A.第1実施形態:
A−1.スパークプラグの構成:
以下、本発明の実施の態様を実施形態に基づいて説明する。図1は第1実施形態のスパークプラグ100の断面図である。図1の一点破線は、スパークプラグ100の軸線CO(軸線COとも呼ぶ)を示している。軸線COと平行な方向(図1の上下方向)を軸線方向とも呼ぶ。軸線COを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、軸線COを中心とする円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図1における下方向を先端方向D1と呼び、上方向を後端方向D2とも呼ぶ。図1における下側をスパークプラグ100の先端側と呼び、図1における上側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
このスパークプラグ100は、例えば、自動車等のガソリンエンジンや、コージェネレーションシステムまたはヒートポンプに用いられるガスエンジン等の内燃機関に用いられる。スパークプラグ100は、絶縁体としての絶縁碍子10と、中心電極20と、接地電極31を含む挿入部材30と、端子金具40と、主体金具50と、を備える。
絶縁碍子10はアルミナ等を焼成して形成されている。絶縁碍子10は、軸線方向に沿って延び、絶縁碍子10を貫通する貫通孔12(軸孔とも呼ぶ)を有する略円筒形状の部材(筒状体)である。絶縁碍子10は、鍔部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、段部15と、脚部13とを備えている。後端側胴部18は、鍔部19より後端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。先端側胴部17は、鍔部19より先端側に位置し、後端側胴部18の外径より小さな外径を有している。脚部13は、先端側胴部17より先端側に位置し、先端側胴部17の外径よりも小さな外径を有している。脚部13は、略円筒形状を有している。脚部13の先端面13Aには、後述する接地電極31の後端部分が嵌合する凹部131が形成されている。脚部13は、スパークプラグ100が内燃機関(図示せず)に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。段部15は、脚部13と先端側胴部17との間に形成されている。
主体金具50は、導電性の金属材料(具体的には、低炭素鋼材)で形成され、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)にスパークプラグ100を固定するための略筒形状の部材(筒状体)である。主体金具50は、軸線COに沿って貫通する貫通孔59が形成されている。主体金具50は、絶縁碍子10の周囲に配置される。すなわち、主体金具50の貫通孔59内に、絶縁碍子10が挿入・保持されている。絶縁碍子10の先端は、主体金具50の先端より後端方向D2側に位置している。絶縁碍子10の後端は、主体金具50の後端から露出している。
主体金具50は、スパークプラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51と、内燃機関に取り付けるための取付ネジ部52と、工具係合部51と取付ネジ部52との間に形成された鍔状の座部54と、を備えている。ここで、取付ネジ部52の呼び径は、例えば、M10(10mm(ミリメートル))、M12、M14、M18、M20、M24のいずれかとされている。
主体金具50の取付ネジ部52と座部54との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ100が内燃機関に取り付けられた際に、スパークプラグ100と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
主体金具50は、さらに、工具係合部51の後端側に設けられた薄肉の加締部53と、座部54と工具係合部51との間に設けられた薄肉の圧縮変形部58と、を備えている。主体金具50における工具係合部51から加締部53に至る部位の内周面と、絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間に形成される環状の領域には、環状の環状部材6,7が配置されている。当該領域における2つの環状部材6,7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。また、主体金具50の取付ネジ部52は、取付ネジ部52の内周側に突出した棚部55を備えている。
加締部53の後端は、径方向内側に折り曲げられて、絶縁碍子10の外周面に固定されている。主体金具50の圧縮変形部58は、製造時において、絶縁碍子10の外周面に固定された加締部53が先端側に押圧されることにより、圧縮変形する。圧縮変形部58の圧縮変形によって、環状部材6、7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。この結果、環状の板パッキン8を介して、主体金具50の棚部55に、絶縁碍子10の段部15が押圧される。すなわち、棚部55と段部15との間は、板パッキン8を挟んで封止されている。この結果、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁碍子10との隙間から外部に漏れることが、板パッキン8によって防止される。板パッキン8は、例えば、鉄などの金属によって形成される。
スパークプラグ100の先端部近傍の構成の詳細は後述するが、中心電極20は、軸線COに沿って延びる棒状の部材であり、絶縁碍子10の貫通孔12の先端近傍の内部に配置されている。中心電極20の先端は、絶縁碍子10の先端から露出している(図1)。接地電極31を含む挿入部材30は、主体金具50の先端方向D1側から、主体金具50の貫通孔59に挿入されている。
端子金具40は、軸線COに沿って延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で形成され、その表面は、防食のための金属層(例えば、Ni層)がめっきなどによって形成されている。端子金具40は、軸線方向の所定位置に形成された鍔部42(端子顎部)と、鍔部42より後端側に位置するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の脚部43(端子脚部)と、を備えている。端子金具40の後端を含むキャップ装着部41は、絶縁碍子10の後端側に露出している。端子金具40の先端を含む脚部43は、絶縁碍子10の貫通孔12に後端方向D2側から挿入(圧入)されている。キャップ装着部41には、高圧ケーブル(図示外)が接続されたプラグキャップが装着され、火花を発生するための高電圧が印加される。
絶縁碍子10の貫通孔12内において、端子金具40の先端と中心電極20の後端との間の領域には、火花発生時の電波ノイズを低減するための抵抗体4が配置されている。抵抗体4は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料と、を含む組成物で形成されている。貫通孔12内における、抵抗体4と中心電極20との隙間は、導電性シール8Aによって埋められ、抵抗体4と端子金具40との隙間は、ガラスと金属との導電性シール8Bによって埋められている。
A−2:スパークプラグ100の先端近傍の構成:
図2は、スパークプラグ100の先端近傍の断面図である。図2を参照して、スパークプラグ100の先端近傍の構成を、さらに詳しく説明する。図2の断面は、軸線COを含む面でスパークプラグ100を切断した断面である。
