レーザービームプリンタ等は、長期使用しているとカートリッジ内の現像装置がトナーの材料によって汚染されてしまう。現像装置はトナーの帯電に直接関わる部材も多く、それらが汚染されるとトナーの適切な規制や帯電が妨げられる可能性がある。特にトナー担持体上のトナーの帯電が不安定になるブロッチや、トナー担持体上へのトナー供給不安定によるフェーディングなどが発生しやすくなる弊害があり、現像性も低下する場合があった。
本発明者らがこれらの問題点に対して検討を行った結果、シリカ微粒子中のシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率が30質量%以上(好ましくは60質量%以上)であり、現像装置の有するシート部材に対するトナーの帯電量の絶対値が12.0mC/kg以下(好ましくは6.0mC/kg以下)であると、本発明の目的であるブロッチやフェーディングを抑制できることを見出した。
本発明に用いられるシート部材は、トナー担持体の下部側でその長手方向に沿って接している。トナー担持体上のトナーは、シート部材と接触することで、帯電性を持つ可能性がある。シート部材がトナーに対して過剰な帯電を与えると、ブロッチやフェーディングなどの弊害を引き起こす可能性がある。そのため、シート部材に対して、トナーの帯電を抑えることが求められる。シート部材の材質に関しては後ほど詳述する。
シート部材に対するトナーの帯電量の絶対値が12.0mC/kg以下であると、トナー担持体上のトナーも過剰な帯電を持たないために、トナーが静電的にシート部材上に飛翔することが少なくなる。そのため長期の使用においてもシート部材上へのトナーの蓄積を抑えることができるため、トナー担持体上へのトナーのコートにも影響を与えることがなく、均一なコートを維持することができる。
さらにシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率が30質量%以上であると、遊離するシリコーンオイル量が少なくなるために、シート部材やトナー担持体上がシリコーンオイルで汚染されにくく、トナー担持体上のトナーの帯電を均一に維持することができる。
その結果、トナー担持体上のトナーの安定したコートと帯電を両立することが可能となり、フェーディングやブロッチを抑えることができると考えられる。
シート部材に対するトナーの帯電量の絶対値が12.0mC/kgより大きいと、トナーが静電的にシート部材上に飛翔しやすくなり、シート部材とトナー担持体との接触部に堆積しやすくなる。その結果、トナー担持体上のトナーのコートが不安定になりやすい。さらにシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率が30質量%未満であると、シート部材上に堆積したトナーに含まれるシリコーンオイルが遊離して、シート部材上に移行しやすくなる。長時間に及んでトナー担持体が回転していると、トナー担持体上のトナー由来の遊離シリコーンオイルの汚染だけでなく、シート部材上の遊離シリコーンオイルによってもトナー担持体が汚染されてしまい、トナー担持体上のトナーの帯電が不均一になりやすい。つまりトナー担持体上のトナーのコートが不安定で、さらに帯電が不均一になってしまうために、フェーディングやブロッチが発生しやすくなる。
本発明に用いられるトナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、波長780nmの光の透過率が50%の時のメタノール濃度が、60体積%以上(好ましくは65体積%以上)であることが好ましい。
60体積%以上の場合、トナーの疎水性が高いので、高温高湿下での長期の使用においても吸湿による流動性の低下が起こりにくく、安定した摩擦帯電性を維持することができ、十分な現像性が得られやすい。また、トナー担持体上へトナーが安定して供給されるので、フェーディングに対してはさらに効果がある。
メタノール濃度が60体積%未満の場合、トナーは疎水性が不十分であるので、高温高湿下では流動性が低下しやすい。そのため摩擦帯電性が弱くなり、長時間の画出しにおいては現像性が低下しやすくなる。
本発明に用いられるトナーは、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置によって計測された円形度を、0.200乃至1.000の円形度範囲に800分割し解析された前記トナーの平均円形度が0.945以上1.000以下(好ましくは0.960以上1.000以下)であることが好ましい。
平均円形度が0.945以上1.000以下であると、トナーの帯電分布がシャープになり、帯電不良を起こすトナーが減少するため、かぶりが良好になる。さらに帯電分布がシャープであれば、ブロッチに対してもさらに効果がある。
平均円形度が0.945未満の場合、トナーの帯電分布がブロードになりやすく、帯電不良を起こすトナーが増えて、かぶりが悪くなる場合がある。
本発明に用いられる画像形成装置の一例について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る現像装置を有するプロセスカートリッジを備えた画像形成装置(本実施の形態では、電子写真方式のレーザビームプリンタ)Aを示す概略構成図の一例である。
この画像形成装置(レーザビームプリンタ)Aは、電子写真画像形成プロセスによって像担持体7上に形成されたトナー像を記録媒体(用紙やOHPシートなど)2に転写して画像形成を行う。また、この画像形成装置(レーザビームプリンタ)Aは、その内部に図2に示すようなプロセスカートリッジBが着脱自在に装着されている。
プロセスカートリッジBは、トナーを収納したトナー枠体11と、現像装置9を保持する現像枠体16と、像担持体7、帯電ローラ8及びクリーニング器10を有するクリーニング枠体13とが結合されて構成されている。
静電潜像形成時には、帯電手段としての帯電ローラ8によって回転している像担持体7に帯電を行う。次いで、この像担持体7に露光装置1から画像情報に応じたレーザ光を、プロセスカートリッジBの上部に形成した開口部(不図示)を通して照射して静電潜像を形成する。露光装置1は、レーザダイオード1a、ポリゴンミラー1b、レンズ1c、反射ミラー1dなどを有している。そして、この静電潜像を現像装置9のトナーによって現像してトナー像を形成する。
図1に示すように、現像装置9は、プロセスカートリッジBに設けたトナー枠体11内のトナーを、トナー送り部材11aの回転によって現像容器9d側へ送り出す。そして、現像容器9dに回転自在に支持されたトナー担持体9aを回転させるとともに、トナーの量を規制するための規制部材9cによって摩擦帯電電荷を付与したトナー層をトナー担持体9aの表面に形成し、そのトナーを像担持体7の現像領域へ供給する。そして、そのトナーを前記静電潜像に応じて像担持体7へ転移させることによって、トナー像を形成して可視像化する。
