JPWO2012014655A1 - 近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、製造コストパフォーマンスに優れ、大面積化が可能で、柔軟性に優れ、かつ可視光透過率が高い近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体を提供する。この近赤外反射体は、支持体上に高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した近赤外反射フィルムにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であり、かつ該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物及び増粘多糖類を含有することを特徴とする。

Description

本発明は、低コストで大面積化が可能で、光学特性及び膜物性に優れた近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体に関するものである。
近年、省エネへの関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を低減する観点から、建物や車両の窓ガラスに装着することにより、太陽光の熱線の透過を遮断する近赤外反射フィルムへの要望が高まってきている。
従来、近赤外反射フィルムとしては、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた積層膜を蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法で作製する方法の提案がなされている。しかしながら、ドライ製膜法は、大型の真空装置を必要とする点から製造コストが高く、大面積化が困難であり、また高温で処理する場合が多く、支持体として耐熱性素材に限定される等の課題がある。
上記課題に対し、湿式塗布法を用いて作製する方法として、紫外線硬化型樹脂を用いる方法(例えば、特許文献1、2参照。)や、TiOゾル/SiOゾルを用いて、交互に積層する方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
しかしながら、紫外線硬化型樹脂を用いた成膜方法では、形成した膜が硬すぎるために、柔軟性に乏しく、またゾルを用いて膜を形成する方法では、形成する膜は金属酸化物粒子同士の凝集のみで結着しているため、膜がもろく、成膜段階でのハンドリングや搬送に難があり、生産効率が悪くなる。更には、合わせガラスの中間フィルムとして使用した場合、ガラスの曲率加工時に破断を起こしてしまい、所望の性能を十分に得ることができないのが現状であった。
特開2009−86659号公報 特開2004−125822号公報 特開2003−266577号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、製造コストパフォーマンスに優れ、大面積化が可能で、柔軟性に優れ、かつ可視光透過率が高い近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体を提供することにある。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する過程において、湿式塗布方式で、高屈折率層と低屈折率層のうち、少なくとも1層を構成するために、金属酸化物微粒子と増粘多糖類を含有する塗布液を用いて、高屈折率層と低屈折率層の交互積層膜を形成することにより、可視光の透過率を維持したまま、近赤外線を反射し、さらに製造過程でのハンドリング適性や搬送適性を有し、生産性に優れ、合わせガラスの曲率加工時にも対応可能な近赤外反射フィルムが得られることを見出した。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.支持体上に高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した近赤外反射フィルムにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であり、かつ該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物及び増粘多糖類を含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
2.前記増粘多糖類が、タマリンドシードガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム及びアラビノガラクタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1に記載の近赤外反射フィルム。
3.前記金属酸化物及び増粘多糖類を含有する高屈折率層または低屈折率層が、更にエマルジョン樹脂を含有することを特徴とする前記1または2に記載の近赤外反射フィルム。
4.前記金属酸化物及び増粘多糖類を含有する高屈折率層または低屈折率層が含有する該増粘多糖類が、2種類以上であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルム。
5.前記1から4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする近赤外反射体。
本発明により、製造コストパフォーマンスに優れ、大面積化が可能で、柔軟性に優れ、かつ可視光透過率が高い近赤外反射フィルム及びそれを設けた近赤外反射体を提供することができた。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上に高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した近赤外反射フィルムにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であり、かつ該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物及び増粘多糖類を含有することを特徴とする近赤外反射フィルムにより、製造コストパフォーマンスに優れ、大面積化が可能で、柔軟性に優れ、かつ可視光透過率が高い近赤外反射フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
以下、本発明の近赤外反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
《近赤外反射フィルム》
