JPWO2007034830A1 - 積層型正特性サーミスタ - Google Patents

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Abstract

本発明の積層型正特性サーミスタは、半導体セラミック層がBaTiO3系セラミック材料を主成分とすると共に、BaサイトとTiサイトの比が0.998〜1.006であり、半導体化剤としてEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmのうち少なくとも一種が、Ti100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下の範囲で含有されている。これにより実測焼結密度が理論焼結密度の65%〜90%という焼結密度の低い半導体セラミック層の場合であっても、十分に大きな抵抗変化率を有し、かつ、キュリー点以上の温度における抵抗の立ち上がり係数が高い積層型正特性サーミスタを実現することができる。

Description

本発明は、過電流保護用、温度検知用等の積層型正特性サーミスタに関し、特に、抵抗変化率が高く、かつ、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数を向上させた積層型正特性サーミスタに関する。
近年、電子機器の分野では小型化が進んでおり、これらの電子機器に搭載される正特性サーミスタにおいても小型化が進んでいる。この正特性サーミスタは正の抵抗温度特性を有するものであり、小型化された正特性サーミスタとして、例えば、積層型正特性サーミスタが知られている。
この種の積層型正特性サーミスタは、通常、正の抵抗温度特性を有する複数の半導体セラミック層と、半導体セラミック層の界面に沿ってそれぞれ形成された複数の内部電極層とを有するセラミック素体を有し、前記セラミック素体の両端部には前記内部電極層が互い違いになるように引き出され、この引き出された内部電極層と電気的に接続するように外部電極が形成されている。また、半導体セラミック層としては、BaTiO系セラミック材料を主成分としたものが用いられている。さらに、BaTiO系セラミック材料で正の抵抗温度特性を発現させるには、極微量の半導体化剤が添加されるが、この半導体化剤としては、一般にはSmが広く用いられている。
また、積層型正特性サーミスタの内部電極材料としては、Niが広く用いられている。通常、積層型正特性サーミスタのセラミック素体は、半導体セラミック層となるセラミックグリーンシートに、内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷して導体パターンを形成し、導体パターンの形成されたセラミックグリーンシートを所定順序で積層し、セラミックグリーンシートと導体パターンとを一体焼成することによって形成される。
ところで、内部電極材料としてNiを用いた場合、大気雰囲気下で一体焼成すると、Niが酸化されてしまうため還元雰囲気下で一体焼成する必要があるが、還元雰囲気下で一体焼成すると、半導体セラミック層も還元されてしまうため、十分な抵抗変化率が得られなくなる。このため、通常は還元雰囲気下で一体焼成を行った後に、別途、大気雰囲気下または酸素雰囲気下で再酸化処理を行っている。
しかしながら、この再酸化処理は、熱処理温度の制御が難しく、セラミック素体の中央部にまで酸素を行き渡らすのが困難であり、このため酸化むらが生じて十分な抵抗変化率が得られなくなるおそれがある。
そこで、特許文献1では、半導体セラミック層の空隙率を5〜40体積%とし、積層方向に関して最も外側にそれぞれ位置する2つの内部電極間にある有効層となる複数のサーミスタ層のうち、積層方向での中央部にあるサーミスタ層の空隙率が、積層方向での外側にあるサーミスタ層の空隙率よりも高くした積層型正特性サーミスタが提案されている。
特許文献1では、半導体セラミック層の空隙率を5〜40体積%としているが、この空隙率を焼結密度に換算すると、おおよそ理論焼結密度の60%以上95%以下に相当する。そして、この特許文献1では、半導体セラミック層の実測焼結密度を理論焼結密度の60以上95%以下と小さくし、空隙率を中央部のサーミスタ層よりも外側のサーミスタ層よりも大きくすることにより、セラミック素体の中央部にまで酸素を行き渡りやすくし、これにより酸化むらが生じるのを防いで所望の抵抗変化率を得ようとしている。
特開2005−93574号公報
しかしながら、特許文献1のように、主成分としてBaTiO系セラミック材料を用い、半導体化剤としてSmを添加した半導体セラミック層と、電極材料としてNiを用いた内部電極層とを一体焼成により形成し、例えば理論焼結密度に対する実測焼結密度が65%以上90%以下の焼結密度の低い半導体セラミック層を得ようとすると、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数が小さいという問題があった。