中心電極20は、電極母材21と、電極母材21の内部に埋設された芯材22と、を含む構造を有する(図2)。電極母材21は、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(インコネル(アルファベットのINCONELは登録商標)600等)で形成されている。芯材22は、電極母材21を形成する合金よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金で形成されている。
中心電極20は、軸線方向の所定の位置に設けられた鍔部24(電極鍔部、フランジ部とも呼ぶ。)と、鍔部24よりも後端側の部分である頭部23(電極頭部)と、鍔部24よりも先端側の部分である脚部25(電極脚部)と、を備えている。鍔部24は、絶縁碍子10の段部16に支持されている。中心電極20の脚部25は、円柱形状を有している。中心電極20は、主体金具50の先端より後端側に位置している。すなわち、主体金具50の先端は、中心電極20の脚部25の先端より先端方向D1に位置している。
挿入部材30は、接地電極31と、主体金具50と接地電極31とを接続する複数本(例えば、4本)のスポーク32と、を備えている。接地電極31は、略筒形状を有している。接地電極31の内周面は、ギャップ形成面31Aである。すなわち、接地電極31のギャップ形成面31Aによって形成される孔33の内部に、中心電極20の脚部25の先端部分が配置される。この結果、中心電極20の脚部25の先端部分の外周面25Aと、接地電極31のギャップ形成面31Aと、は、軸線COと垂直な方向に対向して、火花ギャップを形成する。脚部25の先端部分の外周面25Aをギャップ形成面25Aとも呼ぶ。
挿入部材30は、主体金具50の貫通孔59の先端側から、貫通孔59に挿入され、貫通孔59のうち、取付ネジ部52に形成されている部分に配置されている。挿入部材30の後端部分は、脚部13の先端に支持されている。すなわち、挿入部材30の4本のスポーク32の後端面は、脚部13の先端面13Aに接触している。そして、挿入部材30の接地電極31の後端部315は、上述した脚部13に形成された凹部131に嵌合している。スポーク32の先端側の面の径方向外側の端部は、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aと、レーザー溶接によって溶接されている。すなわち、スポーク32の径方向外側の端部と、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aと、の間には、レーザー溶接によって形成された溶融部WP1が形成されている。複数本(例えば、4本)のスポーク32は、主体金具50と接地電極31とを接続する接続部と、も呼ぶことができる。溶融部WP1は、スポーク32の外縁に形成され、主体金具50の内周面12Aと接合された接合部とも呼ぶことができる。
挿入部材30、すなわち、接地電極31とスポーク32とは、中心電極20の電極母材21と同様に、耐腐食性の高い金属、例えば、インコネル600などのニッケル合金で形成されている。挿入部材30を形成するニッケル合金は、主体金具50を形成する金属材料(例えば、低炭素鋼材)より、熱膨張率が高い材料、すなわち、熱膨張係数が大きな材料である。
図3、図4を参照して、さらに、挿入部材30について詳しく説明する。図3は、挿入部材30の斜視図である。図4(A)は、後端側から先端方向D1に向かって、挿入部材30を見た図である。図4(B)は、挿入部材30を切断した断面図である。図4(B)の断面図のうち、軸線COより右側の部分は、図4(A)における仮想線VL1と、軸線COと、を含む断面で挿入部材30を切断した断面を示す。図4(B)の断面図のうち、軸線COより左側の部分は、図4(A)における仮想線VL3と、軸線COと、を含む断面で挿入部材30を切断した断面を示す。
スポーク32の軸線方向の長さHは、接地電極31の軸線方向の長さHTより短い(図4(B))。図3、図4の例では、長さHTは、長さHの約2〜3倍程度である。図3、図4の例では、スポーク32の軸線方向の位置は、接地電極31の軸線方向の中央より後端側の位置である。すなわち、接地電極31の先端面は、スポーク32の先端面より先端方向D1に突出している。また、接地電極31の後端面は、スポーク32の後端面より後端方向D2に僅かに突出している。接地電極31のスポーク32の後端面より後端方向D2に突出した部分は、上述した脚部13の凹部131に嵌合する後端部315である。
ここで、スポーク32の本数をK本(Kは2以上の自然数、図3、図4の例では4本)とする。図4において、軸線COを中心とし、K本のスポーク32の径方向外側を通る仮想的な円VCの直径R3は、上述した主体金具50の取付ネジ部52の内周面12A(図2)の内径より僅かに(例えば0.1mm)小さな径である。
各スポーク32は、径方向に沿って延びている。各スポーク32を径方向と垂直な平面で切断した断面は、図3〜図4の例では、矩形である。すなわち、スポーク32は、径方向の長さLの角棒形状を有している。各スポーク32の周方向の長さWと、スポーク32の軸線方向の長さHを用いて、各スポーク32の断面積Sは、H×Wで表すことができる。断面積Sは、1個のスポークを径方向と垂直な平面で切断した断面の面積である。
各スポーク32の径方向の内側の端は、接地電極31の外周面に接続している。したがって、図4(A)に示すように、各スポーク32の径方向の長さLは、上述した仮想的な円VCの直径R3と、接地電極31の外径R2と、の径差の半分である(L=(R3−R2)/2)。
K本のスポーク32は、例えば、角θ1ずつ離れた周方向の位置に配置されている。すなわち、周方向に隣り合う2個のスポーク32が成す角度は、例えば、θ1=(360/K)で表される。図3、図4の例では、K=4であるので、θ1=90度である。(図4(A))。例えば、2個のスポーク32が成す角度は、仮想線VL1と、仮想線VL2と、の間の角度で表すことができる。仮想線VL1、VL2は、それぞれ、軸線COから周方向外側に延び、2個のスポーク32の周方向の中心位置を通る仮想的な線である(図4(A))。
接地電極31は、軸線方向の高さがHTである円筒形状を有している。接地電極31は、先端側部分に形成されたP個の切り欠きNT(Pは自然数、図3、図4の例では4個)を有している。切り欠きNTが形成されている周方向の位置は、接地電極31が各スポーク32と接続している周方向の位置とは、異なる位置である。図3、図4の例では、各切り欠きNTが、互いに隣合う2個のスポーク32の周方向の中間の位置に形成されている。
換言すれば、接地電極31は、切り欠きNTが形成されていない円筒形状を有する上述した後端部315と、P個の切り欠きNTが形成された後端部315より先端側の部分311(先端部311とも呼ぶ)と、を有している(図3、図4(B))。そして、図2に示すように、後端部315と先端部311との内周面は、共に、中心電極20の外周面25Aと対向しており、火花ギャップを形成している。なお、切り欠きNTが形成されていない円筒部315は、周方向に全周に亘って連続する円筒部315とも、言うことができる。
切り欠きNTを形成している接地電極31の表面NTa、NTb、NTc(図4(A)、(B))のうち、軸線COと平行な2個の面NTa、NTbは、図3、図4の例では、互いに平行である。また、切り欠きNTの先端側を形成している接地電極31の表面NTcは、軸線COと垂直である。切り欠きNTの周方向の長さBは、2個の面NTa、NTbの距離で表される。また、切り欠きNTの軸方向の長さAは、接地電極31の先端から、面NTcまでの距離で表される。切り欠きNTの径方向の長さは、接地電極31の径方向の厚さDと等しい、と言える。切り欠きNTの軸方向の長さAは、図3〜図4の例では、スポーク32の軸方向の長さHより長い。
