本発明においては、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92〜70/30であることが重要である。
本発明において、規制ブレードのトナー担持体に当接される部位の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Sm、規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比は、レーザー顕微鏡(VK−8500 キーエンス社製)を用いた非接触式測定法により測定される。
多くの従来発明においては、接触式の表面粗さ測定装置を使用し、トナー層厚規制部材の表面粗さを調整している。接触式の測定においては、測定力に応じて触針の先端半径が定められているものの、規制ブレード表面の凹凸の形状によっては、先端半径の影響が出てしまう場合があり、同じ測定面であっても先端半径の違いから、異なった断面曲線が得られることもあった。垂直方向の粗度に対して、相対的に平面方向の凹凸の密度が高くなる場合などは特に、接触式測定装置を用いた表面粗さ調整法では、凹凸の垂直方向及び平面方向について厳密に定義された所望の表面性に調整することが困難であった。
以下に、本発明における非接触測定法の具体例を示す。
<規制ブレード表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smの測定方法>
1)試料の準備
規制ブレードを約1cm四方の大きさにカットする。ただしレーザー顕微鏡での観察においてレーザーを当てるのに十分な面積があれば、特にカットする大きさは限定されない。
2)測定条件
測定時の各パラメーター等は以下のように設定する。
対物レンズ倍率:20倍
光学ズーム倍率:1倍
デジタルズーム倍率:1倍
RUN MODE:カラー超深度
LASER(ゲイン):594
LASER(オフセット):−1328
カメラ設定(シャッタ):158
カメラ設定(ホワイトバランス):3200k
カメラ設定(ゲイン):0
3)試料のセット
レーザー顕微鏡のステージに、カットした規制ブレードを、トナー担持体に当接される部位が観察面となるようにセットする。
4)測定
測定PITCHを0.1μmとして規制ブレード表面を測定する。
5)画像処理
測定で得られた画像の全体的な歪みや傾きを補正するため、以下の処理を行った。
[1.傾き補正]
補正方法:面補正(自動)
処理対象:高さ
測定で得られた画像中の細かいノイズ成分を除去するため、以下の処理を行った。
[2.フィルタ処理]
処理対象 :平滑化(高さデータ)
サイズ :7×7
実行回数 :1
ファイルタイプ:メディアン
[3.フィルタ処理]
処理対象 :平滑化(高さデータ)
サイズ :3×3
実行回数 :1
ファイルタイプ:単純平均
6)解析
解析には高さデータを用いる。得られた高さデータ画像にスケールを引き、200μm×260μmの範囲を選び、この範囲での十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定結果とする。
[十点平均粗さRz]
表面粗さ測定モードで得られた値とする。
[凹凸の平均間隔Sm]
線粗さ測定モードで、直線を任意の水平方向に5本、任意の垂直方向に5本引き、計10本の直線から得られた10個の凹凸の平均間隔Smのうち上下限値2点を除外し、残りの8点で平均をとった値とする。
<規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比の測定方法>
本発明のトナーを評価する際に用いられる現像装置において、規制ブレードとトナー担持体が当接されている状態を模擬的に再現する方法として、規制ブレードを切り取り、この規制ブレードに実際の当接圧に相当する荷重をかけた時の状態を作り出し観察を行った。以下にその方法を示す。なお面圧14.4Paは、現像装置において、規制ブレードのトナー担持体に当接される部位での最も好ましい面圧に相当する値である。
1)試料の準備
[観察試料の作製]
カットした規制ブレードのトナー担持体に当接される部位を上側にして、その上にガラス板を載せる。このとき規制ブレードとガラス板の重心が一致するようにする。さらにガラス板の両側に重量が同じ重りをそれぞれ載せる。それぞれの重りの位置は、規制ブレードとガラス板の重心に対して左右対称になるようにするとともに、規制ブレードの観察時に対物レンズのアプローチを妨げないようにする。
[規制ブレード]
規制ブレードを0.8cm四方の大きさに正確にカットする。
[ガラス板]
ガラス板は表面が平滑であるものが好ましい。特にスライドガラス(厚さ0.9〜1.2mm、76×26mm、水縁磨 松浪硝子社製)が本測定においてはより好ましく用いられる。
[荷重用のおもり]
本測定では、規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させる。0.8cm四方の規制ブレードに対して、ガラス板を面圧14.4Paで接触させるには、147gの荷重が必要となる。ガラス板と、同重量の重り2個の重量の合計が147gとなるように重りを準備する。重りは任意のものが使用可能である。本測定ではサンプル瓶に比重の大きい粉体あるいは水を入れ、所望の重量の重りを作製する方法が好ましい。比重の大きい粉体には鉄粉を使用するのが好ましい。サンプル瓶にはスクリューバイアル(SV−30 外径30mm、高さ65mm、肉厚1.5mm、口内径19.8mm、容量30ml 日電理化硝子社製)を使用するのが好ましい。
2)測定条件
測定時の各パラメーター等は以下のように設定する。
対物レンズ倍率:20倍
光学ズーム倍率:1倍
デジタルズーム倍率:1倍
RUN MODE:カラー超深度
LASER(ゲイン):594
LASER(オフセット):−1328
カメラ設定(シャッタ):158
カメラ設定(ホワイトバランス):3200k
カメラ設定(ゲイン):0
3)試料のセット
レーザー顕微鏡のステージに、荷重をかけた0.8cm四方の規制ブレードを、トナー担持体に当接される部位が観察面となるようにセットする。
4)測定
測定PITCHを0.1μmとして規制ブレード表面とガラス板の接触面を含むように測定する。
5)画像処理
測定で得られた画像の全体的な歪みや傾きを補正するため、以下の処理を行った。
[1.傾き補正]
補正方法:面補正(自動)
処理対象:高さ
測定で得られた画像中の細かいノイズ成分を除去するため、以下の処理を行った。
[2.フィルタ処理]
処理対象 :平滑化(高さデータ)
サイズ :7×7
実行回数 :1
ファイルタイプ:メディアン
[3.フィルタ処理]
処理対象 :平滑化(高さデータ)
サイズ :3×3
実行回数 :1
ファイルタイプ:単純平均
6)解析
解析には高さデータを用いる。得られた高さデータ画像では、規制ブレードとガラス板の接触部は非接触部に対して明確に黒く表示される(図1)。色の違いで接触部と非接触部の面積を2値化することで、規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比を計算することができる。接触部と非接触部の面積を2値化する方法としては、画像解析機能を有するアプリケーションが好ましく用いられる。アプリケーションとしては例えば「Image−Pro Plus(Media Cybernetics社)」が用いられる。接触部と非接触部の面積を2値化するにあたり、得られた画像の微小なノイズを除去し、より精度の高い値とするために、以下の操作を行う。
・色抽出処理で0〜255の範囲となっているヒストグラムを0〜60の範囲にすること
で、ごく微小なノイズを除去する。この操作で接触部と非接触部を2色に分けることが できる。
・測定項目の面積測定で接触部の総面接触部積を算出する。
・画像全体の面積と、接触部の総面積から、接触部と非接触部の面積比を算出する。
レーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下、より好ましくは5.0μm以上20.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以上15.0μm以下であり、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92〜70/30、より好ましくは8/92〜60/40とすることによって、トナー規制ブレードとトナー担持体とのニップ部に、適度な量のトナーが滞留することが可能になる。
本発明においては、さらに上述のトナー規制ブレードとトナーの付着力を制御することにより、滞留トナーがトナー規制ブレードに融着することなく、適度に入れ替わりながら常に適量がニップ部に存在することができるようになると考えられる。
このように、ニップ部に適度な滞留トナーが常に存在することにより、ニップ内をトナーが通過する際に、トナー規制ブレードと直接摩擦され帯電したトナーが、滞留トナーと摩擦することにより過剰の電荷を放出するなどして帯電が均一になりやすく、濃度ムラのない良好な画像を得られやすい。
さらに、近年の高画質化を目的とする高現像性トナーは、トナー担持体上に薄層コートさせにくい傾向があるが、上述のトナー規制ブレードを使用することにより、さらに良好な画像を得ることが可能になる。これはおそらく、ニップ部に適度な滞留トナーが存在することにより、トナー担持体上の長手方向において、均一に高い規制力が働くため、トナーコート層が薄く安定するためであると考えられる。
