以下、本発明を詳細に説明する。
上述のとおり、本発明の磁性トナーは、少なくとも結着樹脂、離型剤、磁性体及び結晶性ポリエステルを含有する磁性トナーであって、該磁性トナーの平均円形度が0.950以上を示すものである。
ここで、本発明における磁性体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄の如き酸化鉄を主成分とするものをいう。リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでいてもよい。
上記構成とすることにより、低温定着性にすぐれ、高温高湿環境下での長期使用においても劣化が生じない磁性トナーが得られるが、その理由としては、以下のようなことが考えられる。
まず結晶性ポリエステルについて考えると、結晶性ポリエステルは定着器からの熱を受け、その融点を超えると瞬時に溶けると共に離型剤を押し出し、良好な離型性を得ることができる。また、結晶性ポリエステルはトナー中でドメインを形成するが、結晶性ポリエ
ステルと馴染まない磁性体はより表層近傍へと押し出されることとなり、磁性体がトナー表層近傍に数多く存在することで高温高湿環境下での耐ストレス性が向上すると思われる。尚、この傾向は、本発明のトナーを懸濁重合法(後述)を用いて製造した場合、特に顕著なものとなる。
一方、磁性体は一般的にその比熱の高さ及びフィラー効果から定着性を悪化させる傾向があるが、ドメインを形成する結晶性ポリエステルは磁性体の他に離型剤や結着樹脂とも馴染まないため、溶融時に液芯構造のような状態となり、トナーは変形しやすくなり、磁性体がトナー表層近傍に存在することによる悪影響はあまり受けず、良好な低温定着が可能となると思われる。
そして、平均円形度が0.950以上、より好ましくは0.960以上であることで、トナーは紙等のメディア上でも密に詰まって存在すると考えられ、定着の際に、他のトナー粒子との融着を起こしやすくなり、定着性がより向上すると思われる。
以上の3点の相乗効果により、低温定着性が非常に良化すると共に、高温高湿環境下での現像性及び耐久性が向上するものと考えられる。
また、本発明の磁性トナーはトナーの円形度分布において、モード円形度が0.98以上である事が好ましい。モード円形度が0.98以上であるということは、トナー粒子の多くが真球に近い形状を有する事を意味しており、上記作用がより一層顕著になり、好ましい。
本発明の磁性トナーは、鉄及び鉄化合物の遊離率が0.05〜3.00%である事が好ましく、より好ましくは0.05〜1.50%である。本発明において、鉄及び鉄化合物の遊離率とは、具体的にはトナー粒子から遊離している磁性体の割合を示すものである。鉄の遊離率が0.05%未満であると磁性体は実質的にトナーから遊離していないことを示すが、このような場合ではトナーは高い帯電量を有するものの、帯電のリークサイトが存在しないためにチャージアップしやすくなり、均一帯電し難くなってしまう。特に、本発明の如き結晶性ポリエステルを含有するトナーにおいては、結晶性ポリエステルと荷電制御剤は馴染まない為に荷電制御剤はトナー表層近傍に多く存在する事になり、よりチャージアップしやすく、反転カブリが増加する傾向にあり好ましくない。一方、鉄及び鉄化合物の遊離率が3.00%より多いと磁性体の疎水化が不十分であることが多く、このような磁性体を用いたトナーは、トナー表層に磁性体が露出していると考えられる。このため、チャージのリーク点が多くなりすぎてしまい磁性トナーの帯電量が低下してしまう。この傾向は高温高湿下で特に顕著なものとなる。また、荷電制御剤が表層近傍に存在することを妨げることとなり、より帯電量が低下する傾向となる。さらには、遊離の磁性体が定着フィルムを傷つけやすく、このような場合も定着性を悪化させるので好ましくない。
本発明の磁性トナーの鉄及び鉄化合物の遊離率は、パーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)を用いて測定することができ、JapanHardcopy97論文集の65−68ページに記載された原理で測定することができる。具体的には、該装置はトナー等の微粒子を一個ずつプラズマへ導入し、微粒子の発光スペクトルから発光物の元素、粒子数、粒子の粒径を知る事が出来る。この中で、遊離率とは、結着樹脂の構成元素である炭素原子の発光と、鉄原子の発光の同時性から次式により求められる値をいう。
ここで、炭素原子と鉄原子の同時発光とは、炭素原子の発光から2.6msec以内に発光した鉄原子の発光をいい、それ以降の鉄原子の発光は鉄原子のみの発光とする。本発明では磁性体を多く含有している為、炭素原子と鉄原子が同時発光するという事は、トナーが磁性体を含有している事を意味し、鉄原子のみの発光は、磁性体がトナーから遊離している事を意味している。
具体的な測定方法は以下の通りである。0.1%酸素含有のへリウムガスを用い、23℃で湿度60%の環境にて測定を行い、トナーサンプルは同環境下にて1晩放置し、調湿したものを測定に用いる。また、チャンネル1で炭素原子(測定波長247.860nm、Kファクターは推奨値を使用)、チャンネル2で鉄原子(測定波長239.56nm、Kファクターは3.3764を使用)を測定し、一回のスキャンで炭素原子の発光数が1000〜1400個となるようにサンプリングを行い、炭素原子の発光数が総数で10000以上となるまでスキャンを繰り返し、発光数を積算する。この時、炭素元素の発光個数を縦軸に、炭素元素の三乗根電圧を横軸にとった分布において、該分布が極大を一つ有し、更に、谷が存在しない分布となるようにサンプリングし、測定を行う。そして、このデータを元に、全元素のノイズカットレベルを1.50Vとし、上記計算式を用い、鉄及び鉄化合物の遊離率を算出する。後述の実施例においても同様にして遊離率を求めた。
尚、荷電制御剤であるアゾ系の鉄化合物等といった、鉄原子を含有する無機化合物以外の材料もトナー中に含まれている場合があるが、こういった化合物は鉄原子と同時に有機化合物中の炭素も同時に発光するため、遊離の鉄原子としてはカウントされない。
本発明の磁性トナーは結着樹脂100質量部に対して、磁性体を20〜120質量部含有することが好ましい。含有する磁性体が20質量部未満ではトナーの着色力が低下し、カブリの抑制も困難であると共に、トナー表層近傍の磁性体が少なくなり、高温高湿環境下での耐久性が劣るものとのなる。一方、含有する磁性体が120質量部を超えると、トナー担持体への磁力による保持力が強まり、現像性が低下したり個々のトナー粒子への磁性体の均一分散が難しくなるだけでなく、定着性が低下してしまう。
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100〜750℃まで間の減量質量をトナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
