JPWO2009020141A1 - スパークプラグおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

汚損時に接地電極と中心電極や絶縁碍子との間にて起こり得る横飛火の発生を確実に防止することができるスパークプラグおよびその製造方法を提供する。接地電極(30)の基部(32)の端面(35)を全面にわたって主体金具(50)の先端構成面(57)と接触させた状態で、接地電極(30)と主体金具(50)とが溶接等により接合される。この接地電極(30)は軸線(O)方向に沿って前方へ延びる延伸部(36)を有しており、屈曲部(37)を介して、先端部(31)が中心電極(20)の先端部(22)に接合された貴金属チップ(90)に対向しており、両者間で火花放電間隙(G)が形成されている。そして接地電極(30)の屈曲部(37)における内面(33)に接触する半径1.2mmの仮想球体(Q)が中心電極(20)や絶縁碍子(10)とは接触しない(つまりその大きさの仮想球体(Q)を配置可能となる)十分な大きさの空隙部分(懐)を有する構成となっている。

Description

本発明は、横飛火を防止することができる内燃機関用のスパークプラグおよびその製造方法に関するものである。
従来、自動車のエンジン等の内燃機関には点火のためのスパークプラグが用いられている。一般的なスパークプラグは、中心電極と、その中心電極を軸孔内に保持する絶縁碍子と、この絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、一端部が主体金具に接合され、他端部が中心電極との間で火花放電間隙を形成する接地電極とを有している。そして、中心電極と接地電極との間で火花放電が行われ、混合気への点火が行われる。
近年、自動車エンジンの高出力化や省燃費化が進み、エンジン側の設計の自由度を確保する点からスパークプラグの小型化、小径化が求められている。これに伴い絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面との間のクリアランスも狭くなり、従来よりも低い電位差で横飛火が生じやすくなっている。とりわけ主体金具の先端面と内周面とがなす環状の稜角部分では電界が集中しやすく、従来のスパークプラグの各部品の寸法をそのまま小型化しただけのスパークプラグでは、くすぶりが発生した際に、絶縁碍子の外周面からその稜角部分に横飛火が生じやすい。このような場合、主体金具の先端面と内周面とがなす環状の稜角部分を面取りすれば、電界の集中を緩和することができ、横飛火の発生を抑制することができる(例えば特許文献1参照。)。
しかし、スパークプラグを小型化するにあたって主体金具の薄肉化も行われており、電界の集中の効果的な緩和に必要な分の面取りを上記のように主体金具の先端面に対して行うと、先端面で削られ残った平面部の面積の割合は、従来のものよりも小さくなってしまう。この小さくなった先端面の残部にそのまま接地電極の端面を接合した場合、主体金具と接地電極との接触面積が小さくなり、両者は十分な接合強度を得られなくなる虞がある。そこで、主体金具の先端面の面取り量を従来よりも多くし、面取りにより斜面状となる斜面部(固着面)を広くし、この斜面部に接地電極(沿面接地電極)の端面(接合端面)全体を当接させて、両者の接触面積を確保した上で接合する方法が考えられる(例えば特許文献2参照。)。
もっとも、一般的な接地電極は矩形の断面を有する棒状の母材から、その端面が延長方向と直交するように直方体状に切り出されて作製される。このため、主体金具の先端面の斜面部にそのまま接地電極を接合した場合、特許文献2の沿面接地電極のように先端側が斜め内向きに延びる形態となって絶縁碍子の先端部に近づくため、くすぶりが生じた際に横飛火が発生しやすくなる虞がある。このような場合、特許文献2の気中電極のように、端面を延長方向に対し斜めに形成し、主体金具への接合時に接地電極がスパークプラグの軸線方向に沿って延びるようにするとよい。
特開2003−68420号公報 特開2005−50746号公報
しかしながら、火花放電間隙を形成するため行われる接地電極の屈曲は、通常、曲げの外側となる面が型に沿うように接地電極を型に押しつけて行われるため、主体金具と接合される端面に近い部位から内向きに曲がり始める場合がある。すると上記の沿面接地電極のように接地電極の曲がりが始まる部位から先端部にかけて斜め内向きに延びる形態となり、火花放電間隙で生じた火炎核が成長する過程で接地電極に接触しやすくなるので着火性が低下する虞があった。また、接地電極の内面が絶縁碍子の先端部に近づくため、スパークプラグの汚損時に正規の火花放電間隙以外の部位にて火花放電が生ずる、いわゆる横飛火が発生しやすくなる虞もあった。横飛火の発生を効果的に抑制するには、接地電極の中心電極側を向く面と、中心電極と、絶縁碍子とで囲まれる空隙部分(いわゆる懐)に十分な大きさを有する必要があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、汚損時に接地電極と中心電極や絶縁碍子との間にて起こり得る横飛火の発生を確実に防止することができるスパークプラグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様によれば、軸線方向に延びる中心電極と、前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記中心電極を前記軸孔内の先端側に保持する絶縁碍子と、当該絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで当該絶縁碍子を保持する筒状の主体金具であって、自身の先端側の開口において、前記軸線方向の先端側から前記軸線方向に沿って目視可能な外面により構成される先端構成面が、複数の面により構成される主体金具と、一端部が、前記先端構成面を構成する複数の面のうちの少なくとも一つの面に接合され、他端部側が、前記主体金具の内周側に向けて屈曲されて、その他端部と前記中心電極の先端部との間に火花放電間隙が形成された接地電極であって、前記一端部から前記他端部へ向けて前記軸線方向に沿って延びる延伸部、および、当該延伸部と前記他端部との間に自身を屈曲させた屈曲部を有する、ただ一つの接地電極とを備えたスパークプラグにおいて、前記接地電極の前記屈曲部において、前記中心電極側を向く内面と接触する半径1.2mmの仮想球体を想定したときに、当該仮想球体と、前記中心電極および前記絶縁碍子とが非接触の状態となると共に、前記主体金具の前記先端構成面を構成する複数の面のうち、前記主体金具の内周面の周方向における少なくとも一部の部位と前記軸線方向に隣り合う面で、前記軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する傾斜面を構成する面を、第1面としたときに、前記先端構成面を構成する複数の面が、前記主体金具の前記軸線を含む断面の輪郭線上においてそれぞれ占める長さのうち、その輪郭線上において前記第1面の占める長さが、最も長い、スパークプラグが提供される。
第1態様のスパークプラグでは、主体金具の先端側から目視可能な外面(先端構成面)の少なくとも一部が、傾斜面状の第1面として形成される。第1面は、例えば、主体金具の先端側の開口における端面の内周側の稜角部分(エッジ)を面取りすることによって形成することができる。第1面を形成しなかった場合、エッジ部分が残ると電界の集中が生じやすくなるが、第1面を形成することによって電界の集中を抑制し、ひいては横飛火の発生を防止することができる。このように、主体金具の先端側の開口の端面に対して面取りを行う場合には、内周側のエッジを周方向に一周させて行うことが望ましい。もちろん、主体金具の先端側の端面のエッジを全て(内周側、外周側ともに)面取りしてもよい。また、端面自体を削って加工し、横飛火発生の起点となりやすいエッジ部分を構成する面と面とがなす角度を広くしたり、あるいは面取り面を大きく形成してエッジ部分を絶縁碍子から径方向に遠ざけたりしてもよい。また、面取りによらず、主体金具の先端側の開口の形状を、あらかじめそのように形成してもよい。
