JPH11330569A - 熱電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

熱電変換素子およびその製造方法

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JPH11330569A
JPH11330569A JP10129858A JP12985898A JPH11330569A JP H11330569 A JPH11330569 A JP H11330569A JP 10129858 A JP10129858 A JP 10129858A JP 12985898 A JP12985898 A JP 12985898A JP H11330569 A JPH11330569 A JP H11330569A
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film
thermoelectric
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electrode film
temperature
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JP10129858A
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Ichiro Yamazaki
一郎 山嵜
Takatomo Sasaki
孝友 佐々木
Yusuke Mori
勇介 森
Hiroyuki Sonobe
裕之 園部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通電方向が熱電膜の界面に対して垂直方向の
場合、熱電性能を向上させることのできる熱電変換素子
を提供する。 【解決手段】 基板1上に間隔をあけて2つの金属電極
膜2を形成する。一方の金属電極膜2の上にN型熱電膜
3、他方の金属電極膜2の上にP型熱電膜4を成膜す
る。このとき、熱電膜3,4を構成する結晶のc軸が基
板1面に垂直以外に成長するときの温度で、ヨウ化銀を
ドーピングしたBi2Te3とBi2Se3とを交互に積層
してN型熱電膜3を成膜し、Sb2Te3とBi2Te3
を交互に積層してP型熱電膜4を成膜する。両熱電膜
3,4の上にそれらを接続する金属電極膜9を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電効果を利用し
て、太陽熱や人間の体温といった熱エネルギーを電気エ
ネルギーに変換したり、電気エネルギーを熱エネルギー
に変換する熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、異なる2種類の化合物を交互に積
層させた熱電膜(交互積層膜)を用いて、その性能を向
上させる熱電変換素子が提案されている。これには、熱
電膜の界面に対して平行方向に通電するもの(L.D.H
icks and M.S.Dresselhause,Phys.Rev.B47,p.
12727(1993))と、界面に対して垂直方向に通電する
もの(R.Venkatasubramanian,Proceedings of The
12th International Conference on Thermoelectric
s,p.322-p.327)とがある。
【0003】前者は、量子井戸を形成して井戸中のキャ
リアの状態密度を高め、熱電変換素子の性能を向上させ
ようというものであり、後者は、熱の伝達方向を熱電膜
の界面方向とし、フォノンを界面で散乱させて熱伝導率
を下げ、熱電変換素子の性能を向上させようというもの
である。いずれの通電方向の熱電変換素子においても、
熱電膜の一層当たりの膜厚が小さいほど性能は向上する
とされ、一層当たりの膜厚が数nm程度の熱電膜では、
従来のバルク材のものの数倍の性能となることが予測さ
れ、これを実証する実験が進められている。
【0004】上記熱電膜の成膜では、熱電膜の材料の格
子定数と近似した値を有する単結晶基板を用い、基板の
