本発明において、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する着色粒子と、外添剤を含有するトナーであって、該外添剤は少なくとも、平均一次粒径Daが80〜300nmであり、非結晶性の無機微粒子(A)及び、平均一次粒径Dbが80〜300nmであり、結晶性の無機微粒子(B) の2種類を含有することを特徴とするトナーを用いることによって、現像性や転写性の悪化を防止できるのと同時に、画像流れの原因となる静電荷潜像担持体(感光体)表面の帯電生成物の除去が可能になった理由は、次のように推測される。
現像及び転写工程においては、「電界の静電引力」と「トナー粒子担持体との付着力」の2つの力が、トナー挙動を大きく支配している。現像性や転写性の悪化を防止する為には、この2つの力関係を「電界の静電気引力」>「トナー粒子担持体との付着力」の方向にすることにより現像・転写性は向上するものである。「電界の静電気引力」を強めるには、例えば、キャリアや静電荷潜像担持体から静電気力によりトナー粒子を引き剥がす力、つまり、現像バイアスや転写電流を強めることで制御できるが、カブリや飛び散り等の問題が発生しやすい。従って、「トナー粒子担持体との付着力」を弱める、つまりキャリアや静電荷潜像担持体とトナー粒子間の付着力を小さくすることが好ましい。
この付着力を低減させる為には、大粒径無機粒子の添加による、いわゆるスペーサー効果によって、トナー同士、またトナー/キャリア間、さらには静電荷潜像担持体と接触面積を少なくすることが有効な手段である。
一方、静電荷潜像担持体表面の帯電性生物の除去を目的として、研磨効果を有する粒子(以下、研磨剤という)をトナーに添加した場合、静電荷潜像担持体(感光体)の表面へのトナーのフィルミングや融着を防止できる理由については、次のように考えられる。画像形成プロセスの転写工程後に静電荷潜像担持体上に残留したトナーは、静電荷潜像担持体へ当接する部材に接触し、トナーの一部、及びトナー母体から遊離した研磨剤の一部は、当接部材近傍に残留する。このとき、当接部材は、静電荷潜像担持体へ当接する圧力で、トナー及び研磨剤とともに静電荷潜像担持体表面を擦ることになる。さらに静電荷潜像担持体表面に、トナーによるフィルミングや融着が発生した場合には、凸状に数百nmから数十μmの大きさで付着している状態となる。その場合、トナーが当接部材を通過する際には、更に大きな圧力で研磨剤が作用することになる。このように、フィルミングや融着部分により効率的に研磨効果が得られる。
しかし、帯電生成物である硝酸イオンの如きイオン性の物質は、静電荷潜像担持体表面に極薄く付着している。該イオン性物質を効率的に除去するためには、例えば、当接部材の当接圧を上げることが考えられるが、この場合、静電荷潜像担持体が削れてしまって静電荷潜像担持体の寿命が短くなるために好ましくない。よって、当接部材の当接圧を上げることなく、静電荷潜像担持体表面に付着した帯電生成物を除去するためには、研磨剤自身の研磨能力を上げる必要がある。
従来の一般的な研磨剤は、粒径がμmレベルと大きく、上記研磨効果が強すぎるため静電荷潜像担持体にキズが発生し易く、さらに粒子の形状が球状又は球状に近いため、静電荷潜像担持体表面との接触面積が小さいこと、また、当接部材からすり抜けやすく、当接部材近傍に滞留しにくいことが原因で、帯電生成物の除去には不十分であったと推測される。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、スペーサー効果を発揮する大粒径無機粒子として平均一次粒径Daが80〜300nmであり、非結晶性の無機微粒子(A)と、トナー中に添加する研磨剤として平均一次粒径Dbが80〜300nmであり、結晶性の無機微粒子(B)を併用することで、現像性や転写性の悪化を防止できるのと同時に、画像流れの原因となる静電荷潜像担持体表面の帯電生成物の除去を効率的に行えることを見出した。特に重要なことは、スペーサー効果を狙う無機微粒子(A)が非結晶性であり、研磨効果を狙う無機微粒子(B)が結晶性である、という点である。
通常、スペーサーとして用いられる大粒径無機粒子は、球状から略球状であり、トナー母体との接触面積が小さく、長期使用によって、トナー母体表面を移動し、摩擦が大きいと予想される部位へ局在化しやすい。そこで、無機微粒子(A)がスペーサー効果を十分に発揮し、安定した転写性を維持するためには、トナー母体の表面に均一に付着し、長期使用によっても、局在化することなく、トナー母体表面上の均一に付着し続けることが必要である。
一般に非結晶性の粒子は、結晶性の場合と比較して誘電率が低い傾向にある。そのため、本発明のトナーに使用される無機微粒子(A)は、粒子自身の帯電蓄積が適度に保たれ、無機微粒子(A)同士の凝集が抑えられる。
さらに、非結晶性の粒子は、その化学構造が細密な結晶型を形成せず、空隙率が大きいため、結晶性の場合と比較して比重が小さい。一般的な焼成工程を経て得られる結晶性粒子の比重が4.0以上であるのに対し、例えば、アルコキシド法によりゾル−ゲル体を生成し、低温条件でゆっくり乾燥させ合成された非結晶性粒子の場合では比重が2.0以下である。
一般的に、トナー母体粒子の比重は、非磁性トナーでは1.3以下、磁性体を含有する磁性トナーであっても2.0以下である。非結晶性の無機微粒子(A)は、大粒径微粒子であってもトナー母体粒子との比重差が小さいため、トナー母体からの遊離が少ないことも判明した。
以上のことから、トナー母体表面全体に長期に渡って均一に存在でき、スペーサー効果が維持することができる。
また、トナーに添加される無機微粒子(A)の誘電率が低いことは、特に低温低湿環境下における過剰な帯電性の変化を抑制することができ、耐久安定性の観点からも好ましい。
一方、研磨効果を狙う無機微粒子(B)は結晶性であるため、非結晶性の場合と比較して、粒子が硬く研磨効果が強く、比重が高いことから、トナー母体表面への付着力が低い傾向にある。前述したとおり、研磨剤は、トナー母体から一部遊離し単独で存在することで、研磨効果が最大限に発揮される。
しかしながら、過剰に研磨剤の遊離が起こると、一般に研磨剤自身は転写され難く、トナーや現像剤中、及び静電荷潜像担持体への当接部材近傍に蓄積するため、静電荷潜像担持体のキズ発生要因となる。そこで、遊離する研磨剤の量を適度に調整することが、必要である。
本発明のトナーの場合、大粒径粒子であってもトナー母体表面に付着し易い、非結晶性の無機微粒子(A)を付着させることで、無機微粒子(A)がトナー母体表面上に適度な間隔を置いて均一に分散し、その隙間に同程度の粒径である無機微粒子(B)が入り込むことができる。その結果、トナーがキャリアや他のトナーと接触しても、無機微粒子(A)がスペーサーとして働き、無機微粒子(B)に掛かる力が小さくなり、無機微粒子(B)の過剰な遊離を抑制することが可能になったと考えられる。さらに、無機微粒子(B)が存在することで無機微粒子(A)のトナー母体表面での局在化も防止でき、長期の使用においてもスペーサー効果がより維持されることが確認された。
この様に本発明の無機微粒子(A)、及び(B)を併用することで、大粒径粒子であっても、それぞれの無機微粒子をバランスよくトナー母体表面に存在させることが可能となった。つまり、異なる効果を有する複数の大粒径粒子であっても、上記特定の無機微粒子を併用することで初めて得られる相乗効果により、それぞれの無機微粒子の添加効果が最大となるだけでなく、長期の使用においても、現像性の悪化、転写効率の低下が発生せず、また、高湿環境下においても、画像形成時の画像流れの発生を防止できるトナーを得ることができる。
