先ず、本発明の現像方法に用いられる現像剤担持体の構成について説明する。
現像剤担持体の基体としては、例えば円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材があるが、静電潜像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒が好ましく用いられる。更に該基体は、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮の如き非磁性の金属又は合金を円筒状に成型し、研磨、研削の如き表面処理を施したものをより好適に用いることができる。勿論、上記非磁性の金属、合金に加えて、鉄、ニッケル、ステンレス等の磁性を有するものを円筒状あるいは円柱状にしたものも使用可能である。
これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工されて用いられる。基体の長手方向の真直度は好ましくは30μm以下である。真直度はより好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。現像剤担持体と静電潜像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも、画像の均一性を良くするため好ましくは30μm以下である。間隙の振れはより好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。近年では、材料コストや加工のし易さからアルミニウムが好ましく用いられている。
また、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタンゴム、EPDM、シリコーンゴムの如きゴムやエラストマーを含む層構成を有する円筒部材が、特に静電潜像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合好ましく用いられる。
図2〜図4は本発明の現像剤担持体の模式断面図を示す。
図2は、樹脂被覆層1が金属製の円筒管からなる基体2上に形成されている様子を示す断面の模式図である。樹脂被覆層に導電性を付与するための導電剤b(詳細は後述する)が、硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物を含有する結着樹脂a中に分散されている形態を表わしたものである。該導電剤bは、樹脂被覆層1の表面への導電性付与以外に、トナーに対する離型性及びトナーへの摩擦帯電付与にも寄与している。図3においては、硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物を含有する結着樹脂a中に、導電剤bに加えて固体粒子cを更に添加することで、樹脂被覆層1表面の導電性や潤滑性を高めた構成である。固体粒子の例としては、固体潤滑剤がある。また、固体粒子cに樹脂被覆層表面の凹凸形成の機能を持たせても良い。図4は、樹脂被覆層1の表面に凹凸を形成し表面粗さを制御するため、結着樹脂a中に、更に球状の凹凸形成粒子dが添加されたモデル図を示し、凹凸形成粒子の粒径及び添加量を調整することで樹脂被覆層1の表面の凹凸を更に制御し易いようにした構成である。
このような構成は、現像剤規制部材が現像剤担持体に対して(トナー粒子を介して)弾性的に圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に有利である。すなわち、この樹脂被覆層1の表面の凹凸形成粒子dにより弾性規制部材の圧接力を規制し且つ導電剤bは小さな凹凸を形成して、トナー粒子と樹脂被覆層との摩擦帯電機会やトナー粒子との離型性を調整する役割も果たす。図4は、固体粒子cと凹凸形成粒子dの双方が樹脂被覆層2の表面の凹凸形成に寄与している。このような形態は、例えば、凹凸形成粒子dに凹凸形成以外に導電性や摩擦帯電付与性及び耐摩耗性の如き別の機能を持たせようとした場合に実施される場合がある。
本発明の現像方法に用いることのできる現像剤担持体は、基体表面上に形成された樹脂被覆層が結着樹脂及び硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物を含有し、
該樹脂被覆層表面のX線光電子分光分析により測定される硫黄原子の存在比率をS(1)(原子%)、
硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素原子の存在比率をN+(1)(原子%)、
該樹脂被覆層内部における硫黄原子の存在比率をS(2)(原子%)、炭素原子の存在比率をC(2)(原子%)、
硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素原子の存在比率をN+(2)(原子%)、とした時、式(1)〜(4)
1.45 ≦ N+(1)/S(1) ≦ 1.80 (1)
1.20 ≦ N+(1)/N+(2) ≦ 1.50 (2)
1.10 ≦ N+(2)/S(2) ≦ 1.30 (3)
0.009 ≦ S(2)/C(2) ≦ 0.020 (4)
を満たすことを特徴とする。
このような構成をとり、更に本願にて規定した物性値を有する磁性現像剤を併用する。このことによって、使用初期の摩擦帯電の立ち上がりを良好にしつつ、長期にわたるプリント時、あるいは低湿度環境下における現像剤の過剰な摩擦帯電を抑制でき、終始良好な現像特性を維持できることを見出した。
使用初期時における、現像剤を収容する現像容器内の磁性現像剤は、現像装置内の攪拌部材の如き部材によるシェアーがかかっていないため、低凝集状態にある。そのため、摩擦帯電付与がされ難い。よって、(1)式の値(N+(1)/S(1))が本願の規定内、即ち、本来の正帯電性を有する第四級アンモニウム塩化合物の一部が結着樹脂中に取り込まれずに、樹脂被覆層の表面近傍に多く存在させる。このことで、現像剤への摩擦帯電付与を高めるように設計することが必要である。1.45未満の場合は、初期時での磁性現像剤への摩擦帯電付与が十分にされ難く、スリーブゴースト(特にネガゴースト)やドット再現性の低下の如き画質の悪化を招くことになる。但し(1)式の値(N+(1)/S(1))が1.80を超える場合は、磁性現像剤に対する摩擦帯電付与能が高くなりすぎるため、特に低湿度環境下においてチャージアップに伴う現像性の低下(例えばドット再現性やハーフトーン均一性の低下)が発生し易くなる。
更に、(2)式の値(N+(1)/N+(2))が1.20未満の場合は、樹脂被覆層表面に存在する硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素原子の存在比率が少ない。このため、使用初期の摩擦帯電付与が十分には行えなくなり、その結果スリーブネガゴーストが発生し易くなる。(2)式の値(N+(1)/N+(2))が1.50を超える場合は、樹脂被覆層表面に存在する硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素原子の存在比率が多くなりすぎるため、チャージアップに伴う現像性の低下をもたらす。
このように樹脂被覆層表面における各原子の存在比率は、主として初期状態の現像剤への摩擦帯電付与特性を制御する因子である。しかし、プリントアウトを続けるにつれて現像担持体表面の樹脂被覆層は徐々に削れてしまうため、例えば数百枚以上プリントした後は、樹脂被覆層内部の各原子の存在比率が現像剤への摩擦帯電付与特性に影響を及ぼすことになる。
即ち、(3)式の値(N+(2)/S(2))が1.10未満では樹脂被覆層内部における硫黄原子の存在比率が高すぎるため、数百枚以上プリントし、樹脂被覆層表面がある程度削れた状態での現像剤への摩擦帯電付与特性が低下し、現像性の悪化をもたらす。(3)式の値(N+(2)/S(2))が1.30を超える場合は、これとは逆に現像剤のチャージアップを防止することが困難になり、濃度低下やスリーブポジゴーストの如き弊害が発生してしまう。
また、(4)式の値(S(2)/C(2))も式(3)と同様、プリントを続けてゆき、現像剤担持体上の樹脂被覆層表面がある程度削れた状態での現像剤への摩擦帯電付与特性をコントロールする因子である。(4)式の値が0.009未満の場合、現像剤のチャージアップを緩和することが困難になることで、現像性の低下を招いてしまい、0.020を超えると、現像剤への摩擦帯電付与能が低すぎることで現像性の悪化をもたらす。なお詳細は後述するが、本発明の現像方法に使用できる現像剤は、例えば連続プリントの如き長期使用により、現像装置内の現像剤担持体近傍でパッキングし、凝集体を形成した場合でも凝集体がほぐれ易い性質をもっている。このため、パッキングに伴う現像剤のチャージアップは緩和され易くなっている。しかし、チャージアップに伴うスリーブポジゴーストについては現像剤の特性を改良するだけで解決することは困難であり、本願のようにスリーブコート層の摩擦帯電特性とのマッチングを図る必要がある。
前記硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物としては、特に特許第3647253号公報に記載されているような、鉄粉に対して正帯電性である第四級アンモニウム塩化合物を用いる。このことで、現像剤担持体上の樹脂被覆層における各原子の存在比率を制御でき、本願で用いられる磁性現像剤への良好な摩擦帯電付与性を向上させる点で好ましい。ここでいう鉄粉は、30μm以上200μm以下の中心粒子径を有し、樹脂で被覆されていない鉄粉キヤリアを指し、その具体例としては、EFV200/300(パウダーテック社製)、DSP138(同和鉄粉工業社製)を挙げることができる。
更に該硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物は、スルフォン酸基及び水酸基を含有していることがより好ましい。このとき、前記樹脂被覆層は、樹脂構造中に、−NH2基、=NH基、又は−NH−結合の少なくともいずれかを有することが、本発明に用いられる磁性現像剤への良好な摩擦帯電付与の点で更に好ましい。
現像剤担持体上に、上記の第四級アンモニウム塩化合物を含有する樹脂被覆層を設けることで、本願に用いられる磁性現像剤の過剰な摩擦帯電を防ぐ方向に働き、現像剤への摩擦帯電付与をコントロールすることができる。これにより、現像剤担持体上での現像剤のチャージアップを防ぎ、現像剤の摩擦帯電量の安定化が維持でき、その結果、環境安定性及び長期安定性を有する高精細画像を提供することが可能となる。
この明確な理由は定かではないが、鉄粉に対して正帯電性である硫黄原子含有の第四級アンモニウム塩化合物は、バインダー樹脂中に添加されると、その一部は構造中に−NH2基、=NH基又は−NH−結合の少なくとも1つを含有する樹脂中に均一に分散される。更に、被覆層を形成する際に樹脂の構造中に取り込まれる。また、樹脂に取り込まれなかったものは樹脂被覆層表面近傍に存在し、元来有している正帯電性が発現される。一方で樹脂被覆層内部は、アンモニウムイオンのカウンターイオンの摩擦帯電特性が発現するようになり、負帯電性を持つようになるものと考えられる。なお、該アンモニウムイオンのカウンターイオン中に硫黄元素がスルフォン酸基のかたちで含有されることによって、負帯電性を高めることができる。このため、現像剤担持体が初期の状態では、現像剤に対して摩擦帯電を高める機能を有する。また、プリントを続けるに従い現像剤担持体の樹脂被覆層は表面より徐々に削れていくため、被覆層内部が有している摩擦帯電特性が支配的になり、トナーの摩擦帯電を緩和する方向に働く。一方、現像剤はプリントを続けていくに伴い過多の摩擦帯電を保持し易くなるが、現像剤担持体の樹脂被覆層との摩擦帯電により、自身が有する摩擦帯電量は低下する。その結果、チャージアップを未然に防止することができ、終始摩擦帯電量の安定化を図ることが可能となる。
本願において好適に使用される、上記した機能を有する硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物としては、鉄粉に対して正帯電性を有するものであればいずれのものでもよいが、例えば、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基を表し、X−は酸イオンを表わす。)
一般式(A)におけるX−の酸イオンの具体例としては、有機硫酸イオン、有機スルフォン酸イオン、有機リン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン原子あるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸イオンが挙げられる。中でも、前述したようにスルフォン酸基を含有していることがより好ましい。
具体的には、以下の表A−1〜A−3に示すようなものが挙げられるが、勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。
なお、本発明の現像剤担持体を構成する樹脂被覆層の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、以下の樹脂を使用することができる。フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱あるいは光硬化性樹脂。スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂。中でもフェノール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂は機械的性質に優れたものである。これらの機械的性質に優れた樹脂を使用することで、樹脂被覆層の高耐久性を付与することができる。
