以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1〜図5を参照して、本実施形態に係る積層コモンモードフィルタCFの構成を説明する。図1は、本実施形態に係る積層コモンモードフィルタを示す斜視図である。図2は、素体の構成を示す分解斜視図である。図3は、素体の、グラウンド用端子電極を含む断面構成を説明するための図である。図4は、素体の、第一及び第三ギャップ部を含む断面構成を説明するための図である。図5は、素体の、第二及び第四ギャップ部を含む断面構成を説明するための図である。
積層コモンモードフィルタCFは、図1〜図5に示されるように、素体1と、素体1の外表面に配置される第一端子電極11、第二端子電極12、第三端子電極13、及び第四端子電極14と、一対のグラウンド用端子電極15,16と、を備えている。積層コモンモードフィルタCFは、第一端子電極11、第二端子電極12、第三端子電極13、及び第四端子電極14がそれぞれ信号ラインに接続されると共に、グラウンド用端子電極15,16がグラウンドに接続されるように、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)に実装される。
素体1は、直方体形状を呈している。素体1は、その外表面として、互いに対向する長方形状の第一及び第二主面1a,1bと、互いに対向する第一及び第二側面1c,1dと、互いに対向する第三及び第四側面1e,1fと、を有している。素体1の長手方向は、第三側面1eと第四側面1fとが対向している方向である。素体1の幅方向は、第一側面1cと第二側面1dとが対向している方向である。素体1の高さ方向は、第一主面1aと第二主面1bとが対向している方向である。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
第一及び第二側面1c,1dは、第一主面1aと第二主面1bとを連結するように素体1の高さ方向に延びている。第一及び第二側面1c,1dは、素体1の高さ方向(第一及び第二主面1a,1bの長辺方向)にも延びている。第三及び第四側面1e,1fは、第一主面1aと第二主面1bとを連結するように素体1の高さ方向に延びている。第三及び第四側面1e,1fは、素体1の幅方向(第一及び第二主面1a,1bの短辺方向)にも延びている。
素体1は、三つの非磁性体部3A,3B,3Cと、素体1の高さ方向で各非磁性体部3A,3B,3Cを挟むように配置された四つの磁性体部5と、を有している。すなわち、三つの非磁性体部3A,3B,3Cと四つの磁性体部5とは、素体1の高さ方向で、磁性体部5、非磁性体部3B、磁性体部5、非磁性体部3A、磁性体部5、非磁性体部3C、磁性体部5の順に配置されている。素体1は、積層されている複数の絶縁体層により構成されている。
各非磁性体部3A,3B,3Cでは、絶縁体層として、複数の非磁性体層4が積層されている。すなわち、各非磁性体部3A,3B,3Cは、積層された複数の非磁性体層4により構成されている。各磁性体部5では、絶縁体層として、複数の磁性体層6が積層されている。磁性体部5は、積層された複数の磁性体層6により構成されている。複数の絶縁体層は、それぞれ複数の非磁性体層4及び磁性体層6を含んでいる。図2では、構造の明確化のため、複数の非磁性体層4のうちいくつかの非磁性体層4の図示を省略し、複数の磁性体層6のうちいくつかの磁性体層6の図示を省略している。
各非磁性体層4は、たとえば非磁性材料(Cu−Zn系フェライト材料、誘電体材料、又はガラスセラミック材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。各磁性体層6は、たとえば磁性材料(Ni−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、又はNi−Cu系フェライト材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
実際の素体1では、各非磁性体層4及び各磁性体層6は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体1の高さ方向、すなわち第一主面1aと第二主面1bとが対抗している方向は、複数の絶縁体層、すなわち、それぞれ複数の非磁性体層4及び磁性体層6が積層されている方向(以下、単に「積層方向」と称する。)と一致する。
第一端子電極11及び第三端子電極13は、素体1の第一側面1c側に配置されている。第一端子電極11及び第三端子電極13は、第一側面1cの一部を素体1の高さ方向に沿って覆うように形成されていると共に、第一主面1aの一部と第二主面1bの一部とに形成されている。第一端子電極11は、第三側面1e側に位置し、第三端子電極13は、第四側面1f側に位置している。