温度を結晶成長に適した温度にすると、熱電膜は、いわ
ゆるエピタキシャル成長する。そして、表面がなめらか
で結晶性が高く、一層当たりの膜厚が数nm程度の熱電
膜が作製される(R.Venkatasubramanian,Proceeding
s of The 15th International Conference on Ther
moelectrics,p.454-p.458等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この熱電膜の実際のデ
バイス化を考えた場合、通電方向が界面に対して平行の
熱電変換素子の場合は、図14に示すように、単結晶基
板20上に熱電膜21を成膜した後、熱電膜21の上に
金属電極膜22および電極取出端子23を形成する。
【0006】一方、通電方向が界面に対して垂直方向の
熱電変換素子の場合は、図15に示すように、単結晶基
板30上に金属電極膜31を形成し、この金属電極膜3
1の上に熱電膜32,33を成膜する。そして、熱電膜
32,33の上に両者を接続するための金属電極膜34
を形成する。
【0007】ところが、金属電極膜31は通常アモルフ
ァス状態であるので、金属電極膜31の上に熱電膜3
2,33を成膜する場合は、各熱電膜32,33がエピ
タキシャル成長しにくく、結晶が粒成長するため、表面
凹凸の高低差が大きくなる。
【0008】図16は、金属電極膜31としての銅膜上
に、熱電膜32,33として基板温度300℃で形成し
たBi2Te3膜の表面をAFM(原子間力顕微鏡)で測
定したときの凹凸を示す図である。同図によれば、Bi
2Te3膜の表面の凹凸の高低差は約200nm程度にも
なり、このような比較的高低差の大きい凹凸があると、
数nm程度の膜厚の超薄膜を積層した熱電膜32,33
を成膜する場合、超薄膜の界面がしっかりできないとい
う問題点がある。そのため、界面があってこそ発揮され
る超薄膜の熱電性能が発揮できなくなってしまう。
【0009】また、通電方向が界面に対して垂直方向の
場合、実際のデバイスでは、熱電膜の形状は立方体形が
よいとされており、成膜速度(1μm/h程度)を考慮
したとき、総膜厚は10μm程度が実際的である。この
ときの1つの熱電膜の平面サイズは10μm角程度が最
適となるので、この大きさの熱電膜をパターン形成する
必要がある。しかし、この場合、微細度を考慮すると、
メタルマスクによるマスク成膜よりも、フォトリソプロ
セス(リフトオフ法)を用いた成膜の方がより適してい
る。
【0010】一般に、リフトオフ法では、成膜時にフォ
トレジストが基板にパターン形成されているため、フォ
トレジストの耐熱温度(約140℃)を超えて成膜する
ことができない。しかし、結晶成長に必要な成膜温度
(例えば、Bi2Te3の場合、約300℃以上)は、フ
ォトレジストの耐熱温度を超えるので、上記熱電膜の成
膜には、リフトオフ法を用いることはできない。そのた
め、通電方向が界面に対して垂直方向の熱変換素子の場
合、微小な平面サイズの熱電膜の成膜は困難であるとい
った問題点があった。
【0011】また、高性能の熱電膜の材料としては化合
物半導体が挙げられるが、この化合物半導体では、構成
元素のうち蒸気圧が異なるものがあると、成膜温度によ
っては蒸気圧の高い元素が再蒸発を起こし、化学量論組
成からのずれを引き起こしてしまうことがある。例え
ば、低温域で高性能を発揮するBi2Te3系化合物にお
いては、テルルの蒸気圧が高いため、成膜温度が高くな
るとテルルが再蒸発を起こし、化学量論組成からのずれ
を引き起こす。
【0012】図17は、Bi2Te3をターゲットとして
レーザーアブレーション法により成膜した場合の、成膜
温度に対するビスマス、テルルの原子数比を示す図であ
る。同図によれば、成膜温度が高くなるにつれてテルル
の再蒸発量が多くなり、ビスマスに対するテルルの原子
数比が小さくなって、化学量論組成(ビスマス:テルル
=2:3)からのずれが大きくなっている。なお、この
ときの成膜圧力は、1×10-4Paである。
【0013】図18は、ビスマス、テルルの原子数比と
