JP5420603B2 - 耐還元性誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は耐還元性誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品に関し、より詳細には、高容量及び優れた信頼性を有する耐還元性誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品に関する。
一般的に、キャパシタ、インダクター、圧電素子、バリスタ、またはサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなったセラミック素体、素体内部に形成された内部電極及び上記内部電極と接続されるようにセラミック素体表面に設けられた外部電極を備える。
セラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層、一誘電体層を間に置いて対向配置される内部電極、上記内部電極に電気的に接続された外部電極を含む。
積層セラミックキャパシタは小型ながら高容量が保障されて、実装が容易であるという長所により、コンピューター、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
積層セラミックキャパシタは通常的に内部電極用導電性ペーストと誘電体ペーストをシート法や印刷法などによって積層し、同時焼成して製造される。
しかし、従来の積層セラミックキャパシタなどに用いられる誘電体材料は、還元性の雰囲気下で焼成すると還元されて半導体化する性質を有している。このため内部電極の材料として、誘電体材料が焼結する温度で溶融されず、誘電体材料を半導体化しない高い酸素分圧下で焼成しても酸化されないPdなどの貴金属が用いられている。
しかし、Pdなどの貴金属は高価であるため、積層セラミックキャパシタの低価格化の大きな妨げとなる。従って、内部電極材として比較的低価であるNiやNi合金などの卑金属が主に用いられている。しかし、内部電極層の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行うと内部電極層が酸化される。従って、誘電体層と内部電極層の同時焼成を還元性雰囲気中で行う必要がある。
しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元されて絶縁抵抗(IR)が低くなる。従って、耐還元性であり、高容量及び絶縁特性を維持することができる多様な組成の誘電体材料が提案されている。
本発明は上述のような問題点を解決するために、高容量及び優れた信頼性を有する耐還元性誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するための本発明の一実施形態は、BaTiO系母材粉末、前記母材粉末100モルに対して、遷移金属酸化物または炭酸塩0.1から1.0モル、及びSiOを含む焼結助剤0.1から3.0モルを含む耐還元性誘電体組成物を提供する。
前記母材粉末は平均粒径が0.05から0.5μmであることができる。
前記遷移金属はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群から選択される一つ以上であることができる。
前記耐還元性誘電体組成物はBa及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩を追加的に含むことができる。
本発明の他の実施形態は、複数の誘電体層が積層されたセラミック素体、前記セラミック素体の内部に形成され、卑金属を含む内部電極、及び前記セラミック素体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極を含み、前記誘電体層は、BaTiO系母材粉末、前記母材粉末100モルに対して、遷移金属酸化物または炭酸塩0.1から1.0モル、及びSiOを含む焼結助剤0.1から3.0モルを含むセラミック電子部品を提供する。
前記誘電体層はBa及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩を追加的に含むことができる。
前記各誘電体層の厚さは0.1から10.0μmであることができる。
前記内部電極はNiまたはNi合金を含むことができる。
本発明の一実施形態によると、従来高い割合を占めている原子価固定アクセプタ元素及び希土類元素を含まないため、母材粉末の含量比が高くなり、高容量を確保することができる。また、今後、超高容量MLCCの誘電体の厚さがより薄くなり、また、母材粉末のサイズがより小さくなるにつれて、母材粉末とその他の添加剤との均一な分散がさらに難しくなるが、本発明では添加剤の種類及び量が既存材料に比べて格段に減るため、添加剤の分散に対する問題が解消されて、さらに改善された性能をもつMLCCを製作することができる。また、需給が難しい希土類元素を用いないため、MLCC製作原価に相当な節減効果をもたらすことができる。
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。 図1aのA−A’に沿って切断した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの抵抗劣化特性を示すグラフである。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの抵抗劣化特性を示すグラフである。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの抵抗劣化特性を示すグラフである。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの抵抗劣化特性を示すグラフである。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの低周波ワールブルグインピーダンス(Warburg Impedance)を含む一連の複素インピーダンス度を示すグラフである。 MgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの低周波ワールブルグインピーダンス(Warburg Impedance)を含む一連の複素インピーダンス度を示すグラフである。 原子価固定アクセプタ(acceptor)元素及び遷移金属アクセプタ濃度C(ATOT)によるモル分率(mole fraction)単位で計算された酸素空孔の濃度C(V )を示す。 原子価固定アクセプタ(acceptor)元素及び遷移金属アクセプタ濃度C(ATOT)によるモル分率(mole fraction)単位で計算された酸素空孔の濃度C(V )を示す。 原子価固定アクセプタ(acceptor)元素及び遷移金属アクセプタ濃度C(ATOT)によるモル分率(mole fraction)単位で計算された酸素空孔の濃度C(V )を示す。 原子価固定アクセプタ(acceptor)元素及び遷移金属アクセプタ濃度C(ATOT)によるモル分率(mole fraction)単位で計算された酸素空孔の濃度C(V )を示す。 イオン欠陥構造(ionic defect structure)が抵抗劣化を測定する温度である200℃で凍結(frozen−in)された時、Mg及びMnが夫々ドーピングされたBaTiOのpOによるモル分率単位で計算された欠陥濃度を夫々示すグラフである。 イオン欠陥構造(ionic defect structure)が抵抗劣化を測定する温度である200℃で凍結(frozen−in)された時、Mg及びMnが夫々ドーピングされたBaTiOのpOによるモル分率単位で計算された欠陥濃度を夫々示すグラフである。 イオン欠陥構造(ionic defect structure)が抵抗劣化を測定する温度である200℃で凍結(frozen−in)された時、Mg及びMnが夫々ドーピングされたBaTiOのpOによるモル分率単位で計算された欠陥濃度を夫々示すグラフである。 イオン欠陥構造(ionic defect structure)が抵抗劣化を測定する温度である200℃で凍結(frozen−in)された時、Mg及びMnが夫々ドーピングされたBaTiOのpOによるモル分率単位で計算された欠陥濃度を夫々示すグラフである。 遷移金属アクセプタ(variable valence acceptor)元素がドーピングされたBaTiO材料のバルクセラミック試料及びMLCC試料の微細構造を夫々示す写真である。 遷移金属アクセプタ(variable valence acceptor)元素がドーピングされたBaTiO材料のバルクセラミック試料及びMLCC試料の微細構造を夫々示す写真である。
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができて、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面での要素の形状及びサイズ等はより明確な説明のために誇張されることができて、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
本発明は耐還元性誘電体組成物に関するものであり、本発明による耐還元性誘電体組成物を含むセラミック電子部品は、キャパシタ、インダクター、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどがあり、下記ではセラミック電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi−layer ceramic capacitor:以下、MLCCと言う)に関して説明する。
図1aは本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な斜視図であり、図1bは図1aのA−A’に沿って切断した積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な断面図である。
図1a及び図1bを参照すると、本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と第1及び第2内部電極130a、130bが交互に積層されたセラミック素体110を有する。セラミック素体110の両端部には、セラミック素体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極130a、130bと夫々電気的に連結された第1及び第2外部電極120a、120bが形成されている。
セラミック素体110の形状に特に制限はないが、一般的に直方体の形状であることができる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途によって適切な寸法にすることができて、例えば(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であることができる。
誘電体層111の厚さは、積層セラミックキャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができて、本発明の一実施例で焼成後の誘電体層の厚さは1層あたり10.0μm以下であることができる。10.0μm以上である場合は、非正常粒成長が発生する可能性があるため、本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物を用いにくくなる。また、容量のために上記誘電体層の厚さは1層あたり2.0μm以下であることができる。
厚さが非常に薄い誘電体層は一層内に存在する結晶粒数が少ないことから、信頼性に悪い影響を与える可能性があるため、誘電体層の厚さは0.1μm以上であることができる。
第1及び第2内部電極130a、130bは、各断面がセラミック素体110の対向する両端部の表面に交互に露出されるように積層されている。第1及び第2外部電極120a、120bはセラミック素体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極130a、130bの露出断面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
