本発明においては、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子と、無機微粒子を含有するトナーにおいて、
該トナー粒子の重量平均粒子径(D4)が3.0μm以上8.0μm以下であり、
画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.19μm×0.19μm)のフロー式粒子像測定装置における、該トナー粒子の、
1)円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度が0.940以上0.970以下であり、
2)円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、1.0%以上12.0%以下であり、
3)円相当径0.25μm以上1.98μm未満における平均円形度と、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度との差が、0.020以下であることが重要である。
すなわち、本発明のトナー粒子は、重量平均粒子径(D4)が3.0〜8.0μmであることが重要であり、より好ましくは、3.5〜8.0μm、さらに好ましくは、4.0〜7.5μmである。
トナー粒子の重量平均粒子径(D4)が3.0μm未満である場合には、かぶり、飛び散りを悪化させることがあるだけでなく、トナーのハンドリング性が悪くなりやすい。一方、8.0μmより大きい場合には、トナー粒子自体の大きさにより、細線再現性などを課題とする高画質化の面で問題があり好ましくないだけでなく、トナーの消費量が増加する傾向があるため、装置の小型化という面で不利になってしまう。
重量平均粒子径(D4)は、粒径測定機であるコールターマルチサイザーII(コールター社製、商品名)等を用い測定することができる。例えば、コールターマルチサイザーIIに個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びパーソナルコンピューターを接続して測定することができる。
被検試料の調製に使用する電解液としては、試薬1級塩化ナトリウムを水に溶解した1%NaCl水溶液を用いることができる。その他、前記電解液としては、例えば、ISOTONR−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製、商品名)を使用することができる。
被検試料は、前記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更にトナーを2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い調製することができる。前記コールターマルチサイザーによる重量平均粒子径(D4)の測定においては、アパーチャーとして、100μmアパーチャーを用いることができる。
本発明における重量平均粒子径(D4)は、2μm以上の粒子径を有するトナーの粒子群について、個々の粒子の体積、個数を測定し、体積分布と個数分布を算出し、体積分布から求めた重量基準(各チャンネルの代表値をチャンネル毎の代表値とする)の重量平均粒子径(D4)として求めることができる。
なおトナーの重量平均粒子径(D4)は、例えばトナーの粉砕・分級や、適当な粒径の分級品の混合によって調整することができる。
また、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.19μm×0.19μm)のフロー式粒子像測定装置において、測定される平均円形度、および円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子(以下、「超微粉」とする)の数の割合が、上記の特定範囲にあることが重要である。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.19×0.19μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
C=2×√(π×S)/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。
各粒子の円形度を算出後、円形度0.2〜1.0の範囲を800分割し、測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。
円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度が0.940以上0.970以下(より好ましくは、0.941以上0.968以下、さらに好ましくは0.942以上0.965以下)であり、
円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、1.0%以上12.0%以下(より好ましくは、1.2%以上11.0%以下、さらに好ましくは1.4%以上10.0%以下)であることが重要である。
円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度が0.940以上0.970以下であることにより、スリーブ上のトナーの帯電量分布が均一になりやすく、トナーコート量も安定しやすい。
平均円形度が0.940未満であると、トナー粒子同士、またはトナーとキャリア間の接触面積が大きくなることにより、転写効率が低下しやすい。また、帯電量分布がブロードになりやすく、現像性が低下しやすかったり、トナー消費量が増加してしまいやすい。
一方、平均円形度が0.970より大きくなる場合には、トナー粒子の形状が球形に近づくことにより、トナー同士もしくはトナーと帯電付与部材との摩擦帯電がされにくく、かぶりや飛び散りなどが発生しやすく、不鮮明な画像が得られる原因となりやすい。
また、円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、1.0%以上12.0%以下であることが重要である。円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、1.0%未満となるように調整するためには、トナー製造において、分級工程を繰り返すか、超微粉をトナー表面に打ち込む方法においては、打ち込みを強化するなどの手段をとる必要があり、トナーの生産性が著しく低下するため、現実的ではない。
一方、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、12.0%より多くなる場合には、使用環境、もしくは耐久現像条件によっては、かぶりが悪化しやすかったり、超微粉がスリーブ下層に蓄積しやすく、帯電量分布の拡大の要因となりやすく、ブロッチや転写効率の低下、さらには消費量の増加につながりやすい。さらに、帯電部材に超微粉が蓄積して付着しやすく、帯電不良による画像弊害が出やすかったり、チャージアップによる画像スジが発生しやすい。
さらに、円相当径0.25μm以上1.98μm未満における平均円形度と、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度との差が、0.020以下(より好ましくは0.015以下、さらに好ましくは、0.012以下)であることが重要である。これにより、おそらく、帯電量分布の拡大を抑制させやすく、ブロッチやかぶり悪化を抑制させやすい。さらには、おそらく、粒子径によらず、トナー粒子間で転写能が等しくなるため、転写効率が高くなると同時に、選択現像が抑制されやすく、トナー消費量を低減させやすい。
一方で、円相当径0.25μm以上1.98μm未満における平均円形度と、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度との差が、0.020より大きい場合には、帯電量分布が拡大しやすく、上述のような問題を引き起こしやすい。
また、より好ましくは、円相当径0.25μm以上1.98μm未満における円形度の変動係数(CV値)が9.0以下(より好ましくは、8.5以下、さらに好ましくは、8.0以下)である。変動係数は、標準偏差を平均円形度で割った値であるが、標準偏差は平均円形度の大きさに依存してしまうため、変動係数の値を制御する方が、より厳密に円形度分布を制御することが可能である。
円相当径0.25μm以上1.98μm未満における平均円形度と、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度との差が小さいだけでなく、超微粉の円形度の変動係数が9.0以下であることが、特に転写効率の向上と、選択現像の抑制による消費量低減を達成しやすい。
上述した物性、すなわち、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度、円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子の個数比率及び変動係数、また、円相当径0.25μm以上1.98μm未満における平均円形度と、円相当径1.98μm以上30.0μm未満における平均円形度との差については、後述するような表面改質工程において制御することが可能である。
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を使用することができ、このような樹脂として、例えば、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル系樹脂とビニル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましく、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂を含有することが、定着性の観点で好ましい。結着樹脂として、これらの樹脂を単独で、又は2種類以上を組合せて用いることができる。
また、おそらく、粒度が異なるトナー粒子は、粉砕・分級や表面改質に関わるトナー製造装置内での挙動が異なると推測される。その際、異なる粒度領域のトナー粒子において、より均一な円形度、改質度合いに制御するためには、理由は定かではないが、おそらく結着樹脂が適度な可とう性・機械的強度を備えることにより、容易に達成しうることを本発明者らは見出した。