図4(A)に示すように、接地電極31の径方向の厚さDは、接地電極31の外径(円筒部315の外径)R2と、接地電極31の内径(円筒部315の内径)R1と、の径差の半分である(D=(R2−R1)/2)。接地電極31の径方向の厚さDは、切り欠きNTの径方向の長さDと言うこともできる。
図4(B)に示すように、切り欠きNTが形成されている軸方向の範囲(図4(B)の長さAの範囲)と、スポーク32が位置している軸方向の範囲(図4(B)の長さHの範囲)とは、重なっている。すなわち、切り欠きNTと、スポーク32とは、軸線COと垂直な特定の平面(例えば、図4(B)の平面SF)上に、それぞれ配置されている。より具体的には、切り欠きNTの先端は、スポーク32の先端面より先端方向D1に位置し、切り欠きNTの後端は、スポーク32の後端面の近傍に位置している。
以上説明したスパークプラグ100の動作について説明する。スパークプラグ100は、ガスエンジンなどの内燃機関に取り付けられて使用される。所定の電源を含む点火装置(例えば、フルトランジスタ点火装置)によって、スパークプラグ100の接地電極31と中心電極20との間に電圧が印加される。この結果、接地電極31のギャップ形成面31Aと、中心電極20のギャップ形成面25Aとの間に形成される火花ギャップに、火花放電が生じる。火花放電によって、内燃機関の燃焼室内の燃焼ガスが点火される。
このように、スパークプラグ100の先端部は、内燃機関の燃焼室内に曝される。このために、スパークプラグ100の動作によって燃料ガスの燃焼が行われると、スパークプラグ100の先端部の部材、特に、接地電極31やスポーク32を含む挿入部材30は、燃焼エネルギーによって高温になる。したがって、内燃機関の運転中、すなわち、スパークプラグ100の動作中は、スパークプラグ100の挿入部材30の温度は、スパークプラグ100の停止中より大幅に高くなる。一方、主体金具50の取付ネジ部52は、水冷などによって冷却されるエンジンヘッドと接しているために、挿入部材30と比較して高温にはならない。
このようなスパークプラグ100の動作中における温度上昇によって、スポーク32や接地電極31は、熱膨張する。熱膨張に起因して発生する熱応力によって、スパークプラグの構成部材が損傷を受ける可能性がある。例えば、スパークプラグ100の動作状態と停止状態とが繰り返されると、熱膨張によって、スポーク32の径方向の長さLが繰り返し変動する。これによって、スポーク32の径方向外側の端部と、主体金具50の内周面12Aとを接合する溶融部WP1(図4(B))に熱応力が繰り返し加えられる。また、上述したように、主体金具50の取付ネジ部52は、挿入部材30と比較すると、高温にならないので、挿入部材30と比較すると、熱膨張は小さい。このように、取付ネジ部52と挿入部材30との熱膨張の差によっても、溶融部WP1に加えられる熱応力が増大する。この結果、溶融部WP1にクラックが発生する可能性がある。
上記第1実施形態のスパークプラグ100では、接地電極31に切り欠きNTが形成されている。これによって、接地電極31の先端部311が撓みやすくされている。この結果、熱膨張によって、例えば、スポーク32の径方向の長さLが変動した場合であっても、接地電極31の先端部311が僅かに撓むことによって、熱膨張によって発生する熱応力を効果的に緩和することができる。したがって、熱応力によるスパークプラグ100の損傷、例えば、溶融部WP1にクラックが発生することを抑制することができる。この結果、スパークプラグ100の耐久性能を向上することができる。
また、上述したように、上記第1実施形態のスパークプラグ100では、切り欠きNTと、スポーク32は、軸線方向と垂直な特定の平面(例えば、平面SF(図4(B))上に、それぞれ配置されている。この結果、スポーク32や接地電極31の熱膨張に起因する熱応力を、スポーク32と同じ平面上に配置された切り欠きNTによって効果的に緩和することができる。具体的には、上述したように、熱応力は、主として、熱膨張によってスポーク32の径方向の長さLが変動することに起因する。しがって、スポーク32と、接地電極31の切り欠きNTとが、軸線COと垂直な特定の平面(すなわち、任意の径方向と平行な特定の平面)上に、配置されていると、接地電極31のうち当該特定の平面上の先端部311が撓みやすい。この結果、熱膨張によって発生する熱応力を、より効果的に緩和することができる。
さらに、上記第1実施形態のスパークプラグ100では、切り欠きNTの軸方向の長さA(図4(B))は、スポーク32の軸線方向の長さHに対して十分に長い。具体的には、長さAは、長さHより長い。切り欠きNTの軸方向の長さAが長いほど、切り欠きNTが大きくなる。この結果、十分に大きな切り欠きNTによって、熱膨張によって発生する熱応力をさらに効果的に緩和することができる。
さらに、接地電極31は、円筒部315を含む。換言すれば、接地電極31は、複数個に分離されていない。例えば、切り欠きNTに代えて、切り欠きNTと同じ周方向の長さBを有する隙間を形成すると、接地電極31が複数個に分離される。接地電極31は、円筒部315を含むので、接地電極31の剛性が過度に低下することを抑制することができる。この結果、例えば、熱応力を緩和しつつも、火花ギャップの変動を抑制することができる。また、火花ギャップの精度を確保できるように、接地電極31を作製することが容易になる。さらに、円筒部315の内周面の少なくとも一部が、火花ギャップを形成するので、接地電極31のギャップ形成面31Aと、中心電極20のギャップ形成面25Aとが、対向する面積が小さくなることを抑制することができる。この結果、接地電極31と中心電極20との間の火花放電が局所的になって、接地電極31や中心電極20が消耗することを抑制することができる。すなわち、接地電極31や中心電極20の耐消耗性を向上することができる。
接地電極31を含む挿入部材30は、主体金具50と比較して熱膨張率が高い材料によって形成されている。すなわち、主体金具50は、低炭素鋼材によって形成されている。挿入部材30は、低炭素鋼材より熱膨張率が高いニッケル合金によって形成されている。この結果、例えば、主体金具50と挿入部材30との熱膨張率が等しい場合と比較して、主体金具50と挿入部材30とを接合する溶融部WP1に大きな熱応力が発生しやすい。上記第1実施形態のスパークプラグ100では、接地電極31に切り欠きNTが形成されていることによって、大きくなりがちな熱応力を効果的に緩和することができる。
また、上記第1実施形態のスパークプラグ100では、複数本のスポーク32のうち、周方向に隣り合う2個のスポークの全てについて、2個のスポークの間の角度θ1(図4(A))は、180度以下である。例えば、図3、図4の例では、θ1は90度である。この場合には、特に、主体金具50と挿入部材30とを接合する溶融部WP1に大きな熱応力が発生しやすい。上記第1実施形態のスパークプラグ100では、接地電極31に切り欠きNTが形成されていることによって、大きくなりがちな熱応力を効果的に緩和することができる。
A−3.第1評価試験:
第1評価試験では、比較形態のスパークプラグのサンプル1−1と、第1実施形態のスパークプラグ100の45種類のサンプル1−2〜1−46を作成し、評価試験を行った。各サンプルに共通な寸法は、以下の通りである。
