以下、本発明を、複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置の現像装置に適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの主要部概略構成図である。図1において、潜像担持体である感光体ドラム1の側方に配設された現像装置2は、支持ケース10、現像スリーブ4、現像剤収容部材11、第1の現像剤規制部材としての第1ドクターブレード6等から主に構成されている。
感光体ドラム1側に開口を有する支持ケース10は、内部に磁性トナー3aを収容する磁性トナー収容部としての磁性トナーホッパー8を形成している。磁性トナーホッパー8の感光体ドラム1側寄りには、磁性トナー3aとキャリア3bとからなる二成分系現像剤3を収容する現像剤収容部材11が、支持ケース10と一体的に設けられている。また、現像剤収容部材11の下方に位置する支持ケース10には、対向面10bを有する突出部10aが形成されており、現像剤収容部材11の下部と対向面10bとの間の空間によって、磁性トナー3aを供給するためのトナー供給開口部20が形成されている。
磁性トナーホッパー8の内部には、図示しない駆動手段によって回動される磁性トナー供給手段としての磁性トナーアジテータ9が配設されている。磁性トナーアジテータ9は、磁性トナーホッパー8内の磁性トナー3aを磁性トナー供給開口部20に向けて撹拌しながら送り出す。また、磁性トナーホッパー8の、感光体ドラム1と対向する側には、磁性トナーホッパー8内の磁性トナー3aの量が少なくなったときにこれを検知する磁性トナーエンド検知手段10cが配設されている。
感光体ドラム1と磁性トナーホッパー8との間の空間には、現像スリーブ4が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ4は、その内部に、現像装置2に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としてのマグネットローラ5を有している。
現像剤収容部材11の、支持ケース10に取り付けられた側と対向する側には、第1ドクターブレード6が一体的に取り付けられている。第1ドクターブレード6は、その先端と現像スリーブ4の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
現像剤収容部材11の、トナー供給開口部20の近傍に位置する部位には、第2の規制部材としての第2ドクターブレード7が配設されている。第2ドクターブレード7は、その自由端が現像スリーブ4の外周面に対して一定の隙間を保つべく、現像スリーブ4の表面に形成される現像剤3の層の流れを妨げる方向、すなわち、自由端を現像スリーブ4の中心に向けて、基端を現像剤収容部材11に一体的に取り付けられている。
現像剤収容部Aは、現像スリーブ4内のマグネットローラ5の磁力が及ぶ範囲で、現像剤3を循環移動させるに十分な空間を有するように構成されている。
なお、対向面10bは、磁性トナーホッパー8側から現像スリーブ4側に向けて下向きに傾斜するよう、所定の長さにわたって形成されている。これにより、振動、現像スリーブ4の内部に設けられたマグネットローラ5の磁力分布のむら、現像剤3中の部分的な磁性トナー濃度の上昇等が発生した際に、第2ドクターブレード7と現像スリーブ4の周面との間から現像剤収容部A内のキャリア3bが落下しても、落下したキャリア3bは対向面10bで受けられて現像スリーブ4側に移動し、磁力で現像スリーブ4に磁着されて再び現像剤収容部A内に供給される。これにより現像剤収容部A内のキャリア3b量の減少を防止することができ、画像形成時における、現像スリーブ4の軸方向での画像濃度むらの発生を防止することができる。
上記構成により、磁性トナーホッパー8の内部から磁性トナーアジテータ9によって送り出された磁性トナー3aは、磁性トナー供給開口部20を通って現像スリーブ4に担持された現像剤3に供給され、現像剤収容部Aへ運ばれる。そして、現像剤収容部A内の現像剤3は、現像スリーブ4に担持されて感光体ドラム1の外周面と対向する位置まで搬送され、磁性トナー3aのみが感光体ドラム1上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体ドラム1上に磁性トナー像が形成される。
次に、磁性トナーホッパー8に磁性トナー3aがセットされると、磁性トナー供給開口部20より現像スリーブ4に担持された磁性キャリア3bにトナー3aが供給される。従って、現像スリーブ4は、磁性トナー3aと磁性キャリア3bとの混合物である現像剤3を担持することとなる。
現像剤収容部A内では、磁性トナー濃度に応じて収容されている現像剤3の容量が増減して、磁性トナー濃度が低下する(画像濃度が低下する)と現像剤収容部A内の現像剤容量が減少して、磁性トナー供給開口部20を通って磁性トナー3aが現像剤収容部により多く送られるようになり、磁性トナー濃度は上昇する。一方、磁性トナー濃度が上昇する(画像濃度が高くなる)と現像剤収容部A内の現像剤容量が増加して、磁性トナー供給開口部20にまで現像剤が溢れるようになり、磁性トナー3aが現像剤収容部に送られるのが阻止されるので磁性トナー濃度は低下する。
このように磁性トナー濃度に応じて現像剤収容部への磁性トナー取り込みが変化することにより、現像剤収容部の磁性トナー濃度を一定範囲内に保つことができる。このように、本実施形態の現像装置によれば、従来のような磁性トナー補給機構及び磁性トナー濃度センサを必要としないで現像剤の磁性トナー濃度の自己制御を行なうことができる。
次に、本実施形態の現像装置で使用する現像剤を構成する磁性トナーおよびキャリアについて説明する。
本現像装置構成で、高速の画像装置に対応させるべく、鋭意検討したところ、現像剤の磁性トナーをいかに迅速に帯電させるかが大きなポイントであることが判明した。
そこで、この観点に立ち、鋭意検討したところ、磁性トナーの粒度及び粒度分布、平均円形度、鉄及び鉄化合物の遊離率を良好にコントロールすることによって、上記課題を解決しうることを見出した。つまり、使用する磁性トナーを、重量平均粒径が3〜20μmであり、重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.40以下であり、平均円形度が0.970以上であり、鉄及び鉄化合物の遊離率が0.05〜3.00%である構成とすることである。
まず、磁性トナーの粒径であるが、重量平均径が3μmに満たない場合、トナーの流動性が低下するため、現像剤3へ取り込まれにくくなるばかりか、現像剤自身の流動性までも低下させ結果として、磁性トナーの帯電速度を低下させてしまう。更には、カブリ等も発生し好ましくない。逆に、20μmを超えてしまうと、現像剤中の磁性トナー粒子の割合が減ることとなり、画像面積比率の高い印字画像を高速で連続印刷した場合、画像濃度低下を引き起こしやすくなる。更には潜像を忠実に再現しにくくなってしまう。より好ましくは、重量平均粒径3.0〜10.0μmである。