尚、本発明において「非結晶性」とは、X線回折装置において図1に示す様に、測定強度が10000cps(count per second)以上であり、且つ半値半幅が0.3degree以下であるピークを有さない状態であり、「結晶性」の回折パターン(図2)とは明らかに異なる。一般的にX線回折測定において、結晶性物質はブラッグの回折条件により結晶面間隔に応じて固有の回折ピークが表れ、回折強度は結晶の状態、結晶化度に依存していることから、X線回折の測定強度が10000cps以上であり、且つ半値半幅が0.3degree以下である。つまり、上記の様なピークを有さない物質は、非結晶物質と考えることができる。実際の測定に際して測定角2θが6degree未満の範囲ではダイレクトビームの影響が大きく、また、測定角2θが大きくなると測定強度が小さくなることから、2θが40degreeを超える範囲では測定強度が小さく、これらの範囲では結晶又は非結晶の判断を行うことは好ましくない。
なお、「半値半幅」とは、ピークトップの測定強度(cps)の1/2測定強度におけるピークの幅(半値全幅)の1/2の幅を意味する。
本発明のX線回折の測定には、例えば理学電機(株)製X線回折装置 RINT−TTR IIを用い、CuKα線を用い次の条件により測定を行う。
X線管球 :Cu
管電圧 :50kV
管電流 :300mA
スキャン方法 :2θ/θスキャン
スキャン速度 :2deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
発散スリット :0.50deg.
散乱スリット :0.50deg.
受光スリット :0.3mm
なお、測定サンプルは、ガラスプレート上に約12mg/cm2となるようにのせ、表面に凹凸がない状態にした後に測定を行う。
さらに本発明においては、無機微粒子(A)及び(B)のトナー母体粒子に対する遊離率(体積%)Sa及びSbの関係が、0.1<Sa≦20、且つ20<Sb≦50であることが好ましく、0.1<Sa≦10、且つ20<Sb≦45であることが更に好ましい。
ここで遊離率とは、トナー母体粒子から遊離した無機微粒子の割合を体積%で求めたものであり、パーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)により測定されたものである。本発明においては、トナー母体粒子に対する無機微粒子(A)及び(B)の遊離率が、0.1<Sa≦20、且つ 20<Sb≦50 であることにより、前述の如くトナー母体表面に付着して現像性や転写性の悪化を防止する無機微粒子(A)と、一部が遊離することにより静電荷潜像担持体表面の帯電生成物の除去を行う無機微粒子(B)の各々が、より効率的に働くことになる。
さらに本発明においては、該無機微粒子(A)及び(B)の平均一次粒径DaとDbの関係が、0.8Da≦Db≦1.5Daであることが好ましく、0.8Da≦Db≦1.3Daであることがさらに好ましい。Dbが0.8Da未満の場合、無機微粒子(B)は、無機微粒子(A)の隙間に入り込み、トナー母体表面からの遊離が少なくなること、また、粒径が小さいことにより、クリーナー部における当該粒子の研磨効果が不十分となる恐れがある。一方、Dbが1.3Daを超えると、無機微粒子(B)は、無機微粒子(A)の隙間に入ることが難しく、トナー母体表面からの遊離も多くなり、研磨効果が強すぎるため静電荷潜像担持体(感光体)にキズが発生する恐れがある。
本発明において、無機微粒子(A)としては、平均一次粒径Daが80〜300nm、より好ましくは80〜200nm、さらに好ましくは90〜150nmの非結晶性の無機微粒子である。Daが80nm未満であると、スペーサーとしての働きが弱く、転写性向上への寄与が小さくなる。一方、Daが300nmを超えるとトナーより脱離しやすくなり、トナー母体表面に安定に付着させることが難しくなり、転写効率が低下する。また、現像時にトナーから脱離し現像器周りを汚染したり、脱離した微粉体が感光ドラムやキャリアなどへ付着し、帯電性能悪化を起こす。
本発明において、上記無機微粒子(A)としては、平均一次粒径Daが80〜300nmの非結晶性の無機微粒子であれば、シリカ、チタニア、アルミナ等その組成は特に限定するものではなく、2種以上の複合組成であっても構わない。また、その製造法についても、例えば、気相分解法、燃焼法、爆燃法などいかなる方法により得られる従来公知の技術によって製造されるものを使用することができる。
本発明においては、特にアルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して、粒子化する、公知のゾルゲル法により製造された微粒子を用いることが特に好ましい。ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子は、得られる粒子の粒度分布がシャープであり、且つ球状の粒子が得られるとともに、反応時間を変えることにより所望の粒度分布を有する粒子が得られるのが好ましい。さらにゾルゲル法シリカ表面を疎水化処理して用いてもよく、疎水化処理剤としては、シラン化合物が好ましく用いられ、ヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン、トリメチルアセトキシシラン等のモノアシロキシシランがあげられる。
また、アモルファスの酸化チタンを得る方法としては、例えば、揮発性酸化チタンを気相中で熱分解する方法を使用することが出来る。特にチタンアルコキシド等の揮発性チタン化合物を、気相中600℃以下の低温で熱分解して製造する方法が好適である。更に、好ましい製造方法としては、揮発性チタン化合物を原料とし、600℃以下、好ましくは250〜400℃の比較的低温で、前述の揮発性チタン化合物を気化または霧化した後、分解して酸化チタン微粒子とし、分解後直ちに、酸化チタン微粒子が再び合一しない温度まで、好ましくは100℃以下にできるだけ短時間で冷却する。更に、冷却時または冷却後に酸化チタン微粒子の合一を防ぐ目的で、あるいは補集、回収を向上させる目的で、分散助剤、表面改質剤等を使用するとより効果的である。
本発明に用いられる揮発性チタン化合物としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジエトキシチタンオキシド等のチタンアルコキシドの他、四塩化チタン、四臭化チタン等のテトラハロゲン化チタン、更に、トリハロゲン化モノアルコキシチタン、ジハロゲン化ジアルコキシチタン、モノハロゲン化トリアルコキシチタン等の揮発性を有するチタン化合物を用いることもできる。
尚、揮発性チタン化合物を気化または霧化するに際しては、希釈ガスで揮発性チタン化合物を0.1〜10容量%の割合に希釈することが好ましい。この希釈ガスは、気化された揮発性チタン化合物を、分解を行う分解炉に導入するためのキャリアガスとしての役割を果すものである。ここで使用される希釈ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、チッ素等の不活性ガスや、水蒸気、酸素等が用いられ、特にヘリウムやチッ素ガスを用いることが好ましい。更に上記した様に、必要に応じて、分散助剤、表面改質剤等を含有させてもよい。
上記した様な本発明に使用される酸化チタンの製造方法においては、揮発性チタン化合物を気化または、霧化せしめた後に分解を行い酸化チタン微粒子とする為、アルコキサイド等の酸素含有化合物を使用する場合以外は、酸素含有ガスが必要である。また、揮発性チタン化合物を分解する温度としては、600℃以下が好ましく、特に、250〜350℃で分解することが好ましい。これ以下の温度では十分な分解速度が得られず、一方、分解温度が高温になると微細な粒子が得られにくくなってしまう。得られた酸化チタン微粒子の帯電特性の調整や、高湿下での安定性を向上させるため、疎水化処理等、酸化チタンの特性を損なわない範囲で、表面処理を行うことも可能である。疎水化の方法としては、何ら制約はないが、本発明においては、急冷却する際に、例えば、チッ素ガス等の不活性ガスの冷媒と一緒に、加熱分解後の酸化チタン微粒子を処理して疎水化する手段が最も効果的である。
本発明のトナーにおいて、上記無機微粒子(A)の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.3〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜3.0質量部である。