すなわち、本発明においては、良好な定着性を確保するためだけでなく、上記の理由により、可とう性・機械的強度に優れたポリエステル系樹脂成分を少なくとも50質量%以上含有することがより好ましい。ポリエステル系樹脂成分の含有量が50質量%未満であると、充分な定着性が得られず、異なる粒度領域での円形度、改質度合いを均一に制御しにくくなる。
さらに、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂とビニル系樹脂を混合して用いることが好ましく、さらに両者が一部反応したハイブリッド樹脂成分を含有することが、帯電性や定着性と保存安定性の両立、さらに結着樹脂に適度な可とう性・機械的強度を備えさせるという点で特に好ましい。
本発明におけるポリエステル系樹脂成分の含有量とは、ポリエステル樹脂として存在するもの、ハイブリッド樹脂等の中に存在するポリエステル系樹脂成分を合わせたものである。
また、本発明のトナーは、結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分(ゲル成分)を3〜50質量%(好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%)含有することが好ましく、さらにこのようなゲル成分中にポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分の反応生成物であるハイブリッド樹脂を含有することが好ましい。テトラヒドロフラン不溶分が3質量%未満であると、高温オフセットを満足させることが出来ない。テトラヒドロフラン不溶分が50質量%より多いと、着色剤などの材料をトナー中に均一に分散させることが難しくなり、トナーの帯電性が悪化し、カブリや画像濃度の低下が起こるだけでなく、表面改質度が不均一になりやすく、本発明の目的を達成しにくい。
ハイブリッド樹脂は同一分子内にポリエステル樹脂の組成とビニル系樹脂の組成の両方を持つ為に、ポリエステル成分に混ざり易い原材料(例えば親水性の高い磁性体などの着色剤)とビニル系樹脂に混ざり易い原材料(例えば極性の低いワックス成分など)の分散性を同時に向上させる働きをもっている。
特に、テトラヒドロフラン不溶分(ゲル成分)中にハイブリッド樹脂を含有させることにより、トナー中でワックスがゲル成分の近傍に存在しやすくなる為、定着時にワックス成分が溶融することでゲル成分を軟化させやすくなり、トナーのシャープメルト性が高くなり、定着性が大幅に向上する。さらに、ゲル成分中にハイブリッド樹脂を含有させることで、本来ゲル成分中には入り込みにくい磁性体などの着色剤をゲル成分中に取り込みやすくするため、材料の均一分散性が向上してトナーの帯電性が安定し、現像性や画質が向上する。また、ゲル成分が軟化することにより、おそらくトナー粒子表面の過度な硬さを有する部分が減少するため、異なる粒度領域での円形度、改質度合いを均一化させやすくなり、本発明の目的を達成しやすくなる。
また、テトラヒドロフラン不溶分中含まれるポリエステル系樹脂成分を加水分解し、残留物として得られるビニル系樹脂成分のTHF可溶分が、分子量5万〜50万(好ましくは5万〜30万、より好ましくは5万〜20万)の範囲にメインピークを有すると、分子量の大きいビニル系樹脂成分にポリエステル系樹脂成分がハイブリッド化されることで、分子量が大きく、架橋点間分子量の大きいゲル構造を得ることが可能になる。
このようなテトラヒドロフラン不溶分を含有するトナーは、定着時に少ない熱量でもゲル成分であるテトラヒドロフラン不溶分が分子運動をしやすくなり、架橋点間分子量が小さいゲル成分を含有する場合と比較して結着樹脂が熱で軟化しやすくなるため、定着性が向上する。さらに、このようなゲル成分は、高温でも高い粘度を維持することが可能になり、耐高温オフセット性を改良することができる。また、少量のゲル成分でも耐高温オフセット性を維持できる為に、低分子量成分を多く含有させることが出来、更に定着性を改良することも可能となる。また、上記と同様の理由で、異なる粒度領域での円形度、改質度合いを均一化させやすくなる。
テトラヒドロフラン不溶分中に含まれるポリエステル系樹脂成分を加水分解し、残留物として得られるビニル系樹脂成分のTHF可溶分のメインピーク分子量が5万未満であると、ゲル成分が硬くなりやすく、定着性が悪化する。また、架橋点間分子量が小さくなるので、ゲル成分に柔軟性がなくなり、トナー化の混練時の剪断力でゲル成分が切れやすくなり、耐高温オフセット性が悪化する。メインピーク分子量が50万より大きいと、ゲル成分をトナー中に均一に分散させることが難しくなり、現像性が悪化する。
テトラヒドロフラン不溶分中に含まれるポリエステル系樹脂成分を加水分解し、残留物として得られるビニル系樹脂成分のTHF可溶分の分子量分布は、以下のような手順で測定できる。
まず、トナーから結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を取り出し、このテトラヒドロフラン不溶分をアルカリ性水溶液中で加熱し、ポリエステル系樹脂成分を加水分解して取り除く。ビニル系樹脂成分は加水分解されずに樹脂成分として残留するため、残留物を抽出してGPCにより分子量分布を測定する。具体的な測定法を以下に示す。
(1)テトラヒドロフラン不溶分の分離
トナーを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×10mm 東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、テトラヒドロフラン可溶分を16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約4〜5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、円筒ろ紙上のトナーのテトラヒドロフラン不溶分を採取する。
トナーが磁性体を含有する磁性トナーの場合、この採取したテトラヒドロフラン不溶分をビーカーに入れ、テトラヒドロフランを加えてに充分に分散させた後、ビーカー底部に磁石を近づけて磁性体をビーカー底部に沈殿、固定させる。この状態でテトラヒドロフランとテトラヒドロフランに分散されたゲル成分を別の容器に移し替えることで磁性体を取り除き、テトラヒドロフランをエバポレートすることで、結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を分離する。
(2)加水分解によるビニル系樹脂成分の分離
得られた結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を2molのNaOH水溶液に1質量%の濃度で分散させ、耐圧容器、150℃、24時間の条件でポリエステル系樹脂成分を加水分解する。この加水分解液から以下の手順でビニル系樹脂成分を分離する。
i)加水分解液をメンブランフィルターを用いて吸引ろ過して残留物であるビニル系樹脂成分を分離した。これにより、ポリエステル系樹脂成分の分解物であるモノマー成分をろ液中に除去する。
ii)残留物であるビニル系樹脂成分は、ビニル系樹脂成分に含まれるアクリル酸エステル成分が加水分解することでナトリウム塩となっている為、残留物を水中に分散塩酸を加えてpH=2に調整し、ビニル系樹脂成分に含まれるアクリル酸エステル成分が加水分解することにより生じたCOO−基をプロトン化した後、メンブランフィルターでろ過分離した。
(3)ビニル系樹脂成分のGPC測定
加水分解により分離したテトラヒドロフラン不溶分中に含まれるビニル系樹脂成分をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量分布の測定を実施する。
また、本発明のトナーは、トナーのTHF可溶分のGPC分子量分布において、分子量2千〜3万(好ましくは3千〜2万、より好ましくは5千〜1万)の範囲にメインピークを有し、分子量4万〜100万の範囲の成分を3〜30面積%(好ましくは5〜25面積%、より好ましくは5〜20面積%)含有することが好ましい。トナーのTHF可溶分の分子量分布において、低分子量域にメインピークを有し、高分子量域の成分を一定量含有し、さらには前述したようなゲル成分を持たせることで、高いレベルの定着性と耐高温オフセット性を維持しながら、長期の使用にわたり安定した現像性(高耐久性)を与えることが可能になる。
本発明の特徴である、架橋点間分子量の大きいハイブリッド樹脂成分は、2千〜3万にピーク分子量を持つような低分子量成分を架橋構造内に取り込みやすいため、ゲル成分が熱による溶融をしやすくなり、定着性が向上する。また、分子量4万〜100万の範囲の高分子量成分が、低分子量成分とゲル成分の混合性を高める為、耐高温オフセット性を向上させる。また、ゲル成分がトナー中に均一に混合されることでトナー製造時の粉砕性が向上し、粉砕時に発生する超微粉や粗大粉が大幅に少なくなる。その結果、トナーの帯電を阻害する因子が減少し、優れた現像耐久性を持たせることが可能になる。
メインピークが分子量2千未満であると、トナーの保存性や現像性が悪化しやすく、3万より大きいと、定着性が悪化しやすい。
分子量4万〜100万の範囲の成分が3面積%未満であると、ゲル成分の均一混合性が低下しやすく、粉砕時に超微粉や粗大粉が発生しやすくなり、現像耐久性が悪化しやすい。分子量4万〜100万の範囲の成分が30面積%より多いと、トナー粘度が高くなりすぎて定着性が悪化しやすい。
本発明で用いられる結着樹脂は、ハイブリッド樹脂単独で用いることも可能であるが、少なくともハイブリッド樹脂を含有していれば、他の樹脂成分を含有する混合物であっても良い。
例えば、ハイブリッド樹脂とビニル系樹脂との混合物、又はハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、又はポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系樹脂の混合物などが挙げられる。
