JPWO2005083808A1 - 熱電変換デバイス、およびこれを用いた冷却方法および発電方法 - Google Patents

熱電変換デバイス、およびこれを用いた冷却方法および発電方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、高い熱電変換性能を有する熱電変換デバイスを提供する。このデバイスでは、従来の技術常識から導かれる配置とは異なり、層状物質の層間方向に沿って電流が流れるように電極が配置される。本発明による熱電変換デバイスでは、熱電変換膜が、エピタキシャル成長により得られた膜であって、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されてなり、電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、電気絶縁層は、金属元素または結晶性金属酸化物からなる。そして、電気伝導層および電気絶縁層からなる層状物質についてのc軸は基体の面内方向と平行であって、一対の電極はc軸に沿って電流が流れるように配置されている。

Description

本発明は、ペルチェ効果やゼーベック効果により、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換する熱電変換デバイスに関する。
熱電発電は、ゼーベック効果、すなわち物質の両端に温度差を付与するとその温度差に応じて熱起電力が生じる現象、を利用して熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術であり、外部に負荷を接続して閉回路を構成することにより電力を取り出すことができる。この技術は僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源等として実用化されている。
熱電冷却は、ペルチェ効果、すなわち電流によって運ばれる電子によって熱が移動する現象、を利用する技術である。具体的には、例えばp型半導体とn型半導体といったキャリアの符合の異なる2つの物質を熱的に並列に、かつ電気的に直列に接続して電流を流したときに、キャリアの符号の違いが熱流の向きの違いに反映することを利用して接合部を吸熱する。この技術は、宇宙ステーションにおける電子機器の冷却のような局所冷却、ワインクーラー等として実用化されている。
通常、熱電変換材料の性能は、性能指数Z、またはこれに絶対温度Tをかけて無次元化された性能指数ZTで評価される。ZTは、当該材料のS:ゼーベック係数、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率、を用い、式ZT=S/ρκにより示される。性能指数ZTによる評価において、従来の熱電変換材料は、十分な実用レベルに達しているとはいえない。
これまで、多くの材料が熱電変換材料として検討されてきた。例えば、層状酸化物であるNaCoOが優れた熱電変換性能を示すことが報告されている(特開平9−321346号公報、国際公開第03/085748号パンフレット参照)。国際公開第03/085748号パンフレットでは、熱電変換膜として、サファイア基体のc面上に形成された、c軸配向の、すなわちc軸が基体の面に垂直に配向した、NaCoO膜が開示されている。
NaCoOは、電気伝導層であるCoO層と電気絶縁層であるNa層とが交互に配置された構造を有する。上記式より明らかなように、性能指数ZTを上げるためには低い電気抵抗率が望ましい。このため、NaCoOに代表される層状酸化物を熱電変換材料とする場合、従来は、専ら、電気伝導層の面内方向についての熱電変換性能を引き出す試みが為されてきた。
層状酸化物については、結晶配向を良好にすることによって面内方向の電気抵抗の低減が図られている。例えば、特開2000−269560号公報では、結晶方位の揃った焼結体が開示されている。特開2003−95741号公報にも、配向性を有する多結晶体が開示されている。
結晶方位の揃った物質の製造方法としては、板状テンプレートを用いて結晶配向した物質を製造する方法(特開2002−321922号公報、特開2002−26407号公報参照)、焼結体を粉砕、成型した後に加熱溶融、冷却して結晶化する方法(特開2002−111077号公報)、原料を溶媒に溶かして得たゲルを焼成して板状結晶を成長させる方法(特開2003−34583号公報)等が提案されている。
これらの技術は、すべて、層状酸化物の配向性を向上することによって面内方向の電気抵抗率を低減させ、その結果として、熱電変換性能を向上させるものである。
しかし、上記従来の方法では、実用の目安とされているZT>1のレベルを限られた物質において、またある温度範囲でわずかに超えるにとどまっており、さらに広い普及を目指した熱電変換性能指数のレベルZT>3には遥かに届かないのが現状である。
従来の熱電変換デバイスを開示する公報を、以下にまとめて記載する。
特開平9−321346号公報
特開2000−269560号公報
特開2003−95741号公報
特開2002−321922号公報
特開2002−26407号公報
特開2002−111077号公報
特開2003−34583号公報
特開2003−133600号公報
特開2002−270907号公報
特開平11−330569号公報(段落番号0002)
国際公開第03/085748号パンフレット
特開2002−316898号公報
特開2002−141562号公報
層状物質における電気伝導層の面内方向についての熱電変換性能は、その結晶配向性を改善しても、実用レベルに要求されるレベルには到達できていない。
本発明者らは様々な層状物質の熱電変換特性を電気伝導層の面内方向だけでなく、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置された方向(層間方向)についても鋭意研究を重ねた結果、印加する外場の大きさによっては層状物質の電気伝導層と電気絶縁層の層間方向が意外にも高い熱電変換性能を示すことを発見し、本発明に到達するに至った。
本発明は、基体と、前記基体上に配置された熱電変換膜と、一対の電極とを具備する熱電変換デバイスであって、前記熱電変換膜は、エピタキシャル成長により得られ、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されてなり、前記電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、前記電気絶縁層は、金属元素単体または結晶性金属酸化物からなり、前記電気伝導層および前記電気絶縁層からなる層状物質についてのc軸は、前記基体の面内方向と平行であり、前記一対の電極は、前記c軸に沿って電流が流れるように配置されている、熱電変換デバイスを提供する。
また、本発明は、この熱電変換デバイスを用いた冷却方法および発電方法を提供する。本発明の冷却方法は、上記の熱電変換デバイスを用い、一対の電極の間に電流を流すことにより、一対の電極の間に温度差を生じさせ、一対の電極のいずれか一方を低温部とする冷却方法である。本発明の発電方法では、上記の熱電変換デバイスを用い、一対の電極の間に温度差が生じるように熱を与えることにより、一対の電極の間に電位差を生じさせる。
本発明によれば、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置された層間方向の熱電変換特性を利用することにより、広い温度領域で従来よりも優れた熱電変換性能が得られる。この優位性は層状物質の層間伝導に基づいている。
図1は、本発明による熱電変換デバイスの一形態を示す斜視図である。 図2は、図1に示した熱電変換デバイスにおける熱電変換膜の結晶構造を示す図である。 図3は、本発明による熱電変換デバイスの別の一形態を示す斜視図である。 図4Aは、緩衝層を有する熱電変換デバイスの一形態を示す斜視図であり、図4Bは、緩衝層を有する熱電変換デバイスの別の一形態を示す斜視図であり、図4Cは、緩衝層を有する熱電変換デバイスのまた別の一形態を示す斜視図である。 図5は、実施例1で作製したNa0.4CoO薄膜のX線回折の結果を示す図である。 図6は、実施例1で作製したNa0.4CoO薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。 図7は、実施例1で作製したNa0.4CoO薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。 図8Aは、実施例1においてNa0.4CoO薄膜にエポキシ樹脂をコーティングした状態を示す斜視図であり、図8Bは、実施例1で作製した、エポキシ樹脂を基体とする熱電変換デバイスを示す斜視図であり、 図9は、実施例2で作製したCa0.5CoO薄膜のX線回折の結果を示す図である。 図10は、実施例2で作製したCa0.5CoO薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。 図11は、実施例2で作製したCa0.5CoO薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。 図12Aは、実施例3で作製した熱電変換デバイスの構成を示すために各構成要素を分解して示す斜視図であり、図12Bは、実施例3で作製した熱電変換デバイスを示す斜視図である。 図13は、実施例4で作製したBi2−XPbSrCo単結晶の結晶構造を示す図である。 図14は、実施例4で作製したBi2−XPbSrCoエピタキシャル成長膜の結晶構造を示す図である。 図15Aは、実施例4で作製したBi1.6Pb0.4SrCo単結晶のX線回折の結果を示す図であり、図15Bは、実施例4で作製したBi2−XPbSrCo単結晶のPb含有率Xとc軸長さとの関係を示す図である。 図16Aは、実施例4で作製したBiSrCo単結晶から得たラウエ回折像であり、図16Bは、実施例4で作製したBi1.8Pb0.2SrCo単結晶からラウエ回折像である。 図17は、実施例4で作製したBiSrCoエピタキシャル成長膜のX線回折の結果を示す図である。 図18は、実施例4で作製したBi1.6Pb0.4SrCo単結晶の電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、および熱伝導率κの温度依存性を示す図である。 図19は、実施例5で作製したCaCoエピタキシャル成長膜の結晶構造を示す図である。 図20は、実施例5で作製したCaCoエピタキシャル成長膜のX線回折の結果を示す図である。 図21は、実施例5で作製したCaCoエピタキシャル成長膜の電気抵抗率ρの温度依存性を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示した熱電変換デバイスは、板状の基体11と、基体11上の熱電変換膜12と、熱電変換膜12に接して基体11の左右に配置された一対の電極13a,13bと、を備えている。
図2に、熱電変換膜12の結晶構造を例示する。熱電変換膜12は、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された層状構造を有する。すなわち、熱電変換膜12は、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された結晶性薄膜からなる。
結晶学的には、層間方向、すなわち層面に対して垂直な方向をc軸方向10と呼ぶ。一対の電極13a,13bは、c軸方向10に沿って電流を流すことができるように配置されている。
熱電変換膜12は、エピタキシャル薄膜(エピタキシャル成長膜)であり、c軸方向10が基体11の面内方向に沿った配向性を有する。換言すれば、熱電変換膜12は、各層22,23が基体11の表面に対してほぼ垂直に成長した結晶構造を有する。
電極13a,13bは、これら電極の間に電圧を与えたときに電流が熱電変換膜12内をc軸方向10に沿って流れるようにこの方向について離間して配置されていればよく、図1に示したように熱電変換膜12の表面に接して設ける必要はない。
基体11は、熱電変換膜12のエピタキシャル成長の起点を提供する。好ましい基体11としては、Al、MgAl、SrTiO、MgO、TiO等の単結晶基板を挙げることができる。ただし、単結晶基体の上にエピタキシャル成長させた熱電変換膜を当該基体と分離し、別に準備した基体11の上に配置してもよい。
