以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
図1〜図4を参照して、本実施形態に係る積層コモンモードフィルタCFの構成を説明する。図1は、本実施形態に係る積層コモンモードフィルタを示す斜視図である。図2及び図3は、図1の積層コモンモードフィルタを示す断面図である。図4は、非磁性体部の構成を示す分解斜視図である。本実施形態では、積層コイル部品として積層コモンモードフィルタCFを例に説明する。
積層コモンモードフィルタCFは、図1〜図4に示されるように、素体1と、素体1上に配置された複数の外部電極と、を備えている。複数の外部電極は、端子電極11、端子電極12、端子電極13、及び端子電極14から構成されている。積層コモンモードフィルタCFは、端子電極11〜14がそれぞれ信号ラインに接続されるように、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)にはんだ実装される。
素体1は、直方体形状を呈している。素体1は、その外表面として、互いに対向している主面1a及び主面1bと、互いに対向している側面1c及び側面1dと、互いに対向している側面1e及び側面1fと、を有している。積層コモンモードフィルタCFが電子機器にはんだ実装される際、たとえば主面1aが電子機器に対向する実装面とされる。
主面1aと主面1bとが対向している方向が第一方向D1であり、側面1cと側面1dとが対向している方向が第二方向D2であり、側面1eと側面1fとが対向している方向が第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は素体1の高さ方向であり、第二方向D2は素体1の長手方向であり、第三方向D3は素体1の幅方向である。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
側面1c及び側面1dは、主面1aと主面1bとを連結するように第一方向D1に延在している。側面1c及び側面1dは、主面1aと隣り合っていると共に、主面1bとも隣り合っている。側面1c及び側面1dは、第三方向D3(主面1a及び主面1bの短辺方向)にも延在している。
側面1e及び側面1fは、主面1aと主面1bとを連結するように第一方向D1に延在している。側面1c及び側面1dは、主面1aと隣り合っていると共に、主面1bとも隣り合っている。側面1e及び側面1fは、第二方向D2(主面1a及び主面1bの長辺方向)にも延在している。
素体1は、非磁性体部3と、第一方向D1で非磁性体部3を挟むように配置された一対の磁性体部5と、を有している。非磁性体部3は、積層された複数の非磁性体層4を含んでいる。すなわち、非磁性体部3は、複数の非磁性体層4が積層された積層構造を有している。ここでは、非磁性体部3は、5層の積層構造を有している。
一対の磁性体部5のそれぞれは、磁性体領域6、非磁性体領域7、磁性体領域8、及び非磁性体領域9を有している。一対の磁性体部5のそれぞれは、磁性体領域6、非磁性体領域7、磁性体領域8、及び非磁性体領域9が非磁性体部3上にこの順に積層されてなる。すなわち、非磁性体部3上に磁性体領域6が設けられ、磁性体領域6上に非磁性体領域7が設けられ、非磁性体領域7上に磁性体領域8が設けられ、磁性体領域8上に非磁性体領域9が設けられている。磁性体領域6は磁性体部5の最も内側に配置された領域である。非磁性体領域9は磁性体部5の最も外側に配置された領域である。非磁性体領域9は素体1の最も外側に配置された領域でもある。
非磁性体部3の積層方向の長さL3と非磁性体領域7の積層方向の長さL7との和は、磁性体領域6の積層方向の長さL6以下である(L3+L7≦L6)。長さL7と非磁性体領域9の積層方向の長さL9との和は、磁性体領域8の積層方向の長さL8以下である(L7+L9≦L8)。長さL7は、長さL9以下である。長さL3,L7,L9は、0.1μm以上である。
磁性体領域6,8は、積層された複数の磁性体層を含んでいる。すなわち、磁性体領域6,8は、複数の磁性体層が積層された積層構造を有している。磁性体領域6は、磁性体部5の最内層を構成する磁性体層を含んでいる。非磁性体領域7,9は、積層された複数の非磁性体層を含んでいる。すなわち、非磁性体領域7,9は、複数の非磁性体層が積層された積層構造を有している。非磁性体領域9は、磁性体部5の最外層を構成する磁性層であって、素体1の最外層を構成する磁性体層を含んでいる。非磁性体領域7及び非磁性体領域9に含まれる非磁性体層は、たとえば非磁性体層4と同じ材料から構成されてもよい。