さらに、ニップ部を通過するトナーが、ニップを通過する間中、トナー規制ブレードと直接摩擦されると、局所的に高い摩擦熱が発生しやすく、トナー規制ブレードにトナーが融着する原因となりやすい。特に、トナー規制ブレードの端部は中央部に比べて当接圧がやや高いため、トナー融着しやすく、画像端部にスジが出る場合がある。
本発明においては、トナー規制ブレードのニップ部に、付着力を制御されたトナーが適度に滞留トナーとして存在することで、理由は明確ではないが、おそらく摩擦熱を分散する効果も働き、トナー融着を起こしにくいと考えられる。
また、レーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm未満の場合には、ニップ部においてトナーが留まりにくくなるため、滞留トナー量が少なくなりやすく、ニップを通過するトナーがトナー規制ブレードと直接摩擦される機会が増え、本発明のトナーを用いてもトナー規制ブレードにトナーが融着する場合がある。さらに規制力が弱くなりやすく、その場合はトナー担持体上のトナーコート層が厚くなり、トナーの帯電分布が広がることによって、濃度ムラが発生したり、画像の精細性が低下する傾向がある。
一方、25.0μmより大きい場合には、滞留トナーが過剰にニップ部に存在するようになり、規制力が強くなりすぎるため、トナーがチャージアップしやすくなったり、耐久後半ではトナー劣化による濃度薄や濃度ムラなどの画像欠陥を起こしやすい。
本発明においては、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92〜70/30であることが重要であるが、接触部面積の非接触部面積に対する比率が8/92未満であると、滞留トナーが過剰にニップ部に存在するようになり、上述のような問題を引き起こしやすい。一方、70/30より大きい場合には、滞留トナーが少なくなりやすく、やはり上述のような問題を引き起こしやすい。
また、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される側の表面のレーザー顕微鏡で測定される凹凸の平均間隔Smが5.0μm以上200.0μm以下、より好ましくは5.0μm以上100.0μm以下であることが、滞留トナー量を適性にするうえで好ましい。
Smが5.0μm未満である場合、滞留トナーが少なくなりやすく、上述のような問題を引き起こしやすい。一方、Smが200.0μmを超える場合には、接触部面積比率が小さくなりやすく、滞留トナーが過剰に存在するようになり、やはり上述のような問題を引き起こしやすい。
本発明においてトナー規制ブレードを粗面化する方法としては、例えば、物理的手法としては、サンドブラスト法、ショットブラスト法、サンドぺーパーを用いる方法などを挙げることができ、化学的手法としては、エッチング法、粗粒子を含む被膜を形成する方法などを挙げることができる。
その中でも本発明においては、遠心成型法や連続注入成型法などのドラム状金型を用いて成型することが好ましい。即ち、金型内にトナー規制ブレード形成液を注入し、回転させつつトナー規制ブレードを成型する工程においては、金型は回転しているため、遠心力が働き、トナー規制ブレード形成液中のエアー等は内側に抜け出し、トナー規制ブレード形成液は金型面に押し付けられるので、エアー等の混入なく、金型の凹凸が正確に転写されたトナー規制ブレードを得ることができる。このとき、金型内周面の凹凸の形成方法としては、金型面に対して粗面化粒子によるビーズブラスト法を用いる方法や、金型内周面に離型層を設けて、その離型層の表層部に球形のフッ化黒鉛等の粗面化処理剤を含ませる方法が好ましく、凹凸部の高さ(深さ)や凹凸間隔を粗面化粒子の粒径及び含有量によって制御することができる。例えば、図2のモデル図に示すように、粗面化粒子によりビーズブラストされた金型11から転写されたシート12は、凸部は滑らかな丸みを帯びた円弧形状となり、粒子の粒径、吐出圧力を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。一方、図3のモデル図に示すように、金型面21上に粗面化処理剤を含んだ離型層22を形成したものから転写されるシート23においては、凸部は比較的平坦な形状となり、凹部は比較的深い表面形状を得ることができる。この場合も、粗面化処理剤の粒径や含有量を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。そして、このようにして得られたシートの凹凸面(金型面)が、トナー担持体との当接面側になるように、トナー規制ブレードを構成することで、トナーの層厚規制を行う。
本発明に用いられるトナー規制ブレード部材は特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等を用いることができ、好ましくはウレタンゴムを用いることが、前述のRz、Sm及び接触部面積比率を制御するうえで好ましく、トナーとの付着力を制御するうえでも好ましい。トナー規制ブレードの支持部材は、金属平板、樹脂平板、より具体的には、ステンレススチール板、りん青銅版、アルミ板等から作製することが好ましい。なお、ブレード部材の上記主材料に導電材料等の添加剤を加えることもできる。また、支持部材とブレード部材との接合は、例えば、ホットメルト等の接着剤によって接着できる。
トナー規制ブレード部材としてゴム材料を使用する場合、ゴム硬度は(JIS)Aで40°以上100°以下のものが、前述の接触部面積比率を制御する上で好ましい。より好ましくは(JIS)A45°〜95°、さらに好ましくは(JIS)A50°〜90°のものがよい。
ゴム硬度が40°未満であると、トナー担持体に対する当接圧が不足しやすい一方で、またトナー担持体とトナー規制ブレードとのニップ部が必要以上に広くなりやすく、トナー劣化が進む原因となりうる。一方、100°を超える場合には、当接圧が高くなりすぎて、トナー規制ブレードにトナーが融着しやすくなったり、やはりトナー劣化の原因となり得るだけでなく、接触部面積比率を制御しにくくなるため好ましくない。
本発明においては、上述のトナー規制ブレードとトナーを引き剥がす際の荷重から算出されるトナー規制ブレードとトナーの付着力を、2.0×106(g/m2)乃至35.0×106(g/m2)とすることが重要であり、好ましくは、18.0×106(g/m2)乃至32.0×106(g/m2)とする。
トナー規制ブレードの表面性状と同時に、付着力を制御することにより、トナー規制ブレードに対してトナーが融着することなく、適度な量の滞留トナーをトナー規制ブレードとトナー担持体とのニップ部に存在させることができるため、本発明の目的を達成することができる。
付着力が、2.0×106(g/m2)未満の場合、ニップ部にトナーが留まりにくく、滞留トナーが少なくなる傾向があり、本発明の目的とする効果が得られない。一方、付着力が35.0×10 6 (g/m2)を超える場合には、離型性が不十分になり、マシンが過酷環境に置かれていたり、プロセススピードが速い場合などには、トナー規制ブレードにトナーが融着する原因となる場合がある。
トナー規制ブレードとトナーの付着力は、ARES(粘弾性測定装置、レオメトリック社製)を使用することにより、以下のように測定することができる。
まず、トナーを加圧成型して直径8mm、高さ2〜4mmの円柱状サンプルにする。粘弾性測定装置に測定治具として直径8mmのパラレルプレートを装着する。本発明のトナー規制ブレードを直径8mmの円形に切り出し、パラレルプレートの上下に接着する。このとき、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接する面を、上部パラレルプレートに接着する際は、下側に、下部パラレルプレートに接着する際は、上側に向けるようにする。
次に、上記円柱状サンプルをパラレルプレート間に設置し、治具温度を120℃に制御して、試料の温度が120℃に達し、上下のトナー規制ブレードに付着したことを確認後、Normal Forceをゼロ付近に維持しながら、治具温度を50℃に制御して、試料の温度が50℃に達するのを確認する。
Multiple Extension Mode TestのRate Mode Testを選択し、Zone1でRate=−0.01mm/sで10秒間圧縮し、Zone2はRate=+0.01mm/sで60秒間伸張し、試料の高さ(gap)とNormal Force(この場合には、試料を等速で伸張させるために必要な荷重であり、マイナスの値で表される。)の関係を測定し、Zone2におけるNormal Forceの極小値の絶対値をもってトナーの離型荷重とする。
この離型荷重を、サンプル断面積(直径8mmの円とした場合の面積:1.6×10-5π(m2))で除した値を付着力と定義する。
さらに、トナーの周波数1Hzの下で得られる動的粘弾性における温度分散測定で、50℃における貯蔵弾性率G’(50)が3.0×108Pa乃至5.0×108Paであり、同温度における損失正接(tanδ)が4.0乃至10.0、好ましくは5.0乃至8.5、より好ましくは5.5乃至7.0であることがよい。
50℃におけるtanδがこの範囲にあると、高温環境で使用されたり、プロセススピードを速くした場合に、トナー規制ブレード周辺が昇温しても、トナー粒子の強度を保てるため、トナー融着が発生しにくく、トナーの劣化もしにくい。
トナーの50℃における貯蔵弾性率G’(50)は、上述のARES(粘弾性測定装置、レオメトリック社製)により測定することができる。同温度におけるtanδは、同温度における損失弾性率(G”)を測定し、損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比(G”/G’)として損失正接(tanδ)を算出することができる。
