JP3907418B2 - トナー、トナーの製造方法、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

トナー、トナーの製造方法、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法のごとき画像形成方法に用いられるトナー、該トナーの製造方法、該トナーを用いる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁性を有するトナー及び画像形成方法に関しては多くの提案がなされている。
【0003】
米国特許第3,909,258号明細書には電気的に導電性を有する磁性トナーを用いて現像する方法が提案されている。これは内部に磁性を有する円筒状の導電性スリーブ上に導電性磁性トナーを支持し、これを静電潜像に接触せしめ現像するものである。この際、現像部において、記録体表面とスリーブ表面の間にトナー粒子により導電路が形成され、この導電路を経てスリーブよりトナー粒子に電荷が導かれ、静電像の画像部との間のクーロン力によりトナー粒子が画像部に付着して現像される。この導電性磁性トナーを用いる現像方法は従来の二成分現像方法にまつわる問題点を回避した優れた方法であるが、反面トナーが導電性であるため、現像した画像を、記録体から普通紙等の最終的な支持部材へ静電的に転写することが困難であるという問題を有している。
【0004】
静電的に転写することが可能な高抵抗の磁性トナーを用いる現像方法として、トナー粒子の誘電分極を利用した現像方法がある。しかし、かかる方法は本質的に現像速度がおそい、現像画像の濃度が十分に得られていない等の問題点を有しており、実用上困難である。
【0005】
高抵抗の絶縁性の磁性トナーを用いるその他の現像方法として、トナー粒子相互の摩擦、トナー粒子とスリーブ等との摩擦等によりトナー粒子を摩擦帯電し、これを静電像保持部材に接触して現像する方法が知られている。しかしこの方法は、トナー粒子と摩擦部材との接触回数が少なく、また、用いられる磁性トナーはトナー粒子表面に磁性粉体が多く露出しているため、摩擦帯電が不十分となりやすく帯電不良による画像不良などの問題があった。
【0006】
さらに、特開昭55−18656号公報等において、ジャンピング現像方法が提案されている。これはスリーブ上に磁性トナーを極めて薄く塗布し、これを摩擦帯電し、次いでこれを静電像に極めて近接して現像するものである。この方法は、磁性トナーをスリーブ上に薄く塗布することによりスリーブとトナーの接触する機会を増し、十分な摩擦帯電を可能にしている点で優れた方法である。しかしながら、絶縁性磁性トナーを用いる現像方法には、用いる絶縁性磁性トナーに関わる不安定要素がある。それは、絶縁性磁性トナー中には微粉末状の磁性粉体が相当量混合分散されており、該磁性粉体の一部がトナー粒子の表面に露出しているため、磁性トナーの流動性及び摩擦帯電性に影響し、結果として、磁性トナーの現像特性、耐久性等の磁性トナーに要求される種々の特性の変動または劣化を引き起こすというものである。
【0007】
従来の磁性粉体を含有する磁性トナーを用いた場合に、上述した問題が生じてしまうのは、磁性トナーの表面に磁性粉体が露出していることがその大きな原因と考えられる。すなわち、磁性トナーの表面に、トナーを構成する樹脂に比して相対的に抵抗の低い磁性粉体が露出することにより、トナー帯電性能の低下、トナー流動性の低下、その上、長期間の使用においては、トナー同士または規制部材との摺擦による磁性粉体の剥離に伴う画像濃度の低下やスリーブゴーストと呼ばれる濃淡のムラの発生などトナーの劣化などが引き起こされるものと思われる。従来より、磁性トナーに含有される磁性酸化鉄に関する提案は出されているが、いまだ改良すべき点を有している。
【0008】
例えば、特開昭62−279352号公報においては、ケイ素元素を含有する磁性酸化鉄を含有する磁性トナーが提案されている。かかる磁性酸化鉄は、意識的にケイ素元素を磁性酸化鉄内部に存在させているが、該磁性酸化鉄を含有する磁性トナーの流動性には、いまだ改良すべき点を有している。
【0009】
また、特公平3−9045号公報においては、ケイ酸塩を添加することで、磁性酸化鉄の形状を球形に制御する提案がされている。この方法で得られた磁性酸化鉄は、粒子形状の制御のためにケイ酸塩を使用するため磁性酸化鉄内部にケイ素元素が多く分布し、磁性酸化鉄表面におけるケイ素元素の存在量が少なく、磁性酸化鉄の平滑度が高いため、磁性トナーの流動性はある程度改良されるが、磁性トナーを構成する結着樹脂と磁性酸化鉄との密着性が不十分である。
【0010】
また、特開昭61−34070号公報においては、四三酸化鉄への酸化反応中のヒドロシソケイ酸塩溶液を添加して四三酸化鉄の製造方法が提案されている。この方法による四三酸化鉄は、表面近傍にSi元素を有するものの、Si元素が四三酸化鉄表面近傍に層を成して存在し、表面が摩擦のごとき機械的衝撃に対して弱いという問題点を有している。
【0011】
一方、トナーは、結着樹脂、着色剤等を溶融混合し、均一に分散した後、微粉砕装置により粉砕し、分級機により分級して、所望の粒径を有するトナーとして製造(粉砕法)されているが、この方法では、トナーの微小粒径化には材料の選択範囲に制限がある。例えば、樹脂着色剤分散体が充分に脆く、経済的に使用可能な製造装置で微粉砕し得るものでなくてはならない。この要求から、樹脂着色剤分散体を脆くするため、この樹脂着色剤分散体を実際に高速で微粉砕する場合に、広い粒径範囲の粒子が形成され易く、特に比較的大きな割合の微粒子(過度に粉砕された粒子)が含まれるという問題が生ずる。更に、このように脆性の高い材料は、複写機等において現像用トナーとして使用する際、しばしば、更に微粉砕ないし粉化を受ける。
【0012】
また、粉砕法によるトナーの製造では、磁性粉または着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合いによっては、かぶりの増大、画像濃度の低下の原因となる。さらに、粉砕法は、本質的に、トナーの表面に磁性酸化鉄粒子が露出してしまうため、トナーの流動性や過酷環境下での帯電安定性にどうしても問題が残る。
【0013】
すなわち、粉砕法においては、高精彩、高画質化で要求されるトナーの微粒子化に限界があり、それに伴い粉体特性、特にトナーの均一帯電性および流動性が著しく減衰する。
【0014】
ところで、トナーの小粒径化に伴い、用いられる磁性材料も微粒子化の道を必然的にたどってきている。例えば着色剤としても働き汎用性の高い磁性材料であるマグネタイトにおいても、粒径が細かい方が着色力が高く、また、小粒径のトナーを製造する際、個々のトナー粒子に均一な量を含有させることが粒径が細かい方が確率的に有利と推察される。しかしながらマグネタイトは一般に、微粒子化による表面積の増大に伴い残留磁化が上昇する性質を持つ。即ち、着色力の高い小粒径のマグネタイトを用いると、トナー製造中にマグネタイトが磁気凝集を起こす場合があり、トナー中のマグネタイトの分散性が悪化して現像性に問題が生じることになる。加えて、トナー粒子としての残留磁化も上昇するため、トナー粒子の磁気凝集による流動性の悪化、さらには、磁性一成分現像方法においてはスリーブからの磁気的拘束力が増大するため現像性の低下も引き起こす。しかも、長期使用に伴い現像性の不良なトナーが現像されずに蓄積していくため、画像濃度の低下など様々な問題が生じる。すなわち、小粒径化されていく磁性トナーの性能に大きく係わる今後のキー技術として、磁気特性を制御した微粒径マグネタイトのトナー中への均一分散が大きなウェイトを占める。
【0015】
トナーの磁気特性に着目した提案として、特公平7−60273号公報には、特定の粒度分布に分級した、トナーの残留磁化が1〜5emu/g(Am2/kg)の粉砕法による小粒径トナーが開示されている。また、特許2662410号公報には、残留磁化が2.7〜5.5emu/gであり、結着樹脂の分子量分布が少なくとも2つ以上のピークを有する粉砕トナーが開示されている。しかし、これらの公報に記載の磁性トナーは粉砕トナーであり、前述したようにトナー粒子表面の磁性粉体の露出を抑えることが困難であるとともに、磁性粉体の分散性にも問題が有り、トナーの流動性や過酷環境下での帯電安定性に問題が残る。また、トナーの円形度も低く、転写性にも大きな問題を生じる。さらに、これらの公報では、画像形成装置のトナー層厚規制部材が、トナーに負荷のかかりにくい磁気ブレードを使用した実施例しか開示されておらず、トナーの帯電性向上のために、例えばトナー担持体に当接された弾性ブレードの様に、トナーに負荷のかかる層厚規制部材を使用した場合の、トナー残留磁化の画質への影響については全く不明である。
【0016】
前述の様な粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、更には上記のごとき要求を満たすため懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。懸濁重合によるトナー(以後、重合トナー)は、トナーの微粒子化が容易に可能であり、更には、得られるトナーの形状が球状であることから流動性に優れ、高画質化に有利となる。しかしながら、この重合トナー中に磁性粉体を含有することにより、その流動性及び帯電特性は著しく低下する。これは、磁性粉体は一般的に親水性であるためにトナー表面に存在しやすいためであり、この問題を解決するためには磁性粉体の有する表面特性の改質が重要となる。
【0017】
一方、重合トナー中の磁性粉体の分散性向上のための表面改質に関しては、数多く提案されている。例えば、特開昭59−200254号公報、特開昭59−200256号公報、特開昭59−200257号公報、特開昭59−224102号公報等に磁性粉体の各種シランカップリング剤処理技術が提案されており、特開昭63−250660号公報、特開平10−239897号公報では、ケイ素元素含有磁性粉体をシランカップリング剤で処理する技術が開示されている。しかしながら、これらの処理によりトナー中の分散性はある程度向上するものの、磁性粉体表面の疎水化を均一に行うことが困難であるという問題があり、したがって、磁性粉体同士の合一や疎水化されていない磁性粉体粒子の発生を避けることができず、トナー中の分散性を良好なレベルにまで向上させるには不十分であった。
【0018】
ところで、特開平10−20548号公報には、重合開始剤として分子量250以下の非芳香族系有機過酸化物を用いた重合トナーの製造方法が開示されている。該公報に従えば、重合開始剤の分解物や残存モノマーがある程度少なく、臭気の少ないトナーを製造することができる。しかし、該公報に記載されているのは着色剤としてカーボンブラックを用いたものであり、磁性粉体を用いた場合の効果については全く不明である。また、残存モノマー量もまだ依然として多く、さらなる改善が必要である。さらに、懸濁重合後、懸濁液の濾過を行うことなく引き続いて懸濁液に酸を加えてトナー粒子の酸洗浄を行っているため、重合開始剤の分解物であるカルボン酸は廃水に溶出することはなく、重合時に生成した量がほぼそのままトナー粒子中に残存していて、トナー加熱時の臭気のみならず、定着性、帯電性にも問題が残っている。
【0019】
また、特開平9−43904号公報には、疎水化処理磁性粉体を含有する重合トナーを、過酸化物系重合開始剤であるビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを用いて製造する方法が開示されている。しかし、該公報には、磁性粉体の疎水化処理方法については全く記載が無く、疎水化処理が完全に行われているか不明である。また、該公報は、アゾ系の重合開始剤でコア部分の粒子を製造後、上記過酸化物系重合開始剤を用いてシェル部分を形成・重合させることを開示しているものの、磁性粉体、スチレンモノマー、過酸化物系重合開始剤が共存した状態でトナー粒子を製造した場合の効果については不明である。また、該公報のトナーは、磁性粉体を結着樹脂100質量部に対して46質量部しか添加されておらず、さらにこの粒子にシェル部分を形成したものであるため、磁性粉体は粒子内部にほぼ完全に内包化されていることが推察される。
【0020】
また、該公報ではトナーを二成分現像剤として利用しているため、本発明のトナーとは本質的に性質の異なるものである。
【0021】
さらに、特公平4−73442号公報には、分散剤として部分ケン化ポリビニルアルコールを用いて、トナー用の樹脂を懸濁重合した後に、アルカリ金属の水酸化物を重合系に添加、加熱後、引き続いて濾過を行うことにより、原料由来または重合時に副生した酸性不純物の除去を行う方法が開示されている。しかし、重合トナーの製造に関しては何ら記載がなく、このアルカリ処理を磁性粉体を含有する重合トナーに適用した時に、どの様な効果が発現するかは全く不明である。
【0022】
プリンター装置はLED、レーザービームプリンターが最近の市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度即ち、従来240、300dpiであったものが400、600、800dpiとなってきている。従って現像方式もこれにともなって、より高精細なものが要求されてきている。また、複写機においても高機能化が進んでおり、そのためデジタル化の方向に進みつつある。この方向は、静電潜像をレーザーで形成する方法が主である為、やはり高解像度の方向に進んでいる。ここでもプリンターと同様に高解像・高精細の現像方式が要求されてきており、特開平1−112253号公報、特開平2−284158号公報などでは粒径の小さいトナーが提案されているが、前述した種々の課題は解決が十分なされていない。
【0023】
更に、静電潜像を現像するためのトナーとしては、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤、及びキャリアを必要としない一成分系トナー(磁性トナー、非磁性トナー)が知られている。二成分系では主にキャリアとトナーの摩擦によって、一成分系では主にトナーと帯電付与部材との摩擦によって、トナーへの帯電が行われる。また、トナーとしては、二成分系、一成分系の差異によらず、トナー及びトナーの流動特性、帯電特性等を改善する目的でトナー母粒子に外部添加剤として無機微粉体を添加する方法が提案され、広く用いられている。
【0024】
例えば、特開平5−66608号公報、特開平4−9860号公報等には、疎水化処理を施した無機微粉体若しくは疎水化処理した後、さらにシリコーンオイル等で処理した無機微粉体が記載されており、また特開昭61−249059号公報、特開平4−264453号公報、特開平5−346682号公報には、疎水化処理無機微粉体とシリコーンオイル処理無機微粉体を併用添加する方法が記載されている。
【0025】
また、外部添加剤として導電性微粉体を添加する方法は数多く提案されている。例えば、導電性微粉体としてのカーボンブラックは、トナーに導電性を付与するため、またはトナーの過剰な帯電を抑制しトリボ分布を均一化させるため等の目的で、トナー表面に付着または固着させる外部添加剤として広く知られている。また、特開昭57−151952号公報、特開昭59−168458号公報、特開昭60−69660号公報では、高抵抗磁性トナーにそれぞれ酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタンの導電性微粉体を外部添加することが開示されている。また、特開昭56−142540号公報では、高抵抗磁性トナーに酸化鉄、鉄粉、フェライトの如き導電性磁性粒子を添加し、導電性磁性粒子に磁性トナーへの電荷誘導を促進させることで、現像性と転写性を両立させたトナーが提案されている。更に、特開昭61−275864号公報、特開昭62−258472号公報、特開昭61−141452号公報、特開平02−120865号公報では、トナーにグラファイト、マグネタイト、ポリピロール導電性微粉体、ポリアニリン導電性微粉体を添加することが開示されている。その他、多種多様な導電性微粉体をトナーに添加することが知られている。
【0026】
従来、画像形成方法としては、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法など多数の方法が知られている。例えば、電子写真法は、一般には潜像担持体としての光導電性物質を利用した感光体上に、種々の手段により電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像を行って可視像とし、必要に応じて紙などの記録媒体にトナー像を転写した後、熱・圧力等により記録媒体上にトナー画像を定着して画像を得るものである。
【0027】
一般には、転写後に像担持体上に転写材に転写せずに残余したトナーが、種々の方法でクリーニングされ廃トナーとして廃トナー容器に蓄えられるクリーニング工程を経て、上述の工程が繰り返される画像形成法が用いられている。このクリーニング工程については、従来、ブレードクリーニング、ファーブラシクリーニング、ローラークリーニング等が用いられている。いずれの方法も力学的に転写残余のトナーを掻き落とすか、または、せき止めて廃トナー容器へと捕集するものであった。そのため、このような部材が像担持体表面に押し当てられることに起因する問題が生じている。例えば、部材を強く押し当てることにより像担持体を摩耗させ短命化することが挙げられる。装置面からみると、かかるクリーニング装置を具備するために装置が必然的に大きくなり装置のコンパクト化を目指すときのネックになっている。更には、省資源、廃棄物削減の観点及びトナーの有効活用という観点で廃トナーのでないシステム、定着性、耐オフセット性にすぐれたシステムが望まれている。
【0028】
これに対し、廃トナーのでないシステムとして、現像兼クリーニング又はクリーナーレスと呼ばれる技術も提案されている。しかしながら、従来の現像兼クリーニング又はクリーナーレスに関する技術の開示は、特開平5−2287号公報にあるように画像上に転写残余のトナーの影響によるポジメモリ、ネガメモリなどに焦点を当てたものが主であり、電子写真の利用が進み、様々な転写材に対してトナー像を転写する必要性がでてきた今日において、様々な記録媒体に対応できるものではなく、満足するものではなかった。
【0029】
クリーナーレスに関連する技術の開示を行っているものに、特開昭59−133573号公報、特開昭62−203182号公報、特開昭63−133179号公報、特開昭64−20587号公報、特開平2−302772号公報、特開平5−2289号公報、特開平5−53482号公報、特開平5−61383号公報等があるが、望ましい画像形成方法については述べられておらず、トナー構成についても言及されていない。
【0030】
また、トナーによって可視像を現像する現像工程についても種々の方法が知られている。例えば、静電潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、加圧現像法、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤を用いる磁気ブラシ現像法等が知られている。トナー担持体が像担持体と非接触でトナーをトナー担持体から像担持体へ飛翔させる非接触一成分現像法、磁性トナーを用い中心に磁極を配した回転スリーブを用い感光体表面とスリーブ表面の間を電界にて飛翔させる磁性一成分現像方法、更にはトナー担持体を像担持体に圧接させ電界によってトナーを転移させる接触一成分現像法も用いられている。
【0031】
このように種々の現像方法がある中で、本質的にクリーニング装置を有さない現像兼クリーニングでは、像担持体表面をトナー及びトナー担持体により擦る構成が必須とされてきたため、適用するのに好適な現像方法として、トナーが像担持体に接触する接触現像方法が多く検討されてきた。これは、現像手段において転写残トナーを回収するために、トナーが像担持体に接触し、擦る構成が有利であると考えられるためである。しかしながら、接触現像方法を適用した現像兼クリーニング又はクリーナーレスプロセスでは、長期間使用によるトナー劣化、トナー担持体表面劣化、感光体表面劣化又は磨耗等を引き起こしてしまいやすく、耐久特性に対して充分な解決がなされていない。そのため、非接触現像方法による現像兼クリーニング方法が望まれている。
【0032】
また、電子写真装置や静電記録装置等に用いられる画像形成方法において、電子写真感光体・静電記録誘電体等の像担持体上に静電潜像を形成する方法についても様々な方法が知られている。
【0033】
例えば、電子写真法では、像担持体としての光導電性物質を利用した感光体上を所要の極性・電位に一様に帯電処理した後に、画像パターン露光を施すことにより静電潜像を形成する方法が一般的である。
【0034】
従来、潜像担持体を所要の極性・電位に一様に帯電処理(除電処理も含む)する帯電装置としてはコロナ帯電器(コロナ放電器)がよく使用されている。コロナ帯電器は非接触型の帯電装置であり、ワイヤ電極等の放電電極と該放電電極を囲むシールド電極を備え、放電開口部を被帯電体である像担持体に対向させて非接触に配設し、放電電極とシールド電極に高圧を印加することにより生じる放電電流(コロナシャワー)に像担持体面をさらすことで像担持体面を所定の電位に帯電させるものである。
【0035】
近年では、像担持体等の被帯電体の帯電装置として、コロナ帯電器に比べて低オゾン・低電力等の利点があることから接触帯電装置の提案が多くなされ、また実用化もされている。接触帯電装置は、像担持体等の被帯電体に、ローラ型(帯電ローラ)、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型等の導電性の帯電部材(接触帯電部材・接触帯電器)を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して被帯電体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。
【0036】
接触帯電の帯電機構(帯電のメカニズム、帯電原理)には、(1)放電帯電機構と(2)直接注入帯電機構の二種類の帯電機構が混在しており、どちらが支配的であるかにより各々の特性が現れる。
【0037】
(1)放電帯電機構
接触帯電部材と被帯電体との微小間隙に生じる放電現象により被帯電体表面を帯電する機構である。放電帯電機構は接触帯電部材と被帯電体に一定の放電しきい値を有するため、帯電電位より大きな電圧を接触帯電部材に印加する必要がある。また、コロナ帯電器に比べれば発生量は格段に少ないが、放電生成物が原理的に生じてしまうため、オゾンなど活性イオンによる弊害は避けられない。
【0038】
(2)直接注入帯電機構
接触帯電部材から被帯電体に直接に電荷が注入されることで被帯電体表面が帯電する系である。直接帯電、または注入帯電、または電荷注入帯電とも称される。より詳しくは、中抵抗の接触帯電部材が被帯電体表面に接触して、放電現象を介さずに、つまり放電を基本的に用いないで被帯電体表面に直接電荷注入を行うものである。よって、接触帯電部材への印加電圧が放電閾値以下の印加電圧であっても、被帯電体を印加電圧相当の電位に帯電することができる。この帯電機構はイオンの発生を伴わないため、放電生成物による弊害は生じない。しかし、直接注入帯電であるため、接触帯電部材の被帯電体への接触性が帯電性に大きく効いてくる。そこでより高い頻度で被帯電体に接触する構成をとる必要があり、接触帯電部材はより密な接触点を持つ、被帯電体との速度差を多く持つ等の構成が必要となる。
【0039】
接触帯電装置としては、接触帯電部材として導電ローラ(帯電ローラ)を用いたローラ帯電方式が帯電の安定性という点で好ましく、広く用いられている。従来のローラ帯電における帯電機構は前記(1)の放電帯電機構が支配的である。
【0040】
帯電ローラは、導電または中抵抗のゴム材または発泡体を用いて作成される。さらにこれらを積層して所望の特性を得たものもある。帯電ローラは被帯電体との一定の接触状態を得るために弾性を持たせているが、そのため摩擦抵抗が大きく、多くの場合、被帯電体に従動または若干の速度差をもって駆動される。従って、直接注入帯電しようとしても、絶対的帯電能力の低下や接触性の不足やローラ形状による接触ムラや被帯電体の付着物による帯電ムラは避けられない。
【0041】
図7は電子写真法における接触帯電の帯電効率例を表したグラフである。横軸に接触帯電部材に印加したバイアス、縦軸にはその時得られた被帯電体(以下、感光体と記す)帯電電位を表すものである。ローラ帯電の場合の帯電特性はAで表される。即ち凡そ−500Vの放電閾値を過ぎてから帯電が始まる。従って−500Vに帯電する場合は、−1000Vの直流電圧を印加するか、または、−500V直流の帯電電圧に加えて、放電閾値以上の電位差を常に持つようにピーク間電圧1200Vの交流電圧を印加して感光体電位を帯電電位に収束させる方法が一般的である。
【0042】
より具体的に説明すると、厚さ25μmの感光層を有するOPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、約640V以上の電圧を印加すれば感光体の表面電位が上昇し始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体表面電位が増加する。この閾値電圧を放電開始電圧Vthと定義する。つまり、電子写真に必要とされる感光体表面電位Vdを得るためには帯電ローラにはVd+Vthという必要とされる以上の直流(DC)電圧が必要となる。このようにして直流電圧のみを接触帯電部材に印加して帯電を行う方法を「DC帯電方式」と称する。しかし、DC帯電においては環境変動等によって接触帯電部材の抵抗値が変動するため、また、感光体が削れることによって膜厚が変化するとVthが変動するため、感光体の電位を所望の値にすることが難しい。
【0043】
このため、更なる帯電の均一化を図るために特開昭63−149669号公報に開示されるように、所望のVdに相当するDC電圧に2×Vth以上のピーク間電圧を持つ交流(AC)電圧を重畳した電圧を接触帯電部材に印加する「AC帯電方式」が用いられることが提案されている。これは、ACによる電位のならし効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央であるVdに収束し、環境等の外乱には影響されることはない。ところが、このような接触帯電装置においても、その本質的な帯電機構は、接触帯電部材から感光体への放電現象を用いているため、先に述べたように接触帯電部材に印加する電圧は感光体表面電位以上の値が必要とされ、微量のオゾンも発生してしまう。
【0044】
また、帯電均一化のためにAC帯電を行った場合にはさらなるオゾンの発生、AC電圧の電界による接触帯電部材と感光体の振動騒音(AC帯電音)の発生、また、放電による感光体表面の劣化等が顕著になり、新たな問題点となっている。
【0045】
一方、ファーブラシ帯電は、接触帯電部材として導電性繊維のブラシ部を有する部材(ファーブラシ帯電器)を用い、その導電性繊維ブラシ部を被帯電体としての感光体に接触させ、所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。このファーブラシ帯電もその帯電機構は前記(1)の放電帯電機構が支配的である。
【0046】
ファーブラシ帯電器は固定タイプとロールタイプが実用化されている。中抵抗の繊維を基布に折り込みパイル状に形成したものを電極に接着したものが固定タイプで、ロールタイプはパイルを芯金に巻き付けて形成される。繊維密度としては100本/mm2程度のものが比較的容易に得られるが、直接注入帯電により十分均一な帯電を行うにはそれでも接触性は不十分であり、ファーブラシ帯電器を用いた直接注入帯電により十分均一な帯電を行うには、感光体に対して機械構成としては困難なほどに速度差を持たせる必要があり、現実的ではない。
【0047】
このファーブラシ帯電の直流電圧印加時の帯電特性は図7のBに示される如き特性をとる。従って、ファーブラシ帯電では、固定タイプ、ロールタイプのどちらにもおいても、多くの場合、高い帯電バイアスを印加し、放電現象を起こしながら帯電を行っている。
【0048】
これらに対し、磁気ブラシ帯電は、接触帯電部材として導電性磁性粒子をマグネットロール等で磁気拘束してブラシ状に形成した磁気ブラシ部を有する部材(磁気ブラシ帯電器)を用い、その磁気ブラシ部を被帯電体としての像担持体に接触させ、所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。
【0049】
この磁気ブラシ帯電の場合はその帯電機構は前記(2)の直接注入帯電機構が支配的である。磁気ブラシ部を構成させる導電性磁性粒子として粒径5〜50μmのものを用い、像担持体と十分速度差を設けることで、均一な直接注入帯電を可能にする。
【0050】
磁気ブラシ帯電では、図7の帯電特性グラフのCにあるように、印加バイアスとほぼ比例した帯電電位を得ることが可能になる。しかしながら、機器構成が複雑であること、磁気ブラシ部を構成している導電性磁性粒子が脱落して像担持体に付着する等の弊害もある。
【0051】
また、接触帯電方法や接触転写方法に関するものであるが、像担持体に導電性弾性ローラを当接し、該導電性ローラに電圧を印加しながら該像担持体表面を一様に帯電し、次いで露光、現像工程によってトナー像を得た後、該像担持体に電圧を印加した別の導電性ローラを押圧しながらその間に転写材を通過させ、該像担持体上のトナー像を転写材に転写した後、定着工程を経て複写画像を得る方法が開示されている(特開昭63−149669号公報、特開平2−123385号公報)。
【0052】
しかしながら、接触帯電方法または接触転写方法においては、コロナ放電を用いる場合とは異なり、憂慮すべき問題点がある。具体的には、まず接触転写方法の場合、転写部材が転写時に転写部材を介して像担持体に当接されるため、像担持体上に形成されたトナー像を転写材へ転写する際にトナー像が圧接され、所謂転写中抜けと称される部分的な転写不良の問題が生じる。加えて、近年の技術の方向として、より高解像度で高精細の現像方式が要求されてきており、こういった要求にこたえるために、トナーの粒径を小さくする方向に進んでいるが、このようにトナー粒径が小さくなるほど、転写工程でトナー粒子にかかるクーロン力に比して、トナー粒子の像担持体への付着力(鏡像力やファンデルワールス力など)が大きくなり、結果として転写残トナーが増加する傾向にある。
【0053】
一方、接触帯電方法においては、帯電部材が押接圧を持って像担持体表面に圧接されている。そのため、未転写の残留トナー、すなわち転写残トナーが像担持体表面に押し付けられることにより、像担持体表面の削れ及び摩耗が生じやすく、または削れた部分が発生核となりトナー融着が発生しやすくなり、この傾向は転写残トナーが多い程顕著となって現れる。
【0054】
こういった像担持体の削れやトナー融着は、像担持体の静電潜像形成に重大な欠損を生じさせる。具体的には、像担持体の削れが生じると、一次帯電ができなくなるため、削れた部分がハーフトーン画像上に黒く現れ、逆にトナー融着は露光による潜像形成をできなくするためハーフトーン画像上に白く現れる。さらにはトナーの転写性も悪化させてしまうことになる。そのため、前述の転写不良と相まって、著しい画像欠陥となって現れ、場合によっては相乗的に画質の悪化が早まることとなる。
【0055】
このような像担持体の削れや転写不良という問題は、不定形トナー粒子から成る現像剤を用いた場合に発生しやすい。これは、不定形トナーの転写性が低いことに加え、トナー粒子のエッジ部が像担持体表面を引っ掻きやすいためと思われる。
【0056】
加えて、削れの問題はトナー粒子表面に磁性粉体が露出している磁性現像剤を用いる場合に、特に顕著となる。これは露出した磁性粉体が感光体に直接圧接されることを考えれば容易に納得されることである。
【0057】
さらには、転写残トナーが多くなると接触帯電部材と感光体とが十分な接触を保つことが難しくなり、帯電性が悪化するため、反転現像などにおいては非画像部へのトナーの転移、すなわちカブリが発生しやすくなる。この現象は部材の抵抗が上がりやすい低湿下においてよく見受けられる。
【0058】
このように、環境を考慮すると非常に好ましい接触帯電方法及び接触転写方法を用いる画像形成方法においては、転写性が高く、かつ、像担持体の削れやトナー融着の起こりにくい磁性現像剤の開発が望まれている。
【0059】
一方、これらの接触帯電方法を現像兼クリーニング方法、クリーナーレス画像形成方法に適用した場合を考える。
【0060】
現像兼クリーニング方法、クリーナーレス画像形成方法では、クリーニング部材を有さないために像担持体上に残余する転写残トナーが、そのまま接触帯電部材と接触し、付着または混入する。また、放電帯電機構が支配的である帯電方法の場合には、放電エネルギーによるトナー劣化に起因する帯電部材への付着性の悪化も生ずる。一般的に用いられている絶縁性トナーが接触帯電部材に付着または混入すると、帯電性の低下が起こる。
【0061】
この被帯電体の帯電性の低下は、放電帯電機構が支配的である帯電方法の場合には、接触帯電部材表面に付着したトナー層が放電電圧を阻害する抵抗となるあたりから急激に起こる。これに対し、直接注入帯電機構が支配的である帯電方法の場合には、付着または混入した転写残トナーが接触帯電部材表面と被帯電体との接触確率を低下させることにより被帯電体の帯電性が低下する。この被帯電体の一様帯電性の低下は、良好な静電潜像の形成を妨げ、結果、画像濃度の低下や、カブリ、画像ムラを増大させる。
【0062】
また、現像兼クリーニング方法、クリーナーレス画像形成方法では、像担持体上の転写残トナーの帯電極性及び帯電量を制御し、現像工程で安定して転写残トナーを回収し、回収トナーが現像特性を悪化させないようにすることがポイントとなり、転写残トナーの帯電極性及び帯電量の制御を帯電部材によって行うこととなる。
【0063】
これについて具体的に一般的なレーザプリンターを例として説明する。マイナス極性電圧を印加する帯電部材、マイナス帯電性の感光体及びマイナス帯電性のトナーを用いる反転現像の場合、その転写工程において、プラス極性の転写部材によって可視化された像を記録媒体に転写することになるが、転写材の種類(厚み、抵抗、誘電率等の違い)と画像面積等の関係により、転写残余のトナーの帯電極性はプラスからマイナスまで変動する。しかし、マイナス極性の帯電部材によって感光体を帯電させることにより、感光体表面と共に転写残余のトナーを、一様にマイナス側へ帯電極性を揃えることが出来る。
【0064】
これゆえ、現像工程においては、トナーの現像されるべき明部電位部に存在する転写残余のトナーはそのまま感光体上に残り、トナーの現像されるべきでない暗部電位部に存在する転写残トナーは、現像電界の関係上トナー担持体の方に引き寄せられ、暗部電位部に残留することなく回収される。すなわち、帯電部材によって感光体の帯電と同時に転写残余のトナーの帯電極性を制御することにより、現像兼クリーニング、クリーナーレス画像形成方法が成立する。
【0065】
しかしながら、転写残トナーが接触帯電部材のトナー帯電極性の制御能力以上に、接触帯電部材に付着または混入すると、一様に転写残トナーの帯電極性を揃えることができず、現像部材によってトナーを回収することが困難となる。また、トナー担持体に摺擦等の機械的な力によって回収されたとしても、転写残トナーの帯電が均一に揃えられていないと、トナー担持体上のトナーの帯電性に悪影響を及ぼし、現像特性を低下させる。
【0066】
すなわち、現像兼クリーニング、クリーナーレス画像形成方法においては、転写残トナーの帯電部材通過時の帯電制御特性及び帯電部材への付着・混入特性が、耐久特性、画像品質特性に密接につながっている。
【0067】
帯電ムラを防止し安定した均一帯電を行うために、接触帯電部材に被帯電体面との接触面に粉末を塗布する構成も特公平7−99442号公報に開示されている。しかしながら、接触帯電部材(帯電ローラ)が被帯電体(感光体)に従動回転(速度差駆動なし)であり、スコロトロン等のコロナ帯電器と比べるとオゾン生成物の発生は格段に少なくなっているものの、帯電原理は前述のローラ帯電の場合と同様に、依然として放電帯電機構を主としている。特に、より安定した帯電均一性を得るためにはDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加するために、放電によるオゾン生成物の発生はより多くなってしまう。よって、長期に装置を使用した場合には、オゾン生成物による画像流れ等の弊害が現れやすい。更に、クリーナーレスの画像形成装置に適用した場合には、転写残トナーの混入のため塗布した粉末が均一に帯電部材に付着していることが困難となり、均一帯電を行う効果が薄れてしまう。
【0068】
また、特開平5−150539号公報には、接触帯電を用いた画像形成方法において、長時間画像形成を繰り返すうちにブレードクリーニングしきれなかったトナー粒子やシリカ微粒子が帯電手段の表面に付着・蓄積することによる帯電阻害を防止するために、トナー中に、少なくとも顕画粒子と、顕画粒子より小さい平均粒径を有する導電性微粉体を含有することが開示されている。しかし、ここで用いられた接触帯電または近接帯電は放電帯電機構によるもので、直接注入帯電機構ではなく、放電帯電による前述の問題がある。更に、クリーナーレスの画像形成装置へ適用した場合には、クリーニング機構を有する場合と比較して多量の導電性微粉体及び転写残トナーが帯電工程を通過することによる帯電性への影響、これら多量の導電性微粉体及び転写残トナーの現像工程における回収性、回収された導電性微粉体及び転写残トナーによるトナーの現像特性への影響に関して何ら考慮されていない。更に、接触帯電に直接注入帯電機構を適用した場合には、導電性微粉体が接触帯電部材に必要量供給されず、転写残トナーの影響による帯電不良を生じてしまう。
【0069】
また、近接帯電では、多量の導電性微粉体及び転写残トナーにより感光体を均一帯電することが困難であり、転写残トナーのパターンを均す効果が得られないため、転写残トナーのパターン画像露光を遮光するためのパターンゴーストを生ずる。更に、画像形成中の電源の瞬断または紙詰まり時にはトナーによる機内汚染が著しくなる。
【0070】
また、現像兼クリーニングを適用した画像形成方法において、転写残トナーの帯電部材通過時の帯電制御特性を向上させることで現像兼クリーニング性能を向上させるものとして、特開平11−15206号公報では、特定のカーボンブラック及び特定のアゾ系鉄化合物を含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーを用いる画像形成方法が提案されている。更に、現像兼クリーニングを適用した画像形成方法において、トナーの形状係数を規定した転写効率に優れたトナーにより、転写残トナー量を減少させることで現像兼クリーニング性能を向上させることも提案されている。しかしながら、ここで用いられた接触帯電も放電帯電機構によるもので、直接注入帯電機構ではなく、放電帯電による前述の問題がある。更に、これらの提案は、接触帯電部材の転写残トナーによる帯電性低下を抑制する効果はあっても、帯電性を積極的に高める効果は期待できない。
【0071】
更には、市販の電子写真プリンターの中には、転写工程と帯電工程の間に感光体に当接するローラ部材を用い、現像工程中での転写残トナー回収性を補助または制御する現像兼クリーニングを適用した画像形成装置もある。このような画像形成装置は、良好な現像兼クリーニング性を示し、廃トナー量を大幅に減らすことができるが、コストが高くなり、小型化の点でも現像兼クリーニングの利点を損ねている。
【0072】
これらに対し、特開平10−307456号公報において、トナー粒子及びトナー粒径の1/2以下の粒径を有する導電性を有する帯電促進粒子を含むトナーを直接注入帯電機構を用いた現像兼クリーニングを利用する画像形成装置が開示されている。この提案によると、放電生成物を生ずることなく、廃トナー量を大幅に減らすことが可能な、低コストで小型化に有利な現像兼クリーニングを適用した画像形成装置が得られ、帯電不良、画像露光の遮光または拡散を生じない良好な画像が得られる。
【0073】
また、特開平10−307421号公報においては、トナー粒径の1/50〜1/2の粒径を有する導電性微粉体を含むトナーを、直接注入帯電機構を利用した現像兼クリーニングを適用した画像形成方法に適用し、導電性微粉体に転写促進効果を持たせた画像形成装置が開示されている。
【0074】
更に、特開平10−307455号公報では導電性微粉体の粒径を構成画素1画素の大きさ以下とすること、及びより良好な帯電均一性を得るために導電性微粉体の粒径を10nm〜50μmとすることが記載されている。
【0075】
特開平10−307457号公報では人の視覚特性を考慮して帯電不良部の画像への影響を視覚的に認識されにくい状態とするために導電性微粉体を約5μm以下、好ましくは20nm〜5μmとすることが記載されている。
【0076】
更に、特開平10−307458号公報には、導電性微粉体の粒径はトナー粒径以下とすることで、トナーの現像を阻害したり、現像バイアスが導電性微粉体を介してリークしたりすることを防止し、画像の欠陥を抑制するということが記載されており、且つ導電性微粉体の粒径を0.1μmより大きく設定することにより、像担持体に導電性微粉体が埋め込まれにくくして、埋め込まれた微粉体が露光光を遮光するといった弊害も解決している。
【0077】
特開平10−307456号公報には、トナーに導電性微粉体を外部添加し、少なくとも可撓性の接触帯電部材と像担持体との当接部に前記トナー中に含有の導電性微粉体が、現像工程で像担持体に付着し、転写工程の後も像担持体上に残留し持ち運ばれて介在していることで、帯電不良、画像露光の遮光を生じない良好な画像が得られる現像兼クリーニングを適用した画像形成装置が開示されている。
【0078】
しかしながら、これらの提案も長期にわたる繰り返し使用における安定した性能、解像性を高めるためにより粒径の小さなトナー粒子を用いる場合の性能に更なる改良の余地を有するものであった。
【0079】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決することにある。
