助配線上にホール注入層を形成してもなんら問題がなく、ホール注入層のパターニング工程が不要となることから、工程削減を可能とするだけでなく、安定した量産プロセスを実現できる。
さらに、本態様によると、ホール注入層を、化学的に安定な酸化タングステンで構成しているので、バンク形成工程において、アルカリ溶液や水、有機溶媒等によりホール注入層が変質、分解することが抑制される。したがって、素子完成後も、ホール注入層の形態、ならびに画素部におけるホール注入層から機能層へのホール注入効率、および配線部におけるホール注入層と共通電極の間のキャリアの授受を、良好に保持できる。これにより、有機EL表示パネルの量産プロセスに耐えることのできる有機EL素子の製造を行うことが可能となる。
有機EL素子の発光層は、ホール注入層形成後に積層される。一般的に発光層は発光色毎(例えばR、G、B)に塗り分けられるが、画素間の混色を防ぎ高精細化を実現するため、画素間には、例えば、隔壁(以下、バンクと称する)が配置される。バンク形成工程では、一般的にフォトリソグラフィー法を用い、例えば、ホール注入層表面に、感光性のレジスト材料からなるバンク材料を塗布し、プリベークした後、パターンマスクを用いて感光させ、未硬化の余分なバンク材料をアルカリ溶液等で構成される現像液で洗い出し、最後に純水で洗浄する。このように、バンク形成工程では、アルカリ溶液、水、有機溶媒等を用いるが、例えばホール注入層が有機系の材料で形成されている場合は、それらによって材料が変質、分解などしてホール注入層が損なわれるため、所望のホール注入効率が得られないという問題が生ずる。これに対して、本発明の一態様に係るホール注入層の場合は、酸化タングステンで形成されているため、前記溶液によってホール注入層が変質、分解し難いため、そのような問題が生じ難い。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第2電極は、透明電極である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記透明電極は、ITOまたはIZOからなる。
前述のように、トップエミッション型の有機EL素子においては、共通電極(第2電極)にITO、IZO等の透明電極材料を用いる必要があるが、それらは金属材料より抵抗率が高い。そのため、配線部に共通電極を多用すると、表示パネルが大面積化されるほど、発光画素間で共通電極の配線長に差異が生じ、電源供給部の端と表示パネルの中央の間で大きな電圧降下が発生し、それに応じて輝度に差が出るため、中央が暗くなる。つまり、表示パネル面の有機EL素子の配置位置によって電圧がばらつき、表示品質の低下を生じるという課題がある。このため、前述のように低抵抗の補助配線を併用し、共通電極の使用を極力抑えた配線部を形成する。
ここで、本発明における所定の物性を備えた酸化タングステンは、これらの透明電極材料ともショットキーオーミック接続するので、補助配線と透明電極材料との間に形成されても配線部の高抵抗化を引き起こさない。すなわち、補助配線とホール注入層、ホール注入層とITO、IZO等からなる共通電極との間は、ほとんど障壁なくキャリアの授受ができる。その結果、本発明の一態様の有機EL表示パネルは、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率の発揮を期待することができる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第2電極は、Al(アルミニウム)またはAg(銀)を主成分とする。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成された金属層を有し、前記金属層は、前記第1電極の上方では、前記第2電極と前記発光層との間に介在し、前記補助配線の上方では、前記第2電極と前記ホール注入層との間に介在する。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記金属層は、前記第1電極の上方にて、前記第2電極から前記発光層に電子を注入する電子注入層である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記金属層がBa(バリウム)を含んでなる。
有機EL素子の発光層と共通電極の間には、電子注入層としてBaなどの金属層が設けられることがある。また、ボトムエミッション型の有機EL素子においては、共通電極としてAgやAlなどの高反射率の金属材料を用いる。
ここで、本発明における所定の物性を備えた酸化タングステンは、これらの金属ともショットキーオーミック接続するので、補助配線上に形成されても配線部の高抵抗化を引き起こさない。すなわち、補助配線とホール注入層、ホール注入層とBa、Al、Ag等からなる金属層や共通電極との間は、ほとんど障壁なくキャリアの授受ができる。その結果、本発明の一態様の有機EL表示パネルは、低電圧で駆動できるとともに、優れた発光効率の発揮を期待することができる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記補助配線は、ITOまたはIZOからなる。
前述のように、ITO、IZOからなる補助配線とホール注入層との間は、ほとんど障壁なくキャリアの授受ができる。したがって、本態様の有機EL表示パネルは、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率の発揮を期待することができる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第1電極の上方に形成されたホール注入層と同一層のホール注入層が、前記補助配線の上方に形成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、少なくとも前記補助配線上に形成されるホール注入層の膜厚が4nm以上である。
本態様によれば、配線部の補助配線とホール注入層の間、およびホール注入層と金属層の間に、ショットキーオーミック接続が安定して形成され、安定したキャリアの授受を期待できるため、一層好適である。すなわち、補助配線とホール注入層の間の安定なショットキーオーミック接続のために2nm以上、ホール注入層と金属層の間の安定なショットキーオーミック接続のために2nm以上を確保することが好ましいことから、計4nm以上であれば一層好適であるといえる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第1電極の上方に開口部を有する隔壁が、前記ホール注入層上に形成され、前記機能層は、前記隔壁の開口部内に形成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第1電極は画素単位に複数配置され、前記隔壁の開口部は、前記複数の第1電極の各々に対応して形成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記第1電極は画素単位に複数配置され、前記隔壁の開口部は、前記複数配置された第1電極のラインごとに、対応して形成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記UPSスペクトルにおいて、前記隆起した形状は、前記価電子帯の上端に対し、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する。
なお、本願において数値範囲を「〜」を用いて記載した場合は、その下限値および上限値もその数値範囲に含むものとする。例えば、1.8〜3.6eVと記載した場合は、その数値範囲に1.8eVおよび3.6eVが含まれる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記その他の原子の数密度の比は、0.62以下である。この場合は、吸着物除去効果が飽和していると考えられるため、十分な吸着物除去効果を期待できる。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記その他の原子は炭素原子である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記ホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下となるように、紫外線が照射されて構成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された配線と、前記第1電極の上方に形成され、有機材料を含む有機層と、前記有機層と前記第1電極との間に介在し、酸化タングステンを含む酸化タングステン層と、前記有機層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記酸化タングステン層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記配線の上方に連続して形成され、前記第2電極と前記配線とは、前記酸化タングステン層を介して電気接続され、前記酸化タングステン層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された補助配線と、前記第1電極の上方に形成され、少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層と前記第1電極との間に介在し前記機能層へのホール注入を行うホール注入層と、前記機能層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記ホール注入層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成され、前記第2電極と前記補助配線とは、前記ホール注入層を介して電気接続され、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、かつ、結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記UPSスペクトルにおいて、前記隆起した形状は、前記価電子帯の上端に対し、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、前記ホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、かつ、結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有するように、紫外線が照射されて構成されている。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの特定の局面では、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された配線と、前記第1電極の上方に形成され、有機材料を含む有機層と、前記有機層と前記第1電極との間に介在し、酸化タングステンを含む酸化タングステン層と、前記有機層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記酸化タングステン層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記配線の上方に連続して形成され、前記第2電極と前記配線とは、前記酸化タングステン層を介して電気接続され、前記酸化タングステン層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、かつ、結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する。
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記いずれかに記載の有機EL表示パネルを備える。
[本発明に至った経緯]
第1に、本発明者は、有機EL素子の駆動電圧の増大や素子の寿命の低下を防止するため、製造工程において各層の形成後に、洗浄により各層の表面の吸着物を除去するプロセスを設けることを着想した。
そして、吸着物を除去するプロセスとして、強力な洗浄力を有する点から、ガラス基板や電極などの洗浄に汎用されているUVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄に着眼した。
本発明者がこれらの方法について鋭意検討した結果、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物からなるホール注入層を有する有機EL素子において、UVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄は、前記ホール注入層の洗浄には適していないことを見出した。
なぜなら、UVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄は、酸素分子を分解して、発生させた酸素ラジカルの強力な酸化作用を利用するものであり、この酸化作用によって前記酸素欠陥に類する構造に酸素原子が補填されてしまうため、金属酸化物からなるホール注入層において、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅し、ホール注入効率が低下するおそれがあると考えられるからである。具体的には、UVオゾン洗浄によって酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位がほとんど消滅してしまうことを、後述するような実験により確認した。
上記した知見を得たことにより、本発明者は、金属酸化物からなるホール注入層を有する有機EL素子において、有機EL素子の駆動電圧の増大を防止したり、素子の寿命の低下を防止したりするためには、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅することなく、かつ、ホール注入層表面から吸着物が除去されていることが重要であることを認識した。
なお、上記した本発明の特徴に関する一連の研究・考察を行った後、酸化タングステンからなるホール注入層を成膜した後にUVオゾン洗浄が行われている非特許文献1の存在が判明した。この非特許文献1には、UVオゾン洗浄により素子特性が受ける影響については言及されておらず、UVオゾン洗浄の条件を最適化したとの記述もない。さらには、非特許文献1には、本発明者が具体的な検討を通して解明した、そのままでは酸化タングステンからなるホール注入層の洗浄には適していない点や、その技術的理由については、何ら記述されていない。
ところで、吸着物を除去する別の方法としては、成膜後に真空容器中にてアルゴンイオンスパッタなどを施すスパッタエッチング処理が挙げられる。このスパッタエッチング処理は、吸着物の除去だけでなく、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を増大させることも報告されており、一見優れた洗浄方法のようにも受け取れる。
しかし、スパッタエッチング処理による吸着物除去効果および電子準位増大効果は、真空容器中でのみ持続する。なぜなら、真空中でスパッタエッチング処理されたホール注入層の表面は原子同士の結合がイオンビームにより強制的に切断された状態であるため極めて不安定であり、一旦真空容器から外に出せば容易に周囲の気体分子などを吸着して安定化してしまうからである。これにより、真空中で強制的に形成された金属酸化物の酸素欠陥に類する構造は瞬く間に補完され、除去された吸着物が瞬く間に再吸着してしまう。
このような再吸着を避けるには、スパッタエッチング処理以降の工程の一部あるいは全てを、連続して真空容器中で行えばよい。しかしながら、真空容器中での工程は、小型の有機EL表示パネルに対しては適用が可能なものの、例えば50インチ級の大型の有機EL表示パネルに対してはその大きさに合わせた真空容器が必要になるため適用が極めて困難である。また、真空容器中での工程は、スループットが小さいため量産化には不向きである。
一方、吸着物を除去するのではなく、吸着物の吸着自体を阻止する方法も考えられる。例えば、各層が形成後に大気や不純物分子に曝露されないように、各層の形成以降の工程の一部あるいは全てを、連続して真空容器中で行えば、吸着物が吸着することがない。しかしながら、上述したように真空容器が必要になるため大型の有機EL表示パネルに対しては適用が極めて困難である。
また、不活性ガスを充填した容器内にて工程を行う方法も考えられる。この方法の場合、大型の有機EL表示パネルへの適用も可能である。しかしながら、大気中よりは少ないとは言え、容器内には依然として不純物の分子などが存在しており、それらを完全に除去することは困難である。
以上に説明したように、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅しておらず、かつ、ホール注入層表面から吸着物が除去されている有機EL素子を得ることは非常に困難である。
これに対し、本発明の一態様に係る有機EL素子は、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅していないため、陽極(画素電極)から機能層へホールを効率よく注入することができ、その結果、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる。また、ホール注入層表面から吸着物が除去されているため、ホール注入層と機能層との層間に吸着物が埋設されておらず、その結果、素子の駆動電圧が増大しておらず、吸着物に由来する不純物などのキャリアトラップも形成されていないため素子の寿命も長く、素子特性が良好である。
第2に、本発明者らは、金属酸化物からなるホール注入層の表面に、酸素欠陥に類する構造が形成するフェルミ面近傍の占有準位が存在すれば、当該ホール注入層と機能層との界面において、当該フェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーと、機能層の最高被占軌道の結合エネルギーとの差が小さくなることを、後述するような実験により確認した。
さらに、この点に着目し、当該ホール注入層にフェルミ面近傍の占有準位が存在すれば、陽極、陰極、補助配線等の電極との界面においても、当該フェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーと、電極のフェルミレベルとの差が小さくなり、良好なキャリアの授受が可能であるとの着想に至った。
そして、フェルミ面近傍の占有準位を有する、金属酸化物からなるホール注入層は、比較的低抵抗であり、かつ、Al等の金属材料からなる電極や、ITO、IZO等の比較的高抵抗の透明電極材料からなる電極との間に、ショットキーオーミック接続を実現できるという理由によって、補助配線上に形成されても配線部の高抵抗化を引き起こさない、という知見を得るに至った。
第3に、本発明者らは、バンク形成工程において変質、分解され難いホール注入層を形成するための材料についても検討を行った。
上記のように、有機EL素子の駆動電圧や寿命の改善を実現するホール注入層用の材料としては、無機材料である金属酸化物が好適であったが、実際に酸化モリブデンをホール注入層に用いて有機EL素子を製造してみると、バンク形成工程で用いられるアルカリ溶液、水、有機溶媒等によりホール注入層が変質、分解する可能性が示唆された。もしも、ホール注入層の変質、分解等の問題が発生すれば、発光部の画素電極上においてはホール注入層が本来有しているホール注入能力に支障を来たし、配線部の補助配線上においては配線部の高抵抗化を引き起こすなどして、正常な有機EL素子の駆動が行えない原因となるほか、有機EL素子およびこれを用いた有機EL表示パネルの量産プロセスに耐えることが難しくなる。したがって、変質、分解を生じる可能性がある酸化モリブデンを用いてホール注入層を形成することは、必ずしも好ましいとは言えない。
