JP4110036B2 - トナー及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法,静電記録法,磁気記録法,トナージェット方式記録法などを利用した記録方法に用いられるトナーおよび画像形成方法に関するものである。詳しくは、本発明は、予め静電潜像担持体上にトナー像を形成後、転写材上に転写させて画像形成する、複写機,プリンター,ファックスに用いられるトナーおよび画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により静電荷像担持体(以下「感光体」という)上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像を行なって可視像とし、必要に応じて紙などの転写材にトナー像を転写した後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。
【0003】
電気的潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が知られている。
【0004】
米国特許第3,909,258号明細書には電気的に導電性を有する磁性トナーを用いて現像する方法が提案されている。これは、内部に磁性を有する円筒状の導電性スリーブ上に導電性磁性トナーを支持し、これを静電像に接触せしめ現像するものである。この際、現像部において、記録体表面とスリーブ表面の間にトナー粒子により導電路が形成され、この導電路を経てスリーブよりトナー粒子に電荷が導かれ、静電像の画像部との間のクーロン力によりトナー粒子が画像部に付着して現像される。この導電性磁性トナーを用いる現像方法は従来の二成分現像方法にまつわる問題点を回避した優れた方法であるが、反面トナーが導電性であるため、現像した画像を、記録体から普通紙等の最終的な支持部材へ静電的に転写することが困難であるという問題を有している。
【0005】
静電的に転写することが可能な高抵抗の磁性トナーを用いる現像方法として、トナー粒子の誘電分極を利用した現像方法がある。しかし、かかる方法は本質的に現像速度がおそい、現像画像の濃度が十分に得られていない等の問題点を有しており、実用上困難である。
【0006】
高抵抗の絶縁性の磁性トナーを用いるその他の現像方法として、トナー粒子相互の摩擦、トナー粒子とスリーブ等との摩擦等によりトナー粒子を摩擦帯電し、これを静電像保持部材に接触して現像する方法が知られている。しかしこの方法は、トナー粒子と摩擦部材との接触回数が少なく、また、用いられる磁性トナーはトナー粒子表面に磁性体が多く露出しているため、摩擦帯電が不十分となりやすく帯電不良による画像不良などの問題があった。
【0007】
例えば、特開昭54−43027号公報及び特開昭55−18656号公報等においては、現像剤担持体上に磁性現像剤を薄く塗布し、これを摩擦帯電せしめ、次いでこれを磁界の作用下で静電潜像にきわめて近接させ、かつ接触することなく対向させ、現像する方法、所謂、ジャンピング現像方法が開示されている。この方法によれば、磁性現像剤を現像剤担持体上に薄く塗布することにより現像剤の十分な摩擦帯電を可能とし、しかも現像剤を磁力によって支持しつつ静電潜像に接することなく現像が行われるため、非画像部への現像剤の転移、いわゆるカブリが抑制されて高精細な画像を得ることが可能となる。
【0008】
このような一成分現像方式は二成分方式のようにガラスビーズや鉄粉等のキャリア粒子が不要な為、現像装置自体を小型化・軽量化出来る。さらには、二成分現像方式は現像剤中のトナー濃度を一定に保つ必要がある為、トナー濃度を検知し必要量のトナーを補給する装置が必要である。よって、ここでも現像装置が大きく重くなる。一成分現像方式ではこのような装置は必要とならない為、小さく軽く出来るため好ましい。
【0009】
しかしながら、絶縁性磁性トナーを用いる現像方法には、用いる絶縁性磁性トナーに関わる不安定要素がある。それは、絶縁性磁性トナー中には微粉末状の磁性体が相当量混合分散されており、該磁性体の一部がトナー粒子の表面に露出しているため、磁性トナーの流動性及び摩擦帯電性に影響し、結果として、磁性トナーの現像特性、耐久性等の磁性トナーに要求される種々の特性の変動あるいは劣化を引き起こすというものである。
【0010】
従来の磁性体を含有する磁性トナーを用いた場合に、上述した問題が生じてしまうのは、磁性トナーの表面に磁性体が露出していることがその大きな原因と考えられる。すなわち、磁性トナーの表面に、トナーを構成する樹脂に比して相対的に抵抗の低い磁性体微粒子が露出することにより、トナー帯電性能の低下、トナー流動性の低下、その上、長期間の使用においては、トナー同士あるいは規制部材との摺擦による磁性体の剥離に伴う画像濃度の低下やスリーブゴーストと呼ばれる濃淡のムラの発生など現像剤の劣化などが引き起こされるのである。
【0011】
一方、トナーは、結着樹脂、着色剤等を溶融混合し、均一に分散した後、微粉砕装置により粉砕し、分級機により分級して、所望の粒径を有するトナーとして製造(粉砕法)されてきたが、トナーの微小粒径化には材料の選択範囲に制限がある。例えば、樹脂着色剤分散体が充分に脆く、経済的に使用可能な製造装置で微粉砕し得るものでなくてはならない。この要求から、樹脂着色剤分散体を脆くするため、この樹脂着色剤分散体を実際に高速で微粉砕する場合に、広い粒径範囲の粒子が形成され易く、特に比較的大きな割合の微粒子(過度に粉砕された粒子)がこれに含まれるという問題が生ずる。更に、このように高度に脆性の材料は、複写機等において現像用トナーとして使用する際、しばしば、更に微粉砕ないし粉化を受ける。
【0012】
また、粉砕法では、磁性粉あるいは着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、カブリの増大、画像濃度の低下の原因となる。さらに、粉砕法は、本質的に、トナーの表面に磁性酸化鉄粒子が露出してしまうため、トナーの流動性や過酷環境下での帯電安定性にどうしても問題が残る。
【0013】
すなわち、粉砕法においては、高精細・高画質化で要求されるトナーの微粒子化に限界があり、それに伴い粉体特性、特にトナーの均一帯電性および流動性が著しく減衰する。
【0014】
上述の様な粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、更には上記のごとき要求を満たすため懸濁重合法や乳化重合後の会合・塩析法(以下、会合重合法と表記)、界面重合法、分散重合法等、溶媒中にモノマー等を投入し直接トナーを形成する、いわゆる重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
【0015】
この中で会合重合によるトナーは、特登録2557646号公報、特登録2547011〜2547016号公報、特登録2537503号公報等で開示されているように、トナー粒度分布を狭く製造することが容易に可能であり、更には、トナー粒子にエッジ部が無く、熱球形化も可能なことから、転写特性に優れ、高画質化に有利となる。
【0016】
しかしながら、この会合重合トナー中に磁性体を含有することにより、その流動性及び放置における帯電特性は著しく低下する。
【0017】
これはすなわち製造上多量の界面活性剤を用いるために、帯電リークが生じやすいという課題と、本質的に均一に凝集会合する為、粉砕法と同様トナーの表面に磁性酸化鉄粒子が露出してしまい、結果として流動性が低下し、トナー融着や削れ等の課題が生じてしまう。
【0018】
また低温で十分な定着性を実現させるためには、熱可塑性樹脂として、低Tgまたは低融点樹脂を使用する必要があるが、同様に均一に凝集会合するという理由から低Tgまたは低融点樹脂を使用すると、定着時に定着ローラーにトナーの一部が付着し、そのトナーが非画像部に転写するいわゆるオフセット現象の発生、現像機内で規制ブレード周辺のトナー摺刷、雰囲気温度の影響で保存時にトナー同志が凝集又は融着する問題を生じる。
【0019】
このような観点から従来様様な改良が提案されてきた。
【0020】
例えば磁性体等着色剤の露出に関しては、会合重合法の場合、トナー母体粒子表面を重合体微粒子を付着させた後、該重合体微粒子を皮膜化してカプセル化トナーを作製する製造方法として各種の方法が提案されている。
【0021】
例えば、特開昭57−45558号公報には、乳化重合によって形成された重合体微粒子をトナー母体粒子表面に付着させる際に、水溶性無機塩を加えるか、pHを変化させる方法が記載されている。本方法は一部磁性体が溶出したり、トナー中にわずかに無機塩が取り込まれる等の課題があり、帯電性の面からいまだ不十分なものであった。
【0022】
特開平1−257853号公報〜同1−257856号公報には、懸濁重合で得られたトナー母体粒子表面に乳化重合によって形成された微粒子を付着させるに際し、母体粒子と微粒子との混合液に水溶性重合開始剤を添加して反応させるという方法が開示されている。この方法によればトナー母体粒子表面を微粒子で均一に覆うことは可能であるが、微粒子が粒子状態で付着しているにすぎず、均一に被膜化する為には微粒子量を大幅に増やして厚くコートする必要があり、定着性はむしろ悪化してしまう。
【0023】
また、特開平2−186363号公報、特開平4−188155号公報、特開平5−281782号公報には、トナー母体粒子表面に乳化重合によって形成された微粒子を乾式混合し、トナー母体粒子表面に微粒子を静電的に付着させ、ついでこれを衝撃力により固着させるという製法が開示されている。本方法は乾式で被覆できるというメリットはあるものの、乾燥した微粒子は一次粒子に再分散し難く、トナー母体粒子表面に微粒子を均一に付着させることは困難である。
【0024】
また懸濁重合法トナーでは有るが同様の観点よりカプセル化により磁性体粒子が存在しないトナー表層部分を有することで定着性と耐久性を両立させる検討が、特開平7−209904号公報に開示されているが、このような現像剤は、例えば平均粒径が10μmと小さい場合、磁性体粒子が存在しうる容積が小さくなるため、十分な量の磁性体粒子を内包しにくいということでもある。しかも、このような現像剤では、現像剤の粒度分布において粒径の大きい現像剤粒子と小さい現像剤粒子とでは磁性体粒子の存在しない表面樹脂層の割合が異なってしまい、この相違に対応して内包される磁性体含有量も異なり、現像性や転写性も現像剤の粒径によって異なることになる、即ち粒径に依存する選択現像性が見られやすい。従って、会合重合法のようなシャープな粒度分布を有するトナーにおいても磁性体を多く含み現像されにくい粒子、即ち粒径の大きな現像剤粒子が残りやすく、画像濃度及び画質の低下さらには定着性の悪化にもつながる。
【0025】
加えて、いずれの前出の会合重合法の開示例においても、着色剤として磁性体を使用した場合、磁性体が熱球形化を阻害してしまうため、均一に処理した場合でも実際にはトナーの凹凸によって被覆量が変化する傾向があり、転写性や耐久時の帯電性に不十分なものがあった。また、トナーの凹凸の影響を減じる為に真球形状にする為には、過度の熱処理が必要となり、例えば樹脂Tgよりはるかに大きな温度が必要となってしまうため、結果としてワックスや磁性体の露出が生じ、転写性、現像性の悪化が生じることが分かってきた。
【0026】
このような観点から磁性体の改良が必要であるが、会合重合法の観点から磁性体の改良に関して十分な知見が得られていないのが現状である。
【0027】
なお、磁性体に関しては、たとえば懸濁重合法のトナーにおいては、磁性体の分散性向上のための観点からではあるが、表面改質に関して、数多く提案がなされている。
【0028】
例えば、特開昭59−200254号公報、特開昭59−200256号公報、特開昭59−200257号公報及び特開昭59−224102号公報等に磁性体の各種シランカップリング剤処理技術が提案されており、特開昭63−250660号公報では、ケイ素元素含有磁性粒子をシランカップリング剤で処理する技術が開示されており、また特開平7−72654号公報では、磁性酸化鉄をアルキルトリアルコキシシランで処理する技術が開示されている。
【0029】
しかしながら会合重合法に上記の技術を用いた場合、これらの処理により磁性体の流動性に関して改善がなされ、トナー中の分散性もある程度向上するものの、帯電性の低下や熱球形化に伴うトナー融着・転写性の低下等の課題に関してはほとんど改善がなされず、いまだ検討の余地が有る事が分かってきた。
【0030】
加えて会合重合法の場合、水中で乳化粒子と凝集させる必要があるため、高疎水化度の磁性体は凝集しやすく、乳化粒子と逆極性の界面活性剤の多量添加や少量づつ磁性体を添加するなどの工程上の工夫が必要となり、帯電性の低下やコストアップに繋がる。
【0031】