仮想的な円VCの直径R3(図4(A)参照):13mm
接地電極31の軸方向の長さHT:6mm
なお、比較形態のスパークプラグのサンプル1−1の接地電極は、切り欠きが形成されていない円筒形状を有している(P=0)。一方、第1実施形態のサンプル1−2〜1−46の挿入部材30は、切り欠きNTを有している。
表1に示すように、本評価試験の第1実施形態のスパークプラグ100の45種類のサンプル1−2〜1−46を、5種類のサンプル群G1〜G5に分けて説明する。4種類のサンプル群G1〜G4の間では、スポーク32の構成が互いに異なる。具体的には、4種類のサンプル群G1〜G4の間では、スポーク32の本数Kと、1本のスポーク32の断面積S(単位は平方mm)と、1本のスポーク32の径方向の長さL(単位はmm)と、のうちの少なくとも1個が異なっている。サンプル群G5のスポーク32の構成は、サンプル群G2と同じである。
具体的には、サンプル群G1、G3、G4では、スポーク32の本数Kは、「3」であり、サンプル群G2、G5では、スポーク32の本数Kは、「4」である。また、サンプル群G1、G2、G4、G5では、1本のスポーク32の断面積Sは、4平方mmであり、サンプル群G3では、1本のスポーク32の断面積Sは、5平方mmである。断面積Sは、スポーク32の周方向の長さWを変更することによって、変更された(S=H×W)。サンプル群G1〜G3、G5では、1本のスポーク32の径方向の長さLは、2.7mmであり、サンプル群G4では、1本のスポーク32の径方向の長さLは、3mmである。径方向の長さLは、スポーク32の接地電極31の外径R2を変更することによって、変更された(L=(R3−R2)/2)。
なお、表1に示すV1は、V1=(K×S×L)の式によって算出される。V1は、K本のスポーク32の体積の合計値を表す(単位は立方mm)。
さらに、サンプル群G1、G3、G4では、接地電極31に形成された切り欠きNTの個数Pが3個である。すなわち、サンプル群G1、G3、G4の各サンプルの接地電極31には、3本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置に、それぞれ1個ずつ、合計3個の切り欠きNTが形成されている。
サンプル群G2では、接地電極31に形成された切り欠きNTの個数Pが4個である。すなわち、サンプル群G2の各サンプルの接地電極31には、4本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置に、それぞれ1個ずつ、合計4個の切り欠きNTが形成されている(図3、図4の例と同様)。
サンプル群G5では、接地電極31に形成された切り欠きNTの個数Pが2個である。すなわち、サンプル群G5の各サンプルの接地電極31には、4本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置のうち、2個の位置に切り欠きNTが形成され、残りの2個の位置には切り欠きNTが形成されていない。なお、2個の切り欠きNTは、軸線COを挟んで径方向に対向する位置に形成されている。
表1に示すように、各サンプル群G1〜G4に含まれる9個ずつのサンプルの間では、1個の切り欠きNTのサイズが互いに異なっている。例えば、各サンプルの切り欠きNTの軸方向の長さAは、3mm、4mm、5mmのうちのいずれかの値とされている。各サンプルの切り欠きNTの周方向の長さBは、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2mm、2.25mm、2.5mm、2.75mmのうちのいずれかの値とされている。また、切り欠きNTの径方向の長さを表す接地電極31の径方向の厚さDは、0.75mm、1mm、1.25mmのいずれかの値とされている。
なお、表1に示すV2は、V2=(P×A×B×D)の式によって算出される。V2は、P個の切り欠きNTの容積の合計値を表す(単位は立方mm)。
さらに、表1には、(V1/V2)の値が示されている。(V1/V2)は、換言すれば、切り欠きNTの容積の合計値V2に対するスポークの体積の合計値V1の比率を表している。
第1評価試験では、スパークプラグ100の各サンプルの先端部近傍(主体金具50の先端部近傍)の加熱と冷却とのサイクルを1000回繰り返した。具体的には、1回のサイクルは、各サンプルの先端部近傍を、バーナーで2分間に亘って加熱し、続けて、1分間に亘って空気中で冷却する、というものである(冷熱試験とも呼ぶ)。2分間の加熱によって、主体金具50の先端部の温度が所定の目標温度に到達するように、バーナーの強度を調節した。その後、先端方向D1方向側から後端方向D2に向かって目視することによって、挿入部材30と主体金具50とを接合する溶融部WP1にクラックが発生しているか否かを確認した。
なお、各サンプルは、2個ずつ準備されて、目標温度が摂氏1000度である冷熱試験と、目標温度が摂氏1100度である冷熱試験と、がサンプルごとに行われた。
目標温度が摂氏1000度の試験でクラックが発生したサンプルの評価を「×」とした。また、目標温度が摂氏1000度の冷熱試験でクラックが発生せず、かつ、目標温度が摂氏1100度の冷熱試験でクラックが発生したサンプルの評価を「○」とした。目標温度が摂氏1000度の冷熱試験でクラックが発生せず、かつ、目標温度が摂氏1100度の冷熱試験でクラックが発生しなかったサンプルの評価を「◎」とした(表1)。
表1に示すように、比較形態のスパークプラグのサンプル、すなわち、接地電極に切り欠きが形成されていないサンプル1−1の評価結果は、「×」であった。第1実施形態の45種のサンプル、すなわち、接地電極31に切り欠きNTが形成されているサンプル1−2〜1−46の評価は、「○」および「◎」のうちのいずれかであった。
この結果より、接地電極31に切り欠きNTを形成することによって、スパークプラグ100の損傷、具体的には、溶融部WP1の損傷を抑制できることが、実証された。
さらに、詳細には、第1実施形態のスパークプラグ100の45種のサンプル1−2〜1−46のうち、(V1/V2)が2を超えている16種のサンプル1−2、1−5、1−8、1−11、1−14、1−17、1−20、1−26、1−29、1−35、1−38、1−39、1−41、1−42、1−44、1−45の評価は「○」であった。第1実施形態のスパークプラグ100の45種のサンプル1−2〜1−46のうち、上記16種のサンプルを除く、29種のサンプルの評価は、「◎」であった。すなわち、45種のサンプル1−2〜1−46のうち、(V1/V2)が2以下である全てのサンプルの評価は、「◎」であった。
この理由は、以下のように考えられる。各スポーク32によって溶融部WP1に加えられる力は、熱応力(単位は、例えば、N/平方mm)に、各スポーク32の断面積S(単位は、例えば、平方mm)を乗じた値(単位は、例えば、N)であると、考えられる。また、各スポーク32の径方向の長さLが大きいほど、熱膨張による各スポーク32の径方向の長さLの膨張量が大きくなるので、各スポーク32によって溶融部WP1に加えられる力が大きくなる。したがって、各スポーク32によって溶融部WP1に加えられる力は、各スポーク32の断面積Sと径方向の長さLとの積(S×L)、すなわち、各スポーク32の体積が大きいほど大きくなると考えられる。したがって、K本のスポーク32によって溶融部WP1に加えられる力は、V1の値、すなわち、K本のスポーク32の体積の合計値が大きいほど、大きくなると考えられる。