そこで、本発明者らは、変質、分解が生じる可能性がより低い酸化タングステンに着目し、しかも、酸化タングステンの中でも所定の物性を備えたものであれば、前記溶液等に対する溶解性または分解性が低く且つホール注入能力が高い、ことを突き止めた。
[実施の形態1]
以下、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置を説明し、続いて各性能確認実験の結果と考察を述べる。なお、各図面における部材縮尺は、実際のものとは異なる。
<有機EL表示パネルの構成>
図1は、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルを説明するための図であって、図1(a)は、有機EL表示パネルの要部を説明する部分平面図、図1(b)は、図1(a)におけるA−A’線に沿って切断した要部断面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル110では、発光部95を有する発光画素95Aがマトリクス状に複数配置されており、陽極(画素電極、第1電極)20は画素単位に複数配置され、補助配線(配線にも該当する)30は各発光部95に沿って発光画素列ごとに配置して設けられている。
図1(b)に示すように、有機EL表示パネル110は、基板10と、基板10上に形成された陽極20および補助配線30と、陽極20および補助配線30上に形成されたホール注入層(酸化タングステン層にも該当する)40と、ホール注入層40上に形成され、陽極20の上方に画素開口部45、および補助配線30の上方に接続開口部35を有するバンク50と、バンク50の画素開口部45内に形成されたバッファ層60と、バンク50の画素開口部45内のバッファ層60上に形成された発光層(有機層にも該当する)70と、それらの上面に形成された電子注入層80と、電子注入層80上に形成された陰極90(共通電極、第2電極)と、等から構成されている。
ホール注入層40については、陽極20の上方に形成されたホール注入層と同一のホール注入層が補助配線30の上方に形成されている。すなわち、ホール注入層40は、図1(a)に記載された部分平面図の全面に亘って形成されている。また、電子注入層80および陰極90も、図1(a)に記載された部分平面図の全面に亘って形成されている。
補助配線30と陰極90とは、補助配線30に沿って設けられた接続開口部35において、ホール注入層40と電子注入層80を介して電気的に接続され、陰極90から電源へと繋がる配線部を構成している。なお、接続開口部35における陰極90と補助配線30との間の層構造は、上記構造に限定されない。例えば、ホール注入層40および電子注入層80以外の層が含まれていても、あるいは電子注入層80がなくても良い。補助配線30から陰極90への電子の流れを阻止しない層構造であれば良く、このような多層構造を有する有機EL表示パネルも本発明に含まれ、本実施の形態に係る有機EL表示パネル110と同様の効果を有する。
発光部95は、画素開口部45に設けられた、ホール注入層40、バッファ層60、発光層70および電子注入層80から構成され、発光層70に注入された電子とホールの再結合により発生する光を陰極90側から放出する。なお、陽極20は、発光部95に対応して画素ごとに離間して設けられている。すなわち、発光部がR、G、Bなどのサブ画素から構成されている場合には、各サブ画素に対応した発光部95および陽極20がサブ画素ごとに離間して設けられている。
(基板)
基板10は、有機EL素子の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
図示していないが、基板10の表面には有機EL素子を駆動するためのTFT(薄膜トランジスタ)が形成されている。
(陽極)
陽極20は、例えば、Alからなる厚さ400nmの金属膜に、ITOからなる厚さ20nmの透明導電膜を積層させて構成される。なお、陽極20の構成はこれに限定されず、例えばITO、IZOなどの透明導電膜、Al、Agなどの金属膜、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などの合金膜の単層から構成されていてもよい。また、それら透明導電膜、金属膜および合金膜の中から選択した複数の膜を積層させて構成することもできる。
(補助配線)
補助配線30は、例えば、Alからなる厚さ400nmの金属膜に、ITOからなる厚さ20nmの透明導電膜を積層させて構成される。なお、補助配線30の構成はこれに限定されず、例えばITO、IZOなどの透明導電膜、Al、Agなどの金属膜、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などの合金膜の単層から構成されていてもよい。また、それら透明導電膜、金属膜および合金膜の中から選択した複数の膜を積層させて構成することもできる。
(ホール注入層)
ホール注入層40は、例えば、酸化タングステン(組成式WOxにおいて、xは概ね2<x<3の範囲における実数)を用いた、少なくとも膜厚が2nm以上(ここでは一例として30nm)の層として構成される。膜厚が2nm未満であると、均一な成膜を行いにくく、また、画素部の陽極20とホール注入層40の間のショットキーオーミック接続を形成しにくいので、好ましくない。前記ショットキーオーミック接続は酸化タングステンの膜厚が2nm以上で安定して形成されるため、これ以上の膜厚でホール注入層40を形成すれば、画素部の陽極20からホール注入層40への安定したホール注入効率を期待できる。
さらに、酸化タングステンの膜厚が4nm以上であれば、配線部の補助配線30とホール注入層40の間、およびホール注入層40と電子注入層80の間も、ショットキーオーミック接続が安定して形成され、安定したキャリアの授受を期待できるため、一層好適である。
ホール注入層40はできるだけ酸化タングステンのみで構成されることが望ましいが、通常レベルで混入し得る程度であれば、極微量の不純物が含まれていてもよい。
ここで、ホール注入層40は、所定の成膜条件で成膜することにより、金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を持つ。この電子準位の存在により、画素部の陽極20からホール注入層40、ホール注入層40からバッファ層60への良好なホール注入、および配線部の補助配線30とホール注入層40、ホール注入層40と電子注入層80の間の良好なキャリア授受が可能となっている。また、ホール注入層40は、成膜後に、所定の波長の紫外光が、大気中にて照射されている。これにより、金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を維持したまま、前記ホール注入層40の表面から吸着物が除去され、照射前に比べてその量が少なくなっている。さらに、紫外光の照射時間や照射強度は、ホール注入層40の光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束するように設定されている。これにより、最小限の照射条件により、最大限に吸着物が除去されている。
前記の「酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を持つ」ということをより具体的に書くと、ホール注入層40は、その電子状態において、価電子帯の上端、すなわち価電子帯で最も低い結合エネルギーよりも、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位が存在している。この占有準位がホール注入層40の最高占有準位であり、その結合エネルギー範囲はホール注入層40のフェルミレベル(フェルミ面)に最も近い。したがって、以降では、この占有準位を「フェルミ面近傍の占有準位」と称する。
このフェルミ面近傍の占有準位が存在することで、ホール注入層40と機能層(ここではバッファ層60)との積層界面では、いわゆる界面準位接続がなされ、バッファ層60の最高被占軌道の結合エネルギーが、ホール注入層40の前記フェルミ面近傍の占有準位の結合エネルギーと、ほぼ等しくなる。
なお、ここで言う「ほぼ等しくなる」および「界面準位接続がなされた」とは、ホール注入層40とバッファ層60との界面において、前記フェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーと、前記最高被占軌道で最も低い結合エネルギーとの差が、±0.3eV以内の範囲にあることを意味している。
さらに、ここで言う「界面」とは、ホール注入層40の表面と、当該表面から0.3nm以内の距離におけるバッファ層60とを含む領域を指す。
さらに、ホール注入層40は、その特徴として陽極20や補助配線30、電子注入層80との界面において、いわゆるショットキーオーミック接続を形成している。
なお、ここで言う「ショットキーオーミック接続」とは、陽極20や補助配線30、電子注入層80のフェルミレベルと、前述したホール注入層40のフェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーとの差が、陽極20や補助配線30、電子注入層80の表面からホール注入層40側への距離が2nmの位置において、±0.3eV以内に小さく収まっている接続を言う。また、ここで言う「界面」とは、陽極20や補助配線30、電子注入層80の表面と、当該表面からホール注入層40側に形成されるショットキーバリアを含む領域を指す。
前記フェルミ面近傍の占有準位は、ホール注入層40の全体に存在することが望ましいが、少なくともバッファ層60および陽極20、補助配線30、電子注入層80との界面に存在すればよい。なお、このようなフェルミ面近傍の占有準位は、全ての酸化タングステンが有しているものではなく、特にホール注入層の内部や、バッファ層60との界面においては、後述する所定の成膜条件によって初めて形成できる、特有の準位である。
(バンク)
バンク50は、例えば、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなり、画素開口部45が複数の陽極20の各々に対応して形成された井桁構造、または、画素開口部45が複数配置された陽極20のラインごとに対応して形成されたストライプ構造をなすように形成されている。なお、バンク50は、本発明に必須の構成ではなく、有機EL素子を単体で使用する場合等には不要である。
(バッファ層)
バッファ層60は、例えば、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFB(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−(1,4−phenylene−((4−sec−butylphenyl)imino)−1,4−phenylene))で構成されている。
(発光層)
発光層70は、例えば、厚さ70nmの有機高分子であるF8BT(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−benzothiadiazole))で構成される。しかしながら、発光層70はこの材料からなる構成に限定されず、公知の有機材料を含むように構成することが可能である。たとえば特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。
(機能層)
本発明における機能層は、ホールを輸送するホール輸送層、注入されたホールと電子とが再結合することで発光する発光層、光学特性の調整または電子ブロックの用途に用いられるバッファ層等のいずれか、もしくはそれらの2層以上の組み合わせ、または全ての層を指す。本発明はホール注入層を対象としているが、有機EL素子はホール注入層以外に上記したホール輸送層、発光層等のそれぞれ所要機能を果たす層が存在する。機能層とは、本発明の対象とするホール注入層以外の、有機EL素子に必要な層を意味している。
(電子注入層)
電子注入層80は、例えば、厚さ5nmのバリウム層で構成されており、陰極90から発光層70に電子を注入する機能を有する。電子注入層80は、陽極20の上方および補助配線30の上方に連続して形成されており、陽極20の上方では陰極90と発光層70との間に介在し、補助配線30の上方では陰極90とホール注入層40との間に介在する。本実施の形態のように、光を上方に取り出す方式(トップ・エミッション方式)においては、電子注入層80は光透過性を有する必要があり、電子注入層を上記したように厚さ5nmのバリウム層で構成する場合には、光透過性を有する。なお、光を下方に取り出す方式(ボトムエミッション方式)においては、素子構造にも依存するが、電子注入層は必ずしも光透過性は求められない。
(陰極)
陰極90は、例えば、ITOからなる厚さ35nmの透明導電膜を積層させて構成される。なお、陰極90の構成はこれに限定されず、IZOなどの他の透明導電膜や、Al、Agなどの金属やAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などの合金からなる薄膜で構成されていてもよい。また、それら透明導電膜、金属膜および合金膜の中から選択した複数の膜を積層させて構成することもできる。
陽極20および補助配線30には直流電源が接続され、外部より有機EL表示パネル110に給電されるようになっている。
<有機EL表示装置の構成>
図2に基づいて、本発明の一態様に係る有機EL表示装置について説明する。図2は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の全体構成を示す図である。
図2に示すように、有機EL表示装置100は、本発明の一態様に係る有機EL表示パネル110と、これに接続された駆動制御部120とを備え、ディスプレイ、テレビ、携帯電話等に用いられる。駆動制御部120は、4つの駆動回路121〜124と制御回路125とから構成されている。なお、実際の有機EL表示装置100では、表示パネル110に対する駆動制御部120の配置や接続関係については、これに限られない。
<有機EL表示パネルの製造方法>
以下に、本実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3および図4は、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を説明する断面図である。
まず、図3(a)に示すように、例えばTFT(Thin Film Transistor)とコンデンサなどで構成された駆動回路(図示せず)を備えた基板10を用意する。そして、例えば真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、Alからなる金属膜およびITOからなる透明導電膜を、順次基板10上の全面に形成する。その後、フォトリソグラフィー法を用いて、金属膜および透明導電膜をエッチングして、所定の位置に陽極20を、また陽極20と電気的に絶縁された所定の位置に補助配線30を形成する。
このとき、陽極20は、発光部に対応して個別に形成され、補助配線30は、二次元のマトリクス状に配列された発光画素の、例えば行または列に沿って、一次元的に配置して形成される。なお、基板10には、例えば、駆動回路などによる凹凸を解消するために、必要に応じて、平坦化層を設け、その上に陽極20と補助配線30とを形成してもよい。
次に、図3(b)に示すように、ホール注入層40を、反応性スパッタ法で、陽極20上および補助配線30上に成膜する。具体的には、ターゲットを金属タングステンとし、反応性スパッタ法を実施する。スパッタガスとしてアルゴンガスを、反応性ガスとして酸素ガスを、それぞれチャンバー内に導入する。この状態で高電圧によりアルゴンをイオン化しターゲットに衝突させる。このとき、スパッタリング現象により放出された金属タングステンが酸素ガスと反応して酸化タングステンとなり、基板10の陽極20上および補助配線30上に連続した状態でホール注入層40が成膜され、中間製品110Aが得られる。
上記の成膜条件は、基板温度は制御せず、ガス圧(全圧)を4.8Pa、酸素ガス分圧の全圧に対する比を50%、ターゲット単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)を1.4W/cmとした。この条件で成膜した酸化タングステンからなるホール注入層40は、その表面に酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を有する。
次に、中間製品110Aをチャンバーから大気に取り出す。なお、この時点で、ホール注入層40は大気に曝露されるため、表面に気体分子などが吸着する。また、成膜後、取り出す前においても、チャンバー内の不純物分子などが吸着すると思われる。
次に、大気中において、紫外光を、ホール注入層40の表面に照射する。ここでは、ウシオ電機株式会社製のメタルハライドランプ(型番UVL−3000M2−N)を光源201として備える本発明の一態様に係る紫外光照射装置200を使用した。紫外光照射装置200の詳細は後述する。照射条件は、後述する光電子分光測定を用いた別の実験により、光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束するように別途定めるものである。本実施の形態では、照射強度を155mW/cmとし、照射時間は10分と求まった。
なお、紫外光照射は、大気中以外にも、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空など、様々なガス雰囲気内で適用できる。これは、酸素ラジカルが発生しない波長の紫外光による洗浄方法だからである。しかしながら、大気中で行うことは、前述のように、大型パネルの製造において有利である。
次に、図3(c)に示すように、ネガ型のフォトレジスト50Aを全面に塗布する。
次に、図3(d)に示すように、ネガ型のフォトレジスト50Aの上に、発光部と接続部に相当する位置に遮光部を有するフォトマスク51を位置合わせして載置する。そして、このマスク51を介して、フォトリソグラフィー法を用いてフォトレジスト50Aを露光する。
次に、図3(e)に示すように、現像処理をして、画素開口部45と接続開口部35を構成するバンク50を形成する。
なお、紫外光照射は、このようなバンク形成工程を経た金属酸化物からなるホール注入層にも適用可能である。この場合は、バンク形成後のホール注入層表面に紫外光を照射し、ホール注入層表面に吸着した、バンクや現像液の残渣である有機分子を主に除去することになる。ここで、一般にバンクに紫外光を照射すると、上層として塗布する有機溶媒との接触角が変化するが、本発明では紫外光照射条件を一意に定めることが容易であるから、その定まった紫外光照射条件をもとに、当該接触角やバンク形状を調整すればよい。
次に、図4(a)に示すように、例えばスピンコート法やインクジェット法によるウェットプロセスにより、アミン系有機分子材料を含む組成物インクを画素開口部45に滴下し、溶媒を揮発除去させる。これによりバッファ層60が形成される。
次に、図4(b)に示すように、バッファ層60の表面に、同様の方法で、有機発光材料を含む組成物インクを画素開口部45に滴下し、溶媒を揮発除去させる。これにより、発光層70が形成される。
なお、バッファ層60、発光層70の形成方法はこれに限定されず、スピンコート法やインクジェット法以外の方法、例えばグラビア印刷法、ディスペンサー法、ノズルコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布してもよい。
