JP5720006B2 - 有機el素子、表示装置および発光装置 - Google Patents

有機el素子、表示装置および発光装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気的発光素子である有機電界発光素子(以下「有機EL素子」と称する)、これを備えた表示装置および発光装置に関する。
近年、有機半導体を用いた各種機能素子の研究開発が進められており、代表的な機能素子として有機EL素子が挙げられる。有機EL素子は、電流駆動型の発光素子であり、陽極および陰極とからなる一対の電極対の間に有機材料からなる発光層を含む機能層を設けた構成を有する。そして、電極対間に電圧を印加し、陽極から機能層に注入されるホールと陰極から機能層に注入される電子とを再結合させ、これにより発生する電界発光現象によって発光する。有機EL素子は、自己発光を行うため視認性が高くかつ完全固体素子であるため耐衝撃性に優れることから、各種表示装置における発光素子や光源としての利用が注目されている。
有機EL素子を高輝度で発光させるためには、電極から機能層へキャリア(ホールおよび電子)を効率よく注入することが重要である。一般に、キャリアを効率よく注入するためには、それぞれの電極と機能層との間に注入の際のエネルギー障壁を低くするための注入層を設けるのが有効である。このうち機能層と陽極との間に配設されるホール注入層には、銅フタロシアニンやPEDOT(導電性高分子)などの有機物、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物が用いられている。また、機能層と陰極との間に配設される電子注入層には、金属錯体やオキサジアゾールなどの有機物、バリウムなどの金属が用いられている。
中でも、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物をホール注入層として用いた有機EL素子に関しては、ホール注入効率の改善や寿命の改善が報告されており(特許文献1、非特許文献1)、その改善にはホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造により形成される電子準位が影響しているとの報告がある(非特許文献2)。
特開2005−203339号公報
Jingze Li et al.,Synthetic Metals 151,141(2005). Kaname Kanai et al.,Organic Electronics 11,188(2010). J.B.Pedley et al.,Journal of Physical and Chemical Reference Data 12,967(1984). I.N.Yakovkin et al.,Surface Science 601,1481(2007).
ところで、有機EL素子の製造工程においては、二酸化炭素、水、有機物などの大気中に含まれる分子および工程中に発生する不純物の分子などに由来する主に炭素を含む吸着物が問題になると考えられる。具体的には、電極やホール注入層など有機EL素子を構成する各層の積層工程において、下層の表面に吸着物が吸着した状態でその上に上層が積層されると、それら層間に吸着物が埋設されてしまい、素子の駆動電圧が増大したり寿命が低下したりするおそれがある。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであって、高輝度で発光し低電圧で駆動する有機EL素子、表示装置および発光装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る有機EL素子は、陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下である、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る有機EL素子は、前記ホール注入層が、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端よりも低い結合エネルギー領域のフェルミ面近傍に隆起した形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.83以下であるため、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が維持されたまま前記表面から吸着物が除去された構成となっており、高輝度で発光し低電圧で駆動する。
実施の形態に係る有機EL素子の構成を示す模式的な断面図である。 本発明の一態様に係る表示装置の全体構成を示す図である。 本発明の一態様に係る発光装置を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。 実施の形態に係る有機EL素子の製造方法の要部を説明するための図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのXPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのXPSスペクトルを示す図である。 ホールオンリー素子の構成を示す模式的な断面図である。 ホールオンリー素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 作製した有機EL素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 実施の形態に係るメタルハライドランプの分光分布を示す図である。 酸化タングステン表面の構造を説明するための図である。 酸化モリブデンのXPSスペクトルを示す図である。 酸化モリブデンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化モリブデンのXPSスペクトルを示す図である。
本発明の一態様に係る有機EL素子は、陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下である、ことを特徴とする。
なお、本願において数値範囲を「〜」を用いて記載した場合は、その下限値および上限値もその数値範囲に含むものとする。例えば、1.8〜3.6eVと記載した場合は、その数値範囲に1.8eVおよび3.6eVが含まれる。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記その他の原子の数密度の比は、0.62以下である。この場合は、吸着物除去効果が飽和していると考えられるため、十分な吸着物除去効果を期待できる。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記その他の原子は炭素原子である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記ホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下となるように、紫外線が照射されて構成されている。
本発明の別の一態様に係る有機EL素子は、陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下であり、かつ、結合エネルギー4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する、ことを特徴とする。
また、本発明の別の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記ホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下であり、かつ、結合エネルギー4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有するように、紫外線が照射されて構成されている。
本発明のさらに別の一態様に係る有機EL素子は、陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、前記ホール注入層は、酸化モリブデンを含み、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.2〜3.0eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、かつ、結合エネルギー3.7〜5.2eVにおいて、紫外線が照射されない場合のスペクトルをベースラインとしたピーク形状を有する、ことを特徴とする。
