本発明者らが検討した結果、トナー消費量と高温高湿環境下での耐久性、そして、低温低湿環境下でのカブリには、トナーに用いる磁性粉体の磁気特性が非常に大きく影響を及ぼしており、リン元素とケイ素元素を特定の割合で磁性粉体に含有させ、磁気特性を特定の値に調整する事で、トナーの消費量を低減することができ、且つ高温高湿環境下での耐久性、低温低湿環境下でのカブリを改善することができるということを見出し、本発明に至った。
まず、トナー劣化について詳細に調べたところ、低印字率での間欠モードでは磁性粉体の残留磁化がトナー劣化に大きく関与していることが分かった。最初にプリンターに用いられる現像器の一例の断面図を図1に示す。図1において、100は静電荷像担持体、102はトナー担持体、103はトナー規制部材、104はマグネットローラー、140は現像装置、141は攪拌部材を示す。現像器140は図1に示すように静電荷像担持体100に近接してアルミニウム、ステンレス等非磁性金属で作られた円筒状のトナー坦持体102が配設され、静電荷像担持体100とトナー担持体102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により任意の間隔に維持されている。トナー担持体内にはマグネットローラー104がトナー担持体102と同心的に固定、配設されている。但しトナー担持体102は回転可能である。マグネットローラー104には図示の如く複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吐き出しに影響している。
ここで磁性粉体の残留磁化について考えると、残留磁化が大きい場合、N2極で吐き出されたトナーは磁気凝集により流動性は劣るものとなる。一方、図1から明らかなように、N2極〜S2極にかけてはカートリッジのトナー送り部材(不図示)からトナーが送られるためにトナーは物理的にもパッキングされやすい状態であり、上記の磁気凝集に加えパッキングの圧力が加わる事によりトナー劣化は生じる。特に、高温高湿環境下の低印字率での間欠モードではトナーが消費されない上にパッキング圧力はかかり続ける事となり、外添剤の埋め込み等が生じてしまう。
このため、磁気凝集を起こさないためにも磁性粉体の残留磁化は4.5Am2/kg以下である必要があり、より好ましくは4.0Am2/kg以下である。
しかしながら、磁性粉体の残留磁化を下げると飽和磁化も下がってしまうため、単に残留磁化を下げただけではカブリが悪化してしまう。特に小径のトナー担持体を用いた場合はその傾向は強くなり、低温低湿環境下でのカブリは悪化しやすい。
このため、トナーの飽和磁化を上げ磁気拘束力によりカブリを抑制する必要があり、外部磁場79.6kA/mにおける磁性粉体の飽和磁化が67.0Am2/kg以上であることが重要である。一方、磁性粉体の残留磁化を下げつつ飽和磁化を75.0Am2/kgよりも大きくする事は非常に困難であり、遷移金属フリーという観点からも磁性粉体の飽和磁化は67.0〜75.0Am2/kgである事が必須であり、より好ましくは68.0〜75.0Am2/kgである。
なお、本発明においては磁性粉体は鉄元素以外の遷移金属を実質的に含有していない事が好ましいが、実質的にとは、磁性粉体製造時に意図的に鉄元素以外の遷移金属を添加しない事を指し、不純物としての鉄以外の遷移金属の総量が1.0%以下、より好ましくは0.5%以下の事である。
このような磁気特性を有する磁性粉体を得るために種々の検討を行ったところ、磁性粉体にリン元素を鉄元素に対して0.05〜0.25質量%、ケイ素元素を鉄元素に対して0.30〜0.80質量%を含有させ、リン元素とケイ素元素の割合(P/Si)を0.15〜0.50とすることにより、上記の磁気特性を満たすことができ、またカブリの低減に効果がある事が分かった。
この理由については定かではないが、特定量のリン元素とケイ素元素を特定の割合で用いる事により、磁性粉体の結晶格子中(Fe2O3)にリン元素とケイ素元素が特殊な状態で存在するようになり、このような磁気特性を有するようになると考えている。
なお、リン元素が0.05質量%未満では残留磁化を下げる事が難しく、0.25質量%よりも多い場合は磁性粉体の粒度分布が広くなると共に粒径のコントロールが難しくなるので好ましくない。また、ケイ素元素についても同様であり、0.30質量%未満では残留磁化を下げる事が難しく、0.80質量%よりも多い場合は磁性粉体の粒度分布が広がってしまい、トナー中での磁性粉体の分散性が低下してしまう。このため、カブリの増大等を招き好ましくない。
さらに、リン元素とケイ素元素の比(P/Si)が0.15未満では、残留磁化を下げることはできるものの飽和磁化も下がってしまうため好ましくない。一方、リン元素とケイ素元素の比(P/Si)が0.50よりも大きいと磁性粉体の粒度分布が広くなり、トナー中での分散性が悪化するので好ましくない。
なお、本発明において、磁性粉体の粒度分布については体積平均変動係数にて表す事が出来、体積平均変動係数が30以下である事が好ましい。体積平均変動係数は値が小さいほど粒度分布がシャープである事を意味する。本発明において、体積平均変動係数は次式により求めるものと定義する。
体積平均変動係数=磁性粉体の粒度分布の標準偏差/磁性粉体の体積平均粒径×100
次に磁性粉体の体積平均粒径(Dv)は0.15〜0.35μmであることが重要である。一般に磁性粉体の体積平均粒径(Dv)は小さい方が着色力は上がるものの、磁性粉体が凝集しやすくなりトナー中での磁性粉体の均一分散性が劣るものとなり好ましくない。さらに、体積平均粒径(Dv)が小さい磁性粉体は残留磁化が大きくなる傾向にあるので、0.15μm以上である事が重要である。
一方、体積平均粒径(Dv)が0.35μmより大きい磁性粉体では、残留磁化を低くすることができるものの飽和磁化も同時に低下してしまう。さらに、本発明の好適なトナーの製造方法である懸濁重合法においては均一分散が難しくなり好ましくない。このために磁性粉体の体積平均粒径(Dv)は0.15〜0.35μmであることが必須であり、より好ましくは0.15〜0.30μmである。
なお、磁性粉体の体積平均粒径(Dv)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定でき、磁性粉体を透過型電子顕微鏡にて観察して体積平均粒径を求める、あるいは、トナーの断面写真から磁性粉体の体積平均粒径を求める事も出来る。
具体的には、1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径をもとめ、それをもとに体積平均粒径の算出を行う。
また、トナーの断面写真から磁性粉体の体積平均粒径を求める具体的な方法としては、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物をミクロトームにより薄片上のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影を行い、上記の方法にて体積平均粒径を求める。
尚、後述の実施例において、磁性粉体の体積平均粒径(Dv)は透過型電子顕微鏡を用いて4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体を測定して算出した。
このような磁性粉体を用いたトナーは、トナー消費量を低減することができる。トナー消費量について種々検討したところ、トナーの消費量はライン部のトナーののり量と相関があり、ライン部のトナーののり量を低くすることにより、消費量を低減できるということが分かった。
ここで磁性一成分現像について考えると、従来、ライン幅を一定に保ちつつトナーののり量を抑制することはかなり困難であった。これは現像領域においてトナーは、粒子ではなく、複数の粒子によって形成された“穂”として挙動するからであり、潜像を埋めるのに必要以上のトナーを現像していたからである。また、この傾向は所謂エッジ効果(ラインのエッジ部に電荷が集中し、エッジ部のトナー現像量が増加する現象)が生じるジャンピング現像において顕著であり、ライン幅を一定に保ちつつトナーののり量を抑制することは非常に困難であった。
しかし、本発明の如きトナー、すなわち、飽和磁化が高く残留磁化が低い磁性粉体を用いるとトナー担持体上で均一な穂を形成することが出来る。これらの均一な穂は現像領域において現像バイアスを受けることによりトナー担持体上から像担持体上に飛翔するが、本発明のトナーは前述のように残留磁化が低いためにトナーは現像領域において“穂”が崩れて一粒一粒の粒子として挙動するため、必要以上にトナーが現像に供されることが無いのでトナーののり量は減少する。また、トナーののり量が少なく、残留磁化も低いために飛び散りも良化する。
以上のように、磁性粉体の体積平均粒径、磁気特性、含有する元素の量・比率のバランスを取る事により、高温高湿環境下での耐久性と、低温低温低湿環境下でのカブリの両立も可能となった。さらに、同一ライン幅であってもトナーののり量を抑制することが可能であり、これに伴いトナー消費量も削減する事が可能となった。
なお、本発明において磁性トナーの磁化の強さは、振動型磁力計VSM P−1−10(東英工業社製)を用いて、25℃の室温にて外部磁場79.6kA/mで測定する。