本発明において、無機微粒子(B)としては、平均一次粒径Dbが80〜300nm、より好ましくは80〜200nmの結晶性の無機微粒子である。Dbが80nm未満ではクリーナー部における当該粒子の研磨効果が不十分であり、一方、Dbが300nmを超えると上記研磨効果が強すぎるため静電荷潜像担持体(感光体)にキズが発生するため適さない。
本発明において、上記無機微粒子(B)としては、平均一次粒径Dbが80〜300nmの結晶性の無機微粒子であれば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタニア、アルミナ等その組成は特に限定するものではないが、本発明においては、チタン酸ストロンチウムが好ましい。
さらに本発明において、無機微粒子(B)の粒子形状が、概略立方体及び/又は直方体であるペロブスカイト型結晶の無機微粒子を用いることで、静電荷潜像担持体表面に付着した帯電生成物の除去をより効率的に行えることを見出した。研磨剤の粒子形状が概略立方体及び/又は直方体であることで、研磨剤と静電荷潜像担持体表面との接触面積を大きくすることができ、また、研磨剤の立方体及び/又は直方体の稜線が静電荷潜像担持体表面に当接することで、トナーの良好な掻き取り性を得ることができる。
本発明におけるペロブスカイト型結晶の無機微粒子の平均粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定して、その平均を求めた。粒径は、一次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2として求めた。また、本発明で用いるペロブスカイト型結晶無機微粒子中の、粒子形状が概略立方体及び/又は直方体である粒子の含有率を50個数%以上にすることで、更に効率的に帯電生成物の除去が行えるので好ましい。
本発明のトナーにおいて、無機微粒子(B)の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。添加量が0.1質量部より少ないと、感光体上の付着物の除去効果が不十分となり、5質量部より多いとトナーの帯電性への影響が大きくなるため好ましくない。
本発明に使用される無機微粒子(B)は、公知の表面処理剤で表面処理されていてもよい。本発明においては、特に炭素数8〜35の脂肪酸または炭素数8〜35の脂肪酸の金属塩で表面処理することで、感光体を含む電子写真部材へのトナーの付着性を改善できるので好ましく用いられる。無機微粒子(B)を表面処理する脂肪酸またはその金属塩の炭素数は、10〜30がさらに好ましい。炭素数が35を超えると、無機微粒子の表面と脂肪酸またはその金属塩との密着性が低下し、長期の使用により無機微粒子の表面から剥がれ、耐久性が低下し、剥れた脂肪酸または脂肪酸金属塩が画像不良の原因となる場合がある。脂肪酸または脂肪酸金属塩の炭素数が8未満の場合、感光体を含む電子写真部材へのトナーの付着の防止効果が十分に得られない場合がある。
無機微粒子に対する脂肪酸またはその金属塩の好ましい処理量は、無機微粒子母体100質量部に対して0.1〜15.0質量部であり、さらに好ましくは0.5〜12.0質量部である。
本発明で用いる無機微粒子(B)の製造方法は、特に限定されるのではなく、従来公知の技術によって製造されるものを使用することができる。例えば、ペロブスカイト型結晶の無機微粒子は、硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンスラリーのpHを調整して得たチタニアゾルの分散液に、ストロンチウムの水酸化物を添加して、反応温度まで加温することで合成することができる。該含水酸化チタンスラリーのpHは0.5〜1.0とすることで、良好な結晶化度及び粒径のチタニアゾルが得られる。
また、チタニアゾル粒子に吸着しているイオンを除去する目的で、該チタニアゾルの分散液に、水酸化ナトリウムの如きアルカリ性物質を添加することが好ましい。このときナトリウムイオン等を含水酸化チタン表面に吸着させないために、該スラリーのpHを7以上にしないことが好ましい。また、反応温度は60℃〜100℃が好ましく、所望の粒度分布を得るためには昇温速度を30℃/時間以下にすることが好ましく、反応時間は3〜7時間であることが好ましい。
上記の如き方法により製造された無機微粒子を脂肪酸又はその金属塩で表面処理を行う方法としては以下の方法がある。たとえば、Arガス又はN2ガス雰囲気下、無機微粒子スラリーを脂肪酸ナトリウム水溶液中に入れ、ペロブスカイト型結晶表面に脂肪酸を析出させることができる。また、たとえばArガス又はN2ガス雰囲気下、無機微粒子スラリーを脂肪酸ナトリウム水溶液中に入れ、撹拌しながら、所望の金属塩水溶液を滴下することで、ペロブスカイト型結晶表面に脂肪酸金属塩を析出,吸着させることができる。例えばステアリン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウムを用いればステアリン酸アルミニウムを吸着させることができる。
また、高湿環境下での無機微粒子の吸湿による現像プロセスでのトナーの帯電量の低下を防ぐため、本発明に用いる無機微粒子(A)、及び(B)のBET比表面積は5〜40m2/gであることが好ましい。比表面積を5〜40m2/gにすることで該無機微粒子の表面に吸着する水の絶対量を少なく押さえられるため、トナーの摩擦帯電への影響を小さくできる。なお、比表面積の測定はBET法にしたがって、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出している。
さらに、本発明のトナー粒子には上記無機微粒子(A)、及び(B)以外に、さらに流動性付与・帯電制御・研磨剤・クリーニング助剤として無機乃至有機微粒子を外添して用いることもできる。使用される粒子としては、フッ化ビニリデン微粉末、テトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素樹脂系粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらをシラン化合物または有機珪素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面を処理した処理シリカ等が挙げられる。
本発明のトナーにおいては、トナーの流動性や帯電性を制御することを目的として平均一次粒径Dcが5〜60nmの無機微粒子(C)を添加することが好ましい。無機微粒子(C)は、シラン化合物またはカップリング剤で表面処理されていてもよい。5nmより小さいと、長期使用により無機微粒子(C)がトナー表面に埋め込まれやすく、トナーの物理的な付着力が増し、転写性を阻害する場合がある。一方、60nmより大きいと流動性付与の効果が小さくなり、帯電特性が不安定になる傾向がある。
無機微粉体(C)としては、具体的には、各種金属化合物(酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカ等が挙げられるが、好ましくは疎水性酸化チタン微粒子及び/又は疎水性シリカ微粒子である。疎水性酸化チタン微粒子の添加は、帯電安定化をもたらし、疎水性シリカ微粒子の添加により、流動性付与と高い負帯電性のため適度な帯電量を持つトナーを提供可能にする。上記無機微粉体(C)の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部である。
本発明のトナーにおいて、トナー母体粒子(着色粒子)としては、特に制限はなく、少なくともポリエステルユニットを有する結着樹脂と着色剤と、必要に応じてその他成分を含有してなる。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、(a)ポリエステル樹脂、又は(b)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、又は(c)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、又は(d)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、及びもしくは(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、及び(f)ポリエステルユニットとハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物のいずれかから選択される樹脂である。