また、本発明のさらに別の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記ホール注入層は、UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.2〜3.0eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、かつ、結合エネルギー3.7〜5.2eVにおいて、紫外線が照射されない場合のスペクトルをベースラインとしたピーク形状を有するように、紫外線が照射されて構成されている。
[本発明に至った経緯 ]
本発明者は、有機EL素子の駆動電圧の増大や素子の寿命の低下を防止するため、製造工程において各層の形成後に、洗浄により各層の表面の吸着物を除去するプロセスを設けることを着想した。
そして、吸着物を除去するプロセスとして、強力な洗浄力を有する点から、ガラス基板や電極などの洗浄に汎用されているUVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄に着眼した。
本発明者がこれらの方法について鋭意検討した結果、酸化モリブデンや酸化タングステンなどの金属酸化物からなるホール注入層を有する有機EL素子において、UVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄は、前記ホール注入層の洗浄には適していないことを見出した。
なぜなら、UVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄は、酸素分子を分解して、発生させた酸素ラジカルの強力な酸化作用を利用するものであり、この酸化作用によって前記酸素欠陥に類する構造に酸素原子が補填されてしまうため、金属酸化物からなるホール注入層において、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅し、ホール注入効率が低下するおそれがあると考えられるからである。具体的には、UVオゾン洗浄によって酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位がほとんど消滅してしまうことを、後述するような実験により確認したのである。
上記した知見を得ることができたことにより、本発明者は、金属酸化物からなるホール注入層を有する有機EL素子において、有機EL素子の駆動電圧の増大を防止したり、素子の寿命の低下を防止したりするためには、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅することなく、かつ、ホール注入層表面から吸着物が除去されていることが重要であることを認識したのである。
なお、上記した本発明の特徴に関する一連の研究・考察を行った後、酸化タングステンからなるホール注入層を成膜した後にUVオゾン洗浄が行われている非特許文献1の存在が判明した。この非特許文献1には、UVオゾン洗浄により素子特性が受ける影響については言及されておらず、UVオゾン洗浄の条件を最適化したとの記述もない。さらには、非特許文献1には、本発明者が具体的な検討を通して解明した、そのままでは酸化タングステンからなるホール注入層の洗浄には適していない点や、その技術的理由については、何ら記述されていない。
ところで、吸着物を除去する別の方法としては、成膜後に真空容器中にてアルゴンイオンスパッタなどを施すスパッタエッチング処理が挙げられる。このスパッタエッチング処理は、吸着物の除去だけでなく、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を増大させることも報告されており、一見優れた洗浄方法のようにも受け取れる。
しかし、スパッタエッチング処理による吸着物除去効果および電子準位増大効果は、真空容器中でのみ持続する。なぜなら、真空中でスパッタエッチング処理されたホール注入層の表面は原子同士の結合がイオンビームにより強制的に切断された状態であるため極めて不安定であり、一旦真空容器から外に出せば容易に周囲の気体分子などを吸着して安定化してしまうからである。これにより、真空中で強制的に形成された金属酸化物の酸素欠陥に類する構造は瞬く間に補完され、除去された吸着物が瞬く間に再吸着してしまう。
このような再吸着を避けるには、スパッタエッチング処理以降の工程の一部あるいは全てを、連続して真空容器中で行えばよい。しかしながら、真空容器中での工程は、小型の有機ELパネルに対しては適用が可能なものの、例えば50インチ級の大型の有機ELパネルに対してはその大きさに合わせた真空容器が必要になるため適用が極めて困難である。また、真空容器中での工程は、スループットが小さいため量産化には不向きである。
一方、吸着物を除去するのではなく、吸着物の吸着自体を阻止する方法も考えられる。例えば、各層が形成後に大気や不純物分子に曝露されないように、各層の形成以降の工程の一部あるいは全てを、連続して真空容器中で行えば、吸着物が吸着することがない。しかしながら、上述したように真空容器が必要になるため大型の有機ELパネルに対しては適用が極めて困難である。
また、不活性ガスを充填した容器内にて工程を行う方法も考えられる。この方法の場合、大型の有機ELパネルへの適用も可能である。しかしながら、大気中よりは少ないとは言え、容器内には依然として不純物の分子などが存在しており、それらを完全に除去することは困難である。
以上に説明したように、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅しておらず、かつ、ホール注入層表面から吸着物が除去されている有機EL素子を得ることは非常に困難である。
これに対し、本発明の一態様に係る有機EL素子は、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が消滅していないため、陽極から機能層へホールを効率よく注入することができ、その結果、低消費電力かつ高輝度で発光させることができる。また、ホール注入層表面から吸着物が除去されているため、ホール注入層と機能層との層間に吸着物が埋設されておらず、その結果、素子の駆動電圧が増大しておらず、吸着物に由来する不純物などのキャリアトラップも形成されていないため素子の寿命も長く、素子特性が良好である。
[実施の形態]
以下、本発明の一態様に係る有機EL素子およびその製造方法、表示装置、発光装置を説明し、続いて各性能確認実験の結果と考察を述べる。なお、各図面における部材縮尺は、実際のものとは異なる。
<有機EL素子の構成>
図1は、本実施の形態における有機EL素子1の構成を示す模式的な断面図である。
有機EL素子1は、例えば、機能層をウェットプロセスにより塗布して製造する塗布型であって、ホール注入層3と、所定の機能を有する有機材料を含んでなる各種機能層(ここではバッファ層4および発光層5)が互いに積層された状態で、陽極2および陰極6からなる電極対の間に介設された構成を有する。
具体的には図1に示すように、有機EL素子1は、基板7の片側主面に対し、陽極2、ホール注入層3、バッファ層4、発光層5、陰極6(バリウム層6aおよびアルミニウム層6b)を同順に積層して構成される。
(ホール注入層)
ホール注入層3は、例えば、厚さ30nmの、金属酸化物である酸化タングステンの薄膜(層)からなる。酸化タングステンは、その組成式(WOx)において、xは概ね2<x<3の範囲における実数である。ホール注入層3はできるだけ酸化タングステンのみで構成されることが望ましいが、通常レベルで混入し得る程度に、極微量の不純物が含まれていてもよい。
ここで、ホール注入層3は、所定の成膜条件で成膜することにより、その表面に金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を持つ。この電子準位の存在により、良好なホール注入が可能となっている。また、ホール注入層3は、成膜後に、所定の波長の紫外光が、大気中にて照射されている。これにより、金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を維持したまま、前記ホール注入層3の表面から吸着物が除去され、照射前に比べてその量が少なくなっている。さらに、紫外光の照射時間や照射強度は、ホール注入層3の光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束するように設定されている。これにより、最小限の照射条件により、最大限に吸着物が除去されている。
(バッファ層)
バッファ層4は、例えば、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFB(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−(1,4−phenylene−((4−sec−butylphenyl)imino)−1,4−phenylene))で構成されている。
