本発明は、ノイズフィルタや静電気対策として、デジタル機器やAV(オーディオ・ビデオ)機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される複合電子部品に関する。
従来のこの種の複合電子部品は、図9に示すように、磁性材料からなる複数の磁性体層1と、バリスタ材料からなる複数のバリスタ層2とを積層し、そして磁性体層1と、この磁性体層1の内部に形成された複数の導体3とによってインダクタ部4を構成し、さらにバリスタ層2と、このバリスタ層2の内部に複数形成された内部導体5とによってバリスタ部6を構成していた。そしてインダクタ部4は、ノイズフィルタとしての機能を有し、かつバリスタ部6は、静電気パルスが印加されたときに、静電気パルスを放電させる静電気対策部としての機能を有している。
なお、本願発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
上記した従来の複合電子部品においては、インダクタ部4とバリスタ部6とを上下方向に積層しているため、薄形化が困難であるという問題があった。
特開平8−250309号公報
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、その目的は、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る複合電子部品は、複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の少なくとも一つに設けられたコイル導体と、前記コイル導体とは絶縁層を挟んで部分的に対向するよう配置され、一端部が前記コイル導体の一端部に電気的に接続されて、前記コイル導体とともに、外部からの信号が通るインダクタ部を構成する引出導体と、前記コイル導体または前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に形成され、前記インダクタ部に生じた静電気が放電される一端部および放電された静電気をグランドへと逃がす他端部を有する内部導体と、前記コイル導体の一端部と前記引出導体の一端部とを電気的に接続するヴィア電極とを備え、前記コイル導体の一部または前記引出導体の一端部と前記内部導体とから静電気対策部が構成される。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気を内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品の分解斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品における第1の絶縁層の上面に形成されたコイル導体と内部導体と切欠きとの位置関係を示す平面図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品の分解斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品における第2の絶縁層の上面に形成された引出導体と、内部導体と、第3の絶縁層に形成された切欠きとの位置関係を示す平面図である。
図6は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。
図7は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品の分解斜視図である。
図8は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の上面図である。
図9は、従来の複合電子部品の分解斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品の分解斜視図である。
図1において、本実施の形態1の複合電子部品は、複数の絶縁層として4つの絶縁層、すなわちダミー絶縁層19と、その上層の第1の絶縁層11aと、その上層の第2の絶縁層11bと、その上層の第3の絶縁層11cとから成る。ダミー絶縁層19、第1の絶縁層11a、第2の絶縁層11b、および第3の絶縁層11cは、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の絶縁性を有する材料を用いてシート状に加工されている。
第1の絶縁層11aの上面には、渦巻状のコイル導体12と先細り形状の一端部14aを有する内部導体14とが、内部導体14の一端部14aをコイル導体12の一部12cに近接させて形成されている。また、第1の絶縁層11aには、横断面が円形状の切欠き15が形成され、切欠き15は、コイル導体12の一部12cと内部導体の一端部12aとが切欠き15の円内に入るよう位置決めされている。
コイル導体12と内部導体14とは、切欠き15に焼成消失材を充填した後、まず銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして上記形状の導体を形成し、次に、それらの導体を第1の絶縁層11aの上面に転写することで形成される。また、4つの絶縁層19、11a、11b、11cを積層した後の焼成工程で、切欠き15に充填された焼成消失材が焼き飛ばされて、図1に示すような切欠き15となる。なお、切欠き15に充填される焼成消失材は、例えば樹脂ペーストにアクリルビーズを含有させた材料である。
第2の絶縁層11bには、下層の第1の絶縁層11aに形成されたコイル導体12の一端部12aに対向する位置にヴィア電極16が形成されており、ヴィア電極16上には、ヴィア電極16と電気的に接続される一端部13aを有する矩形状の引出導体13が形成されている。第2の絶縁層11bが第1の絶縁層11a上に積層されると、コイル導体12の一端部12aと引出導体13の一端部13aとがヴィア電極16を介して電気的に接続される。
ヴィア電極16は、レーザ、パンチングなどで第2の絶縁層11bにヴィアホールをあけた後、銀などの導電材料を埋め込むことで形成される。また、引出導体13は、まず、銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして矩形状の導体を形成し、次に、その導体を第2の絶縁層11bの上面に転写することで形成される。
ここで、コイル導体12と引出導体13とからインダクタ部17が構成され、インダクタ部17は、コイル導体12の他端部12bと引出導体13の他端部13bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減するノイズフィルタとしての機能を有する。また、コイル導体12の一部12cと内部導体14とから静電気対策部18が構成され、静電気対策部18は、インダクタ部17に生じた静電気をコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部12aへ放電させて、内部導体14の他端部14bを介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品における第1の絶縁層11aの上面に形成されたコイル導体12と内部導体14と切欠き15との位置関係を示す平面図である。図2に示すように、静電気対策部18を構成するコイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとは、切欠き15の円内に入っている。なお、切欠き15を設けなくても、コイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとの間で静電気を放電させることができるが、切欠き15を設けることで、コイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとの間に空間を形成できるため、切欠き15を設けない場合に比べて静電気が放電され易くなる。
なお、切欠き15は、窪みや凹み等の形状でもよいが、加工のし易さを考慮すると、第1の絶縁層11aを貫通するように形成されるほうがよい。
図3は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。まず、図1に示すダミー絶縁層19と、第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cとをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図3に示す本体部20が形成される。本体部20の長手方向で対向する一端面と他端面には、それぞれ、図1に示すコイル導体12の他端部12bに電気的に接続された第1の外部電極21aと、図1に示す引出導体13の他端部13bに電気的に接続された第2の外部電極21bとが形成されている。また、本体部の一側面には、図1に示す内部導体14の他端部14bに電気的に接続された第3の外部電極22が形成されている。
第1の外部電極21a、第2の外部電極21b、および第3の外部電極22は、銀などの導電材料を印刷した後、その上に、ニッケル層、錫層をメッキすることで形成される。
このようにして完成した複合電子部品は、第1の外部電極21aを入力側の信号ライン23に半田等で接着し、第2の外部電極21bを出力側の信号ライン24に半田等で接着し、第3の外部電極22をグランドライン25に半田等で接着して、配線基板26上に実装される。
入力側の信号ライン23からノイズが重畳された信号が第1の外部電極21aに入ると、本体部20内に構成されたインダクタ部17(図1)によりノイズが低減されて、第2の外部電極21bから出力側の信号ライン24に出力される。また、入力側の信号ライン23に所定電圧を超える静電気電圧が印加されると、本体部20内に構成された静電気対策部18(図1)により、静電気は、インダクタ部17を構成するコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部14aへ放電され、内部導体14の他端部14b、第3の外部電極22を介してグランドライン25へと逃がされ、出力側の信号ライン24に接続された素子等が保護される。