本発明の磁性トナーは結晶性ポリエステルを含有するが、結着樹脂100質量部に対し3〜30質量部の結晶性ポリエステルを含有することが望ましい。より好ましくは、3〜25質量部である。結晶性ポリエステルの含有量が3質量部未満では結晶性ポリエステルの添加効果が低下し、充分な低温定着性が得られない。一方、結晶性ポリエステルの含有量が30質量部を越えてしまうと高温高湿環境下において結晶性ポリエステルの親水基が吸湿することにより現像性が悪化する他、長期間の保存安定性が低下する。更には、磁性トナーの流動性の悪化や画像特性の低下につながる。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの数平均分子量は2000〜10000であることが好ましく、より好ましくは2000〜8000である。結晶性ポリエステルの数平均分子量が2000未満であると、トナー製造時に樹脂への相溶を生じやすく、高温高湿環境下での耐久安定性が低下する。一方、結晶性ポリエステルの数平均分子量が10000を超えるとトナーが溶融した際の粘度が高くなり、低温定着性が低下してしまう。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、融点が50〜120℃であることが好ましい。融点が50℃未満であると、高温高湿環境下での耐久性が劣る。一方、融点が120℃を超えると低温定着性が低下するので好ましくない。結晶性ポリエステルの融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定を行い、「ASTM D 3417−99」測定法に準ずることができる。DSC測定により得られた吸熱ピークのピークトップを融点とする。
本発明において結晶性ポリエステルとは、示差走査熱量計(DSC)測定において昇温時に吸熱ピークがあり、降温時に発熱ピークを有するポリエステルを指す。尚、その測定は「ASTM D 3417−99」に準ずる。
本発明における結晶性ポリエステルはアルコールとカルボン酸化合物との縮重合反応により得られるものであるが、アルコール単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールその他が挙げられる。
また、本発明においては上記の如きアルコール単量体を主成分として用いるが、上記成分の他にポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価のアルコール、1,3,5−トリヒ
ドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価のアル
コール等を用いても良い。
上記結晶性ポリエステルを得るためのカルボン酸単量体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n-ドデシルコハク酸、n-デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物または低級アルキルエステル等が挙げられる。
また、本発明においては上記の如きジカルボン酸を主成分として用いるが、上記の成分の他に3価以上の多価カルボン酸を用いても良い。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、またはエステル交
換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させポリエステル樹脂を得る。
エステル化またはエステル交換反応の時には必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒例えば、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマニウムなどを公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
また、結晶性ポリエステルは1種類でも複数種併用してもよい。さらに、結晶性ポリエステルの他に非晶質のポリエステルを併用してもよい。
本発明の磁性トナーは定着性向上のために離型剤を有するが、結着樹脂100質量部に対し2〜30質量部を含有することが好ましく、より好ましくは、5〜25質量部である。離型剤の含有量が2質量部未満では前述の如き効果が薄れ、低温定着性が劣るものとなる。一方、離型剤の含有量が30質量部を越えると長期間の保存性が低下すると共に、離型剤成分の染み出しも起こるようになり、高温高湿下での耐久性及び現像性が低下する。
本発明に係わる磁性トナーに使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体に酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
また、本発明のトナーは離型剤を少なくとも1種類含有していればよく、複数種の離型剤を含有してもよい。
これらの離型剤成分の内でも、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが50〜100℃であることが好ましい。
即ち、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に50〜100℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには45〜90℃の領域に有するものがより好ましい。上記温度領域に最大吸熱ピークを有することにより、低温定着に大きく貢献しつつ、離型性をも効果的に発現する。最大吸熱ピークが50℃未満であると離型剤成分の自己凝集力が弱くなり、耐高温オフセット性が悪化する。また、離型剤の染み出しが生じやすくなり、トナーの帯電量が低下すると共に、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、離型剤の最大吸熱ピークが100℃を超えると定着温度が高くなり好ましくない。離型剤の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定を行い、その測定は「ASTM D 3417−99」に準ずる。
本発明では荷電制御剤を用いても良く、荷電制御剤としては特に制限されること無く公知のものを用いることができる。この中でも特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
また、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的には、ネガ系荷電制御
剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体の如き有機金属化合物;ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合を行う場合には、水中での油液滴の形成時、あるいは水中で油液滴を形成し、重合を行っている最中、または、重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加える事によりシード重合を行う事も可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を外部添加し、シェアをかけ混合・攪拌する事により導入する事も可能である。
これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部使用することが好ましい。しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではなく、現像剤の層圧規制部材や現像剤担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナーに充分な帯電性を付与できれば、トナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
