以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のトナーは、無機微粒子として、個数平均粒子径80nm以上150nm以下である無機微粒子を含有するものであり、より好ましくは90nm以上130nm以下の粒子である。前記無機微粒子の個数平均粒子径が80nm以上150nm以下のとき、長期間に渡り画像出力を続けても、前記無機微粒子はトナー粒子へ埋め込まれることがなく、トナーとドラムがトナー粒子の面で接触するのではなく、無機微粒子とドラムが点で接触する状態を維持でき、トナーとドラムの離型性が維持され、結果として転写効率の低下を抑制することができる。80nm未満の粒子では、トナー粒子への埋め込みが起こり、スペーサーとしての働きが弱まり、転写性向上への寄与が小さくなる。一方、150nmを超えると、トナー粒子から無機微粒子が脱離しやすくなり、無機微粒子をトナー粒子表面に安定的に付着させることが難しくなり、転写効率が低下する。また、現像時にトナーから脱離した無機微粒子が、現像器周辺を汚染したり、脱離した無機微粒子が感光ドラムやキャリアなどへ付着し、帯電性能悪化を起こすことがある。
また、本発明は、走査型プローブ顕微鏡で測定される(以下SPM)トナー粒子の平均谷深さRvmが120nm以上200nm以下、好ましくは140nm以上160nm以下であり、SPMにより測定された前記トナー粒子の平均谷深さRvm、X方向の凹凸平均間隔Wの比を0.15より大きく1.0未満とすることが特徴である。SPMで測定されるトナー粒子のRvmが120nm以上200nm以下であり、かつ前記トナー粒子のSPMで測定される平均谷深さRvm、X方向の凹凸平均間隔Wの比を0.15より大きく1.0未満となるようなトナー粒子表面性を有する時、本願規定範囲の前記無機微粒子が添加されたトナーにおいて、無機微粒子が長期にわたる画像出力によってストレスを受けても、前記無機微粒子がトナー粒子表面を移動しトナー粒子表面上で偏在することもなく、スペーサーとしての効果が長期にわたり安定して発揮され、耐久性に優れたトナーとなった。
SPMで測定される平均の谷深さRvmは、基準となる測定範囲面内のトナー粒子表面の測定平均面から最も深い谷の深さ(最大谷深さ)Rvを平均化したもので、トナー粒子面の粗さを表す指標である。SPMにより測定されるトナー粒子の平均谷深さRvmが120nm以上200nm以下の表面粗さを有する時、長期にわたる画像出力によっても帯電特性が安定し、長期にわたって安定した画像出力が可能となった。しかし、Rvmが120nm未満のとき、長期にわたる画像出力によって帯電特性が急速に変化することがある。これは、トナー表面の粗さが小さくなり、前記無機微粒子とトナー表面との摩擦が不足することによって、無機微粒子がトナー粒子から脱離し、さらに、脱離した無機微粒子がキャリアに移行して、キャリアの帯電付与能を大きく変化させたためと推察される。また、無機微粒子の脱離によって、トナー粒子表面が露出し、流動性の低下によって、帯電特性が変化したとも考えられる。
一方、Rvmが200nmを超える場合にも、長期にわたる画像出力によってトナーの帯電量が大きく変動、濃度低下などの画像不良が発生することがある。トナー表面のRvmが200nmより大きな粗さを有する場合、本願規定の無機微粒子はトナー粒子表面に固定されやすくなると予想される。しかし、長期にわたる画像出力によって、本願規定の無機微粒子にストレスがかかると、トナー粒子に無機微粒子が埋没し、トナーがトナー粒子化することになる。そのために、帯電量の上昇や流動性の低下によるフェーディングなどが発生し、良好な画像が得られなくなった可能性が考えられる。
また、RvmとWの関係が(1)を満たす時、長期にわたる画像出力においても、転写効率と現像性が維持され、安定した画像出力が可能であった。通常、前記無機微粒子ような添加剤は、長期にわたる画像出力によって、より安定に存在できるトナー粒子表面の凹部へ移動していくことがあるが、RvmとWの関係を(1)の範囲としたことで、無機微粒子のトナー表面上の移動が、効果的に抑制されたため、安定した画像出力が可能となったと考えられる。
Rvm/Wが0.15以下の場合、トナーの帯電変動が大きくなる。また、連続した画像出力によって、画像濃度の低下や転写性が低下することがある。トナー粒子表面の谷部が逆三角形状にくぼんだ形状と仮定すると、Rvm/Wが0.15以下のとき、谷部の角度が大きく開いた形状になっているものと推測される。そのような谷の形状では、谷部に無機微粒子が固定されにくくなり、無機微粒子がトナー粒子表面上を移動し、無機微粒子のトナー表面での偏在がおこったと考えられる。無機微粒子がトナー表面上での偏在がおこり、トナー粒子の被覆状態が大きく変わった結果、トナーの帯電特性が変化し、さらに、トナー粒子表面が露出したことでトナーとドラムとの付着力があがり、転写効率が低下したものと推測される。
一方、Rvm/Wが1.0以上の場合、転写性の低下、チャージアップ発生や無機微粒子の飛散がおこることがある。トナー粒子表面の谷部が逆三角形状にくぼんだ形状と仮定した場合に、Rvm/Wが1.0以上になるのは、前記とは逆で、谷部の角度が閉じた形状になっているものと推測される。本願規定の無機微粒子を谷開口部分での挟み込めない場合には、トナー粒子表面に十分に固定することができなくなり、無機微粒子が脱離し、飛散したものと推測される。また、本願規定の無機微粒子の粒径が、Rvmより小さく、谷部に落ち込み、入り込んだ場合には、谷部の開口部が狭いために、他のトナーやキャリアと接触できず、スペーサー効果が発揮できず、流動性が悪化すると考えられる。また、トナーと感光ドラムとの付着性も強まり、転写性が低下したものと考えられる。また、キャリアからの離型性が低下して、選択現像となり、チャージアップするものと推測される。
本発明において、トナー粒子の平均谷深さRvmは、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定される。以下に、測定方法の例を示す。
SPM装置:
NanoScopeIV SPMコントロールステーション(ビーコインスツルメンツ社製)
Dimension3100SPMステージシステム(ビーコインスツルメンツ社製)
測定モード:タッピングAFM
探針:NCH(ポイントプローブシリコン製SPMセンサー、ナノワールド社製)
解像度:Xデータ数 256
Yデータ数 256
本発明においては、サンプル固定用試料板にカーボンテープを貼り、トナー粒子を山盛りに載せ、圧縮エアーでテープに固定されていないトナー粒子を吹き飛ばし、その後、3日間以上静置した後測定を行った。走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー粒子表面の、中央部の2μm四方のエリアとする。測定するトナー粒子及びトナーは、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)にほぼ等しいトナー粒子をランダムに選択して測定し、トナー粒子の最大谷深さRvを測定する。異なるトナー粒子を20個以上測定し、データ取り込み時にFULL(データファイルから算出した最適平面を取り込まれた画像から差し引く)補正を実施し、その後、二次のFlatten補正を行う。粗さ解析を行い、最大谷深さRvを求め、得られたデータRvを平均して、トナー粒子の平均谷深さRvmとする。また、各トナーのRvが観測された走査線において、Rvを与えた谷の走査方向における谷部開口距離wを計測し、トナー数で平均して凹凸平均間隔Wと定義した。
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子の表面を走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する場合は外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
1)トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10ml加える。
2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。磁性体を含むトナーの場合は、磁石をサンプル瓶の底にあててトナー粒子を固定して上澄み液だけ分離させても構わない。
4)上記2)、3)を計3回行い、得られたトナー粒子を真空乾燥機で室温で十分に乾燥させる。
外添剤を取り除いたトナー粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認した後、走査型プローブ顕微鏡でトナー粒子の表面観察をすることができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで2)、3)を繰り返し行った後に走査型プローブ顕微鏡でのトナー粒子の表面観察を行う。
2)、3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリで外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
