JP2013206899A - 積層型ptcサーミスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】室温抵抗が低くジャンプ特性が大きい、そして長期信頼性に優れた積層型PTCサーミスタを提供する。
【解決手段】半導体セラミック層2と内部電極3とが交互に積層されているチタン酸バリウム系化合物の多孔質の焼結体を構成する半導体セラミック層の平均粒径を1.2μm以上6.0μm以下、粒界のアルカリ金属元素を含む層の厚さを3nm以上で20nm以下にする。さらに、半導体セラミック層の空隙部の平均径のCV値が30%以下である。
【選択図】図1
【解決手段】半導体セラミック層2と内部電極3とが交互に積層されているチタン酸バリウム系化合物の多孔質の焼結体を構成する半導体セラミック層の平均粒径を1.2μm以上6.0μm以下、粒界のアルカリ金属元素を含む層の厚さを3nm以上で20nm以下にする。さらに、半導体セラミック層の空隙部の平均径のCV値が30%以下である。
【選択図】図1
Description
技術分野
本発明は、積層型PTCサーミスタに関する。
本発明は、積層型PTCサーミスタに関する。
サーミスタとしては、正の抵抗温度特性を有する、つまり温度の上昇に対して抵抗が増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタが知られている。このPTCサーミスタは、自己制御型発熱体、過電流保護素子、温度センサ等として利用されている。従来、このようなPTCサーミスタとして、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO3)に微量の希土類元素等を添加して導電性をもたせた半導体セラミック層と、半導体セラミック層を挟む一対の外部電極とを備えた単板型のPTCサーミスタが用いられてきた。
近年、PTCサーミスタに対しては、消費電力を抑制するため、非作動時の常温における抵抗(以下、「室温抵抗」と略記する)が十分に小さいことが強く望まれている。PTCサーミスタの室温抵抗は電極面積に反比例するため、電極面積が大きいほど室温抵抗率を低減することができる。そこで、従来の単板型のPTCサーミスタに代わるものとして、複数の半導体セラミック層と複数の内部電極とが交互に積層された積層型PTCサーミスタが提案されている。積層型PTCサーミスタでは、内部電極を複数積層することによって電極面積を大幅に増やすことができるため、室温抵抗を低下させることができる。
さらに、PTCサーミスタには、室温抵抗が低いことに加え、この室温抵抗に対する作動時の抵抗(以下、便宜上「高温抵抗」と略記する)の比率(以下、「ジャンプ特性」と略記)が極力大きいことも求められる。ジャンプ特性が大きいと、温度変化に対する抵抗変化が大きくなるため、より確実な動作が可能となる。
従来積層型PTCサーミスタは単板型と比較して、室温抵抗は小さいがジャンプ特性が単板型に比べて小さく課題であった。これを解決する為に特許文献1ではセラミック層の微細構造を制御し、焼結体の粒界及び空隙部の少なくとも一方に、アルカリ金属元素を偏在させている。ここでアルカリ金属元素とは周期律表の第一族に属する元素で水素を除くものを指し、具体的にはLi、Na、K、Rb、Cs、Frである。これにより、焼結体の粒界及び空隙部にアルカリ金属元素が偏在していない積層型PTCサーミスタと比べて低い室温抵抗と大きいジャンプ特性とを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを実現している。
しかし、焼結体の粒界及び空隙部の少なくとも一方に、アルカリ金属元素が偏在している積層型PTCサーミスタにおいては、高温で定格電圧を連続的に印加した過酷な使用環境下におかれた場合に、室温抵抗が増加してしまい、ジャンプ特性における長期信頼性についての新たな課題があることを見出した。この高温で定格電圧を連続的に印加することによる室温抵抗の増加は、積層型PTCサーミスタにおいて非動作時の消費電力が大幅に増え、搭載している電子機器としての消費電力が増える傾向にあり好ましくない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、室温抵抗が低くジャンプ特性が大きい、そして長期信頼性に優れた積層型PTCサーミスタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、積層型PTCサーミスタの半導体セラミック層の組成や構造を鋭意検討したところ、微細構造を制御することによって、室温抵抗が低くジャンプ特性が大きい、そして長期信頼性に優れた特性を得られることが分かった。
すなわち、本発明の積層型PTCサーミスタは、半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、前記本体の両端面にそれぞれ設けられ、前記内部電極と電気的に接続されている一対の外部電極とを備え、前記半導体セラミック層は、チタン酸バリウム系化合物の多孔質の焼結体で構成され、前記焼結体の平均粒径は1.2μm以上6.0μm以下であり、粒界がアルカリ金属元素を含む3nm以上20nm以下の厚さであることを特徴とする。
このような積層型PTCサーミスタは、室温抵抗が低くジャンプ特性が大きい、そして長期信頼性に優れた特性を得ることができる。
また本発明の積層型PTCサーミスタは、半導体セラミック層の空隙部の平均径のCV値が30%以下であることが好ましい。
これにより、積層型PTCサーミスタの長期信頼性をより確実に向上することが出来、また室温抵抗の特性もより改善することが出来る。
本発明によれば、室温抵抗が低くジャンプ特性が大きい、そして長期信頼性に優れた積層型PTCサーミスタを提供することが出来る。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
<積層型PTCサーミスタ>