トナー像の形成と同期して、複数の給紙カセット3aにセットした所定サイズの用紙等の記録媒体2を、ピックアップローラ3b、搬送ローラ対3c、3d及びレジストローラ対3eにより、像担持体7と転写手段としての転写ローラ4間の転写ニップ部に搬送する。そして像担持体7に形成されたトナー像を、転写バイアスが印加された転写ローラ4によって記録媒体2上に転写する。その後、トナー像の転写を受けた記録媒体2は、搬送ガイド3fでガイドされて定着装置5へと搬送される。定着装置5は、駆動ローラ5cと、ヒータ5aを内蔵する定着ローラ5bを有している。トナー像が転写された記録媒体2を駆動ローラ5cと定着ローラ5b間の定着ニップ部で挟持搬送して、通過する記録媒体2に熱及び圧力を印加して、転写されたトナー像を定着する。
そして、トナー像が定着された記録媒体2を、排出ローラ対3g、3h、3iで搬送して排出トレイ6へと排出する。この排出トレイ6は、画像形成装置本体14の上面に設けられている。なお、揺動可能なフラッパ3kを動作させることにより、排出ローラ対3mによってトナー像が定着された記録媒体2を画像形成装置本体14の側面から排出することもできる。また、前記転写後に像担持体7上に残留している転写残トナーは、クリーニング器10のクリーニングブレード10aによって除去されて次の画像形成動作に備える。
図3は現像枠体16を示したものである。現像枠体16には規制部材9c取り付けられている。現像枠体16の開口部の下面側には、開口部の長手方向に沿って一端が固定されており、他端がトナー担持体9aの下部側にその長手方向に沿って接するように設けられた薄片状の弾性を有するシート部材9eが貼り付けてある。
図4にトナー担持体とシート部材の位置関係を断面図で示す。シート部材9eは両面テープで現像枠体16の開口部の下面側に貼り付けられる。シート部材9eの長さは、長手方向は少なくともトナー担持体9aにトナーがコートされる領域よりも長く設定する。短手方向はシート部材9eの先端がトナー担持体9aと接触した際に、ニップ部分より先端側に少なくとも自由端を持つような長さとなっている。また、シート部材は現像枠体とトナー担持体との隙間からトナーが外部に漏れるのを防止する役目も担っている。
本発明に用いられるシート部材の材質は特に限定されないが、好ましくはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドが用いられる。また、2種類以上の材質を混合して用いても良い。特に好ましくはポリフェニレンスルフィドを50質量%以上(好ましくは75質量%以上)含有することがブロッチやフェーディングを抑えるのに好ましい。
シート部材の厚みは15μm以上100μm以下が好ましい。シート部材の厚みが15μm未満ではトナーが外部に漏れやすくなり、100μmより大きいとトナー担持体上のトナーのコートが規制されすぎて、現像性が低下しやすくなる。
本発明において使用されるトナーの構成を以下に詳述する。
本発明に使用される結着樹脂の種類としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂又は石油系樹脂が挙げられる。
本発明のトナーに用いられるポリエステル樹脂の組成の例を以下に示す。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
式(B)で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、又は低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸もしくはアルキルコハク酸、又はその無水物、又は低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物、又は低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また、架橋成分として働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。
また、本発明における3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−シカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5以上30以下のアルキレン基又はアルケニレン基である。)
で表わされるテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、又は低級アルキルエステルの如き多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
アルコール成分としては40mol%以上60mol%以下、酸成分としては60mol%以上40mol%以下であることが好ましい。
また3価以上の多価の成分は、全成分中の5mol%以上60mol%以下であることが好ましい。該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
本発明に用いられるビニル系樹脂としては、例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチレンスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンなどの不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体;α,β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸等のアクリル酸及びそのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物等のビニル系モノマーを用いた重合体が挙げられる。上記ビニル系樹脂では、前述したようなビニル系モノマーが単独又は二つ以上で用いられる。これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドの1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの重合開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05質量部以上2質量部以下で用いるのが好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001質量部以上1質量部以下の範囲で用いることが好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を架橋構造として含有することがより好ましい。本発明におけるエポキシ基とは、酸素原子が同一分子内の異なる炭素原子と結合し、環状エーテル構造を形成している官能基である。