本発明の近赤外反射フィルムは、支持体上に互いに屈折率が異なる高屈折率層と低屈折率層とを積層させた多層積層体を有することを特徴とし、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上で、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であることを特徴とし、好ましくは0.4以上であり、更に好ましくは0.45以上である。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.3より小さいと、20層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
次いで、本発明の近赤外反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の層数に関しては、特に制限はないが、上記の観点から、好ましい層数の範囲は、100層以下、より好ましくは40層以下、さらに好ましくは20層以下である。
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であることを特徴するが、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であっても良い。
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、金属酸化物を少なくとも高屈折率層に添加することが好ましく、より好ましくは高屈折率層と低屈折率層の両層に添加することである。また、増粘多糖類は高屈折率層、低屈折率層の少なくとも一方に添加することが好ましく、より好ましくは高屈折率層と低屈折率層の両層に添加することである。
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
〔支持体〕
本発明の近赤外反射フィルムに適用する支持体としてはフィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、50〜300μm、特に80〜250μmであることが好ましい。また、本発明のフィルム支持体は、2枚以上重ねた積層体であっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
〔金属酸化物〕
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、増粘多糖類と共に金属酸化物を含有することを特徴の1つとする。
本発明に係る金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
金属酸化物の含有量は、それぞれ金属酸化物を含有する屈折率層の全質量に対し、50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。金属酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、近赤外反射フィルムを形成することの容易となる。
本発明の高屈折率層で用いる金属酸化物としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、5nm〜15nmであり、より好ましくは6nm〜10nmである。
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物として二酸化ケイ素を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
本発明に係る二酸化ケイ素は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
本発明に係る金属酸化物の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
(アミノ酸の添加)
本発明においては、更に、金属酸化物の分散性を向上させる目的で、アミノ酸を添加することが好ましい。
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
〔増粘多糖類〕
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物と共に増粘多糖類を含有することを特徴の1つとする。
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
増粘多糖類の含有量としては、添加する屈折率層の全質量に対し5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
〔水溶性高分子〕
本発明に係る屈折率層においては、金属酸化物、増粘多糖類と共に、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を併用してもよい。
本発明でいう水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものである。
本発明に適用可能な水溶性高分子としては合成高分子が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本発明においては、水溶性高分子を使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。水溶性高分子がポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
〔エマルジョン樹脂〕
本発明においては、本発明に係る金属酸化物及び増粘多糖類を含有する高屈折率層または前記低屈折率層が、更にエマルジョン樹脂を含有することが好ましい。
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
次いで、エマルジョン樹脂製造例を以下に示す。
5%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(重合度1700、けん化度88.5モル%)400gをpH3.5に調整し、攪拌しながらメタクリル酸メチル50gとアクリル酸ブチル50gを加えて60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10gを添加して重合を開始した。15分後、メタクリル酸メチル100gとアクリル酸ブチル100gを3時間かけて徐々に添加し、5時間後、重合率が99.9%となったところで冷却した。これをpH7.0に中和し、エマルジョン樹脂(1)を合成した。このエマルジョンを真空乾燥器にて60℃で乾燥し、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、5℃であった。同様の方法で、表1に示す例示のエマルジョン樹脂(2)〜(14)を合成した。