続いて、図4(c)に示すように、例えば真空蒸着法により、電子注入層80を、発光層70上および接続開口部35のホール注入層40上に連続した状態で成膜する。
さらに、図4(d)に示すように、同様の方法により、電子注入層80上に陰極90を成膜する。
なお、図1には図示しないが、有機EL素子が完成後に大気曝露されるのを抑制する目的で、陰極90の表面にさらに封止層を設けるか、あるいは素子全体を空間的に外部から隔離する封止缶を設けることができる。封止層は例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料で形成でき、素子を内部封止するように設ける。封止缶を用いる場合は、封止缶は例えば基板10と同様の材料で形成でき、水分などを吸着するゲッターを密閉空間内に設ける。
以上の工程を経ることで、有機EL表示パネル110が完成する。
以上の有機EL表示パネル110の製造方法では、酸化タングステンからなるホール注入層40の成膜後、所定の波長の紫外光を照射する工程を含む。これにより、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を維持したまま、画素部および配線部のホール注入層40の表面から吸着物を除去することができる。
また、画素部においてホール注入層40の洗浄後からバッファ層60を形成する工程までの間、配線部においてホール注入層40の洗浄後から電子注入層80を形成する工程までの間は、当該電子準位は、大気中において継続的に維持され、したがって、画素部ではバッファ層60へのホール注入能力が安定して維持され、配線部では電子注入層80とのオーミック接続能力が安定して維持される。これにより、低駆動電圧で長寿命の有機EL表示パネル110の製造を、安定して行うことが可能となる。
また、前記の紫外光照射の工程における紫外光の照射時間や照射強度は、ホール注入層40の光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束する条件から求めたものであり、必要最小限の照射条件で、吸着物を最大限に除去するように設定されている。これにより、最小限の洗浄プロセスで、非常に安定した画素部のホール注入効率と配線部のショットキーオーミック接続を実現することができる。
<紫外光照射装置>
次に、紫外光照射装置について説明する。図5に示す紫外光照射装置200は、有機EL表示パネル110の中間製品110Aに対し紫外光を照射するための装置であって、波長域が主として184.9nm超380nm以下である紫外光を出射する光源201と、当該光源201から出射した紫外光を前記中間製品110Aに向けて集光する反射鏡202と、それら光源201および反射鏡202を覆いかつ保持する筐体203と、前記光源201を点灯制御する制御部204とを備える。
中間製品110Aは、例えば基板10に陽極20、補助配線30およびホール注入層40を成膜したものであって、バンク50およびバッファ層60は未成膜の状態である。
光源201は、例えば、直管形のメタルハライドランプであって、その長手方向が中間製品110Aの搬送横幅方向となるように配置されており、低電圧で駆動できるとともに優れた発光効率を実現できる有機EL表示パネル110を効率よく製造するために好適な照射条件で点灯される。紫外光の照射時間や照射強度などの照射条件は、金属酸化物の種類などのホール注入層40の成膜条件、および本実施の形態で述べるホール注入層40の光電子分光スペクトルの形状の収束などに基づいて設定される。照射条件の設定は操作者により行われる。なお、照射条件の設定は制御部204により自動で行われてもよい。例えば、制御部204には成膜条件、照射時間、照射強度が関係付けられたデータベースが格納されており、操作者が入力する成膜条件に基づいて、前記制御部204が前記データベースを参照して照射時間、照射強度を設定する。
中間製品110Aの紫外光照射対象位置への搬送は、例えば搬送コンベア205によって行われる。図中において、搬送上流側(右側)から搬送コンベア205上に搬入された中間製品110Aは、搬送コンベア205上を搬送されて紫外光照射対象位置を通過する。この通過の際に中間製品110Aの上面、すなわちホール注入層40の上面に紫外光が所定量照射される。紫外光照射が完了した中間製品110Aは搬送下流側(左側)に搬出される。
以上に説明した紫外光照射装置200において、光源201はメタルハライドランプに限定されず、波長域が主として184.9nm超380nm以下(望ましくは253.7nm超380nm以下)である紫外光を出射可能なものであればよい。
<各種実験と考察>
(紫外光照射による吸着物の除去効果について)
本実施の形態では、酸化タングステンからなるホール注入層の成膜後、所定の条件で紫外光を照射することにより、ホール注入層表面の吸着物を除去している。この吸着物除去効果については以下の実験で確認された。
基板の上に、ITOからなる陽極、酸化タングステンからなるホール注入層を、スパッタ成膜装置のチャンバー内で積層した。その後、大気に取り出し、紫外光照射を行わないサンプル、1分照射したサンプル、10分照射したサンプルをそれぞれ作製した。照射強度は155mW/cmとした。
なお、以降、本実施の形態においては、紫外光照射を行わないサンプルを「照射なしサンプル」、n分照射したサンプルを「照射n分サンプル」のように記述する。
各サンプルを、アルバック・ファイ社製の光電子分光装置(PHI 5000 VersaProbe)に装着し、XPS(X線光電子分光)測定を実施した。ここで、一般にXPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける元素の組成や、結合状態および価数などの電子状態を反映する。このため、酸化タングステンに本来含まれない元素が観測されれば、それが吸着物である可能性が高い。さらに、一般に、大気曝露により吸着する或いは製造工程中に吸着する分子は、水分子や酸素分子の他は、炭素を含む分子が主であることが広く知られている。したがって、ホール注入層表層の炭素の、紫外光照射による濃度変化を観測すれば、吸着物除去効果を知ることができる。
XPS測定条件は以下の通りである。なお、測定中、チャージアップは発生しなかった。
光源 :Al Kα線
バイアス:なし
出射角 :基板法線方向
まず、各サンプルをワイドスキャン測定したところ、観測された元素はいずれのサンプルもタングステン(W)、酸素(O)、および炭素(C)のみであった。そこで、Wの4f軌道(W4f)、およびCの1s軌道(C1s)のナロースキャンスペクトルの測定を行い、酸化タングステンからなるホール注入層の表層数nmにおける、タングステン原子の数密度に対する炭素原子の数密度の相対値、すなわち、WとCとの組成比を求めた。なお、スペクトルから組成比を求めるためには、測定に使用した光電子分光装置に付属のXPS解析ソフトウェア「MultiPak」の組成比算出機能を使用した。
各サンプルのWとCの組成比を表1に示す。
Figure 2012114403
表1から、照射なしサンプルに比べて、照射1分サンプル、照射10分サンプルと、照射時間が長くなるにしたがって、明らかにタングステン原子に対する炭素原子の数が減っていることがわかる。すなわち、本実施の形態の紫外光照射により、酸化タングステンからなるホール注入層表面の吸着物が減少していることが明らかである。
(紫外光照射のホール注入能力への影響について)
本実施の形態では、酸化タングステンからなるホール注入層表面の吸着物を、紫外光照射で除去する際、ホール注入層からバッファ層へのホール注入能力、およびホール注入層と各電極の間のショットキーオーミック接続能力に作用する、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位は、照射の影響はほとんど受けずに維持されている。この維持性については、以下の実験で確認された。
前述の照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルに対し、UPS(紫外光電子分光)測定を実施した。ここで、一般にUPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、価電子帯からフェルミ面(フェルミ準位)にかけての電子状態を反映する。特に、酸化タングステンや酸化モリブデンでは、表面に酸素欠陥に類する構造が存在すると、価電子帯の上端よりも低結合エネルギー側のフェルミ面近傍に、隆起したスペクトル形状(以下、「フェルミ面近傍の隆起構造」と称する)が確認される(非特許文献2)。したがって、このフェルミ面近傍の隆起構造の紫外光照射による変化を観測することで、紫外光照射が表面の酸素欠陥に類する構造に及ぼす影響を調べることができる。なお、酸化タングステンでは、詳しくは後述するが、このフェルミ面近傍の隆起構造は、価電子帯の上端(価電子帯で最も低い結合エネルギー)より1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する。
UPS測定条件は以下の通りである。なお、測定中にチャージアップは発生しなかった。
光源 :He I線
バイアス:なし
出射角 :基板法線方向
図6に、各サンプルのフェルミ面近傍のUPSスペクトルを示す。なお、以降、光電子分光(UPS、XPS)スペクトルは、横軸の結合エネルギーの原点は測定装置のフェルミレベル(陽極のフェルミレベルに一致する)に採り、左方向を正の向きとした。照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルのいずれも、図中に(I)で示したフェルミ面近傍の隆起構造が明確に確認できる。したがって、ホール注入能力に作用する酸素欠陥に類する構造が、紫外光の照射を受けても維持されていることがわかる。
比較として、UVオゾン洗浄を行った。具体的には、基板の上に、ITOからなる陽極および酸化タングステンからなるホール注入層をスパッタ成膜装置のチャンバー内で積層した後、チャンバー内から大気中に取り出し、UVオゾン装置によりホール注入層表面のUVオゾン洗浄を行い、UPS測定によりフェルミ面近傍の隆起構造の有無を確認した。
図7に、UVオゾン洗浄を3分行った酸化タングステンからなるホール注入層のフェルミ面近傍のUPSスペクトルを示す。なお、比較のために、図6の照射なしサンプルのUPSスペクトルも併記した。図6の本実施の形態の紫外光照射の場合とは異なり、フェルミ面近傍の隆起構造が全く確認できない。すなわち、UVオゾン洗浄によりホール注入層の表面の酸素欠陥に類する構造がほとんど失われてしまったことがわかる。
以上のように、本実施の形態の紫外光照射による洗浄では、UVオゾン洗浄のように酸素欠陥に類する構造が失われないこと、すなわち、ホール注入能力やショットキーオーミック接続能力に作用する酸素欠陥に類する構造が紫外光の照射を受けても維持されていることが明らかである。
(紫外光照射条件の規定方法について)
本実施の形態の紫外光照射による、酸化タングステンからなるホール注入層の表面の洗浄では、ある程度以上の照射時間において、その吸着物除去効果が飽和することが、以下の実験で確認された。
前述と同様の方法で、再度、照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルを作成し、加えて、照射60分サンプル、照射120分サンプルも作成した。そして、XPS測定によって、各サンプルのW4fおよびC1sのナロースキャンスペクトルの測定を行い、それぞれバックグラウンド成分を引き算した後、W4fのナロースキャンスペクトルの面積強度で光電子強度を規格化した。このときの各サンプルのC1sのナロースキャンスペクトルを図8に示す。図8のC1sスペクトルの面積強度は、酸化タングステンからなるホール注入層の表層数nmにおける、タングステン原子に対する炭素原子の数密度の割合に比例する。
図8によれば、照射時間1分以上のサンプルでC1sスペクトルの強度がほぼ一致しており、したがって、照射時間1分以上で吸着物除去効果がほぼ飽和してきていると考えられる。
しかしながら、一般に、吸着物のC1sスペクトルはそもそも吸着する絶対量が少ないことから、図8のように強度が低く荒いスペクトルになることが多い。したがって、吸着物除去効果の飽和の判断にはあまり適さないおそれがある。そこで、強度が比較的強いスペクトルを用いて吸着物除去効果の飽和を判断する別の方法も述べる。
一つ目は、UPSスペクトルにおける価電子帯の上端付近に該当する領域の形状の変化、すなわちUPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域の形状の変化で判断する方法である。この領域に存在するピークあるいは肩構造は、酸化タングステンを構成する酸素原子の2p軌道の非共有電子対に相当する。
図9に、そのUPSスペクトルを示す。照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルの各サンプルに対し、UPS測定を行った。光電子強度は結合エネルギー6.5eV付近の緩やかなピークで規格化した。図9によれば、照射1分サンプルおよび照射10分サンプルは、結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域に、照射なしサンプルでは存在しない図中の(II)で示すような明確なピークが認められる。さらに、照射1分サンプルと照射10分サンプルとはピーク形状がほぼ一致している。すなわち、照射時間1分以上で、UPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域の形状の変化はほぼ収束している。これらはC1sで見られた挙動と同じであり、C1sと同様に、紫外光照射で吸着物除去効果が得られていること、および、照射時間1分以上でその効果が飽和していることを示していると考えられる。
二つ目は、XPS測定のW4fスペクトルの、紫外光照射による形状の変化である。図10に、照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプル、照射60分サンプル、照射120分サンプルの各サンプルの、W4fスペクトルを示す。スペクトルの最大値と最小値で規格化している。
図10によれば、照射なしサンプルに比べ、照射を行ったサンプルでは、ピーク形状が鋭くなっている(ピークの半値幅が狭くなっている)ことがわかる。さらに、照射1分サンプルよりも照射10分サンプルの方がピーク形状が若干鋭いのに対して、照射10分サンプル、照射60分サンプル、照射120分サンプルは、スペクトル自体がほぼ完全に重なっており、照射10分でスペクトルの形状の変化がほぼ収束していることがわかる。
この、W4fのスペクトルの照射時間による形状の変化は、例えば次のように説明できる。吸着物の構造にも依存するが、吸着物が表面のタングステン原子に負電荷を寄与する場合、内殻軌道のW4fはそれに応じて低結合エネルギー側にシフトする。化学的には、酸化タングステンの表層において6価のタングステン原子の一部が吸着物の影響で5価などの低価数に変化するということである。これは、W4fのXPSスペクトルにおいては、主成分である6価のタングステン原子によるスペクトルと、少数の低価数のタングステン原子によるスペクトルが重なることで、スペクトルの形状がブロードになることに対応する。
上記を考慮すると、図10においては、紫外光照射を行うことで吸着物が除去され、5価のタングステン原子が6価に戻ることで、ピーク形状が鋭くなると考えられる。このことから、照射1分で大部分の吸着物が除去され、照射10分以上では吸着物の除去効果がほぼ飽和していると解釈できる。これは、C1sで見られた挙動とやはり同様である。
また、図示はしていないが、酸素原子のO1s軌道においても、紫外光の照射時間に対するスペクトルの形状の変化が、照射10分以上でほぼ収束することが確認された。
以上より、本実施の形態の紫外光照射における吸着物除去効果は、ある程度以上の照射時間で飽和することがわかる。ここで、金属酸化物が酸化タングステンの場合の照射条件は次のように定めることができる。例えば、照射時間については、照射強度を任意に定め、XPS測定によるW4fまたはO1sのナロースキャンスペクトルの形状、または、UPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの形状の変化が収束するまでの時間を測定し、この時間を照射時間として定める。具体的には、例えば照射時間n分のスペクトルと照射時間n+1分のスペクトルを比較し、各測定点における2つのスペクトルの、規格化強度の差の二乗平均がある値以下になったときに、照射時間n分で照射時間によるスペクトルの形状の変化が収束し、最大限の吸着物の除去が完了した、と判断すればよい。本実施の形態では、図9および図10から、照射時間10分で吸着物除去効果が飽和した、と判断した。
(紫外光照射後の電子状態の維持について)
本実施の形態では、ホール注入能力およびショットキーオーミック接続能力に作用する酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が、少なくとも表面洗浄後からその表面に上層が積層されるまでの間において継続的に維持される。その根拠は以下の通りである。
前述の図6のUPSスペクトルは、紫外光の照射から2日後に測定したものである。すなわち、照射なしサンプルと、照射後に大気中で2日経過した各照射時間のサンプルとの間において、UPSスペクトルにおけるフェルミ面近傍の隆起構造に相違は見られず、いずれも隆起構造は明確である。また、図示は省略するが、紫外光の照射から2時間後、1日後の場合についても測定を行っており、その場合もフェルミ面近傍の隆起構造は図6と同様に明確であった。すなわち、少なくとも照射後から2日間の間は、大気中で酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が維持されていることを確認した。
この2日間という期間は、紫外光照射によるホール注入層の洗浄後、その表面にバッファ層や電子注入層が積層される工程までの期間(通常は数時間以内)に比べ充分に長く、意図的にバッファ層や電子注入層の形成時期を遅らせることでもしない限り、この期間を過ぎてもバッファ層や電子注入層が形成されないということはありえない。
(紫外光照射による素子特性の向上について)
紫外光照射によりホール注入層を洗浄した本実施の形態に係る有機EL表示パネルを構成する有機EL素子は、照射をしないで作製した有機EL表示パネルを構成する有機EL素子に比べて特性がよい。これに関しては、以下の実験で確認された。
まず、紫外光照射によるホール注入層の表面からの吸着物の除去がホール注入層からバッファ層へのホール注入効率に及ぼす効果を確実に評価するために、評価デバイスとしてホールオンリー素子を作製した。
有機EL素子においては、電流を形成するキャリアはホールと電子の両方であり、有機EL素子の電気特性にはホール電流以外にも電子電流が反映されている。しかし、ホールオンリー素子では、陰極からの電子の注入が阻害されるため、電子電流はほとんど流れず、全電流はほぼホール電流のみから構成され、キャリアはほぼホールのみと見なせる。したがって、ホールオンリー素子は、ホール注入効率の評価に好適である。
具体的に作製したホールオンリー素子1Bは、図11に示すように、基板9上に厚さ50nmのITO薄膜からなる陽極2をスパッタ成膜法にて成膜し、陽極2上に厚さ30nmの酸化タングステンからなるホール注入層4を、表面に酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を持つように、所定のスパッタ成膜法にて成膜し、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFBからなるバッファ層6A、厚さ70nmの有機高分子であるF8BTからなる発光層6B、厚さ100nmのAu(金)からなる陰極8Cを順次積層した構成とした。