熱電能(ゼーベック係数)との関係を示す図である。同
図によれば、化学量論組成からずれると熱電能の値が大
きく下がっている。このような熱電性能の大きな低下を
もたらす組成ずれに対する補償は、いろいろ試みられて
いるが、非常に困難であって成膜システムの複雑化を招
いている。
【0014】また、熱電膜の材料に、いわゆるVb−VI
b族カルコゲン化合物(Bi2Te3、Sb2Te3等)を
用い、成膜温度を高くして熱電膜を成膜すると、熱電膜
の結晶のc軸が基板面に垂直に成長しやすくなる。図1
9は、成膜温度300℃で成膜したBi2Te3膜のX線
回折図である。同図によれば、(006)(0018)等
の面方向においてピークが現れており、これは、結晶の
c軸が基板面に垂直に成長していることを示す。Bi2
Te3系材料においては、c軸に沿った方向の電気伝導
度は、a−b面方向に比べ5分の1程度しかなく、通電
方向が界面に対して垂直方向の場合、平行方向に比べて
電気伝導に関し不利になる。
【0015】そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑
み、通電方向が熱電膜の界面に対して垂直方向の場合
に、熱電性能を向上させることのできる熱電変換素子お
よびその製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に第1
電極膜を形成し、第1電極膜の上に複数の異なる化合物
半導体、例えば、Vb−VIb族カルコゲン化合物材料を
含む化合物半導体を、結晶のc軸が基板面に垂直以外に
成長するときの温度で積層して熱電膜を成膜し、熱電膜
の上に第2電極膜を形成し、アニール処理を施すことに
よって、熱電変換素子を製造するものである。具体的に
は、アモルファス状態の第1電極膜上に、レジストを用
いて室温〜140℃で熱電膜をパターン形成しながら成
膜する。
【0017】上記製造方法により製造された熱電膜の結
晶構造は、そのc軸が基板面に垂直に成長する結晶と、
これ以外の方向に成長する結晶とから構成されることに
なり、通電方向を膜厚方向にするものにおいて、熱電膜
の電気抵抗が下がり、電気伝導率を向上させることがで
きる。また、熱電膜の界面の凹凸の高低差を最大10n
mとすることができ、界面が平滑となり、一層当たり数
nm程度の薄い膜厚の熱電膜を形成する場合に、熱電膜
の熱電性能を高めることができる。
【0018】また、熱電膜を成膜するときの温度は、上
記以外に化合物半導体の構成元素の再蒸発するときの温
度より低い温度でもよいし、あるいは、レジストの耐熱
温度より低い温度でもよい。これにより、化合物半導体
を構成する複数の構成元素のうち蒸気圧の高い元素は再
蒸発を起こさず、化合物半導体の組成ずれが起こらない
ので、本来の熱電性能を発揮できる。また、レジストの
耐熱温度より低い温度で成膜すれば、成膜に一般的なフ
ォトレジストを使用できる。そのため、リフトオフ法を
用いることができ、平面サイズが10μm角程度の微細
な熱電膜のパターンを形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施
形態に係る熱電変換素子の断面図である。図1におい
て、1は、熱伝導率が高くかつ電気絶縁性が高い材料で
あるアルミナ、窒化アルミニウム等からなる基板であ
る。2は、この基板1の上に形成された、銅、アルミニ
ウムまたは金等からなる第1電極膜としての金属電極膜
である。金属電極膜2は、基板1上に所定の間隔をあけ
て形成される。
【0020】3および4は、2つの金属電極膜2の上に
それぞれ成膜されたN型熱電膜およびP型熱電膜であ
る。各熱電膜3,4は、それぞれ異なる2種類の化合物
半導体がそれぞれ金属電極膜2の表面に対して平行に交
互に積層されて成膜されたものである。
【0021】化合物半導体としては、Vb−VIb族カル
コゲン化合物半導体が用いられるが、この化合物半導体
に不純物を加えた化合物半導体が用いられてもよい。す
なわち、各熱電膜3,4は、異なる2種類のVb−VIb
族カルコゲン化合物半導体が交互に積層されてもよい
し、あるいはVb−VIb族カルコゲン化合物半導体と、V