すなわち、高い抵抗変化率を発現させるために焼結密度の低い半導体セラミック層を得ようとすると、抵抗の立ち上がり係数が低くなるため、高い抵抗変化率と抵抗の立ち上がり係数の両立を図ることができなかった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、BaTiO系セラミック材料を主成分とする焼結密度の低い半導体セラミック層を有する場合であっても、抵抗変化率が高く、かつ、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数が大きな積層型正特性サーミスタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、半導体セラミック層がBaTiO系セラミック材料を主成分とし、かつ実測焼結密度が理論焼結密度の65〜90%という焼結密度の低い場合であっても、BaサイトとTiサイトの比を0.998〜1.006の範囲とし、かつ、半導体化剤として、Dy、Y等の特定の物質をTi100モル部に対し0.1〜0.5モル部添加することにより、高い焼成温度で焼成処理を行っても、大きな抵抗変化率を維持することができ、その結果、大きな抵抗変化率と大きな抵抗の立ち上がり係数の両立が可能な積層型正特性サーミスタを得ることができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る積層型正特性サーミスタは、実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下の半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されて焼結されてなるセラミック素体と、前記内部電極層と電気的に接続されるように前記セラミック素体の両端部に形成された外部電極とを有する積層型正特性サーミスタにおいて、前記半導体セラミック層は、BaTiO系セラミック材料を主成分とすると共に、BaサイトとTiサイトの比が0.998≦Baサイト/Tiサイト≦1.006であり、半導体化剤としてEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmの中から選択された少なくとも1種の元素が、Ti100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下の範囲で含有されていることを特徴としている。
また、この種の積層型正特性サーミスタでは、内部電極材料として、通常はNiを主成分とした導電性材料が使用され、内部電極層と半導体セラミック層とが一体焼成して形成される場合、内部電極層から半導体セラミック層中にNiを主成分とする導電性材料が拡散し、内部電極層と半導体セラミック層との界面に拡散層の形成されることが知られており、従来では、抵抗の立ち上がり係数や抵抗変化率等、積層型正特性サーミスタの諸特性を確保するためには、半導体セラミック層を厚くせざるを得なかった。
しかしながら、本発明者ら研究結果により、BaサイトとTiサイトの比を上述の範囲とし、かつ上記特定の半導体化剤を上述の範囲で半導体セラミック層に含有させた場合は、上記拡散層を薄くすることができ、これにより、実質的に積層型正特性サーミスタの特性に寄与する半導体セラミック層の厚みも薄くすることが可能であることが分かった。
具体的には、前記拡散層の厚みtと、前記半導体セラミック層の厚みDとの比が、0.01以上0.20以下としても、抵抗変化率及び抵抗の立ち上がり係数の双方が良好な積層型正特性サーミスタが得られることが分かった。
すなわち、本発明の積層型正特性サーミスタは、前記内部電極層はNiを主成分とすると共に、前記半導体セラミック層と前記内部電極層とは一体焼成されてなり、前記一体焼成時に前記内部電極層から前記半導体セラミック層中に拡散して形成されるNiを主成分とする拡散層の厚みtと、前記半導体セラミック層の厚みDとの比が、0.01≦t/D≦0.20であること特徴としている。
本発明の積層型正特性サーミスタによれば、半導体セラミック層は、BaTiO系セラミック材料を主成分とすると共に、BaサイトとTiサイトの比が0.998≦Baサイト/Tiサイト≦1.006であり、半導体化剤としてEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmの中から選択された少なくとも一種の元素が、Ti100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下の範囲で含有されているので、半導体セラミック層の実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下という焼結密度の低い場合であっても、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数を急峻にすることができると共に、高い焼成温度で焼成したとしても十分な抵抗変化率が得ることができ、したがって優れた抵抗変化率と抵抗の立ち上がり係数の両立を図ることができる。
また、前記内部電極層はNiを主成分とすると共に、前記半導体セラミック層と前記内部電極層とは一体焼成されてなり、前記一体焼成時に前記内部電極層から前記半導体セラミック層中に拡散して形成されるNiを主成分とする拡散層の厚みtと、前記半導体セラミック層の厚みDとの比が、0.01≦t/D≦0.20であるので、半導体セラミック層が薄い場合であっても、抵抗の立ち上がり係数及び抵抗変化率の双方が良好な積層型正特性サーミスタを得ることができ、半導体セラミック層のより一層の薄層化が可能となり、積層型正特性サーミスタの小型化に寄与することができる。
本発明に係る積層型正特性サーミスタの一実施の形態を模式的に示した概略断面図である。 図1のA部拡大図である。
符号の説明
2 半導体セラミック層
3a、3b 内部電極層
4 セラミック素体