第二端子電極12及び第四端子電極14は、素体1の第二側面1d側に配置されている。第二端子電極12及び第四端子電極14は、第二側面1dの一部を素体1の高さ方向に沿って覆うように形成されていると共に、第一主面1aの一部と第二主面1bの一部とに形成されている。第二端子電極12は、第三側面1e側に位置し、第四端子電極14は、第四側面1f側に位置している。
グラウンド用端子電極15は、素体1の第三側面1e側に配置されている。グラウンド用端子電極15は、第三側面1eの一部を素体1の高さ方向に沿って覆うように形成されていると共に、第一主面1aの一部と第二主面1bの一部とに形成されている。グラウンド用端子電極16は、素体1の第四側面1f側に配置されている。グラウンド用端子電極16は、第四側面1fの一部を素体1の高さ方向に沿って覆うように形成されていると共に、第一主面1aの一部と第二主面1bの一部とに形成されている。
各端子電極11〜16は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各端子電極11〜16は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各端子電極11〜16の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。めっき層は、Cuめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層からなる層構造、又は、Niめっき層及びSnめっき層からなる層構造などを有する。
積層コモンモードフィルタCFは、図2〜図5に示されるように、第一コイル導体21、第二コイル導体22、第三コイル導体23、第四コイル導体24、第一接続導体31、第二接続導体32、第三接続導体33、第四接続導体34、及び複数の導体層25,26を、非磁性体部3Aに備えている。各導体21〜24,31〜34及び各導体層25,26は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各導体21〜24,31〜34及び各導体層25,26は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
第一コイル導体21は、図6の(a)にも示されるように、渦巻き状であり、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第一コイル導体21の一端部(外側端部)21aは、第一コイル導体21と同じ層に位置する第一接続導体31に接続されている。第一接続導体31は、端部が第一側面1cに露出している。第一接続導体31は、第一側面1cに露出している端部で第一端子電極11に接続されている。第一コイル導体21の他端部(内側端部)21bは、第一コイル導体21と同じ層に位置するパッド導体41に接続されている。本実施形態では、第一コイル導体21、第一接続導体31、及びパッド導体41は、一体的に形成されている。
第二コイル導体22は、図6の(b)にも示されるように、渦巻き状であり、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第二コイル導体22の一端部(外側端部)22aは、第二コイル導体22と同じ層に位置する第二接続導体32に接続されている。第二接続導体32は、端部が第二側面1dに露出している。第二接続導体32は、第二側面1dに露出している端部で第二端子電極12に接続されている。第二コイル導体22の他端部(内側端部)22bは、第二コイル導体22と同じ層に位置するパッド導体42に接続されている。本実施形態では、第二コイル導体22、第二接続導体32、及びパッド導体42は、一体的に形成されている。
第三コイル導体23は、図7の(a)にも示されるように、渦巻き状であり、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第三コイル導体23の一端部(外側端部)23aは、第三コイル導体23と同じ層に位置する第三接続導体33に接続されている。第三接続導体33は、端部が第一側面1cに露出している。第三接続導体33は、第一側面1cに露出している端部で第三端子電極13に接続されている。第三コイル導体23の他端部(内側端部)23bは、第三コイル導体23と同じ層に位置するパッド導体43に接続されている。本実施形態では、第三コイル導体23、第三接続導体33、及びパッド導体43は、一体的に形成されている。