また、プリンター装置はLED、LBPプリンターが最近の市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度即ち、従来240、300dpiであったものが400、600、800dpiとなって来ている。従って現像方式もこれにともなって、より高精細が要求されてきている。また、複写機においても高機能化が進んでおり、そのためデジタル化の方向に進みつつある。この方向は、静電潜像をレーザーで形成する方法が主である為、やはり高解像度の方向に進んでおり、ここでもプリンターと同様に高解像・高精細の現像方式が要求されてきている。このためトナーの小粒径化が進んでおり、特開平1−112253号公報、特開平1−191156号公報、特開平2−214156号公報、特開平2−284158号公報、特開平3−181952号公報、特開平4−162048号公報などでは特定の粒度分布の粒径の小さいトナーが提案されている。
【0032】
また、近年では環境保護の観点より、コロナ放電を利用した一次帯電及び転写プロセスから、感光体当接部材を用いた一次帯電、転写プロセスが主流となりつつある。
【0033】
コロナ放電を利用した一次帯電及び転写プロセスでは、コロナ放電特に負コロナを生成する際に多量のオゾンを発生することから、電子写真装置にオゾン捕獲のためのフィルタを具備する必要性があり、装置の大型化又は、ランニングコストがアップするなどの問題点があった。また、こういったコロナ帯電方法によって引き起こされる画像上の問題点としては、たとえば、窒素酸化物等の付着により感光体表面抵抗が低くなることで生じる所謂画像流れ、あるいは、電子写真装置が停止中帯電器内に残存するイオンが原因となる感光体のメモリ現象等が挙げられる。
【0034】
このような問題点を解決するための技術として、ローラ又はブレードなどの帯電部材又は転写部材を感光体表面に接触させることにより、その接触部分近傍に狭い空間を形成し所謂パッシェンの法則で解釈できるような放電を形成させて、オゾン発生を極力抑えた接触帯電方法又は接触転写方法が開発され、例えば、特開昭57−178257号公報、特開昭56−104351号公報、特開昭58−40566号公報、特開昭58−139156号公報、特開昭58−150975号公報で公知技術となっている。これらの中でも特に、特開昭63−149669号公報や特開平2−123385号公報に記載されている如き、導電性弾性ローラーを用いた帯電方式及び転写方式が、安定性という点から好ましく用いられている。
【0035】
しかしながら、接触帯電方法または接触転写方法を用いると、コロナ放電を用いる場合とは異なり、憂慮すべき問題点があることがわかった。
【0036】
具体的には、まず接触転写方法の場合、転写部材が転写時に転写部材を介して感光体に当接されるため、感光体上に形成されたトナー像を転写材へ転写する際にトナー像が圧接され、所謂転写中抜けと称される部分的な転写不良の問題が生じる。更に、近年の技術の方向として、より高解像度で高精細の現像方式が要求されてきており、こういった要求に答えるために、トナーの粒径を小さくする方向に進んでいる。このようにトナー粒径が小さくなるほど、転写工程でトナー粒子にかかるクーロン力に比べて、トナー粒子の感光体への付着力(鏡像力やファンデルワールス力など)が大きくなり、結果として転写残トナーが増加することになり、転写不良が一層悪化する傾向にある。
【0037】
一方接触帯電方法においては、帯電部材が押接圧を持って感光体表面に圧接されている。そのため、未転写の残留トナー、すなわち転写残トナーが感光体表面に押し付けられることにより、感光体表面の削れによる摩耗あるいは削れの部分が発生核となるトナー融着が発生しやすく、この傾向は転写残トナーが多い程顕著となって現れる。
【0038】
こういった感光体の削れやトナー融着は静電荷像担持体の静電潜像形成に重大な欠損を生じさせる。具体的には、感光体の削れは一次帯電を不可とするため、削れた部分がハーフトーン画像上に黒く現れてしまう。また、トナー融着は露光による潜像形成を不可とするため、融着部分がハーフトーン画像上に白く現れてしまう。さらにはトナーの転写性も悪化させてしまうことになる。そのため、前述の転写不良と相まって、著しい画像欠陥となって現れ、場合によっては相乗的に画質の悪化が早まることとなる。
【0039】
このような感光体の削れや転写不良という問題は、不定形トナー粒子から成る現像剤を用いた場合に発生しやすい。これは、不定形トナーの転写性が低いことに加え、トナー粒子のエッジ部が感光体表面を引っ掻きやすいためと思われる。
【0040】
更に、削れの問題はトナー粒子表面に磁性体が露出している磁性現像剤を用いる場合特に顕著となる。これは露出した磁性体が感光体に直接圧接されることを考えれば容易に納得されることである。
【0041】
さらには、転写残トナーが多くなると接触帯電部材と感光体とが十分な接触を保つことが難しくなり、帯電性が悪化するため、反転現像などにおいては非画像部へのトナーの転移、すなわちカブリが発生しやすくなる。この現象は部材の抵抗が上がりやすい低湿下においてよく見受けられる。
【0042】
このように、環境を考慮すると非常に好ましい接触帯電方法及び接触転写方法を用いる画像形成方法においては、転写性が高く、かつ、感光体の削れやトナー融着の起こりにくい磁性現像剤の開発が望まれている。
【0043】
従来の磁性体を含有する磁性トナーを用いた場合に、上記した問題が生じてしまうのは、従来の磁性トナーは、いずれもそのトナー表面に磁性体が露出していることがその大きな原因である。トナー表面に磁性体が露出している磁性トナーの場合、磁性体の抵抗がトナーの有する樹脂の抵抗に比して低いため高湿下での帯電特性が不良となりやすく、カブリ抑制の悪化、転写性の低下、転写残余トナーの回収性低下によるゴーストの発生、さらには感光体との摺擦による感光体性能の劣化といった好ましからざる弊害を引き起こしてしまう。
【0044】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解決したトナー及び画像形成方法を提供することにある。
【0045】
本発明の目的は、環境に左右されにくく、安定した帯電性能を有し、長時間の使用においても画像濃度が高く、カブリの発生が抑制され、画像再現性に優れたトナーを提供することにある。
【0046】
本発明の目的は、オゾン発生の少ない接触帯電工程と、一成分現像剤を用いるカブリの少ない非接触現像工程とを組み合わせた画像形成方法において、高転写性を有しているために転写中抜けなどの転写残トナーが少なく、さらには感光体表面が削れにくい磁性現像剤を用いることにより、長期間の使用においても画像欠陥の発生しにくい画像形成方法を提供することにある。
【0047】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも樹脂粒子及び酸化鉄を凝集会合して得られるトナー粒子を有しており、i)X線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、ii)トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが30個数%以上であり、iii)該磁性トナーの磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが1〜6.2Am2/kg(emu/g)であることを特徴とするトナーに関する。
【0048】
更に本発明は、外部より電圧を印加された帯電部材によって、静電荷像担持体を帯電する帯電工程;露光により該静電荷像担持体上に静電潜像を形成する露光工程;該静電潜像をトナー担持体に担持されたトナーによって現像し、トナー画像を形成する現像工程;及びトナー画像を転写材に転写する転写工程とを有する画像形成方法であって、該トナーが、少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有しているトナー粒子を有しており、i)X線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、ii)トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上であり、iii)該磁性トナーの磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが1〜6.1Am2/kg(emu/g)であることを特徴とする画像形成方法に関する。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、会合重合法の磁性トナーの帯電均一化および安定化の改良について鋭意検討した結果、磁性体の表面付近の存在状態と、熱球形化/樹脂被覆工程時における熱変形のしやすさが、帯電性・転写性等の諸特性に大きく影響を与えていることを見出し、本発明にいたった。
【0050】
具体的にはX線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが30個数%以上であるトナーとすることで、磁性体を適度に表面付近に存在させて帯電性を改良し、且つトナーとして該トナーの磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが0.6〜6.2Am2/kg(emu/g)であることが特徴となるように磁性体を選択することで、磁性体の乳化凝集状態での磁気凝集が破壊されやすくなり、温和な条件での熱球形化/樹脂被覆が可能となるため、ワックス等の染み出しが抑制される・帯電を阻害する界面活性剤量を少なくしても安定に製造可能となる等の結果として耐久性・帯電安定性等の改良がなされる構成とする事で本発明に到達したものである。
【0051】
また、上記の如きトナーを用いることによりトナーに対するストレスの大きい接触帯電工程と一成分非接触現像工程と接触転写工程とを含む画像形成方法においても、感光体の削れ、帯電不良や転写不良が著しく抑制され、長期間の使用においてもカブリその他の画像欠陥の無い高精細な画像が安定して得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0052】
本発明の特徴のひとつは特定の残留磁化を有する磁性体を用い、トナーとして磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが0.6〜6.2Am2/kg(emu/g)であることである。
【0053】
本発明者らは鋭意検討の結果、会合重合法における熱球形化のし難さは、磁性体の磁気凝集に起因するものであることを見出し、トナーとして磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが6.2Am2/kg(emu/g)未満、より好ましくは5.0Am2/kg(emu/g)未満であるように磁性体を選択することで容易に熱処理が可能であることを見出した。
【0054】
このため、残留磁化の強さが6.2Am2/kg(emu/g)、好ましくは5.0Am2/kg(emu/g)を超えると、従来のように磁性体を均一に被膜化する為には微粒子量を大幅に増やして厚くコートする必要があり、定着性はむしろ悪化してしまう。またワックスを含み低温定着性を有する会合重合トナーの場合には耐久に伴うトナーの割れ/傷等が生じやすく転写性の低下や接触帯電・接触転写時におけるストレスに伴い感光体へのトナー融着が生じやすくなる。
【0055】
なお会合重合の製造工程内のどの部分で、磁性体が磁気凝集構造を生じるかは不明であるが、磁性体製造時やホッパーから会合/重合系内への磁性体投入時等で磁化されてしまうものと考えている。
【0056】
また1成分現像におけるスリーブ上トナーの回収性の観点から、本発明トナーとして磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが0.6Am2/kg(emu/g)以上であることが好ましく、より好ましくは1.0Am2/kg(emu/g)であることが良い。
【0057】
なお本発明において残留磁化を制御する方法については公知の手段で本発明の範囲に入る磁性体であれば凡て使用でき、例えば特開平10−101339号公報や特開2000−319629号公報等酸化鉄にリン、シリカ、チタン等の金属を添加する磁性体製造方法が挙げられる。
【0058】
なお本発明のトナーの着色力そのものに関しては磁性体が磁気凝集構造を適度に生じているほうが有利であるため、本発明においては低残留磁化を有する磁性体を適度に疎水化処理し、磁性体の分散性を向上することが好ましい。
【0059】
具体的には磁性体の疎水化度として5〜90%である磁性体を用いる事が好ましく、5%未満であると画像濃度が低下し、また90%を超えると会合凝集し難くなるため同様に画像濃度が低下し、加えて磁性体処理剤の影響でカブリ等が生じやすくなる。
【0060】
また、本発明のトナー結着樹脂への磁性体含有量は、着色力および本発明磁性体の残留磁化・飽和磁化で決定され、結着樹脂100質量部に対して、10〜200部の添加が好ましく、20〜180部の添加がより好ましい。
【0061】
添加量が10部、より好ましくは20部未満であると着色力が低下してしまい、カブリの抑制も困難であり、180部、より好ましくは200部を超えると着色力は十分だが現像剤担持体への磁力による保磁力が強まり現像性が低下したり、磁性体の露出を抑える為に大量の樹脂被覆が必要となり、結果として定着性や現像性が悪化する。