5a、5b 外部電極
次に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る積層型正特性サーミスタの一実施の形態を示す概略断面図である。
本積層型正特性サーミスタは、半導体セラミック層2を有するセラミック素体4の内部に内部電極層3a、3bが埋設されている。そして、セラミック素体4の両端部には、内部電極層3a、3bと電気的に接続されるように外部電極5a、5bが形成されている。すなわち、内部電極層3aはセラミック素体4の一方の端面に、内部電極層3bはセラミック素体4の他方の端面に、交互に引き出されるように形成されている。そして、外部電極5aは内部電極層3aと電気的に接続され、外部電極5bは内部電極層3bと電気的に接続されている。
また、外部電極5a、5bの表面にはNi等で形成された第1のめっき皮膜6a、6bが形成され、さらに第1のめっき皮膜6a、6bの表面にはSn等で形成された第2のめっき皮膜7a、7bが形成されている。
そして、上記半導体セラミック層2は、実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下とされている。
すなわち、実測焼結密度が理論焼結密度の65%未満になると焼結密度が低くなりすぎるため、セラミック素体4の機械的強度が低下したり、室温抵抗値が高くなる。一方、実測焼結密度が理論焼結密度の90%を超えてしまうと焼結密度が高すぎるため、再酸化処理で酸素をセラミック素体4の中央部にまで行き渡らせるのが困難となり、したがって再酸化処理が円滑に進行せず、このため十分な抵抗変化率を得ることができなくなる。
これに対し半導体セラミック層2の実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下の場合は、機械的強度の低下を招くこともなく、再酸化処理で酸素をセラミック素体4の中央部にまで行き渡らせることができ、その結果十分な抵抗変化率を有する積層型正特性サーミスタを得ることが可能となり、しかも、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数の向上が可能となる。
上記半導体セラミック層2は、組成的には、ペロブスカイト型構造(一般式ABO)を有するBaTiO系セラミック材料を主成分として形成されると共に、BaサイトとTiサイトとの比(=Baサイト/Tiサイト)が0.998以上1.006以下となるように配合され、かつ半導体化剤としてEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、及びTm(以下、これらの半導体化剤を「特定の半導体化剤」と総称する。)のうちの少なくとも1種がTi100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下含有されている。
そしてこれにより、十分な抵抗変化率を得ることができると共に、抵抗の立ち上がり係数を大きくすることができ、優れた抵抗変化率と抵抗の立ち上がり係数の両立を図ることができる。
尚、Baサイトとは、一般式ABOで表されるBaTiOにおいて、Baが配位するAサイト全体を意味し、したがってBaの一部と置換された元素がAサイトに配位されている場合は、その置換元素を含めたものをいう。同様に、Tiサイトとは、Tiが配位するBサイト全体を意味し、したがってTiの一部と置換された元素がBサイトに配位されている場合は、その置換元素を含めたものをいう。
また、BaサイトとTiサイトとの比(=Baサイト/Tiサイト)を0.998以上1.006以下としたのは以下の理由による。
上記特定の半導体化剤を半導体セラミック層に所定量含有させた場合であっても、Baサイト/Tiサイトが0.998未満になると、抵抗の立ち上がり係数が小さくなり、抵抗変化率が小さくなり、しかも室温抵抗値が高くなる。一方、Baサイト/Tiサイトが1.006を超えた場合も室温抵抗値が高くなり、また、抵抗の立ち上がり係数や抵抗変化率も不安定になる。
そこで、本実施の形態では、BaサイトとTiサイトとの比(=Baサイト/Tiサイト)を、0.998以上1.006以下となるように各組成の配合量が調整されている。
また、特定の半導体化剤をTi100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下含有させたのは以下の理由による。
半導体化剤として、特許文献1に記載されているようなSmを使用した場合、半導体セラミック層2の焼結密度を小さくするためには1200℃程度の低い温度で焼成せざるを得ず、このため大きな抵抗の立ち上がり係数を得るのが困難であった。
しかしながら、本発明者らの研究結果により、上記特定の半導体化剤を選択して主成分に添加すると、より高い温度(例えば、1200℃〜1300℃)での焼成可能になり、抵抗の立ち上がり係数が向上することが分かった。
一方、焼成温度が高くなると焼結密度が高くなることから、抵抗変化率を向上させるのが困難になるとも考えられる。
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上記特定の半導体化剤を主成分に添加した場合は焼成温度が高くなっても、実測焼結密度が理論焼結密度の65〜90%程度の低い焼結密度を維持でき、これにより十分に大きな抵抗変化率を得ることのできることが分かった。つまり、上記特定の半導体化剤を主成分に添加することにより、大きな抵抗変化率と抵抗の立ち上がり係数の向上の両立が可能となったのである。