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとは、ビニル基を有するモノマー成分であり、モノマー中に多価カルボン酸成分とビニル基を有するモノマー、または多価アルコール成分とビニル基を有するモノマーについては「ポリエステルユニット」成分として定義する。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、樹脂成分のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布が、メインピークを分子量3500乃至30000の領域に有しており、好ましくは、分子量5000乃至20000の領域に有しており、Mw/Mnが5.0以上であることが好ましい。
メインピークが3500未満である場合には、トナーの耐高温オフセット性が不十分となる。一方、メインピークが、分子量30000を超えると十分な低温定着性が得られなくなり、高速機での適用が難しくなる。また、Mw/Mnが5.0未満である場合には、シャープメルトとなり、高いグロスは得られやすくなるが、耐高温オフセット性が得られなくなる。
結着樹脂としてポリエステル系の樹脂を用いる場合は、アルコールとカルボン酸、もしくはカルボン酸無水物、カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
それらの中でも、特に、下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
〔式中、Rはエチレン、プロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。〕
また、非線形状ポリエステル樹脂を形成するための三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸および、これらの無水物やエステル化合物が挙げられる。三価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全モノマー基準で0.1〜1.9mol%が好ましい。
さらに結着樹脂として、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、さらに良好な離型剤分散性と、低温定着性、耐オフセット性の向上が期待できる。本発明に用いられる「ハイブリッド樹脂成分」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
ビニル系重合体を生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
本発明ではビニル系重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明のビニル系重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行なって合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分を製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)乃至(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/またはポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
尚、本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂との混合物を使用しても良い。
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物を使用しても良い。
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物を使用しても良い。
本発明のトナーに含有される結着樹脂のガラス転移温度は、40〜90℃が好ましく、より好ましくは45〜85℃である。樹脂の酸価は1〜40mgKOH/gであることが好ましい。
本発明のトナーに含有される着色剤としては公知の顔料または染料を用いることができ、特に限定されないが、顔料の種類としては例えば次の様なものが挙げられる。マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等、マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられ、かかる顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましく、これらのもの単独或いは2以上のものを併用して用いる。
その他の着色顔料として、シアン色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられ、これらのもの単独或いは2以上のものを併用して用いる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20等、染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられ、これらのもの単独或いは2以上のものを併用して用いる。
黒色着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、マグネタイト、フェライト等の酸化鉄、または、上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン/黒色着色剤を用いて黒色に調色されたものが利用できる。
また、本発明に使用するトナーにおいて、本発明の結着樹脂に予め、着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いることが好ましい。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー中に着色剤を良好に分散させることが出来る。
本発明に使用可能な樹脂を用い着色剤をマスターバッチ化させる場合、多量の着色剤を用いた場合においても着色剤の分散性を悪化させず、また、トナー粒子中における分散性を良化し、混色性や透明性等の色再現性の優れる。また、転写材上でのカバーリングパワーが大きいトナーを得ることが出来る。また、着色剤の分散性が良化することにより、トナー帯電性の耐久安定性が優れ、高画質を維持した画像を得ることが出来る。
尚、着色剤の使用量は結着樹脂100質量部に対して0.1乃至60質量部であることが好ましく、0.5乃至50質量部であることがより好ましい。
トナー母粒子には、その他成分として、離型剤を添加することが好ましい。次に本発明に用いることができる離型剤について説明する。本発明に用いることのできる離型剤の一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類などの、飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
本発明のトナーは、一種または二種以上のワックスを含有していることが望ましい。さらに、本発明のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性とを両立するという観点から、示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30乃至200℃の範囲に1個又は複数の吸熱ピークを有し、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が60乃至110℃の範囲にあることが望ましい。より好ましくは65乃至100℃の範囲に吸熱曲線の最大ピークがあることが望ましい。最大吸熱ピークのピーク温度が60℃未満である場合はトナーの耐ブロッキング性が悪くなることがあり、逆に最大吸熱ピークのピーク温度が110℃を超える場合は定着性が低下してしまう。