(発光層)
発光層5は、例えば、厚さ70nmの有機高分子であるF8BT(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−benzothiadiazole))で構成される。しかしながら、発光層5はこの材料からなる構成に限定されず、公知の有機材料を含むように構成することが可能である。たとえば特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。
(機能層)
本発明における機能層は、ホールを輸送するホール輸送層、注入されたホールと電子とが再結合することで発光する発光層、光学特性の調整または電子ブロックの用途に用いられるバッファ層等のいずれか、もしくはそれらの2層以上の組み合わせ、または全ての層を指す。本発明はホール注入層を対象としているが、有機EL素子はホール注入層以外に上記したホール輸送層、発光層等のそれぞれ所要機能を果たす層が存在する。機能層とは、本発明の対象とするホール注入層以外の、有機EL素子に必要な層を意味している。
(その他)
陽極2は、例えば、厚さ50nmのITO薄膜で構成されている。陰極6は、例えば、厚さ5nmのバリウム層6aと、厚さ100nmのアルミニウム層6bを積層して構成される。陽極2および陰極6には直流電源8が接続され、外部より有機EL素子1に給電されるようになっている。
基板7は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
(有機EL素子の作用および効果)
以上の構成を持つ有機EL素子1では、金属酸化物である酸化タングステンからなるホール注入層3の成膜後にその表面に所定の波長の紫外光が照射されているため、金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が維持されたまま、その表面から吸着物が最大限に除去されている。これにより、低駆動電圧で長寿命の有機EL素子となっている。
<表示装置の構成>
図2に基づいて、本発明の一態様に係る表示装置について説明する。図2は、本発明の一態様に係る表示装置の全体構成を示す図である。
図2に示すように、表示装置100は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いた表示パネル110と、これに接続された駆動制御部120とを備え、ディスプレイ、テレビ、携帯電話等に用いられる。駆動制御部120は、4つの駆動回路121〜124と制御回路125とから構成されている。なお、実際の表示装置100では、表示パネル110に対する駆動制御部120の配置や接続関係については、これに限られない。
以上の構成からなる表示装置100は、発光特性が良好な有機EL素子を用いているため画質が優れている。
<発光装置の構成>
図3は、本発明の一態様に係る発光装置を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。図3に示すように、発光装置200は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子210と、それら有機EL素子210が上面に実装されたベース220と、当該ベース220にそれら有機EL素子210を挟むようにして取り付けられた一対の反射部材230とを備え、照明装置や光源として用いられる。各有機EL素子210は、ベース220上に形成された導電パターン(不図示)に電気的に接続されており、前記導電パターンにより供給された駆動電力によって発光する。各有機EL素子210から出射された光の一部は、反射部材230によって配光が制御される。
以上の構成からなる発光装置200は、発光特性が良好な有機EL素子を用いているため画質が優れている。
<有機EL素子の製造方法>
次に、有機EL素子1の製造方法を図4に基づき例示する。図4は、実施の形態に係る有機EL素子の製造方法の要部を説明するための図である。
まず、基板7をスパッタ成膜装置のチャンバー内に載置する。そして、チャンバー内に所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法に基づき厚さ50nmのITOからなる陽極2を成膜する。
次に、ホール注入層3を反応性スパッタ法で成膜する。具体的には、ターゲットを金属タングステンに交換し、反応性スパッタ法を実施する。スパッタガスとしてアルゴンガスを、反応性ガスとして酸素ガスを、それぞれチャンバー内に導入する。この状態で高電圧によりアルゴンをイオン化しターゲットに衝突させる。このとき、スパッタリング現象により放出された金属タングステンが酸素ガスと反応して酸化タングステンとなり、基板7の陽極2上にホール注入層3が成膜され、図4(a)に示すような中間製品9が得られる。
上記の成膜条件は、基板温度は制御せず、ガス圧(全圧)を2.3Pa、酸素ガス分圧の全圧に対する比を50%、ターゲット単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)を1.2W/cmとした。この条件で成膜した酸化タングステンからなるホール注入層3は、その表面に酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を有する。
次に、成膜後の基板7をチャンバーから大気に取り出す。なお、この時点で、ホール注入層3は大気に曝露されるため、表面に気体分子などが吸着する。また、成膜後、取り出す前においても、チャンバー内の不純物分子などが吸着すると思われる。
次に、図4(b)に示すように、大気中において、紫外光を、ホール注入層3の表面に照射する。ここでは、ウシオ電機株式会社製のメタルハライドランプ(型番UVL−3000M2−N)を光源21として備える本発明の一態様に係る紫外光照射装置20を使用した。紫外光照射装置20の詳細は後述する。照射条件は、後述する光電子分光測定を用いた別の実験により、光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束するように別途定めるものである。本実施の形態では、照射強度を155mW/cmとし、照射時間は10分と求まった。
次に、ホール注入層3の表面に、例えばスピンコート法やインクジェット法によるウェットプロセスにより、アミン系有機分子材料を含む組成物インクを滴下し、溶媒を揮発除去させる。これによりバッファ層4が形成され、図4(c)に示すような中間製品10を得る。
次に、バッファ層4の表面に、同様の方法で、有機発光材料を含む組成物インクを滴下し、溶媒を揮発除去させる。これにより発光層5が形成される。
なお、バッファ層4、発光層5の形成方法はこれに限定されず、スピンコート法やインクジェット法以外の方法、例えばグラビア印刷法、ディスペンサー法、ノズルコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布しても良い。
続いて、発光層5の表面に真空蒸着法でバリウム層6a、アルミニウム層6bを成膜する。これにより陰極6が形成される。
なお、図1には図示しないが、有機EL素子1が完成後に大気曝露されるのを抑制する目的で、陰極6の表面にさらに封止層を設けるか、あるいは素子1全体を空間的に外部から隔離する封止缶を設けることができる。封止層は例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料で形成でき、素子1を内部封止するように設ける。封止缶を用いる場合は、封止缶は例えば基板7と同様の材料で形成でき、水分などを吸着するゲッターを密閉空間内に設ける。
以上の工程を経ることで、有機EL素子1が完成する。
(有機EL素子の製造方法の効果)
以上の有機EL素子1の製造方法では、酸化タングステンからなるホール注入層3の成膜後、所定の波長の紫外光を照射する工程を含む。これにより、ホール注入層表面における金属酸化物の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を維持したまま、ホール注入層3の表面から吸着物を除去することができる。
また、ホール注入層3の洗浄後から、バッファ層4を形成する工程までの間は、当該電子準位は、大気中において継続的に維持され、したがって、ホール注入能力も安定して維持される。これにより、低駆動電圧で長寿命の有機EL素子1の製造を、安定して行うことが可能となる。
また、前記の紫外光照射の工程における紫外光の照射時間や照射強度は、ホール注入層3の光電子スペクトルにおける所定の結合エネルギー領域の形状の変化が収束する条件から求めたものであり、必要最小限の照射条件で、吸着物を最大限に除去するように設定されている。これにより、最小限の洗浄プロセスで、非常に安定したホール注入効率を実現することができる。