ただし、特定の半導体化剤の含有量が、Ti100モル部に対し0.1モル部未満になると、BaTiO系セラミック材料の半導体化を十分に行うことができず、室温抵抗値が高くなる。一方、特定の半導体化剤の含有量が、Ti100モル部に対し0.5モル部を超えた場合も室温抵抗値が高くなり、しかもこの場合は抵抗変化率や抵抗の立ち上がり係数も小さくなる。
そこで、本実施の形態では、特定の半導体化剤の含有量が、Ti100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下となるように調製している。
また、内部電極層3a、3bを構成する内部電極材料としては、半導体セラミック層2とのオーミック接触に優れた材料が好ましく、Ni単体やNi合金等のNiを主成分とした材料を使用することができるが、Niが主成分であれば、Cu等の他の金属を含んでいてもよい。
ところで、積層型正特性サーミスタでは、内部電極層3a、3bと半導体セラミック層2とが一体焼成されて形成される場合、図2に示すように、内部電極層3a、3bの主成分であるNiが半導体セラミック層2中に拡散し、内部電極層3a、3bと半導体セラミック層2との間に拡散層8が形成される。
そして、本実施の形態では、拡散層8の厚みtと半導体セラミック層の厚みDとの比t/Dを0.01≦t/D≦0.20となるように半導体セラミック層2の厚みtを薄くした場合であっても、抵抗の立ち上がり係数が良好で、かつ抵抗変化率が大きい積層型正特性サーミスタを得ることができる。
すなわち、一般に、焼成処理時にNiが半導体セラミック層2中に拡散すると、このNiはBaTiO系セラミック材料のアクセプターとして作用する。そして、BaTiO系セラミック材料のドナーとなる半導体化剤の含有量が過剰であったり、或いは半導体化剤の種類によってはドナー効果を打ち消すことから、アクセプターとして作用するNiの内部電極層3a、3bからの拡散が促進される傾向がある。その結果、比較的厚みの大きな拡散層8が形成されやすくなり、このため抵抗の立ち上がり係数が小さくなり、また、抵抗変化率も小さくなるおそれある。したがって、抵抗の立ち上がり係数及び抵抗変化率の向上を図るためには、半導体セラミック層2の厚みDを厚くせざるを得なくなる。
しかしながら、本実施の形態のように、BaTiOを主成分とすると共に、BaサイトとTiサイトとの比を0.998以上1.006以下とし、かつ上述した特定の半導体化剤を主成分に所定量添加した場合は、これら特定の半導体化剤がBaサイトとTiサイトの双方に固溶するため、アクセプターとして作用するNiがTiサイトに固溶されるのを極力防ぐことができ、その結果、内部電極層3a、3bからのNiの拡散自体を抑制することが可能となり、これにより、半導体セラミック層2の厚みDを薄くすることができる。
そして、本発明者らの研究結果により、拡散層8の厚みtと半導体セラミック層2の厚みDとの比t/Dが0.01以上0.20以下となるように半導体セラミック層2の厚みDを薄くしても、抵抗の立ち上がり係数が良好で、かつ抵抗変化率の大きい積層型正特性サーミスタを得ることができ、これによりより一層薄層化・小型化された積層型正特性サーミスタの実現が可能になる。
ここで、比t/Dが0.01以上0.20以下としたのは以下の理由による。
比t/Dが0.20を超えると、拡散層8の厚みtに対し半導体セラミック層2の厚みDが薄く、結果的に多量のNiが半導体セラミック層2中に拡散することとなることから、抵抗の立ち上がり係数が小さくなり、また十分な抵抗変化率が得られなくなる。一方、比t/Dが0.01未満になると内部電極層3a、3bと半導体セラミック層2との間でデラミネーションが発生し、室温抵抗値が高くなったり、抵抗変化率のばらつきが生じるおそれがあり、好ましくない。
したがって、比t/Dは0.01以上0.20以下とするのが好ましい。
また、外部電極5a、5bを構成する外部電極材料としては、Ag、Ag−Pd、及びPd等の貴金属の単体及び合金、またはNi,及びCu等の卑金属の単体及び合金等を使用することができ、内部電極層3a及び3bと接続及び導通が好適なものを選ぶことが好ましい。
尚、半導体セラミック層2の厚みは、要求される室温抵抗値や積層枚数によって種々調整することができ、厚みは約5μm〜50μmのものを使用できるが、本実施の形態では拡散層8を薄くすることができるので、5μm〜20μmの範囲であっても十分な効果が得られる。
このように本積層型正特性サーミスタは、(i)BaサイトとTiサイトとの比を0.998以上1.006以下とし、(ii)特定の半導体化剤(Eu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、及びTm)をTi100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下の範囲で半導体セラミック層2に含有させているので、半導体セラミック層2の実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下という焼結密度の低い場合であっても、十分な抵抗変化率を得つつ抵抗の立ち上がり係数の大きな積層型正特性サーミスタを得ることができる。
しかも、拡散層8の厚みtと半導体セラミック層2の厚みDとの比t/Dが、0.01≦t/D≦0.20の関係を満たすような場合であっても、抵抗の立ち上がり係数α及び抵抗変化率の高い積層型正特性サーミスタを得ることが可能であり、したがって、より一層小型の積層型正特性サーミスタを得ることができる。