本発明の前記無機微粒子は、個数平均粒子径が80nm以上150nm以下の、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の無機微粒子である。例えば、気相分解法、燃焼法、爆燃法など従来公知の技術を用いて製造されたいかなるシリカを使用することができるが、アルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して、粒子化する、公知のゾルゲル法により製造された個数平均粒子80nm以上150nm以下の球状疎水性シリカがより好ましい。ゾルゲル法により得られたシリカは、適度な粒径と粒度分布を有し、単分散かつ球形であるため、トナー粒子表面に均一に分散させやすく、また、安定したスペーサー効果によってトナーの物理的付着力を小さくできる。また、比抵抗が大きいため、転写電界からの電荷の注入が少なくなり、複数回の転写工程を経た場合であってもトナー帯電量分布の変化が小さくできると考えられる。ゾルゲル法により得られたシリカを使用することで、良好な帯電性と転写性をより長期にわたって維持することが可能となったと推測される。
さらにゾルゲル法により得られたシリカ表面を疎水化処理して用いてもよく、疎水化処理剤としては、シラン化合物が好ましく用いられる。シラン化合物の例としては、ヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン、トリメチルアセトキシシラン等のモノアシロキシシランが含まれる。
本発明のトナーにおける、上記無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.3〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜3.0質量部である。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、および離型剤を含有するトナー粒子を有するものであり、本発明に係る結着樹脂としては、種々の樹脂を用いることができる。結着樹脂としては具体的に、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂等が含まれる。
前記結着樹脂として、少なくともポリエステルユニットを有する樹脂は、本発明所定の平均谷深さRvmに調整しやすい点、および幅広い定着温度で定着できる点で好ましい。
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとは、ビニル系モノマー成分であり、モノマー中に多価カルボン酸成分とビニル系モノマーを有するものモノマー、または多価アルコール成分とビニル系モノマーを有するモノマーはポリエステル系モノマーに該当するものとする。
好ましく用いられる結着樹脂としては、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、及び(f)ポリエステル樹脂ユニットとハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物のいずれかから選択される樹脂である。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、樹脂成分のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布においてメインピークを分子量3500〜35000の領域に有しており、好ましくは、分子量5000〜20000の領域に有しているとよい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以上であることが好ましい。
本発明におけるGPC測定による分子量分布の測定は、後に詳述する。
メインピークが分子量3500未満である場合には、トナーの耐高温オフセット性が不十分となる。一方、メインピークが分子量35000を超える場合には、十分なトナーの低温定着性が得られなくなり、高速機での適用が難しくなる。また、Mw/Mnが5.0未満である場合には、シャープメルトとなり、高いグロスは得られやすくなるが、耐高温オフセット性が得られなくなる。
結着樹脂としてポリエステル系の樹脂を用いる場合は、アルコール成分と酸成分(カルボン酸、カルボン酸無水物、またはカルボン酸エステル等)を原料モノマーとして使用できる。
具体的には、例えば、2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトローラー、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセローラー、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチローラーエタン、トリメチローラープロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
上記の中でも、特に、下記一般式(I)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、トナーとして、良好な帯電特性を示すことができ好ましい。
〔式中、Rはエチレン、またはプロピレン基である。x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。〕
また、非線形状ポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸および、これらの無水物やエステル化合物などが挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全カルボン酸モノマーに対して0.1〜1.9mol%が好ましい。
ビニル系重合体を製造する場合に用いられるビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クローラースチレン、3,4−ジクローラースチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クローラーエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピローラー、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂に使用されるビニル系重合体およびビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
架橋剤の例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものなどのアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものなどのエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものなどの芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
また多官能の架橋剤の例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチローラーエタントリアクリレート、トリメチローラープロパントリアクリレート、テトラメチローラーメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
本発明に係るビニル系重合体およびビニル系重合体ユニットを製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
結着樹脂として、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、さらに良好な離型剤分散性と、低温定着性、耐オフセット性の向上が期待できる。
本発明に用いられる「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものである。好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
本発明ではビニル系重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体とポリエステル樹脂の反応より得られるハイブリッド樹脂を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂の製造方法を説明する。以下の(1)〜(6)に示す製造方法などでハイブリッド樹脂が製造できる。
(1)ビニル系重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造した後にブレンドして得る方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分とは、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行なって合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット又はハイブリッド樹脂成分を反応させて得る方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、酸)及び/またはポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット又はハイブリッド樹脂成分を反応させて得る方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体との反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットを製造した後に、これらの重合体ユニットの存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分を製造する。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造した後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(6)の製造方法を用いることにより、分子量、架橋度が異なる種々のビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットを用いたハイブリッド樹脂が製造できる。