図1は、本実施形態による積層型PTCサーミスタの一例を示す断面図である。
図1は、本実施形態による積層型PTCサーミスタの一例を示す断面図である。
積層型PTCサーミスタ1は、図1に示すように、半導体セラミック層2と、内部電極3とが交互に積層された直方体状の本体4と、本体4の端面4a、4bにそれぞれ形成された一対の外部電極5a、5bとを有する。なお、端面4a、4bは、半導体セラミック層2と内部電極3との境界面に垂直な方向で、かつ半導体セラミック層2及び内部電極3の積層方向に平行な方向の本体4の一対の面を備える。
本体4の端面4a、4bには、各内部電極3の一方の電極端面3aのみが交互に露出しており、他方の電極端面3bは半導体セラミック層2の内部に位置し、本体4内に埋設されている。外部電極5aは、本体4の端面4aにおいて、内部電極3の電極端面3aと電気的に接続され、外部電極5bは、本体4の端面4bにおいて、内部電極3の電極端面3aと電気的に接続されている。
すなわち、積層型PTCサーミスタ1は、半導体セラミック層2、及びこの半導体セラミック層2内に埋設された互いに平行な複数の内部電極3を有する本体4と、この本体4の両端面4a、4bを覆うように設けられ、複数の内部電極3の少なくとも一つの電極端面3a、3bと電気的に接続されている外部電極5a、5bとを備える。
半導体セラミック層2は、主成分としてチタン酸バリウム(BaTiO3)系化合物であるセラミック材料を含み、副成分としてアルカリ金属化合物を含む焼結体で構成される。半導体セラミック層2の主成分の具体的な組成としては、例えば、BaTiO3のBaサイトの一部を、希土類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素)で置換し、Tiサイトの一部を、V、Nb及びTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換したものが挙げられる。また、Baサイトの一部をSr等のアルカリ土類元素で更に置換してもよい。アルカリ土類元素とは具体的にはCa、Sr、Ba、Raを指す。Baの一部をSrで置換することによりキュリー温度を変動させることができる。また、半導体セラミック層2は、SiO2、又はMnOを更に含有してもよい。
半導体セラミック層2を構成する化合物の好適な主成分として、例えば下記の一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
(Ba1−xREx)α(Ti1−yTMy)O3・・・(1)
一般式(1)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。また、TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。
(Ba1−xREx)α(Ti1−yTMy)O3・・・(1)
一般式(1)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。また、TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を示す。
一般式(1)は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のBaサイトの一部をREで置換し、さらにTiサイトの一部をTMで置換することを示している。本実施形態において、Baサイトの一部をREで置換し、かつTiサイトの一部をTMで置換することにより、低抵抗化を図りつつ優れたPTC特性(ジャンプ特性)を示す積層型PTCサーミスタとすることができる。
一般式(1)において、Baサイトの一部をREで置換する量、さらにTiサイトの一部をTMで置換する量をそれぞれ示すx及びyは、下記式(2)及び(3)を満足することが好ましい。
0.001≦x≦0.003・・・(2)
0≦y≦0.002・・・(3)
0.001≦x≦0.003・・・(2)
0≦y≦0.002・・・(3)
BaサイトとTiサイトのmol比を示すαは、下記式(4)を満たすことが好ましい。これによって、一層大きなジャンプ特性を得ることができる。
0.99≦α≦1.1・・・(4)
0.99≦α≦1.1・・・(4)
本実施形態では、一般式(1)で表される化合物に、さらにMnOやSiO2が添加されていてもよい。MnOの添加量は、上記一般式(1)のTiサイトの元素(すなわち、(Ti1−yTMy))1molに対して、0.005〜0.0015molとすることが好ましい。これによって、PTC特性を一層向上させることができる。ただし、MnO量が過剰に多くなると室温抵抗が高くなりすぎて良好なPTC特性が得られず、温度の上昇に対して抵抗が減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)特性を示す傾向がある。
SiO2の添加量はチタン酸バリウム系化合物の焼結を促進させる観点から、上記一般式(1)のTiサイトの元素1molに対して、0.1〜0.3molとすることが好ましい。
半導体セラミック層2を構成する焼結体の主成分である、上記一般式(1)で表されるチタン酸バリウム系化合物の含有量は、半導体セラミック層2を構成する焼結体全体に対して95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。当該含有量が高いほど、低い室温抵抗と大きいジャンプ特性とを一層高水準で両立することが可能となる。
半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率は10〜30%であることが好ましい。空隙率が10%以下の場合は再酸化工程で酸素が素体(半導体セラミック層2)内部に充分に浸透しないので、粒界の酸化が不十分になり、ジャンプ特性が劣る。また空隙率が30%以上になると室温抵抗が上昇する。以上の理由から、低い室温抵抗と優れたジャンプ特性とを高水準で両立する為には、半導体セラミック層2の空隙率は10〜30%であること好ましい。