第1及び第2内部電極130a、130bに含まれる導電材は特に限定されないが、誘電体層の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。
導電材として用いる卑金属はNiまたはNi合金であることができる。Ni合金は、Mn、Cr、Co及びAlから選択される1種以上の元素とNiの合金であることができ、合金中のNi含有量は95重量%以上であることができる。
第1及び第2内部電極130a、130bの厚さは用途などによって適切に決めることができて、例えば、0.1から5.0μmであることができる。
第1及び第2外部電極120a、120bに含まれる導電材は特に限定されないが、Ni、Cu、またはこれらの合金を用いることができる。第1及び第2外部電極120a、120bの厚さは用途などによって適切に決めることができて、例えば10から50μm程度であることができる。
上記セラミック素体110を構成する誘電体層111は本発明の耐還元性誘電体組成物を含む。
本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、BaTiO系母材粉末、遷移金属酸化物または遷移金属炭酸塩、SiOを含む焼結助剤を含む。
本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、従来の誘電体組成物に比べて単純な組成を有しながらも高誘電率及び高温信頼性が確保されて、低温の還元雰囲気で焼成が可能であるため、卑金属を含む内部電極を用いることができる。
以下、本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
a)BaTiO系母材粉末
本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、母材粉末としてBaTiO系粉末を含む。セラミック電子部品に一般的に用いられるBaTiO系誘電体粉末を用いることができ、BaTiOだけでなく、BaTiOにCa、Zrなどが一部固溶された(Ba1−xCa)TiO、Ba(Ti1−yCa)O、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O、またはBa(Ti1−yZr)Oなどを用いることができる。
上記BaTiO系母材粉末の平均粒径はこれに制限されないが、0.05から0.5μm以下であることができる。
b)遷移金属酸化物または炭酸塩
本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、遷移金属酸化物または炭酸塩を副成分として含み、この遷移金属酸化物または炭酸塩は誘電体組成物の耐還元性及び信頼性を与える役割をする。これに対する具体的な説明は後述する。
上記遷移金属酸化物または炭酸塩の含量は母材粉末100モルに対して0.1から1.0モルであることができる。上記遷移金属酸化物及び炭酸塩の含量が0.1モル未満であると還元性雰囲気の焼成で還元されやすくなり、抵抗劣化が発生しやすくなる可能性がある。また、上記含量が1.0モルを超過すると容量が低くなる可能性がある。
上記遷移金属はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnからなる群から選択されることができ、遷移金属酸化物または炭酸塩の形態は特に制限されず、例えば、MnO、VまたはMnCOなどを用いることができる。
還元雰囲気で焼成する場合においてMLCCの正常的な容量及び絶縁特性を具現するためには、粒成長抑制及び耐還元性が具現されなければならない。
一般的に、Mgのような原子価固定アクセプタ元素を添加することによって粒成長抑制及び耐還元性が具現されると公知されており、誘電体組成物にはBaTiO系粉末とともにMgなどのような原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)元素が用いられている。しかし、原子価固定元素のみがドーピングされた場合には誘電体の信頼性が低下するため、信頼性を向上させるために希土類元素をともに添加している。希土類元素と原子価固定アクセプタ元素は耐還元性誘電体組成物で大きい割合を占める核心的な添加剤である。
このようにともにドーピングされた原子価固定元素と希土類元素は、結晶粒のコアシェル(core−shell)構造を形成してMLCCの温度による安定された容量特性を具現すると公知されている。
しかし、本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、原子価固定アクセプタ元素と希土類元素を含まず、遷移金属酸化物または炭酸塩を特定範囲の含量で含むことを特徴とする。本発明の一実施例によると、遷移金属酸化物または炭酸塩を用いることにより、耐還元性及び信頼性を同時に具現することができる。
希土類元素が信頼性を向上させる具体的な原因に対しては未だに明らかにされていないが、希土類元素がBa−siteに固溶されてドナー(donor)の役割をし、アクセプタ(acceptor)を電荷補償(charge compensation)することにより、酸素空孔の濃度が減るからではないかと大略的に推定されている。
ところで、今まで酸素空孔の濃度と信頼性との直接的な相関関係を説明する文献は殆どなかったが、本発明者はMgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)セラミックでアクセプタであるMgが増加するにつれて非常に体系的に酸素空孔の濃度が増加し、抵抗劣化が発生しやすくなるということを実験的に証明した。本発明者は再酸化工程を含んだ通常的なMLCC焼成条件下でBaTiOの耐還元性を具現することができるアクセプタ(acceptor)の臨界濃度は0.1モル%程度と、非常に少量であることも見出した。従って、信頼性を良くするためには、アクセプタ(acceptor)の濃度を臨界濃度水準に最小化することが好ましい。しかし、一般的にアクセプタとして用いられる原子価固定アクセプタ元素(fixed valence acceptor atom)の濃度が少量の場合には、バルク試料で非正常粒成長が起こりやすくなるため、通常的に1.0モル%前後の多い量が添加されている。そして、アクセプタの使用による信頼性低下を補償するために、これに近い水準の量の希土類元素をともに添加している。