<各種実験と考察>
(紫外光照射による吸着物の除去効果について)
本実施の形態では、酸化タングステンからなるホール注入層3の成膜後、所定の条件で紫外光を照射することにより、ホール注入層3表面の吸着物を除去している。この吸着物除去効果については以下の実験で確認された。
本実施の形態の製造方法により、基板7の上に、ITOからなる陽極2、酸化タングステンからなるホール注入層3を、スパッタ成膜装置のチャンバー内で積層した。その後、大気に取り出し、紫外光照射を行わないサンプル、1分照射したサンプル、10分照射したサンプルをそれぞれ作製した。照射強度は155mW/cmとした。
なお、以降、本実施の形態においては、紫外光照射を行わないサンプルを「照射なしサンプル」、n分照射したサンプルを「照射n分サンプル」のように記述する。
各サンプルを、アルバック・ファイ社製の光電子分光装置(PHI 5000 VersaProbe)に装着し、XPS(X線光電子分光)測定を実施した。ここで、一般にXPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける元素の組成や、結合状態および価数などの電子状態を反映する。このため、酸化タングステンに本来含まれない元素が観測されれば、それが吸着物である可能性が高い。さらに、一般に、大気曝露により吸着する或いは製造工程中に吸着する分子は、水分子や酸素分子の他は、炭素を含む分子が主であることが広く知られている。したがって、ホール注入層3表層の炭素の、紫外光照射による濃度変化を観測すれば、吸着物除去効果を知ることができる。
XPS測定条件は以下の通りである。なお、測定中、チャージアップは発生しなかった。
光源 :Al Kα線
バイアス:なし
出射角 :基板法線方向
まず、各サンプルをワイドスキャン測定したところ、観測された元素はいずれのサンプルもタングステン(W)、酸素(O)、および炭素(C)のみであった。そこで、Wの4f軌道(W4f)、およびCの1s軌道(C1s)のナロースキャンスペクトルの測定を行い、酸化タングステンからなるホール注入層3の表層数nmにおける、タングステン原子の数密度に対する炭素原子の数密度の相対値、すなわち、WとCとの組成比を求めた。なお、スペクトルから組成比を求めるためには、測定に使用した光電子分光装置に付属のXPS解析ソフトウェア「MultiPak」の組成比算出機能を使用した。
各サンプルのWとCの組成比を表1に示す。
Figure 0005720006
表1から、照射なしサンプルに比べて、照射1分サンプル、照射10分サンプルと、照射時間が長くなるにしたがって、明らかにタングステン原子に対する炭素原子の数が減っていることがわかる。すなわち、本実施の形態の紫外光照射により、酸化タングステンからなるホール注入層3表面の吸着物が減少していることが明らかである。
(紫外光照射のホール注入能力への影響について)
本実施の形態では、酸化タングステンからなるホール注入層3表面の吸着物を、紫外光照射で除去する際、ホール注入能力に作用する酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位は、照射の影響はほとんど受けずに維持されている。この維持性については、以下の実験で確認された。
前述の照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルに対し、UPS(紫外光電子分光)測定を実施した。ここで、一般にUPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、価電子帯からフェルミ面(フェルミ準位)にかけての電子状態を反映する。特に、酸化タングステンや酸化モリブデンでは、表面に酸素欠陥に類する構造が存在すると、価電子帯の上端よりも低結合エネルギー側のフェルミ面近傍に、隆起したスペクトル形状(以下、「フェルミ面近傍の隆起構造」と称する)が確認される(非特許文献2および3)。したがって、このフェルミ面近傍の隆起構造の紫外光照射による変化を観測することで、紫外光照射が表面の酸素欠陥に類する構造に及ぼす影響を調べることができる。なお、酸化タングステンでは、このフェルミ面近傍の隆起構造は、価電子帯の上端(価電子帯で最も低い結合エネルギー)より1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に位置する。
UPS測定条件は以下の通りである。なお、測定中にチャージアップは発生しなかった。
光源 :He I線
バイアス:なし
出射角 :基板法線方向
図5に、各サンプルのフェルミ面近傍のUPSスペクトルを示す。なお、以降、光電子分光(UPS、XPS)スペクトルは、横軸の結合エネルギーの原点はフェルミ面に採り、左方向を正の向きとした。照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルのいずれも、図中に(I)で示したフェルミ面近傍の隆起構造が明確に確認できる。したがって、ホール注入能力に作用する酸素欠陥に類する構造が、紫外光の照射を受けても維持されていることがわかる。
比較として、UVオゾン洗浄を行った。具体的には、基板7の上に、ITOからなる陽極2および酸化タングステンからなるホール注入層3をスパッタ成膜装置のチャンバー内で積層した後、チャンバー内から大気中に取り出し、UVオゾン装置によりホール注入層3表面のUVオゾン洗浄を行い、UPS測定によりフェルミ面近傍の隆起構造の有無を確認した。
図6に、UVオゾン洗浄を3分行った酸化タングステンからなるホール注入層3のフェルミ面近傍のUPSスペクトルを示す。なお、比較のために、図5の照射なしサンプルのUPSスペクトルも併記した。図5の本実施の形態の紫外光照射の場合とは異なり、フェルミ面近傍の隆起構造が全く確認できない。すなわち、UVオゾン洗浄によりホール注入層3の表面の酸素欠陥に類する構造がほとんど失われてしまったことがわかる。
以上のように、本実施の形態の紫外光照射による洗浄では、UVオゾン洗浄のように酸素欠陥に類する構造が失われないこと、すなわち、ホール注入能力に作用する酸素欠陥に類する構造が紫外光の照射を受けても維持されていることが明らかである。
(紫外光照射条件の規定方法について)
本実施の形態の紫外光照射による、酸化タングステンからなるホール注入層3の表面の洗浄では、ある程度以上の照射時間において、その吸着物除去効果が飽和することが、以下の実験で確認された。
前述と同様の方法で、再度、照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルを作成し、加えて、照射60分サンプル、照射120分サンプルも作成した。そして、XPS測定によって、各サンプルのW4fおよびC1sのナロースキャンスペクトルの測定を行い、それぞれバックグラウンド成分を引き算した後、W4fのナロースキャンスペクトルの面積強度で光電子強度を規格化した。このときの各サンプルのC1sのナロースキャンスペクトルを図7に示す。図7のC1sスペクトルの面積強度は、酸化タングステンからなるホール注入層3の表層数nmにおける、タングステン原子に対する炭素原子の数密度の割合に比例する。
図7によれば、照射時間1分以上のサンプルでC1sスペクトルの強度がほぼ一致しており、したがって、照射時間1分以上で吸着物除去効果がほぼ飽和してきていると考えられる。
しかしながら、一般に、吸着物のC1sスペクトルはそもそも吸着する絶対量が少ないことから、図7のように強度が低く荒いスペクトルになることが多い。したがって、吸着物除去効果の飽和の判断にはあまり適さないおそれがある。そこで、強度が比較的強いスペクトルを用いて吸着物除去効果の飽和を判断する別の方法も述べる。
一つ目は、UPSスペクトルにおける価電子帯の上端付近に該当する領域の形状の変化、すなわちUPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域の形状の変化で判断する方法である。この領域に存在するピークあるいは肩構造は、酸化タングステンを構成する酸素原子の2p軌道の非共有電子対に相当する。
図8に、そのUPSスペクトルを示す。照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプルの各サンプルに対し、UPS測定を行った。光電子強度は結合エネルギー6.5eV付近の緩やかなピークで規格化した。図8によれば、照射1分サンプルおよび照射10分サンプルは、結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域に、照射なしサンプルでは存在しない図中の(II)で示すような明確なピークが認められる。さらに、照射1分サンプルと照射10分サンプルとはピーク形状がほぼ一致している。すなわち、照射時間1分以上で、UPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの領域の形状の変化はほぼ収束している。これらはC1sで見られた挙動と同じであり、C1sと同様に、紫外光照射で吸着物除去効果が得られていること、および、照射時間1分以上でその効果が飽和していることを示していると考えられる。