一方、V2の値、すなわち、切り欠きNTの容積の合計値が大きいほど、接地電極31の剛性が低下する。この結果、V2の値が大きいほど、接地電極31の先端部311が撓みやすくなり、熱応力を緩和できる程度が大きくなる。このために、切り欠きNTの容積の合計値V2に対して、スポーク32の体積の合計値V1が比較的小さい場合には、すなわち、(V1/V2)が2以下である場合には、熱応力をより効果的に緩和できると考えられる。
換言すれば、K本のスポーク32のサイズ(すなわち、SとLの値)が互いに等しく、P個の切り欠きNTのサイズ(すなわち、AとBとDの値)が互いに等しい場合には、以下の式(3)が満たされることがより好ましいことが解った。
(K×S×L)/(P×A×B×D)≦2 ...(3)
こうすれば、熱応力をより効果的に緩和することによって、スパークプラグ100の損傷をより効果的に抑制することができる。なお、上述したように、スポークの本数Kや、切り欠きNTの個数Pを変更しても、上記式(3)を満たすサンプルでは、評価が「◎」であり、上記式(3)を満たさないサンプルでは、評価が「○」であった。このことから、スポークの本数Kや、切り欠きNTの個数Pに、拘わらずに、上記式(3)を満たす場合には、スパークプラグ100の損傷をより効果的に抑制することができると考えられる。
B.第2実施形態:
B−1.構成:
第2実施形態のスパークプラグは、第1実施例の挿入部材30(図3、図4)に代えて、挿入部材30Bを備えている。図5は、挿入部材30Bの斜視図である。図6(A)は、後端側から先端方向D1に向かって、挿入部材30Bを見た図である。図6(B)は、軸線COを含む面C2−C2(図5(A))で挿入部材30Bを切断した断面図である。第2実施形態のスパークプラグの挿入部材30B以外の構成は、第1実施形態のスパークプラグ100(図1、図2)と同一である。このため、第2実施形態のスパークプラグの全体の構成図は省略し、挿入部材30B以外の構成については、図1、図2の符号を用いる。
図5の挿入部材30Bは、第1実施例の接地電極31(図3、図4)とは異なる接地電極31Bと、第1実施例のスポーク32と同一のスポーク32を備えている。このために、スポーク32の構成、および、寸法については、説明を省略し、図3、4と同一の符号を用いる。
接地電極31Bは、P個の切り欠きNTに代えて、P個の溝GRを有している点が、第1実施例の接地電極31(図3、図4)と、異なる。接地電極31Bのその他の構成は、第1実施例の接地電極31と同一である。このために、接地電極31Bの内径、外径、径方向の厚さ、軸方向の長さは、第1実施形態の接地電極31の径方向の内径、外径、径方向の厚さ、軸方向の長さと同じ符号「R1」「R2」「D」「HT」を用いてそれぞれ表す。
接地電極31Bは、略円筒形状を有している。第1実施形態の接地電極31と異なり、切り欠きNTが形成されていないので、接地電極31Bは軸方向の全長において、周方向の全周に亘って連続している。
溝GRが形成されている周方向の位置は、第1実施例の切り欠きNTと同様に、接地電極31Bが各スポーク32と接続している周方向の位置とは、異なる位置である。図5、図6の例では、各溝GR、互いに隣合う2個のスポーク32の周方向の中間の位置に形成されている。また、溝GRは、接地電極31Bの先端から後端まで軸線方向に沿って延びている。換言すれば、溝GRは、接地電極31Bの軸方向の全長に亘って形成されている。
溝GRは、例えば、軸方向と垂直な断面が、円弧形状を有している。溝GRの径方向の長さの最大値を、溝GRの径方向の深さEとする。また、溝GRの周方向の長さをFとする。
図6(B)に示すように、溝GRが形成されている軸方向の範囲(図6(B)の長さHTの範囲と、スポーク32が位置している軸方向の範囲(図6(B)の長さHの範囲)とは、重なっている。すなわち、溝GRと、スポーク32とは、軸線COと垂直な特定の平面(例えば、図6(B)の平面SFB)上に、それぞれ配置されている。
以上説明した第2実施形態のスパークプラグでは、接地電極31Bに溝GRが形成されていることによって、接地電極31Bが撓みやすくされている。この結果、第1実施形態のスパークプラグ100と同様に、熱膨張によって、例えば、スポーク32の径方向の長さLが変動した場合であっても、接地電極31Bが僅かに撓むことによって、熱膨張によって発生する熱応力を効果的に緩和することができる。したがって、熱応力によるスパークプラグの損傷、例えば、溶融部WP1にクラックが発生することを抑制することができる。この結果、スパークプラグの耐久性能を向上することができる。
また、上述したように、上記第2実施形態のスパークプラグでは、溝GRと、スポーク32は、軸線方向と垂直な特定の平面(例えば、平面SFB(図6(B))上に、それぞれ配置されている。この結果、スポーク32や接地電極31Bの熱膨張に起因する熱応力を、スポーク32と同じ平面上に配置された溝GRによって効果的に緩和することができる。
さらに、上記第3実施形態のスパークプラグ100では、溝GRは、接地電極31Bの先端から後端まで軸線方向に沿って延びている。この結果、より接地電極31Bが撓みやすい。この結果、熱膨張によって発生する熱応力をさらに効果的に緩和することができる。
さらに、接地電極31Bは、切り欠きNTに代えて溝GRを備えることによって、軸方向の全長において、周方向の全周に亘って連続している。この結果、接地電極31Bの剛性が過度に低下することを抑制することができる。この結果、例えば、熱応力を緩和しつつも、火花ギャップの変動を抑制することができる。また、火花ギャップの精度を確保できるように、接地電極31を作製することが容易になる。また、接地電極31Bのギャップ形成面31BAは、第1実施例の接地電極31のギャップ形成面31Aより広い。この結果、接地電極31と中心電極20との間の火花放電が局所的になって、接地電極31Bや中心電極20が消耗することを抑制することができる。すなわち、接地電極31Bや中心電極20の耐消耗性を向上することができる。
なお、接地電極31Bを含む挿入部材30Bは、第1実施形態の挿入部材30と同様に、主体金具50の材料(具体的には、低炭素鋼材)と比較して熱膨張率が高い材料(具大意的には、ニッケル合金)によって形成されている。したがって、上記第2実施形態のスパークプラグでは、接地電極31Bに溝GRが形成されていることによって、大きくなりがちな熱応力を効果的に緩和することができる。
また、上記第2実施形態のスパークプラグでは、第1実施形態のスパークプラグ100と同様に、複数本のスポーク32のうち、周方向に隣り合う2個のスポークの全てについて、2個のスポークの間の角度θ1(図6(A))は、180度以下である。図4の例では、θ1は90度である。この場合には、特に、主体金具50と挿入部材30とを接合する溶融部WP1に大きな熱応力が発生しやすい。したがって、上記第2実施形態のスパークプラグでは、接地電極31Bに溝GRが形成されていることによって、大きくなりがちな熱応力を効果的に緩和することができる。
B−2.第2評価試験:
第2評価試験では、比較形態のスパークプラグのサンプル2−1と、第2実施形態のスパークプラグの50種類のサンプル2−2〜2−51を作成し、評価試験を行った。各サンプルに共通な寸法は、以下の通りである。
仮想的な円VCの直径R3(図6(A)参照):13mm
接地電極31の軸方向の長さHT:6mm
なお、比較形態のスパークプラグのサンプル2−1の接地電極は、溝GRが形成されていない円筒形状を有している(P=0)。一方、第2実施形態のサンプル2−2〜2−51の挿入部材30Bは、溝GRを有している。