離型剤は結着樹脂100質量部あたり0.5乃至10質量部、好ましくは2乃至8質量部使用するのが良い。
トナー母粒子には、その他成分として、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、公知のものを使用できるが、芳香族カルボン酸誘導体、該芳香族カルボン酸金属化合物が挙げられる。例えば、該芳香族カルボン酸金属化合物の金属としては、2価以上の金属原子が好ましい。
2価の金属としてMg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられる。このような2価の金属としては、Zn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+が好ましい。3価以上の金属としてはAl3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+、Ti4+、Zr4+、Si4+が挙げられる。これらの金属の中で好ましいのはAl3+、Cr3+であり、特に好ましいのはAl3+である。本発明においては、荷電制御剤として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が特に好ましく用いられる。
荷電制御剤は、トナーの質量基準で0.1乃至10質量%使用すると、トナーの帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的に「カブリ」や画像濃度ダウンなどの画像品質の低下がなく好ましい。
次に、本発明のトナーを製造する方法について説明する。まず、原料混合工程では、トナー粒子を構成するトナー内添剤として、少なくとも結着樹脂、着色剤と、必要に応じてその他成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
次に、上記配合し、混合したトナー粒子原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー粒子原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
そして一般的には上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径が3乃至11μmの分級品をトナー粒子として得る。
本発明においては、粉砕工程で機械式粉砕を用いず、エアージェット式粉砕機にて粉砕した後、図3及び図4に示す様な、分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理とを同時に行う装置を用いて重量平均粒子径が3乃至11μmの分級品を得る。また、必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。
次に、得られたトナー粒子に無機微粒子及び必要に応じて他の外添剤を外添する。外添処理する方法としては、分級されたトナー粒子と上述の無機微粒子(A)並び無機微粒子(B)及び他の公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の、粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することにより本発明のトナーを得ることができる。
以下、本発明のトナーの製造に用いられる装置に対して詳しく述べる。上述したように、トナーの円形度を上記範囲に調整するには、トナー粒子の粉砕工程及び/又は球形化処理等の表面改質工程を該工程中に発生する微粉を系外に排出しながら処理を行うことが好ましい。図3は、本発明のトナーの製造に好ましく用いられる表面改質装置の一例の工程を示す模式的断面図であり、図4は図3の分散ローターの構成を示す模式的平面図である。図3の表面改質装置は、ケーシング30、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、ケーシング30内において中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤状の回転体である表面改質手段としての分散ローター36、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置された、表面に多数の溝が設けられているライナー34(尚、ライナー表面上の溝はなくても構わない)、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31、冷風を導入するための冷風導入口35、被処理原料を導入するための原料供給口33、表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37、分級ローター31と分散ローター36−ライナー34との間の空間を、分級ローター31へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面処理手段へ導入するための第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39、から構成されている。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター31及びその周辺部分が分級ゾーンである。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁38を閉じた状態で原料供給口33から微粉砕品を投入すると、投入された微粉砕品は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。
表面改質ゾーンに導かれた原料は分散ローター36とライナー34間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれる。この時発生した微粉は、分級ローター31により再度機外へ排出され、粗粉は循環流にのって再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開き、排出口37より表面改質粒子を回収する。
本発明者らが検討した結果、上記表面改質装置を用いた表面改質工程において、原料供給口33からの微粉砕品の投入から排出弁開放までの時間(サイクルタイム)と分散ローターの回転数が、トナーの球形度とトナー粒子表面の離型剤量をコントロールする上で重要なことが分かった。
球形度を上げるには、サイクルタイムを長くするか、分散ローターの周速を上げるのが効果的である。またトナー粒子表面の離型剤量を低く抑えようとするなら、逆にサイクルタイムを短くするか、周速を下げることが有効である。その中でも特に分散ローターの周速がある一定以上にならないとトナーを効率的に球形化できないため、サイクルタイムを長くして球形化しなければならず、必要以上に表面離型剤量を多くしてしまうことがある。トナー粒子表面の離型剤量を所定以下に抑えつつトナーの円形度を向上させて、トナーの円形度及び透過度を上記範囲とするためには、分散ローラーの周速を1.2×105mm/secとし、サイクルタイムを15乃至60秒とすることが有効である。
加えて、本発明のトナーの重量平均粒径は、4〜10μmであることが好ましく、5〜9μmであることがより好ましい。また、本発明のトナーは、個数平均粒径が3.5〜9.5μmであり、トナーの個数分布における粒径4μm以下の粒子が5〜50個数%であり、トナーの体積分布における粒径12.70μm以上の粒子が5体積%以下であることが好ましい。