【0062】
本発明の磁性体に使用できるカップリング剤としては、公知の処理剤凡てが使用可能であり、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式
RmSiYn
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。]で示されるものである。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、ェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0063】
特に、式
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す]で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して水系媒体中で酸化鉄を疎水化処理するのが良い。
【0064】
上記式におけるpが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、酸化鉄粒子同士の合一が多くなり、トナー中へ酸化鉄粒子を十分に分散させることが困難になる。
【0065】
また、qが3より大きいと、シランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
【0066】
特に、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが良い。
【0067】
その処理量は酸化鉄100質量部に対して、0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部とするのが良い。
【0068】
本発明において、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられる。
【0069】
撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーの如き高剪断力混合装置)で、酸化鉄微粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように充分におこなうのが良い。
【0070】
こうして得られる酸化鉄粒子は表面が均一に疎水化処理されているため、トナー材料として用いた場合、トナー中への分散性が非常に良好となる。
【0071】
本発明のトナーに用いられる酸化鉄は、例えば下記方法で製造される。
【0072】
硫酸第一鉄水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8〜10)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応をおこない、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0073】
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6〜10に維持しながら空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応をすすめ種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応がすすむにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌し、水系疎水化処理の場合はカップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水性処理磁性酸化鉄粒子が得られる。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄粒子を、乾操せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。
【0074】
第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、更に塩化鉄等が可能である。
【0075】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法は一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5〜2mol/リットルが用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
【0076】
このようにして製造された疎水性酸化鉄粒子をトナーに使用することにより、画像特性及び安定性に優れた本発明のトナーを得ることが可能となる。
【0077】
また、本発明のトナーにおいて磁性体として用いられる酸化鉄は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素の如き元素を含んでもよく、四三酸化鉄、γ−酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上を併用して用いられる。これら酸化鉄は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2〜30m2/g、特に3〜28m2/gであり、更にモース硬度が5〜7のものが好ましい。
【0078】
また、酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形の如き異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった形状は、SEMなどによって確認することができる。酸化鉄の粒度としては、0.03μm以上の粒径を有する粒子を対象とした粒度の測定において、体積平均粒径が、0.1〜0.3μmであり、かつ0.03〜0.1μmの粒子が40個数%以下であることが好ましい。
【0079】
平均粒径が0.1μm未満の酸化鉄を用いた磁性トナーから画像を得ると、画像の色味が赤味にシフトし、画像の黒色度が不足したり、ハーフトーン画像ではより赤味が強く感じられる傾向が強くなるなど、一般的に好ましいものではない。また、酸化鉄の表面積が増大するために分散性が低下し、製造時に要するエネルギーが増大し、効率的ではない。また、酸化鉄の着色剤としての効果が弱くなり、画像の濃度が不足することもあり、好ましいものではない。
【0080】
一方、酸化鉄の平均粒径が0.3μmを超えると、一粒子あたりの質量が大きくなるため、製造時にバインダーとの比重差の影響でトナー表面に露出する確率が高まったり、製造装置の摩耗などが著しくなる可能性が高まったり、分散物の沈降安定性などが低下するため好ましくない。
【0081】
また、トナー中において、該酸化鉄の0.1μm以下の粒子が40個数%を超えると、酸化鉄の表面積が増大して分散性が低下し、トナー中にて凝集塊を生じやすくなりトナーの帯電性を損なったり、着色力が低下したりする可能性が高まるため40個数%以下であることが好ましい。さらに、30個数%以下とすると、その傾向はより小さくなるため、より好ましい。
【0082】
尚、0.03μm未満の酸化鉄は、粒子径が小さいことに起因してトナー製造時に受ける応力が小さいため、トナー粒子の表面へ出る確率が低くなる。さらに、仮に粒子表面に露出してもリークサイトとして作用することはほとんど無く実質上問題とならない。そのため、本発明では、0.03〜0.1μmの粒子に注目し、その個数%を定義するものである。
【0083】
また、酸化鉄中の0.3μm以上の粒子が10個数%を超えると、着色力が低下し、画像濃度が低下する傾向になることに加え、同じ使用量であっても個数的に少ないためにトナー粒子表面の近傍まで存在させること及び各トナー粒子に均一個数を含有させることが確率的に難しくなり、好ましくない。より好ましくは5個数%以下とするのが良い。
【0084】
本発明においては、前述の粒度分布の条件を満たすよう、酸化鉄製造条件を設定したり、予め粉砕及び分級の如き粒度分布の調整を行ったものを使用することが好ましい。分級方法としては、例えば、遠心分離やシックナーといった沈降分離を利用したものや、例えばサイクロンを利用した湿式分級装置などの手段が好適である。
【0085】
酸化鉄の体積平均粒径及び粒度分布の決定は、以下の測定方法によって行う。粒子を十分に分散させた状態で、透過型電子顕微鏡(TEM)において3万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の酸化鉄粒子のそれぞれ投影面積を測定し、測定された各粒子の投影面積に等しい円の相当径を各粒子径として求めた。さらに、その結果を基に、体積平均粒径の算出ならび0.03〜0.1μmの粒子と、0.3μm以上の粒子の個数%を計算した。尚、粒度の測定は、0.03μm以上の粒径を有する粒子を対象とした。また、画像解析装置により粒子径を測定することも可能である。
【0086】
トナー粒子中の酸化鉄の体積平均粒径及び粒度分布を決定する場合には、以下の測定方法により行う。
【0087】
エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、ミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万〜4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の酸化鉄の粒子径のそれぞれ投影面積を測定し、測定された各粒子の投影面積に等しい円の相当径を酸化鉄の粒子径として求めた。さらに、その結果を基に、0.03〜0.1μmの粒子と、0.3μm以上の粒子の個数%を計算した。また、画像解析装置により粒子径を測定することも可能である。
【0088】
本発明のもうひとつの特徴は、適度に磁性体を表面付近に存在させることである。すなわちトナー表面付近の磁性体存在状態の定義としてX線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが30個数%以上であることもまた、本発明のトナーに必要な態様の一つである。
【0089】
まず本発明においてはX線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満、好ましくは0.0005未満である様に磁性体が表面に全く露出していないことが好ましい。
【0090】
磁性体の露出が無いことにより、前述の如き感光体の削れやかぶり/転写等の耐久時の悪化等様々な弊害を抑えることが可能となる。しかし帯電性そのものに関しては表面付近に磁性体が全く存在しないと前述したようなチャージアップや選択現像等の弊害が発生する傾向であるため適度に表面付近に磁性体が存在することが必要となる。
【0091】
すなわち本発明においては、D/C≦0.02の関係を満たすトナー数が30%以上であることが必要であり、65%以上が好ましく、75%以上がさらに好ましい。
【0092】
D/C≦0.02の関係を満たすトナー数が30%未満の場合には、ほぼ凡てのトナーにおいて少なくともD/C=0.02境界線よりも外側には磁性粒子が全く存在しないことになる。仮にこのような粒子を球形として想定すると、1つのトナーを全空間とした場合に酸化鉄の存在しない空間は、トナーの表面に少なくとも11.5%は存在することになる。実際には、最近接位置に酸化鉄が均一に整列してトナー内部に内壁を作るように存在するわけではないので12%以上になることは明らかである。この様な粒子から構成されるトナーにおいては、前述の如き様々な弊害が生じやすい。
【0093】
本発明において、TEMによる具体的なD/Cの測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が好ましい。
【0094】
該当する粒子数の割合の具体的な決定方法については、以下のとおりである。TEMにてD/Cを決定するための粒子は、顕微鏡写真での断面積から円相当径を求め、その値がコールターカウンターを用いる後述の方法により求めた数平均粒径の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とし、その該当粒子100個について、磁性粒子表面との距離の最小値(D)を計測し、D/Cを求め、D/C値が0.02以下の粒子の割合を計算する。このときの顕微鏡写真は精度の高い測定を行うために、1万〜2万倍の倍率が好適である。本発明では、透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を装置として用い、加速電圧100kVで観察し、拡大倍率が1万倍の顕微鏡写真を用いて観察、測定した。
【0095】
以上詳述したようにB/A<0.001を満足し、D/C≦0.02の関係を満足するトナー数が30%以上であるようなトナーとは、磁性体がトナー表面に局在していたり、また逆に極端に内包化されてトナー内部に偏在していたりしているようなトナーではなく、磁性体がトナー中に、実質的に均一に分散されつつ、トナー表面への磁性体の露出が抑制されているトナーとなる。
