JPWO2008150034A1 - 画像形成方法、磁性トナー及びプロセスユニット - Google Patents
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Abstract
Description
現像領域が狭くなることによる弊害の一つとして、トナーの供給不足による濃度の低下が挙げられる。このような濃度低下を維持するために現像スリーブに内包されるマグネットの磁力を下げる等、諸々の現像条件を変化させると、十分に帯電されていないトナーも飛翔するようになりカブリやトナー飛散が増大する。また現像スリーブ周期での濃淡ムラ(いわゆるスリーブゴースト)等も発生しやすくなる。
また現像領域が狭くなることでジャンピング現像法において見られるいくつかの現象に関してもより促進されるようになる。例えば潜像端部に磁性トナーが集中して現像するエッジ効果が生じ、接触転写方法の場合等で感光体上に形成されたトナー像を転写材へ圧接した場合に起こる転写中抜けが起こりやすくなる。また、現像時に磁性トナーが鎖状(「穂」と呼ばれている)となって現像されるため、磁性トナーが画像部から穂の状態のままはみ出す尾引きといった現象も起こりやすくなる。
更には現像スリーブの小径化に伴い回転数が増大することで、磁性トナーに大きなストレスがかかりやすくなる。このためトナー粒子へ後から外添した処理剤がトナーに埋没や脱離をしたり、トナー粒子が欠けたりする等のいわゆるトナー劣化という問題も発生しやすくなる。このような劣化が進むと、繰り返しで使用された場合に、帯電量が低下したり、発生した微粉が現像スリーブや規制部材に固着することで帯電不良に伴う画像欠陥が起こりやすくなる。
このような問題点に対して、磁性トナーの流動性を制御することで改善する試みがなされている。例えば凝集度を調整したもの(特開2003−43738号公報)、トナーの圧縮率を制御したもの(特開2000−181128号公報、特開2001−356516号公報)などがあるが、小径化した現像スリーブと組み合わせた場合における画像品質の向上、及び耐久性の改善には未だ課題を残している。
即ち、本発明の目的は、小径化された現像スリーブに適用した場合でも使用環境によらず安定した画像濃度が得られ、カブリや尾引き、転写中抜けといった画像欠陥を起こさない画像形成方法、磁性トナー及びプロセスユニットを提供することにある。
また、本発明の目的は、小型化されたプロセスユニットを提供することにある。
本発明者らは、5.0mm以上12.0mm未満の径を有するトナー担持体に適用されるトナーにおいて、該磁性トナーの圧縮率及び粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyを最適化することで、安定した画像濃度と高画質化を達成するとともに、小型化を可能とする磁性トナー及びプロセスユニットを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
潜像担持体と、磁性トナーを表面に担持し内部に磁界発生手段を有するトナー担持体とが一定の間隔を設けて配置されており、該潜像担持体と該トナー担持体との間に交番電界を印加して磁性トナーで該潜像担持体に担持される静電潜像の現像を行う画像形成方法であって、
該トナー担持体の外径が5.0mm以上12.0mm未満であり、
該磁性トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを含んでおり、
該磁性トナーは、平均円形度が0.950以上であり、下記式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100 (1)
該トナーの粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyが下記式(2)及び(3)を満足することを特徴とする画像形成方法。
600≦TE10≦1500 (2)
TE10/TE100≦1.60 (3)
(TE10:撹拌速度が10mm/secの時のTotal Energy(mJ)、TE100:撹拌速度が100mm/secの時のTotal Energy(mJ))
本発明により、小型化が可能であり、使用環境によらず安定した画像濃度が得られ、更にはカブリ、尾引き、転写中抜けのない高画質な画像が得られる画像形成方法、磁性トナー及びプロセスユニットが得られた。
図2A及び2Bは、total energy測定に用いられる粉体流動性分析装置のプロペラ型ブレードの概略図である。
プロセスユニットの小型化等に伴いトナー担持体(例えば、現像スリーブ)を小径化した場合、規制部材との接触回数が増加することでトナー担持体上のトナー担持量及び帯電量の安定化には有利である一方、狭い現像領域内での磁性トナーの飛翔状態が画像品位を大きく左右する。磁性トナーの感光ドラムへの飛翔状態は、トナー担持体上のトナーの「穂」形成、及び現像領域におけるトナーの「穂」の崩壊し易さに大きく影響される。
本発明者らが鋭意検討した結果、このトナー担持体上のトナーの「穂」形成と現像領域内でのトナー飛翔状態とが、磁性トナーの圧縮率及び粉体流動性測定装置において測定されるTotal Energyと密接に相関しているとの知見を得、本発明に至った。
まず本発明において、磁性トナーの圧縮率は下記式(1)で定義される。
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100 (1)
この圧縮率はトナーの見掛け密度及びタップ密度から計算される値であり、見掛け密度とタップ密度の変化率を表す。トナー担持体近傍において磁性トナーの撹拌状態やトナー担持体への押圧状態は、環境変化、経時使用に伴うトナー残量等に対応して変動する。特にトナー担持体が小径化されると、その表面積が小さくなることで磁性トナーとの接触機会が少ないため、このような変動に対して「穂」形成が不安定となりやすい。磁性トナーの圧縮率は、このような変動に対してのトナー「穂」形成の安定性をはかる指標となるものである。
本発明において、磁性トナーの圧縮率を30以下とする必要がある。圧縮率が30より大きくなると、小径化した場合においてはトナー担持体近傍での押圧されている状態の変化が大きくなり、トナー担持体上でのトナーの「穂」形成が不安定化しやすくなる。具体的にはトナー担持体上の穂長が長くなったり、穂の密度が高くなりすぎたりすると、現像領域においてトナーの「穂」が崩壊しづらくなり、転写中抜けや尾引きといった画像欠陥が起こりやすくなる。
さらに本発明において、磁性トナーの粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyが下記式(2)及び(3)を満足することを特徴とする。尚、Total Energyとは、粉体中に攪拌羽根を押し込んでいくのに要する力と、粉体中で攪拌羽根を回転させるのに要する力の合計のことである。
600≦TE10≦1500 (2)
TE10/TE100≦1.60 (3)
(TE10;撹拌速度が10mm/secの時のTotal Energy、TE100;撹拌速度が100mm/secの時のTotal Energy)
本測定では、従来の凝集度などの測定とは異なり、撹拌速度を変化させたときのTotal Energyを測定することが可能となる。そして、本発明者らが検討した結果、この“Total Energyの値及び変化率”と“トナー担持体と潜像担持体間でのトナー飛翔状態”とが、相関があることが見出された。
撹拌速度を変化させることによって、粉体の流速変化に対してトナー間凝集力がどのように変化しているかを推察することができる。Total Energyが低く且つ流速の変動に対する変化率が小さいということは、トナー間凝集力が低いレベルで安定化していることに対応する。特に小径化した現像スリーブでの狭い現像領域において、現像スリーブと感光ドラム間でトナーの「穂」を崩した状態で安定して飛翔させるためにはこのトナー間凝集力をできるだけ低減させる必要がある。そして、このトナー間凝集力を見積もるには、粉体流動性測定装置での測定が有効である。
本発明においてTE10は600mJ以上1500mJ以下である。1500mJ超となるとトナー間凝集力が高くなりすぎるために、トナーの「穂」の崩壊が進まないうえ、現像領域自体が狭くなることに伴い濃度低下傾向や画像品質が低下しやすいためである。また600mJ以上とすることで、トナーに適度なストレスを与えることが可能となり、小径化したトナー担持体に適用した場合でも素早くかつシャープに帯電するようになる。
またTE10/TE100は1.60以下である。この値が1.60超となると、上述したようなトナー担持体上のトナーの「穂」の状態が変化したときに、飛翔状態がさらに変化しやすくなる。このため環境変化、経時変化に伴い、転写中抜けやカブリ、尾引きといった画像品質の低下を招きやすいものである。
これら、トナーの圧縮率や、粉体流動性測定装置でのTotal Energyを制御する方法の例としては、下記の(A)乃至(D)の方法が挙げられる。これらの方法は、単独で行ってもよいが、複数を組み合わせることによって達成しても良い。
(A)磁性トナーの粒度分布を適正化し、微粉及び粗粉量を適正化してパッキング性を制御する方法。
(B)磁性トナーの形状(平均円形度)及び表面平滑性を高め、トナー粒子間の接触面積を減少させる方法。
(C)磁性トナー表面に表面エネルギー/疎水性/粒径などを適正化した有機及びまたは無機微粒子層を複数種付着させる方法。
(D)磁性トナーの磁気特性を適正化し、磁気凝集性を低減させる方法。
本発明では、トナーの平均円形度が0.950以上であり、好ましくは0.960以上である。これは一つには磁性トナーにおいて、平均円形度が高いことで現像スリーブ上でのトナーの「穂」が短くなりやすく、更にはトナー間凝集力が低減することで現像領域内での「穂」の崩壊が進みやすいためと考えられる。そして、平均円形度がこの範囲内であれば、高画像濃度で高画質な画像が得られる。
また、本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。トナーの重量平均粒径(D4)が9.0μmを超えるような場合、微小ドット画像の再現性が低下する。一方、トナーの重量平均粒径(D4)が4.0μmより小さい場合には、トナーの比表面積が増大し、トナー間凝集力が高くなりすぎるために、濃度薄や画像欠陥等の問題が発生しやすくなる。本発明のトナーにおいて帯電安定性や流動性の改善等の効果がより顕著に現れるのは、重量平均粒径が4.0μm以上9.0μm以下の場合であり、さらに、より一層の高画質化という点では5.0μm以上8.0μm以下が好ましい。
本発明において、更に磁性トナーの磁気特性を制御することで効果を得られやすくなる。磁場79.6kA/mで着磁したときの残留磁化を3.0Am2/kg以下とすることで、トナーの磁気凝集性を低下することが可能となり、現像領域内でのトナー飛翔状態がより「穂」を崩壊させた状態になりやすく、好ましいものである。
次に図1を参照しながら、本発明の構成について説明する。
図1において、100は潜像担持体たる感光ドラム、102はトナー担持体たる現像スリーブ、104は磁界発生手段たるマグネットローラ、140は磁性トナーを収容するトナー容器を兼ねる現像容器、103はトナー規制部材としての現像ブレードである。
感光ドラム100は図1中の矢印方向に回転し、その表面には不図示の帯電手段と潜像形成露光手段で静電潜像が形成される。
現像スリーブ102の内部には、マグネットローラ104が配置される。マグネットローラ104には複数の磁極が配置され、この磁力により現像容器140の中の磁性トナーが現像スリーブ102の表面上に担持される。現像スリーブ102は図1中の矢印方向に回転し、その表面に当接する現像ブレード103によって磁性トナーが規制され、均一な担持量のトナー層となる。