以上のように、本実施の形態1によれば、インダクタ部17に生じた静電気をコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部14aへ放電させて内部導体14の他端部14bを介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部18をインダクタ部17が形成された第1の絶縁層11aの一面に形成することができるので、静電気対策部18を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
なお、本実施の形態1では、切欠き15を設けたが、切欠き15を設けない場合には、コイル導体12と内部導体14とを挟む第1の絶縁層11aと第2の絶縁層11bをガラス材料で構成すれば、静電気が放電されたときに、コイル導体12および/または内部導体14の一部が溶けたとしても、この溶けた導体材料は飛び散らず、静電気対策部18に残存することはないので、絶縁抵抗を保持することができる。
なお、本実施の形態1において、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと、引出導体13が形成される第2の絶縁層11bとを磁性材料で構成することで、コイル導体12と引出導体13からなるインダクタ部17のインダクタンスを大きくし、または第1の絶縁層11aと第2の絶縁層11bとを誘電材料で構成することで、コイル導体12間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることによって、インダクタンス部17は、高周波帯域のノイズを除去することができる。
なお、本実施の形態1において、渦巻状のコイル導体と矩形状の引出導体とからインダクタ部を構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと引出導体13が形成される第2の絶縁層11bを磁性材料から構成し、コイル導体12が第1の絶縁層11aの長手方向に沿って折り返りながら短手方向へと延伸して、引出導体の一端部に電気的に接続され、引出導体13が、コイル導体12と部分的に対向するように、第2の絶縁層11bの短手方向に沿って折り返りながら長手方向へと延伸するような蛇行形状としてもよい。
または、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと引出導体13が形成される第2の絶縁層11bを磁性材料から構成し、コイル導体12が第1の絶縁層11aの長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸し、再度、長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸して、引出導体13の一端部13aに電気的に接続され、引出導体13が、コイル導体12と部分的に対向するように、第2の絶縁層11bの長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸し、再度、長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸するような螺旋形状としてもよい。
なお、本実施の形態1において、コイル導体12と内部導体14を第1の絶縁層11aの上面に形成したが、これらを第2の絶縁層11bの下面に形成してもよい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品の分解斜視図である。なお、図4において、実施の形態1の説明で参照した図1に示す要素と同様の構成を有する要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図4において、本実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、第1の絶縁層11aにコイル導体12のみを形成し、2つの先細り形状を有する一端部14a、14aが、第2の絶縁層11bに形成された引出導体13の一端部13aを間に挟んで互いに対向し且つその一端部13aに近接するように2つの内部導体14、14を形成し、また第3の絶縁層11cに切欠き15を形成した点にある。以下では、主に、上記相違点について説明する。
本実施の形態2では、引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとから静電気対策部18が構成される。静電気対策部18は、第2の絶縁層11bの上面にのみ形成される。コイル導体12と引出導体13とから構成されるインダクタ部17に静電気電圧が印加されると、静電気は、引出導体13の一端部13aから2つの内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方へ放電されて、2つの内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方を介してグランドへと逃がされる。
また、本実施の形態2では、横断面が円形状の切欠き15を、実施の形態1のように第1の絶縁層11aにコイル導体12と内部導体14とともに形成するのではなく、第2の絶縁層11bに形成された、引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとが積層時に切欠き15の円内に入るように、切欠き15のみが第3の絶縁層11cに形成される。切欠き15はヴィア電極16が設けられた部分の第2の絶縁層11bには形成できないからである。
そして、切欠き15には、電圧/電流非直線特性を有する電圧依存性材料が充填される。これにより、インダクタ部17に生じた静電気が所定電圧を超える場合に、静電気を、内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方に放電させて内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方を介してグランドに逃がして、安定した静電気抑制機能を得ることができる。さらに、この電圧依存性材料としては、酸化亜鉛を主成分とするセラミック材料等のバリスタ材料が用いられる。これにより、所定電圧を超える静電気が印加されたときは、その静電気をより効率的に抑制することができ、かつ静電気が所定電圧以下の場合には、引出導体13と内部導体14、14との間の絶縁性を確保することができる。
なお、切欠き15は、窪みや凹み等の形状でもよいが、加工のし易さを考慮すると、第3の絶縁層11cを貫通するように形成されるほうがよい。
図5は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品における第2の絶縁層11bの上面に形成された引出導体13と、内部導体14と、第3の絶縁層に形成された切欠き15との位置関係を示す平面図である。図5に示すように、静電気対策部18を構成する引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとは、互いに近接して、第3の絶縁層11cに形成された切欠き15の円内に入っている。
図6は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。まず、図4に示す第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cと、ダミー絶縁層19とをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図6に示す本体部50が形成される。本体部50の長手方向で対向する一端面と他端面には、それぞれ、図4に示すコイル導体12の他端部12bに電気的に接続された第1の外部電極51aと、図4に示す引出導体13の他端部13bに電気的に接続された第2の外部電極51bとが形成されている。また、本体部の一側面と他側面には、それぞれ、図4に示す2つの内部導体14、14の他端部14b、14bにそれぞれ電気的に接続された第3の外部電極52a、52bが形成されている。
このようにして完成した複合電子部品は、第1の外部電極51aを入力側の信号ライン53に半田等で接着し、第2の外部電極51bを出力側の信号ライン54に半田等で接着し、2つの第3の外部電極52a、52bをそれぞれグランドライン55a、55bに半田等で接着して、配線基板56上に実装される。
本実施の形態2では、本体部50の一側面と他側面に、2つのグランドライン55aと55bにそれぞれ電気的に接続される2つの第3の外部電極52aと52bを有するので、実施の形態1における本体部の一側面にしか第3の外部電極22が形成されていない構成に比べて、複合電子部品を実装する際の方向性を考慮する必要がない。すなわち、複合電子部品を配線基板56に実装する際に信号ライン53、54に対して0度でも180度でもよい。
入力側の信号ライン53からノイズが重畳された信号が第1の外部電極51aに入ると、本体部50内に構成されたインダクタ部17(図4)によりノイズが低減されて、第2の外部電極51bから出力側の信号ライン54に出力される。また、入力側の信号ライン53に所定電圧を超える静電気電圧が印加されると、本体部50内に構成された静電気対策部18(図4)により、静電気は、インダクタ部17を構成する引出導体13の一端部13aから2つの内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方へ放電され、2つの内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方、および2つの第3の外部電極52a、52bのいずれか、または両方を介して2つのグランドライン55a、55bのいずれか、または両方へと逃がされ、出力側の信号ライン54に接続された素子等が保護される。