表2に示すように、本評価試験の第2実施形態のスパークプラグの50種類のサンプル2−2〜2−51を、5種類のサンプル群G6〜G10に分けて説明する。4種類のサンプル群G6〜G9の間では、スポーク32の構成が互いに異なる。具体的には、サンプル群G6〜G9における、スポーク32の本数Kと、1本のスポーク32の断面積S(単位は平方mm)と、1本のスポーク32の径方向の長さL(単位はmm)とは、第1実施形態の4種類のサンプル群G1〜G4(表1)と、それぞれ同じである。サンプル群G10のスポーク32の構成は、サンプル群G7と同じである。
なお、表2に示すV1は、表1におけるV1と同様に、V1=(K×S×L)の式によって算出される。
さらに、サンプル群G6、G8、G9では、接地電極31Bに形成された溝GRの個数Pが3個である。すなわち、サンプル群G6、G8、G9の各サンプルの接地電極31Bには、3本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置に、それぞれ1個ずつ、合計3個の溝GRが形成されている。
サンプル群G7では、接地電極31Bに形成された溝GRの個数Pが4個である。すなわち、サンプル群G7の各サンプルの接地電極31Bには、4本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置に、それぞれ1個ずつ、合計4個の溝GRが形成されている(図5、図6の例と同様)。
サンプル群G10では、接地電極31Bに形成された溝GRの個数Pが2個である。すなわち、サンプル群G10の各サンプルの接地電極31Bには、4本のスポーク32のうちの周方向に隣合う2本ずつのスポークの間の周方向の位置のうち、2個の位置に溝GRが形成され、残りの2個の位置には溝GRが形成されていない。なお、2個の溝GRは、軸線COを挟んで径方向に対向する位置に形成されている。
なお、表2には、スポーク32の軸方向の長さHが示されている(単位はmm)。各サンプルのスポーク32は、表2に示す断面積Sを有するように、表2に示す軸方向の長さHに応じてスポーク32の周方向の長さWが調整されている。
表2に示すように、各サンプル群G6〜G10に含まれる複数個のサンプルの間では、1個の溝GRのサイズが互いに異なっている。例えば、各サンプルの溝GRの周方向の長さFは、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2mm、2.2mmのうちのいずれかの値とされている。各サンプルの溝GRの径方向の深さEは、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mmのうちのいずれかの値とされている。また、接地電極31Bの径方向の厚さDは、1mm、1.25mmのいずれかの値とされている。
なお、表1に示すV3は、V3={P×(H×E×F)×(E/D)}の式によって算出される。(H×E×F)は、1個の溝GRのうち、スポーク32の軸線方向の長さHに相当する部分GRU(図5のハッチングされた部分)の容積の概算値を表す。(E/D)は、接地電極31Bの径方向の厚さDに対する溝GRの深さEの比率を表す。
さらに、表2には、(V1/V3)の値が示されている。
第2評価試験では、第1評価試験と同様に、スパークプラグの各サンプルが、2個ずつ準備されて、目標温度が摂氏1000度である冷熱試験と、目標温度が摂氏1100度である冷熱試験と、がサンプルごとに行われた。
第2評価試験では、第1評価試験と同様に、目標温度が摂氏1000度の冷熱試験でクラックが発生したサンプルの評価を「×」とした。また、目標温度が摂氏1000度の冷熱試験でクラックが発生せず、かつ、目標温度が摂氏1100度の冷熱試験でクラックが発生したサンプルの評価を「○」とした。目標温度が摂氏1000度の冷熱試験でクラックが発生せず、かつ、目標温度が摂氏1100度の冷熱試験でクラックが発生しなかったサンプルの評価を「◎」とした(表2)。
表2に示すように、比較形態のスパークプラグのサンプル、すなわち、接地電極に溝GRが形成されていないサンプル2−1の評価結果は、「×」であった。第2実施形態の50種のサンプル、すなわち、接地電極31Bに溝GRが形成されているサンプル2−2〜2−51の評価は、「○」および「◎」のうちのいずれかであった。
この結果より、接地電極31Bに溝GRを形成することによって、スパークプラグの損傷、具体的には、溶融部WP1の損傷を抑制できることが、実証された。
さらに、詳細には、第2実施形態のスパークプラグの50種のサンプル2−2〜2−51のうち、(V1/V3)が8を超えている34種のサンプル2−2、2−6、2−7、2−9、2−12、2−16、2−17、2−19、2−22〜2−33、2−35〜2−40、2−42、2−43、2−45〜2−50の評価は「○」であった。第2実施形態のスパークプラグの50種のサンプル2−2〜2−51のうち、上記34種のサンプルを除く、16種のサンプルの評価は、「◎」であった。すなわち、50種のサンプル2−2〜2−51のうち、(V1/V3)が8以下である全てのサンプルの評価は、「◎」であった。
この理由は、以下のように考えられる。第1評価試験と同様に、V1の値、すなわち、スポーク32の体積の合計値が大きいほど、スポーク32の径方向の長さLが熱膨張によって変動することによって溶融部WP1に加えられる力が大きくなる。
一方、P×(H×E×F)の値、すなわち、K個の溝GRのスポーク32の軸線方向の長さHに相当する部分GRUの概算容積の合計値が大きいほど、接地電極31Bが撓みやすくなる。また、(E/D)の値、すなわち、接地電極31Bの径方向の厚さDに対する溝GRの深さEの比率が、大きいほど、接地電極31Bが撓みやすくなる。このため、これらの2個の値を乗じて得られるV3={P×(H×E×F)×(E/D)}の値は、接地電極31Bが撓みやすさを表す指標値として用いることができると考えられる。すなわち、V3が大きいほど、接地電極31Bが撓みやすくなり、熱応力を緩和できる程度が大きくなる、と考えられる。
このために、指標値V3に対して、スポーク32の体積の合計値V1が比較的小さい場合には、すなわち、(V1/V3)が8以下である場合には、熱応力をより効果的に緩和できると考えられる。
換言すれば、K個のスポーク32のサイズ(すなわち、SとLとHの値)が互いに等しく、P個の溝GRのサイズ(すなわち、EとFの値)が互いに等しい場合には、以下の式(4)が満たされることがより好ましいことが解った。
(K×S×L)/{P×(H×E×F)×(E/D)}≦8 ...(4)
こうすれば、熱応力をより効果的に緩和することによって、スパークプラグの損傷をより効果的に抑制することができる。なお、上述したように、スポークの本数Kや、溝GRの個数Pを変更しても、上記式(4)を満たすサンプルでは、評価が「◎」であり、上記式(4)を満たさないサンプルでは、評価が「○」であった。このことから、スポークの本数Kや、溝GRの個数Pに、拘わらずに、上記式(4)を満たす場合には、スパークプラグの損傷をより効果的に抑制することができると考えられる。
D.変形例:
(1)上記各実施形態の挿入部材30、30Bでは、スポーク32の軸方向の長さHより、接地電極31、31Bの軸方向の長さHTが長い。これに代えて、接続部の長さと、接地電極と、の軸方向の長さが等しくても良い。
図7は、本変形例の挿入部材30Cの一例の斜視図、および、断面図である。この挿入部材30Cは、軸方向の長さがHである第1実施例のスポーク32(図3、4)と同一のスポーク32と、軸方向の長さがスポーク32と同一のHである接地電極31Cと、を備えている。