感光ドラム100の母線と現像スリーブ102の軸線とは略平行に配置され、且つ感光ドラム100と現像スリーブ102は所定の間隔をもって接近対向している。マグネットローラ104の磁極の1つは感光ドラム100と現像スリーブ102の最近接位置にほぼ合致するように設置される。感光ドラム100と現像スリーブ102の各面移動速度(周速)は略同一であるか、現像スリーブ102の周速が若干早い。感光ドラム100と現像スリーブ102間には交番電界が印加される。即ち、交番バイアス電圧印加手段と直流バイアス電圧印加手段によって、直流電圧と交流電圧が重畳印加される。
本発明において、現像スリーブ(トナー担持体)の径は5.0mm以上12.0mm未満である。12.0mm以上となると、十分なコンパクト化が図れず、プロセスユニットの小型化が達成できない。また5.0mm未満では、現像スリーブ自体の剛性が低くなり、撓みなどによるピッチムラなどの画像欠陥が起こりやすくなるとともに、磁性トナーと現像スリーブの接触機会が極端に低下し、適正な帯電量を得ることが難しくなる。尚、本発明においては、現像スリーブの径は6.0mm以上10.0mm以下であることがより好ましい。
また、トナー担持体に内包される磁界発生手段の潜像担持体方向への磁束密度がトナー担持体表面において600G以上800G以下であることが好ましい。磁束密度が上記の範囲内にある場合には、適度な磁気的拘束力が得られ、潜像担持体とトナー担持体との間におけるトナーの行き来が良好となり、特に良好な画像形成が可能となる。
次に本発明に用いられるトナー担持体の構成について説明する。本発明に用いられるトナー担持体は、少なくとも基体及びその表面に形成された樹脂被覆層を有することが好ましい。
基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材等を用いることができる。感光ドラムに非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒が基体として好ましく用いられる。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状あるいは円柱状に成型し、研磨、研削等を施して調製することができる。これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工される。例えば長手方向の真直度は30μm以下とするのが好ましく、20μm以下とするのがより好ましく、10μm以下とするのがさらに好ましい。トナー担持体と潜像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、トナー担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れは、30μm以下とするのが好ましく、20μm以下とするのがより好ましく、10μm以下とするのがさらに好ましい。材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
基体の表面に対しては、トナーの搬送性を高める為にブラスト処理を行っても良い。具体的には、球形ガラスビーズ等のブラスト材(これに限定されるものではない。)を用い、ブラストノズルから上記ガラスビーズを基体表面に所定の圧力で所定時間吹き付けてブラスト処理を行い、基体表面に多数の窪みを形成させる。
次に、樹脂被覆層について詳細に説明する。
本発明のトナー担持体の樹脂被覆層に含まれる結着樹脂成分として、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の熱あるいは光硬化性樹脂等を使用することができる。なかでもシリコーン樹脂のような離型性のあるもの、或いはフェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂のような機械的・物理的な負荷に対する耐性に優れたものが好ましい。上記トナー担持体の樹脂被覆層が結着樹脂成分としてこれらの樹脂を含むと、トナー担持体としてトナーに好適な摩擦帯電電荷を付与することができる。その結果、画像濃度低下、画像濃度ムラ等の問題を好ましく抑制することが可能となる。
さらに、樹脂被覆層を、複数の樹脂を結着樹脂成分として含み、そのうちの一つをフェノール樹脂とすると、トナー担持体を更に高耐久化できる。このため、連続複写においてもトナー担持体上のトナーに均一な帯電を付与し、耐久中の画像濃度低下や均一で濃度ムラやカブリのない高品位の画像を得ることのできる現像方法を提供することが可能になる。
また、本発明においては、樹脂被覆層を導電性を有するものとすることが好ましい。粒径の小さいトナーや球形化度の高いトナーを用いて画像形成を行った場合には、初期トナーの不均一な帯電やチャージアップが生じやすいが、トナー担持体に導電性樹脂被覆層を設けることによって、良好に制御できる。更に、異なる環境下においても安定したトナーへの摩擦帯電付与が可能となり、また、画出し枚数を重ねることでトナーのトリボが立ち上がった状態になっても、トナーのチャージアップが起こることがなく、終始安定した高品位の画像を得ることが可能となる。
樹脂被覆層の体積抵抗値としては、10−1Ω・cm以上104Ω・cm以下とすることが好ましく、10−1Ω・cm以上103Ω・cm以下とすることがより好ましい。樹脂被覆層の体積抵抗値を104Ω・cm以下とするとトナーへの帯電付与を安定して行うことができる。
樹脂被覆層の体積抵抗値を調整するために使用することのできる導電性物質として、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ等の金属酸化物粉体、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、グラファイト等の炭素物等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。また、高分子材料に充填して導電性を調整した上で添加することもできる。
また本発明に使用できる黒鉛化カーボンブラックは、一次粒子径が10nm以上100nm以下のものを用いることが好ましく、更には10nm以上70nm以下のものを用いることが好ましい。一次粒子径を10nm以上とすると黒鉛化カーボンブラック同士の凝集性が低くなり、結着樹脂成分等と共に分散させて得られる塗工液の粘度が高くなるのを抑制することができる。これにより、黒鉛化カーボンブラックの塗工液中での分散性が向上し均一になり易い。一次粒子径を100nm以下とすると、樹脂被覆層中で黒鉛化カーボンブラックが高い密度で存在し、導電性が優れ樹脂被覆層表面の導電性が均一となり、そのため現像バイアスが印加された際にも電荷のリークが生じにくい。
本発明において好適なこれらの導電性物質の添加量は、樹脂被覆層に含まれる結着樹脂成分100質量部に対して1質量部乃至100質量部の範囲とすることが好ましい。
また、樹脂被覆層中に表面粗さを均一にし、且つ適切な表面粗さを維持するために、凹凸形成の為の固体粒子(凹凸付与粒子と表すことがある)を添加することにより更に好ましい結果を得ることができる。
本発明に使用することのできる凹凸付与粒子は、球状のものが好ましい。球状の凹凸付与粒子を用いると、不定形の凹凸付与粒子に比べ、より少ない添加量で所望の表面粗さが得られるとともに、表面形状の均一な凹凸面が得られる。さらに、樹脂被覆層表面が摩耗した場合においても樹脂被覆層の表面粗さの変化が少なく、トナー担持体上のトナーの層厚の変化が起きにくいことからトナーの帯電を均一化し、スジ・ムラを発生させにくくすることができる。
本発明で使用する球状の凹凸付与粒子の体積平均粒径は、0.3μm以上30μm以下とすることが好ましく、2μm以上20μm以下とすることがより好ましい。球状の凹凸付与粒子の体積平均粒径を0.3μm以上とすると、樹脂被覆層表面に均一な表面粗さを付与することができ、樹脂被覆層の摩耗によるトナーのチャージアップ、トナーによるトナー担持体の汚染及び融着を防止することができる。また、スリーブゴーストによる画像の悪化や画像濃度の低下もなく好ましい。一方、球状の凹凸付与粒子の体積平均粒径を30μm以下とすると、樹脂被覆層の表面の粗さが適切な範囲となり、トナーの搬送量、トナー担持体上のトナーコートが均一となり、トナーの帯電が均一に行われる。また粗い粒子の突出もなく画像スジやバイアスリークによる白ポチ・黒ポチの発生を防止することができる。更に、樹脂被覆層の機械的強度の低下もなく好ましい。
本発明においては、体積平均粒径が0.3μm以上30μm以下であれば、従来公知の球状の凹凸付与粒子をいずれも好適に使用することができる。本発明において好適に使用することのできる凹凸付与粒子としては、例えば、球状の樹脂粒子、球状の金属酸化物粒子、球状の炭素化物粒子等が挙げられる。これらの中でも、球状の樹脂粒子が、樹脂被覆層中に添加した場合により少ない添加量で好適な表面粗さが得られ、且つ均一な表面形状が得られやすいので好ましい。本発明で使用することのできる球状の樹脂粒子は、例えば、懸濁重合法、分散重合法等によって容易に得られる。勿論、粉砕法によって得られた樹脂粒子を、熱的な或いは物理的な球形化処理を行って球状化して用いてもよい。
また、樹脂被覆層中への分散性、形成される樹脂被覆層の表面の均一性、樹脂被覆層の耐汚染性、トナーへの帯電付与性、樹脂被覆層の耐摩耗性等を向上させるために、本発明で使用する球状の凹凸付与粒子として、その表面に無機微粉体を付着させたり、固着させたり、あるいは内部に分散させたものを使用してもよい。
使用することのできる無機微粉体として、SiO2、SrTiO3、CeO2、CrO、Al2O3、ZnO、MgOの如き酸化物、Si3N4の如き窒化物、SiCの如き炭化物、CaSO4、BaSO4、CaCO3の如き硫酸塩や炭酸塩等の無機微粉末を挙げることができる。これらの無機微粉末は、カップリング剤によって処理したものを用いることが好ましい。即ち、特に、樹脂被覆層に含まれる結着樹脂成分との密着性を向上させる目的で、あるいは凹凸付与粒子に疎水性を与える等の目的で、カップリング剤により処理した無機微粉体を好ましく用いることができる。
また、本発明のトナー担持体を構成する樹脂被覆層には、導電性を有する球状の凹凸付与粒子と併用して固体潤滑剤を分散させると、より本発明の効果が促進されるため好ましい。この固体潤滑剤としては、例えば、結晶性グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、雲母、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石及びステアリン酸亜鉛の如き脂肪酸金属塩からなる物質等が挙げられる。中でも結晶性グラファイトは、導電性を有する球状の凹凸付与粒子と併用した場合に導電性樹脂被覆層の導電性が損なわれないので特に好ましく用いられる。
この固体潤滑剤は、体積平均粒径が好ましくは0.2μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上15μm以下のものを使用するのがよい。固体潤滑剤の体積平均粒径を0.2μm以上とすると、十分な潤滑性を得ることができる。体積平均粒径を20μm以下とすると、表面粗さに対する影響が小さく、且つ耐久により削られにくく表面粗さが変化しにくく、樹脂被覆層表面が安定となり、トナー担持体上へのトナーのコーティング、及びトナーの帯電が安定化されるという点で好ましい。
本発明においては、トナー担持体の帯電性を調整するために、上記樹脂被覆層中に荷電制御剤を含有させてもよい。
荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによる変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン類、イミダゾール化合物等が挙げられる。
次に本発明におけるトナーの製造方法を説明する。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。この中で、分散重合法、会合凝集法、懸濁重合法など湿式媒体中でトナーを製造する重合法は、トナー形状及び表面性を制御しやすく、本発明のトナー物性を得やすいため好ましい。この中で懸濁重合法は特に好ましい。
製造法の一例として懸濁重合法によるトナーの製造について説明する。懸濁重合法では重合性単量体中に、磁性粉体(磁性酸化鉄)、着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させる。こうして得られた単量体系(単量体組成物)を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
懸濁重合法においては、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物が挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。但し、この塩化ナトリウム塩は重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下を単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
また微粒化されたトナーを目的とする場合には、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50℃以上90℃以下の温度に設定して重合を行うことが好ましい。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90℃以上150℃以下にまで上げることは可能である。
本発明においては、磁性トナーの形状及び表面平滑性を制御するために、得られたトナー粒子を含む重合体分散液に水蒸気を導入することで調整することが好ましい。例えば重合後半或いは重合終了後、該容器内の水系媒体に温度100℃以上の飽和水蒸気を導入する等が挙げられる。
本発明に使用される重合性単量体系を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドが挙げられる。
これらの重合性単量体は単独または混合して使用し得る。上述の重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の重合性単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナーを重合法で製造する際には、重合反応時に半減期0.5乃至30時間である重合開始剤を、重合性単量体の0.5乃至20質量%の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量1万以上10万以下の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明では、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001乃至15質量%である。
ここで、架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
本発明のトナーで使用される磁性体としては、従来公知の磁性材料が用いられる。磁性トナーに含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属あるいはこれらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金;及びこれらの混合物等が挙げられる。
具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミニウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。本発明では磁性材料として、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、必要に応じて一種又は二種以上の他の金属を任意に選択して使用することが可能である。
このような磁性酸化鉄は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2m2/g以上30m2/g以下、特に3m2/g以上28m2/g以下であり、更にモース硬度が5以上7以下のものが好ましい。
また、磁性酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形の如き異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった形状は、SEMなどによって確認することができる。
磁性酸化鉄の粒度としては、0.03μm以上の粒径を有する粒子を対象とした粒度の測定において、個数平均粒径が0.10乃至0.30μmであり、かつ0.03乃至0.10μmの粒子が40個数%以下であることが好ましい。
個数平均粒径が0.10μm未満の磁性酸化鉄を用いた磁性トナーから画像を得ると、画像の色味が赤味にシフトし、画像の黒色度が不足したり、ハーフトーン画像ではより赤味が強く感じられる傾向が強くなったりするなど、一般的に好ましいものではない。また、磁性酸化鉄の表面積が増大するために分散性が低下し、製造時に要するエネルギーが増大し、効率的ではない。また、磁性酸化鉄の着色剤としての効果が弱くなり、画像の濃度が不足することもあり、好ましいものではない。
一方、磁性酸化鉄の個数平均粒径が0.30μmを超えると、一粒子あたりの質量が大きくなるため、製造時にバインダーとの比重差の影響でトナー表面に露出する確率が高まったり、製造装置の摩耗などが著しくなる可能性が高まったり、分散物の沈降安定性などが低下するため好ましくない。
またトナー中において、該磁性酸化鉄の0.10μm以下の粒子が40個数%を超えると、磁性酸化鉄微粒子の表面積が増大して分散性が低下し、トナー中にて凝集塊を生じやすくなりトナーの帯電性を損なったり、着色力が低下したりする可能性が高まるため40個数%以下であることが好ましい。さらに30個数%以下とすると、その傾向はより小さくなるため好ましい。
また、本発明においては、磁性酸化鉄微粒子中の0.30μm以上の粒子が10個数%以下であることが好ましい。10個数%を超えると、着色力が低下し、画像濃度が低下する傾向になることに加え、同じ使用量であっても個数的に少ないためにトナー粒子表面の近傍まで存在させること及び各トナー粒子に均一個数を含有させることが確率的に難しくなり、好ましくない。より好ましくは5個数%以下とするのが良い。
これらの磁性酸化鉄の79.58kA/m(1kエルステッド)印加での磁気特性は、抗磁力が1.5kA/m以上12kA/m以下、飽和磁化が30Am2/kg以上120Am2/kg以下(好ましくは40Am2/kg以上80Am2/kg以下)、残留磁化が1Am2/kg以上10Am2/kg以下のものが好ましい。なお磁性体の磁気特性は、25℃,外部磁場79.6kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
本発明においては、磁性トナーの79.58kA/m(1kエルステッド)の磁場で着磁後の残留磁化が3.0Am2/kg以下となるように磁性体の磁気特性及び添加量を調整することが好ましい。
本発明に係るトナーを重合法に適用する場合には、磁性体として使用される磁性酸化鉄微粒子は、疎水化処理されたものであることが好ましい。この疎水化処理を調整することで、磁性酸化鉄のトナー中での存在状態を厳密にコントロールできる。
磁性酸化鉄表面をカップリング剤等で処理する方法としては、乾式処理と湿式処理の二つがある。本発明ではどちらの方法で行っても良いが、水系媒体中での湿式処理方法は、気相中での乾式処理に比べ、酸化鉄粒子同士の合一が生じにくい。また疎水化処理による磁性酸化鉄間の帯電反発作用が働き、磁性酸化鉄はほぼ一次粒子の状態でカップリング剤による表面処理されるようになるため好ましい。
本発明において磁性酸化鉄の表面処理に使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(A)
RmSiYn (A)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1以上3以下の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、メタクリル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示し、nは1以上3以下の整数を示す。]
で示されるものである。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
特に、式(B)
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 (B)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す]
で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して磁性酸化鉄表面を疎水化処理するのが好ましい。
上記式におけるpが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難となることがある。またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、磁性酸化鉄同士の合一が多くなり、トナー中へ磁性酸化鉄を十分に分散させることが困難となることがある。また、qが3より大きいと、シランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなることがある。
よって、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが好ましい。その処理量は処理前の磁性酸化鉄微粒子100質量部に対して、0.05乃至20質量部、好ましくは0.1乃至10質量部とするのが良い。
本発明において、磁性酸化鉄の疎水性を制御する方法として、上記のカップリング剤のpが異なる2種類以上のシランカップリング剤で処理する方法が挙げられる。このカップリング剤の種類及び処理量の割合を適宜調整することで、疎水化処理の程度に分布を有する磁性酸化鉄を得ることが可能となる。
磁性酸化鉄の表面処理として水系媒体中でカップリング剤により処理するには、水系媒体中で適量の磁性酸化鉄及びカップリング剤を撹拌する方法が挙げられる。
水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1乃至5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられる。
撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーの如き高剪断力混合装置)で、酸化鉄微粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように充分に行うのが良い。