本発明の磁性トナーは、結着樹脂、離型剤、磁性体、及び結晶性ポリエステル、必要に応じて荷電制御剤や着色剤等添加剤を用いて、一般的な粉砕法によって製造することも可能である。尚、この場合、結着樹脂としては、従来一般に使用されている種類のものを使用することができる。しかし、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものであり、本発明に係わるトナーの必須条件である平均円形度が0.950以上という物性を得る為には、機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行う事が必要となり、生産性が劣るものとなる。そこで、本発明のトナーは分散重合法、会合凝集法、懸濁重合法等、湿式媒体中でトナーを製造する事が好ましく、特に懸濁重合法は、本発明の好ましい条件を満たしやすく、非常に好ましい。懸濁重合法とは、結晶性ポリエステル、重合性単量体、離型剤、磁性体(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、着色剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物とした後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後重合トナー)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.950以上、モード円形度0.98以上という本発明に好適とされる物性要件を満たすトナーが得られやすく、さらにこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるため、カブリや転写残の少ない良好な画像が得られやすい。
しかしながら、重合トナー中に通常の磁性体を含有させても、遊離の磁性粉体が多数存在し、トナー粒子の帯電特性が著しく低下する。また、磁性粉体の分散も悪くなる傾向にあり、さらに、分散媒体である水と磁性体との相互作用が強いことにより、所望の円形度を有するトナーが得られ難く、トナーの粒度分布も広くなる傾向にある。
これは、i)磁性体は一般的に親水性であるためにトナー表面に存在しやすいこと、ii)水溶媒撹拌時に磁性体が乱雑に動き、それに単量体から成る懸濁粒子表面が引きずられ、形状が歪んで円形になりにくいこと等が原因と考えられる。こういった問題を解決するためには磁性体の表面特性の改質を行うことが有効となる。
そこで、本発明の磁性トナーに使用される磁性体は、カップリング剤で疎水化処理されていることが好ましく、磁性体表面を疎水化する際、水系媒体中で、磁性体を一次粒径と
なるよう分散しつつカップリング剤を加水分解しながら表面処理する方法を用いることがより好ましく、さらには、水溶液中で製造した磁性体を洗浄後、乾燥させずに疎水化処理する事が非常に好ましい。水中での疎水化処理方法は気相中で処理するより磁性粉体同士の合一が生じにくくより均一な処理が行える。また、乾燥工程を経ずに疎水化処理する場合は、乾燥時に生じる凝集が起こらないので、処理時にはほぼ一次粒径に分散されているので非常に均一な表面処理をすることが出来る。
本発明に係わる磁性体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、下記一般式で示されるものである。
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。]
上記一般式で表されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
特にこの中で、十分な疎水性を得る為に下記式で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いる事が好ましい。
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
上記式におけるpが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、遊離の磁性体を抑制する事が難しくなる。またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、磁性体同士の合一が多くなり、トナー中へ磁性体を十分に分散性させることが困難になり好ましくない。
また、qが、3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。特に、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが良い。
その処理量は磁性体100質量部に対して、シランカップリング剤の総量が0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部であり、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが好ましい。
磁性体の表面処理として水系媒体中でカップリング剤で処理するには、水系媒体中で適量の磁性体およびカップリング剤を撹拌する方法が挙げられる。撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機で、磁性体が水系媒体中で、一次粒子になるように充分におこなうのが良い。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水、或いは、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸等無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
なお、上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、あるいは複数の種類を併用して処理する事が可能であり、併用する場合、それぞれのカップリング剤を同時、あるいは時間差をもって投入し、磁性体の処理を行う。こうして得られる磁性体は粒子の凝集が見られず、個々の粒子表面が均一に疎水化処理されているため、重合トナー用の材料として用いた場合、トナー粒子の均一性を良好なものとすることができる。
本発明のトナーに用いられる磁性体は、例えばマグネタイトの場合、下記方法で製造される。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調整する。調整した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8〜14)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6〜14に維持しつつ空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ種晶を芯にして磁性酸化鉄紛体を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応終了後、そのままpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるように十分に攪拌し、カップリング剤を添加して十分に混合攪拌し、濾過、乾燥、軽く解砕することで疎水性処理磁性酸化鉄紛体を得ることもできるが、酸化反応終了後に、洗浄、濾過して得られた酸化鉄紛体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを酸性領域にし、十分に攪拌しながらシランカップリング剤を添加し、加水分解後、温度を上げる、あるいは、アルカリ域のpHに調整することでカップリング処理をすることが好ましい。
いずれにせよ、酸化反応終了後に乾燥工程を経ずに表面処理を行うことが肝要であり、カップリング処理前に乾燥させてしまうと、磁性紛体を均一に水系媒体中に分散させることが難しく、均一な処理が困難となる。また、未処理の酸化鉄紛体をそのまま乾燥してしまうと粒子同士の凝集による合一が避けられず、こういった凝集状態の紛体にたとえ湿式疎水化処理を行っても均一な疎水化処理は難しくなり、このような表面処理酸化鉄を用いたトナーでは、高温高湿下にて磁性体が吸湿してしまい耐久性が低下してしまう。