b−VIb族カルコゲン化合物半導体に不純物を加えた化
合物半導体とが交互に積層されてもよいし、さらには、
異なる2種類のVb−VIb族カルコゲン化合物半導体に
それぞれ不純物を加えた化合物半導体が交互に積層され
てもよい。
【0022】ここでは、N型熱電膜3は、図2に示すよ
うに、化合物半導体材料のBi2Se3を用いた半導体層
5と、不純物を加えた化合物半導体としてヨウ化銀をド
ーピングしたBi2Te3を用いた半導体層6との交互積
層膜である。また、P型熱電膜4は、図3に示すよう
に、化合物半導体材料としてそれぞれSb2Te3、Bi
2Te3を用いた半導体層7,8の交互積層膜である。こ
のN型熱電膜3およびP型熱電膜4は、基板1の温度
(成膜温度)を比較的低温の100℃に設定して成膜さ
れる。そして、成膜後に、300℃でアニール処理が施
される。
【0023】図1に戻り、9は、N型熱電膜3とP型熱
電膜4とを接続するように、各熱電膜3,4上に形成さ
れる銅、アルミニウムまたは金等からなる第2電極膜と
しての金属電極膜である。10は、各熱電膜3,4を覆
うように形成されるポリイミド、ガラス等の断熱性の高
い材料からなる断熱膜である。
【0024】また、11は、金属電極膜9および断熱膜
10の上に形成され、アルミナ、窒化アルミニウム、窒
化シリコンまたは酸化マグネシウム等の熱伝導率の高い
材料からなる絶縁薄膜である。このように、金属電極膜
2,9、各熱電膜3,4を積み上げる構成の熱電変換素
子とすることにより、通電の方向は各熱電膜3,4の界
面に対して垂直方向となる。
【0025】図4は、各熱電膜3,4に用いた4種の材
料のうちBi2Te3について、低温成膜した後にアニー
ルしたときのX線回折図である。同図によれば、例え
ば、(006)、(1010)、(0111)、(11
6)、(0018)、(1115)等の面方向においてピー
クが現れている。これは、従来のように、熱電膜を高温
成膜したとき、熱電膜の結晶のc軸が基板1に対して垂
直になっていたこと(図19参照)に比べて、熱電膜の
結晶構造が、c軸が基板1面に垂直でない方向に成長す
る結晶を含み、この結晶はc軸が基板1面に垂直に成長
する結晶より多くあることを示している。
【0026】
【表1】
【0027】表1に、Bi2Te3を低温成膜後にアニー
ルした熱電膜3,4および高温成膜した熱電膜3,4の
電気抵抗率および熱電能を示す。表1によれば、電気抵
抗率は、低温成膜した後にアニールした前者の方が、高
温成膜した後者に比べ低くなっている。これは、前者の
熱電膜3,4の結晶がc軸配向されていないことを示
す。一方、熱電能は、両者とも同程度になっており、低
温成膜しても熱電能に影響のないことがわかる。
【0028】このように、熱電膜3,4の材料としてV
b−VIb族カルコゲン化合物半導体またはそれに不純物
を加えた化合物半導体を用いて、それらを従来より低温
で交互に積層し成膜することにより、熱電膜3,4は、
c軸が基板面に垂直ではない方向に成長する結晶を多く
含む結晶構造となる。これにより、熱電膜3,4の電気
抵抗を下げ、熱電膜3,4の電気伝導率を高めることが
でき、熱電性能を向上させることができる。
【0029】また、実験により、室温(5〜35℃)に
おいてもc軸が基板1面に垂直でない方向に成長する結
晶が多くなることがわかっている。さらに、250℃以
上ではc軸がほぼ垂直に配向する。したがって、熱電膜
3,4の成膜温度としては、室温〜250℃がよく、電
気伝導の点から室温〜100℃が好ましい。
【0030】図5は、低温成膜の後アニールした熱電膜
3,4の表面形状をAFMにて測定した結果を示す図で
ある。この場合、基板1は、ガラス上に銅を蒸着したも
のを用いている。低温成膜後にアニールした熱電膜3,
4の結晶の表面は、高温成膜した熱電膜の表面(図16
参照)に比べて非常になめらかであり、図5に示すよう
に、熱電膜3,4の界面に形成される凹凸の高低差は、
最大10nmとされる。この程度の凹凸であれば、一層
当たり数nm程度の半導体層5,6および7,8を積層
してなる熱電膜3,4の成膜が可能である。