熱電変換膜12は、図2に示すように、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された結晶構造を有する結晶性薄膜である。酸化物層状物質は、空気中でも安定であるために望ましい。熱電変換性能に優れる層状物質としては、電気伝導層22は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に頂点に酸素が位置する八面体(正八面体)結晶構造を有する。遷移金属原子Mは、下記に例示する元素、特にCoおよびMnから選ばれる少なくとも1種が好ましい。電気伝導層22が遷移金属原子MとしてCoを含有し、かつ互いに稜を共有するCoO八面体結晶構造を有する熱電変換膜12からは、優れた熱電変換性能が得られる。MO八面体が互いに稜を共有しながら連なって層を構成する構造は、CdI型構造と呼ばれる。
電気伝導層22がCdI型構造を有する熱電変換膜12としては、式AX1MOY1により示される組成を有する膜が挙げられる。この膜は、電気絶縁層23としての層Aと、電気伝導層22としての層MOY1とが交互に配置された層状物質である。
ここで、Aは、Na、K、Li等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Hg、Tl、PbおよびBiから選ばれる少なくとも1種の元素である。Mは、遷移金属元素、好ましくはCo、Ni、Ti、Mn、FeおよびRhから選ばれる少なくとも1種の元素、より好ましくはCoおよびMnから選ばれる少なくとも1種である。また、0.1≦X1≦0.8、好ましくは0.2≦X1≦0.8であり、1.5≦Y1≦2.5、好ましくは1.8≦Y1≦2.2である。元素AおよびMは、2種以上であってもよく、例えば元素Aは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の一部を、Hg、Tl、Pb、Biにより置換したものであってもよい。Y1は2が好ましいが、Y1は膜の作製方法、条件等に依存するため、厳密に2とすることは困難である。以下の説明ではY1=2と便宜上表記することがあるが、この表記は厳密に2であることを意味しない。一方、X1については、ある程度人為的に調整できる。なお、上記式において、O(酸素)に代えて、S(イオウ)やSe(セレン)を用いることも考えられる。
金属元素Aは結晶中の各サイトを(X1)×100%の割合でランダムに占有するため、キャリアの散乱が頻繁に起こる。このため、元素Aとして単体では金属となる元素(金属元素)を用いても、層Aは電気絶縁的な性質を有する。また、金属元素Aからなる層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に頂点に酸素が位置する八面体結晶構造を有する電気伝導層22にキャリア(式AX1MOY1により示される組成を有する膜では電子)を供給する役割を有する。この役割を有する層は絶縁性となる。この限りにおいて、X1は1.0、すなわち、結晶中の全てのサイトに金属元素Aが位置していてもよい。
式AX1MOY1により示される組成を有する熱電変換膜12は、より詳しくは、1層が1ないし3モノレイヤーのMOからなる電気伝導層22と、1層が1ないし4モノレイヤーからなる電気絶縁層23との交互積層体である。4モノレイヤー以上の厚みの電気伝導層22、または5モノレイヤー以上の厚みの電気絶縁層23を有する熱電変換膜12を作製することは現状の技術では困難であるが、このような膜が本発明から排除されるわけではない。
なお、図2では、電気伝導層22と電気絶縁層23とが1モノレイヤーごとに交互に配置された結晶構造が示されている。
電極13a,13bの間に直流電圧を印加すると、熱電変換膜12のc軸方向に沿って電流が流れ、それに付随して熱が運ばれ、その結果、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が生じる。電流を逆に流せば、発熱と吸熱とが反転する。
キャリアがホールである場合、電極13aをプラス極、電極13bをマイナス極とすれば、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が起こる。元素MをNiとするとキャリアが電子になる傾向がある。この場合、電極13aをマイナス極、電極13bをプラス極とすれば、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が生じる。このように、図示したデバイスは、熱電冷却デバイスとして用いることができる。なお、電極13aと電極13bとを厳密に区別する場合には、前者を「第1電極(参照符号:13a)」、後者を「第2電極(参照符号:13b)」と記述する。
これまで、層状構造を有する熱電変換膜12では、そのc軸方向10については、電気抵抗が大きくゼーベック係数が小さいため、熱電変換性能ZTは使用に足るものではないと考えられてきた。本発明者等は様々な条件を検討し最適化することにより、基体11上に、層間方向(c軸方向10)が面内方向に沿った層状物質の作製に成功した。そして、この層状物質を熱電変換膜12として外場の方位による熱電変換性能の関係を詳細に調べていく過程で、外場の大きさによっては層間方位において予想外に大きい熱電変換性能が得られることを見出した。
この理由として、一つは熱電子放出的な機構が考えられるが、この層状物質の場合には放出媒体が真空ではなく電気絶縁層23であるため、トンネル伝導的な効果も入り交じった複雑な機構が関与していると推察される。
同様の構成において、電極13a,13bとの間に温度差を付与することにより、熱電変換膜12内で熱エネルギーを持ったキャリアがその温度差を打ち消すように電極13a,13bの間を移動することから、結果として電流が流れる。この効果を利用し、電極13a,13bを介して電力を取り出すことができる。このように、図示したデバイスは、熱電発電デバイスとしても使用できる。
本発明によれば、熱電変換膜12のc軸方向10についての電極13a,13bの間隔は自在に設定することができるため、熱の戻りの少ない高効率のデバイスを実現できる。これにより、高温部と低温部との温度差を大きくすることが可能となる。
基体11の表面に対して各層22,23が垂直に立った構造(図2参照)、換言すればc軸方向10が面内方向となった構造を有する熱電変換膜12を得るためには、基体11の材料と薄膜作製時の基体11の加熱温度が重要である。スパッタ法を用いる場合の基体温度は、元素Aの種類にもよるが、通常、650〜750℃の範囲が好ましい。
なお、薄膜の組成に関しては、例えば元素AがNaの場合には0.3≦x≦0.6、元素AがSrの場合には0.3≦x≦0.5、元素AがCaの場合0.4≦x≦0.7とすると、結晶性が良好な膜が得られる。
熱電変換膜12の作製方法は特に限定されず、スパッタ法、蒸着法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法等の気相成長によるもの、あるいは液相や固相からの成長等、種々の方法を使用できる。
基体11の材料としては、基体11と熱電変換膜12との格子整合性が比較的良い、サファイアAl、MgO、SrTiO、LaAlO、NdGaO、YAlO、LaSrGaO、LaSrAlO、MgAl、ZnO、ZrO、TiO、Fe、Cr、Si、GaAs等の単結晶材料が好ましい。ただし、基体の結晶面は適切に選択する必要がある。例えば、NaX1CoOY1膜をサファイアのC面上に成膜したのでは、c軸方向10を基体の面内方向に配向させることは困難である。この場合は、サファイアのA面またはM面を選択する必要がある。
基体11上に、c軸方向10が面内方向に沿った構造を有する膜を予め形成し、その後、液相エピタキシャルプロセス等によりこの膜を厚膜化することにより、熱電変換膜12を得ることも可能である。この方法によれば、層間に流れる電流、または熱流の有効面積を大きくとれるので、より効率の良い熱電変換が達成される。液相プロセスとしては、例えば層が垂直に立ったa軸配向のNa0.5CoO薄膜の場合には、NaClをフラックスとしてCoおよびNaCOの粉体を混ぜて1000℃で溶かした融液中に薄膜を基体ごと浸し、900℃にまで徐々に冷却することにより1mm程度のNa0.5CoO厚膜を得ることが可能である。
本発明による熱電変換デバイスでは、一対の電極13a,13bの間に狭持された領域の一部において、基体11の厚みを減少させてもよい。図3に、くびれ構造31を有する基体11を例示する。
基体11の加工は、基体11の裏面(熱電変換膜12を形成した面と反対側の面)から、ダイヤモンド砥石等を用いた機械的な研削、化学的エッチング、イオンビームエッチング等によって行えばよい。こうして形成したくびれ構造31により、基体11の熱伝導による熱電変換膜12で発生する温度差の緩和(熱損失)を抑制できる。熱電変換膜12が厚い場合には、くびれ構造31を熱電変換膜12に食い込ませてもよい(後述する図4(c)も参照)。すなわち、基体11の厚みは局部的に0であってもよい。図3に示したように、c軸方向10と交差するように基体11を横断する領域31において、基体11の厚みを低減させることが好ましい。
熱電変換膜12は、エピタキシャル成長により得られるが、エピタキシャル成長の起点を提供する基体(成長基体)をそのままデバイスにおける基体(使用基体)11とする必要はない。すなわち、熱電変換膜12を、成長基体上にエピタキシャル成長させた後に、当該成長基体を除去し、使用基体上に移動させてもよい。成長基体の除去は、成長基体の研削、成長基体からの膜の分離、等により行えばよく、具体的には、レーザー照射、水蒸気暴露、放電加工等により行うことができる。熱伝導率が低い樹脂、ガラス等からなる基体、特に樹脂基板を使用基体11として用いれば、熱損失の少ない熱電変換デバイスを得ることができる。
使用基体による熱電変換膜12の支持は、成長基体を除去する前後のいずれに行ってもよい。例えば、使用基体とする樹脂基板により熱電変換膜12を支持しながらこの膜を成長基体から分離してもよく、熱電変換膜12を成長基体から分離してから使用基体とする樹脂基板上に配置してもよい。
本発明による熱電変換デバイスは、基体11と熱電変換層12との間に配置された緩衝層をさらに含んでいてもよい。
緩衝層を含む熱電変換デバイスの図4A〜図4Cに例示する。まず、基体11上に下地緩衝層41をエピタキシャル成長させ、この下地緩衝層41をテンプレートとして、c軸方向10が面内方向に沿った熱電変換膜12をエピタキシャル成長させる(図4A)。
この場合、基体11は、下地緩衝層41がエピタキシャル成長する限り制限はなく、上記に例示した基板に加え、Si等の半導体基板を用いてもよい。下地緩衝層41の材料としては、例えば、酸化物、金属、具体的には、CeO、ZrO、TiO、ZnO、NiO、Fe、Cr、Al、Cr、CrおよびPtから選ばれる少なくとも1種を含む材料が挙げられる。
下地緩衝層41を用いて熱電変換膜12を成長させると基体11の除去が容易となり、素子構成についての自由度が高くなる。
下地緩衝層41は、基体11の一部の厚みを低減する形態に適用することもできる。例えば基体11をイオンビームエッチング等の方法で研削する場合には、下地緩衝層41を構成する元素を検出する手段を設置しておくと、精度良く基体11を研削できる。この研削により、くびれ構造42の最深部を下地緩衝層41内にとどめれば、基体11を分断し(基体11の厚みを部分的に0とし)、かつ熱電変換膜12の厚みを維持した熱電変換デバイスを得ることができる(図4B)。
金属膜を下地緩衝層41とする場合には、くびれ構造42により下地緩衝層41を基体11とともに分断し、高温部と低温部との電気的な短絡を防ぐとよい(図4C)。
下地緩衝層41は、2以上の層を積層した多層膜としてもよい。
以上では、式AX1MOY1により示される組成を有する熱電変換膜を中心に説明したが、本発明における熱電変換膜12がこれに限られるわけではない。
例えば、遷移金属原子Mが中心に位置する八面体結晶構造を有する別の電気伝導層22としては、ペロブスカイト型構造を有する層が挙げられる。
電気絶縁層23は、層Aのように、単一の金属元素から構成されていてもよい。この場合、金属元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Bi、Pb、Hg、およびTlから選ばれる少なくとも1種の元素であってもよく、この電気絶縁層は、1〜3モノレイヤーから構成されていてもよい。電気絶縁層23は、結晶性金属酸化物から構成されていてもよい。この場合、この電気絶縁層は、1〜4モノレイヤーから構成されていてもよい。
電気絶縁層は、岩塩型構造を有していてもよい。岩塩型構造は、金属原子と酸素原子とから構成され、例えば、Sr(Bi2−X4PbX4、Ca(Co1−X5CuX5、(Ca,Bi)CoO、およびSrTiOから選ばれる少なくとも1つにより示される組成を有していてもよい。ここで、0≦X4≦1、0≦X5≦1である。