このようにして形成される先端構成面は、複数の面により構成されることとなるが、その先端構成面に接地電極を接合するには、少なくともそのうちの一つの面に接合すればよく、延伸部をもって絶縁碍子の外周面に対し一定の距離(間隙)を保つとよい。さらに、延伸部から他端部にかけて有する屈曲部において、接地電極の内面に接触する半径1.2mmの仮想球体が中心電極や絶縁碍子に接触しないように、十分な大きさの空隙部分(いわゆる懐)が確保されるようにするとよい。このように、先端構成面に、例えば面取りにより傾斜面を形成することで、電界集中の起点となるエッジ部分を構成する面と面とがなす角度を広くして、電界の集中を低減すれば、横飛火の発生を抑制することができる。また、接地電極と絶縁碍子と中心電極との間に十分な大きさの懐を確保することで、接地電極と絶縁碍子や中心電極との間で、正規の火花放電間隙以外の部位にて横飛火が生じてしまう虞を低減することができる。さらに、懐に十分な大きさを有すれば、火花放電間隙で形成された火炎核が、自身の成長過程において接地電極に接触するまでに、十分な大きさに成長することができるので、スパークプラグの着火性を向上させる効果も有することができる。
ところで、接地電極を先端構成面に接合する上で、接地電極の一端部が、この傾斜面状の第1面にかかる場合がある。しかし、本発明の第1態様によれば、主体金具の断面の輪郭線上において、第1面の占める長さが、先端構成面の他の面それぞれの占める長さよりも長い。つまり、第1面は、先端構成面の他の面よりも広い面積を有し、接合面積を広くとることができるので、接地電極と主体金具との接合性を高めることができる。
また、本発明の第1態様において、前記絶縁碍子は、自身の先端部において、外径が一定となる筒状部と、当該筒状部よりも前記軸線方向の後端側にて当該筒状部に連続し、外径が、前記軸線方向の先端側から後端側へ向けて拡径する外径遷移部とを有してもよい。そして、前記軸線方向において、前記絶縁碍子の筒状部と前記外径遷移部との境を第1境界とし、前記主体金具の内周面と前記第1面との境を第2境界としたときに、前記第2境界が、前記第1境界よりも前記軸線方向の先端側の位置にあるとよい。
主体金具の内周面は、径方向において先端構成面よりも絶縁碍子の外周面の近くに位置する。その主体金具の内周面と、主体金具の内周面と隣り合う第1面とは面方向が異なるため、両者の境となる第2境界には、電界が集中しやすいエッジが存在することになる。このエッジは、先端構成面を構成する各面により形成されるエッジのなかで、径方向においてもっとも絶縁碍子に近い位置に配置される。上記のように絶縁碍子の第1境界が、この第2境界よりも軸線方向において後端側に配置されれば、第2境界が径方向において向き合う部位は、絶縁碍子の筒状部となる。筒状部は外径遷移部よりも外径の小さな部位であり、さらに外径が一定であるので、第2境界がこの筒状部と向き合うことで、両者間の距離を確保することができ、横飛火の発生を抑えることができるのである。
また、本発明の第1態様において、前記仮想球体は、前記軸線方向において、少なくとも前記主体金具の前記先端構成面を構成する複数の面のうちのいずれの面の位置よりも先端側の位置にて、前記屈曲部の前記内面と接触しつつ、前記中心電極および前記絶縁碍子と非接触の状態となるようにしてもよい。仮想球体が、主体金具の先端構成面を構成するいずれの面よりも先端側に位置すれば、火花放電間隙で形成された火炎核が成長する過程で、火炎核は、接地電極のみならず主体金具や燃焼室内壁面に対しても接触しにくくなるため、より高い着火性を確保することができる。
また、本発明の第1態様において、前記主体金具の前記軸線を含む断面の輪郭線上において、前記主体金具の内周面と前記第1面とがなす角度をαとしたときに、120°≦α≦150°を満たすようにしてもよい。上記したように、主体金具の内周面と第1面と間のエッジは、径方向においてもっとも絶縁碍子に近い位置に配置される。横飛火抑制のためには、そのエッジにおける電界の集中を抑えるとよく、そのためには120°≦αとするとよい。また、αが大きくなるほど、径方向において第1面の占める幅が小さくなる。接地電極を接合する上で、上記のように接地電極が延伸部を有する構成から、主体金具に対して接地電極を接合する向きは、軸線方向の先端側からとなる。したがって、接地電極における第1面との接合のための部位の大きさは、第1面の径方向の幅に応ずるため、αが大きくなるほど小さくなる。すると接合の際の熱容量が小さくなるため、溶接ダレを生じやすくなってしまう。溶接ダレが生じた部分において、絶縁碍子との間の距離が近づけば、横飛火を発生しやすくなる虞がある。また、溶接ダレが生ずることにより、接合強度を維持しにくくなる虞がある。これを防止するには、α≦150°とするとよい。
また、本発明の第1態様において、前記主体金具は、前記先端構成面を構成する複数の面のうちの一つの面として、前記主体金具の前記軸線に垂直な面、または、前記軸線方向の後端側から先端側へ向けて縮径する傾斜面を構成する面からなる第2面を有してもよい。つまり、本発明の第1態様は、主体金具の先端構成面が、第2面として、軸線方向の前方(先端側)を向く面や、径方向の外側を向く面を有する形態のものであっても許容されるのである。
また、本発明の第2態様では、前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の先端側の開口の端面の少なくとも一部を周方向に研削し、軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する前記第1面を形成すると共に、前記金具中間体の先端部における外面で研削せずに残った面を前記第2面として構成して、前記先端構成面を形成する傾斜面形成工程と、前記接地電極の前記一端部側の端面に、前記主体金具の前記第1面との接合が予定される第1接合面と、前記第2面との接合が予定される第2接合面とを形成する接合面形成工程と、前記接地電極の前記延伸部の延伸方向を前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の軸線方向に沿わせつつ、前記接地電極の前記一端部を、前記金具中間体の先端構成面に接合する電極接合工程と、前記接地電極の前記他端部を前記中心電極の先端部に指向させ、両者の間で火花放電間隙を形成するギャップ形成工程とを有する、スパークプラグの製造方法が提供される。
主体金具の先端構成面を傾斜面状に形成すると、主体金具と接地電極とを接合するにあたって、両者が接触する部位の一部に大きな間隙を有した状態のまま両者の接合がなされる虞があり、接合強度の低下を招く虞がある。本発明の第2態様によると、接地電極の一端部側の端面の形状が傾斜面状に形成された主体金具の先端構成面の形状にあわせて接地電極を予め切削しておき、その接地電極を主体金具に接合する際に、接地電極の一端部側の端面が全面にわたって主体金具の先端構成面に接触するようにする。その上で両者を溶接等により接合すれば、接合後に、接地電極と主体金具とは十分な接合強度を得ることができる。もっとも、接地電極の端面と主体金具の先端構成面との間の間隙は、接合後に十分な接合強度が得られる程度の極小さなものであれば、有してもよく、接地電極と主体金具との接合時に、接地電極の端面が、必ずしも全面にわたって主体金具の先端構成面と接触した状態となる必要はない。このことは、接合面形成工程において、接地電極の端面の切削角度を主体金具の先端構成面の傾斜角度と厳密に一致させる必要がないことを意味する。しかし、接地電極の端面が、より広い面積をもって主体金具の先端構成面と接触した状態にあれば、より強い接合強度を得られるため、接地電極の端面の切削は、その形状が、主体金具の先端構成面の形状に沿うように、つまり、先端構成面の形状にあわせて行われることが望ましい。
また、本発明の第3態様では、前記接地電極の前記延伸部の延伸方向を前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の軸線方向に沿わせつつ、前記接地電極の前記一端部を、前記金具中間体の先端側の開口における端面に接合する電極接合工程と、前記接地電極が接合される前記金具中間体の先端側の開口における前記端面の少なくとも一部を、前記接地電極の接合部位を避けつつ周方向に研削し、軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する前記第1面を形成する傾斜面形成工程と、前記接地電極の前記他端部を前記中心電極の先端部に指向させ、両者の間で火花放電間隙を形成するギャップ形成工程とを有する、スパークプラグの製造方法が提供される。このように、主体金具の原形となる金具中間体の先端部において先端側の外面に接地電極を接合した上で、両者の接合部位を避けつつ先端面の内周側の稜角部分を面取りし、傾斜面状の第1面を形成してもよい。このような方法により、接地電極と主体金具との接合強度を確保した上で十分な大きさの懐を有すれば、スパークプラグの着火性を向上させると共に、横飛火の発生を抑制することができる。