ハイブリッド樹脂は、ポリエステル成分と(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合したビニル系重合体成分とがエステル交換反応によって形成されるもの、ポリエステル成分と(メタ)アクリル酸の如きカルボン酸基を有するモノマー成分を重合したビニル系重合体成分とがエステル化反応によって形成されるもの、あるいはフマル酸のような不飽和基を持つモノマーを用いて重合された不飽和ポリエステル樹脂成分の存在下でビニル系モノマーを重合して形成されるものなどがある。
ハイブリッド樹脂は、ビニル系樹脂成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含有させ、それらを反応させることによって得ることができるポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうち、ビニル系樹脂成分と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系樹脂成分とポリエステル樹脂成分を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を得ることが出来る。
(2)ビニル系樹脂成分製造後に、この存在下にポリエステル樹脂成分を反応させ、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はビニル系樹脂成分(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステル樹脂成分との反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル樹脂成分製造後に、この存在下にビニル系樹脂成分を生成し、反応させポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はポリエステル樹脂成分(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系樹脂成分との反応により製造される。
(4)ビニル系樹脂成分及びポリエステル樹脂成分製造後に、これらの重合体成分存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系樹脂成分、ポリエステル樹脂成分及びポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系樹脂成分及び/またはポリエステル樹脂成分は複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体成分を使用することができる。
本発明で特に好ましく用いられる製造方法としては(3)が挙げられ、なかでも、ビニル系モノマーと反応可能な不飽和ポリエステル樹脂をビニル系モノマーに溶解し、このポリエステル樹脂とビニル系モノマーの混合物を塊状重合法により重合して得られたものが好ましい。
塊状重合は、ビニル系樹脂成分の分子量を大きくすることが出来るため、ゲル成分中に含まれるビニル系樹脂成分のメインピーク分子量を大きくすることが可能になるため、本発明で好ましく用いられる。
塊状重合法は、溶液重合法と比較して溶媒の留去などの工程が必要ないため低コストで結着樹脂を得ることができる、また、懸濁重合法と比較して、分散剤等の不純物を含まない為、トナーの帯電性などへの影響が少なく優れた現像性を得られる等、トナー用結着樹脂としてのメリットが大きく、好ましい。
特に、本発明で用いる結着樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂の存在下でビニル系モノマーを、不飽和ポリエステル樹脂:ビニル系モノマー=50:50〜90:10(好ましくは60:40〜80:20)の質量比で塊状重合することにより得られるハイブリッド樹脂成分を含有することが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の質量比が50:50よりも少ないと定着性が悪化しやすく、90:10よりも多いと耐高温オフセット性が悪化しやすい。
本発明の塊状重合法で得られるハイブリッド樹脂に用いられる不飽和ポリエステル樹脂成分としては、THF可溶分のGPC分子量分布において、分子量2千〜3万(好ましくは3千〜2万、より好まし5千〜1万)の範囲にメインピークを有する低分子量不飽和ポリエステル樹脂成分が好ましく用いられ、さらには、ゲル成分を含まない線状の不飽和ポリエステル樹脂成分が特に好ましい。メインピーク分子量が2千より小さいと現像性が悪化しやすく、3万より大きいと定着性が悪化しやすい。
さらに、本発明で用いられる不飽和ポリエステル樹脂成分としては、数平均分子量(Mn)が2千〜2万、好ましくは3千〜1万のものが良い。数平均分子量(Mn)が2千より小さいと、ハイブリッド樹脂にゲル成分が生成しにくく、耐高温オフセット性や現像耐久性が悪化しやすい。数平均分子量(Mn)が2万よりも大きいと、不飽和ポリエステル樹脂成分のビニル系モノマーへの溶解性が低くなって塊状重合によりハイブリッド樹脂を得ることが難しくなり、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分が分離したり、トナーの帯電性が悪化したりする場合があるだけでなく、異なる粒度領域での円形度、改質度合いを均一化させにくくなる。
また、本発明で用いる不飽和ポリエステル樹脂成分は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが1.0〜5.0、好ましくは1.0〜3.0のものが、分子量分布が小さく、定着時のシャープメルト性、円形度分布の制御の観点から好ましい。
Mw/Mnが5.0より大きいと、定着性が悪化しやすい。
このような不飽和線状ポリエステル樹脂成分の存在下でビニル系モノマーを塊状重合することで、分子量が大きくて直鎖性の高いビニル系樹脂成分を主鎖として、低分子量ポリエステル樹脂成分がビニル系樹脂成分から分岐した形の分子構造を持つ、ハイブリッド樹脂成分を得ることが出来る。更に、この分岐構造を持つハイブリッド樹脂中の酸基や水酸基が、分子間でエステル結合することによりゲル成分を形成する。
こうして得られたハイブリッド樹脂により形成されるゲル成分は、架橋点間分子量が大きく熱により軟化しやすい。また、分子構造にポリエステル系樹脂成分を多量に含むため、ハイブリッド化していない低分子量ポリエステル系樹脂成分をゲル構造内に多量に取り込むことができる。その結果、軟化点の低い低分子量ポリエステル系樹脂成分を多量に添加しても、トナーの機械的強度を維持することが可能となり、優れた定着性と現像耐久性を両立させることが可能になる。さらに、架橋点間分子量が大きく、直鎖性の高いゲル成分は、分子構造に柔軟性があるため剪断力に強く、トナー化の混練工程でゲル成分の分子切断が起こりにくい。そのため、混練条件によらず一定のゲル成分をトナーに含有させることが可能となり、優れた耐高温オフセット性をトナーに安定して与えることが出来る。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また(B)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また、不飽和ポリエステル樹脂を得る為の不飽和基を持つ酸成分として、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル等が好ましく用いられる。
これら不飽和ジカルボン酸は、ポリエステルモノマーの全酸成分に対して、0.1〜10mol%(好ましくは0.3〜5mol%、より好ましくは0.5〜3mol%)の割合で添加することが好ましい。この範囲で不飽和ジカルボン酸を添加した場合に、低分子量ポリエステル分子中に占める不飽和基濃度が最適となる。不飽和ジカルボン酸が0.1mol%より少ないと、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分のハイブリッド化が起こりにくく、定着性や現像性の改良効果が得られにくくなる。不飽和ジカルボン酸が10mol%より多いと、ポリエステル樹脂1分子に含まれる不飽和基が多くなる為、ポリエステル樹脂1分子とハイブリッド化するビニル系樹脂が多くなり、架橋点間分子量が小さくなるため、ゲル成分が硬くなりやすい。その結果、定着性が悪化したり、トナー化時の混練でゲル成分が剪断されて耐高温オフセット性が悪化したりする。
また必要に応じて3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を使用することも可能である。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。なかでも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸およびこれらの無水物、低級アルキルエステルが好ましい。
本発明に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の0.1〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル樹脂の重合反応は通常触媒の存在下150〜300℃、好ましくは170〜280℃程度の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、もしくは加圧下で行うことができるが、所定の反応率(例えば30〜90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが望ましい。
上記触媒としては、通常ポリエステル化に用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。
本発明では、重合反応の制御のしやすさや、ビニル系モノマーとの反応性の高さからチタン化合物が好ましく用いられ、特に好ましいものとしてテトラブチルイソプロピルチタネート、シュウ酸チタン酸二カリウム、テレフタル酸チタン酸カリウムが挙げられる。この際、結着樹脂の着色防止として酸化防止剤(特にリン系酸化防止剤)や、反応促進剤として助触媒(マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい)を添加することが特に好ましい。