また、本発明に用いる磁性粉体はスチレン−nブチルアクリレート中での磁性粉体の50%体積径が0.5〜1.5μm、より好ましくは0.5〜1.1μmであり、次式(1)で示されるSD値が0.4μm以下である事が好ましい。
SD=(d84%−d16%)/2 式(1)
(式中、d16%は、体積基準の粒子径分布において累計値が16体積%となる粒子径を表し、d84%は、累計値が84体積%となる粒子径を表す。)
本発明の好適な製造方法である懸濁重合法において、磁性粉体はスチレンをはじめとする重合性単量体に分散する必要がある。このため、重合性単量体への分散時の磁性粉体の粒度を細かくし、そして粒度分布をシャープにすることが、トナー中における磁性粉体の均一分散性を高めるには重要である。この観点に立ち検討したところ、スチレン−nブチルアクリレート中での磁性粉体の50%体積径が1.5μm以下(より好ましくは1.1μm以下)であれば、トナー中で磁性粉体はほぼ均一分散し、トナー間での磁性粉体の分布も均一に近くなることが分かった。さらに、式(1)で示されるSD値が0.4μm以下である、すなわちスチレン−nブチルアクリレート中での粒度分布がシャープである場合には、トナー中での磁性粉体の分散性の改善効果は非常に大きなものとなり、より好ましい。
一方、50%体積径を0.5μmよりも小さくするためには磁性粉体の分散時間を非常に長くすると共に強いシェアをかけなければならず、生産性が非常に劣るために好ましくない。従って、本発明の磁性粉体のスチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径が0.5〜1.5μm(より好ましくは0.5〜1.1μm)であり、SD値が0.4μm以下であることが好ましい。
なお、磁性粉体のスチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径、及び、SD値の測定は以下のように行う。
スチレン29.6g、n−ブチルアクリレート10.4gを150mlのガラス瓶に入れ、これをディスパーマット装置(VMA−GETZMANN社製)に取り付けた。次いで、ディスパーマット装置に直径30mmのディスクを取り付け、600rpmで攪拌した状態で磁性粉体36gを1分間かけて投入し、その後4000rpmまで回転数を上げて30分間保持した。このようにして得られた分散スラリーを攪拌終了後直ちにマイクロトラック(日機装社製)を用い測定し、50%体積径(μm)及びSD値(μm)を求めた。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、例えば下記の方法で製造することが出来る。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、鉄元素に対して0.05〜0.25質量%のリン元素となるよう燐酸ソーダ等の燐酸化合物、鉄元素に対して0.30〜0.80質量%のリン元素となるよう珪酸ソーダ等のケイ素化合物を加え水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応をおこない、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5〜10に維持しながら空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性粉体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応終了後、磁性粉体表面を疎水化処理するが、乾式にて疎水化処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にシラン化合物を用いて疎水化処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたもの再分散させる、あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、再散液のpHを酸性領域にし、十分撹拌しながらシラン化合物を添加し、加水分解後温度を上げる、あるいは、pHをアルカリ域にすることで疎水化処理を行うこともできる。ただし、本発明の好適要件であるスチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径が1.5μm以下であり、SD値が0.4μm以下という磁性粉体を得るためには酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリーし、表面処理を行うことが好ましい。
磁性粉体の表面処理として湿式、すなわち水系媒体中でシラン化合物で処理するには、まず水系媒体中で磁性粉体を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根等で撹拌する。次いで任意量のシラン化合物を投入しシラン化合物を加水分解しながら表面処理するが、この時も撹拌を行いつつピンミル、ラインミルの如き装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ表面処理をすることがより好ましい。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが上げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5.0質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸等無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
さらに、このように処理した磁性体を洗浄、ろ過、乾燥するが、上述の如き磁性粉体のスチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径、及び、SD値となるように乾燥条件、解砕条件を決める必要がある。また、磁性粉体の表面処理にシラン化合物を用いる以外にチタン化合物も用いることができる。
乾燥工程において、乾燥温度が低いと表面処理したシラン化合物と磁性粉体表面の結合強度が弱いためにシラン化合物が溶出してしまい、磁性粉体表面が露出してしまう。このためにスチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径が大きくなると共にSD値も大きな値となってしまう。
一方、乾燥温度が高い場合、乾燥中に磁性粉体の凝集が生じてしまい、スチレン−nブチルアクリレート中での50%体積径が大きくなってしまい好ましくない。
本発明において用いられるシラン化合物としては一般式(I)で示される化合物が好ましい。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
この中で、高い疎水性を得るという観点では下記一般式(II)で示されるアルキルトリアルコキシシラン化合物を用いることが好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 (II)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
上記式におけるpが2より小さいと、疎水性を十分に付与することが困難であり、また、pが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性粉体同士の合一が多くなり好ましくない。
さらに、qが3より大きいとシラン化合物の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなるため、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシラン化合物を使用するのが良い。
上記シラン化合物を用いる場合、単独で処理する、あるいは複数の種類を併用して処理することが可能であり、併用する場合、それぞれのシラン化合物を個別に処理する、あるいは同時に処理することが出来る。
また、本発明の磁性粉体は、磁性粉体を基準としてシラン化合物の被覆量が0.9〜3.0質量%、より好ましくは0.9〜2.5質量%である。さらに、磁性粉体の表面積、シラン化合物の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明においては下式(2)から求められるシラン化合物の脱離率が3〜30%であることが好ましく、より好ましくは3〜20%である。
脱離率={1−(トルエン中にて60分間分散させた後の磁性粉体が含有するシラン化合物の量)/(磁性粉体が含有するシラン化合物の被覆量)}×100・・・式(2)
脱離率とは磁性粉体から溶出するシラン化合物の割合を示しており、この値が多いもの程磁性粉体が過剰なシラン化合物で疎水化処理されていることを意味する。
本発明者らが検討したところ、トルエン中にて分散させた後の磁性粉体が有するシラン化合物の量は磁性粉体の種類、比表面積によりほぼ決まっており(以下、このシラン化合物の量を必要最低限の処理量であるとする)、この必要最低限の処理量よりも少ない量のシラン化合物で処理した場合は磁性粉体の疎水化度が低下し、分散性も悪化する。