具体的には、トナーを加圧成型して直径8mm、高さ2〜4mmの円柱状サンプルにする。粘弾性測定装置に測定治具として直径8mmのパラレルプレートを装着し、上記円柱状サンプルを固定する。測定周波数は1Hzとし、温度30℃より80℃まで1℃/分の昇温速度で30秒毎に弾性率の測定を行い、50℃における損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の値を読み取る。
本発明においては、示差走査熱量計(DSC)により測定されるトナーのDSC曲線において、50℃以上100℃以下(より好ましくは、60℃以上90℃以下)に、少なくとも一つの炭化水素系ワックスに由来する吸熱ピークを有するトナーが、付着力を制御しやすいという点でより好ましい。
さらに、前記炭化水素系ワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスをアルコール転化して得られた炭化水素系ワックスであると、離型性という点で優れているのでより好ましい。
このような炭化水素系ワックスを含有させたトナーを用いることにより、上述のトナー規制ブレードを備えた現像装置と組み合わせることにより、付着力を2.0×106(g/m2)乃至35.0×106(g/m2)の範囲に制御することが容易になる。
本発明に好ましく使用される炭化水素系ワックスは、後述するように水酸基価とエステル価において好ましい範囲を有する観点から、以下の構造を有する炭化水素分子鎖を好ましくは含むものである。
すなわち、少なくとも下記部分構造式A乃至Eで表せる、二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの構造を有する分子鎖、乃至一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの構造を有する分子鎖を有することが好ましい。また同時に下記部分構造式C乃至Dで表せる、一級乃至二級の炭素にカルボキシル基を有する分子鎖を有することが好ましい。下記部分構造式A乃至E、C乃至Dは、それぞれ一つの炭化水素鎖に両方を有していても良い。さらに下記部分構造式Bで表せる、エステル結合を有するエステルの構造を有する分子鎖を有していても良い。より好ましくは、下記部分構造式A乃至E、C乃至D、Bで表されるアルコール構造、カルボキシル基、ならびにエステル結合をそれぞれ有する分子鎖を有する炭化水素鎖である。また、一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式A、B、C、D及びEの構造を有していても良い。
本発明に用いられる炭化水素系ワックスは、トナー粒子中の分散性や、トナーの帯電性に与える影響から、脂肪族炭化水素系ワックスが好ましい。特に、水酸基を有する炭化水素系ワックスが好ましい。
脂肪族炭化水素系ワックスから水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する一連の工程をアルコール転化と称する。アルコール転化には、種々の工程群を挙げることができるが、例えば、炭化水素系ワックスから前記炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、前記炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解して、水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する方法が挙げられる。アルコール転化の工程を利用して所望の特性を有する炭化水素系ワックスを得ることが、炭化水素系ワックスの酸基、水酸基、エステル基の転化率をコントロールしやすいという点で好ましい。
脂肪族炭化水素系ワックスから水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する製造例として、炭化水素系ワックスを、ホウ酸及び無水ホウ酸の存在下で、分子状酸素含有ガスで液相酸化することで得られる方法が挙げられる。触媒としてはホウ酸と無水ホウ酸の混合物を使用することができる。ホウ酸と無水ホウ酸の混合比(ホウ酸/無水ホウ酸)はmol比で1.0〜2.0好ましくは1.2〜1.7の範囲である。無水ホウ酸の割合が前記範囲より少ないと、ホウ酸の過剰分が凝集現象を引き起こし好ましくない。また、無水ホウ酸の割合が前記範囲より多いと、反応後無水ホウ酸に由来する粉末物質が回収され、また過剰の無水ホウ酸は反応に寄与せず経済的な面からも好ましくない。
使用されるホウ酸と無水ホウ酸の添加量は、その混合物をホウ酸に換算して、原料の脂肪族炭化水素1molに対して0.001〜10mol、特に0.1〜1.0molが好ましい。
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては酸素、空気、又はそれらを不活性ガスで希釈した広範囲のものが使用可能であるが、酸素濃度が1〜30容量%であるのが好ましく、より好ましくは3〜20容量%である。
液相酸化反応は通常溶媒を使用せず、原料の脂肪族炭化水素の溶融状態下で行われる。反応温度は120〜280℃、好ましくは150〜250℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。ホウ酸と無水ホウ酸はあらかじめ混合して反応系に添加するのが好ましい。ホウ酸のみを単独で添加すると、ホウ酸の脱水反応等が起こり好ましくない。また、ホウ酸と無水ホウ酸の混合溶媒の添加温度は100℃〜180℃がよく、好ましくは110〜160℃であり、100℃より低い場合には系内に残存する水分等に起因して、無水ホウ酸の触媒機能が低下するので好ましくない。
反応終了後、反応混合物に水を加え、生成したワックスのホウ酸エステルを加水分解後、精製して、所望のワックスが得られる。
本発明に用いられる炭化水素系ワックスの酸価は1〜30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜25mgKOH/gであり、さらに好ましくは1〜20mgKOH/gである。
炭化水素系ワックスが酸基を有していることにより、トナー粒子を構成する他の成分との界面接着力が大きくなり、炭化水素系ワックスがトナーを可塑化する効果が高くなり、トナーの定着性が向上する。炭化水素系ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、トナー粒子を構成する他成分との界面接着力が小さくなり、炭化水素系ワックスの遊離が発生しやすく、炭化水素系ワックスの作用が十分に得られない場合がある。また、炭化水素系ワックスの酸価が30mgKOH/gより大きいと、逆に界面接着力が大きくなりすぎ、トナーの可塑化が大きく進み、十分な離型性を保持できなくなる場合がある。
本発明で用いられる炭化水素系ワックスの水酸基価(WOHv)は、20〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは25〜90mgKOH/gであり、さらに好ましくは30〜80mgKOH/gである。
炭化水素系ワックスの分子中に適度な水酸基を有していることにより、炭化水素系ワックスが結着樹脂中に微粒子状に分散できるので、適度な可塑効果が得られ、良好な低温定着性を発揮しやすいと同時に、トナーの離型性を高く保ちやすい。
炭化水素系ワックスの水酸基価が20mgKOH/g未満だと、炭化水素系ワックスが十分に微分散せず、トナーの低温定着性、離型性が低下することがある。また、炭化水素系ワックスの水酸基価が100mgKOH/gより大きいと、炭化水素系ワックスの可塑効果が大きくなりすぎ、トナーの保存性が低下することがある。
本発明に用いられる炭化水素系ワックスのエステル価(WEv)は、1〜50mgKOH/g(好ましくは1〜30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜20mgKOH/g、特に好ましくは1〜15mgKOH/g)である。前記炭化水素系ワックスは、さらに、水酸基価とエステル価の関係が下記式(I)を満足することが好ましい。
WOHv>WEv・・・(I)
炭化水素系ワックスのエステル価が1mgKOH/g未満だと、トナーの定着性、離型性に対する炭化水素系ワックスの効果が低下することがある。また、炭化水素系ワックスのエステル価が50mgKOH/gより大きいと、炭化水素系ワックスの結着樹脂に対する親和性が高くなりすぎて結着樹脂の劣化が進みやすくなり、長期の使用においてトナーの現像性が劣るようになることがある。
炭化水素系ワックスのエステル価が水酸基価以上だと、炭化水素系ワックスと結着樹脂の親和性が高くなり、炭化水素系ワックスがトナー粒子の表面に染み出しにくくなり、トナーの定着性、および、離型性に影響を及ぼすようになることがある。
また、炭化水素系ワックス中のエステル基は結着樹脂成分との親和性が高く、水酸基は紙の如き被定着シートとの親和性が高いので、トナーを定着部材から排出させる効果をもたらす。以上の結果、トナーと定着部材との離型性及び被定着シートへの排出性が向上し、優れた定着性、耐オフセット性、および離型性を発揮出来るようになる。