こうして得られる磁性酸化鉄は表面が均一に疎水化処理されているため、重合性単量体組成物中における分散性が非常に良好であり、磁性酸化鉄の含有率が揃ったトナー粒子を得ることができるようになる。
本発明に係るトナーに用いられる磁性酸化鉄は、例えば下記方法で製造される。
硫酸第一鉄水溶液などの第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8乃至10)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6乃至10に維持しつつ空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌する。カップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水化処理磁性酸化鉄が得られる。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄を、乾操せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。
いずれにせよ、水溶液中で生成した未処理の磁性酸化鉄を、乾燥工程を経る前の含水スラリーの状態で疎水化することが好ましい。これは、未処理の磁性酸化鉄をそのまま乾燥してしまうと粒子同士の凝集による合一が避けられず、こういった凝集状態の粉末にたとえ湿式疎水化処理を行っても均一な疎水化処理が難しいためである。
磁性酸化鉄微の製造の際に第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、硫酸第一鉄以外には更に塩化鉄等が可能である。
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5乃至2mol/リットルの硫酸第一鉄水溶液が用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
本発明においては、このようにして製造された疎水性磁性酸化鉄を使用することが好ましい。
本発明に係るトナーに用いる磁性酸化鉄は、結着樹脂100質量部に対して、10乃至200質量部用いることが好ましく、より好ましくは20乃至180質量部、更に好ましくは40乃至160質量部である。上記の範囲内であれば、十分なトナーとしての着色力が得られ、また良好な現像性や定着性が得られる。
本発明においては、磁性トナーを5mol/l塩酸に分散させた際の3分、15分時点での磁性体総含有量に対する磁性体の抽出量S3、S15(質量%)が下記式を満足することが好ましい。
0.5≦S3≦10 (4)
40≦S15≦80 (5)
本発明においては磁性トナーを塩酸で抽出する時間を変更することで、トナーの最表面から内部への磁性体の存在状態を推定することが出来る。このとき5mol/l塩酸3分で抽出されるのはトナーの最表面部分に存在する磁性体であり、15分で抽出される磁性体量は表面近傍からトナー中心に向けて存在する磁性体の存在量を表すものと考えられる。
本発明において、磁性トナーを5mol/l塩酸で3分間抽出した磁性体量(S3)は0.5%以上10%以下、好ましくは5%以下である。このように微量の磁性体のみが最表面近傍に存在する場合には、磁性体による吸湿の影響がほとんど生じないために、トナーとして、環境安定性に優れた帯電特性を得ることが出来る。更には磁性一成分現像方式において現像スリーブと規制部材間のストレスを受けた場合でも、遊離した磁性体の量を軽減することで、微粉によるトナー担持体への汚染を抑制することが可能となる。また、適度に磁性体が表面近傍に存在しているため、低湿環境下であってもチャージアップの発生を抑制することができる。
本発明において、5mol/l塩酸で15分間抽出した磁性体量(S15、S30)はそれぞれ40%以上80%以下、好ましくは45%以上75%以下である。S15は表面近傍に存在する磁性体量に対応している。本発明においては、磁性体がトナー表面近傍に偏在化しているように分布させることで、耐ストレス性を向上させることが可能となる。
S15が40%未満となると、表面近傍に存在する磁性体量が少ないことで、トナーの対ストレス性が低下し、長期使用によりトナー劣化を起こしやすくなる。またS15が80%超になると、表面近傍に磁性体が集中するため、磁性体やその他の添加剤の分散性が悪化するようになり、耐久に伴う濃度薄や画像欠陥が発生しやすくなる。
本発明では、重合性単量体系に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、グリシジル基、ニトリル基の如き親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体の如き共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミドの如き重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンの如き重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させると、前述のワックス成分を相分離させ、より内包化が強力となり、耐オフセット性、耐ブロッキング性、低温定着性の良好なトナーを得ることができる。その使用量としては、重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部が好ましい。使用量が1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部を超えて使用された場合には、重合トナーの種々の物性設計が難しくなってしまう。またこれら極性官能基を含む高分子重合体としては、平均分子量が3000以上のものが好ましく用いられる。分子量3000未満、特に2000以下では、本重合体が表面付近に集中し易いことから、現像性、耐ブロッキング性等に悪い影響が起こり易くなり好ましくない。また、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることができる。
本発明に係るトナーは、重合性単量体に添加する樹脂としてポリエステル樹脂を添加することが好ましい。
次に本発明のトナーを粉砕法によって製造する場合について説明する。
結着樹脂、磁性体、及び必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により十分混合し、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化し、その後、固化物を粉砕し、粉砕物を分級することによりトナー粒子を得る方法が好ましい。このトナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により必要に応じて十分混合することにより得ることができる。
また本発明のトナーを製造するに当たって、分級はトナー粒子生成後の任意の時期に行うことができ、例えば外添剤との混合後に分級を行っても良い。
以下にトナー製造用装置として一般的に使用できる装置の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。表1にはトナー製造用粉砕装置の例を、表2にはトナー製造用分級装置の例を、表3にはトナー製造用篩装置の例を、表4にはトナー製造用混合装置の例を、表5にはトナー製造用混練装置の例を、それぞれ挙げる。
本発明において、粉砕法で得られた磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、透過率が初期の50%時のメタノール濃度を60体積%以上80体積%以下とすることが好ましい。60体積%以上80体積%以下とすることで、水との親和性が適度となり、高湿環境下においても適度な帯電を保持できるようになり、また、低湿環境下においてもチャージアップ現象による現像スリーブのコート均一性の悪化や画像濃度薄、帯電付与部材や感光体へのトナー付着といった問題の発生を抑制することができる。トナーの濡れ性は、離型剤のトナー表面露出状態のコントロールや無機微粉体の疎水性や添加量のコントロールによって調整できる。
本発明において、粉砕法で製造する場合に使用される結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂成分とスチレン−アクリル系樹脂成分を含むハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられるが、特に限定されず従来公知の樹脂を用いることができる。このうち特に、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂などが定着性などの点で好ましい。
本発明に用いられるポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂成分のモノマーとしては以下のものが挙げられる。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノ−ルA、また(ア)式で表されるビスフェノール誘導体及び下記(イ)式で示されるジオール類が挙げられる。
またグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、さらには、例えばノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物などの多価カルボン酸類等が挙げられる。
スチレン−アクリル系樹脂を生成するためのビニル系モノマーとしては次のようなものが挙げられる。
スチレン:o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。
芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ:エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;ポリエステル型ジアクリレート類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量%に対して、0.01乃至10質量%(さらに好ましくは0.03乃至5質量%)用いることができる。
これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
本発明のスチレン−アクリル系樹脂を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾ−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパ−オキサイドの如きケトンパ−オキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパ−オキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパ−オキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパ−オキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパ−オキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパ−オキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パ−オキシカ−ボネ−ト、アセチルシクロヘキシルスルホニルパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパ−オキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネ−ト、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートがあげられる。