二つ目は、XPS測定のW4fスペクトルの、紫外光照射による形状の変化である。図9に、照射なしサンプル、照射1分サンプル、照射10分サンプル、照射60分サンプル、照射120分サンプルの各サンプルの、W4fスペクトルを示す。スペクトルの最大値と最小値で規格化している。
図9によれば、照射なしサンプルに比べ、照射を行ったサンプルでは、ピーク形状が鋭くなっている(ピークの半値幅が狭くなっている)ことがわかる。さらに、照射1分サンプルよりも照射10分サンプルの方がピーク形状が若干鋭いのに対して、照射10分サンプル、照射60分サンプル、照射120分サンプルは、スペクトル自体がほぼ完全に重なっており、照射10分でスペクトルの形状の変化がほぼ収束していることがわかる。
この、W4fのスペクトルの照射時間による形状の変化は、例えば次のように説明できる。吸着物の構造にも依存するが、吸着物が表面のタングステン原子に負電荷を寄与する場合、内殻軌道のW4fはそれに応じて低結合エネルギー側にシフトする。化学的には、酸化タングステンの表層において6価のタングステン原子の一部が吸着物の影響で5価などの低価数に変化するということである。これは、W4fのXPSスペクトルにおいては、主成分である6価のタングステン原子によるスペクトルと、少数の低価数のタングステン原子によるスペクトルが重なることで、スペクトルの形状がブロードになることに対応する。
上記を考慮すると、図9においては、紫外光照射を行うことで吸着物が除去され、5価のタングステン原子が6価に戻ることで、ピーク形状が鋭くなると考えられる。このことから、照射1分で大部分の吸着物が除去され、照射10分以上では吸着物の除去効果がほぼ飽和していると解釈できる。これは、C1sで見られた挙動とやはり同様である。
また、図示はしていないが、酸素原子のO1s軌道においても、紫外光の照射時間に対するスペクトルの形状の変化が、照射10分以上でほぼ収束することが確認された。
以上より、本実施の形態の紫外光照射における吸着物除去効果は、ある程度以上の照射時間で飽和することがわかる。ここで、金属酸化物が酸化タングステンの場合の照射条件は次のように定めることができる。例えば、照射時間については、照射強度を任意に定め、XPS測定によるW4fまたはO1sのナロースキャンスペクトルの形状、または、UPSスペクトルにおける結合エネルギー4.5〜5.4eVの形状の変化が収束するまでの時間を測定し、この時間を照射時間として定める。具体的には、例えば照射時間n分のスペクトルと照射時間n+1分のスペクトルを比較し、各測定点における2つのスペクトルの、規格化強度の差の二乗平均がある値以下になったときに、照射時間n分で照射時間によるスペクトルの形状の変化が収束し、最大限の吸着物の除去が完了した、と判断すればよい。本実施の形態では、図8および図9から、照射時間10分で吸着物除去効果が飽和した、と判断した。
(紫外光照射後の電子状態の維持について)
本実施の形態では、ホール注入能力に作用する酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が、少なくとも表面洗浄後からその表面に上層が積層されるまでの間において継続的に維持される。その根拠は以下の通りである。
前述の図5のUPSスペクトルは、紫外光の照射から2日後に測定したものである。すなわち、照射なしサンプルと、照射後に大気中で2日経過した各照射時間のサンプルとの間において、UPSスペクトルにおけるフェルミ面近傍の隆起構造に相違は見られず、いずれも隆起構造は明確である。また、図示は省略するが、紫外光の照射から2時間後、1日後の場合についても測定を行っており、その場合もフェルミ面近傍の隆起構造は図5と同様に明確であった。すなわち、少なくとも照射後から2日間の間は、大気中で酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が維持されていることを確認した。
この2日間という期間は、紫外光照射によるホール注入層3の洗浄後、その表面にバッファ層4が積層される工程までの期間(通常は数時間以内)に比べ充分に長く、意図的にバッファ層4の形成時期を遅らせることでもしない限りこの期間を過ぎてもバッファ層4が形成されないということはありえない。
(紫外光照射による素子特性の向上について)
紫外光照射によりホール注入層3を洗浄した本実施の形態に係る有機EL素子1は、照射をしないで作製した有機EL素子に比べて素子特性が良い。これに関しては、以下の実験で確認された。
まず、紫外光照射によるホール注入層3の表面からの吸着物の除去がホール注入層3からバッファ層4へのホール注入効率に及ぼす効果を確実に評価するために、評価デバイスとしてホールオンリー素子を作製するものとした。
有機EL素子においては、電流を形成するキャリアはホールと電子の両方であり、有機EL素子の電気特性にはホール電流以外にも電子電流が反映されている。しかし、ホールオンリー素子では陰極からの電子の注入が阻害されるため、電子電流はほとんど流れず、全電流はほぼホール電流のみから構成され、キャリアはほぼホールのみと見なせるため、ホール注入効率の評価に好適である。
具体的に作製したホールオンリー素子1Aは、図1の有機EL素子1における陰極6を、図10に示す陰極6Aのように金(Au)に置き換えたものである。すなわち、本実施の形態の有機EL素子1の製造方法に従い、図10に示すように、基板7上に厚さ50nmのITO薄膜からなる陽極2をスパッタ成膜法にて成膜し、陽極2上に厚さ30nmの酸化タングステンからなるホール注入層3を、表面に酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位を持つように、所定のスパッタ成膜法にて成膜し、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFBからなるバッファ層4、厚さ70nmの有機高分子であるF8BTからなる発光層5、厚さ100nmの金からなる陰極6Aを順次積層して作製した。
ここで、ホール注入層3としては、成膜してスパッタ成膜装置のチャンバー内から大気中に取り出した後(この時点で既に吸着物が吸着している)、本実施の形態に係る紫外光照射(照射時間は10分)を行うもの、また紫外光照射を行わないものの2つを用意し、それぞれホールオンリー素子1Aを作製した。以降、前者のホールオンリー素子1Aを「照射ありHOD」、後者のホールオンリー素子1Aを「照射なしHOD」と称す。
作製した各ホールオンリー素子1Aを直流電源8に接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。なお、ここでの「駆動電圧」とは、電流密度0.4mA/cmのときの印加電圧とする。
この駆動電圧が小さいほど、ホール注入層3のホール注入効率は高いと言える。なぜなら、各ホールオンリー素子1Aにおいて、ホール注入層3表面以外の各部位の作製方法は同一であるから、ホール注入層3とバッファ層4の界面を除く、隣接する2つの層の間のホール注入障壁は一定と考えられる。したがって、ホール注入層3表面への紫外光照射の有無による駆動電圧の違いは、ホール注入層3からバッファ層4へのホール注入効率の違いを強く反映したものになる。
表2は、当該実験によって得られた、各ホールオンリー素子1Aの駆動電圧の値である。
Figure 0005720006
また、図11は、各ホールオンリー素子1Aの電流密度―印加電圧曲線である。図中縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。
表2および図11に示されるように、照射ありHODは照射なしHODと比較して、駆動電圧が低く、電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、低い印加電圧で高い電流密度が得られている。すなわち、照射ありHODは照射なしHODと比較し、ホール注入効率が優れている。
以上は、ホールオンリー素子1Aにおけるホール注入層3のホール注入効率に関する検証であったが、ホールオンリー素子1Aは、陰極6A以外は全く図1の有機EL素子1と同一の構成である。したがって、紫外光照射による吸着物の除去が、ホール注入層3からバッファ層4へのホール注入効率に及ぼす効果は、有機EL素子1においても、本質的にホールオンリー素子1Aと同じである。