【0096】
なお、会合重合方法において本発明の磁性体分散状態を達成するには、磁性体の溶出や過度の表面性の変化が得られない範囲であればトナー母体粒子表面を重合体微粒子を付着させた後、該重合体微粒子を皮膜化してカプセル化トナーを作製する公知の製造方法やシード/膨潤重合方法全て使用でき、例えば前述した特開昭57−45558号公報、特開平1−257853号公報、特開平1−257856号公報、特開平2−186363号公報、特開平4−188155号公報、特開平5−281782号公報、特開平7−209904号公報等開示された技術全てが使用可能である。
【0097】
但し本発明で前述した特定の残留磁化であるトナーでない場合、凹凸を維持したまま熱被覆やシード重合を行う為に、不均一な被覆状態となり易いため帯電性・転写性が低下し、更にトナーの割れ・傷等も生じやすくなる為、磁性体の露出やワックスの染み出し等が生じ、結果として本発明のトナー表面の状態を維持できず、現像・転写性が特に悪化する。また、表面を覆うために多量の熱被覆やシード重合を行うと定着性が悪化するだけでなく、ワックスの染み出し等の影響でトナー融着も生じやすくなる。
【0098】
次に、本発明のさらなる特徴であるトナーの円形度について説明する。静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着や転写残余トナー量を低減するには、トナー粒子の帯電性が十分で且つ均一であることが必要である。さらに、高画質化の観点から微小粒径のトナーを用いる場合は、トナー粒子の付着力が増大するため、トナー粒子の形状も静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着に大きな影響を及ぼす。すなわち、トナー粒子が球形に近く、形状が揃っているほど粒子の付着面積が減少し、静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着や転写残余トナー量が低減され、高画質及び耐久安定性が達成される。
【0099】
加えて、本発明に係るトナー粒子は帯電性が十分であり、且つ上述した如く、トナー粒子の付着力が低減されていることにより、静電荷像担持体から紙等の転写材へのトナーの転写効率も大きく改善される。これは、微小ドット画像の再現性と共に高解像性を達成するための重要なトナー性能と言える。
【0100】
加えて本発明の会合重合法トナーは粒子にエッジ部が存在しない為、トナー粒子間の磁気凝集に関しても球形に成る程改善される方向となり、結果として画像尾引きが軽減される。
【0101】
従って、本発明のトナーにおいては、トナーの平均円形度が0.950以上である必要があり、これによって高画質や高安定性が達成される。
【0102】
従って、このような現像剤を用いれば転写残トナーが非常に低減されるため、帯電部材と感光体との圧接部におけるトナーの存在量が非常に少なく、接触帯電工程を有する画像形成方法においても、感光体の削れ及びトナー融着が防止され、画像欠陥が著しく抑制されるものと考えられる。
【0103】
これらの効果は、転写中抜けの発生しやすい接触転写工程を含む画像形成方法においても、顕著となって現れる。
【0104】
本発明のトナーにおいては、重量平均粒径が2〜10μmであることが好ましい。
【0105】
トナーの重量平均粒径が10μmを超えるような場合、微小ドット画像の再現性が低下するため、本発明により得られる過酷環境下でのトナーの帯電安定性が十分発揮し得ない。一方、トナーの重量平均粒径が2μmより小さい場合には、本発明の特殊な酸化鉄を用いてもトナーの流動性は著しく低くなり、帯電不良によるカブリ、濃度うす等の問題が発生しやすくなる。
【0106】
つまり、本発明のトナーにおいて帯電安定性や流動性の改善等、従来例と比較して顕著な効果が画像上に現れるのは、重量平均粒径が2〜10μm(より好ましくは、3〜10μm)であり、さらに、より一層の高画質化という点では3.5〜8.0μmが好ましい。
【0107】
次に本発明におけるトナーの製造方法を説明する。
【0108】
本発明のトナーは、乳化重合などにより製造される樹脂粒子を用いる。樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させた樹脂粒子分散液を用い、これと反対極性イオン性界面活性剤で分散された着色剤を混合し、ヘテロ凝集を生じさせ、トナー径に相当する凝集粒子を形成した後、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱することにより凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥してトナーを得る。この方法によればトナー形状は不定形から球形まで所望の形状のものを製造することができる。
【0109】
また、トナー成分を一括して混合し、凝集し、融合・合一して製造することもできるが、凝集工程の初期の段階において予め極性のイオン性分散剤の量のバランスをずらしておき、例えば硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくはポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体を用いてイオン的なポテンシャルのずれを緩和し、ガラス転移温度以下で第1段階の母体凝集粒子を形成し安定化させた後に、第2段階として前記のバランスのずれを補填するような極性、量の分散剤で処理された追加粒子分散液を添加し、さらに必要に応じて母体凝集粒子や追加粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度以下で僅かに加熱して母体凝集粒子表面に追加粒子を付着して、より高い温度で安定化させた後、前記ガラス転移温度以上に加熱して融合・合一させてもよい。また、この凝集の段階的操作を複数回、繰り返し実施してもよい。
【0110】
本発明の樹脂粒子に使用される重合体は公知の単量体の組み合わせが使用可能であり具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類;ジビニルベンゼン、ジアクリル酸エチレン、ジメタアクリル酸エチレン、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジアクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジアクリル酸ペンタエチレングリコール、ジメタアクリル酸ペンタエチレングリコール、ジアクリル酸ペンタコンタヘクタ、ジマタアクリル酸ペンタコンタヘクタ、ジアクリル酸デカンジオール、ジメタアクリル酸デカンジオールなどの架橋剤などを単独で、又は2種以上組み合せて用いてもよい。
【0111】
本発明の結着樹脂成分として、ビニル系単量体を用いる場合は、イオン性界面活性剤などを用い、乳化重合を実施して樹脂粒子分散液を作成することができ、その他の樹脂を用いる場合は、油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に解かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機で水中に微粒子に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂分散液を作成することができる。得られた樹脂微粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定される。本発明に用いられる樹脂微粒子の中心粒子径は、50〜400nm、好ましくは70〜350nmの範囲が適当である。50nm未満では、凝集性がやや劣り、生産性が低下しやすく、400nmを超えると、凝集性は良いが、凝集体が粗くなるため形状制御性が低下する。
【0112】
本発明におけるトナーのガラス転移温度(Tg)は50〜65℃、好ましくは52〜60℃の範囲のものが用いられる。50℃未満では、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が低下するため、定着の際にホットオフセットが生じ易くなり、65℃を超えると十分な溶融が得られず、定着シートの折り曲げ耐性が悪化することがある。
【0113】
また、本発明のトナーは、結着樹脂に対して0.5〜50質量%の離型剤を含有することも好ましい使用形態の一つである。通常、トナー像は、転写工程で転写材上に転写され、そして、このトナー像はその後、熱・圧力等のエネルギーにより転写材上に定着され、半永久的な画像が得られる。この際の定着方法としては、熱ロール式定着が一般に良く用いられるが、上記のように、重量平均粒径が10μm以下のトナーを用いれば非常に高精細な画像を得ることができるが、粒径の細かいトナー粒子は紙等の転写材を使用した場合に紙の繊維の隙間に入り込み、熱定着用ローラーからの熱の受け取りが不十分となり、低温オフセットが発生しやすい。しかしながら、本発明のトナーにおいて、離型剤として適正量のワックスを含有させることにより、高解像性と耐オフセット性を両立させつつ感光体の削れを防止することが可能となる。
【0114】
本発明のトナーに使用可能なワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体などが含まれる。ここでの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
【0115】
これらの離型剤(ワックス類)は、水中にイオン性界面活性剤、高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機などを用いて、融点以上に加熱しながら強い剪断をかけて微粒子化し、1μm以下の微粒子の分散液を作成することができる。また、得られた離形剤粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定される。本発明に用いられる離型剤粒子の中心粒子径は、50〜400nm、好ましくは70〜350nmの範囲が適当である。50nm未満では、定着の際の離型剤の染みだし性が低下しやすく、剥離不良を生じる場合がある。また、400nmを超えると、凝集の際に1500nm以上の離型剤粒子を形成しやすく、OHP透明性を損なう場合がある。
【0116】
なお、これらのワックス成分の内では、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時に40〜110℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、45〜90℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが更に好ましい。上記の温度領域に最大吸熱ピークを有することにより、低温定着に大きく貢献しつつ、離型性をも効果的に発現することができる。この最大吸熱ピークが40℃未満であるとワックス成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が悪化する。一方、この最大吸熱ピークが110℃を越えると定着温度が高くなり低温オフセットが発生しやすくなり好ましくない。さらに、水系媒体中で造粒/重合を行い重合方法により直接トナーを得る場合、この最大吸熱ピーク温度が高いと、主に会合凝集の過程でワックス成分が遊離しやすく、転写効率の低下や耐久画像濃度低下等の問題が生じるため好ましくない。
【0117】
ワックス成分の最大吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0118】
本発明のトナーにおいて、上記のワックス成分の含有量は、結着樹脂に対して0.5〜50質量%の範囲であるのが好ましい。ワックス成分の含有量が0.5質量%未満では低温オフセット抑制効果に乏しく、50質量%を超えてしまうと長期間の保存性が低下すると共に、他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の劣化や画像特性の低下につながる。
【0119】
本発明では、帯電性を安定にするために湿式で無機微粒子を添加することができる。添加する無機微粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面に外添して使うものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基に分散させて使用することができる。
【0120】
また、トナーへの流動性付与やクリーニング性向上の目的で、通常のトナーと同様にトナーを乾燥させた後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂微粒子、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態でせん断をかけてトナー表面に添加して用いることもできる。
【0121】