反応物の性質(例えば酸価、軟化点等)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の攪拌トルクまたは攪拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって本発明のポリエステル系樹脂を得ることができる。
本発明において、ビニル系樹脂成分とは、ビニル系ホモポリマーもしくはビニル系コポリマーを意味するものである。
ビニル系樹脂成分を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン,イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合せが好ましい。
さらに、結着樹脂の酸価を調整するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水マレイン酸などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価をコントロールする上で好ましい。
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステルなどのような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;などが挙げられる。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、ビニル系樹脂成分を構成している全モノマーに対し0.1〜30質量%添加することが好ましい(より好ましくは0.5〜10質量%)。酸価を有するモノマーを添加することで、トナー中のゲル成分の分子構造に適度に酸価を有することが可能となる。ゲル成分が極性基をもたない場合には、ワックスの分散状態を制御するのが困難となり、トナーの帯電性が悪化して現像性などに問題を生じやすくなる。このようにゲル成分の分子構造に酸価を含有させることで、分散状態を制御するのが困難であるトナー中のワックス成分をゲル成分の近傍に微分散させ易くなり、帯電性が安定したトナーを提供することが可能となる。
本発明のゲル成分中に含まれるビニル系樹脂成分は、直鎖性が高いものが好ましい為、架橋性モノマーは含有しないものがより好ましいが、本発明の目的を達成する為に、以下に例示する様な架橋性モノマーを添加することも可能である。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグルコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のビニル系モノマー成分100質量部に対して、1質量部以下、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
結着樹脂の調製に使用されるビニル系樹脂成分は、本発明の目的を達成する為に以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−アミルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス−(ネオデカノールパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノールパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(m−トルオールパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロドデカン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジーt−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらの内、より好ましいものは、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンである。
これらの多官能開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.01〜10質量部用いるのが好ましい。
さらに、これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることも可能である。
特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジーt−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程においてビニル系モノマーの重合添加率が50%以上に達した後に添加するのが好ましい。
本発明の結着樹脂は、前記のような不飽和ポリエステル樹脂成分存在下で、溶媒などを使わずにビニル系モノマーを重合する、塊状重合法によりハイブリッド樹脂を得ることが好ましい。さらに、この工程でワックス類を添加することがワックス類の分散性を向上させる観点から好ましい。特に、重合開始剤として、10時間半減期温度が100〜150℃のものを用い、重合開始剤の10時間半減期温度よりも30℃低い温度から、10時間半減期温度よりも10℃高い温度の範囲で、ビニル系モノマーの重合転化率が60%、好ましくは80%以上に達するまで重合反応を行い、塊状重合により生成するビニル系樹脂成分の分子量を大きくすることが好ましい。さらに、重合転化率が60%(好ましくは80%)以上に達した後に、10時間半減期温度よりも10℃以上高い温度で重合反応を行い、反応を終了させることが良い。
本発明で用いられる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜75℃であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が50℃未満であると、トナーの保存安定性が不十分となることがあり、75℃よりも大きいとトナーの定着性が不十分となることがある。
本発明に用いられる結着樹脂は、酸価が0.1〜50mgKOH/g(好ましくは1〜40mgKOH/g、より好ましくは1〜30mgKOH/g)、水酸基価が5〜80mgKOH/g(好ましくは5〜60mgKOH/g、より好ましくは10〜50mgKOH/g)の範囲であることが、トナーの帯電性、及び適度な機械的強度による円形度制御のしやすさの点で好ましい。
結着樹脂の酸価は、例えば、下記1)〜5)の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に属する。
1)試料はあらかじめ結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、試料の結着樹脂以外の成分の含有量を求めておく。磁性トナー又は結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0gを精秤する。このときの結着樹脂成分の質量をW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定測定装置を用いて測定する。この滴定には、例えば、京都電子株式会社の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)下記式により酸価を計算する。なお下記式中のfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
OH価は、例えば、下記1)〜8)の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に準ずる。
1)試料はあらかじめ結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、試料の結着樹脂以外の成分の含有量を求めておく。トナー又は結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0gを200ml平底フラスコに精秤する。
2)これにアセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ(100ml)に取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分攪拌する)を5mlを加える。なお試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加え溶解する。
3)フラスコの口に小さなロートを置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根に被せる。
4)1時間後フラスコにグリセリン浴から取り出し、放冷後ロートから水1mlを加えて振り動かし無水酢酸を分解する。
5)さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール5mlでロート及びフラスコ壁を洗う。
6)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
7)樹脂を入れないで2)〜6)を空試験として行う。
8)下記式によりOH価を計算する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
(但し、Aは水酸基価(mgKOH/g)であり、Bは空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)であり、Cは滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)であり、fは0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクターであり、Sは試料中に含まれる結着樹脂の量(g)であり、Dは試料の酸価である。なお式中「28.05」は水酸化カリウムの式量(56.11×1/2)である)