第1の実施の形態のスパークプラグ100の部分断面図である。 スパークプラグ100の先端側の構造を示す要部拡大断面図である。 スパークプラグ100の先端側の構成を示す斜視図である。 接地電極30の端面35を切削加工する接合面形成工程を示す図である。 金具中間体150の端面159の面取りを行って先端構成面157を形成する傾斜面形成工程を示す図である。 接地電極30を金具中間体150に接合する電極接合工程を示す図である。接地電極30を主体金具50に接合する電極接合工程を示す図である。 接地電極30を屈曲して火花放電間隙Gを形成するギャップ形成工程を示す図である。 仮想球体Qの半径(懐の大きさ)と横飛火発生率との関係を示すグラフである。 第2の実施の形態のスパークプラグ200の先端側の構造を示す要部拡大断面図である。 スパークプラグ200の先端側の構成を示す斜視図である。 接地電極230を金具中間体350に接合する電極接合工程を示す図である。 金具中間体350の端面359の面取りを行って先端構成面357を形成する傾斜面形成工程を示す図である。 接地電極230を屈曲して火花放電間隙Gを形成するギャップ形成工程を示す図である。 図2の2点鎖線Cに示す部位を拡大してみた図である。 主体金具450の先端構成面457を変形例として示す図であり、図2の2点鎖線Cに示す部位に相当する部位を拡大してみた図である。 主体金具550の先端構成面557を変形例として示す図であり、図2の2点鎖線Cに示す部位に相当する部位を拡大してみた図である。
[第1の実施の形態]
以下、本発明を具体化したスパークプラグおよびその製造方法の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1,図2を参照し、本発明に係るスパークプラグの第1の実施の形態として、スパークプラグ100の全体の構造について説明する。なお、図1,図2では軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、スパークプラグ100は、概略、軸孔12に中心電極20および端子金具40を保持する絶縁碍子10と、その絶縁碍子10を保持する筒状の主体金具50と、主体金具50の先端構成面57に接合され、中心電極20との間で火花放電間隙Gを形成する接地電極30とから構成されている。
まず、絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸線O方向に軸孔12を有する筒状の絶縁部材である。絶縁碍子10の軸線O方向の略中央には最も外径が大きい鍔部19が形成されており、鍔部19より後端側には後端側胴部18が形成されている。また、鍔部19より先端側には、後端側胴部18より外径の小さい先端側胴部17と、その先端側胴部17よりも先端側で先端側胴部17よりもさらに外径の小さい先端部13とが形成されている。先端部13は根元部分(後端部分)に外径が一定の部位を有し、その部位より先端側が、前方(軸線O方向の先端側)へ向けて縮径されている(この縮径部分を、便宜上、外径遷移部14とよぶ。)。さらに、先端部13には、先端近くにおいて、外径遷移部14に連続して繋がり、外径が一定となる筒状部11が形成されている。先端部13は、スパークプラグ100が図示外の内燃機関に組み付けられた際には、その燃焼室に曝される。なお、先端部13の外径遷移部14と先端側胴部17との間は、段部15として形成されている。
次に、中心電極20について説明する。中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケル系合金等で形成された棒状の電極であり、内部に熱伝導性に優れる銅等からなる金属芯23を有する。中心電極20は絶縁碍子10の先端側の軸孔12内に保持されており、その先端部22は絶縁碍子10の先端部13の筒状部11から突出し、先端側に向かって径小となるように形成されている。図2に示すように、その先端部22の先端面には、例えばPt等の貴金属からなる柱状の貴金属チップ90が溶接されており、中心電極20は、先端部22に貴金属チップ90を有する形態となっている。本実施の形態では、便宜上、この貴金属チップ90を含め、中心電極20と称するものとする。
また、図1に示すように、中心電極20は、軸孔12の内部に設けられたシール体4およびセラミック抵抗3を経由して、後端側の端子金具40に電気的に接続されている。この端子金具40には高圧ケーブル(図示外)がプラグキャップ(図示外)を介して接続され、高電圧が印加されるようになっている。
次に、主体金具50について説明する。主体金具50は、図示外の内燃機関のエンジンヘッドにスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具であり、鉄系の材料より形成されたものである。主体金具50は、絶縁碍子10の鍔部19近傍の後端側胴部18から、鍔部19、先端側胴部17、および先端部13を取り囲むようにして絶縁碍子10を保持している。この状態で、絶縁碍子10の先端部13における筒状部11は、主体金具50の先端構成面57よりも前方側(図1における下側)に突出されている。主体金具50の前方を向くその先端構成面57は、環状をなし、内周側の稜角部分を取り除くように面取りされている。そして面取りにより斜面状に形成された斜面部81と、面取りされずに残った平面部82とが、この先端構成面57を構成している。なお、先端構成面57とは、軸線O方向の前方(先端側)から、軸線O方向に沿って主体金具50の先端側の開口を見た際に、目視可能な面をいう。また、主体金具50には、後端側に、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51が設けられている。さらに、主体金具50の先端側には、内燃機関上部に設けられたエンジンヘッド(図示外)に螺合するねじ部52が設けられている。
また、主体金具50の工具係合部51と、絶縁碍子10の後端側胴部18との間には環状のリング部材6,7が介在されており、さらに両リング部材6,7の間にはタルク(滑石)9の粉末が充填されている。工具係合部51の後端側には加締め部53が形成されており、この加締め部53を加締めることにより、リング部材6,7およびタルク9を介して絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。これにより、主体金具50の内周に形成された段部56に、絶縁碍子10の先端側胴部17と先端部13との間の段部15がパッキン8を介して支持されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体となる。主体金具50と絶縁碍子10との間の気密はパッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。また、主体金具50の軸線O方向中央部には鍔部54が形成されており、ねじ部52の後端部側(図1における上部)近傍、すなわち鍔部54の座面55にはガスケット5が嵌挿されている。
次に、接地電極30について説明する。図2に示す接地電極30は、耐腐食性の高い金属から構成され、一例として、インコネル(商標名)600または601等のニッケル系合金が用いられる。この接地電極30は自身の長手方向の横断面が略長方形を有しており、基部32側の端面35が主体金具50の先端構成面57に溶接により接合されている。基部32の先端側には軸線O方向に延びる延伸部36が連続している。その延伸部36に連続する屈曲部37は、接地電極30の長さ方向において略中央に設けられており、軸線Oに近づく側に屈曲されている。そして屈曲部37には先端部31が連続しており、内向きとなった内面33が先端部31において中心電極20の先端部22に対向し、その先端部22との間で火花放電を行う火花放電間隙Gを形成している。前述したように、中心電極20は先端部22に貴金属チップ90を有しており、より具体的には、接地電極30の先端部31の内面33と、中心電極20の先端部22に接合された貴金属チップ90との間で火花放電間隙Gが形成される。
第1の実施の形態では、主体金具50に接地電極30を接合するにあたって、その端面35に、先端構成面57の形状にあわせた加工を施している。具体的には図2,図3に示すように、接地電極30の端面35の形状を主体金具50の先端構成面57にあわせ、先端構成面57の斜面部81に対応した対斜面部38と、平面部82に対応した対平面部39とからこの端面35を構成している。つまり、溶接による接地電極30と主体金具50との接合が行われる前の状態において、接地電極30の端面35が、そのほぼ全面にわたって主体金具50の先端構成面57に接触した状態となっている。これにより、接地電極30の基部32側の端面35が全面にわたって主体金具50の先端構成面57と密接し、接触面積を確保して接合強度を高めることができる。