第四コイル導体24は、図7の(b)にも示されるように、渦巻き状であり、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第四コイル導体24の一端部(外側端部)24aは、第四コイル導体24と同じ層に位置する第四接続導体34に接続されている。第四接続導体34は、端部が第二側面1dに露出している。第四接続導体34は、第二側面1dに露出している端部で第四端子電極14に接続されている。第四コイル導体24の他端部(内側端部)24bは、第四コイル導体24と同じ層に位置するパッド導体44に接続されている。本実施形態では、第四コイル導体24、第四接続導体34、及びパッド導体44は、一体的に形成されている。
第一コイル導体21と第三コイル導体23とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合い、第二コイル導体22と第四コイル導体24とが非磁性体層4を介して積層方向で互いに隣り合っている。積層方向で第三コイル導体23が第一コイル導体21と第二コイル導体22との間に位置している。すなわち、第一〜第四コイル導体21〜24は、積層方向において、第一コイル導体21、第三コイル導体23、第二コイル導体22、第四コイル導体24の順に配置されている。第一〜第四コイル導体21〜24は、積層方向から見て、同じ方向に巻き回されていると共に互いに重なり合うように位置している。
複数の導体層25,26は、積層方向で第三コイル導体23と第二コイル導体22との間に位置するように配置されている。本実施形態では、導体層25と導体層26とは、同じ層に位置している。すなわち、導体層25と導体層26とは、積層方向で隣り合う一対の非磁性体層4の間に位置している。導体層25と導体層26とは、積層方向から見て互いに離間して配置されている。本実施形態では、導体層25と導体層26とは、積層方向から見て、素体1の長手方向に離間している。
導体層25は、図8に示されるように、第一導体部分25aと第二導体部分25bとを有している。第一導体部分25aは、積層方向から見たときに第三コイル導体23及び第二コイル導体22の一部と重なるように位置している。第二導体部分25bは、第一導体部分25aに接続されている一端と、第三側面1eに露出している他端とを含んでいる。第二導体部分25bの他端は、グラウンド用端子電極15に接続されている。すなわち、導体層25は、グラウンド用端子電極15に接続されている。第一導体部分25aと第二導体部分25bとは、一体的に形成されている。
導体層26は、第一導体部分26aと第二導体部分26bとを有している。第一導体部分26aは、積層方向から見たときに第三コイル導体23及び第二コイル導体22の一部と重なるように位置している。第二導体部分26bは、第一導体部分26aに接続されている一端と、第四側面1fに露出している他端とを含んでいる。第二導体部分26bの他端は、グラウンド用端子電極16に接続されている。すなわち、導体層26は、グラウンド用端子電極16に接続されている。第一導体部分26aと第二導体部分26bとは、一体的に形成されている。
各導体層25,26の厚みTH1は、第一コイル導体21、第二コイル導体22、第三コイル導体23、及び第四コイル導体24の各厚みTH2よりも小さい。第一コイル導体21、第二コイル導体22、第三コイル導体23、及び第四コイル導体24の各厚みTH2は、たとえば、9〜11μmである。各導体層25,26の厚みTH1は、4〜6μmである。
パッド導体41とパッド導体42とは、積層方向から見て、互いに重なり合うように位置している。パッド導体41とパッド導体42との間には、第三コイル導体23と同じ層に位置するパッド導体45と、導体層25,26と同じ層に位置するパッド導体47とが配置されている。パッド導体45とパッド導体47とは、積層方向から見て、第一及びパッド導体41,42と互いに重なり合うように位置している。すなわち、パッド導体41とパッド導体45とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合い、パッド導体45とパッド導体47とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合い、パッド導体47とパッド導体42とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。
パッド導体41とパッド導体45とパッド導体47とパッド導体42とは、それぞれスルーホール導体51を通して接続されている。スルーホール導体51は、パッド導体41とパッド導体45との間に位置する非磁性体層4と、パッド導体45とパッド導体47との間に位置する非磁性体層4と、パッド導体47とパッド導体42との間に位置する非磁性体層4と、を貫通している。