また、Mn、V、Crのような遷移金属元素はMgのような原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)元素と似た耐還元性を具現すると公知されているが、その含量が大きくなると誘電率が急激に低くなる問題が発生するため、MLCC誘電体組成物には希土類元素及び原子価固定元素少量ドーピングされる。
原子価固定アクセプタがドーピングされたBaTiOと遷移金属アクセプタがドーピングされたBaTiOの抵抗劣化挙動の差異は以下のように説明できる。図2aから図2dはMgドーピングされたBaTiO(Mg−dopedBaTiO)とMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)の抵抗劣化特性を示すグラフである。図2a及び図2bは酸素分圧10−6.8atm(H/N/HO atmosphere、0.1%H/99.9%N)で、1360℃の温度で2時間焼結し、1000℃の空気中(pO=〜0.2atm)で5時間再酸化したMgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)とMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)に対して200℃から電圧を増加させながら測定した時間による比抵抗挙動を示すグラフである。電圧はdc120V/mmから1200V/mmまで段階的に増加させて、各段階での維持時間は1時間であった。
図2aを参照すると、MgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)はMgの含量が増加するにつれて抵抗劣化の発生時間が体系的に減少し、抵抗劣化が非常に発生しやすいということが分かる。Mgの含量の増加はバルク粒子の伝導性(bulk grain conductivity)及びイオン伝導分率の増加を引き起こして、酸素空孔(V )の濃度増加をもたらす。酸素空孔の濃度増加は抵抗劣化が起こりやすくなる直接的な原因となる。
一方、図2bを参照すると、MnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)はMnの含量が増加するにつれて抵抗劣化の発生時間がさらに長くなることを確認することができる。
図2c及び図2dは酸素分圧10−6.8atm(H/N/HO atmosphere、0.1%H/99.9%N)で、1360℃の温度で2時間焼結し、1000℃のN雰囲気(pO=〜10−6atm)で5時間再酸化したMgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)とMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)に対して200℃から電圧を増加させながら測定した時間による比抵抗挙動を示すグラフである。測定条件は図2a及び図2bと同一である。
図2cを参照すると、N雰囲気で再酸化したMgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)は空気中で再酸化した場合と似通った抵抗劣化特性を示す。しかし、0.2モル%以下のMg含量では空気中で再酸化した場合に比べて抵抗劣化挙動がかなり改善することを確認することができる。
図2dを参照すると、N雰囲気で再酸化したMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)も空気中で再酸化した場合と似通った抵抗劣化特性を示す。しかし、図示された全てのMnの含量範囲で、図2bの空気中で再酸化した場合より安定された抵抗値を示し、抵抗劣化を観察することはできなかった。
このようなN雰囲気の再酸化工程が抵抗劣化に及ぶ影響は、あまり予想されなかった挙動であるが、これは、より酸化雰囲気であるほど酸素空孔の濃度をさらに効果的に減らすことができ、それによって抵抗劣化挙動が改善されるはずであるという一般的な常識と相反されるためである。
原子価電子の数が変化する遷移金属元素(Variable−valence acceptor element)がアクセプタ(acceptor)としてBaTiOに固溶される場合、抵抗劣化特性が向上される原理は次の通りである。Mnがアクセプタとして用いられたBaTiOのdcフィールド(field)下で酸素空孔のエレクトロマイグレーション(electro−migration)が発生すると、陽極領域(anodic region)では酸素空孔の減少(depletion)によってホール(hole)が生成され、陰極領域(cathodic region)では酸素空孔の蓄積(accumulation)によって電子(electron)が生成されて、抵抗劣化が発生するようになる。ところが、Mnが固溶されていると、材料内部にMn3+とMn4+が共存するようになる。陽極領域(anodic region)ではMn3+が生成されたホール(hole)を捕獲してMn4+に変わり、陰極領域(cathodic region)ではMn4+が生成された電子(electron)を捕獲してMn3+に変わりながら電子及びホールの生成を抑制して抵抗劣化特性が向上される。