結着樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば結着樹脂を構成するモノマーの種類及びそれらの配合量によって調整することができる。
本発明において、ロジン、変性ロジン、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等の他の樹脂を、前述した結着樹脂に、必要に応じて混合して用いることができる。二種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては、分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
結着樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、結着樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、この溶液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、測定値であるカウント数(リテンションタイム)と、数種の単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線の対数値とから求めることができる。また、結着樹脂の分子量は、重合条件、架橋剤の使用、結着樹脂の混練等によって調整することができる。
結着樹脂のガラス転移温度は、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度が45〜80℃を示すように、結着樹脂の構成物質(重合性単量体)を選択することにより調整することができる。また結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7やTAインスツルメンツジャパン社製のDSC2920を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さいと、トナーの保存性が不十分となることがあり、結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも大きいと、トナーの定着性が不十分となることがある。
本発明のトナーは更に磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもでき、一成分現像方式を用いることによって、キャリアが不必要となり、装置の小型化の点で有利である。
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下であり、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、795.8kA/m印加での磁気特性が、抗磁力1.6〜12.0kA/m、飽和磁化50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。
これらの強磁性体はトナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量部に対し約20〜200質量部、特に好ましくは樹脂成分100質量部に対し40〜150質量部が良い。
特に、トナー粒子の真密度が1.50以上2.00(g/cm3)となるように含有量を調整することが好ましい。トナー粒子の真密度がこの範囲にあることにより、トナー粒子の表面改質が均一に行われやすい。この理由は定かではないが、後述する表面改質装置内においては、装置内でのトナー粒子の循環性が重要であり、おそらく真密度が上記範囲のように比較的大きい方が、装置内において、トナー粒子の循環が効率的に働きやすくなるため、異なる粒度領域での円形度、改質度合いを均一化させやすくなり、本発明の目的を達成しやすくなると考えられる。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物等が用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができ、二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものを用いることができる。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20〜300μmの粒子が使用される。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
また、本発明においては、荷電制御剤を添加して使用することが好ましい。なお、本発明の磁性トナーの帯電性は正負のどちらでも良いが、結着樹脂自体は負帯電性が高いので、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電性のものとしては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ハイドロキシカルボン酸または芳香族ダイカルボン酸の金属錯体及びその金属塩、無水物、エステル類やビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。
負帯電用の荷電制御剤として好ましいものは、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)が挙げられる。
正帯電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩、及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブテン酸、リンタングステンモリブテン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きオルガノスズボレートが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上の組み合わせて用いることができる。
正帯電用の荷電制御剤として好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が挙げられる。
これらの金属錯化合物は、単独でも或いは二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらの荷電制御剤の使用量は、トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部あたり0.1〜5.0質量部が好ましい。
本発明のトナーは、ワックスを含有してもよい。
本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加しても良い。流動性向上剤は、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。このような流動性向上剤としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフウルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理微粉末;酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等が挙げられる。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用することが好ましい。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えばAEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84、Ca−O−SiL(CABOT Co.社)M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5、Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40、D−C Fine Silica(ダウコーニングCo.社)、Fransol(Fransil社)等の商品名で市販されているものがあり、本発明ではこれらも好適に用いることができる。
さらには、本発明に用いられる流動性向上剤としては、前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。前記処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
前記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメトリジメチルクロロシラン、α−クロロエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。さらに、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。
前記流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対して流動性向上剤を総量で0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用することが良い。
本発明のトナーは、前記流動性向上剤と混合して、また必要に応じてさらに他の外添剤(例えば荷電制御剤等)と混合して一成分現像剤として用いることができ、またキャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものがすべて使用可能であるが、具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20〜300μmの粒子が好ましくは使用される。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
本発明のトナーの製造方法について以下に示す。
本発明の目的を達成するために、円形度と超微粉量を調整する工程が必要であるが、それ以外の製造工程においては、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。