熱電変換膜12の別の例としては、式Bi2−X2PbX2SrCoY2により示される組成を有する膜が挙げられる。ここで、0≦X2≦0.5であり、7.5≦Y2≦8.5である。この膜は、後述するように、例えば、CoO電気伝導層と、4モノレイヤーの岩塩型構造からなる絶縁層との積層構造を有する。
熱電変換膜12のまた別の例としては、式(Ca1−X3−Y3SrX3BiY3Coにより示される組成を有する膜が挙げられる。ここで、0≦X3<1であり、0≦Y3≦0.3である。この膜は、後述するように、例えば、CoO電気伝導層と、3モノレイヤーの岩塩型構造からなる絶縁層との積層構造を有する。
熱電変換膜12は、電気伝導層22が、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種を含み、かつペロブスカイト型構造またはCdI型構造を有し、電気絶縁層23が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Bi、Pb、Hg、およびTlから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ岩塩型構造を有する、膜であってもよい。
本発明による熱電変換素子は、層状物質の層間方向の物性を利用するが、その際に電極間の距離は長く、かつ電極の面積は小さいことが望ましい。この理由を以下に示す。実際の熱伝導Kは熱伝導率κ、素子の面積Sおよび長さlを用い、K=κ・S/lの関係で示される。熱電変換デバイスでは、ペルチェ効果により生じた温度差の緩和を防ぐため、熱伝導は小さいほうが好ましい。実際の熱伝導を小さくしようとすると、素子は、その長さが長く、面積が小さいほうがよい。このため、素子は細長く加工して使用することが望ましい。薄膜等の小さな素子においては、フォトリソグラフィー技術等による加工でその性能を上げることもできる。
本発明の熱電変換デバイスでは、熱電変換膜の膜厚方向にではなく、膜面方向に電流を流すため、素子の長さlを確保することは容易である。c軸が基体面に対して垂直に配向するようにエピタキシャル成長させた膜の場合、素子の長さlは膜の厚みによって制限され、1mm以上とすることは困難である。これに対し、本発明の熱電変換デバイスでは、素子の長さlを1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、特に好ましくは9mm以上とすることができる。具体的には、c軸方向10について、一対の電極13a,13bを所定距離以上、例えば1mm以上、離間して配置するとよい。
本発明による冷却方法および発電方法は、従来から行われてきた方法を、本発明による熱電変換デバイスに適用して実施すればよい。冷却の際には、一対の電極13a,13bの間に、パルス電流を流すとよい。パルス電流を用いると、発熱量を抑えながら、本発明の熱電変換デバイスによる高い熱電変換性能を活かした冷却を行うことができる。運ばれる熱流は流れた電流の積分値によるため、パルス電流を用いても熱流の量はそれほど低減しないが、パルス電流を用いると電気抵抗から生じるジュール熱の発生を抑えることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例も上記と同様、本発明の好ましい実施形態の例示に過ぎない。
10mm角、厚さ100μmのサファイアAlのA面基板上に、層状酸化物Na0.4CoOを成膜した。成膜方法は、直径4インチのNa0.5CoO焼結体ターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリングとした。
Arが80%、Oが20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングをした後、700℃に加熱した基板上にプレスパッタリングの時と同様の条件で5時間堆積を行い、その後加熱された基板上の薄膜を酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やした結果、膜厚1000nmの金属光沢を持つ薄膜が得られた。
エネルギー分散型蛍光X線分析により、薄膜におけるNaとCoとの組成比がおよそNa:Co=0.4:1であることを確認した。
こうして得られたNa0.4CoO薄膜のX線回折測定の結果を図5に示す。
サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による同系列のピークが観測された。これらはそれぞれ(200)、(400)のピークであった。
これにより、Na0.4CoO薄膜は(100)面と基板の表面とが平行となるように結晶配向してエピタキシャル成長したことが確認された。さらに4軸X線回折測定によりNa0.4CoOの結晶のc軸が薄膜面内方向に配向していることが確認された。
このNa0.4CoO薄膜の基板に対する結晶配向は図2と同様である。このような配向性を有する結晶では、c軸方向と、c軸に対して垂直な方向、すなわち各層に平行な方向、との2つの方向についての物性測定が可能である。
図6に、各方向について測定したNa0.4CoO薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す。ここでρはc軸方向、すなわち各層の層間方向についての電気抵抗率である。ρabは各層に平行な方向についての電気抵抗率である。
図7に、Na0.4CoO薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す。ここで、Sは層間方向についてのゼーベック係数であり、Sabは各層に平行な方向についてのゼーベック係数である。
これらの結果をそのまま受け入れると、以下の推測が成り立つ。すなわち、各層に平行な方向では電気抵抗率が低く、かつゼーベック係数が大きいために、電気抵抗率が高く、ゼーベック係数が小さい層間方向からよりも、良好な熱電変換特性が得られる、という推測である。
この推測の現実の使用における妥当性を検討するために、熱電変換デバイスを作製した。まず、図8Aに示すように、熱電変換膜(Na0.4CoO薄膜)12の上にエポキシ樹脂をコーティングして凝固させ、支持体81とした。次いで、基板11/熱電変換膜12/支持体81からなる積層体を、水蒸気を含む密閉容器中に30時間放置した。
その結果、Na0.4CoO薄膜12とサファイア基板11との界面に水分子が浸透することにより、薄膜に応力が加わってNa0.4CoO薄膜12がサファイア基板11から剥離した。
さらに、熱電変換膜(Na0.4CoO薄膜)12の支持体81と反対側の表面に、c軸方向10について9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ500nmのPt電極13a,13bをスパッタ法で堆積した。こうして、エポキシ樹脂からなる新たな基体81を有する熱電変換デバイス82を得た。
室温において、2つのPt電極13a,13bの間の抵抗値は約100Ωであった。電極間に0.1mAの直流電流を定常的に流したところ、両端に約3℃の温度差がついた。電流の向きを反転させると、高温部と低温部は反転した。
図6および図7に示したc軸方向の熱電性能(ρ,S)、基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は1℃以下である。従って、実験値は定常的な熱電性能から予想される変換効率の3倍以上にもなった。
一般的に熱電変換性能指数ZTはゼーベック係数の2乗の項を有するため、ゼーベック係数に相当する物理量が3倍以上の場合、ZTは1桁程度向上していることになる。
図6および図7による推測値から実測値が大きく乖離した理由については、下記で解析する(実施例4の欄参照)。
CaO、Coの粉体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、実施例1と同様のスパッタリング条件で10mm角、100μm厚のサファイアM面基板に膜厚1000nmの薄膜を成長させた。
エネルギー分散型蛍光X線分析により、この薄膜におけるCaとCoとの組成比がおよそCa:Co=0.5:1であることが確認された。このCa0.5CoO薄膜のX線回折測定の結果を図9に示す。サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による(020)と指数付けされるピークのみが観測された。
これにより、Ca0.5CoO薄膜は(010)面と基板とが平行となるようにエピタキシャル成長したことが確認された。また4軸X線回折測定によりCa0.5CoOの結晶のc軸は薄膜の面内に配向していることが確認された。
薄膜作成直後のCa0.5CoO薄膜は薄い褐色をしていたが、酸素雰囲気中、300℃で2時間アニールを行うとCa0.5CoO薄膜は金属光沢をもつ黒色になった。
図10に、Ca0.5CoO薄膜の電気抵抗の温度依存性を示す。ここで、ρはc軸方向、即ちCa層とCo層とからなる層状物質の層間方向についての電気抵抗率であり、ρabは各層に平行な方向の電気抵抗率である。
図11に、Ca0.5CoO薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す。ここで、Sはc軸方向についてのゼーベック係数であり、Sabは各層に平行な方向のゼーベック係数である。
さらに、Ca0.5CoO薄膜のc軸方向に9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ400nmのAu電極を薄膜上にスパッタ法で堆積させた。また、基板を介した熱伝導により、発生した温度差が直ちに解消される効果を軽減するため、図3に示したように、電極間を横断する幅約2mmの領域において、厚さが約1μmになるように基板をイオンビームエッチングにより薄型化した。
室温において、2つのAu電極間の抵抗値は約400Ωであった。電極間に0.003mAの電流を定常的に流したところ、両端に約2℃の温度差がついた。図10および図11に示したc軸方向の熱電変換性能の値、基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は0.1℃であるため、実験値は理論値の20倍にもなった。実際に得られた温度差を熱電変換性能指数ZTに換算すると400倍となった。
実施例1から得た熱電変換デバイスを複数用いて、より大きな実効面積を有するデバイスを作製した。具体的には、図12Aに示したように、電極13a,13bの間の長さが30mm、幅が5mm、厚さ2mmである1000本の熱電変換素子82と、700mm角のアルミナからなる吸熱板121aおよび放熱板121bとを準備した。
吸熱板121aおよび放熱板121bの材料としてアルミナを用いたのは熱伝導率が高く、温度分布が均一になるからである。
各々の熱電変換素子82を電気的に接続するために、吸熱板121aおよび放熱板121bの表面を電気伝導率の高い銅でコーティングした。
銀ペーストを用いて、熱電変換デバイス82の電極13a,13bと吸熱板121aおよび放熱板121bの銅でコーティングされた面とをそれぞれ接合して、図12Bに示した熱電変換デバイスを得た。このデバイスでは、本発明により提供された複数の熱電変換デバイスが吸熱板121aと放熱板12bとの間に電気的に並列に接合されている。このデバイスは、1mWの電力に対し、約3℃の冷却能力を有していた。
本実施例では、Bi2−X2PbX2SrCoY2(X2=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の組成式で記載される層状酸化物の単結晶およびエピタキシャル成長膜の例を取り上げ、この物質の熱電変換特性について記載する。
Bi2−X2PbX2SrCo(X2=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の単結晶はフローティングゾーン法で作製した。Co(NO)・HOのプレカーサーとPbO、SrO、BiOとを組成のとおりに秤量した後に混合し、200℃まで温度を上げて乾燥させた。得られた粉末をペレット状にした後、1000℃で24時間大気中において焼結して再び紛体状にした。得た粉末を装置のロッドのサイズに適合するようにプレスし、1150℃で約15時間焼結した後に3気圧の酸素雰囲気中で結晶成長させると、黒い光沢を有する長さ4〜6mm、5mm半径の単結晶が得られた。
その結晶構造は図13に示してある。本実施例では結晶をより安定化させるために図13の結晶のBiのサイトを一部Pbに置換したものも用いた。できた物質の結晶構造はX線回折で確認し、その結果を図15Aに示した。図15Aに示したデータはX2=0.4の単結晶に対応する。解析の結果、Pb含有率X(X2)と結晶のc軸長さとの関係を図15Bに示す。さらに、ラウエによる回折像を図16A,図16Bに示す。