本発明において用いることのできるエポキシ基を有する単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合とは、例えば、エポキシ基としてグリシジル基を有する化合物を用いる場合には、
((a)において、R
1及びR
2は、水素原子、又は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基及びアルコシキカルボニル基を含有するグループより選ばれる官能基を示す。)
となり、架橋構造を形成するものである。
本発明では、カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を架橋構造として有するビニル樹脂を得る手段としては、(1)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂を溶液状態で混合し、反応釜内で熱を加えることにより架橋反応を起こさせる、また、(2)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂をそれぞれ反応釜から取り出し、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドを行い、2軸押し出し機等で熱溶融混練することにより、カルボキシル基とエポキシ基の反応を起こし、架橋させても良い。カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂を用いる場合も同様に、2軸押し出し機等で熱溶融混練することにより、カルボキシル基とエポキシ基とを反応させることができる。
エポキシ基を有するビニル樹脂は、カルボキシル基1当量に対して、エポキシ基を0.03当量以上1当量以下の範囲で用いることが好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂を製造する方法として、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、押出機等により溶融混練するドライブレンド法が挙げられる。あるいは溶液重合法等により得られた低分子量重合体を溶解した高分子量重合体を構成するモノマーに溶解し、懸濁重合を行い、洗浄・乾燥し、樹脂組成物を得る二段階重合法等が挙げられる。但し、ドライブレンド法では、均一な分散・相溶の点で改善すべき点がある。二段階重合法だと均一な分散性等に利点が多いが、低分子量分を高分子量分以上に増量することができ、分子量の大きい高分子量重合体の合成ができ、不必要な低分子量重合体が副生成するという問題が少ないことから、溶液ブレンド法が最も好適である。また、低分子量重合体成分に所定の酸価を導入する場合には、水系媒体を使用する重合法に比べて酸価の設定が容易である溶液重合が好ましい。
本発明のトナーはワックスを含有する必要がある。トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましく用いられるが、必要に応じて一種又は二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
また、該ワックスの示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、70℃以上140℃以下であることが好ましい。
ワックスの量は、結着樹脂100質量部あたり0.1質量部以上20.0質量部以下が好ましい。
また、これらのワックスは、樹脂製造時、樹脂を溶剤に溶解し、樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、トナー製造中の溶融混練時に添加する方法などにより結着樹脂に含有させることができる。
本発明のトナーは更に磁性体(例えば磁性酸化鉄)を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性体としては、以下のものが挙げられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属或はこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属の合金及びその混合物。
これらの磁性体は個数平均粒子径が2.0μm以下のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し20質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
非磁性の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。非磁性の着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。トナーを負荷電性に制御する荷電制御剤としては下記化合物が挙げられる。
有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類などがある。
その中でも、下記一般式(1)で表わされるアゾ系金属錯体または下記一般式(2)に示した塩基性有機酸金属錯体が好ましい。
上記一般式(1)において、特に配位中心金属MとしてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
また、上記一般式(2)において、特に配位中心金属MとしてはFe,Cr,Si,Zn又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基又はハロゲンが好ましい。また、カウンターイオンは水素、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。
トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤として下記の化合物が挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また下記一般式(3)
[式中、R
1はH又はCH
3を示し、R
2及びR