【0080】
本発明の目的は、プリントアウト時に不快な臭気が無く、比較的温度の高温高湿環境下においても迅速な帯電速度を有するトナーを提供することにある。
【0081】
本発明の目的は、トナー層厚規制部材や感光体へのトナー融着が生じにくく、多数枚のプリントアウトにおいても高品位な画質を維持できる磁性トナーを提供することにある。
【0082】
また、本発明の目的は、上記トナーを製造する方法を提供することにある。
【0083】
さらに本発明の目的は、上記トナーを用い、放電生成物を生ずることなく、廃トナー量を大幅に減らすことが可能な画像形成方法を提供することにある。
【0084】
また、本発明の目的は、良好な帯電性を安定して得られる現像兼クリーニング或いはクリーナーレスシステムを用いた画像形成を可能とする画像形成方法を提供することにある。
【0085】
また、本発明の目的は、転写性に優れ、転写残トナーの回収性に優れた現像兼クリーニング画像形成を可能とする画像形成方法を提供することにある。
【0086】
本発明は、低コストで小型化に有利な現像兼クリーニング画像形成を可能とし、かつ長期にわたる繰り返し使用においても、帯電不良を生じない良好な画像が得られる画像形成装置を提供することにある。
【0087】
また、本発明の目的は、解像性を高めるためにより粒径の小さなトナー粒子を用いる際においても、良好な画像が安定して得られる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0088】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の目的は、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを有する磁性トナーであって、磁性トナーの平均円形度が、0.970以上であり、前記磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10〜50Am2/kgであり、前記磁性粉体が、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、前記磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される前記磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が、0.001未満であり、前記結着樹脂が、少なくともスチレンモノマーを含む単量体を重合して得られる樹脂を含有しており、前記磁性トナー中の残留スチレンモノマーが、300ppm未満であり、前記磁性トナーの体積平均粒径をCとし、透過型電子顕微鏡を用いた前記磁性トナーの断面観察における磁性粉体と磁性トナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、
D/C≦0.02
の関係を満たすトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とするトナーを提供することにある。
【0089】
さらに本発明の目的は、上記磁性トナーの製造方法、該磁性トナーを用いる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0090】
【発明の実施の形態】
<1>本発明の磁性トナー
本発明の磁性トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子及び無機微粉体を有するトナーである。
【0091】
本発明のトナーの構成材料である結着樹脂は、主としてスチレン系結着樹脂を含有している。
【0092】
該スチレン系結着樹脂は、スチレンモノマーを含む単量体を重合した樹脂であれば特に制限はないが、下記に示す樹脂が挙げられる。例えば、ポリスチレン;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体が挙げられる。
【0093】
また、その他の樹脂を結着樹脂として併用してもよく、その際併用できる樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂が挙げられる。
【0094】
本発明に係る結着樹脂として、上記の如く、スチレン系共重合体と他の樹脂とを併用することもできるが、結着樹脂を構成する全ユニット中50%以上がスチレンに由来するものであることが好ましく、より好ましくは60%以上、更には70%以上が好ましい。
【0095】
上記結着樹脂のガラス転移点温度(Tg)は、50〜70℃であることが好ましく、50℃よりも低いとトナーの保存性が低下し、70℃よりも高いと定着性に劣る傾向がある。
【0096】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、後述するワックスの示差熱分析による吸熱ピークと同様に測定することができる。即ち、ガラス転移温度(Tg)は、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いて、「ASTM D3418−8」に準じて行う。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で測定を行うことにより実施可能である。
【0097】
重合法により本発明の磁性トナーを得る場合は、スチレンを含む重合性単量体組成物を重合することにより得ることができる。重合性単量体は、少なくともスチレンモノマーを含んでいれば特に制限はないが、その他の重合性単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如き単量体を単量体組成物に共存させ、スチレンと共重合すると、前述のTg設定が容易となるため好ましい。
【0098】
該結着樹脂は過酸化物系重合開始剤にて、スチレンを含む単量体を重合させて得られたものであることが好ましい。世の中で広く一般に使用されている重合開始剤としてはアゾ系重合開始剤もあるが、アゾ系重合開始剤のみを用いた場合には本発明の効果は発現されにくい。すなわち、アゾ系重合開始剤は開始剤効率が低く、生成したラジカル種がラジカルカップリングを起こして多量の開始剤分解物を副生し、この分解物は高沸点の液状物もしくは低融点の結晶物であるため製造工程で除去することが非常に困難であり、この分解物はトナー中に多量に残留することになる。この分解物はある程度の極性を有しているため、例えば重合法によりトナーを製造した場合には、トナー粒子の表面近傍に存在しやすく、また、トナー中の磁性粉体を表面近傍に引き連れてくるため、トナー中の磁性粉体の分散不良、定着性の低下、トナーの帯電性能や耐保存性に大きな問題が生じたり、プリントアウト時に分解物の不快な臭気が発生するといった問題を生じたりすることがある。また、トナーに残留するスチレンモノマーについても、過酸化物系重合開始剤を使用した場合に比較して非常に多くなり、充分な精製工程を行わないと、プリントアウト時にモノマー臭を発生することがある。その点、過酸化物系重合開始剤を用いた場合には、開始剤分解物の生成量が少なく、また、分解物のトナーからの除去は比較的容易で、残留スチレンも非常に低く抑えることが可能となり、高品位な画質となり、スチレンモノマーや分解物に起因する臭気が発生も抑制することができる。
【0099】
本発明の磁性トナー中の残留スチレンモノマーは、300ppm未満である。より好ましくは、100ppm未満である。残留スチレンモノマー量が300ppmを超えると、定着時の臭気の発生を完全に防止することはできない。また、比較的温度の高い環境下で長時間プリントアウトを行った際に、トナー内部から残留スチレンモノマーが多く揮発するため、トナーや感光体の帯電速度が低下して、例えば画像濃度の低下が生じたり、カブリに劣るようになりやすい。また、トナー内部から残留スチレンモノマーが出てくる際には、トナー内部に存在するワックスなどをトナー表面につれてくるため、トナーが凝集しやすいものとなってしまう。さらに、高温環境下においては、元来、トナーの熱的、機械的強度の低下が生じやすいため、残留スチレンモノマーが多量に含有されている場合には、トナー担持体、トナー層厚規制部材、および感光体ドラム等へのトナー融着、或いはトナー同士の凝集が生じやすく、高品位な画質が得られにくくなってしまう。
【0100】
本発明の磁性トナーの製造において使用することのできる過酸化物系重合開始剤は、有機系としては、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられ、無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素が挙げられる。これらの中で、モノマーに溶解する有機過酸化物が残留スチレンモノマーの抑制には効果的であり、中でもパーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタールを用いると、磁性粉体の分散も良好となるため好ましい。
【0101】
また、パーオキシエステル及びジアシルパーオキサイドの少なくともいずれかを用いると、併発する水素引き抜き反応による結着樹脂のゲル化が適度となり、低温定着性の観点から有利であり好適に利用される。
【0102】
本発明で使用できる上記有機過酸化物は様々なものがあるが、具体例を挙げれば、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンの如きパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドの如きジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの如きパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンの如きパーオキシケタール;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドの如きジアルキルパーオキサイド;その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートが挙げられる。これら有機過酸化物のうち、特に好適なものは、パーオキシエステル或いはジアシルパーオキサイドである。
【0103】
なお、必要に応じてこれら過酸化物を二種以上用いることもできるし、本発明の効果を損なわない範囲で、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系重合開始剤を併用することも可能である。
【0104】
本発明で使用される過酸化物系重合開始剤は、単量体100質量部に対し0.5〜20質量部の添加量で重合反応を行うと、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることが出来る。
【0105】
また、本発明で用いられる有機過酸化物系重合開始剤の理論活性酸素量は、4.0〜12.0%の範囲にあることが望ましく、4.0%よりも小さいと重合開始剤が多量に必要となるため経済的に不利であり、12.0%を超えると取り扱いおよび重合反応の制御が困難となる場合がある。
【0106】
本発明の磁性トナーは、前記パーオキシエステルまたはジアシルパーオキサイドに起因して生成するカルボン酸の含有量が2000ppm以下であることが好ましい。重合開始剤であるパーオキシエステルが熱分解を起こすと、対応するアルコキシラジカルとカルボン酸ラジカルにまず分解し、その後これらのラジカル、およびカルボン酸ラジカルが脱炭酸して生成するアルキルラジカル等がモノマーへ付加することにより重合反応が進行する。同様に、ジアシルパーオキサイドが熱分解を起こすと、対応するカルボン酸ラジカルにまず分解し、その後このカルボン酸ラジカル、およびカルボン酸ラジカルが脱炭酸して生成するアルキルラジカル等がモノマーへ付加することにより重合反応が進行する。
【0107】
しかし、重合トナーの製造においては、従来ほとんど副生しないと考えられてきたカルボン酸(このものはカルボン酸ラジカルが荷電制御剤、磁性粉体、磁性粉体の疎水化処理剤、モノマー、ポリマー等から水素を引き抜くことにより生成する)が多量に副生することが本発明者らの検討で判明した。また同時に、このカルボン酸はトナー中の磁性粉体の分散を良好にするということも、本発明者らの検討により判明した。一方で、該カルボン酸は極性基を持つ親水性化合物であり、トナーの環境安定性に影響を与え、高湿下では帯電性が低下し、低湿下ではチャージアップを引き起こすことがあり、また、定着性が悪化する傾向にあることも本発明者らの検討により判明した。すなわち、該カルボン酸はトナー粒子の製造工程においては有用であるが、製造後に除去を行うことが好ましいと言える。
【0108】
本発明の磁性トナーを用いてプリントアウトを行うにあたっては、該カルボン酸がトナーを基準にして2000ppmを超えてトナー中に含有されていると、該カルボン酸の影響で環境安定性や定着性が低下する場合があり、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。
【0109】
尚、トナー中の残留スチレンモノマーや前記したカルボン酸の定量は、ガスクロマトグラフィーにより次の様にして測定可能である。
【0110】
サンプル瓶にトナー約500mgを精秤し、これに精秤した約10gのアセトンを加えた後よく混合し、超音波洗浄機にて超音波を30分間照射する。その後メンブランフィルター(例えばアドバンテック東洋(株)製 ディスポーザブルメンブランフィルター 25JP020AN)を用いて濾過を行い、濾液2μlをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予めスチレンやカルボン酸を用いて作成した検量線により、残留スチレンモノマーやカルボン酸の残存量を算出する。後述する実施例では、下記の条件により分析を行う。
【0111】
<分析条件>
GC:HP社 6890GC
カラム:HP社 INNOWax(200μm×0.40μm×25m)
キャリアーガス:He(コンスタントプレッシャーモード:20psi)
オーブン:50℃:10分ホールド、10℃/分で200℃まで昇温、200℃で5分ホールド。
INJ:200℃、パルスドスプリットレスモード(20→40psi、until0.5分)
スプリット比:5.0:1.0
DET:250℃(FID)
本発明においては、トナー中の前記カルボン酸含有量を低く抑えることで、特に定着性が良好で、環境変動によらず安定した帯電性を有した磁性トナーが得られる。
【0112】
過酸化物系重合開始剤の分解により生成するカルボン酸としては様々なものがあり、重合開始剤の酸構造成分の種類により異なるが、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ピバリン酸、イソ吉草酸、コハク酸、安息香酸、オクタン酸、ステアリン酸、ラウリン酸が例示できる。
【0113】
また、本発明の磁性トナーの製造方法において、トナー中の、過酸化物系重合開始剤、特にパーオキシエステルやジアシルパーオキサイド由来のカルボン酸を除去するためには、トナー粒子を製造した後に真空乾燥や加熱乾燥により除去する方法、トナー粒子を懸濁させた水の蒸留を行い、水とともに留去する方法、トナーを懸濁した水系媒体をアルカリ性に処理して(必要により加熱や撹拌処理を行い)トナー粒子と前記カルボン酸の塩を含むアルカリ性の水系媒体を実質的に分離する方法など色々あるが、最も効率が良く容易に実施できるのはアルカリ処理による方法である。
【0114】
例えば、重合トナーの場合、重合が終了した後で水系媒体を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの如きアルカリを使ってpH8〜14、好ましくは9〜13、より好ましくは10〜13、さらに好ましくは10〜12に調整して加熱撹拌を行えば、カルボン酸を対応する水溶性のカルボン酸塩として水に溶出させることが可能である。この後で、懸濁液を、例えば濾過すれば、カルボン酸塩は廃水へと流されてトナー中のカルボン酸は除去可能となる。ここで、pHを10〜12の範囲とするとさらに好ましい理由は、カルボン酸の完全な中和を行うためと、結着樹脂中の官能基(例えばアクリル酸のエステル)の加水分解が抑制できるからである。また、アルカリ性とした重合懸濁液を、アルカリ性の状態のままでトナー粒子と水媒体とを実質的に分離することが非常に重要であり、例えば分離工程を経ずに水媒体のpHを酸性にしてしまうと、水に溶けていたカルボン酸塩は再び水不溶性のカルボン酸に戻ってしまうため、カルボン酸のトナーからの除去は非常に不完全なものとなる。尚、トナー粒子とアルカリ性の水系媒体との分離は、濾過、遠心分離など従来公知のあらゆる方法で実施できる。
【0115】
本発明においてトナーを磁性トナーとするためトナー粒子に含有させる磁性粉体としては、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルの如き金属またはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属の合金及びその混合物が挙げられるが、少なくとも磁性酸化鉄を含有しているものである。
【0116】
これらの中でも、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素を含んでもよい四三酸化鉄、γ−酸化鉄の如き磁性酸化鉄を主成分とするものが挙げられ、これらを一種または二種以上を組み合わせて用いられる。これら磁性粉体は、モース硬度が5〜7のものが好ましい。
【0117】
また、磁性粉体の粒子形状としては特に制限はないが、一例をあげれば球形(粒状)、6面体、8面体、14面体の如き多面体がある。磁性粉体の形状はSEMなどによって確認することができる。すなわち、SEMにより磁性粉体粒子の形状を観察し、粒子個数割合が最も多い形状をもってその試料の粉体形状とする。
【0118】
また、本発明における磁性粉体の磁気特性としては、磁場795.8kA/m下での飽和磁化が10〜200Am2/kg、残留磁化が1〜100Am2/kg、抗磁力が1〜30kA/mであることが好ましい。
【0119】
本発明において磁性粉体の磁気特性は、振動型磁力計VSMP−1−10(東英工業社製)を用いて、25℃の室温にて外部磁場796kA/mで測定する方法により実施可能である。
【0120】
本発明のトナーに添加される磁性粉体としては、トナーとしての磁気特性、着色力、帯電性等、様々な物性、性能を考慮して種々のものが選択されるが、例えば磁気特性を改良するため、特に残留磁化を低下させるために、特開平8−169717号公報及び特開平10−101339号公報に記載されているようなリン元素を含有するマグネタイトも好適に利用することができる。リン元素を含有するマグネタイトは、マグネタイト粒子の生成時にあらかじめ系内に水溶性のリン化合物(例えばヘキサメタリン酸ソーダ、第一リン酸アンモニウムの如きリン酸塩、正リン酸塩、亜リン酸塩)を共存させることにより得ることができ、この場合、リン元素の含有量は鉄元素に対し0.05〜5.0質量%が好ましい。
【0121】
磁性粉体に含まれるリン元素の含有量が上記範囲よりも小さいと、リン元素の添加効果が十分に得られず、逆にリン元素の含有量が上記範囲よりも大きいと、磁性粉体製造時の濾過性に問題を生じることがあるため好ましくない。
【0122】
ここで、リン元素を含有する磁性粉体としては、結晶が形成される前にリンを含有させて製造した磁性粉体を使用することが特に重要である。本発明の磁性トナーにこの様な残留磁化の低い小粒径磁性材料を用いることにより、磁性粉体の分散性が良好となるため、転写性及びカブリ特性に優れ、さらには現像性にも優れた小粒径磁性トナーが得られるようになる。
【0123】
また、場合によって特公平3−9045号公報や特開昭61−34070号公報に記載されているケイ素含有の磁性酸化鉄も用いることができる。磁性粉体中に、鉄元素に対し5.0質量%以下のケイ素元素を含有させることによっても、残留磁化を低下させることが可能であり、また磁性粉体を表面処理する際には、均一な表面処理が可能となる。これは、処理剤としてシランカップリング剤を用いた場合、磁性粉体中のケイ素元素とカップリング剤中のケイ素元素とがより安定なシロキサン結合を形成するため、磁性体粒子の表面全体が完全に処理剤で覆われることによると考えられる。
【0124】
この場合、磁性粉体としてのマグネタイト粒子の生成時に、あらかじめ系内に鉄元素に対して5.0質量%以下のケイ素元素となるよう水溶性ケイ素化合物(例えば水ガラス、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリウム)を共存させることによりケイ素元素含有の磁性酸化鉄を得ることができる。尚、磁性粉体中に含有されるケイ素元素が5.0質量%を超えると、濾過性等製造面での困難性が現れるため好ましくない。また、磁性粉体製造時において、磁性粒子の結晶化が始まる前にケイ素元素を添加しておくこともできる。さらに、リン元素とケイ素元素の両方を含有する磁性酸化鉄も必要に応じて使用できる。
【0125】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体の体積平均粒径としては0.01〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.5μmが好ましい。体積平均粒径が0.01μm未満の場合、黒色度の低下が顕著となり、白黒用トナーの着色剤としての役割を磁性粉体に持たせる場合には着色力が不十分となり、また、磁性粉体粒子の凝集も強くなるため、分散性に関しても低下する傾向となる。一方、体積平均粒径が1.0μmを超えた場合にも、一般の着色剤と同様に着色力が不足するようになる。加えて、特に小粒径トナー用の着色剤として使用する場合、個々のトナー粒子に同程度の個数の磁性粉体を分散させることが確率的に困難となり、分散性が低下しやすい。
【0126】
なお、磁性粉体の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定できる。具体的には、測定するトナーの粉体サンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定して、体積平均粒径を求める。
【0127】
前述のTEMによる具体的な観察方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が例示される。
【0128】
また、本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、疎水化表面処理されていることが好ましく、この疎水化表面処理については、水系媒体中でカップリング剤を用いて表面処理されることにより、磁性粉体の粒子表面が疎水化されていることがより一層好ましい。
【0129】
重合トナーに使用される磁性粉体の表面改質に関しては、数多く提案されている。例えば、特開昭59−200254号公報、特開昭59−200256号公報、特開昭59−200257号公報、特開昭59−224102号公報等に磁性粉体の各種シランカップリング剤処理技術が提案されており、特開昭63−250660号公報では、ケイ素元素含有磁性粒子をシランカップリング剤で処理する技術が開示されている。
【0130】
しかしながら、これらの処理によりトナー粒子表面からの磁性粉体の露出はある程度抑制されるものの、磁性粉体表面の疎水化を均一に行うことが困難であるという問題があり、したがって、磁性粉体同士の合一や疎水化されていない磁性粉体粒子の発生を避けることができず、磁性粉体の露出を完全に抑制するには不十分である。また、疎水化磁性酸化鉄を用いる例として特公昭60−3181号公報にアルキルトリアルコキシシランで処理した磁性酸化鉄を含有するトナーが提案されている。この磁性酸化鉄の添加により、確かにトナーの電子写真諸特性は向上しているものの、磁性酸化鉄の表面活性は元来小さく、処理の段階で合一粒子が生じたり、疎水化が不均一であったりで、必ずしも満足のいくものではなく、接触帯電工程や接触転写工程、或いはクリーナーレス工程を有するような本発明の画像形成方法に適用するにはさらなる改良が必要である。
【0131】
さらに、処理剤等を多量に使用したり、高粘性の処理剤等を使用した場合、疎水化度は確かに上がるものの、磁性粉体粒子同士の合一等が生じて分散性は逆に悪化してしまう。このような磁性粉体を用いて製造されたトナーは、摩擦帯電性が不均一であり、それに起因してカブリや転写性が良くないものとなる傾向がある。
【0132】
このように、従来の表面処理磁性粉体を用いた重合トナーでは、疎水性と分散性の両立は必ずしも達成されておらず、このような重合トナーを本発明の如き接触帯電工程から成る画像形成方法に適用しても、高精細な画像を安定して得ることは難しい。
【0133】
そこで、本発明の磁性トナーに使用される磁性粉体においては、その粒子表面を疎水化する際、水系媒体中で、磁性粉体粒子を一次粒径となるよう分散しつつカップリング剤を加水分解しながら表面処理する方法を用いることが非常に好ましい。この疎水化処理方法は気相中で乾式処理する方法よりも、磁性粉体粒子同士の合一が生じにくく、また疎水化処理による磁性粉体粒子間の帯電反発作用が働き、磁性粉体はほぼ一次粒子の状態で表面処理される。
【0134】
カップリング剤を水系媒体中で加水分解しながら磁性粉体表面を処理する方法は、クロロシラン類やシラザン類のようにガスを発生するようなカップリング剤を使用する必要もなく、さらに、これまで気相中では磁性粉体粒子同士が合一しやすくて、良好な処理が困難であった高粘性のカップリング剤も使用できるようになり、疎水化の効果は絶大である。
【0135】
本発明における磁性粉体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(1)で表されるものである。
【0136】
mSiYn (1)
[式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。]
上記一般式(1)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0137】
特に、一般式(2)で表されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して水系媒体中で磁性粉体を疎水化処理するのが良い。
【0138】
p2p+1−Si−(OCq2q+13 (2)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
上記式におけるpが2より小さいと疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、トナー粒子からの磁性粉体の露出を抑制するのが難しくなる。また、pが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性粉体粒子同士の合一が多くなり、トナー中へ磁性粉体粒子を十分に分散性させることが困難になり、カブリや転写性が低下傾向となる。
【0139】
また、qが3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
【0140】
特に好ましくは、上記式(2)中、pは3〜15の整数であり、qは1又は2の整数である。
【0141】
その処理量は、磁性粉体100質量部に対して、0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部とするのが良い。
【0142】
本発明において「水系媒体」とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。
【0143】
界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水100質量部に対して0.1〜5質量部添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられる。有機溶剤としては、メタノールが挙げられ、水に対して500%以下で添加するのが好ましい。
【0144】
磁性粉体の表面処理方法として、水系媒体中でカップリング剤で処理するには、水系媒体中で適量の磁性粉体およびカップリング剤を攪拌する方法が挙げられる。例えば、撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーの如き高剪断力混合装置)で、磁性粉体粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように充分に攪拌をおこなうのが良い。
【0145】
こうして得られる表面処理された磁性粉体は、粒子の凝集が見られず、個々の粒子表面が均一に疎水化処理されているため、重合トナー用の材料として用いた場合、トナー粒子中への分散性が非常に良好である。しかもトナー粒子表面からの磁性粉体の露出が無く、ほぼ球形に近い重合トナーが得られる。
【0146】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部を用いることが好ましく、さらに好ましくは20〜180質量部を用いることが良い。10質量部未満ではトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、200質量部を超えると、トナー担持体への磁力による保持力が強まり現像性が低下したり、個々のトナー粒子への磁性粉体の均一な分散が難しくなるだけでなく、定着性が低下してしまうこともある。
【0147】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性粉体は、例えばマグネタイトの場合、第一鉄塩1モルと第二鉄塩2モルの混合水溶液の加水分解反応による方法や、適当なpHに調節した第一鉄塩水溶液を加熱条件下で空気酸化することにより得ることができる。後者の場合、酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に攪拌し、カップリング剤を添加して十分に混合攪拌し、攪拌後に濾過、乾燥し、軽く解砕することで、本発明において利用できる疎水性処理磁性酸化鉄粒子が得られる。または、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄粒子を、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分攪拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。いずれにせよ、酸化反応終了後に乾燥工程を経ずに表面処理を行うことが肝要である。
【0148】
第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、更に塩化鉄の使用も可能である。
【0149】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法は一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5〜2モル/リットルが用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に低いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。又、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
【0150】
このようにして製造された残留磁化の低い疎水性磁性粉体粒子を材料とした磁性トナーを使用することにより、画像形成においては、感光体の削れ及びトナー融着が抑制され、また安定して高画質な画像が得られるようになる。
【0151】
本発明の磁性トナーは、少なくとも上記結着樹脂および表面処理磁性粉体とを含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを有している。
【0152】
無機微粉体は、トナーの流動性改良及び帯電均一化のために添加される。本発明における無機微粉体は、個数平均一次粒径4〜80nmが好ましい。
【0153】
無機微粉体の個数平均一次粒径が80nmよりも大きい場合、または80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には、転写残トナーが帯電部材へ付着した場合に帯電部材に固着し易くなり、安定して良好な帯電特性を得ることが困難である。また、良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、トナー飛散等の問題を避けられないことがある。
【0154】
無機微粉体の個数平均一次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、一次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、凝集体の現像、像担持体または現像担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなる。トナー粒子の帯電分布をより均一とするためには無機微粉体の個数平均一次粒径は6〜35nmであることがより好ましい。
【0155】
本発明において、無機微粉体の個数平均一次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー粒子表面に付着または遊離して存在している無機微粉体の一次粒子を100個以上測定し、個数平均径を求めることで得られる。
【0156】
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、アルミナ、チタニア(酸化チタン)から選ばれる無機微粉体またはそれらの複酸化物が使用できる。シリカの複酸化物としては、例えば、ケイ酸微粉体が挙げられる。
【0157】
ケイ酸微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。表面及びケイ酸微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の如き製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0158】
個数平均一次粒径が4〜80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることが好ましい。添加量が0.1質量部未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量部を超えると定着性が低下することがある。
【0159】
本発明における無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
【0160】
磁性トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、トナー飛散が起こり易くなる。
【0161】
無機微粉体を疎水化処理する疎水化処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独でまたは併用して処理しても良い。
【0162】
その中でも、上記シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時または処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものを用いると、高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
【0163】
そのような無機微粉体の処理条件としては、例えば第一段反応として上記疎水化処理剤でシリル化反応を行い、シラノール基を化学結合により消失させて疎水化処理した後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成する方法が挙げられ、それによりさらに疎水性を高めることができる。より好ましい処理方法として、第一段反応としてシラン化合物を疎水化処理剤として用い、第二段反応にシリコーンオイル処理で処理する方法が挙げられる。
【0164】
シリコーンオイルの処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。または適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、無機微粉体を加え混合し、溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
【0165】
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10〜200,000mm2/sのものが、さらには3,000〜80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
【0166】
このようなシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0167】
シリコーンオイルの処理量は、処理前の無機微粉体100質量部に対し、1〜23質量部、好ましくは5〜20質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずることがある。
【0168】
無機微粉体を処理するための上記シラン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンの如き有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0169】
本発明で用いられる無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着により比表面積が20〜250m2/g範囲内のものが好ましく、より好ましくは40〜200m2/gのものが更に良い。
【0170】
比表面積はBET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することにより得ることができる。後述する実施例においても、同様に測定できる。
【0171】
また、本発明の磁性トナーは、表面に導電性微粉体を有することが好ましいが、該導電性微粉体の体積平均粒径は、磁性トナーの体積平均粒径よりも小さいことが好ましい。
【0172】
上記条件を満たす導電性微粉体の体積平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましい。導電性微粉体の体積平均粒径が小さいと、現像性の低下を防ぐために導電性微粉体のトナー全体に対する含有量を小さく設定しなければならない。導電性微粉体の体積平均粒径が0.5μm未満では、帯電工程において、転写残トナーが接触帯電部材に付着・混入することによって生じる帯電阻害に打ち勝って、像担持体の帯電を良好に行うのに十分な量の導電性微粉体を、帯電部材と像担持体との当接部またはその近傍の帯電領域に介在させることができず、帯電不良を生じ易くなる。
【0173】
また、導電性微粉体の体積平均粒径が10μmよりも大きいと、帯電部材から脱落した導電性微粉体が、静電潜像を書き込む露光を遮光または拡散し、静電潜像の欠陥を生じ画像品位を低下させることがある。更に、導電性微粉体の体積平均粒径が大きいと、単位質量当たりの粒子数が少なく、且つ帯電部材からの導電性微粉体の脱落等によって導電性微粉体の更なる減少、及び劣化が生じやすくなるため、導電性微粉体を帯電部材と像担持体との当接部またはその近傍の帯電領域に逐次、導電性微粉体を供給し続け介在させ、また、接触帯電部材が導電性微粉体を介して像担持体への緻密な接触性を維持し良好な帯電性を安定して得るためには、導電性微粉体のトナー全体に対する含有量を大きくしなければならない。しかし、導電性微粉体の含有量を大きくすると、特に高湿環境下でのトナー全体としての帯電能、現像性を低下させ、画像濃度低下やトナー飛散を生ずる傾向がある。
【0174】
上記の理由から、導電性微粉体の体積平均粒径は、0.5〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜5μm、更に好ましくは1.1〜5μmが良く、また0.5μm以下の粒径を有するものが70体積%以下、5.0μm以上の粒径を有するものが6個数%以下であることが良い。尚、導電性微粉体の粒径は、SEMによって測定される。
【0175】
導電性微粉体の磁性トナー100質量部に対する含有量は、0.2〜10質量部であることが好ましい。本発明のトナーは、表面に磁性粉体が実質上露出していない為、導電性微粉体のトナー100質量部に対する含有量が0.2質量部よりも少ないと、現像性が低下する傾向にある。また、現像兼クリーニングを用いた画像形成方法に適用する際には、接触帯電部材への絶縁性の転写残トナーへの付着・混入による帯電阻害に打ち勝って像担持体の帯電を良好に行うのに十分な量の導電性微粉体を有しえなくなる。また、含有量が10質量部よりも多い場合では、現像兼クリーニングによって回収される導電性微粉体が多くなりすぎるため、現像部でのトナーの帯電能、現像性が低下し、画像濃度低下やトナー飛散を生ずることがある。導電性微粉体のトナー100質量部に対する含有量は、0.5〜5質量部であることが特に好ましく良い。
【0176】
また、導電性微粉体の抵抗は、1×109〜1×10-1Ω・cmであることが好ましい。導電性微粉体の抵抗が、1×109Ω・cmよりも大きいと上記と同様に、現像性が低下する傾向にあり、また現像兼クリーニングを用いた画像形成方法に適用する際には、導電性微粉体を帯電部材と像担持体との当接部またはその近傍の帯電領域に介在させ、接触帯電部材の導電性微粉体を介しての像担持体への緻密な接触性を維持させても、良好な帯電性を得るための帯電促進効果が得られないことがある。また、1×10-1Ω・cmよりも小さいと、トナーの帯電性が充分に得られない場合がある。
【0177】