特に本願のように、前記第四級アンモニウム塩との組み合わせで、構造中に−NH2基、=NH基もしくは−NH−結合の少なくとも1つを含有する好ましい樹脂として以下のものが挙げられる。その製造工程において触媒としてアンモニアの如き含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドを硬化剤として用いたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、あるいはこれらの樹脂を一部に含んだ共重合体。これら被覆樹脂との混合物の成膜時に第四級アンモニウム塩化合物が被覆樹脂の構造中に容易に取り込まれる。
上記した形成材料によって現像剤担持体上に形成される樹脂被覆層は、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への摩擦帯電付与不良を防ぐために以下の抵抗値とする。樹脂被覆層の体積抵抗値としては、104Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは103Ω・cm以下である。現像剤担持体表面の樹脂被覆層の体積抵抗値が104Ω・cmを超えると現像剤への摩擦帯電付与不良が発生し易く、その結果、ブロッチ(斑点画像や波模様画像)や画像濃度低下が発生し易い。
樹脂被覆層の抵抗値を上記の値に調整するためには、下記に挙げる導電性付与粒子(導電剤)を樹脂被覆層中に含有させることが好ましい。アルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属の微粉末。酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウムの如き導電性金属酸化物。各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックの如き導電性カーボンブラック。金属繊維。
これらのうち、導電性カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与し、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いることができる。更に、塗料にした場合のチキソ性効果により分散安定性・塗工安定性も良好となる。
また、導電性カーボンブラックの添加量は、その粒径によっても異なるが、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上100質量部以下の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることは通常困難であり、また、樹脂被覆層に用いた結着樹脂に対してトナー付着が発生する可能性が高い。100質量部超であると、樹脂被覆層の強度(耐摩耗性)が低下することがある。
なお、導電性カーボンブラックの一次粒子径としては、10nm以上100nm以下を挙げることができる。一次粒子径が10nm以上であれば、カーボンブラック同士の凝集性が低く、結着樹脂の如き材料と共に分散して得られる塗料が高粘度となるのを抑制し、塗料中のカーボンブラックを均一に分散させることができる。一次粒子径が100nm以下であれば、樹脂被覆層中にカーボンブラックが点在することを回避することができ、樹脂被覆層表面における導電性の偏りに起因する現像バイアスが印加された際の電荷のリークの発生を抑制することができる。
本発明においては、現像剤担持体表面への現像剤(トナー)の付着をより軽減化するため、樹脂被覆層中に固体粒子として固体潤滑剤を混合させることは好例である。この際に使用し得る固体潤滑剤として、黒鉛粒子、二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石が挙げられる。
このうち黒鉛粒子としては、有機物やカーボンブラック、スス、木炭、ピッチコークス、石油コークスの如き無定形炭素を、無酸素下にて高温で焼成させて得られた粒子のことを指す。具体的には結晶性グラファイト(以下、単に「グラファイト」と表記する)、及びメソカーボンマイクロビーズ又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた粒子が挙げられる。該黒鉛粒子は、樹脂被覆層表面の潤滑性付与ばかりでなく、樹脂被覆層の導電性付与に対しても極めて有効であるため、好ましい材料である。
この内、グラファイトは天然黒鉛と人造黒鉛に大別されるが、本発明ではいずれでも使用可能である。人造黒鉛の製造例としてはは、ピッチコークスをタールピッチにより固めて1200℃位で一度焼成してから黒鉛化炉に入れ、約2300℃の高温で処理することにより、炭素の結晶が成長して黒鉛に変化したものがある。天然黒鉛は、長い間の天然の地熱と地下の高圧によって完全に黒鉛化したものが地中により産出するものである。これらの黒鉛は、種々の優れた性質を有していることから工業的に広い用途を持っている。黒鉛は、暗灰色ないし黒色の光沢のある非常に柔らかい滑性のある結晶鉱物であるため、主に鉛筆に利用され、その他耐熱性、化学的安定性、潤滑性、耐火性に優れるため、主に電気材料に粉末や固体や塗料の形で利用されている。結晶構造は六方晶とその他菱面晶系に属するものがあり、完全な層状構造を有している。電気的特性に関しては、炭素と炭素の結合の間に自由電子が存在し、電気の良導体となっている。更にグラファイトは、構造的な性質の一つである「劈開性」に見られるように結晶構造に異方性があり、これによって樹脂被覆層表面に出現させた場合、表面に潤滑性を付与させることも可能であることからも、好ましい材料である。
また本発明では、黒鉛粒子として、メソカーボンマイクロビーズ又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛粒子を使用することも可能である。該黒鉛粒子は、上記結晶性グラファイトとは、原材料及び製造工程が異なる。そのため、該黒鉛粒子は結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有している。更に粒子の形状が結晶性グラファイトの燐片状あるいは針状とは異なり塊状若しくは概略球状であり、しかも粒子自身の硬度が比較的高いのが特徴である。
本発明において、固体潤滑剤は体積平均粒径が0.2μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μmであることがより好ましい。体積平均粒径が0.5μm未満では潤滑性が十分に得られ難くなる。体積平均粒径が20μmを越える場合には、樹脂被覆層表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となり易く、現像剤(トナー)への均一な摩擦帯電付与、及び樹脂被覆層の強度の点で不十分になることがある。
本発明に使用される現像剤担持体上の樹脂被覆層中には、被覆層表面に凹凸を形成するための凹凸形成粒子を含有させることが可能である。このような凹凸形成粒子としては、以下のものを粒子状にして用いることも可能である。ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの如きビニル系重合体や共重合体、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂の如き樹脂粒子。アルミナ、酸化亜鉛、シリコーン、酸化チタン、酸化錫の如き酸化物粒子。炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子の如き導電性粒子。イミダゾール化合物の如き有機化合物。この場合にイミダゾール化合物は、トナーに摩擦帯電電荷を付与する役割も果たす。また耐摩耗性や導電性、疎水性の如き機能を付与する目的で、該粒子表面に金属酸化物の如き無機微粉末を付着させてもよい。
該凹凸形成粒子は、球状であることが好ましい。これは、不定形粒子に比べてより少ない添加量で所望の表面粗さが得られるとともに、表面形状の均一な凹凸面が得られるためである。そのため、本発明では、粒子の長径/短径の比が1.0以上1.5以下、好ましくは1.0以上1.2以下、特に好ましくは真球状の粒子を使用する。球状粒子の長径/短径の比が1.5を超えると、樹脂被覆層中への球状粒子の分散性が低下したり、樹脂被覆層表面形状が不均一になり、表面粗さが本願にて規定した範囲内から外れてしまう場合がある。
凹凸形成粒子としては、上記挙げた中でも炭素化粒子あるいは本発明者らが提案した特開平08−240981号公報に記載された導電性球状粒子を用いることがより好ましい。
本発明において用いることのできる凹凸形成粒子は、体積抵抗値が106Ω・cm以下、更には10−3Ω・cm以上106Ω・cm以下の粒子であることが好ましい。凹凸形成粒子の体積抵抗が106Ω・cmを超えると、摩耗によって樹脂被覆層表面に露出した該粒子を核として現像剤の汚染や融着を発生し易くなるとともに、迅速且つ均一な摩擦帯電が行われにくくなることがある。更には粒子の真密度としては3g/cm3以下であることがより好ましい。導電性であっても、粒子の真密度が高すぎる場合、同じ粗さを形成するために添加量を増やさなければならない。また、樹脂又は樹脂組成物と真密度差が大きくなるため、製造時の粒子の分散状態が非均一となり易い。したがって形成された樹脂被覆層においても分散状態が不均一になることがある。また粒子が球状であると、現像剤層厚規制部材が弾性的に圧接されるタイプの現像装置に適用した場合、圧接される現像剤層厚規制部材との接触面積が低減される。よって、摩擦力による現像剤担持体の回転トルクの増加や、現像剤の付着を軽減することができるのでより好ましい。
更に上記凹凸形成粒子の粒径は、体積平均粒径で0.3μm以上30μm以下が好ましい。0.3μm未満では均一な表面凹凸の形成は難しく、表面粗さを大きくしようとした場合添加量が過大になり、樹脂被覆層が脆くなり耐摩耗性が低下することがある。逆に30μmより大きくなると、粒子が現像剤担持体表面から突出しすぎるため、現像剤層の厚みが大きくなり過ぎて現像剤の摩擦帯電が低下したり、不均一になり易く、バイアスをかけた際に静電潜像担持体(感光ドラム)へリークするポイントになる場合がある。
本発明で好適に使用される上記のような構成を有する現像剤担持体表面の樹脂被覆層の表面粗さは、一般的には、JIS B0601−2001に規定の算術平均粗さRaで0.3μm以上3.5μm以下の範囲にあることが好ましい。Raが0.3μm未満の場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、現像剤不足による画像濃度薄や、現像剤の過剰な摩擦帯電による飛び散りやブロッチの如き弊害が発生し易い。また、Raが3.5μmより大きい場合には、現像剤への摩擦帯電付与が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄の如き弊害が発生し易い。
本発明の樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、前記基体上に塗工し、乾燥させることにより得ることが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また、塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
あるいは各成分を混合機により乾式混合を行った後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、粉砕、分級を行い、粉体塗料を得る。そして、該粉体塗料を静電塗工ガンを使用し、静電塗工法により前記基体上に塗工後、成膜化することにより得る方法を用いることも可能である。
なお、樹脂被覆層のX線光電子分光分析により測定された前記式(1)〜(4)の値を本願規定の範囲とするためには、硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物の添加量を適宜選択することにより達成することもできる。また、有機溶剤系の塗料を使用して塗工を行う場合は、塗工形成する際に塗工液に使用する溶剤の種類を選択し、塗工液中の固形分、塗工時の温湿度の如き条件によって制御することが可能である。例えば、硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物の樹脂被覆層表面近傍に存在する比率を高める方法としては、以下の方法を適宜選択し、組み合わせることにより調整することができる。
(I)塗料化に使用する溶剤として揮発性の高い(沸点が低い)ものを選択する。
(II)塗料化に使用する溶剤として、第四級アンモニウム塩化合物の溶解性が高い溶剤に加えて、溶解性の低い溶剤を適量添加する。
(III)塗料中の固形分濃度を高くする。
(IV)塗工時の環境を高温/低湿度にする。
(V)硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物において、前記化学式(A)中でアンモニウムイオンのR1〜R4のアルキル基鎖又はアリール基鎖長を長くする。(炭素原子数を増やす)
次に、本発明で使用することのできる現像剤について説明する。
終始安定した摩擦帯電能を有し、画質低下やスリーブゴーストの如き問題が発生せず、良好な現像特性を得るためには、前記説明したような現像剤担持体の特性に加えて、現像剤の特性にも着目する必要がある。そこで本発明者らが鋭意検討した結果、現像剤の圧縮度及び粉体流動性測定装置において測定された、粉体層中にプロペラ型ブレードを進入させた際の回転トルクと垂直荷重の総和とが上記の目的を達成するために重要な因子であることがわかり、本発明に至った。
本発明において、現像剤の圧縮率は式(5)より求められる。
圧縮率 = {1−(見掛け密度/タップ密度)} × 100 (5)