トナーの重量平均粒径が10μmより大きい場合は、高画質化に寄与し得る微粒子が少ないことを意味し、高い画像濃度が得られ易く、トナーの流動性に優れるというメリットがあるものの、感光ドラム上の微細な静電荷像上には忠実に付着しづらく、ハイライト部の再現性が低下し、さらに解像性も低下する。また、必要以上にトナーが静電荷像に乗りすぎが起こり、トナー消費量の増大を招きやすい傾向にもある。
逆にトナーの重量平均粒径が4μmより小さい時には、トナーの単位質量あたりの帯電量が高くなり、画像濃度の低下、特に低温低湿下での画像濃度の低下が顕著となる。これでは、特にグラフィック画像の如き画像面積比率の高い用途には不向きである。
さらに4μmより小さい時には、キャリアなどの帯電付与部材との接触帯電がスムーズに行われにくく、充分に帯電し得ないトナーが増大し、非画像部への飛び散りによるカブリが目立つ様になる。これに対処すべくキャリアの比表面積を稼ぐためにキャリアの小径化が考えられるが、重量平均径が4μm未満のトナーでは、トナー自己凝集も起こり易く、キャリアとの均一混合が短時間では達成されにくく、トナーの連続補給耐久においては、カブリが生じてしまう傾向にある。
また本発明のトナーは、4μm以下の粒径のトナー粒子を全粒子数の5〜50個数%、好ましくは5〜25個数%であることが好ましい。4μm以下の粒径のトナー粒子が5個数%未満であると、高画質のために必須な成分である微小のトナー粒子が少ないことを意味し、特に、コピー又はプリントアウトを続けることによってトナーが連続的に使われるに従い、有効なトナー粒子成分が減少して、本発明で示すトナーの粒度分布のバランスが悪化し、画質がしだいに低下する傾向を示す。
また、4μm以下の粒径のトナー粒子が50個数%を超えると、トナー粒子相互の凝集状態が生じ易く、本来の粒径以上のトナー塊として、挙動することも多くなり、その結果、荒れた画像が形成されやすく、解像性を低下させたり、又は静電荷像のエッジ部と内部との濃度差が大きくなり、中抜け気味の画像となり易い。さらに、粒径12.70μm以上の粒子が7体積%以下であることが画質向上の上で好ましい。
次に、本発明に使用できるトナーの形状について詳しく説明する。
本発明に使用できるトナーの形状としては、FPIA2100(シスメックス社製)で測定した平均円形度が0.920乃至0.970であることが好ましい。
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナー粒子の平均円形度を求める。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、シースフローの薄層化(7μm→4μmに)及び処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
平均円形度が0.920より小さい場合、トナーの転写性が悪化し、転写残トナーが帯電部材に過剰に蓄積されることで帯電不良を生じる場合がある。また、研磨作用を有する無機微粒子が、トナー表面の凹凸の凹部に存在する割合が多くなってしまうことから、帯電生成物の除去効果が十分に得られなくなってしまう。
平均円形度が0.970より大きい場合は、トナーとしての流動性が良すぎることで、トナー飛散が生じやすくなる場合がある。
よって、トナーの形状としては上記範囲にあることが好ましいが、本発明においては、この範囲とするために、上記トナーの粉砕条件や表面処理改質処理条件を調整することで達成できる。
本発明のトナーは、トナーのみからなる(キャリアを含まない)一成分系現像剤及びトナーとキャリアとからなる二成分系現像剤のいずれにも適用できるものであり、何ら限定されないが、本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合に、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。本発明に使用できる磁性キャリアは、公知のフェライト粒子や磁性微粒子分散型樹脂コアの表面に被覆層を形成した磁性キャリアであることが好ましく、特に好ましくは磁性微粒子分散型樹脂コアの表面に被覆層を形成した磁性キャリアである。 本発明に使用できる磁性キャリアにおいて、磁性微粒子分散型樹脂コアに用いられる磁性微粒子は、マグネタイト微粒子であることが好ましく、また、磁性キャリアの真密度、磁気特性を調整する上で非磁性無機化合物であるヘマタイト(α−Fe2O3)微粒子を併用することが好ましい。
本発明に用いることができる、磁性微粒子分散型樹脂コア粒子を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フラン樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独でも2種以上を混合しても構わないが、少なくともフェノール樹脂を含有していることが好ましい。
本発明におけるコア粒子を構成するバインダー樹脂と磁性微粒子との割合は、質量基準において、バインダー樹脂:磁性微粒子=1:99〜1:50であることが好ましい。
また本発明においては、キャリア被覆用コート材が、少なくとも結着樹脂及び微粒子を含有することが好ましい。
本発明に使用できる磁性キャリアに用いるコート材を形成する結着樹脂としては、公知の樹脂であればいずれも用いることができるが、好ましくは、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフルオロクロロエチレンの如きパーフルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロクロルエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニルとフッ化ビニリデンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体等が挙げられる。
上述した樹脂は、単独でも使用できるが、夫々を混合して使用してもよい。又、熱可塑性樹脂に硬化剤等を混合し硬化させて使用することもできる。
また、本発明のおいては、コート材用樹脂として、コアとの密着性、スペント防止の観点から、シリコーン樹脂を使用することもできる。シリコーン樹脂は、単独で用いることもできるが、被覆層の強度を高め好ましい帯電に制御するために、カップリング剤と併用して用いることが好ましい。更に、前述のカップリング剤は、その一部が、樹脂をコートする前に、キャリアコア表面に処理される、いわゆるプライマー剤として用いられることが好ましく、その後の被覆層が、共有結合を伴った、より密着性の高い状態で形成することができる。
カップリング剤としては、アミノシランを用いると良い。その結果、ポジ帯電性を持ったアミノ基をキャリア表面に導入でき、良好にトナーに負帯電特性を付与できる。更に、アミノ基の存在は、磁性体分散型樹脂キャリアの場合、金属化合物に好ましく処理されている親油化処理剤と、シリコーン樹脂の両者を活性化させるため、シリコーン樹脂のキャリアコアとの密着性を更に高め、同時に樹脂の硬化を促進することでより強固な被覆層を形成することができる。
コート材を形成する樹脂のコアに対するコート量は、コア100質量部に対し、0.3乃至4.0質量部であることが好ましい。好ましくは0.4乃至3.5質量部であり、更に好ましくは0.5質量部乃至3.2質量部である。
また、上記コート樹脂中には、キャリア表面の形状を更に均一化するため、及び/又はトナーの帯電分布をよりシャープ化するために、微粒子を含有することが好ましい。
微粒子としては、有機、無機いずれも微粒子を用いることができるが、キャリアにコートを施す際に粒子の形状を保つことが必要であり、好ましくは、架橋樹脂粒子あるいは、無機の微粒子を好ましく用いることができる。具体的には、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、及びアルミナ等から単独あるいは混合して用いることができる。これらの中でも、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂が帯電安定性の観点で好ましい。