また、前記トナーは、2μm以上の粒子における平均円形度が0.945乃至0.990であることが好ましい。
フロー式粒子像測定装置における円相当径(個数基準)2.0μm以上のトナーの平均円形度が0.945未満であると、多数枚の画像出力を行った際に、外添剤が埋め込まれることによりトナーの劣化が起こり、転写性が不充分になる場合があり好ましくない。逆に前記平均円形度が0.990よりも大きいと、トナーの形状が球形となりすぎるため、感光ドラムのクリーニングの際に転写残トナーがクリーニングブレードをすり抜けるなど、クリーニング不良による画像欠陥が出る場合があり好ましくない。また、感光体や転写体との付着力が弱まっているため、転写効率は向上するが、現像器からの飛散が起こることがある。
本発明のトナーは、重量平均粒子径が3.0〜7.0μmであり、好ましくは5.0〜6.0μmである。重量平均粒子径が7.0μmを超えると、ドットおよびラインの潜像をトナーにより忠実に現像できず、特に写真画像の再現または細線の再現が劣ったものになる。また、重量平均粒子径が3.0μm未満では、帯電・トナー流動性の制御が難しくなり、安定した画像が得られなくなる。
本発明のトナーは、上記重量平均粒子径と平均円形度、円相当径毎の平均円形度が規定範囲のものであればよく、今回、本発明者らは、結着樹脂、着色剤、離型剤及び任意の材料を溶融混練し、これを冷却して粗粉砕し、気流式または機械式粉砕機で微粉砕後、さらに後述する機械式粉砕機と分級及び表面改質処理を同時に行うことができる表面改質装置で処理し、これに無機微粒子を混合することによって、本発明のトナーを得ることができた。
本発明に用いられる着色剤としては、公知の顔料及び染料を単独で、又は併せて用いることができる。着色剤の例としては、以下のものが含まれる。
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
黒色の顔料として、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉や、または、上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン/黒色着色剤を用いて黒色に調色されたもの等が挙げられる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましく、3〜12質量部であることがより好ましく、4〜10質量部であることがさらに好ましい。着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表されるような中間色の再現性も低下し易くなり、さらにはトナーの帯電性の安定性が低下し、また低温定着性も得られにくくなる。着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、着色力が低くなり、濃度を出すためにトナーを多く使用しなければならなくなり、低温定着性に劣る場合がある。
本発明のトナーに含有されるトナー粒子の離型剤は、示差走査熱量計測定における吸熱曲線において、吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が60〜140℃の範囲にあることが好ましく、70〜120℃の範囲に吸熱曲線の最大ピークがあることがより好ましい。最大吸熱ピークのピーク温度が60℃未満である場合は、高温環境に放置した際に離型剤がトナー表面に溶け出しやすくなり、トナーの耐ブロッキング性が悪くなることがある。また、高速現像を行う場合にトナーが現像スリーブ、キャリアにスペントしやすくなる場合が生じる場合ことがある。逆に最大吸熱ピークのピーク温度が140℃を超える場合は、トナー定着溶融時に離型剤が迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性に劣るようになるために、高温オフセットが発生し易くなり、定着性が低下してしまう。また、低温定着ができなくなり、高速現像に適応できなくなる場合がある。
本発明における示差走査熱量計測定における吸熱ピーク測定は、後に詳述する。
本発明に用いられる離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリン離型剤、パラフィン離型剤、フィッシャートロプシュ離型剤の如き脂肪族炭化水素系離型剤;酸化ポリエチレン離型剤の如き脂肪族炭化水素系離型剤の酸化物;脂肪族炭化水素系エステル離型剤の如き脂肪酸エステルを主成分とする離型剤;及び脱酸カルナバ離型剤の如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。さらにベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。特に好ましく用いられる離型剤としては、分子鎖が短く、かつ立体障害が少なくモビリティに優れるパラフィン離型剤の如き脂肪族炭化水素系離型剤である。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、2〜8質量部であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部より少ないと、オイルレス定着時にうまく離型性を発揮できなかったり、低温定着性を満足できなかったりすることがある。10質量部を超えると、トナー表面へ離型剤が滲み出しやすくなり、現像性が悪化したり、耐スペント性が悪化する場合がある。
本発明で用いられる離型剤は、GPC測定による分子量分布において、数平均分子量(Mn)が好ましくは200〜2000、より好ましくはMn350〜1000である。また、前記離型剤は、GPC測定による分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が好ましくは200〜2500、より好ましくは350〜1200であることが良い。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.0以下であることが好ましい。離型剤が上記範囲の分子量分布を持つことにより、トナーに好ましい熱特性をもたせることができる。すなわち、上記範囲よりMn又はMwが小さくなると、熱的影響を過度に受けやすく、耐ブロッキング性、現像性に劣るようになり、上記範囲よりMn又はMwが大きくなると、外部からの熱を効果的に利用できず、優れた定着性、耐オフセット性を得ることができにくい。Mw/Mnが2より大きくなると、分子量分布が広いために溶融挙動が熱に対してシャープでなくなり、良好な定着性と耐オフセット性を共に満足する領域が得られ難くなる。
本発明のトナーに含有されるトナー粒子は、結着樹脂、着色剤、および離型剤を含有しているが、必要に応じて種々の添加剤(荷電制御剤等)をさらに含有してもよい。
荷電制御剤としては、例えば、有機金属錯体、金属塩、キレート化合物で、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体等が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類等のカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体等も挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーン等のフェノール誘導体等も挙げられる。本発明では、芳香族カルボン酸の金属化合物を用いることが、帯電の立ち上がりを良好にする上で好ましい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。0.1質量部より少ないと高温高湿から低温低湿までの環境でのトナーの帯電量の変化が大きくなる場合がある。10質量部より多いとトナーの低温定着性に劣る場合がある。
本発明のトナーには、前記無機微粒子に加え、さらに流動性や現像性を制御するため流動化剤として、公知の外添剤を添加することができる。外添剤としては、シリカ、アルミナ、酸化チタンの他シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム等の各種無機酸化微粒子、また必要に応じて疎水化処理した微粒子、ビニル系重合体、ステアリン酸亜鉛、樹脂微粒子等が使用できる。流動性が改良されることで、現像器内での撹拌によるトナー帯電が十分に行われ、カブリやトナー飛散に対して効果的なトナーとなる。一般に、高温高湿環境下でトナーを放置すると絶対帯電量が下がり、最後の画像出力後、長期間画像出力されない状態がつづき、長期間間隔をあけて画像出力をした場合に、必要な画像濃度も得られなくなる問題があるが、本発明のトナーはカブリやトナー飛散に対してより顕著な効果を発揮し、この問題を改善することができる。外添剤の添加量は、トナー粒子全質量に対して0.02〜5質量%の範囲が好ましい。