磁性トナーの粒度分布として、重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.40以下であることが好ましい。重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.40を超える(粒度分布のブロード化)と各磁性トナー粒子を均一に帯電することが困難になり結果として、カブリ、トナー飛散が発生しやすくなる。より好ましくは重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.35以下である。
粒度分布測定は、以下の方法で行った。測定装置としては、コールターカウンタTA−IIあるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON−RII(コールター社製)が使用できる。
測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。
試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布を算出した。
それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの代表値をチャンネル毎の代表値とする)と、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)を求めた。
磁性トナーの平均円形度は0.970以上であることが好ましい。平均円形度が0.970に満たない場合、磁性トナーの形状がいびつな不定形状であるため、トナーの流動性が低下するため、現像剤3へ取り込まれにくくなるばかりか、現像剤自身の流動性までも低下させる。更には、磁性トナー粒子表面とキャリアとの接触点が限られてしまうため現像に適した帯電量に達するまでに時間がかかり好ましくない。
磁性トナーの円形度分布において、モード円形度が0.99以上であることが好ましい。モード円形度が0.99以上であるということは、トナー粒子の多くが真球に近い形状を有することを意味しており、トナーや現像剤の流動性がより向上し、帯電速度も上昇し、画像面積比率の高い印字画像を連続して行った場合でも現像剤のトナーを十分に帯電することが可能となり好ましい。
磁性トナーの鉄及び鉄化合物の遊離率は、0.05〜3.00%であることが好ましい。本発明者らが検討を行ったところ、鉄及び鉄化合物の遊離率とトナー表面への露出量には深い関連があり、遊離の磁性体量が3.00%未満であれば、おおむね磁性体のトナー表面への露出が抑制され、迅速に高い帯電量を有する事が判明した。一方、遊離率が上記範囲より大きいと、チャージのリーク点が多くなりすぎてしまい、トナーの帯電量が低下してしまう。この傾向は高温高湿下で特に顕著なものとなる。帯電量の低いトナーはカブリ、トナー飛散の増加を招き好ましくない。一方、鉄及び鉄化合物の遊離率が0.05%より少ないと、実質的に磁性体はトナーから遊離していないことを意味する。このように鉄及び鉄化合物の遊離率が低いトナーは高い帯電量を有するものの、多数枚画出し、特に低温低湿下における多数枚画出しにおいて、トナーのチャージアップに起因する画像濃度の低下が生じてしまい好ましくない。更には、現像剤中のトナーが消費されにくくなるため、新しいトナーが供給されず、更にトナーがチャージアップしてしまう悪循環に陥ってしまう。鉄及び鉄化合物の遊離率は、0.05〜2.00%であることが更に好ましい。
以上のように、本発明に使用される磁性トナーは、平均円形度が高く、鉄及び鉄化合物の遊離率が低いトナーであること、トナーの形状がそろっていること、そして、最適な粒度で、なおかつ、粒度分布がシャープであることによる相乗効果により、高速の画像形成装置に用いた場合や、画像面積比率の高い印字画像を連続して行った場合でも現像剤のトナーを十分に帯電することが可能となる。また、現像剤収容部の現像剤の容量の最適化を図ることにより、画像濃度の低下や、トナー帯電不足による画像濃度の上昇、地汚れ及びトナー飛散の発生を未然に防止できる。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下式(1)によりそれぞれ求め、さらに下式(2)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数(m)で除した値を平均円形度(C)と定義する。
式(1)
円形度(Ci)=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲)/(粒子の投影像の周囲長)
また、モード円形度は、円形度を0.40から1.00までを0.01毎に61分割し、測定した粒子の円形度をそれぞれの円形度に応じて各分割範囲に割り振り、円形度頻度分布において頻度値が最大となるピークの円形度である。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及びモード円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及びモード円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度及びモード円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度及びモード円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものであり、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
測定手順としては、以下の通りである。
界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlに、磁性トナー約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20KHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群の平均円形度及びモード円形度を求める。
本発明における平均円形度とは、磁性トナーの凹凸の度合いの指標であり、磁性トナーが完全な球形の場合1.000を示し、磁性トナーの表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。
本発明の磁性トナーは、鉄及び鉄化合物の遊離率が0.05〜3.00%であることを特徴とする。この遊離率は好ましくは0.05〜2.00%、より好ましくは0.05〜1.50%、更に好ましくは0.05〜1.00%である。前述したように、本発明の磁性トナーは、磁性粉体を含有している。従って、本発明において、鉄及び鉄化合物の遊離率とは、具体的にはトナー粒子から遊離している磁性粉体の割合を示すものである。
本発明の磁性トナーの鉄及び鉄化合物の遊離率とはパーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)により測定されたものであり、Japan Hardcopy97論文集の65−68ページに記載の原理で測定を行う。具体的には、該装置はトナー等の微粒子を一個づつプラズマへ導入し、微粒子の発光スペクトルから発光物の元素、粒子数、粒子の粒径を知る事が出来る。