しかし、MnもBaTiOでアクセプタ(acceptor)の役割をするため、Mn濃度が増加するにつれて相当な量の酸素空孔を生成したものと推定することもできる。従って、単にMnの電子/ホールトラッピング効果(electron/hole trapping effect)による原子価変化がMn濃度増加による酸素空孔の濃度増加の効果を完全に無効化させて、MgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)の場合とは完全に相反するように抵抗劣化挙動の改善効果をもたらしたのかについては不明明瞭である。これを検証するために、ワールブルグインピーダンス(Warburg impedance)を測定してイオン輪率(ionic transference number:tion)挙動を調べた。図3aと図3bは1360℃の酸素分圧10−6.8atm(H/N/HO atmosphere、0.1%H/99.9%N)で2時間焼結し、1000℃の空気中(pO=〜0.2atm)で5時間再酸化した0.03、0.1、0.2、0.3そして0.5モル%Mg−doped BaTiOと0.03、0.1、0.2、0.3そして0.5モル%Mn−doped BaTiOの480℃で測定された低周波ワールブルグインピーダンスを含む一連の複素インピーダンス度を示す。
図3aのMgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)試験片の場合、グレーン(grain)インピーダンスはそのサイズが小さすぎて高周波測定限界範囲の外で完全に切られた。Mgの濃度が0.1から0.5モル%と増加するにつれてワールブルグインピーダンスの分率とイオン輪率(ionic transference number:tion)が略0.15から0.5程度と、非常に体系的に増加することを観察することができる。
一方、図3bのMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)試験片の場合、遷移金属アクセプタMnの濃度が増加することによるワールブルグインピーダンスあるいはイオン輪率(ionic transference number:tion)の明らかな変化を観察することはできない。全てのMn濃度試験片における480℃でのtionは殆ど0に近い。このような結果は、名目上のアクセプタ濃度が同一であるにも関わらず、MgドーピングされたBaTiO(Mg−doped BaTiO)がMnドーピングされたBaTiO(Mn−doped BaTiO)より酸素空孔によるイオン伝導度(ionic conductivity)がはるかに大きく、酸素空孔の濃度が高いということを表す。
図4aから図4dは夫々1300℃、1000℃、800℃、600℃の温度であり、空気中(pO=0.2atm)でのMgドーピングされたBaTiO(実線)及びMnドーピングされたBaTiO(点線)の全体アクセプタ(acceptor)濃度C(ATOT)によるモル分率(mole fraction)単位で計算された酸素空孔の濃度C(V )を示す。
図4aを参照すると、1300℃では全区間のC(ATOT)でMgドーピングされたBaTiO及びMnドーピングされたBaTiOの間のC(V )の差異が大きくないことが分かる。しかし、MnドーピングされたBaTiOのC(V )はMgドーピングされたBaTiOの場合に比べて温度が低くなるにつれてさらに低くなる。これは、MnドーピングされたBaTiOがMgドーピングされたBaTiOに比べて冷却過程中に酸素空孔の濃度がはるかに効果的に減少することを表す。
図4dに示された600℃でのC(V )を考慮してみると、MnドーピングされたBaTiOでC(ATOT)が0.005(0.5モル%)である時のC(V )はMgドーピングされたBaTiOでC(ATOT)が0.0003(0.03モル%)である時のC(V )より小さい。
図5aと5bはC(ATOT)が10−3(0.1モル%)で1000℃でのイオン欠陥構造(ionic defect structure)が抵抗劣化を測定する温度である200℃に凍結(frozen−in)された時、MgドーピングされたBaTiO(図5a)及びMnドーピングされたBaTiO(図5b)のpOによるモル分率(mole fraction)単位で計算された欠陥濃度を夫々示し、図5c(MgドーピングされたBaTiO)及び図5d(MnドーピングされたBaTiO)はC(ATOT)が10−2(1.0モル%)である時の結果を夫々示す。上述した遷移金属アクセプタがドーピングされたBaTiOの抵抗劣化抑制メカニズムを考慮してみると、陽極領域(anodic region)での酸素空孔の減少(depletion)によるホール(hole)の生成と陰極領域(cathodic region)での酸素空孔のパイルアップ(pile−up)による電子(electron)の生成現象がA×(Mn4+)とA’(Mn3+)が同じ割合である時もっとも効果的に抑制されると予想される。もし、A×(Mn4+)あるいはA’(Mn3+)のみが単独で存在すると、夫々の場合に陽極領域(anodic region)で生成されたホール(hole)あるいは陰極領域(cathodic region)で生成された電子を捕獲することができないためである。
図5aから図5dで矢印(↓)で表示されたように、MgがドーピングされたBaTiOの場合はpOが10−3〜10−4atmでC(A×)とC(A’)が同一になり、MnがドーピングされたBaTiOの場合はpOが10−5〜10−7atmでC(A×)とC(A’)が同一になることが分かる。また、空気中(pO=0.2atm)ではMgドーピングされたBaTiOとMnドーピングされたBaTiOの二つの場合ともアクセプタの大部分がA×状態で存在し、A’の分率は非常に小さいことを確認することができる。
従って、図2aから図2で示されたように還元雰囲気であるN雰囲気で再酸化した場合が、さらに酸化雰囲気である空気中で再酸化した場合より抵抗劣化が抑制されることは、少しの酸素空孔の濃度増加にも関わらずより効果的な電子/ホールトラッピング効果(electron/hole trapping effect)によることであると予想される。
また、電子/ホールトラッピング効果はアクセプタとしてMnを用いる場合だけでなく、Mgを用いる場合にも発生すると推定される。