この圧縮率は、現像剤の見掛け密度及びタップ密度より算出される値であり、見掛け密度とタップ密度の変化率を表わす。圧縮率は30以下である必要があり、圧縮率が30を超える場合には、現像装置内の現像剤層厚規制手段(現像ブレード)裏付近で現像剤がパッキングされ易くなる。これにより現像剤担持体上への現像剤の供給が不足し、部分的な画像欠陥が発生したり、高画像濃度や高画質が維持できなくなるといった弊害が生じる。例えば現像剤の表面形状、或いは表面に付着している外添剤にもよるが、一般的に現像剤の粒径が小さくなるほど圧縮率が高くなり、現像剤がタッピングされることによって現像装置内での現像剤のパッキングが起こり易くなる。
更に本発明では、現像剤の粉体流動性測定装置において測定された、
プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら容器内のトナー粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、
底面から10mmの位置まで侵入させた時に得られる回転トルクと垂直荷重との総和(Et100)と、
10mm/secで回転させた時の回転トルクと垂直荷重との総和(Et10)とが、式(6)、(7)を満たすことを特徴とする。
0 ≦ Et10(mJ) ≦ 1700 (6)
Et10/Et100 ≦ 1.60 (7)
この粉体流動性測定装置を用いて得られる測定値は、従来周知の凝集度の如き指標で示される数値とは異なり、粉体層中にプロペラ型ブレードを進入させる際に必要な回転トルクと垂直荷重との総和を表わした値である。進入時の回転速度を変化させて測定することができる。言い換えれば、回転速度即ち粉体の流速変化に対して、現像剤(トナー)粒子間の凝集力がどのように変化しているか、を推測することができると考えられる。つまり、低速から高速までの流速変動に対して、回転トルクと垂直荷重との総和が低く且つ変化率が小さいということは、現像剤(トナー)粒子間の凝集力が低いレベルで安定化していることに対応する。このような数値範囲に設定することで、例えばトナー粒子が、現像容器内で攪拌搬送部材等によりシェアーを受けることでタッピングされたとしても、パッキング状態にはなり難い。またパッキング状態が形成されたとしても直ちに解すことができるため、終始良好な流動性を保持することができ、現像装置内のトナー循環を向上させることが可能になる。
Et10が1700mJを超えると、現像剤(トナー)粒子間の凝集力が高くなりすぎるために、現像剤(トナー)粒子が現像容器内で攪拌搬送部材等によりシェアーを受けることでタッピングされ易い。従って耐久に伴う現像性の低下が顕著に現れるようになり、好ましくない。更に、Et10を600mJ以上に制御することが好ましい。このことによって、現像剤(トナー)に適度な凝集性を与え、トナーに対して迅速且つ均一な摩擦帯電付与を行うことが可能になり、摩擦帯電不良によるカブリ、飛び散りの如き弊害を防止する効果がある。
一方、Et10/Et100の値が1.60を超える場合は、長期にわたるプリントの如き使用により、一度現像装置内にてトナー粒子同士のパッキングが発生すると、パッキング状態を解除することが困難になる。そのため、現像剤担持体への現像剤の搬送量が低下し、現像担持体上の現像剤量が少なくなってしまい、現像性の低下を招くことになるため、好ましくない。更に、Et10/Et100の値を1.20以上に制御することで、長期休止後にプリントを再開した際でも、現像剤(トナー)に適度な凝集性が付与される。このため、トナーに対して迅速且つ均一な摩擦帯電付与を行うことが可能になり、摩擦帯電不良によるカブリ、飛び散りの如き弊害を防止するには特に有効である。
上述したトナーの圧縮度や、粉体流動性測定装置にて測定した回転トルクと垂直荷重との総和を制御する方法としては、以下の方法を適宜選択し、組み合わせることにより調整することができる。
(ア)トナーの粒度分布を分級の如き製造工程にて制御し、適度な量の微粉及び粗粉を存在させることで、トナーのパッキングを抑制させる。
(イ)トナーの平均円形度を高め、トナー粒子間の接触面積を減少させる。
(ウ)表面エネルギーが低く疎水性の高い処理剤で処理した有機あるいは無機微粒子を、トナー表面に適正量付着させる。
(エ)トナー粒子を水系媒体中に分散させ、スチーム流入の如き方法により、系全体を100℃程度まで加温し、トナー表面の微小凹凸を無くすことで、トナーの表面エネルギーを減少させる。
本発明にて用いることのできる現像剤に含まれるトナー粒子は、結着樹脂及び磁性酸化鉄(以下、「磁性体」ともいう)を含有している。
上記現像剤に適用されるトナー粒子に含まれる結着樹脂としては、磁性体を含有し一体化できるものであればよい。結着樹脂を構成する単量体としては、具体的には以下のものを挙げることができる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンの如きスチレン系単量体。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、
アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、
メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類。
アクリロニトリル。メタクリロニトリル。アクリルアミド。これらの単量体は単独で又は2種以上混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と共に使用することがトナー粒子の現像特性及び耐久性の点から好ましい。
上記結着樹脂の分子量としては、現像特性や定着性の観点から1万以上10万以下であることが好ましい。
更に、上記結着樹脂は、アミノ基、カルボン酸基、水酸基、グリシジル基、ニトリル基の如き親水性官能基を有するものであってもよい。このような親水性官能基を有する単量体は、水性懸濁液中においてその水溶性により溶解して乳化重合を起こすため、結着樹脂を懸濁重合により調製する場合、単量体成分として使用することが難しい。このため、これらの親水性官能基を有する単量体(官能性単量体という)を予め重合して官能性樹脂成分として、上記結着樹脂の単量体成分に添加して重合することにより、これらの親水性官能基を有する結着樹脂を得ることができる。このような官能性単量体の樹脂成分としては、以下のものを挙げることができる。官能性単量体とスチレンあるいはエチレンの如きビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体の如き共重合体。ポリエステル、ポリアミドの如き重縮合体。ポリエーテル、ポリイミンの如き付加重合体。このような官能性樹脂成分における官能性単量体の含有量としては、官能性単量体を除いた単量体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましい。官能性単量体の含有量が1質量部以上であれば官能基特性を得ることができ、20質量部以下であれば、結着樹脂の種々の物性設計において妨げになることを抑制できる。
上記トナー粒子に含まれる磁性体としては、例えば四三酸化鉄、γ−酸化鉄を挙げることができる。磁性体としては、その他、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素の如き原子を1種又は2種以上を併用して用いることができる。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2m2/g以上30m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは3m2/g以上28m2/g以下であり、更にモース硬度が5以上7以下のものが好ましい。上記範囲であれば、磁性体のトナー粒子中での均一分散を図ることができる。
磁性体の形状としては、例えば8面体、6面体、球状、針状、鱗片状があるが、8面体、6面体、球状で異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。その形状は、SEMなどによって確認することができる。磁性体の粒度としては、体積平均粒径が、0.1μm以上0.3μm以下であり、且つ0.03μm以上0.1μm以下の粒子が全磁性体粒子に対して40個%以下であることが好ましい。体積平均粒径が0.1μm以上の磁性体粒子を用いると、得られる画像の色味が赤味にシフトする傾向を抑制し、十分な黒色度を有し、グラフィック画像における赤味や、画像の濃度不足を抑制することができる。更に、磁性体粒子の表面積の増大による分散性低下を抑制することができる。一方、磁性体粒子の平均粒径が0.3μm以下であれば、一粒子当たりの質量の増加に伴う、結着樹脂との比重差の影響によりトナー粒子表面に露出するのを抑制することができる。また、トナー粒子中において、0.1μm以下の体積平均粒子径の磁性体粒子個数%が40%以下であれば、磁性体粒子の表面積が増大することにより生じる分散性の低下を抑制できる。これにより、トナー粒子中の凝集塊の生成を抑制しトナー粒子の帯電性の低下を抑制することができる。
上記磁性体としては、表面が疎水化処理されたものが好ましい。磁性体表面が疎水性であると、一般的に親水性である場合において生じるトナー粒子表面への偏在や、トナー粒子からの遊離を実質的に抑制することができ、トナー粒子における摩擦帯電性低下を抑制することができる。磁性体の疎水化度としては、50以上であることが好ましい。
上記磁性体のトナー粒子中の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上180質量部以下である。磁性体の含有量が10質量部以上であれば現像剤に十分な着色力を付与することができ、カブリの発生を抑制することができる。一方、磁性体の含有量が200質量部以下であれば、現像剤担持体への磁力による拘束力が過大となるのを抑制し、現像性の低下を抑制することができると共に、トナー粒子間において磁性体を均一に分散することができる。
上記磁性酸化鉄を含む磁性体の調製方法としては、特に制限されるものではないが、以下の方法を具体的に挙げることができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。この水溶液のpHを7以上、好ましくは8以上10以下に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を、70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性体粒子の芯となる酸化鉄の種晶を生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6以上10以下に維持しつつ空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性体粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6以上に保持することが好ましい。
上記第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄を使用することができるが、硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄も利用することができる。
また、第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩の濃度としては、反応時の粘度の上昇を抑えること、及び第一鉄塩の溶解度から適宜選択することができ、硫酸第一鉄の場合、0.5mol/L以上2mol/L以下を挙げることができる。第一鉄塩の濃度は一般に薄いほど生成物の粒度が細かくなる傾向を有し、反応時の空気量が多いほど、そして反応温度が低いほど微粒化し易く、反応効率との関連において選択することができる。
上記酸化反応生成物の磁性酸化鉄の疎水化処理を行う。疎水化処理は水系溶液中で生成した磁性酸化鉄磁性体粒子を、乾燥工程を経る前の含水スラリーの状態で行うことが好ましい。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた磁性体粒子を、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた状態で行うことが好ましい。疎水化処理前の磁性体粒子を乾燥すると磁性体粒子同士の凝集が避けられず、凝集状態の磁性体粒子に湿式疎水化処理を行っても、均一な疎水化処理を行うことが困難になる。
磁性酸化鉄を含む磁性体の疎水化処理方法としては、水系媒体中で、pHを調整し、磁性酸化鉄を含む磁性体粒子が一次粒子になるように十分攪拌し分散させつつカップリング剤を加水分解しながら表面処理を行う。その後、濾過/乾燥後軽く解砕して疎水化磁性体粒子を得る方法が好ましい。このような水相での磁性体の疎水化処理方法では、従来の気相中における疎水化処理と比較して、磁性体粒子同士の凝集が生じにくい。また疎水化処理による磁性体粒子間の摩擦帯電反発作用のため、表面がほぼ疎水化処理された一次粒子の状態の磁性体を得ることができる。更に、このような疎水化処理方法においては、クロロシラン類やシラザン類のようにガスを発生するようなカップリング剤を使用する必要もなく、また、気相中では磁性体粒子同士の凝集により困難であった高粘性のカップリング剤も使用することができる。このように水相中の疎水化処理方法により、従来の気相中の疎水化処理方法においては達成できなかった疎水性と分散性に優れた磁性体を得ることができる。
上記疎水化処理方法において使用するカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。かかるシランカップリング剤としては、式(I)で示されるものが好ましい。
Rm−Si−Yn (I)