このことを確認するために、紫外光照射を行ったホール注入層3、また紫外光照射を行わないホール注入層3を用いて、それぞれ有機EL素子1を作製した。以降、前者の有機EL素子1を「照射ありBPD」、後者の有機EL素子1を「照射なしBPD」と称す。作製方法は、照射なしBPDのホール注入層3が紫外光照射されないことを除き、全て本実施の形態のとおりである。
作製した各有機EL素子1を直流電源8に接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。なお、ここでの「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cmのときの印加電圧とする。
表3は、当該実験によって得られた、各有機EL素子1の駆動電圧の値である。
Figure 0005720006
また、図12は、各有機EL素子1の電流密度―印加電圧曲線である。図中縦軸は電流密度(mA/cm)、横軸は印加電圧(V)である。
表3および図12に示されるように、照射ありBPDは照射なしBPDと比較して、駆動電圧が低く、電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、低い印加電圧で高い電流密度が得られている。これは、照射ありHODおよび照射なしHODと同様の傾向である。
以上の結果により、ホール注入層3表面への紫外光照射による吸着物の除去が、ホール注入層3からバッファ層4へのホール注入効率に及ぼす効果は、有機EL素子1においても、ホールオンリー素子1Aの場合と同様であることが確認された。
以上の諸実験により、有機EL素子1において、本実施の形態に基づきホール注入層3の成膜後に所定の紫外光照射を行うと、ホール注入層3表面の吸着物が最大限に除去され、かつ酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位は照射によって失われず、したがって、ホール注入能力を損なわずに、駆動電圧の増加や寿命の低下を引き起こす吸着物を除去できるため、ホール注入層3からバッファ層4へのホール注入効率が改善され、それにより優れた素子特性が実現されることが確認された。
(紫外光の波長について)
本実施の形態では、ホール注入層3の成膜後に所定の波長の紫外光を大気中にて照射することで、ホール注入層3の吸着物が除去されており、除去されたホール注入層3を用いた有機EL素子1は除去を行わない有機EL素子よりも低電圧駆動を実現する。この紫外光の波長については、以下の考察により規定された。
まず、大気中などの酸素分子(O)を含むガス雰囲気中において、オゾン(O)が発生するための紫外光の波長は184.9nmである。以下の反応により、酸素分子が波長184.9nmの紫外光で分解され、生成した酸素ラジカル(O)と他の酸素分子が結合し、オゾンが生成される。
→ O + O
O + O → O
また、さらにオゾンが分解し、再び酸素ラジカルが発生するための紫外光の波長は253.7nmである。
UVオゾン洗浄では、これらの波長184.9nmおよび253.7nmの紫外光で酸素ラジカルを発生させ、その強力な酸化作用を吸着物の除去に用いている。このため、前述の実験でUVオゾン洗浄を行ったホール注入層3のように、酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位がほとんど消滅してしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、酸素分子を分解して酸素ラジカルを発生させる可能性が低い184.9nm超の波長域の紫外光を用いる。さらに、大気中に存在する僅かな量のオゾンの分解による酸素ラジカルの発生をも防ぐために、253.7nm超の波長域の紫外光を用いることが望ましい。
本実施の形態で、実際に用いたメタルハライドランプは、図13のような分光分布を持つ。このように、253.7nm以下の波長を極力含まないランプを採用した。このメタルハライドランプの最大の強度(波長380nm付近)に対する253.7nm以下の波長の強度は、高々数%台に抑えられている。
次に、一般的な吸着物における、原子間の結合エネルギーを表4に示す。「=」は二重結合、「−」は単結合である。吸着物を除去するには、まず、この結合エネルギー以上のエネルギーの光を照射し、結合を切る必要がある。
Figure 0005720006
ここで、光子1モルあたりの光のエネルギーEと、波長λとの間には、次の反比例の関係がある。
E=Nhc/λ(N:アボガドロ数、h:プランク定数、c:光速、λ:波長 )
上式より、波長184.9nmの紫外光のエネルギーは647kJ/mol、波長253.7nmの紫外光のエネルギーは472kJ/molに相当する。これらの値を表4と比較すると、本実施の形態の波長域の紫外光は、吸着物に見られる多くの原子間結合を切断できることがわかる。特に、後述するように、化学吸着の場合は、吸着物は酸化タングステンの酸素原子と主に単結合すると考えられるが、この吸着物との単結合のエネルギーは、大きくてもO−H結合の463kJ/mol(波長258nmに相当)程度であるから、本実施の形態の波長域の紫外光で切断が可能であることがわかる。また、物理吸着の場合は、化学吸着よりもはるかに結合が弱いため、これも紫外光照射で容易に除去される。
以上が、本実施の形態で用いた紫外光が、吸着物を除去できる理由である。
本実施の形態の紫外光照射による吸着物の除去効率は、UVオゾン洗浄によるものよりも本質的に悪い。これは、UVオゾン洗浄では、結合を切られた吸着物がすぐさま酸素ラジカルに酸化されてCO、HOなどの分子として容易に遊離するからである。しかしながら、前述のように、UVオゾン洗浄は、酸化タングステンのような金属酸化物からなるホール注入層3の洗浄には不適である。
次に、一般に、金属酸化物の原子間結合が本実施の形態の波長域の紫外光のエネルギーで切断される可能性は低い。例えば非特許文献3によれば、酸化タングステンにおける酸素原子とタングステン原子の結合エネルギーは672kJ/mol(波長178nmに相当)であり、本実施の形態の波長域の紫外光での切断は困難である。これは、前述の真空中のアルゴンイオンによるスパッタエッチングとは対照的である。すなわち、本実施の形態の紫外光を用いれば、酸化タングステンなどの金属酸化物からなるホール注入層3の原子間結合を破壊して化学的に活性化させることなく、化学的に安定した状態のまま吸着物を除去できる。
以上の理由により、本発明では、波長184.9nm超、望ましくは波長253.7nm超の紫外光を用いる。なお、可視光による化学吸着の結合の切断は一般に困難であるから、本実施の形態では、可視光ではなく紫外光(波長380nm以下)を用いる。
(紫外光照射後も、ホール注入能力に作用する電子準位が維持される理由)
本実施の形態では、紫外光の照射後も、ホール注入層3表面の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が継続的に維持され、したがって、ホール注入能力も安定して維持され、低駆動電圧の有機EL素子の製造を安定して行うことが可能である。この維持性に関して以下に考察する。
酸化タングステンの薄膜や結晶に見られる前記電子準位は、酸素欠陥に類する構造に由来することが、実験および第一原理計算の結果から多数報告されている。具体的には、酸素原子の欠乏により形成される隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合性軌道、および、酸素原子に終端されることなく膜表面や膜内に存在するタングステン原子単体の5d軌道に由来するものと推測されている。
ここで、タングステン原子の5d軌道は、5d軌道同士の結合性軌道や原子単体の5d軌道として存在するよりは、吸着物が化学吸着した方が安定化するのではないかと予想されるかもしれないが、必ずしもそうではない。実際、大気中に2日間置いた酸化タングステンにおいて、本実施の形態の図5のUPSスペクトルが示すように、当該電子準位に該当する、フェルミ面近傍の隆起構造が確認されるからである。
真空中において、三酸化タングステン単結晶を劈開して清浄な(001)面を出すと、最表面の酸素原子の一部が真空中に放出されることが、非特許文献4で報告されている。さらに、非特許文献4では、第一原理計算により、(001)面では、全ての最表面のタングステン原子が酸素原子で終端されるよりも、図14のように周期的に一部のタングステン原子(a)が終端されない構造の方がエネルギー的に安定し、この理由として、全ての最表面のタングステン原子が酸素原子で終端されると終端酸素原子同士の電気的な斥力が大きくなり、かえって不安定化するからであると報告している。つまり、(001)面においては、表面に酸素欠陥に類する構造(a)がある方が安定するのである。