非磁性体部3に含まれる各非磁性体層4と、非磁性体領域7及び非磁性体領域9に含まれる各非磁性体層とは、ガラス成分を含み、たとえば非磁性材料としてガラスセラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。すなわち、非磁性体部3、非磁性体領域7及び非磁性体領域9は、それぞれガラス成分を含んでいる。磁性体領域6及び磁性体領域8に含まれる各磁性体層は、たとえば磁性材料としてNi−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、又はNi−Cu系フェライト材料などを含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
実際の素体1では、非磁性体部3に含まれる各非磁性体層4は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。非磁性体領域7に含まれる各非磁性体層は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。非磁性体領域9に含まれる各非磁性体層は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。磁性体領域6に含まれる各磁性体層は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。磁性体領域8に含まれる各磁性体層は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。これらの各層が積層されている方向(以下、単に「積層方向」と称する。)は、第一方向D1、すなわち主面1aと主面1bとが対向している方向と一致する。
積層コモンモードフィルタCFは、非磁性体部3内に配置された複数の内部導体を備えている。複数の内部導体は、接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24から構成されている。接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
接続導体21は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。接続導体21の一端(外側端)21aは、側面1cに露出している。接続導体21の他端(内側端)21bは、パッド状に形成されている。
コイル導体22は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。コイル導体22は、渦巻き状のコイルC1を構成している。コイル導体22の一端(外側端)22aは、側面1dに露出している。コイル導体22の他端(内側端)22bは、パッド状に形成されている。コイル導体22は、接続導体21と積層方向で非磁性体層4を挟んで互いに隣り合っている。
コイル導体23は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。コイル導体23は、渦巻き状のコイルC2を構成している。コイル導体23の一端(外側端)23aは、側面1dに露出している。コイル導体23の他端(内側端)23bは、パッド状に形成されている。コイル導体23は、コイル導体22と積層方向で非磁性体層4を挟んで互いに隣り合っている。
接続導体24は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。接続導体24の一端(外側端)24aは、側面1cに露出している。接続導体24の他端(内側端)24bは、パッド状に形成されている。接続導体24は、接続導体21と積層方向で非磁性体層4を挟んで互いに隣り合っている。
接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24は、積層方向において、非磁性体部3側からこの順に配置されている。コイル導体22及びコイル導体23は、積層方向から見て、同じ方向に巻き回されていると共に互いに重なり合うように位置している。
接続導体21の他端21bとコイル導体23の他端23bとは、積層方向から見て、互いに重なり合うように位置している。他端21bと他端23bとは、スルーホール導体51を通して接続されている。スルーホール導体51は、他端21bと他端23bとの間に位置する非磁性体層4を貫通している。接続導体21とコイル導体23とは、スルーホール導体51を通して、電気的に接続されている。