パッド導体43とパッド導体44とは、積層方向から見て、互いに重なり合うように位置している。パッド導体43とパッド導体44との間には、導体層25,26と同じ層に位置するパッド導体48と、第二コイル導体22と同じ層に位置するパッド導体46とが配置されている。パッド導体48とパッド導体46とは、積層方向から見て、第三及びパッド導体43,44と互いに重なり合うように位置している。すなわち、パッド導体43とパッド導体48とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合い、パッド導体48とパッド導体46とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合い、パッド導体46とパッド導体44とが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。
パッド導体43とパッド導体48とパッド導体46とパッド導体44とは、それぞれスルーホール導体52を通して接続されている。スルーホール導体52は、パッド導体43とパッド導体48との間に位置する非磁性体層4と、パッド導体48とパッド導体46との間に位置する非磁性体層4と、パッド導体46とパッド導体44との間に位置する非磁性体層4と、を貫通している。
第一コイル導体21と第二コイル導体22とは、パッド導体41、パッド導体45、パッド導体47、パッド導体42、及びスルーホール導体51を通して、電気的に接続されており、第一コイルC1を構成している。第三コイル導体23と第四コイル導体24とは、パッド導体43、パッド導体48、パッド導体46、パッド導体44、及びスルーホール導体52を通して、電気的に接続されており、第二コイルC2を構成している。すなわち、積層コモンモードフィルタCFは、素体1内に、第一コイルC1と第二コイルC2を備える。第一コイルC1と第二コイルC2とは、第一コイル導体21と第三コイル導体23とが積層方向で互いに隣り合うと共に第二コイル導体22と第四コイル導体24とが積層方向で互いに隣り合い、かつ、積層方向で第三コイル導体23が第一コイル導体21と第二コイル導体22との間に位置するように、非磁性体部3Aに配置されている。
パッド導体45,46,47,48及びスルーホール導体51,52は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。パッド導体45,46,47,48及びスルーホール導体51,52は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。スルーホール導体51,52は、対応する非磁性体層4を構成することとなるセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
積層コモンモードフィルタCFは、図4、図5、及び図9にも示されるように、放電電極60,62,64,66,68、及び放電誘発部70〜73を備えている。一対の放電電極60,68と放電誘発部70とは、ESD吸収性能を有するESDサプレッサとして機能する。一対の放電電極62,68と放電誘発部71とは、ESD吸収性能を有するESDサプレッサとして機能する。一対の放電電極64,68と放電誘発部72とは、ESD吸収性能を有するESDサプレッサとして機能する。一対の放電電極66,68と放電誘発部73とは、ESD吸収性能を有するESDサプレッサとして機能する。各ESDサプレッサは、非磁性体部3Bに配置されている。
放電電極60は、素体1の長手方向における、第四側面1fよりも第三側面1eに近い位置で、かつ、素体1の幅方向における、第二側面1dよりも第一側面1cに近い位置に配置されている。放電電極60は、第一接続部60a及び第一対向部60bを有している。第一接続部60aと第一対向部60bとは、互いに異なる非磁性体層4に配置されている。
第一接続部60aは、素体1の幅方向に沿って延在している。第一接続部60aの一端60cは、素体1の第一側面1cに露出しており、第一端子電極11に接続されている。第一対向部60bは、素体1の長手方向に沿って延在している。第一対向部60bの一端60dは、スルーホール導体61を通して第一接続部60aの他端60eに電気的に接続されている。これにより、第一対向部60bは、スルーホール導体61及び第一接続部60aを通して、第一端子電極11に電気的に接続される。
放電電極62は、素体1の長手方向における、第三側面1eよりも第四側面1fに近い位置で、かつ、素体1の幅方向における、第二側面1dよりも第一側面1cに近い位置に配置されている。放電電極62は、第一接続部62a及び第一対向部62bを有している。第一接続部62aは、第一接続部60aが配置されている非磁性体層4に配置されている。第一対向部62bは、第一対向部60bが配置されている非磁性体層4に配置されている。すなわち、第一接続部62aと第一対向部62bとは、互いに異なる非磁性体層4に配置されている。