ポリエステル樹脂成分及びスチレン−アクリル系樹脂成分からなるハイブリッド樹脂を合成する場合、上述のポリエステル樹脂成分とスチレン−アクリル系樹脂成分の両方と反応し得るモノマー成分を含むことが必要である。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちスチレン−アクリル系樹脂成分と反応し得るものとしては、例えばフマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。スチレン−アクリル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ハイブリッド樹脂を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
さらに本発明においては、必要に応じて離型剤を含有させることもできる。
本発明のトナーに使用可能な離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックス等の、脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類;ソルビトール等の多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、フウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリド等の、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加等によって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸;等が挙げられる。
トナーに含有させることのできる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、アルキレンを高圧化でラジカル重合し、又は低圧化でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したもの;が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
本発明において離型剤は、離型剤を含有するトナー粒子を示差走査熱量計で測定したときに、得られるDSC曲線において50乃至90℃の領域に吸熱メインピークのピーク温度が現れるようにトナー粒子に含まれていることが、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性の点で好ましい。DSC測定において吸熱メインピークのピーク温度が上記範囲内である場合には、良好な定着性が得られることに加えて、保存環境におけるワックス成分の染み出しを良好に抑制できるため、優れた保存性が得られ、また、水系媒体中で重合法により直接トナー粒子を得る場合においても、良好な造粒性が得られる。
上記吸熱ピーク温度は、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用い、ASTM D3418−82に準じて測定することができ、上記のピークが出現する温度は、融点やガラス転移点、及び重合度等を適切に調整された離型剤を用いることによって調整することが可能である。なお、上記DSC−7は、上記ピーク温度の他、結着樹脂のガラス転移点、軟化点、ワックスの融点等の、トナー粒子やトナー粒子材料の熱的物性を示す温度の測定に適用することができる。
本発明において離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等が挙げられる。
本発明に係るトナーには、帯電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料もしくはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、その四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。これらの荷電制御剤は、結着樹脂100質量部に対して0.5乃至10質量部使用することが好ましい。しかしながら、本発明の画像形成方法に関わるトナーは、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層圧規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
より具体的には、負帯電用として、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)がより好ましいものとして挙げられ、正帯電用として、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が好ましいものとして挙げられる。
本発明においては、磁性酸化鉄微粒子に着色剤としての機能を兼ねさせても良いが、磁性酸化鉄微粒子以外の他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
本発明に係るトナーは、上述したトナー粒子に、トナーの種類に応じた種々の材料を外添して用いられる。外添される材料としては、例えば無機微粉体等のようにトナーの流動性を向上させる流動性向上剤や、金属酸化物微粒子等のようにトナーの帯電性を調整するための導電性微粉体等の外添剤が挙げられる。
上記流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することによりトナーの流動性を向上し得るものが挙げられる。このような流動性向上剤としては、例えば湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ;これらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ;等が挙げられる。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましい。流動性向上剤は、流動性向上剤の種類によって異なるが、例えばトナー粒子100質量部に対して0.01乃至5質量部を配合することが好ましく、0.1乃至3質量部を配合することがより好ましい。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。このようなシリカは、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のような式(6)で示されるものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl (6)
この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明で流動性向上剤として利用されるシリカ微粉体はそれらも包含する。その粒径は、平均一次粒径として0.001乃至2μmの範囲内であることが好ましく、特に0.002乃至0.2μmの範囲内であることがより好ましい。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下のような商品名で市販されているもの、すなわちAEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84;Ca−O−SiL(CABOT Co.社)M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5;Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40;D−C Fine SiliCa(ダウコーニングCO.社);Franso1(Fransil社)等が挙げられる。
本発明では、上記シリカ微粉体は、疎水化処理されていることが好ましい。また上記シリカ微粉体は、メタノール滴定試験によって測定される疎水化度が30乃至80度の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが、トナーの濡れ性を制御する上で特に好ましい。なお上記疎水化度は、水中で撹拌されている所定量のシリカ微粉体にメタノールを滴下し、シリカ微粉体の沈降終了時におけるメタノール及び水の液状混合物中におけるメタノールの百分率として表される。シリカ微粉体の疎水化方法としては、例えばシリカ微粉体と反応し、又はシリカ微粒子に物理吸着する有機ケイ素化合物やシリコーンオイルでシリカ微粒子を化学的に処理する方法が挙げられる。より好ましくは、有機ケイ素化合物による疎水化処理である。ここで、上記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位においてSiに結合する水酸基を有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは一種あるいは二種以上の混合物で用いられる。
シリカ微粉体の疎水化処理においては、上記有機ケイ素化合物の中でもさらに窒素原子を有するシランカップリング剤の一種又は二種以上を用いることが可能である。このような含窒素シランカップリング剤としては、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン等が挙げられる。
なおにおいて、好ましいシランカップリング剤としてはヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
またシリカ微粉体の疎水化処理で好ましく使用されるシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が0.5センチストークス以上10000センチストークス以下であることが好ましく、1以上1000センチストークス以下であることがより好ましく、10以上200センチストークス以下であることがより一層好ましい。また、特に好ましいシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルを用いるシリカ微粉体の表面疎水化処理の方法としては、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法;が挙げられる。
シリコーンオイルによってシリカ微粉体の表面疎水化処理を行う場合では、シリコーンオイルの処理後にシリカ微粉体を不活性ガス中で200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し、表面のコートを安定化させることがより好ましい。
本発明においては、シリカ微粉体の表面疎水化処理に、前述したシランカップリング剤及びシリコーンオイルの両方を用いることが可能である。このような表面疎水化処理方法としては、シリカ微粉体を予めシランカップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、又はシリカ微粉体をシランカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法等が挙げられる。
さらに、本発明に係るトナーには、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤を添加してもよい。