なお、平面部82と対平面部39、斜面部81と対斜面部38は、できる限り形状をあわせることで、互いの接触面積を稼ぐことができ、接合時に、より強い接合強度を得ることができるが、必ずしも厳密にその形状の一致を得る必要はない。つまり、接合後に十分な接合強度が得られる程度の極小さな間隙であれば有してもよい。したがって、後述する接合面形成工程において、接地電極の端面の切削角度を主体金具の先端構成面の傾斜角度と厳密に一致させる必要はない。
また、主体金具50では、斜面部81が形成されることによって、内周面58と斜面部81との間には、新たなエッジが形成されることになる。このエッジは、面取りする前のエッジを構成する面(後述する金具中間体150の端面159と内周面160(図5参照))同士のなす角度よりも、そのエッジを構成する面(斜面部81と内周面58)同士のなす角度が大きくなるため、電界の集中は抑制される。第1の実施の形態では、さらなる横飛火の確実な抑制のため、このエッジが形成されるべき位置に規定を設けている。図2に示すように、絶縁碍子10の先端部13において、軸線O方向における筒状部11と外径遷移部14との境の位置を、境界Aとする。また、斜面部81と主体金具50の内周面との境の位置を、境界Bとする。このとき、軸線O方向において、境界Aが境界Bよりも後端側にあることを規定している。換言すると、境界Bが、径方向において、絶縁碍子10の筒状部11(つまり外径が一定の部位)と向き合う位置に配置されるように規定するものである。筒状部11は、その外径が絶縁碍子10においてもっとも小さい部位であるため、この規定により、境界Bと絶縁碍子10との径方向の距離を確実に確保し、電界集中にともなう横飛火の発生を抑制することができる。
さらに、主体金具50の内周面58と斜面部81とにより形成されるエッジにおいて、電界の集中を効果的に抑制するため、そのエッジを構成する面(斜面部81と内周面58)同士のなす角度についても規定を設けている。具体的に、図14に示すように、主体金具50の軸線Oを含む断面において、斜面部81の輪郭線と、内周面58の輪郭線とがなす角度をαとしたときに、120°≦α≦150°を満たすことを規定している。斜面部81の輪郭線と、内周面58の輪郭線とがなす角度αが小さいほど電界が集中しやすく、横飛火発生時の起点となりやすい。後述する実施例4によれば、電界の集中を効果的に抑制し、横飛火の発生を防止するには、角度αを120°以上とするとよい。
また、角度αが大きくなるほど、径方向において、斜面部81の占める幅は小さくなる。接地電極30の基部32において、主体金具50の斜面部81に対応する対斜面部38についても、角度αが大きくなるほど、接合の際の径方向に十分な大きさを確保しにくくなる。すると接合の際の熱容量が小さくなるため、溶接ダレを生じやすくなり、溶接ダレが生じた部分が絶縁碍子10の筒状部11に近づくと、横飛火を発生しやすくなる虞がある。また、溶接ダレが生ずることにより、接地電極30と主体金具50との接合強度を維持しにくくなる虞がある。これを防止するには、後述する実施例4によれば、角度αを150°以下とするとよい。
なお、第1の実施の形態では、主体金具50を、軸線Oを含む断面でみたときに、その輪郭線上で、斜面部81の占める長さL1が、先端構成面57を構成する各面それぞれの占める長さ(例えば平面部82の占める長さL2)よりも長くなることを規定している。このような規定を設けることにより、斜面部81が確実に形成され、広い面積を確保できるようにしている。
また、接地電極30の基部32から先端側に向けて延びる延伸部36は軸線O方向に沿って延びており、絶縁碍子10の先端部13における筒状部11の径方向外周面に対し、一定の距離を離した(間隙を有した)状態となっている。そして延伸部36から先端部31に向かい屈曲された屈曲部37では、接地電極30の内面33と、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11および中心電極20の先端部22との間の距離が近づきすぎないように、これらに囲まれる空隙部分(いわゆる懐)が十分な大きさを有するように構成されている。具体的には図2に示すように、接地電極30の屈曲部37において、内面33に接触する半径1.2mmの仮想球体Q(図中2点鎖線で示す。)を想定する。このとき、その仮想球体Qが、中心電極20(貴金属チップ90も含む)や絶縁碍子10とは接触することがない。すなわち、接地電極30の屈曲部37における内面33と、中心電極20と、絶縁碍子10とに囲まれた部位には、少なくとも半径1.2mm以上の仮想球体Qを配置させるのに十分な大きさの空隙部分(いわゆる懐)を有することを意味する。
このように、少なくとも半径1.2mm以上の仮想球体Qを配置可能とする大きさの懐を有すれば、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11や中心電極20の先端部22が、接地電極30の内面33に近づくことが防止される。従って、接地電極30の内面33と絶縁碍子10の先端部13の筒状部11との間、あるいは接地電極30の内面33と中心電極20の先端部22との間の距離(クリアランス)の大きさが、火花放電間隙Gの大きさと比べて十分に確保され、くすぶりが生じた際の横飛火の発生が抑制される。
さらに、この仮想球体Qは、少なくとも主体金具50の先端構成面57の位置よりも軸線O方向前方に配置されるように、接地電極30の延伸部36や絶縁碍子10の先端部13の筒状部11の先端面からの突出量が規定されている。つまり、火花放電間隙Gが、燃焼室(図示外)のより内部に突出した位置に配置されるようにしている。このように、懐に十分な大きさを有しつつ、火花放電間隙Gが燃焼室内に付き出すように構成することで、火花放電間隙Gで形成された火炎核が成長する過程で、接地電極30のみならず主体金具50や燃焼室の内壁面(図示外)に対しても接触しにくくなるため、より高い着火性を確保することができる。
その一方で、面取りにより、接地電極30の端面35と主体金具50の先端構成面57との接触面積の減少に伴う接合強度の低下が懸念される。そこで第1の実施の形態では、上記のように、先端構成面57の形状にあわせた加工を端面35に施すことにより、端面35が全面にわたって先端構成面57と密接できるようにして両者間の十分な接触面積を確保し、両者の接合強度を高めている。具体的に、以下に説明する手順に従い、スパークプラグ100の製造が行われる。
以下、図4〜図7を参照して、接地電極30を主体金具50に接合する過程を中心に、スパークプラグ100の製造過程について説明する。なお、製造過程の公知の部分については、説明の一部を簡略化、あるいは省略するものとする。
スパークプラグ100の製造過程では、耐腐食性の高いニッケル系合金等からなる断面矩形の線材を所望の長さに切断し、直方体形状をなす接地電極30が作製される。このとき、図4に示すように、接地電極30の基部32側となる側の端面35には切削加工が施される。そして、主体金具50の先端構成面57の平面部82(図2参照)の形状にあわせた対平面部39と、先端構成面57の斜面部81(図2参照)の形状にあわせ対平面部39に対し傾斜する対斜面部38とが形成される(接合面形成工程)。接地電極30の対平面部39や対斜面部38の傾斜角度は、それぞれを後述する金具中間体150の先端構成面157の平面部182および斜面部181に当接させた際に、接地電極30の延長方向が軸線O方向に沿うようにする。なお、接合後に十分な接合強度が得られる程度の極小さな間隙であれば有してもよく、接地電極30の対平面部39や対斜面部38の傾斜角度を厳密に一致させる必要はない。例えば図4では、テーパ状に形成されることとなる斜面部81にあわせるため、対斜面部38の形状を接地電極30の延長方向に対し弧状となる曲面状に形成しているが、必ずしも曲面形成する必要はなく、平面状としてもよい。もっとも、対斜面部38を平面状に形成した場合、金具中間体150の斜面部181が曲面状をなすため、厳密には対斜面部38と斜面部181との間に間隙を有する部位が部分的に生ずる。その間隙は、後述する電極接合工程において、接地電極30と金具中間体150とを溶接した際に形成され得る溶融部によって埋められることになる。(図2の両者の断面図において、溶融部については特に図示していない。)
一方、鉄系の材料より筒状に形成された筒状体(図示外)に対して切削加工を施し、鍔部54や工具係合部51等の形状を形成することで、図5に示す、ねじ部152にねじ山を転造する前の状態の主体金具50(図2参照)の原形となる金具中間体150が作製される。この金具中間体150の先端側の端面159に対し、面取り加工が施される。具体的には、金具中間体150の端面159と内周面160とがなす稜角部161(すなわち端面159の内周側の縁)が、図中矢印で示すように一周にわたって削り取られ、斜面部181および平面部182(つまり端面159のうち面取りされずに残った部分)からなる先端構成面157が形成される(傾斜面形成工程)。なお、図5に示す金具中間体150は、端面159の面取りを行って、斜面部181および平面部182により構成される先端構成面157を形成する途中の状態を示したものである。