第一接続部62aは、素体1の幅方向に沿って延在している。第一接続部62aの一端62cは、素体1の第一側面1cに露出しており、第三端子電極13に接続されている。第一対向部62bは、素体1の長手方向に沿って延在している。第一対向部62bの一端62dは、スルーホール導体63を通して第一接続部62aの他端62eに電気的に接続されている。これにより、第一対向部62bは、スルーホール導体63及び第一接続部62aを通して、第三端子電極13に電気的に接続される。
放電電極64は、素体1の長手方向における、第四側面1fよりも第三側面1eに近い位置で、かつ、素体1の幅方向における、第一側面1cよりも第二側面1dに近い位置に配置されている。放電電極64は、第一接続部64a及び第一対向部64bを有している。第一接続部64aは、第一接続部60a,62aが配置されている非磁性体層4に配置されている。第一対向部64bは、第一対向部60b,62bが配置されている非磁性体層4に配置されている。すなわち、第一接続部64aと第一対向部64bとは、互いに異なる非磁性体層4に配置されている。
第一接続部64aは、素体1の幅方向に沿って延在している。第一接続部64aの一端64cは、素体1の第二側面1dに露出しており、第二端子電極12に接続されている。第一対向部64bは、素体1の長手方向に沿って延在している。第一対向部64bの一端64dは、スルーホール導体65を通して第一接続部64aの他端64eに電気的に接続されている。これにより、第一対向部64bは、スルーホール導体65及び第一接続部64aを通して、第二端子電極12に電気的に接続される。
放電電極66は、素体1の長手方向における、第三側面1eよりも第四側面1fに近い位置で、かつ、素体1の幅方向における、第一側面1cよりも第二側面1dに近い位置に配置されている。放電電極66は、第一接続部66a及び第一対向部66bを有している。第一接続部66aは、第一接続部60a,62a,64aが配置されている非磁性体層4に配置されている。第一対向部66bは、第一対向部60b,62b,64bが配置されている非磁性体層4に配置されている。すなわち、第一接続部66aと第一対向部66bとは、互いに異なる非磁性体層4に配置されている。
第一接続部66aは、素体1の幅方向に沿って延在している。第一接続部66aの一端66cは、素体1の第二側面1dに露出しており、第四端子電極14に接続されている。第一対向部66bは、素体1の長手方向に沿って延在している。第一対向部66bの一端66dは、スルーホール導体67を通して第一接続部66aの他端66eに電気的に接続されている。これにより、第一対向部66bは、スルーホール導体67及び第一接続部66aを通して、第四端子電極14に電気的に接続される。
放電電極68は、第二接続部68a、第二対向部68b、及び第二対向部68cを有している。第二接続部68aは、第一接続部60a,62a,64a,66aが配置されている非磁性体層4に配置されている。第二対向部68b,68cは、第一対向部60b,62b,64b,66bが配置されている非磁性体層4に配置されている。すなわち、第二接続部68aと第二対向部68b,68cとは、互いに異なる非磁性体層4に配置されている。
第二接続部68aは、素体1の幅方向における、略中央の位置に配置されている。第二接続部68aは、素体1の長手方向に延在している。第二接続部68aの一端68eは、素体1の第三側面1e側に露出しており、グラウンド用端子電極15に接続されている。第二接続部68aの他端68fは、素体1の第四側面1f側に露出しており、グラウンド用端子電極16に接続されている。
第二対向部68bと第二対向部68cとは、積層方向から見て、素体1の幅方向に離間している。第二対向部68b,68cは、素体1の長手方向に延在している。第二対向部68bと第二対向部68cとは、接続部68dを通して電気的に接続されている。接続部68dの一端は、第二対向部68bにおける素体1の長手方向での略中央に接続されている。接続部68dの他端は、第二対向部68cにおける素体1の長手方向での略中央に接続されている。第二対向部68b,68cと接続部68dとは、一体に形成されている。接続部68dは、素体1の幅方向に延在している。
接続部68dは、スルーホール導体69を通して第二接続部68aに電気的に接続される。これにより、第二対向部68b,68cは、接続部68d、スルーホール導体69、及び第二接続部68aを通して、グラウンド用端子電極15,16に電気的に接続される。
第二対向部68bは、第一対向部60b,62bと素体1の幅方向で対向配置されている。すなわち、第二対向部68bと第一対向部60b,62bとは、素体1の幅方向で離間している。第一対向部60b,62bと第二対向部68bとは、厚みを有している。このため、第一対向部60b,62bの側面と第二対向部68bの側面とが対向する。