これらの微粒子は、コート樹脂100質量部に対して、1乃至40質量部含有させて用いることが好ましい。前記範囲で用いることにより、帯電安定性やトナー離れを良好にし、画像欠陥を防止することができる。1質量部未満の場合は、微粒子添加の効果を得ることができず、40質量部を超える場合、耐久中にコート層からの欠落が発生し、耐久性に劣る。
また、上記コート樹脂中には、キャリアの比抵抗を下げ過ぎず、且つキャリア表面の残留電荷を除去するために、導電性微粒子を含有してもよい。
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、及び酸化錫から選ばれる少なくとも一種以上の粒子を含有する粒子が好ましい。特に導電性を有する粒子としては、カーボンブラックが、少量の添加量でキャリア表面の残留電荷を除去することが可能であり、且つ粒径が小さくキャリア表面の微粒子による凹凸を阻害することなく好ましく用いることができる。
これらの導電性微粒子は、コート樹脂100質量部に対し、1乃至15質量部含有させて用いることが、キャリアの比抵抗を下げすぎず、かつ、キャリア表面の残留電荷除去のために好ましい。1質量部未満の場合は、キャリア表面の残留電荷除去の効果が発現しにくく、15質量部を超える場合には、コート材中での分散が不安定になり、また、過剰の電荷除去効果のため、キャリア自身の帯電付与能が低下することがある。
本発明に使用できる磁性キャリアは、個数基準の平均粒径が10乃至80μmが好ましい。平均粒径が10μm未満の粒子は、キャリア付着しやすく、また、80μmを超えるものは、トナーに対して比表面積が小さくなることで良好な帯電付与ができなくなる場合がある。特に高画質化及びキャリア付着を防止する為には、15乃至60μm、好ましくは20乃至45μmが良い。
磁性キャリアの平均粒径は、走査電子顕微鏡(100〜5000倍)によりランダムに粒径0.1μm以上のキャリア粒子を300個以上抽出し、デジタイザーにより水平方向フェレ径をもってキャリア粒径として測定し、キャリアの個数平均粒径を算出するものとする。
磁性微粒子分散型樹脂コアを製造する方法としては、バインダー樹脂のモノマーと磁性微粒子を混合し、前記モノマーを重合して磁性微粒子分散コア粒子を得る方法がある。このとき、重合に用いられるモノマーとしては、ビニル系モノマー、エポキシ樹脂を形成するためのビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂を形成するためのフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂を形成するための尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類が用いられる。例えば、硬化系フェノール樹脂を用いた磁性微粒子分散コア粒子の製造方法としては、水性媒体に磁性微粒子を入れ、この水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で重合して磁性微粒子分散コア粒子を得る方法がある。
磁性微粒子分散樹脂コア粒子を製造する他の方法としては、ビニル系又は非ビニル系の熱可塑性樹脂、磁性体、その他の添加剤を混合機により十分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き混練機を用いて溶融・混練して、これを冷却後、粉砕・分級を行って磁性微粒子分散コア粒子を得る方法がある。この際、得られた磁性微粒子分散型コア粒子を熱あるいは機械的に球形化して前記樹脂キャリア用の磁性微粒子分散コア粒子として用いることが好ましい。バインダー樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂の如き熱硬化性樹脂が、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れる点で好ましい。バインダー樹脂は、本発明の特性をより好適に発現せしめるためには、フェノール樹脂がより好ましい。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
本発明の画像形成方法について詳しく説明する。
本発明の画像形成方法を用いた現像同時クリーニング方式の一例を図5に示す。図5において、静電潜像担持体である電子写真感光体1はb方向に回転する。感光体1は帯電手段である帯電装置2により帯電され、帯電した感光体1表面には、静電潜像形成手段である露光装置3によりレーザー光Lを投射し、静電潜像を形成する。その後、現像手段である現像装置4により静電潜像はトナー像として可視像化され、転写手段である転写装置5により転写材Pに転写される。この転写手段において、転写されずに感光体表面に残った転写残トナーは、前述の帯電手段、静電潜像形成手段を経て、再度現像に供されるかもしくは現像装置に回収される。
ここで、本発明に使用できる画像形成方法の各工程に関して、更に詳しく説明する。
帯電工程は、感光体の表面に電荷を付与して電子写真感光体を帯電させる手段であれば特に限定されない。帯電手段には、コロナ帯電手段のように、電子写真感光体に対して非接触で電子写真感光体を帯電させる装置や、導電性のローラやブレードを電子写真感光体に接触させて電子写真感光体を帯電させる装置が使用可能である。
本発明においては、帯電生成物の観点から接触帯電方式が好ましい。従来の非接触帯電方式であるコロナ放電は、多量に生じるオゾンが、空気中の窒素と反応して窒素酸化物(NOx)となり、更にこれらの窒素酸化物が空気中の水分と反応して硝酸となって感光体の表面に付着して、感光体の表面の抵抗を低下させやすい。これに対して、接触帯電方式はオゾンの発生量が格段に少なく、帯電生成物による感光体表面の抵抗の変化は小さくなる。又、接触帯電方式であることで、感光体との接触領域において、転写残トナー中に含まれる無機微粒子の研磨作用により、画像流れの原因である帯電生成物を効率よく除去できるので更に好ましい。
接触帯電方式には、ローラ帯電方式のような放電帯電機構を用いたものと、磁気ブラシ帯電方式のような直接注入帯電機構がある。
放電帯電機構は、接触帯電部材と被帯電体との隙間に生じる放電現象により被帯電体の表面が帯電する機構である。放電帯電系は接触帯電部材と被帯電体に一定の放電しきい値を有するため、被帯電体電位より大きな電圧を接触帯電部材に印加する必要がある。また、コロナ帯電器に比べれば発生量は格段に少ないが、原理的に帯電生成物を生じる。
放電による接触帯電部材としては、導電性ローラ(帯電ローラ)を用いたローラ帯電方式(ローラ帯電装置)が放電の安定性という点で好ましく、広く用いられている。この放電用帯電ローラは、導電あるいは中抵抗のゴム材あるいは発泡体を基層としてローラ状に形成した上に、その表面が高抵抗層で作製されてもよい。この構成において、放電現象はローラと被帯電体の接触部から少し離れた数十μmの隙間で起きる。従って、放電現象を安定化するために、ローラ表面にある層(以下、表面層という)は平坦で、表面の平均粗さRaで1.0μm以下であり、ローラ硬度も高い表面を有していることが好ましい。また、放電によるローラ帯電は印加電圧が高く、ピンホール(被帯電体膜の損傷による基盤の露出)があると、その周辺にまで電圧降下が及び帯電不良を生じやすい。従って、表面層の表面抵抗は1011Ω以上にすることで電圧降下を防止するという点で好ましい。
直接注入帯電機構は、接触帯電部材と被帯電体との分子レベルでの接触により、直接に電荷の授受をすることにより被帯電体の表面を帯電(充電)する帯電機構である。直接帯電あるいは注入帯電とも称される。
注入による接触帯電部材としては、磁気ブラシを用いた磁気ブラシ帯電方式(磁気ブラシ帯電装置)が好ましく用いられる。磁気ブラシ帯電は、接触帯電部材として導電性磁性粒子をマグネットロール等で磁気拘束してブラシ状に形成した磁気ブラシ部を有する部材を用い、その磁気ブラシ部を被帯電体である感光体に接触させ、所定の帯電バイアスを印加して感光体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。