この中で、遊離率とは、結着樹脂の構成元素である炭素原子の発光と、鉄原子の発光の同時性から次式により定義される値である。
鉄及び鉄化合物の遊離率(%)=100×(鉄原子のみの発光回数/
炭素原子と同時に発光した鉄原子の発光回数+鉄原子
のみの発光回数)
ここで、炭素原子と鉄原子の同時発光とは、炭素原子の発光から2.6msec以内に発光した鉄原子の発光を同時発光とし、それ以降の鉄原子の発光は鉄原子のみの発光とする。
本発明では磁性粉体を多く含有している為、炭素原子と鉄原子が同時発光するという事は、トナーが磁性粉体を含有していることを意味し、鉄原子のみの発光は、磁性粉体がトナーから遊離していることを意味すると言い換えることも可能である。
具体的な測定方法は以下の通りである。0.1%酸素含有のヘリウムガスを用い、23℃で湿度60%の環境にて測定を行い、トナーサンプルは同環境下にて1晩放置し、調湿したものを測定に用いる。また、チャンネル1で炭素原子(測定波長247.860nm、Kファクターは推奨値を使用)、チャンネル2で鉄原子(測定波長239.56nm、Kファクターは3.3764を使用)を測定し、一回のスキャンで炭素原子の発光数が1000〜1400個となるようにサンプリングを行い、炭素原子の発光数が総数で10000以上となるまでスキャンを繰り返し、発光数を積算する。この時、炭素元素の発光個数を縦軸に、炭素元素の三乗根電圧を横軸にとった分布において、該分布が極大を一つ有し、更に、谷が存在しない分布となるようにサンプリングし、測定を行う。そして、このデータを元に、全元素のノイズカットレベルを1.50Vとし、上記計算式を用い、鉄及び鉄化合物の遊離率を算出する。後述の実施例においても同様に測定した。
また、荷電制御剤であるアゾ系の鉄化合物等といった、鉄原子を含有する無機化合物以外の材料もトナー中に含まれている場合があるが、こういった化合物は鉄原子と同時に有機化合物中の炭素も同時に発光するため、遊離の鉄原子としてはカウントされない。
本発明の磁性トナーは、水系媒体中で形成されたトナーであることが好ましい。水系媒体中で形成されるトナーとしては、乳化重合粒子と着色剤、ワックス等を凝集させて製造される乳化凝集法、また、バインダー、着色剤、ワックス等を溶剤中に溶解分散させ、これを水系媒体中で造粒した後、溶剤を除去して得られる溶解懸濁法、更に、重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物とした後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得る懸濁重合法等がある。これら製法で得られるトナーは、上記特徴の円形度のトナーを得やすいのは言うまでもなく、水系媒体中で形成されることから、トナー構成材料である、バインダー、荷電制御剤等の帯電サイトである極性部位がトナー表層に局在化しやすくなるために、迅速な帯電が可能となる。円形度の高いトナーを得る方法としては、溶解懸濁法、懸濁重合法が好ましいが、特に、好ましいのは懸濁重合法により得られたトナーである。これは、重合性単量体組成物の反応過程では、粘度が低いため帯電サイトである極性部位がトナー表層により局在化しやすくなると考えられるからである。
本発明の磁性トナーは、粉砕法により製造する場合は、公知の方法が用いられるが、例えば、結着樹脂、磁性粉体、離型剤、荷電制御剤、場合によって着色剤等の磁性トナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶させた中に磁性粉体等の他の磁性トナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることが出来る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。本発明に係わる特定の円形度を有するトナーを得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加える処理をすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法、また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
本発明に関わるトナーを粉砕法により製造する場合の結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、パラフィンワックス、カルナバワックスなどが単独或いは混合して使用できる。特に、スチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
その他、使用される好ましい原材料については、後述の重合トナーの部分で述べる。
本発明の磁性トナーは、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものであり、本発明に係わるトナーの必須要件である平均円形度が0.970以上という物性を得る為には、機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行う事が必要となり、生産性が劣るものとなる。
そこで、本発明においては、トナーを重合法、特には懸濁重合法により製造することが好ましい。この懸濁重合法においては重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体系とした後、この重合性単量体系を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。しかしながら、重合トナー中に通常の磁性粉体を含有させても、トナー表面に磁性粉体が多数存在し、トナー粒子の帯電特性が著しく低下する。さらに、懸濁重合トナーの製造時に磁性粉体と水との相互作用が強いことにより、円形度が0.970以上のトナーが得られ難く、さらに、トナーの粒度分布が広いものとなる。これは、1)磁性粉体は一般的に親水性であるためにトナー表面に存在しやすいこと、2)水溶媒撹拌時に磁性粉体が乱雑に動き、それに単量体から成る懸濁粒子表面が引きずられ、形状が歪んで円形になりにくいこと等が原因と考えられる。こういった問題を解決するためには磁性粉体の有する表面特性の改質が重要である。
重合トナーに使用される磁性粉体の表面改質は、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤で処理することが好ましい。更にはカップリング剤を水系媒体中で加水分解しながら磁性粉体表面を処理する方法が好ましい。たとえば、使用されるシランカップリング剤として、一般式(I)で示されるものがある。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