酸化鉄の製造の際に第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、硫酸第一鉄以外には、更には塩化鉄等が可能である。
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5〜2mol/リットルの硫酸第一鉄水溶液が用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては空気量が多いほど、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
次に、本発明の磁性トナーの製造法として好適な懸濁重合法により、トナーを製造する場合について説明する。
本発明に係わる重合トナーは、トナー組成物、即ち結着樹脂となる重合性単量体中に、離型剤、磁性体、結晶性ポリエステル、場合によって、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、分散機等に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して製造できる。
本発明の重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレシ、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独、あるいは混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用する事がトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明に係わる重合トナーの製造においては、重合性単量体以外にさらに樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の重合性単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体等、共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に添加することにより、トナー表面にこれら高分子重合体が偏在するようになり耐ブロッキング性、現像性の良好なトナーを得ることができる。
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良等を目的として上記以外の樹脂を単量体組成物中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレ
ン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコン樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できる。これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部以上添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる。
本発明のトナーは、磁性体以外に他の着色剤を併用して含有してもよい。併用し得る着色剤としては、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いてもよい。
本発明の磁性トナーでは、重合開始剤として従来公知のアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤などを用いることができる。アゾ系重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が例示され、過酸化物系重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−プチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられ、必要に応じてこれらの開始剤を2種以上用いることもできる。
本発明では、架橋剤を添加してもよく、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対し、0.001〜15質量部である。
ここで、架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する方法では、一般に上述の磁性体、重合性単量体、離型剤、結晶性ポリエステルを少なくとも含む組成物を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになりやすい。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。又、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加える事も出来る。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明の磁性トナーを重合法で製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。平均粒径が5μm以下であるような、より微粒化されたトナーを目的とする場合には、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
これらの無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速攪拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウムが副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生
し難くなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後酸あるいは、アルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50〜90℃の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤が、相分離により析出して内包化がより完全となる。
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることで、本発明の磁性トナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも可能である。
さらに、本発明において磁性トナーは、流動化剤として個数平均1次粒径4〜80nm、より好ましくは6〜40nmの無機微粉体が添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合には、良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、消費量の増大等の問題を生じることがある。一方、無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動するようになり、凝集体が現像されることによる画像欠陥や、像担持体や磁性トナー担持体が傷つけられることによる画像欠陥が生じるため好ましくない。