しかしながら、全ての磁性粉体を完全に疎水化処理することは非常に困難であるため、必要最低限のシラン化合物の処理量よりも若干多い量で処理することが必要であり、脱離率が3%以上であれば疎水過度の低下や分散不良を起こすことがないことが判明した。
一方、脱離率が30%よりも多い場合、磁性粉体が凝集気味になりやすく好ましくない。さらに、トナーの帯電量低下等を生じやすくなるので好ましくない。
なお、脱離率の具体的な測定方法は以下の通りである。
500℃で焼成した磁性粉体1gを10mlの濃塩酸中で加熱溶解した後、純水を加えて全量を100mlとした(母液)。母液から20mlを分取し、純水を加えて全量を100mlとした溶液(測定用)を作製した。さらに母液から20mlを分取し、原子吸光分析用のシリカ標準液を所定量添加した後、純水を加えて全量を100mlとした溶液(標準化用)を作製した。
次にICP発光分析装置(セイコーインスツルメンツ社製 Vista−PRO(商品名))を用いて標準添加法にて測定溶液中のSi量(mg)を求め、磁性粉体のSi量(%)を算出した。
ここで、シラン化合物により疎水化処理した磁性粉体が有するSi量をSi−1、シラン化合物により疎水化処理していない磁性粉体が有するSi量をSi−2とする。
一方、50mlのスクリュー管瓶にシラン化合物により疎水化処理した磁性粉体20.0g、トルエン13.0gを入れ、振とうした後に超音波分散器にて60分間超音波を照射した。その後、遠心分離器を用いて2000rpmで15分間遠心分離を行った後、上澄み液を取り除き沈殿物を得た。得られた沈殿物を90℃にて1時間乾燥させた後、上記の方法により磁性粉体が有するSi量(Si−3)を測定した。
ここで、Si−1からSi−2を引いた値が磁性粉体が有するシラン化合物の量であり、本発明においてこれをシラン化合物の被覆量とした。また、Si−3からSi−2を引いた値がトルエン中にて60分間分散させた後の磁性粉体が有するシラン化合物量とする。
これらを用い、下式により脱離率を求める。
脱離率={1−(トルエン中にて60分間分散させた後の磁性粉体が有するシラン化合物の量)/(磁性粉体が有するシラン化合物の被覆量)}
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体はリン、ケイ素の他にコバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウムなどの元素を含んでもよく、四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上併用して用いられる。
磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、本発明の磁性粉体では、磁気特性の面から球形であることが好ましい。
本発明では、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金、ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、結着樹脂100質量部に対して、20〜150質量部を用いることが好ましい。さらに好ましくは30〜140質量部を用いることが良い。20質量部未満では定着性は良好になるもののトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、150質量部を超えると、定着性の悪化と共にトナー担持体の磁力による保持力が強まり、現像性が低下してしまい好ましくない。
なお、トナー中の磁性粉体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性粉体量とする。
本発明のトナーは高画質化のため、より微小な潜像ドットを忠実に現像するため、トナーの重量平均粒径は3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは4〜9μmである。重量平均粒径が3μm未満の場合、粉体としての流動性及び撹拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に帯電させることが困難となる。また、小粒径になればなるほどトナーはチャージアップしやすくなり現像性が低下する。さらに、低温低湿環境下でカブリが悪化するので好ましくない。
一方、重量平均粒径が10μmよりも大きいとカブリは良化する反面、上述の如き高画質化が困難となると共に、ライン部でのトナーのり量が増加し、トナー消費量が増大するので好ましくない。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5mlを加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の個数を測定して個数分布とを算出する。それから、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径、即ち数平均粒径及び、重量平均粒径を求める。後述の実施例においても同様に測定した。
本発明のトナーの平均円形度は0.960以上である事が好ましい。平均円形度が0.960以上であるとトナーは球形に近い形状を有しており、良好な流動性を有する事から均一に摩擦帯電性されやすく、帯電量分布が均一になる。このため、カブリの更なる低減が可能となる。また、平均円形度が高いトナーはトナー担持体上では細く均一な穂を形成するため、残留磁化が低い事との相乗効果でトナー消費量はさらに低減するので好ましい。また、トナーの円形度分布において、モード円形度が0.99以上であると、トナー粒子の多くが真球に近い形状を有することを意味しており、上記作用がより一層顕著になり、より好ましい。
なお、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下式(4)によりそれぞれ求め、さらに下式(5)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数(m)で除した値を平均円形度(C)と定義する。
また、モード円形度は、円形度を0.40から1.00までを0.01毎に61分割し、測定した粒子の円形度をそれぞれの円形度に応じて各分割範囲に割り振り、円形度頻度分布において頻度値が最大となるピークの円形度である。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及びモード円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及びモード円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度及びモード円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される。
平均円形度及びモード円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものであり、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
測定手順としては、以下の通りである。
界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlに、磁性トナー約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20KHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群の平均円形度及びモード円形度を求める。
本発明における平均円形度とは、磁性トナーの凹凸の度合いの指標であり、磁性トナーが完全な球形の場合1.000を示し、磁性トナーの表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。なお、本発明における平均円形度とは、磁性トナーの凹凸の度合いの指標であり、磁性トナーが完全な球形の場合1.000を示し、磁性トナーの表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
本発明の磁性トナーには帯電特性向上のために荷電制御剤を配合することが好ましい。荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ重合体、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する重合体、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
この中でも、均一な帯電性を行うという観点からスルホン酸基を有する重合体を用いることがより好ましい。
さらに、磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量A(原子%)に対する硫黄元素の存在量E(原子%)の比(E/A)が3×10−4≦E/A≦50×10−4であると、より好ましい。
本発明のトナーを好適に製造できる懸濁重合法において、スルホン酸基を有する重合体を用いると、その親水性、極性からスルホン酸基を有する重合体は磁性トナー粒子表面に局在化するようになる。このため、E/Aを上記の様に制御することにより、トナーは帯電の立ち上がりが早く、且つ、十分な帯電量を有することが可能となる。また、磁性粉体の磁気特性、均一分散との相乗効果で均一な帯電性が得られやすくなり、飛び散りが大幅に良化すると共に、長期使用においてもカブリが生じ難い。