得られた結晶の組成はICP(inductively coupled plasma emission spectroscopy)とEDX(electron dispersive X−ray spectroscopy)を用いて確認した。実際の結晶における酸素の量については、組成式のとおり作製できていればY2=8となるところであるが、実際にはこれよりも多く酸素が入ってしまうことが多い。酸素の量はICPやEDXでも同定が困難であるため、Y2は7.5以上8.5以下と表示している。
ここまでBi2−xPbSrCoY2(x=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の単結晶の作製方法を記したが、BiSrCo(y=7.5〜8.5)をサファイアA面基板上にエピタキシャル成長させて得ることもできた(図14)。具体的には、BiO、SrO、Coの紛体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、Arが80%、Oが20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングした後、700℃に加熱したサファイアA面基板上にプレスパッタリングと同様の条件で5時間かけて堆積を行った。その後、酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やすと、膜厚1000nmの金属光沢を有する薄膜が得られた。得られた薄膜のX線回折のデータを図17に示す。
次に、測定方法および測定結果の記述に移るが、単結晶の場合と、エピタキシャル成長膜の場合とでほぼ同様の結果が得られたので、以下には、単結晶の場合の測定方法および測定結果を述べる。
上記より得た単結晶を壁開面で壁開して表面を平らに仕上げた後に、壁開面の両側に銀ペーストで電極とクロメルーコンスタンタンで作製した熱電対を取り付けた。この状態で、電気伝導層と電気絶縁層との層間方向に電場を印加して温度差を測る構成になっている。このときの素子の大きさは、2.0mm×2.0mm×0.2mmであった。次に、電極を取り付けた素子をデュアーの中に移し、約2×10−4torrの真空下に設置した。この際、熱のリークを少しでも防ぐためにサンプルは浮かして設置した。
デュアーの外に電源と温度計をそれぞれつなぎ、素子に電流を流してその壁界面の両側の温度差を測定した。電極間に10mAの電流を流すと約2Kの温度差が素子の両端についた。電流の向きを変えると高温部と低温部が反転した。この現象は室温から50Kまで温度を下げても同じように2Kの温度差がついた。
ところで、孤立系に電流を流した際に、流した電流と温度差の間にはゼーベック係数Sと熱伝導Kと用い、STl=KΔTという関係がある。電流によって注入されたエネルギーが熱伝導率を通して温度差となって現れることを示した式で、熱伝導率を測定する際のHarman法と呼ばれる測定法の基本となる式でもある。ここで、熱伝導Kは、熱伝導率κと素子の面積Sおよび長さlを用い、上記のとおり、K=κ・S/lと表すことができる。
現在までに得られているBi1.6Pb0.4SrCoY2(Y2=7.5〜8.5)における各方向の電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、および熱伝導率κを図18に示す。ゼーベック係数Sと熱伝導率κの値はともに定常法と呼ばれる方法で測定された値であり、熱平衡状態において素子の両側に0.1Kほどの温度差をつけて熱起電力と温度差を測定して得られた値である。
室温の定常法における結果、κ〜5mW/cmKとS〜100μV/Kとを用いて、STl=KΔTという関係式から見積もられる温度差はΔT〜0.06Kであり本実施例における実測値はこの見積もり値よりも30倍ほど大きな温度差を示していることがわかる。
このことは、0.1Kほどの温度差をつけて熱起電力と温度差を測定する際には素子には10μVほどの電圧がかかるのに対して、10mAの電流を流した際には約0.5mVもの電圧がかかっていることに起因している。つまり、電流を流した本発明の実施例における測定は通常の定常法における測定よりも遙かに大きな摂動を系に加えて測定していることになる。定常法では超えなかった電気伝導層と絶縁層のポテンシャル障壁を本実施例で与えた電流が超えてしまったために通常の電気伝導の効果を超えたトンネル電流や電子放出の効果による熱電変換効果が観測されたと考えられる。
本実施例では、S/Kが定常法による測定結果の約30倍の値が得られたが、熱伝導Kが約1/30に小さくなったと考えるよりもゼーベック係数Sが約30倍大きくなったと考える方が自然である。この結果を性能指数で考えた場合、性能指数ZT=S/ρκは定常法による測定に比べて約900倍も大きくなったことになる。
このように、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配列した層状物質の層間方向についての熱電変換特性は、通常の熱平衡状態において微小な温度差によって測定される定常法で得られている熱電変換性能よりも性能指数ZTで約900倍もの大きさになる。
上記の実施例とは対照的に、電気伝導層の面内方向の熱電変換性能では、熱平衡状態に微小な温度差をつけた定常法によるデータと、本実施例のように電流を流して測定するHarman法によるデータとは極めてよい一致を示すことがわかった。
つまり摂動の大きさの違いによる熱電変換特性の違いは層間方向に特有の現象であり、トンネル電流や電子放射現象という新しい効果によって理解されるものである。この効果により、電気伝導層と電気絶縁層との層間方向の熱電変換特性は定常法で得られている熱電変換性能よりも性能指数ZTで約900倍もの大きさになり、50Kから800Kの間での広い温度範囲でZT>1に匹敵する高性能を実現することがわかった。
本実施例では、基体上にエピタキシャル成長させたCaCoの熱電性能について記載する。
図19に、本実施例で基体11上にエピタキシャル成長させたCaCo薄膜を示す。CaCoは電気伝導層22としてCoO層を、電気絶縁層23として式CaCoOにより示される3層の岩塩構造を有する。この薄膜の結晶のa軸方向20は、基体11の表面に垂直であり(換言すれば結晶はa軸配向しており)、c軸方向10は面内方向に沿っている。基体としては、サファイアAlのA面基板を用いた。
この薄膜は、Co、CaOの紛体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、Arが80%、Oが20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングした後、700℃に加熱した基板上にプレスパッタリングと同様の条件で5時間かけて堆積を行った。その後酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やすと、膜厚1000nmの金属光沢をもつ薄膜が得られた。
こうして得たCaCo薄膜のX線回折測定の結果を図20に示す。サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による同系列のピークが観測された。これらは、それぞれ(110)、(220)のピークであった。これにより、CaCo薄膜は(110)面と基板とが平行となるように結晶配向して成長したことが確認された。さらに4軸X線回折測定によりCaCoの結晶のc軸は薄膜面内に配向していることがわかった。
図19のような結晶配向をとると、c軸方向と、c軸に対して垂直な方向、すなわちCoO層に平行な方向との2つの向きの物性測定が可能である。
図21に、各々の向きに測定して得たCaCo薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す。ここで、ρはc軸方向、層間方向についての電気抵抗率であり、ρabは、各層に平行な方向についての電気抵抗率である。
上記から得た素子に、Ca0.5CoO薄膜のc軸方向に9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ400nmのAu電極をこの薄膜上にスパッタ法で堆積させた。また、基体を介した熱伝導により、発生した温度差が直ちに解消される効果を軽減するために、電極間において幅約2mmの部分の基体を厚さ約1μmになるようにイオンビームエッチングにより薄型化し、基体部にくびれ構造を設けた。
室温において、2つのAu電極間の抵抗値は約400Ωであった。電極間に0.003mAの電流を定常的に流したところ、両端に約1Kの温度差がついた。c軸方向の電気抵抗とゼーベック係数、その他基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は0.1Kであるので、実験値は理論値の10倍にもなった。これを熱電変換性能指数ZTに換算すると定常法による測定と比べて約100倍も大きくなったことになる。この場合も50Kから800Kの間での広い温度範囲でZT>1に匹敵する高性能を実現することがわかった。
本発明によれば、通常の電気伝導現象の効果(Thermoelectric効果)を超えたトンネル電流や熱電子放射現象により、従来は想定されていなかった程度に高い熱電変換性能を有する熱電変換デバイスを提供できる。このデバイスの作製には、フォトリソグラフィーに代表される従来の薄膜素子形成のプロセスも適用できる。このデバイスは、電極間の距離を自在に長く確保することが容易であるため、高効率化を図りやすい。このように、本発明は、熱電変換デバイスの分野において、高い工業的利用価値を有する。
本発明は、ペルチェ効果やゼーベック効果により、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換する熱電変換デバイスに関する。
熱電発電は、ゼーベック効果、すなわち物質の両端に温度差を付与するとその温度差に応じて熱起電力が生じる現象、を利用して熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術であり、外部に負荷を接続して閉回路を構成することにより電力を取り出すことができる。この技術は僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源等として実用化されている。
熱電冷却は、ペルチェ効果、すなわち電流によって運ばれる電子によって熱が移動する現象、を利用する技術である。具体的には、例えばp型半導体とn型半導体といったキャリアの符合の異なる2つの物質を熱的に並列に、かつ電気的に直列に接続して電流を流したときに、キャリアの符号の違いが熱流の向きの違いに反映することを利用して接合部を吸熱する。この技術は、宇宙ステーションにおける電子機器の冷却のような局所冷却、ワインクーラー等として実用化されている。
通常、熱電変換材料の性能は、性能指数Z、またはこれに絶対温度Tをかけて無次元化された性能指数ZTで評価される。ZTは、当該材料のS:ゼーベック係数、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率、を用い、式ZT=S2/ρκ により示される。性能指数ZTによる評価において、従来の熱電変換材料は、十分な実用レベルに達しているとはいえない。
これまで、多くの材料が熱電変換材料として検討されてきた。例えば、層状酸化物であるNaxCoO2が優れた熱電変換性能を示すことが報告されている(特開平9−321346号公報、国際公開第03/085748号パンフレット参照)。国際公開第03/085748号パンフレットでは、熱電変換膜として、サファイア基体のc面上に形成された、c軸配向の、すなわちc軸が基体の面に垂直に配向した、NaxCoO2膜が開示されている。
NaxCoO2は、電気伝導層であるCoO2層と電気絶縁層であるNa層とが交互に配置された構造を有する。上記式より明らかなように、性能指数ZTを上げるためには低い電気抵抗率が望ましい。このため、NaxCoO2に代表される層状酸化物を熱電変換材料とする場合、従来は、専ら、電気伝導層の面内方向についての熱電変換性能を引き出す試みが為されてきた。
層状酸化物については、結晶配向を良好にすることによって面内方向の電気抵抗の低減が図られている。例えば、特開2000−269560号公報では、結晶方位の揃った焼結体が開示されている。特開2003−95741号公報にも、配向性を有する多結晶体が開示されている。
結晶方位の揃った物質の製造方法としては、板状テンプレートを用いて結晶配向した物質を製造する方法(特開2002−321922号公報、特開2002−26407号公報参照)、焼結体を粉砕、成型した後に加熱溶融、冷却して結晶化する方法(特開2002−111077号公報)、原料を溶媒に溶かして得たゲルを焼成して板状結晶を成長させる方法(特開2003−34583号公報)等が提案されている。