次に、上記積層型正特性サーミスタの製造方法を説明する。
まず、出発原料としてBaCO、TiO、及びEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmのうちの少なくとも1種を用意する。
そして、セラミック組成が(Ba1-p(Ti1-qq(ただし、AはEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmのうちの少なくとも1種、px+qy=u、0.998≦x/y≦1.006、0.001≦u≦0.005)となるように前記出発原料を所定量秤量する。次いで、該秤量物を部分安定化ジルコニア等(以下、「PSZボール」という。)の粉砕媒体と共にボールミルに投入して十分に湿式混合粉砕し、その後、所定温度(例えば、1000〜1200℃)で仮焼しセラミック粉末を作製する。
次に、前記セラミック粉末に有機バインダを加え、湿式で混合処理を行なってセラミックスラリーを作製する。その後、得られたセラミックスラリーをドクターブレード法等のシート成形法を用いてシート状に成形し、セラミックグリーンシートを作製する。
この際、焼成後の半導体セラミック層2の実測焼結密度が理論焼結密度の65〜90%となるように、有機バインダの添加量を調整する。また、焼成後の拡散層8の厚みtと半導体セラミック層2の厚みDとの比t/Dが0.01〜0.2となるようにセラミックグリーンシートの厚みを調整するのが好ましい。
次いで、Niを主成分とした内部電極用導電性ペーストを用意する。そして、前記セラミックグリーンシート上に前記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷等によって印刷し、導体パターンを形成する。
次に、これら導体パターンの形成されたセラミックグリーンシートを所定順序に積層した後、導体パターンの形成されていないセラミックグリーンシートを上下に配し、圧着して積層体を作製する。
次いで、この積層体を所定寸法に切断してアルミナ製の匣(さや)に収容し、所定の温度(例えば300〜400℃)で脱バインダ処理を行った後、所定の還元雰囲気下(例えば、Nガスに対するHガスの濃度が1〜3重量%程度)、所定温度(例えば、1200〜1250℃)で焼成処理を施し、内部電極層3a、3bと半導体セラミック層2とが交互に積層されたセラミック素体4を形成する。
続いて、上記セラミック素体4を大気雰囲気下、又は酸素雰囲気下、所定の温度(例えば、500〜700℃)で再酸化処理を行う。
続いて、セラミック素体4の両端部にスパッタリング処理を施してAgを主成分とする外部電極5a及び5bを形成する。さらに、外部電極5a及び5bの表面には電解めっきによりNi皮膜6a、6b、及びSn皮膜7a、7bを順次形成し、これにより上記積層型正特性サーミスタが製造される。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、半導体セラミック層2の焼結密度に関しては、セラミックグリーンシート作製時の有機バインダの添加量で調整しているが、これに限るものではない。
また、上記実施の形態では、外部電極5a、5bの形成方法として、スパッタリング法を使用しているが、焼付け処理で形成してもよい。すなわち、外部電極用導電性ペーストをセラミック素体4の両端部に塗布した後、所定温度(例えば、550〜700℃)で焼付けて形成してもよく、この際、セラミック素体4への再酸化処理を兼ねるように構成してもよい。また、密着性が良好であれば、スパッタリング法以外の真空蒸着法等、他の薄膜形成方法を利用することも可能である。
また、上記実施の形態では、出発原料として酸化物を使用したが、炭酸塩等を使用することもできる。
また、本発明の積層型正特性サーミスタは、過電流保護用、温度検知用に有用であるがこれに限るものではない。図1の積層型正特性サーミスタでは、内部電極層3a、3bは交互に外部電極5a、5bに接続されているが、少なくとも1組以上の連続する内部電極層3a、3bが半導体セラミック層2を介して異なる電位に接続された外部電極5a、5bに接続されていれば、その他の内部電極層3a、3bは必ずしも交互に形成する必要はなく、図1に示した形状の積層型正特性サーミスタに限定されるものではない。
また、セラミック素体4の表面のうち、外部電極5a、5bが形成されていない部分にガラス層や樹脂層等の保護層を形成してもよく(図示せず)、このような保護層を形成することで、より一層外部環境の影響が受けにくくなり、温度・湿度等による特性劣化を抑制することができる。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
まず、出発原料として、BaCO、TiO、Eu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmを用意し、半導体セラミック層の組成が(Ba0.9980.002-v)(TiA)O(但し、AはEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、又はTm)となるように、これら出発原料を秤量した。
続いて、これらの出発原料に純水を加え、PSZボールと共にボールミル内で10時間混合粉砕し、乾燥後、1150℃で2時間仮焼し、再度、PSZボールと共にボールミル内で粉砕して仮焼粉を得た。