本発明のトナーは、トナーのみからなる(キャリアを含まない)一成分系現像剤及びトナーとキャリアとからなる二成分系現像剤のいずれにも適用できるものであり、何ら限定されない。本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。
上記磁性キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましく使用できる。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着せしめる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
特に、前記磁性キャリアが、少なくともバインダー樹脂に磁性微粒子が分散されてなる磁性微粒子分散型樹脂コアと、該磁性微粒子分散樹脂コアの表面を被覆する被覆樹脂を含有する被覆層とを有する磁性キャリアであることが特に好ましい。
磁性キャリアを構成する磁性微粒子分散型樹脂コアを製造する方法としては、バインダー樹脂を構成するモノマーと磁性微粒子とを混合し、前記モノマーを重合することにより磁性微粒子分散型コアを得る方法がある。このとき、重合に用いられる前記モノマーとしては、ビニル系樹脂を形成するためのビニル系モノマー;エポキシ樹脂を形成するためのビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂を形成するためのフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂を形成するための尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類などが用いられる。
例えば、硬化系フェノール樹脂を用いた磁性微粒子分散コア粒子の製造方法としては、水性媒体に磁性微粒子を入れ、この水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で重合することにより磁性微粒子分散型コアを得る方法がある。
磁性キャリアを構成する磁性微粒子分散型樹脂コアを製造する他の方法としては、バインダー樹脂としてのビニル系又は非ビニル系の熱可塑性樹脂、磁性体、その他の添加剤を混合機により十分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの混練機を用いて溶融・混練して、これを冷却後、粉砕・分級を行う方法がある。この際、得られた磁性微粒子分散型樹脂コアは熱的又は機械的処理により球形化された上、用いられることが好ましい。バインダー樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れる点から好ましい。特に、本発明の効果をより好適に発現させるためには、バインダー樹脂はフェノール樹脂であることがより好ましい。
磁性微粒子分散型樹脂コアに含有される上記磁性微粒子としては、MO・Fe2O3またはM・Fe2O4の一般式で表されるマグネタイト、フェライト等の如き強磁性酸化鉄粒子粉末、鉄以外の金属(Mn,Ni,Zn,Mg,Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト粒子粉末、バリウムフェライトの如きマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末、表面に酸化被膜を有する鉄や鉄合金の微粒子粉末などが含まれる。前記マグネタイト、フェライト等の一般式において、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属を用いることができる。磁性微粒子としては、特にマグネタイト、マグヘマイトを好ましく用いることができ、マグネタイトは安価であるためより好ましい。
上記磁性微粒子の個数平均粒子径は、0.02〜3μmであることが好ましく、磁性微粒子分散型樹脂コアの強度を考慮すれば、上記磁性微粒子の個数平均粒子径は0.05〜1μmであることが好ましい。その形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。
磁性微粒子分散型樹脂コアには、磁性微粒子とともに非磁性無機微粒子を含有してよい。非磁性無機微粒子の一例として、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ヘマタイト、ゲーサイト及びイルメナイト等の微粒子を用いることができる。磁性微粒子との比重差があまりない、ヘマタイト、酸化亜鉛、酸化チタン等がより好ましい。磁性微粒子分散型樹脂コアの製造に用いる該非磁性無機化合物微粒子の個数平均粒子径は、0.05〜5μmであることが好ましく、磁性微粒子分散型樹脂コアの強度を考慮すれば、上記非磁性無機微粒子の個数平均粒子径は0.1〜3μmであることがより好ましい。
磁性微粒子分散型樹脂コアの表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いられる。上記被覆材料の処理量は、磁性微粒子分散型樹脂コア全質量に対し好ましくは0.1〜30質量%であり、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。これらキャリアの平均粒子径は10〜100μmであり、好ましくは20〜70μmである。
磁性キャリアの好ましい個数平均粒子径は、トナーの重量平均粒子径との関係より、15〜60μmである。さらに好ましくは25〜50μmである。磁性キャリアを上記の個数平均粒子径を有するように調製する方法としては、例えば、篩を用いることによる分級によって行うこと等が挙げられる。特に、精度良く分級を行うために、適当な目開きの篩を用いて複数回くり返してふるうことが好ましい。また、メッシュの開口の形状をメッキ等によって制御したものを使うことも有効な方法である。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は二成分系現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
次に、本発明のトナーを製造する方法について説明する。
今回、本発明者らは、結着樹脂、着色剤、離型剤及び任意の材料を溶融混練し、これを冷却して粗粉砕し、気流式または機械式粉砕機で微粉砕する。その後、後述する機械式粉砕機と後述する分級及び表面改質処理を同時に行うことができる表面改質装置で分級と表面改質処理し、これに無機微粒子を混合することによって、本発明のトナーを得た。
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、結着樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、一軸又は二軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型二軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製二軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
そして一般的には上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒子径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級してトナー粒子(分級品)を得る。
本発明においては、粉砕工程で機械式粉砕、または、エアージェット式粉砕機にて第一段階の粉砕を行い、さらに、機械式粉砕機で第二段階の粉砕を行う。該機械式粉砕機は、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体である回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを具備し、且つ間隔を保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている。該回転子の外周面及び/または固定子の内周面は、複数の凸部と、該凸部と該凸部との間に形成される凹部とを有し、該凸部と該凸部との繰り返し距離Lが、2.0mm以上3.5mm未満である。
上記粉砕で得られた微粉砕物は、溶融混練物を冷却した固形物を粗粉砕した粗粉砕物を例えば図9に示す微粉砕システムに導入して調製することができる。微粉砕システムにおいて、粗粉砕物を原料供給機433に導入し、原料供給機433から搬送管434を経由して風力分級機432に導入する。風力分級機432は、コレクター438内にセンターコア440及びセパレートコア441を有している。風力分級機432内において、二次エアー供給口443から導入される2次エアにより粗粉砕物は、微粉砕物と粗粒子に分級される。分級された微粉砕物は、排出管442を経由してシステム外に排出され、図8に示す原料ホッパ380に導入される。分級された粗粒子は、本体ホッパー部439を経由して微粉砕機(例えば、ジェットミル)431に導入される。微粉砕機においては、圧縮空気が導入されているノズル435に粗粒子を供給し、粗粒子を高速の圧縮空気で搬送して、粉砕室437の衝突板436に衝突させて微粉砕し、粗粒子の微粉砕物を搬送管434を経由して風力分級機432に導入して、再度分級する。