3は置換又は未置換のアルキル基(好ましくはC
1乃至C
4)を示す。]
で表わされるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部又は一部)としての作用をも有する。
特に下記一般式(4)で表わされる化合物が本発明の正荷電制御剤として好ましい。
[式中、R
1〜R
6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表わし、R
7〜R
9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表わし、A
-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、リン酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオンまたはテトラフルオロボレートから選択される陰イオンを示す。]
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子の外部に外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、目安として下記の量であることが好ましい。つまり、荷電制御剤が、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
本発明のシリカ微粒子を得るのに用いられるシリカ原体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。本発明では表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5nm以上25nmであるのが好ましい。シリカ微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5nm未満の場合は、疎水化した際にシリカ微粒子同士の付着力が大きくなりすぎて凝集しやすくなる為、トナー粒子表面に均一に分散させることが難しくなる。シリカ微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が25nmより大きくなるとトナーの帯電性や流動性が低下してしまう場合がある。
本発明に用いられるシリカ微粒子は高度に疎水化処理されている必要があり、疎水化処理するには、シリカ原体と化学吸着あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。本発明の効果を得るには、少なくともシリコーンオイルによる処理が必要である。
シリカ原体は、シリコーンオイルでの処理と、アルコキシシランまたはシラザンの少なくとも一方での両方の処理を行ってもよい。シリカ微粒子のオイル固定化率や疎水化度を高めるためには、シリコーンオイルで処理した後、アルコキシシランまたはシラザンの少なくとも一方で処理するのが本発明の効果を得るのにはより好ましい。先にシリコーンオイルで処理すると、シリコーンオイルがシリカ原体表面と化学吸着、つまり化学的に結合できるため固定化率が高くなる。
本発明のシリカ微粒子を得るのに必要なシリコーンオイル処理の方法は、シリカ原体、またはアルコキシシランまたはシラザンの少なくとも一方で処理されたシリカ微粒子と、シリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良い。あるいはシリカ原体へシリコーンオイルを噴射する方法でも良いし、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ原体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが使用できるが、特にジメチルシリコーンオイルが好ましく、オイルの粘度は25℃において、300mm2/s以下が好ましい。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、シリカ原体100質量部に対して5.0質量部以上30.0質量部以下のシリコーンオイルによって処理されているのが好ましい。
シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率であるが、シリコーンオイルがシリカ原体表面に化学的に結合していると、炭素量基準の固定化率は高くなる。そのため添加するシリコーンオイル量が多くなるほど、シリカ原体表面と化学的に結合できないものも多くなるため、シリコーンオイルの処理量が30.0質量部より多くなると、遊離シリコーンオイルが増えて、本発明の効果が得られにくくなる。シリコーンオイルの処理量が5.0質量部未満だと、高温高湿下での疎水性が不十分となり、現像性が低下しやすい。
本発明のシリカ微粒子を得るのに必要なアルコキシシランまたはシラザンの少なくとも一方による処理は、シリカ原体、またはシリコーンオイルで処理されたシリカ微粒子を、撹拌によりクラウド状としたものに気化したアルコキシシランまたはシラザンを反応させる乾式処理または、シリカ原体を溶媒中に分散させ、アルコキシシランまたはシラザンを滴下反応させる湿式法の如き一般に知られた方法で処理することができる。
アルコキシシランまたはシラザンとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが使用できるが、特にイソブチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。これらアルコキシシランまたはシラザンの好ましい処理量は、シリカ原体100質量部に対して5.0質量部以上30.0質量部以下である。
本発明のトナー粒子には、必要に応じてシリカ微粒子以外の添加剤を外添してもよい。
例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤または研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子が挙げられる。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03μm以上1.00μm以下のものが好ましい。その樹脂微粒子を構成する重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミドの単量体。
上記重合性単量体から樹脂微粒子を製造するための重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、以下のものが挙げられる。ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