また空隙部にセラミックスを充填する場合は半導体セラミックス層2と熱膨張係数がほぼ同じであることが好ましい。充填するセラミックスと半導体セラミックス層2の熱膨張係数が大きく異なる場合はヒートサイクルでの熱応力が大きくなり、またセラミックスは高剛性なので周囲温度の上下が繰り返されるとクラックが発生する場合がある。
本実施形態によれば、半導体セラミック層2を構成する焼結体の平均粒径は1.2μm以上で6.0μm以下が好適である。平均粒径が1.2μmよりも小さいと粒界の面積が過大になり、また焼結が不十分であり、部分的にアルカリ金属元素を含む層の厚い箇所が発生してアルカリ金属元素を含む層の厚さのばらつきが大きくなって長期信頼性が低下する。また平均粒径が6.0μm以上になると平均粒径と比較して非常に大きい結晶粒が一部に形成される傾向があり、耐圧が低下する傾向があるので好ましくない。また、粒界に3nm以上で20nm以下の厚さのアルカリ金属元素を含む層があることが好ましい。これにより、長期信頼性が優れ(具体的には60℃での定格電圧での1000時間連続負荷試験後の室温抵抗の上昇を低減出来)、また同時に電気的特性も改善出来る。ここでアルカリ金属元素とはLi、Na、K、Rb、Cs、Frを意味し、層の中ではBサイトのTiに置換して、または酸化物、水酸化物等の化合物として存在している。
かかる効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下の通り推察している。すなわち、アルカリ金属元素は、通常酸化されやすいため、結晶粒の粒界や空隙部に偏在するアルカリ金属元素は、粒界や空隙部に選択的に酸素を吸着させたり、酸化物を形成させたりすることができる。その結果、室温抵抗が低く高いジャンプ特性が得られる。
室温抵抗の上昇の低減のメカニズムは次のように考えられる。本実施形態の積層型PTCサーミスタのセラミック層の粒界にはアルカリ金属元素が偏在しているが、高温連続負荷試験中にこれが熱エネルギーもしくは電圧印可により移動し、素体の体積抵抗が変化すると考えられる。そこでまず、結晶粒径を大きくすることにより空隙部の表面積の総和を減らすことが出来、連続負荷試験後の室温抵抗の変化を低減出来る(長期信頼性を向上できる)と考えられる。
一方、平均粒径が6.0μmを超えると巨大結晶粒が散見されるようになり、積層型PTCサーミスタの耐圧が低下する傾向が見られるので、好ましくない。また、平均粒径の下限に臨界性があることは次のように考えられる。粒界の表面積は平均粒径の逆数の2乗に比例すると考えられるが、さらに平均粒径が1.2μmより小さくなると焼結温度が低くなり、素体の収縮率が小さくなるので素体に空隙が出来にくくなり、粒界の表面積がさらに大きくなるので、長期信頼性と室温抵抗において平均粒径依存性に臨界性が発現すると推察される。
次に粒界において、アルカリ金属元素を含む層の厚さを20nm以下にすることで、粒界の過剰なアルカリ金属元素がなくなり、さらに高温連続負荷試験後の室温抵抗の変化を抑制することが可能になる(長期信頼性を向上できる)と考えられる。
アルカリ金属元素を含む層のアルカリ金属元素の含有量の上限に臨界性のあることは次のような理由によると考えられる。アルカリ金属元素は粒界のAサイトのBaと置換してアクセプターとして働くと考えられる。しかし、Baとの置換可能なAサイトの数は粒界ごとに決まっており、これを超えるアルカリ金属元素が粒界にある場合は、置換せずに格子間、格子欠陥等に存在し、チタン酸バリウムと化学的に結合していない。このため熱や電界等で動きやすく、長期信頼性を低下させると推察される。
アルカリ金属元素を含む粒界の層の厚さは次のようにして測定することができる。まず透過型電子顕微鏡(TEM)観察用のサンプルを内部電極3の間の半導体セラミック層2から作成し、任意の粒界に対して素直な方向にエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いてアルカリ金属元素の線分析を行い、信号強度がピーク値の1/10になる点を粒界に存在するアルカリ金属元素を含む層の表面とみなす。そして、10箇所の平均を行ないその値を採用した。またアルカリ金属元素を含む層の厚さが3nmより小さくなるとジャンプ特性が小さくなり、好ましくない。アルカリ金属元素がLiの場合にはEDS分析の感度が低いのでEELSの線分析を行うことが好ましい。
焼結体の平均粒径は次のようにして測定する。まず積層型PTCサーミスタ1のサンプルを断面研磨して、サーマルエッチングを行い、粒界の形状を明確にする。次に各結晶粒断面の面積を算出し、これと同じ面積の円の直径を結晶粒の粒径とする。100個以上の結晶粒の粒径を平均したものに統計因子1.27を乗じた値を平均粒子径とする。
また、本実施形態によれば、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙部の平均径のばらつきはCV値で30%以下が好適である。こうすることにより、60℃での定格電圧での1000時間の高温連続負荷試験後の室温抵抗の上昇をさらに低減出来る。
高温連続負荷試験後の室温抵抗の上昇の低減のメカニズムは次のように考えられる。粒界に偏析すするアルカリ金属元素は空隙部に含浸されたアルカリを含む溶液から供給されるが、空隙部の平均径のばらつきが大きくなると粒界に偏析するアルカリ層の厚さが半導体セラミック層2の内部でばらつき、厚い部分の室温抵抗の上昇が大きくなって全体としても室温抵抗が大きくなる。逆に、ばらつきが小さい場合は室温抵抗の上昇の大きい部分の体積が減って、全体の室温抵抗の上昇も低減出来る。
焼結体の空隙部の平均径のCV値は次のようにして測定する。まず積層型PTCサーミスタ1のサンプルを断面研磨する。次に各空隙部の断面の面積を算出し、これと同じ面積の円の直径に統計因子1.27乗じた値を空隙部の径とする。100個以上の空隙部の径を測定して平均値と標準偏差を計算し、標準偏差/平均値×100を空隙部の平均径のCV値と定義する。