これらの技術は、すべて、層状酸化物の配向性を向上することによって面内方向の電気抵抗率を低減させ、その結果として、熱電変換性能を向上させるものである。
しかし、上記従来の方法では、実用の目安とされているZT>1のレベルを限られた物質において、またある温度範囲でわずかに超えるにとどまっており、さらに広い普及を目指した熱電変換性能指数のレベルZT>3には遥かに届かないのが現状である。
従来の熱電変換デバイスを開示する公報を、以下にまとめて記載する。
特開平9−321346号公報
特開2000−269560号公報
特開2003−95741号公報
特開2002−321922号公報
特開2002−26407号公報
特開2002−111077号公報
特開2003−34583号公報
特開2003−133600号公報
特開2002−270907号公報
特開平11−330569号公報(段落番号0002)
国際公開第03/085748号パンフレット
特開2002−316898号公報
特開2002−141562号公報
層状物質における電気伝導層の面内方向についての熱電変換性能は、その結晶配向性を改善しても、実用レベルに要求されるレベルには到達できていない。
本発明者らは様々な層状物質の熱電変換特性を電気伝導層の面内方向だけでなく、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置された方向(層間方向)についても鋭意研究を重ねた結果、印加する外場の大きさによっては層状物質の電気伝導層と電気絶縁層の層間方向が意外にも高い熱電変換性能を示すことを発見し、本発明に到達するに至った。
本発明は、基体と、前記基体上に配置された熱電変換膜と、一対の電極とを具備する熱電変換デバイスであって、前記熱電変換膜は、エピタキシャル成長により得られ、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されてなり、前記電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、前記電気絶縁層は、金属元素単体または結晶性金属酸化物からなり、前記電気伝導層および前記電気絶縁層からなる層状物質についてのc軸は、前記基体の面内方向と平行であり、前記一対の電極は、前記c軸に沿って電流が流れるように配置されている、熱電変換デバイスを提供する。
また、本発明は、この熱電変換デバイスを用いた冷却方法および発電方法を提供する。本発明の冷却方法は、上記の熱電変換デバイスを用い、一対の電極の間に電流を流すことにより、一対の電極の間に温度差を生じさせ、一対の電極のいずれか一方を低温部とする冷却方法である。本発明の発電方法では、上記の熱電変換デバイスを用い、一対の電極の間に温度差が生じるように熱を与えることにより、一対の電極の間に電位差を生じさせる。
本発明によれば、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置された層間方向の熱電変換特性を利用することにより、広い温度領域で従来よりも優れた熱電変換性能が得られる。この優位性は層状物質の層間伝導に基づいている。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示した熱電変換デバイスは、板状の基体11と、基体11上の熱電変換膜12と、熱電変換膜12に接して基体11の左右に配置された一対の電極13a,13bと、を備えている。
図2に、熱電変換膜12の結晶構造を例示する。熱電変換膜12は、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された層状構造を有する。すなわち、熱電変換膜12は、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された結晶性薄膜からなる。
結晶学的には、層間方向、すなわち層面に対して垂直な方向をc軸方向10と呼ぶ。一対の電極13a,13bは、c軸方向10に沿って電流を流すことができるように配置されている。
熱電変換膜12は、エピタキシャル薄膜(エピタキシャル成長膜)であり、c軸方向10が基体11の面内方向に沿った配向性を有する。換言すれば、熱電変換膜12は、各層22,23が基体11の表面に対してほぼ垂直に成長した結晶構造を有する。
電極13a,13bは、これら電極の間に電圧を与えたときに電流が熱電変換膜12内をc軸方向10に沿って流れるようにこの方向について離間して配置されていればよく、図1に示したように熱電変換膜12の表面に接して設ける必要はない。
基体11は、熱電変換膜12のエピタキシャル成長の起点を提供する。好ましい基体11としては、Al23、MgAl24、SrTiO3、MgO、TiO2等の単結晶基板を挙げることができる。ただし、単結晶基体の上にエピタキシャル成長させた熱電変換膜を当該基体と分離し、別に準備した基体11の上に配置してもよい。
熱電変換膜12は、図2に示すように、電気伝導層22と電気絶縁層23とが交互に配置された結晶構造を有する結晶性薄膜である。酸化物層状物質は、空気中でも安定であるために望ましい。熱電変換性能に優れる層状物質としては、電気伝導層22は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に頂点に酸素が位置する八面体(正八面体)結晶構造を有する。遷移金属原子Mは、下記に例示する元素、特にCoおよびMnから選ばれる少なくとも1種が好ましい。電気伝導層22が遷移金属原子MとしてCoを含有し、かつ互いに稜を共有するCoO2八面体結晶構造を有する熱電変換膜12からは、優れた熱電変換性能が得られる。MO2八面体が互いに稜を共有しながら連なって層を構成する構造は、CdI2型構造と呼ばれる。
電気伝導層22がCdI2型構造を有する熱電変換膜12としては、式AX1MOY1により示される組成を有する膜が挙げられる。この膜は、電気絶縁層23としての層Aと、電気伝導層22としての層MOY1とが交互に配置された層状物質である。
ここで、Aは、Na、K、Li等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Hg、Tl、PbおよびBiから選ばれる少なくとも1種の元素である。Mは、遷移金属元素、好ましくはCo、Ni、Ti、Mn、FeおよびRhから選ばれる少なくとも1種の元素、より好ましくはCoおよびMnから選ばれる少なくとも1種である。また、0.1≦X1≦0.8、好ましくは0.2≦X1≦0.8であり、1.5≦Y1≦2.5、好ましくは1.8≦Y1≦2.2である。元素AおよびMは、2種以上であってもよく、例えば元素Aは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の一部を、Hg、Tl、Pb、Biにより置換したものであってもよい。Y1は2が好ましいが、Y1は膜の作製方法、条件等に依存するため、厳密に2とすることは困難である。以下の説明ではY1=2と便宜上表記することがあるが、この表記は厳密に2であることを意味しない。一方、X1については、ある程度人為的に調整できる。なお、上記式において、O(酸素)に代えて、S(イオウ)やSe(セレン)を用いることも考えられる。
金属元素Aは結晶中の各サイトを(X1)×100%の割合でランダムに占有するため、キャリアの散乱が頻繁に起こる。このため、元素Aとして単体では金属となる元素(金属元素)を用いても、層Aは電気絶縁的な性質を有する。また、金属元素Aからなる層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に頂点に酸素が位置する八面体結晶構造を有する電気伝導層22にキャリア(式AX1MOY1により示される組成を有する膜では電子)を供給する役割を有する。この役割を有する層は絶縁性となる。この限りにおいて、X1は1.0、すなわち、結晶中の全てのサイトに金属元素Aが位置していてもよい。
式AX1MOY1により示される組成を有する熱電変換膜12は、より詳しくは、1層が1ないし3モノレイヤーのMO2からなる電気伝導層22と、1層が1ないし4モノレイヤーからなる電気絶縁層23との交互積層体である。4モノレイヤー以上の厚みの電気伝導層22、または5モノレイヤー以上の厚みの電気絶縁層23を有する熱電変換膜12を作製することは現状の技術では困難であるが、このような膜が本発明から排除されるわけではない。
なお、図2では、電気伝導層22と電気絶縁層23とが1モノレイヤーごとに交互に配置された結晶構造が示されている。
電極13a,13bの間に直流電圧を印加すると、熱電変換膜12のc軸方向に沿って電流が流れ、それに付随して熱が運ばれ、その結果、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が生じる。電流を逆に流せば、発熱と吸熱とが反転する。
キャリアがホールである場合、電極13aをプラス極、電極13bをマイナス極とすれば、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が起こる。元素MをNiとするとキャリアが電子になる傾向がある。この場合、電極13aをマイナス極、電極13bをプラス極とすれば、電極13aの側で吸熱、電極13bの側で発熱現象が生じる。このように、図示したデバイスは、熱電冷却デバイスとして用いることができる。なお、電極13aと電極13bとを厳密に区別する場合には、前者を「第1電極(参照符号:13a)」、後者を「第2電極(参照符号:13b)」と記述する。
これまで、層状構造を有する熱電変換膜12では、そのc軸方向10については、電気抵抗が大きくゼーベック係数が小さいため、熱電変換性能ZTは使用に足るものではないと考えられてきた。本発明者等は様々な条件を検討し最適化することにより、基体11上に、層間方向(c軸方向10)が面内方向に沿った層状物質の作製に成功した。そして、この層状物質を熱電変換膜12として外場の方位による熱電変換性能の関係を詳細に調べていく過程で、外場の大きさによっては層間方位において予想外に大きい熱電変換性能が得られることを見出した。
この理由として、一つは熱電子放出的な機構が考えられるが、この層状物質の場合には放出媒体が真空ではなく電気絶縁層23であるため、トンネル伝導的な効果も入り交じった複雑な機構が関与していると推察される。
同様の構成において、電極13a,13bとの間に温度差を付与することにより、熱電変換膜12内で熱エネルギーを持ったキャリアがその温度差を打ち消すように電極13a,13bの間を移動することから、結果として電流が流れる。この効果を利用し、電極13a,13bを介して電力を取り出すことができる。このように、図示したデバイスは、熱電発電デバイスとしても使用できる。
本発明によれば、熱電変換膜12のc軸方向10についての電極13a,13bの間隔は自在に設定することができるため、熱の戻りの少ない高効率のデバイスを実現できる。これにより、高温部と低温部との温度差を大きくすることが可能となる。
基体11の表面に対して各層22,23が垂直に立った構造(図2参照)、換言すればc軸方向10が面内方向となった構造を有する熱電変換膜12を得るためには、基体11の材料と薄膜作製時の基体11の加熱温度が重要である。スパッタ法を用いる場合の基体温度は、元素Aの種類にもよるが、通常、650〜750℃の範囲が好ましい。
なお、薄膜の組成に関しては、例えば元素AがNaの場合には0.3≦x≦0.6、元素AがSrの場合には0.3≦x≦0.5、元素AがCaの場合0.4≦x≦0.7とすると、結晶性が良好な膜が得られる。
熱電変換膜12の作製方法は特に限定されず、スパッタ法、蒸着法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法等の気相成長によるもの、あるいは液相や固相からの成長等、種々の方法を使用できる。
基体11の材料としては、基体11と熱電変換膜12との格子整合性が比較的良い、サファイアAl23、MgO、SrTiO3、LaAlO3、NdGaO3、YAlO3、LaSrGaO4、LaSrAlO4、MgAl24、ZnO、ZrO2、TiO2、Fe23、Cr23、Si、GaAs等の単結晶材料が好ましい。ただし、基体の結晶面は適切に選択する必要がある。例えば、NaX1CoOY1膜をサファイアのC面上に成膜したのでは、c軸方向10を基体の面内方向に配向させることは困難である。この場合は、サファイアのA面またはM面を選択する必要がある。