ここで、ホール注入層としては、成膜してスパッタ成膜装置のチャンバー内から大気中に取り出した後(この時点で既に吸着物が吸着している)、本実施の形態に係る紫外光照射(照射時間は10分)を行うもの、また紫外光照射を行わないものの2つを用意し、それぞれホールオンリー素子1Bを作製した。以降、前者のホールオンリー素子1Bを「照射ありHOD」、後者のホールオンリー素子1Bを「照射なしHOD」と称す。
作製した各ホールオンリー素子1Bを直流電源DCに接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。なお、ここでの「駆動電圧」とは、電流密度0.4mA/cmのときの印加電圧とする。
この駆動電圧が小さいほど、ホール注入層のホール注入効率は高いと言える。なぜなら、各ホールオンリー素子1Bにおいて、ホール注入層表面以外の各部位の作製方法は同一であるから、ホール注入層とバッファ層の界面を除く、隣接する2つの層の間のホール注入障壁は一定と考えられる。したがって、ホール注入層表面への紫外光照射の有無による駆動電圧の違いは、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率の違いを強く反映したものになる。
表2は、当該実験によって得られた、各ホールオンリー素子1Bの駆動電圧の値である。
Figure 2012114403
また、図12は、各ホールオンリー素子1Bの電流密度―印加電圧曲線である。図中縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。
表2および図12に示されるように、照射ありHODは照射なしHODと比較して、駆動電圧が低く、電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、低い印加電圧で高い電流密度が得られている。すなわち、照射ありHODは照射なしHODと比較し、ホール注入効率が優れている。
以上は、ホールオンリー素子1Bにおけるホール注入層からバッファ層へのホール注入効率に関する検証であったが、紫外光照射による吸着物の除去が、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率に及ぼす効果は、有機EL表示パネルを構成する有機EL素子においても、本質的にホールオンリー素子1Bと同じである。
このことを確認するために、評価デバイスとして有機EL素子1を作製した。有機EL素子1は、図13に示すように、基板10上に厚さ50nmのITO薄膜からなる陽極2を形成し、さらに陽極2上に厚さ30nmの酸化タングステンからなるホール注入層4、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFBからなるバッファ層6A、厚さ70nmの有機高分子であるF8BTからなる発光層6B、厚さ5nmのバリウムからなる電子注入層8Aおよび厚さ100nmのアルミニウムからなる陰極8Bを順次積層した構成とした。
そして、紫外光照射を行ったホール注入層、また紫外光照射を行わないホール注入層を用いて、それぞれ有機EL素子1を作製した。以降、前者の有機EL素子1を「照射ありBPD」、後者の有機EL素子1を「照射なしBPD」と称す。作製方法は、照射なしBPDのホール注入層が紫外光照射されないことを除き、全て同じである。
作製した各有機EL素子1を直流電源に接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。なお、ここでの「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cmのときの印加電圧とする。
表3は、当該実験によって得られた、各有機EL素子1の駆動電圧の値である。
Figure 2012114403
また、図14は、各有機EL素子1の電流密度―印加電圧曲線である。図中縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。
表3および図14に示されるように、照射ありBPDは照射なしBPDと比較して、駆動電圧が低く、電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、低い印加電圧で高い電流密度が得られている。これは、照射ありHODおよび照射なしHODと同様の傾向である。
以上の結果により、ホール注入層表面への紫外光照射による吸着物の除去が、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率に及ぼす効果は、有機EL素子1においても、ホールオンリー素子1Bの場合と同様であることが確認された。
以上の諸実験により、有機EL素子1において、本実施の形態に基づきホール注入層の成膜後に所定の紫外光照射を行うと、ホール注入層表面の吸着物が最大限に除去され、かつ酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位は照射によって失われず、したがって、ホール注入能力を損なわずに、駆動電圧の増加や寿命の低下を引き起こす吸着物を除去できるため、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率が改善され、それにより優れた素子特性が実現されることが確認された。
(紫外光の波長について)
本実施の形態では、ホール注入層の成膜後に所定の波長の紫外光を大気中にて照射することで、ホール注入層の吸着物が除去されており、除去されたホール注入層を用いた有機EL表示パネル110は、除去を行わない有機EL表示パネルよりも低電圧駆動を実現する。この紫外光の波長については、以下の考察により規定された。
まず、大気中などの酸素分子(O)を含むガス雰囲気中において、オゾン(O)が発生するための紫外光の波長は184.9nmである。以下の反応により、酸素分子が波長184.9nmの紫外光で分解され、生成した酸素ラジカル(O)と他の酸素分子が結合し、オゾンが生成される。
→ O + O
O + O → O
また、さらにオゾンが分解し、再び酸素ラジカルが発生するための紫外光の波長は253.7nmである。
UVオゾン洗浄では、これらの波長184.9nmおよび253.7nmの紫外光で酸素ラジカルを発生させ、その強力な酸化作用を吸着物の除去に用いている。このため、前述の実験でUVオゾン洗浄を行ったホール注入層のように、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位がほとんど消滅してしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、酸素分子を分解して酸素ラジカルを発生させる可能性が低い184.9nm超の波長域の紫外光を用いる。さらに、大気中に存在する僅かな量のオゾンの分解による酸素ラジカルの発生をも防ぐために、253.7nm超の波長域の紫外光を用いることが望ましい。
本実施の形態で、実際に用いたメタルハライドランプは、図15のような分光分布を持つ。このように、253.7nm以下の波長を極力含まないランプを採用した。このメタルハライドランプの最大の強度(波長380nm付近)に対する253.7nm以下の波長の強度は、高々数%台に抑えられている。
次に、一般的な吸着物における、原子間の結合エネルギーを表4に示す。「=」は二重結合、「−」は単結合である。吸着物を除去するには、まず、この結合エネルギー以上のエネルギーの光を照射し、結合を切る必要がある。
Figure 2012114403
ここで、光子1モルあたりの光のエネルギーEと、波長λとの間には、次の反比例の関係がある。
E=Nhc/λ(N:アボガドロ数、h:プランク定数、c:光速、λ:波長 )
上式より、波長184.9nmの紫外光のエネルギーは647kJ/mol、波長253.7nmの紫外光のエネルギーは472kJ/molに相当する。これらの値を表4と比較すると、本実施の形態の波長域の紫外光は、吸着物に見られる多くの原子間結合を切断できることがわかる。特に、後述するように、化学吸着の場合は、吸着物は酸化タングステンの酸素原子と主に単結合すると考えられるが、この吸着物との単結合のエネルギーは、大きくてもO−H結合の463kJ/mol(波長258nmに相当)程度であるから、本実施の形態の波長域の紫外光で切断が可能であることがわかる。また、物理吸着の場合は、化学吸着よりもはるかに結合が弱いため、これも紫外光照射で容易に除去される。
以上が、本実施の形態で用いた紫外光が、吸着物を除去できる理由である。
本実施の形態の紫外光照射による吸着物の除去効率は、UVオゾン洗浄によるものよりも本質的に悪い。これは、UVオゾン洗浄では、結合を切られた吸着物がすぐさま酸素ラジカルに酸化されてCO、HOなどの分子として容易に遊離するからである。しかしながら、前述のように、UVオゾン洗浄は、酸化タングステンのような金属酸化物からなるホール注入層の洗浄には不適である。
次に、一般に、金属酸化物の原子間結合が本実施の形態の波長域の紫外光のエネルギーで切断される可能性は低い。例えば非特許文献3によれば、酸化タングステンにおける酸素原子とタングステン原子の結合エネルギーは672kJ/mol(波長178nmに相当)であり、本実施の形態の波長域の紫外光での切断は困難である。これは、前述の真空中のアルゴンイオンによるスパッタエッチングとは対照的である。すなわち、本実施の形態の紫外光を用いれば、酸化タングステンなどの金属酸化物からなるホール注入層の原子間結合を破壊して化学的に活性化させることなく、化学的に安定した状態のまま吸着物を除去できる。
以上の理由により、本発明では、波長184.9nm超、望ましくは波長253.7nm超の紫外光を用いる。なお、可視光による化学吸着の結合の切断は一般に困難であるから、本実施の形態では、可視光ではなく紫外光(波長380nm以下)を用いる。
(紫外光照射後も、ホール注入能力およびショットキーオーミック接続能力に作用する電子準位が維持される理由)
本実施の形態では、紫外光の照射後も、ホール注入層表面の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が継続的に維持され、したがって、バッファ層へのホール注入能力も安定して維持され、電子注入層とのショットキーオーミック接続能力も安定して維持でき、低駆動電圧の有機EL表示パネル110の製造を安定して行うことが可能である。この維持性に関して以下に考察する。
酸化タングステンの薄膜や結晶に見られる前記電子準位は、酸素欠陥に類する構造に由来することが、実験および第一原理計算の結果から多数報告されている。具体的には、酸素原子の欠乏により形成される隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合性軌道、および、酸素原子に終端されることなく膜表面や膜内に存在するタングステン原子単体の5d軌道に由来するものと推測されている。
ここで、これらのタングステン原子の5d軌道は、5d軌道同士の結合性軌道や原子単体の5d軌道として存在するよりは、吸着物が化学吸着した方が安定化するのではないかと予想されるかもしれないが、必ずしもそうではない。実際、大気中に2日間置いた酸化タングステンにおいて、本実施の形態の図6のUPSスペクトルが示すように、当該電子準位に該当する、フェルミ面近傍の隆起構造が確認されるからである。
真空中において、三酸化タングステン単結晶を劈開して清浄な(001)面を出すと、最表面の酸素原子の一部が真空中に放出されることが、非特許文献4で報告されている。さらに、非特許文献4では、第一原理計算により、(001)面では、全ての最表面のタングステン原子が酸素原子で終端されるよりも、図16のように周期的に一部のタングステン原子(a)が終端されない構造の方がエネルギー的に安定し、この理由として、全ての最表面のタングステン原子が酸素原子で終端されると終端酸素原子同士の電気的な斥力が大きくなり、かえって不安定化するからであると報告している。つまり、(001)面においては、表面に酸素欠陥に類する構造(a)がある方が安定するのである。
なお、図16では、単純化のために、1つのタングステン原子に配位する6つの酸素原子を頂点とする8面体構造が、三酸化レニウムのように整然と並んだ絵で示しているが、実際は8面体同士がやや歪んで配置している。
以上から類推し、ホール注入層表面の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が、本実施の形態の紫外光照射後も継続的に維持される理由としては、例えば以下のような機構が考えられる。
本実施の形態の酸化タングステンからなるホール注入層は、成膜直後は少なくとも局所的にはその表面に(001)面ファセットを持ち、図16のように、終端酸素原子(b)とそれに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)とを持つと考えられる。これは、(001)面が安定構造だからである。そして、この表面が、成膜後にスパッタ成膜装置内のチャンバー内の不純物分子や大気中の分子に曝露される。
ここで、一般に金属酸化物においては、表面に(a)のような不飽和な配位の金属原子が存在すると、水分子や有機分子などと化学吸着反応し終端されることがある。本実施の形態においては、図10のW4fのスペクトルを見る限り、タングステン原子と炭素原子との結合に由来する、結合エネルギー31〜33eV付近に位置するはずのピークが確認されず、タングステン原子と酸素原子との結合に由来するピークのみが確認されることから、(a)のタングステン原子と直接化学結合する吸着分子の原子は、酸素原子である可能性が高い。
しかしながら、例えば(a)に水分子が化学吸着して水酸基を形成する場合、あるいは(a)に有機分子が化学吸着して有機分子の持つ酸素原子が結合する場合などは、一般に負に帯電している吸着基の酸素原子と、同じく負に帯電している周囲の終端酸素原子(a)との間に斥力が働く。このため、真空中で(a)に終端酸素原子が存在しにくい理由と同様に、(a)への分子吸着も比較的起こりにくいと予想される。
一方、(a)ではなく、その周囲の終端である酸素原子(b)に対しては、水分子や有機分子が付加反応を起こすなどして化学吸着する。この吸着自体は周囲に斥力などの阻害要因がほぼないため比較的容易である。そして、この(b)への吸着により場合によっては(a)の直近に数原子以上からなる有機分子の終端基が存在することになり、(a)への分子の吸着に対して立体的な障壁となり得る。このため、(b)に分子が吸着することによっても(a)への分子吸着がやはり比較的起こりにくくなると予想される。
以上より、図16のような、終端酸素原子(b)と、それに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)からなる構造を持つ表面に対しては、(a)への分子の化学吸着は起こりにくく、不純物分子や大気中の気体分子は主に(a)の周囲の(b)に対して化学吸着すると考えられる。なお、このときの化学吸着は、終端酸素を介する結合となるから一般に単結合である。
そして、本実施の形態の紫外光が照射されると、(b)に対して化学吸着した分子のみが結合を切断され遊離する。そして、(b)は再びもとの終端酸素原子に戻るか、あるいは、今度は水分子と吸着反応し、本実施の形態の紫外光では比較的切断されにくい安定した水酸基などとして残ると予想される。
以上をまとめると、本実施の形態の酸化タングステンからなるホール注入層は、図16のような、終端酸素原子(b)とそれに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)とからなる局所構造を表面に有し、まず、この構造自体の持つ特性により(a)に対し分子の吸着が起こりにくい。また、(b)に対して吸着した分子は、紫外光が照射されることで遊離され、その後には主に水酸基が残るのみである。これにより、表面の酸素欠陥に類する構造(a)が形成する、ホール注入能力に作用する電子状態が、成膜後の本実施の形態の紫外光照射の影響を受けずに継続して維持され、一方で、吸着物のみが紫外光照射により除去されるのである。
(酸化タングステンの成膜条件について)
本実施の形態では、ホール注入層を構成する酸化タングステンを所定の成膜条件で成膜することで、ホール注入層に前記したフェルミ面近傍の占有準位を存在させ、ホール注入層とバッファ層との間のホール注入障壁を低減して、有機EL表示パネル110を低電圧駆動できるようにしている。
このような性能を得るための酸化タングステンの成膜方法としては、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは金属タングステンとし、チャンバー内ガスはアルゴンガスと酸素ガスで構成し、ガス圧(全圧)が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)が1W/cm以上2.8W/cm以下となる成膜条件に設定して、反応性スパッタ法で成膜することが好適であると考えられる。
上記成膜条件の有効性は以下の諸実験で確認された。
まず、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率の、成膜条件依存性の評価を確実にするために、評価デバイスとして図11に示すホールオンリー素子1Bを用いた。
この作製工程において、ホール注入層は、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、反応性スパッタ法で成膜した。チャンバー内ガスは、アルゴンガスおよび酸素ガスの少なくともいずれかから構成し、ターゲットは金属タングステンを用いた。基板温度は制御せず、アルゴンガス分圧、酸素ガス分圧、全圧は各ガスの流量で調節するものとした。成膜条件は以下の表5に示すように、全圧、酸素ガス分圧、および投入電力の各条件を変化させるものとし、これにより各成膜条件で成膜したホール注入層を備えるホールオンリー素子1B(素子No.1〜14)を得た。なおこれ以降、酸素ガス分圧は、全圧に対する比(%)として表す。
Figure 2012114403
上記DCマグネトロンスパッタ装置の、投入電力と投入電力密度の関係を表6に示す。
Figure 2012114403
作製した各ホールオンリー素子1Bを直流電源DCに接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。以降、「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cmのときの印加電圧とする。
この駆動電圧が小さいほど、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率は高いと推測される。なぜなら、各ホールオンリー素子1Bにおいて、ホール注入層以外の各部位の作製方法は同一であるから、ホール注入層を除く、隣接する2つの層の間のホール注入障壁は一定と考えられる。また、後述のように、当該実験で用いた陽極2とホール注入層は、ショットキーオーミック接続をしていることが、別の実験により確認されている。したがって、ホール注入層の成膜条件による駆動電圧の違いは、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率、およびホール注入層自体のホール伝導効率を強く反映したものになる。