以上のように本実施形態では半導体セラミック層2を構成する焼結体の平均粒径を1.2μm以上で6.0μm以下にし、また粒界のアルカリ金属を含む層の厚さを3nm以上で20nm以下にして、長期信頼性を大幅に改善している。そして、ジャンプ特性も上昇し、素体の比抵抗も低下する。これは半導体セラミック層2の微細構造をコントロールすることにより焼結体の粒界のアルカリ金属元素の量が最適化されて粒界付近の再酸化が良好に生じたことによると考えられる。
なお、本実施形態におけるジャンプ特性は、例えば下記式(5)によって計算することができる。下記式(5)で計算される値が大きいほど、ジャンプ特性が大きくPTC特性に優れている。
ジャンプ特性=Log10(R200/R25)・・・(5)
ここでR200は200℃における抵抗(高温抵抗)であり、R25は25℃における抵抗(室温抵抗)である。
ジャンプ特性=Log10(R200/R25)・・・(5)
ここでR200は200℃における抵抗(高温抵抗)であり、R25は25℃における抵抗(室温抵抗)である。
半導体セラミック層2に副成分として含まれるアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属酸化物が挙げられる。アルカリ金属化合物の含有量は、上記一般式(1)のTiサイトの元素1molに対して、アルカリ金属元素換算で0.001〜0.007molとすることが好ましい。この範囲内で、アルカリ金属化合物の含有量を高めにすれば、ジャンプ特性を一層大きくすることができる。一方、この範囲内で、アルカリ金属化合物の含有量を低めにすれば、室温抵抗を一層低くすることができる。
内部電極3は、主成分として卑金属を含むものが好適に用いられる。内部電極3の具体的な組成としては、Ni、又はNi−Pd等のNi合金等の高融点の金属が挙げられる。金属の融点は700℃よりも大きいことが好ましい。低融点金属で内部電極3を形成すると半導体セラミック層2の粒径にかかわらず高温連続負荷試験後で室温抵抗と試験前の初期特性との比率(変化率)が200%以上に上昇する傾向にある。これは低融点金属が半導体セラミック層2中を拡散しやすいので、高温連続負荷試験中に電界もしくは熱エネルギーにより内部電極3を構成する金属が素体中に拡散して室温抵抗の変動を来すと考えられる。またこの場合は半導体セラミック層2と内部電極層3を同時焼成することが不可能であり、内部電極3形成部に層状の空隙が形成された半導体セラミック層2を焼成してから、空隙部に溶融状態の低融点金属を注入する等の工法で作製されるが、工程が複雑であり、生産性が劣る。
また、外部電極5a、5bは内部電極3とオーミック接続を形成する必要があり、具体的な組成としては、Ag−Zn合金、又はAg―Al合金等が挙げられる。また外部電極5a、5bを2層にして、内側を上記のような、内部電極3とオーミック接続が可能な層にし、外側にAg等の緻密で耐薬品性のある層を形成することも好ましく行われる。
次に、本実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1の製造方法は、例えば、図2に示すように、主な工程として、チタン酸バリウム等の原料を混合する工程(混合工程;ステップS11)と、混合した原料を仮焼きする工程(仮焼工程;ステップS12)と、仮焼き後の原料を粉砕する工程(粉砕工程;ステップS13)と、半導体セラミック層2の前駆体層(以下、「半導体セラミック前駆体層」という)と、内部電極3の前駆体層(以下、「内部電極前駆体層」という)とが交互に積層された積層体を形成する工程(成形工程;ステップS14)と、積層体に含まれるバインダを除去する工程(脱バインダ工程;ステップS15)と、脱バインダ工程後の積層体を還元性雰囲気中で焼成し、多孔質の焼結体を形成する工程(焼成工程;ステップS16)と、アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させて、焼結体にアルカリ金属成分を付着させる工程(アルカリ金属付着工程;ステップS17)と、アルカリ金属成分を付着させた焼結体を乾燥させる工程(乾燥工程;ステップS18)と、乾燥後の焼結体を再酸化する工程(再酸化工程;ステップS19)と、を備える。以下、図2に示す工程フロー順に各工程を説明する。
まず、半導体セラミック層2を形成するための原料粉末を準備する。原料粉末は、半導体セラミック層2の主成分であるチタン酸バリウム系セラミック材料、又は焼成工程や再酸化工程後にこのチタン酸バリウム系セラミック材料となる化合物から構成される。後者の化合物としては、チタン酸バリウム系セラミック材料を構成する各金属の酸化物や塩(炭酸塩や硝酸塩)が挙げられる。また、半導体化のため、半導体セラミック層2が希土類元素を含む場合は、希土類元素の化合物等を原料粉末に含めればよい。希土類元素の化合物としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素の化合物(酸化物や塩等)が挙げられる。また、原料粉末には、Sr等のアルカリ土類金属の化合物、V、Nb及びTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素の化合物、SiO2、又はMnO等を更に含有させてもよい。
上述の各原料粉末をそれぞれ所定量秤量した後、混合工程(ステップS11)において、各原料粉末を純水及び粉砕用ボールと共にナイロン製ポット内に入れて、4〜8時間粉砕混合し、乾燥させて、混合粉末を得る。
次に、仮焼工程(ステップS12)において、必要に応じて混合粉末を仮成形した後、1000〜1180℃程度の雰囲気温度で、0.5〜5時間程度仮焼きして、仮焼体を得る。