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数基準の平均1次粒径、個数平均1次粒径を求めることで測定出来る。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。ケイ酸微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
個数平均1次粒径が4〜80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%以上では定着性が悪くなる。
また、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において無機微粉体は、疎水化処理された物であることが環境安定性が向上し好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。
疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものが高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
そのような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行ないシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10〜200,000mm2/sのものが、さらには3,000〜80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1〜40質量部、好ましくは3〜35質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずるからである。
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20〜350m2/g範囲内のものが好ましく、より好ましくは25〜300m2/gのものが更に良い。
比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明の磁性トナーは、クリーニング性向上等の目的で、一次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の無機又は有機の球状に近い微粒子をさらに添加するとより好ましい。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
本発明に用いられる磁性トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いる事もできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
本発明のトナーを好適に用いることの出来る画像形成装置について、具体例を挙げつつ以下説明する。
図1は画像形成装置の構成を示す模式的断面図であり、図2は図1の現像装置部分の構成を示す模式的断面図である。図の画像形成装置は一成分磁性トナーを用いた現像方式を採用した電子写真装置であり、像担持体としてのドラム状の感光体(感光ドラム)100と、その周囲に配置された帯電手段として一次帯電ローラー117、現像手段としての現像器140、転写手段としての転写帯電ローラー114、クリーニング手段としてのクリーナー116、レジスタローラー124等を有している。
まず、感光体100は一次帯電ローラー117によって、例えば−600Vに帯電される。(印加電圧は交流電圧−1.7kVpp、直流電圧−620Vdc)そして、レーザー発生装置121から発せられるレーザー光123を感光体100に照射することによって露光され、形成されるべき画像に応じた静電潜像が感光体100上に形成される。
感光体100上に形成された静電潜像は現像器140によって本発明のトナーとしての一成分磁性トナーで現像され、トナー画像となる。形成された感光体100上のトナー画像は、転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送ベルト125等により定着手段としての定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、転写材上に転写されず一部感光体に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
現像器140は図2に示すように感光体100に近接して配設されたアルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下現像スリーブと称す)を有し、感光体100と現像スリーブ102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により所定距離(例えば約270μm)に維持されている。現像スリーブ内にはマグネットローラー104が現像スリーブ102と同芯的に固定、配設されている。但し、現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラー104には図示のように複雑の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。トナーは、トナー塗布ローラ141によって、現像スリーブ102上に塗布され、付着して搬送される。搬送されるトナー量を規制する部材として、弾性ブレード103が現像スリーブ102に当接するように配設され、弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。感光体100表面と現像スリーブ102表面の最近接部である現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流及び交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ上のトナーは静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
(1)平均円形度
トナーの平均円形度及び、モード円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
また、モード円形度は円形度頻度分布において、もっとも頻度が高い円形度の値である。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
測定手順としては、以下の通りである。界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlに、磁性トナー約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群の平均円形度を求める。
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群の影響を排除し、より正確にトナー粒子の円形度を求めるためである。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度の向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
(2)結晶性ポリエステルの数平均分子量の測定
結晶性ポリエステル0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散し溶解後、135℃において24時間振投機で振投を行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
[分析条件]