次に、図6に示すように、金具中間体150の先端構成面157に接地電極30の端面35が接合される。このとき、先端構成面157の斜面部181と平面部182とに、それぞれ、端面35の対斜面部38と対平面部39とが当接され、接地電極30の端面35全面が金具中間体150の先端構成面157に密接した状態となる。そして接地電極30は、基部32から先端部31側へ向かう自身の延長方向が軸線O方向に沿って延びるよう保持され、この状態で、端面35と先端構成面157とが溶接(例えば抵抗溶接)されて、接地電極30が金具中間体150に接合される(電極接合工程)。
接地電極30が接合された金具中間体150は、ねじ部152にねじ山が転造されて、図1に示す主体金具50としての形状をなすように作製される。また、別工程において中心電極20および端子金具40が組み付けられた状態の絶縁碍子10が作製され、この主体金具50の筒孔内に挿通されて加締め保持される。そして図7に示すように、接地電極30の内面33が先端部31にて中心電極20の先端に接合されている貴金属チップ90と向き合って火花放電間隙Gを形成するように、その先端部31が軸線O側へ向けて折り曲げられて、スパークプラグ100が完成する(ギャップ形成工程)。
なお、ギャップ形成工程では、屈曲部37における内面33に接触する半径1.2mmの仮想球体Q(図2,図3参照)が、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11と、中心電極20の先端部22(先端部22に接合された貴金属チップ90も含む)とのそれぞれに対して接触することがないように、屈曲部37の形成(折り曲げ)が行われる。このとき、屈曲部37は基部32に連続するようには形成されず、基部32と屈曲部37との間には、軸線O方向に沿って延びる延伸部36が形成される。つまり、接地電極30の主体金具50との接合部位から直ちに屈曲し始めるのではなく、延伸部分(延伸部36)だけ離間させて屈曲し始めるのである。この延伸部36が設けられることによって、屈曲部37よりも基部32側にて、接地電極30の内面33が絶縁碍子10の先端部13の筒状部11に近づくことが抑制される。
[実施例1]
このように作製されるスパークプラグ100の接地電極30の屈曲部37における内面33に接触する仮想球体Qが、中心電極20(貴金属チップ90も含む)および絶縁碍子10に接触しない場合の大きさを規定することで、懐に十分な大きさを確保した。このことによる効果を確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、スパークプラグ100を製造する際に、ギャップ形成工程で、火花放電間隙Gの大きさを0.9mmに保ちつつ接地電極30の屈曲条件を適宜変更し、仮想球体Qの半径を0.7mm〜1.5mmの範囲で0.1mmごとに異ならせたスパークプラグの複数のサンプルを作製した。なお、屈曲条件の変更は、延伸部36と屈曲部37との境となる位置(接地電極30の基部32側で屈曲し始める位置)をずらしたり、屈曲部37における折り曲げ量(屈曲半径)を異ならせたりすることで行った。
これら各サンプルがくすぶり時と同様の状態となるように、各サンプルの絶縁碍子の先端部にカーボンを付着させた。そして各サンプルを1つずつ加圧チャンバー内に配置し、0.6MPaの気圧下で100回の火花放電を行い、その間の横飛火(絶縁碍子の先端部と接地電極の屈曲部や延伸部における内面との間で生じた飛火)の発生回数を測定して横飛火発生率を求めた。この評価試験の結果を図8のグラフに示す。
図8に示すように、仮想球体Qの半径が0.7mmのときの横飛火の発生率は100%であり、仮想球体Qの半径が大きくなるに従って横飛火発生率は徐々に低下した。そして仮想球体Qの半径が1.1mmのときに約60%だった横飛火発生率は、その半径が1.2mmになると急激に低下して約10%になった。さらに仮想球体Qの半径が大きくなると横飛火発生率は低下していき、1.5mmになると横飛火が発生しなくなった。この評価試験の結果によれば、少なくとも半径1.2mm以上の仮想球体Qを配置させることができるように接地電極を屈曲させて、懐に十分な大きさを確保したスパークプラグを作製すれば、横飛火の発生を十分に抑制できることがわかった。
[実施例2]
次に、接地電極30と主体金具50との接合部位に機械的な負荷が加わった場合の接合強度について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、スパークプラグ100を製造する際の傾斜面形成工程で金具中間体150の先端構成面157のC面取りを行う際に、その面取り量を異ならせた複数の金具中間体を用意した。具体的には図2や図6に示すように、金具中間体(図2では完成後の主体金具)の径方向において、面取りによって形成された斜面部の長さSが、面取り前の先端構成面の長さS+T(面取り後の平面部の径方向の長さをTとする)に対して占める割合を異ならせ、0,7,10,14,17(%)となるように面取りした5種類の金具中間体を用意した。そして、自身の延長方向に対し直交する平面状をなすように端面を切断した接地電極を5本用意し、各種類の金具中間体にそれぞれ溶接したものをサンプル群1として作製した。つまりサンプル群1は、接地電極の端面が、主体金具の先端構成面の平面部には接触するものの、斜面部との間には大きな間隙を有した状態のまま、接地電極と主体金具とが接合されたものであり、従来品に相当するものである。
同様に、金具中間体の径方向において、面取りによって形成された斜面部の長さが、面取り前の先端構成面の長さに対して占める割合を、7,10,14,17,100(%)となるように面取りした5種類の金具中間体を用意した。そして、第1の実施の形態と同様に、各種類の金具中間体の先端構成面の形状に合致する端面の形状を有する接地電極をそれぞれ用意して、各種類の金具中間体に溶接したものをサンプル群2として作製した。つまりサンプル群2は、いずれも接地電極の端面が全面にわたって金具中間体の先端構成面(平面部および斜面部)に当接した状態で、接地電極と主体金具とが接合されたものであり、第1の実施の形態として説明したもの相当するものである。
これら各サンプルに対し、接地電極の先端部を金具中間体の径方向内側へ向けて押圧し、接地電極が軸線Oに対し90度以上屈曲するまで折り曲げ、次に先端部を径方向外側へ向けて押圧し、同様に軸線Oに対し90度以上屈曲するまで折り曲げる負荷を与えた。そして、接地電極と主体金具との接合部位において剥がれの有無を目視で確認した。この評価試験の結果を表1に示す。
Figure 2009020141
表1に示すように、サンプル群1では、金具中間体の先端構成面において、斜面部の径方向の大きさが小さく、その割合が0,7,10(%)のものには剥がれの発生が認められなかったが、14,17(%)ではいずれも剥がれが認められた。一方、サンプル群2では、いずれのサンプルにおいても剥がれの発生は認められなかった。つまり、先端構成面において斜面部が径方向に占める割合が増えて平面部が少なくなると、接地電極の端面のうち主体金具の先端構成面に接触できる部分が少なくなり、溶接後の接合強度が低下する。しかし、第1の実施の形態のように、接地電極の端面全体を主体金具の先端構成面に接触させた状態で両者の接合を行えば、面取りの大きさにかかわらず、折り曲げ負荷を受けても十分な接合強度を得られることを、確認できた。
[実施例3]
さらに、接地電極30と主体金具50との接合部位に加熱冷却に伴う負荷が加わった場合の接合強度について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、実施例2と同一のサンプル群1,2を用意し、これら各サンプルそれぞれに対し、加熱および冷却による負荷を与えた。具体的には、接地電極30と主体金具50との接合部位を2分間バーナーで500℃に加熱し、その後1分間の室温による自然冷却を行い、これを1サイクルとして1000サイクル繰り返した後に、実施例2と同一の折り曲げ負荷を与えた。そして、接地電極と主体金具との接合部位において剥がれの有無を目視で確認した。この評価試験の結果を表2に示す。
Figure 2009020141