上述のように、酸素空孔の濃度だけでなく電子/ホールトラッピング効果も抵抗劣化挙動を支配する非常に重要な因子であることが分かる。しかし、Mgの濃度が増加して酸素空孔の濃度が高すぎるようになると、酸素空孔による効果が電子/ホールトラッピング効果よりはるかに優れるようになり、図2a及び図2cのように、N雰囲気と空気雰囲気の間に抵抗劣化挙動の差異がなくなる。
従って、Mgのような原子価固定元素は抵抗劣化を起こりやすくする元素であるため、本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物には含まない。
Mnのような遷移金属元素は原子価固定アクセプタ元素(fixed−valence acceptor)に比べて酸素空孔を殆ど生成せずに耐還元特性を具現して、電子/ホールトラッピング効果による抵抗劣化抑制効果を有する。従って、本発明の一実施例では遷移金属元素によって耐還元性及び信頼性を同時に具現する。
また、Mnのような遷移金属元素のみを含み、Mgのような原子価固定アクセプタ元素を含まない場合は酸素空孔の濃度が非常に少ないため、ドナー(donor)の役割をして原子価固定元素の電荷補償をする希土類元素も含む必要がない。
従来の高容量MLCCの誘電体は略1モル%前後の相当な量のMgのような原子価固定元素を含んでいる。これはBaTiO誘電体の非正常粒成長を抑制するためであり、Mg添加によって信頼性が悪くなることを補償するために希土類元素をともにドーピングしたものである。
しかし、本発明者は原子価固定アクセプタ元素が添加されず、少量の遷移金属元素のみがドーピングされたBaTiO材料や純粋BaTiO材料の場合において、バルク形態の試料では非正常粒成長が起こるが、MLCCのように誘電体の厚さが非常に薄くて内部電極によって誘電体が密閉されて焼結大気から遮断される場合には非正常粒成長が起こらない新しい現象を発見した。
図6a及び図6bは希土類元素と原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)元素Mgなどが添加されず、少量の遷移金属アクセプタ(variable valence acceptor)元素である0.2モル%のMn及び0.1モル%のVがドーピングされたBaTiO材料のバルクセラミック試料及びMLCC試料の微細構造を夫々示す。
図6aのバルク試料は還元雰囲気(H/N/HO atmosphere、0.1%H/99.9%N)で1190℃で焼成し、図6bのMLCC試料は同一雰囲気で1205℃で焼成した。バルク試料では10μm以上の非正常粒子が局所的に出現して0.2μm程度のサイズの粒成長が起こらないマトリックスグレーン(matrix grain)と10μm以上のサイズの非正常粒子がともにある二重構造(duplex structure)であることを確認することができた。これに反し、MLCC試料では焼成温度がより高いにも関わらず、このような非正常粒子が全く発生しないことを確認することができる。
従って、非常に薄い厚さの誘電体層を用いる高容量のMLCCでは、非正常粒子成長を抑制するためにMgのような原子価固定アクセプタ元素と希土類元素を含まなくても、求める特性を具現することができる。
本発明の一実施形態によると、従来高い割合を占めていた原子価固定元素及び希土類元素を含まないため、母材粉末の含量比が高くなり、高容量を確保することができる。また、今後の超高容量MLCCの誘電体の厚さがより薄く、また、母材粉末のサイズがより小さくなるにつれて、母材粉末とその他の添加剤との均一な分散がさらに難しくなるが、本発明では添加剤の種類及び量が既存材料に比べて格段に減るため、添加剤の分散に対する問題が解消されて、さらに改善された性能をもつMLCCを製作することができる。また、需要が難しい希土類元素を用いないため、MLCC製作原価に相当な節減効果をもたらすことができる。
c)SiOを含む焼結助剤
本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、焼成温度を低めて、焼結を促進するためにSiOを含む焼結助剤を含む。上記SiOを含む焼結助剤は母材粉末100モルに対して0.1から3.0モルを含むことができる。
上記焼結造材の含量が0.1モル未満であったり3.0モルを超過すると、焼結性が低下される可能性がある。
上記SiOを含む焼結助剤は特に制限されず、当業界で通常的に用いられるものを用いることができる。例えば、SiOとともBa、Ca、Al、Liなどの元素を含む酸化物あるいは炭酸塩を含む焼結助剤を用いることができる。
d)Ba及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩
また、本発明の一実施例による耐還元性誘電体組成物は、結晶粒のサイズを適切に調節するためにBa及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。上記酸化物または炭酸塩はこれに制限されるものではないが、BaCOまたはTiOを用いることができる。
Ti元素がABOのペロブスカイト(perovskite)構造を有する母材粉末のB−サイトに添加されるとMLCC誘電体の結晶粒のサイズは小さくなる傾向があり、Ba元素がA−サイトに添加されるとMLCC誘電体の結晶粒のサイズは若干大きくなる傾向がある。
従って、遷移金属元素がABO構造を有する母材粉末に固溶されることを考慮して、BaあるいはTi元素原料を添加し、AとBの割合を0.98<A/B<1.02の範囲で調節して、求める結晶粒のサイズを得ることができる。
上記AとBの割合が上記範囲を外れると焼結性低下あるいは二次相生成などの問題が発生する可能性がある。
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
下記表1に明示された誘電体組成物に対してエタノールとトルエンを溶媒にして分散剤とともに混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを製作した。