一方、E/Aの値が3×10−4よりも低いものは帯電量が不足しがちになるので好ましくない。また、E/Aが50×10−4より高いものは帯電の立ち上がりは十分に早いもののトナーの帯電量が高すぎてしまい、所謂チャージアップ傾向となり、帯電量分布がブロードになるので好ましくない。
なお、本発明における磁性トナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量A(原子%)に対する硫黄元素の含有量E(原子%)の比(E/A)は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出した。
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社(Physical Electronics Industries,Inc.)製 1600S型 X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα(400W)
分光領域 800μmφ
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
測定試料としては、トナーを用いるが、トナーに外添剤が添加されている場合には、イソプロパノールの如きトナーを溶解しない溶媒を用いて、トナーを洗浄し、外添剤を取り除いた後に測定を行う。
スルホン酸基を有する重合体に用いられる単量体は、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等がある。本発明のスルホン酸基を有する重合体は、上記単量体の単重合体であってもよく、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。
しかし、その中でもスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体とスチレン及び/又はスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であると、トナーの帯電性が非常に良好なものとなり好ましい。また、この場合、共重合体100質量部中のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体の質量は1.0〜10.0質量部であることがこのましく、E/Aの値が3×10−4から50×10−4となるように添加量を調整すればよい。
スルホン酸基を有する単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
スルホン酸基を有する重合体の製造方法は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、イオン重合等があるが、操作性などの面から溶液重合が好ましい。
スルホン酸基を有する重合体は、
X(SO3 −)n・mYk+
(Xは前記重合性単量体に由来する重合体部位を表し、Y+はカウンターイオンを表し、kはカウンターイオンの価数であり、m及びnは整数であり、n=k×mである。)
の如き構造を有する。カウンターイオンとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンなどであることが良く、より好ましくは水素イオンであることが望まれる。
スルホン酸基を有する重合体の分子量は重量平均分子量(Mw)が2000乃至100000が好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000未満の場合には、トナーの流動性が悪くなり、転写性が悪化する。100000を超える場合には、単量体への溶解に時間がかかることに加え、トナー粒子表面に均一に硫黄元素が存在することが難しくなる。
また、スルホン酸基を有する重合体のガラス転移点(Tg)は50℃乃至100℃が好ましい。ガラス転移点が50℃未満の場合には、トナーの流動性、保存性に劣り、長期使用においてトナー劣化が生じてしまう。一方、ガラス転移点が100℃を超える場合には定着性に劣るものとなり好ましくない。
上記の如き荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合を行う場合には、造粒前に重合性単量体組成物荷電制御剤を添加する方法が一般的であり、水中で油液滴を形成し重合を行っている最中、または、重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加えることによりシード重合を行い、トナー粒子表面を均一に覆うことも可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を添加し、シェアをかけ混合・撹拌することにより導入することも可能である。
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合、トナー100質量部に対し好ましくは0.005〜1.0質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。
本発明の磁性トナーは定着性向上のために、離型剤を有することが好ましく、その量は結着樹脂に対し1〜30質量%を含有することが好ましい。より好ましくは、3〜25質量%である。離型剤の含有量が1質量%未満では離型剤の添加効果が十分ではなく、さらに、オフセット抑制効果も不十分である。一方、30質量%を超えてしまうと長期間の保存性が悪化すると共に、離型剤、磁性粉体等のトナー材料の分散性が悪くなり、磁性トナーの流動性の悪化や画像特性の低下につながる。また、離型剤成分のしみ出しも起るようになり、高温高湿下での耐久性が劣るものとなる。さらに、多量のワックスを内包するために、トナー形状がいびつになりやすくなる。
一般に、記録媒体上に転写されたトナー像はその後、熱・圧力等のエネルギーにより転写材上に定着され、半永久的画像が得られる。この際、熱ロール式定着が一般に良く用いられる。先述したように、重量平均粒径が10μm以下のトナーを用いれば非常に高精細な画像を得ることができるが、粒径の細かいトナー粒子は紙等の記録媒体を使用した場合に紙の繊維の隙間に入り込み、熱定着用ローラからの熱の受け取りが不十分となり、低温オフセットが発生しやすい。しかしながら、本発明に係わるトナーにおいて、適正量の離型剤を含有せしめることにより、高画質と定着性を両立させることが可能となる。
本発明に係わる磁性トナーに使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
このような離型剤の吸熱ピークのピークトップ温度の測定は、「ASTM D 3417−99」に準じて行う。
本発明の磁性トナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂、磁性粉体、離型剤、荷電制御剤、場合によって着色剤等の磁性トナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶させた中に磁性粉体等の他の磁性トナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることが出来る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、本発明の好ましい平均円形度(0.960以上)を有するトナーを得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加える処理をすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法、また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
機械的衝撃法を用いる場合においては、処理温度をトナーのガラス転移点Tg付近の温度(Tg±10℃)を加える熱機械的衝撃が、凝集防止、生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、トナーのガラス転移点Tg±5℃の範囲の温度で行うことが、転写効率を向上させるのに特に有効である。
本発明に関わるトナーを粉砕法により製造する場合の結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることが出来、これらは単独或いは複数種併用することが出来る。この中でも特にスチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
トナーのガラス転移点温度(Tg)は、30〜80℃であることが好ましく、より好ましくは35℃〜70℃である。Tgが30℃よりも低いとトナーの保存性が低下し、80℃よりも高いと定着性に劣る。トナーのガラス転移点の測定には例えば、示差走査熱量計で測定を行い、測定方法はASTM D 3418−99に準じて行う。なお、測定に際しては試料を1回昇温させ履歴をとった後、急冷し、再度昇温速度10℃/min、温度30〜200℃の範囲で昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