表2に示すように、サンプル群1では、金具中間体の先端構成面において、斜面部の径方向の大きさが小さく、その割合が0,7(%)のものには剥がれの発生が認められなかったが、10,14,17(%)ではいずれも剥がれが認められた。一方、サンプル群2では、いずれのサンプルにおいても剥がれの発生は認められなかった。この評価試験の結果によれば、実施例2の場合よりもさらに過酷な加熱および冷却による負荷が与えられても、第1の実施の形態のように、接地電極の端面全体を主体金具の先端構成面に接触させた状態で両者の接合を行えば、十分な接合強度を得られることがわかった。
[実施例4]
次に、主体金具50の内周面58と斜面部81とがなす角度について規定することによる効果を確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、スパークプラグ100の製造過程における傾斜面形成工程で、金具中間体150の端面159の内周側を面取りする際に、内周面158と斜面部181とのなす角を100°〜170°の範囲で10°ずつ異ならせた8種類のスパークプラグのサンプルを作製した。このとき、面取りによって形成される斜面部181の大きさについて、面取り後に金具中間体150の軸線Oを含む断面の輪郭線を見たときに、その輪郭線上において斜面部181の占める長さが、いずれのサンプルも同じ長さ(1.13mm)となるように、面取りによって削り取る稜角部分の大きさを調整した。また、比較用に、金具中間体150の端面159の面取りを行わなかったスパークプラグのサンプル1(従来品相当)を用意した。なお、これらのサンプルを作製する上で、主体金具には、ねじ山の呼び径がM12のものを用いた。また、絶縁碍子には、主体金具への組み付け後において、先端部における筒状部の外周面と、主体金具の内周面との間に、クリアランスとして1.5mmを確保できる大きさ(筒状部の外径)のものを用いた。さらに、接地電極には、断面の大きさが1.3mm×2.7mmのものを用い、抵抗溶接により接合した。ここで、抵抗溶接の条件は、従来品相当のサンプル1において抵抗溶接を行った場合に溶接ダレが発生しない条件を、他のサンプルの抵抗溶接の際の条件として設定した。
まず、各サンプルの接地電極と主体金具との接合部位について観察を行った。そして、接合部位に溶接ダレが生じなかったサンプルは、溶接性の面において良好であるとして、「○」と評価した。また、接合部位に溶接ダレが生じたサンプルでも、その溶接ダレの大きさが、径方向に0.2mm以下の突出長(盛り上がり)であり、かつ、軸方向に1mm以下の長さ(広がり)であった場合には、溶接ダレが横飛火発生の起点とはなりにくいとして、同様に「○」と評価した。一方、接合部位に生じた溶接ダレの大きさが、径方向の突出長(盛り上がり)で0.2mmより大きかった場合、または、軸方向の長さ(広がり)で1mmより長かった場合には、溶接ダレが横飛火発生の起点となる虞があるとして、「△」と評価した。
次に、各サンプルの溶接ダレを削り取った上で、それぞれ個別に加圧チャンバーに取り付け、チャンバー内にエア(大気)を充填し、内圧を0.4MPaに調整した。そして各サンプルの火花放電間隙Gへ向けて接地電極側の側方から流速5.0m/secでエアが流れるようにした状態で、それぞれ100回の火花放電を行った。この火花放電の様子を撮影し、100回の火花放電のうち、正規の火花放電間隙Gで火花放電が生じず、主体金具の内周面と斜面部とがなす稜角部分(エッジ)と、絶縁碍子の外表面との間で火花放電(いわゆる横飛火)が生じた回数を数えた。さらに、各サンプルにおいて横飛火の発生した回数を分子とし、従来品相当のサンプル1において横飛火の発生した回数を分母とした場合に算出される、サンプル1(従来品相当)横飛火発生率に対する横飛火発生の低減率を求めた。なお、100回の火花放電のうち、一度も横飛火が発生しなかったサンプルについては、低減率を100%とした。この試験の結果を表3に示す。
Figure 2009020141
表3に示すように、溶接性については、主体金具の内周面と斜面部とがなす角度αが150°以下のサンプル2〜7では、溶接ダレが生じないか、あるいは生じても横飛火発生の起点とはなりにくい程度の大きさに抑えられた。しかし、角度αが150°より大きなサンプル8,9では、溶接ダレの大きさが大きく、横飛火発生の起点となる虞があった。角度αが大きくなるほど、接地電極の対斜面部が設けられる部位の体積が減少するため熱容量が小さくなり、抵抗溶接の際にその部位が溶融しやすくなって、溶接ダレを生じやすくなることによる。
また、横飛火低減率について、主体金具の内周面と斜面部とがなす角度αが150°以上のサンプル7〜9では、横飛火の発生が認められず、100%の低減率を示した。また、角度αが150°未満でも、120°以上のサンプル4〜6では、横飛火が発生したものの、従来品相当のサンプル1に対する横飛火低減率としては80%を上回り、十分な効果があることが確認された。しかし、角度αが120°未満のサンプル2,3では、従来品相当のサンプル1に対する横飛火の低減率が60%にも満たず、横飛火の発生は減少したものの大きな効果は認められなかった。以上の評価試験の結果から、主体金具の内周面と斜面部とがなす角度αを120°以上150°以下とすれば、横飛火の発生を防止する上で十分な効果があることがわかった。
なお、上記実施例4では、主体金具のねじ山の呼び径がM12である小径のスパークプラグをサンプルとして用い、評価試験を行ったが、従来品相当のサンプル1を基準に、いずれのサンプルも、横飛火の発生率自体は低減した。この点について鑑みるに、M12以下のスパークプラグ、とりわけ、絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面との間のクリアランスが1.5mm以下の小径のスパークプラグにおいては、主体金具の先端構成面として斜面部を設けない形態の従来品相当のスパークプラグであると、横飛火の発生が顕著となる虞がある。第1の実施の形態のスパークプラグ100のように、主体金具50の先端構成面57において、斜面部81を形成し、内周面58とのなす角度αを上記のように120°以上150°以下とすることは、このような小径のスパークプラグに対し、特に有効である。また、上記実施例4では、接地電極に、断面の大きさが1.3mm×2.7mmのものを用いたが、断面の大きさを特に限定するものではなく、断面積として1.3〜4mmを有するものであれば、好適に適用できる。
[実施例5]
次に、絶縁碍子10の筒状部11と外径遷移部14との境の位置(境界A)と、主体金具50の斜面部81と内周面との境の位置(境界B)とについて、軸線O方向における両者の位置関係を規定したことによる横飛火の抑制効果について確認するため、評価試験を行った。先端部全体としての長さは同一で、筒状部と外径遷移部との境(境界A)の位置を、軸線O方向において0.5mmずつ異ならせた7種類の絶縁碍子を用意し、それぞれ別途用意した主体金具に組み付けた。その結果、軸線O方向において、境界Bの位置を基準とする境界Aの位置が、先端側に1mmずれた位置となったサンプル11から、後端側に2mmずれた位置となったサンプル17まで、境界Aと境界Bとの位置関係が0.5mmずつずれた、7種類のスパークプラグのサンプルが作製された。これらのサンプルを作製する上で、主体金具には、ねじ山の呼び径がM10のものを用い、先端構成面において、内周面と斜面部とがなす角度αが120°となるように面取りを行った。また、絶縁碍子は、この主体金具に組み付けられる大きさのものを用意したが、先端部においては、組み付け後に、筒状部の外周面と、主体金具の内周面との間に、クリアランスとして1.3mmを確保できる大きさとなるように、筒状部を仕上げた。さらに、接地電極には、断面の大きさが1.1mm×2.2mmのものを用い、抵抗溶接により接合した。なお、抵抗溶接は、溶接ダレが生じない条件を設定して行った。
次に、各サンプルの絶縁碍子の先端部の先端側(具体的には筒状部において位置Bよりも先端側)にカーボンを付着させ、くすぶり状態を模擬した。そして、各サンプルを個別に加圧チャンバーに取り付け、チャンバー内にエア(大気)を充填し、内圧を0.4MPaに調整した。さらに、各サンプルの火花放電間隙Gへ向けて接地電極側の側方から流速5.0m/secで燃料の供給(吹きつけ)を行い、実施例4と同様に、それぞれ100回の火花放電を行った。この火花放電の様子を撮影し、100回の火花放電のうち、正規の火花放電間隙Gで火花放電が生じず、主体金具の内周面と斜面部とがなす稜角部分(エッジ)と、絶縁碍子の外表面との間で火花放電(いわゆる横飛火)が生じた回数を数え、横飛火の発生率を算出した。この試験の結果を表4に示す。
Figure 2009020141