〔屈折率層のその他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
〔近赤外反射フィルムの製造方法〕
本発明の近赤外反射フィルムは、支持体上に高屈折率層と低屈折率層を交互に塗布、乾燥して積層体を形成する。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
なお、本発明における高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度は、例えば、東京計器社製のB型粘度計BLを用いて測定することができる。
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
〔近赤外反射フィルムの応用〕
本発明の近赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、本発明に係る近赤外反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、近赤外反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
《近赤外反射フィルムの作製》
〔試料1の作製〕
(高屈折率層1の形成)
グアーガム5部とポリビニルアルコール5部(クラレ製 PVA203)とを水100部に溶解した中に、金属酸化物としてジルコニアゾル(日産化学製 ナノユースZR30−AR)100部を分散させて、高屈折率層塗布液1を調製した。
次いで、高屈折率層塗布液1を用いて高屈折率層1を乾燥膜厚が135nmとなる条件で、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布、乾燥して、高屈折率層1を形成した。
(低屈折率層1の形成)
ポリビニルアルコール12部(クラレ製 PVA203)を水100部に溶解した中に、金属酸化物としてコロイダルシリカ(日産化学製 スノーテックスOS)100部を分散させて、低屈折率層塗布液1を調製した。
次いで、低屈折率層塗布液1を用いて低屈折率層1を乾燥膜厚が175nmとなる条件で、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの高屈折率層1上にワイヤーバーを用いて塗布、乾燥して、低屈折率層1を形成した。
(積層体の形成)
次いで、高屈折率層1と低屈折率層1をそれぞれ交互に5層ずつ積層し、総層数が12層の試料1を作製した。
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、低屈折率層塗布液1の調製に用いたポリビニルアルコールの12部を、ポリビニルアルコール6部とグアーガム6部とに変更した低屈折率層塗布液2を用いて、光学膜厚(屈折率×膜厚)が同じになるように乾燥時の膜厚を調整した以外は同様にして、試料2を作製した。
〔試料3の作製〕
上記試料2の作製において、高屈折率層塗布液1の調製に用いたジルコニアゾルを、ルチル型酸化チタン微粒子に変更して調製した高屈折率層塗布液2を用いた以外は同様にして、試料3を作製した。
〔試料4の作製〕
上記試料3の作製において、高屈折率層塗布液2、低屈折率層塗布液2の調製に用いたポリビニルアルコールを、それぞれ同量のグアーガムに変更して調製した高屈折率層塗布液3、低屈折率層塗布液3を用いた以外は同様にして、試料4を作製した。
〔試料5の作製〕
上記試料3の作製において、高屈折率層塗布液2、低屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガムを、同量のλ−カラギーナンに変更して調製した高屈折率層塗布液4、低屈折率層塗布液4を用いた以外は同様にして、試料5を作製した。
〔試料6の作製〕
上記試料3の作製において、高屈折率層塗布液2、低屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガムを、同量のローストビーンガムに変更して調製した高屈折率層塗布液5、低屈折率層塗布液5を用いた以外は同様にして、試料6を作製した。
〔試料7の作製〕
上記試料6の作製において、高屈折率層塗布液5の調製に用いたポリビニルアルコール5部を、ポリビニルアルコールの2.5部と、表1に記載のエマルジョン樹脂(8)の2.5部に変更して調製した高屈折率層塗布液6と、低屈折率層塗布液5の調製に用いたポリビニルアルコール6部を、ポリビニルアルコールの3.0部と表1に記載のエマルジョン樹脂(8)の3.0部に変更して調製した低屈折率層塗布液6を用いた以外は同様にして、試料7を作製した。
〔試料8の作製〕
上記試料3の作製において、高屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガム5部を、グアーガム2.5部とローストビーンガム2.5部とに変更して調製した高屈折率層塗布液7と、低屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガム6部を、タマリンドシードガム3部とローストビーンガム3部とに変更して調製した高屈折率層塗布液7とを用いた以外は同様にして、試料8を作製した。
〔試料9の作製〕
上記試料8の作製において、高屈折率層塗布液7の調製に用いたポリビニルアルコール5部を、ポリビニルアルコールの2.5部と表1に記載のエマルジョン樹脂(8)の2.5部に変更して調製した高屈折率層塗布液8と、低屈折率層塗布液7の調製に用いたポリビニルアルコール6部を、ポリビニルアルコールの3.0部と表1に記載のエマルジョン樹脂(8)の3.0部に変更して調製した低屈折率層塗布液8を用いた以外は同様にして、試料9を作製した。
〔試料10の作製〕
上記試料9の作製において、高屈折率層塗布液8に更にグリシン1部を加えた以外は同様にして調製した高屈折率層塗布液9と、低屈折率層塗布液8に更にグリシン1部を加えた以外は同様にして調製した低屈折率層塗布液9とを用いた以外は同様にして、試料10を作製した。
〔試料11の作製:比較例〕
上記試料3の作製において、高屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガムの全量をポリビニルアルコールに変更して調製した高屈折率層塗布液10と、低屈折率層塗布液2の調製に用いたグアーガムの全量をポリビニルアルコールに変更して調製した低屈折率層塗布液10とを用いた以外は同様にして、試料11を作製した。