ここで、本実施の形態の各実験における素子の特性には、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率の他に、ホール注入層のホール伝導効率も影響していると考えられる。しかしながら、当該素子の特性において、少なくともホール注入層とバッファ層との間のホール注入障壁が強く反映されていることは、後述するエネルギーダイアグラムの評価結果からも明確である。
表7は、当該実験によって得られた、各ホールオンリー素子1Bの、全圧、酸素ガス分圧、投入電力の各成膜条件に対する、駆動電圧の値である。表7中、各ホールオンリー素子1Bの素子No.は囲み数字で示している。
Figure 2012114403
また、図17の(a)〜(c)は、各ホールオンリー素子1Bの駆動電圧の成膜条件依存性をまとめたグラフである。図17(a)中の各点は、左から右に向かって、素子No.4、10、2の駆動電圧を表す。図17(b)中の各点は、左から右に向かって、素子No.13、10、1の駆動電圧を表す。さらに図17(c)中の各点は、左から右に向かって、素子No.14、2、8の駆動電圧を表す。
なお当該実験では、全圧が2.7Paで酸素ガス分圧が100%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が30%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が70%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が100%の場合は、いずれもガス流量などのスパッタ装置の制約で成膜を行えなかった。
まず、駆動電圧の全圧依存性は、図17(a)からわかるように、酸素ガス分圧50%、投入電力500Wの条件下では、少なくとも全圧が2.7Pa超4.8Pa以下の範囲において、駆動電圧の明確な低減が確認できた。この傾向は、少なくとも全圧が7.0Pa以下の範囲まで続くことが別の実験により分かった。したがって、全圧は2.7Pa超7.0Pa以下の範囲に設定することが望ましいと言える。
次に、駆動電圧の酸素ガス分圧依存性は、図17(b)からわかるように、全圧2.7Pa、投入電力500Wの条件下では、少なくとも酸素ガス分圧が50%以上70%以下の範囲において、酸素ガス分圧の上昇とともに駆動電圧の低下が確認できた。ただし、これ以上に酸素ガス分圧が上昇すると、別の実験により逆に駆動電圧の上昇が確認された。したがって、酸素ガス分圧は50%以上で上限を70%程度に抑えることが望ましいと言える。
次に、駆動電圧の投入電力依存性は、図17(c)からわかるように、全圧4.8Pa、酸素ガス分圧50%の条件下では、投入電力が500W超で、急激に駆動電圧が上昇することが確認された。したがって、投入電力は500W以下に抑えるのが望ましいと考えられる。なお、表7の素子No.1、3を見ると、投入電力が500Wであっても、全圧が2.7Pa以下であれば、駆動電圧が上昇するという結果が確認できる。
次に、各ホールオンリー素子1Bのうち、代表して素子No.14、1、7の電流密度―印加電圧曲線を図18に示した。図中縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。素子No.14は、上記した全圧、酸素ガス分圧、投入電力の望ましい条件をすべて満たしている。一方、素子No.1、7は、上記望ましい条件を一部満たしていない。
ここで、以降の説明のために、ホール注入層(および後述の酸化タングステン層12)の成膜条件に関しては、素子No.14の成膜条件を成膜条件A、素子No.1の成膜条件を成膜条件B、素子No.7の成膜条件を成膜条件Cと呼ぶことにする。また、それに倣い、図18では、素子No.14をHOD−A、素子No.1をHOD−B、素子No.7をHOD−Cとも記述した。
図18に示されるように、HOD−AはHOD−B、HOD−Cと比較して、最も電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、また最も低い印加電圧で高い電流密度が得られている。これにより、HOD−AはHOD−B、HOD−Cと比較し、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率が優れていることが推測される。なお、HOD−Aは、各ホールオンリー素子1Bの中で最も駆動電圧が低い素子である。
以上は、ホールオンリー素子1Bにおけるホール注入層からバッファ層へのホール注入効率に関する検証であったが、有機EL素子1においても、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率の成膜条件依存性は、本質的にホールオンリー素子1Bと同じである。このことを確認するために、成膜条件A、B、Cのホール注入層を用いて、図13に示す各有機EL素子1を作製した。
作製した成膜条件A、B、Cの各有機EL素子1を直流電源DCに接続し、電圧を印加した。このときの電流密度―印加電圧曲線を図19に示した。図中、縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。
なお、以降の説明のために、図19では、成膜条件Aの有機EL素子1をBPD−A、成膜条件Bの有機EL素子1をBPD−B、成膜条件Cの有機EL素子1をBPD−Cと記述した。
図19に示されるように、BPD−AはBPD−B、BPD−Cと比較して、最も電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、また最も低い印加電圧で高い電流密度が得られている。これは、それぞれ同じ成膜条件のホールオンリー素子であるHOD−A、HOD−B、HOD−Cと同様の傾向である。
さらに、上記の各有機EL素子1について、電流密度の変化に応じた発光強度の関係を表す、発光強度―電流密度曲線を図20に示した。図中、縦軸は発光強度(cd/A)、横軸は電流密度(mA/cm)である。これより、少なくとも測定した電流密度の範囲では、BPD−Aの発光強度が最も高いことがわかる。
以上の結果により、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率の成膜条件依存性が、有機EL素子1においても、ホールオンリー素子1Bの場合と同様に作用していることが推測される。すなわち、当該実験の有機EL素子1において、ホール注入層を構成する酸化タングステンを、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは金属タングステンとし、基板温度は制御せず、チャンバー内ガスはアルゴンガスと酸素ガスで構成し、全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらに投入電力密度が1W/cm以上2.8W/cm以下となる成膜条件下で、反応性スパッタ法で成膜すると、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率が良く、それにより優れた低電圧駆動と高い発光効率が実現されることが推測される。
なお、上記においては、投入電力の条件は、表6をもとに改めて投入電力密度で表した。本実験で用いたDCマグネトロンスパッタ装置とは異なるDCマグネトロンスパッタ装置を用いる場合は、ターゲットのサイズに合わせて、投入電力密度が上記条件になるように投入電力を調節することにより、本実験と同様に、優れた低電圧駆動と高い発光効率の有機EL素子1を実現するホール注入層が得られる。なお、全圧、酸素分圧については、装置やターゲットのサイズに依存しない。
また、ホール注入層の反応性スパッタ法による成膜時は、室温環境下に配置されるスパッタ装置において、基板温度を意図的には設定していない。したがって、少なくとも成膜前は基板温度は室温である。ただし、成膜中に基板温度は数10℃程度上昇する可能性がある。
本実施の形態の有機EL表示パネル110は、成膜条件Aでホール注入層を作製しており、前記したフェルミ面近傍の占有準位を持つ。これについては、以降で考察する。
(ホール注入層の電子状態について)
本実施の形態の有機EL表示パネル110のホール注入層を構成する酸化タングステンには、前記フェルミ面近傍の占有準位が存在している。このフェルミ面近傍の占有準位は、先の実験で示した成膜条件の調整により形成されるものである。詳細を以下に述べる。
前述の成膜条件A、B、Cで成膜した酸化タングステンにおける、前記フェルミ面近傍の占有準位の存在を確認する実験を行った。
各成膜条件で、光電子分光測定用のサンプルを作製した。当該サンプルの構成としては、図21に示す1Aのように、導電性シリコン基板11の上に、厚さ10nmの酸化タングステン層12(ホール注入層に該当する)を、前記の反応性スパッタ法により成膜した。以降、成膜条件Aのサンプル1AをサンプルA、成膜条件Bのサンプル1AをサンプルB、成膜条件Cのサンプル1AをサンプルCと記述する。
サンプルA、B、Cは、いずれもスパッタ装置内において酸化タングステン層12を成膜した後、当該スパッタ装置に連結され窒素ガスが充填されたグローブボックス内に移送し、大気曝露しない状態を保った。そして、当該グローブボックス内でトランスファーベッセルに封入し、光電子分光装置に装着した。これにより、酸化タングステン層12を成膜後に大気曝露することなく、紫外光電子分光(UPS)測定を実施した。
ここで、一般にUPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、価電子帯などの占有準位の状態を反映したものになる。そこで本実験では、UPSを用いて酸化タングステン層12の表層における占有準位の状態を観察するものとした。
UPS測定条件は以下の通りである。なお、サンプルA、B、Cでは導電性シリコン基板11を用いたため、測定中チャージアップは発生しなかった。
光源 :He I線
バイアス :なし
出射角 :基板法線方向
測定点間隔:0.05eV
図22に、サンプルAの酸化タングステン層12のUPSスペクトルを示す。横軸の結合エネルギーの原点は導電性シリコン基板11のフェルミレベルとし、左方向を正の向きとした。
以下、図22を用いて、酸化タングステン層12の各占有準位について説明する。
一般に酸化タングステンが示すUPSスペクトルにおいて、最も大きく急峻な立ち上がりは一意に定まる。この立ち上がりの変曲点を通る接線を線(i)、その横軸との交点を点(iii)とする。これにより、酸化タングステンのUPSスペクトルは、点(iii)から高結合エネルギー側に位置する領域(x)と、低結合エネルギー側に位置する領域(y)に分けられる。
ここで、以下の表8に示した酸化タングステン層12の組成比によれば、サンプルA、B、Cとも、タングステン原子と酸素原子の数の比率がほぼ1:3である。なお、この組成比は、X線光電子分光(XPS)により求めた。具体的には、当該光電子分光装置を用い、前記UPS測定と同様に、酸化タングステン層12を大気曝露することなくXPS測定し、酸化タングステン層12の表面から深さ数nmまでにおけるタングステンと酸素の組成比を見積もった。なお、表8には、酸化タングステン層12の成膜条件も併記してある。
Figure 2012114403
この組成比から、サンプルA、B、Cのいずれにおいても、酸化タングステン層12は少なくとも表面から深さ数nm以内の範囲において、三酸化タングステンを基本とする原子配置、つまり6つの酸素原子が1つのタングステン原子に対し8面体配位で結合し、8面体が互いに頂点の酸素原子を共有する構造を基本構造に持つと考えられる。したがって、図22における領域(x)は、三酸化タングステン結晶、あるいはその結晶の秩序が乱れた(ただし結合は切れておらず、上記基本構造が保たれている)アモルファス構造が持つ、上記基本構造に由来する占有準位であり、いわゆる価電子帯に対応する領域である。なお、本願発明者は酸化タングステン層12のX線吸収微細構造(XAFS)測定を行い、サンプルA、B、Cのいずれにおいても、上記基本構造が形成されていることを確認した。
したがって、図22における領域(y)は、価電子帯と伝導帯の間のバンドギャップに対応するが、本UPSスペクトルが示すように、酸化タングステンにはこの領域にも、価電子帯とは別の占有準位が存在することがあることが知られている。これは上記基本構造とは異なる別の構造に由来する準位であり、いわゆるバンドギャップ間準位(in−gap stateあるいはgap state)である。
続いて図23に、サンプルA、B、Cにおける各酸化タングステン層12の、領域(y)におけるUPSスペクトルを示す。図23に示すスペクトルの強度は、図22における点(iii)よりも3〜4eVほど高結合エネルギー側に位置するピーク(ii)のピークトップの値で規格化した。図23にも図22の点(iii)と同じ横軸位置に点(iii)を示している。横軸は点(iii)を基準とした相対値(相対結合エネルギー)として表し、左から右に向かって結合エネルギーが低くなるように示している。
図23に示されるように、サンプルAの酸化タングステン層12では、点(iii)からおおよそ3.6eV低い結合エネルギーの位置から、点(iii)からおおよそ1.8eV低い結合エネルギーの位置までの領域に、ピークの存在が確認できる。このピークの明瞭な立ち上がり位置を図中に点(iv)で示した。このようなピークは、サンプルB、Cでは確認できない。
本発明はこのように、UPSスペクトルにおいて点(iii)から1.8〜3.6eV程度低い結合エネルギーの領域内に隆起(ピーク形状を持つとは限らない)した構造を持つ酸化タングステンを、ホール注入層として用いることにより、有機EL表示パネル110において優れたホール注入効率が発揮できるようになっている。
ここで、当該隆起の程度が急峻であるほど、ホール注入効率が高くなる傾向があることが分かっている。したがって、図23に示すように、点(iii)から2.0〜3.2eV程度低い結合エネルギーの領域は、比較的当該隆起構造を確認しやすく、かつ、その隆起が比較的急峻である領域として、特に重要であると言える。
なお、以降、UPSスペクトルにおける当該隆起構造を、「フェルミ面近傍の隆起構造」と称する。このフェルミ面近傍の隆起構造に対応する占有準位が、前記した「フェルミ面近傍の占有準位」である。
次に、上記フェルミ面近傍の隆起構造をより明確にするために、図23に示したサンプルA、B、CのUPSスペクトルにおける規格化強度の微分を計算した。
具体的には、グラフ解析ソフトウェア「IGOR Pro 6.0」を用い、図23に示すUPSスペクトルについて2項スムージング(スムージングファクターは1とした)を11回行い、その後に中心差分法による微分処理を行った。これはUPS測定時のバックグラウンドノイズなどのばらつき要因を平滑化し、微分曲線をスムーズにし、下記の議論を明快にするためである。
この処理により得られた微分曲線を図24に示した。図24中の点(iii)、(iv)は図23と同一の横軸位置である。
図24に示す微分曲線によれば、サンプルB、Cの酸化タングステン層12では、光電子分光装置で測定可能な結合エネルギーから点(iv)に至るまでの領域(v)においては、微分値は0付近をほぼ前後するのみであり、さらに点(iv)から高結合エネルギー側におおよそ1.2eVまでの領域(vi)では、微分値は高結合エネルギー側に向かって、ほぼその増加率を増しながら漸増していくのみである。そして、この領域(v)、(vi)におけるサンプルB、Cの各微分曲線の形状は、当該各微分曲線の元である図23に示したサンプルB、CのUPSスペクトルとほぼ相似である。したがって、サンプルB、Cの領域(v)、(vi)におけるUPSスペクトルとその微分曲線の形状は、指数関数的な形状であると言える。
一方、サンプルAの酸化タングステン層12では、点(iv)付近から高結合エネルギー側に向かって急峻な立ち上がりを見せており、領域(v)、(vi)における微分曲線の形状は指数関数的な曲線の形状とは明らかに異なっている。このようなサンプルAについては、図23の微分前のスペクトルにおいても、点(iv)付近から隆起し始め、また指数関数的なスペクトル形状とは異なる、フェルミ面近傍の隆起構造を持つことが確認できる。
このようなサンプルAの特性は、言い換えると、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりおおよそ1.8〜3.6eV低い範囲内にフェルミ面近傍の占有準位が存在し、特に、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりおおよそ2.0〜3.2eV低い範囲内にて、この範囲に対応するフェルミ面近傍の隆起構造が、UPSスペクトルで明瞭に確認できるものである。
次に、成膜後大気曝露せずに図23のUPSスペクトルを測定したサンプルA、B、Cの酸化タングステン層12に対し、常温にて大気曝露を1時間行った。そして、再びUPS測定を行い、これによるスペクトルの変化を確認した。その前記領域(y)におけるUPSスペクトルを図25に示す。横軸の取り方は図23と同様であり、図中の点(iii)、(iv)は図23と同一の横軸位置である。
図25に示したUPSスペクトルによれば、サンプルB、Cの酸化タングステン層12では、大気曝露前と同様にフェルミ面近傍の隆起構造は確認できない。これに対し、サンプルAの酸化タングステン層12では、大気曝露後には強度やスペクトル形状に変化はみられるものの、依然としてフェルミ面近傍の隆起構造の存在を確認できる。これにより、サンプルAについては、一定時間大気曝露を行っても、大気曝露前の特性が維持でき、周辺雰囲気に対して一定の安定性を有することがわかる。なお、サンプルAの酸化タングステン層12のフェルミ面近傍の隆起構造は、大気曝露前に比べ不明瞭となっているが、これは大気中に取り出す過程などにおいて、不純物分子が多く吸着したためと考えられる。この状態のサンプルAに対して本発明の紫外光照射を行うと、サンプルAの酸化タングステン層12の表面から吸着物が除去され、かつその後、フェルミ面近傍の隆起構造が良好に維持されることは、既に述べた通りである。実際、大気曝露後のサンプルAに対して本発明の紫外光照射を行ったところ、フェルミ面近傍の隆起構造は大気曝露前と同様に明瞭になり、かつその後も明瞭なまま維持されることを確認した。
以上では、サンプルA、B、Cについて測定したUPSスペクトルに対して議論を行ったが、上記フェルミ面近傍の隆起構造は、XPSや硬X線光電子分光測定で得たスペクトルでも同様に確認することができる。
図26は、サンプルAの酸化タングステン層12の、前記大気曝露後のXPSスペクトルである。なお、比較のため、サンプルAの酸化タングステン層12のUPSスペクトル(図22と同一のもの)を重ね書きした。
XPS測定条件は、光源がAl Kα線であること以外は、前述のUPS測定条件と同様である。ただし測定点の間隔は0.1eVとした。図26において、図中の点(iii)は図22と同一の横軸位置であり、横軸は図23と同様に、点(iii)を基準とした相対結合エネルギーで示している。また、XPSスペクトルにおける図22の(i)に該当する線を、図26中で(i)’で示した。
図26に示すように、サンプルAの酸化タングステン層12におけるフェルミ面近傍の隆起構造は、XPSスペクトルにおいても、UPSスペクトルの場合と同様に、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりもおおよそ1.8〜3.6eV低い範囲内にて、相当の大きさの隆起構造として、存在を明確に確認することができる。なお、別の実験により、硬X線光電子分光のスペクトルでも同様にフェルミ面近傍の隆起構造が確認できた。