本発明のトナーには、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
【0122】
具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料もしくはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、その四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。これらの荷電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5〜10質量部使用することが好ましい。しかしながら、本発明の画像形成方法に関わる現像剤は、荷電制御剤の添加は必須ではなく、現像剤の層圧規制部材や現像剤担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0123】
本発明ではさらにまた、着色剤として酸化鉄以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
【0124】
本発明のトナーの製造方法において、乳化重合、着色剤分散、樹脂微粒子分散、離型剤分散、凝集、又はその安定化などに用いる界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤などを併用することも効果的である。分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどを使用することができる。
【0125】
また、樹脂と磁性体からなる複合体を用いる場合、樹脂と磁性体を溶剤中に溶解分散した後、前記の適当な分散剤と共に水中に分散し、加熱、減圧により溶剤を除去して得る方法や、乳化重合により作成された樹脂微粒子表面に機械的せん断力で付与する方法や、電気的に吸着、固定化する方法により作成、準備することができる。これらの方法は、追加粒子としての磁性体の遊離を抑制するのに有効である。
【0126】
重合終了後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナーを得るが、洗浄工程は、帯電性の点からイオン交換水で十分に置換洗浄を施すことが好ましい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましい。乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0127】
また、本発明のトナーには、流動性向上剤として、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されることが好ましい。例えば、酸化チタン微粉末、シリカ微粉末、アルミナ微粉末を添加して用いることが好ましく、特にシリカ微粉末を用いることが好ましい。
【0128】
現像剤に用いられる無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上のもの、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好な結果を与えることができるため好ましい。
【0129】
本発明に用いられるシリカ微粉体はケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカが好ましく用いられる。
【0130】
さらに本発明に用いるシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理した後、あるいはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0131】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0132】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/s(cSt)のものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
【0133】
シリコーンオイル処理の方法は、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0134】
本発明中のトナーには、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤を添加してもよい。
【0135】
例えば、クリーニング性を向上させる等の目的で、一次粒径が30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)微粒子、より好ましくは一次粒径が50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)で球状に近い無機微粒子または有機微粒子をさらに添加することも好ましい形態の一つである。例えば球状のシリカ粒子、球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
【0136】
更に他の添加剤、例えばテフロン(R)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;または酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;ケーキング防止剤;または例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤;また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0137】
上述の如き、外添剤は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのが良い。
【0138】
本発明の会合重合法トナーに機械的衝撃力を加えて樹脂を被覆する方法としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法がある。
【0139】
また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法を用いてもよい。
【0140】
機械的衝撃を加える処理をする場合には、処理時の雰囲気温度をトナーのガラス転移点Tg付近の温度(すなわち、ガラス転移点Tgの±30℃の範囲の温度)とすることが、凝集防止と生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、トナーのガラス転移点Tgの±20℃の範囲の温度で処理を行うことが、転写効率を向上させるのに特に有効である。
【0141】
さらにまた、本発明のトナーは、特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用いて溶融混合物を空気中に霧化し球状トナーを得る方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用いて直接トナーを生成する分散重合方法、又は水溶性の極性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法等を用いてトナーを製造する方法でも製造が可能である。
【0142】
次に本発明のトナーを使用した現像方法について説明する。
【0143】
本発明ではトナー担持体と静電荷像担持体とが非接触である。
【0144】
非接触の現像方法においては、トナー担持体上にトナー担持体−感光体(静電荷像担持体)の最近接距離(S−D間)よりも小さい層厚で、磁性トナーを塗布し、交番電界を印加して現像を行う。すなわち、トナー担持体上の磁性トナーを規制する層厚規制部材によってトナー担持体上のトナー層厚よりも感光体とトナー担持体の最近接間隙が広くなるように設定して用いる。この際に、トナー担持体上の磁性トナーを規制する層厚規制部材が、弾性部材であり、トナーを介してトナー担持体に当接されていることが磁性トナーを均一帯電させる観点から特に好ましい。
【0145】
また、トナー担持体は感光体に対して100〜500μmの離間距離を有して対向して設置されることが好ましく、120〜500μmの離間距離を有して対向して設置されることが更に好ましい。トナー担持体の感光体に対する離間距離が100μmよりも小さいと、離間距離の振れに対するトナーの現像特性の変化が大きくなるため、安定した画像性を満足する画像形成装置を量産することが困難となる。トナー担持体の感光体に対する離間距離が500μmよりも大きいと、現像装置への転写残トナーの回収性が低下し、回収不良によるカブリを生じ易くなる。また、感光体上の潜像に対するトナーの追従性が低下するために、解像性の低下、画像濃度の低下等の画質低下を招いてしまう。
【0146】
本発明においては、トナー担持体上に5〜30g/m2のトナー層を形成するよう積層させることが好ましい。トナー担持体上のトナー量が5g/m2よりも小さいと、十分な画像濃度が得られにくく、トナーの帯電が過剰になることによるトナー層のムラを生じる。トナー担持体上のトナー量が30g/m2よりも多くなると、トナー飛散を生じ易くなる。
【0147】
また、本発明に使用されるトナー坦持体の表面粗度Ra(JIS中心線平均粗さ)は、0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm未満ではトナー担持体上の帯電量が高くなり、現像性が不充分となる。また、Raが3.5μmを超えると、トナー担持体上のトナーの積層にむらが生じ、画像上で濃度のむらとなる。表面粗度Raは、0.5〜3.0μmの範囲にあることが更に好ましい。
【0148】
本発明において、トナー担持体の表面粗度Raは、JIS表面粗さ「JIS B 0601」に基づき、表面粗さ測定器(サーフコーダSE−30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さに相当する。具体的には、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さaとして2.5mmの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものである。
【外1】
【0149】
さらに、本発明に係わる磁性トナーは高い帯電能力を有するために、現像に際してはトナーの総帯電量をコントロールすることが好ましい。また、本発明に係わるトナー担持体の表面は導電性微粒子及び/又は滑剤を分散した樹脂層で被覆されていることが好ましい。
【0150】
トナー担持体表面を被覆する樹脂層に含有される導電性微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化亜鉛の如き導電性金属酸化物及び金属複酸化物を単独でもしくは2種類以上組み合わせて用いるのが好ましい。この導電性微粒子及び/又は滑剤が分散される樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂の如き公知の樹脂が用いられる。特に熱硬化性樹脂または光硬化性の樹脂が好ましい。
【0151】
また、非接触の現像方法においては、現像工程でトナーを担持して現像部に搬送するトナー担持体の移動速度を、感光体の移動速度に対して速度差をもたせることが好ましい。このような速度差を設けることにより、トナー担持体側から感光体側へトナー粒子を十分に供給することができ、良好な画像を得ることができるためである。
【0152】
トナーを担持するトナー担持体表面は、感光体表面の移動方向と同方向に移動していてもよいし、逆方向に移動していてもよい。その際の速度としては、トナー担持体表面と感光体表面の移動速度が等速であるより、一方が他方に対して1.02〜3.0倍の速度で移動していることが好ましい。
【0153】
現像部においては、該磁性トナーを静電潜像に転移させて現像するために交流バイアスが印加されているが、この際の交流バイアスは、少なくともピークトゥーピークの電界強度が3×106〜1×107V/mであり、周波数100〜5000Hzであることが好ましい。また、更に直流バイアスを重畳することも好ましい形態である。
【0154】
次に帯電工程について説明する。
【0155】
本発明においては、コロナ放電を用いた帯電装置を使用する帯電工程の如き非接触の帯電工程でも構わないが、帯電部材を感光体に当接させる接触帯電法が好ましい帯電法である。この場合、接触帯電部材としては、帯電ローラを用いることが好ましい。
【0156】
帯電ローラーを用いたときの好ましいプロセス条件としては、ローラーの当接圧が4.9〜490N/m(5〜500g/cm)で、直流電圧または直流電圧に交流電圧を重畳したものが用いられる。直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いる場合は、交流電圧=0.5〜5kVpp、交流周波数=50〜5kHz、直流電圧=±0.2〜±5kVが好ましい。
【0157】