磁気ブラシ部を構成させる導電性磁性粒子として、個数基準で平均粒径5〜50μmの粒子を用い、感光体と十分速度差を設けることで、均一に直接注入帯電を行うことが好ましい。磁気ブラシ帯電には、機器構成が複雑であること、磁気ブラシ部を構成している導電性磁性粒子が脱落して感光体に付着する等の弊害もある。
導電性磁性粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(100〜5000倍)によりランダムに粒径0.1μm以上の導電性磁性粒子を300個以上抽出し、デジタイザーにより水平方向フェレ径をもって粒径として測定し、導電性磁性粒子の個数平均粒径を算出するものとする。
直接注入帯電機構においては、接触帯電部材と被帯電体の電位差は数V〜数十V程度である。帯電電位は印加電圧と等しく、放電を生じる電圧差もない。また、帯電に必要な電圧は低く抑えられる。この直接帯電系はイオンの発生を伴わないため放電生成物による弊害は生じない。つまり、オゾンの発生も無く低電力の点で優れた帯電方式である。
接触帯電方式の機構としては、上記の2つの方法が挙げられるが、いずれも従来のコロナ放電を用いた非接触帯電方式における多量のオゾン発生も無く、帯電生成物の抑制や低電力の観点から好適に用いられる。
静電潜像形成工程は、露光手段として公知の露光装置が使用できる。例えば、光源は半導体レーザまたは発光ダイオードが用いられ、ポリゴンミラー、レンズ、ミラーから成る走査光学系ユニットを用いることができる。
現像工程は、主としてキャリアが不要な一成分系接触現像方法とトナーとキャリアを有する二成分系現像方法に分けられるが、いずれも使用可能である。本発明においては、感光体表面の付着物の抑制及び除去の観点から、二成分系現像方法が好適に用いられる。
二成分系現像方法としては、磁石を内包した現像剤担持体(現像スリーブ)上に非磁性トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤の磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシを現像剤層厚規制部材により所定の層厚にコートした後、感光体に対向する現像領域へと搬送し、該現像領域においては、感光体と現像スリーブの間に所定の現像バイアスを印加しながら、該磁気ブラシを感光体表面に近接/又は接触させることによって、上記静電潜像をトナー像として顕像化する方法である。
このように、磁気ブラシを感光体表面に近接/又は接触させることにより、感光体表面への付着物を軽減することができるとともに、トナー中に含有する研磨作用を有する無機微粒子により、感光体表面の付着物を効果的に除去することができるので、好ましく用いられる。
このような二成分系現像剤に使用できる磁性キャリアとしては、鉄粉キャリア、フェライトキャリア、あるいは磁性微粒子をバインダー樹脂中に分散した磁性微粒子分散型樹脂キャリア等が挙げられる。鉄粉キャリアにおいては、キャリア自身の比抵抗が低いために、静電潜像の電荷がキャリアを通してリークしてしまい、静電潜像を乱すことから画像欠陥を生じてしまう場合がある。また、フェライトキャリアにおいては、キャリア自身の比抵抗は比較的高いものの、大きな飽和磁化を有しているために磁気ブラシが剛直となりやすく、トナー画像に磁気ブラシのはき目ムラを生じてしまう場合がある。そのため、磁性微粒子をバインダー樹脂中に分散した磁性微粒子分散型樹脂キャリアが好適に用いられる。磁性微粒子分散型樹脂キャリアは、フェライトキャリアよりも比抵抗が比較的に高く、且つ飽和磁化も小さく、真比重も小さくなることから、静電潜像の電荷リークを防止するとともに、磁気ブラシも剛直になることがないので、画像欠陥やはき目ムラのない良好なトナー画像を形成することができるという点で好ましい。
転写工程は、コロナ転写手段のように、感光体に対して非接触で感光体表面のトナー像を転写材に転写させる方法や、ローラや無端ベルト状の転写部材を感光体に接触させて感光体表面のトナー像を転写材に転写させる方法が有り、いずれも使用可能である。
本発明においては、帯電工程と同様に、多量のオゾン発生が無く、帯電生成物の抑制や低電力の観点から、接触系の転写ローラや、樹脂ベルト、弾性ベルト状の転写部材が好適に用いられる。
また、本発明の画像形成方法においては、図6に示したように、転写後で帯電工程の前に感光体上の転写残トナーを均し、現像時の転写残トナーの回収率を向上させるために、転写残トナーの帯電極性の均一化を目的として、バイアス印加手段を有する均し工程6を更に含むことが好ましい。
均し工程6においては、トナーが負帯電性の場合は、転写残トナーを負帯電させるバイアスを印加させることにより、帯電工程での帯電部材への転写残トナーの付着が軽減できるため好ましい。これにより、現像時における転写残トナーの回収率が向上する。また、均し部材としては、ブラシ状のものが好ましく用いられる。更にこのような均し部材は、複数個設けることにより、帯電部材のへの転写残トナーの付着の軽減や、現像時における転写残トナーの回収率が高まるため好ましい。
以下に本発明に関わるその他物性の分析・測定方法について述べる。
<無機微粒子の粒径測定>
無機微粒子の粒径は、走査電子顕微鏡(50,000倍)により、粒径が5nm以上の粒子をランダムに500個以上抽出し、長軸と短軸をデジタイザにより測定し、平均したものを粒径とし、500個以上の粒子の粒径分布(10nm毎に区切ったカラムのヒストグラムから)のピークになる最頻径をもって平均粒径を算出する。
<結着樹脂、トナー、被覆用樹脂のGPC測定による分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。測定には、HLC−8120GPC(東ソー社製)を用いた。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
<トナー及びワックスのDSCにおける最大吸熱ピークの測定>
トナー及びワックスの最大吸熱ピークは、示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。
温度曲線:昇温I (30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
降温I (200℃〜30℃、降温速度10℃/min)
昇温II(30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
測定方法としては、5〜20mg、好ましくは10mgの測定試料を精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。トナーの最大吸熱ピークは、昇温IIの過程で、樹脂Tgの吸熱ピーク以上の領域のベースラインからの高さが一番高いものを、若しくは樹脂Tgの吸熱ピークが別の吸熱ピークと重なり判別し難い場合、その重なるピークの極大ピークから高さが一番高いものを本発明のトナーの最大吸熱ピークとする。
<トナー粒度分布の測定>
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、約1%NaCl水溶液を用いる。電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製された電解液や、例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜5mlを加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、前記測定装置により、試料の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、試料の体積分布と個数分布とを算出する。得られたこれらの分布から、試料の重量平均粒径を求める。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32〜40.30μmの13チャンネルを用いる。