例えば、圧縮度を調整する等の目的で、一次粒径が30nmを超える微粒子、より好ましくは一次粒径が100nm以上で球状に近い無機微粒子または有機微粒子をさらにトナー粒子に添加することも好ましい形態の一つである。例えば球状のシリカ粒子、球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
このような粒子を添加することで、磁性トナーの圧縮度及び粉体流動性測定装置で測定されるTotal Energyを適正化することが行いやすくなり、好ましいものである。
更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;または酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;ケーキング防止剤;または例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤;また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
上述の如き外添剤は、磁性トナー粒子100質量部に対して0.1乃至2質量部(好ましくは0.1乃至1.5質量部)使用するのが定着性及び帯電特性の点で好ましい。
本発明における各物性の測定法を以下に詳述する。
(1)トナーの圧縮率の測定方法
トナーの見掛け密度とタップ密度はJIS K5101に準拠して測定する。
(2)TE10及びTE100の測定方法
本発明における、TE10(mJ)及びTE100(mJ)は、粉体流動性分析装置パウダーレオメータFT−4(Freeman Technology社製)(以下、FT−4と省略)を用いることによって測定する。
具体的には、以下の操作により測定を行う。尚、全ての操作においてプロペラ型ブレードは図2A及び2Bに示すようなFT−4測定専用48mm径ブレードを使用する。FT−4測定専用48mm径ブレードは48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように反時計回りになめらかにねじられたもの(材質;SUS製、型番;C210)である。
FT−4測定専用の直径50mm、容積160mlの円筒状のスプリット容器(型番:C203、容器底面からスプリット部分までの高さ82mm、材質:ガラス)に23℃,50%環境に3日以上放置されたトナーを100g入れることでトナー粉体層とする。
(1)コンディショニング操作
(a)粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層がほぐされる方向)の回転方向に、ブレードの最外縁部の回転スピードが周速60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角が5(deg)のスピード(以降、なす角と省略する場合がある)で、粉体層表面からトナー粉体層の底面から10mmの位置まで進入させる。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度をなす角が2(deg)のスピードで、トナー粉体層の底面から1mmの位置まで進入させる操作を行った後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60(mm/sec)、粉体層からの抜き取り速度をなす角が5(deg)のスピードでトナー粉体層の底面から100mmの位置まで移動させ、抜き取りを行う。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とす。
(b)一連の上記(1)−(a)の操作を5回行うことで、トナー粉体層中に巻き込まれている空気を取り除き、安定したトナー粉体層を作る。
(2)スプリット操作
上述のFT−4測定専用セルのスプリット部分でトナー粉体層をすり切り、粉体層上部のトナーを取り除くことで、同じ体積のトナー粉体層を形成する。
(3)測定操作
(i)TE100の測定
(a)上記1)−(a)と同様のコンディショニング操作を一回行う。次に粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層が押し込まれる方向)の回転方向に、ブレードの回転スピードが100(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度をなす角が5(deg)のスピードで、トナー粉体層の底面から10mmの位置まで進入させる。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度をなす角が2(deg)のスピードで、粉体層の底面から1mmの位置まで進入させる操作を行った後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60(mm/sec)、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5(deg)のスピードで粉体層の底面から100mmの位置まで抜き取りを行う。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とす。
(b)上記、一連の操作を7回繰り返し、7回目にブレードの回転スピードが100(mm/sec)で、トナー粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etを、TE100とする。
(ii)TE10の測定
(a)TE100の測定を終了したトナー粉体層を用い、まず上記3)−(i)−(a)の操作を1回行う。
(b)次に、上記3)−(i)−(a)における一連の操作において、ブレードの回転スピードを100(mm/sec)でトナー粉体層に進入させていたところを、70(mm/sec)に落として測定を行う。
(c)引き続き、3)−(ii)−(b)と同様に40(mm/sec)、10(mm/sec)に順次回転数を落とした測定を行い、回転スピードが10(mm/sec)でトナー粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和を、TE10とする。
(3)トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(i)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(ii)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(iii)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(iv)前記(ii)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(v)前記(iv)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(vi)サンプルスタンド内に設置した前記(i)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(v)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(vii)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
(4)トナー平均円形度の測定
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用いて測定する。詳細は以下の通りである。
先ず、円形度を次式より算出する。
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
ここで、「粒子投影面積」とは二値化された粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さである。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.00を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度をci、測定粒子数をmとすると、下記式から算出される。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が約5000個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整して計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナーの平均円形度を求める。尚、円相当径は、以下のようにして算出される値である。
円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2
本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来トナーの形状を観察するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、シースフローの薄層化(7μm→4μm)及び処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)させた装置であり、トナーの形状測定の精度が向上した装置である。
(5)水/メタノール濡れ性試験方法
本発明においては、トナーの濡れ性、即ち疎水特性は、下記のようにして得たメタノール滴下透過率曲線から求める。
まず、メタノール60体積%と水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを、直径5cm、厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に入れ、その測定用サンプル中の気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。
次いで、トナーを目開き150μmのメッシュで振るい、メッシュを通ったトナー0.1gを精秤して、上記含水メタノール液が入れられた容器の中に添加し、測定用サンプル液を調製する。
そして、測定用サンプル液を粉体濡れ性試験機「WET−100P」(レスカ社製)にセットする。この測定用サンプル液を、マグネティックスターラーを用いて、6.7s−1(400rpm)の速度で攪拌する。尚、マグネティックスターラーの回転子として、フッ素樹脂コーティングされた、長さ25mm、最大胴径8mmの紡錘型回転子を用いる。
次に、この測定用サンプル液中に、上記装置を通して、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、メタノール滴下透過率曲線を作成する。
(6)磁性体抽出量の測定方法
5mol/l塩酸に分散させた際の磁性体の溶解量は下記のようにして測定する。
1)トナー25mg(4回分)を精秤する。
2)サンプルビンに試料を入れ、5mol/1塩酸100mlを加えたものを4サンプル準備する。それぞれをスターラーで撹拌しながらそれぞれ3分、15分、30分、一晩溶解させる。
3)溶解後の溶液をそれぞれサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2乃至0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)が使用できる。)でろ過した後、そのろ液を分光光度計により波長338nmにおける吸光度を測定する(例えば、島津製作所 UV−3100PC)。また、このとき対照セルにはトナーを分散させていない10mol/l塩酸を入れておく。なお本発明における吸光度とは、試料セルに光を入射させたときの入射光の強さI0と、透過光の強さIの比である透過率I/I0の逆数の常用対数、すなわちlog(I0/I)で表される。