この他の帯電手段としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法がある。これらの接触帯電手段を使用する場合にも、高電圧が不要になったり、オゾンの発生が低減するといった効果がある。
【0158】
接触帯電手段としての帯電ローラ及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けてもよい。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PVdC(ポリ塩化ビニリデン)、フッ素アクリル樹脂が適用可能である。
【0159】
次に転写工程について説明する。
【0160】
本発明においては、コロナ放電を用いた転写装置を使用する転写工程の如き非接触の転写工程でも構わないが、好ましくは転写手段を転写材を介して感光体に当接させて転写を行う接触転写方法である。
【0161】
転写手段の当接圧力としては線圧2.9N/m(3g/cm)以上であることが好ましく、より好ましくは19.6N/m(20g/cm)以上である。当接圧力としての線圧が2.9N/m(3g/cm)未満であると、転写材の搬送ずれや転写不良の発生が起こりやすくなるため好ましくない。
【0162】
また、接触転写工程における転写手段としては、転写ローラあるいは転写ベルトを有する装置が使用される。図5に転写ローラの構成の一例を示す。転写ローラ34は少なくとも芯金34aと導電性弾性層34bからなり、導電性弾性層はカーボン等の導電材を分散させたウレタンやEPDM等の、体積抵抗106〜1010Ωcm程度の弾性体で作られており、転写バイアス電源35により転写バイアスが印加されている。
【0163】
次に、本発明において用いられる感光体について以下に説明する。
【0164】
感光体としては、a−Se、CdS、ZnO2、OPC(有機感光体)、a−Siの如き光導電絶縁物質層を持つ感光ドラムもしくは感光ベルトが好適に使用される。
【0165】
特に、本発明においては感光体表面が高分子結着剤を主体として構成されている感光体を用いることが好ましい。例えば、セレン、アモルファスシリコンなどの無機感光体の上に、樹脂を主体とした保護膜(保護層)を設ける場合、または機能分離型の有機感光体の電荷輸送層として電荷輸送材と樹脂からなる表面層を設ける場合、またその表面層の上に樹脂を主体とした保護層を設ける場合等がある。これらの表面層(または保護層)は離型性を有していることが好ましく、実際に離型性を付与する手段としては、
▲1▼膜を構成する樹脂自体に表面エネルギーの低いものを用いる、
▲2▼撥水、親油性を付与するような添加剤を加える、
▲3▼高い離型性を有する材料を粉体状にして分散させる、
手段などが挙げられる。▲1▼の例としては、樹脂の構成単位の構造中にフッ素含有基、シリコーン含有基の如き官能基を導入することが挙げられる。▲2▼の撥水、親油性を付与するような添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。▲3▼の高い離型性を有する材料としては、フッ素原子を含む化合物、すなわちポリ4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化カーボンが挙げられる。
【0166】
これらの手段によって、感光体表面の水に対する接触角を85度以上とすることができ、トナーの転写性及び感光体の耐久性を一層向上させることができる。感光体表面の水に対する接触角は、90度以上であることが好ましい。本発明においては、上記▲1▼〜▲3▼の手段の中では、▲3▼のように含フッ素樹脂の離型性粉体の最表面層へ分散させることが好適であり、離型性粉体としてはポリ4フッ化エチレンを使用するのが特に好ましい。
【0167】
これらの粉体を表面に含有させるためには、バインダー樹脂中に離型性粉体を分散させた層を感光体最表面に設けるか、または、感光体自体が樹脂を主体として構成されている有機感光体であれば、新たに表面層を設けなくても、最上層に離型性粉体を分散させればよい。離型性粉体の添加量は、表面層総量に対して、1〜60質量%が好ましく、2〜50質量%が更に好ましい。離型性粉体の添加量が1質量%より少ないとトナーの転写性及び感光体の耐久性改善の効果が不十分であり、60質量%を越えると保護膜の強度が低下したり、感光体への入射光量が著しく低下したりするため好ましくない。
【0168】
本発明においては、帯電手段が帯電部材を感光体に当接させる接触帯電法が好ましい帯電方法であるが、帯電手段が感光体に接することのないコロナ放電等による方法にくらべて感光体表面に対する負荷が大きいので、感光体の表面に保護層(保護膜)を設けることが耐久性に関する改善効果が顕著であり、好ましい適用形態の一つである。
【0169】
また、本発明においては、接触帯電方法、接触転写方法を適用することが好ましいため、直径が50mm以下の径が小さい感光体を有する画像形成装置に対し特に有効に用いられる。即ち、画像形成において使用する感光体の径が小さい場合には、同一の線圧に対する曲率が大きく、当接部における圧力の集中が起こりやすいためである。ベルト感光体でも同一の現象があると考えられるが、本発明は転写部での曲率半径が25mm以下の画像形成装置に対しても有効である。
【0170】
本発明に用いられる感光体の好ましい様態の一つを以下に説明する。
【0171】
導電性基体としては、アルミニウム・ステンレスの如き金属、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化錫合金による被膜層を有するプラスチック、導電性粒子を含侵させた紙、プラスチック、導電性ポリマーを有するプラスチックの円筒状シリンダー及びフィルムが用いられる。
【0172】
これら導電性基体上には、感光層の接着性の向上、塗工性の改良、基体の保護、基体上の欠陥の被覆、基体からの電荷注入性の改良、感光層の電気的破壊に対する保護等を目的として下引き層を設けても良い。下引き層は、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、カゼイン、ポリアミド、共重合ナイロン、ニカワ、ゼラチン、ポリウレタン、酸化アルミニウムの如き材料によって形成される。下引き層の膜厚は通常、0.1〜10μmであり、好ましくは0.1〜3μm程度である。
【0173】
電荷発生層は、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素、セレン、非晶質シリコンの如き無機物質の様な電荷発生物質を適当な結着剤に分散し塗工するか、または蒸着により形成される。結着剤としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂が挙げられ、このような広範囲な樹脂から任意に結着剤を選択できる。電荷発生層中に含有される結着剤の量は、電荷発生層全体に対して80質量%以下が好ましく、0〜60質量%が更に好ましい。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05〜2μmが好ましい。
【0174】
電荷輸送層は、電界の存在下で電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は電荷輸送物質を必要に応じて結着樹脂と共に溶剤中に溶解させ、塗工することによって形成される。電荷発生層の膜厚は一般的には5〜40μmである。電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にビフェニレン、アントラセン、ピレン、フェナントレンの如き構造を有する多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、オキサジアゾール、ピラゾリンの如き含窒素環式化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、セレン、セレン−テルル、非晶質シリコン、硫化カドニウムが挙げられる。
【0175】
また、これら電荷輸送物質を分散させる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂の如き樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンの如き有機光導電性ポリマーが挙げられる。
【0176】
更に、表面層として、更に別途保護層を設けてもよい。保護層の樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、またはこれらの樹脂の硬化剤を単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0177】
また、保護層の樹脂中に導電性微粒子を分散してもよい。導電性微粒子の例としては、金属、金属酸化物が挙げられ、好ましくは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化スズ被膜酸化チタン、スズ被膜酸化インジウム、アンチモン被膜酸化スズ、酸化ジルコニウムの超微粒子が挙げられる。これらの導電性微粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。一般的に保護層に粒子を分散させる場合、分散粒子による入射光の散乱を防ぐために入射光の波長よりも粒子の粒径の方が小さいことが必要であり、本発明における保護層に分散される導電性微粒子の粒径は0.3μm以下であることが好ましい。また、保護層中での導電性微粒子の含有量は、保護層総重量に対して2〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましい。保護層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、1〜7μmがより好ましい。
【0178】
表面層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングまたは浸透(ディッピング)コーティングすることによって行うことができる。
【0179】
次に、本発明の画像形成方法を図に沿って具体的に説明する。
【0180】
図1の画像形成装置において、100は感光ドラムで、その周囲に一次帯電ローラー117、現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナ116、レジスタローラー124等が設けられている。そして感光体100は一次帯電ローラー117によって、例えば−700Vに帯電される。(印加電圧は交流電圧−2.0k Vpp、直流電圧−700Vdc)そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光される。感光体100上の静電潜像は現像器140によって一成分磁性現像剤で現像され、転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーニング手段116によりクリーニングされる。現像器140は図2に示すように感光体100に近接してアルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下現像スリーブと称す)が配設され、感光体100と現像スリーブ102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により約300μmに維持されている。現像スリーブ内にはマグネットローラー104が現像スリーブ102と同心的に固定、配設されている。但し現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラー104には図示のように複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。トナーは、トナー塗布ローラ141によって、現像スリーブ102に塗布され、付着して搬送される。搬送されるトナー量を規制する部材として、弾性ブレード103が配設され弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流及び交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ上現像剤は静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
【0181】
本発明における各種物性データの測定法を以下に詳述する。
【0182】
(1)トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)
本発明におけるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出した。
【0183】
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社(Physical Electronics Industries,Inc.)製 1600S型 X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα(400W)