前記炭化水素系ワックスの酸価、水酸基価、エステル価は後述する方法により測定することが出来る。また炭化水素系ワックスの酸価、水酸基価、エステル価は、例えば脂肪族炭化水素系ワックスから炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、該炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解する工程において、触媒として添加するホウ酸と無水ホウ酸の添加量又は添加比、反応温度、反応時間によって調整することが可能であり、特に水酸基価とエステル価の割合は、エステル化反応と加水分解反応それぞれの反応工程において、反応温度、反応時間によって転化率を調整することにより、調整することが可能である。
炭化水素系ワックスとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100〜3,000、より好ましくは200〜2,000、さらに好ましくは250〜1,000の範囲にある飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。
前記炭化水素系ワックスの数平均分子量が100未満だと、熱的影響を過度に受けやすく、耐ブロッキング性、現像性が劣るようになることがある。前記炭化水素系ワックスの数平均分子量が3,000より大きくなると、外部からの熱を効果的に利用できず、優れた定着性を得ることが出来なくなることがある。前記炭化水素系ワックスの数平均分子量は、後述する方法によって測定することができる。また、前記炭化水素系ワックスの数平均分子量は、例えば炭化水素系ワックスの原料となる脂肪族炭化水素ワックスの種類や、合成、熱分解、石油抽出といった製法に伴う数平均分子量の調整によって調整することが可能である。また、酸価、水酸基価、およびエステル価を調整する方法として前述した脂肪族炭化水素系ワックスから炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、該炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解する工程において、熱分解により数平均分子量も変化する。よって、さらに種類の異なる炭化水素系ワックスを組み合わせることでも数平均分子量の調整をすることが可能である。
また、前記炭化水素系ワックスの融点は、50℃〜100℃であり、好ましくは60℃〜90℃である。
前記炭化水素系ワックスの融点が50℃未満になると、トナーの保存性、耐オフセット性が低下し、トナー担持体やトナー規制ブレードに対する融着を引き起こしやすくなり、100℃超になると、トナーの現像部材に対する離型性が低下しやすくなるだけでなく、トナーの定着性能に悪影響を与える場合がある。
前記炭化水素系ワックスの融点は、後述する方法によって測定することができる。また、前記炭化水素系ワックスの融点は、例えば炭化水素系ワックスの種類やアルコール転化等による改質によって調整することが可能である。
前記炭化水素系ワックスの25℃における針入度が5以上15以下であることが、トナーの帯電性能を高め、環境変化に対して安定した画像を提供する観点から好ましい。このような観点において、炭化水素ワックスの針入度が5以上9以下であることがより好ましい。
炭化水素系ワックスの25℃における針入度が5未満であると、結着樹脂との相溶性が悪化し、トナー粒子内におけるワックスの分散が悪くなり、帯電性が不均一となり、現像性を悪化させる。また、15よりも大きいと、トナーの保存性が低下する場合がある。本発明において、炭化水素系ワックスの針入度はJIS K−2235−5.4により求められる。
前記炭化水素系ワックスは、示差走査熱量計(DSC)により測定されるトナーのDSC曲線の吸熱ピークにおいて、炭化水素系ワックスの融解熱に相当するΔH(J/g)のうち、35℃以上85℃以下の融解熱ΔHaに対する、35℃以上60℃以下の融解熱ΔHbの割合が1%以上20%以下であることが、高温高湿下での安定性および付着力制御の観点から好ましい。このような観点において、炭化水素系ワックスの融解熱のΔHaに対するΔHbの割合は5%以上20%以下であることがより好ましい。
炭化水素系ワックスの融解熱のうち、35℃以上85℃以下の融解熱ΔHaは前記炭化水素系ワックス全体の融解熱に相当する。また、35℃以上60℃以下の融解熱ΔHbは低分子量の低融点成分に相当するものと考えられる。
本発明で用いられる炭化水素系ワックスは、分子中に適度な水酸基を有していることにより、炭化水素系ワックスが結着樹脂中に微粒子状に分散できるので、適度な可塑効果が得られ、低温定着性および離型性が向上すると考えられるが、ΔHaに対するΔHbの割合が1%未満であると、炭化水素系ワックスがトナー中で十分に微分散せず、トナーの低温定着性および離型性の改善効果が十分に得られない。
また、ΔHaに対するΔHbの割合が20%より大きい、即ち低分子量化した低融点成分が多くなりすぎると、可塑効果が大きくなりすぎ、トナーの保存性が低下しやすかったり、トナー規制ブレードに対してトナーが融着しやすくなる傾向にある。
本発明に用いられるトナー粒子には、前記炭化水素系ワックスの他に、下記群より選ばれる一種以上のワックスを併用することが、低温定着性と耐オフセット性、および離型性のバランスにより一層優れたトナーを得ることが出来る。
本発明において、併用すると好ましい二種類目のワックスとしては下記のようなものが挙げられる。
例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、及び、それら酸化物を加水分解したアルコール、又は、それら酸化物のブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステル、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪族と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;等が挙げられる。
本発明において、上述のような好ましく併用される二種類目のワックスは、トナー粒子中におけるトナー粒子の材料の分散性や、トナーの帯電性に与える影響から、炭化水素ワックスが好ましい。例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、オレフィンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等で重合した低分子のポリオレフィン、高分子量(分子量5〜50万)のポリオレフィンを高温(例えば280〜390℃)で熱分解(熱減成)して得られる熱減成型ポリオレフィン、一酸化炭素・水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留成分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素等のフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。前記炭化水素ワックスには、酸化防止剤が添加されていても良い。特に、フィッシャートロプシュワックスが、トナー粒子中の分散性や離型性の観点から好ましく用いられる。
さらに好ましく併用される二種類目の炭化水素ワックスには、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素系ワックスの分別を行った物が好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した、一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(原料は石炭であっても、天然ガスであってもかまわない)、例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、あるいはワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素や、エチレン等のオレフィンをチーグラー触媒、メタロセン触媒により重合した炭化水素等が挙げられ、分岐が少なく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。
本発明におけるワックスの添加量は、結着樹脂100質量部に対し、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。ワックスが二種以上含まれる場合でも、ワックスの総量が上記範囲にあればどのような配合比でも構わないが、前者の炭化水素系ワックスを多く含有していることが好ましい。
なお、結着樹脂100質量部に対する炭化水素系ワックスの添加量が1質量部未満になるとトナーとしての定着性が低下しやすく、また十分な離型効果が得られず、15質量部超になると、耐オフセット性が低下しやすくなる。
本発明におけるワックス、結着樹脂の物性測定は、下記方法により実施することができる。
<ワックスの融点、結着樹脂のTg(ガラス転移温度)の測定法>
本発明におけるワックスの融点及び、結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、Q−1000(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いて、下記条件にしたがって行うことができる。ワックスの融点及び結着樹脂のガラス転移温度は、下記温度曲線の昇温IIで測定される吸熱ピークが検出される温度を用いる。
試料 :5〜20mg、好ましくは10mg
測定法 :試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I (20℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
降温I (180℃→10℃、降温速度10℃/min.)