〔試料12の作製:比較例〕
(分散液Aの調製)
金属酸化物粒子としてルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製、TTO−55A、粒径30〜50nm、水酸化アルミニウム表面処理品、屈折率2.6)を109質量部、分散剤としてポリエチレンイミン系ブロックポリマーを11質量部、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略記、和光純薬株式会社製)を180質量部、平均直径が0.5mmのジルコニアビーズの141質量部を用いて、ビーズミル分散機で24分間分散させた後、平均直径が0.1mmのジルコニアビーズに切り替えて、更にビーズミル分散機で147分間分散させることにより、分散液Aを得た。
(溶液Aの調製)
バインダー樹脂として4,4′−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン(硬化後の屈折率1.65)を50質量%と、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.25質量%含有するPGMEA溶液を調製し、これを溶液Aとした。
(溶液Bの調製)
上記分散液Aと溶液Aの混合比1:7(質量比)の混合液を調製し、これを溶液Bとした。
(溶液Cの調製)
上記溶液BとPGMEAの混合比1:2(質量比)の混合液を調製し、これを溶液Cとした。
(高屈折率層Aの形成)
上記調製した溶液Cを、スライドガラス(松浪ガラス工業製、76mm×52mm、厚さ1.3mm、ヘイズ0.4%)に2ml滴下し、1000rpm、30秒の条件でスピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)により塗布した後、120℃で10分間加熱した。その後、出力184W/cmの無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製)を用いて積算光量2.8J/cmの紫外線を照射することにより高屈折率層Aを得た。高屈折率層Aの屈折率は、2.10であった。
(低屈折率層Aの形成)
上記形成した高屈折率層Aにコロナ放電処理(信光電気計装株式会社製コロナ放電表面改質装置)を施して表面改質した後、1質量%のヒドロキシエチルセルロース(以下、HECと略記、東京化成工業株式会社製)の水溶液を2ml滴下し、1分間室温で放置した後、500rpm、30秒のスピンコート条件で塗布した。塗布直後、80℃のホットプレート(アズワン株式会社製HPD−3000)上に試料を置いて10分間加熱することにより高屈折率層Aの上に低屈折率層Aを積層させた。低屈折率層Aの屈折率は、1.60であった。
(積層体の形成)
更に、低屈折率層A上に、高屈折率層Aを形成し、高屈折率層A/低屈折率層A/高屈折率層Aの3層からなる試料12を作製した。
〔試料13の作製:比較例〕
(基材)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製、テイジンテトロンフィルム 高透明グレード)を用いた。表面はスラリーの濡れ性をよくするためにコロナ放電処理を施した。屈折率は1.62であった。
(高屈折率層Bの形成)
イソプロピルアルコール(和光純薬、試薬特級)を100質量部、ピリジン(和光純薬、試薬特級)を3質量部、エチルシリケート溶液(コルコート社製、HAS−1、有効成分30質量%)を5質量部、ルチル型酸化チタン微粒子(石原産業社製、55N)を10質量部、それぞれ配合した後、ボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径がD50で20nmに達したのを確認した後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400、有効成分30質量%)を1.5質量部、触媒(信越化学工業製DX−2400)を0.15質量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径がD50で16nmに達したのを確認し、これを高屈折率塗布液Bとした。これを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルムともいう)に、バーコーターNo.08を用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布し、100℃で乾燥した後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm)して硬化させ、高屈折率層Bを形成した。高屈折率層Bの屈折率は、2.17であった。
(低屈折率層Bの形成)
粒子径が10〜20nm(平均粒子径15nm)のシリカゾル(日産化学工業製「IPA−ST」)1質量部、溶媒としてイソプロピルアルコール(和光純薬製 試薬特級)を10質量部、バインダーとして紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)を5質量部、触媒(信越化学工業製 DX−2400)0.6部を配合し、スターラーで攪拌して低屈折率層塗布液Bを得た。シリカゾル(屈折率1.45)の一次粒子径はほぼ揃っており、また分散粒子径D50が45nmのスラリーを得た。
ついで、PETフィルム上に高屈折率層Bを形成した試料の高屈折率層B上に、上記調製した低屈折率層塗布液BをバーコーターNo.08を用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布し、100℃で乾燥した後、紫外線を照射(照度200〜450mW/cm)して硬化させ、低屈折率層Bを形成した。形成した低屈折率層Bの屈折率は1.35であった。
(積層体の形成)
更に、高屈折率層Bと低屈折率層Bを交互に3層ずつ積層し、合計が8層の試料13を作製した。
〔試料14の作製:比較例〕
(基材)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製、テイジンテトロンフィルム 高透明グレード)を用いた。表面はスラリーの濡れ性をよくするためにコロナ放電処理を施した。屈折率は1.62であった。
(高屈折率層Cの形成)
粒子径が10〜30nmの球状ルチル型酸化チタン(石原産業製、TTO−51C)と、溶媒としてメタノールを体積比で1:10になるように分散混合し高屈折率層用塗布液Cを調製した。
次いで、上記基材上に、バーコーターを用いて乾燥後の厚さが230nmとなる条件で塗布、乾燥し、高屈折率層Cを形成した。この高屈折率層Cは、屈折率が2.00であった。
(低屈折率層Cの形成)