基体11上に、c軸方向10が面内方向に沿った構造を有する膜を予め形成し、その後、液相エピタキシャルプロセス等によりこの膜を厚膜化することにより、熱電変換膜12を得ることも可能である。この方法によれば、層間に流れる電流、または熱流の有効面積を大きくとれるので、より効率の良い熱電変換が達成される。液相プロセスとしては、例えば層が垂直に立ったa軸配向のNa0.5CoO2薄膜の場合には、NaClをフラックスとしてCo34およびNa2CO3の粉体を混ぜて1000℃で溶かした融液中に薄膜を基体ごと浸し、900℃にまで徐々に冷却することにより1mm程度のNa0.5CoO2厚膜を得ることが可能である。
本発明による熱電変換デバイスでは、一対の電極13a,13bの間に狭持された領域の一部において、基体11の厚みを減少させてもよい。図3に、くびれ構造31を有する基体11を例示する。
基体11の加工は、基体11の裏面(熱電変換膜12を形成した面と反対側の面)から、ダイヤモンド砥石等を用いた機械的な研削、化学的エッチング、イオンビームエッチング等によって行えばよい。こうして形成したくびれ構造31により、基体11の熱伝導による熱電変換膜12で発生する温度差の緩和(熱損失)を抑制できる。熱電変換膜12が厚い場合には、くびれ構造31を熱電変換膜12に食い込ませてもよい(後述する図4(c)も参照)。すなわち、基体11の厚みは局部的に0であってもよい。図3に示したように、c軸方向10と交差するように基体11を横断する領域31において、基体11の厚みを低減させることが好ましい。
熱電変換膜12は、エピタキシャル成長により得られるが、エピタキシャル成長の起点を提供する基体(成長基体)をそのままデバイスにおける基体(使用基体)11とする必要はない。すなわち、熱電変換膜12を、成長基体上にエピタキシャル成長させた後に、当該成長基体を除去し、使用基体上に移動させてもよい。成長基体の除去は、成長基体の研削、成長基体からの膜の分離、等により行えばよく、具体的には、レーザー照射、水蒸気暴露、放電加工等により行うことができる。熱伝導率が低い樹脂、ガラス等からなる基体、特に樹脂基板を使用基体11として用いれば、熱損失の少ない熱電変換デバイスを得ることができる。
使用基体による熱電変換膜12の支持は、成長基体を除去する前後のいずれに行ってもよい。例えば、使用基体とする樹脂基板により熱電変換膜12を支持しながらこの膜を成長基体から分離してもよく、熱電変換膜12を成長基体から分離してから使用基体とする樹脂基板上に配置してもよい。
本発明による熱電変換デバイスは、基体11と熱電変換層12との間に配置された緩衝層をさらに含んでいてもよい。
緩衝層を含む熱電変換デバイスの図4A〜図4Cに例示する。まず、基体11上に下地緩衝層41をエピタキシャル成長させ、この下地緩衝層41をテンプレートとして、c軸方向10が面内方向に沿った熱電変換膜12をエピタキシャル成長させる(図4A)。
この場合、基体11は、下地緩衝層41がエピタキシャル成長する限り制限はなく、上記に例示した基板に加え、Si等の半導体基板を用いてもよい。下地緩衝層41の材料としては、例えば、酸化物、金属、具体的には、CeO2、ZrO2、TiO2、ZnO、NiO、Fe23、Cr23、Al23、Cr23、CrおよびPtから選ばれる少なくとも1種を含む材料が挙げられる。
下地緩衝層41を用いて熱電変換膜12を成長させると基体11の除去が容易となり、素子構成についての自由度が高くなる。
下地緩衝層41は、基体11の一部の厚みを低減する形態に適用することもできる。例えば基体11をイオンビームエッチング等の方法で研削する場合には、下地緩衝層41を構成する元素を検出する手段を設置しておくと、精度良く基体11を研削できる。この研削により、くびれ構造42の最深部を下地緩衝層41内にとどめれば、基体11を分断し(基体11の厚みを部分的に0とし)、かつ熱電変換膜12の厚みを維持した熱電変換デバイスを得ることができる(図4B)。
金属膜を下地緩衝層41とする場合には、くびれ構造42により下地緩衝層41を基体11とともに分断し、高温部と低温部との電気的な短絡を防ぐとよい(図4C)。
下地緩衝層41は、2以上の層を積層した多層膜としてもよい。
以上では、式AX1MOY1により示される組成を有する熱電変換膜を中心に説明したが、本発明における熱電変換膜12がこれに限られるわけではない。
例えば、遷移金属原子Mが中心に位置する八面体結晶構造を有する別の電気伝導層22としては、ペロブスカイト型構造を有する層が挙げられる。
電気絶縁層23は、層Aのように、単一の金属元素から構成されていてもよい。この場合、金属元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Bi、Pb、Hg、およびTlから選ばれる少なくとも1種の元素であってもよく、この電気絶縁層は、1〜3モノレイヤーから構成されていてもよい。電気絶縁層23は、結晶性金属酸化物から構成されていてもよい。この場合、この電気絶縁層は、1〜4モノレイヤーから構成されていてもよい。
電気絶縁層は、岩塩型構造を有していてもよい。岩塩型構造は、金属原子と酸素原子とから構成され、例えば、Sr2(Bi2-X4PbX424、Ca2(Co1-X5CuX524、(Ca,Bi)2CoO3、およびSr2TiO3から選ばれる少なくとも1つにより示される組成を有していてもよい。ここで、0≦X4≦1、0≦X5≦1である。
熱電変換膜12の別の例としては、式Bi2-X2PbX2Sr2Co2Y2により示される組成を有する膜が挙げられる。ここで、0≦X2≦0.5であり、7.5≦Y2≦8.5である。この膜は、後述するように、例えば、CoO2電気伝導層と、4モノレイヤーの岩塩型構造からなる絶縁層との積層構造を有する。
熱電変換膜12のまた別の例としては、式(Ca1-X3-Y3SrX3BiY33Co49により示される組成を有する膜が挙げられる。ここで、0≦X3<1であり、0≦Y3≦0.3である。この膜は、後述するように、例えば、CoO2電気伝導層と、3モノレイヤーの岩塩型構造からなる絶縁層との積層構造を有する。
熱電変換膜12は、電気伝導層22が、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種を含み、かつペロブスカイト型構造またはCdI2型構造を有し、電気絶縁層23が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Bi、Pb、Hg、およびTlから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ岩塩型構造を有する、膜であってもよい。
本発明による熱電変換素子は、層状物質の層間方向の物性を利用するが、その際に電極間の距離は長く、かつ電極の面積は小さいことが望ましい。この理由を以下に示す。実際の熱伝導Kは熱伝導率κ、素子の面積S0および長さlを用い、K=κ・S0/lの関係で示される。熱電変換デバイスでは、ペルチェ効果により生じた温度差の緩和を防ぐため、熱伝導は小さいほうが好ましい。実際の熱伝導を小さくしようとすると、素子は、その長さが長く、面積が小さいほうがよい。このため、素子は細長く加工して使用することが望ましい。薄膜等の小さな素子においては、フォトリソグラフィー技術等による加工でその性能を上げることもできる。
本発明の熱電変換デバイスでは、熱電変換膜の膜厚方向にではなく、膜面方向に電流を流すため、素子の長さlを確保することは容易である。c軸が基体面に対して垂直に配向するようにエピタキシャル成長させた膜の場合、素子の長さlは膜の厚みによって制限され、1mm以上とすることは困難である。これに対し、本発明の熱電変換デバイスでは、素子の長さlを1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、特に好ましくは9mm以上とすることができる。具体的には、c軸方向10について、一対の電極13a,13bを所定距離以上、例えば1mm以上、離間して配置するとよい。
本発明による冷却方法および発電方法は、従来から行われてきた方法を、本発明による熱電変換デバイスに適用して実施すればよい。冷却の際には、一対の電極13a,13bの間に、パルス電流を流すとよい。パルス電流を用いると、発熱量を抑えながら、本発明の熱電変換デバイスによる高い熱電変換性能を活かした冷却を行うことができる。運ばれる熱流は流れた電流の積分値によるため、パルス電流を用いても熱流の量はそれほど低減しないが、パルス電流を用いると電気抵抗から生じるジュール熱の発生を抑えることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例も上記と同様、本発明の好ましい実施形態の例示に過ぎない。
(実施例1)
10mm角、厚さ100μmのサファイアAl23のA面基板上に、層状酸化物Na0.4CoO2を成膜した。成膜方法は、直径4インチのNa0.5CoO2焼結体ターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリングとした。
Arが80%、O2が20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングをした後、700℃に加熱した基板上にプレスパッタリングの時と同様の条件で5時間堆積を行い、その後加熱された基板上の薄膜を酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やした結果、膜厚1000nmの金属光沢を持つ薄膜が得られた。
エネルギー分散型蛍光X線分析により、薄膜におけるNaとCoとの組成比がおよそNa:Co=0.4:1であることを確認した。
こうして得られたNa0.4CoO2薄膜のX線回折測定の結果を図5に示す。
サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による同系列のピークが観測された。これらはそれぞれ(200)、(400)のピークであった。
これにより、Na0.4CoO2薄膜は(100)面と基板の表面とが平行となるように結晶配向してエピタキシャル成長したことが確認された。さらに4軸X線回折測定によりNa0.4CoO2の結晶のc軸が薄膜面内方向に配向していることが確認された。
このNa0.4CoO2薄膜の基板に対する結晶配向は図2と同様である。このような配向性を有する結晶では、c軸方向と、c軸に対して垂直な方向、すなわち各層に平行な方向、との2つの方向についての物性測定が可能である。
図6に、各方向について測定したNa0.4CoO2薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す。ここでρcはc軸方向、すなわち各層の層間方向についての電気抵抗率である。ρabは各層に平行な方向についての電気抵抗率である。
図7に、Na0.4CoO2薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す。ここで、Scは層間方向についてのゼーベック係数であり、Sabは各層に平行な方向についてのゼーベック係数である。
これらの結果をそのまま受け入れると、以下の推測が成り立つ。すなわち、各層に平行な方向では電気抵抗率が低く、かつゼーベック係数が大きいために、電気抵抗率が高く、ゼーベック係数が小さい層間方向からよりも、良好な熱電変換特性が得られる、という推測である。
この推測の現実の使用における妥当性を検討するために、熱電変換デバイスを作製した。まず、図8Aに示すように、熱電変換膜(Na0.4CoO2薄膜)12の上にエポキシ樹脂をコーティングして凝固させ、支持体81とした。次いで、基板11/熱電変換膜12/支持体81からなる積層体を、水蒸気を含む密閉容器中に30時間放置した。
その結果、Na0.4CoO2薄膜12とサファイア基板11との界面に水分子が浸透することにより、薄膜に応力が加わってNa0.4CoO2薄膜12がサファイア基板11から剥離した。
さらに、熱電変換膜(Na0.4CoO2薄膜)12の支持体81と反対側の表面に、c軸方向10について9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ500nmのPt電極13a,13bをスパッタ法で堆積した。こうして、エポキシ樹脂からなる新たな基体81を有する熱電変換デバイス82を得た。
室温において、2つのPt電極13a,13bの間の抵抗値は約100Ωであった。電極間に0.1mAの直流電流を定常的に流したところ、両端に約3℃の温度差がついた。電流の向きを反転させると、高温部と低温部は反転した。
図6および図7に示したc軸方向の熱電性能(ρc,Sc)、基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は1℃以下である。従って、実験値は定常的な熱電性能から予想される変換効率の3倍以上にもなった。
一般的に熱電変換性能指数ZTはゼーベック係数の2乗の項を有するため、ゼーベック係数に相当する物理量が3倍以上の場合、ZTは1桁程度向上していることになる。