以上のように、本実施の形態2によれば、インダクタ部17に生じた静電気を引出導体13の一端部13aから少なくとも1つの内部導体14の一端部14aへ放電させて少なくとも1つの内部導体14の他端部14bを介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部18を第2の絶縁層11bの一面に形成することができるので、静電気対策部18を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品の分解斜視図である。なお、図7において、実施の形態2の説明で参照した図4に示す要素と同様の構成を有する要素については、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図7において、本実施の形態3の複合電子部品は、複数の絶縁層として7つの絶縁層、すなわち第1のダミー絶縁層191と、その上層の第1の絶縁層111aと、その上層の第2の絶縁層111bと、その上層の第3の絶縁層111cと、その上層の第4の絶縁層111dと、その上層の第5の絶縁層111eと、第2のダミー層192とから成る。第1のダミー絶縁層191、第1の絶縁層111a、第2の絶縁層111b、第3の絶縁層111c、第4の絶縁層111d、第5の絶縁層111e、および第2のダミー絶縁層192は、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の絶縁性を有する材料を用いてシート状に加工されている。
第1の絶縁層111aの上面には、L字形状の第1の引出導体131と先細り形状の一端部141a、141aを有する2つの第1の内部導体141、141とが、2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aを第1の引出導体131の一端部131aを間に挟んで互いに対向させ且つその一端部131aに近接させて形成されている。また、第1の絶縁層111aには、横断面が円形状の第1の切欠き151が形成され、第1の切欠き151は、第1の引出導体131の一端部131aと2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aとが第1の切欠き151の円内に入るよう位置決めされている。
第1の引出導体131と2つの第1の内部導体141、141とは、第1の切欠き151に焼成消失材を充填した後、まず銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして上記形状の導体を形成し、次に、それらの導体を第1の絶縁層111aの上面に転写することで形成される。また、7つの絶縁層191、111a、111b、111c、111d、111e、および192を積層した後の焼成工程で、第1の切欠き151に充填された焼成消失材が焼き飛ばされて、図7に示すような第1の切欠き151となる。なお、第1の切欠き151に充填される焼成消失材は、例えば樹脂ペーストにアクリルビーズを含有させた材料である。
第2の絶縁層111bには、下層の第1の絶縁層111aに形成された第1の引出導体131の一端部131aに対向する位置に第1のヴィア電極161が形成されており、第1のヴィア電極161上には、第1のヴィア電極161と電気的に接続される一端部121aを有する渦巻状の第1のコイル導体121が形成されている。第2の絶縁層111bが第1の絶縁層111a上に積層されると、第1のコイル導体121の一端部121aと第1の引出導体131の一端部13aとが第1のヴィア電極161を介して電気的に接続される。
ヴィア電極161は、レーザ、パンチングなどで第2の絶縁層111bにヴィアホールをあけた後、銀などの導電材料を埋め込むことで形成される。また、第1のコイル導体121は、まず、銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして渦巻状の導体を形成し、次に、その導体を第2の絶縁層111bの上面に転写することで形成される。
ここで、第1のコイル導体121と第1の引出導体131とから第1のインダクタ部171が構成され、第1のインダクタ部171は、第1のコイル導体121の他端部121bと第1の引出導体131の他端部131bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減する第1のノイズフィルタとしての機能を有する。また、第1の引出導体131の一端部131aと2つの第1の内部導体141、141とから第1の静電気対策部181が構成され、第1の静電気対策部181は、第1のインダクタ部171に生じた静電気を第1の引出導体131の一端部131aから2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aのいずれか、または両方へ放電させて、2つの第1の内部導体141、141の他端部141b、141bのいずれか、または両方を介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
第3の絶縁層111cの上面には、渦巻状の第2のコイル導体122が形成されている。第2のコイル導体122の材質および形成方法は、上記第1のコイル導体121と同じである。
第4の絶縁層111dには、下層の第3の絶縁層111cに形成された第2のコイル導体122の一端部122aに対向する位置に第2のヴィア電極162が形成されており、第2のヴィア電極162上には、第2のヴィア電極162と電気的に接続される一端部132aを有するL字形状の第2の引出導体132が形成されている。第4の絶縁層111dが第3の絶縁層111c上に積層されると、第2のコイル導体122の一端部122aと第2の引出導体132の一端部132aとが第2のヴィア電極162を介して電気的に接続される。
また、第4の絶縁層114dの上面には、先細り形状の一端部142a、142aを有する2つの第2の内部導体142、142が、それらの一端部142a、142aを第2の引出導体132の一端部132aを間に挟んで且つその一端部132aに近接させて形成されている。
第2の引出導体132および2つの第2の内部導体142、142の材質および形成方法は、それぞれ、上記第1の引出導体131および2つの第1の内部導体141、141の材質および形成方法と同じである。
ここで、第2のコイル導体122と第2の引出導体132とから第2のインダクタ部172が構成され、第2のインダクタ部172は、第2のコイル導体122の他端部122bと第2の引出導体132の他端部132bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減する第2のノイズフィルタとしての機能を有する。また、第2の引出導体132の一端部132aと2つの第2の内部導体142、142とから第2の静電気対策部182が構成され、第2の静電気対策部182は、第2のインダクタ部172に生じた静電気を第2の引出導体132の一端部132aから2つの第2の内部導体142、142の一端部142a、142aのいずれか、または両方へ放電させて、2つの第2の内部導体142、142の他端部142b、142bのいずれか、または両方を介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
第5の絶縁層111eには、横断面が円形状の第2の切欠き152が、第4の絶縁層111dに形成された第2の引出導体132の一端部132aと2つの第2の内部導体142、142の一端部142a、142aとが積層時に第2の切欠き152の円内に入るように、形成されている。
図8は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の上面図である。まず、図7に示す第1のダミー絶縁層191と、第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cと、第4の絶縁層111dと、第5の絶縁層111eと、第2のダミー絶縁層192とをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図8に示す本体部80が形成される。
本体部80の長手方向の一方側面には、3つの外部電極81a、82a、83aが形成され、外部電極81aは、図7に示す第2の引出導体132の他端部132bに電気的に接続され、外部電極82aは、第1の内部導体141の他端部141b及び第2の内部導体142の他端部142bに電気的に接続され、外部電極83aは、第1の引出導体131の他端部131bに電気的に接続されている。
また、本体部80の長手方向の他方側面には、3つの外部電極81b、82b、83bが形成され、外部電極81bは、図7に示す第2のコイル導体122の他端部122bに電気的に接続され、外部電極82bは、第2の内部導体142の他端部142b及び第1の内部導体141の他端部141bに電気的に接続され、外部電極83bは、第1のコイル導体121の他端部121bに電気的に接続されている。
このように、第2の引出導体132の他端部132b、第1の内部導体141の他端部141b、第2の内部導体142の他端部142b及び第1の引出導体131の他端部131bと、第2のコイル導体122の他端部122b、第2の内部導体142の他端部142b、第1の内部導体141の他端部141b及び第1のコイル導体121の他端部121bとを複合電子部品の本体部80の2つの対向する面に引き出し、かつ前記対向する各面にそれぞれ引き出される端部は同数とし、さらに、第1のコイル導体121の他端部121b及び第2のコイル導体122の他端部122bが引き出された面と異なる面に、第1のコイル導体121及び第2のコイル導体122と接続された第1の引出導体131の他端部131b及び第2の引出導体132の他端部132bを引き出すようにすれば、配線基板89上の複数の平行する信号ライン86a、87a、88a、86b、87b、88bに容易に複合電子部品を用いることができる。