仮焼体を得た後、粉砕工程(ステップS13)において、仮焼体を粉砕して仮焼粉を得る。次に、仮焼粉を純水及び粉砕用ボールと共にナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ、及び可塑剤を所定量添加して、5〜50時間程度混合し、所定粘度のグリーンシート用スラリーを得る。なお、グリーンシート用スラリー中には、必要に応じて分散剤を所定量含有させてもよい。
次いで、成形工程(ステップS14)において、半導体セラミック前駆体層と内部電極前駆体層とが交互に積層された積層体を形成する。この成形工程においては、まず、ポリエステルフィルム等の上にグリーンシート用スラリーをドクターブレード法等で塗布し、これを乾燥させて、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)を得る。グリーンシートの厚さは、10〜100μm程度とすればよい。
このようにして得られたグリーンシートの上面に、内部電極用ペーストをスクリーン印刷等により印刷する。これにより、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)上に内部電極ペーストからなる内部電極前駆体層が形成される。なお、内部電極用ペーストは、例えば、卑金属粉末と、電気絶縁材(ワニス)とを、混合・調製して得られたものである。卑金属粉末としては、例えば、Ni粉末、又はNi−Pd等のNi合金粉末を用いればよい。
次に、内部電極前駆体層が形成されたグリーンシートを複数積層し、その上面及び下面に内部電極前駆体層が形成されていないグリーンシートを重ね、これをプレス機で積層方向から加圧、圧着して、圧着体を得る。そして、この圧着体をカッター等で所望のサイズに切断することにより、積層体を得る。なお、成形工程においては、積層体は、積層型PTCサーミスタ1の本体4の構成に対応するように形成する。すなわち、積層体は、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)と内部電極前駆体層とが交互に積層され、且つ、各内部電極前駆体の一端面が積層体の左端面又は右端面に露出するとともに、これらと他方の端面は積層体の内部に封入されるようにする。
脱バインダ工程(ステップS15)においては、得られた積層体を、250〜600℃程度の大気中に1〜10時間程度保持して、積層体からグリーンシートに含まれていたバインダ等の液体成分を除去する。
次に、焼成工程(ステップS16)において、脱バインダ工程後の積層体を、1150〜1250℃程度の還元雰囲気中で、0.5〜4時間程度焼成し、多孔質の焼結体を得る。ここで、還元雰囲気とは、少なくとも内部電極前駆体層において酸化が生じないような雰囲気であり、例えば水素と窒素との混合雰囲気とすればよい。内部電極前駆体層に含まれる卑金属(Ni、又はNi合金等)は、通常容易に酸化されて内部電極としての機能が低下し易いものであったが、還元雰囲気中で積層体を焼成することによって、このような酸化を防止しつつ、積層体を焼結させることができる。
焼成工程(ステップS16)により得られた多孔質の焼結体の空隙率は、10〜30%であることが好ましい。焼結体の空隙率は、積層型PTCサーミスタ1の室温抵抗、及びPTC特性と相関がある。空隙率が10%未満である場合、PTC特性が劣化する傾向があり、空隙率が30%より大きい場合、室温抵抗が大きくなり、また、PTC特性が劣化する傾向がある。一方、焼結体の空隙率を上記の好適範囲とすることにより、焼結体が有する結晶粒の粒界や空隙部を適度に酸化させることができる。
焼結体の空隙率を変動させる要因としては、半導体セラミック前駆体層の組成や積層体の焼成条件が挙げられる。焼結体を多孔質とし、かつ、その空隙率を好適な範囲内とするためには、半導体セラミック前駆体層の組成を、例えば、下記式(6)〜(9)の組成にすることが好ましい。また、積層体を、1200℃、1%H2/N2、露点10℃の雰囲気中で焼成することが好ましい。
(Ba0.997Gd0.003)1.02TiO3+0.05SiO2+0.001MnO・・・(6)
(Ba0.9985Gd0.0015)1.02(Ti0.9985Nb0.0015)O3・・・(7)
(Ba0.9985Gd0.0015)0.995(Ti0.9985Nb0.0015)O3・・・(8)
(Ba0.998Sm0.002)1.002TiO3・・・(9)
(Ba0.9985Gd0.0015)1.02(Ti0.9985Nb0.0015)O3・・・(7)
(Ba0.9985Gd0.0015)0.995(Ti0.9985Nb0.0015)O3・・・(8)
(Ba0.998Sm0.002)1.002TiO3・・・(9)
本実施形態では焼結体の平均粒径は1.2μm以上であることが好ましい。これにより高温での連続負荷試験後の室温抵抗の上昇を低減することが出来る。焼結体の平均粒径は焼成工程(ステップS16)の焼成温度で制御することが出来る。焼成温度を上げると素体の焼結が進んで平均粒径は大きくなり、焼成温度を下げると、素体の焼結が抑制されて平均粒径は小さくなる。
また本実施形態では焼結体の空隙部の平均径のばらつきCV値で30%以下であることが好ましい。これにより高温での連続負荷試験後の室温抵抗の上昇をさらに低減することが出来る。焼結体の空隙部の平均径のばらつきは粉砕工程(ステップS13)の粉砕時間によって制御することが出来る。粉砕時間を長くすると、空隙部の平均径のばらつきは小さくなるが、焼結体の平均粒子径も小さくなる傾向があるので、焼成温度を若干上げて調整することができる。