本発明の磁性トナーは、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものであり、本発明に好適に用いられる平均円形度が0.960以上という物性を得る為には、機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行う事が必要となり、生産性が劣るものとなる。そこで、本発明のトナーは、分散重合法、会合凝集法、懸濁重合法及び溶解懸濁法の如き水系媒体中でトナー粒子を製造したトナーであることが好ましく、特に懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしやすく非常に好ましい。
懸濁重合法とは、重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物とした後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー粒子を有するトナー(以降、単に「重合トナー」とも称す)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.960以上という本発明に好適な物性要件を満たすトナーが得られやすく、さらにこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
次に懸濁重合法による製造方法を説明する。懸濁重合トナーは、一般にトナー組成物、すなわち結着樹脂となる重合性単量体中に、磁性粉体、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、分散機等に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して製造できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明に係わる重合トナーの製造においては、重合性単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の重合性単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体等、共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に添加することにより、トナー粒子表面にこれら高分子重合体が偏在するようになり耐ブロッキング性、現像性の良好なトナーを得ることができる。
これらの樹脂の中でも特にポリエステル樹脂を含有することにより、その効果は大きな物となる。これは次に述べる理由からと考えている。ポリエステル樹脂は比較的極性の高い官能基であるエステル結合を数多く含む為、樹脂自身の極性が高くなる。その極性の為、水系分散媒中では液滴表面にポリエステルが偏在する傾向が強くなり、その状態を保ちながら重合が進行し、トナーとなる。この為、トナー粒子表面にポリエステル樹脂が偏在することで表面状態や、表面組成が均一な物となり、その結果帯電性が均一になると共に、離型剤の内包性が良好な事との相乗効果により非常に良好な現像性を得る事が出来る。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、例えばトナーの帯電性、耐久性および定着性などの物性をコントロールする上で、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また式(I)で表されるビスフェノール誘導体;
[式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。]、あるいは式(I)の化合物の水添物、
また、式(II)で示されるジオール;
、あるいは式(II)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂の中では、帯電特性、環境安定性が優れておりその他の電子写真特性においてバランスのとれた前記のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく使用される。この化合物の場合には、定着性やトナーの耐久性の点においてアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2〜10が好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂は全成分中45〜55モル%がアルコール成分であり、55〜45モル%が酸成分であることが好ましい。
本発明の磁性トナーにおいてトナー粒子表面に存在し、得られるトナー粒子が安定した帯電性を発現するために、ポリエステル樹脂は0.1〜50mgKOH/樹脂1gの酸価を有していることが好ましい。0.1mgKOH/樹脂1g未満だとトナー粒子表面への存在量が絶対的に不足し、50mgKOH/樹脂1gを超えるとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす。さらに本発明では、5〜35mgKOH/樹脂1gの酸価の範囲がより好ましい。
本発明においては、得られるトナー粒子の物性に悪影響を及ぼさない限り2種以上のポリエステル樹脂を併用したり、例えば、シリコーンやフルオロアルキル基含有化合物により変性したりして物性を調整することも好適に行われる。
また、このような極性官能基を含む高分子重合体を使用する場合、その数平均分子量は3000以上が好ましく用いられる。3000未満以下では、本重合体が表面付近に集中し易いことから、現像性、耐ブロッキング性、耐久性が悪化する傾向にあるので好ましくない。また、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は定着性と耐ブロッキング性の観点から1.2〜10.0であることが好ましい。なお、数平均分子量、及び重量平均分子量はGPCにより測定できる。
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良等を目的として上記以外の樹脂を単量体組成物中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できる。これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部超添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる。
本発明の磁性トナーの製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5〜30時間であるものを、重合性単量体100質量部に対し0.5〜20質量部の添加量で重合反応を行うと、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることが出来る。
重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明の磁性トナーを製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001〜15質量部である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることも出来る。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明の磁性トナーを製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部使用することが望ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いても良いし、複数種併用してもよい。さらに、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることが出来、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
本発明の磁性トナーはマグネシウム、カルシウム、バリウム、及びアルミニウムからなるグループより選ばれる少なくとも一種以上の元素を有し、該元素の磁性トナー粒子の表面の総存在量が磁性トナー粒子質量基準で5〜1000ppm、より好ましくは10〜500ppmである、これにより、帯電の均一性がより向上し、カブリの低減や飛び散りの改善に効果がある。この理由は明らかではないが、本発明者らは上記のマグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム等の2価或いは3価の元素と特定の元素を有する磁性体の間で電荷の受け渡しがあり、帯電助剤としての効果があるためであると考えている。
しかし、これら元素が5ppm未満であると上述の効果が発揮されず、1000ppmより多く存在すると、特に高温高湿環境下でのトナーの帯電量が低くなってしまい、カブリの増大を招き好ましくない。