次に、得られた仮焼粉に、アクリル酸系有機バインダ、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩、及び純水を加えて、PSZボールと共にボールミル内で15時間混合してセラミックスラリーを得た。ここで、アクリル酸系有機バインダの添加量は、焼成後の半導体セラミック層の実測焼結密度が理論焼結密度の70%となるように調整した。
続いて、得られたセラミックスラリーを、ドクターブレード法によりシート状に成形し、乾燥させて、焼成後の半導体セラミック層の厚みが20μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
次に、Ni粉末と有機バインダとを有機溶剤に分散させて内部電極用導電性ペーストを得た。そして得られた内部電極用導電性ペーストを、セラミックグリーンシートの主面上に、焼成後の内部電極層の厚みが1μmとなるようスクリーン印刷を施し、導体パターンを形成した。
その後、導体パターンの形成されたセラミックグリーンシートを、導体パラーンがセラミックグリーンシートを介して対向するようにセラミックグリーンシートを25枚積み重ね、さらに導体パターンの形成されていない保護用セラミックグリーンシートを上下に5枚づつ配して圧着し、次いで、長さ2.2mm、幅1.3mm、厚み0.9mmの寸法に切断して生の積層体を得た。この生の積層体を大気中400℃、12時間で脱バインダ処理を行った後、Nガスに対するHガスの濃度が3重量%に調整された還元雰囲気下、1150℃、1200℃、1225℃、1250℃、及び1275℃のいずれかの焼成温度で2時間焼成し、半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されたセラミック素体を得た。
次に、得られたセラミック素体の表面をバレル研磨した後、該セラミック素体をシリカ系のガラス溶液に浸漬し、600℃の温度で乾燥しセラミック素体の表面にガラス保護層を形成した。次いで、大気雰囲気下、700℃の温度で再酸化処理を行いセラミック素体の表面にガラス保護層を形成した。その後、ガラス保護層が形成されたセラミック素体のうち、外部電極形成部分をバレル研磨し、そのセラミック素体の両端部にCu、Cr、及びAgをそれぞれターゲットにして順次スパッタリング処理を施し、三層構造の外部電極を形成した。
最後に、外部電極の表面に電解めっきを施して外部電極の表面にNi被膜及びSn被膜を順次形成し、試料番号1〜8の積層型正特性サーミスタを作製した。
また、半導体化剤としてSm、Yb、Luを使用し、上述と同様の方法・手順で比較例としての試料番号9〜11の試料を作製した。
尚、本実施例では、上述したように実測焼結密度が理論焼結密度の70%となるようにアクリル系有機バインダの添加量を調整しているが、この実測焼結密度は以下のようにして求めた。すなわち、まず、導電パターンの形成されていないセラミックグリーンシートを複数枚積層して焼成処理を施し、これにより焼結密度測定用の試料を別途作製し、この試料の体積と重量を測定することにより、算出した。
次に、試料番号1〜11の各試料を20個づつ用意し、0.01Vの電圧を印加し、20〜250℃の範囲で10℃刻みで昇温させ、直流四端子法により10℃変化する毎に抵抗値を測定した。
そして、得られた抵抗値に基づき、数式(1)〜(3)より室温抵抗値X(Ω)、抵抗変化率ΔR(桁数)、及びキュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数α(%/℃)を求めた。
X=(R20+R30)/2 …(1)
ΔR=log(R250/R25) …(2)
α={2.303log(R150/R130)/(150−130)}×100 …(3)
尚、BaTiOのキュリー点は125℃であることから、キュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数αを130℃〜150℃で算出した。
表1は、試料番号1〜11の各試料20個における焼結密度(実測焼結密度の理論焼結密度に対する相対比)、最適焼成温度、室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及びキュリー点以上の温度での抵抗の立ち上がり係数(以下、単に、「立ち上がり係数」という。)αのそれぞれの平均値を示している。
ここで、最適焼成温度は、室温抵抗値Xが0.3Ω以下、かつ、抵抗変化率の桁数が3.5桁以上であり、さらに、焼結密度が70%を満足する焼成温度のうち、最低温度を示している。
Figure 2007034830
表1から明らかなように、試料番号9は、半導体化剤が従来から使用されているSmであるため、抵抗変化率ΔRは4.2桁と4桁以上であるものの、立ち上がり係数αは8%/℃と小さくなることが分かった。
また、試料番号10、11は、半導体化剤として本発明と同族の希土類元素であるYb、Luを使用したが、1150〜1275℃の焼成温度では半導体化することができないことが分かった。
これに対し試料番号1〜8は、Ti100モル部に対し0.2モル部の配合比で本発明範囲内の半導体化剤が含有されており、抵抗変化率ΔRが4.2〜4.5桁と十分な抵抗変化率を得ることができ、かつ、立ち上がり係数αも9〜13%/℃と9%/℃以上であり、抵抗変化率ΔR及び立ち上がり係数αの双方で良好な積層型正特性サーミスタを得ることのできることが分かった。