また、本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上併用して用いられる。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/gが好ましい。また、モース硬度が5〜7のものが好ましい。
磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった磁性粉体の形状はSEMなどによって確認することができる。
磁性粉体の体積平均粒径としては0.05〜0.40μmが好ましい。体積平均径が0.05μm未満の場合、黒色度の低下が顕著となり、白黒用トナーの着色剤としては着色力が不十分となるうえに、複合酸化物粒子どうしの凝集が強くなるため、分散性が悪化する傾向となる。また、磁性粉体の均一な表面処理が困難となり、鉄及び鉄化合物の遊離率が大きくなってしまう。さらに、磁性粉体の粒径が0.05μmよりも小さいと、磁性粉体自体が赤味の強いものとなってしまい、得られる画像も赤味の黒になる傾向にあり、画像品位が落ちるものとなる。一方、体積平均粒径が0.40μmを越えてしまうと、一般の着色剤と同様に着色力が不足するようになる。加えて、特に小粒径トナー用の着色剤として使用する場合、個々のトナー粒子に均一に磁性粉体を分散させることが確率的に困難となり、分散性が悪化しやすくなり、トナーの耐久性が劣る場合もあり好ましくない。
なお、磁性粉体の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、ミクロトームにより薄片上のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定する。そして、磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径をもとに、体積平均粒径の算出を行った。後述の実施例においても同様に測定した。
本発明では、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金、ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
本発明の磁性トナーに用られる磁性粉体は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部を用いることが好ましい。さらに好ましくは20〜180質量部を用いることが良い。10質量部未満ではトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、200質量部を超えると、トナー担持体への磁力による保持力が強まり現像性が低下したり、個々のトナー粒子への磁性粉体の均一な分散が難しくなるだけでなく、定着性が低下してしまう。
なお、トナー中の磁性粉体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100℃から750℃まで間の減量質量をトナーから磁性粉体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性粉体量とする。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、例えばマグネタイトの場合、下記方法で製造される。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8〜14)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応をおこない、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6〜14に維持しながら空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。酸化反応がすすむにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調製し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌し、カップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水性処理された磁性酸化鉄粉体が得られる。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄粉体を、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。
第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、更に塩化鉄等が可能である。
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法は一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5〜2mol/lが用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
本発明の磁性トナーは定着性向上のために、離型剤を含有しても良い。結着樹脂に対し1〜30質量%を含有することが好ましい。より好ましくは、3〜25質量%である。離型剤の含有量が1質量%未満では離型剤の添加効果が十分ではなく、さらに、オフセット抑制効果も不十分である。一方、30質量%を超えてしまうと長期間の保存性が悪化すると共に、離型剤、磁性粉体等のトナー材料の分散性が悪くなり、磁性トナーの流動性の悪化や画像特性の低下につながる。また、離型剤成分のしみ出しも起こり、高温高湿下での耐久性が劣るものとなる。さらに、多量のワックスを内包するために、トナー形状がいびつになりやすくなる。
本発明に係わる磁性トナーに使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
これらの離型剤成分の内でも、示差熱分析による吸熱ピークが40〜120℃のもの、即ち、示差走差熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に40〜120℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには50〜100℃の領域に有するものがより好ましい。上記温度領域に最大吸熱ピークを有することにより、低温定着に大きく貢献しつつ、離型性をも効果的に発現する。最大吸熱ピークが40℃未満であると離型剤成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が悪化する。また、離型剤のしみだしが生じ易くなり、トナーの帯電量が低下すると共に、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、該最大吸熱ピークが120℃を超えると定着温度が高くなり低温オフセットが発生しやすくなり好ましくない。さらに、水系媒体中で造粒/重合を行い重合方法により直接トナーを得る場合、該最大吸熱ピーク温度が高いと、主に造粒中に離型剤成分が析出する等の問題を生じ、離型剤の分散性が悪化し好ましくない。