微粉砕物の重量平均粒子径が、3.5〜9.0μmであり、且つ粒子径が4.00μm以下の粒子の割合が50〜80個数%であることが、後工程で分級及び粒子の表面処理を同時に表面改質装置内で効率良く行う上で好ましい。
粉砕工程後、さらに、分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を行う装置を用いて重量平均粒子径3.0〜7.0μmの分級品を得ることが好ましい。
本発明においては、分級及び表面改質処理を同時に行うことができる、図1に示すような表面改質装置が好ましく用いられる。表面改質装置として、微粉砕物に含まれる微粉及び超微粉を分級して除去する工程と微粉砕物の含まれる粒子の表面改質処理の工程とを同時に行う回分式の装置が好ましい。
前記表面改質装置は、円筒形状の本体ケーシング、該微粉砕物を本体ケーシング内に投入する投入部、該本体ケーシング内に投入された微粉砕物から所定粒子径以下の微粉及び超微粉を装置外へ連続的に除去するために所定方向に回転する分級ローターを有する分級手段を有する。該分級手段によって除去された該微粉及び該超微粉を本体ケーシング外に微粉排出部より排出し、該微粉及び該超微粉が除去された微粉砕物に含まれる粒子を機械式衝撃力を用いて表面改質処理するための、該分級ローターの回転方向と同方向に回転する分散ローターを有する表面改質手段を有する。本体ケーシング内に第一の空間と第二の空間とを形成するための円筒形状の案内手段を有する。該分散ローターによって表面改質処理が行われたトナー粒子を本体ケーシング外に排出するためのトナー粒子排出部を少なくとも有する。該本体ケーシングの内壁と円筒形状の該案内手段の外壁との間に設けられた該第一の空間は、該微粉砕物及び表面改質された該粒子を該分級ローターへ導くための空間であり、該第二の空間は、該微粉及び該超微粉が除去された微粉砕物及び表面改質された該粒子を分散ローターで処理するための空間である。
本発明では、以下の工程により、所定粒子径以下の微粉及び超微粉が所定量以下に除去されており且つ表面改質されたトナー粒子を得る。
該表面改質装置内において、該投入部より本体ケーシング内に投入された微粉砕物を第一の空間に導入し、該分級手段により所定粒子径以下の微粉及び超微粉を除去して装置外へ連続的に排出しつつ微粉及び超微粉が除去された微粉砕物を第二の空間へ移動させる。該分散ローターで処理して微粉砕物中の粒子の表面改質処理を行い、再び表面改質された粒子を含む微粉砕物を第一の空間と第二の空間とへ循環させることにより該分級と該表面改質処理とを繰り返す。
図1は、本発明に使用される回分式表面改質装置の好適な一例を示す概略断面図である。
図1に示す回分式表面改質装置は、円筒形状の本体ケーシング30、本体ケーシングの上部に開閉可能なよう設置された天板43;微粉排出ケーシングと微粉排出管とを有する微粉排出部44;冷却水或いは不凍液を通水できる冷却ジャケット31;表面改質手段としての、本体ケーシング30内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク33を複数個有し、所定方向に高速に回転する円盤状の回転体である分散ローター32;分散ローター32の周囲に一定間隔を保持して固定配置された、分散ローター32に対向する表面に多数の溝が設けられているライナー34;微粉砕物中の所定粒子径以下の微粉及び超微粉を連続的に除去するための分級ローター35;本体ケーシング30内に冷風を導入するための冷風導入口46;微粉砕物(原料)を導入するために本体ケーシング30の側面に形成された原料投入口37及び原料供給口39を有する投入管;表面改質処理後のトナー粒子を本体ケーシング30外に排出するための製品排出口40及び製品抜取口42を有する製品排出管;表面改質時間を自在に調整できるように、原料投入口37と原料供給口39との間に設置された開閉可能な原料供給弁38;及び製品排出口40と製品抜取口42との間に設置された製品排出弁41を有している。
図2(A)および(B)は、該投入部の投入管と該微粉排出部の微粉排出管との角度θを説明するための図であり、図1の回分式表面改質装置の概略的な上面投影図(水平投影面図)である。
図2に示す表面改質装置の上面投影図において微粉砕物投入部37の投入管の中心位置S1から第一の空間47への微粉砕物の投入方向に伸びる直線をL1とし、微粉排出部44の微粉排出管45の中心位置O1から微粉および超微粉の排出方向に伸びる直線をL2とした時、直線L1と直線L2のなす角θが、分級ロータ35の回転方向を基準にして210〜330度である。
図3は該回分式表面改質装置の該投入部の投入管と該微粉排出部の微粉排出管との位置関係を説明するための模式的斜視図であり、図4は、微粉排出ケーシングと微粉排出管との位置関係を説明するための図である。微粉排出管は、分級ローター35により除去された微粉及び超微粉を装置外に排出するための微粉排出口45を有している。
ライナー34の表面は、図10(A)及び(B)に示すように溝を有していることが、トナー粒子の表面改質を効率的に行う上で好ましい。
角型のディスク33の個数は、図6(A)及び(B)に示すように、回転バランスを考慮して、偶数個が好ましい。角型のディスク33の説明図を図6(A)及び(B)に示す。分散ローター32の回転方向は、図2(A)及び(B)に示すように、通常装置上面から見て反時計方向である。
図1、図5及び図8に示す分級ローター35は、分散ローター32の回転方向と同方向に回転するのが、分級の効率を高め、トナー粒子の表面改質の効率を高める上で好ましい。
該回分式表面改質装置は、更に、図7(A)及び(B)に示すように、天板43に対して垂直な軸を有する案内手段としての円筒状のガイドリング36を本体ケーシング30内に有している。該ガイドリング36は、その上端が天板から所定距離離間して設けられており、分級ローター36の少なくとも一部を覆うようにガイドリングは、支持体により本体ケーシング30に固定されている。ガイドリング36の下端は分散ローター32の角形ディスク33から所定距離離間して設けられる。
該回分式表面改質装置内において、分級ローター35と分散ローター32との間の空間が、ガイドリング36の外側の第一の空間47と、ガイドリング36の内側の第二の空間48とにガイドリング36によって二分される。第一の空間47は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分級ローター35へ導くための空間であり、第二の空間は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分散ローターへ導くための空間である。分散ローター32上に複数個設置された角型のディスク33と、ライナー34との間隙部分が表面改質ゾーン49であり、該分級ローター35及び該分級ローター35の周辺部分が分級ゾーン50である。
上記回分式表面改質装置における分級および表面改質処理について以下に詳細に説明する。
図8に示す如く、原料ホッパー380に導入された微粉砕物は、定量供給機315を経由して、投入管の原料投入口37から原料供給弁38を通って原料供給口39より装置内に供給される。表面改質装置には、冷風発生手段319で発生させた冷風を冷風導入口46から本体ケーシング内に供給し、さらに、冷水発生手段320からの冷水を冷水ジャッケト31に供給し、本体ケーシング内の温度を所定温度に調整する。供給された微粉砕物は、ブロアー364による吸引風量、分散ローター32の回転及び分級ローター35の回転により形成される旋回流により、円筒状のガイドリング36の外側の第一の空間47を旋回しながら分級ローター35近傍の分級ゾーン50に到達して分級処理が行われる。本体ケーシング30内に形成される旋回流の向きは、分散ローター32及び分級ローター35の回転方向と同じであるので、図2に示されるように装置上面よりみて反時計方向となる。
分級ローター35によって除去されるべき微粉及び超微粉は、ブロワー364の吸引力より分級ローター35のスリット(図5参照)より吸引され微粉排出管の微粉排出口45及びサイクロン入口359を経由してサイクロン369及びバグ362に捕集される。微粉及び超微粉を除去された微粉砕物は第二の空間48を経由して分散ローター32近傍の表面改質ゾーン49に至り、分散ローター32に具備される角型ディスク33(ハンマー)と本体ケーシング30に具備されたライナー34によって粒子の表面改質処理が行われる。表面改質が行われた粒子はガイドリング36に沿って旋回しながら再び分級ローター35近傍に到達し、分級ローター35の分級により表面改質された粒子からの微粉及び超微粉の除去がおこなわれる。所定の時間処理を行った後、排出弁41を開き、表面改質装置から所定粒子径以下の微粉及び超微粉が除かれた表面改質されたトナー粒子を取り出す。
このようにして得られた所定の重量平均粒子径に調整され、所定の粒度分布に調整され、さらに所定の平均円形度に表面改質されたトナー粒子は、トナー粒子の輸送手段321により外添剤の外添工程に移送される。
なお、表面改質と分級とは別々に行ってもよい。このような場合では必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。また、必要に応じて、上記表面改質装置を用いた後にさらに表面改質及び球形化処理を行ってもよい。前記表面改質及び球形化処理には、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムを用いる。