導電性微粉体の帯電促進効果を十分に引き出し、良好な帯電性を安定して得るためには、導電性微粉体の抵抗が、接触帯電部材の表面部または像担持体との接触部の抵抗よりも小さいことが好ましい。更に、導電性微粉体の抵抗が、1×106Ω・cm以下であることが、接触帯電部材への絶縁性の転写残トナーへの付着・混入による帯電阻害に打ち勝って像担持体の帯電をより良好に行わせる上で好ましい。
【0178】
また、導電性微粉体は、透明、白色または淡色の導電性微粉体であることが、転写材上に転写される導電性微粉体がカブリとして目立たないため好ましい。静電潜像形成工程における露光の妨げとならない意味でも導電性微粉体は透明、白色または淡色の導電性微粉体であることがよく、より好ましくは、導電性微粉体の露光に対する透過率が30%以上であることが良い。
【0179】
本発明においては、導電性微粉体の光透過性については以下の手順で測定することができる。片面に接着層を有する透明のフィルムに導電性微粉体を一層分固定した状態で透過率を測定する。光はシートの鉛直方向から照射しフィルム背面に透過した光を集光し光量を測定する。フィルムのみと粒子を付着したときの光量から正味の光量として導電性微粉体の透過率を算出する。具体的には、X−Rite社製310T透過型濃度計を用いる測定方法が挙げられ、後述する実施例においても該装置を用いて測定を行うことができる。
【0180】
本発明における導電性微粉体としては、非磁性であるものが好ましく、例えば、カーボンブラック、グラファイトの如き炭素微粉体;銅、金、銀、アルミニウム、ニッケルの如き金属微粉体;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化タングステンの如き金属酸化物;硫化モリブデン、硫化カドミウム、チタン酸カリウムの如き金属化合物、またはこれらの複合酸化物が必要に応じて粒度及び粒度分布を調整することで使用できる。これらの中でも酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンの如き導電性無機酸化物微粉末が特に好ましい。
【0181】
また、導電性無機酸化物微粉末の抵抗値を制御する等の目的で、アンチモン、アルミニウムの如き元素をドープした金属酸化物の如き導電性材料を表面に有する微粉末も使用できる。例えば、酸化スズ及び/又はアンチモンで表面処理された酸化チタン微粉末、アンチモンでドープされた酸化第二スズ微粉末、または酸化第二スズ微粉末である。
【0182】
市販の酸化スズ及び/又はアンチモンで表面処理された導電性酸化チタン微粉末としては、例えばEC−300(チタン工業株式会社)、ET−300、HJ−1、HI−2(以上、石原産業株式会社)、W−P(三菱マテリアル株式会社)が挙げられる。
【0183】
市販のアンチモンドープの導電性酸化スズ微粉末としては、例えばT−1(三菱マテリアル株式会社)やSN−100P(石原産業株式会社)が、また市販の酸化第二スズとしては、SH−S(日本化学産業株式会社)が挙げられる。
【0184】
本発明における導電性微粉体の体積平均粒径及び粒度分布の測定には、コールター社製、LS−230型レーザー回折式粒度分布測定装置にリキッドモジュールを取り付けて0.04〜2000μmの測定範囲で測定することにより実施できる。測定方法としては、純水10mlに微量の界面活性剤を添加し、これに導電性微粉体の試料10mgを加え、超音波分散機(超音波ホモジナイザー)にて10分間分散した後、測定時間90秒、測定回数1回で測定する。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0185】
本発明において、導電性微粉体の体積平均粒径及び粒度分布の調整方法としては、導電性微粉体の体積平均一次粒子が製造時において所望の粒径及び粒度分布が得られるように、製造法および製造条件を設定する方法以外にも、一次粒子の小さな粒子を凝集させる方法、一次粒子の大きな粒子を粉砕する方法または分級による方法等が可能であり、更には、所望の粒径及び粒度分布の基材粒子の表面の一部もしくは全部に導電性微粉体を付着または固定化する方法、所望の粒径及び粒度分布の粒子に導電性成分が分散された形態を有する導電性微粉体を用いる方法等も可能であり、これらの方法を組み合わせて導電性微粉体の粒径及び粒度分布を調整することも可能である。
【0186】
導電性微粉体の粒子が凝集体として構成されている場合の粒径は、その凝集体としての体積平均粒径として定義される。導電性微粉体は、一次粒子の状態で存在するばかりでなく、二次粒子の凝集した状態で存在することも問題はない。どのような状態であれ、帯電部材と像担持体との当接部またはその近傍の帯電領域に介在し、帯電補助または促進の機能が実現できればその形態は問わない。
【0187】
本発明において、導電性微粉体の抵抗測定は、錠剤法により測定し正規化して求めることができる。即ち、底面積2.26cm2の円筒内に凡そ0.5gの導電性粉末試料を入れ上下電極に15kgの加圧を行うと同時に100Vの電圧を印加し、その時の抵抗値を計測し、その後正規化して比抵抗を算出する。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0188】
本発明に係わる磁性トナーは、示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に40〜110℃、より好ましくは45〜90℃に吸熱ピークを有することが好ましい。本発明の磁性トナーにおいては、残留スチレンモノマーの含有量が低減されており、トナーの凝集を抑制することに関して優れたものであるため、40〜65℃に吸熱ピークを有するようにした場合においても、良好な画像形成が可能であり、この効果は、特に79.6kA/mの磁場にさらした後のトナーの残留磁化が10Am2/kg未満である場合に特に顕著となる。
【0189】
転写材上に転写されたトナー像はその後、熱・圧力等のエネルギーにより転写材上に定着され、半永久的画像が得られる。この際、熱ロール式定着が一般に良く用いられる。
【0190】
後述するが、体積平均粒径が10μm以下のトナーを用いれば、非常に高精細な画像を得ることができるが、粒径の細かいトナー粒子は紙等の転写材を使用した場合に紙の繊維の隙間に入り込み、熱定着用ローラからの熱の受け取りが不十分となり、低温オフセットが発生しやすい。
【0191】
しかしながら、示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に40〜110℃の範囲に吸熱ピークを有するようにトナーを設計すると、高解像性と耐オフセット性を両立させつつ、感光体の削れを防止することが可能となる。磁性トナーの前記吸熱ピークが40℃よりも小さいと耐保存安定性や帯電性に問題が生じる場合があり、該吸熱ピークが110℃よりも大きいと感光体の削れを防止することが困難となる場合がある。
【0192】
示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に吸熱ピークを40〜110℃の範囲に発現させる方法としては様々な方法があるが、例えばトナーを製造する際に、後述する従来公知のワックスを原材料の一部として使用することにより容易に達成可能である。
【0193】
尚、トナーやワックスの吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。また、上記測定装置によって、バインダー樹脂成分等のガラス転移温度(Tg)を測定することもできる。
【0194】
本発明の磁性トナーに使用可能なワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体で、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスが挙げられるが、いずれも示差熱分析における吸熱ピークが、40〜110℃、更には45〜90℃であるものが好ましい。また、前述したような40〜65℃に吸熱ピークを有する磁性トナーを製造するためには、40〜65℃に吸熱ピークを有するワックスを用いることができ、この様なワックスを用いる場合には、更なる耐オフセット性の向上が達成される。
【0195】
本発明の磁性トナーは、ワックスを使用する際、結着樹脂100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲の含有量であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満では低温オフセット抑制効果が充分でなく、50質量部を超えてしまうと長期間の保存性が悪化すると共に、他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の悪化や画像特性の低下につながることがある。
【0196】
本発明の磁性トナーは、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、直接重合法を用いてトナーを製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料またはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0197】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
【0198】
しかしながら、本発明の磁性トナーは、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナー層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0199】
本発明の磁性トナーは、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性または非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、上記磁性粉体と同様の表面を処理して用いても良い。
【0200】
また、本発明の磁性トナーは、クリーニング性向上等の目的で、一次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の球形に近い無機微粒子又は有機微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。具体的には、例えば、球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子が好ましく用いられる。
【0201】
さらに、本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばテフロン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、または酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤、または例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機および/または無機微粒子を現像性向上剤として少量用いる事もできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0202】
<2>本発明のトナーの特性
本発明の磁性トナーの平均円形度は、0.970以上である。
【0203】
平均円形度が0.970以上のトナー(トナー粒子群で構成される粉体)から構成されるトナーは転写性に非常に優れている。これはトナー粒子と感光体との接触面積が小さく、鏡像力やファンデルワールス力等に起因するトナー粒子の感光体への付着力が低下するためと考えられる。従って、このようなトナーを用いれば転写率が高く、転写残トナーが非常に低減するため、帯電部材と感光体との圧接部におけるトナーが非常に少なく、トナー融着が防止され、画像欠陥が著しく抑制されるものと考えられる。さらに、平均円形度が0.970以上のトナー粒子は表面のエッジ部がほとんど無いため、帯電部材と感光体との圧接部において摩擦が低減され、感光体表面の削れが抑制される。これらの効果は、転写中抜けの発生しやすい接触転写工程を含む画像形成方法においては、より顕著となって現れる。
【0204】
この際、トナーの円形度分布において、モード円形度が0.99以上であることがより好ましい。モード円形度が0.99以上であると、トナー粒子の多くが真球に近い形状を有することを意味しており、上記したような感光体の削れや画像欠陥の抑制効果がより顕著となる。
【0205】
本発明における平均円形度及びモード円形度とは、粒子の形状を定量的表現する指標として用いたものであり、本発明では東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度(ai)を下記式(I)により求め、さらに下記式(II)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数(m)で除した値を平均円形度(am)と定義する。
円形度(ai)=L0/L 式(I)
(式中、L0は磁性トナー粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長を示し、Lは磁性トナー粒子の投影像の周囲長を示す。)
【外1】
Figure 0003907418
【0206】
また、モード円形度とは、円形度を0.40から1.00までを、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満、・・・・・・0.990以上1.000未満及び1.000の如く0.01毎に61分割し、測定した各粒子の円形度をそれぞれ各分割範囲に割り振り、円形度頻度分布において頻度値が最大となるピークの円形度である。
【0207】
なお、本発明で用いる測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度のものであり、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
【0208】
測定手順としては、以下の通りである。
【0209】
界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlに、磁性トナー約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の粒径の粒子群の平均円形度及びモード円形度を求める。
【0210】
本発明における平均円形度とは、磁性トナーの凹凸の度合いの指標であり、磁性トナーが完全な球形の場合1.000を示し、磁性トナーの表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
【0211】
また、X線光電子分光分析により測定される磁性トナーの表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)は、0.001未満である。
【0212】
本発明の磁性トナーは、トナー粒子が高い帯電量を持つことが好ましく、そのためには表面に電荷のリークサイトとなる磁性粉体が露出していないことが好ましい。さらには接触帯電工程を含む画像形成方法において、トナー粒子表面に磁性粉体が露出している磁性トナーを用いた場合、露出した磁性粉体による感光体の削れがより顕著となって現れやすい。しかしながら、上述の如き(B/A)が0.001未満である、すなわち磁性粉体がトナー粒子表面にほとんど露出していない磁性トナーを用いれば、帯電部材によりトナーが感光体表面圧接されても感光体表面が削れることはほとんど無く、感光体の削れ及びトナー融着を著しく低減させることが可能となる。無論、接触転写工程を組み合わせた画像形成方法においてもその効果は絶大であり、非常に高精細な画像を長期に渡って得ることが可能である。さらには(B/A)を0.0005未満とすれば、高画質及び耐久安定性が格段に向上することからより好ましい。
【0213】
本発明の磁性トナーは、実質上トナー表面に磁性粉体が露出していない為、トナーの帯電量がリークし難く、そのため導電性微粉体を多く表面に有していても、帯電量の低下が少なく、画像濃度の高い良好な画像を得ることが可能である。
【0214】
本発明の磁性トナーは、トナー表面に露出する磁性粉体の量を抑制して、高い帯電量を有するように設計したものであるが、この様なトナーでは、極端に湿度の低い環境下において、耐久を重ねた場合には、トナー粒子がチャージアップを引き起こし、凝集してしまいやしという課題が存在していた。
【0215】
本発明においては、トナー中に含有される残留スチレンモノマーを低減することにより、トナーが凝集するのを抑制している。残留スチレンモノマーは揮発する際に、トナーの内部に存在するワックスなどの成分をトナー表面に引き出すことがあり、トナーの凝集を助長するものであるが、残留スチレンモノマーを300ppm未満とした場合には、このような現象が実質的に生じなくなる。
【0216】
加えて、トナーの凝集を抑制するという観点からは、磁性粉体として、残留磁化の低い磁性粉体を用いることが好ましい。好適に用いることのできる磁性粉体としては、磁場79.6kA/mにさらした後の残留磁化が、10Am2/kg未満であることが好ましく、更には7Am2/kg未満、特には5Am2/kg未満であることが好ましい。
【0217】
残留磁化の低い磁性粉体を用いることに加えて、導電性微粉体をトナー表面に有させることにより、更なるトナーの凝集を緩和することができるため、低温低湿下における多数枚のプリントアウトにおいて、より安定して良好な画像が得られるようになる。
【0218】
また、円形度が非常に高い為、磁性トナーが現像部で細い穂が形成され、磁性トナー1個1個の帯電が均一になることで、かぶりの非常に少ない良好な画像を得ることが可能である。
【0219】
磁性トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有(B)の比(B/A)は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出することができる。
【0220】
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社製 1600S型 X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα(400W)
分光領域 直径800μm
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度を算出する。本測定はトナーをイソプロピルアルコールの如き溶剤を用いて超音波洗浄し、磁性トナー粒子表面に付着している無機微粉体を除去した後、磁気力にて分離し、乾燥し測定することが好ましい。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0221】
なお、トナー粒子内部の特定の部分のみに磁性粉体が含有されている特殊なトナーは、特開平7−209904号公報においても既に開示されている。しかしながら、特開平7−209904号公報においては、トナーの円形度、残留スチレンモノマー量及び含有する磁性粉体の好適な磁気特性に関する言及がなされておらず、特開平7−209904号公報に記載されているようなトナーを本発明の使用形態で用いても同じような効果が発現するかどうかは不明である。
【0222】
さらに、特開平7−209904号公報において開示されているトナー構成を要約すれば、トナー粒子表面に磁性粉体の存在しない樹脂層を一定量以上の厚みで有しているものである。該公報に記載されたトナーに於いては、磁性粉体を有さない樹脂層がある程度の厚みを持って形成されているため、例えば体積平均粒径が10μmと小さなトナーの場合においては、磁性粉体が存在しうる容積が小さくなるため、十分な量の磁性粉体を内包しにくいものと思われる。しかも、こういったトナーでは、トナーの粒度分布において粒径の大きいトナー粒子と小さい粒子とで、磁性粉体の存在しない表面樹脂層のトナー全体に対する相対的な存在割合が異なることとなり、従って、内包される磁性粉体含有量も異なるため、現像性や転写性がトナーの粒径によって異なってしまう。この様な場合には、粒径に依存する、選択現像性が見られるようになり、従って、こういった磁性トナーを用いて長期に渡りプリントアウトを行うと、磁性粉体を多く含み現像されにくい粒子、即ち粒径の大きなトナー粒子が残りやすく、耐久後における画像濃度及び画質の低下、さらには定着性の悪化にもつながってしまう。
【0223】
上記の説明から導かれるように、トナー粒子中における好ましい磁性粉体の分散状態とは、磁性粉体粒子が凝集せずになるべくトナー粒子全体に均一に存在する状態であり、本発明の磁性トナーにおいて、必要とされる特徴の一つである。即ち、トナーの体積平均粒径をC、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた磁性トナーの断面観察において、磁性粉体とトナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子の個数は50%以上である必要がある。
【0224】
本発明においては、D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子の粒子数が、65%以上であることがさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。
【0225】
D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子数が50%未満の場合には、過半数のトナー粒子において少なくともD/C=0.02境界線よりも外側には磁性粉体が全く存在しないことになる。仮に前述のような粒子を球形として想定すると、1つのトナー粒子を全空間とした場合に磁性粉体が存在しない空間は、トナー粒子の表面側に少なくとも約7.8%存在することになる。この様な粒子においては、実際には、境界線上に磁性粉体が均一に整列してトナー粒子内部に内壁を作るように存在するわけではないので、トナー粒子の表面から10%程度の部分には磁性粉体がほとんど存在していないこととなる。このような粒子から構成される磁性トナーにおいては、上述の如き様々な弊害が発生しやすい。
【0226】
本発明において、TEMによる具体的なD/Cの測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、または凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が好ましい。
【0227】
該当する粒子数の割合の具体的な測定方法については、以下の通りである。
【0228】
TEMにてD/Cを決定するための粒子は、顕微鏡写真での断面積から粒径を求め、その値が後述するコールターカウンターによって測定される個数平均粒径(D1)の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とし、その該当粒子について、磁性粉体粒子表面と該磁性トナー粒子表面との距離の最小値(D)を計測し、D/Cを計算する。こうして計算されたD/C値が0.02以下の粒子の割合を、下記式(III)により求めるものと定義する。このときの顕微鏡写真は精度の高い測定を行うために、1万〜2万倍の倍率が好適である。またトナーの体積平均粒径に関しては、後述する方法によって測定する。
【0229】
本発明では、透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を装置として用い、加速電圧100kVで観察し、拡大倍率が1万倍の顕微鏡写真を用いて観察・測定する。後述する実施例においても同様に測定できる。
【外2】
Figure 0003907418
【0230】
本発明で、D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子数を50%以上とするには、磁性粉体中に含まれる粒径0.03〜0.1μmの範囲の粒子や粒径0.3μm以上の粒子の比率を小さくしたり、磁性粉体の表面処理剤の種類や処理の均一性を制御したりすることなどが挙げられる。
【0231】
さらに、特開平7−209904号公報においては、特殊な構造のトナーそのものが提案されているだけであり、その具体的な使用形態に関しては何の記載もなされていない。本発明者等は、特開平7−209904号公報において開示されている技術思想とは異なる発想にて得られた特殊なトナーを用いて画像形成することにより、感光体の耐久性において著しい改良効果が発現することを見出し、本発明に到ったものである。
【0232】
本発明の画像形成方法において、更に高画質化のため、より微小な潜像ドットを忠実に現像するためには、トナーの体積平均粒径が3〜10μm、更には4〜8μmであることが好ましい。体積平均粒径が3μm未満のトナーに於いては、転写効率の低下から感光体上の転写残トナーが多くなり、接触帯電工程での感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなる。さらに、トナー全体の表面積が増えることに加え、粉体としての流動性及び攪拌性が低下し、トナー粒子と導電性微粉体がともに挙動する傾向が強まり、転写工程において導電性微粉体はより転写され易くなり、接触帯電部材に付着・混入して帯電部において介在する導電性微粉体が減少する。このため相対的に転写残トナーによる個々のトナー粒子の帯電性阻害が大きくなることからカブリや転写性が悪化傾向となり、削れや融着以外にも画像の不均一ムラの原因となりやすいため、本発明で使用するトナーには好ましくない。
【0233】
また、トナーの体積平均粒径が10μmを超える場合には、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくい。その原因として、トナー粒子の帯電量が導電性微粉体の含有量の増大によって大幅に低下し易くなり、帯電部において介在する導電性微粉体量を接触帯電部材の像担持体への緻密な接触性と接触抵抗を維持できる程度にまでトナー中での導電性微粉体の含有量を設定すると、トナー母粒子の帯電量が低下することによりトナー全体の現像性が低下し、現像兼クリーニングによって導電性微粉体の比率が著しく多いトナーが回収されることによる現像部での導電性微粉体の僅かな偏在によっても著しい画像濃度低下等による画像性の低下を招くことが挙げられる。さらに装置が高解像度になっていくと8μm以上のトナーでは、1ドットの再現性が悪化する傾向にある。より安定した帯電性と現像性を維持するためには、トナーの体積平均粒径が4〜8μmであることが好ましい。
【0234】
また、トナーの個数分布における変動係数は35%以下であることが好ましい。変動係数が35%を超えると、感光体表面、トナー層厚規制部材等への融着が起きやすく、画像欠陥を生じることがある。尚、トナー粒子の個数分布における変動係数S1は下式(IV)から算出される。
【0235】
変動係数S1=(S/D1)×100 式(IV)
(式中、Sはトナー粒子の個数分布における標準偏差値を示し、D1は個数分布から求めた個数基準の個数平均粒径(μm)を示す。)
ここで、トナーの体積平均粒径及び個数平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型またはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能である。本発明においては、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピュータ(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl
水溶液を調製する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。
【0236】
それから、本発明に係わるところの体積分布から求めた体積基準の体積平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)、個数分布から求めた個数基準の個数平均粒径(D1)と個数変動係数(S1)を求めることができる。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0237】
粒径の測定におけるチャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
【0238】
また、本発明の磁性トナーは、磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における磁化の強さが10〜50Am2/kg(emu/g)である。磁性トナーは、現像装置内に磁気力発生手段を設けることでトナーの漏れを防止でき、トナーの搬送性または攪拌性を高められる。また、トナー担持体上に磁力が作用するように磁気力発生手段を設けることで、転写残トナーの回収性が更に向上し又磁性トナーが穂立ちを形成するためにトナーの飛散を防止することが容易となる。磁性トナーが上記範囲の磁化を有するには、先述した磁性粉体の添加量を調整すれば良い。また、本発明において磁性粉体の磁化の強さは、振動型磁力計VSMP−1−10(東英工業社製)を用いて、25℃の室温にて外部磁場79.6kA/mで測定する方法により実施可能である。後述する実施例においても、同様に測定できる。
【0239】
しかし、トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10Am2/kg未満であると、トナー担持体による現像剤の搬送が良好に行なわれなく、またトナー担持体上におけるトナーの穂立ちが不安定となり、トナーへの帯電付与が均一に行えないことによるカブリ、画像濃度ムラ、転写残トナーの回収不良等の画像不良を生じ易くなる。磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが50Am2/kgよりも大きいと、トナーに磁力を作用させると磁気凝集によりトナーの流動性が著しく低下し、転写性が低下することで転写残トナーが増加し、及びトナー粒子と導電性微粉体がともに挙動する傾向が強まることで接触帯電部材に付着・混入して介在する導電性微粉体が減少するとともに、帯電部に介在する導電性微粉体量が転写残トナー量に対して相対的にも減少し、帯電性の低下に伴うカブリ及び画像汚れを生じ易くなる。
【0240】
また、本発明の磁性トナーは、磁場79.6kA/m(1000エルステッド)において、残留磁化が10Am2/kg(emu/g)未満である。ここで本発明の磁性トナーの残留磁化とは、磁場79.6kA/m(1000エルステッド)下に本発明の磁性トナーを一旦置き、その後磁場をゼロまで落としたときの磁性トナーに残留する磁化をいう。上記残留磁化は、磁場の調整が可能な振動型磁力計(例えば前述したVSMP−1−10など)を用いて測定することができる。
【0241】
磁性トナーの残留磁化が10Am2/kgよりも大きいと、トナー担持体上のトナーの穂が長くなりすぎ、細線潜像の幅より長く、潜像からはみ出したり、飛び散ったりして画質が悪化してしまうとともに、トナー担持体上のトナーコート層の厚みが大きくなり、個々の粒子が均一な帯電をしにくくなり、画像濃度の低下やカブリの悪化を生じてしまうことがある。また、多数枚のプリントアウトを行った際には、残留磁化が高い場合には、トナー粒子間の磁気凝集が生じてしまい、トナー担持体とトナー層厚規制部材の間でトナーが過度の圧力を受けるようになるため、トナー表面の無機微粒子がトナーに埋め込まれたり、トナー担持体やトナー層厚規制部材を汚染するようになったりしてしまい、均一な層形成及び均一な帯電の付与が阻害されるようになってしまう。磁性トナーの残留磁化は、7Am2/kg未満であることが好ましく、5Am2/kg未満であることがより好ましい。
【0242】
また、この磁気凝集からくるトナー劣化や部材の汚染は、残留スチレンモノマーが300ppmを超えて磁性トナーに含有されている場合に特に顕著となり、残留磁化が10Am2/kg未満であっても問題を生じる場合がある。特に、高温環境下でのプリントアウトに際しては、残留スチレンモノマーの影響でトナー表面の熱的、機械的強度が低下してしまうため、上記の無機微粉末の埋め込みや部材の汚染が顕著となる。さらに、高温環境下では、多量の残留スチレンモノマーが含有されているようなトナーにおいては、トナーの帯電速度が低下してしまうために、トナーが充分な帯電量を有しにくく、残留磁化が低くてもトナー担持体から静電荷像担持体へのトナー飛翔が阻害され、上記の弊害はより一層顕著となる。したがって、本発明の磁性トナーは残留磁化が10Am2/kg未満であることと共に、残留スチレンモノマーが300ppm未満であることも必須である。
【0243】
トナーの残留磁化を上記の範囲とするためには、磁性粉体の含有量を調節する方法、磁性粉体として残留磁化の低いもの(例えば球形のマグネタイト)を用いる方法、または、前述したようなリン元素やケイ素元素を含有させることにより残留磁化を低下させた磁性粉体を用いること等で達成可能である。尚、トナー中の磁性粉体における、鉄元素に対するリン元素及びケイ素元素の含有量の測定は、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分光法)を用い、以下のように行うことができる。
【0244】
トナーにシリカ等の外添剤が混合されているときは、NaOH水溶液中でトナー表面を処理し、濾過して取り除く。濾過残査を水洗後、塩酸中で処理し、濾過して濾液(濾液A)を採取する。さらにこの濾過残査を塩酸とフッ素酸の混合水溶液で処理し、濾過して濾液を採取(濾液B)する。こうして得られた濾液Aと濾液Bを混合し、混合液中の鉄元素、リン元素及びケイ素元素をICPにより定量して、磁性粉体中の鉄元素に対するリン元素及びケイ素元素の含有量を求める。
【0245】
<3>本発明の磁性トナーの製造方法
本発明の磁性トナーの製造方法は、前述した磁性トナーを懸濁重合によって製造する方法であって、過酸化物系重合開始剤を用いて重合を行うことを特徴とする。
【0246】
本発明の磁性トナーは、粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものであり、本発明の磁性トナーの必須要件である円形度が0.970以上という物性を得るためには、機械的・熱的または何らかの特殊な処理を行うことが必要となる。さらに粉砕法は、本質的にトナー粒子表面に磁性粉体が露出してしまうため、X線光電子分光分析により測定される表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が、0.001未満であるトナーを得ることが困難であり、感光体の削れという問題が解決できないことがある。そこで、上述の諸問題を解決するため、本発明の磁性トナーは、重合法、特に懸濁重合法により製造することが好ましい。
【0247】
本発明の磁性トナーの製造方法に係る懸濁重合法とは、単量体および磁性粉体(更に必要に応じて、ワックス、着色剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体(例えば水相)中に適当な撹拌機を用いて分散し、重合開始剤を用いて懸濁重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナーを得るものであり、本発明においては好適である。
【0248】
より具体的には、本発明の磁性トナーの製造方法は、前述した磁性トナーを製造するにあたり、少なくともスチレンモノマーを含む単量体と前記磁性粉体とが含まれる単量体組成物を水系媒体中で過酸化物系重合開始剤を用いて懸濁重合する懸濁重合工程を含む。
【0249】
この懸濁重合法で得られる磁性重合トナーは、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、円形度が0.970以上という本発明に必須な物性要件、さらにはモード円形度が0.99以上というより好ましい物性を満たすトナーが得られやすく、さらにこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるため、高い転写性が得られるものである。
【0250】
しかしながら、重合トナーの製造時、通常の磁性粉体を含有させるだけでは、トナー粒子表面における磁性粉体の露出を抑えることは困難であり、さらには得られるトナー粒子の流動性及び帯電特性が著しく低下するだけでなく、磁性粉体と水との間に強い相互作用が生じることにより、円形度が0.970以上のトナーが得られ難い。これは、第一に磁性粉体粒子は、一般的に親水性であるためにトナー粒子表面に偏在しやすいこと、第二に単量体組成物を水系媒体中で懸濁する際、または重合中に懸濁液を撹拌する際に、磁性粉体が懸濁液粒子内部で乱雑に動き、それに単量体から成る懸濁粒子表面が引きずられ、形状が歪んで円形になりにくいこと、等が原因と考えられる。こういった問題を解決するために、上記したような表面全体が完全に処理剤で処理された磁性粉体粒子を使用することが好ましい。
【0251】
上述のカップリング剤で均一に表面処理された磁性粉体を用いることにより、円形度が0.970以上、さらにはモード円形度が0.99以上で、X線光電子分光分析により測定されるトナーの表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満という磁性トナーを得ることが可能となり、このトナーを接触帯電工程を有する画像形成方法で用いると、感光体の削れやトナー融着がより一層抑制され、低湿環境下においても高画質の安定化が達成できるのである。さらには、(B/A)を0.0005未満とすれば、高画質及び耐久安定性が格段に向上する。
【0252】
次に本発明の画像形成方法に関わる重合トナーの懸濁重合法による製造方法を説明する。重合トナーの製造法おいては、前述した単量体を含む単量体組成物を重合することにより、直接的にトナー粒子が得られる。
【0253】
本発明に係わる重合トナーの製造においては、前記重合性単量体から構成される単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基の如き親水性官能基を含有する単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンまたはエチレンの如きビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、またはグラフト共重合体の如き共重合体の形にして、またはポリエステル、ポリアミドの如き重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンの如き重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させると、前述のワックス成分を相分離させ、より内包化が強力となり、耐オフセット性、耐ブロッキング性、低温定着性の良好なトナーを得ることができる。このような極性官能基を含む高分子重合体を使用する場合、その重量平均分子量は5,000以上であることが好ましい。分子量5,000未満、特に4,000以下では、本重合体が表面付近に集中し易い事から、現像性、耐ブロッキング性等に悪い影響が起こり易くなり好ましくない。また、極性重合体としては特にポリエステル系の樹脂が好ましい。
【0254】
また、材料の分散性や定着性、または画像特性の改良等を目的として上記以外の樹脂を単量体組成物中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂が単独または混合して使用できる。
【0255】
これら樹脂の添加量としては、単量体100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方、20質量部を超えて添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる傾向がある。
【0256】
さらに、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を、単量体中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることが出来る。
【0257】
磁性粉体による磁性トナーの残留磁化は、本発明の磁性トナーの説明で述べたように、磁性粉体の使用量の調整、残留磁化の低い磁性粉体の使用、及びリン元素やケイ素元素を含有させて残留磁化を低下させた磁性粉体の使用等によって調整される。
【0258】
本発明の磁性トナーを重合法により製造する場合は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、単量体100質量部に対して、0.001〜15質量部である。
【0259】
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートの如き二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
【0260】
本発明の磁性トナーを重合法により製造する場合は、一般に上述のトナー組成物、すなわち重合性単量体中に磁性粉体、ワックス、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。このとき、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。
【0261】
本発明に係る磁性トナーを重合法により製造する場合は、前記過酸化物系重合開始剤を使用する必要があるが、過酸化物系重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加すると同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体または溶媒に溶解した重合開始剤を加える事も出来る。造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