また、半導体化剤としてSmを使用した試料番号9(従来技術)は、最適焼成温度が1200℃であるのに対し、本発明の半導体化剤を使用した試料番号1〜8は、最適焼成温度が1225〜1275℃と高く、したがって従来技術に比べて高い焼成温度であっても焼結密度が70%の半導体セラミック層が得られることが確認された。
これにより、抵抗変化率ΔRと立ち上がり係数αの両立を図るためには、半導体化剤として、本発明に列挙された特定の半導体化剤を半導体セラミック層に含有させるのが極めて効果的であることが分かった。
出発原料として、BaTiO、TiO、半導体化剤としてのErを用意し、半導体セラミック層の組成が(Ba1-pErp(Ti1-qErq(ただし、px+qy=u、0.996≦x/y≦1.008、0.0005≦u≦0.01)となるようにこれら出発原料を秤量し、その後は、〔実施例1〕と同様の方法・手順を使用し、試料番号21〜34の積層型正特性サーミスタを作製した。尚、還元雰囲気下での焼成処理は全て1250℃で行った。
次に、試料番号21〜34の各積層型正特性サーミスタを20個づつ用意し、〔実施例1〕と同様の方法で室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及び立ち上がり係数αを求めた。
表2は、各試料におけるErの含有量、BaサイトとTiサイトとの比x/y、各試料20個における室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及び立ち上がり係数αのそれぞれの平均値を示している。
Figure 2007034830
試料番号21〜27は、BaサイトとTiサイトの比x/yを1.000と一定にし、Erの含有量を異ならせたものである。
試料番号21はErの含有量がTi100モル部に対し0.05モル部であり、0.1モル部未満と少ないため、十分に半導体化することができず、抵抗変化率ΔRも2.8桁と小さく、室温抵抗値Xも2.37Ωと高くなった。
また、試料番号27はErの含有量がTi100モル部に対し1モル部であり、0.5モル部を超えているため、抵抗変化率ΔRが2.8桁と小さく、また立ち上がり係数αも4%/℃と小さく、室温抵抗値Xも1.48Ωと高くなることが分かった。
これに対し試料番号22〜26は、Erの含有量が、Ti100モル部に対し0.1〜0.5モル部の範囲内にあるので、抵抗変化率ΔRも4桁以上であり、かつ、立ち上がり係数αも9%/℃以上と良好な結果が得られ、しかも室温抵抗値Xも0.3Ω以下と低くなることが分かった。特に、ErがTi100モル部に対し0.1〜0.3モル部の範囲で含有されている試料番号22〜25は、抵抗変化率ΔRは4.4桁以上、かつ、立ち上がり係数αは10%/℃以上であり、より良好な結果が得られることが分かった。
また、試料番号28〜34は、Erの含有量をTi100モル部に対し0.2モル部と一定にし、BaサイトとTiサイトの比x/yを異ならせたものである。
試料番号28は、Baサイト/Tiサイトの比x/yが0.996であり、0.998未満であるので、立ち上がり係数αが7%/℃と小さくなった。
また、試料番号34は、BaサイトとTiサイトの比x/yが1.008であり、1.006を超えているので、特性が不安定であり、立ち上がり係数α及び抵抗変化率ΔRは、いずれも正確に測定することができなかった。
これに対し試料番号29〜33は、BaサイトとTiサイトの比x/yは0.998以上1.006以下であり、本発明の範囲内であるので、抵抗変化率ΔRは4桁以上、立ち上がり係数αは9%/℃以上であることが分かった。特に、BaサイトとTiサイトの比x/yが1.000以上1.006以下の試料番号30〜33は、抵抗変化率ΔRが4.8桁以上であり、立ち上がり係数αも13%/℃以上と急峻であり、抵抗変化率ΔR及び立ち上がり係数αがより顕著に向上していることが分かった。
出発原料として、BaTiO、TiO、半導体化剤としてのErを用意し、半導体セラミック層の組成が(Ba0.998Er0.002-v)(TiEr)Oとなるようにこれら出発原料を秤量し、〔実施例1〕と同様の方法・手順で仮焼粉を得た。
次に、得られた仮焼粉に、アクリル酸系有機バインダ、ポリカルボン酸アンモニウム塩(分散剤)、及び純水を加えて、PSZボールと共にボールミル内で15時間混合してセラミックスラリーを得た。尚、アクリル系有機バインダの添加量は、焼成後の実測焼結密度が理論焼結密度の60〜95%となるように調整した。
そして、その後は〔実施例1〕と同様の方法・手順を使用し、試料番号41〜48の積層型正特性サーミスタを作製した。尚、還元雰囲気下での焼成処理は全て1250℃で行った。
次に、試料番号41〜48の各積層型正特性サーミスタを20個づつ用意し、〔実施例1〕と同様の方法で室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及び立ち上がり係数αを測定した。
表3は、各試料における焼結密度(理論焼結密度に対する実測焼結密度の相対比)、各試料20個における室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及び立ち上がり係数αのそれぞれの平均値を示している。
Figure 2007034830
表3から明らかなように、試料番号41は焼結密度が60%と低すぎるため、十分に半導体化することができなかった。