式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1以上3以下の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基のような炭化水素基を示し、nは1以上3以下の整数を示す。具体的には、以下のものを挙げることができる。ビニルトリメトキシシラン。ビニルトリエトキシシラン。γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン。ビニルトリアセトキシシラン。メチルトリメトキシシラン。メチルトリエトキシシラン。イソブチルトリメトキシシラン。ジメチルジメトキシシラン。ジメチルジエトキシシラン。トリメチルメトキシシラン。ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン。フェニルトリメトキシシラン。n−ヘキサデシルトリメトキシシラン。n−オクタデシルトリメトキシシラン。
特に、式(II)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を好ましいカップリング剤として挙げることができる。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 (II)
式中、pは2以上20以下の整数を示し、qは1以上3以下の整数を示す。式(II)におけるpが2以上であれば、容易に十分に疎水化処理を行うことができ、トナー粒子からの磁性体の露出を抑制することができる。またpが20以下であれば、十分な疎水性と、磁性体粒子同士の凝集を抑制しトナー粒子における磁性体粒子の均一な分散性とを同時に得ることができ、カブリを抑制し、優れた転写性、選択現像性を有するものとできる。また、qが3以下であれば、シランカップリング剤の反応性の低下を抑制して十分な疎水化を行うことができる。特に、以下のものは上記効果を顕著に得ることができる。式(II)中のpが2以上20以下のいずれかの整数、より好ましくは、3以上15以下のいずれかの整数を示し、qが1以上3以下のいずれかの整数、より好ましくは、1又は2の整数を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤。
上記疎水化処理におけるシランカップリング剤の使用量は、磁性体100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。上記範囲に設定することで、疎水化処理を十分に行うことができ、トナー粒子からの磁性体の露出及びトナー粒子中での均一分散を図ることができる。
上記磁性体の疎水化処理を行う水系媒体としては、水を主要成分としている媒体であれば、水そのものの他、各種添加剤を含有するものも使用することができる。添加剤の一例としては、界面活性剤、pH調整剤、有機溶剤を挙げることができる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましく、その添加量としては、水に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。pH調整剤としては、塩酸などの無機酸を用いることができる。
上記撹拌は、撹拌羽根を有する混合機、具体的には以下の高剪断力混合装置などを用い、磁性体粒子が水系媒体中で凝集するのを抑制し一次粒子に分散するような回転速度により行うことが好ましい。アトライター(三井三池化工機(株))、TK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))の如き高剪断力混合装置。
こうして得られる疎水化磁性体は粒子の凝集が見られず、個々の粒子表面が均一に疎水化処理されているため、結着樹脂に対する分散性が非常に良好であり、現像剤に使用することにより画像特性に優れた磁性現像剤を得ることができる。
上記トナー粒子には、離型剤(ワックス成分)を含有することが好ましい。かかるワックスとしては、具体的に、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体。モンタンワックス及びその誘導体。フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体。ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体。カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体。ここでの誘導体には例えば酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。更に、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸又はその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用することができる。
ワックス成分の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましい。ワックス成分の含有量が0.5質量部以上であればトナー粒子において十分な離型性付与を有するものとなる。また50質量部以下であれば長期間の保存においても安定性を有し、他のトナー材料の分散性への悪影響や、トナーの流動性や画像特性の低下をもたらすことを抑制することができる。
上記トナー粒子には、その他、摩擦帯電特性をコントロールするための荷電制御剤を添加してもよい。荷電制御剤としては、摩擦帯電速度が速く、且つ一定の摩擦帯電量を安定して維持できるものを用いることができる。直接重合法によるトナー粒子において、重合液に添加する場合には、重合阻害性が低く水系分散媒体に非溶解性であることが特に好ましい。具体的には、以下のものを挙げることができる。サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物。アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体。スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物。ホウ素化合物。尿素化合物。ケイ素化合物。カリックスアレーン。電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー粒子の製造方法によって選択することができ、一義的に限定されるものではない。しかし、例えば、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とすることができる。より具体的には0.1質量部以上5質量部以下の範囲を挙げることができる。上記範囲内に設定することで、トナーの摩擦帯電特性の向上を図ることができる。
上記トナー粒子においては、表面のX線光電子分光分析による炭素原子の存在比率A(原子%)、鉄原子の存在比率B(原子%)としたとき、炭素原子の存在比率Aに対する鉄原子の存在比率の比B/Aの値として0.0010未満を有することが好ましい。炭素原子の存在比率Aに対する鉄原子の存在比率の比B/Aの値として0.0010未満であれば、磁性体がトナー粒子表面に実質的に露出していないことになる。このため、磁性体の吸湿による影響、あるいは磁性体が摩擦帯電電荷のリークサイトとして過剰に存在することを抑制でき、摩擦電荷がトナー粒子から逃げてしまうことに伴う現像特性の低下の如き弊害の発生を抑制することができる。特に高温高湿度下において、磁性体の吸湿に伴う弊害を抑制することができ、トナー粒子が良好な流動性を維持できるため、現像特性の向上を図ることができる。
これに加えて、トナー粒子の投影面積相当径C、磁性体とトナー粒子表面との距離の最小値Dとした時、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上含まれると、以下の作用・効果がある。低抵抗の磁性体微粒子がトナー粒子の表面近傍に存在することによって、特に低温低湿下でのチャージアップが抑えられ、耐久使用時における濃度の低下やカブリの如き問題を未然に防止することができる。
また、上記トナー粒子の粒子径は、より微小な潜像ドットを忠実に現像する高画質の画像形成を可能とするために、重量平均粒径(D4)として4.0μm以上9.0μm以下を有することが好ましい。重量平均粒径(D4)が4.0μm以上であればトナー粒子個々の表面積の増加を抑制することができ、粉体としての流動性の低下を抑制し、トナー粒子間において摩擦帯電の不均一が抑制される。重量平均粒径(D4)が9.0μm以下であれば、文字やライン画像の飛び散りを抑制でき、高解像度を得ることができる。更に、よりいっそうの高画質化を達成するためには、5.0μm以上8.0μm以下が好ましい。
また、上記トナー粒子は、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の円相当径を有するトナー粒子(円相当トナー粒子)における平均円形度が0.970以上であることが好ましい。このように平均円形度を高くすることによって、個々のトナー粒子表面を均一に摩擦帯電させることが容易になり、摩擦帯電均一性に優れるようになるからである。トナー粒子の平均円形度は粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。
上記トナー粒子の製造方法としては、表面の鉄原子の含有率を特定のものとするためには、重合法によることが好ましく、より好ましくは懸濁重合法を挙げることができる。この懸濁重合法は、結着樹脂を構成する重合性単量体、磁性体、更に必要に応じて着色剤、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を、水系媒体に均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物とする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な攪拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る方法である。磁性体は一般的に親水性であるため、上記疎水処理などによる表面処理を予め行ったものを用いることが好ましい。親水性の磁性体において、疎水処理の如き表面処理が施されることにより、トナー粒子表面に偏在したり、あるいはトナー粒子から遊離し易い状態で存在することが抑制される。
上記重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。具体的には、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、
2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;
ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤を挙げることができる。重合開始剤の使用量としては、重合性単量体に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが、分子量1万以上10万以下の間に極大を有する重合体を得ることができ、トナー粒子に好ましい強度と溶融特性を付与することができることから、好ましい。
また、上記架橋剤としては、具体的には、芳香族ジビニル化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン;
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものを挙げることができる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、
及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートを挙げることができる。架橋剤の使用量としては、重合性単量体の0.001質量%以上15質量%以下を挙げることができる。この範囲内に設定することで、製造安定性の向上を図ることができる。
トナー粒子の重合法としては、具体的には、上記重合性単量体に、磁性体、必要に応じて着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤、重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるための有機溶媒、分散剤を適宜加え分散機を用い単量体系を調製する。分散機の一例としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機を用いることができる。こうして得られた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散/懸濁する。このとき、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとすると、得られるトナー粒子の粒子径分布がシャープになるため好ましい。重合開始剤の添加の時期としては、単量体に他の添加剤を添加する際、同時に加えてもよく、単量体系を水系媒体中に分散する直前に添加してもよい。また、単量体系を水系媒体に分散した直後、重合反応を開始する前に単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
上記分散安定剤としては、界面活性剤や有機・無機分散剤を使用することができる。中でも無機分散剤が有害な超微粉の発生を抑制でき、分散安定性を立体障害性により得ているため、反応温度の変化によっても不安定になることを抑制することができ、洗浄も容易でトナー粒子に及ぼす悪影響を抑制することができることから、好ましい。無機分散剤としては、具体的に、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩;
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;