【0262】
また、本発明の磁性トナーを重合法により製造する場合において使用される分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用でき、中でも無機分散剤は、場合により画像欠陥の原因となる粒径が過度に小さい粒子を生じ難く、主にその立体障害性により懸濁粒子の分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物が挙げられる。
【0263】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独で使用することが望ましいが、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
【0264】
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
【0265】
上記無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より粒度分布の狭いトナー粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることが出来る。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることが出来、より均一な単量体組成物の造粒が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
【0266】
また、分散安定剤を用いた場合には、トナー製造後にこの分散剤を除去することが望ましく、分散剤がトナー表面に残存していると帯電性、特に環境安定性に大きな問題が生じる場合が多いので、出来る限り除去を行うことが好ましい。
【0267】
例えば、リン酸カルシウムを分散剤として用いた場合には、該分散剤が酸性で水に溶解する性質を利用して、重合が終了した懸濁液に酸を添加することによりリン酸カルシウムを溶解し、その後濾過、水洗を繰り返すことにより、リン酸カルシウムをほぼ完全に除去することが可能である。リン酸カルシウムを溶解する際には、トナー粒子の懸濁している水系媒体のpHを4未満、より好ましくは2未満とすることで短時間にリン酸カルシウムの除去が可能である。
【0268】
前述したように、例えば、重合の際に分散安定剤として燐酸カルシウムを用いた場合には、これを溶解、除去するために、分散剤の付着したトナー粒子とpH4未満の水を接触させることが好ましい形態であるが、その工程の前にトナー中の過酸化物系重合開始剤由来のカルボン酸を除去するために、アルカリ性に処理した水系媒体とトナー粒子とを実質的に分離することが、本発明においてはさらに好ましい形態である。
【0269】
本発明のトナーの懸濁重合過程で用いられる「水系媒体」は、前記同様、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。
【0270】
また、上記単量体組成物を水系媒体中で造粒および重合する際には、単量体組成物と水系媒体との質量比を20:80〜60:40の範囲とすると、シャープな粒度分布とすることができることから好ましい。さらに30:70〜50:50の範囲とすると、磁性粉体の分散が良好で、変動係数の小さい非常にシャープな粒度分布となり特に好ましい。
【0271】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50〜120℃の温度に設定して重合を行う。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべきワックス類が、相分離により析出して内包化がより完全となることから好ましい。
【0272】
重合トナー粒子は重合終了後、濾過、洗浄、乾燥を行い、公知の方法によって無機微粉体を混合し表面に付着させることで、トナーを得ることができる。
【0273】
より詳しくは、重合終了後に重合トナー粒子を含む懸濁液をアルカリ性に(より好ましくはpH10〜12に調整)し、濾過等の操作によって重合トナー粒子と水系媒体とを実質的に分離する。このような操作によって前述したように過酸化物系重合開始剤から生じるカルボン酸を効率よく除去することができる。
【0274】
また、上記カルボン酸の分離工程後に、重合トナー粒子を酸性水系(より好ましくはpH4未満)と接触させることにより、分散安定剤としてリン酸カルシウム等の難水溶性金属塩を使用した場合での分散安定剤を効率よく除去することができる。
【0275】
また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも、本発明の望ましい形態の一つである。
【0276】
<4>本発明の画像形成方法および画像形成装置
本発明の画像形成方法は、帯電部材に電圧を印加し、像担持体を帯電させる帯電工程と、帯電された像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成工程と、像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを転移させてトナー像を像担持体上に現像する現像工程と、像担持体上に形成されたトナー像を転写材に静電転写させる転写工程とを有し、像担持体上に繰り返して作像が行われる画像形成方法であって、トナーとして、本発明の磁性トナーを用いることを特徴とする。
【0277】
本発明の画像形成方法においては、帯電工程において、帯電部材を像担持体である感光体に当接部を形成するように当接させて、電圧を印加することにより像担持体である感光体を帯電させる直接帯電法を用いることが好ましい。
【0278】
本発明の画像形成装置は、本発明の画像形成方法を用いたものであり、即ち、静電潜像を担持するための像担持体と、帯電部材に電圧を印加し、像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電された像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを転移させてトナー像を像担持体上に形成させる現像手段と、前記感光体表面に形成されたトナー像を転写材に静電転写する転写手段とを有する画像形成装置であって、トナーとして、本発明の磁性トナーを用いることを特徴とする。
【0279】
なお、本発明の画像形成装置を構成する各手段については、上記の作用、または後述する画像形成方法を実現する手段であれば良く、従来より知られている種々の手段を利用することもできる。また、本発明の画像形成方法及び画像形成装置では、上記の他にも、本発明の技術分野において知られている他の工程や手段等を含むものであっても良い。
【0280】
次に、本発明の画像形成方法および画像形成装置の実施形態を図に沿って詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0281】
図1において、像担持体としての感光体100の周囲に、接触帯電部材である帯電ローラ117、現像手段である現像装置140、転写手段である転写ローラ114、クリーナー116、給紙ローラ124が設けられている。そして感光体100は、帯電ローラ117によって−700Vに帯電される。(印加電圧は交流電圧Vpp=2.0kV(Vpp:ピーク間電位)、直流電圧−700Vdc)そして、レーザビームスキャナ121によりレーザー光123を感光体100に照射する事によって露光される。感光体100上の静電潜像は現像装置140によって一成分磁性トナーで現像され、転写材を介して感光体に当接された転写ローラ114により転写材上へ転写される。トナー像をのせた転写材Pは、搬送ベルト125等により定着装置126へ運ばれ転写材P上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーニング手段であるクリーナー116によりクリーニングされる。
【0282】
現像装置140は、図2に示すように感光体100に近接して、アルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下、「現像スリーブ」ともいう)およびトナーを収容しているトナー容器が配設され、感光体100と現像スリーブ102との間隙は、図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により約300μmに維持されている。この間隙は、必要により変更可能である。現像スリーブ102内にはマグネットローラ104が、現像スリーブ102と同心的に固定、配設されている。但し、現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラ104には図示の如く複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。141は、攪拌部材であり、現像装置内のトナーの攪拌を行っている。
【0283】
また、現像装置は、現像スリーブ102に付着して搬送される磁性トナー量を規制するトナー層厚規制部材として、弾性ブレード103が配設され、弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流電圧及び/又は交流電圧の現像バイアスが印加され、現像スリーブ102上のトナーは静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
【0284】
上記図1のように帯電ローラを用いたときの好ましいプロセス条件として、ローラの当接圧が4.9〜490N/m(5〜500g/cm)で、直流電圧または直流電圧に交流電圧を重畳したものが用いられる。直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いる場合は、交流電圧=0.5〜5kV(Vpp)、交流周波数=50Hz〜5kHz、直流電圧=±0.2〜±5kVが好ましい。
【0285】
本発明の画像形成方法における帯電工程における帯電手段としては、被帯電体であり像担持体でもある感光体に、図1における上記帯電ローラであるローラ型(帯電ローラ)の他に、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型(帯電ブレード)の導電性の帯電部材(接触帯電部材・接触帯電器)を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に帯電させる接触帯電装置を用いることができる。これらの接触帯電部材を用いた帯電手段では、高電圧が不要になったり、オゾンの発生を抑制することができるといった効果がある。
【0286】
接触帯電部材としての帯電ローラ及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、転写残トナーの付着を軽減することを目的としてその表面に離型性被膜を設けてもよい。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PVdC(ポリ塩化ビニリデン)、フッ素アクリル樹脂が適用可能である。
【0287】
接触帯電部材に対する印加帯電バイアスは直流電圧のみでも良好な帯電性を得ることが可能であるが、図1に示す上記装置のように直流電圧に交流電圧(交番電圧)を重畳してもよい。
【0288】
このときの交流電圧は、2×Vth(Vth:直流電圧印加における放電開始電圧)(V)未満のピーク電圧を有するものであるのが好ましい。
【0289】
直流電圧に印加される交流電圧のピーク電圧が、2×Vth未満でないと、像担持体上の電位が不安定になることがあり好ましくない。直流電圧に交流電圧を重畳されたバイアスを印加する際の交流電圧として、より好ましくはVth未満のピーク電圧を有するものである。それにより、実質的な放電現象を伴うことなく、像担持体を帯電させることができる。
【0290】
交流電圧の波形としては、正弦波、矩形波、三角波が適宜使用可能である。また、直流電源を周期的にオン/オフすることによって形成されたパルス波であっても良い。このように交流電圧の波形としては周期的にその電圧値が変化するようなバイアスが使用できる。
【0291】
本発明の画像形成方法は、転写工程後、感光体に残留したトナーを現像工程において回収する現像兼クリーニング工程またはクリーナーレス工程を有する画像形成方法であることが好ましい。
【0292】
さらに、現像兼クリーニング画像形成方法またはクリーナーレス画像形成方法において、現像工程はトナーによって像担持体上の静電潜像を現像する工程であり、帯電工程は像担持体と当接部を形成して接触する帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電する工程であり、且つ少なくとも帯電部材と像担持体との当接部及び/又はその近傍に、本導電性微粉体が介在していることが好ましい。該導電性微粉体は、磁性トナー中に含有させておき、現像工程で像担持体に付着させ、転写工程で転写されずに像担持体上に残留するようにして、帯電部材と像担持体との当接部に介在させることが好ましい。
【0293】
まず、現像兼クリーニング画像形成方法において、磁性トナー粒子に導電性微粉体を外部添加した場合の画像形成プロセス中でのトナー粒子及び導電性微粉体の挙動を説明する。
【0294】
トナーに含有させた導電性微粉体は、現像工程において像担持体上の静電潜像に、トナー粒子とともに適当量が像担持体側に移行する。
【0295】
像担持体上のトナー像は、転写工程において転写材側に転移する。像担持体上の導電性微粉体も一部は転写材側に付着するが、残りは像担持体上に付着保持されて残留する。トナーと逆極性の転写バイアスを印加して転写を行う場合には、トナーは転写材側に引かれて積極的に転移するが、像担持体上の導電性微粉体は導電性であることで、転写材側には積極的には転移せず、一部は転写材側に付着するものの、残りは像担持体上に付着保持されて残留する。
【0296】
クリーナーを用いない画像形成方法では、転写後の像担持体面に残存の転写残トナーおよび上記の残存導電性微粉体は、像担持体と接触帯電部材の当接部である帯電部に像担持体面の移動でそのまま持ち運ばれて、接触帯電部材に付着・混入する。従って、像担持体と接触帯電部材との当接部に導電性微粉体が介在した状態で像担持体の接触帯電が行われる。
【0297】
この導電性微粉体の存在により、接触帯電部材への転写残トナーの付着・混入による汚染にかかわらず、接触帯電部材の像担持体への緻密な接触性と接触抵抗を維持できるため、該接触帯電部材による像担持体の帯電を良好に行わせることができる。また、接触帯電部材に付着・混入した転写残トナーは、帯電部材から像担持体へ印加される帯電バイアスによって、帯電バイアスと同極性に帯電を揃えられて接触帯電部材から徐々に像担持体上に吐き出され、像担持体面の移動とともに現像部に至り、現像工程において現像兼クリーニング(回収)される。
【0298】
更に、トナーに含有させて導電性微粉体の供給を行っているため、画像形成を繰り返すたびに、導電性微粉体が、現像部で像担持体面に移行し該像担持面の移動により転写部を経て帯電部に持ち運ばれて帯電部に逐次に供給され続けるため、帯電部において導電性微粉体が脱落等で減少、或いは劣化するなどしても、帯電性の低下が生じることが防止されて良好な帯電性が安定して維持される。
【0299】
更なる解決すべき課題として、従来の画像形成方法において、像担持体と接触帯電部材との当接部に積極的に導電性微粉体を存在させ、接触帯電部材への絶縁性の転写残トナーの付着・混入による帯電阻害に打ち勝って像担持体の帯電を良好に行わせるために必要量の導電性微粉体をトナーに含有させた場合、トナーカートリッジ内でトナー量が少なくなるまで使用された際に画像濃度低下またはカブリの増大により、良好な画像品位が保持できないことがある。
【0300】
従来のクリーニング機構を有する画像形成装置においても、トナーに導電性微粉体を含有させた場合、現像工程において選択的に導電性微粉体が消費されたり、または逆に選択的に導電性微粉体が残ったりしてしまうことによるトナー中での導電性微粉体の含有割合の変動により、トナーカートリッジ内でトナー量が少なくなるまで使用された際には、画像濃度低下またはカブリの増大を生ずることがある。このため、導電性微粉体をトナー粒子に固着させるなどして、導電性微粉体の選択的な消費または偏析を低減し、画像濃度低下、カブリの増大等による画像性の低下を防止することが知られている。
【0301】
導電性微粉体を含有させたトナーを、現像兼クリーニング画像形成方法に適用した場合には、導電性微粉体の含有割合の変動が、画像特性に対してより大きな影響を与える。
【0302】
クリーナーを用いない画像形成方法においては、転写後の像担持体面に残存の転写残トナーおよび上記の残存導電性微粉体は、接触帯電部材に付着・混入する。このとき、接触帯電部材に付着・混入する導電性微粉体の転写残トナーに対する量の比率は、導電性微粉体とトナー粒子の転写性の差から、元のトナー中での導電性微粉体の量比率よりも明らかに多くなる。
【0303】
この状態で接触帯電部材に付着・混入した導電性微粉体は、転写残トナーと共に接触帯電部材から徐々に像担持体上に吐き出されて像担持体面の移動とともに現像部に至り、現像工程において現像兼クリーニング(回収)される。すなわち、現像兼クリーニングによって、導電性微粉体の比率が著しく多いトナーが回収されることにより、導電性微粉体の含有割合の変動が大幅に加速され、著しい画像濃度低下等による画像性の低下を招くことになる。
【0304】
これに対して、従来のクリーニング機構を有する画像形成装置における場合と同様に、トナー粒子に導電性微粉体を固着させて導電性微粉体の含有割合の変動を抑制しようとすると、転写工程においても導電性微粉体がトナー粒子とともに挙動するため、トナー粒子とともに転写材側に転移してしまい、接触帯電部材に付着・混入して帯電部において導電性微粉体が介在することができず、または介在したとしても転写残トナー量に対して導電性微粉体の介在量が不十分となり、転写残トナーによる帯電性阻害に打ち勝って帯電性を維持することができず、また、接触帯電部材の像担持体への緻密な接触性と接触抵抗を維持できず、接触帯電部材による像担持体の帯電性が低下し、カブリ及び画像汚れを生じてしまいやすくなる。
【0305】
接触帯電部材を用いた現像兼クリーニング画像形成方法に導電性微粉体を含有させたトナーを適用するには、上述のような困難があるが、本発明において、これに対し、上記したようにトナーの体積平均粒径を3〜10μmとすることで、オゾンの発生を低減できる接触帯電部材を用い廃トナーを生じないクリーナーレス画像形成方法で、良好な帯電性を維持しつつ導電性微粉体の偏析を大幅に緩和し、画像濃度低下等の画像性の低下を実用上問題無いレベルまで改良できる。
【0306】
像担持体と接触帯電部材との当接部における導電性微粉体の介在量は、少なすぎると、該導電性微粉体による潤滑効果が十分に得られず、像担持体と接触帯電部材との摩擦が大きくて接触帯電部材を像担持体に速度差を持って回転駆動させることが困難である。つまり、駆動トルクが過大となるし、無理に回転させると接触帯電部材や像担持体の表面が削れてしまう。更に導電性微粉体による接触機会増加の効果が得られないこともあり十分な帯電性能が得られない。一方、介在量が多過ぎると、導電性微粉体の接触帯電部材からの脱落が著しく増加し作像上に悪影響が出ることがある。
【0307】
上記のことから、像担持体と接触帯電部材との当接部における導電性微粉体の介在量は1×103〜5×105個/mm2が好ましく、より好ましくは1×104〜5×105個/mm2が良い。1×103個/mm2より低いと十分な潤滑効果と接触機会が得られず帯電性能の低下が生じることがある。1×104個/mm2より低いと転写残トナーが多い場合に帯電性能の低下が生じることがある。
【0308】
導電性微粉体の塗布密度範囲は、導電性微粉体をどれぐらいの密度で像担持体上に塗布することで均一帯電性の効果が得られるかでも決定される。
【0309】
帯電時は少なくともこの記録解像度よりは均一な接触帯電が必要なことは言うまでもない。
【0310】
しかしながら人間の目の視覚特性に関して、空間周波数が10cycles/mm以上では、画像上の識別諧調数が限りなく1に近づいていく、すなわち濃度ムラを識別できなくなる。この特性を積極的に利用すると、像担持体上に導電性微粉体を付着させた場合、少なくとも像担持体上で10cycles/mm以上の密度で導電性微粉体を存在させ、直接注入帯電を行えば良いことになる。たとえ導電性微粉体の存在しないところにミクロな帯電不良が発生したとしても、その帯電不良によって発生する画像上の濃度ムラは、人間の視覚特性を越えた空間周波数領域に発生するため、画像上では問題は無いことになる。
【0311】
導電性微粉体の塗布密度が変化したときに、画像上に濃度ムラとしての帯電不良が認知されるかどうかについては、導電性微粉体がわずかにでも塗布されれば(例えば10個/mm2)、帯電ムラ発生の抑制に効果が認められるが、画像上の濃度ムラが人間にとって許容可能かどうかと言う点においてはまだ不十分である。
【0312】
ところがその塗布量を1×102個/mm2以上とすると、画像の客観評価において急激に好ましい結果が得られるようになる。更に、塗布量を1×103個/mm2以上と増加させていくことにより、帯電不良に起因する画像上の問題点は皆無となる。
【0313】
直接注入帯電方式による帯電では、放電帯電方式とは根本的に異なり、帯電部材が感光体に確実に接触する事で帯電が行われている訳であるが、たとえ導電性微粉体を像担持体上に過剰に塗布したとしても、接触できない部分は必ず存在する。ところが本発明の人間の視覚特性を積極的に利用した導電性微粉体の塗布を行うことで、実用上この問題点を解決する。
【0314】
しかしながら、直接注入帯電方式を現像兼クリーニング画像形成における潜像担持体の一様帯電として適用する場合には、転写残トナーの帯電部材への付着または混入による帯電特性の低下が生ずる。転写残トナーの帯電部材への付着及び混入を抑制し、または転写残トナーの帯電部材への付着または混入による帯電特性への悪影響に打ち勝って、良好な直接注入帯電を行うには、像担持体と接触帯電部材との当接部における導電性微粉体の介在量が1×104個/mm2以上であることが好ましい。
【0315】
また、導電性微粉体の塗布量の上限値は、導電性微粉体が像担持体上に1層均一に塗布されるまでであり、それ以上塗布されても効果が向上するわけではなく逆に、露光源を遮ったり、散乱させたりという弊害が生じる。
【0316】
塗布密度上限値は導電性微粉体の粒径によっても変わってくるために、一概にはいえないが、強いて記述するならば、導電性微粉体が像担持体上に1層均一に塗布される量が上限である。
【0317】
導電性微粉体の量は、5×105個/mm2を超えると、導電性微粉体の像担持体への脱落が著しく増加し、粒子自体の光透過性を問わず、像担持体への露光量不足が生じることがある。5×105個/mm2以下では脱落する粒子量も低く抑えられ露光の阻害を改善できる。該介在量範囲において像担持体上に脱落した粒子の存在量を測ると1×102〜1×105個/mm2であったことから、作像上弊害がない該存在量としては1×104〜5×105個/mm2の介在量が好ましい。
【0318】
帯電当接部での導電性微粉体の介在量及び静電潜像形成工程での像担持体上の導電性微粉体の存在量の測定方法について述べる。導電性微粉体の介在量は、接触帯電部材と像担持体の接触面部を直接測ることが望ましいが、当接部を形成する接触帯電部材の表面と像担持体の表面には速度差を設けている場合、接触帯電部材に接触する前に像担持体上に存在した粒子の多くは逆方向に移動しながら接触する帯電部材に剥ぎ取られることから、本発明においては、接触面部に到達する直前の接触帯電部材表面の粒子量をもって介在量とする。
【0319】
具体的には、帯電バイアスを印加しない状態で像担持体及び導電性弾性ローラの回転を停止し、像担持体及び導電性弾性ローラの表面をビデオマイクロスコープ(OLYMPUS製OVM1000N)及びデジタルスチルレコーダ(DELTIS製SR−3100)で撮影する。導電性弾性ローラについては、導電性弾性ローラを像担持体に当接するのと同じ条件でスライドガラスに当接し、スライドガラスの背面からビデオマイクロスコープにて接触面を1000倍の対物レンズで10箇所以上撮影する。得られたデジタル画像から個々の粒子を領域分離するため、ある閾値を持って2値化処理し、粒子の存在する領域の数を所望の画像処理ソフトを用いて計測する。また、像担持体上の存在量についても像担持体上を同様のビデオマイクロスコープにて撮影し同様の処理を行い計測する。
【0320】
また、本発明の画像形成方法において、接触帯電部材は、接触帯電部材と像担持体との間に導電性微粉体を介在させる当接部を設ける上で弾性を有することが好ましく、接触帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電するために導電性であることが好ましい。従って、接触帯電部材は導電性弾性のローラ部材、磁性粒子を磁気拘束させた磁気ブラシ部を有し該磁気ブラシ部を感光体に接触させた磁気ブラシ接触帯電部材または導電性繊維から構成されるブラシ部材等であることが好ましく良い。
【0321】
本発明において、接触帯電部材として用いる導電性弾性のローラ部材の硬度は、アスカーC硬度が50度以下であることが好ましい。硬度が低すぎると形状が安定しないために被帯電体との接触性が悪くなり、更に、帯電部材と像担持体との当接部に導電性微粉体を介在させることでローラ部材表層を削りまたは傷つけ、安定した帯電性が得られない。また、硬度が高すぎると像担持体(以下、「被帯電体」ともいう)との間に帯電当接部を確保できないだけでなく、被帯電体表面へのミクロな接触性が悪くなるので、アスカーC硬度25〜50度が好ましい範囲である。
【0322】
なお、アスカーC硬度は、高分子計器(株)製ASKER C型ゴム硬度計を用い、SRIS(日本ゴム協会標準規格)に準じて測定する。
【0323】
ローラ部材は、弾性を持たせて被帯電体との十分な接触状態を得ると同時に、移動する被帯電体を充電するに十分低い抵抗を有する電極として機能することが重要である。一方では、被帯電体にピンホールなどの欠陥部位が存在した場合に電圧のリークを防止する必要がある。被帯電体として電子写真用感光体を用いた場合、十分な帯電性と耐リークを得るには、体積抵抗値1×103〜1×108Ω・cmの抵抗であることが良く、より好ましくは1×104〜1×107Ω・cmの体積抵抗値であることが良い。
【0324】
ローラ部材の体積抵抗値は、ローラの芯金に総圧1kgの加重がかかるよう直径30mmの円筒状アルミドラムにローラを圧着した状態で、芯金とアルミドラムとの間に100Vを印加し、計測することができる。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0325】
本発明におけるローラ部材は、例えば、芯金上に可撓性部材としてのゴムまたは発泡体の中抵抗層を形成することにより作成され得る。中抵抗層は樹脂(例えばウレタン)、導電性粒子(例えばカーボンブラック)、硫化剤、発泡剤により処方され、芯金の上にローラ状に形成する。その後必要に応じて切削、表面を研磨して形状を整えローラ部材を作成することができる。該ローラ部材表面は導電性微粒子を介在させるために微少なセルまたは凹凸を有していることが好ましい。
【0326】
このセルは、球形換算での平均セル径が5〜300μmである窪みを有しており、上記窪みを空隙部としたローラ部材の表面の空隙率は15〜90%であるのが好ましい。
【0327】
ローラ部材の表面の平均セル径が5μmより小さい場合は、導電性微粉体の供給が不足し、300μmを越える場合は、導電性微粉体の供給が過剰となり、いずれも像担持体の帯電電位が不均一となることがあるから好ましくない。また、空隙率が15%より少ないと、導電性微粉体の供給が不足し、90%を越えると供給が過剰となり、いずれも像担持体の帯電電位が不均一となることがあるから好ましくない。
【0328】
ローラ部材の材質としては、弾性発泡体に限定するものでは無く、弾性体の材料として、チレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ウレタン、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴムに抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物の如き導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものがあげられる。また、導電性物質を分散せずに、または導電性物質と併用してイオン導電性の材料を用いて抵抗調整をすることも可能である。
【0329】
また、ローラ部材に用いられる芯金としては、アルミニウム、SUSが挙げられる。
【0330】
ローラ部材は、像担持体としての被帯電体に対して弾性に抗して所定の押圧力で圧接させて配設し、ローラ部材と像担持体の当接部である帯電当接部を形成させる。この帯電当接部幅は、特に制限されるものではないが、ローラ部材と像担持体の安定して密な密着性を得るため1mm以上、より好ましくは2mm以上が良い。
【0331】
また、接触帯電部材としてのブラシ部材としては、一般に用いられている繊維に導電材を分散させて抵抗調整された帯電ブラシが挙げられる。繊維としては、一般に知られている繊維が使用可能であり、例えばナイロン、アクリル、レーヨン、ポリカーボネート、ポリエステルが挙げられる。導電材としては、一般に知られている導電材が使用可能であり、例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、金、銀の如き導電性金属または酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化チタンの如き導電性金属の酸化物、更にはカーボンブラックの如き導電粉が挙げられる。なお、これら導電材は必要に応じ疎水化、抵抗調整の目的で表面処理が施されていてもよい。使用に際しては、繊維との分散性や生産性を考慮して選択して用いる。
【0332】
接触帯電部材として帯電ブラシを用いる場合には、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状帯電ブラシとしては、例えば、導電性繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとすることができる。導電性繊維は繊維の太さが1〜20デニール(繊維径10〜500μm程度)、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108の本程度)のものが好ましく用いられる。
【0333】
帯電ブラシは、極力ブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本?数百本の微細な繊維から作ることも好ましく良い。例えば、300デニール/50フィラメントのように300デニールの微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。しかしながら、本発明においては、直接注入帯電の帯電ポイントを決定しているのは、主には帯電部材と像担持体との帯電当接部及びその近傍の導電性微粉体の介在密度に依存しているため、帯電部材の選択の範囲は広められている。
【0334】
帯電ブラシに用いられる芯金としては、帯電ローラ部材に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0335】
帯電ブラシの体積抵抗値は、ローラ部材の場合と同様に十分な帯電性と耐リークを得るには1×103〜1×108Ω・cmの抵抗であることが良く、より好ましくは1×104〜1×107Ω・cmの抵抗であることが良い)。
【0336】
帯電ブラシの材質としては、ユニチカ(株)製の導電性レーヨン繊維REC−B、REC−C、REC−M1、REC−M10、さらに東レ(株)製のSA−7、日本蚕毛(株)製のサンダーロン、カネボウ製のベルトロン、クラレ(株)製のクラカーボ、レーヨンにカーボンを分散したもの、三菱レーヨン(株)製のローバル等があるが、環境安定性の点でREC−B、REC−C、REC−M1、REC−M10が特に好ましく挙げられる。
【0337】
また、接触帯電部材が可撓性を有していることが、接触帯電部材と像担持体の当接部において導電性微粉体が像担持体に接触する機会を増加させ、高い接触性を得ることができ、直接注入帯電性を向上させる点で好ましく良い。つまり、接触帯電部材が導電性微粉体を介して密に像担持体に接触して、接触帯電部材と像担持体の当接部に存在する導電性微粉体が像担持体表面を隙間なく摺擦することで、接触帯電部材による像担持体の帯電は帯電促進粒子の存在により放電現象を用いない安定かつ安全な直接注入帯電が支配的となり、従来のローラ帯電等では得られなかった高い帯電効率が得られ、接触帯電部材に印加した電圧とほぼ同等の電位を像担持体に与えることができる。
【0338】
更に、当接部を形成する帯電部材の表面の移動速度と像担持体の表面の移動速度には、相対的速度差を設けることで、接触帯電部材と像担持体の当接部において、導電性微粉体が像担持体に接触する機会を格段に増加させ、より高い接触性を得ることができ、直接注入帯電性を向上させる点で好ましく良い。
【0339】
接触帯電部材と像担持体との当接部に導電性微粉体を介在させることにより、つまり導電性微粉体の潤滑効果(摩擦低減効果)により、接触帯電部材と像担持体との間に大幅なトルクの増大及び接触帯電部材及び像担持体表面の顕著な削れ等を伴うことなく速度差を設けることが可能となる。
【0340】
帯電部に持ち運ばれる像担持体上の転写残トナーを接触帯電部材に一時的に回収し均すために、接触帯電部材と像担持体は、当接部において互いに逆方向に移動させることが好ましく良い。例えば、接触帯電部材を回転駆動し、さらに、その回転方向は像担持体表面の移動方向とは逆方向に回転するように構成することが望ましい。即ち、逆方向回転で像担持体上の転写残トナーを一旦引き離し帯電を行うことにより優位に直接注入帯電を行うことが可能である。
【0341】
帯電部材を像担持体表面の移動方向と同じ方向に移動させて速度差をもたせることも可能であるが、直接注入帯電の帯電性は像担持体の周速と帯電部材の周速の比に依存するため、逆方向と同じ周速比を得るには順方向では帯電部材の回転数が逆方向の時に比べて大きくなるので、帯電部材を逆方向に移動させる方が回転数の点で有利である。
【0342】
速度差を設ける構成としては、接触帯電部材を回転駆動して像担持体と該接触帯電部材に速度差を設けることができる。ここで記述した周速比は、下式(V)で表せる(帯電部材周速は当接部において帯電部材表面が像担持体表面と同じ方向に移動するとき正の値である)。
周速比(%)=(帯電部材周速/像担持体周速)×100 式(V)
相対速度差を示す指標としては、次式(VI)で表される相対移動速度比がある。
相対移動速度比(%)=|(Vc−Vp)/Vp|×100 式(VI)
(式中、Vcは帯電部材表面の移動速度、Vpは像担持体表面の移動速度であり、Vcは、当接部において帯電部材表面が像担持体表面と同じ方向に移動するとき、Vpと同符号の値とする。)
相対移動速度比は、通常には10〜500%である。
【0343】
像担持体上の転写残トナーを一時的に回収するとともに導電性微粉体を担持し直接注入帯電を優位に実行する上でも、接触帯電部材として前述したような可撓性部材である導電性弾性のローラ部材または回動可能な帯電ブラシロールを用いることが好ましい。
【0344】
また、本発明の画像形成方法において、像担持体の最表面層の体積抵抗値は、1×109〜1×1014Ω・cmであることにより、より良好な帯電性を与えることができるため好ましい。電荷の直接注入による帯電方式においては、被帯電体である感光体側の抵抗を下げることでより効率良く電荷の授受が行えるようになる。このためには、最表面層の体積抵抗値としては1×1014Ω・cm以下であることが好ましく良い。一方、像担持体として静電潜像を一定時間保持する必要するためには、最表面層の体積抵抗値としては1×109Ω・cm以上であることが好ましく良い。
【0345】
更に、像担持体が電子写真感光体であり、該電子写真感光体の最表面層の体積抵抗値が1×109〜1×1014Ω・cmであることにより、プロセススピードの速い装置においても、十分な帯電性を与えることができより好ましい。
【0346】
また、像担持体は、光導電性物質を利用した感光体であることが好ましく、より具体的にはアモルファスセレン、CdS、ZnO2、アモルファスシリコン又は有機系感光物質の様な光導電絶縁物質層を持つ感光ドラムもしくは感光ベルトであることが好ましく、アモルファスシリコン感光層、又は有機感光層を有する感光体が特に好ましく用いられる。
【0347】
また、本発明において、感光体表面の水に対する接触角は85度以上であることが好ましく、このような感光体とするには、感光体表面が高分子結着剤を主体とし、さらに離型性を付与することによって構成されるものを用いることができる。例えば、セレン、アモルファスシリコンの如き無機感光体の上に樹脂を主体とした表面層を設ける場合、又は機能分離型感光体の電荷輸送層として、電荷輸送物質と樹脂からなる表面層をもつ場合、さらにその上に上記のような表面層を設ける場合等がある。このような表面層に離型性を付与する手段としては、下記のことが挙げられる。
(1)膜を構成する樹脂自体に表面エネルギーの低いものを用いる。
(2)撥水、親油性を付与するような添加剤を加える。
(3)高い離型性を有する材料を粉体状にして樹脂中に分散する。
【0348】
(1)の例としては、樹脂の構造中にフッ素含有基、シリコーン含有基等を導入することにより達成する。(2)としては、界面活性剤等を添加剤とすればよい。(3)の材料である離型性粉体としては、フッ素原子を含む化合物、すなわちポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化カーボンが挙げられる。
【0349】
これらの手段によって感光体表面の水に対する接触角を85度以上とすることができ、トナーの転写性及び感光体の耐久性を一層向上させることができる。好ましくは90度以上がよい。この中でも特にポリ4フッ化エチレンが好適である。本発明においては、(3)の含フッ素樹脂などの離型性粉体の最表面層への分散する手段が好適である。この場合、表面層の樹脂に加える離型性粉体の量を多くすれば、水に対する接触角を大きくすることができる。
【0350】
接触角の測定は、滴下式の接触角計により水の自由表面が感光体に接する場所で、液面と感光体表面のなす角(液の内部にある角)で定義する。
【0351】
なお、上記測定は室温(約21〜25℃)で行われるものとする。
【0352】
離型性粉体を表面に含有させるためには、バインダー樹脂中に上記離型性粉体を分散させた層を感光体最表面に設けるか、または、元々樹脂を主体として構成されている有機感光体であれば、新たに表面層を設けなくても、最上層に離型性粉体を分散させれば良い。添加量は、表面層総質量に対して、1〜60質量%、さらには、2〜50質量%が好ましい。1質量%より少ないとトナーの転写性及び感光体の耐久性改善の効果が不十分であり、60質量%を超えると膜の強度が低下したり、感光体への入射光量が著しく低下したりするため、好ましくない。
【0353】
本発明は、帯電手段が帯電部材を、像担持体である感光体に当接部を形成するように当接させて、電圧を印加することにより感光体を帯電させる直接帯電法が必須構成であるが、帯電手段が感光体に接することのないコロナ放電等による方法にくらべて感光体表面に対する負荷が大きいので、本発明において感光体を上記の構成に変わって下記の構成とすることがより好ましい。
【0354】
有機感光層として、感光層が電荷発生物質及び電荷輸送物質を同一に含有する単一層型でもよく、または電荷輸送層と電荷発生層を有する機能分離型感光層であっても良い感光層を用いる。即ち、導電性基板上に有機感光層を設け、その表面に保護層を設ける。導電性基体上に電荷発生層、次いで電荷輸送層の順で積層されている構造の積層型感光層は好ましい例の一つである。
【0355】
導電性基体としては、アルミニウム・ステンレスの如き金属、アルミニウム合金・酸化インジウム−酸化錫合金による被膜層を有するプラスチック、導電性粒子を含侵させた紙・プラスチック、導電性ポリマーを有するプラスチック等の円筒状シリンダー及びフィルムが挙げられる。
【0356】
これら導電性基体上には、感光層の接着性向上・塗工性改良・基体の保護・基体上に欠陥の被覆・基体からの電荷注入性改良・感光層の電気的破壊に対する保護等を目的として、下引き層を設けても良い。下引き層は、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、カゼイン、ポリアミド、共重合ナイロン、ニカワ、ゼラチン、ポリウレタン、酸化アルミニウムによって形成されうる。その膜厚は通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜3μm程度であるのが好ましい。
【0357】
電荷発生層は、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素、セレン・非晶質シリコンの如き無機物質の電荷発生物質を適当な結着剤に分散し塗工するか、または蒸着する等により形成される。電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、広範囲な結着樹脂から選択できるが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂の如き樹脂が挙げられる。電荷発生層中に含有される結着樹脂の量は80質量%以下、好ましくは0〜40質量%である。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下、特には0.05〜2μmが好ましい。
【0358】