なお、上記測定においては、光電子分光測定用のサンプルとして、図13に示す有機EL素子1の構造とは別に、導電性シリコン基板11の上に酸化タングステン層12を形成してなるサンプル1A(図21)を用いた。これは単に、測定中のチャージアップを防ぐための措置であり、本発明の有機EL表示パネル110の構造を当該構成に限定するものではない。
本願発明者が行った別の実験によれば、図13に示す有機EL素子1の構成(基板10の片面にITOからなる陽極、および酸化タングステンからなるホール注入層を、順次積層した構成)を有するサンプルを用い、UPS、XPS測定を行った場合は、成膜条件B、Cの酸化タングステン層の測定中にチャージアップが発生した。
しかしながら、チャージアップをキャンセルする中和銃を併用すれば、ホール注入層の各占有準位の示す結合エネルギーの絶対値(例えば、光電子分光装置自体のフェルミレベルを原点とするときの結合エネルギーの値)は、サンプル1Aの酸化タングステン層12のものとは異なることがあるものの、少なくともバンドギャップから価電子帯で最も低い結合エネルギーに至る範囲においては、サンプル1Aと同様の形状のスペクトルが得られている。
(ホール注入層から機能層へのホール注入効率に関する考察)
酸化タングステンからなるホール注入層において、UPSスペクトル等でフェルミ面近傍の隆起構造として確認できるフェルミ面近傍の占有準位が、ホール注入層から機能層へのホール注入効率に作用する原理は、以下のように考えることができる。
酸化タングステンの薄膜や結晶に見られる、前記フェルミ面近傍の占有準位は、酸素欠陥に類する構造に由来することが、実験および第一原理計算の結果から多数報告されている。
具体的には、酸素原子の欠乏により形成される隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合軌道や、酸素原子に終端されることなく膜表面や膜内に存在するタングステン原子単体の5d軌道に、前記フェルミ面近傍の占有準位が由来するものと推測されている。これらの5d軌道は、半占あるいは非占状態であれば、有機分子と接触したとき、相互のエネルギー安定化のために、有機分子の最高被占軌道から電子を引き抜くことが可能であると推測される。
実際、酸化タングステンと、触媒作用やエレクトロクロミズム、フォトクロミズムなど、多くの共通した物性を持つ酸化モリブデンにおいては、その薄膜上に有機低分子のα−NPDからなる層を積層すると、α−NPD分子から酸化モリブデン薄膜に電子が移動するとの報告がある(非特許文献5参照)。
なお、本願発明者は、酸化タングステンにおいては、隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合軌道よりも結合エネルギーが低い、タングステン原子単体の半占5d軌道あるいはそれに類似した構造が、フェルミ面近傍の占有準位に該当するものと考える。
図27は、本発明のフェルミ面近傍の占有準位を持つ酸化タングステン層と、α−NPD層との界面における、エネルギーダイアグラムである。
図27中では、まず、当該酸化タングステン層(ホール注入層に該当する)における、価電子帯で最も低い結合エネルギー(図中「価電子帯上端」と表記した)と、フェルミ面近傍の占有準位の立ち上がり位置に相当する、フェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギー(図中「in−gap state上端」と表記した)を示している。UPSスペクトルにおいては、価電子帯上端は図22の点(iii)に該当し、in−gap state上端は図23の点(iv)に該当する。
そして、さらに当該酸化タングステン層の上に、α−NPD(機能層に該当する)を積層したときの、α−NPD層の膜厚と、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギー、また真空準位との関係も示している。ここで、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギーとは、UPSスペクトルにおける、当該最高被占軌道によるピークの立ち上がり位置の結合エネルギーであり、言い換えればα−NPDの最高被占軌道で最も低い結合エネルギーである。
具体的には、ITO基板上に成膜した当該酸化タングステン層を、光電子分光装置と当該装置に連結された超高真空蒸着装置との間で基板を往復させながら、UPS測定とα−NPDの超高真空蒸着とを繰り返すことで、図27のエネルギーダイアグラムを得た。UPS測定中にチャージアップは確認されなかったので、図27では、縦軸の結合エネルギーをITO基板のフェルミレベルを原点とした絶対値表記にしている。
図27から、α−NPD層の厚さが少なくとも0〜0.3nmの範囲、つまり当該酸化タングステン層とα−NPD層との界面付近においては、当該酸化タングステン層のin−gap state上端と、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギーはほぼ等しく、言わば互いの準位が接続した状態(前述の界面準位接続の状態)になっていることがわかる。なお、ここで言う「等しい」とは、実際上多少の差を含んでおり、具体的には±0.3eV以内の範囲を指す。
さらに、図27は、前記界面準位接続が、偶然によるものではなく、酸化タングステンとα−NPDとの相互作用により実現しているものであることを示している。
例えば、界面における真空準位の変化(真空準位シフト)は、その変化の向きから、界面に電気二重層が、酸化タングステン層側を負、α−NPD層側を正として形成されていることを示す。また、その真空準位シフトの大きさが2eV近くと非常に大きいため、当該電気二重層は、物理吸着等ではなく、化学結合に類する作用により形成されたと考えるのが妥当である。すなわち、前記界面準位接続は、酸化タングステンとα−NPDとの相互作用により実現していると考えるべきである。
本願発明者は、具体的な相互作用として、以下のメカニズムを推察している。
まず、フェルミ面近傍の占有準位は、上述のとおり、酸素欠陥に類する構造を構成しているタングステン原子の5d軌道に由来するものである。これを、以下「隆起構造のW5d軌道」と称する。
当該酸化タングステン層の表面において、隆起構造のW5d軌道に、α−NPD分子の最高被占軌道が近づくと、相互のエネルギー安定化のために、α−NPD分子の最高被占軌道から、隆起構造のW5d軌道に電子が移動する。これにより、界面に電気二重層が形成され、図27に見られるような真空準位シフト、界面準位接続が起こる。
さらに具体的には、α−NPD等のアミン系有機分子の最高被占軌道は、一般にその電子密度がアミン構造の窒素原子に偏って分布しており、当該窒素原子の非共有電子対を主成分として構成されていることが、第一原理計算による結果として多数報告されている。このことから、特に、当該酸化タングステン層と、アミン系有機分子の層との界面においては、アミン構造の窒素原子の非共有電子対から、隆起構造のW5d軌道に電子が移動すると推察される。
上記の推察を支持するものとしては、前述のように酸化タングステンと共通の物性を持つ酸化モリブデンの蒸着膜と、α−NPD、F8BTとの各界面において、図27で示した酸化タングステン層とα−NPD層の界面準位接続と同様の界面準位接続の報告がある(非特許文献2、6、7参照)。
本発明の有機EL表示パネルのホール注入層が持つ、機能層に対する優れたホール注入効率は、以上の界面準位接続により説明することができる。すなわち、フェルミ面近傍の占有準位を持つ酸化タングステンからなるホール注入層と、隣接した機能層との間で、界面準位接続が起こり、フェルミ面近傍の占有準位の立ち上がり位置の結合エネルギーと、機能層の最高被占軌道の立ち上がり位置の結合エネルギーがほぼ等しくなる。ホール注入は、この接続された準位間で起こる。したがって、本発明のホール注入層と機能層との間のホール注入障壁は、ほぼ無いに等しい。
しかしながら、フェルミ面近傍の占有準位を形成する要因である酸素欠陥に類する構造が全く無い酸化タングステンというものが、現実に存在するとは考えにくい。例えば、前述のサンプルB、C等、光電子分光スペクトルにおけるフェルミ面近傍の隆起構造がない酸化タングステンにおいても、酸素欠陥に類する構造が、極めてわずかにでも存在はしていると考えるのが妥当である。
これに対し、先の実験が示すように、サンプルAの酸化タングステン層12に該当するホール注入層を持つホールオンリー素子HOD−Aおよび有機EL素子BPD−Aが優れた低電圧駆動を示す理由を、図28を用いて説明する。
酸化タングステン層に機能層を積層するとき、機能層を構成する有機分子の最高被占軌道と、酸化タングステン層のフェルミ面近傍の占有準位とが相互作用するには、その界面において、有機分子の最高被占軌道の電子密度が高い部位(例えば、アミン系有機分子におけるアミン構造の窒素原子。図中「注入サイト(y)」で示す)と、酸化タングステン層表面の酸素欠陥に類する構造(図中「注入サイト(x)」で示す)が、相互作用する距離まで接近(接触)する必要がある。
しかし、図28(b)に示すように、前述のサンプルB、C等、フェルミ面近傍の隆起構造が存在しない酸化タングステン層には、注入サイト(x)が存在するとしても、その数密度は、UPSスペクトルにおいてフェルミ面近傍の隆起構造を発現するまでに至らないほど小さい。したがって、注入サイト(y)が注入サイト(x)と接触する可能性が非常に低い。注入サイト(x)と注入サイト(y)が接触するところにおいてホールが注入されるのであるから、サンプルB、Cはその効率が極めて悪いことがわかる。
これに対し、図28(a)に示すように、前述のサンプルA等、フェルミ面近傍の隆起構造を持つ酸化タングステン層には、注入サイト(y)が豊富に存在する。したがって、注入サイト(y)が注入サイト(x)と接触する可能性が高く、ホール注入層から機能層へのホール注入効率が高いことがわかる。
ここまでの一連の考察をより確実にするために、さらに、フェルミ面近傍の隆起構造が全く確認できない、成膜条件Cの酸化タングステン層に対しても、図27と同様に、α−NPD層との界面におけるエネルギーダイアグラムを測定した。
図29にその結果を示す。ここで、上記のように、当該酸化タングステン層では、フェルミ面近傍の隆起構造に該当するin−gap state上端が全く確認できなかった。そこで、ホール注入に使われる準位の別の候補として、UPSスペクトルにおいてフェルミ面近傍の隆起構造の位置よりも高結合エネルギー側に見られる、当該隆起構造とは別の構造(図22の(z))の立ち上がり位置(「第2in−gap state上端」と表記した)と、価電子帯上端とを、図29中に示した。
しかしながら、図29のα−NPDの最高被占軌道は図27とは全く異なり、第2in−gap state上端にも、価電子帯上端にも、全く近づいておらず、つまり全く界面準位接続が起こっていない。これは、第2in−gap stateも、価電子帯も、α−NPDの最高被占軌道とはほとんど相互作用していないことを意味する。そして、仮に第2in−gap state上端からα−NPDの最高被占軌道にホールが注入されるとしても、その注入障壁は0.75eVと、ほぼ0であった図27の場合に比べ極めて大きい。
この注入障壁の差は、前述の各成膜条件のホールオンリー素子1B、有機EL素子1の駆動電圧や発光効率に大きく影響していると考えられる。すなわち、成膜条件A、B、Cの各ホールオンリー素子1B、有機EL素子1の特性の違いは、本発明の有機EL表示パネル110が、ホール注入層から機能層への優れたホール注入効率を持つことを強く示唆するものと考えられるのである。
以上をまとめると、本発明の有機EL表示パネル110が優れたホール注入効率を持つことは、次のように説明できる。
まず、酸化タングステンからなるホール注入層が、その光電子分光スペクトルにおいて、フェルミ面近傍の隆起構造を持つ。これは、酸素欠陥に類する構造、そしてそれに由来するフェルミ面近傍の占有準位が、当該ホール注入層の表面に少なからず存在することを意味する。
そして、フェルミ面近傍の占有準位自体は、隣接する機能層を構成する有機分子から電子を奪うことで、有機分子の最高被占軌道と界面準位接続する作用を持つ。
したがって、ホール注入層の表面に、少なからず酸素欠陥に類する構造が存在すれば、フェルミ面近傍の占有準位と、有機分子の最高被占軌道の電子密度が高い部位とが接触する確率が高く、界面準位接続の作用が効率的に起こり、ホール注入層から機能層への優れたホール注入効率が発現することになる。
(陽極からホール注入層へのホール注入効率に関する考察)
次に、陽極と、本発明の酸化タングステンからなるホール注入層との間に形成される、ショットキーオーミック接続、およびその安定性(陽極の材料や表面状態に対する依存性)について説明する。
1.陽極とホール注入層との間のホール注入障壁について
まず、陽極と機能層を直接積層した従来構成の有機EL素子における、陽極と機能層との界面付近におけるエネルギーダイアグラムを、図30〜33にそれぞれ示す。なお、ここでは機能層としてα−NPDを用いた。また、図中の縦軸の結合エネルギーは、陽極のフェルミレベルを原点とした絶対値表記にしている。
図30,31のように、陽極をIZOで構成する場合、当該陽極の表面に対し、純水洗浄のみを行ったもの(図30)、また純水洗浄後さらにドライエッチング処理を行ったもの(図31)とで、陽極のフェルミレベルと機能層の最高被占軌道との間のホール注入障壁は、いずれも1eV超という相当な大きさであり、しかもその大きさが、IZO表面に対する処理の違いで大きく変動していることが分かる。
また、図32,33のように、陽極をITOで構成する場合においても、当該陽極の表面に対し、IPA(イソプロパノール)洗浄のみを行ったもの(図32)、またIPA洗浄後さらに酸素プラズマで処理したもの(図33)とも、やはり相当な高さのホール注入障壁が存在することが分かる。
これらの図30〜33に示すように、従来の有機EL素子では、陽極材料の種類や陽極の表面状態によって、陽極と機能層との間ホール注入障壁が相当に変動するほか、障壁自体も大きく、駆動電圧の面において改善の余地があったことを確認できる。
一方、陽極と、本発明の酸化タングステンからなるホール注入層を積層した場合の、陽極と本発明のホール注入層との界面付近におけるエネルギーダイアグラムを、図34〜38にそれぞれ示す。
図34,35は、陽極をIZOで構成する場合である。図30,31と同様に、当該陽極の表面に対し、純水洗浄のみを行ったもの(図34)、また純水洗浄後さらにドライエッチング処理を行ったもの(図35)をそれぞれ作製し、その上に本発明のホール注入層を積層している。
図36、37は、陽極をITOで構成する場合である。図32,33と同様に、当該陽極の表面に対し、IPA洗浄のみを行ったもの(図36)、またIPA洗浄後さらに酸素プラズマで処理したもの(図37)をそれぞれ作製し、その上に本発明のホール注入層を積層している。
さらに、図38は、陽極をAlで構成する場合である。当該陽極を成膜した後、その表面が自然酸化されないように、大気曝露することなく本発明のホール注入層を積層している。
これらの図34〜38に示される結果から、次のことがわかる。
まず、図34〜38のすべてにおいて、ホール注入層の膜厚がおよそ2nm未満においては、フェルミ面近傍の占有準位の立ち上がり位置であるin−gap state上端の結合エネルギーは比較的急峻に変化しているが、膜厚2nm以上においては、ほぼ一定である。そして、その一定となった結合エネルギーの値は、陽極のフェルミレベルに非常に近く、差は±0.3eV以内に収まっている。これは、言い換えれば、図34〜38のすべてにおいて、陽極と本発明のホール注入層の間では、ショットキーバリアの幅が2nm程度の良好なショットキーオーミック接続が実現されている、ということを意味する。
さらに、図34、35のIZO陽極、また図36、37のITO陽極においては、ホール注入層の膜厚が2nm以上における陽極のフェルミレベルとin−gap state上端との結合エネルギー差は、陽極の表面状態に依存せず、ほぼ同じ値(高々0.02eVのずれ)となっている。
したがって、次のことが言える。まず、陽極の材料がIZO、ITO、Alのいずれでも、陽極と本発明のホール注入層は、ホール注入層の膜厚が2nm以上であれば、ショットキーオーミック接続する。さらに、陽極の表面状態が少なくとも上記したいずれの処理を経た場合のものでも、この接続は依然良好に保たれるばかりでなく、その接続の程度(上記の結合エネルギー差)も、陽極の表面状態の違いに依存することなく、極めて安定した一定の状況を維持しているのである。
これらの結果から、本発明の酸化タングステンからなるホール注入層を用いれば、陽極の仕事関数や表面状態を一定にするための諸作業、つまり陽極材料を厳密に選択したり、ホール注入層形成直前の陽極の表面状態を高度に一定に維持したりするなどの特別な配慮を行わなくても、陽極からホール注入層への良好なホール注入効率を期待できる。
以上をまとめると、本発明における酸化タングステンからなるホール注入層は、フェルミ面近傍に占有準位を有することで、当該準位の作用により、陽極の仕事関数や表面状態にほとんど影響を受けずに陽極とショットキーオーミック接続を実現し、具体的には、陽極の表面からホール注入層側への距離が2nmの位置において、陽極のフェルミレベルと当該占有準位の結合エネルギー差が±0.3eV以内に収まっている。その結果、陽極とホール注入層との間のホール注入障壁を相当に緩和することができる。
ここで、本発明のホール注入層は、前述のように当該占有準位の作用により、機能層との間のホール注入障壁も極めて小さい。したがって、陽極からホール注入層へ、またホール注入層から機能層へと、ほとんど障壁を受けることなくホールを注入することができる。このように、ホール注入層と機能層との間のホール注入障壁のみならず、陽極とホール注入層との間のホール注入障壁をも緩和することで、一層、良好な素子の低電圧駆動を実現できる。さらに、ホール注入効率の向上を図れば、駆動時に素子にかかる負荷が軽減されるため、素子の駆動寿命を延ばすことも期待できる。
2.ショットキーオーミック接続の安定性の確認
上記のように、本発明の酸化タングステンからなるホール注入層は、膜厚が2nm以上であれば、陽極との間に安定したショットキーオーミック接続を形成できる。このことを素子の特性によっても確認した。
まず、前述のホールオンリー素子1Bを用いて、本発明のホール注入層における、陽極からホール注入層へのホール注入効率の膜厚依存性を評価した。
ここでのホールオンリー素子1Bのホール注入層は、前述の成膜条件Aで成膜し、膜厚は5〜30nmの範囲とした。また、比較のために、ホール注入層を省略した、すなわち陽極とバッファ層を直接積層した素子も作製した(以降「膜厚0nm」と称す)。他の各層の構成は「(紫外光照射による素子特性の向上について)」にて述べたものと同じである。
当該ホールオンリー素子1Bは、膜厚0nmの素子を除き、ホール注入層がいずれも成膜条件Aで成膜されているため、ホール注入層からバッファ層へのホール注入効率は全て同等と考えられる。さらに、ホール注入層の膜厚以外の構成も同一である。したがって、当該ホールオンリー素子1Bの特性には、ホール注入層の膜厚、および陽極とホール注入層との間のショットキーオーミック接続の形成の程度が主に影響するはずである。
ここで、まず、ホール注入層の電気抵抗の影響が考えられる。ホール注入層の膜厚が大きいほどホール注入層の抵抗は増加する。しかしながら、成膜条件Aのホール注入層の抵抗率は、バッファ層や発光層6Bの100分の1以下であることが、別の実験により確認された。したがって、当該ホールオンリー素子1Bの特性には、ホール注入層の膜厚の違いによる抵抗の違いはほとんど寄与しない。
したがって、当該ホールオンリー素子1Bは、膜厚0nmの素子を除き、陽極とホール注入層との間に一定のショットキーオーミック接続を形成できていれば、全て同等の特性になるはずである。