水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの無機分散剤の使用量としては、単量体100質量部に対して、合計で0.2質量部以上20質量部以下が好ましい。平均粒径が5μm以下であるような、より微粒化されたトナー粒子を製造する場合には、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用することができる。
上記界面活性剤としては、具体的に、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、
オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムを挙げることができる。
これら無機分散剤を用いる場合には、水系媒体に無機分散剤を直接添加する方法を挙げることができるが、水系媒体中で反応により微細な粒子として生成させた反応生成物の無機分散剤粒子を含む反応系を用いることができる。その一例として、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを微細な粒子として生成させる。この水不溶性の生成物として燐酸カルシウムを微細な粒子として含有する水性分散液を無機分散剤として用いることにより、トナー粒子のより均一で細分化された分散が可能となる。このとき、同時に水溶性の副生成物の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナー粒子の発生が抑制されるため、より好都合である。重合反応終期に残存単量体を除去するときには副生成物が障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩することが好ましい。無機分散剤は、重合終了後、酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に除去することができる。
このような重合反応においては、重合温度は40℃以上とすることができ、好ましくは、50℃以上90℃以下と設定することができる。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤やワックス類が、相分離により析出して内包化をより完全にすることができる。残存する単量体を消費するために、重合反応終期に反応温度を90℃以上150℃以下にすることもできる。
トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行うことができる。更に、その後、分級を行い、粗粉や微粉を除去することも好ましい。
本発明に用いるトナー粒子を粉砕法にて製造する場合は、公知の方法を用いることができる。粉砕法による製造方法としては、結着樹脂、磁性体、離型剤、その他荷電制御剤、着色剤、その他の添加剤の如きトナーとして必要な成分をヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行う方法を挙げることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率向上のため、多分割分級機を用いることが好ましい。粉砕工程では、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いることができる。
この場合に用いられる混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)。スーパーミキサー(カワタ社製)。リボコーン(大川原製作所社製)。ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製)。スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製)。レーディゲミキサー(マツボー社製)。混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製)。ブス・コ・ニーダー(Buss社製)。TEM型押し出し機(東芝機械社製)。TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)。PCM混練機(池貝鉄工所社製)。三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製)。ニーデックス(三井三池化工機社製)。MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製)。バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)。lDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)。クロスジェットミル(栗本鉄工所社製)。ウルマックス(8曹エンジニアリング社製)。SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製)。クリプトロン(川崎重工業社製)。ターボミル(ターボ工業社製)。分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製)。ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製)。ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)。エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製)。YMマイクロカット(安川商事社製)。この中でもエルボージェットの如き多分割分級機を用いることがより好ましい。粗粒の如き異物をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製)。レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)。バイブラソニックシステム(ダルトン社製)。ソニクリーン(新東工業社製)。ターボスクリーナー(ターボ工業社製)。ミクロシフター(槙野産業社製)。円形振動篩い。
更に特定の円形度を有するトナー粒子を得るためには、更に熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加える処理を挙げることができる。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法を用いることもできる。機械的衝撃力を加える手段としては、以下の装置を具体的に挙げることができる。一例として、川崎重工社製のクリプトロンシステム、ターボ工業社製のターボミルの如き機械衝撃式粉砕機、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステム、奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムを挙げることができる。ハイブリダイゼーションシステムにおいては、高速回転する羽根の如き部材によりトナー粒子をケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力の如き力によりトナー粒子に機械的衝撃力を加える方法が取られている。機械的衝撃法においては、処理温度を磁性トナー粒子のガラス転移点(Tg)付近の温度(Tg±10℃)を加える熱機械的衝撃が、凝集防止、生産性の観点から好ましい。
本発明に用いられる現像剤はトナー粒子の他、必要に応じて、流動性向上剤や、その他の外添剤を含有していてもよい。
該流動性向上剤としては、トナー粒子の表面に付着し、トナー粒子の流動性を向上させるものであり、無機微粉体又は疎水性無機微粉体が好ましい。無機微粉体又は疎水性無機微粉体としては、例えば、酸化チタン微粉末、シリカ微粉末、アルミナ微粉末を挙げることができる。これらのうち、シリカ微粉末を好ましいものとして挙げることができる。シリカ微粉体としてはケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び例えば水ガラスから製造されるいわゆる湿式シリカの両方を用いることができる。これらのうち、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカが好ましい。
上記無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上のもの、特に50m2/g以上400m2/g以下の範囲のものが流動性向上効果を得ることができるため、好ましい。
更にシリカ微粉体は、疎水化処理されているものが高温高湿環境下での特性から好ましい。疎水化処理されたシリカ微粒子は吸湿が抑制され、このためトナー粒子の摩擦帯電量の低下、延いては画像濃度の低下を抑制することができる。シリカ微粒子の疎水化処理方法としては、例えばシリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物による化学的処理を挙げることができる。具体的には、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で疎水化処理する。シランカップリング剤で疎水化処理した後、あるいはシランカップリング剤で疎水化処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で疎水化処理する方法を挙げることができる。
また、現像剤に含有される外添剤として、例えばクリーニング性を向上させる目的で添加する、一次粒径が30nmを超え、且つ好ましくは比表面積が50m2/g未満の微粒子で球状に近い無機微粒子又は有機微粒子を挙げることができる。このような微粒子としては、一次粒径が50nm以上、且つ好ましくは比表面積が30m2/g未満であることがより好ましく、例えば球状のシリカ粒子や、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
更に他の添加剤として、例えば滑剤粉末、研磨剤、ケーキング防止剤、導電性付与剤、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。滑剤粉末として、例えば、フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末を挙げることができる。研磨剤として、例えば、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末、ケイ酸ストロンチウム粉末を挙げることができる。導電性付与剤として、例えば、カーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末を挙げることができる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることもできる。
これらの添加剤の使用量としては、トナー粒子の機能を阻害しない範囲であることが好ましく、例えばトナー粒子100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下などとすることができる。より具体的には、0.1質量部以上4質量部以下などの範囲とすることができる。
このような現像剤の調製方法は、例えばトナー粒子にこれらの添加剤を適宜加熱、攪拌して混合する方法を挙げることができる。この時に使用できる製造装置としては、前述の乾式混合機等を挙げることができる。
次に、本発明の現像方法を実現する現像装置の一例を図に沿って具体的に説明する。
図5は、本発明の現像方法を実現するための一実施形態の現像装置の模式図を示す。
図5において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光ドラム601は、矢印B方向に回転する。現像スリーブ608は、現像容器603に供給された磁性トナー粒子を有する一成分系磁性現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ608と感光ドラム601とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。図5に示すように、回転自在に保持された現像剤担持体610においては、現像スリーブ608内に,現像剤を現像スリーブ608上に磁気的に吸引且つ保持する為に,磁石(マグネットローラー)609が配置されている。
本発明の現像方法で用いられる現像スリーブ608は、基体としての金属円筒管606上に被覆された樹脂被覆層607を有する。現像容器603中には、ここには図示されていない現像剤補給容器から現像剤供給部材(スクリューなど)612を経由して磁性現像剤が送り込まれてくる。現像容器は、第一室614、第二室615に分割されており、第一室614に送り込まれた磁性現像剤は攪拌搬送部材605により現像容器603及び仕切り部材604により形成される隙間を通過して第二室615に送られる。磁性現像剤はマグネットローラー609による磁力の作用により現像スリーブ608上に担持される。第二室615中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材611が設けられている。
磁性現像剤は、磁性トナー粒子相互間及び現像スリーブ608上の樹脂被覆層607との摩擦により、感光ドラム601上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図5の例では、現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード(ドクターブレード)602が、現像容器603に装着されている。装着位置は、現像スリーブ608の表面から約50μm以上500μm以下の間隙を有して現像スリーブ608に対向する位置である。マグネットローラー609の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード602に集中することにより、現像スリーブ608上に現像剤の薄層が形成される。本発明においては、この磁性規制ブレード602にかえて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。