なお、外部電極81a、82a、83a及び外部電極81b、82b、83bの形成位置及び数は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば、外部電極81a、82a、83a及び外部電極81b、82b、83bを短手方向の対向する2つの側面に形成したり、第1の引出導体131の他端部131b及び第2の引出導体132の他端部132bを同一外部電極に接続したりてもよい。
以上のように、本実施の形態3の複合電子部品は、第1のインダクタ部171と第1の静電気対策部181から成る部分と、第2のインダクタ部172と第2の静電気対策部182から成る部分とを有している。
そこで、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cを磁性材料で構成することにより、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122とを磁気結合させることができ、第1のインダクタ部171と第2のインダクタ部172とから成るコモンモードノイズフィルタや積層トランスを構成することができる。
または、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cの透磁率を他の絶縁層111a、111b、111d、111eの透磁率よりも小さくすることにより、第1のコイル導体121、第2のコイル導体122で発生した磁束が漏洩するのを防止できるため、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122との間の磁気的結合を強くすることができる。
また、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cの誘電率を他の絶縁層111a、111b、111d、111eの誘電率よりも小さくすることにより、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122との間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることができ、より高周波帯域のノイズを除去するノイズフィルタを構成することができる。
なお、上記各実施の形態において、コイル導体、引出導体および内部導体を、メッキで形成するのではなく、印刷や蒸着等の他の方法で形成してもよい。
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
本発明に係る複合電子部品は、複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の少なくとも一つに設けられたコイル導体と、前記コイル導体とは絶縁層を挟んで部分的に対向するよう配置され、一端部が前記コイル導体の一端部に電気的に接続されて、前記コイル導体とともに、外部からの信号が通るインダクタ部を構成する引出導体と、前記コイル導体または前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に形成され、前記インダクタ部に生じた静電気が放電される一端部および放電された静電気をグランドへと逃がす他端部を有する内部導体とを備え、前記コイル導体の一部または前記引出導体の一端部と前記内部導体とから静電気対策部が構成される。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気をコイル導体の一部または引出導体の一端部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、前記コイル導体が設けられた絶縁層の一面に、一端部を前記コイル導体の一部に近接させて形成されることが好ましい。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気をコイル導体の一部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に、一端部を前記引出導体の一端部と近接させて形成されることが好ましい。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気を引出導体の一端部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、複数形成されることが好ましい。
この構成によれば、複数の内部導体の他端部から両方向に静電気を逃がすことができるため、実装方向の方向性を無くすことができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体の一端部は先細り形状を有することが好ましい。
この構成によれば、静電気電圧の印加時に内部導体の一端部における電流密度を大きくできるため、コイル導体の一部または引出導体の一端部から内部導体の一端部への放電が容易になる。
本発明に係る複合電子部品において、前記複数の絶縁層のうち、前記コイル導体を上下で挟む絶縁層は、磁性材料または誘電材料で構成されることが好ましい。
この構成によれば、コイル導体を含むインダクタ部のインダクタンスを大きくし、またはコイル導体間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることによって、高周波帯域のノイズを除去することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体を上下で挟む絶縁層は、ガラス材料で構成されることが好ましい。
この構成によれば、静電気が放電されたときに、内部導体の一部が溶けたとしても、この溶けた導体材料は飛び散らず、静電気対策部に残存することはないので、絶縁抵抗を保持することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体が設けられた絶縁層および/または当該絶縁層の直上の絶縁層は切欠きを有し、該切欠きは、少なくとも前記内部導体の一端部が前記切欠き内に入るよう位置決めされることが好ましい。
この構成によれば、切欠きを設けたことにより、引出導体の一端部と内部導体の一端部との間に空間を形成できるため、切欠きを設けない場合に比べて静電気が放電され易くなる。
本発明に係る複合電子部品において、前記切欠きは、前記絶縁層に貫通孔を設けることによって形成されることが好ましい。
この構成によれば、切欠きを容易に加工することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記切欠きは、電圧依存性材料で充填されることが好ましい。
この構成によれば、切欠きに電圧依存性材料が充填されているので、インダクタ部に生じた静電気が所定電圧を超える場合に、静電気を内部導体の一端部に放電させて内部導体の他端部を介してグランドに逃がして、安定した静電気抑制機能を得ることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記電圧依存性材料はバリスタ材料であることが好ましい。
この構成によれば、電圧依存性材料としてバリスタ材料が用いられているので、所定電圧を超える静電気が印加されたときは、その静電気をより効率的に抑制することができ、かつ静電気が所定電圧以下の場合には、インダクタ部と内部導体との間の絶縁性を確保することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記コイル導体は、前記複数の絶縁層のうち少なくとも1つの絶縁層を挟んで設けられた2つのコイル導体から成ることが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体を磁気結合させることにより、コモンモードノイズフィルタや積層トランスを含む複合電子部品を実現することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記引出導体は、前記2つのコイル導体より下方に形成された第1の引出導体と、前記2つのコイル導体より上方に形成された第2の引出導体とから成ることが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体に電気的に接続される引出導体および内部導体をバランスよく形成できるため、安定した特性を得ることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記2つのコイル導体間の絶縁層の誘電率は、他の絶縁層の誘電率よりも小さいことが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体間に形成される浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることで、より高周波帯域のノイズを除去することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記2つのコイル導体間の絶縁層の透磁率は、他の絶縁層の透磁率よりも小さいことが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体で発生した磁束が漏洩するのを防止することができるため、2つのコイル導体間の磁気的結合を強くすることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記コイル導体の他端部、前記引出導体の他端部、および前記内部導体の他端部を前記複合電子部品の2つの対向する面に引き出し、かつ前記対向する各面にそれぞれ引き出される端部は同数とし、さらに前記コイル導体の他端部が引き出された面とこのコイル導体と接続された引出導体の他端部は異なる面に引き出すようにすることが好ましい。
この構成によれば、複数の平行する信号ラインに容易に複合電子部品を用いることができる。