コイル導体22の他端22bと接続導体24の他端24bとは、積層方向から見て、互いに重なり合うように位置している。他端22bと他端24bとは、スルーホール導体52を通して接続されている。スルーホール導体52は、他端22bと他端24bとの間に位置する非磁性体層4を貫通している。コイル導体22と接続導体24とは、スルーホール導体52を通して、電気的に接続されている。
積層コモンモードフィルタCFは、素体1(非磁性体部3)内に、コイル導体22により構成されるコイルC1と、コイル導体23により構成されるコイルC2と、を備える。コイルC1とコイルC2とは、積層方向で互いに隣り合うように、非磁性体部3内に配置されている。コイルC1とコイルC2とは、互いに磁気結合する。
スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、対応する非磁性体層4を構成することとなるセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
端子電極11及び端子電極13は、素体1の側面1c側に配置されている。すなわち、端子電極11及び端子電極13は、第二方向D2での素体1の一方の端部に配置されている。端子電極11及び端子電極13は、側面1cの一部を第一方向D1に沿って覆うように側面1c上に配置されていると共に、主面1aの一部上と主面1bの一部上とに配置されている。端子電極11は、側面1e寄りに位置し、端子電極13は、側面1f寄りに位置している。
端子電極12及び端子電極14は、素体1の側面1d側に配置されている。すなわち、端子電極12及び端子電極14は、第二方向D2での素体1の他方の端部に配置されている。端子電極12及び端子電極14は、側面1dの一部を第一方向D1に沿って覆うように側面1d上に配置されていると共に、主面1aの一部上と主面1bの一部上とに配置されている。端子電極12は、側面1e寄りに位置し、端子電極14は、側面1f寄りに位置している。
端子電極11は、図2に示されるように、主面1a上に配置されている電極部11a、主面1b上に配置されている電極部11b、及び側面1c上に配置されている電極部11cを有している。端子電極11は、側面1d、側面1e、及び側面1fには配置されていない。すなわち、端子電極11は、三つの面1a,1b,1cのみに配置されている。互いに隣り合う電極部11a,11b,11c同士は、素体1の稜部において接続されており、電気的に接続されている。
電極部11cは、接続導体24の側面1cに露出している一端24aをすべて覆っている。接続導体24は、側面1cに露出している一端24aで電極部11cと接続されている。すなわち、端子電極11と接続導体24とは、電気的に接続されている。
端子電極12は、図2に示されるように、主面1a上に配置されている電極部12a、主面1b上に配置されている電極部12b、及び側面1d上に配置されている電極部12cを有している。端子電極12は、側面1c、側面1e、及び側面1fには配置されていない。すなわち、端子電極11は、三つの面1a,1b,1dのみに配置されている。互いに隣り合う電極部12a,12b,12c同士は、素体1の稜部において接続されており、電気的に接続されている。
電極部12cは、コイル導体22の側面1dに露出している一端22aをすべて覆っている。コイル導体22は、側面1dに露出している一端22aで電極部12cと接続されている。すなわち、端子電極12とコイル導体22とは、電気的に接続されている。
端子電極13は、図3に示されるように、主面1a上に配置されている電極部13a、主面1b上に配置されている電極部13b、及び側面1c上に配置されている電極部13cを有している。端子電極13は、側面1d、側面1e、及び側面1fには配置されていない。すなわち、端子電極11は、三つの面1a,1b,1cのみに配置されている。互いに隣り合う電極部13a,13b,13c同士は、素体1の稜部において接続されており、電気的に接続されている。
電極部13cは、接続導体21の側面1cに露出している一端21aをすべて覆っている。接続導体21は、側面1cに露出している一端21aで電極部13cと接続されている。すなわち、端子電極13と接続導体21とは、電気的に接続されている。
端子電極14は、図3に示されるように、主面1a上に配置されている電極部14a、主面1b上に配置されている電極部14b、及び側面1d上に配置されている電極部14cを有している。端子電極14は、側面1c、側面1e、及び側面1fには配置されていない。すなわち、端子電極14は、三つの面1a,1b,1dのみに配置されている。互いに隣り合う電極部14a,14b,14c同士は、素体1の稜部において接続されており、電気的に接続されている。