この様にして、現像スリーブ608上に形成される磁性現像剤の薄層の厚みは,現像領域Dにおける現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明の現像剤担持体は、以上の様な磁性現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。また、現像領域Dにおいて、磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、所謂接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。説明の煩雑を避けるため、以下の説明では先に説明した非接触型現像装置を例にとって行う。
上記現像スリーブ608に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤を飛翔させる為、上記現像スリーブ608にはバイアス手段としての現像バイアス電源613により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
現像された画像の濃度を高め、且つ階調性を向上させるためには、現像スリーブ608に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
図5においては、現像スリーブ608上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示した。しかし、図6に示される如く、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレードを使用してもよい。この場合、弾性規制ブレード616を現像スリーブに対して、現像剤を介して接触あるいは圧接させて用いる。本発明においては特にこの形態を有する系において、従来技術と比較して、摩擦帯電付与能の面で格段の効果を得ることができる。これは、規制ブレードを接触又は圧接させるタイプの現像装置では、トナー層は更に強い規制を受けながら現像スリーブ608上に現像剤の薄層を形成する。このことから、現像スリーブ608上に、上記した図5の例の場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができるため、現像スリーブ608表面の樹脂被覆層607への負荷が大きくなり、樹脂被覆層607が摩耗し易くなる。本発明では、このような系においても樹脂被覆層607の摩耗を軽減することができるため、高耐久化を達成することができる。なお、現像スリーブ608に対する弾性規制ブレード616の当接圧力は、線圧5g/cm以上50g/cm以下であることが、磁性現像剤の規制を安定化させ、現像剤担持体上に担持される磁性現像剤量及び摩擦帯電量の適正化を図ることができる点で好ましい。弾性規制ブレード616の当接圧力が線圧5g/cm未満の場合には、磁性現像剤の規制が弱くなり、カブリや現像剤もれの原因となり易い。また、線圧50g/cmを超える場合には、現像剤へのダメージが大きくなり、現像剤劣化やスリーブ及びブレードへの融着の原因となり易い。
図5及び図6はあくまでも本発明の現像方法に使用可能な現像装置を模式的に例示したものである。前記した層厚規制部材以外にも、例えば現像容器603(ホッパー)の形状、攪拌翼605、611の有無、磁極の配置、供給部材612の形状、補給容器の有無に様々な形態があることは言うまでもない。
以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
(1)樹脂被覆層表面及び内部、トナー粒子表面の各元素比率測定(X線光電子分光分析)
X線光電子分光分析はアルバックファイ(株)社のQuantum2000を用い、以下の条件で行った。
X線源;モノクロ Al Kα
Xray Settinng;100μmφ(25W(15KV))
光電子取り出し角:45度
中和条件:中和銃とイオン銃の併用
分析領域 :300×1500μm
Pass Energy : 11.75eV
ステップサイズ : 0.05eV
ここで各元素の定量分析は、C 1s(Bonding Energy:280eV以上295eV以下)、
N 1s(Bonding Energy:395eV以上410eV以下)、
O 1s(Bonding Energy:525eV以上540eV以下)、
S 2p(Bonding Energy:160eV以上175eV以下)
及びFe 2p3(Bonding Energy:706eV以上730eV以下)ピークを使用し各々の原子濃度(原子%)を求めた。
ここでN 1sピークについて、第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素元素とそれ以外の窒素元素ではピーク位置がそれぞれ402.5eV、400.0eVと異なる。このため、これらをピーク分離することで、第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素元素の比率を求めた。ピーク分離は、第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素元素ではピーク位置402.5eV、ピーク幅400.0eV以上410.0eV以下、その他の窒素元素ではピーク位置400.0eV、ピーク幅395.0eV以上403.0eV以下と定め、
Quantum2000制御ソフトウエアMultiPakを用いて行った。第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素元素の比率は、上記C 1s 、N 1s 、O 1s 、S 2pで求めた窒素元素の原子%に、N 1sピーク分離から求めた第四級アンモニウム塩化合物帰属の窒素元素の積分強度比率を乗算することで求めた。
上記の測定条件にて、樹脂被覆層表面及び内部の各元素比率を測定したが、ここで樹脂被覆層内部の元素比率に関しては、ミクロトーム(ガラスナイフ)を用いて樹脂被覆層表面より1μm削った箇所での測定を行った。これは、本願規定の要件を満たす現像剤担持体を数種類用意し、樹脂被覆層内部の硫黄元素の存在比率を被覆層表面からの深さを変えて測定したところ、図7に示したような分布になった。即ち、被覆層表面に硫黄元素が局在し、深さが0.3μm程度までは急激に存在比率が減少するが、深さが0.5μm乃至2.0μmの間では存在比率はほぼ一定になることが確認できた。この結果より、樹脂被覆層内部、つまり耐久により樹脂被覆層がある程度削れた時点での被覆層表面における各元素の存在比率は、表面より深さ方向に1μm削った箇所での存在比率で代表できると判断した。
トナー粒子表面の鉄原子、炭素原子のX線光電子分光分析による含有率としては上記樹脂被覆層の原子の分析方法と同様の方法、条件による測定値より求めた。但し、測定に先立ち、イソプロピルアルコールの如きトナー粒子を溶解しない溶媒を用いて、トナー粒子を洗浄し、トナー粒子表面に存在する外添剤あるいは異物を取り除いた後に測定を行った。
(2)硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物の摩擦帯電極性の測定
23℃、50%RH環境下にて、鉄粉キヤリア9.8gと第四級アンモニウム塩化合物粉末0.2gとを50ml容量のポリエチレン製の瓶に入れて蓋をし、50回手で震盪し、混合物を得た。次いで図8に示したような、底に500メッシュのスクリーン73のある金属製の測定容器72に前記混合物を1.0g以上1.2g以下を入れ、金属製のフタ74をした。次に吸引機(測定容器72と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口77から吸引し、風量調節弁76を調節して真空計75の圧力は2450Paとした。この状態で一分間吸引を行って、第四級アンモニウム塩化合物粉末を吸引除去した。この時の電位計79の測定値より第四級アンモニウム塩化合物粉末の摩擦帯電極性を求めた。
(3)樹脂被覆層表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
樹脂被覆層表面の算術平均粗さRaの測定は、JIS−B0601(2001)の表面粗さに基づき、小坂研究所社製サーフコーダーSE−3500を用い、
測定条件としてはカットオフ0.8mm、評価長さ8mm、送り速度0.5mm/sにて、軸方向3点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をとった。
(4)黒鉛粒子及び凹凸付与粒子の粒径測定
レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型あるいはLS−230型粒度分布計(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用した。イソプロピルアルコールにて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg以上25mg以下加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。
次にイソプロピルアルコール50ml中に界面活性剤3滴以上4滴以下を加え、更に測定試料を5mg以上25mg以下加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散器で1分間以上3分間以下分散処理を行って試料液とした。前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%以上55%以下になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から算出した体積平均粒径を求めた。
(5)樹脂被覆層の体積抵抗の測定
樹脂被覆層の体積抵抗値は、100μmの厚さのPETシート上に、現像剤担持体上の樹脂被覆層を構成する同じ塗工液を用い、7μm以上20μm以下の厚さの被覆層を形成し、ローレスターAP(三菱油化(株)製)に4端子プローブを取り付けて測定した。なお、測定環境は20℃以上25℃以下、50%RH以上60RH%以下とした。
(6)凹凸形成粒子の体積抵抗の測定
粒状試料を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、抵抗率計ローレスターAP、又はハイレスターIP(共に、三菱油化(株)製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。尚、測定環境は、20℃以上25℃以下、50%RH以上60%RH以下とした。
(7)凹凸形成粒子の真密度の測定
本発明で使用する球状粒子の真密度は、乾式密度計アキュピック1330(島津製作所製)を用いて測定した。
(8)現像剤の圧縮率の測定
パウダーテスタPT−R(ホソカワミクロン社製)を用い、まず、見掛け密度(g/cm3)の測定を行った。測定環境は、23℃,50%RHで行った。また測定は、現像剤を、目開き75μmの篩を用いて、振幅を1mmで振動させながら、容積100mlの金属製カップに捕集し、ちょうど100mlとなるように擦り切った。そして、金属製カップに捕集した現像剤質量から、見掛け密度(g/cm3)を計算した。
次に、タップ密度(g/cm3)を以下の方法により求めた。現像剤を、目開き75μmの篩を、振幅1mmで振動させながら、金属性カップからオーバーフローするように現像剤を補給しつつ、金属性カップを振幅18mmにて上下往復180回タッピングさせた。そして、タッピング後の現像剤重量から、上記タップ密度を計算した。
そして、下記式(5)により現像剤の圧縮率を求めた。
圧縮率 = {1−(見掛け密度/タップ密度)} × 100 (5)
(9)Et100及びEt10の測定
本発明における、Et100及びEt10は、粉体流動性分析装置パウダーレオメータFT−4(Freeman Technology社製)(以下、FT−4と省略する)を用いることによって測定した。
具体的には、以下の操作により測定を行った。なお、全ての操作において、プロペラ型ブレードは、以下のFT−4測定専用48mm径ブレードを用いた。図9に示すように、48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように、反時計回りになめらかにねじられている。材質はSUS製で型番:C210である。以下、これを「ブレード」ともいう。
以下のFT−4測定専用の直径50mm、容積160mlの円筒状のスプリット容器に23℃、60%環境に3日以上放置されたトナーを100g入れることでトナー粉体層とした。型番:C203、容器底面からスプリット部分までの高さ82mmで、材質はガラスである。以下、これを「容器」ともいう。
<1>コンディショニング操作
(a)粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層がほぐされる方向)の回転方向に、ブレードの回転スピードを、ブレードの最外縁部の周速で60mm/secとし、粉体層への垂直方向の進入速度を、以下の5degのスピードとした。移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角が、5degのスピード(以下、「なす角」ともいう)。この回転スピード、進入速度で、粉体層表面からトナー粉体層の底面から10mmの位置まで進入させた。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60mm/sec、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2degのスピードで、トナー粉体層の底面から1mmの位置まで進入させる操作を行った。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60mm/sec、粉体層からの抜き取り速度をなす角が5degのスピードで、トナー粉体層の底面から100mmの位置まで移動させ、抜き取りを行った。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とした。