分離カラム:Shodex (TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
(3)結晶性ポリエステル及び離型剤の融点の測定
離型剤、結晶性ポリエステルの融点、離型剤、結晶性ポリエステルの吸熱ピークトップの測定はASTM D 3417−99に準じて行い、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いる事が出来る。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
なお、結晶性ポリエステルは加熱すると結着樹脂と相溶しやすいため、本発明のトナーにおいてはモジュレーティッドモードを用い、以下の条件にて測定し、昇温時のDSC曲線から離型剤、結晶性ポリエステルの融点を求めた。
<モジュレーティッドモード測定条件>
・20℃で1分間平衡を保つ。
・1.5℃/分のモジュレーションをかけ、180℃まで2℃/分で昇温。
・180℃で10分間平衡に保つ。
・1.5℃/分のモジュレーションをかけ、2℃/分で20℃まで降温。
(4)平均粒径
本発明の磁性トナーの重量平均粒径はコールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調整する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5mlを加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、
前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の個数を測定して個数分布を算出する。それをもとに重量平均粒径を求める。
以下、本発明を製造例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例中で用いられる部数又は%は、質量部又は質量%を示す。
<1>磁性体の製造
(表面処理磁性体1の製造)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調整した。水溶液のpHを10に保ちながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリーを調整した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH9に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄をした後、この含水スラリー液を一旦取り出した。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体に再分散させた後、再分散液のpHを約4.1に調整し、十分に攪拌しながらシランカップリング剤(n−C10H21Si(OCH3)3)を磁性酸化鉄100部に対して2.0部添加し、加水分解を行った。その際、分散液のpHを約10にし、縮合反応を行い、カップリング処理を行った。生成した疎水性磁性紛体を常法により洗浄、濾過、乾燥し、得られた粒子を十分解砕処理し、平均粒径が0.18μmの球形の表面処理磁性体1を得た。
(表面処理磁性体2の製造)
表面処理磁性体1の製造に於いて、カップリング処理剤量を1.3質量部とする以外は同様にして表面処理磁性体2を得た。
(表面処理磁性体3の製造)
表面処理磁性体1の製造に於いて、カップリング処理剤量を0.6質量部とする以外は同様にして表面処理磁性体3を得た。
(表面処理磁性体4の製造)
表面処理磁性体1の製造と同様に酸化反応を進め、酸化反応終了後に生成した磁性体を洗浄、濾過、乾燥し、凝集している粒子を解砕し、磁性体を得た。その後、得られた磁性体100質量部に対しシランカップリング剤(n−C10H21Si(OCH3)3)1.3質量部を気相中にて処理を行ない、表面処理磁粉体4を得た。
(表面処理磁性体5の製造)
表面処理磁性体1の製造において、添加する苛性ソーダ溶液の量及び反応条件を調整し酸化反応を進め、酸化反応終了後に生成した磁性体を洗浄、濾過、乾燥し、磁性体を得た。その後、得られた磁性体100質量部をシランカップリング剤(n−C10H21Si(OCH3)3)1.3質量部を含むトルエン溶液に分散させ、100℃で3時間熱処理を行うと共に、乾燥し表面処理磁性体5を得た。
<2>結晶性ポリエステルの製造
(結晶性ポリエステル1の製造)
テトラメチレングリコール10.1モル、ヘキサメチレングリコール1.1モル、フマ
ル酸9.13モル、アジピン酸1.49モルにハイドロキノン2gを窒素雰囲気下、160度で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに圧力が8.3kPaになるまで減圧し、数平均分子量が7000の樹脂が得られるまで反応させて、室温まで冷却し、結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステルの物性を表1に示す。
テトラメチレングリコール10.1モル、ヘキサメチレングリコール1.1モル、フマル酸9.13モル、アジピン酸1.49モルを用いた他は、結晶性ポリエステル1の製造と同様の手法で、数平均分子量が11200の結晶性ポリエステル2を得た。得られた結晶性ポリエステル2の物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステル3の製造)
テトラメチレングリコール10.1モル、ヘキサメチレングリコール1.1モル、フマル酸9.13モル、アジピン酸1.49モルを用いた他は、結晶性ポリエステル1の製造と同様の手法で、数平均分子量が1800の結晶性ポリエステル3を得た。得られた結晶性ポリエステルの3物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステル4の製造)
テトラメチレングリコール10.1モル、ヘキサメチレングリコール1.1モル、フマル酸5.2モル、アジピン酸4.6モルを用いた他は、結晶性ポリエステル1の製造と同様の手法で、数平均分子量が7200の結晶性ポリエステル3を得た。得られた結晶性ポリエステル4の物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステル5の製造)
テトラメチレングリコール9.01モル、ヘキサメチレングリコール2.2モル、フマル酸11モルを用いた他は、結晶性ポリエステル1の製造に示したのと同様の手法で、数平均分子量が6800の結晶性ポリエステル5を得た。得られた結晶性ポリエステル5の物性を表1に示す。
<3>磁性トナーの製造
(磁性トナー1の製造)
(結晶性ポリエステル分散液の調製)
スチレン単量体 33.0質量部
結晶性ポリエステル1 10 質量部
上記の成分を温度調節可能な容器に仕込み、ウルトラタラックスT−50(IKA社製)を用いて10000rpmで液温を常に50℃以下とし、40分間攪拌を行って結晶性ポリエステルの粗分散液を得た。
この結晶性ポリエステル粗分散液を温度調節可能な攪拌タンクに投入し、SCミル(三井鉱山社製)を途中に組み込んだ循環ラインにポンプで移送し、2時間循環させることによって微分散工程を行った。SCミルには直径0.8mmのジルコニアビーズを用い、ローター周速を18.0m/s、液の循環流量を4.5kg/minとし、工程の間中液温が50℃以下となるよう温度調節した。得られた分散液中の結晶性ポリエステルの体積基準のメジアン径は0.33μmであった。
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