トナー粒子表面に存在するマグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムのうち複数の元素が存在する場合、それらの総量が5〜1000ppmであることが必要である。
また、このような元素のうち、マグネシウムとカルシウムが特にチャージアップの抑制に効果があり好ましい。
なお、このような元素はトナー粒子表面に存在することが好ましく、その量は該元素を含有する化合物を外部添加する方法、もしくは、上述の如き分散剤の洗浄方法、条件により任意に調整することが可能である。
本発明において、トナー粒子表面に存在するマグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムとは、イソプロパノールの如きトナーを溶かさない溶媒中にトナーを入れ、超音波洗浄機にて10分振動を与え、外添剤を除いた状態で存在する元素のことを意味する。
また、それら元素の存在量については、外添剤を取り除いた後、トナー粒子に対して蛍光X線分析やプラズマ発光分析(ICP)などの公知の分析方法を用いて上記元素の定量を行うことが出来る。
後述の実施例において、各元素の測定は、蛍光X線分析を用いて行い、その詳細はJIS−KO119に準ずる。
(1)使用装置について
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)
(2)検量線の作成について
定量目的の複合化合物を、コーヒーミルを用いて5水準外添することによりサンプルを作成する。上記サンプルを試料プレス成型機を用いてプレス成形する。2θテーブルより複合化合物中〔M〕Kαピーク角度(a)を決定する。蛍光X線分析装置中へ検量線サンプルを入れ、資料室を減圧し真空にする。以下の条件にて各々のサンプルのX線強度を求め検量線(重量比:ppm表示)を作成する。
(3)測定条件について
測定電位、電圧 50kV、50〜70mA
2θ角度 a
結晶板 LiF
測定時間 60秒
(4)トナー粒子中の上記元素の定量について
上記検量線と同様の方法でサンプル成形した後、同じ測定条件にてX線強度をもとめ、検量線より含有量を算出する。
なお、トナー粒子表面以外にマグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムの各元素を有する化合物が存在しない場合は上記方法にて各元素の存在量を求めるものの、トナー粒子表面以外にこれら元素のいずれかを有する場合は、次の様にしてトナー粒子表面の存在量を求める。
まず、上記方法にて各元素の存在量を求める:これを存在量Xとする。
次に、外添剤を除いたトナー粒子を濃硝酸中にて1時間撹拌し、純水にて十分に洗浄した後、乾燥し、上記方法にて各元素の存在量を求める:これを存在量Yとする。
トナー粒子表面の各元素の存在量はXとYの差、即ち(X−Y)にて求めることが出来る。
なお、マグネタイト等に上記元素が含まれる場合でも、マグネタイトは濃硝酸と不動体を形成し、溶出することはないので、トナー粒子表面のみの存在量の測定が可能となる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90〜150℃にまで上げることは可能である。
本発明の磁性トナーにおいては、重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることが好ましい。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも可能である。
さらに、本発明においてトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径4〜80nm、より好ましくは6〜40nmの無機微粉体が添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、主にトナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、消費量の増大等の問題を避けられない。一方、無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、凝集体の現像、像担持体或いは磁性トナー担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなり好ましくない。
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー粒子表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数平均1次粒径を求めることで測定出来る。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。
シリカとしては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
個数平均1次粒径が4〜80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%以上では定着性が悪くなる。
また、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において無機微粉体は、疎水化処理された物であることが環境安定性が向上し好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。
疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものが高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
そのような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行いシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10〜200,000mm2/sのものが、さらには3,000〜80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1〜40質量部、好ましくは3〜35質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる傾向がある。
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20〜350m2/g範囲内のものが好ましく、より好ましくは25〜300m2/gのものが更に良い。
比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
本発明の磁性トナーは、クリーニング性向上等の目的で、さらに一次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の無機又は有機の球状に近い微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
本発明に用いられる磁性トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
次に、本発明のトナーを好適に用いることの出来る画像形成装置の一例を図2に沿って具体的に説明する。
図2において、100は静電荷像担持体、102はトナー担持体、114は転写ローラー、116はクリーナー、117は一次帯電ローラー、121は露光装置、123は露光光、124は給紙ローラー、125は搬送部材、126は定着装置、140は現像装置、141は攪拌部材を示す。そして静電荷像担持体100は一次帯電ローラー117によって−600Vに帯電される。(印加電圧は交流電圧2.0 k Vpp、直流電圧−620 Vdc)そして、露光装置121により露光光123を静電荷像担持体100に照射することによって露光される。静電荷像担持体100上の静電潜像は現像装置140によって一成分磁性トナーで現像され、転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送部材125等により定着装置126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
<1>磁性粉体の製造
<磁性粉体1の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対してケイ素元素換算で0.55質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。
水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて十分に再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整し、十分撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシラン化合物を磁性酸化鉄100質量部に対し1.5質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行うと共にスラリーを循環させながらピンミルにて分散を行い、分散液のpHを8.9にして疎水化処理を行った。生成した疎水性磁性粉体をドラムフィルターにてろ過し、十分に洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径(Dv)が0.24μmの磁性粉体を得た。得られた磁性粉体1の物性を表1に示す。