第一対向部60bと第二対向部68bとの間に、第一ギャップ部GP1が形成されている(図4参照)。第一対向部62bと第二対向部68bとの間に、第二ギャップ部GP2が形成されている(図5参照)。第一端子電極11とグラウンド用端子電極15,16との間に所定以上の電圧が印加されると、第一ギャップ部GP1で放電が生じる。第三端子電極13とグラウンド用端子電極15,16との間に所定以上の電圧が印加されると、第二ギャップ部GP2で放電が生じる。各ギャップ部GP1,GP2の幅は、所望の放電特性が得られるように、所定の値に設定されている。
第二対向部68cは、第一対向部64b,66bと素体1の幅方向で対向配置されている。すなわち、第二対向部68cと第一対向部64b,66bとは、素体1の幅方向で離間している。第一対向部64b,66bと第二対向部68cとは、厚みを有している。このため、第一対向部64b,66bの側面と第二対向部68cの側面とが対向する。
第一対向部64bと第二対向部68cとの間に、第三ギャップ部GP3が形成されている(図4参照)。第一対向部66bと第二対向部68cとの間に、第四ギャップ部GP4が形成される(図5参照)。第二端子電極12とグラウンド用端子電極15,16との間に所定以上の電圧が印加されると、第三ギャップ部GP3で放電が生じる。第四端子電極14とグラウンド用端子電極15,16との間に所定以上の電圧が印加されると、第四ギャップ部GP4で放電が生じる。各ギャップ部GP3,GP4の幅は、所望の放電特性が得られるように、所定の値に設定されている。
放電電極60,62,64,66,68、及びスルーホール導体61,63,65,67,69は、導電材(たとえば、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又はWなど)を含んでいる。各放電電極60,62,64,66,68及び各スルーホール導体61,63,65,67,69は、導電性材料(たとえば、Ag粉末、Pd粉末、Au粉末、Pt粉末、Cu粉末、Ni粉末、Al粉末、Mo粉末、又はW粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。スルーホール導体61,63,65,67,69は、対応する非磁性体層4を構成することとなるセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
放電誘発部70は、第一対向部60bと第二対向部68bとを接続するように、第一対向部60bと第二対向部68bとに接している。放電誘発部70は、第一対向部60bと第二対向部68bとを接続するように形成され、第一ギャップ部GP1での放電を発生し易くする機能を有する。放電誘発部71は、第一対向部62bと第二対向部68bとを接続するように、第一対向部62bと第二対向部68bとに接している。放電誘発部71は、第一対向部62bと第二対向部68bとを接続するように形成され、第二ギャップ部GP2での放電を発生し易くする機能を有する。
放電誘発部72は、第一対向部64bと第二対向部68cとを接続するように、第一対向部64bと第二対向部68cとに接している。放電誘発部72は、第一対向部64bと第二対向部68cとを接続するように形成され、第三ギャップ部GP3での放電を発生し易くする機能を有する。放電誘発部73は、第一対向部66bと第二対向部68cとを接続するように、第一対向部66bと第二対向部68cとに接している。放電誘発部73は、第一対向部66bと第二対向部68cとを接続するように形成され、第四ギャップ部GP4での放電を発生し易くする機能を有する。
放電誘発部70〜73は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、Mn2O3、SrO、CaO、BaO、SnO2、K2О、Al2O3、ZrO2、及びB2O3からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を含んで構成される。放電誘発部70〜73は、上記群より選ばれる二種類以上の材料を含んで構成されてもよい。放電誘発部70〜73には、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又はAg/Pt合金などの金属粒子が含有されている。放電誘発部70〜73には、RuO2などの半導体粒子が含有されていてもよい。放電誘発部70〜73には、ガラス又は酸化錫(SnO又はSnO2)が含有されていてもよい。
素体1は、空洞部74〜77を有している(図4及び図5参照)。