外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
以下に、本発明で用いられる各種物性の測定方法について説明する。
<トナーの粒度分布の測定>
測定装置としては、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、約1%NaCl水溶液を用いる。電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製された電解液や、例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜5mlを加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、前記測定装置により、試料の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、試料の体積分布と個数分布とを算出する。得られたこれらの分布から、試料の重量平均粒子径を求める。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
<トナー粒子の平均円形度の測定>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定した(表1)。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
C=2×√(π×S)/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。
各粒子の円形度を算出後、円形度0.2〜1.0の範囲を800分割し、測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。
<離型剤及びトナーの最大吸熱ピークの測定、結着樹脂のガラス転移温度の測定>
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)等を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。それをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
この昇温過程で、温度40℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
また、この昇温過程で、温度30℃〜200℃の範囲において吸熱ピークが得られる。最大吸熱ピークとは、言うまでもなく、その中で極大の値を示す温度のことである。複数個のピークが存在する場合、樹脂に起因する吸熱ピーク以上の領域におけるベースラインからの高さが一番高いものを最大吸熱ピークとする。
<結着樹脂のGPC測定による分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した結着樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
<離型剤の分子量分布>
(GPC測定条件)
・装置:GPC−150C(ウォーターズ社)
・カラム:GMH−HT30cm2連(東ソ−社製)
・温度:135℃
・溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
・流速:1.0ml/min.
・試料:0.15%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用した。更に、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出する。
<無機微粒子の個数平均粒径測定方法>
測定は走査型電子顕微鏡S−4700(日立製作所製)を用いて行う。撮影倍率は5万倍とし、さらに撮影された写真を2倍に引き伸ばした後、FE‐SEM写真像から50乃至100サンプルを無作為に選択して測長する。粒子径は、球状粒子はその直径を、略球形、楕円形球状粒子に関してはある一方向の長さをもって当該粒子の粒径とし、その平均の値を求め個数平均粒径を算出した。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<樹脂A製造例(ハイブリッド樹脂)>
ビニル系重合体成分として、スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂の単量体、架橋剤及び重合開始剤を5時間かけて滴下した。次いで220℃に昇温を行い、4.5時間反応させてハイブリッド樹脂を得た。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定の結果を表2に示す。なお、表2において、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量であり、Mpはピーク分子量である。
<樹脂B製造例(スチレンアクリル樹脂製造例)>
キシレン200質量部中にスチレンアクリル樹脂成分として、スチレン70質量部、アクリル酸n−ブチル20質量部、マレイン酸モノブチル10質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1質量部を温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した4口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて120℃の温度で5時間撹拌しつつ滴下した。キシレンを環流させながら反応させ、減圧下で溶媒を蒸留除去し、スチレンーアクリル樹脂を得た。
ハイブリッド樹脂製造例と同様にGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定の結果を表2に示す。
<樹脂C製造例(ポリエステル樹脂製造例)>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、テレフタル酸1.7mol、無水トリメリット酸1.1mol、フマル酸2.4mol及び酸化ジブチル錫0.1gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。窒素雰囲気下で、220℃で4.5時間反応させ、ポリエステル樹脂を得た。ハイブリッド樹脂製造例と同様にGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定の結果を表2に示す。
<無機微粒子製造例>
メタノール、水、アンモニア水存在下、35℃に加温し、撹拌しながら、テトラメトキシシランを滴下し、シリカ微粒子の懸濁液を得た。溶媒置換後を行い、得られた分散液に疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザンを室温で添加し、その後、130℃まで加熱し反応させ、シリカ表面の疎水化処理を行なった。湿式で篩いを通過させ、粗大粒子を除去後、溶媒を除去し、乾燥することにより、無機微粒子1を得た。無機微粒子の個数平均粒径を電子顕微鏡写真から求めると、77nmであった。同様に、反応温度と撹拌速度を適宜変更するこによって無機微粒子2〜6をそれぞれ調製した。それぞれの粒径について表3にまとめた。
<トナー粒子1製造例>
・ハイブリッド樹脂(樹脂A) 100質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
・ノルマルパラフィンワックス(最大吸熱ピーク:70℃) 5質量部
・ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤) 1質量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合し、二軸押出し混練機で任意のバレル温度にて溶融混練した。冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、第一段階として機械式粉砕方式による微粉砕機で一時間あたり50kgの処理スピードで10μm以下の粒径に微粉砕した。さらに、第二段階として、微粉砕物を、ライナー・ローター間の距離を、ローター長手方向に4等分し、粉砕物が投入される方向から0.1倍づつ段階的に狭めた機械式粉砕機より粉砕し、一時間あたり50kgの処理スピードで機械式粉砕機により処理した。このとき、冷風温度を制御し、排温を43度まで上昇させた。続いて、得られた微粉砕物を分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を同時に行う装置にて分級および球形化し、粒度分布における重量平均径が5.5μm、このトナー粒子のフロー式粒子像測定装置における円相当径(個数基準)2μm以上の粒子の平均円形度0.968のトナー粒子1(分級品)を得た。
このトナー粒子1の平均谷深さRvmは158nm、走査方向の凹凸平均間隔Wは480nm、Rvm/Wが0.33であった。以上の測定結果を表4にまとめた。
<トナー粒子2製造例>
一段目の機械式粉砕方式による粉砕粒度を、20μm以下になるようにし、二段目の機械式粉砕方式において処理スピードを、一時間あたり100kgとし、冷風温度を制御して排温58度まで上昇させた以外は、トナー粒子製造例1と同様にしてトナー粒子2を得た。トナー粒子2の物性を表4に示した。
<トナー粒子3製造例>