<磁性粉体2の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するn−ヘキシルトリメトキシシラン化合物を1.5質量部から0.8質量部に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体2を得た。得られた磁性粉体2の物性を表1に示す。
<磁性粉体3の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するn−ヘキシルトリメトキシシラン化合物を1.5質量部から2.6質量部に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体3を得た。得られた磁性粉体3の物性を表1に示す。
<磁性粉体4の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するn−ヘキシルトリメトキシシラン化合物を1.5質量部から3.1質量部に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体4を得た。得られた磁性粉体4の物性を表1に示す。
<磁性粉体5の製造>
磁性粉体1の製造において、ピンミルでの分散を止め、乾燥条件を120℃で2時間に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体5を得た。得られた磁性粉体5の物性を表1に示す。
<磁性粉体6の製造>
磁性粉体1の製造において、ピンミルでの分散を止め、乾燥条件を60℃で4時間に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体6を得た。得られた磁性粉体6の物性を表1に示す。
<磁性粉体7の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するP2O5及びSiO2をリン元素換算で0.08質量%となる量のP2O5、ケイ素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体7を得た。得られた磁性粉体7の物性を表1に示す。
<磁性粉体8の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するP2O5及びSiO2をリン元素換算で0.04質量%となる量のP2O5、ケイ素元素換算で0.25質量%となる量のSiO2に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体8を得た。得られた磁性粉体8の物性を表1に示す。
<磁性粉体9の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するP2O5及びSiO2をリン元素換算で0.10質量%となる量のP2O5、ケイ素元素換算で0.9質量%となる量のSiO2に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体9を得た。得られた磁性粉体9の物性を表1に示す。
<磁性粉体10の製造>
磁性粉体1の製造において、添加するP2O5及びSiO2をリン元素換算で0.27質量%となる量のP2O5、ケイ素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体10を得た。得られた磁性粉体10の物性を表1に示す。
<磁性粉体11の製造>
磁性粉体1の製造において、2回目の酸化反応にて吹き込む空気の量を20%減らしたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体11を得た。得られた磁性粉体11の物性を表1に示す。
<磁性粉体12の製造>
磁性粉体1の製造において、2回目の酸化反応にて吹き込む空気の量を35%減らしたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体12を得た。得られた磁性粉体12の物性を表1に示す。
<磁性粉体13の製造>
磁性粉体1の製造において、2回目の酸化反応にて吹き込む空気の量を30%増やしたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして磁性粉体13を得た。得られた磁性粉体13の物性を表1に示す。
※表中、溶媒中での粒度とはスチレン−n−ブチルアクリレート中にて測定した磁性粉体の50%体積径、及び、式(1)で示されるSD値である。
<2>スルホン酸基を有する重合体の製造
<スルホン酸基を有する重合体1の製造>
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部、モノマーとしてスチレン83質量部、アクリル酸ブチル12質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と称す)4質量部を添加して撹拌しながら還流温度まで加熱した。重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.45質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続し、更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.28質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に5時間撹拌して重合した。
その後反応液をメタール中に投入し、重合体を析出させた。得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は70.4℃であり、重量平均分子量は23000であった。
<スルホン酸基を有する重合体2の製造>
スルホン酸基を有する重合体の製造例1において、使用するAMPSの量を0.5質量部にすること以外はスルホン酸基を有する重合体1と同様にしてガラス転移温度(Tg)が70.1℃であり、重量平均分子量は22000のスルホン酸基を有する重合体2を得た。
<スルホン酸基を有する重合体3の製造>
スルホン酸基を有する重合体の製造例1において、使用するAMPSの量を9質量部にすること以外はスルホン酸基を有する重合体1と同様にしてガラス転移温度(Tg)が72.4℃であり、重量平均分子量は21000のスルホン酸基を有する重合体3を得た。
<3>磁性トナーの製造
<磁性トナー1の製造>
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 74質量部
・n−ブチルアクリレート 26質量部
・ジビニルベンゼン 0.50質量部
・飽和ポリエステル樹脂 10質量部
(テレフタル酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物との反応物、Mn=4000、Mw/Mn=2.8、酸価=11mg/KOH)
・スルホン酸基を有する重合体1 1.5質量部
・磁性粉体1 90質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(DSCにおける最大吸熱ピーク78℃)10質量部を添加混合溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下においてクレアミキサー(エムテクニック社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で8時間反応させた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてpH=0.8にして2時間撹拌した後、濾過した。さらに2000質量部以上のイオン交換水で3回洗浄し、十分通気した後、乾燥してトナー粒子1を得た。
このトナー粒子1を100質量部と、個数平均1次粒径12nmのシリカをヘキサメチルジシラザンで処理後にシリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径が6.5μmの磁性トナー1を得た。
磁性トナー1の物性を表2に示す。
<磁性トナー2の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体2を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー2を得た。磁性トナー2の物性を表2に示す。
<磁性トナー3の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体3を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にした。ただし、重合反応中に若干トナーの凝集が生じたので分級を行い磁性トナー3を得た。磁性トナー3の物性を表2に示す。
<磁性トナー4の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体4を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー4を得た。磁性トナー4の物性を表2に示す。