本発明のトナーは、公知の方法によって製造することができる。本発明のトナーを製造する方法としては、トナー粒子を構成する材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級後、外添剤を添加混合してトナーを得る方法が好ましい。
本発明のトナーを製造する際に使用される機器としては、特に限定されないが、例えば以下のものが挙げられる。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押出機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
粉砕機としては、例えばイノマイザ(ホソカワミクロン社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーロータ(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
分級機としては、例えばクラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えばウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
トナー粒子は表面改質されていると好ましい。本発明に用いられる表面改質装置について説明する。表面改質には、例えば瞬間的にトナー粒子表面に高温の熱風を吹き付け、直後に瞬間的に冷風によってトナー粒子を冷却することによってトナー粒子の表面改質を行う方法が挙げられる。このような手法によってトナー粒子の表面を改質することは、トナー粒子に過度の熱を加えることがないので原材料成分の変質を防ぎつつトナー粒子の表面改質を行うことができる。高温の熱風を吹き付けるとトナー粒子は瞬間的に溶融状態になる。溶融状態のトナー粒子には表面張力が働くために表面が平滑な状態になり、さらにその状態で瞬間的に冷却されるため、円形度が高く表面が平滑なトナー粒子を得ることができる。
トナー粒子の表面改質には例えば図5に示すような表面改質装置を用いることができる。トナー粒子31はオートフィーダー32で供給ノズル33を通じて、一定量で表面改質装置内部34に供給される。表面改質装置内部34はブロワー38で吸引されているので、供給ノズル33から導入されたトナー粒子31は機内に分散する。機内に分散にされたトナー粒子31は、熱風導入口35から導入される熱風で、瞬間的に熱が加えられて表面改質される。本発明ではヒーターにより熱風を発生させているが、トナー粒子の表面改質に十分な熱風を発生させられるものであれば装置は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子37は、冷風導入口36から導入される冷風で瞬時に冷却される。本発明では冷風には液体窒素を用いているが、表面改質されたトナー粒子37を瞬時に冷却することができれば、手段は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子7はブロワー39で吸引されて、サイクロン38で捕集される。
本発明におけるトナーは、上述したような粉砕法によって製造することも可能であるが、重合法により製造することも可能である。重合によるトナーの製造法としては、直接重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化会合重合法、シード重合法、伸長反応法等が挙げられる。これらの中では、粒径と粒子形状のバランスのとりやすさという点で、懸濁重合法により製造することが好ましい。この懸濁重合法においては、重合性単量体に着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とする。そしてこの単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し、そして重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。
重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシアセテート、tert−ヘキシルパーオキシラウレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(tert−ブチルパーオキシ)イソフタレート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、tert−アミルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシピバレート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシノルマルオクトエート、tert−アミルパーオキシアセテート、tert−アミルパーオキシイソノナノエート、tert−アミルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類等の有機過酸化物、また2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始を単独または併用して使用することが可能である。
重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は混合して使用し得る。
また、架橋剤を使用することも可能である。架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合ものとして用いられる。添加量としては、使用する開始剤、架橋剤の種類、反応条件で調整が必要であるが、おおむね、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が適当である。
本発明のトナーを重合法で製造する場合においては、重合性単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の重合性単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体等、共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等重付加重合体の形で使用が可能となる。
これらの樹脂の中でも特にポリエステル樹脂を含有することが、現像性と定着性のバランスの観点で好ましい。