離型剤の吸熱量ならびに最大吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、試料を一回200℃まで昇温させ熱履歴を除いた後、急冷し、再度、昇温速度10℃/minにて温度30〜200℃の範囲で昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。後述の実施例においても同様に測定した。
本発明のトナーは、トナーのTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布において、分子量5000〜50000の範囲にメインピークのピークットップがあることが好ましく、より好ましくは8000〜40000の範囲である。ピークトップが5000未満であると、トナーの耐保存安定性に問題が生じたり、多数枚のプリントアウトを行った際にトナーの劣化が著しくなる。逆に、ピークトップが50000を超える場合には、低温定着性に問題が生じるとともに、重合中の液滴粘度の急激な上昇により、トナーの平均円形度を0.970以上とすることが困難になってくる。
尚、GPCによるTHFに可溶な樹脂成分の分子量の測定は、以下の様にして行えばよい。
トナーをTHFに室温で24時間静置して溶解した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定する。尚、サンプル調製は、THFに可溶な成分の濃度が0.4〜0.6質量%になるようにTHFの量を調整する。
装置 : 高速GPC HLC8120 GPC(東ソー社製)
カラム: Shodex KF−801、802、803、804、
805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液: THF
流速 : 1.0ml/min
オーブン温度: 40.0℃
試料注入量 : 0.10ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
トナーの分子量は、粉砕法においてトナーを製造する場合、用いる結着樹脂と混練状況により任意に変えることが出来る。また、重合法においては、用いる開始剤、架橋剤の種類、量等の組み合せにより、任意に変えることが可能である。また、連鎖移動剤等を使用しても調整可能である。
トナーのガラス転移点温度(Tg)は、40〜80℃であることが好ましい。Tgが40℃よりも低いとトナーの保存性が低下し、80℃よりも高いと定着性に劣る。トナーのガラス転移点の測定には例えば、パーキンエルマー社製DSC−7の様な高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定を行う。測定方法は、ASTMD3418−8に準じて行う。本発明においては、試料を1回昇温させ前履歴をとった後、急冷し、再度昇温速度10℃/min、温度30〜200℃の範囲で昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
本発明の磁性トナーには、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合、トナー100質量部に対し、好ましくは0.005〜1.0質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。
しかしながら、本発明の磁性トナーは、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層圧規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
次に本発明に関わる重合トナーの懸濁重合法による製造方法を説明する。本発明に係わる重合トナーは、一般にトナー組成物、すなわち結着樹脂となる重合性単量体中に、磁性粉体、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、分散機等に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して製造できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体系を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用する事がトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明に係わる重合トナーの製造においては、重合性単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の重合性単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体等、共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させると、前述のワックス成分を相分離させ、より内包化が強力となり、耐ブロッキング性、現像性の良好なトナーを得ることができる。
これらの樹脂の中でも特にポリエステル樹脂を含有することにより、その効果は大きな物となる。これは次に述べる理由からと考えている。ポリエステル樹脂は比較的極性の高い官能基であるエステル結合を数多く含む為、樹脂自身の極性が高くなる。その極性の為、水系分散媒中では液滴表面にポリエステルが偏在する傾向が強くなり、その状態を保ちながら重合が進行し、トナーとなる。この為、トナー表面にポリエステル樹脂が偏在する事で表面状態や、表面組成が均一な物となり、その結果帯電性が均一になると共に、離型剤の内包性が良好なこととの相乗効果により非常に良好な現像性を得ることが出来る。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、例えばトナーの帯電性、耐久性および定着性などの物性をコントロールする上で、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また式(I)で表されるビスフェノール誘導体;
[式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。]、あるいは式(I)の化合物の水添物
また、式(II)で示されるジオール;
あるいは式(II)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、本発明の磁性トナーの製造方法においてトナー粒子表面に存在し、得られるトナー粒子が安定した帯電性を発現するためには、0.1〜50mgKOH/樹脂1gの酸価を有していることが好ましい。0.1mgKOH/樹脂1g未満だとトナー表面への存在量が絶対的に不足し、50mgKOH/樹脂1gを超えるとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす。さらに本発明では、5〜35mgKOH/樹脂1gの酸価の範囲がより好ましい。