バインダー樹脂として樹脂Cを使用し、トナー粒子製造例2と同様に混練、粗粉砕後、二段階の粉砕を行った後、熱球形化装置によって65℃で処理してから分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を同時に行う装置で処理した以外は、トナー粒子製造例2と同様にしてトナー3を作製した。トナー粒子3の物性を表4に示した。
<トナー粒子4製造例>
バインダー樹脂として樹脂Cを使用し、二段目の機械式粉砕方式において、冷風温度制御により排温28度以下とし、分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を同時に行う装置の分散回転数を高め、処理時間を長くした以外、トナー粒子製造例2と同様にしてトナー4を作製した。トナー粒子4の物性を表4に示した。
<トナー粒子5製造例>
バインダー樹脂として樹脂Bを使用し、トナー粒子製造例1と同様に混練、粗粉砕後し、エアージェット方式の粉砕機で10μm以下の微粉砕を得た後、分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を同時に行う装置で処理する以外は、トナー粒子製造例1と同様にしてトナー粒子5を作製した。トナー粒子5の物性を表4に示した。
<トナー粒子製造例6>
・樹脂粒子分散液1の調製
スチレン 370g
n−ブチルアクリレート 30g
アクリル酸 6g
ドデカンチオール 24g
四臭化炭素 4g
以上を混合、溶解した混合液を得た。この混合液を、非イオン性界面活性剤6g及びアニオン性界面活性剤10gをイオン交換水550gに溶解したものに、フラスコ中で分散させ、乳化させた。これを、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水50gを投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒子径が150nm、ガラス転移点が62℃、重量平均分子量(Mw)が12,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製した。
・樹脂粒子分散液2の調製
スチレン 280g
n−ブチルアクリレート 120g
アクリル酸 8g
以上を混合、溶解した混合液を得た。この混合液を、非イオン性界面活性剤6g及びアニオン性界面活性剤12gをイオン交換水550gに溶解したものに、フラスコ中で分散させ、乳化させた。これを、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム3gを溶解したイオン交換水50gを投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒子径が110nm、ガラス転移点が55℃、重量平均分子量(Mw)が550,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製した。
・離型剤粒子分散液1の調製
ポリプロピレンワックス(融点85℃) 50g
アニオン性界面活性剤 5g
イオン交換水 200g
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー等を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒子径が570nmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液1を調製した。
・着色剤粒子分散液1の調製
C.I.ピグメントブルー15:3 20g
アニオン性界面活性剤 2g
イオン交換水 78g
以上を混合し、超音波洗浄機を用いて発振周波数26kHzで10分間分散を行って着色剤粒子分散液(アニオン性)1を調製した。
・混合液の調製
樹脂粒子分散液1 180g
樹脂粒子分散液2 80g
着色剤粒子分散液1 30g
離型剤粒子分散液1 50g
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー等を用いて混合し、分散して混合液を調製した。
・凝集粒子の形成
上記混合液に凝集剤としてのカチオン性界面活性剤を1.2g添加し、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら50℃まで加熱した。50℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると重量平均粒子径が約4.8μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
・融合
その後、ここにアニオン性界面活性剤3gを追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら105℃まで加熱し、3時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄、乾燥し、トナー粒子6を得た。
<トナー粒子7製造例>
バインダー樹脂として樹脂Bを使用し、トナー粒子製造例3における熱球形化装置による処理温度を90℃にして処理し、その後、エルボジェット分級機で分級した以外は、トナー粒子製造例3と同様にしてトナー7を作製した。トナー粒子7の物性を表4に示した。
<トナー粒子8製造例>
バインダー樹脂として樹脂Bを使用し、トナー粒子製造例1と同様に混練、粗粉砕後し、エアージェット方式の粉砕機で10μm以下の微粉砕を得た後、エルボジェット分級機で分級した以外は、トナー粒子製造例2と同様にしてトナー粒子8を作製した。トナー粒子8の物性を表4に示した。
<トナー製造例1>
トナー粒子1(分級品)100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.0質量部、表3に示す無機微粒子5を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー1を得た。
<トナー製造例2>
トナー粒子2(分級品)と表3に示す無機微粒子2を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー2を得た。
<トナー製造例3>
トナー粒子2(分級品)と表3に示す無機微粒子3を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー3を得た。
<トナー製造例4>
トナー粒子2(分級品)と表3に示す無機微粒子4を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー4を得た。
<トナー製造例5>
トナー粒子2(分級品)と表3に示す無機微粒子5を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー5を得た。
<トナー製造例6>
トナー粒子3(分級品)と表3に示す無機微粒子5を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー6を得た。
<トナー製造例7>
トナー粒子3(分級品)と表3に示す無機微粒子5を1.5質量部添加した以外は、トナー製造例1と同様にしてトナー7を得た。
<トナー製造例8>
トナー粒子2(分級品)100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)2.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー8を得た。
<トナー製造例9>
トナー粒子2(分級品)100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)2.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.5質量部添加し、表3に示す無機微粒子1を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー9を得た。
<トナー製造例10>
表3に示す無機微粒子6を用いた以外は、トナー製造例9と同様にしてトナー10を得た。
<トナー製造例11>
トナー粒子5(分級品)100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)12.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.5質量部添加し、表3に示す無機微粒子5を1.0質量部添加し、ヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー11を得た。
<トナー製造例12>
トナー粒子6と表3に示す無機微粒子3を使用した以外は、トナー製造例11と同様にして、トナー12を得た。
<トナー製造例13>
トナー粒子7と表3に示す無機微粒子5を使用した以外は、トナー製造例11と同様にして、トナー13を得た。
<トナー製造例14>
トナー粒子8と表3に示す無機微粒子3を使用した以外は、トナー製造例11と同様にして、トナー14を得た。
<磁性微粒子分散型樹脂コアの製造例>
マグネタイト微粒子(比抵抗5×107(Ω・cm))と、ヘマタイト微粒子(比抵抗3×108(Ω・cm))に対して、それぞれ3.5質量%、2.0質量%のシラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内で120℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を親油化処理した。