昇温II(10℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
<分子量測定法>
ワックスの数平均分子量及び重量平均分子量及び、結着樹脂のピーク分子量は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー)によって測定することができる。本発明において、ワックス及び結着樹脂のTHF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
試料は以下のようにして作製する。まず試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、さらに12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)等使用できる。)を通過させる。これをGPCの試料とする。又、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。またカラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguard columnの組み合わせを挙げることができる。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
<ワックスの水酸基価の測定法>
本発明におけるワックスの水酸基価の測定は、下記のように実施することができる。
・装置及び器具
メスシリンダー(100ml)
全量ピペット(5ml)
平底フラスコ(200ml)
グリセリン浴
・試薬
アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
フェノールフタレイン溶液
0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
・測定法
(a)炭化水素系ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤して、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
(f)空試験は、炭化水素系ワックス(a)を入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
・計算
得られた結果から下記の式によって炭化水素系ワックスの水酸基価を求める。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
但し、
A:炭化水素系ワックスの水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:炭化水素系ワックスの質量(g)
D:炭化水素系ワックスの酸価(mgKOH/g)
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
<ワックスの酸価の測定法>
本発明におけるワックスの酸価の測定は、下記のように実施することができる。
(装置及び器具)
・三角フラスコ(300ml)
・ビュレット(25ml)
・水浴又は熱板
(試薬)
・0.1kmol/m3塩酸
・0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1kmol/m3塩酸25mlを全ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
・フェノールフタレイン溶液溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
(測定法)
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
(c)0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
(計算)
得られた結果から下記式によりワックスの酸価を算出する。
A=5.611×B×f/S
但し、
A:ワックスの酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
<ワックスのエステル価の測定法>
本発明におけるワックスのエステル価の測定は、下記のようにケン化価を用いて下記式により算出することができる。
(ワックスのエステル価)=(ワックスのケン化価)−(ワックスの酸価)
ケン化価の測定
・装置及び器具
三角フラスコ(200〜300ml)
空気冷却器(外径6〜8mm,長さ100cmのガラス管又は環流冷却器で、いずれも三角フラスコの口にすりあわせ接続できるもの)
水浴、砂浴又は熱板(約80℃の温度に調節できるもの)
ビュレット(50ml)
全量ピペット(25ml)
・試薬
0.5kmol/m3塩酸
0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
フェノールフタレイン溶液
・測定法
(a)炭化水素系ワックス(a)1.5〜3.0gを三角フラスコに1mgの桁まで精秤する。
(b)0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液25mlを全量ピペットを用いて加える。
(c)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板上で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは、環流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
(d)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン:エタノール=1:3混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
(e)指示薬としてフェノールフタレイン溶液1mlを加えて、0.5kmol/m3塩酸で滴定し、指示薬の薄い紅色が約1分間現れなくなったときを終点とする。
(f)空試験は、炭化水素系ワックス(a)を入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、予めキシレン、又はキシレン−エタノール混合溶媒を用いて溶解する。
・計算
得られた結果から下記式によりワックスのケン化価を算出する。
A={(B−C)×28.05×f}/S
但し、
A:炭化水素系ワックスのケン化価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
f:0.5kmol/m3塩酸のファクター
S:炭化水素系ワックス(a)の質量(g)
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を使用することができ、このような樹脂として、例えば、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル系樹脂とビニル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましく、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂を含有することが、付着力を制御するうえでよい。結着樹脂として、これらの樹脂を単独で、又は2種類以上を組合せて用いることができる。
本発明に用いられるポリエステル系モノマーとしては以下のものが挙げられる。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、下記(1−1)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(1−2)式で示されるジオール類が挙げられる。
酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
また本発明のポリエステル樹脂は、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物及び/または三価以上の多価アルコールを含むポリエステル樹脂であると、さらに分子量や粘度をコントロールしやすく好ましい。三価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステルなどが挙げられ、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。本発明の結着樹脂においては、環境変動による安定性も高い芳香族系アルコールが特に好ましく、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
ビニル系樹脂を生成する為のビニル系モノマーとしては、次に様なものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−nヘキシルスチレン、p−nオクチルスチレン、p−nノニルスチレン、p−nデシルスチレン、p−nドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nオクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系樹脂は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレ一ト、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレー卜をメタクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及び工一テル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4ヒドロキシフエニル)プロパンジアクリレード、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4ヒドロキシフエニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;ポリエステル型ジアクリレート化合物類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)が掲げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01乃至10質量部(更に好ましくは0.03〜5質量部)用いることができる。
これらの架橋性モノマーのうち、結着樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
本発明のビニル系共重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾピス(−2メチルプチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソプチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デ力ノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジーイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−工トキシエチルパーオキシカーボネト、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソプチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキンベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−プチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートがあげられる。
本発明において、結着樹脂が酸価を有することが好ましく、より好ましくは、結着樹脂の酸価が1〜30mgKOH/gであり、より好ましくは、酸価が1〜20mgKOH/g、さらに好ましくは、酸価が1〜10mgKOH/gであることが付着力を制御するうえでよい。
結着樹脂の酸価が1mgKOH/g未満になると、トナーの帯電性が不十分になり、現像性が悪化しやすく、また滞留トナーも少なくなりやすい。一方、30mgKOH/gを超える場合には、結着樹脂の吸湿度が高くなりやすく、トナーの帯電性が不安定になることがあるだけでなく、付着力が大きくなりすぎる場合があり、上述のような問題を引き起こしやすい。
また、結着樹脂のOH価(水酸基価)は、60mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは45mgKOH/g以下である。これは、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなり、トナーの流動性、付着性、表面抵抗(吸着水の影響)が変動し、画質の低下を生じる場合があるためである。
結着樹脂の酸価は、例えば、下記1)〜5)の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に属する。