焼成工程(ステップS16)によって多孔質の焼結体を得た後、アルカリ金属付着工程(ステップS17)において、焼結体にアルカリ金属などのアルカリ金属成分を付着させる。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、Kのうち少なくとも1つの元素が好ましい。焼結体にアルカリ金属成分を付着させる方法としては、特に限定されないが、好ましくは、アルカリ金属塩を含む溶液を焼結体に付着させる方法が挙げられる。具体的には、アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させる。アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させることによって、焼結体内に溶液が浸透するため、チタン酸バリウム系化合物を主成分とする焼結体内の空隙部や粒界にアルカリ金属塩を優先的に付着させることが可能となる。
また、半導体セラミック層2の空隙部にはガラス成分等の素体と熱膨張係数の異なるセラミックスがないことが、好ましい。熱膨張係数の異なるセラミックスがあると、ヒートサイクル試験で素体にクラックが発生する傾向がある。
アルカリ金属塩としては、NaNO3、NaOH、Na2CO3、Na2SiO3、Li2O、LiOH、LiNO3、Li2SO4、KOH、KNO3、K2CO3からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。これらのアルカリ金属塩は、水などの溶媒に容易に溶解し、焼結体をその溶液に含浸した場合に、焼結体の空隙部や粒界に付着しやすい傾向がある。
また、上述した実施形態の積層PTCサーミスタ1の製造方法では、分子量が、80〜130、より好ましくは84.995〜122.063であるアルカリ金属塩を用いることが好ましい。このような分子量を有するアルカリ金属塩は、焼結体の粒界や空隙部に偏析し易いため、アルカリ金属元素を粒界や空隙部に一層選択的に偏在させることができる。これによって、低い室温抵抗と大きいジャンプ特性とを更に確実に両立させることができる。
なお、チタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させる方法としては、上述の方法以外に、アルカリ金属塩を含む溶液の塗布や吹きつけ等が挙げられる。また、アルカリ金属塩を含む溶液としては、アルカリ金属塩が可溶であれば特に限定されず、水溶液を用いてもよく、有機溶液を用いてもよい。
アルカリ金属塩を含む溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、アルカリ金属元素換算で、0.01〜0.08mol%であることが好ましく、0.01〜0.04mol%であることがより好ましい。0.01〜0.04mol%のアルカリ金属塩溶液を用いることによって、焼結体の有する結晶粒の粒界部分や空隙部にアルカリ金属化合物を一層選択的に偏析させることが可能となる。
なお、上述の範囲でアルカリ金属塩濃度を調整することによって、最終的に焼結体に含まれるアルカリ金属化合物の量を調整することができる。溶液中のアルカリ金属塩の濃度が低過ぎると、焼結体の粒界や空隙部に存在するアルカリ金属化合物の量が不十分となり、結晶粒の粒界の酸化が十分に進まない傾向がある。したがって、ジャンプ特性を大きくする効果が十分に得られない傾向がある。一方、溶液中のアルカリ金属塩の濃度が高過ぎると、焼結体に付着するアルカリ金属塩の量が過剰となり、その後の工程でアルカリ金属が粒内に侵入して焼結体の粒内までも過剰に酸化されてしまう傾向がある。これによって、低い室温抵抗が損なわれる傾向がある。
アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させた後には、乾燥工程(ステップS18)において、焼結体を乾燥させる。
次に、再酸化工程(ステップS19)において、乾燥後の焼結体を、酸化雰囲気中で熱処理して再酸化し、本体4を得る。再酸化の条件は、少なくとも得られる半導体セラミック層2が確実にPTC特性を発現でき、しかも内部電極3に酸化が生じない程度の条件とする。再酸化の条件としては、酸化雰囲気の酸素濃度、熱処理温度、熱処理時間等の各条件が挙げられるが、これらは、焼結体の寸法に応じて適宜設定すればよい。これらの条件を適切に設定することで、好適な室温抵抗及びPTC特性を有する積層型PTCサーミスタ1を得ることができる。
具体的には、再酸化工程の熱処理温度を600〜800℃とすることが好ましく、600〜700℃とすることがより好ましい。この熱処理温度が低く過ぎると、焼結体が有する結晶粒の粒界の酸化が不十分となり、ジャンプ特性を大きくする効果が小さくなる傾向がある。一方、熱処理温度が高過ぎると、内部電極が酸化されてしまう傾向がある。また、酸化雰囲気の酸素濃度は0.1〜30体積%程度とすることが好ましく、熱処理時間は0.5〜2時間程度とすることが好ましい。
再酸化工程(ステップS19)では、アルカリ金属付着工程(ステップS17)において、焼結体の主に粒界及び空隙部に付着したアルカリ金属塩が、場合により酸化されて酸化物になると考えられる。これによって、得られる積層型PTCサーミスタは低い室温抵抗と大きなジャンプ特性とを一層高水準で両立させることができる。
再酸化工程(ステップS19)後、本体4の端面4a、4bにそれぞれ外部電極用ペーストを塗布した後、550〜650℃程度の大気中で焼き付けることにより、これらの端面に外部電極5a、5bを形成する。なお、外部電極用ペーストとしては、例えばAg−Znペースト又はAg−Alペースト等を用いればよい。その結果、図1に示した構成を有する積層型PTCサーミスタ1を得ることができる。
上述した実施形態の積層型PTCサーミスタ1の製造方法によれば、半導体セラミック層2の微細構をコントロールすることによりまず粒界の表面積を減らすことが出来る、次に焼結体の粒界付近の再酸化を良好に生じさせることにより、粒界のアルカリ金属を含む層の厚さを最適化することが出来る。これらによって、高温連続負荷試験後の室温抵抗の上昇を大幅に低減出来る。さらに、これと同時に初期特性の室温抵抗を低くしジャンプ特性を向上することができる。つまり、初期特性である室温抵抗やジャンプ特性の電気的特性を改善することが出来る。