図6および図7による推測値から実測値が大きく乖離した理由については、下記で解析する(実施例4の欄参照)。
(実施例2)
CaO2、Co34の粉体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、実施例1と同様のスパッタリング条件で10mm角、100μm厚のサファイアM面基板に膜厚1000nmの薄膜を成長させた。
エネルギー分散型蛍光X線分析により、この薄膜におけるCaとCoとの組成比がおよそCa:Co=0.5:1であることが確認された。このCa0.5CoO2薄膜のX線回折測定の結果を図9に示す。サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による(020)と指数付けされるピークのみが観測された。
これにより、Ca0.5CoO2薄膜は(010)面と基板とが平行となるようにエピタキシャル成長したことが確認された。また4軸X線回折測定によりCa0.5CoO2の結晶のc軸は薄膜の面内に配向していることが確認された。
薄膜作成直後のCa0.5CoO2薄膜は薄い褐色をしていたが、酸素雰囲気中、300℃で2時間アニールを行うとCa0.5CoO2薄膜は金属光沢をもつ黒色になった。
図10に、Ca0.5CoO2薄膜の電気抵抗の温度依存性を示す。ここで、ρcはc軸方向、即ちCa層とCo層とからなる層状物質の層間方向についての電気抵抗率であり、ρabは各層に平行な方向の電気抵抗率である。
図11に、Ca0.5CoO2薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す。ここで、Scはc軸方向についてのゼーベック係数であり、Sabは各層に平行な方向のゼーベック係数である。
さらに、Ca0.5CoO2薄膜のc軸方向に9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ400nmのAu電極を薄膜上にスパッタ法で堆積させた。また、基板を介した熱伝導により、発生した温度差が直ちに解消される効果を軽減するため、図3に示したように、電極間を横断する幅約2mmの領域において、厚さが約1μmになるように基板をイオンビームエッチングにより薄型化した。
室温において、2つのAu電極間の抵抗値は約400Ωであった。電極間に0.003mAの電流を定常的に流したところ、両端に約2℃の温度差がついた。図10および図11に示したc軸方向の熱電変換性能の値、基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は0.1℃であるため、実験値は理論値の20倍にもなった。実際に得られた温度差を熱電変換性能指数ZTに換算すると400倍となった。
(実施例3)
実施例1から得た熱電変換デバイスを複数用いて、より大きな実効面積を有するデバイスを作製した。具体的には、図12Aに示したように、電極13a,13bの間の長さが30mm、幅が5mm、厚さ2mmである1000本の熱電変換素子82と、700mm角のアルミナからなる吸熱板121aおよび放熱板121bとを準備した。
吸熱板121aおよび放熱板121bの材料としてアルミナを用いたのは熱伝導率が高く、温度分布が均一になるからである。
各々の熱電変換素子82を電気的に接続するために、吸熱板121aおよび放熱板121bの表面を電気伝導率の高い銅でコーティングした。
銀ペーストを用いて、熱電変換デバイス82の電極13a,13bと吸熱板121aおよび放熱板121bの銅でコーティングされた面とをそれぞれ接合して、図12Bに示した熱電変換デバイスを得た。このデバイスでは、本発明により提供された複数の熱電変換デバイスが吸熱板121aと放熱板12bとの間に電気的に並列に接合されている。このデバイスは、1mWの電力に対し、約3℃の冷却能力を有していた。
(実施例4)
本実施例では、Bi2-X2PbX2Sr2Co2Y2 (X2=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の組成式で記載される層状酸化物の単結晶およびエピタキシャル成長膜の例を取り上げ、この物質の熱電変換特性について記載する。
Bi2-X2PbX2Sr2Co2y (X2=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の単結晶はフローティングゾーン法で作製した。Co(NO3)・H2OのプレカーサーとPbO2、SrO、BiOとを組成のとおりに秤量した後に混合し、200℃まで温度を上げて乾燥させた。得られた粉末をペレット状にした後、1000℃で24時間大気中において焼結して再び紛体状にした。得た粉末を装置のロッドのサイズに適合するようにプレスし、1150℃で約15時間焼結した後に3気圧の酸素雰囲気中で結晶成長させると、黒い光沢を有する長さ4〜6mm、5mm半径の単結晶が得られた。
その結晶構造は図13に示してある。本実施例では結晶をより安定化させるために図13の結晶のBiのサイトを一部Pbに置換したものも用いた。できた物質の結晶構造はX線回折で確認し、その結果を図15Aに示した。図15Aに示したデータはX2=0.4の単結晶に対応する。解析の結果、Pb含有率X(X2)と結晶のc軸長さとの関係を図15Bに示す。さらに、ラウエによる回折像を図16A,図16Bに示す。
得られた結晶の組成はICP(inductively coupled plasma emission spectroscopy)とEDX(electron dispersive X-ray spectroscopy)を用いて確認した。実際の結晶における酸素の量については、組成式のとおり作製できていればY2=8となるところであるが、実際にはこれよりも多く酸素が入ってしまうことが多い。酸素の量はICPやEDXでも同定が困難であるため、Y2は7.5以上8.5以下と表示している。
ここまでBi2-xPbxSr2Co2Y2 (x=0.4等、Y2=7.5〜8.5)の単結晶の作製方法を記したが、Bi2Sr2Co2y (y=7.5〜8.5)をサファイアA面基板上にエピタキシャル成長させて得ることもできた(図14)。具体的には、BiO、SrO、Co34の紛体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、Arが80%、O2が20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングした後、700℃に加熱したサファイアA面基板上にプレスパッタリングと同様の条件で5時間かけて堆積を行った。その後、酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やすと、膜厚1000nmの金属光沢を有する薄膜が得られた。得られた薄膜のX線回折のデータを図17に示す。
次に、測定方法および測定結果の記述に移るが、単結晶の場合と、エピタキシャル成長膜の場合とでほぼ同様の結果が得られたので、以下には、単結晶の場合の測定方法および測定結果を述べる。
上記より得た単結晶を壁開面で壁開して表面を平らに仕上げた後に、壁開面の両側に銀ペーストで電極とクロメルーコンスタンタンで作製した熱電対を取り付けた。この状態で、電気伝導層と電気絶縁層との層間方向に電場を印加して温度差を測る構成になっている。このときの素子の大きさは、2.0mm×2.0mm×0.2mmであった。次に、電極を取り付けた素子をデュアーの中に移し、約2×10-4torrの真空下に設置した。この際、熱のリークを少しでも防ぐためにサンプルは浮かして設置した。
デュアーの外に電源と温度計をそれぞれつなぎ、素子に電流を流してその壁界面の両側の温度差を測定した。電極間に10mAの電流を流すと約2Kの温度差が素子の両端についた。電流の向きを変えると高温部と低温部が反転した。この現象は室温から50Kまで温度を下げても同じように2Kの温度差がついた。
ところで、孤立系に電流を流した際に、流した電流と温度差の間にはゼーベック係数Sと熱伝導Kと用い、STl=KΔTという関係がある。電流によって注入されたエネルギーが熱伝導率を通して温度差となって現れることを示した式で、熱伝導率を測定する際のHarman法と呼ばれる測定法の基本となる式でもある。ここで、熱伝導Kは、熱伝導率κと素子の面積S0および長さlを用い、上記のとおり、K=κ・S0/lと表すことができる。
現在までに得られているBi1.6Pb0.4Sr2Co2Y2(Y2=7.5〜8.5)における各方向の電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、および熱伝導率κを図18に示す。ゼーベック係数Sと熱伝導率κの値はともに定常法と呼ばれる方法で測定された値であり、熱平衡状態において素子の両側に0.1Kほどの温度差をつけて熱起電力と温度差を測定して得られた値である。
室温の定常法における結果、κ〜5mW/cmKとS〜100μV/Kとを用いて、STl=KΔTという関係式から見積もられる温度差はΔT〜0.06Kであり本実施例における実測値はこの見積もり値よりも30倍ほど大きな温度差を示していることがわかる。
このことは、0.1Kほどの温度差をつけて熱起電力と温度差を測定する際には素子には10μVほどの電圧がかかるのに対して、10mAの電流を流した際には約0.5mVもの電圧がかかっていることに起因している。つまり、電流を流した本発明の実施例における測定は通常の定常法における測定よりも遙かに大きな摂動を系に加えて測定していることになる。定常法では超えなかった電気伝導層と絶縁層のポテンシャル障壁を本実施例で与えた電流が超えてしまったために通常の電気伝導の効果を超えたトンネル電流や電子放出の効果による熱電変換効果が観測されたと考えられる。
本実施例では、S/Kが定常法による測定結果の約30倍の値が得られたが、熱伝導Kが約1/30に小さくなったと考えるよりもゼーベック係数Sが約30倍大きくなったと考える方が自然である。この結果を性能指数で考えた場合、性能指数ZT=S2/ρκ は定常法による測定に比べて約900倍も大きくなったことになる。
このように、電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配列した層状物質の層間方向についての熱電変換特性は、通常の熱平衡状態において微小な温度差によって測定される定常法で得られている熱電変換性能よりも性能指数ZTで約900倍もの大きさになる。
上記の実施例とは対照的に、電気伝導層の面内方向の熱電変換性能では、熱平衡状態に微小な温度差をつけた定常法によるデータと、本実施例のように電流を流して測定するHarman法によるデータとは極めてよい一致を示すことがわかった。
つまり摂動の大きさの違いによる熱電変換特性の違いは層間方向に特有の現象であり、トンネル電流や電子放射現象という新しい効果によって理解されるものである。この効果により、電気伝導層と電気絶縁層との層間方向の熱電変換特性は定常法で得られている熱電変換性能よりも性能指数ZTで約900倍もの大きさになり、50Kから800Kの間での広い温度範囲でZT>1に匹敵する高性能を実現することがわかった。
(実施例5)
本実施例では、基体上にエピタキシャル成長させたCa3Co49の熱電性能について記載する。
図19に、本実施例で基体11上にエピタキシャル成長させたCa3Co49薄膜を示す。Ca3Co49は電気伝導層22としてCoO2層を、電気絶縁層23として式Ca2CoO3により示される3層の岩塩構造を有する。この薄膜の結晶のa軸方向20は、基体11の表面に垂直であり(換言すれば結晶はa軸配向しており)、c軸方向10は面内方向に沿っている。基体としては、サファイアAl23のA面基板を用いた。
この薄膜は、Co34、CaO2の紛体の焼結体からなる4インチの原料ターゲットを用い、Arが80%、O2が20%の雰囲気ガスを5.0Paに保ち、出力60Wで1時間プレスパッタリングした後、700℃に加熱した基板上にプレスパッタリングと同様の条件で5時間かけて堆積を行った。その後酸素雰囲気中で2時間かけて室温まで冷やすと、膜厚1000nmの金属光沢をもつ薄膜が得られた。
こうして得たCa3Co49薄膜のX線回折測定の結果を図20に示す。サファイア基板からの回折ピークの他には、薄膜からの回折による同系列のピークが観測された。これらは、それぞれ(110)、(220)のピークであった。これにより、Ca3Co49薄膜は(110)面と基板とが平行となるように結晶配向して成長したことが確認された。さらに4軸X線回折測定によりCa3Co49の結晶のc軸は薄膜面内に配向していることがわかった。
図19のような結晶配向をとると、c軸方向と、c軸に対して垂直な方向、すなわちCoO2層に平行な方向との2つの向きの物性測定が可能である。