表4に示すように、境界Bの位置よりも境界Aの位置が軸線O方向の先端側にあるサンプル11、12では、横飛火発生率がそれぞれ22%、19%となり、くすぶり時には約5回に1回、横飛火が発生することがわかった。このサンプル11,12は、軸線O方向において、境界Aの位置に絶縁碍子の外径遷移部が配置されることになり、両者の間隙(クリアランス)が狭くなる。また、軸線O方向において境界Bの位置と境界Aの位置とが同位置となったサンプル13でも、横飛火発生率が16%となった。しかし、境界Bの位置よりも境界Aの位置が軸線O方向の後端側にあるサンプル14〜17では、横飛火発生率が5%以下に減少した。これらサンプル14〜17は、軸線O方向において、境界Aの位置には絶縁碍子の筒状部が配置されることになり、両者の間隙(クリアランス)は、境界Bの位置によらず一定に保たれることになる。このことから、境界Bの位置よりも境界Aの位置が軸線O方向の後端側にあることが望ましいことがわかった。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態のスパークプラグ200について、図9,図10を参照して説明する。図9,図10に示す、第2の実施の形態のスパークプラグ200は、接地電極230と主体金具250との接合部位における構成が第1の実施の形態のスパークプラグ100と異なり、それ以外の部位においては同一である。ここでは、構成の異なる部位について新たな符号を付して説明し、同一の部位については説明を省略または簡略化して行うこととする。
図9,図10に示す、第2の実施の形態のスパークプラグ200は、主体金具250の先端構成面257において、接地電極230の端面235との接合を行った部位のみ、面取りを行わなかったものである。すなわち、主体金具250の先端構成面257は、接地電極230の接合された部位に、面取りがなされず軸線Oに直交する平面としての平面部283を有する。そして、接地電極230の接合されていない部位においては、第1の実施の形態と同様に、面取りにより斜面状に形成された斜面部281と、面取りされずに残った平面部282とを有する。一方、接地電極230の端面235は、接地電極230の延長方向に直交する平面として形成されている。従って、溶接による接地電極230と主体金具250との接合が行われる前の状態において、接地電極230の端面235は、そのほぼ全面にわたって主体金具250の先端構成面257の平面部283に接触した状態となっている。
そして、接地電極230の基部232から先端側に向けて延びる延伸部236は軸線O方向に沿って延びており、第1の実施の形態と同様に、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11の径方向外周面に対し一定の距離を離した状態となっている。また、延伸部236から先端部231に向かい屈曲された屈曲部237においても同様に、接地電極230の内面233と、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11および中心電極20の先端部22との間の距離が近づきすぎないように、十分な大きさを有する懐が設けられている。具体的に、図9に示す半径1.2mmの仮想球体Qが接地電極230の屈曲部237における内面233に接触するとき、その仮想球体Qが中心電極20(貴金属チップ90も含む)や絶縁碍子10に接触しないことが規定されており、懐として十分な大きさを有することができる構成となっている。
このように、接地電極230の端面235が全面にわたって主体金具250の先端構成面257に接触した状態で溶接されるように、先端構成面257に平面部283を形成し、少なくとも端面235の面積分の平面を確保すれば、溶接後において両者の間で十分な接合強度を得ることができる。そして先端構成面257のうち平面部283を除く部分に面取りを行って、斜面部281および平面部282を形成すれば、第1の実施の形態と同様に、面取りしなかった場合に残る稜角部分に、電界が集中することによって生じ得る横飛火の発生を、抑制できる。さらに、仮想球体Qの大きさを規定し、懐が十分な大きさを有するようにすることで、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11や中心電極20の先端部22が、接地電極230の内面233に近づくことを、防止できる。従って、接地電極230の内面233と絶縁碍子10の先端部13の筒状部11との間、あるいは接地電極230の内面233と中心電極20の先端部22との間の距離(クリアランス)の大きさを、火花放電間隙Gの大きさと比べて十分に確保でき、くすぶりが生じた際の横飛火の発生を抑制できる。
このような構造を有する第2の実施の形態のスパークプラグ200を製造する過程では、第1の実施の形態のスパークプラグ100とは異なり、主体金具250の先端構成面257に接地電極230を接合してから、先端構成面257の面取りを行っている。以下、図11〜図13を参照して、接地電極230を主体金具250に接合する過程を中心に、スパークプラグ200の製造過程について説明する。なお、製造過程の公知の部分については、説明の一部を簡略化、あるいは省略するものとする。
図11に示すように、スパークプラグ200の製造過程で作製される接地電極230は、耐腐食性の高いニッケル系合金等からなる断面矩形の線材を所望の長さに切断し、直方体形状としたものである。基部232側の端面235は、接地電極30の延長方向に対し直交する平面として形成される。
また、第1の実施の形態と同様に主体金具250(図9参照)の原形となる金具中間体350が作製され、この金具中間体350の先端構成面357に、接地電極230の端面235が接合される。金具中間体350は先端構成面357の面取りを行う前の状態であり、接地電極230の端面235は、その全面が、先端構成面357に密接した状態となる。接地電極230は、基部232から先端部231側へ向かう自身の延長方向が軸線O方向に沿って延びるよう保持され、この状態で、端面235と先端構成面357とが溶接され、接地電極230が金具中間体350に接合される(電極接合工程)。
次に、図12に示すように、金具中間体350の先端構成面357に対し、面取り加工が施される。具体的には、金具中間体350の先端構成面357と内周面360とがなす稜角部361が、図中矢印で示すように、接地電極230の接合された部位を避けて削り取られ、斜面部381および平面部382が形成される。また、先端構成面357のうち接地電極230の接合された部位は、平面部383として、面取りが施されない状態に維持される(傾斜面形成工程)。なお、図12に示す金具中間体350は、先端構成面357に、斜面部381および平面部382を形成する途中の状態を示したものである。
このように接地電極230が接合された金具中間体350は、ねじ部352にねじ山が転造されて、図9に示す主体金具250としての形状をなすように作製される。そして第1の実施の形態と同様に、中心電極20および端子金具40と一体になった絶縁碍子10が主体金具250の筒孔内に挿通されて加締め保持される。さらに図13に示すように、接地電極230の内面233が先端部231にて中心電極20の先端部22に接合された貴金属チップ90と向き合って火花放電間隙Gを形成するように、接地電極230の先端部231が軸線O側へ向けて折り曲げられて、スパークプラグ200が完成する(ギャップ形成工程)。このギャップ形成工程において、屈曲部237における内面233に接触する半径1.2mmの仮想球体Q(図9,図10参照)が、絶縁碍子10の先端部13の筒状部11と、中心電極20の先端部22(貴金属チップ90も含む)とのそれぞれに対して接触しないように、接地電極230の延伸部236および屈曲部237が設けられる。このことは、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、第1の実施の形態では、主体金具50の先端構成面57を、金具中間体150の端面159の内周側のエッジを面取りして形成した斜面部81と平面部82とにより構成したが、面取りの形態も、大きさも、上記した各条件を満たしつつ、任意に設定してもよい。具体的に、図15に示す、主体金具450のように、先端構成面457を、軸線O方向の前方(先端側)を向く平面部482と、その径方向内周側のエッジを面取りした斜面部481と、径方向外周側のエッジを面取りした斜面部483とから構成してもよい。この場合も、主体金具450の内周面458に連続する斜面部481の、主体金具450の輪郭線上の長さL1が、平面部482の輪郭線上の長さL2や斜面部483の輪郭線上の長さL3より長ければよい。さらには、図16に示す、主体金具550のように、先端構成面557を、径方向内側を向く(つまり軸線O方向の後端側から先端側へ向け拡径される)斜面部581と、径方向外側を向く(つまり軸線O方向の後端側から先端側へ向け縮径される)斜面部583とから構成してもよい。この場合も、主体金具550の内周面558に連続する斜面部581の、主体金具550の輪郭線上の長さL1が、斜面部583の輪郭線上の長さL3より長ければよい。そして、それぞれの斜面部481、581と、それぞれの内周面458、558とがなす角度αについても、上記のように、120°≦α≦150°を満たすとよい。なお、この場合、接地電極側の端面も、各斜面部や平面部の大きさや形状にあわせ、加工すればよい。