電極部14cは、コイル導体23の側面1dに露出している一端23aをすべて覆っている。コイル導体23は、側面1dに露出している一端23aで電極部14cと接続されている。すなわち、端子電極14とコイル導体23とは、電気的に接続されている。
端子電極11〜14は、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を含んでいる。本実施形態では、各電極部11c,12c,13c,14cは、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を含んでいる。各電極部11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bは、第二電極層E2、第三電極層E3、及び第四電極層E4を含んでいる。すなわち、各電極部11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bは、第一電極層E1を含んでいない。第四電極層E4は、端子電極11〜14の最外層をそれぞれ構成している。
第一電極層E1は、導電性ペーストを素体1の表面(本実施形態では、側面1c及び側面1d)に付与して焼き付けることにより形成されている。第一電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された焼結金属層である。すなわち、第一電極層E1は、素体1上に配置されている焼結金属層である。
第一電極層E1は、電極部11c,12c,13c,14cに含まれている。電極部11c,13cに含まれている第一電極層E1は、側面1cと接するように側面1cに配置されている。電極部12c,14cに含まれている第一電極層E1は、側面1dと接するように側面1dに配置されている。本実施形態では、第一電極層E1は、主面1a及び主面1bには配置されていない。
電極部11cに含まれている第一電極層E1は、接続導体24の一端24aと接続されている。電極部12cに含まれている第一電極層E1は、コイル導体22の一端22aと接続されている。電極部13cに含まれている第一電極層E1は、接続導体21の一端21aと接続されている。電極部14cに含まれている第一電極層E1は、コイル導体23の一端23aと接続されている。
本実施形態では、第一電極層E1は、Agからなる焼結金属層である。第一電極層E1は、Pdからなる焼結金属層であってもよい。導電性ペーストには、Ag又はPdからなる粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられている。
第二電極層E2は、導電性樹脂層である。第二電極層E2は、各電極部11a〜11c,12a〜12c,13a〜13c,14a〜14cにおいて、一体的に形成されている。第二電極層E2の縁は、電極部11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bに含まれている。導電性樹脂には、熱硬化性樹脂に導電性材料及び有機溶媒などを混合したものが用いられる。導電性材料としては、たとえば、金属粉末が用いられる。金属粉末は、たとえば、Ag粉末が用いられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられる。
第三電極層E3は、めっき層であって、第二電極層E2上にめっき法により形成されている。第三電極層E3は、各電極部11a〜11c,12a〜12c,13a〜13c,14a〜14cにおいて、一体的に形成されている。第三電極層E3の縁は、電極部11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bに含まれている。本実施形態では、第三電極層E3は、第二電極層E2上にNiめっきにより形成されたNiめっき層である。第三電極層E3は、Cuめっき層であってもよい。
第四電極層E4は、めっき層であって、第三電極層E3上にめっき法により形成されている。第四電極層E4は、各電極部11a〜11c,12a〜12c,13a〜13c,14a〜14cにおいて、一体的に形成されている。第四電極層E4の縁は、電極部11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bに含まれている。本実施形態では、第四電極層E4は、第三電極層E3上にSnめっきにより形成されたSnめっき層である。