本発明は以下の実施例を参照してより具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜15)
外形寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmで、室温抵抗が0.32〜0.48Ωであり、半導体セラミック層の空隙率が80%、空隙部の平均径のCV値が20%であり、平均粒径が1.15〜1.25、1.3〜1.5、1.8〜2.2、3.7〜4.3、5.5〜6.5μmで、アルカリ金属元素を含む層の厚さが2.5〜3.5、9〜11、18〜22nmの範囲に調整した積層型PTCサーミスタのサンプルを実施例1〜15として各20個作成した。ここで、半導体セラミック前駆体層の組成として、(Ba0.9985Gd0.0015)1.02(Ti0.9985Nb0.0015)O3を用い、アルカリ金属付着工程(S17)では硝酸カリウムの水溶液を用いた。
外形寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmで、室温抵抗が0.32〜0.48Ωであり、半導体セラミック層の空隙率が80%、空隙部の平均径のCV値が20%であり、平均粒径が1.15〜1.25、1.3〜1.5、1.8〜2.2、3.7〜4.3、5.5〜6.5μmで、アルカリ金属元素を含む層の厚さが2.5〜3.5、9〜11、18〜22nmの範囲に調整した積層型PTCサーミスタのサンプルを実施例1〜15として各20個作成した。ここで、半導体セラミック前駆体層の組成として、(Ba0.9985Gd0.0015)1.02(Ti0.9985Nb0.0015)O3を用い、アルカリ金属付着工程(S17)では硝酸カリウムの水溶液を用いた。
また、平均粒径は焼成温度を変えることで調整し、アルカリ金属元素を含む層の厚さはアルカリ濃度と再酸化温度を変化させて調整した。焼成温度を上げると平均粒径は大きくなった。またアルカリ濃度を上げる、もしくは再酸化温度を上げるとアルカリ金属元素を含む層の厚さを厚くすることが出来た。
まず実施例1〜15それぞれ条件から任意のサンプル1個ずつ抜き取り、断面研磨して半導体セラミック層の平均粒径及び空隙の平均径のCV値を評価し、平均値が調整の範囲内に入っていることを確認した。次に内部電極間の半導体セラミック層の粒界のSTEM観察を行い、アルカリ金属元素(K)の多い層の厚さを評価した。評価方法は粒界に垂直な方向でKの線分析を行い、K由来の信号のピーク値から強度が1/10以下になる点を層の境界(つまり、信号のピーク値から1/10以上の範囲がアルカリ金属元素を含む層の厚さ)とした。同一チップの異なる粒界10箇所について測定し、その平均値をサンプルのアルカリ金属元素を含む層の厚さとした。
次に実施例1〜15のそれぞれ条件のサンプル20個の初期特性(室温抵抗及びジャンプ特性)及び長期信頼性の評価を実施した。
初期特性には、室温での抵抗の比抵抗と、ジャンプ特性には、式(5)によって200℃における抵抗(R200)と25℃における抵抗(R25)から初期値として測定算出した。
ジャンプ特性=Log10(R200/R25)・・・(5)
ジャンプ特性=Log10(R200/R25)・・・(5)
長期信頼性評価には、サンプルをプリント基板に実装し、高温連続負荷試験として60℃で各サンプルに6Vの電圧を2000時間加えた。次にサンプルを室温に24時間放置し、高温負荷試験後の25℃における抵抗(R’25)と初期特性との変化率を下記式(10)によって算出した。変化率が20%以内であったものは、長期信頼性が十分得られていると評価した。
変化率(%)=(R’25−R25)/R25×100・・・(10)
変化率(%)=(R’25−R25)/R25×100・・・(10)
工程条件及び評価結果を実施例1〜15を表1に示す。尚、表1で素体の平均粒子径及びアルカリ偏析層厚(アルカリ金属元素を含む層の厚さ)は、各サンプルでの調整範囲の中央値(平均値)とした。
実施例1の半導体セラミック層の粒界のSTEM写真を図3に、K、Ba、Tiの元素マップをそれぞれ図4、5、6に示す。
実施例6の半導体セラミック層のアルカリ金属元素を含む層の厚さを判断するための粒界近傍のKについての線分析結果を図7に示す。さらにBa及びTiについての線分析結果を図8に示す。図7と図8を比較すると、アルカリ金属元素の多い部分のBaが減少していることが分かる。これよりアルカリ金属元素はBaサイトに置換していると考えられる。
実施例1〜15の半導体セラミック層の平均粒子径及びアルカリ金属元素を含む層の厚さと高温負荷試験後の室温抵抗の変化率を図9に示す。さらに、初期特性のジャンプ特性との関係を図10に、初期特性の比抵抗との関係を図11に示す。
図9では、半導体セラミック層の平均粒子径が1.2μm以上になると、高温負荷試験後の室温抵抗の上昇し変化率が20%以下に抑制することが出来た。またアルカリ金属元素を含む層の厚さが20nm以下になるとさらに抑制できることが解る。また半導体セラミック層の平均粒子径が1.2μmより小さい場合は、アルカリ金属元素を含む層の厚さが20nm以下になっても高温負荷試験後の室温抵抗の上昇率が高く変化率の抑制効果は小さい。このことより、半導体セラミック層の平均粒子径の効果とアルカリ金属元素を含む層の厚さの効果は、独立ではなく相乗効果があり、半導体セラミック層の平均粒子径が1.2μm以上かつアルカリ金属元素を含む層の厚さが20nm以下の場合が高温負荷試験後の室温抵抗の上昇率の抑制、つまり長期信頼性に特に有効であることが解る。
また、半導体セラミック層の平均粒子径が1.2μm以上の場合、またはアルカリ金属元素を含む層の厚さが20nm以下の場合はジャンプ特性が向上し、比抵抗が低減しており、初期特性である電気的特性も改善されていることが解る。
(比較例1〜25)