電荷輸送層は、電界の存在下で電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は電荷輸送物質を必要に応じて結着樹脂と共に溶剤中に溶解し、塗工することによって形成され、その膜厚は一般的には5〜40μmである。電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にビフェニレン、アントラセン、ピレン、フェナントレンといった構造を有する多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、オキサジアゾール、ピラゾリンの如き含窒素環式化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、セレン、セレン−テルル、非晶質シリコン、硫化カドニウムが挙げられる。また、これら電荷輸送物質を分散させる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンの如き有機光導電性ポリマーが挙げられる。
【0359】
表面層として保護層を設けてもよい。保護層の樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、またはこれらの樹脂を硬化剤により硬化した樹脂が単独あるいは二種以上組み合わされて用いられる。
【0360】
また、保護層の樹脂中に導電性微粒子を分散していることが好ましい。そのような導電性微粒子の例としては、金属、金属酸化物が挙げられ、好ましくは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化スズ被膜酸化チタン、スズ被膜酸化インジウム、アンチモン被膜酸化スズ、酸化ジルコニウムの如き金属酸化物の超微粒子がある。これらは単独で用いても二種以上を混合して用いても良い。
【0361】
さらに保護層の樹脂中には、潤滑性微粒子が分散されることが好ましい。潤滑性微粒子としては、フッ素樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子及びポリオレフィン系樹脂粒子から選ばれる少なくとも一種以上を用いる。
【0362】
一般的に保護層に粒子を分散させる場合、分散粒子による入射光の散乱を防ぐために入射光の波長よりも粒子の粒径の方が小さいことが必要であり、本発明における保護層に分散される導電性微粒子、絶縁性の潤滑性微粒子の体積平均粒径としては0.5μm以下であることが好ましい。また、保護層中でのこれらの含有量は、保護層総質量に対して2〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましい。2質量%より少ない場合には、所望の体積抵抗値を得にくくなり、また90質量%より多い場合には、膜強度が低下してしまい保護層が削りとられやすくなり、感光体の寿命が短くなる傾向があり、また抵抗が低くなってしまい潜像電位が流れることによる画像不良を生じやすくなるためである。
【0363】
保護層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、1〜7μmがより好ましい。
【0364】
上記の樹脂層は、上記導電性基板に蒸着または塗布等で積層する方法が用いられる。積層の方法については、具体的には塗布にはバーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、アトライター、スプレー、浸漬塗布、静電塗布、粉体塗布が用いられる。上記塗布方法は、各層毎にその構成成分を有機溶媒等に溶解、分散させた溶液または分散液等を上記の方法より塗布した後、溶媒を乾燥などにより除去することによって行うことができる。または、反応硬化型の結着樹脂を用いる場合には、各層構成成分を樹脂原料成分および必要に応じて添加される適当な有機溶媒等に溶解、分散させた溶液または分散液等を、上記の方法により塗布した後、例えば熱、光等により樹脂原料を反応硬化させ、さらに必要に応じて溶媒を乾燥等によって除去すればよい。
【0365】
感光体を製造する際に用いられる有機溶媒としては、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0366】
また、感光体の表面抵抗を調整することで、更に安定して均一に帯電を行うことができることから、感光体の表面に電荷注入層を設けることも好ましい。感光体の表面抵抗を調整することによって、電荷注入をより効率化または促進できる。電荷注入層は、樹脂中に導電性微粒子を分散させた形態が好ましく良い。
【0367】
電荷注入層を設ける形態としては、例えば、(I)セレン、アモルファスシリコンの如き無機感光体もしくは単一層型有機感光体の上に、電荷注入層を設ける場合、(I)機能分離型有機感光体の電荷輸送層として、電荷輸送物質と樹脂を有する表面層を持つものに電荷注入層としての機能を兼ねさせる場合(例えば、電荷輸送層として樹脂中に電荷輸送物質と導電性微粒子を分散させる、または電荷輸送物質自体もしくはその存在状態によって、電荷輸送層に電荷注入層としての機能を持たせる場合)、(III)さらに機能分離型有機感光体上に最表面層として電荷注入層を設ける場合等があるが、最表面層の体積抵抗が本発明における上記範囲にあることが好ましい。また、この場合は、電荷注入層に上記潤滑性微粒子を分散させることも可能である。
【0368】
電荷注入層としては、例えば、金属蒸着膜等の無機の層、または導電性微粒子を結着樹脂中に分散させた導電粉分散樹脂層等によって構成され、蒸着膜は蒸着、導電粉分散樹脂層はディッピング塗工法、スプレー塗工法、ロールコート塗工法及びビーム塗工法等の適当な塗工法にて塗工することによって形成される。また、絶縁性の結着樹脂に光透過性の高いイオン導電性を持つ樹脂を混合もしくは共重合させて構成するもの、または中抵抗で光導電性のある樹脂単体で構成するものでもよい。
【0369】
この中でも、感光体の最表面層が、少なくとも金属酸化物からなる上記導電性微粒子が分散された樹脂層であることが、電子写真感光体の表面の抵抗を下げることでより効率良く電荷の授受が行えるようにし、かつ感光体として静電潜像を保持している間に表面の抵抗を下げたことで静電潜像電荷が拡散することによる潜像のボケもしくは流れを抑制する上で好ましく良い。
【0370】
導電性微粒子分散層の場合、分散粒子による入射光の散乱を防ぐために入射光の波長よりも粒子の粒径の方が小さいことが必要であり、分散される導電性粒子の体積平均粒径としては0.5μm以下であることが好ましい。導電性微粒子の含有量は、最外層の総質量に対して2〜90質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく良い。2質量%より少ない場合には、所望の体積抵抗値を得にくくなり、また90質量%より多い場合には、膜強度が低下してしまい電荷注入層が削りとられやすくなり、感光体の寿命が短くなる傾向があり、また抵抗が低くなってしまい潜像電位が流れることによる画像不良を生じやすくなるためである。層厚は、0.1〜10μmが好ましく、潜像の輪郭のシャープさを得るためには、5μm以下であることがより好ましく、電荷注入層の耐久性の点からは1μm以上であることがより好ましい。
【0371】
また、電荷注入層の結着樹脂は下層の結着樹脂と同じとすることも可能であるが、この場合には電荷注入層の塗工時に下層(例えば電荷輸送層)の塗工面を乱してしまう可能性があるため、形成方法を特に選択する必要がある。
【0372】
図8は、表面層として電荷注入層を設けた感光体の層構成模型図である。即ち該感光体は、導電性基体(アルミニウムドラム基体)11上に、導電層12、正電荷注入防止層13、電荷発生層14、電荷輸送層15を順に塗工した一般的な有機感光体ドラムに電荷注入層16を塗布することにより、帯電性能を向上したものである。尚、電荷注入層には、導電粒子16aを分散させても良い。
【0373】
電荷注入層16として重要な点は、表層の体積抵抗値が1×109〜1×1014Ω・cmの範囲にあることである。本構成のように電荷注入層16を設けない場合でも、例えば電荷輸送層15が上記抵抗範囲に或る場合は同等の効果が得られる。例えば、表層の体積抵抗が約1×1013Ω・cmであるアモルファスシリコン感光体等を用いても同様に良好な帯電性が得られる。
【0374】
なお、本発明における像担持体の最表面層の体積抵抗値の測定方法は、表面に金を蒸着させたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に像担持体の最表面層と同様の組成からなる層を作成し、これを体積抵抗測定装置(ヒューレットパッカード社製4140BpAMATER)にて、23℃、65%の環境で100Vの電圧を印加して測定する方法が挙げられる。後述する本実施例においても、同様に測定できる。
【0375】
また、本発明においては、像担持体表面に離型性を付与することが好ましく、像担持体表面の水に対する接触角は85度以上であることが好ましい。より好ましくは像担持体表面の水に対する接触角は90度以上であることは前述と同様であり、同様な方法により達成される。
【0376】
次に、本発明の画像形成方法において好ましく適用される接触転写工程について具体的に説明する。
【0377】
接触転写工程とは、感光体と転写材を介して転写手段を当接しながら現像画像を転写材に静電転写するものであるが、転写手段の当接圧力としては線圧2.9N/m(3g/cm)以上であることが好ましく、より好ましくは19.6N/m(20g/cm)以上である。当接圧力としての線圧が2.9N/m(3g/cm)未満であると、転写材の搬送ずれや転写不良の発生が起こりやすくなるため好ましくない。
【0378】
また、接触転写工程における転写手段としては、転写ローラまたは転写ベルトを有する装置が使用される。図4に転写ローラの構成の一例を示す。33は像担持体(感光ドラム)であり、34は転写ローラである。転写ローラ34は、少なくとも芯金34aと導電性弾性層34bからなる。導電性弾性層34bはカーボンの如き導電材を分散させたウレタンやEPDMの如き体積抵抗1×106〜1×1010Ω・cm程度の弾性体で作られており、転写バイアス電源35により転写バイアスが印加されている。
【0379】
本発明の画像形成方法は、感光体の表面が有機化合物である様な画像形成装置に接触転写方法を用いる場合において特に有効である。即ち、有機化合物が感光体の表面層を形成している場合には、無機材料を用いた他の感光体よりもトナー粒子に含まれる結着樹脂との接着性が強く、転写性がより低下する傾向にあるためである。
【0380】
また、本発明の画像形成方法に接触転写方法を適用する場合、使用される感光体としては特に制限はないが、上述のものが挙げられる。また上記した様々な微粒子等も分散するなどしても良い。
【0381】
また、接触転写方法を適用した本発明の画像形成方法は、直径が50mm以下の小径の感光体を有する画像形成装置に対し特に有効に用いられる。即ち、小径感光体の場合には、同一の線圧に対する曲率が大きく、当接部における圧力の集中が起こりやすいためである。ベルト感光体でも同一の現象があると考えられるが、本発明は、転写部での曲率半径が25mm以下の画像形成装置に対しても有効である。
【0382】
また、本発明に使用されるトナー担持体の表面粗度(Ra)は、JIS中心線平均粗さ(Ra)で0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0383】
Raが0.2μm未満では、トナー担持体上の帯電量が高くなり現像性が不充分となることがある。Raが3.5μmを超えると、トナー担持体上のトナーコート層にむらが生じ、画像上で濃度むらとなることがある。さらに好ましくは、0.5〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。
【0384】
本発明において、トナー担持体の表面粗度Raは、JIS表面粗さ「JIS B 0601」に基づき、表面粗度測定器(サーフコーダSE−30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さに相当する。具体的には、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さRaとして2.5mmの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次式(VII)によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものを言う。後述する実施例においても、同様に測定できる。
【外3】
Figure 0003907418
【0385】
また、後述する樹脂層に微粒子を添加し、その粒径や添加量によっても表面粗さを調整できる。添加される微粒子とは、後述する導電性微粒子、樹脂層を構成する樹脂に完全相溶しない有機物、無機物の粒子を指す。
【0386】
上記のような性質を有するトナー担持体としては、アルミニウム、ステンレススチールの如き金属又は合金で形成される導電性円筒(以下、「現像スリーブ」または「現像ローラ」ともいう)が好ましく使用される。充分な機械的強度及び導電性を有する樹脂組成物で導電性円筒が形成されていても良く、導電性のゴムローラを用いても良い。また、上記のような円筒状に限らず、回転駆動する無端ベルトの形態をしても良い。
【0387】
さらに、本発明に係わる磁性トナーは高い帯電能力を有するために、現像に際しては磁性トナーの総帯電量をコントロールすることが望ましく、本発明に係わるトナー担持体の表面は、導電性微粒子及び/又は滑剤を分散した樹脂層で被覆されていることが好ましい。
【0388】
トナー担持体の被覆層において、樹脂材料に含まれる導電性微粒子は、14.7MPa(120kg/cm2)で加圧した後の抵抗値が0.5Ω・cm以下であるものが好ましい。
【0389】
トナー担持体の表面の樹脂層に用いられる導電性微粒子としては、カーボン微粒子、カーボン微粒子と結晶性グラファイトとの混合物、または結晶性グラファイトが好ましい。導電性微粒子は、体積平均粒径0.005〜10μmを有するものが好ましい。
【0390】
トナー担持体の表面の樹脂層に用いられる樹脂材料は、例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を使用することができる。
【0391】
中でもシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、またはポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン系樹脂のような機械的性質に優れたものがより好ましい。特に、フェノール樹脂が好ましい。
【0392】
トナー担持体の表面の樹脂層に用いられる導電性微粒子は、上記樹脂成分10質量部当たり、3〜20質量部使用するのが好ましい。カーボン微粒子とグラファイト粒子を組み合わせて使用する場合は、グラファイト10質量部当たり、カーボン微粒子1〜50質量部を使用するのが好ましい。
【0393】
導電性微粒子が分散されているスリーブの樹脂コート層の体積抵抗率は、1×10-6〜1×106Ω・cmが好ましい。
【0394】
本発明における現像工程は、トナー担持体上に5〜50g/m2のトナー層を形成することが好ましい。トナー担持体上のトナー量が5g/m2よりも小さいと、十分な画像濃度が得られ難く、トナーの帯電が過剰になることによるトナー層のムラを生じることがある。トナー担持体上のトナー量が50g/m2よりも多くなると、トナー飛散を生じやすくなる。
【0395】
本発明においては、トナー担持体上のトナーを規制するトナー層厚規制部材が、トナーを介してトナー担持体に当接されていることによって、トナー担持体上に担持されたトナー量を規制することが、トナーが温湿度環境の影響を受けにくく、トナー飛散の起こりにくい均一な帯電を得る観点から特に好ましい。
【0396】
該トナー層厚規制部材は、弾性部材によって規制されることが磁性トナーを均一帯電させる観点から特に好ましい。
【0397】
また本発明においては、現像工程において、感光体とトナー担持体とを一定の間隙を設けて対向するように配置されている。カブリの無い高画質を得るためにトナー担持体上にトナー担持体と感光体の最近接間隙(以下、「S−D間」ともいう)よりも小さい層厚で、磁性トナーを塗布し、交流電界を印加して現像を行う現像工程で現像されることが好ましい。すなわち、トナー担持体上の磁性トナーを規制するトナー層厚規制部材によってトナー担持体上のトナー層厚よりも感光体とトナー担持体の最近接間隙が広くなるように設定して用いることが好ましい。
【0398】
本発明において、非接触型現像方法を適用するために、トナー担持体の像担持体に対する離間距離よりもトナー担持体上のトナー層を薄く形成することが好ましく良い。現像工程は像担持体に対してトナー層を非接触として、像担持体の静電潜像をトナー画像として可視化する非接触型現像方法を適用することで、電気抵抗値が低い導電性微粉体をトナー中に添加しても、現像バイアスが像担持体へ注入することによる現像かぶりが発生しない。そのため、良好な画像を得ることができる。
【0399】
また、トナー担持体は像担持体に対して100〜1000μmの離間距離を有して対向して設置されることが好ましく良い。トナー担持体の像担持体に対する離間距離が100μmよりも小さいと、離間距離の振れに対するトナーの現像特性の変化が大きくなるため、安定した画像性を満足する画像形成装置を量産することが困難となる。トナー担持体の像担持体に対する離間距離が1000μmよりも大きいと、像担持体上の潜像に対するトナーの追従性が低下するために、解像性の低下、画像濃度の低下等の画質低下を招くことがある。好ましくは120〜500μmがよい。
【0400】
また本発明においては、トナーを担持するトナー担持体表面は、像担持体表面の移動方向と同方向に移動していてもよいし、逆方向に移動していてもよい。その移動方向が同方向である場合、像担持体の移動速度に対して、比で0.7倍以上であることが望ましい。0.7倍未満であると、画像品質が悪いことがある。移動速度比が高まれば高まるほど、現像部位に供給されるトナーの量は多く、潜像に対しトナーの脱着頻度が多くなり、不要な部分は掻き落とされ必要な部分には付与されるという繰り返しにより、潜像に忠実な画像が得られる。逆に、機械的な制限のために7倍以下行うことが現実的である。トナー担持体表面の移動速度が像担持体表面の移動速度に対し、1.05〜3.00倍の速度であることが好ましい。
【0401】
本発明において、トナー担持体に対して交流電界を印加して現像を行う現像工程で現像されることが好ましいが、印加現像バイアスは直流電圧に交流電圧(交番電圧)を重畳してもよい。
【0402】
交流電圧の波形としては、正弦波、矩形波、三角波が、適宜使用可能である。また、直流電源を周期的にオン/オフすることによって形成されたパルス波であっても良い。このように交番電圧の波形としては周期的にその電圧値が変化するようなバイアスが使用できる。
【0403】
トナー担持体と像担持体との間に、少なくともピークトゥーピークの電界強度で3×106〜1×107V/m、周波数100〜5000Hzの交流電界を現像バイアスとして印加することが好ましい。
【0404】
トナー担持体と像担持体との間に印加される現像バイアスの電界強度が3×106V/mよりも小さいと、現像装置への転写残トナーの回収性が低下し、回収不良によるカブリを生じ易くなる。また、現像力が小さいために画像濃度の低い画像となり易い。一方、現像バイアスの電界強度が1×107V/mよりも大きいと現像力が大き過ぎることによる細線の潰れによる解像性の低下、カブリの増大による画質低下を生じ易く、現像バイアスの像担持体へのリークによる画像欠陥を生じ易くなる。また、トナー担持体と像担持体との間に印加される現像バイアスの交流成分の周波数が100Hzよりも小さいと、潜像に対するトナーの脱着頻度が少なくなり、現像装置への転写残トナーの回収性が低下しやすく、画像品質も低下し易い。現像バイアスの交流成分の周波数が5000Hzよりも大きいと、電界の変化に追従できるトナーが少なくなるために、転写残トナーの回収性が低下し、現像性が低下することがある。
【0405】
交流電界を現像バイアスとして印加する等によって、トナー担持体と像担持体間に高電位差がある場合でも、現像部による像担持体への電荷注入が生じないため、トナー担持体側のトナー中に添加された導電性微粉体が均等に像担持体側に移行されやすく、均一に導電性微粉体を像担持体に塗布し、帯電部で均一な接触を行い、良好な帯電性を得ることが出来る。
【0406】
本発明において磁場79.6kA/mにおける磁化の強さを規定する理由は、磁性粉体の磁気特性を表す量としては、磁気飽和における磁化の強さ(飽和磁化)が用いられるが、本発明においては画像形成装置内で実際に磁性トナーに作用する磁場における磁性トナーの磁化の強さが重要であるためである。画像形成装置に磁性トナーが適用される場合、磁性トナーに作用する磁場は、画像装置外への磁場の漏洩を大きくしないため、または磁場発生源のコストを低く抑えるために、市販されている多くの画像形成装置において数十から百数十kA/mであり、画像形成装置内で実際に磁性トナーに作用する磁場の代表的な値として磁場79.6kA/m(1000エルステッド)を選択し、磁場79.6kA/mにおける磁化の強さを規定した。
【0407】
このような磁性トナーを得る手段としては、トナー粒子に磁性粉体を含有させる。トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10Am2/kg(emu/g)よりも小さいと磁気力によりトナー搬送を行うことが困難となり、トナー担持体上に均一にトナーを担持させることができなくなる。磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが50Am2/kg(emu/g)よりも大きいとトナー粒子に含有させる磁性粉体量が多いために、定着性が低下する。
【0408】
本発明においては、像担持体の帯電面に静電潜像を形成する潜像形成手段が、像露光手段であることが好ましい。静電潜像形成のための画像露光手段としては、デジタル的な潜像を形成するレーザー走査露光手段に限定されるものではなく、通常のアナログ的な画像露光やLEDなどの他の発光素子でも構わないし、蛍光燈等の発光素子と液晶シャッター等の組み合わせによるものなど、画像情報に対応した静電潜像を形成できるものであるなら構わない。
【0409】
また、像担持体は静電記録誘電体等であっても良い。この場合は、該誘電体面を所定の極性・電位に一様に一次帯電した後、除電針ヘッド、電子銃等の除電手段で選択的に除電して目的の静電潜像を書き込み形成する。
【0410】
本発明のトナーは、磁性粉体の粒度分布が均一であるため、磁性粉体の分散性が均一、かつ良好である。さらに、トナーの形状、表面性も均一である。これらのことからトナーの帯電速度、帯電量分布が揃い、転写残トナーも少ないものである。このような本発明のトナーを前記の画像形成方法及び画像形成装置に適用すると、転写残トナーも僅かであり、その転写残トナーも帯電部通過時に迅速に帯電し、トナー担持体に速やかに回収、または現像される。しかも、形状に起因して導電性微粉体との付着力が適度にコントロールしやすく帯電部へ、より効果的に供給されるものである。
【0411】
<5>本発明のプロセスカートリッジ
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の画像形成装置から着脱可能に構成されており、像担持体と帯電手段とからなる群から選ばれる少なくとも1つの手段が、現像手段と一体に支持されているものである。このようなプロセスカートリッジは、従来より知られているように、例えば、選ばれた上記手段等を樹脂製の枠体などによる支持部材によってプロセス位置に支持することにより構成され、上記手段等を支持した支持部材(プロセスカートリッジ)をプロセス位置に案内するレール等の案内部材を画像形成装置本体に設ければ良い。
【0412】
本発明のプロセスカートリッジにおいて使用される現像手段は、トナー、トナーを収容するトナー容器、トナー担持体等を有している。
【0413】
プロセスカートリッジにおいて使用されるトナー、トナー担持体、像担持体および帯電手段は、本発明の画像形成装置に用いられる、上述したものを用いることが好ましい。
【0414】
上記構成のように現像手段が、着脱可能となるプロセスカートリッジであることにより、帯電手段や感光体やトナーの寿命が終了したとしても、各々の手段、部材を変更するだけで画像形成装置としては成立し、無駄なく使用することができる。
【0415】
【実施例】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
【0416】
A.磁性粉体の製造
以下のようにして、表面処理磁性粉体1〜8を得た。
【0417】
<表面処理磁性粉体1>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で1.0質量%のヘキサメタリン酸ソーダ、鉄元素に対しケイ素元素換算で1.0質量%のケイ酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを13前後に維持しながら空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過して一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを約6に調整し、十分攪拌しながらシランカップリング剤(n−C1021Si(OCH33)を磁性酸化鉄に対し1.0質量部(磁性粒子の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性磁性粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで若干凝集している粒子を解砕処理して、表面処理磁性粉体1を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0418】
<表面処理磁性粉体2>
表面処理磁性体1の製造に於いて、酸化反応を行う際の空気の吹き込み速度を変えた以外は同様にして表面処理磁性粉体2を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0419】
<表面処理磁性粉体3>
表面処理磁性体1の製造に於いて、シランカップリング剤を(n−C613Si(OCH33)とする以外は同様にして表面処理磁性粉体3を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0420】
<表面処理磁性粉体4>
表面処理磁性体1の製造に於いて、シランカップリング剤の添加量を0.2質量部とする以外は同様にして表面処理磁性体4を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0421】
<表面処理磁性粉体5>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で1.0質量%のヘキサメタリン酸ソーダ、鉄元素に対してケイ素元素換算で1.0質量%のケイ酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8前後に維持しながら空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、磁性粒子のスラリー液を得た。洗浄、濾過した後この含水スラリー液を一旦取り出した。その後、表面処理磁性粉体1の製造と同様にして上記磁性粉体の湿式表面処理および後処理を行い、表面処理磁性粉体5を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0422】
<表面処理磁性粉体6>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH13に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0423】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を行い、磁性粒子のスラリー液を得た。その後、生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過後、表面処理を行わずに乾燥し、凝集している粒子を解砕処理し未処理磁性粉体を得た。さらに、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)で前記の未処理磁性粉体を撹拌しつつシランカップリング剤(n−C613Si(OCH33)0.2質量部を添加して乾式表面処理を行い、表面処理磁性粉体6を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0424】
<表面処理磁性粉体7>
表面処理磁性粉体1の製造と同様に酸化反応を進め、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過後、表面処理を行わずに乾燥し、凝集している粒子を解砕処理し未処理磁性粉体を得た。さらに、さらに、ヘンシェルミキサーで前記の未処理磁性粉体を撹拌しつつシランカップリング剤(n−C613Si(OCH33)0.2質量部を添加して乾式表面処理を行い、表面処理磁性粉体7を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0425】
<表面処理磁性粉体8>
攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管および温度計を備えたフラスコにポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ(株)製)0.1部を溶解した脱イオン水200部を仕込んだ。そこへ予め調製しておいたスチレン97.5部およびグリシジルメタクリレート2.5部からなる重合性単量体にベンゾイルパーオキサイド8部を溶解した混合物を仕込み、高速で攪拌して均一な懸濁液とした。次いで窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて重合反応を行った。その後に濾過、水洗、乾燥を行って、エポキシ基を含有する樹脂を得た。
【0426】
一方、表面処理磁性粉体1の製造と同様に酸化反応を進め、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過後、表面処理を行わずに、乾燥し、凝集している粒子を解砕処理し未処理磁性粉体を得た。この未処理磁性粉体80部と上記エポキシ基を含有する樹脂20部とをラボブラストミルを用いて180℃、100rpmの条件下に30分間混練して、エポキシ基を含有する樹脂と磁性粉体とを反応させた。冷却した後、粉砕して、表面処理磁性粉体8を得た。得られた磁性粉体の物性を表1に示す。
【0427】
【表1】
Figure 0003907418
【0428】
B.導電性微粉体の製造
以下のようにして、導電性微粉体1〜5を得た。
【0429】
<導電性微粉体1>
一次粒径0.1〜0.3μmの酸化亜鉛一次粒子を圧力により造粒した、体積平均粒径3.7μm、粒度分布における0.5μm以下が6.6体積%、5μm以上が8個数%、抵抗80Ω・cm、白色の微粒子酸化亜鉛を導電性微粉体1とする。
【0430】
この導電性微粉体1は、走査型電子顕微鏡にて3000倍及び3万倍で観察したところ、一次粒径0.1〜0.3μmの酸化亜鉛一次粒子と粒径1〜10μmの凝集体からなっていた。
【0431】
後述する実施例1の画像形成装置で画像露光に用いられるレーザビームスキャナの露光光波長740nmにあわせて、波長740nmの光源を用いて、この波長域における透過率をX−Rite社製310T透過型濃度計を用い測定したところ、この導電性微粉体1の透過率はおよそ35%であった。
【0432】
導電性微粉体1の代表的物性値を下記表2に示す。
【0433】
<導電性微粉体2>
導電性微粒体1を風力分級して得られた、体積平均粒径2.4μm、粒度分布における0.5μm以下が4.1体積%、5μm以上が1個数%、抵抗440Ω・cm、透過率35%の微粒子酸化亜鉛を導電性微粉体2とする。
【0434】
この導電性微粉体2は、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、一次粒径0.1〜0.3μmの酸化亜鉛一次粒子と粒径1〜5μmの凝集体からなっていたが、導電性微粉体1と比較すると、一次粒子は減少していた。代表的物性値を下記表2に示す。
【0435】
<導電性微粉体3>
導電性微粒体1を風力分級して得られた、体積平均粒径1.5μm、粒度分布における0.5μm以下が35体積%、5μm以上が0個数%、抵抗1500Ω・cm、透過率35%の微粒子酸化亜鉛を導電性微粉体3とする。
【0436】
この導電性微粉体3は、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、一次粒径0.1〜0.3μmの酸化亜鉛一次粒子と粒径1〜4μmの凝集体からなっていたが、導電性微粉体1と比較すると、一次粒子は増加していた。代表的物性値を下記表2に示す。
【0437】
<導電性微粉体4>
体積平均粒径0.3μm、粒度分布における0.5μm以下が80体積%、5μm以上が0個数%、一次粒径0.1〜0.3μm、抵抗100Ω・cm、透過率35%、白色の微粒子酸化亜鉛を導電性微粉体4とする。
【0438】
この導電性微粉体4は、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、凝集体の少ない一次粒径0.1〜0.3μmの酸化亜鉛一次粒子からなっていた。代表的物性値を下記表2に示す。
【0439】
<導電性微粉体5>
酸化スズ・アンチモンで表面処理された体積平均粒径2.8μmのホウ酸アルミニウムを風力分級によって粗粒子を除いた後に、水系に分散しての濾過を繰り返し行うことで微粒子を除き、体積平均粒径3.2μm、粒度分布における0.5μm以下が0.4体積%、5μm以上が1個数%の灰白色の導電性微粉体を得た。これを導電性微粉体5とする。代表的物性値を下記表2に示す。
【0440】
【表2】
Figure 0003907418
【0441】
C.磁性トナーの製造
<磁性トナーA>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し、80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 77質量部
・ラウリルメタクリレート 23質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体1 100質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8質量部を溶解した。
【0442】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で4時間反応させ、無水炭酸ナトリウム4質量部を系内に添加した後、さらに2時間反応を継続した(反応終了後の懸濁液のpHは10.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社(株)製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて以下のような操作を行った。
【0443】
まず、アルカリ性の懸濁液の脱水をベルト上で行い、次いでトータル量1000質量部の水をシャワーリングして水洗を行い、懸濁液中に含まれる2−エチルヘキサン酸ナトリウム(これは重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの分解により副生した2−エチルヘキサン酸が、炭酸ナトリウムにより中和されたものである)の除去を行った。さらに、ベルト上で1000質量部の希塩酸(pH1.0)での洗浄、1000質量部の水での水洗、そして脱水を行うことで、2−エチルヘキサン酸および分散剤として使用したリン酸カルシウムが実質的に除去された磁性トナー粒子を得た。その後、この含水磁性トナー粒子を乾燥して体積平均粒径7.2μmの磁性トナー粒子Aを得た。
【0444】
この磁性トナー粒子Aの100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面を処理した後シリコーンオイルで処理した個数平均一次粒径が9nmの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーAを調製した。磁性トナーAの物性を表3及び表4に示す。尚、後述する値(b/a)は、26/100であった。
【0445】
<磁性トナーB>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性粉体2を使用する以外は、磁性トナーAと同様にして磁性トナーBを調製した。磁性トナーBの物性を表3及び表4に示す。
【0446】
<磁性トナーC>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性粉体3を使用する以外は、磁性トナーAと同様にして磁性トナーCを調製した。磁性トナーCの物性を表3及び表4に示す。
【0447】
<磁性トナーD>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性粉体4を使用する以外は、磁性トナーAと同様にして磁性トナーDを調製した。磁性トナーDの物性を表3及び表4に示す。
【0448】
<磁性トナーE>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性粉体5を使用する以外は、磁性トナーAと同様にして磁性トナーEを調製した。磁性トナーEの物性を表3及び表4に示す。
【0449】
<磁性トナーF>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した個数平均一次粒径が9nmの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーFを調製した。磁性トナーFの物性を表3及び表4に示す。
【0450】
<磁性トナーG>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 77質量部
・ラウリルメタクリレート 23質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体1 100質量部
上記処方をアトライターを用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8質量部を溶解した。
【0451】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で6時間反応させた(反応終了後の懸濁液のpHは9.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、希塩酸を加えてpH1.0として1時間撹拌した。その後、懸濁液を連続ベルトフィルターにより濾過、水洗し、乾燥して体積平均粒径7.3μmの磁性トナー粒子Gを得た。
【0452】
この磁性トナー粒子G100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーGを調製した。磁性トナーGの物性を表3及び表4に示す。
【0453】
<磁性トナーH>
イオン交換水292質量部に1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 77質量部
・ラウリルメタクリレート 23質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体1 100質量部
上記処方をアトライターを用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0454】
この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8質量部を溶解した。
【0455】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で6時間反応させた(反応終了後の懸濁液のpHは9.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、懸濁液をヌッチェで吸引濾過し、トナー粒子を100質量部の水で水洗した。その後、トナー粒子をpH1.0の希塩酸にリスラリーし、1時間撹拌した。さらに、トナー粒子をヌッチェで吸引濾過し、充分に水洗を行った後、乾燥して体積平均粒径7.0μmの磁性トナー粒子Hを得た。
【0456】
この磁性トナー粒子Hを100質量部と、磁性トナーAにおいて使用した疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーHを調製した。磁性トナーHの物性を表3及び表4に示す。
【0457】
<磁性トナーI>
得られたトナー粒子の処理において、100質量部の水の代わりに200質量部のpH11.0のアルカリ水溶液で水洗する以外は、磁性トナーHと同様にして磁性トナーIを調製した。磁性トナーIの物性を表3及び表4に示す。
【0458】
<磁性トナーJ>
エステルワックスの使用量を51質量部とする以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーJを得た。磁性トナーJの物性を表3及び表4に示す。
【0459】
<磁性トナーK>
エステルワックスの使用量を0.4質量部とする以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーKを得た。磁性トナーKの物性を表3及び表4に示す。
【0460】
<磁性トナーL>
エステルワックスに代えて、示差熱分析における吸熱ピーク温度が120℃の低分子量ポリエチレンワックスを20質量部用いる以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーLを得た。磁性トナーLの物性を表3及び表4に示す。