本発明にかかる複合電子部品は、信号ラインのノイズを低減するインダクタ部とインダクタ部に生じた静電気をグランドに逃がす静電気対策部とを備え、静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することで、容易に薄形化することができるという利点を有し、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器等のノイズフィルタまたは静電気対策部品等として有用である。
本発明は、ノイズフィルタや静電気対策として、デジタル機器やAV(オーディオ・ビデオ)機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される複合電子部品に関する。
従来のこの種の複合電子部品は、図9に示すように、磁性材料からなる複数の磁性体層1と、バリスタ材料からなる複数のバリスタ層2とを積層し、そして磁性体層1と、この磁性体層1の内部に形成された複数の導体3とによってインダクタ部4を構成し、さらにバリスタ層2と、このバリスタ層2の内部に複数形成された内部導体5とによってバリスタ部6を構成していた。そしてインダクタ部4は、ノイズフィルタとしての機能を有し、かつバリスタ部6は、静電気パルスが印加されたときに、静電気パルスを放電させる静電気対策部としての機能を有している。
なお、本願発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開平8−250309号公報
上記した従来の複合電子部品においては、インダクタ部4とバリスタ部6とを上下方向に積層しているため、薄形化が困難であるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、その目的は、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る複合電子部品は、複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の少なくとも一つに設けられたコイル導体と、前記コイル導体とは絶縁層を挟んで部分的に対向するよう配置され、一端部が前記コイル導体の一端部に電気的に接続されて、前記コイル導体とともに、外部からの信号が通るインダクタ部を構成する引出導体と、前記コイル導体または前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に形成され、前記インダクタ部に生じた静電気が放電される一端部および放電された静電気をグランドへと逃がす他端部を有する内部導体と、前記コイル導体の一端部と前記引出導体の一端部とを電気的に接続するヴィア電極とを備え、前記コイル導体の一部または前記引出導体の一端部と前記内部導体とから静電気対策部が構成される。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気を内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明によれば、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品の分解斜視図である。
図1において、本実施の形態1の複合電子部品は、複数の絶縁層として4つの絶縁層、すなわちダミー絶縁層19と、その上層の第1の絶縁層11aと、その上層の第2の絶縁層11bと、その上層の第3の絶縁層11cとから成る。ダミー絶縁層19、第1の絶縁層11a、第2の絶縁層11b、および第3の絶縁層11cは、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の絶縁性を有する材料を用いてシート状に加工されている。
第1の絶縁層11aの上面には、渦巻状のコイル導体12と先細り形状の一端部14aを有する内部導体14とが、内部導体14の一端部14aをコイル導体12の一部12cに近接させて形成されている。また、第1の絶縁層11aには、横断面が円形状の切欠き15が形成され、切欠き15は、コイル導体12の一部12cと内部導体の一端部12aとが切欠き15の円内に入るよう位置決めされている。
コイル導体12と内部導体14とは、切欠き15に焼成消失材を充填した後、まず銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして上記形状の導体を形成し、次に、それらの導体を第1の絶縁層11aの上面に転写することで形成される。また、4つの絶縁層19、11a、11b、11cを積層した後の焼成工程で、切欠き15に充填された焼成消失材が焼き飛ばされて、図1に示すような切欠き15となる。なお、切欠き15に充填される焼成消失材は、例えば樹脂ペーストにアクリルビーズを含有させた材料である。
第2の絶縁層11bには、下層の第1の絶縁層11aに形成されたコイル導体12の一端部12aに対向する位置にヴィア電極16が形成されており、ヴィア電極16上には、ヴィア電極16と電気的に接続される一端部13aを有する矩形状の引出導体13が形成されている。第2の絶縁層11bが第1の絶縁層11a上に積層されると、コイル導体12の一端部12aと引出導体13の一端部13aとがヴィア電極16を介して電気的に接続される。
ヴィア電極16は、レーザ、パンチングなどで第2の絶縁層11bにヴィアホールをあけた後、銀などの導電材料を埋め込むことで形成される。また、引出導体13は、まず、銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして矩形状の導体を形成し、次に、その導体を第2の絶縁層11bの上面に転写することで形成される。
ここで、コイル導体12と引出導体13とからインダクタ部17が構成され、インダクタ部17は、コイル導体12の他端部12bと引出導体13の他端部13bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減するノイズフィルタとしての機能を有する。また、コイル導体12の一部12cと内部導体14とから静電気対策部18が構成され、静電気対策部18は、インダクタ部17に生じた静電気をコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部12aへ放電させて、内部導体14の他端部14bを介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品における第1の絶縁層11aの上面に形成されたコイル導体12と内部導体14と切欠き15との位置関係を示す平面図である。図2に示すように、静電気対策部18を構成するコイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとは、切欠き15の円内に入っている。なお、切欠き15を設けなくても、コイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとの間で静電気を放電させることができるが、切欠き15を設けることで、コイル導体12の一部12cと内部導体14の一端部14aとの間に空間を形成できるため、切欠き15を設けない場合に比べて静電気が放電され易くなる。
なお、切欠き15は、窪みや凹み等の形状でもよいが、加工のし易さを考慮すると、第1の絶縁層11aを貫通するように形成されるほうがよい。
図3は、本発明の実施の形態1に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。まず、図1に示すダミー絶縁層19と、第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cとをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図3に示す本体部20が形成される。本体部20の長手方向で対向する一端面と他端面には、それぞれ、図1に示すコイル導体12の他端部12bに電気的に接続された第1の外部電極21aと、図1に示す引出導体13の他端部13bに電気的に接続された第2の外部電極21bとが形成されている。また、本体部の一側面には、図1に示す内部導体14の他端部14bに電気的に接続された第3の外部電極22が形成されている。
第1の外部電極21a、第2の外部電極21b、および第3の外部電極22は、銀などの導電材料を印刷した後、その上に、ニッケル層、錫層をメッキすることで形成される。
このようにして完成した複合電子部品は、第1の外部電極21aを入力側の信号ライン23に半田等で接着し、第2の外部電極21bを出力側の信号ライン24に半田等で接着し、第3の外部電極22をグランドライン25に半田等で接着して、配線基板26上に実装される。
入力側の信号ライン23からノイズが重畳された信号が第1の外部電極21aに入ると、本体部20内に構成されたインダクタ部17(図1)によりノイズが低減されて、第2の外部電極21bから出力側の信号ライン24に出力される。また、入力側の信号ライン23に所定電圧を超える静電気電圧が印加されると、本体部20内に構成された静電気対策部18(図1)により、静電気は、インダクタ部17を構成するコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部14aへ放電され、内部導体14の他端部14b、第3の外部電極22を介してグランドライン25へと逃がされ、出力側の信号ライン24に接続された素子等が保護される。
以上のように、本実施の形態1によれば、インダクタ部17に生じた静電気をコイル導体12の一部12cから内部導体14の一端部14aへ放電させて内部導体14の他端部14bを介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部18をインダクタ部17が形成された第1の絶縁層11aの一面に形成することができるので、静電気対策部18を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