作製したホール注入層の膜厚が0nm、5nm、30nmの各ホールオンリー素子1Bを直流電源に接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。以降、「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cmのときの印加電圧とする。
各ホールオンリー素子1Bの駆動電圧を表9に示す。
Figure 2012114403
膜厚0nmの素子の駆動電圧は相当に高くなっている。これは、本発明のホール注入層を持たないために、陽極とバッファ層との間に大きなホール注入障壁が生じているためと考えられる。一方、膜厚5nm、30nmの各素子1Bでは、駆動電圧が低く抑えられており、その値も膜厚に依存せず、ほぼ同じであることがわかる。これより、ホール注入層の膜厚が少なくとも5nm以上であるとき、陽極と本発明のホール注入層の間には、ほぼ一定のショットキーオーミック接続が形成され、陽極からホール注入層への良好なホール注入効率が実現していると考えられる。
次に、有機EL素子1においても、本発明のホール注入層における、陽極からホール注入層へのホール注入効率の膜厚依存性を評価した。ホール注入層の膜厚は2〜30nmの範囲とした。
当該有機EL素子1も、ホール注入層の膜厚以外の構成は全て同一であるから、陽極とホール注入層との間に一定のショットキーオーミック接続を形成できていれば、全て同等の特性になるはずである。
作製したホール注入層の膜厚が2nm、5nm、15nm、20nm、30nmの各有機EL素子1を直流電源に接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子1の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。以降、「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cmのときの印加電圧とする。
各有機EL素子1の駆動電圧を表10に示す。
Figure 2012114403
駆動電圧はいずれも低く、良好である。素子の作製上必然的に生じる各層の膜厚のばらつきなどを考慮すれば、これらの駆動電圧は、膜厚に依存せず、十分に同等と見なせる。これより、ホールオンリー素子1Bの場合と同様に、当該有機EL素子1においても、ホール注入層の膜厚が2nm以上であるとき、陽極と本発明のホール注入層の間に、ほぼ一定のショットキーオーミック接続が形成されていると考えられる。
続いて、有機EL素子1を用いて、本発明のホール注入層の膜厚と、素子の駆動寿命との関係についても評価を行った
当該有機EL素子1は、表10で用いたものと同じ構成であり、ホール注入層の膜厚は2〜30nmの範囲とし、また、比較のために、ホール注入層を省略した膜厚0nmの素子1も作製した。
各素子1ともホール注入層の膜厚以外の構成は同一であり、したがって、陽極とホール注入層との間に一定のショットキーオーミック接続を形成できていれば、同程度の寿命が期待できる。
作製したホール注入層の膜厚が0nm、2nm、5nm、30nmの各素子1を直流電源に接続し、電流密度10mA/cmの定電流で駆動し、発光輝度の駆動時間による変化を測定した。
各素子1において、輝度が駆動開始時の60%に低下するまでの輝度低下時間を表11に示す。
Figure 2012114403
これより、まず、膜厚0nmの素子1は輝度の低下が速く、つまり寿命が短いことがわかる。これは、本発明のホール注入層を持たないために、陽極とバッファ層との間に大きなホール注入障壁が生じ、定電流を流すためには駆動電圧を高くする必要があり、素子1への負荷が高くなることが大きく影響していると考えられる。
一方、膜厚2nm、5nm、30nmの各素子1は、膜厚0nmの素子1に比べ輝度低下が遅く、つまり寿命が長い。これは、本発明のホール注入層により、ホール注入障壁が効果的に緩和され、駆動電圧が低くて済み、素子1への負担が軽減されたためであると考えられる。
そして、膜厚2nm、5nm、30nmの各素子1は、いずれも良好で同程度の輝度低下を示している。したがって、やはりホール注入層の膜厚が2nm以上であれば、陽極と本発明のホール注入層の間に、ほぼ一定のショットキーオーミック接続が形成され、このためホール注入層の膜厚が2nm以上の素子1は駆動電圧が同程度となり、同程度の寿命を示すと考えられる。
以上の実験により、本発明の酸化タングステンからなるホール注入層は、膜厚が2nm以上であれば、陽極との間に安定したショットキーオーミック接続を形成できることが、素子特性によっても確認された。
なお、表5および図17〜20で用いた素子1においては、ホール注入層の成膜条件に関わらず、陽極とホール注入層の間は、本発明のショットキーオーミック接続がなされている。これは、ITO陽極の表面処理により形成したものである。詳細を以下に述べる。
図27で用いた方法と同様に、当該ITO陽極上への各成膜条件のホール注入層の成膜とUPS測定とを繰り返したところ、ホール注入層の膜厚がおよそ2nm以内では、成膜条件に関わらずフェルミ面近傍の隆起構造が確認され、陽極とショットキーオーミック接続を形成していた。しかし、膜厚が大きくなると、図23に示したように、成膜条件によってフェルミ面近傍の隆起構造の有無が異なるものとなった。
これは、ホール注入層の成膜前に、当該ITO陽極の表面に対してアルゴンイオンスパッタ処理を行い、当該ITO陽極の洗浄をするとともに、その表面に酸素欠陥を形成したことによると考えられる。
すなわち、当該ITO陽極の表面に酸素欠陥を形成することにより、ホール注入層の成膜開始直後においては、酸化タングステンの酸素原子が当該ITO側に奪われやすくなり、このため界面近傍のみにおいては、ホール注入層に酸素欠陥に類する構造が多くなる。このため、陽極とホール注入層の間に、本発明のショットキーオーミック接続が形成される。
ホール注入層の成膜開始後、膜厚が数nm以上になれば、以降は各成膜条件で決まる膜質で一様に成膜されるため、ホール注入層の膜厚が30nmである表5および図17〜20の特性は、成膜条件に依存するものになる。
(補助配線、電子注入層とホール注入層の間のショットキーオーミック接続に関する考察)
上記では、有機EL素子における陽極とホール注入層に関して考察するという観点から、キャリアとしてはホールと表現し、また電流は陽極からホール注入層への方向のみを議論した。しかしながら、陽極等の電極と本発明のホール注入層の間のショットキーオーミック接続は、電流の方向を電極からホール注入層のみに限定するものではない。
前述のように、フェルミ面近傍の占有準位は、酸素欠陥に類する構造における、酸素原子と結合していないタングステン原子の5d軌道が持つ電子によるものであり、これは価電子帯の電子や、有機分子の持つ電子とは異なり、比較的自由に動けるキャリアである。言わば、フェルミ面近傍の占有準位は、電子の出し入れが容易なn型半導体のドナー準位、あるいは金属的な準位である。したがって、電極との電子の授受(ホールの授受とも言い換えられる)は双方向に容易であり、容易であるからこそショットキーオーミック接続を実現しているのである。実際、本発明者らは、別の実験により、ITO、IZO、Al、Baと本発明のホール注入層の2層構造において、双方向にオーミックに電流が流れることを確認した。
電極と本発明のホール注入層の間の、上記のようなショットキーオーミック接続は、当然ながら補助配線とホール注入層の間、またホール注入層と電子注入層の間においても形成されており、これらの層の間ではキャリアの授受が容易である。このため、補助配線と電子注入層の間に位置している本発明のホール注入層が、ホール注入層から電子注入層への電子の注入を妨げたり、補助配線からホール注入層への電子の注入を妨げたりすることはない。この点において、本発明のホール注入層は、例えば補助配線からの電子の注入が困難な銅フタロシアニンやPEDOT等のホール注入層とは、大きく異なるものである。
ここで、補助配線と電子注入層が直接接続する場合に比べれば、本発明のホール注入層が補助配線と電子注入層の間に介在することで、接続部の抵抗自体は大きくなる。しかしながら、本発明のホール注入層は、有機物からなる一般の機能層に比べ充分に抵抗率が低く、また膜厚も通常の有機EL素子の構成においては高々数十nm以内であるから、画素部、配線部を含めた有機EL表示パネル全体の抵抗に対する本発明のホール注入層の抵抗の寄与は極めて小さい。したがって、本発明のホール注入層が接続部に介在していても、実質的な配線部の高抵抗化を引き起こすことはなく、本発明のホール注入層を用いた有機EL表示パネルにおいては、補助配線上にホール注入層を形成しないようにする工程は必要がない。
さらに、本発明のホール注入層は、本発明の紫外光照射によりその表面の吸着物が充分に除去されているため、接続部においても、高抵抗化の要因となる吸着物がホール注入層と電子注入層との間に埋設されることが抑制され、安定した良好な低抵抗を実現できる。
なお、本実施の形態では、接続部においては本発明のホール注入層に電子注入層が積層されているが、接続部の電子注入層は必ずしも必要ではなく、省略することができる。この場合は、ホール注入層と共通電極が直接ショットキーオーミック接続するから、やはり配線部の高抵抗化を引き起こすことはない。
また、発光層を形成した後、主に有機材料や無機材料からなる電子輸送層を、発光部と接続部に連続して形成しても良い。この場合、接続部においては本発明のホール注入層と当該電子輸送層が隣接することになる。ここで、前述の通り、本発明のホール注入層は、そのフェルミ面近傍の占有準位により、n型半導体や金属としての性質を持つ。したがって、当該電子輸送層との界面において、いわゆるpn接合を起こすことがなく、エネルギー障壁の小さい界面を形成でき、本発明のホール注入層から当該電子輸送層への電子の注入は比較的容易である。本発明のホール注入層は、この点においても、当該電子輸送層との電子の授受が困難な銅フタロシアニンやPEDOT等のホール注入層とは、大きく異なるものである。
なお、実施の形態1の有機EL表示パネル110では、基板10の上方に設けられた陽極(第1電極)20と補助配線30がホール注入層40を介して並設されているが、陽極20と補助配線30の間は数十μmの隔たりがあるため、同じホール注入層40を介して極性の異なる陽極20と補助配線30とが短絡を起こす問題はない。
[実施の形態2]
<有機EL表示パネルの全体構成>
図39(a)は、本実施の形態に係る有機EL表示パネル110Cの構成を示す模式的な断面図である。図39(b)はホール注入層40C付近の部分拡大図である。
有機EL表示パネル110Cは、例えば、機能層をウェットプロセスにより塗布して成膜する塗布型であって、ホール注入層40Cと、所定の機能を有する有機材料を含んでなる各種機能層が互いに積層された状態で、陽極20Cおよび陰極90Cからなる電極対の間に介設された構成を有する。
具体的には、有機EL表示パネル110Cは、基板10Cの片側主面に対し、陽極20C、ITO層25C、ホール注入層40C、バッファ層60C、発光層70C、電子注入層85C、陰極90C、封止層95Cを同順に積層して構成される。また、基板10Cの前記片側主面には、陽極20Cと離間した位置に補助配線30Cが形成されており、補助配線30C上にも、ITO層25C、ホール注入層40C、陰極90C、封止層95Cが積層されている。以下、有機EL表示パネル110との違いを中心に説明する。
(陽極・補助配線)
陽極20Cは、画素単位ごと複数マトリックス状に配置されており、補助配線30Cは、画素列ごとに各陽極20Cに沿って配置して設けられている。
(ITO層)
ITO(酸化インジウムスズ)層25Cは、陽極20Cとホール注入層40Cの間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。有機EL表示パネル110Cでは、ITO層25Cを陽極20Cと分けているが、ITO層25Cを陽極20Cの一部とみなすこともできる。
また、ITO層25Cは、補助配線30Cとホール注入層40Cの間にも介在する。有機EL表示パネル110Cでは、ITO層25Cを補助配線30Cと分けているが、ITO層25Cを補助配線30Cの一部とみなすこともできる。
(ホール注入層)
ホール注入層40Cは、実施の形態1のホール注入層40と同様に、所定の成膜条件で成膜された、少なくとも2nm以上の膜厚(ここでは一例として30nm)の酸化タングステン層で構成されている。これにより、画素部(図39(a)の省略波線の左側)においては、ホール注入層40Cとバッファ層60Cは界面準位接続しており、ITO層25Cとホール注入層40Cはショットキーオーミック接続している。また、配線部(図39(a)の省略波線の右側)においては、ITO層25Cとホール注入層40C、ホール注入層40Cと陰極90Cがショットキーオーミック接続している。これらのショットキーオーミック接続を具体的に言えば、ITO層25Cおよび陰極90Cのフェルミレベルと、それらの表面からホール注入層40C側への距離が2nmの位置におけるフェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーとの差が、±0.3eV以内に収まっている。これにより有機EL表示パネル110Cでは、画素部においては従来構成に比べてITO層25Cとホール注入層40Cの間、ホール注入層40Cとバッファ層60Cの間のホール注入障壁が緩和され、配線部においてはITO層25Cとホール注入層40Cの間、ホール注入層40Cと陰極90Cの間のキャリアの授受が容易であり、良好な低電圧駆動が可能となっている。
ホール注入層40Cを構成する酸化タングステンは、その組成式WOxにおいて、xが概ね2<x<3の範囲における実数である。ホール注入層40Cは可能な限り高純度の酸化タングステンで構成することが望ましいが、通常レベルで混入し得る程度の微量の不純物が含まれていてもよい。
なお、ホール注入層40Cの所定の成膜条件についての詳細は後述する。
ここで実施の形態2では、ホール注入層40Cを構成する酸化タングステン層が上記所定の成膜条件で成膜されていることにより、図39(b)に示すように、酸化タングステンの結晶13Cを多数含んでいる。各々の結晶13Cの粒径はナノメートルオーダーである。例示するとホール注入層40Cが厚さ30nm程度であるのに対し、結晶13Cの粒径は3〜10nm程度である。以下、粒径がナノメートルオーダーの大きさの結晶13Cを「ナノクリスタル13C」と称し、ナノクリスタル13Cからなる層の構造を「ナノクリスタル構造」と称する。なお、ホール注入層40Cには、ナノクリスタル構造以外に、アモルファス構造が含まれていてもよい。
上記のようなナノクリスタル構造を有するホール注入層40Cでは、酸化タングステンを構成するタングステン原子は、自らが取り得る最大価数の状態および当該最大価数よりも低い価数の状態を有するように分布している。一般に、酸化タングステン層には酸素欠陥に類する構造が存在することがある。酸素欠陥に類する構造に含まれていないタングステン原子の価数は6価であり、一方、酸素欠陥に類する構造に含まれているタングステン原子の価数は6価よりも低い状態である。また、一般に、酸素欠陥に類する構造は結晶の表面に多く存在する。
したがって、有機EL表示パネル110Cでは、上記した画素部や配線部におけるホール注入障壁の緩和やキャリア授受の容易化に加え、ホール注入層40C中に5価のタングステン原子を分布させ、酸素欠陥に類する構造を形成させることによって、さらなるホールや電子の伝導効率の向上が望まれる。すなわち、酸化タングステンからなるホール注入層40Cにナノクリスタル構造を持たせることで、画素部においては、ITO層25Cからホール注入層40Cに注入されたホールは、ナノクリスタル13Cの結晶粒界に存在する酸素欠陥を伝導するので、ホールが伝導する経路を増やすことができ、ホール伝導効率の向上につながる。また、配線部においては、ITO層25Cからホール注入層40Cに注入された電子は、この結晶粒界の酸素欠陥を容易に伝導できるため、配線部のホール注入層が配線全体の抵抗に及ぼす影響はほとんどない。これにより有機EL表示パネル110Cでは、駆動電圧の低減を効率よく図れる。
また、ホール注入層40Cは化学的耐性が高い、すなわち、不要な化学反応を起こしにくい酸化タングステンで構成されている。したがって、ホール注入層40Cが、同層の形成後に行われる工程等において用いられる溶液等と触れた場合であっても、変質、分解等によるホール注入層40Cの損傷を抑制することができる。このように、ホール注入層40Cが、化学的耐性が高い材料で構成されていることにより、ホール注入層40Cのホールや電子の伝導効率の低下を防ぐことができる。
本実施の形態における酸化タングステンからなるホール注入層40Cは、ナノクリスタル構造のみから構成されている場合と、ナノクリスタル構造とアモルファス構造の両方から構成されている場合の双方を含むものとする。また、ナノクリスタル構造は、ホール注入層40Cの全体に存在することが望ましいが、画素部においては、ITO層25Cとホール注入層40Cが接する界面から、ホール注入層40Cとバッファ層60Cが接する界面との間に、一箇所でも粒界が繋がっていれば、ホール注入層40Cの下端から上端へホールを効率よく伝導させることができ、配線部においては、ITO層25Cとホール注入層40Cが接する界面から、ホール注入層40Cと陰極90Cが接する界面との間に、一箇所でも粒界が繋がっていれば、ホール注入層40Cの下端から上端へ電子を効率よく伝導させることができる。
なお、酸化タングステン結晶を含む層をホール注入層として用いる例自体は、過去にも報告されている。例えば、非特許文献1からは、酸化タングステン層を450℃のアニーリングで結晶化することにより、ホール伝導効率が向上することが示唆される。しかしながら、非特許文献1には、大面積の酸化タングステン層の成膜条件や、基板上にホール注入層として成膜された酸化タングステンが基板上の他層に与える影響等に関して記載がなく、大型有機EL表示パネルの実用的な量産性が示されていない。さらに、ホール注入層に積極的に酸素欠陥に類する構造を有する酸化タングステンのナノクリスタルを形成することも示されていない。本発明の一態様に係るホール注入層は、化学反応を起こしにくく、安定であり、大型有機EL表示パネルの量産プロセスにも耐える酸化タングステン層で構成されている。さらに、酸化タングステン層に積極的に酸素欠陥に類する構造を存在させることにより、優れたホールおよび電子の伝導効率を実現している点で、従来技術と大きく異なるものである。
(電子注入層・陰極・封止層)
電子注入層85Cは、電子を陰極90Cから発光層70Cへ注入する機能を有し、例えば、膜厚5nm程度のバリウム、厚さ1nm程度のフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、あるいはこれらを組み合わせた層で形成されることが好ましい。
陰極90Cは、例えば、膜厚100nm程度のITO層から構成される。
陽極20Cおよび補助配線30Cには直流電源が接続され、外部より有機EL表示パネル110Cに給電されるようになっている。
封止層95Cは、有機EL表示パネル110Cが水分や空気に晒されることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料で形成される。トップエミッション型の有機EL素子の場合は、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
<有機EL表示パネルの製造方法>
次に、図40〜42を用いて、有機EL表示パネル110Cの全体的な製造方法を例示する。