なお、図14では、単純化のために三酸化タングステン単結晶をルチル構造で示しているが、実際は歪んだルチル構造である。
以上から類推し、ホール注入層3表面の酸素欠陥に類する構造が形成する電子準位が、本実施の形態の紫外光照射後も継続的に維持される理由としては、例えば以下のような機構が考えられる。
本実施の形態の酸化タングステンからなるホール注入層3は、成膜直後は少なくとも局所的にはその表面に(001)面ファセットを持ち、図14のように、終端酸素原子(b)とそれに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)とを持つと考えられる。これは、(001)面が安定構造だからである。そして、この表面が、成膜後にスパッタ成膜装置内のチャンバー内の不純物分子や大気中の分子に曝露される。
ここで、一般に金属酸化物においては、表面に(a)のような不飽和な配位の金属原子が存在すると、水分子や有機分子などと化学吸着反応し終端されることがある。本実施の形態においては、図9のW4fのスペクトルを見る限り、タングステン原子と炭素原子との結合に由来する、結合エネルギー31〜33eV付近に位置するはずのピークが確認されず、タングステン原子と酸素原子との結合に由来するピークのみが確認されることから、(a)のタングステン原子と直接化学結合する吸着分子の原子は、酸素原子である可能性が高い。
しかしながら、例えば(a)に水分子が化学吸着して水酸基を形成する場合、あるいは(a)に有機分子が化学吸着して有機分子の持つ酸素原子が結合する場合などは、一般に負に帯電している吸着基の酸素原子と、同じく負に帯電している周囲の終端酸素原子(a)との間に斥力が働く。このため、真空中で(a)に終端酸素原子が存在しにくい理由と同様に、(a)への分子吸着も比較的起こりにくいと予想される。
一方、(a)ではなく、その周囲の終端である酸素原子(b)に対しては、水分子や有機分子が付加反応を起こすなどして化学吸着する。この吸着自体は周囲に斥力などの阻害要因がほぼないため比較的容易である。そして、この(b)への吸着により場合によっては(a)の直近に数原子以上からなる有機分子の終端基が存在することになり、(a)への分子の吸着に対して立体的な障壁となり得る。このため、(b)に分子が吸着することによっても(a)への分子吸着がやはり比較的起こりにくくなると予想される。
以上より、図14のような、終端酸素原子(b)と、それに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)からなる構造を持つ表面に対しては、(a)への分子の化学吸着は起こりにくく、不純物分子や大気中の気体分子は主に(a)の周囲の(b)に対して化学吸着すると考えられる。なお、このときの化学吸着は、終端酸素を介する結合となるから一般に単結合である。
そして、本実施の形態の紫外光が照射されると、(b)に対して化学吸着した分子のみが結合を切断され遊離する。そして、(b)は再びもとの終端酸素原子に戻るか、あるいは、今度は水分子と吸着反応し、本実施の形態の紫外光では比較的切断されにくい安定した水酸基などとして残ると予想される。
以上をまとめると、本実施の形態の酸化タングステンからなるホール注入層3は、図14のような、終端酸素原子(b)とそれに囲まれた終端されていないタングステン原子(a)とからなる局所構造を表面に有し、まず、この構造自体の持つ特性により(a)に対し分子の吸着が起こりにくい。また、(b)に対して吸着した分子は、紫外光が照射されることで遊離され、その後には主に水酸基が残るのみである。これにより、表面の酸素欠陥に類する構造(a)が形成する、ホール注入能力に作用する電子状態が、成膜後の本実施の形態の紫外光照射の影響を受けずに継続して維持され、一方で、吸着物のみが紫外光照射により除去されるのである。
<紫外光照射装置>
次に、本発明の一態様に係る紫外光照射装置について説明する。図4(b)に示す本発明の一態様に係る紫外光照射装置20は、有機EL素子1の中間製品9に対し紫外光を照射するための装置であって、波長域が主として184.9nm超380nm以下である紫外光を出射する光源21と、当該光源21から出射した紫外光を前記中間製品9に向けて集光する反射鏡22と、それら光源21および反射鏡22を覆いかつ保持する筐体23と、前記光源21を点灯制御する制御部24とを備える。
中間製品9は、例えば基板7に陽極2および金属酸化物からなるホール注入層3を成膜したものであって、バッファ層4は未成膜の状態のものである。
光源21は、例えば、直管形のメタルハライドランプであって、その長手方向が中間製品9の搬送横幅方向となるように配置されており、低消費電力かつ高輝度で発光する有機EL素子を効率よく製造するために好適な照射条件で点灯される。紫外光の照射時間や照射強度などの照射条件は、金属酸化物の種類などのホール注入層3の成膜条件、および本実施の形態で述べたホール注入層3の光電子分光スペクトルの形状の収束などに基づいて設定される。照射条件の設定は操作者により行われる。なお、照射条件の設定は制御部24により自動で行われてもよい。例えば、制御部24には成膜条件、照射時間、照射強度が関係付けられたデータベースが格納されており、操作者が入力する成膜条件に基づいて、前記制御部24が前記データベースを参照して照射時間、照射強度を設定する。
中間製品9の紫外光照射対象位置への搬送は、例えば搬送コンベア25によって行われる。図中において、搬送上流側(右側)から搬送コンベア25上に搬入された中間製品9は、搬送コンベア25上を搬送されて紫外光照射対象位置を通過する。この通過の際に中間製品9の上面、すなわちホール注入層3の上面に紫外光が所定量照射される。紫外光照射が完了した中間製品9は搬送下流側(左側)に搬出される。
以上に説明した紫外光照射装置20において、光源21はメタルハライドランプに限定されず、波長域が主として184.9nm超380nm以下(望ましくは253.7nm超380nm以下)である紫外光を出射可能なものであれば良い。
<変形例>
以上、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法、および、紫外光照射装置を具体的に説明してきたが、上記実施の形態は、本発明の構成および作用・効果を分かり易く説明するために用いた例であって、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、理解容易のために挙げた各部のサイズや材料などは、あくまでも典型的な一例に過ぎず、本発明がそれらサイズや材料などに限定されるものではない。
例えば、ホール注入層3に含まれる金属酸化物は、酸化タングステンに限定されず、酸化モリブデン、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化トリウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、および、ランタンからルテチウムまでのいわゆる希土類元素の酸化物、並びに、それら酸化物の中の任意の何種類かを混合してなる金属酸化物が挙げられる。
酸化タングステン以外の金属酸化物でホール注入層を形成する例として、酸化モリブデンを用いる場合を例に挙げて説明する。本実施の形態の紫外光照射による洗浄では、ホール注入層3が酸化モリブデンで形成されている場合であっても、前記ホール注入層3表面の吸着物が減少していることが、以下の実験より明らかである。
実験では、酸化タングステンの場合と同様の方法で、照射なしサンプル、照射10分サンプル、照射60分サンプルを作成した。
まず、XPS測定によって、各サンプルのモリブデン(Mo)の3d軌道(Mo3d)およびC1sのナロースキャンスペクトルの測定を行い、それぞれバックグラウンド成分を引き算した後、Mo3dのナロースキャンスペクトルの面積強度で光電子強度を規格化した。このときの各サンプルのC1sのナロースキャンスペクトルを図15に示す。図15のC1sスペクトルの面積強度は、酸化モリブデンからなるホール注入層3の表層数nmにおける、モリブデン原子に対する炭素原子の数密度の割合に比例する。
図15によれば、照射なしサンプルに比べ、照射10分サンプル、照射60分サンプルでは、C1sスペクトルの面積強度が弱くなっていることがわかる。このことから、紫外光照射によって炭素原子は減る、すなわち吸着物は除去されると考えられる。
次に、UPSスペクトルにおける価電子帯の上端付近に該当する領域の形状の変化、すなわちUPSスペクトルにおける結合エネルギー3.7〜5.2eVの領域の形状の変化を評価した。この領域に存在するピークあるいは肩構造は、酸化モリブデンを構成する酸素原子の2p軌道の非共有電子対に相当する。