結晶性ポリエステル分散液 43.0 質量部
スチレン 46.0 質量部
n−ブチルアクリレート 21.0 質量部
ジビニルベンゼン 0.45質量部
負荷電制御剤(モノアゾ染料系Fe化合物) 1.5 質量部
表面処理磁性体1 80.0 質量部
上記処方をアトライター(三井三池工機(株))を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点66℃)10質量部を添加溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部を溶解した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて15000rpmで10分間攪拌し、造粒した。その後パドル攪拌翼で攪拌しつつ70℃で5時間反応させた後、そのまま2時間攪拌した。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて酸洗浄し、濾過・水洗した後に乾燥して磁性トナー粒子1を得た。
この磁性トナー粒子1を100質量部と、個数平均1次粒径9nmの微粉体をヘキサメチルジシラザンで処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が220m2/gの疎水性シリカ微紛体1.3部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、重量平均粒径が6.5μmの磁性トナー1を得た。得られた磁性トナー1の物性を表2に示す。
表面処理磁性体2を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー2を調整した。磁性トナー2の物性を表2に示す。
(磁性トナー3の製造)
表面処理磁性体3を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー3を調整した。磁性トナー3の物性を表2に示す。
(磁性トナー4の製造)
表面処理磁性体4を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー4を調整した。磁性トナー4の物性を表2に示す。
(磁性トナー5の製造)
表面処理磁性体5を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー5を調整した。磁性トナー5の物性を表2に示す。
(磁性トナー6の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル分散液
43.0質量部
スチレン 33.0質量部
n−ブチルアクリレート 21.0質量部
ジビニルベンゼン 0.5質量部
表面処理磁性体1 80.0質量部
上記処方をアトライターを用い均一に分散混合した。その後、60℃に加温し、磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックス10質量部、2,2−アゾビスイスブチロニトリル3.5質量部を添加し、溶解した。
次いで、リン酸三カルシウム4質量%の水系コロイド溶液650質量部を60℃に加温した後、上記の重合性単量体191質量部を添加し、TKホモミキサーを用いて室温にて、回転数10000rpmで3分間乳化分散させた。
その後、窒素雰囲気下にて攪拌を続けながら、85℃で10時間反応を行った後、室温まで冷却し、磁性トナー粒子分散液を得た。
スチレン 13.0質量部
n−ブチルアクリレート 7.0質量部
ジビニルベンゼン 0.2質量部
2,2−アゾビスイスブチロニトリル 0.4質量部
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1質量部
次に、上記処方を水20質量部に投入し、超音波ホモジナイザーを用いて分散させ、水乳濁液40.7質量部を得た。
これを前記磁性トナー粒子分散液中に滴下し、粒子を膨張させた。その後、窒素雰囲気下にて攪拌を行い、85℃で10時間反応を行った。その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加え分散媒を溶解し、濾過、水洗、乾燥し磁性トナー6を得た。磁性トナー6の物性を表2に示す。
(磁性トナー7の製造)
磁性トナー1の製造で用いた表面処理磁性体1を18部とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー7を調整した。磁性トナー7の物性を表2に示す。
(磁性トナー8の製造)
磁性トナー1の製造で用いた表面処理磁性体1を125部とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー8を調整した。磁性トナー8の物性を表2に示す。
(磁性トナー9の製造)
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
スチレン 79.0 質量部
n−ブチルアクリレート 21.0 質量部
ジビニルベンゼン 0.45質量部
スチレンーブタジエン樹脂
(スチレン:ブタジエン=85:15、 Mn=18600) 10 質量部
負荷電制御剤(モノアゾ染料系Fe化合物) 1.5 質量部
表面処理磁性体1 80.0 質量部
上記処方をアトライター(三井三池工機(株))を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点66℃)1質量部を添加溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部を溶解し、後は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表2に示す。
(磁性トナー10の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を2部とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー10を調整した。磁性トナー10の物性を表2に示す。
(磁性トナー11の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を26部とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー11を調整した。磁性トナー11の物性を表2に示す。
(磁性トナー12の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を31部とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー12を調整した。磁性トナー12の物性を表2に示す。
(磁性トナー13の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を結晶性ポリエステル2とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー13を調整した。磁性トナー13の物性を表2に示す。
(磁性トナー14の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を結晶性ポリエステル3とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー14を調整した。磁性トナー14の物性を表2に示す。
(磁性トナー15の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を結晶性ポリエステル4とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー15を調整した。磁性トナー15の物性を表2に示す。