第二電極層E2は、電極部11c,12c,13c,14cにおいて、第一電極層E1に接して、第一電極層E1上に配置されている。すなわち、第二電極層E2は、電極部11c,12c,13c,14cにおいて、素体1と直接接していない。第三電極層E3と第四電極層E4は、第二電極層E2上に配置されているめっき層を構成している。すなわち、本実施形態では、第二電極層E2に形成されるめっき層は、二層構造を有している。各電極部11a〜11c,12a〜12c,13a〜13c,14a〜14cでは、第二電極層E2の全体が、第三電極層E3及び第四電極層E4で構成されているめっき層で覆われている。
電極部11c,12c,13c,14cが含んでいる第二電極層E2は、第一電極層E1に接して素体1上に配置されている。接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24は、第一電極層E1を通して、第二電極層E2と電気的に接続される。このため、積層コモンモードフィルタCFでは、接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24と第二電極層E2とが直接接続される構成に比して、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24のそれぞれと対応する端子電極11〜14との接続強度が高いと共に、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24のそれぞれと対応する端子電極11〜14とが確実に電気的に接続される。
以上説明したように、積層コモンモードフィルタCFでは、一対の磁性体部5のそれぞれは、磁性体領域6、非磁性体領域7、磁性体領域8、及び非磁性体領域9が非磁性体部3上にこの順に積層されてなる。磁性体領域6における非磁性体部3との界面近傍には、非磁性体部3のガラス成分が拡散し、磁性体領域6における非磁性体領域7との界面近傍には、非磁性体領域7のガラス成分が拡散する。また、磁性体領域8における非磁性体領域7との界面近傍には、非磁性体領域7のガラス成分が拡散し、磁性体領域8における非磁性体領域9との界面近傍には、非磁性体領域9のガラス成分が拡散する。この結果、磁性体領域6,8におけるこれらの界面近傍では、磁性体層が焼成され難くなるので、熱収縮が抑制される。このような界面の影響により、磁性体部5の熱収縮が抑制される。
磁性体領域6,8の熱収縮率は、非磁性体部3及び非磁性体領域7,9の熱収縮率よりも小さいものの、体積が大きくなると絶対的な熱収縮量が大きくなる。磁性体領域6,8は、非磁性体領域7によって分割されているので、分割されていない場合に比べて一領域あたりの体積が小さい。よって、熱収縮が抑制される。非磁性体領域7は、磁性体領域6,8を分割することにより、磁性体領域6,8の熱収縮を抑制するバッファとして機能している。
磁性体領域6の両側には、非磁性体部3及び非磁性体領域7が配置されている。これにより、磁性体領域6の両側の応力が釣り合う。両側の応力が釣り合わない場合、非磁性体部3と磁性体領域6との界面、又は磁性体領域6と非磁性体領域7との界面で剥離又はクラック等の構造欠陥が生じ易い。積層コモンモードフィルタCFでは、このような両側の応力が釣り合わないことによる構造欠陥が抑制される。
磁性体領域8の両側には、非磁性体領域7,9が配置されている。これにより、磁性体領域8の両側の応力が釣り合う。両側の応力が釣り合わない場合、非磁性体領域7と磁性体領域8との界面、又は磁性体領域8と非磁性体領域9との界面で剥離又はクラック等の構造欠陥が生じ易い。積層コモンモードフィルタCFでは、このように両側の応力が釣り合わないことによる剥離又はクラック等の構造欠陥が抑制される。
長さL3と長さL7との和は長さL6以下である(L3+L7≦L6)。これにより、長さL3と長さL7との和が長さL6よりも長い場合(L3+L7>L6)に比べて、非磁性体部3及び非磁性体領域7の体積が小さくなるので、磁性体領域6に非磁性体部3及び非磁性体領域7のガラス成分が拡散する量の増加が抑制される。よって、磁性体領域6の磁気特性の劣化が抑制される。また、長さL7と長さL9との和は、長さL8以下である。これにより、長さL7と長さL9との和が長さL8よりも長い場合(L7+L9>L8)に比べて、非磁性体領域7,9の体積が小さくなるので、磁性体領域8に非磁性体領域7,9のガラス成分が拡散する量の増加が抑制される。よって、磁性体領域8の磁気特性の劣化が抑制される。
長さL3,L7,L9が短いほど、非磁性体部3及び非磁性体領域7,9の体積が小さくなるので、ガラス成分の拡散量が抑制されるが、長さL3,L7,L9が短すぎると、非磁性体部3及び非磁性体領域7,9の形成が困難となる。積層コモンモードフィルタCFでは、長さL3,L7,L9は、0.1μm以上であるため、非磁性体部3及び非磁性体領域7,9を適切に形成することができる。