接地電極31Cには、第1実施例の接地電極31と同様に、切り欠きNTCが形成されている。すなわち、接地電極31は、後端側に、周方向に全周に亘って連続する円筒部315Cを備え、先端側に、切り欠きNTCが形成された先端部311Cを備えている。
接地電極31Cでは、切り欠きNTCの軸方向の長さA2は、第1実施形態とは異なり、スポーク32の軸方向の長さHより短く、スポーク32の軸方向の長さHの半分以上である((H/2)≦A2<H)。このように、切り欠きの軸方向の長さは、スポークの軸方向の長さの半分以上であることが好ましい。こうすれば、スポークや接地電極の熱膨張に起因する熱応力を、比較的大きな切り欠きによって、効果的に緩和することができる。
(2)上記第1実施形態では、K個のスポーク32のサイズは同じである。これに代えて、K個のスポーク32のサイズは互いに異なっていても良い。具体的には、K=3である場合には、3本のスポーク32の断面積は、それぞれ、S(1)、S(2)、S(3)であっても良く、3本のスポークの径方向の長さは、それぞれ、L(1)、L(2)、L(3)であっても良い。より一般的に言えば、K個のスポーク32を識別する識別番号n(nはK以下の自然数、n=1、2、...、K)とする。K本のスポーク32の断面積は、S(n)で表すことができる。K個の値S(n)は、第1実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。また、K本のスポークの径方向の長さは、L(n)で表すことができる。K個の値L(n)は、第1実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。
同様に、上記第1実施形態のP個の切り欠きNTのサイズは、それぞれ同じであるが、これに代えて、P個の切り欠きNTのサイズは、互いに異なっていても良い。一般的に言えば、P個の切り欠きNTを識別する識別番号m(mはP以下の自然数、m=1、2、...、P)とする。P個の切り欠きNTの軸方向の長さは、A(m)で表すことができる。P個の値A(m)は、第1実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。また、P個の切り欠きNTの周方向の長さは、B(m)で表すことができる。P個の値B(m)は、第1実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。
K本のスポークのサイズが互いに異なる場合であっても、K本のスポーク32の体積の合計値V1が大きいほど、K本のスポーク32の熱膨張によって溶融部WP1に加えられる力が大きくなる。また、P個の切り欠きNTのサイズが互いに異なる場合であっても、切り欠きNTの容積の合計値V2が大きいほど、接地電極31が撓みやすくなり、熱応力を緩和できる程度が大きくなる。したがって、上述したように、V1/V2≦2が満たされることが好ましい。
したがって、より一般的には、スポークの本数をKとし(Kは2以上の自然数)、n番目のスポークの断面積をS(n)とし(nはK以下の自然数)、n番目のスポークの径方向の長さをL(n)とし、切り欠きの個数をPとし(Pは自然数)、m番目の切り欠きの軸方向の長さをA(m)とし(mはP以下の自然数)、m番目の切り欠きの前記周方向の長さをB(m)とし、接地電極の径方向の厚さをDとするとき、以下の式(5)を満たすことが好ましい。
(3)上記第2実施形態においてもK個のスポーク32のサイズは互いに異なっていても良い。すなわち、上記第2実施形態においても、K個のスポーク32を識別する識別番号n(nはK以下の自然数、n=1、2、...、K)を用いて、K本のスポーク32の断面積は、S(n)で表すことができる。K本のスポークの径方向の長さは、L(n)で表すことができる。
同様に、上記第2実施形態のP個の溝GRのサイズは、それぞれ同じであるが、これに代えて、P個の溝GRのサイズは、互いに異なっていても良い。一般的に言えば、P個の溝GRを識別する識別番号m(mはP以下の自然数、m=1、2、...、P)とする。P個の溝GRの周方向の長さをF(m)で表すことができる。P個の値F(m)は、第2実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。また、P個の溝GRの径方向の深さをE(m)で表すことができる。P個の値E(m)は、第2実施形態のように同じ値であっても良く、互いに異なっていても良い。
K本のスポークのサイズが互いに異なる場合であっても、K本のスポーク32の体積の合計値V1が大きいほど、K本のスポーク32の熱膨張によって溶融部WP1に加えられる力が大きくなる。また、P個の溝GRのサイズが互いに異なる場合であっても、指標値V3が大きいほど、接地電極31Bが撓みやすくなり、熱応力を緩和できる程度が大きくなる。したがって、上述したように、V1/V3≦8が満たされることが好ましい。指標値V3を算出する際に用いられるスポーク32の軸方向の長さHも、スポーク32ごとに異なり得る。この場合には、指標値V3の算出には、スポーク32の軸方向の長さHとして、K本のスポーク32の平均値を用いれば良い。
したがって、より一般的には、スポークの本数をKとし(Kは2以上の自然数)、n番目のスポークの断面積をS(n)とし(nはK以下の自然数)、n番目のスポークの径方向の長さをL(n)とし、K本のスポークの軸方向の長さの平均値をHとし、溝の個数をPとし(Pは自然数)、m番目の溝の周方向の長さをF(m)とし(mはP以下の自然数)、m番目の溝の径方向の深さE(m)とし、接地電極の径方向の厚さをDとするとき、以下の式(6)を満たすことが好ましい。
(4)上記各実施形態では、接地電極31は、略円筒形状を有しているが、これに限られない。接地電極31は、円筒形状を有していなくても良い。図8は、変形例の挿入部材30D、30Eを示す図である。図8(A)、図8(B)は、それぞれ、変形例の挿入部材30D、30Eを後端側から見た図を示している。図8(A)の挿入部材30Dは、2本のスポーク32Dと、軸線COと垂直な断面が略四角形の角筒形状を有する接地電極31Dと、を有している。この場合には、スポーク32Dの本数は、2本であるので、2本のスポーク32Dの間の角θ1は、180度である。
接地電極31Dの先端部には、2本のスポーク32Dが接続している周方向の位置とは異なる位置に、2個の切り欠きNTDが形成されている。このように、接地電極31Dの形状が円筒ではない場合には、切り欠きNTDが形成されている部分における接地電極31Dの厚さDは、第1実施形態のように、径差(D=(R2−R1)/2)を用いて表すことはできない。この場合には、切り欠きNTが形成されている部位の先端側の部分における接地電極31Dの厚さDが、上記式(5)を満たすか否かを計算する際における接地電極31Dの厚さDとして用いられる。また、スポーク32Dの径方向の長さLも、第1実施形態のように、径差(L=(R3−R2)/2)を用いて表すことはできない。この場合には、後端側から軸線COに沿って見た場合に(図8(A))、スポーク32Dの2つの側面と、接地電極31Dの側面とが、接続している2個の点をP1、P2とする。そして、2個の点P1、P2を結ぶ仮想的な線分SL1の中点PC1から、スポーク32Dの径方向外側の端SL2までの径方向の長さが、上記式(5)を満たすか否かを計算する際におけるスポーク32Dの径方向の長さLとして用いられる。