遷移金属元素がABOのペロブスカイト構造でB−サイトに固溶されることを考慮して、A:Bの比が1:1.005になるように、TiOを調節して添加した。遷移金属元素であるMn、Vの種類及び量の変化による特性変化挙動を把握するために、焼結助剤であるSiOは0.4モル%に固定する。
より具体的には、母材粉末として平均粒子のサイズが200nmであるBaTiO粉末を用いて、副成分が含まれた原料粉末をジルコニアボールを混合/分散メディアとして用いて、エタノール/トルエンと分散剤及びバインダーを混合した後、20時間ボールミーリングした。
製造されたスラリーはドクターブレード方式のコッターを用いて3.5μmと10〜13μmの厚さに成形シートを製造した。成形シートにNi内部電極印刷をした。上下カバーはカバー用シート(10〜13μmの厚さ)を25層に積層して製作して、20層の印刷された活性シートを加圧積層してバー(bar)を製作した。圧着バーは切断機を用いて3.2mm×1.6mmサイズのチップに切断した。製作が完了された3216サイズのチップは仮焼した後、還元雰囲気である0.1%H/99.9%N(HO/H/N雰囲気)、1100〜1250℃の温度で2時間焼成した後、1000℃のN雰囲気で再酸化させるために3時間熱処理した。焼成されたチップに対してCuペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て、外部電極を完成した。これにより、焼成後の誘電体の厚さが2.0μm以下であり、誘電体層数が20層である3.2mm×1.6mmのサイズのMLCCチップを製作した。
比較例は常用X5R組成適用品にBaTiO100モル、Y0.4モル、MgCO1.0モル、BaCO0.4モル、MnO0.1モル、V0.05モル、SiO1.35モル、Al0.0625モルを含む誘電体組成物を用いて上述のような方法によってMLCCチップを製造した。
Figure 0005420603
上記実施例及び比較例で製造されたMLCCの電気的特性は外部電極を焼成してから24時間経過後に測定して下記表2及び表3に表した。
MLCCチップの常温静電容量及び誘電損失(DF)はLCRメートルを用いて1kHz、AC0.5V/μmで測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。
常温絶縁抵抗は10個ずつサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過後に測定した。温度による静電容量の変化は−55℃から125℃の温度範囲で測定された。
高温IR昇圧実験は150℃で電圧段階を10V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定したもので、各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出したが、これは焼成後2μm以下の厚さの20層の誘電体を有する3216サイズのチップで、150℃で電圧ステップ(voltage step)dc10V/μmを10分間印加し、IRが10Ω以上を耐える電圧を意味する(1Vr=10V/μm)。
RC値はAC0.5V/μm、1kHzで測定した常温容量値とDC10V/μmで測定した絶縁抵抗値の積である。
Figure 0005420603
Figure 0005420603
1.実施例及び比較例の特性比較
上記表2及び表3を参照すると、実施例1から10のうち実施例10の特性がより優れるものであると判断される。実施例10と比較例の特性を比べると次の通りである。実施例10の場合、1175〜1220℃の焼結温度範囲で誘電率が3439〜3583程度であり、DF(dissipation factor)は5〜7%程度である。比較例の場合、1140〜1185℃の焼結温度範囲で容量が2572〜3710程度であり、DF(dissipation factor)は6%〜10%程度である。実施例10は比較例と同等の水準の容量とより小さいDF値を表し、焼成温度変化による容量及びDF変化はむしろより小さいということを確認することができる。
また、実施例10と比較例は全て85℃でのTCCが±5%未満でありX5R特性を満足していて、85℃以後の高温部TCCはむしろ実施例10が比較例よりさらに良好である。125℃で実施例10のTCCは−22%程度であるが、誘電体の厚さが厚くなって誘電体にACフィールド(field)が小さく印加されるとTCCが上がるため、誘電体層を厚くして125℃TCCが−15%未満になるとX7R製品にも適用できると予想される。
高温150℃での電圧step印加による絶縁抵抗挙動から算出された高温耐電圧をみると、実施例10と比較例は両方とも6Vr(60V/μm)で、同等の水準の高温絶縁抵抗特性が具現されることを確認することができる。
2.実施例の組成変化によるMLCC特性変化
Mnが夫々0.1、0.2、0.3及び0.5モル%ドーピングされた実施例1〜4では、焼成温度が増加するにつれて容量及びDFが低くなる傾向があり、Mnが増加するにつれて同一焼成温度での誘電率が低くなることを確認することができる。Vが夫々ドーピングされた0.1、0.2、0.3及び0.5モル%ドーピングされた実施例5〜8では、Mnがドーピングされた場合のような焼成温度増加による誘電率の減少はないが、Vの含量が増加するにつれて同一焼成温度でやはり誘電率が減少する傾向があることを確認することができる。MnとVが共ドーピング(co−doping)された場合の実施例9及び10の結果をみると、単独でMnあるいはVのみがドーピングされた場合に比べて誘電率が高くて焼成範囲が広く、温度変化による容量変化が少ないことが分かる。
実施例1でMnが0.1モル%ドーピングされた場合にはRC値が10ΩF以下の非常に低い値を表すが、これは耐還元特性が完全に具現されなかったためである。しかし、実施例2〜4のようにMnの含量が0.2モル%以上増加することによってRC値2000ΩF程度の正常的な絶縁抵抗特性が具現されることを観察することができるが、実施例4のようにMnの含量が0.5モル%に増加した場合にはRC値が1000ΩF程度に、再び減少する傾向を表す。