なお、本実施の形態1では、切欠き15を設けたが、切欠き15を設けない場合には、コイル導体12と内部導体14とを挟む第1の絶縁層11aと第2の絶縁層11bをガラス材料で構成すれば、静電気が放電されたときに、コイル導体12および/または内部導体14の一部が溶けたとしても、この溶けた導体材料は飛び散らず、静電気対策部18に残存することはないので、絶縁抵抗を保持することができる。
なお、本実施の形態1において、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと、引出導体13が形成される第2の絶縁層11bとを磁性材料で構成することで、コイル導体12と引出導体13からなるインダクタ部17のインダクタンスを大きくし、または第1の絶縁層11aと第2の絶縁層11bとを誘電材料で構成することで、コイル導体12間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることによって、インダクタンス部17は、高周波帯域のノイズを除去することができる。
なお、本実施の形態1において、渦巻状のコイル導体と矩形状の引出導体とからインダクタ部を構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと引出導体13が形成される第2の絶縁層11bを磁性材料から構成し、コイル導体12が第1の絶縁層11aの長手方向に沿って折り返りながら短手方向へと延伸して、引出導体の一端部に電気的に接続され、引出導体13が、コイル導体12と部分的に対向するように、第2の絶縁層11bの短手方向に沿って折り返りながら長手方向へと延伸するような蛇行形状としてもよい。
または、コイル導体12が形成される第1の絶縁層11aと引出導体13が形成される第2の絶縁層11bを磁性材料から構成し、コイル導体12が第1の絶縁層11aの長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸し、再度、長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸して、引出導体13の一端部13aに電気的に接続され、引出導体13が、コイル導体12と部分的に対向するように、第2の絶縁層11bの長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸し、再度、長手方向へと延伸し、次に短手方向へと延伸するような螺旋形状としてもよい。
なお、本実施の形態1において、コイル導体12と内部導体14を第1の絶縁層11aの上面に形成したが、これらを第2の絶縁層11bの下面に形成してもよい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品の分解斜視図である。なお、図4において、実施の形態1の説明で参照した図1に示す要素と同様の構成を有する要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図4において、本実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、第1の絶縁層11aにコイル導体12のみを形成し、2つの先細り形状を有する一端部14a、14aが、第2の絶縁層11bに形成された引出導体13の一端部13aを間に挟んで互いに対向し且つその一端部13aに近接するように2つの内部導体14、14を形成し、また第3の絶縁層11cに切欠き15を形成した点にある。以下では、主に、上記相違点について説明する。
本実施の形態2では、引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとから静電気対策部18が構成される。静電気対策部18は、第2の絶縁層11bの上面にのみ形成される。コイル導体12と引出導体13とから構成されるインダクタ部17に静電気電圧が印加されると、静電気は、引出導体13の一端部13aから2つの内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方へ放電されて、2つの内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方を介してグランドへと逃がされる。
また、本実施の形態2では、横断面が円形状の切欠き15を、実施の形態1のように第1の絶縁層11aにコイル導体12と内部導体14とともに形成するのではなく、第2の絶縁層11bに形成された、引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとが積層時に切欠き15の円内に入るように、切欠き15のみが第3の絶縁層11cに形成される。切欠き15はヴィア電極16が設けられた部分の第2の絶縁層11bには形成できないからである。
そして、切欠き15には、電圧/電流非直線特性を有する電圧依存性材料が充填される。これにより、インダクタ部17に生じた静電気が所定電圧を超える場合に、静電気を、内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方に放電させて内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方を介してグランドに逃がして、安定した静電気抑制機能を得ることができる。さらに、この電圧依存性材料としては、酸化亜鉛を主成分とするセラミック材料等のバリスタ材料が用いられる。これにより、所定電圧を超える静電気が印加されたときは、その静電気をより効率的に抑制することができ、かつ静電気が所定電圧以下の場合には、引出導体13と内部導体14、14との間の絶縁性を確保することができる。
なお、切欠き15は、窪みや凹み等の形状でもよいが、加工のし易さを考慮すると、第3の絶縁層11cを貫通するように形成されるほうがよい。
図5は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品における第2の絶縁層11bの上面に形成された引出導体13と、内部導体14と、第3の絶縁層に形成された切欠き15との位置関係を示す平面図である。図5に示すように、静電気対策部18を構成する引出導体13の一端部13aと2つの内部導体14、14の一端部14a、14aとは、互いに近接して、第3の絶縁層11cに形成された切欠き15の円内に入っている。
図6は、本発明の実施の形態2に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。まず、図4に示す第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cと、ダミー絶縁層19とをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図6に示す本体部50が形成される。本体部50の長手方向で対向する一端面と他端面には、それぞれ、図4に示すコイル導体12の他端部12bに電気的に接続された第1の外部電極51aと、図4に示す引出導体13の他端部13bに電気的に接続された第2の外部電極51bとが形成されている。また、本体部の一側面と他側面には、それぞれ、図4に示す2つの内部導体14、14の他端部14b、14bにそれぞれ電気的に接続された第3の外部電極52a、52bが形成されている。
このようにして完成した複合電子部品は、第1の外部電極51aを入力側の信号ライン53に半田等で接着し、第2の外部電極51bを出力側の信号ライン54に半田等で接着し、2つの第3の外部電極52a、52bをそれぞれグランドライン55a、55bに半田等で接着して、配線基板56上に実装される。
本実施の形態2では、本体部50の一側面と他側面に、2つのグランドライン55aと55bにそれぞれ電気的に接続される2つの第3の外部電極52aと52bを有するので、実施の形態1における本体部の一側面にしか第3の外部電極22が形成されていない構成に比べて、複合電子部品を実装する際の方向性を考慮する必要がない。すなわち、複合電子部品を配線基板56に実装する際に信号ライン53、54に対して0度でも180度でもよい。
入力側の信号ライン53からノイズが重畳された信号が第1の外部電極51aに入ると、本体部50内に構成されたインダクタ部17(図4)によりノイズが低減されて、第2の外部電極51bから出力側の信号ライン54に出力される。また、入力側の信号ライン53に所定電圧を超える静電気電圧が印加されると、本体部50内に構成された静電気対策部18(図4)により、静電気は、インダクタ部17を構成する引出導体13の一端部13aから2つの内部導体14、14の一端部14a、14aのいずれか、または両方へ放電され、2つの内部導体14、14の他端部14b、14bのいずれか、または両方、および2つの第3の外部電極52a、52bのいずれか、または両方を介して2つのグランドライン55a、55bのいずれか、または両方へと逃がされ、出力側の信号ライン54に接続された素子等が保護される。
以上のように、本実施の形態2によれば、インダクタ部17に生じた静電気を引出導体13の一端部13aから少なくとも1つの内部導体14の一端部14aへ放電させて少なくとも1つの内部導体14の他端部14bを介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部18を第2の絶縁層11bの一面に形成することができるので、静電気対策部18を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品の分解斜視図である。なお、図7において、実施の形態2の説明で参照した図4に示す要素と同様の構成を有する要素については、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図7において、本実施の形態3の複合電子部品は、複数の絶縁層として7つの絶縁層、すなわち第1のダミー絶縁層191と、その上層の第1の絶縁層111aと、その上層の第2の絶縁層111bと、その上層の第3の絶縁層111cと、その上層の第4の絶縁層111dと、その上層の第5の絶縁層111eと、第2のダミー層192とから成る。第1のダミー絶縁層191、第1の絶縁層111a、第2の絶縁層111b、第3の絶縁層111c、第4の絶縁層111d、第5の絶縁層111e、および第2のダミー絶縁層192は、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の絶縁性を有する材料を用いてシート状に加工されている。