分光領域800μmφ
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
【0184】
測定試料としては、トナーを用いるが、トナーに外添剤が添加されている場合には、イソプロパノールの如きトナーを溶解しない溶媒を用いて、トナーを洗浄し、外添剤を取り除いた後に測定を行う。
【0185】
(2)トナーの平均円形度
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下記式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【外2】
【0186】
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満・・・0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。
【0187】
この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いている。
【0188】
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0189】
円形度の具体的な測定方法としては、ノニオン型界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させ分散液を調整し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、3μm以上の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
【0190】
測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年6月版)、測定装置の操作マニュアル及び特開平8−136439号公報に記載されているが、以下の通りである。
【0191】
試料分散液は、フラットで扁平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子はフローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
【0192】
(3)トナーの粒度分布
測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピュータ(キヤノン製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用できる。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により、アパチャーとして100μmアパチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して2〜40μmの粒子の体積分布と個数分布とを算出する。それから数平均粒径(D1)体積分布から求めた重量基準の重量平均径D4(各チャンネルの中央値をチャンネルごとの代表値とする)、体積分布から求めた重量基準の12.7μm以上の重量分布を求める。
【0193】
(4)磁性体の疎水化度
なお、本発明における疎水化度とは以下の方法により測定されたものである。磁性体の疎水化度の測定は、メタノール滴定試験により行う。メタノール滴定試験は、疎水化された表面を有する磁性体の疎水化度を確認する実験的試験である。
【0194】
メタノールを用いた疎水化度測定は次のように行う。磁性体0.1gを容量250mlのビーカーの水50mlに添加する。その後メタノールを液中に徐々に添加し滴定を行う。この際メタノールは液底部より供給し、緩やかに攪拌しながら行う。磁性体の沈降終了は、液面に磁性体の浮遊物が確認されなくなった時点とし、疎水化度は、沈降終了時点に達した際のメタノール及び水混合液中のメタノールの体積百分率としてあらわされる。
【0195】
(実施例)
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明を何ら限定するものではない。本発明のトナーは、下記の樹脂微粒子分散液、磁性体分散液、離型剤分散液をそれぞれ調製し、これを所定の割合で混合し攪拌したながら、これに無機金属塩の重合体を添加し、イオン的に中和させて凝集粒子を形成する。無機水酸化物で系内のpHを弱酸性から中性に調整した後、前記樹脂微粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一温度まで昇温せしめる。融合・合一温度到達後、系内のpHを弱酸性から酸性に調整して加熱を継続する。反応終了後、十分な洗浄、固液分離、乾燥の工程を経て所望のトナーを得る。以下、それぞれの調製方法を説明する。なお実施例に記載されている部数または%は、質量部または質量%を示す。
【0196】
次に、下記実施例1〜5,7〜9および比較例1〜3において用いた画像形成装置について説明する。
【0197】
非接触の現像方法によって現像を行う市販のレーザービームプリンターLBP−SX(キヤノン製)を以下に示す如く改造して用いた。すなわち、プロセスカートリッジ部分のトナー層厚規制部材をウレタンゴム製の弾性ブレードに変え、たLBPプリンターを用いた。
【0198】
画出し条件を下記に示す。
【0199】
図6は、使用される交番電圧を説明したものである。Vdcは直流電源電圧を示し、Vdは静電潜像担持体上の暗部電位、VLは明部電位をそれぞれ表す。fは交番電圧の周波数、Vppは交番電圧のピーク間の電圧を示す。
【0200】
Vdを−600Vとして静電潜像を形成し、感光ドラム3と現像スリーブ15上の現像剤層を非接触に間隙(300μm)を設定し、現像スリーブ15にはバイアス印加手段12により、交流バイアス(f=3200Hz Vpp=1800V)及び直流バイアス(Vdc=−400V)とを印加し、VLを−150Vに設定し画出しを行った。
【0201】
また、感光ドラムに対する現像スリーブの周速比を200%に設定した。
【0202】
(樹脂微粒子分散液1の調製)
スチレン 330重量部
n ブチルアクリレート 80重量部
アクリル酸 6重量部
ジビニルベンゼン 2.3重量部
ドデカンチオール 6重量部
四臭化炭素 4重量部
前記成分(全体の重量412.6g)を混合溶解して溶液を調製し、他方非イオン性界面活性剤(花王社製、ノニポール400)6g、及びアニオン性界面活性剤(第一工業薬品社製、ネオゲンSC)10gをイオン交換水550gに溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化して10分間ゆっくり攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム5gを溶解したイオン交換水50gを投入した。次いで、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを攪拌しながらオイルバスで70℃まで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して、中心径173nm、ガラス転移温度59℃、Mw 52,500の樹脂微粒子を含有するアニオン性樹脂微粒子分散液1を得た。
【0203】
10を得た。
【0204】
(磁性体分散液1の調製)
磁性体
(残留磁化4.2Am2/kg、粒径 0.2μ[0.03〜0.1μm:15
個数%、0.3μm以上:2%])
シランカップリング剤[n−C4H9Si(OCH3)3]0.2部処理、疎水
化度 25%) 150重量部
非イオン性界面活性剤(花王社製、ノニポール400) 10重量部
イオン交換水 400重量部
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径0.23μの磁性体分散液1を得た。
【0205】
(磁性体分散液2の調製)
磁性体として、粒度分布の異なる磁性体
(残留磁化4.1Am2/kg、粒径0.2μ[0.03〜0.1μm:15個数%、0.3μm以上:9%]
シランカップリング剤[n−C4H9Si(OCH3)3]0.2部処理、疎水化度23%)
を同量用いた以外は磁性体分散液1の調製と同様にして、中心径は0.23μの着色剤粒子を含有する磁性体分散液2を得た。
【0206】
(磁性体分散液3の調製)
磁性体として、粒度分布の異なる磁性体
(残留磁化4.3Am2/kg、粒径0.2μ[0.03〜0.1μm:33個数%、0.3μm以上:9%]
シランカップリング剤[n−C4H9Si(OCH3)3]0.2部処理、疎水化度23%)
を同量用いた以外は磁性体分散液1の調製と同様にして、中心径は0.23μの着色剤粒子を含有する磁性体分散液3を得た。
【0207】
(磁性体分散液4の調製)
磁性体として、疎水化処理を行わない磁性体
(残留磁化4.2Am2/kg、粒径0.2μ[0.03〜0.1μm:15個数%、0.3μm以上:2%])
を同量用いた以外は磁性体分散液1の調製と同様にして、中心径は0.25μの着色剤粒子を含有する磁性体分散液4を得た。
【0208】
(磁性体分散液5の調製)
磁性体として、残留磁化の異なる磁性体
(残留磁化15.3Am2/kg、粒径0.2μ[0.03〜0.1μm:10個数%、0.3μm以上:3%]
シランカップリング剤[n−C4H9Si(OCH3)3]0.2部処理、疎水化26%)
を同量用いた以外は磁性体分散液1の調製と同様にして、中心径は0.25μの着色剤粒子を含有する磁性体分散液5を得た。
【0209】
(離型剤分散液1の調製)
パラフィンワックス(融点ピーク温度 90℃) 50重量部
カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 5.5重量部
イオン交換水 200重量部
前記成分を加圧下98℃に加熱して、IKA 社製ウルトラタラックスT50で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理を施し、中心径0.16μの離型剤粒子を含有する離型剤分散液を得た。
【0210】
(離型剤分散液2の調製)
ワックスとして
ポリエチレンワックス(融点ピーク温度112℃)
を同量用いた以外は離型剤分散液1の調製と同様にして、中心径は0.38μの離型剤粒子を含有する離型剤分散液2を得た。
【0211】
(トナー1の製造)
樹脂微粒子分散液1 200重量部
磁性体分散液1 283重量部
離型剤分散液1 64重量部
ポリ塩化アルミニウム 1.23重量部
前記成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKE社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら凝集温度58℃まで加熱した。その後、58℃で60分間保持した後、さらに樹脂微粒子分散液1を30重量部追加して緩やかに攪拌した。
【0212】
その後、0.5Mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを7.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら80℃まで加熱した。その後、pHを4.0まで低下して6時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水による十分な洗浄を行った後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。さらに、40℃のイオン交換水3Lに再度分散し、15分300rpmで攪拌、洗浄した。
【0213】
この洗浄操作を5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続し、その後疎水性シリカ(ヘキサメチルジシラザン処理、BET200m2/g)1.2部を外添してトナー1を得た。このトナー粒径をコールターカウンターで測定したところ、重量平均径6.6μ平均円形度0.968であった。またX線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.0008であり、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察によるD/C≦0.02を満足する粒子数は80%以上であった。
【0214】
トナー1の物性について表1に示す。
【0215】
(トナー2の製造)
トナー1の製造において、離型剤分散液2を同量添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー2を得た。
【0216】
トナー2の物性について表1に示す。
【0217】
(トナー3の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液1を290部、離型剤分散液1を255部添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー3を得た。
【0218】
トナー3の物性について表1に示す。