【0461】
<磁性トナーM>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性体2を50質量部用いる以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーMを得た。磁性トナーMの物性を表3及び表4に示す。
【0462】
<磁性トナーN>
表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性体2を150質量部とする以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーNを得た。磁性トナーNの物性を表3及び表4に示す。
【0463】
<磁性トナーO>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 77質量部
・ラウリルメタクリレート 23質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体1 100質量部
上記処方をアトライターを用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0464】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート7質量部を溶解した。
【0465】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で4時間反応させ、無水炭酸ナトリウム4質量部を系内に添加した後、さらに80℃で2時間反応を継続した(反応終了後の懸濁液のpHは10.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、フィルタープレス(栗田機械製作所(株)製)を用いて以下のような操作を行った。
【0466】
まず、アルカリ性の懸濁液をフィルタープレス内に導入してトナー粒子の濾過を行う。次いでトータル量1000質量部の水を濾枠内に流し、懸濁液中のネオデカン酸ナトリウム(これは重合開始剤であるt−ブチルパーオキシネオデカノエートの分解により副生したネオデカン酸が、炭酸ナトリウムにより中和されたものである)を除去する。さらに、pH1.0の希塩酸を濾枠内に流し、トナー粒子表面に付着しているリン酸カルシウムを溶解除去する。その後、濾枠内に水を流し、充分に洗浄を行う。そして圧搾、エアーブローを行うことで、ネオデカン酸および分散剤として使用したリン酸カルシウムが実質的に除去されたトナー粒子を得た。その後、この含水トナー粒子を乾燥して体積平均粒径7.1μmの磁性トナー粒子Oを得た。
【0467】
この磁性トナー粒子Oを100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面を処理した後シリコーンオイルで処理した個数平均一次粒径が9nmの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーOを調製した。磁性トナーOの物性を表3及び表4に示す。
【0468】
<磁性トナーP>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにt−ブチルパーオキシピバレート7質量部を使用し、重合温度を70℃とした以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーPを得た。磁性トナーPの物性を表3及び表4に示す。
【0469】
<磁性トナーQ>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにベンゾイルパーオキサイド8質量部を使用した以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーQを得た。磁性トナーQの物性を表3及び表4に示す。
【0470】
<磁性トナーR>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにラウロイルパーオキサイド10質量部を使用した以外は、磁性トナーAと同様にして、磁性トナーRを得た。磁性トナーRの物性を表3及び表4に示す。
【0471】
<磁性トナーS(比較例)>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 65質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート 35質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 10質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体1 120質量部
上記処方をアトライターを用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0472】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート7質量部を溶解した。
【0473】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で6時間反応させて前駆体粒子を得た。これを室温まで冷却し、この水系懸濁液中に超音波発振機にて調製したスチレン13.0質量部、2−エチルヘキシルアクリレート7.0質量部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.4質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1質量部、水20質量部からなる水乳濁液40.7質量部を滴下し、該前駆体粒子を膨潤させた。
【0474】
その後、窒素下にて攪拌を続けながら昇温し、80℃で4時間反応させし、無水炭酸ナトリウム4質量部を系内に添加した後、さらに80℃で2時間反応を継続した(反応終了後の懸濁液のpHは10.5であった)。反応終了後、磁性トナーAの場合と同様にして後処理を行い、トナー粒子Sを得た。このトナー粒子100部と、磁性トナーAの製造において使用した疎水性シリカ微粉体2.0部とをヘンシェルミキサーで混合して、トナーSを調製した。トナーSの物性を表5及び表6に示す。尚、後述する値(b/a)は、35/100であった。
【0475】
<磁性トナーT(比較用)>
表面処理磁性粉体1に代えて表面処理磁性粉体6を使用する以外は、磁性トナーGと同様にして、比較例として磁性トナーTを得た。磁性トナーTの物性を表5及び表6に示す。尚、後述する値(b/a)は、22/100であった。
【0476】
<磁性トナーU(比較用)>
表面処理磁性粉体1に代えて表面処理磁性粉体7を使用する以外は磁性トナーGと同様にして、比較例として磁性トナーUを得た。磁性トナーUの物性を表5及び表6に示す。
【0477】
<磁性トナーV(比較用)>
表面処理磁性粉体1に代えて表面処理磁性粉体8を使用する以外は磁性トナーGと同様にして、比較例として磁性トナーVを得た。磁性トナーVの物性を表5及び表6に示す。
【0478】
<磁性トナーW(比較用)>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15質量部を使用し、表面処理磁性粉体1の代わりに表面処理磁性粉体6を使用した以外は、磁性トナーGと同様にして、比較例として磁性トナーWを得た。磁性トナーWの物性を表5及び表6に示す。
【0479】
<磁性トナーX(比較用)>
表面処理磁性粉体6の代わりに表面処理磁性粉体7を使用した以外は、磁性トナーWと同様にして、比較例として磁性トナーXを得た。磁性トナーXの物性を表5及び表6に示す。
【0480】
<磁性トナーY(比較用)>
イオン交換水730質量部に1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 77質量部
・ラウリルメタクリレート 23質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体6 100質量部
上記処方をアトライターを用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0481】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が70℃のエステルワックス20質量部を添加混合し、これに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15質量部を溶解した。
【0482】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で3時間反応させ、さらに80℃に昇温して7時間反応させた。
【0483】
その後、懸濁液を冷却し、これに下記物質を定量ポンプを用いて滴下し、前記懸濁液中の粒子に吸着させた。
・スチレン 45質量部
・ステアリルメタクリレート 5質量部
・ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 4質量部
その後、70℃に昇温し、10時間保持した。反応終了後、懸濁液を冷却し、希塩酸を加えてpH1.0として1時間撹拌した。その後、濾過、乾燥して体積平均粒径7.8μmの磁性トナー粒子Yを得た。
【0484】
この磁性トナー粒子Yを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例としての磁性トナーYを調製した。磁性トナーYの物性を表5及び表6に示す。
【0485】
<磁性トナーZ(比較用)>
エマルゲン950(花王(株)製)を1質量部、ネオゲンR(第一工業製薬(株)製)を2質量部含有する水100質量部に、以下の物質を添加した。
・スチレン 76質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・アクリル酸 4質量部
過硫酸カリウム5質量部を触媒として用い、攪拌下70℃で8時間重合させて固形分50%の酸性極性基含有樹脂エマルジョンを得た。
【0486】
次に、下記混合物をディスパーを用いて攪拌しながら25℃に加熱した。
・上記酸性極性基含有樹脂エマルション 200質量部
・表面処理磁性粉体6 100質量部
・磁性トナーAの製造において使用したエステルワックス 20質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・水 350質量部
次いでこの分散溶液を約2時間攪拌した後60℃まで加熱し、これをアンモニアによってpH8.0に調整した。さらに、この分散液を90℃まで加熱し、5時間この温度を保ったところ、約8μmの粒子が得られた。この粒子の分散液を冷却、分離、水洗したのち乾燥させ、磁性トナー粒子Zを得た。この粒子を電子顕微鏡で観察したところ、重合体粒子と磁性粉体微粒子との二次粒子の会合粒子から成り立っている事が観察された。
【0487】
この磁性トナー粒子Yの100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例としての磁性トナーZを調製した。磁性トナーZの物性を表5及び表6に示す。
【0488】
<磁性トナーAA(比較用)>
・スチレン/ラウリルメタクリレート共重合体(質量比77/23) 100質量部
・飽和ポリエステル樹脂(Mp11000、Tg69℃) 3質量部
・負荷電性制御剤(アゾ系金属錯体) 0.5質量部
・表面処理磁性粉体6 100質量部
・磁性トナーAの製造において使用したエステルワックス 20質量部
上記材料をブレンダーにて混合し、140℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕後、得られた微粉砕物を風力分級して磁性トナー粒子AAを得た。その後衝撃式表面処理装置(処理温度50℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)を用いて球形化し、磁性トナー粒子AAを得た。
【0489】
この磁性トナー粒子AAの100質量部に対して磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部を加えた混合物をヘンシェルミキサーで混合し、比較例としての磁性トナーAAを調製した。磁性トナーAAの物性を表5及び表6に示す。
【0490】
<磁性トナーBB>
磁性トナーAの製造で用いたエステルワックスの代わりに、吸熱ピーク温度が、65℃のエステルワックスを用いる以外は磁性トナーAの製造と同様にして、磁性トナーBBを調製した。磁性トナーBBの物性を表3及び表4に示す。
【0491】
尚、磁性トナーの残留磁化(σr)及び磁化の強さは、前述した測定法に基づき測定した。また、トナー中における磁性体の分散状態は、前述したTEMによるトナー粒子の断層面観察を行い、目視により評価した。
【0492】
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断層面観察により、磁性トナー粒子中における疎水性酸化鉄の分散状態も評価した。
【0493】
TEMによる具体的な評価方法としては、上述したトナー粒子中の酸化鉄の体積平均粒径及び粒度分布を決定する場合と同様の方法で行った。
【0494】
トナー粒子内部での疎水性酸化鉄の分散状態の具体的評価は以下のように行った。トナーの数平均粒径の±10%の径を有する粒子断層面を抽出し、その断層面と中心を同じにして径が半分の相似図形を書く(相似図形の面積は粒子断層面面積の1/4となる)。
【0495】
次に、粒子断層面内(相似図形内も含む)に存在する0.03μm以上の疎水性酸化鉄粉末の個数を数え、その個数をaとする。同様に相似図形内に存在する0.03μm以上の疎水性酸化鉄粉末の個数を数え、その個数をbとする。こうして得られたa、bについてその比b/aを計算する。
【0496】
比b/aの値がそれぞれの面の面積比である1/4に近いほど、疎水性酸化鉄粉末がトナー粒子の中心から表層付近まで同じ存在量であること、即ち、トナー粒子内での疎水性酸化鉄の分散状態が均一であることを意味し、b/aの値が3/8〜1/5の範囲にあれば、ほぼ良好な分散がなされているといえる。
【0497】
【表3】
Figure 0003907418
【0498】
【表4】
Figure 0003907418
【0499】
【表5】
Figure 0003907418
【0500】
【表6】
Figure 0003907418
【0501】
<磁性トナーα>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーαを調製した。磁性トナーαの物性を表7及び表8に示す。
【0502】
<磁性トナーβ>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体2の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーβを調製した。磁性トナーβの物性を表7及び表8に示す。
【0503】
<磁性トナーγ>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体3の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーγを調製した。磁性トナーγの物性を表7及び表8に示す。
【0504】
<磁性トナーδ>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体4の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーδを調製した。磁性トナーδの物性を表7及び表8に示す。
【0505】
<磁性トナーε>
磁性トナー粒子Aを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体5の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーεを調製した。磁性トナーεの物性を表7及び表8に示す。
【0506】
<磁性トナーζ>
磁性トナー粒子Bを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および上記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、磁性トナーζを調製した。磁性トナーζの物性を表7及び表8に示す。
【0507】
<磁性トナーη(比較用)>
磁性トナー粒子Tを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例としての磁性トナーηを調製した。磁性トナーηの物性を表7及び表8に示す。
【0508】
<磁性トナーθ(比較用)>
磁性トナー粒子Wを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例としての磁性トナーθを調製した。磁性トナーθの物性を表7及び表8に示す。
【0509】
<磁性トナーι(比較用)>
磁性トナー粒子Xを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例用としての磁性トナーιを調製した。磁性トナーιの物性を表7及び表8に示す。
【0510】
<磁性トナーκ(比較用)>
磁性トナー粒子AAを100質量部と、磁性トナーAの製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の1.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合して、比較例用としての磁性トナーκを調製した。磁性トナーκの物性を表7及び表8に示す。
【0511】
【表7】
Figure 0003907418
【0512】
【表8】
Figure 0003907418
【0513】
D.感光体の製造
<感光体Aの製造>
感光体としては直径30mmのアルミニウムシリンダーを基体とした。これに、図3に示すような構成の層を順次浸漬塗布により積層して、感光体Aを作成した。
(1)第1層は導電被覆層(導電層)であり、酸化錫及び酸化チタンの粉末をフェノール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚15μm。
(2)第2層は下引き層であり、変性ナイロン及び共重合ナイロンを主体とする。膜厚0.6μm。
(3)第3層は電荷発生層であり、長波長域に吸収を持つアゾ顔料をブチラール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚0.6μm。
(4)第4層は電荷輸送層であり、ホール搬送性トリフェニルアミン化合物をポリカーボネート樹脂(オストワルド粘度法による分子量2万)に8:10の質量比で溶解したものを主体とし、さらにポリ4フッ化エチレン粉体(体積平均粒径0.2μm)を総固形分に対して10質量%添加し、均一に分散した。膜厚25μm。水に対する接触角は95度であった。
【0514】
なお、接触角の測定は、純水を用い、装置は、協和界面科学(株)、接触角計CA−X型を用いた。
【0515】
<実施例1>
画像形成装置として、LBP−1760を改造し、概ね図1に示されるものを用いた。
【0516】
像担持体としての感光体100には、感光体A(有機感光体(OPC)ドラム)を用いた。この感光体100に、帯電部材として、導電性カーボンを分散しナイロン樹脂で被覆された帯電ローラ117を当接させ(当接圧60g/cm)、直流電圧−700Vdcに交流電圧2.0kVppを重畳したバイアスを印加して、感光体上を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成する。この時、暗部電位Vd=−700V、明部電位VL=−150Vとした。
【0517】
トナー担持体として、下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.1μmの樹脂層を、表面をブラストした直径18mmのアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブ102を使用し、現像磁極94mT(940ガウス)、トナー層厚規制部材として厚み1.2mm、自由長1.2mmのシリコーンゴム製ブレードを19.6N/m(20g/cm)の線圧で当接させた。感光体100と現像スリーブ102との間隙は300μmとした。
・フェノール樹脂 100質量部
・グラファイト(体積平均粒径約7μm) 90質量部
・カーボンブラック 10質量部
次いで、現像バイアスとして、−450Vの直流電圧と周波数2000Hz、ピーク間電圧1600Vの交流電圧を重畳したものを用いた。また、現像スリーブの周速は感光体周速(70mm/sec)に対して順方向に110%のスピード(77mm/sec)とした。
【0518】
また、転写手段としては、図4のような転写ローラ34(導電性カーボンを分散したエチレン−プロピレンゴム製である、導電性弾性層34bの体積抵抗値1×108Ω・cm、表面ゴム硬度24度、直径20mm、当接圧59N/m(60g/cm)を図4中矢印A方向の感光体周速(70mm/sec)に対して等速とし、転写バイアスは直流電圧1.5kVとした。
【0519】
定着手段としては、LBP−1760のオイル塗布機能のない、フィルムを介してヒータにより加熱加圧定着する方式の定着装置126を用いた。この時加圧ローラはフッ素系樹脂の表面層を有するものを使用し、ローラの直径は30mmであった。また、定着温度は200℃、ニップ幅を6mmに設定した。
【0520】
磁性トナーとして磁性トナーAを使用し、常温常湿(25℃、50%RH)、高温高湿(32℃、85%RH)及び低温低湿(15℃、15%RH)環境下において、印字面積比率7%の縦ラインのみからなる画像パターンを12枚/分(A4サイズ)のプリントアウト速度で間歇モード(すなわち、1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)で5000枚のプリントアウト試験を行った。尚、500枚毎にベタ黒画像パターンとベタ白画像パターンのプリントアウトも行った。転写材としては75g/m2の紙を使用した。評価は以下のようにして行った。
【0521】
[プリントアウト画像の評価]
1)画像濃度の変動
500枚目と5000枚目のベタ黒画像について、マクベス反射濃度計RD918(マクベス社製)により、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度をそれぞれ測定し、これらの濃度差から以下のように判定した。
【0522】
A:非常に良好(濃度差 0.05未満)
B:良好(濃度差 0.05以上〜0.10未満)
C:普通(濃度差 0.10以上〜0.20未満)
D:悪い(濃度差 0.20以上)
2)画質
画質の判断基準は、画像の均一性、細線再現性を総合的に評価したものである。なお、画像の均一性はべた黒画像で判断を行った。
【0523】
A:細線再現性、画像の均一性に優れ、鮮明な画像
B:細線再現性、画像の均一性が若干劣るものの、良好な画像
C:実用的には問題の無い画質
D:細線再現性、画像の均一性が悪く、実用上好ましくない画像
3)カブリの変動
501枚目と5001枚目のベタ白画像形成時の感光体上の転写前の部分をマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引き、それぞれカブリの値を算出した。そして、5001枚目の値から501枚目の値を差し引き、以下のように判定した。
【0524】
A:非常に良好(濃度差 0.05未満)
B:良好(濃度差 0.05以上〜0.15未満)
C:普通(濃度差 0.15以上〜0.30未満)
D:悪い(濃度差 0.30以上)
4)転写性
1000枚目のベタ黒画像形成時の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。
【0525】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05以上〜0.1未満)
C:普通(0.1以上〜0.2未満)
D:悪い(0.2以上)
[画像形成装置とのマッチング評価]
1)感光体とのマッチング
プリントアウト試験終了後、感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
【0526】
A:未発生
B:わずかに傷の発生が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
2)トナー層厚規制部材とのマッチング
プリントアウト試験終了後、トナー層厚規制部材(シリコーンゴム製ブレード)を現像器から取り外し、軽くエアーブローを行った後、トナー担持体(現像スリーブ)との当接部分を顕微鏡で観察し、融着状況を評価した。
【0527】
A:未発生
B:わずかに固着が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
得られた結果を表9〜11に示す。
【0528】
<実施例2〜20>
磁性トナーとして磁性トナーAの代わりに、それぞれ磁性トナーB、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、BB、αを使用する以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表9〜11に示す。
【0529】
<比較例1〜9>
磁性トナーとして磁性トナーAの代わりに、それぞれ磁性トナーS、T、U、V、W、X、Y、Z、AAを使用する以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表9〜11に示す。
【0530】
【表9】
Figure 0003907418
【0531】
【表10】
Figure 0003907418
【0532】
【表11】
Figure 0003907418
【0533】
<実施例21>
また本発明のトナーは、クリーナーレス画像形成方法または現像兼回収工程を有する画像形成方法にも適用可能である。
【0534】
まず、本発明の実施例に用いる像担持体として、以下の感光体Bを製造した。
【0535】
感光体は負帯電用の有機光導電性物質を用いた感光体(以下OPC感光体)であり、直径30mmのアルミニウム製のシリンダーを基体とした。これに、図8に示すような構成の層を順次浸漬塗布により積層して、感光体を作成した。
【0536】
(1)第1層は導電層であり、アルミニウムシリンダーの欠陥等をならすため、またレーザー露光の反射によるモアレの発生を防止するために設けられている厚さ約20μmの導電性粒子分散樹脂層(酸化錫及び酸化チタンの粉末をフェノール樹脂に分散したものを主体とする)である。
【0537】
(2)第2層は正電荷注入防止層(下引き層)であり、アルミニウム支持体から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たし、メトキシメチル化ナイロンによって体積抵抗値が1×106Ω・cm程度に調整された厚さ約1μmの中抵抗層である。
【0538】
(3)第3層は電荷発生層であり、ジスアゾ系の顔料をブチラール樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、レーザー露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。
【0539】
(4)第4層は電荷輸送層であり、ポリカーボネート樹脂にヒドラゾン化合物を分散した厚さ約25μmの層であり、P型半導体である。従って、感光体表面に帯電された負電荷はこの層を移動することはできず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光体表面に輸送することができる。
【0540】
(5)第5層は電荷注入層であり、光硬化性のアクリル樹脂に導電性酸化スズ超微粒子及び体積平均粒径約0.25μmのポリ4フッ化エチレン樹脂粒子を分散したものである。具体的には、アンチモンをドーピングし低抵抗化した体積平均粒径約0.03μmの酸化スズ粒子を樹脂100質量部に対して100質量部、更にポリ4フッ化エチレン樹脂粒子を20質量部、分散剤を1.2質量部分散したものである。このようにして調製した塗工液をスプレー塗工法にて厚さ約2.5μmに塗工した後光照射により硬化させて電荷注入層とした。
【0541】
得られた感光体の表面の体積抵抗値は、5×1012Ω・cm、感光体表面の水に対する接触角は、102度であった。
【0542】
次に、本発明の実施例に用いる帯電部材の製造例について述べる。
【0543】
<帯電部材Aの製造>
直径6mm、長さ264mmのSUSローラを芯金とし、芯金上にウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成し、さらに切削研磨し形状及び表面性を整え、可撓性部材として直径12mm、長さ234mmの帯電ローラAを作成した。得られた帯電ローラAは、抵抗が1×105Ω・cmであり、硬度は、アスカーC硬度で30度であった。また、この帯電ローラ表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均セル径は約90μmで、空隙率は55%であった。
【0544】
本実施例の画像形成装置として、図5に示されるものを用いた。
【0545】
本例の画像形成装置は、転写式電子写真プロセスを利用した現像兼クリーニングプロセス(クリーナーレスシステム)のレーザプリンター(記録装置)である。クリーニングブレードの如きクリーニング部材を有するクリーニングユニットを除去したプロセスカードリッジを有し、現像剤としては一成分系磁性トナーを使用し、トナー担持体上のトナー層と感光体が非接触となるよう配置される非接触現像の画像形成装置である。
【0546】
(1)本例画像形成装置の全体的な概略構成
像担持体としての感光体21は、上記で得られた感光体B(回転ドラム型OPC感光体)を用い、矢印のX方向に94mm/secの周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。接触帯電部材としての帯電ローラ22は、上記で得られた帯電部材A(帯電ローラ)を用いる。
【0547】
帯電ローラ22は感光体21に対して弾性に抗して所定の押圧力で圧接され配設してある。帯電当接部nは感光体21と帯電ローラ22の当接部である。本例では、帯電ローラ22は感光体21との接触面である帯電当接部nにおいて対向方向(矢印Y方向)に100%の周速比(相対移動速度比200%)で回転駆動されている。即ち、接触帯電部材としての帯電ローラ22の表面は、感光体21の表面に対して速度差を持たせた。また、帯電ローラ22の表面には、塗布量がおよそ1×104個/mm2で均一になるように前記導電性微粉体3を塗布した。
【0548】
また、帯電ローラ22の芯金22aには帯電バイアス印加電源から−700Vの直流電圧を帯電バイアスとして印加するようにした。本例では感光体21の表面は帯電ローラ22に対する印加電圧とほぼ等しい電位(−680V)に直接注入帯電方式にて一様に帯電処理される。これについては後述する。
【0549】
レーザビームスキャナ23は露光手段であり、レーザーダイオード・ポリゴンミラー等を含む。このレーザビームスキャナ23は、目的の画像情報の時系列電気ディジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザー光を出力し、該レーザ光で上記感光体21の一様帯電面を走査露光する。この走査露光により回転感光体21の面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0550】
現像手段としての現像装置24は、感光体21の表面の静電潜像をトナー画像として現像する。
【0551】
本例の現像装置24は、負帯電性磁性一成分絶縁現像剤である磁性トナーαを用いた、非接触型の反転現像装置である。磁性トナーαには導電性微粉体1が外添添加してある。
【0552】
トナー担持体として、下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.0μmの樹脂層を、表面をブラストした直径16mmのアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブ24aを使用し、現像磁極94mT(940ガウス)のマグネットロールを内包し、トナー層厚規制部材として厚み1.2mm、自由長1.2mmのシリコーンゴム製の弾性ブレード24cを19.6N/m(20g/cm)の線圧で当接させた。感光体21と現像スリーブ24aとの間隙は300μmとした。
・フェノール樹脂 100質量部
・グラファイト(体積粒径約7μm) 90質量部
・カーボンブラック 10質量部
また、現像スリーブ24aは、感光体21との対向部である現像部a(現像領域部)にて感光体21の回転方向と順方向(矢印W方向)に感光体21の周速の120%の周速で回転させる。
【0553】
この現像スリーブ24aに弾性ブレード24cで磁性トナーが薄層にコートされる。磁性トナーは弾性ブレード24cで現像スリーブ24aに対する層厚が規制され、また電荷が付与される。この時、現像スリーブ24aにコートされたトナー量は、15g/m2であった。
【0554】
現像スリーブ24aにコートされた磁性トナーは、現像スリーブ24aの回転により、感光体21と現像スリーブ24aの対向部である現像部aに搬送される。
【0555】
また、現像スリーブ24aには現像バイアス印加電源より現像バイアス電圧が印加される。現像バイアス電圧は、−420Vの直流電圧と、周波数1600Hz、ピーク間電圧1500V(電界強度5×106V/m)の矩形の交流電圧を重畳したものを用い、現像スリーブ24aと感光体21の間、現像部aで一成分ジャンピング現像を行わせた。
【0556】
接触転写手段としての中抵抗の転写ローラ25は、感光体に98N/m(100g/cm)の線圧で圧接させて転写ニップ部bを形成させてある。この転写ニップ部bに不図示の給紙部から所定のタイミングで記録媒体としての転写材Pが給紙され、かつ転写ローラ25に転写バイアス印加電源から所定の転写バイアス電圧が印加されることで、感光体21側のトナー像が転写ニップ部bに給紙された転写材Pの面に順次に転写されていく。
【0557】
本例では転写ローラ25の体積抵抗値は5×108Ωcmのものを用い、+3000Vの直流電圧を印加して転写を行った。即ち、転写ニップ部bに導入された転写材Pはこの転写ニップ部bを挟持搬送されて、その表面側に感光体21の表面に形成担持されているトナー画像が順次に静電気力と押圧力にて転写されていく。
【0558】
転写ニップ部bに給紙されて感光体21側のトナー像の転写を受けた転写材Pは感光体の表面から分離されて、定着手段である熱定着方式等の定着装置26に導入され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。
【0559】
本例の画像形成装置は、クリーニングユニットを除去しており、転写材Pに対するトナー像転写後の感光体21の表面に残留の転写残トナーはクリーナーで除去されることなく、感光体21の回転にともない帯電当接部nを経由して現像部aに至り、現像装置24において現像兼クリーニング(回収)される。
【0560】
本例の画像形成装置は、感光体21、帯電ローラ22、現像装置24の3つのプロセス機器が、画像形成装置本体から着脱可能に構成されているプロセスカートリッジ27を有する。画像形成装置及びプロセスカートリッジ化するプロセス機器の組み合わせ等は上記に限られるものではなく任意である。カートリッジ保持部材28は、プロセスカートリッジの着脱案内・保持部材である。
【0561】
(2)本実施例における導電性微粉体の挙動について
現像装置24の磁性トナーに混入させた導電性微粉体は、現像装置24による感光体21側の静電潜像のトナー現像時にトナーとともに適当量が感光体21側に移行する。
【0562】
感光体21上のトナー像は、転写部bにおいて転写バイアスの影響で記録媒体である転写材P側に引かれて積極的に転移するが、感光体21上の導電性微粉体は導電性であることで転写材P側には積極的には転移せず、感光体21上に実質的に付着保持されて残留する。
【0563】
本発明においては、画像形成装置はクリーニング工程を有さないため、転写後の感光体21の表面に残存の転写残トナーおよび上記の残存導電性微粉体は、感光体21と接触帯電部材である帯電ローラ22の帯電当接部nに感光体21面の移動でそのまま持ち運ばれて、帯電ローラ22に付着または混入する。したがって、感光体21と帯電ローラ22との帯電当接部nにこの導電性微粉体が存在した状態で感光体21の直接注入帯電が行われる。
【0564】
この導電性微粉体の存在により、帯電ローラ22にトナーが付着・混入した場合でも、帯電ローラ22の感光体21への緻密な接触性と接触抵抗を維持できるため、該帯電ローラ22による感光体21の直接注入帯電を行わせることができる。
【0565】
つまり、帯電ローラ22が導電性微粉体を介して密に感光体21に接触して、帯電ローラ22と感光体21の相互接触面に存在する導電性微粉体が感光体21表面を隙間なく摺擦することで、帯電ローラ22による感光体21の帯電は導電性微粉体の存在により放電現象を用いない安定かつ安全な直接注入帯電が支配的となり、従来のローラ帯電等では得られなかった高い帯電効率が得られ、帯電ローラ22に印加した電圧とほぼ同等の電位を感光体21に与えることができる。
【0566】
また帯電ローラ22に付着または混入した転写残トナーは帯電ローラ22から徐々に感光体21上に吐き出されて感光体21面の移動とともに現像部aに至り、現像工程において現像兼クリーニング(回収)される。
【0567】
現像兼クリーニングは、転写後に感光体21上に残留したトナーを、引き続く画像形成工程の現像時、即ち引き続き感光体を帯電し、露光して潜像を形成し、該潜像の現像時において、現像装置のかぶり取りバイアス、即ち現像装置に印加する直流電圧と感光体の表面電位間の電位差であるかぶり取り電位差Vbackによって回収するものである。本実施例における画像形成装置のように反転現像の場合では、この現像兼クリーニングは、現像バイアスによる感光体の暗部電位から現像スリーブにトナーを回収する電界と、現像スリーブから感光体の明部電位へトナーを付着させる電界の作用でなされる。
【0568】
また、画像形成装置が稼働されることで、現像装置24の磁性トナーに混入させてある導電性微粉体が現像部aで感光体21面に移行し、感光体21面の移動により転写ニップ部bを経て帯電当接部nに持ち運ばれて帯電当接部nに新しい粒子が逐次に供給され続けるため、帯電当接部nにおいて導電性微粉体が脱落等で減少したり、該導電性微粉体が劣化するなどしても、帯電性の低下が生じることが防止されて良好な帯電性が安定して維持される。
【0569】
かくして、接触帯電方式、転写方式、トナーリサイクルプロセスの画像形成装置において、接触帯電部材として簡易な帯電ローラ22を用いて、しかも該帯電ローラ22の転写残トナーによる汚染にかかわらず、低印加電圧でオゾンレスの直接注入帯電を長期に渡り安定に維持させることができ、均一な帯電性を与えることが出来、オゾン生成物による障害、帯電不良による障害等のない、簡易な構成、低コストな画像形成装置を得ることができる。
【0570】
また、前述のように導電性微粉体は帯電性を損なわないために、抵抗値が1×109Ω・cm以下である必要がある。そのため、現像部aにおいて磁性トナーが直接感光体21に接触する接触現像装置を用いた場合には、磁性トナー中の導電性微粉体を通じて、現像バイアスにより感光体21に電荷注入され、画像かぶりが発生してしまう。
【0571】
しかし、本例において現像装置は非接触型現像装置であるので、現像バイアスが感光体21に注入されることがなく、良好な画像を得ることが出来る。また、現像部aにおいて感光体21への電荷注入が生じないため、交流電圧のバイアスなど現像スリーブ24aと感光体21間に高電位差を持たせることが可能であり、導電性微粉体が均等に現像されやすく、均一に導電性微粉体を感光体21表面に塗布し、帯電部で均一な接触を行い、良好な帯電性を得ることが出来、良好な画像を得ることが可能となる。
【0572】
帯電ローラ22と感光体21との帯電当接部nに導電性微粉体を介在させることにより、該導電性微粉体の潤滑効果(摩擦低減効果)により帯電ローラ22と感光体21との間に容易に効果的に速度差を設けることが可能となる。
【0573】
帯電ローラ22と感光体21との間に速度差を設けることにより、帯電ローラ22と感光体21の相互接触面部、帯電当接部nにおいて導電性微粉体が感光体21に接触する機会を格段に増加させ、高い接触性を得ることができ、良好な直接注入帯電を可能としている。
【0574】
本実施例では、帯電ローラ22を回転駆動し、その回転方向は感光体21表面の移動方向とは逆方向に回転するように構成することで、帯電当接部nに持ち運ばれる感光体21上の転写残トナーを帯電ローラ22に一時的に回収し均す効果を得ている。即ち、逆方向回転で感光体21上の転写残トナーを一旦引き離し帯電を行うことにより優位に直接注入帯電を行うことが可能である。
【0575】
更に、本実施例では像担持体としての感光体21と接触帯電部材としての帯電ローラ22との帯電当接部nにおける適当な量の導電性微粉体の介在によって、該微粉末による潤滑効果により帯電ローラ22と感光体21との摩擦を低減し、帯電ローラ22を感光体21に速度差を持って回転駆動させることが容易である。つまり、駆動トルクが低減し、帯電ローラ22や感光体21の表面の削れまたは傷を防止できる。更に導電性微粉体による接触機会増加により十分な帯電性能が得られる。また、導電性微粉体の帯電ローラ22からの脱落よる作像上に悪影響もない。
【0576】
(3)評価