空洞部74を画成する面は、第一対向部60b及び第二対向部68b、並びに、放電誘発部70(第一及び第二対向部60b,68bから露出する部分)の表面と、当該表面に対向する面と、を含んでいる。空洞部74は、第一及び第二対向部60b,68bと、放電誘発部70(第一及び第二対向部60b,68bから露出する部分)と、に接している。空洞部74は、放電時における第一対向部60b、第二対向部68b、非磁性体層4及び放電誘発部70の熱膨張を吸収する機能を有する。
空洞部75を画成する面は、第一対向部62b及び第二対向部68b、並びに、放電誘発部71(第一及び第二対向部62b,68bから露出する部分)の表面と、当該表面に対向する面と、を含んでいる。空洞部75は、第一及び第二対向部62b,68bと、放電誘発部71(第一及び第二対向部60b,68bから露出する部分)と、に接している。空洞部75は、放電時における第一対向部62b、第二対向部68b、非磁性体層4及び放電誘発部71の熱膨張を吸収する機能を有する。
空洞部76を画成する面は、第一対向部64b及び第二対向部68c、並びに、放電誘発部72(第一及び第二対向部64b,68cから露出する部分)の表面と、当該表面に対向する面と、を含んでいる。空洞部76は、第一及び第二対向部64b,68cと、放電誘発部72(第一及び第二対向部64b,68cから露出する部分)と、に接している。空洞部76は、放電時における第一対向部64b、第二対向部68c、非磁性体層4及び放電誘発部72の熱膨張を吸収する機能を有する。
空洞部77を画成する面は、第一対向部66b及び第二対向部68c、並びに、放電誘発部73(第一及び第二対向部66b,68cから露出する部分)の表面と、当該表面に対向する面と、を含んでいる。空洞部77は、第一及び第二対向部66b,68cと、放電誘発部73(第一及び第二対向部66b,68cから露出する部分)と、に接している。空洞部77は、放電時における第一対向部66b、第二対向部68c、非磁性体層4及び放電誘発部73の熱膨張を吸収する機能を有する。
非磁性体部3Cには、第一コイルC1と第二コイルC2とが配置されている非磁性体部3A及びESDサプレッサが配置されている非磁性体部3Bと異なり、導体などが配置されていない。非磁性体部3Cは、三つの非磁性体部3A,3B,3Cの関係において、非磁性体部3Aを挟んで非磁性体部3Bとは反対側に位置している。非磁性体部3Cは、焼成の際に素体1に発生する内部応力を緩和する。
以上のように、本実施形態では、導体層25,26が、グラウンド用端子電極15,16に接続されている。すなわち、導体層25,26は、グラウンド用端子電極15,16を通してグラウンドに接続される。
グラウンドに接続される導体層25,26が、積層方向で第三コイル導体23と第二コイル導体22との間に位置するように、配置されている。これにより、導体層25,26が配置されている箇所にて、第一コイルC1と第二コイルC2との磁気結合が切断されるため、当該磁気結合が部分的に弱められる。この結果、積層コモンモードフィルタCFは、導体層25,26を備えない積層コモンモードフィルタに比して、コモンモードノイズに対する減衰量の周波数特性における減衰ピークの深さが大きい。導体層25,26がグラウンド用端子電極15,16に接続されていない、すなわち導体層25,26がグラウンドに接続されない積層コモンモードフィルタでは、コモンモードノイズに対する減衰量の周波数特性における減衰ピークの深さが大きくなることはない。
導体層25,26は、第三コイル導体23及び第二コイル導体22の一部と重なるように配置されている。導体層25,26は、第三コイル導体23との間、及び、第二コイル導体22との間に、浮遊容量を形成する。浮遊容量は、積層コモンモードフィルタCFを通過する信号の波形を鈍らせるように作用し、浮遊容量が大きいほど、信号波形は大きく鈍る傾向にある。
導体層25,26は、積層方向から見たときに、第三コイル導体23の一部、及び、第二コイル導体22の一部と重なるように配置されているので、導体層25,26が第三及び第二コイル導体23,22の全体と重なるように配置されている積層コモンモードフィルタに比して、形成される浮遊容量が小さい。これにより、積層コモンモードフィルタCFでは、上記減衰ピークの深さを大きくしつつ、信号波形が鈍るのを抑制することができる。
第一コイルC1と第二コイルC2とを挟むように位置している一対の磁性体部5の積層方向の間隔が大きくなると、積層コモンモードフィルタCFに発生した磁束は、一方の磁性体部5から他方の磁性体部5に至り難くなる。このため、第一コイルC1と第二コイルC2との磁気結合が低下し、積層コモンモードフィルタCFのインダクタンスが低下するおそれがある。
積層コモンモードフィルタCFでは、各導体層25,26の厚みTH1が、各第一〜第四コイル導体21,22,23,24の厚みTH2よりも小さいので、厚みTH1が厚みTH2以上である積層コモンモードフィルタに比して、積層方向での一対の磁性体部5の間隔が小さい。これにより、積層コモンモードフィルタCFのインダクタンスが低下するのを抑制することができる。