1)試料はあらかじめ結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、試料の結着樹脂以外の成分の含有量を求めておく。磁性トナー又は結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0gを精秤する。このときの結着樹脂成分の質量をW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定測定装置を用いて測定する。この滴定には、例えば、京都電子株式会社の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)下記式により酸価を計算する。なお下記式中のfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
OH価は、例えば、下記1)〜8)の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に準ずる。
1)試料はあらかじめ結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、試料の結着樹脂以外の成分の含有量を求めておく。トナー又は結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0gを200ml平底フラスコに精秤する。
2)これにアセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ(100ml)に取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分撹拌する)を5mlを加える。なお試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加え溶解する。
3)フラスコの口に小さなロートを置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根に被せる。
4)1時間後フラスコにグリセリン浴から取り出し、放冷後ロートから水1mlを加えて振り動かし無水酢酸を分解する。
5)さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール5mlでロート及びフラスコ壁を洗う。
6)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
7)樹脂を入れないで2)〜6)を空試験として行う。
8)下記式によりOH価を計算する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
(但し、Aは水酸基価(mgKOH/g)であり、Bは空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)であり、Cは滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)であり、fは0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクターであり、Sは試料中に含まれる結着樹脂の量(g)であり、Dは試料の酸価である。なお式中「28.05」は水酸化カリウムの式量(56.11×1/2)である)。
結着樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば結着樹脂を構成するモノマーの種類及びそれらの配合量によって調整することができる。
本発明において、ロジン、変性ロジン、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等の他の樹脂を、前述した結着樹脂に、必要に応じて混合して用いることができる。二種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては、分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
さらに本発明に用いられる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜70℃であり、数平均分子量(Mn)は2,500〜50,000、重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000であることが好ましい。
結着樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、結着樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、この溶液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、測定値であるカウント数(リテンションタイム)と、数種の単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線の対数値とから求めることができる。また、結着樹脂の分子量は、重合条件、架橋剤の使用、結着樹脂の混練等によって調整することができる。
結着樹脂のガラス転移温度は、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度が45〜80℃を示すように、結着樹脂の構成物質(重合性単量体)を選択することにより調整することができる。また結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7やTAインスツルメンツジャパン社製のDSC2920を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さいと、トナーの保存性が不十分となることがあり、結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも大きいと、トナーの定着性が不十分となることがある。
ビニル系重合体又は共重合体からなる結着樹脂を合成する方法としては特に限定されず、従来より知られている種々の製法を利用することができる。例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法の如き重合法が利用できる。カルボン酸モノマー又は酸無水物モノマーを用いる場合には、モノマーの性質上、塊状重合法又は溶液重合法を利用することが好ましい。
また、結着樹脂がTHF不溶分を含有していることが、離型性を制御する点で好ましい。樹脂に対して、以下の方法で求められるTHF不溶分が0.1質量%〜60質量%含有されていることが、低温定着性と離型性の観点から好ましい。
THF不溶分が0.1%未満である場合には、トナー化したとき、トナーの粘度が小さくなりトナー規制ブレードに対するトナー融着が発生しやすくなる。また、60%超である場合には、トナーの低温定着性が悪化したり、トナー製造時における溶融混練過程での負荷が大きく、生産性に問題が出てしまう。
結着樹脂のTHF不溶分は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として結着樹脂をソックスレー抽出器にかけたときの残分から求めることができる。より具体的には、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×10mm、東洋ろ紙社製)に秤量した結着樹脂を入れ、溶媒として200mlのTHFを用い、THFの抽出サイクルが約4〜5分に1回になるような還流速度で16時間抽出し、抽出終了後、円筒ろ紙を取り出して秤量し、下記式から結着樹脂におけるTHF不溶分を求めた。
THF不溶分(質量%)=W2/W1×100
なお、前記式中、W1は円筒ろ紙に入れた結着樹脂の質量(g)を示し、W2は抽出後の円筒ろ紙中の結着樹脂の質量(g)を示す。
本発明では、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂とビニル系樹脂を混合して用いると、帯電性や定着性、保存安定性のうえで好ましく、さらに両者が一部反応したハイブリッド樹脂成分を含有することが特に好ましい。このハイブリッド樹脂は、本来相溶性の悪い2種類の樹脂が均一に分散している為、両樹脂の特性を活かすことができるだけでなく、ワックスなど他の内添剤との相溶性に優れるため、離型性を高め、付着力の制御がよりしやすく、帯電量分布が均一になりやすい。
すなわち、ビニル系共重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
上記のような結着樹脂を単品で使用しても良いが、軟化点の異なる2種以上の結着樹脂を混合して使用しても良い。
本発明のトナーは更に磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもでき、一成分現像方式を用いることによって、キャリアが不必要となり、装置の小型化の点で有利である。
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下であり、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、795.8kA/m印加での磁気特性が、抗磁力1.6〜12.0kA/m、飽和磁化50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。
これらの強磁性体はトナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量部に対し約20〜200質量部、特に好ましくは樹脂成分100質量部に対し40〜150質量部が良い。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物等が用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができ、二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものを用いることができる。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20〜300μmの粒子が使用される。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
また、本発明においては、荷電制御剤を添加して使用することが好ましい。なお、本発明の磁性トナーの帯電性は正負のどちらでも良いが、結着樹脂自体は負帯電性が高いので、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電性のものとしては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ハイドロキシカルボン酸または芳香族ダイカルボン酸の金属錯体及びその金属塩、無水物、エステル類やビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。
負帯電用の荷電制御剤として好ましいものは、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)が挙げられる。
正帯電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩、及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブテン酸、リンタングステンモリブテン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きオルガノスズボレートが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上の組み合わせて用いることができる。
正帯電用の荷電制御剤として好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標) N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が挙げられる。
これらの金属錯化合物は、単独でも或いは二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらの荷電制御剤の使用量は、トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部あたり0.1〜5.0質量部が好ましい。
本発明においては、トナー粒子表面にさらに疎水性無機微粒子が外添されていることが好ましい。
特に、平均1次粒径が5〜25nmであり、個数分布におけるピーク粒子径が20nm以下である小粒径無機微粒子と、該小粒径無機微粒子の平均1次粒径の1.5〜100倍の平均1次粒径を持つ大粒径無機微粒子の少なくとも2種以上の無機微粒子を含有することが特に好ましい。
小粒径無機微粒子を添加することにより、主にトナー粒子に帯電性や流動性を付与することができるため好ましい。一方、大粒径無機微粒子を添加することにより、スペーサー粒子としてトナー粒子表面に存在することで、トナー粒子と撹拌部材、トナー粒子とトナー担持体、トナー粒子とトナー規制ブレード、トナー粒子と現像器内壁、トナー粒子とトナー粒子等の接触時に離型性を高める効果を発揮させやすい。また、大粒径無機微粒子を添加することにより、小粒径無機微粒子にかかる負荷を軽減し、小粒径無機微粒子がトナー粒子表面に埋没したり、或いはトナー粒子表面から剥離する等の、トナー粒子の劣化を抑止させやすい。
小粒径無機微粒子の平均1次粒径が5nmより小さい場合は、疎水化した際に小粒径無機微粒子同士の付着力が大きくなりすぎて凝集しやすくなる為、トナー粒子表面に均一に分散させることが難しくなる。25nmより大きくなるとトナーの流動性や帯電性が低くなりやすい。