長さL9は、長さL7以上である。したがって、非磁性体領域9の体積が非磁性体領域7の体積以上であるから、非磁性体領域9の強度を非磁性体領域7の強度以上とすることができる。非磁性体領域9は、非磁性体領域7よりも素体1の外側に配置されており、外部からの応力を受け易い。よって、非磁性体領域9の強度を非磁性体領域7の強度以上とすることにより、構造欠陥が更に抑制可能となる。
積層コモンモードフィルタCFでは、端子電極11〜14が、導電性樹脂層である第二電極層E2を有している。第二電極層E2は、焼結金属層である第一電極層E1に比べて軟らかい。このため、たとえば積層コモンモードフィルタCFが電子機器にはんだ実装されているときに、電子機器から積層コモンモードフィルタCFに作用する外力を抑制することができる。よって、素体1にクラックが生じることが抑制される。
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の変形例に係る積層コモンモードフィルタCFの構成を説明する。図5及び図6は、本実施形態の変形例に係る積層コモンモードフィルタを示す断面図である。
図5及び図6に示される積層コモンモードフィルタCFは、素体1に施された非晶質ガラスコート層Gを更に備える点で、図1〜図4に示される積層コモンモードフィルタCFと相違している。非晶質ガラスコート層Gは、素体1の外表面に接しており、当該外表面全体を覆っている。非晶質ガラスコート層は、素体1と端子電極11〜14との間に配置され、素体1と端子電極11〜14とに接している。非晶質ガラスコート層Gは、シリカ系ガラス(SiO2−B2O3−ZrO2−R2O系ガラス)などのガラス材料からなる。
側面1cに露出している接続導体24の一端24aは、非晶質ガラスコート層Gを貫通し、電極部11cに接続されている。側面1dに露出しているコイル導体22の一端22aは、非晶質ガラスコート層Gを貫通し、電極部12cに接続されている。側面1cに露出している接続導体21の一端21aは、非晶質ガラスコート層Gを貫通し、電極部13cに接続されている。側面1dに露出しているコイル導体23の一端23aは、非晶質ガラスコート層Gを貫通し、電極部14cに接続されている。
非晶質ガラスコート層Gによれば、素体1と端子電極11〜14との間の接着性を高めることができる。よって、端子電極11〜14の剥離が抑制される。なお、非晶質ガラスコート層Gは、たとえば主面2a,2bのみに設けられていてもよい。この場合、非晶質ガラスコート層Gは、主面2aと電極部11a,12a,13a,14aとの間に配置され、主面2aと電極部11a,12a,13a,14aとに接している部分と、主面2bと電極部11b,12b,13b,14bとの間に配置され、主面2bと電極部11b,12b,13b,14bとに接している部分と、を有する。
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
積層コモンモードフィルタCFでは、一対の磁性体部5の少なくとも一方が、磁性体領域6、非磁性体領域7、磁性体領域8、及び非磁性体領域9が非磁性体部3上にこの順に積層された構成であればよく、例えば、他方の磁性体部5が磁性体領域のみで構成されていてもよい。この場合であっても、少なくとも一方の磁性体部5においては、熱収縮を抑制しながら、構造欠陥及び磁気特性の劣化についても抑制できる。
端子電極11〜14は、必ずしも、第二電極層E2を有していなくてもよい。第二電極層E2上に配置されるめっき層は、必ずしも、二層構造又は三層構造を有していなくてもよい。第二電極層E2上に配置されるめっき層は、一層でもよく、また、四層以上の積層構造を有していてもよい。
端子電極11は、接続導体24の一端24aに接続されていればよく、電極部11a,11bを有していなくてもよい。端子電極12は、コイル導体22の一端22aに接続されていればよく、電極部12a,12bを有していなくてもよい。端子電極13は、接続導体21の一端21aに接続されていればよく、電極部13a,13bを有していなくてもよい。端子電極14は、コイル導体23の一端23aに接続されていればよく、電極部14a,14bを有していなくてもよい。
積層コモンモードフィルタCFは、互いに異なる層に配置された接続導体21、コイル導体22、コイル導体23、及び接続導体24を備えているが、積層コモンモードフィルタCFの内部導体はこの形態に限定されない。
素体1の第二方向D2での端部にそれぞれ配置されている外部電極(端子電極)の数は、「二つ」に限られない。素体1の第二方向D2での端部にそれぞれ配置されている外部電極の数は、「三つ」以上であってもよい。