粒子径が10〜15nm(平均粒子径12nm)の球状コロイダルシリカゾル(日産化学工業製、スノーテックスPS)と、溶媒としてメタノールを体積比で1:10になるように分散混合し、低屈折率層用塗布液Cを調製した。
次いで、上記基材に形成した高屈折率層C上に、バーコーターを用いて乾燥後の厚さが230nmとなる条件で塗布、乾燥し、低屈折率層Cを形成した。この低屈折率層Dは、屈折率が1.25であった。
(積層体の形成)
次いで、上記高屈折率層用塗布液C、低屈折率層用塗布液Cを用いて、低屈折率層C上に同様の条件で順次積層し、下記の7層構成からなる積層体を作製した。
基材/高屈折率層C/低屈折率層C/高屈折率層C/低屈折率層C/高屈折率層C/低屈折率層C/高屈折率層C
(最上層の形成)
粒子径が10〜20nm(平均粒子径15nm)のシリカゾル(日産化学工業製、メタノールシリカゾル)と、溶媒としてメタノールを体積比で1:20になるように分散混合して低屈折率層用塗布液Dを調製した。
次いで、基材上に7層の屈折率層を形成した積層体の高屈折率層C上に、バーコーターを用いて乾燥後の厚さが125nmとなる条件で塗布、乾燥し、最上層を形成し、試料14を作製した。この最上層は、屈折率が1.35であった。
〔近赤外反射フィルムの評価〕
下記の方法に従って、上記作製した近赤外反射フィルムの特性値の測定及び性能評価を行った。
(各層の屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層を単独で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層及び低屈折率層の屈折率を求めた。
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
(光学特性の測定:可視光透過率、近赤外反射率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外反射フィルムの300nm〜2000nmの領域における透過率及び反射率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外反射率は1200nmにおける反射率の値を用いた。
(柔軟性の評価)
上記作製した各近赤外反射フィルムについて、JIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、30回の屈曲試験を行った。
〈近赤外透過率の変化幅の測定〉
次いで、30回の屈曲試験を行った後の近赤外反射フィルムについて、上記と同様の方法で、1200nmにおける近赤外反射率を測定し、屈曲試験前後での近赤外反射率の変化幅(屈曲試験前の近赤外反射率(%)−屈曲試験後の近赤外反射率(%))を求めた。近赤外反射率の低下幅が小さいほど、柔軟性に優れていることを表す。
〈屈折率層の観察〉
1000回の屈曲試験を行った後の近赤外反射フィルム表面を、目視観察し、下記の基準に従って柔軟性を評価した。
◎:近赤外反射フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない
○:近赤外反射フィルム表面に、わずかに折り曲げ跡が観察される
△:近赤外反射フィルム表面に、微小なひび割れが僅かに観察される
×:近赤外反射フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している
以上により得られた測定結果、評価結果を、表2に示す。
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の近赤外反射フィルムは、可視光透過率を低下させることなく、高い近赤外反射率を得ることが可能であり、かつ柔軟性に優れていることが分かる。一方、屈折率層をポリマー、紫外線硬化型樹脂や金属酸化物ゾルのみで作製した比較例の近赤外反射フィルムでは、柔軟性に乏しいことが分かる。
実施例2
〔近赤外反射体1の作製〕
実施例1で作製した試料8の近赤外反射フィルムを用いて近赤外反射体1を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、試料8の近赤外反射フィルムをアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1を作製した。
〔近赤外反射体2の作製〕
実施例1に記載の試料8の近赤外反射フィルムを用いて近赤外反射体2を作製した。厚さ2mm、20cm×20cmの板ガラスを2枚用意し、試料8の近赤外反射フィルムの両側に、厚さ0.5mmのポリビニルブチラールを配置した積層体を2枚のガラスの間に挟んで加圧加熱処理を行うことで合わせガラスである近赤外反射体2を作製した。
〔評価〕
上記作製した近赤外反射体1、2共に、近赤外反射フィルムの適用を示したものであり、このようなものを製造する際にも、近赤外反射体の大きさにかかわらず、容易に利用可能であり、また、近赤外反射フィルムを利用したため、優れた近赤外反射性を確認することができた。

Claims (5)

  1. 支持体上に高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した近赤外反射フィルムにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.3以上であり、かつ該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物及び増粘多糖類を含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
  2. 前記増粘多糖類が、タマリンドシードガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム及びアラビノガラクタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外反射フィルム。
  3. 前記金属酸化物及び増粘多糖類を含有する高屈折率層または低屈折率層が、更にエマルジョン樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外反射フィルム。
  4. 前記金属酸化物及び増粘多糖類を含有する高屈折率層または低屈折率層が含有する該増粘多糖類が、2種類以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルム。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする近赤外反射体。
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