例えば本発明のトナーは、結着樹脂とその他必要に応じて、磁性材料もしくはその他の着色剤、ワックス、荷電制御剤などの材料をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、磁性体粒子、顔料又は染料を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕を行ったのち、表面改質工程を経て、無機微粉体等の外添剤を前記混合機により混合することによって得ることができる。必要に応じて、表面改質工程の前後どちらかに、さらに分級工程を経てもよい。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等が挙げられる。
混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)等が挙げられる。
粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)等が挙げられる。
分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)等が挙げられる。
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
次に、本発明のトナーの製造方法に好適に用いられる回分式の表面改質装置について説明する。
図1に示す回分式表面改質装置は、円筒形状の本体ケーシング30、本体ケーシングの上部に開閉可能なよう設置された天板43;微粉排出ケーシングと微粉排出管とを有する微粉排出部44;冷却水或いは不凍液を通水できる冷却ジャケット31を有している。
更に図1に示す回分式表面改質装置は、表面改質手段としての、本体ケーシング30内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型ディスクである分散ハンマー33を複数個有し、所定方向に高速に回転する円盤状の回転体である分散ローター32;分散ローター32の周囲に一定間隔を保持して固定配置された、分散ローター32に対向する表面に多数の溝が設けられているライナー34を有している。
更に図1に示す回分式表面改質装置は、粉体粒子中の所定粒径以下の微粉を連続的に除去するための分級ローター35;本体ケーシング30内に冷風を導入するための冷風導入口46;粉体粒子(原料)を導入するために本体ケーシング30の側面に形成された原料投入口37及び原料供給口39を有する投入管を有している。
更に図1に示す回分式表面改質装置は、表面改質処理後のトナー粒子を本体ケーシング30外に排出するための製品排出口40及び製品抜取口42を有する製品排出管;表面改質時間を自在に調整できるように、原料投入口37と原料供給口39との間に設置された開閉可能な原料供給弁38;及び製品排出口40と製品抜取口42との間に設置された製品排出弁41を有している。
さらに、表面改質処理後のトナー粒子を吸引排出するために、製品排出管は、ブロワー365により吸引される。
更に図1に示す回分式表面改質装置は、天板43に対して垂直な軸を有する円筒状の案内手段としてのガイドリング36を本体ケーシング30内に有している。このガイドリング36は、その上端が通常天板から所定距離離間して設けられており(通常20〜50mm程度)、分級ローター36の少なくとも一部がその円筒に覆われた状態で設置されている。
また、ガイドリング36の下端は分散ローター32の円盤部又は角形ディスクである分散ハンマー33から所定距離離間して設けられる。このガイドリング36によって装置内において分級ローター35と分散ローター32−ライナー34との間の空間が、ガイドリング外側の第一の空間47と、ガイドリング内側の第二の空間48とに二分される。
ここで、第一の空間47は粉体粒子を分級ローター35へ導入するための空間であり、第二の空間は粉体粒子を分散ローターに導入するための空間である。
分散ローター32上に複数個設置された角型のディスクである分散ハンマー33と、ライナー34との間隙部分が表面改質ゾーン49であり、分級ローター35及び該ローター周辺部分が分級ゾーン50である。
以上のように構成してなる回分式の表面改質装置では、製品排出弁39を閉とした状態で、原料供給弁38を開とし、原料投入口37から被表面改質粒子を投入し、一定時間経過後原料供給弁38を閉とする。
原料供給口39より装置内に投入された粉体粒子は、まずブロワー364により吸引され、分級ローター35で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は、微粉排出ケーシング44、微粉排出口45を通り装置外へ連続的に排出除去される。
ブロアー364とブロアー365は、同一のブロアーでもよいし、別々のブロアーでもよい。
所定粒径以上の粉体粒子は遠心力によりガイドリング36の内周(第二の空間48)に沿い、旋回しながら、分散ローター32により発生する循環流にのり表面改質ゾーン49へ導かれる。循環流を発生させるうえで、分散ローターの周速は、30m/sec〜200m/secが好ましく、より好ましくは、70m/sec〜170m/secがよい。一般的には、分散ローターの周速が大きいほど、表面改質度としては向上する傾向がある。
表面改質ゾーン49に導かれた粉体粒子は、分散ローター32上に複数個設置された角型のディスクである分散ハンマー33と、ライナー34との間で機械式衝撃力を受け、表面改質される。
表面改質された粉体粒子は、機内を通過する冷風及びブロワー吸引流にのって、ガイドリング36の外周(第一の空間47)に沿い、旋回しながら分級ゾーン50に導かれ、分級ローター35により、再度微粉は微粉排出ケーシング44、微粉排出口45を通り機外へ排出され、粗粉体は、循環流にのり、再度表面改質ゾーン49に戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。
一定時間経過後、製品排出弁41を開とし、同時に、ブロアー365によって、製品抜取口42より表面改質粒子を吸引排出する。ここで、装置内に原料粒子を投入し終わってから、製品排出弁を開とするまでの時間を処理時間とする。処理時間を長くするほど、生産能力としては低下するが、表面改質度としては向上する傾向がある。
吸引排出しない場合には、装置内の表面改質粒子は、表面改質ゾーンを繰り返し循環しながら、除々に排出される。そのため、すぐに排出された粒子と最後まで循環を続け、排出弁が閉じる直前に排出された粒子とでは、表面改質の度合いが異なりやすいため、円形度の分布がブロードになりやすく、その結果、帯電量分布の拡大の要因となったり、様々のトナー性能向上を妨げる原因となる場合がある。
さらに、排出弁が空いている間にも、装置内で粒子が循環を続けている場合には、粉体粒子中の微粉を連続的に除去するための分級ローター部から、製品として目標とする粒度領域の粒子まで排出除去されてしまいやすく、収率の低下につながりやすい。
すなわち、排出弁が開いた時点で、表面改質粒子を吸引回収することにより、粒子の表面改質の程度を均一にすることが可能である。さらに、吸引回収することにより、収率が向上すると同時に、排出時間を短縮することができ、従来の表面改質装置と比較して、処理能力をアップさせることにより、生産性の向上を達成することが可能である。
少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する組成物を溶融混練する混練工程、得られた混練物を冷却する冷却工程、冷却固化物を微粉砕して微粉砕物を得る工程、及び得られた微粉砕物の表面改質を行うための表面改質工程とを行ってトナー粒子を得る工程を有し、
表面改質工程を行ってトナー粒子を得る工程が、回分式の表面改質装置を用いて行われ、
製品排出口から表面改質粒子を吸引排出する際には、分級ローター部を吸引する風量M1と、製品排出部を吸引する風量M2が以下の式を満たすことが好ましい。
M1≧1.2×M2
より好ましくは、
M1≧1.4×M2
がよい。
風量が上記の式を満足することにより、表面改質の度合いが均一な粒子を効率よく、吸引回収することが可能である。M1とM2の関係が以下の式を満たす場合、
M1<1.2×M2
すなわち、製品排出部の風量が比較的大きくなる場合には、分級ローターから排出除去されるべき、超微粒子が製品排出部より排出され、製品に混入しやすく、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、12.0%より多くなりやすく、前述したような超微粉に起因する問題を引き起こしやすい。
また、より好ましくは、前記分散ローターの直径R〔m〕と、前記分級部の風量M1が以下の式を満たすことが好ましい。
M1≧70×R3
より好ましくは、
M1≧90×R3
である。
分散ローターの直径R〔m〕と、前記分級部の風量M1が上記の式を満たすことにより、装置内のトナーが効率よく循環することができ、表面改質処理がより均一に進行しやすい。また、超微粉が分級ローター部より効率良く、排出除去されやすい。
分散ローターの直径R〔m〕と、前記分級部の風量M1が以下の式を満たす場合、
M1<70×R3
すなわち、分散ローターの大きさに比較して、分級部の風量M1が小さい場合には、分級ローター付近までうまく粒子が循環できなかったり、粒子が装置内でうまく分散せずに、表面改質処理が不均一となりやすい。また、超微粉を分級ローター部より排出除去しにくくなる傾向があり、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合が、12.0%より多くなりやすく、前述したような超微粉に起因する問題を引き起こしやすい。
一方、製品排出部の風量M2は、以下の式を満足することが好ましい。
M2≧5×R3
M2が上記の式を満足することにより、表面改質粒子を効率よく吸引回収することが可能である。吸引回収時には、M2を示す風によって、粒子を次工程に送ってもよいし、製品排出弁が閉じている間に、M2を示す風によって、製品排出弁の外側を、表面改質装置内に比較して負圧にしておくことにより、圧差で製品排出弁が開いたと同時に製品を排出したのち、排出弁直後に別途設置した、図示しないトナー輸送手段によって、粒子を次工程に送ってもよい。