また、小粒径無機微粒子の個数分布におけるピーク粒子径が20nm以下、好ましくは15nm以下である場合に大粒径無機微粒子を組み合わせた効果が最も得られやすい。
小粒径無機微粒子の個数分布におけるピーク粒子径が20nmより大きいと、小粒径無機微粒子の粒度分布がブロードになりやすく、上述のように、現像性や流動性の低下を引き起こしやすい。
大粒径無機微粒子の平均1次粒径は、小粒径無機微粒子の平均1次粒径の1.5〜100倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜30倍、さらに好ましくは1.5〜10倍、さらに好ましくは1.5〜5倍である。小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の粒径差がこの範囲にある時に、大粒径無機微粒子がスペーサー効果や離型効果を最も発揮しやすい。
大粒径無機微粒子の平均1次粒径が、小粒径無機微粒子の平均1次粒径の1.5倍より小さい場合には、粒径差が小さすぎて、大粒径無機微粒子のスペーサー効果や離型効果が得られにくい。粒径差が100倍よりも大きい場合には、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の流動性やかさ比重等の物性差が大きくなりすぎ、後述の方法で疎水化処理する際に両者を均一に混合するのが難しくなり、大粒径無機微粒子が偏析して、均一な疎水性無機微粒子が得られない場合があり、現像性が悪化することがある。
本発明の疎水性無機微粒子は、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を1:5〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、より好ましくは3:1〜20:1の質量比で混合したものであることが良い。1:1よりも小粒径無機微粒子の質量比が少ないと、小粒径無機微粒子の量が少なすぎて、帯電性の低下や流動性の悪化を引き起こしやすい。50:1よりも大粒径無機微粒子が少ないと、スペーサー効果が小さくなり、トナー粒子が劣化しやすくなるだけでなく、離型効果も小さくなりやすい。
本発明の疎水性無機微粒子は、疎水化処理前の小粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/g以上500m2/g以下、好ましくは100m2/g以上400m2/g以下、より好ましくは150m2/g以上350m2/g以下であり、大粒径無機微粒子のBET比表面積が5m2/g以上100m2/g未満、好ましくは20m2/g以上100m2/g未満、より好ましくは30m2/g以上80m2/g未満であることが良い。
小粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/gより小さいと粒径分布がブロードになる傾向があり、トナー粒子の帯電性や流動性を高める働きが小さくなってしまう。小粒径無機微粒子のBET比表面積が500m2/gより大きいと、均一に疎水化処理をすることや疎水性を高めることが難しく、無機微粒子間の疎水性に差が出やすくなる。
大粒径無機微粒子のBET比表面積が5m2/gより小さいと、トナー粒子表面への付着力が弱くなり、大粒径無機微粒子がトナー粒子から遊離しやすくなるため、トナー粒子の劣化防止効果や離型効果が小さくなる。大粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/g以上だと、劣化防止に効果を示す粒径の無機微粒子が少なくなる為、劣化防止効果や離型効果が得られにくくなる。また、効果を得る為に多くの量を添加する必要が生じ、定着性を悪化させやすくなる。
トナー粒子に添加する疎水性無機微粒子は、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに、凝集体としてではなく、1次粒子としてトナー粒子表面に存在している場合に、トナー粒子の流動性、帯電性、及び劣化防止という働きを最も効果的に発揮しやすい。さらに、特に大粒径無機微粒子が1次粒子として存在していると、トナー粒子と各種現像部材との離型効果を発揮しやすい。
小粒径無機微粒子が凝集した状態でトナー粒子表面に存在した場合、トナー粒子に優れた流動性や帯電性を与えにくくなるうえに、流動性や帯電性付与に有効に働く粒子数が減ってしまう為により多くの量を添加する必要がある。また、多くの量を添加することでトナー粒子表面が無機微粒子で覆われてしまい、定着性が悪化することもある。
大粒径無機微粒子が凝集した状態で存在すると、トナー粒子との付着力が弱くなり遊離した状態になりやすく、トナー粒子と挙動が異なってしまい、スペーサー粒子としての働きが弱く、劣化防止効果や離型効果が得られにくくなる。また、凝集体はトナー粒子にかかる機械的負荷でほぐれてしまう場合もあるので、凝集状態を制御することが非常に難しく、長期にわたり安定した現像性を得ることが難しい。さらには、大粒径無機微粒子の凝集体が存在することでトナー粒子間の距離が大きくなりすぎ、やはり定着性が悪化しやすい。
すなわち、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに1次粒子としてトナー粒子表面に存在していることが、本発明の目的を達成するうえでより好ましい。
粒径の異なる疎水性無機微粒子をトナー粒子に添加することは従来より行なわれている技術であるが、これまでの技術では、粒径の異なる無機微粒子それぞれを個別に疎水化処理し、2種類以上の疎水性無機微粒子をトナー粒子に添加、混合することで所望の現像剤を得ようと試みられてきた。疎水化処理された無機微粒子は、無機微粒子表面にカップリング剤やオイルなどの疎水化処理剤が存在するので粒子同士が付着しやすく、凝集しやすい。また、粒径や疎水化度が異なると、無機微粒子の凝集性も異なる為、複数の疎水性無機微粒子をトナー粒子表面に均一に1次粒子の状態で分散・付着させることが非常に難しかった。さらに、均一に1次粒子の状態で分散・付着させようとすると、凝集性の高いものをまずトナー粒子に添加・混合後に、凝集性の低いものを再度添加して混合する等、トナー粒子への添加方法や混合方法を2段階、あるいは3段階に分割する必要があり、各工程でそれぞれ最適な混合強度、混合時間などの条件合わせが必要になり、生産性が低下する等の問題があった。
本発明で好ましく用いられる疎水性無機微粒子は、小粒径無機微粒子と、大粒径無機微粒子の混合物を同一の処理槽内で同時に疎水化処理を行なう為、疎水化された小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子が1次粒子のレベルで均一に混合されており、また、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の疎水化処理が同一の処理槽内で同時に行なわれるために、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の表面性、凝集性が非常に近い状態になり、トナー粒子に添加混合した場合も、トナー粒子表面に1次粒子の状態で均一に分散させることができ、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子それぞれが持つ効果を十分に発揮することが可能になる。また、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の処理条件が同一である為に粒子毎の処理状態も均一となり、トナー粒子の流動性、帯電性、及び劣化防止という点で非常に優れる。
本発明で用いられる無機微粒子としては、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等があるが、現像性、流動性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナ、あるいはそれらの副酸化物から選ばれることが好ましい。
特に好ましくは、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の組成を同一にすることが、疎水化処理時に両者を均一に混合するという点で好ましい。
特に好ましいのは、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明に用いられるシリカとしてはそれらも包含する。
本発明においては、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに乾式法シリカであることが、両者を均一に混合し、疎水化処理するし易さ、また、トナー粒子に帯電性や流動性を与えやすいという観点で特に好ましい。
本発明に用いられる無機微粒子は、ネガトナー、ポジトナーのどちらにも適用可能であり、無機微粒子と反応或いは物理吸着する、シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤の一種又は二種以上により疎水化処理されていることが、離型効果を高めるという面で、より好ましい。
特にシラン化合物,シリコーンオイルで処理されたものが好ましく、中でも両者で処理されたものが特に好ましい。すなわち、この2つのタイプの処理剤で表面処理することで疎水化度分布を高疎水性のものに揃え、しかも均質に処理できるようになる。そのため、このような無機微粒子を用いたトナー粒子は、良好な現像性を備えることができるだけでなく、優れた離型効果を発揮しやすい。
シラン化合物としては、メトキシシラン,エトキシシラン,プロポキシシラン等のアルコキシシラン類、クロルシラン,ブロモシラン,ヨードシラン等のハロシラン類、シラザン類、ハイドロシラン類、アルキルシラン類、アリールシラン類、ビニルシラン類、アクリルシラン類、エポキシシラン類、シリル化合物類、シロキサン類、シリルウレア類、シリルアセトアミド類、及びこれらのシラン化合物類が有する異種の置換基を同時に有するシラン化合物類があげられる。これらのシラン化合物を用いることにより、流動性,転写性,帯電安定化が得られる。これらのシラン化合物は複数用いても良い。
具体例として、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種或いは2種以上の混合物として用いても良い。
本発明に好ましく用いられるシリコーンオイルとしてはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンがあげられる。
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が5〜2,000mm2/sであることが好ましく、より好ましくは10〜1,000mm2/s、さらに好ましくは30〜100mm2/sである。5mm2/s未満では十分な疎水性が得られないことがあり、2,000mm2/sを超える場合には無機微粒子処理時に均一に処理しづらくなったり、凝集物ができやすく十分な流動性が得られないことがある。
また、本発明の疎水性無機微粒子は、窒素含有のシラン化合物で処理したものを用いてもよく、特にポジトナーに適用する場合に好ましい。そのような処理剤の例としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−γ−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−γ−プロピルイミダゾール等がある。これらの処理剤は1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。
さらには他の有機処理として側鎖に窒素原子を有するシリコーンオイルで処理することも可能であり、特にポジトナーに適用する場合は好ましい。そのようなシリコーンオイルとしては、少なくとも下記式(3),(4)で表される部分構造を具備するシリコーンオイルがある。
[式中、R
1は水素,アルキル基,アリール基またはアルコキシ基を示し、R
2はアルキレン基またはフェニレン基を示し、R
3及びR
4は水素,アルキル基またはアリール基を示し、R
5は含窒素複素環基を示す。]
なお、上記アルキル基、アリール基、アルキレン基、フェニレン基は窒素原子を有するオルガノ基を有していても良いし、ハロゲン等の置換基を有していても良い。
これらのシリコーンオイルは1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。また、シラン化合物による処理と併用しても構わない。
上記無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子を撹拌等によりクラウド状としたものに気化したシラン化合物を反応させる乾式処理又は、無機微粒子を溶媒中に分散させ、シラン化合物を滴下反応させる湿式法等、一般に知られた方法で処理することができる。
無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子原体100質量部に対し、処理剤を5〜40質量部、好ましくは5〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部添加して処理することが好ましい。
オイルによる処理量としては、無機微粒子100質量部に対し3〜35質量部である場合に、トナー粒子に添加した場合に均一に分散しやすく好ましい。