実施例5〜8のVがドーピングされた場合には実施例5〜7のようにVの含量が0.1〜0.3モル%範囲ではRC値1000〜2000ΩF範囲を成して、実施例8のように0.5モル%に増加するとRC値が1000ΩF以下に減ることを確認することができる。MnとVが共ドーピング(co−doping)された場合の実施例9及び10の結果をみると、単独でMnあるいはVのみがドーピングされた場合に比べてRC値が2500ΩF以上と、はるかに高くて焼成範囲が広く、温度変化によるRC変化が少ないことが分かる。
表2の実施例1〜10と表3の比較例でもっとも適正温度で焼成された (太い字で表記)結果同士を比べてみると、実施例1〜4あるいは実施例5〜8のようにMnあるいはVのみが単独でドーピングされた場合にはドーピング量が増加するにつれて誘電率が減少するが、実施例9〜10のようにMnとVがともにドーピングされた場合にはV量が0.1(実施例9)から0.2モル%(実施例10)に増加するにつれて容量が増加し、やはり実施例1〜4のように単独でMnあるいは実施例5〜8のように単独でVのみがドーピングされた場合に比べて誘電率が高いことが分かる。RC値の場合にも実施例1〜4のようにMnあるいは実施例5〜8のようにVのみが単独でドーピングされた場合にはドーピング量が増加するにつれてRC値が減少する傾向があり、実施例9〜10のようにMnとVがともにドーピングされた場合が実施例1〜8のように単独でドーピングされた場合よりRC値が高いことが分かる。
実施例1〜4のようにMnがドーピングされたMLCCのTCC特性はX5R組成に比べて85℃TCCが−0.15下限値付近で、良好ではないが、X5R特性は満足させている。実施例5〜8のようにVがドーピングされたMLCCのTCC特性はV含量が増加するにつれて85℃TCCが上昇する傾向を表して、Mnがドーピングされたチップに比べてTCC特性が良好であることが分かる。実施例9〜10のMnとVが共ドーピング(co−doping)された場合はV含量によってTCC特性が左右されることを確認することができる。即ち、実施例10のMnとV含量が0.2及び0.2モル%であると、TCC特性は実施例6のVが単独で0.2モル%ドーピングされたMLCCの結果と殆ど同一である。
実施例1〜4のMnがドーピングされた場合には、Mnの含量増加による抵抗劣化挙動に大きい差異は発見されない。実施例5〜8のVがドーピングされた場合には、V含量が増加するにつれて非常に体系的に抵抗劣化挙動がはるかに抑制されることを確認することができる。
実施例9〜10のMnとVがともにドーピングされた場合には、Mn、Vが単独で添加された場合より安定された抵抗特性を表すと観察され、比較例の常用X5R組成適用MLCCと殆ど同等の水準の高温IR特性が具現されることを確認することができる。
以上の実施例の結果から、希土類元素を全く添加しなくても、遷移金属Mn、Vを添加して優れた容量、DF、常温IR及び信頼性が具現されることができるということが分かった。
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が出来て、これもまた本発明の範囲に属するというべきであろう。
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック素体
111 誘電体層
120a、120b 第1及び第2外部電極
130a、130b 第1及び第2内部電極

Claims (5)

  1. ABO のペロブスカイト構造を有し、平均粒径が0.05〜0.5μmであるBaTiO系母材粉末、
    前記母材粉末100モルに対して、遷移金属酸化物または炭酸塩0.1から1.0モル
    SiOを含む焼結助剤0.1から3.0モル、並びに
    Ba及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩、
    を含み、
    原子価固定アクセプタ元素及び希土類元素を含まず、
    前記Ba及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩は、前記遷移金属元素が前記母材粉末に固溶されることを考慮して、前記ABO のペロブスカイト構造において、A/Bが0.98<A/B<1.02を満たすように含まれる耐還元性誘電体組成物。
  2. 前記遷移金属はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群から選択される一つ以上である請求項1に記載の耐還元性誘電体組成物。
  3. 複数の誘電体層が積層されたセラミック素体、
    前記セラミック素体の内部に形成され、卑金属を含む内部電極、及び
    前記セラミック素体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極を含み、
    前記誘電体層は、ABO のペロブスカイト構造を有し、平均粒径が0.05〜0.5μmであるBaTiO系母材粉末、前記母材粉末100モルに対して、遷移金属酸化物または炭酸塩0.1から1.0モル、SiOを含む焼結助剤0.1から3.0モル、並びにBa及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩を含み、原子価固定アクセプタ元素及び希土類元素を含まず、
    前記Ba及びTiのうち何れか一つ以上を含む酸化物または炭酸塩は、前記遷移金属元素が前記母材粉末に固溶されることを考慮して、前記ABO のペロブスカイト構造において、A/Bが0.98<A/B<1.02を満たすように含まれるセラミック電子部品。
  4. 前記各誘電体層の厚さは0.1から10.0μmである請求項3に記載のセラミック電子部品。
  5. 前記内部電極はNiまたはNi合金を含む請求項3に記載のセラミック電子部品。
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