照射なしサンプル、照射10分サンプル、照射60分サンプルの各サンプルに対し、UPS測定を行った。図16に、そのUPSスペクトルを示す。光電子強度は結合エネルギー6.2eVの強度で規格化した。
図16によれば、照射10分サンプルと照射60分サンプルは、照射なしサンプルに比べ、図中に(III)で示した結合エネルギー3.7〜5.2eVの領域でブロードな肩構造が認められる。さらに、照射10分サンプルと照射60分サンプルで、肩構造の形状がよく一致している。すなわち、照射時間10分以上で、UPSスペクトルにおける結合エネルギー3.7〜5.2eVの形状の変化がほぼ収束している。これは、吸着物除去効果が飽和したことを示していると考えられる。
次に、XPS測定のMo3dスペクトルの、紫外光照射による形状の変化を評価した。図17に、照射なしサンプル、照射10分サンプル、照射60分サンプルの各サンプルの、Mo3dスペクトルを示す。スペクトルの最大値と最小値で規格化している。
図17によれば、照射なしサンプルに比べ、照射を行ったサンプルでは、ピーク形状がブロードになっている(ピークの半値幅が広くなっている)ことがわかる。さらに、照射時間の増加とともにピークの半値幅の広がりの勢いが衰えていることから、照射を続けることによってスペクトルの形状の変化が収束する傾向にあることがわかる。
以上より、ホール注入層3を形成する金属酸化物が酸化モリブデンの場合も、紫外光照射における吸着物除去効果は、ある程度以上の照射時間で飽和することがわかる。ここで、金属酸化物が酸化モリブデンの場合の照射条件は次のように定めることができる。例えば、照射時間については、照射強度を任意に定め、XPS測定によるMo3dまたはO1sのナロースキャンスペクトルの形状、または、UPSスペクトルにおける結合エネルギー3.7〜5.2eVの形状の変化が収束するまでの時間を測定し、この時間を照射時間として定める。具体的には、例えば照射時間n分のスペクトルと照射時間n+1分のスペクトルを比較し、各測定点における2つのスペクトルの規格化強度の差の二乗平均がある値以下になったときに、照射時間n分で照射時間によるスペクトルの形状の変化が収束し、最大限の吸着物の除去が完了した、と判断すればよい。本実施の形態では、図16から、照射時間10分で吸着物除去効果が飽和したと判断した。
(その他の事項)
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法において、紫外光照射は、大気中以外にも、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空など、様々なガス雰囲気内で適用できる。これは、酸素ラジカルが発生しない波長の紫外光による洗浄方法だからである。しかしながら、大気中で行うことは、前述のように、大型パネルの製造において有利である。
本発明の一態様に係る有機EL素子は、素子単独で用いる構成に限定されない。複数の有機EL素子を画素として基板上に集積することにより有機ELパネルを構成することもできる。このような有機ELディスプレイは、各々の素子における各層の膜厚を適切に設定することにより実施可能である。
塗布型有機EL素子を用いて有機ELパネルを形成する場合、上記のように複数の有機EL素子を画素として基板上に集積するには、例えば、画素を区画するバンクを金属酸化物からなるホール注入層の上に形成し、区画内に対し、上層である機能層を積層する。ここで、具体的にバンク形成工程は、例えば、ホール注入層表面に、感光性のレジスト材料からなるバンク材料を塗布し、プリベークした後、パターンマスクを用いて感光させ、未硬化の余分なバンク材料を現像液で洗い出し、最後に純水で洗浄する。本発明は、このようなバンク形成工程を経た金属酸化物からなるホール注入層にも適用可能である。この場合は、バンク形成後のホール注入層表面に紫外光を照射し、ホール注入層表面に吸着した、バンクや現像液の残渣である有機分子を主に除去することになる。ここで、一般にバンクに紫外光を照射すると、上層として塗布する有機溶媒との接触角が変化するが、本発明では紫外光照射条件を一意に定めることが容易であるから、その定まった紫外光照射条件をもとに、当該接触角やバンク形状を調整すればよい。
本発明の一態様に係る有機EL素子は、いわゆるボトムエミッション型の構成でもよく、いわゆるトップエミッション型の構成でもよい。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法で製造される有機EL素子は、携帯電話用のディスプレイやテレビなどの表示素子、各種光源などに利用可能である。いずれの用途においても、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で低電圧駆動される有機EL素子として適用できる。このような高性能により、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ、照明光源等として、幅広い利用が可能である。
1 有機EL素子
1A ホールオンリー素子
2 陽極
3 ホール注入層
4 バッファ層(機能層)
5 発光層(機能層)
6 陰極
6a バリウム層
6b アルミニウム層
6A 陰極(金層)
7 基板
8 直流電源
9 中間製品
20 紫外光照射装置
21 光源
22 反射鏡
23 筐体
24 制御部
25 搬送コンベア
100 表示装置
200 発光装置

Claims (9)

  1. 陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、
    前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下である、
    ことを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記その他の原子は炭素原子である、請求項1記載の有機EL素子。
  3. 前記ホール注入層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下となるように、紫外線が照射されて構成されている、請求項1記載の有機EL素子。
  4. 陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、
    前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下であり、
    かつ、
    結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有する、
    ことを特徴とする有機EL素子。
  5. 前記ホール注入層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    XPS測定に基づく、前記酸化タングステンのタングステン原子に対する、前記タングステン原子および酸素原子以外のその他の原子の数密度の比が、0.62以上0.83以下であり、
    かつ、
    結合エネルギーが4.5〜5.4eVにおいて、ピーク形状を有するように、
    紫外線が照射されて構成されている、請求項記載の有機EL素子。
  6. 陽極と陰極との間に、ホール注入層と、有機材料を含み前記ホール注入層からホールが注入される機能層とが設けられた有機EL素子であって、
    前記ホール注入層は、酸化モリブデンを含み、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.2〜3.0eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    かつ、
    結合エネルギーが3.7〜5.2eVにおいて、紫外線が照射されない場合のスペクトルをベースラインとしたピーク形状を有する、
    ことを特徴とする有機EL素子。
  7. 前記ホール注入層は、
    UPS測定に基づくUPSスペクトルにおいて、価電子帯の上端に対し1.2〜3.0eV低い結合エネルギー領域内に、全ての半値点が位置するピーク形状を有し、
    かつ、
    結合エネルギーが3.7〜5.2eVにおいて、紫外線が照射されない場合のスペクトルをベースラインとしたピーク形状を有するように、
    紫外線が照射されて構成されている、請求項記載の有機EL素子。
  8. 請求項1〜いずれかに記載の有機EL素子を備えた表示装置。
  9. 請求項1〜いずれかに記載の有機EL素子を備えた発光装置。
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