まず、基板10C上に例えばスパッタ法により銀からなる薄膜を形成し、当該薄膜を例えばフォトリソグラフィでパターニングすることにより、マトリックス状に陽極20Cおよび補助配線30Cを形成する(図40(a))。なお、当該薄膜は真空蒸着法等で形成しても良い。
引き続き、例えばスパッタ法によりITO薄膜を形成し、当該ITO薄膜を例えばフォトリソグラフィによりパターニングすることにより、陽極20Cおよび補助配線30C上にITO層25Cを形成する。続いて、後述する所定の成膜条件で、酸化タングステンを含む薄膜40Xを形成する(図40(b))。
次に、薄膜40X上に有機材料からなるバンク材料を用いてバンク材料層50Xを形成し、バンク材料層50Xの一部を除去して薄膜40Xの一部を露出させる(図40(c))。バンク材料層50Xの形成は、例えば塗布等により行うことができる。バンク材料層50Xの除去は、所定の現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)溶液等)を用いてパターニングをすることにより行うことができる。
このとき、薄膜40Xを構成する酸化タングステンは、化学耐性は良好ではあるものの、TMAH溶液には少し溶ける性質をもつので、前記現像液により薄膜40Xの表面に付着するバンク残渣を洗浄すると、薄膜40Xの露出部分が浸食され、凹入構造が形成される(図41(a))。この結果、陽極20Cに対応した凹部40a、および補助配線30Cに対応した凹部40bを具備するホール注入層40Cが形成される。
次に、バンク材料層50Xの表面に例えばフッ素プラズマ等による撥液処理を施して、バンク50Cを形成する。続いて、陽極20Cに対応するようバンク50Cで規定された領域内に、例えばインクジェット法により有機材料を含む組成物インクを滴下し、そのインクを乾燥させてバッファ層60C、発光層70Cを形成する(図41(b))。補助配線30Cに対応しバンク50Cで規定された領域内には、バッファ層60C、発光層70Cを形成しない。なお、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等によりインクを滴下しても良い。
次に、例えば真空蒸着法により、電子注入層85Cとなるバリウム薄膜を発光層70C上に形成する(図42(a))。
次に、例えばスパッタ法により、陰極90CとなるITO薄膜を全面に亘って形成する(図42(b))。
次に、陰極90Cの上に対して、封止層95Cを形成する(図42(c))。
以上で有機EL表示パネル110Cが完成する。
次に、ホール注入層40C(薄膜40X)の成膜条件について述べる。ホール注入層40C(薄膜40X)は、反応性スパッタ法で成膜することが好適である。具体的には、金属タングステンをターゲットとし、アルゴンガスをスパッタガスとし、酸素ガスを反応性ガスとしてチャンバー内に導入する。この状態で高電圧によりアルゴンをイオン化し、ターゲットに衝突させる。このとき、スパッタリング現象により放出された金属タングステンが酸素ガスと反応して酸化タングステンとなり、ITO層25C上に酸化タングステン層が成膜される。
この成膜条件の詳細について述べると、(1)チャンバー内のガスの全圧が2.3Pa以上7.0Pa以下であり、かつ、(2)全圧に対する酸素ガス分圧の割合が50%以上70%以下であり、かつ、(3)ターゲットの単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)が1.5W/cm以上6.0W/cm以下であり、かつ、(4)全圧を投入電力密度で割った値である全圧/電力密度が0.7Pa・cm/Wより大きくなるように設定することが好適である。このような成膜条件により、ナノクリスタル構造を有する酸化タングステンからなるホール注入層40Cが形成される。
(陽極および補助配線形成工程からバンク形成工程までの別の工程例)
次に図43、44を用いて、陽極および補助配線形成工程からバンク形成工程までのプロセスの別例を説明する。なお、当該プロセスでは、基板10Cの表面に平坦化膜17Cを形成する構成を例示している。
まず、基板10C上にポリイミドやアクリル等の絶縁性樹脂材料を用いて平坦化膜17Cを形成する。当該平坦化膜17Cの上に、蒸着法に基づき、Al合金薄膜20X、IZO薄膜25X、薄膜(酸化タングステン膜)40Xの3層を順次形成する(図43(a))。Al合金材料としては、例えばACL(アルミコバルトランタン合金)材料を利用できる。
次に、陽極20C、IZO層25D、ホール注入層40Dの3層、および、補助配線30C、IZO層25D、ホール注入層40Dの3層を形成させたい領域に、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンRを形成する(図43(b))。
続いて、レジストパターンRに覆われていない薄膜40Xの領域をドライエッチング(D/E)処理し、パターニングする(図43(c))。このドライエッチング処理では、薄膜40Xのみを選択的にエッチングするため、F系ガスとNガスの混合ガス、もしくはF系ガスとOガスの混合ガスのいずれかを用いる。具体的なドライエッチング処理の設定条件は一例として以下の通りに定めることができる。
[ドライエッチング条件]
処理対象;酸化タングステン膜
エッチングガス;フッ素系ガス(SF、CFCHF
混合ガス;O、N
混合ガス比;CF:O=160:40
供給パワー;Source 500W、Bias 400W
圧力;10〜50mTorr
エッチング温度;室温
上記ドライエッチング処理を実施後、ホール注入層40Dが形成される。その後はOガスでアッシング処理を行うことで、次のウェットエッチング(W/E)処理におけるレジストパターンRの剥離を容易にしておく。
次に、ウェットエッチング処理により、レジストパターンRに覆われていないIZO薄膜25X、Al合金薄膜20Xの領域をパターニングする(図43(d))。エッチャントとして、硝酸、リン酸、酢酸、水の混合液を用い、IZO薄膜25X、Al合金薄膜20Xの2層を一括してウェットエッチングする。
具体的なウェットエッチング処理の設定条件は一例として以下の通りに定めることができる。
[ウェットエッチング条件]
処理対象;IZO薄膜及びAl合金薄膜
エッチャント;リン酸、硝酸、酢酸の混合水溶液
溶剤の混合比率;任意(一般的な条件で混合可能)
エッチング温度;室温よりも低くする。
なお、当該ウェットエッチング処理を良好に行うため、上層のIZO薄膜25Xの膜厚としては20nm以下が好ましい。膜厚が20nmを超えると、サイドエッチング量が多くなるからである。
また、IZO薄膜を用いてIZO層を形成する代わりに、ITO薄膜を用いてITO層を形成することも勿論可能である。
以上のプロセスを経ると、陽極20CとIZO層25Dの2層、および、補助配線30CとIZO層25Dの2層が形成される。その後、レジスト剥離工程を実施してレジストパターンRを除去することで、パターニングされた陽極20C、IZO層25D、ホール注入層40Dの3層構造、および、補助配線30C、IZO層25D、ホール注入層40Dの3層構造を得ることができる(図44(a))。このプロセスでは、ホール注入層40Dは、陽極20CとIZO層25Dの2層、および、補助配線30CとIZO層25Dの2層に対応する位置に合わせて形成される。
次に、露出している平坦化膜17Cの表面にバンク材料層50X(不図示)を形成し、これをパターニングすることで、バンク50Cが形成される(図44(b))。
なお、その後は上記した方法で所定のインクを調整し、これをバンク50Cに規定された領域に順次滴下・乾燥することで、バッファ層60C、発光層70Cをそれぞれ形成することができる(図44(c))。
<その他>
以上、本発明の一態様に係る有機EL表示パネル、および、有機EL表示装置を具体的に説明してきたが、上記実施の形態は、本発明の構成および作用・効果を分かり易く説明するために用いた例であって、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、理解を容易にするために挙げた各部のサイズや材料などは、あくまでも典型的な一例に過ぎず、本発明がそれらサイズや材料などに限定されるものではない。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、いわゆるトップエミッション型の構成でもよく、いわゆるボトムエミッション型の構成でもよい。
トップエミッション型では図1に示す態様以外に、画素電極および補助配線を金属膜のみとした構成を採ることもできる。この場合、発光部の構成は、例えば基板側から画素電極(金属膜)/ホール注入層/バッファ層/発光層/電子注入層/共通電極(透明導電膜)となり、接続部の構成は、例えば基板側から補助配線(金属膜)/ホール注入層/電子注入層/共通電極(透明導電膜)となる。
また、ボトムエミッション型では、例えば画素電極および補助配線を透明導電膜で、共通電極を金属膜で構成し、発光部の構成は、例えば基板側から画素電極(透明導電膜)/ホール注入層/バッファ層/発光層/電子注入層/共通電極(金属膜)となり、接続部の構成は、例えば基板側から補助配線(透明導電膜)/ホール注入層/電子注入層/共通電極(金属膜)となる。
さらに、本発明は両面発光方式の態様も可能であり、この場合の発光部の構成は、例えば基板側から画素電極(透明導電膜)/ホール注入層/バッファ層/発光層/電子注入層/共通電極(透明導電膜)となり、接続部の構成は、例えば基板側から補助配線(透明導電膜)/ホール注入層/電子注入層/共通電極(透明導電膜)となる。このとき、さらに補助配線として、部分的に金属膜を設ける構成としてもよい。
以上の態様において、共通電極下の電子注入層は、金属層に限定されず、主に有機材料や無機材料からなる電子注入層、電子輸送層、あるいはその両方から構成されたものでも良い。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法で製造される有機EL素子は、携帯電話用のディスプレイやテレビなどの表示素子、各種光源などに利用可能である。いずれの用途においても、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で低電圧駆動される有機EL素子として適用できる。このような高性能により、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ、照明光源等として、幅広い利用が可能である。
10,10C 基板
20,20C 第1電極
30,30C 補助配線(配線)
40,40C ホール注入層(酸化タングステン層)
45 開口部
50,50C 隔壁
70,70C 発光層(有機層)
80 金属層(電子注入層)
90,90C 第2電極
100 有機EL表示装置
110,110C 有機EL表示パネル

Claims (23)

  1. 基板と、
    前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、
    前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された補助配線と、
    前記第1電極の上方に形成され、少なくとも発光層を含む機能層と、
    前記機能層と前記第1電極との間に介在し前記機能層へのホール注入を行うホール注入層と、
    前記機能層の上方に形成された第2電極と、を具備し、
    前記ホール注入層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成され、
    前記第2電極と前記補助配線とは、前記ホール注入層を介して電気接続され、
    前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である、
    有機EL表示パネル。
  2. 前記第2電極は、透明電極である、
    請求項1記載の有機EL表示パネル。
  3. 前記透明電極は、ITOまたはIZOからなる、
    請求項2記載の有機EL表示パネル。
  4. 前記第2電極は、AlまたはAgを主成分とする、
    請求項1に記載の有機EL表示パネル。
  5. 前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成された金属層を有し、
    前記金属層は、
    前記第1電極の上方では、前記第2電極と前記発光層との間に介在し、
    前記補助配線の上方では、前記第2電極と前記ホール注入層との間に介在する、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  6. 前記金属層は、前記第1電極の上方にて、前記第2電極から前記発光層に電子を注入する電子注入層である、
    請求項5に記載の有機EL表示パネル。
  7. 前記金属層がBaを含んでなる、
    請求項6に記載の有機EL表示パネル。
  8. 前記補助配線は、ITOまたはIZOからなる、
    請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  9. 前記第1電極の上方に形成されたホール注入層と同一層のホール注入層が、前記補助配線の上方に形成されている、
    請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  10. 少なくとも前記補助配線上に形成されるホール注入層の膜厚が4nm以上である、
    請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  11. 前記第1電極の上方に開口部を有する隔壁が、前記ホール注入層上に形成され、
    前記機能層は、前記隔壁の開口部内に形成されている、
    請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  12. 前記第1電極は画素単位に複数配置され、
    前記隔壁の開口部は、前記複数の第1電極の各々に対応して形成されている、
    請求項11に記載の有機EL表示パネル。
  13. 前記第1電極は画素単位に複数配置され、
    前記隔壁の開口部は、前記複数配置された第1電極のラインごとに、対応して形成されている、
    請求項11に記載の有機EL表示パネル。
  14. 前記UPSスペクトルにおいて、前記隆起した形状は、前記価電子帯の上端に対し、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する、
    請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  15. 前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記その他の原子の数密度の比は、0.62以下である、
    請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  16. 前記その他の原子は炭素原子である、
    請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  17. 前記ホール注入層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下となるように、紫外線が照射されて構成されている、
    請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
  18. 基板と、
    前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、
    前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された配線と、
    前記第1電極の上方に形成され、有機材料を含む有機層と、
    前記有機層と前記第1電極との間に介在し、酸化タングステンを含む酸化タングステン層と、
    前記有機層の上方に形成された第2電極と、を具備し、
    前記酸化タングステン層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記配線の上方に連続して形成され、
    前記第2電極と前記配線とは、前記酸化タングステン層を介して電気接続され、
    前記酸化タングステン層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である、
    有機EL表示パネル。
  19. 基板と、
    前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、
    前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された補助配線と、
    前記第1電極の上方に形成され、少なくとも発光層を含む機能層と、
    前記機能層と前記第1電極との間に介在し前記機能層へのホール注入を行うホール注入層と、
    前記機能層の上方に形成された第2電極と、を具備し、
    前記ホール注入層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方に連続して形成され、
    前記第2電極と前記補助配線とは、前記ホール注入層を介して電気接続され、
    前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    かつ、
    結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する、
    有機EL表示パネル。
  20. 前記UPSスペクトルにおいて、前記隆起した形状は、前記価電子帯の上端に対し、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する、
    請求項19記載の有機EL表示パネル。
  21. 前記ホール注入層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    かつ、
    結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有するように、
    紫外線が照射されて構成されている、
    請求項19記載の有機EL表示パネル。
  22. 基板と、
    前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、
    前記基板上または前記基板内に前記第1電極と離間して形成された配線と、
    前記第1電極の上方に形成され、有機材料を含む有機層と、
    前記有機層と前記第1電極との間に介在し、酸化タングステンを含む酸化タングステン層と、
    前記有機層の上方に形成された第2電極と、を具備し、
    前記酸化タングステン層および前記第2電極の各々は、前記第1電極の上方および前記配線の上方に連続して形成され、
    前記第2電極と前記配線とは、前記酸化タングステン層を介して電気接続され、
    前記酸化タングステン層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、
    かつ、
    結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する、
    有機EL表示パネル。
  23. 請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルを備える有機EL表示装置。
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