<磁性トナー5の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体5を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー5を得た。磁性トナー5の物性を表2に示す。
<磁性トナー6の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体6を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー6を得た。磁性トナー6の物性を表2に示す。
<磁性トナー7の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体7を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー7を得た。磁性トナー7の物性を表2に示す。
<磁性トナー8の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体8を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー8を得た。磁性トナー8の物性を表2に示す。
<磁性トナー9の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体9を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表2に示す。
<磁性トナー10の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体10を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー10を得た。磁性トナー10の物性を表2に示す。
<磁性トナー11の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体11を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー11を得た。磁性トナー11物性を表2に示す。
<磁性トナー12の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体12を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー12を得た。磁性トナー12の物性を表2に示す。
<磁性トナー13の製造>
磁性トナー1の製造において、磁性粉体1の代わりに磁性粉体13を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー13を得た。磁性トナー13の物性を表2に示す。
<磁性トナー14の製造>
磁性トナー1の製造において、スルホン酸基を有する重合体1の代わりにスルホン酸基を有する重合体2を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー14を得た。磁性トナー14の物性を表2に示す。
<磁性トナー15の製造>
磁性トナー1の製造において、スルホン酸基を有する重合体1の代わりにスルホン酸基を有する重合体3を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー15を得た。磁性トナー15の物性を表2に示す。
<磁性トナー16の製造>
磁性トナー1の製造において、重合反応終了後、塩酸を加えてpH=0.8として2時間撹拌し、ろ過した。その後、2000質量部以上のイオン交換水で2回洗浄した。これをリスラリーし、塩酸を加えてpH=0.8として2時間撹拌し、ろ過した。その後、2000質量部以上のイオン交換水で3回洗浄したこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー16を得た。磁性トナー16の物性を表2に示す。
<磁性トナー17の製造>
磁性トナー1の製造において、重合反応終了後、塩酸を加えてpH=3.0として2時間撹拌し、ろ過した。その後、2000質量部以上のイオン交換水で2回洗浄したこと以外は磁性トナー1の製造と同様にし、磁性トナー17を得た。磁性トナー17の物性を表2に示す。
〔実施例1〕
<画像形成装置>
画像形成装置として、LBP−1210(キヤノン製)を改造し、以下の条件にて画出し試験を行った。
感光体(静電潜像担持体)に、帯電部材である一次帯電ローラーとして導電性カーボンを分散しナイロン樹脂で被覆したゴムローラー帯電器を当接させ(当接圧40g/cm)、直流電圧−620Vに交流電圧1.2kVppを重畳したバイアスを印加して、感光体上を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光(露光光)で画像部分を露光することにより静電潜像を形成する(暗部電位Vdは−600Vであり、明部電位VLは−120V)。
感光体と現像スリーブ(トナー担持体)との間隙は270μmとし、磁性トナー担持体として、表面をブラストした直径12mmのアルミニウム円筒上に、下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.2μmの樹脂層を形成した現像スリーブを使用した。また、現像スリーブには、現像磁極の磁束密度が750ガウスであるマグネットローラーを内包させた。トナー規制部材としては、厚み1.0mm、自由長0.50mmのウレタン製ブレードを用い、19.6N/m(20g/cm)の線圧で現像スリーブに当接させた。
・フェノール樹脂 100質量部
・グラファイト(粒径約7μm) 90質量部
・カーボンブラック 10質量部
次いで、現像バイアスとして交番電界は1.6kVpp、周波数2200Hz、直流電圧(Vdc)は潜像に忠実に現像できるように(200μmの4dotライン潜像が200μmに現像されるように)設定した(実施例1において、具体的には−420Vとした)。
この条件において、磁性トナー1を使用し、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)、及び、低温低湿環境下(15℃,10%RH)において8ポイントのA文字を用い印字率を2%とした画像にて間欠モードで4000枚の画出し試験を行った。その結果、両環境にて耐久前後で非画像部へのカブリは無く、画像濃度が1.4以上であり飛び散りも無く高精細な画像を得ることが出来た。
また、常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて8ポイントのA文字を用い印字率を4%とした画像にて連続モードで2000枚の画出しを行い、耐久前後の現像器の重量変化からトナー消費量(mg/page)を求めた。その結果、トナー消費量は33.4mg/pageであり、従来の50〜55mg/pageよりも大幅にトナー消費量は減っていた。高温高湿環境下での評価結果を表3に、低温低湿環境下での評価結果、及び、常温常湿環境下でのトナー消費量を表4に示す。なお、いずれの評価においても記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。
<画像濃度>
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定を行った。
<カブリ>
白画像を出力し紙上カブリの測定を行い、以下の基準で判断した。なお、カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用い、カブリは下式(4)より算出した。
式(4)カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上、2.5%未満)
C:普通(2.5%以上、4.0%未満)
D:悪い(4%以上)
<飛び散り>
飛び散りは耐久画像の8ポイントのA文字を顕微鏡で観察し、以下の判断基準で評価した。
A:飛び散りはほとんど生じておらず、非常に良好な画像
B:飛び散りはやや発生しているものの良好な画像
C:実用上問題ないレベルの画像
D:飛び散りは発生しており、実用上好ましくない画像
〔実施例2〜12、参考例1、2〕
磁性トナー2〜7、11、14〜17を用い実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーも耐久前後で実用上問題無いレベル以上の画像が得られた。高温高湿環境下での評価結果を表3に、低温低湿環境下での評価結果、及び、常温常湿環境下でのトナー消費量を表4に示す。
〔比較例1〜5〕
磁性トナー8〜10、12、13を用い磁性トナー1と同様に画出し試験を行った。その結果、トナー8、13は磁気凝集によりトナー劣化が生じ、高温高湿環境下で濃度低下、飛び散りの悪化を生じてしまった。さらに、トナー消費量も45mg/page以上であり、トナー消費量も多かった。
トナー9、10、12は高温高湿環境下では大きな問題は生じなかったものの、低温低湿環境下ではカブリが悪かった。低温低湿環境下での評価結果、及び、常温常湿環境下でのトナー消費量を表4に示す。