(磁性トナー16の製造)
磁性トナー1の製造で用いた結晶性ポリエステル1を結晶性ポリエステル5とした以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー16を調整した。磁性トナー16の物性を表2に示す。
(磁性トナー17の製造)
磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックスを用いなかったこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー17を調整した。磁性トナー17の物性を表2に示す。(磁性トナー18の製造)
磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックスを1部用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー18を調整した。磁性トナー18の物性を表2に示す。
(磁性トナー19の製造)
磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックスを32部用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー19を調整した。磁性トナー19の物性を表2に示す。(磁性トナー20の製造)
磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックスの代わりに、エステルワックス(融点43℃)を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー20を調整した。磁性トナー20の物性を表2に示す。
(磁性トナー21の製造)
磁性トナー1の製造で用いたパラフィンワックスの代わりに、ポリエチレンワックス(
融点118℃)を用いたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー21を調整した。磁性トナー21の物性を表2に示す。
(磁性トナー22の製造)
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比79/21)
100 質量部
負荷電制御剤(モノアゾ染料系Fe化合物) 1.4質量部
結晶性ポリエステル1 10 質量部
磁性トナー1の製法で用いたパラフィンワックス 10 質量部
表面処理磁性体1 80 質量部
上記材料をブレンダーにて混合、溶融混錬し、冷却した混錬物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕後、得られた微粉砕物を風力分級して磁性トナー粒子を得た。この磁性トナー粒子100質量部に対して磁性トナー1の製造で使用したシリカ1.0部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径が7.1μmの磁性トナー22を得た。磁性トナー22の物性を表2に示す。
(実施例1)
<画像形成装置>
画像形成装置として、レーザービームプリンターLBP−1210(キヤノン製、プロセススピード84mm/sec)を用いた。現像バイアスとして直流電圧Vdc−450V、重畳する交番電界として1550Vpp。周波数2200Hzを用いた。
この条件において、磁性トナー1を使用し、常温常湿環境下(23℃、60%)及び高温高湿環境下(30℃、80%)において、印字率4%の縦線のみからなる画像にて1枚間欠モードで2000枚の画出し試験を行った。なお、記録媒体としてはLetterの75g/m2の紙を使用した。その結果、双方の環境下で、初期及び耐久後においても非画像部へのカブリは無く、良好な画像が得られた。また、下記の条件にて定着試験を行ったところ、定着に関しても優れた低温定着性を示した。常温常湿環境下での評価結果及び定着性と保存安定性の評価結果を表3に、高温高湿環境下での評価結果を表4に示す。
本発明の実施例並びに比較例に記載の評価項目とその判断基準について以下に述べる。<画像濃度>
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定を行った。
<カブリ>
白画像を出力し紙上カブリの測定を行い、以下の基準で判断した。なお、カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用い、カブリは以下の式により算出した。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上、2.5%未満)
C:普通(2.5%以上、4.0%未満)
D:悪い(4.0%以上)
<画質>
画質の判断基準は、画像の均一性、細線再現性を総合的に評価したものである。
画像の均一性はベタ黒画像、ならびに、ハーフトーン画像の均一性で判断を行った。
A:細線再現性、画像の均一性に優れ、鮮明な画像。
B:細線再現性、画像の均一性が若干劣るものの、良好な画像。
C:実用的には問題の無い画質。
D:細線再現性、画像の均一性が悪く、実用上好ましくない画像。
<定着性>
定着性の評価は、常温常湿環境下にてFOX RIVER BOND 90g紙に画像濃度が0.8〜0.85となるようにハーフトーン画像を形成し、定着器の温度を変えて画像を定着させた。その後、50g/cm2の荷重をかけて、シルボン紙で定着画像を5往復摺擦し、摺擦後の画像濃度低下率(%)が10%となる温度を定着開始温度とした。
A:140度未満で定着。
B:150度以上、160度未満で定着。
C:160度以上、170℃未満で定着。
D:170度以上で定着。
<保存安定性>
磁性トナー10gをポリコップに入れ、50℃の環境に72時間静置した後のトナーの流動性を判断した。
A:トナーの凝集は見られず、流動性が非常に良好。
B:トナーの凝集がやや見られるが、すぐにほぐれ流動性が良好。
C:実用上問題ないレベルであるが、凝集塊がありやや流動性が劣る。
D:トナーの凝集又はケーキングが見られ、流動性が悪い。
(実施例2、6〜15、18、19及び参考例3〜5、16、17)
磁性トナー2、6〜8、10〜16、20、21、3〜5、18、19を使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験及び耐久性評価を行った。その結果、初期のカブリや画質も問題なく、耐久後でも実用上大きな問題の無い結果が得られた。常温常湿環境下での評価結果及び定着性と保存安定性の評価結果を表3に、高温高湿環境下での評価結果を表4に示す。
磁性トナー9を使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験及び耐久性評価を行った。その結果、初期及び耐久後でのカブリ、画質は実用上問題ないレベルであったものの、低温定着性が低い結果であった。これは、結晶性ポリエステルが存在しないことで、低温定着効果が得られていないと考えられる。結果を表3、表4に示す。
(比較例2)
磁性トナー17を使用し、実施例1と同様の条件で画出し及び耐久性評価を行った。その結果、カブリや画質は実用上問題ないレベルであったものの、低温定着性が劣る結果であった。結果を表3、表4に示す。
(比較例3)
磁性トナー22を使用し、実施例1と同様の条件で画出し及び耐久性評価を行った。その結果、高温高湿環境下で耐久後のカブリ、画質が劣る結果であった。また、常温常湿環境下での保存安定性が劣る結果であった。結果を表3、表4に示す。