・測定条件:スキャン速度(中速)、スリット幅(0.5nm)、サンプリングピッチ(2nm),測定範囲(600以上250nm以下)
本発明において、磁性体総含有量に対する3分、15分での溶解量は、一晩放置後(磁性体が完全に溶解している)の吸光度に対する、3分、15分時点でサンプリングした溶液の吸光度の割合によって算出される。
(7)トナーの凝集度測定方法
トナーの凝集度は、以下のようにして測定した。
測定装置としては、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)の振動台側面部分に、デジタル表示式振動計「デジバイブロ MODEL 1332A」(昭和測器社製)を接続したものを用いた。そして、パウダーテスターの振動台上に下から、目開き38μm(400メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き150μm(100メッシュ)の篩の順に重ねてセットした。測定は、23℃、60%RH環境下で、以下の様にして行った。
(i)デジタル表示式振動計の変位の値を0.60mm(peak−to−peak)になるように振動台の振動幅を予め調整した。
(ii)予め23℃、60%RH環境下において24時間放置したトナー5gを精秤し、最上段の目開き150μmの篩上に静かにのせた。
(iii)篩を15秒間振動させた後、各篩上に残ったトナーの質量を測定して、下式にもとづき凝集度を算出した。
凝集度(%)={(目開き150μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100+{(目開き75μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.6+{(目開き38μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.2
<磁性酸化鉄の製造例1>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0乃至1.1当量の苛性ソーダ溶液(Feに対しリン換算で1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウムを含有)を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9乃至1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを約6に調整し、シランカップリング剤として、n−C4H9Si(OCH3)3及びn−C8H17Si(OC2H5)3を磁性酸化鉄100部に対しそれぞれ0.9部/0.6部添加し、十分撹拌した。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、磁性酸化鉄1を得た。
磁性酸化鉄1の平均粒径は0.24μm、磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における飽和磁化及び残留磁化が68.6Am2/kg(emu/g)、3.4Am2/kg(emu/g)であった。
<磁性酸化鉄の製造例2〜4>
表6に示すように、磁性酸化鉄の磁気特性及び処理剤の種類及び添加量を変更した以外は同様にして、表6に示す磁性酸化鉄2乃至4を得た。
<磁性酸化鉄の製造例5〜6>
磁性酸化鉄の製造例1,4において、シランカップリング剤での表面処理を行わなかった以外は同様にして、表6に示す磁性酸化鉄5、6を得た。
イオン交換水709部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7部を徐々に添加してCa3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
一方、下記の処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
・スチレン 76部
・n−ブチルアクリレート 24部
・飽和ポリエステル樹脂 4部
(モノマー構成;ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸、酸価;12mgKOH/g、Tg=72℃、Mn=3900、Mw=10000)
・負荷電性制御剤 2部
(T−77(モノアゾ染料系のFe化合物)(保土ヶ谷化学工業社製))
・磁性酸化鉄1 85部
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに日本精鑞社製;HNP−9(ポリエチレンワックス、DSC吸熱メインピーク=78℃)10部を混合溶解し、これに重合開始剤ジベンゾイルパーオキサイド6部を溶解して重合性単量体系を得た。
前記水系媒体中に上記重合性単体系を投入し、60℃,N2雰囲気下においてクレアミックス(エム・テクニック社製)にて12,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、75℃で1時間反応させた。その後更に6時間撹拌を続けた。重合反応終了後、加熱を停止し、1時間当り75質量部の飽和水蒸気(スチーム圧力205kPa:温度120℃)を内容物中に直接導入した。飽和水蒸気の導入を開始してから10分後、容器内の内容物の温度は100℃に達した。重合用容器内温度が100℃に達した3時間後、容器内温度が100℃に達してから3時間経過後に懸濁液を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解し、濾過、水洗、乾燥した。この粉体を風力分級機にて分級し、磁性トナー粒子を得た。
この磁性トナー粒子100部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET比表面積が160m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0部、表7に示す外添剤2を0.5部と外添剤4を0.2部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して磁性トナーAを調製した。この磁性トナーAの物性を表9に示す。
<磁性トナーB、Cの製造>
磁性トナーAの製造例において、重合性単量体を反応後、系内に水蒸気を導入する時間を1時間に変更した以外は同様にして磁性トナーBを得、5時間に変更した以外は同様にして磁性トナーCを得た。この磁性トナーB及びCの物性を表9に示す。
<磁性トナーD乃至Fの製造>
磁性トナーAの製造例において、表8に示す通りに磁性体、外添剤を変更し、更には分級条件を調整することで重量平均粒径(D4)及び重量平均粒径(D4)/個数平均粒径(D1)を変更した以外は同様にして、磁性トナーD乃至Fを得た。磁性トナーD乃至Fの物性を表9に示す。
<磁性トナーG乃至1の製造>
磁性トナーAの製造例において、磁性トナー粒子に添加する無機または有機微粉体の種類を表8に示す通りに変更した以外は上記磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーG乃至1を得た。磁性トナーG乃至1の物性を表9に示す。
<磁性トナーJの製造>
磁性トナーAの製造例において、使用する磁性体の種類を表8に示すものに変更した以外は上記磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーJを得た。磁性トナーJの物性を表9に示す。
<磁性トナーK、Lの製造>
磁性トナーAの製造例において、Ca3(PO4)2の添加量を調整しトナーの粒径を変更した以外は上記磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーK及びLを得た。磁性トナーK及びLの物性を表9に示す。
<比較用磁性トナーa乃至fの製造>
磁性トナーAの製造例において、表8に示す通りに磁性酸化鉄及び外添剤を変更し、更にトナー粒径を変更した以外は上記磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーa乃至fを得た。磁性トナーa乃至fの物性を表9に示す。
レーザービームプリンターLBP−3000(キヤノン製)のカートリッジにおいて、現像装置の現像スリーブの径及び現像極での磁束密度を表10に示すように改造したカートリッジ1乃至5を作製した。
[トナー担持体の製造方法]
下記に示す配合比にて現像スリーブ表面に設ける樹脂被覆層の塗工液の作製を行った。
・レゾール型フェノール樹脂(アンモニア触媒使用、メタノール40%含有、
大日本インキ化学工業社製、商品名:J325) 350部
・結晶性グラファイト(体積平均粒径:5.5μm) 90部
・導電性カーボンブラック(コロンビアカーボン社製、商品名:Conduc
tex975) 10部
・導電性球状粒子(日本カーボン社製、商品名:ニカビーズ PC1020)
30部
・イソプロピルアルコール 300部
上記材料を、ガラスビーズを用いてサンドミルにて分散した。分散方法としては、上記レゾール型フェノール樹脂溶液に、上記の導電性カーボンブラック、結晶性グラファイト、イソプロピルアルコール100部、を添加し、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミルにて2時間分散した。ここに、更に残りのイソプロピルアルコール及び上記導電性球状粒子を添加し、更にサンドミル分散を30分進めて塗工液を得た。
上記塗工液を用いてスプレー法により外径8mm、10mm、14mmのアルミニウム製円筒管上に導電性被覆層を形成させ、続いて熱風乾燥炉により160℃、30分間加熱して導電性被覆層を硬化させて現像剤担持体aを作製した。このときの表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところRa=1.52μmであった。
市販のレーザービームプリンターLBP−3000に、表10のカートリッジ1に磁性トナーAを充填したもので下記評価を実施した。常温常湿環境(温度23℃、湿度50%)において、1500枚の通紙耐久試験を行った。原稿は画像比率5%のチャートを使用した。ここで耐久前後での画像濃度、及び画質(カブリ、尾引き、転写中抜け)を下記基準により評価した。
(画像評価)
1.画像濃度
初期及び1500枚画だし後に、印字紙全面にベタ画像部を形成し、このベタ画像の画像濃度をマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。
2.カブリ
カブリ測定用反射測定機REFLECTMETER(東京電色(株))にて、上記の画像の白部及び未使用紙の反射率を測定し、両者の差をカブリとした。
カブリ(%)=未使用紙反射率−通紙後画像白部の反射率
A:カブリ0.3%未満
B:カブリ0.3%以上1.0%未満
C:カブリ1.0%以上2.0%未満
D:カブリ2.0%以上2.5%未満
E:カブリ2.5%以上
3.尾引き
尾引きは、初期及び1500枚画だし後に、画像面積比率約3%の横線のみからなる画像パターンを現像中にマシンを止め、現像後の感光ドラム上の文字部の尾引き状況を以下の基準に従い目視で判断した。
A:尾引きは未発生。
B:わずかに尾引きは発生しているものの、良好な画像。
C:尾引きは発生しているものの、実用的には問題のない画質。
D:尾引きが顕著に発生。
4.中抜け