また、試料番号48は、焼結密度が95%であり、焼結密度が高いため、再酸化処理における酸素が十分に中央部に行き渡らず酸化むらが生じ、このため抵抗変化率ΔRや立ち上がり係数αを正確に測定することができなかった。
これに対し試料番号42〜47は、焼結密度が65%以上90%以下の範囲にあるので、抵抗変化率ΔRは4.0〜5.2桁と4桁以上であり、かつ、立ち上がり係数αも10〜13%/℃と9%/℃以上であり、抵抗変化率ΔR及び立ち上がり係数αの双方共、良好な結果が得られることが分かった。
この実施例では内部電極層から拡散して生じる拡散層の厚みtと半導体セラミック層の厚みDとの比t/Dをパラメータとして積層型正特性サーミスタの特性を評価した。
すなわち、まず、出発原料として、BaTiO、TiO、半導体化剤としてのEr及びSmを用意し、半導体セラミック層の組成が(Ba0.9980.002-v)(TiA)O(AはEr又はSmとなるようにこれら出発原料を秤量し、その後は〔実施例1〕と同様の方法・手順で試料番号51〜61の積層型正特性サーミスタを作製した。
尚、還元雰囲気下の焼成処理は焼成温度1250℃で行い、拡散層の厚みtと半導体セラミック層の厚みDとの比t/Dはセラミックグリーンシートの厚みを異ならせることにより調整し、これらの比t/Dは、各試料をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して拡散層の厚みt及び半導体セラミック層Dから求めた。尚、試料番号57及び試料番号59の半導体セラミック層の厚みDはいずれも10μmとしている。
次に、試料番号51〜59の各積層型正特性サーミスタを10個づつ用意し、〔実施例1〕と同様の方法で室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、及び立ち上がり係数αを求めた。
表4は、試料番号51〜59における半導体化剤の種類、拡散層の厚みtと半導体セラミック層の厚みDとの比t/D、室温抵抗値X、抵抗変化率ΔR、立ち上がり係数αのそれぞれの平均値を示している。
Figure 2007034830
表4から明らかなように、試料番号59は、半導体化剤として本発明範囲外のSmを使用しているため、立ち上がり係数αが7%/℃と小さくなることが分かった。また、上述したように試料番号57と試料番号59とは半導体セラミック層の厚みDはいずれも10μmであることから、両者について拡散層の厚みをTEMで複数点確認した。すると、試料番号59は試料番号57に比べ、1.25倍程度拡散していることが分かった。
これらのことから試料番号59は、試料番号57とは異なり、半導体化剤としてSmを使用しているため、内部電極層からNiが半導体セラミック層中に余分に拡散してしまい、このため半導体セラミック層の厚みDに対する拡散層の厚みtが占める割合が大きくならざるを得ず、その結果、立ち上がり係数αが小さくなったものと思われる。
試料番号51は、比t/Dが0.008であり、0.01未満であるので、立ち上がり係数αは10%/℃と良好であるものの、抵抗変化率ΔRにはばらつきが生じ、その平均値は3.9桁と4桁を下廻り、また室温抵抗値も0.39Ωと高くなり好ましくないことが分かった。
また、試料番号58は、比t/Dが0.29であり、0.20を超えているため、立ち上がり係数αが7%/℃と低くなり、また抵抗変化率も4桁未満と低くなって好ましくないことが分かった。
これに対し試料番号52〜57は、比t/Dが0.01〜0.20以下であるので、抵抗変化率ΔRは4.5〜4.9桁となって良好な結果を得ることができ、かつ、立ち上がり係数αも11〜13%/℃と良好な結果を得ることができることが分かった。
そして、本発明では内部電極層から半導体セラミック層へのNiの拡散量を減らすことができることから、試料番号52〜57に示すように拡散層の厚みtを薄くすることができる。そしてその結果、良好な抵抗変化率ΔR及び立ち上がり係数αを維持しつつ、より一層の薄層化が可能な積層型正特性サーミスタを得ることのできることが確認された。

Claims (2)

  1. 実測焼結密度が理論焼結密度の65%以上90%以下の半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されて焼結されてなるセラミック素体と、前記内部電極層と電気的に接続されるように前記セラミック素体の両端部に形成された外部電極とを有する積層型正特性サーミスタにおいて、
    前記半導体セラミック層は、BaTiO系セラミック材料を主成分とすると共に、BaサイトとTiサイトの比が0.998≦Baサイト/Tiサイト≦1.006であり、半導体化剤としてEu、Gd、Tb、Dy、Y、Ho、Er、Tmの中から選択された少なくとも1種の元素が、Ti100モル部に対し0.1モル部以上0.5モル部以下の範囲で含有されていることを特徴とする積層型正特性サーミスタ。
  2. 前記内部電極層はNiを主成分とすると共に、前記半導体セラミック層と前記内部電極層とは一体焼成されてなり、
    前記一体焼成時に前記内部電極層から前記半導体セラミック層中に拡散して形成されるNiを主成分とする拡散層の厚みtと、前記半導体セラミック層の厚みDとの比が、0.01≦t/D≦0.20であること特徴とする請求項1記載の積層正特性サーミスタ。
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