図21に、各々の向きに測定して得たCa3Co49薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す。ここで、ρcはc軸方向、層間方向についての電気抵抗率であり、ρabは、各層に平行な方向についての電気抵抗率である。
上記から得た素子に、Ca0.5CoO2薄膜のc軸方向に9mmの間隔が保たれるように、幅0.5mm、厚さ400nmのAu電極をこの薄膜上にスパッタ法で堆積させた。また、基体を介した熱伝導により、発生した温度差が直ちに解消される効果を軽減するために、電極間において幅約2mmの部分の基体を厚さ約1μmになるようにイオンビームエッチングにより薄型化し、基体部にくびれ構造を設けた。
室温において、2つのAu電極間の抵抗値は約400Ωであった。電極間に0.003mAの電流を定常的に流したところ、両端に約1Kの温度差がついた。c軸方向の電気抵抗とゼーベック係数、その他基体による熱損失の効果等を考慮して計算された温度差は0.1Kであるので、実験値は理論値の10倍にもなった。これを熱電変換性能指数ZTに換算すると定常法による測定と比べて約100倍も大きくなったことになる。この場合も50Kから800Kの間での広い温度範囲でZT>1に匹敵する高性能を実現することがわかった。
本発明によれば、通常の電気伝導現象の効果(Thermoelectric効果)を超えたトンネル電流や熱電子放射現象により、従来は想定されていなかった程度に高い熱電変換性能を有する熱電変換デバイスを提供できる。このデバイスの作製には、フォトリソグラフィーに代表される従来の薄膜素子形成のプロセスも適用できる。このデバイスは、電極間の距離を自在に長く確保することが容易であるため、高効率化を図りやすい。このように、本発明は、熱電変換デバイスの分野において、高い工業的利用価値を有する。
図1は、本発明による熱電変換デバイスの一形態を示す斜視図である。 図2は、図1に示した熱電変換デバイスにおける熱電変換膜の結晶構造を示す図である。 図3は、本発明による熱電変換デバイスの別の一形態を示す斜視図である。 図4Aは、緩衝層を有する熱電変換デバイスの一形態を示す斜視図であり、図4Bは、緩衝層を有する熱電変換デバイスの別の一形態を示す斜視図であり、図4Cは、緩衝層を有する熱電変換デバイスのまた別の一形態を示す斜視図である。 図5は、実施例1で作製したNa0.4CoO2薄膜のX線回折の結果を示す図である。 図6は、実施例1で作製したNa0.4CoO2薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。 図7は、実施例1で作製したNa0.4CoO2薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。 図8Aは、実施例1においてNa0.4CoO2薄膜にエポキシ樹脂をコーティングした状態を示す斜視図であり、図8Bは、実施例1で作製した、エポキシ樹脂を基体とする熱電変換デバイスを示す斜視図であり、 図9は、実施例2で作製したCa0.5CoO2薄膜のX線回折の結果を示す図である。 図10は、実施例2で作製したCa0.5CoO2薄膜の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。 図11は、実施例2で作製したCa0.5CoO2薄膜のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。 図12Aは、実施例3で作製した熱電変換デバイスの構成を示すために各構成要素を分解して示す斜視図であり、図12Bは、実施例3で作製した熱電変換デバイスを示す斜視図である。 図13は、実施例4で作製したBi2-XPbXSr2Co2Y単結晶の結晶構造を示す図である。 図14は、実施例4で作製したBi2-XPbXSr2Co2Yエピタキシャル成長膜の結晶構造を示す図である。 図15Aは、実施例4で作製したBi1.6Pb0.4Sr2Co2Y単結晶のX線回折の結果を示す図であり、図15Bは、実施例4で作製したBi2-XPbXSr2Co2Y単結晶のPb含有率Xとc軸長さとの関係を示す図である。 図16Aは、実施例4で作製したBi2Sr2Co2Y単結晶から得たラウエ回折像であり、図16Bは、実施例4で作製したBi1.8Pb0.2Sr2Co2Y単結晶からラウエ回折像である。 図17は、実施例4で作製したBi2Sr2Co2Yエピタキシャル成長膜のX線回折の結果を示す図である。 図18は、実施例4で作製したBi1.6Pb0.4Sr2Co2Y単結晶の電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、および熱伝導率κの温度依存性を示す図である。 図19は、実施例5で作製したCa3Co49エピタキシャル成長膜の結晶構造を示す図である。 図20は、実施例5で作製したCa3Co49エピタキシャル成長膜のX線回折の結果を示す図である。 図21は、実施例5で作製したCa3Co49エピタキシャル成長膜の電気抵抗率ρの温度依存性を示す図である。

Claims (24)

  1. 基体と、前記基体上に配置された熱電変換膜と、一対の電極とを具備する熱電変換デバイスであって、
    前記熱電変換膜は、エピタキシャル成長により得られ、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されて形成されている結晶性薄膜であり、
    前記電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、
    前記電気絶縁層は、金属元素または結晶性金属酸化物からなり、
    前記電気伝導層および前記電気絶縁層から形成されている前記結晶性薄膜のc軸は、前記基体の面内方向と平行であり、
    前記一対の電極は、前記c軸に沿って電流が流れるように配置されている、熱電変換デバイス。
  2. 前記遷移金属原子Mが、CoおよびMnから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  3. 前記電気伝導層が、前記遷移金属原子MとしてCoを含有し、かつ互いに稜を共有するCoO八面体結晶構造を有する請求項2に記載の熱電変換デバイス。
  4. 前記電気絶縁層が、金属元素からなる請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  5. 前記金属元素が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Hg、Tl、PbおよびBiから選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の熱電変換デバイス。
  6. 前記電気絶縁層が、1〜3モノレイヤーからなる請求項4に記載の熱電変換デバイス。
  7. 前記電気絶縁層が、結晶性金属酸化物からなる請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  8. 前記電気絶縁層が、1〜4モノレイヤーからなる請求項7に記載の熱電変換デバイス。
  9. 前記電気絶縁層が、岩塩型構造を有する請求項7に記載の熱電変換デバイス。
  10. 前記電気絶縁層が、Sr(Bi2−X4PbX4、Ca(Co1−X5CuX5、(Ca,Bi)CoO、またはSrTiOにより示される組成を有する請求項7に記載の熱電変換デバイス。
    ただし、0≦X4≦1、0≦X5≦1である。
  11. 前記熱電変換膜が、式AX1MOY1により示される組成を有する請求項1に記載の熱電変換デバイス。
    ただし、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Hg、Tl、PbおよびBiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mは、遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種であり、X1は0.1以上0.8以下の数値、Y1は1.5以上2.5以下の数値である。
  12. 前記Mが、Co、Ni、Ti、Mn、FeおよびRhから選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の熱電変換デバイス。
  13. 前記Mが、CoおよびMnから選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の熱電変換デバイス。
  14. 前記熱電変換膜が、式Bi2−X2PbX2SrCoY2により示される組成を有する請求項1に記載の熱電変換デバイス。
    ただし、X2は0以上0.5以下の数値であり、Y2は7.5以上8.5以下の数値である。
  15. 前記熱電変換膜が、式(Ca1−X3−Y3SrX3BiY3COにより示される組成を有する請求項1に記載の熱電変換デバイス。
    ただし、X3は0以上1未満の数値であり、Y3は0以上0.3以下の数値である。
  16. 前記電気伝導層が、CoおよびMnから選ばれる少なくとも1種を含み、かつペロブスカイト型構造またはCdI型構造を有し、
    前記電気絶縁層が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Hg、Tl、PbおよびBiから選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ岩塩型構造を有する、請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  17. 前記c軸方向について、前記一対の電極が1mm以上離間して配置されている請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  18. 前記一対の電極の間に狭持された領域の一部において、基体の厚みが減少している請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  19. 前記基体と前記熱電変換膜との間に配置された緩衝層をさらに含む請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  20. 前記緩衝層が、CeO、ZrO、TiO、ZnO、NiO、Fe、Cr、Al、Cr、CrおよびPtから選ばれる少なくとも1種を含む請求項19に記載の熱電変換デバイス。
  21. 前記基体の材料が樹脂である請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  22. 基体と、前記基体上に配置された熱電変換膜と、一対の電極とを具備する熱電変換デバイスを用い、
    前記一対の電極の間に電流を流すことにより、前記一対の電極の間に温度差を生じさせ、前記一対の電極のいずれか一方を低温部とする冷却方法であって、
    前記熱電変換膜は、エピタキシャル成長により得られ、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されて形成されている結晶性薄膜であり、
    前記電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、
    前記電気絶縁層は、金属元素または結晶性金属酸化物からなり、
    前記電気伝導層および前記電気絶縁層からなる結晶性薄膜のc軸は、前記基体の面内方向と平行であり、
    前記一対の電極は、前記c軸に沿って電流が流れるように配置されている、冷却方法。
  23. 前記一対の電極の間にパルス電流を流す請求項22に記載の冷却方法。
  24. 基体と、前記基体上に配置された熱電変換膜と、一対の電極とを具備する熱電変換デバイスを用い、
    前記一対の電極の間に温度差が生じるように熱を与えることにより、前記一対の電極の間に電位差を生じさせる発電方法であって、
    前記熱電変換膜は、エピタキシャル成長により得られ、かつ電気伝導層と電気絶縁層とが交互に配置されて形成されている結晶性薄膜であり、
    前記電気伝導層は、遷移金属原子Mが中心に位置すると共に酸素原子が頂点に位置する八面体結晶構造を有し、
    前記電気絶縁層は、金属元素または結晶性金属酸化物からなり、
    前記電気伝導層および前記電気絶縁層からなる結晶性薄膜のc軸は、前記基体の面内方向と平行であり、
    前記一対の電極は、前記c軸に沿って電流が流れるように配置されている、発電方法。
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