本実施例では、トナーカートリッジ内に磁性トナーαを充填して、高温高湿(32℃、85%RH)環境下において、印字面積比率7%の縦ラインのみからなる画像パターンを12枚/分(A4サイズ)のプリントアウト速度で間歇モード(すなわち、1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)で5000枚のプリントアウト試験を行った。尚、500枚毎にベタ黒画像パターンとベタ白画像パターンのプリントアウトも行った。転写材としては75g/m2の紙を使用した。転写材としては75g/m2のA4コピー紙を用いた。その結果、耐久による現像性の低下は見られず、何ら問題がなかった。
【0577】
また、プリントアウト終了後、帯電ローラ22上で感光体21との帯電当接部nに対応する部分をテーピングし、観察したところ、微量の転写残トナーが確認されるものの、ほぼ白色の酸化亜鉛粒子(導電性微粉体1)で覆われており、介在量はおよそ3×105個/mm2であった。帯電ローラと感光体との帯電当接部に介在している転写残トナーを走査型顕微鏡で観察したところ、表面を非常に粒径が細かい導電性微粉体で固着しているように覆われたような転写残トナーは観察されなかった。
【0578】
また、感光体21と帯電ローラ22との帯電当接部nに導電性微粉体1が存在した状態で、初期よりプリントアウト終了まで帯電不良に起因する画像欠陥を生じず、良好な直接注入帯電性が得られた。
【0579】
また、感光体として最表面層の体積抵抗値が5×1012Ω・cmの感光体Bを用いたことにより、静電潜像を維持することでシャープな輪郭の文字画像が得られ、多数枚のプリントアウト後も十分な帯電性が得られる直接注入帯電を実現ができる。上記5000枚の間欠プリント後の直接注入帯電後の感光体電位は、印加帯電バイアス−700Vに対して−670Vであり、初期からの帯電性の低下は10Vと軽微であり、帯電性の低下による画像品質の低下は認められなかった。
【0580】
更に、像担持体の表面の水に対する接触角が102度である感光体Bを用いたこととあいまって、転写効率は初期及び5000枚の間欠プリント後も非常に優れていた。転写後の感光体上に転写残トナー量が少ないことを勘案しても、5000枚の間欠プリント後の帯電ローラ22上での転写残トナーが微量であったことと非画像部のカブリが少ないことより、現像での転写残トナーの回収性が良好であったことが解る。更に、5000枚の間欠プリント後も感光体上の傷は軽微であり、この傷に対応して画像上に生じる画像欠陥は実用上許容できるレベルに抑制されていた。
【0581】
以下プリント画像の評価法および画像形成装置とのマッチング評価法について述べる。結果を表12に示す。
【0582】
[プリントアウト画像の評価]
1)画像濃度の変動
500枚目と5000枚目のベタ黒画像について、マクベス反射濃度計RD918(マクベス社製)により、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度をそれぞれ測定し、これらの濃度差から以下のように判定した。
【0583】
A:非常に良好(濃度差 0.05未満)
B:良好(濃度差 0.05以上〜0.10未満)
C:普通(濃度差 0.10以上〜0.20未満)
D:悪い(濃度差 0.20以上)
2)画質
画質の判断基準は、画像の均一性、細線再現性を総合的に評価したものである。なお、画像の均一性はべた黒画像で判断を行った。
【0584】
A:細線再現性、画像の均一性に優れ、鮮明な画像
B:細線再現性、画像の均一性が若干劣るものの、良好な画像
C:実用的には問題の無い画質
D:細線再現性、画像の均一性が悪く、実用上好ましくない画像
3)カブリの変動
501枚目と5001枚目のベタ白画像形成時の感光体上の転写前の部分をマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引き、それぞれカブリの値を算出した。そして、5001枚目の値から501枚目の値を差し引き、以下のように判定した。
【0585】
A:非常に良好(濃度差 0.05未満)
B:良好(濃度差 0.05以上〜0.15未満)
C:普通(濃度差 0.15以上〜0.30未満)
D:悪い(濃度差 0.30以上)
4)転写性
1000枚目のベタ黒画像形成時の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。
【0586】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05以上〜0.1未満)
C:普通(0.1以上〜0.2未満)
D:悪い(0.2以上)
5)帯電性
初期及びプリントアウト試験終了後、一様帯電後の感光体表面電位を現像装置位置にセンサーを配置し測定し、その差分により帯電性を評価した。差分がマイナスに大きくなるほど帯電性の低下が大きいことを示す。
【0587】
6)像担持体と接触帯電部材との当接部における導電性微粉体の介在量
感光体と接触帯電部材との帯電当接部における導電性微粉体の介在量を前述の方法で測定した。1×104〜5×105個/mm2の介在量が好ましい。
【0588】
[画像形成装置とのマッチング評価]
1)トナー層厚規制部材とのマッチング
プリントアウト試験終了後、トナー層厚規制部材(シリコーンゴム製ブレード)を現像器から取り外し、軽くエアーブローを行った後、トナー担持体(現像スリーブ)との当接部分を顕微鏡で観察し、融着状況を評価した。
【0589】
A:未発生
B:わずかに固着が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
得られた結果を表12に示す。
【0590】
<実施例22〜24>
実施例21で用いた感光体Bの代わりに、下記のように製造された感光体C、D、Eを用いる以外は、実施例21と同様に画出しテストを行った。結果を表12に示す。
【0591】
<感光体Cの製造>
感光体Bの第5層に、ポリ4フッ化エチレン樹脂粒子と分散剤を分散しなかったこと以外は、感光体Bと同様にして感光体Cを作成した。これにより、感光体表面層の体積抵抗値は、2×1012Ω・cm、感光体表面の水に対する接触角は、78度であった。
【0592】
<感光体Dの製造>
感光体Bの第5層において、アンチモンをドーピングし、低抵抗化した体積平均粒径約0.03μmの酸化スズ粒子を光硬化性のアクリル樹脂100質量部に対して300質量部分散したものを加えたこと以外は、感光体Bと同様にして感光体Dを作成した。この場合、感光体表面層の体積抵抗値は、2×107Ω・cm、感光体表面の水に対する接触角は、88度であった。
【0593】
<感光体Eの製造>
感光体Bの第5層(電荷注入層)を設けない、電荷輸送層を最外層とする4層構成の感光体とすること以外は、感光体Bと同様にして感光体Eを作成した。この場合、感光体表面層の体積抵抗値は、1×1015Ω・cm、感光体表面の水に対する接触角は、73度であった。
【0594】
<実施例25>
実施例21で用いた帯電部材Aの帯電部材の代わりに、下記のように製造された帯電部材Bを用いる以外は、実施例21と同様に画出しテストを行った。本実施例で用いた画像形成装置は、図6に概略図を示す。即ち、帯電手段は、帯電部材Bを用いた帯電ブラシ22’とする。結果を表12に示す。
【0595】
<帯電部材Bの製造>
直径6mm、長さ264mmのSUSローラを芯金とし、芯金上に導電性ナイロン繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロール状帯電ブラシを作成した。ナイロン繊維にカーボンブラックを分散させて抵抗調整された、繊維の太さが6デニール(300デニール/50フィラメント)、ブラシの繊維の長さは3mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり10万本で植毛された物を用いた。得られた帯電ブラシロールの抵抗値は1×107Ω・cmであった。
【0596】
<実施例26〜30>
実施例21で用いた磁性トナーαの代わりに、磁性トナーβ、γ、δ、ε、ζをそれぞれ用いる以外は、実施例21と同様に画出しテストを行った。結果を表12に示す。
【0597】
<比較例10〜13>
実施例21で用いた磁性トナーαの代わりに、磁性トナーη、θ、ι、κをそれぞれ用いる以外は、実施例21と同様に画出しテストを行った。結果を表12に示す。
【0598】
【表12】
Figure 0003907418
【0599】
A.磁性粉体の製造
以下のようにして、表面処理磁性粉体9〜12および磁性粉体1を得た。
【0600】
<表面処理磁性粉体9の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを9前後に維持しながら空気を吹き込み、70℃以上で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0601】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過して一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを約6に調製し、十分攪拌しながらシランカップリング剤(n−C1021Si(OCH33)を磁性酸化鉄に対し1.0質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで若干凝集している粒子を解砕処理して、表面処理磁性粉体9を得た。
【0602】
<磁性粉体1の製造>
表面処理磁性粉体9の製造と同様に酸化反応を進め、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過後、表面処理を行わずに、乾燥し、凝集している粒子を解砕処理し磁性粉体1を得た。
【0603】
<表面処理磁性粉体10の製造>
上記磁性粉体1を、再分散させた後、再分散液のpHを約6に調製し、十分攪拌しながらシランカップリング剤(n−C1021Si(OCH33)を磁性酸化鉄に対し1.0質量部添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理して、表面処理磁性粉体10を得た。
【0604】
<表面処理磁性粉体11の製造>
シランカップリング剤を(n−C613Si(OCH33)とする以外は、表面処理磁性粉体9の製造と同様にして表面処理磁性粉体11を得た。
【0605】
<表面処理磁性粉体12の製造>
シランカップリング剤を(n−C1837Si(OCH33)とする以外は、表面処理磁性粉体9の製造と同様にして表面処理磁性粉体12を得た。
【0606】
得られた磁性粉体の物性を表13に示す。
【0607】
【表13】
Figure 0003907418
【0608】
B.導電性微粉体の製造
上記実施例で用いた導電性微粉体1〜5を用いた。
【0609】
C.磁性トナーの製造
<磁性トナー1の製造>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し、80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 88質量部
・ステアリルメタクリレート 12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体 85質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が75℃のエステルワックス10質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6質量部を溶解した。
【0610】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で4時間反応させ、無水炭酸ナトリウム4質量部を系内に添加した後、さらに2時間反応を継続した(反応終了後の懸濁液のpHは10.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて以下のような操作を行った。
【0611】
まず、アルカリ性の懸濁液の脱水をベルト上で行い、次いでトータル量1000質量部の水をシャワーリングして水洗を行い、懸濁液中に含まれる2−エチルヘキサン酸ナトリウム(これは重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの分解により副生した2−エチルヘキサン酸が、炭酸ナトリウムにより中和されたものである)の除去を行った。さらに、ベルト上で1000質量部の希塩酸(pH1.0)での洗浄、1000質量部の水での水洗、そして脱水を行なうことで、2−エチルヘキサン酸および分散剤として使用したリン酸カルシウムが実質的に除去された磁性トナー粒子を得た。その後、この含水磁性トナー粒子を乾燥して体積平均粒径6.8μmの磁性トナー粒子1を得た。
【0612】
この磁性トナー粒子1の100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面を処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が200m2/gの疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー1を調製した。磁性トナー1の物性を表14に示す。尚、前述した値(b/a)は、27/100であった。
【0613】
<磁性トナー2の製造>
表面処理磁性粉体9の代わりに表面処理磁性粉体11を使用する以外は、磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー2を調製した。磁性トナー2の物性を表14に示す。
【0614】
<磁性トナー3の製造>
表面処理磁性粉体9の代わりに表面処理磁性粉体12を使用する以外は、磁性トナー1の製造と同様にして磁性トナー3を調製した。磁性トナー3の物性を表14に示す。
【0615】
<磁性トナー4の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、処理後のBET値が200m2/gの疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー4を調製した。磁性トナー4の物性を表14に示す。
【0616】
<磁性トナー5の製造>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 88質量部
・ステアリルメタクリレート 12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体9 85質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が75℃のエステルワックス10質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチル−2−エチルヘキサノエート6質量部を溶解した。
【0617】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で6時間反応させた(反応終了後の懸濁液のpHは9.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、希塩酸を加えてpH1.0として1時間撹拌した。その後、懸濁液を連続ベルトフィルターにより濾過、水洗し、乾燥して体積平均粒径6.6μmの磁性トナー粒子5を得た。
【0618】
この磁性トナー粒子5を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー5を調製した。磁性トナー5の物性を表14に示す。
【0619】
<磁性トナー6の製造>
イオン交換水292質量部に1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し80℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 88質量部
・ステアリルメタクリレート 12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体9 85質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0620】
この単量体組成物を80℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が75℃のエステルワックス10質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチル−2−エチルヘキサノエート6質量部を溶解した。
【0621】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、80℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で6時間反応させた(反応終了後の懸濁液のpHは9.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、懸濁液をヌッチェで濾過し、トナー粒子を100質量部の水で水洗した。その後、トナー粒子をpH1.0の希塩酸にリスラリーし、1時間撹拌した。さらに、トナー粒子をヌッチェで濾過し、充分に水洗を行った後、乾燥して体積平均粒径6.7μmの磁性トナー粒子6を得た。
【0622】
この磁性トナー粒子6を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー6を調製した。磁性トナー6の物性を表14に示す。
【0623】
<磁性トナー7の製造>
得られるトナー粒子の処理において、100質量部の水の代わりに200質量部のpH11.0のアルカリ水溶液で水洗する以外は、磁性トナー6の製造と同様にして磁性トナー7を調製した。磁性トナー7の物性を表14に示す。
【0624】
<磁性トナー8の製造>
エステルワックスの使用量を51質量部とする以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー8を得た。磁性トナー8の物性を表14に示す。
【0625】
<磁性トナー9の製造>
エステルワックスの使用量を0.4質量部とする以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表14に示す。
【0626】
<磁性トナー10の製造>
エステルワックスに代えて、示差熱分析における吸熱ピーク温度が120℃の低分子量ポリエチレンワックスを10質量部用いる以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー10を得た。磁性トナー10の物性を表14に示す。
【0627】
<磁性トナー11の製造>
表面処理磁性粉体9の使用量を50質量部とする以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー11を得た。磁性トナー11の物性を表14に示す。
【0628】
<磁性トナー12の製造>
表面処理磁性粉体9の使用量を150質量部とする以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー12を得た。磁性トナー12の物性を表14に示す。
【0629】
<磁性トナー13の製造>
イオン交換水292質量部に、1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 88質量部
・ステアリルメタクリレート 12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体9 85質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0630】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が75℃のエステルワックス10質量部を添加混合し、これに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート5質量部を溶解した。
【0631】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で4時間反応させ、無水炭酸ナトリウム4質量部を系内に添加した後、さらに80℃で2時間反応を継続した(反応終了後の懸濁液のpHは10.5であった)。反応終了後、懸濁液を冷却し、フィルタープレス(栗田機械製作所製)を用いて以下のような操作を行った。
【0632】
まず、アルカリ性の懸濁液をフィルタープレス内に導入してトナー粒子の濾過を行う。次いでトータル量1000質量部の水を濾枠内に流し、懸濁液中のネオデカン酸ナトリウム(これは重合開始剤であるt−ブチルパーオキシネオデカノエートの分解により副生したネオデカン酸が、炭酸ナトリウムにより中和されたものである)を除去する。さらに、pH1.0の希塩酸を濾枠内に流し、トナー粒子表面に付着しているリン酸カルシウムを溶解除去する。その後、濾枠内に水を流し、充分に洗浄を行なう。そして圧搾、エアーブローを行なうことで、ネオデカン酸および分散剤として使用したリン酸カルシウムが実質的に除去されたトナー粒子を得た。その後、この含水トナー粒子を乾燥して体積平均粒径7.1μmの磁性トナー粒子13を得た。
【0633】
この磁性トナー粒子13を100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面を処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が200m2/gの疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー13を調製した。磁性トナー13の物性を表14に示す。
【0634】
<磁性トナー14の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにt−ブチルパーオキシピバレート5質量部を使用し、重合温度を70℃とした以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー14を得た。磁性トナー14の物性を表14に示す。
【0635】
<磁性トナー15の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにt−ヘキシルパーオキシピバレート5質量部を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー15を得た。磁性トナー15の物性を表14に示す。
【0636】
<磁性トナー16の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート10質量部を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー16を得た。磁性トナー16の物性を表14に示す。
【0637】
<磁性トナー17の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにベンゾイルパーオキサイド5質量部を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー17を得た。磁性トナー17の物性を表14に示す。
【0638】
<磁性トナー18の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりにステアロイルパーオキサイド20質量部を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー18を得た。磁性トナー18の物性を表14に示す。
【0639】
<磁性トナー19の製造>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりに過硫酸アンモニウム15質量部を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー19を得た。磁性トナー19の物性を表14に示す。
【0640】
<磁性トナー20の製造(比較用)>
表面処理磁性粉体9に代えて磁性粉体1を85質量部使用する以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、比較例として磁性トナー20を得た。磁性トナー20の物性を表15に示す。尚、前述した値(b/a)は、3/100であった。
【0641】
<磁性トナー21の製造(比較用)>
表面処理磁性粉体9に代えて表面処理磁性粉体10を85質量部使用する以外は磁性トナー3の製造と同様にして、比較例として磁性トナー21を得た。磁性トナー21の物性を表15に示す。
【0642】
<磁性トナー22の製造(比較用)>
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの代わりに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15質量部を使用し、表面処理磁性粉体9の代わりに表面処理磁性粉体10を使用した以外は、磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー22を得た。磁性トナー22の物性を表15に示す。
【0643】
<磁性トナー23の製造(比較用)>
イオン交換水730質量部に1.0モル/リットルのNa3PO4水溶液46質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/リットルのCaCl2水溶液67質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
・スチレン 88質量部
・ステアリルメタクリレート 12質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体10 70質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。
【0644】
この単量体組成物を60℃に加温し、そこに示差熱分析における吸熱ピーク温度が75℃のエステルワックス10質量部を添加混合し、これに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15質量部を溶解した。
【0645】
前記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で3時間反応させ、さらに80℃に昇温して7時間反応させた。
【0646】
その後、懸濁液を冷却し、これに下記物質を定量ポンプを用いて滴下し、前記懸濁液中の粒子に吸着させた。
・スチレン 45質量部
・ステアリルメタクリレート 5質量部
・ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 4質量部
その後、70℃に昇温し、10時間保持した。反応終了後、懸濁液を冷却し、希塩酸を加えてpH1.0として1時間撹拌した。その後、濾過、乾燥して体積平均粒径7.0μmの磁性トナー粒子23を得た。この磁性トナー粒子23を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較例としての磁性トナー23を調製した。磁性トナー23の物性を表15に示す。尚、前述した値(b/a)は、37/100であった。
【0647】
<磁性トナー24の製造(比較用)>
エマルゲン950(花王(株)製)を1質量部、ネオゲンR(第一工業製薬(株)製)を2質量部含有する水100質量部に、以下の物質を添加した。
・スチレン 76質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・アクリル酸 4質量部
過硫酸カリウム5質量部を触媒として用い、攪拌下70℃で8時間重合させて固形分50%の酸性極性基含有樹脂エマルジョンを得た。
【0648】
次に、下記混合物をディスパーを用いて攪拌しながら25℃に加熱した。
・上記酸性極性基含有樹脂エマルション 200質量部
・表面処理磁性粉体10 90質量部
・ポリエチレンディスパージョン 20質量部
(三井石油化学社製 ケミパールWF−640)
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・水 350質量部
次いでこの分散溶液を約2時間攪拌した後60℃まで加熱し、これをアンモニアによってpH8.0に調整した。さらに、この分散液を90℃まで加熱し、5時間この温度を保ったところ、約8μmの粒子が得られた。この粒子の分散液を冷却、分離、水洗したのち乾燥させ、磁性トナー粒子24を得た。この粒子を電子顕微鏡で観察したところ、重合体粒子と磁性粉体微粒子との2次粒子の会合粒子から成り立っている事が観察された。
【0649】
この磁性トナー粒子24の100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ微粉体1.1質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較例としての磁性トナー24を調製した。磁性トナー24の物性を表15に示す。
【0650】
<磁性トナー25の製造(比較用)>
・スチレン/ステアリルメタクリレート共重合体(質量比88/12) 100質量部
・飽和ポリエステル樹脂 8質量部
・負荷電性制御剤(モノアゾ染料系のFe化合物) 2質量部
・表面処理磁性粉体10 85質量部
・製造例1で使用したエステルワックス 10質量部
上記材料をブレンダーにて混合し、140℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕後、得られた微粉砕物を風力分級して体積平均粒径10.4μmの磁性トナー粒子25を得た。この磁性トナー粒子25の100質量部に対して磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部を加えた混合物をヘンシェルミキサーで混合し、比較例としての磁性トナー25を調製した。磁性トナー25の物性を表15に示す。
【0651】
<磁性トナー26の製造(比較用)>
磁性トナー25の製造において、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕する以外は同様の手法により、トナー粒子を得た。その後衝撃式表面処理装置(処理温度50℃、回転式処理ブレード周速90m/sec.)を用いて体積平均粒径10.3μmの球形化の磁性トナー粒子26を得た。
【0652】
次に、得られた球形化の磁性トナー粒子26の100質量部に対して、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部を加えた混合物をヘンシェルミキサーで混合し、比較例としての磁性トナー26を調製した。磁性トナー26の物性を表15に示す。
【0653】
<磁性トナー27の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体1の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー27を調製した。磁性トナー27の物性を表15に示す。
【0654】
<磁性トナー28の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体2の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー28を調製した。磁性トナー28の物性を表15に示す。
【0655】
<磁性トナー29の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体3の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー29を調製した。磁性トナー29の物性を表15に示す。
【0656】
<磁性トナー30の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体4の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー30を調製した。磁性トナー30の物性を表15に示す。
【0657】
<磁性トナー31の製造>
磁性トナー粒子1を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体5の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー31を調製した。磁性トナー31の物性を表15に示す。
【0658】
<磁性トナー32の製造>
磁性トナー粒子13を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および上記導電性微粉体1の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、磁性トナー32を調製した。磁性トナー32の物性を表15に示す。
【0659】
<磁性トナー33の製造(比較用)>
磁性トナー粒子20を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ1.1質量部、および前記導電性微粉体1の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較例としての磁性トナー33を調製した。磁性トナー33の物性を表15に示す。
【0660】
<磁性トナー34の製造(比較用)>
磁性トナー粒子25を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較例としての磁性トナー34を調製した。磁性トナー34の物性を表15に示す。
【0661】
<磁性トナー35の製造(比較用)>
磁性トナー粒子26を100質量部と、磁性トナー1の製造の際に使用した疎水性シリカ0.8質量部、および前記導電性微粉体1の2.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較例としての磁性トナー35を調製した。磁性トナー35の物性を表15に示す。
【0662】
【表14】
Figure 0003907418
【0663】
【表15】
Figure 0003907418
【0664】
D.感光体の製造
感光体としては、上述した感光体A〜Eを用いた。
【0665】
<実施例31>
画像形成装置として、LBP−1760を改造し、概ね図1に示されるものを用いた。
【0666】
像担持体としての感光体100には、感光体A(有機感光体(OPC)ドラム)を用いた。この感光体100に、帯電部材として、導電性カーボンを分散しナイロン樹脂で被覆された帯電ローラ117を当接させ(当接圧60g/cm)、直流電圧−700Vdcに交流電圧2.0kVppを重畳したバイアスを印加して、感光体上を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成する。この時、暗部電位Vd=−700V、明部電位VL=−150Vとした。
【0667】
トナー担持体として、下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.0μmの樹脂層を、表面をブラストした直径16mmのアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブ102を使用し、現像磁極90mT(900ガウス)、トナー規制部材として厚み1.0mm、自由長1.0mmのシリコーンゴム製ブレードを29.4N/m(30g/cm)の線圧で当接させた。感光体100と現像スリーブ102との間隙は290μmとした。
・フェノール樹脂 100質量部
・グラファイト(体積平均粒径約7μm) 90質量部
・カーボンブラック 10質量部
次いで、現像バイアスとして、−500Vの直流電圧と周波数2000Hz、ピーク間電圧1600Vの交流電圧を重畳したものを用いた。また、現像スリーブの周速は感光体周速(90mm/sec)に対して順方向に110%のスピード(99mm/sec)とした。
【0668】
また、転写手段としては、図4のような転写ローラ34(導電性カーボンを分散したエチレン−プロピレンゴム製である、導電性弾性層34bの体積抵抗値1×108Ω・cm、表面ゴム硬度24度、直径20mm、当接圧59N/m(60g/cm)を図4中矢印A方向の感光体周速(90mm/sec)に対して等速とし、転写バイアスは直流電圧1.5kVとした。
【0669】
定着手段としては、LBP−1760のオイル塗布機能のない、フィルムを介してヒータにより加熱加圧定着する方式の定着装置126を用いた。この時加圧ローラはフッ素系樹脂の表面層を有するものを使用し、ローラの直径は30mmであった。また、定着温度は190℃、ニップ幅を7mmに設定した。
【0670】
磁性トナーとして磁性トナー1を使用し、まず常温常湿(25℃、60%RH)および高温、高湿(32℃、85%RH)環境下において、それぞれ200枚の画出し試験を行った。次いで、低温低湿(15℃、20%RH)環境下にプロセスカートリッジをセットした画像形成装置を一晩放置し、10枚の画出し試験を行った。尚、転写材としては80g/m2の紙を使用した。評価は以下のようにして行った。
【0671】
[プリントアウト画像の評価]
1)画像濃度
常温常湿下、50枚目のプリントアウト画像(ベタ黒画像)について、マクベス反射濃度計RD918(マクベス社製)により、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0672】
A:非常に良好(1.40以上)
B:良好(1.35〜1.40未満)
C:普通(1.00〜1.35未満)
D:悪い(1.00未満)
2)帯電安定性
常温常湿下および高温高湿下での50枚目のプリントアウト画像(ベタ黒画像)の画像濃度差を帯電安定性の指標とした。
【0673】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05〜0.10未満)
C:普通(0.10〜0.20未満)
D:悪い(0.20以上)
3)転写性
高温高湿下、ベタ黒画像形成時(200枚目)の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。
【0674】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05〜0.1未満)
C:普通(0.1〜0.2未満)
D:悪い(0.2以上)
4)定着性
低温低湿下での2枚目のプリントアウト画像(ベタ黒画像)について、50g/cm2の荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
【0675】
A:5%未満
B:5%〜10%未満
C:10%〜20%未満
D:20%以上
[画像形成装置とのマッチング評価]
1)感光体とのマッチング
プリントアウト試験終了後、感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
【0676】
A:未発生
B:わずかに傷の発生が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
2)定着装置とのマッチング
プリントアウト試験終了後、定着フィルム表面の傷や残留トナーの固着状況を目視で評価した。
【0677】
A:未発生
B:わずかに固着が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
得られた結果を表16に示す。
【0678】
【表16】
Figure 0003907418
【0679】
<実施例32〜50>
磁性トナーとして磁性トナー1の代わりに、それぞれ磁性トナー2〜19及び27を使用する以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表16に示す。
【0680】
<比較例14〜20>
磁性トナーとして磁性トナー1の代わりに、それぞれ磁性トナー20〜26を使用する以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表16に示す。
【0681】
<実施例51>
次に、クリーナーレス画像形成方法あるいは現像兼回収工程を有する画像形成方法に適用した例を示す。
【0682】
トナーを磁性トナー27に変更し、現像条件を以下のように変更する以外は、実施例21と同様にして画像形成を行った。
【0683】
実施例21で用いたトナー担持体に代えて、現像磁極90mT(900ガウス)のマグネットロールを、下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.0μmの樹脂層を、表面をブラストした直径16mmのアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブで内包したものを用いた。また、トナー規制部材として厚み1.0mm、自由長1.5mmのウレタン製の弾性ブレードを用い、29.4N/m(30g/cm)の線圧で現像スリーブに当接させた。感光体と現像スリーブとの間隙は290μmとした。
・フェノール樹脂 100質量部
・グラファイト(体積粒径約7μm) 90質量部
・カーボンブラック 10質量部
本実施例では、トナーカートリッジ内に120gの磁性トナー27を充填して、まず常温常湿(25℃、60%RH)および高温高湿(32℃、85%RH)環境下において、それぞれ2%カバレッジのプリント画像を一枚間欠で1000枚プリントアウトし、トナーカートリッジ内で磁性トナー量が少なくなるまで使用した。転写材としては80g/m2のA4コピー紙を用いた。その結果、両環境とも耐久による現像性の低下は見られず、環境間における帯電性の変動についても何ら問題がなかった。
【0684】