中抜けは、初期及び1500枚画だし後に、ライン及び文字を含む画像をプリントアウトし、目視または拡大顕微鏡を使用して、以下の基準で評価した。
A:文字画像及びライン画像ともに、細部まで忠実に再現している。
B:細部に多少の乱れまたは中抜けが生じているが、目視では問題ないレベルである。
C:目視でも乱れや中抜けがわかるレベルである。
D:乱れ、中抜けが多数発生し、原稿を再現していない。
その結果、表12に示すように良好な結果が得られた。
(実施例2乃至15)
実施例1において、表11に示すような組み合わせで評価を行った結果、表12に示すように良好な結果が得られた。
(比較例1〜8)
実施例1において、表11に示すような組み合わせで評価を行った結果、表12に示すような結果が得られた。
(結着樹脂の製造例)
テレフタル酸 27mol%
アジピン酸 15mol%
トリメリット酸 6mol%
前記式(ア)で示されるビスフェノール誘導体 35mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(ア)で示されるビスフェノール誘導体 17mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
上記に示すポリエステルモノマー及びエステル化触媒を4つ口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、冷却、粉砕し、軟化点143℃の樹脂Aを得た。
次に、
テレフタル酸 24mol%
アジピン酸 16mol%
トリメリット酸 10mol%
前記式(ア)で示されるビスフェノール誘導体 30mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(ア)で示されるビスフェノール誘導体 20mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
上記に示すポリエステルモノマー及びエステル化触媒を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、冷却、粉砕し、軟化点98℃の樹脂Bを得た。
樹脂A及びBのそれぞれ50部をヘンシェルミキサーで混合し、結着樹脂1とした。
この結着樹脂1のガラス転移温度は59℃、軟化点は128℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける分子量1万以下の成分を43%含有するものであった。
・結着樹脂1 100部
・磁性体1 95部
・モノアゾ鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 2部
・ポリエチレンワックス(融点105℃) 4部
(サゾール社製、C105)
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050)を用いて機械式粉砕させて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。そこで得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は7.5μmであった。
その原料トナー粒子を、熱風を吹き付けることによりトナー粒子の表面改質を行う装置であるメテオレインボーMR−3型(日本ニューマチック工業社製)で表面改質を行った。表面改質時の条件は、原料供給速度2kg/hr、熱風流量700l/min、吐出熱風温度250℃で行った。
この磁性トナー粒子100部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、処理後のBET比表面積が160m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0部、及び表13に示す外添剤2及び4とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して磁性トナーMを調製した。この磁性トナーMの物性を表14に示す。
<磁性トナーNの製造>
磁性トナーMの製造例において、メテオレインボーMR−3型(日本ニューマチック工業社製)で表面改質を行う条件を、原料供給速度2kg/hr、熱風流量500リットル/min、吐出熱風温度200℃で行った以外は同様に行い、磁性トナーNを得た。磁性トナーNの物性を表14に示す。
<磁性トナーO、Pの製造>
磁性トナーMの製造例において、表13に示す通りに磁性酸化鉄及び外添剤を変更した以外は上記磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーO及びPを得た。磁性トナーO及びPの物性を表14に示す。
<比較用磁性トナーgの製造>
磁性トナーMの製造例において、表13に示す通りに外添剤を変更した以外は上記磁性トナーMの製造と同様にして、磁性トナーgを得た。磁性トナーgの物性を表14に示す。
<比較用磁性トナーh、iの製造>
磁性トナーMの製造例において、メテオレインボーMR−3型(日本ニューマチック工業社製)での表面改質を行わず、更に表13に示す通りに磁性体及び外添剤を変更した以外は上記磁性トナーMの製造と同様にして、磁性トナーh及びiを得た。磁性トナーh及びiの物性を表14に示す。
(実施例15)
市販のレーザービームプリンターLBP−3000に、カートリッジ1に磁性トナーAを充填したもので下記評価を実施した。常温常湿環境(温度23℃、湿度50%)及び高温高湿環境(温度30℃、湿度80%)において、1000枚の通紙耐久試験を行った。原稿は画像比率5%のチャートを使用した。ここで耐久前後での画像濃度、及び画質(カブリ、尾引き、転写中抜け)を実施例1と同様にして評価した。
(実施例16〜19)
実施例15において、表15に示すような組み合わせで評価を行った結果、表16に示すように良好な結果が得られた。
〔比較例9〜13〕
実施例15において、表15に示すような組み合わせで評価を行った結果、表16に示すような結果が得られた。
Claims (11)
- 潜像担持体と、磁性トナーを表面に担持し内部に磁界発生手段を有するトナー担持体とが一定の間隔を設けて配置されており、該潜像担持体と該トナー担持体との間に交番電界を印加して磁性トナーで該潜像担持体に担持される静電潜像の現像を行う画像形成方法であって、
該トナー担持体の外径が5.0mm以上12.0mm未満であり、
該磁性トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを含んでおり、
該磁性トナーは、平均円形度が0.950以上であり、下記式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100 (1)
該トナーの粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyが下記式(2)及び(3)を満足することを特徴とする画像形成方法。
600≦TE10≦1500 (2)
TE10/TE100≦1.60 (3)
(TE10:撹拌速度が10mm/secの時のTotal Energy(mJ)、TE100:撹拌速度が100mm/secの時のTotal Energy(mJ)) - 該トナー担持体に内包される磁界発生手段の潜像担持体方向への磁束密度がトナー担持体表面において600G以上800G以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- 該磁性トナーの重量平均粒径(D4)が、4.0μm以上9.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
- 該磁性トナーの磁場79.6kA/mで着磁したときの残留磁化が3.0Am2/kg以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 5mol/l塩酸中に磁性トナーを分散させた際における、抽出時間3分、15分時点での磁性体総含有量に対する磁性体抽出量S3、S15(質量%)が下記式(4)及び(5)を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
0.5≦S3≦10 (4)
40≦S15≦80 (5) - 該磁性トナー粒子が水系媒体中で製造されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 該磁性トナーは、該磁性トナー粒子が懸濁重合法で製造されたことを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
- 該磁性トナー粒子はさらに離型剤を含有しており、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、波長780nmの光の透過率が50%時のメタノール濃度が60体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成方法。 - 該磁性トナーは、該磁性トナー粒子が熱処理による表面改質工程を含む粉砕法により製造されたことを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
- 潜像担持体と、磁性トナーを表面に担持し内部に磁界発生手段を有するトナー担持体とが一定の間隔を設けて配置されており、該潜像担持体と該トナー担持体との間に交番電界を印加して磁性トナーで該潜像担持体に担持される静電潜像の現像を行う画像形成方法に用いられる磁性トナーであって、
該トナー担持体の外径が5.0mm以上12.0mm未満であり、
該磁性トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを含んでおり、
該磁性トナーは、平均円形度が0.950以上であり、下記式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100 (1)
該トナーの粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyが下記式(2)及び(3)を満足することを特徴とする磁性トナー。
600≦TE10≦1500 (2)
TE10/TE100≦1.60 (3)
(TE10:撹拌速度が10mm/secの時のTotal Energy(mJ)、TE100:撹拌速度が100mm/secの時のTotal Energy(mJ)) - 潜像担持体と、磁性トナーを表面に担持し内部に磁界発生手段を有するトナー担持体とが一定の間隔を設けて配置されており、該潜像担持体と該トナー担持体との間に交番電界を印加して磁性トナーで該潜像担持体に担持される静電潜像の現像を行うプロセスユニットであって、
該トナー担持体の外径が5.0mm以上12.0mm未満であり、
該磁性トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを含んでおり、
該磁性トナーは、平均円形度が0.950以上であり、下記式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100 (1)
該トナーの粉体流動性測定装置において測定されたTotal Energyが下記式(2)及び(3)を満足することを特徴とするプロセスユニット。
600≦TE10≦1500 (2)
TE10/TE100≦1.60 (3)
(TE10:撹拌速度が10mm/secの時のTotal Energy(mJ)、TE100:撹拌速度が100mm/secの時のTotal Energy(mJ))
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