また、本発明においては、着色剤として磁性体を含有してもよいが、特に、トナー粒子の真密度(g/cm3)が1.50以上2.00以下となるように含有量を調整することが好ましい。すなわち、トナー粒子の真密度を上記の範囲とすることにより、前述したように、表面改質装置内におけるトナー粒子の循環が効率的に働きやすく、トナーの表面改質が均一に行われやすいだけでなく、製品排出弁が開いて、製品を吸引回収する際に、おそらく、M1、M2の風量バランスの中で、トナーの自重が効果的に作用して、超微粉の過剰な製品への混入、処理の均一度の低下を抑制させやすい。
さらに、磁性トナーとすることにより、一成分現像方式を用いることによって、キャリアが不必要となり、装置の小型化の点で有利である。
本発明のトナーを磁性トナーとした場合、例えば一成分ジャンピング現像用の現像装置や、感光体への磁性トナーの供給(現像)と感光体からの転写残トナーの回収とを行う現像兼クリーニング装置を有する等の、一成分現像剤用の公知の画像形成装置を用いて画像形成に用いることができる。また、トナーが収容される現像装置と、トナー像として現像される静電潜像担持体とを少なくとも有し、画像形成装置本体に一体的に取り付けられるプロセスカートリッジにも好適に用いることができる。
また、本発明のトナーを担持するために好ましく用いられるトナー担持体は、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属又は合金で形成された導電性円筒が好ましく使用される。充分な機械的強度及び導電性を有する樹脂組成物で導電性円筒が形成されていてもよく、導電性のゴムローラを用いてもよい。また、円筒状に限らず、回転駆動する無端ベルト等の形態をしていてもよい。
特に、トナーの帯電コントロールが容易なことから、トナー担持体表面が導電性微粒子及び/又は滑剤を分散した樹脂層で被覆されている形態が好ましい。
樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を使用することができる。
中でもシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、あるいはポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂のような機械的性質に優れたものがより好ましい。
樹脂層に含有させる導電性微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化亜鉛など導電性金属酸化物及び金属複酸化物、などが単独もしくは2つ以上好ましく用いられる。
本発明に使用されるトナー担持体の表面粗さはJIS中心線平均粗さ(Ra)で0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm未満ではトナー担持体上の帯電量が高くなり、現像性が不十分になる傾向がある。Raが3.5μmを超えると、トナー担持体上のトナーコート層にムラが生じ、画像上で濃度ムラとなる傾向がある。さらに好ましくは、0.2〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。本発明において、Raは、JIS表面粗さ「JIS B 0601」に基づき、表面粗さ測定器(サーフコーダSE―30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さに相当する。
Raを上記範囲に調整するには、例えばトナー担持体の表層の研磨状態を変える、あるいは球状炭素粒子、カーボン微粒子、グラファイトなどを添加することにより可能である。
また、トナー担持体内部には、多極を有する固定されたマグネットを有し、磁極は3〜10極有することが好ましい。
トナー担持体の直径は、マシンスピードによって、Φ10程度からΦ30程度のものまで適宜選択して使用し、磁極の強さはマシンスピード、現像スリーブ径や磁性トナーの現像性との兼ね合いにより適宜決定される。現像部の磁性トナーの長い穂の生成を抑えるために、現像部の磁極及び、トナー量規制部の磁極は、ともに1000ガウス(0.1テスラ)以下であることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<トナー粒子の平均円形度の測定>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定した。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.06gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、高倍率撮像ユニット(対物レンズ(20倍))を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とした。解析粒子径を円相当径1.98μm以上30.0μm未満、または相当径0.25μm以上30.0μm未満に限定し、平均円形度や超微粉の割合を算出した。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5100Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径の限定を加えた以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
(結着樹脂製造例)
(ポリエステル樹脂製造例1)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する。
・式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基2.2モル付加)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.390mol
・フマル酸 0.010mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を添加し、220℃で縮合重合して、不飽和ポリエステル樹脂P−1(Tg58℃、ピーク分子量=7800、数平均分子量=4600、Mw/Mn=2.1、酸価=5、水酸基価=37)を得た。
(ポリエステル樹脂製造例2)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する以外は、ポリエステル樹脂製造例1と同様にして、不飽和ポリエステル樹脂P−2(Tg60℃、ピーク分子量=4500、数平均分子量=2900、Mw/Mn=5.4、酸価=27、水酸基価=69)を得た。
・式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基2.2モル付加)
1.150mol
・テレフタル酸 0.370mol
・イソフタル酸 0.290mol
・フマル酸 0.080mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.200mol
・トリメリット酸 0.060mol
(ポリエステル樹脂製造例3)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する以外は、ポリエステル樹脂製造例1と同様にして、飽和ポリエステル樹脂P−3(Tg56℃、ピーク分子量=7500、数平均分子量=5100、Mw/Mn=2.4、酸価=5、水酸基価=41)を得た。
・式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基2.2モル付加)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.400mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
(ハイブリッド樹脂製造例1)
不飽和ポリエステル樹脂P−1:75質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン:18質量部、アクリル酸ブチル:6.5質量部、マレイン酸モノブチル:0.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(10時間半減期温度128.4℃):0.08質量部を混合した。このビニル系モノマー/ポリエステル樹脂混合物を120℃で20時間かけて重合後、さらに150℃に温度を上げて5時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させ、ハイブリッド樹脂を得た。これを結着樹脂1とする。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が7200であり、分子量4万〜100万の範囲の成分を8面積%含有し、クロロホルム不溶分を21質量%含有していた。
(ハイブリッド樹脂製造例2)
不飽和ポリエステル樹脂P−2:55質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン:30質量部、アクリル酸ブチル:15質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3:0.15質量部を混合した。このビニル系モノマー/ポリエステル樹脂混合物をハイブリッド樹脂製造例1と同様にして、ハイブリッド樹脂を得た。これを結着樹脂2とする。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が4300であり、分子量4万〜100万の範囲の成分を37面積%含有し、クロロホルム不溶分を41質量%含有していた。
(ハイブリッド樹脂製造例3)