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド37質量%水溶液) 6質量部
・上記処理したマグネタイト微粒子 74質量部
・上記処理したヘマタイト微粒子 10質量部
上記材料と、28質量%アンモニア水5質量部及び水10質量部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら45分かけて85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5hPa以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性微粒子が分散された状態の磁性微粒子分散型樹脂コア(A)を得た。得られた磁性微粒子分散型樹脂コアは、個数平均粒子径が35μm、BET比表面積が0.07(m2/g)であった。
<磁性キャリア製造例1>
先述の磁性微粒子分散型樹脂コア(A)をコーター内に投入し、加湿窒素を流入させ水分量0.3質量%に調整した。その後、トルエン溶媒を用いて希釈したγ−アミノプロピルトリメトキシシラン3質量%を剪断応力を連続して印加しつつ、コア表面に処理した。乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行い、置換基がすべてメチル基であるストレートシリコーン樹脂0.5質量%及び、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.015質量%の混合物をトルエンを溶媒として磁性微粒子分散型樹脂コアに被覆した。乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行なった。さらに、この磁性コートキャリアを140℃で焼き付け、100メッシュの篩で、凝集した粗大粒子をカットし、次いで多分割風力分級機で微粉及び粗粉を除去して粒度分布を調整した。その後23℃,60%内で保たれたホッパー内で100時間調湿して磁性キャリア1を得た。
<実施例1>
磁性キャリアに対して、トナー濃度が10%となるようにトナー1と磁性キャリア1をV型ブレンダーで混合して、シアン現像剤1を作製した。
現像剤1を用いて二成分現像評価を行った。
前記した現像剤1を現像器に充填し、画像形成装置としてiRC−3200(キヤノン(株)製)とともに、常温常湿(23℃,50%RH)に一晩放置した。その後、現像器中のトナー濃度が一定となるようにトナーを逐次補給しながら、転写材として複写機用普通紙(80g/m2)を用い、後述する評価画像のサンプリングを行いながら、紙上のトナー載り量を0.55mg/cm2になるよう現像コントラストを調整、画像面積比率5%の画像5000枚を、単色モード、24枚(A4サイズ)/分の速度(プロセススピード165mm/s)で出力した。次に、画像形成装置を現像器とともに、低温低湿(15℃,10%RH)環境下に移動して一週間放置し、後述する評価画像のサンプリングを行いながら、画像面積比率3%の画像3000枚を出力した。さらに、画像形成装置とともに高温高湿(30℃、80%RH)環境下に移動して一週間放置し、後述する評価画像のサンプリングを行いながら、画像面積比率10%の画像1000枚を出力した。
次に、各評価項目、評価方法について説明し、現像剤1の評価結果を表5に示した。
ドット再現性
常温常湿環境下における4000枚に、ハーフトーン(30H)画像を形成し、この画像を目視にて観察し、前記画像のドットの再現性について以下の基準に基づき評価した。尚、30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白とし、FFHをベタ黒とする時のハーフトーン画像である。
A:全くガサツキを感じなく、滑らかである。
B:ガサツキを余り感じない。
C:ややガサツキ感はある。
D:ガサツキ感がある。
E:非常にガサツキ感がある。
画像濃度
常温常湿環境下における4500枚目、低温低湿環境下における2900枚目においてベタ画像を出力し、画像濃度を測定した。尚、画像濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A)で測定した。
(評価基準)
A:非常に良好(1.60以上)
B:良好(1.40以上、1.60未満)
C:普通(1.20以上、1.40未満)
D:悪い(1.20未満)
転写性
低温低湿環境下における2900枚目、および高温高湿環境下における950枚目にベタ画像を出力し、ベタ画像形成時の感光体ドラム上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差をそれぞれ算出した。そして、その濃度差の値から、以下のようにして判定した。尚、濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計で測定した。
(評価基準)
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05〜0.1未満)
C:普通(0.1〜0.2未満)
D:悪い(0.2以上)
<実施例2>
実施例1と同様にして、トナー2と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤2を作製した。実施例1同様に現像剤2の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<実施例3>
実施例1と同様にして、トナー3と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤3を作製した。実施例1同様に現像剤3の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<実施例4>
実施例1と同様にして、トナー4と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤4を作製した。実施例1同様に現像剤4の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<実施例5>
実施例1と同様にして、トナー5と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤5を作製した。実施例1同様に現像剤5の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<実施例6>
実施例1と同様にして、トナー6と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤6を作製した。実施例1同様に現像剤6の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<実施例7>
実施例1と同様にして、トナー7と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤7を作製した。実施例1同様に現像剤7の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例1>
実施例1と同様にして、トナー8と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤8を作製した。実施例1同様に現像剤8の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例2>
実施例1と同様にして、トナー9と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤9を作製した。実施例1同様に現像剤9の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例3>
実施例1と同様にして、トナー10と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤10を作製した。実施例1同様に現像剤10の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例4>
実施例1と同様にして、トナー11と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤11を作製した。実施例1同様に現像剤11の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例5>
実施例1と同様にして、トナー12と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤12を作製した。実施例1同様に現像剤12の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例6>
実施例1と同様にして、トナー13と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤13を作製した。実施例1同様に現像剤13の評価を行い、評価結果を表5に示した。
<比較例7>
実施例1と同様にして、トナー14と磁性キャリア1を混合して、シアン現像剤14を作製した。実施例1同様に現像剤14の評価を行い、評価結果を表5に示した。