図8(B)の挿入部材30Eは、図8(A)の挿入部材30Dと同様に、2本のスポーク32Eと、軸線COと垂直な断面が略四角形の角筒形状を有する接地電極31Eと、を有している。接地電極31Dの側面には、2本のスポーク32Eが接続している周方向の位置とは異なる位置に、2個の溝GREが形成されている。このように、接地電極31Eの形状が円筒ではない場合には、溝GREが形成されている部分における接地電極31Eの厚さDは、第2実施形態のように、径差(D=(R2−R1)/2)を用いて表すことはできない。この場合には、後端側から軸線COに沿って見た場合に(図8(B))、接地電極31Eの側面上の溝GREのエッジに位置する2個の点を、P3、P4とする。そして、2個の点P3、P4を結ぶ仮想的な直線SL3の中点PC2と、接地電極31Eの内側側面31EAとの間の径方向の長さが、上記式(6)を満たすか否かを計算する際における接地電極31Eの厚さDとして用いられる。また、仮想的な直線SL3の中点PC2から、溝GREの底部までの径方向の長さが、上記式(6)を満たすか否かを計算する際における溝GREの径方向の深さEとして用いられる。
また、スポーク32Eの径方向の長さLは、上記第2実施形態のように、径差(L=(R3−R2)/2)を用いて表すことはできない。この場合には、スポーク32Eの2つの側面と、接地電極31Dの側面とが、接続している2個の点をP5、P6とする。上述した図8(A)の挿入部材30Dのスポーク32Dと同様に、2個の点P5、P6を結ぶ仮想的な直線SL4の中点PC3から、スポーク32Eの径方向外側の端SL5までの径方向の長さが、上記式(6)を満たすか否かを計算する際におけるスポーク32Eの径方向の長さLとして用いられる。
(5)上記各実施形態の主体金具50の先端近傍(図2)は、別の部材で形成されていても良い。具体的には、主体金具50のうち、取付ネジ部52の先端側の部分が主体金具50とは別体の導電性の筒部材で形成され、主体金具50の先端に溶接されていても良い。そして、当該別体の導電性の筒部材に、挿入部材30が接合されていても良い。また、主体金具50のうち、取付ネジ部52の全体が主体金具50とは別体の導電性の筒部材で形成され、主体金具50の先端に溶接されていても良い。以上の説明から解るように、上記各実施形態では、主体金具50が、特許請求の範囲における「導電体」に対応し、本変形例では、主体金具50と、主体金具50の先端に溶接された導電性の筒部材と、の全体が、特許請求の範囲における「導電体」に対応する。
(6)上記各実施形態の溝GRや切り欠きNTの形成位置や形状は一例であり、これに限られない。例えば、図3、図4の切り欠きNTは、接地電極31の先端側に設けられているが、後端側に設けられても良い。また、図3、図4の切り欠きNTは、接地電極31の先端側と、後端側と、の両方に設けられてもよい。例えば、切り欠きNTが形成される軸線方向の位置が、スポーク32の軸線方向の位置と重なっていることが好ましいので、接地電極31の形状や接地電極31に対するスポーク32の軸線方向の位置に応じて、切り欠きNTの形成位置や形状は、適宜に変更される。また、図5、図6の溝GRは、接地電極31Bの軸方向の全長に亘って形成されることなく、軸方向に沿って一部の領域に形成されていても良い。接地電極は、溝および切り欠きのうちの少なくとも一方を、少なくとも1個有していれば良い。こうすれば、溝や切り欠きを有していない場合と比較して、接地電極31が撓みやすくなり、スポーク32や接地電極31の熱膨張に起因する熱応力を緩和することができる。以上の説明から解るように、溝GRや切り欠きNTは、熱膨張によって発生する熱応力を緩和する緩和部の一例である。
(7)上記各実施形態では、挿入部材30のスポーク32は、主体金具50の内周面12Aと接合された接合部として、溶接によって形成された溶融部WP1を有している。これに代えて、スポーク32と、主体金具50の内周面12Aとは、例えば、圧入によって接合されても良い。この場合には、主体金具50の内周面12Aに圧接する、スポーク32の径方向外側の面が、特許請求の範囲における「接合部」に対応する。
(8)接地電極31や中心電極20の電極母材21の材料としては、上述したインコネルに限らず、種々の材料を採用可能である。例えば、接地電極31や中心電極20の電極母材21は、インコネルに限らず、他のニッケル合金やタングステンなどの耐熱性に優れた種々の材料を用いて形成されても良い。また、接地電極31のうち、ギャップ形成面31Aを含む一部分が、インコネルとは異なる材料、例えば、イリジウムや白金などの貴金属を含む材料を用いて形成されても良い。同様に、中心電極20の脚部25の全体や、脚部25のうち、ギャップ形成面25Aを含む一部分が、インコネルとは異なる材料、例えば、イリジウムや白金などの貴金属を含む材料を用いて形成されても良い。
(9)上記第1実施形態および第2実施形態の挿入部材30および中心電極20を含むスパークプラグ100の先端部分の具体的形状は、一例であり、様々な変形が可能である。以下にその例を説明する。
上記第1実施形態および第2実施形態では、3本のスポーク32の径方向外側の端は、直接に、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aに接合されている。これに代えて、3本のスポーク32の径方向外側の端は、リング状の部材に接続され、当該リング状の部材の径方向外側の面が、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aに接合されていても良い。すなわち、挿入部材30の接続部は、複数本のスポーク32と、スポークの径方向外側の端が接続されたリング部材と、を備えても良い。
上記第1実施形態および第2実施形態では、接地電極31、31Bの先端は、スポーク32の先端側の面より先端方向D1に突出し、かつ、接地電極31、31Bの後端は、スポーク32の後端側の面より後端方向D2に突出している。これに代えて、接地電極31、31Bの先端と、スポーク32の先端側の面とは、軸線方向の位置が同じであり、接地電極31、31Bの後端だけが、スポーク32の後端側の面より後端方向D2に突出していても良い。また、接地電極31、31Bの先端だけが、スポーク32の先端側の面より先端方向D1に突出し、接地電極31、31Bの後端と、スポーク32の後端側の面とは、軸線方向の位置が同じであっても良い。
上記第1実施形態および第2実施形態では、挿入部材30、30Bの後端は、絶縁碍子10の脚部13の先端によって支持されている。これに代えて、挿入部材30、30Bは、脚部13の先端から離れていても良い。例えば、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aに段部が形成されても良い。例えば、取付ネジ部52は、第1の内径を有する後端側部分と、第1の内径より大きな第2の内径を有する先端側部分と、を有し、後端側部分と先端側部分とが接続部分に段部が形成されてもよい。そして、当該段部によって、挿入部材30、30Bのスポーク32の径方向外側の端部が支持されることで、挿入部材30、30Bが脚部13の先端から離れて配置されても良い。また、挿入部材30、30Bが、上述したリング部材を備え、当該リング部材が、当該段部に支持されてもよい。
上記第1実施形態および第2実施形態では、絶縁碍子10の脚部13は、円筒形状を有している。これに代えて、脚部13は、外径が後端側から先端方向D1に向かって縮径していても良い。
上記第1実施形態および第2実施形態の主体金具50の先端に、1個以上の貫通孔を有するキャップ部材が配置されても良い。この場合には、主体金具50の取付ネジ部52の内周面12Aと、キャップ部材と、によって形成されるスパークプラグ100の内部の空間に、上述した挿入部材30、30Bおよび中心電極20が配置される。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。