また、常温常湿環境下における1000枚の間欠プリント後、帯電ローラ22上で感光体21との帯電当接部nに対応する部分をテーピングし、観察したところ、微量の転写残トナーが確認されるものの、ほぼ白色の酸化亜鉛粒子(導電性微粉体1)で覆われており、介在量はおよそ3×105個/mm2であった。帯電ローラと感光体との帯電当接部に介在している転写残トナーを走査型顕微鏡で観察したところ、表面を非常に粒径が細かい導電性微粉体で固着しているように覆われたような転写残トナーは観察されなかった。
【0685】
また、感光体21と帯電ローラ22との帯電当接部nに導電性微粉体1が存在した状態で、初期より1000枚の間欠プリント後まで帯電不良に起因する画像欠陥を生じず、良好な直接注入帯電性が得られた。
【0686】
また、感光体として最表面層の体積抵抗値が5×1012Ω・cmの感光体Bを用いたことにより、静電潜像を維持することでシャープな輪郭の文字画像が得られ、1000枚の間欠プリント後も十分な帯電性が得られる直接注入帯電を実現ができる。1000枚の間欠プリント後の直接注入帯電後の感光体電位は、印加帯電バイアス−700Vに対して−670Vであり、初期からの帯電性の低下は10Vと軽微であり、帯電性の低下による画像品質の低下は認められなかった。
【0687】
更に、像担持体の表面の水に対する接触角が102度である感光体Bを用いたこととあいまって、転写効率は初期及び1000枚の間欠プリント後も非常に優れていた。転写後の感光体上に転写残トナー量が少ないことを勘案しても、1000枚の間欠プリント後の帯電ローラ22上での転写残トナーが微量であったことと非画像部のカブリが少ないことより、現像での転写残トナーの回収性が良好であったことが解る。更に、1000枚の間欠プリント後も感光体上の傷は軽微であり、この傷に対応して画像上に生じる画像欠陥は実用上許容できるレベルに抑制されていた。
【0688】
以下プリント画像の評価法および画像形成装置とのマッチング評価法について述べる。結果を表17に示す。
【0689】
[プリントアウト画像の評価]
1)画像濃度
常温常湿下、500枚目のプリントアウト画像(ベタ黒画像)について、マクベス反射濃度計RD918(マクベス社製)により、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0690】
A:非常に良好(1.40以上)
B:良好(1.35〜1.40未満)
C:普通(1.00〜1.35未満)
D:悪い(1.00未満)
2)帯電安定性
常温常湿下および高温高湿下での500枚目のプリントアウト画像(ベタ黒画像)の画像濃度差を帯電安定性の指標とした。
【0691】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05〜0.10未満)
C:普通(0.10〜0.20未満)
D:悪い(0.20以上)
3)転写性
高温高湿下、ベタ黒画像形成時(500枚時)の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。
【0692】
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05〜0.1未満)
C:普通(0.1〜0.2未満)
D:悪い(0.2以上)
4)定着性
常温常湿下、初期からプリントアウト終了までの画像サンプルの裏側に発生する汚れを目視で観察し、評価した。
【0693】
A:全く汚れが無い
B:よく観察すると、僅かに汚れがある
C:数枚が多少汚れている
D:多数枚汚れている
5)帯電性
初期及びプリントアウト試験終了後、一様帯電後の感光体表面電位を現像装置位置にセンサーを配置し測定し、その差分により帯電性を評価した。差分がマイナスに大きくなるほど帯電性の低下が大きいことを示す。
【0694】
6)像担持体と接触帯電部材との当接部における導電性微粉体の介在量
感光体と接触帯電部材との帯電当接部における導電性微粉体の介在量を前述の方法で測定した。1×104〜5×105個/mm2の介在量が好ましい。
【0695】
[画像形成装置とのマッチング評価]
1)感光体とのマッチング
プリントアウト試験終了後、感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
【0696】
A:未発生
B:わずかに傷の発生が見られる
C:固着や傷がある
D:固着や傷が多い
<実施例52〜54>
実施例51で用いた感光体Bの代わりに、前記実施例で用いた感光体C、D、Eを用いる以外は、実施例51と同様に画出しテストを行った。結果を表17に示す。
【0697】
<実施例55>
実施例51で用いた帯電部材Aの帯電部材の代わりに、前記実施例で用いた帯電部材Bを用いる以外は、実施例51と同様に画出しテストを行った。本実施例で用いた画像形成装置は、図6に概略図を示す。即ち、帯電手段は、帯電部材Bを用いた帯電ブラシ22’とする。結果を表17に示す。
【0698】
<実施例56〜60>
実施例51で用いた磁性トナー27の代わりに、磁性トナー28〜32をそれぞれ用いる以外は、実施例51と同様に画出しテストを行った。結果を表17に示す。
【0699】
<比較例21〜23>
実施例22で用いた磁性トナー27の代わりに、磁性トナー33〜35をそれぞれ用いる以外は、実施例51と同様に画出しテストを行った。結果を表17に示す。
【0700】
【表17】
Figure 0003907418
【0701】
【発明の効果】
本発明によれば、プリントアウト時に不快な臭気が無く、比較的温度の高い環境下においても迅速な帯電速度を有し、トナー層厚規制部材や感光体へのトナー融着が生じにくく、多数枚のプリントアウトにおいても高品位な画質を維持できる磁性トナーを提供することができる。
【0702】
また、本発明によれば、放電生成物を生ずることなく、廃トナー量を大幅に減らすことが可能な画像形成方法を提供することができる。
【0703】
また、本発明によれば、良好な帯電性を安定して得られるクリーナーレス画像形成を可能とする画像形成方法を提供することができる。
【0704】
また、本発明によれば、転写性に優れ、転写残トナーの回収性に優れた現像兼クリーニング画像形成を可能とする画像形成方法を提供することができる。
【0705】
また、本発明によれば、低コストで小型化に有利な現像兼クリーニング画像形成を可能とし、かつ長期にわたる繰り返し使用においても、帯電不良を生じない良好な画像が得られる画像形成装置を提供することができる。
【0706】
さらに本発明により、解像性を高めるためにより粒径の小さなトナー粒子を用いる際においても良好な画像を安定して得られる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の一つの実施の形態である概略構成を示す図である。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられる一成分現像用の現像装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の画像形成装置に用いられる像担持体の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置に用いられる接触転写部材の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の画像形成装置の他の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明の画像形成装置の他の実施の形態を示す図である。
【図7】接触帯電部材の帯電特性を示すグラフである。
【図8】本発明の画像形成装置に用いられる像担持体の層構成の例を示す模式図である。
【符号の説明】
100 感光体(像担持体)
102 現像スリーブ(トナー担持体)
114 転写ローラ(転写手段)
116 クリーナ
117 帯電ローラ(接触帯電部材)
121 レーザビームスキャナ
123 レーザ光
124 給紙ローラ
125 搬送ベルト
126 定着装置
140 現像装置(現像手段)
141 攪拌部材
103 弾性ブレード(トナー層厚規制部材)
104 マグネットローラ
34 転写ローラ
34a 芯金
34b 導電性弾性層
21 感光体
22 帯電ローラ
22’ 帯電ブラシ(接触帯電部材)
22a 芯金
23 レーザビームスキャナ
24 現像装置
24a 現像スリーブ
24b 攪拌部材
24c 弾性ブレード
25 転写ローラ
26 定着装置
27 プロセスカートリッジ
28 カートリッジ保持部材
11 アルミ基体(導電性基体)
12 導電層
13 正電荷注入防止層
14 電荷発生層
15 電荷輸送層
16 電荷注入層
16a 導電粒子(導電フィラー)

Claims (105)

  1. 少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを有する磁性トナーであって、
    磁性トナーの平均円形度が、0.970以上であり、
    前記磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10〜50Am2/kgであり、
    前記磁性粉体が、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、
    前記磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される前記磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が、0.001未満であり、
    前記結着樹脂が、少なくともスチレンモノマーを含む単量体を重合して得られる樹脂を含有しており、
    前記磁性トナー中の残留スチレンモノマーが、300ppm未満であり、
    前記磁性トナーの体積平均粒径をCとし、透過型電子顕微鏡を用いた前記磁性トナーの断面観察における磁性粉体と磁性トナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、
    D/C≦0.02
    の関係を満たすトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とするトナー。
  2. 磁場79.6kA/mにおける磁性トナーの残留磁化が10Am2/kg未満であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 磁場79.6kA/mにおける磁性トナーの残留磁化が7Am2/kg未満であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  4. 磁場79.6kA/mにおける磁性トナーの残留磁化が5Am2/kg未満であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  5. D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子を65個数%以上含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
  6. D/C≦0.02の関係を満たすトナー粒子を75個数%以上含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
  7. 磁性トナーは、結着樹脂100質量部に対して、磁性粉体を10〜200質量部含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
  8. 磁性トナーは、示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に40〜110℃の範囲に吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
  9. 磁性トナーは、示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に45〜90℃の範囲に吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
  10. トナー粒子がワックスをさらに含み、示差走査熱量計によって測定される吸熱ピークが、該ワックスに由来することを特徴とする請求項8又は9に記載のトナー。
  11. 磁性トナーは、結着樹脂100質量部に対し0.5〜50質量部のワックス成分を含有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のトナー。
  12. 前記結着樹脂は、少なくとも過酸化物系重合開始剤を用いて、スチレンモノマーを含む単量体を重合させて得られる樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のトナー。
  13. 前記過酸化物系重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項12に記載のトナー。
  14. 前記有機過酸化物が、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドからなるグループより選ばれる1種以上の有機過酸化物であることを特徴とする請求項13に記載のトナー。
  15. 前記有機過酸化物が、パーオキシエステル又はジアシルパーオキサイドであることを特徴とする請求項13に記載のトナー。
  16. 前記過酸化物系重合開始剤が、ジアシルパーオキサイドを含有しており、該ジアシルパーオキサイドに由来するカルボン酸の含有量が、磁性トナーの質量に対して2000ppm以下であることを特徴とする請求項13に記載のトナー。
  17. ジアシルパーオキサイドに由来するカルボン酸の含有量が、磁性トナーの質量に対して1000ppm以下であることを特徴とする請求項16に記載のトナー。
  18. ジアシルパーオキサイドに由来するカルボン酸の含有量が、磁性トナーの質量に対して500ppm以下であることを特徴とする請求項16に記載のトナー。
  19. 前記過酸化物系重合開始剤が、パーオキシエステルを含有しており、該パーオキシエステルに由来するカルボン酸の含有量が、磁性トナーの質量に対して2000ppm以下であることを特徴とする請求項13に記載のトナー。
  20. パーオキシエステルに由来するカルボン酸の含有量が、前記磁性トナーの質量に対して1000ppm以下であることを特徴とする請求項19に記載のトナー。
  21. パーオキシエステルに由来するカルボン酸の含有量が、前記磁性トナーの質量に対して500ppm以下であることを特徴とする請求項19に記載のトナー。
  22. 前記磁性粉体は、鉄元素に対し、0.05〜5.0質量%のリン元素を含有していることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載のトナー。
  23. 前記磁性粉体は、鉄元素に対し、5.0質量%以下のケイ素元素を含有していることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載のトナー。
  24. 前記磁性粉体は、疎水化表面処理されていることを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載のトナー。
  25. 前記磁性粉体が、水系媒体中でカップリング剤により表面処理されたものであることを特徴とする請求項24に記載のトナー。
  26. 前記無機微粉体は、個数平均一次粒径4〜80nmであり、疎水化処理された無機微粉体であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれかに記載のトナー。
  27. 前記無機微粉体は、シリカ、酸化チタン、アルミナ及びその複酸化物からなるグループより選ばれる無機微粉体を少なくとも有していることを特徴とする請求項26に記載のトナー。
  28. 前記無機微粉体は、少なくともシリコーンオイルで処理されていることを特徴とする請求項26又は27に記載のトナー。
  29. 前記無機微粉体は、少なくともシラン化合物で処理すると同時に、シリコーンオイルで処理されていることを特徴とする請求項28に記載のトナー。
  30. 前記無機微粉体は、少なくともシラン化合物で処理した後、シリコーンオイルで処理されていることを特徴とする請求項28に記載のトナー。
  31. 磁性トナーのモード円形度は、0.99以上であることを特徴とする請求項1乃至30のいずれかに記載のトナー。
  32. 磁性トナーは、磁性トナーの体積平均粒径よりも小さい導電性微粉体を含有することを特徴とする請求項1乃至31のいずれかに記載のトナー。
  33. 前記導電性微粉体の抵抗が、1×109Ω・cm以下であることを特徴とする請求項32に記載のトナー。
  34. 前記導電性微粉体の抵抗が、1×106Ω・cm以下であることを特徴とする請求項32に記載のトナー。
  35. 前記導電性微粉体が、非磁性であることを特徴とする請求項32に記載のトナー。
  36. 少なくともスチレンモノマーを含む単量体と磁性粉体とを含有する単量体組成物を、水系媒体中で、過酸化物系重合開始剤を用いて懸濁重合して磁性トナー粒子を製造する工程を含む磁性トナーの製造方法であって、
    得られる磁性トナーが、少なくとも該磁性トナー粒子と無機微粉体とを有しており、
    磁性トナーの平均円形度が、0.970以上であり、
    前記磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10〜50Am2/kgであり、
    前記磁性粉体が、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、
    前記磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される前記磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が、0.001未満であり、
    前記結着樹脂が、少なくともスチレンモノマーを含む単量体を重合して得られる樹脂を含有しており、
    前記磁性トナー中の残留スチレンモノマーが、300ppm未満であり、
    前記磁性トナーの体積平均粒径をCとし、透過型電子顕微鏡を用いた前記磁性トナーの断面観察における磁性粉体と磁性トナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、
    D/C≦0.02
    の関係を満たすトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とするトナーの製造方法。
  37. 前記過酸化物系重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項36に記載のトナーの製造方法。
  38. 前記有機過酸化物は、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドからなるグループより選ばれる有機過酸化物であることを特徴とする請求項37に記載のトナーの製造方法。
  39. 前記有機過酸化物が、パーオキシエステル又はジアシルパーオキサイドであることを特徴とする請求項37に記載のトナーの製造方法。
  40. 単量体組成物と水系媒体との質量比を20:80〜60:40の範囲として懸濁重合を行うことを特徴とする請求項36乃至39のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  41. 単量体組成物と水系媒体との質量比を30:70〜50:50の範囲として懸濁重合を行うことを特徴とする請求項36乃至39のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  42. 前記懸濁重合後に、磁性トナー粒子とアルカリ性の水系媒体を実質的に分離する分離工程を行うことを特徴とする請求項36乃至41のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  43. 分離工程後に、磁性トナー粒子と酸を加えて調整したpH4未満の水とを接触させる工程を行うことを特徴とする請求項42に記載のトナーの製造方法。
  44. 懸濁重合後、アルカリを懸濁液に添加し、水系媒体のpHを10〜12の範囲内に調整することを特徴とする請求項36乃至41のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  45. 前記磁性粉体が、鉄元素に対して0.05〜5.0質量%のリン元素を含有していることを特徴とする請求項36乃至44のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  46. 前記磁性粉体が、鉄元素に対して5.0質量%以下のケイ素元素を含有していることを特徴とする請求項36乃至44のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  47. 帯電部材に電圧を印加し、像担持体を帯電させる帯電工程と、
    帯電された像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成工程と、
    像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを転移させてトナー像を像担持体上に現像する現像工程と、
    像担持体上に形成されたトナー像を転写材に静電転写させる転写工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、
    該トナーが、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを有する磁性トナーであって、
    磁性トナーの平均円形度が、0.970以上であり、
    前記磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10〜50Am2/kgであり、
    前記磁性粉体が、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、
    前記磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される前記磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が、0.001未満であり、
    前記結着樹脂が、少なくともスチレンモノマーを含む単量体を重合して得られる樹脂を含有しており、
    前記磁性トナー中の残留スチレンモノマーが、300ppm未満であり、
    前記磁性トナーの体積平均粒径をCとし、透過型電子顕微鏡を用いた前記磁性トナーの断面観察における磁性粉体と磁性トナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、
    D/C≦0.02
    の関係を満たすトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とする画像形成方法。
  48. 前記帯電工程が、像担持体と当接部を形成して接触する接触帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項47に記載の画像形成方法。
  49. 前記現像工程は、トナー像を転写材上に転写した後に像担持体に残留したトナーを回収するクリーニング工程を兼ねていることを特徴とする請求項47又は48に記載の画像形成方法。
  50. 磁性トナーが導電性微粉体を含有しており、該導電性微粉体が、現像工程で像担持体に付着し、転写後も像担持体上に残留し、帯電工程において、少なくとも帯電部材と像担持体の当接部及びその近傍の少なくともいずれかに介在することを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の画像形成方法。
  51. 前記帯電工程は、前記接触帯電部材と前記像担持体との当接部に1×103〜5×105個/mm2以上の導電性微粉体が介在した状態で像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項50に記載の画像形成方法。
  52. 前記帯電工程は、当接部を形成する前記接触帯電部材の表面の移動速度と前記像担持体の表面の移動速度とが、相対的速度差を有しつつ像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項48乃至51のいずれかに記載の画像形成方法。
  53. 前記帯電工程は、前記接触帯電部材と前記像担持体が互いに逆方向に移動しつつ像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項48乃至52のいずれかに記載の画像形成方法。
  54. 前記接触帯電部材として、アスカーC硬度が50度以下のローラ部材を用いることを特徴とする請求項48乃至53のいずれかに記載の画像形成方法。
  55. 前記帯電工程は、接触帯電部材としてローラ部材を用い、前記ローラ部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電させる工程であり、前記ローラ部材は少なくとも球形換算での平均セル径が5〜300μmである窪みを表面に有しており、前記窪みを空隙部としたローラ部材表面の空隙率は15〜90%であることを特徴とする請求項48乃至54のいずれかに記載の画像形成方法。
  56. 前記帯電工程は、前記接触帯電部材として、導電性を有するブラシ部材に、電圧を印加することにより像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項48乃至53のいずれかに記載の画像形成方法。
  57. 前記接触帯電部材は、体積抵抗値1×103〜1×108Ω・cmを有することを特徴とする請求項48乃至56のいずれかに記載の画像形成方法。
  58. 前記帯電工程は、前記接触帯電部材に直流電圧または2×Vth(Vth:直流電圧印加における放電開始電圧)(V)未満のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を印加することにより像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項48乃至57のいずれかに記載の画像形成方法。
  59. 前記帯電工程は、前記接触帯電部材に直流電圧、またはVth(V)未満のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を印加することにより像担持体を帯電させる工程であることを特徴とする請求項58に記載の画像形成方法。
  60. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層の体積抵抗値が、1×109〜1×1014Ω・cmであることを特徴とする請求項47乃至59のいずれかに記載の画像形成方法。
  61. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層が、少なくとも金属酸化物からなる導電性微粒子が分散された樹脂層であることを特徴とする請求項47乃至60のいずれかに記載の画像形成方法。
  62. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層の水に対する接触角は、85度以上であることを特徴とする請求項47乃至61のいずれかに記載の画像形成方法。
  63. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層は、フッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子及びポリオレフィン系樹脂粒子から選ばれる少なくとも一種以上の潤滑性微粒子が分散された樹脂層であることを特徴とする請求項47乃至62のいずれかに記載の画像形成方法。
  64. 前記像担持体が、光導電性物質を利用した感光体であることを特徴とする請求項47乃至63のいずれかに記載の画像形成方法。
  65. 前記静電潜像形成工程は、像露光により像担持体に静電潜像を形成させる工程であることを特徴とする請求項47乃至64のいずれかに記載の画像形成方法。
  66. 前記現像工程において、現像領域におけるトナー担持体面の移動速度が、像担持体面の移動速度に対し0.7〜7.0倍の速度であることを特徴とする請求項47乃至65のいずれかに記載の画像形成方法。
  67. 前記現像工程において、現像領域におけるトナー担持体面の移動速度が、像担持体面の移動速度に対し1.05〜3.00倍の速度であることを特徴とする請求項66に記載の画像形成方法。
  68. 前記トナー担持体の表面粗度(Ra)が、0.2〜3.5μmであることを特徴とする請求項47乃至67のいずれかに記載の画像形成方法。
  69. 前記現像工程は、トナー担持体上に5〜50g/m2のトナー層を形成し、トナー層からトナーを像担持体に転移させトナー像を像担持体上に現像する工程であることを特徴とする請求項47乃至68のいずれかに記載の画像形成方法。
  70. 前記現像工程において、トナー担持体に当接されたトナー層厚規制部材によりトナー担持体上に担持されたトナー量を規制することを特徴とする請求項47乃至69のいずれかに記載の画像形成方法。
  71. 前記トナー層厚規制部材が、弾性部材であることを特徴とする請求項70に記載の画像形成方法。
  72. 現像工程は、像担持体とトナー担持体との間隙よりも薄い厚さに磁性トナー層をトナー担持体上に形成し、前記トナー層からトナーを静電潜像に転移させて、トナー像を像担持体上に現像する現像工程であることを特徴とする請求項47乃至71のいずれかに記載の画像形成方法。
  73. 像担持体とトナー担持体とが、一定の間隙を設けて対向するように配置されており、前記間隙が100〜1000μmであることを特徴とする請求項72に記載の画像形成方法。
  74. 現像工程は、トナー担持体と像担持体との間に、少なくとも交流電界を現像バイアスとして印加して、像担持体の静電潜像をトナーによって現像する工程であり、前記交流電界はピークトゥーピークの電界強度で3×106〜1×107V/m、周波数100〜5000Hzであることを特徴とする請求項47乃至73のいずれかに記載の画像形成方法。
  75. 前記転写工程は、転写部材が転写時に転写材を介して像担持体に当接しており、像担持体上のトナー像を転写材に転写させる工程であることを特徴とする請求項47乃至74のいずれかに記載の画像形成方法。
  76. 静電潜像を担持するための像担持体と、
    帯電部材に電圧を印加し、像担持体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
    像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを転移させてトナー像を像担持体上に形成させる現像手段と、
    前記像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に静電転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
    該トナーが、請求項1乃至35のいずれか一項に記載の磁性トナーであることを特徴とする画像形成装置。
  77. 前記帯電手段は、像担持体と当接部を形成して接触する接触帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電させる手段であることを特徴とする請求項76に記載の画像形成装置。
  78. 静電潜像を担持するための像担持体と、
    帯電部材に電圧を印加し、像担持体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
    像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを転移させてトナー像を像担持体上に形成させる現像手段と、
    前記像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に静電転写する転写手段と、を有する画像形成装置から着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、
    前記像担持体及び前記帯電手段の少なくとも一方が、前記現像手段と一体に支持され、
    該トナーが、少なくとも結着樹脂及び磁性粉体を含有する磁性トナー粒子と無機微粉体とを有する磁性トナーであって、
    磁性トナーの平均円形度が、0.970以上であり、
    前記磁性トナーの磁場79.6kA/mにおける磁化の強さが10〜50Am2/kgであり、
    前記磁性粉体が、少なくとも磁性酸化鉄を含有し、
    前記磁性トナーのX線光電子分光分析により測定される前記磁性トナー粒子の表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が、0.001未満であり、
    前記結着樹脂が、少なくともスチレンモノマーを含む単量体を重合して得られる樹脂を含有しており、
    前記磁性トナー中の残留スチレンモノマーが、300ppm未満であり、
    前記磁性トナーの体積平均粒径をCとし、透過型電子顕微鏡を用いた前記磁性トナーの断面観察における磁性粉体と磁性トナー粒子表面との距離の最小値をDとしたとき、
    D/C≦0.02
    の関係を満たすトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
  79. 前記帯電手段は、像担持体と当接部を形成して接触する接触帯電部材に電圧を印加することにより像担持体を帯電させる手段であることを特徴とする請求項78に記載のプロセスカートリッジ。
  80. 前記現像手段は、トナー像を転写材上に転写した後に像担持体に残留したトナーを回収するクリーニング手段を兼ねていることを特徴とする請求項78又は79に記載のプロセスカートリッジ。
  81. 前記磁性トナーが導電性微粉体を含有しており、該導電性微粉体が、現像手段で像担持体に付着し、転写後も像担持体上に残留し、帯電手段において、少なくとも帯電部材と像担持体の当接部及びその近傍の少なくともいずれかに介在することを特徴とする請求項78乃至80のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  82. 前記帯電手段は、前記接触帯電部材と前記像担持体との当接部に1×103〜5×105個/mm2以上の導電性微粉体が介在した状態で像担持体を帯電させる手段であることを特徴とする請求項81に記載のプロセスカートリッジ。
  83. 前記帯電手段は、当接部を形成する前記接触帯電部材の表面の移動速度と前記像担持体の表面の移動速度が、相対的速度差を有しつつ像担持体を帯電させる手段であることを特徴とする請求項79に記載のプロセスカートリッジ。
  84. 前記帯電手段は、前記接触帯電部材と前記像担持体が互いに逆方向に移動しつつ像担持体を帯電させる手段であることを特徴とする請求項79に記載のプロセスカートリッジ。
  85. 前記接触帯電部材が、アスカーC硬度50度以下のローラ部材であることを特徴とする請求項79乃至84のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  86. 前記接触帯電部材が、少なくとも球形換算での平均セル径が5〜300μmである窪みを表面に有しており、前記窪みを空隙部としたローラ部材表面の空隙率は15〜90%であるローラ部材を用いることを特徴とする請求項79乃至85のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  87. 前記帯電手段は、前記接触帯電部材として、導電性を有するブラシ部材を有することを特徴とする請求項79乃至84のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  88. 前記接触帯電部材は、体積抵抗値1×103〜1×108Ω・cmであることを特徴とする請求項79乃至87のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  89. 前記帯電手段は、前記接触帯電部材に直流電圧または2×Vth(Vth:直流電圧印加における放電開始電圧)(V)未満のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を印加することにより像担持体を帯電することを特徴とする請求項79乃至88のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  90. 前記帯電手段は、前記接触帯電部材に直流電圧、またはVth(V)未満のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を印加することにより像担持体を帯電させることを特徴とする請求項79乃至88のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  91. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層の体積抵抗値が、1×109〜1×1014Ω・cmであることを特徴とする請求項78乃至90のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  92. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層は、少なくとも金属酸化物からなる導電性微粒子が分散された樹脂層であることを特徴とする請求項78乃至91のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  93. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層の水に対する接触角が、85度以上であることを特徴とする請求項78乃至92のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  94. 前記像担持体の最表面を形成する最表面層は、フッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子及びポリオレフィン系樹脂粒子から選ばれる少なくとも一種以上の潤滑性微粒子が分散された樹脂層であることを特徴とする請求項78乃至93のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  95. 前記像担持体は、光導電性物質を利用した感光体であることを特徴とする請求項78乃至94のいずれか一項に記載のプロセスカートリッジ。
  96. 前記静電潜像形成手段は、像露光により像担持体に静電潜像を形成することを特徴とする請求項78乃至95のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  97. 前記現像手段は、現像領域におけるトナー担持体面の移動速度が、像担持体面の移動速度に対し0.7〜7.0倍の速度であることを特徴とする請求項78乃至96のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  98. 前記現像手段は、現像領域におけるトナー担持体面の移動速度が、像担持体面の移動速度に対し1.05〜3.00倍の速度であることを特徴とする請求項78乃至96のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  99. 前記トナー担持体の表面粗度(Ra)が0.2〜3.5μmであることを特徴とする請求項78乃至98のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  100. 前記現像手段は、トナー担持体上に5〜50g/m2のトナー層を形成し、トナー層からトナーを転移させトナー像を像担持体上に現像することを特徴とする請求項78乃至99のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  101. 前記現像手段は、トナー担持体に当接されたトナー層厚規制部材を有し、前記トナー層厚規制部材はトナー担持体上に担持されるトナー量を規制することを特徴とする請求項78乃至100のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  102. 前記トナー層厚規制部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項101に記載のプロセスカートリッジ。
  103. 前記現像手段は、像担持体とトナー担持体との間隙よりも薄い厚さに磁性トナー層をトナー担持体上に形成し、前記トナー層からトナーを静電潜像に転移させて、トナー像を像担持体上に現像することを特徴とする請求項78乃至102のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  104. 前記現像手段は、像担持体と一定の間隙を設けて対向するように配置されているトナー担持体を有し、前記間隙が100〜1000μmであることを特徴とする請求項78乃至103のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  105. 前記現像手段は、トナー担持体と像担持体との間に、少なくとも交流電界を現像バイアスとして印加して像担持体の静電潜像をトナーによって現像し、前記交流電界はピークトゥーピークの電界強度で3×106〜1×107V/m、周波数100〜5000Hzであることを特徴とする請求項78乃至104のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
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