(b)一連の上記<1>−(a)の操作を5回行うことで、トナー粉体層中に巻き込まれている空気を取り除き、安定したトナー粉体層を作った。
<2>スプリット操作
上述のFT−4測定専用セルのスプリット部分でトナー粉体層をすり切り、粉体層上部のトナーを取り除くことで、同じ体積のトナー粉体層を形成した。
<3>測定操作
(i)Et100の測定
(a)上記<1>−(a)と同様のコンディショニング操作を一回行った。次に粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層が押し込まれる方向)の回転方向に、ブレードの回転スピードが100mm/sec、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が5degのスピードとした。この回転スピード、進入速度で、トナー粉体層の底面から10mmの位置まで進入させた。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60mm/sec、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2degのスピードで、粉体層の底面から1mmの位置まで進入させる操作を行った。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが60mm/sec、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5degのスピードで、粉体層の底面から100mmの位置まで抜き取りを行った。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とした。
(b)上記、一連の操作を7回繰り返した。7回目にブレードの回転スピードが100mm/secで、トナー粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和を、Et100とした。
(ii)Et10の測定
(a)Et100の測定を終了したトナー粉体層を用い、まず上記<3>−(i)−(a)の操作を1回行った。
(b)次に、<3>−(i)−(a)における一連の操作において、ブレードの回転スピードを100mm/secでトナー粉体層に進入させていたところを、70mm/secに落として測定を行った。
(c)引き続き、<3>−(ii)−(b)と同様に40mm/sec、10mm/secに順次回転数を落とした測定を行った。回転スピードが10mm/secでトナー粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和を、Et10とした。
(10)D/C、及び磁性酸化鉄微粒子の分布
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察より得られるトナー粒子の投影面積相当径をCとし、磁性酸化鉄微粒子とトナー粒子表面との距離の最小値をDとした。具体的な測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ硬化物を得た。次いで硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察した。
該当する粒子数の割合の具体的な決定方法は、以下のとおりである。TEMにてD/Cを決定するための粒子は、顕微鏡写真により得られるトナーの断面積から円相当径(これを投影面積相当径Cとする)を求めた。その値がコールターカウンターを用いた後述する方法により求めた長さ平均粒径(D1)の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とした。その該当粒子100個について、磁性酸化鉄微粒子とトナー粒子表面との距離の最小値(D)を計測し、D/Cを求め、D/C値が0.02以下の粒子の割合を計算した。
また磁性酸化鉄微粒子の分布については、該当粒子中の磁性酸化鉄微粒子数と、トナーの表面から円相当径の0.2倍の深さより外側にある磁性酸化鉄微粒子数をカウントすることによって得た。このときの顕微鏡写真は精度の高い測定を行うために、1万倍以上2万倍以下の倍率で実施するのが好ましい。本発明では、透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を装置として用い、加速電圧100kVで観察し、拡大倍率が1万倍の顕微鏡写真を用いて観察、測定を行った。
(11)トナー粒子の平均円形度
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明では東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下式によりそれぞれ求めた。
円形度(Ci)=(粒子数と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義した。
なお、測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出した。その後、平均円形度及びモード円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40以上1.00以下を0.010間隔で61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものである。本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いている。
本発明における平均円形度とは、粒子の凹凸の度合いの指標であり、粒子が完全な球形の場合1.000を示し、現像剤の表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
具体的な測定方法としては、界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mlに現像剤約5mgを分散させて分散液を調整し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000個/μl以上2万個/μl以下とした。この条件で、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径を有する粒子の平均円形度を求めた。
測定の概略は、例えば東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年度6月版)、測定装置のマニュアルに記載されているが、以下のとおりである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、以下の通りである。3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。
(12)トナー粒子の粒度分布
トナーの重量平均粒径(D4)、長さ平均粒径(D1)及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行ったが、例えば本発明では、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)を使用した。電解液はISOTON R−II(ベックマン・コールター社製)を用いた。測定法としては、前記電解水溶液100ml以上150ml以下中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1ml以上5ml以下加え、更に測定試料を2mg以上20mg以下加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分以上3分以下分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)及び個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を算出した。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;
8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;
32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
(13)磁性体粒子の疎水化度の測定方法
本発明でいう磁性体粒子の疎水化度は、以下の方法、すなわちメタノール滴定試験により測定した。メタノール滴定試験は、疎水化された表面を有する磁性体の疎水化度を確認する実験的試験である。
メタノールを用いた疎水化度測定は次のように行った。磁性体粒子0.1gを容量250mlのビーカーの水50mlに添加した。その後メタノールを液中に徐々に添加し滴定を行った。この際メタノールは液底部より供給し、緩やかに撹拌しながら行った。磁性体粒子の沈降終了は、液面に磁性体粒子の浮遊物が確認されなくなった時点とし、疎水化度を、沈降終了時点に達した際のメタノール及び水混合液中のメタノールの体積百分率として表わした。
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、以下の配合における部数は、特にことわらない限りすべて質量部である。
<<現像剤担持体表面の樹脂被覆層>>
<結着樹脂>
・A−1:レゾール型フェノール樹脂(アンモニア触媒使用、メタノール40質量%含有、大日本インキ化学工業社製、商品名:J325)
・A−2:66ナイロンを主成分とするナイロン共重合体(デュポン ジャパンリミテッド社製、商品名:エルバマイド8023)
<カーボンブラック>
導電性カーボンブラックとしては、Cabot Corporation製のVulcan XC−72(商品名)を用いた。
<固体粒子>
コークスとタールピッチの混合物を原材料とし、この混合物をタールピッチの軟化点以上の温度で練り込み、押出し成型し、窒素雰囲気下において1000℃で一次焼成を行って炭化させた。続いてコールタールピッチを含浸させた後、窒素雰囲気下において2700℃で二次焼成を行い黒鉛化し、更に粉砕及び分級して体積平均粒径5.4μmのグラファイト粒子を作製し、これを固体粒子B−1として使用した。
また、コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行った後、次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去することでメソフェーズピッチを得た。そのバルクメソフェーズピッチを微粉砕し、その粒子を空気中において約800℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて2700℃で焼成し黒鉛化させ、更に分級して得られた体積平均粒径3.7μmの黒鉛粒子を得た。これを固体粒子B−2とした。
<凹凸形成粒子>
導電性球状粒子である、ニカビーズ ICB0520及びニカビーズ ICB1020(いずれも商品名、日本カーボン社製)を使用した。以下、ニカビーズ ICB0520をC−1、ニカビーズ ICB1020をC−2と標記する。
<現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1>
基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)を以下のようにして作製した。
結着樹脂A−1 250部
導電性カーボンブラック 10部
固体粒子B−1 90部
例示化合物No.1(硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物) 100部
凹凸形成粒子C−1 30部
エタノール 200部
上記材料に直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加え、サンドミルにて2時間分散し、フルイを用いてビーズを分離し、エタノールで固形分を38質量%に調整し塗工液を得た。この塗工液を用い、外径20mmφ、中心線平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を垂直に立てた。次いで、このアルミニウム製円筒管を一定速度で回転させるとともに、上下端部にマスキングを施し、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗工することによって樹脂被覆層を形成させた。なお、塗工は23℃/50%RHの環境下にて実施した。続いて熱風乾燥炉により150℃で30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させ、現像剤担持体(現像スリーブ)S−1を作製した。表1に該現像剤担持体(現像スリーブ)S−1の樹脂被覆層の処方と物性を挙げた。
<現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例2〜13>
それぞれ表1に示した材料構成及び配合比にて塗工液を作製し、現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1と同様にして現像スリーブS−2〜S−13を作製した。但し、S−3は、含硫黄四級アンモニウム塩化合物として下記式で示される例示化合物(19)を用いた。