第1の絶縁層111aの上面には、L字形状の第1の引出導体131と先細り形状の一端部141a、141aを有する2つの第1の内部導体141、141とが、2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aを第1の引出導体131の一端部131aを間に挟んで互いに対向させ且つその一端部131aに近接させて形成されている。また、第1の絶縁層111aには、横断面が円形状の第1の切欠き151が形成され、第1の切欠き151は、第1の引出導体131の一端部131aと2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aとが第1の切欠き151の円内に入るよう位置決めされている。
第1の引出導体131と2つの第1の内部導体141、141とは、第1の切欠き151に焼成消失材を充填した後、まず銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして上記形状の導体を形成し、次に、それらの導体を第1の絶縁層111aの上面に転写することで形成される。また、7つの絶縁層191、111a、111b、111c、111d、111e、および192を積層した後の焼成工程で、第1の切欠き151に充填された焼成消失材が焼き飛ばされて、図7に示すような第1の切欠き151となる。なお、第1の切欠き151に充填される焼成消失材は、例えば樹脂ペーストにアクリルビーズを含有させた材料である。
第2の絶縁層111bには、下層の第1の絶縁層111aに形成された第1の引出導体131の一端部131aに対向する位置に第1のヴィア電極161が形成されており、第1のヴィア電極161上には、第1のヴィア電極161と電気的に接続される一端部121aを有する渦巻状の第1のコイル導体121が形成されている。第2の絶縁層111bが第1の絶縁層111a上に積層されると、第1のコイル導体121の一端部121aと第1の引出導体131の一端部13aとが第1のヴィア電極161を介して電気的に接続される。
ヴィア電極161は、レーザ、パンチングなどで第2の絶縁層111bにヴィアホールをあけた後、銀などの導電材料を埋め込むことで形成される。また、第1のコイル導体121は、まず、銀などの導電材料をベース基板(図示しない)にメッキして渦巻状の導体を形成し、次に、その導体を第2の絶縁層111bの上面に転写することで形成される。
ここで、第1のコイル導体121と第1の引出導体131とから第1のインダクタ部171が構成され、第1のインダクタ部171は、第1のコイル導体121の他端部121bと第1の引出導体131の他端部131bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減する第1のノイズフィルタとしての機能を有する。また、第1の引出導体131の一端部131aと2つの第1の内部導体141、141とから第1の静電気対策部181が構成され、第1の静電気対策部181は、第1のインダクタ部171に生じた静電気を第1の引出導体131の一端部131aから2つの第1の内部導体141、141の一端部141a、141aのいずれか、または両方へ放電させて、2つの第1の内部導体141、141の他端部141b、141bのいずれか、または両方を介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
第3の絶縁層111cの上面には、渦巻状の第2のコイル導体122が形成されている。第2のコイル導体122の材質および形成方法は、上記第1のコイル導体121と同じである。
第4の絶縁層111dには、下層の第3の絶縁層111cに形成された第2のコイル導体122の一端部122aに対向する位置に第2のヴィア電極162が形成されており、第2のヴィア電極162上には、第2のヴィア電極162と電気的に接続される一端部132aを有するL字形状の第2の引出導体132が形成されている。第4の絶縁層111dが第3の絶縁層111c上に積層されると、第2のコイル導体122の一端部122aと第2の引出導体132の一端部132aとが第2のヴィア電極162を介して電気的に接続される。
また、第4の絶縁層114dの上面には、先細り形状の一端部142a、142aを有する2つの第2の内部導体142、142が、それらの一端部142a、142aを第2の引出導体132の一端部132aを間に挟んで且つその一端部132aに近接させて形成されている。
第2の引出導体132および2つの第2の内部導体142、142の材質および形成方法は、それぞれ、上記第1の引出導体131および2つの第1の内部導体141、141の材質および形成方法と同じである。
ここで、第2のコイル導体122と第2の引出導体132とから第2のインダクタ部172が構成され、第2のインダクタ部172は、第2のコイル導体122の他端部122bと第2の引出導体132の他端部132bとの間を通る信号に重畳されるノイズを低減する第2のノイズフィルタとしての機能を有する。また、第2の引出導体132の一端部132aと2つの第2の内部導体142、142とから第2の静電気対策部182が構成され、第2の静電気対策部182は、第2のインダクタ部172に生じた静電気を第2の引出導体132の一端部132aから2つの第2の内部導体142、142の一端部142a、142aのいずれか、または両方へ放電させて、2つの第2の内部導体142、142の他端部142b、142bのいずれか、または両方を介して、グランドへと逃がす静電気抑圧機能を有する。
第5の絶縁層111eには、横断面が円形状の第2の切欠き152が、第4の絶縁層111dに形成された第2の引出導体132の一端部132aと2つの第2の内部導体142、142の一端部142a、142aとが積層時に第2の切欠き152の円内に入るように、形成されている。
図8は、本発明の実施の形態3に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の上面図である。まず、図7に示す第1のダミー絶縁層191と、第1の絶縁層11aと、第2の絶縁層11bと、第3の絶縁層11cと、第4の絶縁層111dと、第5の絶縁層111eと、第2のダミー絶縁層192とをこの順で積層した後、この積層体を所定温度で、所定時間焼成することで、図8に示す本体部80が形成される。
本体部80の長手方向の一方側面には、3つの外部電極81a、82a、83aが形成され、外部電極81aは、図7に示す第2の引出導体132の他端部132bに電気的に接続され、外部電極82aは、第1の内部導体141の他端部141b及び第2の内部導体142の他端部142bに電気的に接続され、外部電極83aは、第1の引出導体131の他端部131bに電気的に接続されている。
また、本体部80の長手方向の他方側面には、3つの外部電極81b、82b、83bが形成され、外部電極81bは、図7に示す第2のコイル導体122の他端部122bに電気的に接続され、外部電極82bは、第2の内部導体142の他端部142b及び第1の内部導体141の他端部141bに電気的に接続され、外部電極83bは、第1のコイル導体121の他端部121bに電気的に接続されている。
このように、第2の引出導体132の他端部132b、第1の内部導体141の他端部141b、第2の内部導体142の他端部142b及び第1の引出導体131の他端部131bと、第2のコイル導体122の他端部122b、第2の内部導体142の他端部142b、第1の内部導体141の他端部141b及び第1のコイル導体121の他端部121bとを複合電子部品の本体部80の2つの対向する面に引き出し、かつ前記対向する各面にそれぞれ引き出される端部は同数とし、さらに、第1のコイル導体121の他端部121b及び第2のコイル導体122の他端部122bが引き出された面と異なる面に、第1のコイル導体121及び第2のコイル導体122と接続された第1の引出導体131の他端部131b及び第2の引出導体132の他端部132bを引き出すようにすれば、配線基板89上の複数の平行する信号ライン86a、87a、88a、86b、87b、88bに容易に複合電子部品を用いることができる。
なお、外部電極81a、82a、83a及び外部電極81b、82b、83bの形成位置及び数は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば、外部電極81a、82a、83a及び外部電極81b、82b、83bを短手方向の対向する2つの側面に形成したり、第1の引出導体131の他端部131b及び第2の引出導体132の他端部132bを同一外部電極に接続してもよい。
以上のように、本実施の形態3の複合電子部品は、第1のインダクタ部171と第1の静電気対策部181から成る部分と、第2のインダクタ部172と第2の静電気対策部182から成る部分とを有している。
そこで、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cを磁性材料で構成することにより、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122とを磁気結合させることができ、第1のインダクタ部171と第2のインダクタ部172とから成るコモンモードノイズフィルタや積層トランスを構成することができる。
または、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cの透磁率を他の絶縁層111a、111b、111d、111eの透磁率よりも小さくすることにより、第1のコイル導体121、第2のコイル導体122で発生した磁束が漏洩するのを防止できるため、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122との間の磁気的結合を強くすることができる。