【0219】
(トナー4の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液2を同量添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー4を得た。
【0220】
トナー4の物性について表1に示す。
【0221】
(トナー5の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液3を同量添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー5を得た。
【0222】
トナー5の物性について表1に示す。
【0224】
(トナー7の製造)
トナー1の製造において、凝集温度を53℃とし、凝集保持時間を4時間としたほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー7を得た。
【0225】
トナー7の物性について表1に示す。
【0226】
(トナー8の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液4を同量添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー8を得た。
【0227】
トナー8の物性について表1に示す。
【0228】
(トナー9の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液1を780部添加したほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー9を得た。
【0229】
トナー9の物性について表1に示す。
【0230】
トナー1の製造において、樹脂分散液1 30部を追添加しないほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー10を得た。
【0231】
トナー10の物性について表1に示す。
【0232】
(トナー11の製造)
トナー1の製造において、樹脂分散液1 60部を追添加するほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー11を得た。
【0233】
トナー11の物性について表1に示す。
【0234】
(トナー12の製造)
トナー1の製造において、磁性体分散液5を同量添加するほかはトナー1の製造例1と同様の操作を行い、トナー12を得た。
トナー12の物性について表1に示す。
【表1】
【0235】
(実施例1)
トナー1を用いて、最もチャージアップしやすい低温低湿環境下(15℃,10%RH)で5000枚の画出し試験を行った。その結果、連続5000枚プリント後においても飛び散りの無い良好な画像が得られた。また、スリーブ上のトナーをエアで除去した後、目視観察をしたが、スリーブ上は現像剤固着も全くなかった。後述の評価方法による画像濃度、カブリ量及びドット再現性の評価結果を表2に示す。
【0236】
同様にして、高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)において画出し試験をおこなった。結果を表2に示す。
【0237】
<実施例2−5,7−9比較例1−3>
表2に示す各トナー2−5,7−12を用いて実施例1と同様に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で5000枚の画出しを行った。
【0238】
後述の評価方法による画像濃度、カブリ量及びドット再現性の評価結果を表2に示す。
【0239】
同様にして、高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)において画出し試験をおこなった。結果を表2に示す。
【表2】
【0240】
なお、画像評価は以下のように行った。
【0241】
感光体の削れ及びトナー融着の評価は、画像不良が現れやすいハーフトーン画像上に、削れあるいはトナー融着による画像不良、即ち黒点あるいは白抜けが発生した耐久枚数で判断した。発生するまでの耐久枚数が多い程、画像形成方法の耐久性が良好なことを意味する。これらの画像不良が発生しない場合は印字枚数5000枚まで耐久試験を続けた。
【0242】
a)画像濃度の測定はマクベス濃度計RD918(マクベス社製)で測定した。
【0243】
b)カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODELTC−6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用い、下記の式より算出した。
【0244】
カブリ(反射率)(%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
カブリは、2.0%以下であれば良好な画像である。
【0245】
c)ドット再現性は、図7に示す80μm×50μmのチェッカー模様を用いて画出し試験をおこない、顕微鏡により黒色部の欠損の有無を観察し、評価した。
A:100個中欠損が2個以下
B:100個中欠損が3〜5個
C:100個中欠損が6〜10個
D:100個中欠損が11個以上
d)耐久初期(100枚時)の転写効率は、ベタ黒画像転写後の感光体上の転写残トナーをマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、紙上に貼ったもののマクベス濃度の値をC、転写後定着前のトナーの載った紙上にマイラーテープを貼ったもののマクベス濃度をE、未使用の紙上に貼ったマイラーテープのマクベス濃度をDとした時、近似的に以下の式で計算した。
【外5】
【0246】
転写効率は90%以上であれば問題のない画像である。
【図面の簡単な説明】
【図1】非接触現像方式を用いた画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の現像器部分の拡大図である。
【図3】接触転写部材の一例を示す図である。
【図4】画像形成装置の現像バイアスのパターンを示す図である。
【図5】トナーの現像特性を試験するためのチェッカー模様の説明図である。
Claims (27)
- 少なくとも樹脂粒子及び酸化鉄を凝集会合して得られる粒子を含有しているトナーであり、
i)X線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、
ii)トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、
D/C≦0.02の関係を満足するトナーが30個数%以上であり、
iii)該トナーの磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが0.6〜6.2Am2/kg(emu/g)であることを特徴とするトナー。 - 比(B/A)が0.0005未満であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- D/C≦0.02の関係を満たすトナーが65個数%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
- D/C≦0.02の関係を満たすトナーが75個数%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
- 該酸化鉄が、結着樹脂100質量部に対して10〜200質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
- 該酸化鉄が、結着樹脂100質量部に対して20〜180質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
- 該酸化鉄の疎水化度が5〜90%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
- 該トナーの重量平均粒径が、2〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
- 該トナーの重量平均粒径が、3.5〜8μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
- 該トナーの平均円形度が0.950以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
- 該酸化鉄が、体積平均粒径0.1〜0.3μmであり、0.03〜0.1μmの粒子が40個数%以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のトナー。
- 該酸化鉄は、0.03〜0.1μmの粒子を30個数%以下含有しており、0.3μm以上の粒子を10個数%以下含有していることを特徴とする請求項11に記載のトナー。
- 該酸化鉄は、0.03〜0.1μmの粒子を30個数%以下含有しており、0.3μm以上の粒子を5個数%以下含有していることを特徴とする請求項12に記載のトナー。
- 該トナーが、結着樹脂に対して0.5〜50質量%のワックスを含有していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のトナー。
- 該ワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時に40〜110℃の領域に最大吸熱ピークを有することを特徴とする請求項14に記載のトナー。
- 外部より電圧を印加された帯電部材によって、静電荷像担持体を帯電する帯電工程;露光により該静電荷像担持体上に静電潜像を形成する露光工程;該静電潜像をトナー担持体に担持されたトナーによって現像し、トナー画像を形成する現像工程;及びトナー画像を転写材に転写する転写工程とを有する画像形成方法であって、該トナーが、少なくとも樹脂粒子及び酸化鉄を凝集会合して得られる粒子を有しており
i)X線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、
ii)トナーの投影面積相当径をCとし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、
D/C≦0.02の関係を満足するトナーが30個数%以上であり、
iii)該トナーの磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における残留磁化の強さが0.6〜6.2Am2/kg(emu/g)であること
を特徴とする画像形成方法。 - 該現像工程が、静電荷像担持体とトナー担持体とを一定の間隔を設けて配置し、トナー担持体表面に前記間隔よりも薄い厚さでトナー層を形成させ、交流バイアスが印加されている現像部において該トナーを静電潜像に転移させて現像を行う工程であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
- 静電荷像担持体とトナー担持体との離間距離が100〜500μmであることを特徴とする請求項17に記載の画像形成方法。
- 現像工程において、現像領域における静電荷像担持体表面とトナー担持体表面との速度差が、1.02〜3.0倍であることを特徴とする請求項17又は18に記載の画像形成方法。
- 該トナー担持体の表面粗度Ra、が0.2〜3.5μmであることを特徴とする請求項17乃至19のいずれかに記載の画像形成方法。
- 交流バイアスが、ピークトゥーピークの電界強度で3×106〜1×107V/m、周波数100〜5000Hzであることを特徴とする請求項17乃至20のいずれかに記載の画像形成方法。
- 該帯電工程が、帯電部材を静電荷像担持体に接触させて帯電を行う工程であることを特徴とする請求項16乃至21のいずれかに記載の画像形成方法。
- 該転写工程が、転写材を介して静電荷像担持体に接触する転写部材により、トナー画像を転写材に転写する工程であることを特徴とする請求項16乃至22のいずれかに記載の画像形成方法。
- 該帯電工程が、帯電部材を静電荷像担持体に接触させて帯電を行う工程であり、現像工程が、静電荷像担持体とトナー担持体とを一定の間隔を設けて配置し、トナー担持体表面に前記間隔よりも薄い厚さでトナー層を形成させ、交流バイアスが印加されている現像部において該トナーを静電潜像に転移させて現像を行う工程であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
- 該トナー担持体に担持されたトナーの層厚が、トナー層厚規制部材により規制されており、該トナー層厚規制部材がトナーを介して、トナー担持体に当接されていることを特徴とする請求項24に記載の画像形成方法。
- 該トナー層厚規制部材が弾性部材であることを特徴とする請求項25に記載の画像形成方法。
- 転写材に転写されたトナー画像を該転写材に定着する定着工程を有していることを特徴とする請求項16乃至26のいずれかに記載の画像形成方法。
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