積層コモンモードフィルタCFは、複数の導体層25,26を備えている。導体層25,26が配置されている箇所と、導体層25,26が配置されてない箇所とでは、第三コイル導体23と第二コイル導体22との層間厚みが異なるおそれがある。積層コモンモードフィルタCFが複数の導体層25,26を備えていることにより、導体層25,26が配置されている箇所が分散されるため、上記層間厚みが異なる箇所が生じ難くなる。
積層コモンモードフィルタCFでは、放電電極60,62,64,66(第一対向部60b,62b,64b,66b)と放電電極68(第二対向部68b)とが、互いに離間するように素体1内に配置されている。放電電極68が、グラウンド用端子電極15,16に接続されている。すなわち、放電電極68は、グラウンド用端子電極15,16を通してグラウンドに接続される。これにより、積層コモンモードフィルタCFは、ESD吸収機能を有する。静電気を逃がすグラウンドと、導体層25,26が接続されるグラウンドとの共通化が図られ、積層コモンモードフィルタCFの構成が複雑化するのを防ぐことができる。
ここで、本実施形態の積層コモンモードフィルタCFと、従来の積層コモンモードフィルタとの、コモンモードノイズに対する減衰量の周波数特性を比較する試験を行った。試験結果を図10に示す。図10では、積層コモンモードフィルタCFの周波数特性が実線で示され、従来の積層コモンモードフィルタの周波数特性が破線で示されている。積層コモンモードフィルタCFと従来の積層コモンモードフィルタとでは、導体層25,26の有無に関してのみ相違しており、導体層25,26以外の構成に関しては同じである。
図10に示された試験結果からわかるように、積層コモンモードフィルタCFは、従来の積層コモンモードフィルタに比して、コモンモードノイズに対する減衰量の周波数特性における減衰ピークの深さが大きい。
積層コモンモードフィルタCFでは、減衰ピークの位置が高周波数側にシフトしている。減衰ピークの位置が高周波数側にシフトする理由は、以下のように推測される。導体層25,26により第一コイルC1と第二コイルC2との磁気結合が部分的に弱められることにより、積層コモンモードフィルタCFが、回路構成上、第一コイル導体21と第三コイル導体23とにより構成されるコモンモードフィルタと、第二コイル導体22と第四コイル導体24とにより構成されるコモンモードフィルタとが直列接続されている構成となる。第一及び第三コイル導体21,23により構成されるコモンモードフィルタ、及び、第二及び第四コイル導体22,24により構成されるコモンモードフィルタは、第一〜第四コイル導体21〜24により構成されるコモンモードフィルタよりもインピーダンスが低く、減衰ピークの位置が高周波数側にシフトする。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
本実施形態では、積層コモンモードフィルタCFが複数の導体層25,26を備えているが、これに限られない。導体層の数は、「1」でもよい。たとえば、図11に示されるように、積層コモンモードフィルタCFは、一つの導体層25を備えていてもよい。
導体層25,26の形状も、図8に示された形状に限られない。たとえば、図12に示されるように、導体層25,26は、第二コイル導体22又は第三コイル導体23の形状に沿って湾曲している形状を呈していてもよい。この場合、第一導体部分25a,26aの形状は、U字状を呈する。
図13に示されるように、積層コモンモードフィルタCFは、一つの導体層27を備えていてもよい、導体層27は、第一導体部分27aと、一対の第二導体部分27b,27cとを有している。第一導体部分27aは、積層方向から見て環状を呈している。第一導体部分27aは、積層方向から見たときに、たとえば、第二コイル導体22及び第三コイル導体23の1ターン部分と重なるように位置している。
第二導体部分27bは、第一導体部分27aに接続されている一端と、第三側面1eに露出している他端とを含んでいる。第二導体部分27bの他端は、グラウンド用端子電極15に接続されている。第二導体部分27cは、第一導体部分27aに接続されている一端と、第四側面1fに露出している他端とを含んでいる。第二導体部分27cの他端は、グラウンド用端子電極16に接続されている。すなわち、導体層27は、グラウンド用端子電極15,16に接続されている。第一導体部分27aと第二導体部分27b,27cとは、一体的に形成されている。
積層コモンモードフィルタCFは、放電電極60,62,64,66,68、及び放電誘発部70〜73を備えていなくてもよい。すなわち、積層コモンモードフィルタCFは、ESD吸収性能を有していなくてもよい。