飽和ポリエステル樹脂P−3:75質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン:18質量部、アクリル酸ブチル:7質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3:0.08質量部を混合した。このビニル系モノマー/ポリエステル樹脂混合物を120℃で20時間かけて重合後、さらに150℃に温度を上げて5時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させ、結着樹脂3を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が7500であり、分子量4万〜100万の範囲の成分を28面積%含有し、クロロホルム不溶分を含有していなかった。
(磁性トナーの製造例1)
・結着樹脂1: 100質量部
・ワックス: 5質量部
(低分子量ポリエチレン、DSCピーク=102℃、Mn=850)
・磁性酸化鉄: 95質量部
(組成:Fe3O4、形状:球状、平均粒子径0.21μm、795.8kA/mにおける磁気特性;Hc=5.4kA/m、σs=83.8Am2/kg、σr=7.0Am2/kg)
・T−77(保土谷化学社製): 2質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、130℃、200rpmに設定した二軸混練押し出し機によって混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて、排気温度が45℃になるようエアー温度を調整して微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒子径(D4)6.0μmの粒子1を得た。
この粒子1を、直径300mmの分散ローターを搭載した、図1に示した表面改質装置に投入し、表面改質処理を行った。このとき、分散ローターの周速は、120m/secとし、粒子1を装置内に供給してから、排出弁が開くまでの処理時間を20秒に設定した。また、製品排出部より表面改質された粒子を排出する際の分級部の風量M1を、3.5m3/min、製品排出部の風量M2を、1.6m3/minとした。
表面改質された磁性トナー粒子1の物性を表2に示す。
さらに、この磁性トナー粒子1の100質量部と、乾式シリカ(BET:200m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー1を調製した。
(磁性トナーの製造例2〜6、8)
磁性トナーの製造例1において、粉砕、分級過程において、トナー粒子の重量平均粒径を調整し、表1に示すように、結着樹脂を変更し、さらに表面改質装置の条件を変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子2〜6、8を得た。これらの磁性トナー粒子の物性を表2に示す。
さらに磁性トナーの製造例1と同様にして、乾式シリカを混合して磁性トナー2〜6、8を得た。
(磁性トナーの製造例7)
磁性トナーの製造例1において、分級工程を2度実施し、粉砕、分級過程において、トナー粒子の重量平均粒径を調整し、さらに表1に示すように、結着樹脂を変更し、表面改質装置の条件を変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子7を得た。この磁性トナー粒子7の物性を表2に示す。
さらに磁性トナーの製造例1と同様にして、乾式シリカを混合して磁性トナー7を得た。
(磁性トナーの製造例9)
磁性トナーの製造例1において、粉砕、分級過程において、トナー粒子の重量平均粒径を調整した以外は製造例1と同様にして、重量平均粒子径(D4)6.5μmの粒子2を得た。この粒子2に対して、製造例1の表面改質工程における分級部より吸引除去された微粉を少量添加し、粒子3を得た。この粒子3の、円相当径0.25μm以上30.0μm未満の粒子数に対する、円相当径0.25μm以上1.98μm未満の粒子数の割合を測定したところ、14.1%であった。この粒子3の100質量部と、乾式シリカ(BET:200m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー9を調製した。
(磁性トナーの製造例10)
磁性トナーの製造例1において、粉砕、分級過程において、トナー粒子の重量平均粒径を調整し、ターボミルT−250の排気温度が55℃とし、分級工程を2度実施し、表1に示すように、結着樹脂を変更し、表面改質装置の条件を変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子10を得た。磁性トナー粒子10の物性を表2に示す。さらに磁性トナーの製造例1と同様にして、乾式シリカを混合して磁性トナー10を得た。
〔実施例1〕
(評価1)
市販のLBPプリンタ(Laser Jet 4300、HP社製)を改造して、A4サイズ65枚/分とした。
この改造機に対して、トナー製造例1で得た磁性トナー1を充填し、トナー担持体として、内部に現像極の磁極が750ガウスのマグネットを有し、表面粗さRaが1.0μmで、直径がΦ20のスリーブを組み込み、トナー充填部の容量を2倍とした改造プロセスカートリッジを搭載させた。
これを画出し試験機として、32.5℃、85%RHの高温高湿環境に一晩放置後、印字率4%となる横線パターンを1枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、A4普通紙(75g/m2)を使用して3万枚のプリント耐久試験を行った。
このプリント耐久試験中もしくは3万枚の耐久試験後に、以下の評価を行った。
画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm角のベタ黒画像の反射濃度を測定することにより測定し評価した。
画像濃度の評価基準を以下に示す。
1000枚耐久後に対する3万枚耐久後の反射濃度の低下率を算出した結果、
A:低下率が2%未満。
B:低下率が2%以上3%未満。
C:低下率が3%以上5%未満。
D:低下率が5%以上。
スジの評価基準を以下に示す。
A:3万枚後にもスジの発生がない。
B:3万枚までにややスジが発生する。
C:2万枚までにスジが発生する。
D:1万枚までにスジが発生する。
H/H環境下での耐久試験の途中、20000枚耐久時に転写効率確認を行った。像のり量0.60mg/cm2のべた画像をドラム上に現像させた後、A4普通紙(75g/m2)に転写させ未定着画像を得た。ドラム上のトナー量と転写紙上のトナー量との重量変化から転写効率を求めた(ドラム上トナー量が全量転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。)
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が90%以上95%未満
C:転写効率が85%以上90%未満
D:転写効率が80%以上85%未満
(評価2)
次に、評価1で使用した画出し試験機を、15℃、10%RHの低温低湿環境に一晩放置後、印字率3%となる横線パターンを1枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、A4普通紙(90g/m2)を使用して3万枚のプリント耐久試験を行った。
このプリント耐久試験中もしくは3万枚の耐久試験後に、以下に示す画像特性について評価した。
かぶりは、耐久試験中、1万枚終了時点で、現像バイアスの交流成分の振幅を1.7kVに設定(デフォルトは1.6kV)し、べた白を2枚プリントし、2枚目のかぶりを以下の方法により測定した。
反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて画像形成前後の転写材を測定し、画像形成後の反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをかぶり量として評価した。結果を表3に示す。
かぶりの評価基準を以下に示す。
A:1.0未満。
B:1.0以上2.0未満。
C:2.0以上3.5未満。
D:3.5以上。
飛び散りは、耐久試験中、1万枚終了時点で、かぶりの評価に引き続き、厚紙(105g/m2)にプリントした際の文字周辺部へのトナー飛び散りを目視で評価した。その結果、ほとんど飛び散りは見られず、鮮鋭な文字画像を得た。結果を表3に示す。
飛び散りの評価基準を以下に示す。
A:ほとんど見られない。
B:若干飛び散りが見られるが気にならない。
C:飛び散りがやや多く、気になることもあるが、実用上は問題ない。
D:飛び散りが著しく、つぶれて読めない文字もある。
ブロッチの評価は、以下のようにして行った。
評価1で使用した画出し試験機において、現像スリーブ上のトナーコート層を規制している現像ブレードの当接圧を70%とし、15℃、10%RHの低温低湿環境において画像比率2%のライン画像100枚複写した後、現像スリーブ上のトナーコート状態を目視し、ブロッチの発生状態を以下の評価基準に基づいて評価した。
ブロッチの評価基準を以下に示す。
A:ブロッチが全く発生していない
B:ブロッチがスリーブ端部にわずかに発生している
C:ブロッチが極わずか発生しているが画像には影響しない
D:ブロッチがはっきりと発生しており画像に影響する
帯電部材汚れは、3万枚のプリント試験後に評価した。評価基準を以下に示す。(AC弱める?)
A:帯電部材を目視で確認したが、全く汚れていない。
B:帯電部材がやや汚れているが、画像上は問題ない。
C:帯電部材が汚れており、ハーフトーン画像にやや帯電不良によるスジが見られるが実用上は問題ない。
D:帯電部材が汚れており、文字画像の端部が汚れる。
(評価3)
評価1で使用した画出し試験機とプロセスカートリッジを、23℃、50%RHの常温常湿環境に一晩放置した。プロセスカートリッジは、あらかじめトナー充填部の空重量を秤量し、磁性トナー1を充填しておいた。一晩放置後、A4普通紙(75g/m2)に、印字率4%となる文字パターンを5000枚連続でプリントした。続いて、トナー充填部の重量を測定し、容器内トナー重量を記録した後、印字率4%の文字パターンを2万枚連続でプリントし、再びトナー充填部の重量を測定し、容器内トナー重量の減少量を計算するという手順によって、2万枚プリント時の平均トナー消費量(mg/枚)を算出した。結果を表3に示す。