本発明のトナーを重合法により製造する場合、一般に上述の着色剤、磁性体、ワックス等のトナー組成物等を重合性単量体に適宜加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機で均一に溶解または分散させ、重合性単量体組成物とする。これを、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤の添加時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒中または、造粒直後に加えることも出来る。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
本発明の重合トナーを製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることが出来、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことが出来る。
また、これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下を単独で使用することが望ましい。超微粒子を発生し難いもののトナーの微粒化はやや苦手であるので、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも、本発明の望ましい形態の一つである。
本発明のトナーに用いられる現像方法としては、トナーに対して磁性キャリアを混合したものを現像剤として用い、この現像剤を磁気力により搬送して現像する二成分現像も用いることができる。
二成分現像剤に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものがすべて使用可能である。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20μm以上300μm以下の粒子が好ましくは使用される。また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き樹脂を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
本発明に係る各種物性の測定について以下に説明する。
<シリコーンオイル固定化率の測定方法>
(遊離シリコーンオイルの抽出)
1.ビーカーにシリカ微粒子0.5g、クロロホルム40mlを入れ、2時間撹拌する。
2.撹拌を止めて、12時間静置する。
3.サンプルをろ過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
(炭素量測定)
酸素気流下で1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中の炭素量を測定する。シリコーンオイルの抽出前後でのカーボン量を比較して、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率を計算する。
1.試料2gを円筒金型に入れプレスする。
2.プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA−110で測定する。
3.100−(抽出前の炭素量−抽出後の炭素量)/抽出前の炭素量×100
をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
<シート部材に対するトナーの帯電量の測定方法>
図6に示すような内側が横5cm、縦1cm、深さ1cmの容器21を用意する。容器21はガラス製であると好ましい。実際のカートリッジに用いられるシート部材と全く同じ組成のもので、横5cm×縦1cm、厚み40μmの帯電量測定用シート部材22を用意して、容器21の底に敷く。続いて帯電量測定用シート部材22の上に0.5gのトナー(不図示)を均一に載せる。次に1cm×1cmの底面をもつ荷重4.9kPaのおもり23の底面に、帯電量測定用シート部材22と同じ組成、厚みで、1cm×1cmのシート部材24を貼付ける。常温常湿下(25℃/50%RH)において、帯電量測定用シート部材22上に載せられたトナーを、このおもり23のシート部材面24で20往復擦る。
その後、シート部材上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量と、捕集されたトナーの質量から摩擦帯電量を求める。
摩擦帯電量は下記式を用いて算出する。
帯電量(mC/kg)=Q/W
(上記式中、Wは吸引されたトナーの質量であり、Qはコンデンサーに蓄えられた電荷量である)。
<メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性の測定方法>
トナーの濡れ性、即ち疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば、(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pを用い、下記の条件及び手順で測定したメタノール滴下透過率曲線を利用する。まず、メタノール50体積%と水50体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、この中に検体であるトナーを0.5g精秤して添加し、トナーの疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。次に、この測定用サンプル液中に、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、図7に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作成する。図7のメタノール滴下透過率曲線は実施例で用いたトナー1の結果である。
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<微粉量の算出方法>
トナー中の個数基準の微粉量(個数%)は、前記のMultisizer 3の測定を行なった後、データを解析することにより算出する。
例えば、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%は、以下の手順で算出する。まず、前記専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「<」にチェックし、その下の粒径入力部に「4」を入力する。「分析/個数統計値(算術平均)」画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。