本発明においては、得られるトナー粒子の物性に悪影響を及ぼさない限り2種以上のポリエステル樹脂を併用したり、例えば、シリコーンやフルオロアルキル基含有化合物により変性したりして物性を調製することも好適に行われる。
また、このような極性官能基を含む高分子重合体を使用する場合、その平均分子量は5,000以上が好ましく用いられる。5,000未満、特に4,000以下では、本重合体が表面付近に集中し易いことから、現像性、耐ブロッキング性等に悪い影響が起こり易くなり好ましくない。
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良等を目的として上記以外の樹脂を単量体系中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できる。これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部超添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる。
さらに、重合性単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることが出来る。
本発明の磁性トナーに関わる重合トナーの製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5〜30時間であるものを、重合性単量体に対し0.5〜20質量部の添加量で重合反応を行なうと、GPCにおいてメインピークのピークトップが分子量5000〜50000の間に存在する重合体を得ることが出来る。
本発明で使用される重合開始剤としては、従来公知のアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤などがあり、アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が例示され、過酸化物系重合開始剤としてはt−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられ、必要に応じてこれらの開始剤を2種以上用いることもできる。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する際は、目的の溶融粘度を得るために、上記開始剤とともに、架橋剤を添加し、溶融粘度を調整することが重要である。本発明で使用される架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。添加量としては、使用する開始剤、架橋剤の種類、反応条件で調整が必要であるが、おおむね、重合性単量体に対して、0.01〜5質量部が適当である。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する方法では、一般に上述の磁性粉体、重合性単量体、離型剤等のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。又、造粒中または、造粒直後に、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加える事も出来る。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることが出来、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことが出来る。
また、これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独で使用する事が望ましいが、超微粒子を発生し難いもののトナーの微粒化はやや苦手であるので、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50〜90℃の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90〜150℃にまで上げることは可能である。
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることで、本発明の磁性トナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも、本発明の望ましい形態の一つである。
本発明においてトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径4〜80nmの無機微粉体が添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合、或いは80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には、転写残トナーが帯電部材へ付着した際に帯電部材に固着し易くなり、安定して良好な帯電特性を得ることが困難である。また、良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、トナー飛散等の問題を避けられない。無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、凝集体の現像、像担持体或いは磁性トナー担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなる。トナー粒子の帯電分布をより均一とするためには無機微粉体の個数平均1次粒径は6〜35nmであることがより良い。
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数基準の平均1次粒径、個数平均1次粒径を求めることで測定出来る。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用でき、単独で用いても、複数種組み合わせて用いても良い。シリカとしては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
個数平均1次粒径が4〜80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%以上では定着性が悪くなる。
なお、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
また本発明において無機微粉体は、疎水化処理された物であることが高温高湿環境下での特性から好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、トナー飛散が起こり易くなる。
疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
本発明に用いられる磁性トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末等の滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、あるいは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いる事もできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