本発明では、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理後に、さらにシリコーンオイルで処理された疎水性無機微粒子が特に好ましく用いられる。ヘキサメチルジシラザンによる処理は、処理の均一性に優れ、流動性の良いトナー粒子が得られやすいが、ヘキサメチルジシラザンによる処理だけでは高温高湿環境での帯電が安定しにくい。逆にシリコーンオイルによる処理は、高温高湿環境での帯電は高く保てるが、均一な処理が難しく、均一に処理しようとすると処理に必要なシリコーンオイルの量が多くなり、流動性が悪化しやすくなる。ヘキサメチルジシラザンで処理後にシリコーンオイルで処理を行なうと、少ないオイルの量で均一な処理が可能になる為、流動性と高温高湿環境での帯電安定性、離型性を兼ね備えた無機微粒子が得られやすい。
本発明の疎水性無機微粒子は、たとえば以下のようにして疎水化処理を行なうことができる。
小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を、任意の質量比であらかじめヘンシェルミキサー等で混合したものを処理槽に投入、あるいは混合せずに任意の質量比でそれぞれを処理槽に直接投入して、処理槽内を撹拌翼等で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を混合しながら、ヘキサメチルジシラザンを所定量滴下或いは噴霧して充分に混合する。このとき、ヘキサメチルジシラザンをアルコールの如き溶媒で希釈して処理することも出来る。混合分散した処理剤を含む無機微粒子原体はパウダーリキッドを形成しており、このパウダーリキッドを窒素雰囲気中でヘキサメチルジシラザンの沸点以上の温度(好ましくは、150乃至250℃)に加熱し、0.5乃至5時間、撹拌しながら還流する。その後、必要に応じて余剰の処理剤等を除去することも可能である。
シリコーンオイルによる原体無機微粒子表面の疎水化処理方法には、公知の技術が用いられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン処理と同様に、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を、任意の質量比であらかじめヘンシェルミキサー等で混合したものを処理槽に投入、あるいは混合せずに任意の質量比でそれぞれを処理槽に直接投入して、処理槽内を撹拌翼等で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を混合しながら、無機微粒子とシリコーンオイルとを混合する。シリコーンオイルとの混合はヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合させてもよいし、原体無機微粒子へシリコーンオイルを噴霧する方法によってもよい。或いは、適当な溶剤に、シリコーンオイルを溶解或いは分散せしめた後、ベースの無機微粒子と混合し、その後、溶剤を除去して作製してもよい。
シラン化合物及びシリコーンオイルで処理する場合には、原体無機微粒子をシラン化合物で処理後、シリコーンオイルを噴霧し、その後、200℃以上で加熱処理する方法が好適に用いられる。
本発明で使用する疎水性無機微粒子の作製に良好に用いられる方法としては、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子、未処理の小粒径無機微粒子とシラン化合物処理した大粒径無機微粒子、シラン化合物処理した小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子、シラン化合物処理した小粒径無機微粒子とシラン化合物処理した大粒径無機微粒子、のうちから選ばれるいずれかの組み合わせの小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を、同一の処理槽内で同時にシラン化合物又はシリコーンオイルで処理、あるいはシラン化合物およびシリコーンオイルにより処理するものである。
特に、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の均一混合性という観点で、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子の組み合わせが最も好ましい。
本発明に係る疎水性無機微粒子の疎水化処理方法としては、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を所定量バッチ内に仕込み、高速で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を均一に混合し、混合しながら混合物の処理をバッチ内で行なうバッチ式処理方法が好ましく、バッチ式処理方法によって得られた疎水性無機微粒子は、均一に処理が施され、品質的にも安定したものが再現性良く得られる。
疎水化処理方法として特に好ましいのは、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子をバッチ式処理槽でシラン化合物処理し、処理物を取り出さずにその後さらに同じ処理槽でシリコーンオイル処理を行なう方法が、均一処理、均一分散という点で優れている。
本発明では、このように疎水化処理された無機微粒子の中でも、メタノール濡れ性が60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上)であるものを用いることが好ましい。メタノール濡れ性は疎水性無機微粒子の疎水化度をあらわし、メタノール濃度が高いものほど疎水性が高いことを示す。疎水性無機微粒子のメタノール濡れ性が60%未満であると、無機微粒子が吸湿しやすくなる為、高温高湿環境でトナーを長期にわたって使用した場合に帯電量の低下による濃度薄が発生しやすい。
疎水性無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3質量部である。
トナー粒子100質量部に対する無機微粒子の添加量が0.1質量部未満になるとトナーとしての流動性、帯電性が低下しやすく、また十分な離型効果が得られずに付着力が大きくなりやすく、5質量部超になると、トナーがチャージアップしやすくなるだけでなく、遊離した無機微粒子が帯電部材や現像部材を汚染しやすい。
本発明のトナーの製造方法は特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。
例えば本発明のトナーは、結着樹脂とその他必要に応じて、磁性材料もしくは着色剤、ワックス、荷電制御剤などの材料をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、磁性体粒子、顔料又は染料を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行い、必要に応じて無機微粉体等の外添剤を前記混合機により混合することによって得ることができる。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等が挙げられる。
混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)等が挙げられる。
粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)等が挙げられる。
分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)等が挙げられる。
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
本発明のトナーは、重量平均粒径が4.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、5.0〜9.5μm、さらに好ましくは、5.2〜9.0μmである。重量平均粒径が10μmを上回る磁性トナーの場合には、トナー粒子自体の大きさにより、細線再現性などを課題とする高画質化の面で問題があり好ましくない。重量平均粒径が4.5μmを下回るトナーの場合には、かぶり、飛び散りを悪化させる事があるだけでなく、トナー比表面積が大きくなることにより付着力が増大する傾向があり好ましくない。
重量平均粒径は、粒径測定機であるコールターマルチサイザーII(コールター社製、商品名)等を用い測定することができる。例えば、コールターマルチサイザーIIに個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びパーソナルコンピューターを接続して測定することができる。
被検試料の調製に使用する電解液としては、試薬1級塩化ナトリウムを水に溶解した1%NaCl水溶液を用いることができる。その他、前記電解液としては、例えば、ISOTONR−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製、商品名)を使用することができる。
被検試料は、前記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更にトナーを2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い調製することができる。前記コールターマルチサイザーによる重量平均粒径の測定においては、アパーチャーとして、100μmアパーチャーを用いることができる。
本発明における重量平均粒径は、2μm以上の粒子径を有するトナーの粒子群について、個々の粒子の体積、個数を測定し、体積分布と個数分布を算出し、体積分布から求めた重量基準(各チャンネルの代表値をチャンネル毎の代表値とする)の重量平均粒径として求めることができる。
なおトナーの重量平均粒径は、例えばトナーの粉砕・分級や、適当な粒径の分級品の混合によって調整することができる。
本発明のトナーは、着色剤として前記磁性材料を含有させ、磁性トナーとすることにより、一成分現像方式を用いることによって、キャリアが不必要となり、装置の小型化の点で有利である。
本発明のトナーを磁性トナーとした場合、例えば一成分ジャンピング現像用の現像装置や、感光体への磁性トナーの供給(現像)と感光体からの転写残トナーの回収とを行う現像兼クリーニング装置を有する等の、一成分現像剤用の公知の画像形成装置を用いて画像形成に用いることができる。また、トナーが収容される現像装置と、トナー像として現像される静電潜像担持体とを少なくとも有し、画像形成装置本体に一体的に取り付けられるプロセスカートリッジにも好適に用いることができる。
また、本発明のトナーを担持するために好ましく用いられるトナー担持体は、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属又は合金で形成された導電性円筒が好ましく使用される。充分な機械的強度及び導電性を有する樹脂組成物で導電性円筒が形成されていてもよく、導電性のゴムローラを用いてもよい。また、円筒状に限らず、回転駆動する無端ベルト等の形態をしていてもよい。
特に、トナーの帯電コントロールが容易なことから、トナー担持体表面が導電性微粒子及び/又は滑剤を分散した樹脂層で被覆されている形態が好ましい。
樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を使用することができる。
中でもシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、あるいはポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂のような機械的性質に優れたものがより好ましい。
樹脂層に含有させる導電性微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化亜鉛など導電性金属酸化物及び金属複酸化物、などが単独もしくは2つ以上好ましく用いられる。
本発明に使用されるトナー担持体の表面粗さはJIS中心線平均粗さ(Ra)で0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm未満ではトナー担持体上の帯電量が高くなり、現像性が不十分になる傾向がある。Raが3.5μmを超えると、トナー担持体上のトナーコート層にムラが生じ、画像上で濃度ムラとなる傾向がある。さらに好ましくは、0.2〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。本発明において、Raは、JIS表面粗さ「JIS B 0601」に基づき、表面粗さ測定器(サーフコーダSE―30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さに相当する。
Raを上記範囲に調整するには、例えばトナー担持体の表層の研磨状態を変える、あるいは球状炭素粒子、カーボン微粒子、グラファイトなどを添加することにより可能である。
また、トナー担持体内部には、多極を有する固定されたマグネットを有し、磁極は3〜10極有することが好ましい。
トナー担持体の直径は、マシンスピードによって、Φ10程度からΦ30程度のものまで適宜選択して使用し、磁極の強さはマシンスピード、現像スリーブ径や磁性トナーの現像性との兼ね合いにより適宜決定される。現像部の磁性トナーの長い穂の生成を抑えるために、現像部の磁極及び、トナー量規制部の磁極は、ともに1000ガウス(0.1テスラ)以下であることが好ましい。