またS−6は、塗料製造時に添加する溶剤をエタノールからメタノールとイソプロパノールが80:20の混合溶媒を使用した。
更にS−8は、塗料製造時に添加する溶剤をエタノールからメタノールに変更し、且つ塗工液の固形分を38質量%から42質量%に上げた。S−10では、塗工を45℃/15%RHの環境下にて実施した。更にS−11では添加する溶剤をエタノールからトルエンに変更し、塗工液の固形分は30質量%とした。S−13は、硫黄原子を有する第四級アンモニウム塩化合物(「含硫黄四級アンモニウム塩化合物」ともいう)は用いず、その代わりに下記(20)の式で示される硫化オキシモリブデンジチオカーバメートからなる有機モリブデン化合物
及び下記(21)式で示される四級アンモニウム塩化合物
を、それぞれ50部ずつ添加した。
なお、前記現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例にて用いた第四級アンモニウム化合物は、いずれも鉄粉に対して正帯電性を有していた。
<<現像剤>>
<磁性酸化鉄粉体の製造例1>
硫酸第一鉄水溶液に、鉄イオンに対して1.0当量以上1.1当量以下の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80℃以上90℃以下で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9当量以上1.2当量以下となる様、硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を進めた。酸化反応終了後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、ろ過して一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥させずに別の水系媒体中に再分散させた。再分散後のpHを約6に調整し、充分撹拌しながらシランカップリング剤[n−C4H9Si(OCH3)3]を磁性酸化鉄100部に対し2.0部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、磁性酸化鉄粉体1を得た。該磁性酸化鉄粉体1の平均粒径は0.25μm、疎水化度は80であった。
<磁性酸化鉄粉体の製造例2>
上記磁性酸化鉄粉体の製造例1において、添加する苛性ソーダ溶液の量及び反応条件を調製し酸化反応を進め、酸化反応終了後に生成した磁性体を洗浄、濾過、乾燥し、磁性体を得た。その後、得られた磁性体100部をγ−メタクロロキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤4.0部を含むトルエン溶液に分散させ、100℃で3時間熱処理を行うと共に乾燥し、磁性酸化鉄粉体2を得た。該磁性酸化鉄粉体2の平均粒径は0.20μm、疎水化度は40であった。
<磁性現像剤の製造例1>
スチレン/アクリル酸n−ブチル/ジビニルベンゼン共重合体 100部
(質量比78/22/0.5、Mn=3.1万、Mw/Mn=3.2、Tg=58℃)
飽和ポリエステル樹脂 2部
(エチレンオキサイド付加ビスフェノールAとイソフタル酸の重縮合物、酸価:10、Mn=7千、Mw/Mn=1.8、Tg=61℃)
負帯電性荷電制御剤(保土谷化学工業社製、商品名:T−77) 1部
磁性酸化鉄粉体1 88部
ステアリン酸ステアリルワックス 7部
(DSCにおける吸熱ピークの極大値60℃)
上記材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)にて混合した後、温度150℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料(粗粉砕物A)を得た。
該粗粉砕物Aをターボミル(ターボ工業(株)製)で微粉砕後、サーフュージョンシステム(日本ニューマチック工業(株)製)にて150℃の熱風により気相中で表面処理を行った。その後、エルボージェット(日本ニューマチック工業(株)製)にて分級を行い、重量平均粒径7.3μmの黒色粒子を得た。
この黒色粒子100部と、一次粒径12nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした。その後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.2部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用い混合し、磁性現像剤−1(T−1)を調製した。該磁性現像剤−1(T−1)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例2>
イオン交換水709部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7部を添加してCa3(PO4)2を含むpH=8.5の水系媒体を得た。
スチレン 78部
アクリル酸n−ブチル 22部
ジビニルベンゼン 0.5部
飽和ポリエステル樹脂 2部
(エチレンオキサイド付加ビスフェノールAとイソフタル酸の重縮合物、酸価:10、Mn=7千、Mw/Mn=1.8、Tg=61℃)
負帯電性荷電制御剤(保土谷化学工業社製、商品名:T−77) 1部
磁性酸化鉄粉体1 88部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにステアリン酸ステアリルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値60℃)7部を添加混合溶解し、これに重合開始剤ターシャリーブチルパーオキサイド3部を溶解した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、70℃で5時間反応させた。その後液温を80℃に維持し更に4時間攪拌を続けた。反応終了後、80℃で更に2時間蒸留を行い、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤であるCa3(PO4)2を溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径8.1μmの黒色粒子を得た。
この黒色粒子100部と、一次粒径12nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした。その後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.2部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用い混合し、磁性現像剤−2(T−2)を調製した。該磁性現像剤−2(T−2)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例3>
磁性現像剤の製造例2において、黒色粒子への外添処方を、疎水性シリカ微粉体を1.2部と、BET比表面積が10m2/gの疎水性酸化チタン微粉末を1.5部とする以外は、磁性現像剤の製造例2と同様にして磁性現像剤−3を得た。該磁性現像剤−3(T−3)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例4>
磁性酸化鉄粉体1を磁性酸化鉄粉体2に変えた以外は、磁性現像剤の製造例2と同様にして磁性現像剤−4を得た。該磁性現像剤−4(T−4)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例5>
磁性現像剤の製造例1において、粗粉砕物Aの微粉砕条件を変更し、得られた微粉砕物の分級を行った。該分級品サンプル100部に対して、乳化粒子(スチレン−メタクリル酸、Mn=6,000、Mw=30,000、粒径0.05μm)30部を乾式混合した。その後、奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムにて、処理温度:55℃、回転式処理ブレード周速:100m/secの条件下にて乳化粒子の固着・被膜形成を行うことにより、被膜トナー粒子を得た。該被膜トナー粒子100部に磁性現像剤の製造例1で使用した疎水性シリカ微粉体2.0部を加えて外添処理を行い、磁性現像剤−4を得た。該磁性現像剤−5(T−5)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例6>
磁性現像剤の製造例1にて微粉砕条件を変更する以外は、磁性現像剤の製造例1と同様の工程により重量平均粒径4.5μmの黒色粒子を得た。該黒色粒子100部に磁性現像剤の製造例1で使用した疎水性シリカ微粉体1.8部を加えて外添処理を行い、磁性現像剤−6を得た。該磁性現像剤−6(T−6)の物性を表2に示す。
<磁性現像剤の製造例7>
磁性現像剤の製造例1にて、熱風による気相中での表面処理を実施しなかった以外は磁性現像剤の製造例1と同様にして磁性現像剤−7を得た。該磁性現像剤−7(T−7)の物性を表2に示す。
[実施例1]
作製した現像剤担持体(現像スリーブ)S−1にマグネットローラーを装着してフランジを嵌合した。次いで図6に示したような構成の現像装置(弾性規制ブレード使用)を有するHewlett−Packard社製Laser Jet4200(商品名)に現像剤担持体として装着した。上記磁性現像剤−1(T−1)を用いて1枚/7秒の間欠モードで1.2万枚の耐久テストを行った。
画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)及び高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)において実施した。更に高温高湿度環境の評価に関しては、1.2万枚評価後に3日間放置させたのち(1.2万枚朝一)に再度画像評価を実施した。なお、ランニング時のプリントは、印字比率が1%の横線とし、初期評価は10枚目の時に耐久評価テストを中断し、耐久評価は耐久テスト終了後に、それぞれ必要な評価を実施した。画像評価の結果は表3に挙げたように、いずれの環境下においても終始良好な現像性を得ることができた。
評価方法及び評価基準は以下の通りである。
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の5mmφ丸部のコピー画像濃度を、反射濃度計RD918(マクベス製)により反射濃度測定を行い、10点の平均値をとって画像濃度とした。
(2)カブリ
適正画像におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、(ベタ白画像の反射率の最悪値−未使用転写紙の反射率の平均値)をカブリ濃度とし、評価結果を下記の指標にて示した。(但し、反射率の測定はランダムに10点の測定を行った。)反射率はTC−6DS(東京電色製)によって測定を行った。
A:1.0%以下(目視ではカブリは認められない)
B:1.0%以上2.0%未満(注視しなければカブリは認められない)
C:2.0%以上3.0%未満(カブリはあるものの実用上問題なし)
D:3.0%以上(カブリが目立ちNGレベル)
(3)飛び散り
飛び散りの評価は、グラフィカルな画像の画質に関わる微細な細線での飛び散り評価とした。文字ラインにおける飛び散りよりも、より飛び散り易い1ドットライン画像をプリントアウトした際のラインの再現性とライン周辺部のトナーの飛び散りを、ルーペを用いて30倍に拡大して評価した。
A:飛び散りがほとんど発生せず、良好なライン再現性を示す。
B:軽微な飛び散りが見られる。
C:飛び散りが見られるがライン再現性に対する影響少ない。
D:顕著な飛び散りが見られ、ライン再現性に劣る。NGレベル。
(4)スリーブゴースト
幅x×長さlの帯状ベタ黒部(図10(a))を画像出しした後、幅y(但し、>x)×長さlのハーフトーン(図10(b))を画像出しする。このハーフトーン画像出し画像の画像濃度を図10(c)の領域ア、領域イ及び領域ウでそれぞれ画像濃度を測定し、現れた濃度差(濃淡の程度)を、下記基準にてスリーブゴーストを評価した。領域アは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さz以降の部分である。領域イは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででベタ黒画像の画像出しをした部分と重なる部分である。領域ウは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででハーフトーンのみを画像出しした部分である。
A:濃度差が全く見られない(濃度差が0.02未満)。
B:領域イと領域ウで軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)。
C:領域ア、領域イ、領域ウ各々で若干の濃度差が見られる(濃度差が0.04以上0.07未満)。
D:顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.07以上)。NGレベル。
(5)現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)及びトナー担持量(M/S)
現像剤担持体上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナー質量M及びトナーを吸引した面積Sを測定した。これらの値から、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)及び単位面積当たりのトナー質量M/S(dg/m2)を算出した。
[実施例2〜9及び比較例1〜10]
それぞれ現像剤担持体S−1〜S−13及び磁性現像剤T−1〜T−7を用い、実施例1と同様の評価方法にて、画像評価を行った。結果は表3に挙げた。