上記微粉末をトナーに外添する方法としては磁性粒子(トナー)と微粉末を混合、撹拌する事により行う。具体的にはメカノフュージョン、I式ミル、ハイブリタイザー、ターボミル、ヘンシェルミキサー等が挙げられ、粗粒の発生を防ぐという観点からヘンシェルミキサーを用いることが特に好ましい。
本発明に使用される磁性キャリアとしては、鉄,銅,亜鉛,ニッケル,コバルト,マンガン,クロム元素からなる元素単独又は複合フェライト状態で構成される。磁性キャリアの形状として、球状,扁平又は不定形がある。更に磁性キャリア粒子表面状態の微細構造(たとえば表面凹凸性)をもコントロールすることが好ましい。一般的には、上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、あらかじめ、磁性キャリアコア粒子を生成した後、樹脂にコーティングする方法が用いられている。磁性キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには、直接無機酸化物とモノマーとの混練物を水系媒体中にて懸濁重合せしめ真球状の磁性キャリアを得る方法も利用することが可能である。
上記キャリア粒子の表面を樹脂で被覆する被覆キャリアは、特に好ましい。その方法としては、樹脂を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に樹脂粉体とキャリア粒子とを混合して付着させる方法が適用できる。
キャリア粒子表面への固着物質としてはトナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアシド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂などが挙げられる。これらは単独或は複数で用いられる。
キャリアの磁性特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の79.57kA/m(1000エルステッド)における磁化の強さ(σ79.6)は3.77乃至37.7μWb/cm3であることが好ましい。
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<1>磁性トナーの製造
<表面処理磁性粉体の製造例1>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを9前後に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過して一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを約6に調製し、充分撹拌しながらシランカップリング剤(n−C4 H13Si(OCH3)3)を磁性酸化鉄100質量部に対し3.0質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで若干凝集している粒子を解砕処理して、平均粒径0.22μmの表面処理磁性粉体1を得た。
<表面処理磁性粉体の製造例2>
表面処理磁性体1のシランカップリング剤を0.5質量部に変更した以外は同様の操作を行い、平均粒径0.22μmの表面処理磁性粉体2を得た。
<磁性トナーの製造例1>
イオン交換水760gに0.1M−Na3PO4水溶液406gを投入し60℃に加温した後、高撹拌下で、1.0M−CaCl2水溶液61gを添加してリン酸カルシウムを含む水系媒体を得た。
・スチレンモノマー 166質量部
・n−ブチルアクリレート 34質量部
・上記表面処理磁性粉体1 120質量部
・負荷電制御剤:スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学社製) 1.0質量部
・ポリエステル樹脂 10質量部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との縮合物、
Tg=65℃、Mw=11000、Mn=6000)
・パラフィンワックス (DSCのメインピーク60℃) 15質量部
上記材料を60℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10000rpmにて均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、65℃,N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて10000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃に昇温し10時間の重合反応を行った。
重合反応終了後、冷却し、塩酸を加えリン酸カルシウムを溶解させた後、ろ過、水洗、乾燥をして、磁性トナーを得た。
得られた磁性トナー100質量部と、一次粒径9nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が200m2/gの疎水性シリカ微粉体1.2質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))にて混合し、磁性トナー1を得た。
<磁性トナーの製造例2>
磁性トナーの製造例1において、表面処理磁性粉体2を使用する以外は、同様にして、磁性トナー2を得た。
<磁性トナーの製造例3>
磁性トナーの製造例1の水系媒体調製方法で、イオン交換水710質量部に、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)300質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を均一に溶解、分散したものを使用した以外は、同様にして、磁性トナー3を得た。
<磁性トナーの製造例4>
・イソフタル酸/フマル酸/無水トリメリット酸/
ビスフェノールAの誘導体からなるポリエステル樹脂 100質量部
(Tg61℃、Mw=18000、Mn=9000)
・表面処理磁性体粉2 60質量部
・負荷電制御剤:スピロンブラックTRH (保土ヶ谷化学社製) 0.5質量部
・パラフィンワックス(DSCのメインピーク60℃) 7.5質量部
上記材料を、酢酸エチル150質量部に投入し、TK式ホモミキサーで60℃,12000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させ、トナー材料溶液を得た。一方、イオン交換水706質量部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を入れ均一に溶解し、ついで60℃に昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに撹拌しながら、上記トナー材料溶液を投入し10分間撹拌した。ついでこの混合液を撹拌棒および温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、磁性トナーを得た。以下磁性トナー製造例1と同様の操作を行い、磁性トナー4を得た。