また、第1のインダクタ部を構成する第1のコイル導体121と第2のインダクタ部を構成する第2のコイル導体122との間に挟まれる第3の絶縁層111cの誘電率を他の絶縁層111a、111b、111d、111eの誘電率よりも小さくすることにより、第1のコイル導体121と第2のコイル導体122との間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることができ、より高周波帯域のノイズを除去するノイズフィルタを構成することができる。
なお、上記各実施の形態において、コイル導体、引出導体および内部導体を、メッキで形成するのではなく、印刷や蒸着等の他の方法で形成してもよい。
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
本発明に係る複合電子部品は、複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の少なくとも一つに設けられたコイル導体と、前記コイル導体とは絶縁層を挟んで部分的に対向するよう配置され、一端部が前記コイル導体の一端部に電気的に接続されて、前記コイル導体とともに、外部からの信号が通るインダクタ部を構成する引出導体と、前記コイル導体または前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に形成され、前記インダクタ部に生じた静電気が放電される一端部および放電された静電気をグランドへと逃がす他端部を有する内部導体とを備え、前記コイル導体の一部または前記引出導体の一端部と前記内部導体とから静電気対策部が構成される。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気をコイル導体の一部または引出導体の一端部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、前記コイル導体が設けられた絶縁層の一面に、一端部を前記コイル導体の一部に近接させて形成されることが好ましい。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気をコイル導体の一部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、前記引出導体が設けられた絶縁層の一面に、一端部を前記引出導体の一端部と近接させて形成されることが好ましい。
この構成によれば、インダクタ部に生じた静電気を引出導体の一端部から内部導体の一端部へ放電させて内部導体の他端部を介してグランドへと逃がすことができる静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することができるので、静電気対策部を有する薄形の複合電子部品を実現することが可能となる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体は、複数形成されることが好ましい。
この構成によれば、複数の内部導体の他端部から両方向に静電気を逃がすことができるため、実装方向の方向性を無くすことができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体の一端部は先細り形状を有することが好ましい。
この構成によれば、静電気電圧の印加時に内部導体の一端部における電流密度を大きくできるため、コイル導体の一部または引出導体の一端部から内部導体の一端部への放電が容易になる。
本発明に係る複合電子部品において、前記複数の絶縁層のうち、前記コイル導体を上下で挟む絶縁層は、磁性材料または誘電材料で構成されることが好ましい。
この構成によれば、コイル導体を含むインダクタ部のインダクタンスを大きくし、またはコイル導体間の浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることによって、高周波帯域のノイズを除去することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体を上下で挟む絶縁層は、ガラス材料で構成されることが好ましい。
この構成によれば、静電気が放電されたときに、内部導体の一部が溶けたとしても、この溶けた導体材料は飛び散らず、静電気対策部に残存することはないので、絶縁抵抗を保持することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記内部導体が設けられた絶縁層および/または当該絶縁層の直上の絶縁層は切欠きを有し、該切欠きは、少なくとも前記内部導体の一端部が前記切欠き内に入るよう位置決めされることが好ましい。
この構成によれば、切欠きを設けたことにより、引出導体の一端部と内部導体の一端部との間に空間を形成できるため、切欠きを設けない場合に比べて静電気が放電され易くなる。
本発明に係る複合電子部品において、前記切欠きは、前記絶縁層に貫通孔を設けることによって形成されることが好ましい。
この構成によれば、切欠きを容易に加工することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記切欠きは、電圧依存性材料で充填されることが好ましい。
この構成によれば、切欠きに電圧依存性材料が充填されているので、インダクタ部に生じた静電気が所定電圧を超える場合に、静電気を内部導体の一端部に放電させて内部導体の他端部を介してグランドに逃がして、安定した静電気抑制機能を得ることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記電圧依存性材料はバリスタ材料であることが好ましい。
この構成によれば、電圧依存性材料としてバリスタ材料が用いられているので、所定電圧を超える静電気が印加されたときは、その静電気をより効率的に抑制することができ、かつ静電気が所定電圧以下の場合には、インダクタ部と内部導体との間の絶縁性を確保することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記コイル導体は、前記複数の絶縁層のうち少なくとも1つの絶縁層を挟んで設けられた2つのコイル導体から成ることが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体を磁気結合させることにより、コモンモードノイズフィルタや積層トランスを含む複合電子部品を実現することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記引出導体は、前記2つのコイル導体より下方に形成された第1の引出導体と、前記2つのコイル導体より上方に形成された第2の引出導体とから成ることが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体に電気的に接続される引出導体および内部導体をバランスよく形成できるため、安定した特性を得ることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記2つのコイル導体間の絶縁層の誘電率は、他の絶縁層の誘電率よりも小さいことが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体間に形成される浮遊容量のキャパシタンスを小さくすることで、より高周波帯域のノイズを除去することができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記2つのコイル導体間の絶縁層の透磁率は、他の絶縁層の透磁率よりも小さいことが好ましい。
この構成によれば、2つのコイル導体で発生した磁束が漏洩するのを防止することができるため、2つのコイル導体間の磁気的結合を強くすることができる。
本発明に係る複合電子部品において、前記コイル導体の他端部、前記引出導体の他端部、および前記内部導体の他端部を前記複合電子部品の2つの対向する面に引き出し、かつ前記対向する各面にそれぞれ引き出される端部は同数とし、さらに前記コイル導体の他端部が引き出された面とこのコイル導体と接続された引出導体の他端部は異なる面に引き出すようにすることが好ましい。
この構成によれば、複数の平行する信号ラインに容易に複合電子部品を用いることができる。
本発明にかかる複合電子部品は、信号ラインのノイズを低減するインダクタ部とインダクタ部に生じた静電気をグランドに逃がす静電気対策部とを備え、静電気対策部をインダクタ部が形成された絶縁層の一面に形成することで、容易に薄形化することができるという利点を有し、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器等のノイズフィルタまたは静電気対策部品等として有用である。
本発明の実施の形態1に係る複合電子部品の分解斜視図である。
本発明の実施の形態1に係る複合電子部品における第1の絶縁層の上面に形成されたコイル導体と内部導体と切欠きとの位置関係を示す平面図である。
本発明の実施の形態1に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。
本発明の実施の形態2に係る複合電子部品の分解斜視図である。
本発明の実施の形態2に係る複合電子部品における第2の絶縁層の上面に形成された引出導体と、内部導体と、第3の絶縁層に形成された切欠きとの位置関係を示す平面図である。
本発明の実施の形態2に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の外観斜視図である。
本発明の実施の形態3に係る複合電子部品の分解斜視図である。
本発明の実施の形態3に係る複合電子部品を配線基板に実装した場合の上面図である。
従来の複合電子部品の分解斜視図である。