外形寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmで、室温抵抗が0.32〜0.48Ωであり、セラミック層の空隙率が80%であり、平均粒径が0.55〜0.65、0.75〜0.85、0.95〜1.15μmであり、アルカリ金属元素を含む層の厚さが2.5〜3.5、9〜11、18〜22、28〜32、38〜42nm及び平均粒径が1.15〜1.25、1.3〜1.5、1.8〜2.2、3.7〜4.3、5.5〜6.5μmであり、アルカリ金属元素を含む層の厚さが28〜32、38〜42nmの積層型PTCサーミスタのサンプル比較例1〜25として調整し各20個作成した。これらのサンプルを実施例1〜15と同様に評価した。結果を表1に合わせ示す。尚、表1で素体の平均粒子径及びアルカリ偏析層厚(アルカリ金属元素を含む層)は各サンプルでの調整範囲の中央値(平均値)とした。
外形寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmで、室温抵抗が0.32〜0.48Ωであり、セラミック層の空隙率が80%であり、平均粒径が0.55〜0.65、0.75〜0.85、0.95〜1.15μmであり、アルカリ金属元素を含む層の厚さが2.5〜3.5、9〜11、18〜22、28〜32、38〜42nm及び平均粒径が1.15〜1.25、1.3〜1.5、1.8〜2.2、3.7〜4.3、5.5〜6.5μmであり、アルカリ金属元素を含む層の厚さが28〜32、38〜42nmの積層型PTCサーミスタのサンプル比較例1〜25として調整し各20個作成した。これらのサンプルを実施例1〜15と同様に評価した。結果を表1に合わせ示す。尚、表1で素体の平均粒子径及びアルカリ偏析層厚(アルカリ金属元素を含む層)は各サンプルでの調整範囲の中央値(平均値)とした。
さらに、半導体セラミック層の平均粒子径及びアルカリ金属元素を含む層の厚さと高温負荷試験後の室温抵抗の上昇率を図9に、ジャンプ特性との関係を図10に、比抵抗との関係を図11に合わせ示す。
平均粒径が1.2μmより小さい場合は、高温負荷試験後の室温抵抗の上昇率が20%を超えること、またジャンプ特性は低下し、比抵抗が上昇し、好ましくないことが分かる。また平均粒径が1.2μm以上であっても、アルカリ金属元素を含む層の厚さが20nmよりも大きいと同様の不具合が発生することが分かる。
なお、アルカリ金属元素を含む層の厚さが3nmを下回る場合は、初期特性のジャンプ特性に低下が認められた。これは粒界(アルカリ金属元素を含む層)のアルカリ金属元素量が過小になったことによると考えられる。アルカリ金属元素を含む層の厚さが3nmより小さい場合は初期特性である電気特性が低下して好ましくなかった。
(実施例16〜19)
実施例8の仮焼き後の粉砕時間及び焼成温度を調整して、半導体セラミック層の平均粒径が2μmであり、空隙部の平均径のばらつき(CV値)が10、30、40、50%のサンプルを実施例16〜19として作成し、高温負荷試験後の抵抗変化率と空隙部の平均径のばらつきの関係を調査した。結果を実施例8の結果と合わせ表2及び図12に示す。空隙部の平均径のばらつきが小さいほど信頼性試験後の抵抗変化率が小さくなり、またCV値が30%以下の場合は高温負荷試験後の室温抵抗との変化率が20%以下に抑制することができることが分かる。またCV値が30%より大きい場合は、変化率が20%より大きくなる傾向であることが分かる。
実施例8の仮焼き後の粉砕時間及び焼成温度を調整して、半導体セラミック層の平均粒径が2μmであり、空隙部の平均径のばらつき(CV値)が10、30、40、50%のサンプルを実施例16〜19として作成し、高温負荷試験後の抵抗変化率と空隙部の平均径のばらつきの関係を調査した。結果を実施例8の結果と合わせ表2及び図12に示す。空隙部の平均径のばらつきが小さいほど信頼性試験後の抵抗変化率が小さくなり、またCV値が30%以下の場合は高温負荷試験後の室温抵抗との変化率が20%以下に抑制することができることが分かる。またCV値が30%より大きい場合は、変化率が20%より大きくなる傾向であることが分かる。
これは半導体セラミック層において、アルカリを含む液がアルカリ含浸工程で、まず空隙部に充填される。そして、再酸化工程で空隙部に充填された液に含まれるアルカリが周辺部の半導体セラミック層へ熱拡散して、粒界にアルカリ金属元素を含む層を形成する。このため、空隙部の大きさにばらつきがあるとアルカリ金属元素を含む層の厚さが場所によってばらつくことによると考えられる。
本発明は、室温抵抗が低くジャンプ特性が大きく、長期信頼性が要求される積層型PTCサーミスタに有用である。
1…積層型PTCサーミスタ
2…半導体セラミック層
3…内部電極
4…本体
5a、5b…外部電極
2…半導体セラミック層
3…内部電極
4…本体
5a、5b…外部電極
Claims (2)
- 半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、
前記本体の両端面にそれぞれ設けられ、前記内部電極と電気的に接続されている一対の外部電極とを備え、
前記半導体セラミック層は、チタン酸バリウム系化合物の多孔質の焼結体で構成され、
前記焼結体の平均粒径は1.2μm以上6.0μm以下であり、粒界がアルカリ金属元素を含み3nm以上20nm以下の厚さであることを特徴とする積層型PTCサーミスタ。 - 前記半導体セラミック層の空隙部の平均径のCV値が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型PTCサーミスタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012070668A JP2013206899A (ja) | 2012-03-27 | 2012-03-27 | 積層型ptcサーミスタ |
Applications Claiming Priority (1)
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