<磁性トナーの製造例5>
磁性トナーの製造例3において、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、同様にして、磁性トナー5を得た。
<磁性トナーの製造例6>
磁性トナーの製造例4において、溶剤の除去条件を変更(短時間で溶剤を除去)した以外は、同様にして、磁性トナー6を得た。
<磁性トナーの製造例7>
・イソフタル酸/フマル酸/無水トリメリット酸/
ビスフェノールAの誘導体からなるポリエステル樹脂 100質量部
(Tg61℃、Mw=18000、Mn=9000)
・表面処理磁性体粉2 60質量部
・負荷電制御剤:スピロンブラックTRH (保土ヶ谷化学社製) 0.5質量部
・パラフィンワックス(DSCのメインピーク60℃) 7.5質量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉砕物を分級した後、磁性トナーの製造例1と同様に外添剤を外添して磁性トナー7を得た。
<磁性トナーの製造例8>
磁性トナーの製造例1において、重合反応終了後、更に、スチレンモノマー10質量部と過硫酸カリウム0.01質量部を添加し、85℃で5時間反応を継続した。その後、製造例1と同様の操作を行い磁性トナー8を得た。
<キァリアの製造例>
メチルメタクリレートモノマーを使用し、トルエン溶液中で溶液重合(開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.5%)を行ない、Tg103℃,数平均分子量(以下Mn)12万,重量平均分子量(以下Mw)32万,Mw/Mn=2.7の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をさらにトルエンで希釈して固型分10%のレジン溶液を得た。
このレジン溶液を使用し、岡田精工社製、スピラコーターにより、平均粒径47μmのCu−Zn−Fe組成の球形フェライトに塗布した。得られた塗布後のキャリアを60℃、1時間乾燥して溶剤を除去後、さらに140℃,1時間加熱して、コートキャリアを得た。
〔実施例1〕
上記で得られたキャリア(95質量部)と磁性トナー1(5質量部)をV型混合機で混合し、スタート用現像剤1とした。
次に、市販のカラー複写機CP2150(キヤノン製)のBkステーションの現像装置を図1に示す如く改造し、100gの現像剤1を投入した。
画像面積5%のオリジナル原稿を使用し、高温高湿(30℃/80%)、低温低湿(15℃/10%)の両環境下で、PBSK紙(キヤノン販売社製)を用いて、磁性トナー1を補給しながら5万枚の通紙試験を行い、以下の評価方法に基づいて評価した。結果を表2、表3に示す。表2,3にあるように両環境ともに良好な結果が得られた。
[評価方法・基準]
(1)画像濃度
画像濃度は、SPIフィルターを装着したマクベス社製マクベスデンシトメータRD918タイプ(Macbeth Densitometer RD918manufactured by Mcbeth Co.)を使用して、オリジナル画像濃度1.5でPBSK紙上に形成された画像の4隅、中央の5点平均の相対濃度として測定した。
A:1.40〜1.60
B:1.30〜1.45未満、1.60超〜1.65
C:1.20〜1.35未満、1.65超〜1.70
D:1.20未満、1.70超
(2)ハーフトーン再現性
オリジナル画像濃度0.3を用いて(1)同様相対濃度として測定した。
A:0.3〜0.4
B:0.25〜0.3未満、0.4超〜0.45
C:0.20〜0.25未満、0.45超〜0.5
D:0.2未満、0.5超
(3)カブリ
画出し前のPBSK紙の平均反射率Dr(%)をリフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定した。一方、PBSK紙上にベタ白画像を画出しし、次いでベタ白画像の反射率Ds(%)を測定した。カブリ(%)は下記式から算出する。
Fog(%)=Dr(%)−Ds(%)
A:0.4%未満
B:0.4〜0.8%未満
C:0.8〜1.2%未満
D:1.2%以上
(4)ベタ均一性
オリジナル画像濃度1.5を用いて(1)同様5点の相対濃度を測定し、最大濃度差として測定した。
A:0.0〜0.05未満
B:0.05〜0.15未満
C:0.15〜0.25未満
D:0.25以上
〔実施例2〕
磁性トナー2に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。実用上問題無いレベルであるが高温高湿下で若干のカブリ悪化が認められた。これは、鉄/鉄化合物の遊離率がやや高いことによる帯電量低下によるものと推察される。
〔実施例3〕
磁性トナー3に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。実用上問題無いレベルであるが、両環境ともにカブリ及びハーフトーン再現性が若干悪化した。これは、トナーの粒度分布が若干ブロードとなったため、帯電量分布がブロードになったためと推察される。
〔実施例4〕
磁性トナー4に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。実用上問題無いレベルであるが、両環境ともにべた均一性が若干悪化した。これは、真球状トナーの割合が減ったことによる帯電性の若干の低下によるものと推察される。
〔実施例5〕
磁性トナー5に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。実用上問題無いレベルであるが、両環境ともに画像濃度とハーフトーン再現性の低下が認められた。これは、重量平均径がやや大きいために、潜像を忠実に再現しにくくなったことと、現像剤中の磁性トナー粒子の数が減少したためと推察される。
〔比較例1〕
磁性トナー8に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。特に低温低湿下において、著しい画像濃度低下とべた均一性の低下が認められた。これは、鉄/鉄化合物の遊離率が低いために磁性トナーがチャージアップしたためと推察される。
〔比較例2〕
磁性トナー6に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。各環境ともに、カブリや、べた均一性が著しく劣り、特に高温高湿下においては著しいトナー飛散が認められた。これは、トナー形状による流動性低下に起因する現像剤への磁性トナー取り込み不良が発生したためと推察される。
〔比較例3〕
磁性トナー7に代える以外は実施例1と同様にして二成分系現像剤を製造し、画出しを行ない評価した。結果を表2、3に示した。各環境ともに、カブリや、べた均一性が著しく劣り、また、著しいトナー飛散も認められた。これは、トナー形状による流動性低下に起因する現像剤への磁性トナー取り込み不良や、鉄/鉄化合物の遊離率が高いことによる、著しい帯電性の低下が原因と推察される。