また、接地電極30は断面矩形の線材から切り出しにより作製したが、切り出しを行う際に、端面35となる部位に、対斜面部38および対平面部39を形成してもよい。また、第2の実施の形態において、傾斜面形成工程(図12参照)で金具中間体350の先端構成面357の面取りは接地電極230の接合部位を避けて面取りを行うため、形成される平面部383には稜角部361が残ることとなるが、この平面部383における稜角部361をさらに削り取ってもよい。
また、第2の実施の形態では、金具中間体350の先端構成面357に接地電極230の端面235を接合してから、両者の接合部位を避けつつ先端構成面357を切削して斜面部381を形成したが、この面取り加工を接地電極230の接合前に行ってもよい。この場合、先端構成面357に、予め接地電極230の接合部位を定めておき、その接合部位を避けつつ先端構成面357の切削を行って斜面部381を形成した後、接合部位に、接地電極230の端面235を接合すればよい。
また、第1,第2の実施の形態では、それぞれの主体金具50,250の先端構成面57,257に対しC面取りを行ったが、R面取りであってもよい。この場合、第1の実施の形態のスパークプラグ100の製造過程では、接地電極30の端面35の対斜面部38の形状を曲面状にし、R面取りされた金具中間体150の斜面部181に対し、確実に接触できるようにしてもよい。
また、接地電極30,230は、例えばCuなどの熱伝導率の高い芯材を有する構成としてもよい。この場合、端面35,235において芯材を露出させ、露出した芯材を主体金具50,250の先端構成面57,257と接触させた状態で、接地電極30,230と主体金具50、250との接合を行えば、熱引きを行う上で有利である。なお、接地電極30,230と主体金具50,250との溶接強度を維持する点からは、接地電極30,230の端面35,235における芯材の露出を抑えるとよい。こうした場合に、特に第1の実施の形態のように対斜面部38を有する接地電極30であれば、その対斜面部38にて芯材を露出させるようにするとよい。このようにすれば、芯材を対平面部39に露出させる場合と比べ、より広い露出面積を確保して芯材と先端構成面57との接触面積を確保しつつ、芯材の非露出部位(つまり接地電極の外皮材)についても十分に先端構成面57との接触面積を確保することができ、接合強度の維持と熱引き性能の向上との両立が可能である。

Claims (7)

  1. 軸線方向に延びる中心電極と、
    前記軸線方向に延びる軸孔を有し、前記中心電極を前記軸孔内の先端側に保持する絶縁碍子と、
    当該絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで当該絶縁碍子を保持する筒状の主体金具であって、自身の先端側の開口において、前記軸線方向の先端側から前記軸線方向に沿って目視可能な外面により構成される先端構成面が、複数の面により構成される主体金具と、
    一端部が、前記先端構成面を構成する複数の面のうちの少なくとも一つの面に接合され、他端部側が、前記主体金具の内周側に向けて屈曲されて、その他端部と前記中心電極の先端部との間に火花放電間隙が形成された接地電極であって、前記一端部から前記他端部へ向けて前記軸線方向に沿って延びる延伸部、および、当該延伸部と前記他端部との間に自身を屈曲させた屈曲部を有する、ただ一つの接地電極と
    を備えたスパークプラグにおいて、
    前記接地電極の前記屈曲部において、前記中心電極側を向く内面と接触する半径1.2mmの仮想球体を想定したときに、
    当該仮想球体と、前記中心電極および前記絶縁碍子とが非接触の状態となると共に、
    前記主体金具の前記先端構成面を構成する複数の面のうち、前記主体金具の内周面の周方向における少なくとも一部の部位と前記軸線方向に隣り合う面で、前記軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する傾斜面を構成する面を、第1面としたときに、
    前記先端構成面を構成する複数の面が、前記主体金具の前記軸線を含む断面の輪郭線上においてそれぞれ占める長さのうち、その輪郭線上において前記第1面の占める長さが、最も長いことを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記絶縁碍子は、自身の先端部において、
    外径が一定となる筒状部と、
    当該筒状部よりも前記軸線方向の後端側にて当該筒状部に連続し、外径が、前記軸線方向の先端側から後端側へ向けて拡径する外径遷移部と
    を有し、
    前記軸線方向において、前記絶縁碍子の筒状部と前記外径遷移部との境を第1境界とし、前記主体金具の内周面と前記第1面との境を第2境界としたときに、
    前記第2境界が、前記第1境界よりも前記軸線方向の先端側の位置にあることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記仮想球体は、前記軸線方向において、少なくとも前記主体金具の前記先端構成面を構成する複数の面のうちのいずれの面の位置よりも先端側の位置にて、前記屈曲部の前記内面と接触しつつ、前記中心電極および前記絶縁碍子と非接触の状態となることを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記主体金具の前記軸線を含む断面の輪郭線上において、前記主体金具の内周面と前記第1面とがなす角度をαとしたときに、
    120°≦α≦150°を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスパークプラグ。
  5. 前記主体金具は、前記先端構成面を構成する複数の面のうちの一つの面として、前記主体金具の前記軸線に垂直な面、または、前記軸線方向の後端側から先端側へ向けて縮径する傾斜面を構成する面からなる第2面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスパークプラグ。
  6. 請求項5に記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の先端側の開口の端面の少なくとも一部を周方向に研削し、軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する前記第1面を形成すると共に、前記金具中間体の先端部における外面で研削せずに残った面を前記第2面として構成して、前記先端構成面を形成する傾斜面形成工程と、
    前記接地電極の前記一端部側の端面に、前記主体金具の前記第1面との接合が予定される第1接合面と、前記第2面との接合が予定される第2接合面とを形成する接合面形成工程と、
    前記接地電極の前記延伸部の延伸方向を前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の軸線方向に沿わせつつ、前記接地電極の前記一端部を、前記金具中間体の先端構成面に接合する電極接合工程と、
    前記接地電極の前記他端部を前記中心電極の先端部に指向させ、両者の間で火花放電間隙を形成するギャップ形成工程と
    を有することを特徴とするスパークプラグの製造方法。
  7. 請求項5に記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記接地電極の前記延伸部の延伸方向を前記主体金具の原形となる筒状の金具中間体の軸線方向に沿わせつつ、前記接地電極の前記一端部を、前記金具中間体の先端側の開口における端面に接合する電極接合工程と、
    前記接地電極が接合される前記金具中間体の先端側の開口における前記端面の少なくとも一部を、前記接地電極の接合部位を避けつつ周方向に研削し、軸線方向の後端側から先端側へ向けて拡径する前記第1面を形成する傾斜面形成工程と、
    前記接地電極の前記他端部を前記中心電極の先端部に指向させ、両者の間で火花放電間隙を形成するギャップ形成工程と
    を有することを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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