【0031】そのため、平滑な界面を有する熱電膜3,
4が成膜でき、きれいな界面の短周期の熱電膜3,4と
なる。したがって、熱電膜3,4内の各界面における熱
伝導を小さくして、変換効率を高めながら、電気伝導を
よくすることができ、熱電性能を十分に発揮させること
ができる。
【0032】なお、室温および100℃では平滑な膜が
でき、300℃では図16に示すような凹凸の大きな膜
になることが実験によりわかっている。したがって、熱
電膜3,4の成膜温度としては、室温〜300℃がよ
く、特に室温〜100℃が好ましい。
【0033】また、通電方向が界面に対して垂直方向の
熱電変換素子に、ガラス、セラミックまたはポリイミド
樹脂といった材料からなる安価な基板を用いても、この
基板の表面が平滑でありさえすれば、短周期の交互に積
層された半導体層を有する熱電膜3,4を作製すること
ができる。したがって、製作コストの低減を図れる。
【0034】さらに、熱電膜3,4を比較的低温で成膜
すれば、リフトオフ法を用いても成膜時にフォトレジス
トにその耐熱温度(約140℃)を超える温度がかから
ない。そのため、平面サイズが10μm角程度の微細な
熱電膜3,4のパターンを形成することができる。した
がって、熱電膜3,4に界面に対して垂直方向に電流を
流しても、良好な熱電性能が得られる熱電変換素子を提
供できる。しかも、フォトレジストは高温にならないの
で、一般的なフォトレジストの材料が使用可能であり、
熱電変換素子の作製コストを低減できる。
【0035】また、上記のように成膜温度を低くして熱
電膜3,4を成膜すると、化合物半導体において、テル
ルのような高い蒸気圧を有する構成元素による再蒸発が
なくなり、化学量論組成からのずれをなくすことができ
る。そのため、化学量論組成からのずれによる熱電能の
低下をなくし熱電性能を十分発揮させることができる。
【0036】なお、組成ずれのない膜を成膜できる温度
は、成膜時の真空度により異なり、例えば、1×10-4
Pa程度の高い真空状態では、100℃程度までは組成
ずれを起こさない。一方、1×10-1Pa程度の低い真
空状態では、300℃程度まで組成ずれを起こさない。
すなわち、成膜温度を低くするときは、真空度を高くす
ればよい。また、一般的に、高い真空状態では、MBE
(Molecular Beam Epitaxy :分子線エピタキシー)や
蒸着等の方法が用いられ、低い真空状態では、レーザー
アブレーションやスパッタ等の方法が用いられる。
【0037】なお、熱電膜3,4の材料にBi2Te3
用いた場合について説明してきたが、他の3種の熱電膜
3,4の材料であるBi2Se3、Sb2Te3、ヨウ化銀
をドーピングしたBi2Te3や他のVb−VIb族カルコ
ゲン化合物、およびこれらにドーパントを加えた化合物
であれば、上記と同様の傾向を示す。
【0038】次に、上記熱電変換素子の製造方法につい
て説明する。図6〜12は、熱電変換素子の製造手順を
示す図である。まず、図6に示すように、基板1の上
に、リフトオフ法等を用いて、一対の金属電極膜2を離
間させてパターン形成する。具体的には、図7に示すよ
うに、基板1表面全体に金属電極膜2を生成し、金属電
極膜2の表面全体にフォトレジストを塗布する。次い
で、パターンが焼き付けられているフォトマスクをフォ
トレジスト面に重ねて、紫外線を照射して露光を行う。
そして、フォトマスクにより露光しない部分である金属
電極膜をエッチングして、残留しているフォトレジスト
を除去する。このようにして、金属電極膜2をパターン
形成する次に、図8に示すように、一方の金属電極膜2
の上にN型熱電膜3をパターン形成する。N型熱電膜3
は、例えば10μm×10μm程度の大きさであるの
で、パターニングにはリフトオフ法を用いる。具体的方
法は、図7に示す方法と同様である。N型熱電膜3とし
ては、ヨウ化銀をドーピングしたBi2Te3とBi2
3を交互に、蒸着法で積層して成膜する。なお、蒸着
法に代わり、スパッタリング、MBE、レーザアブレー
ション等の方法を用いてもよい。この場合の成膜温度
は、140℃以下、例えば100℃に設定する。
【0039】図9に示すように、他方の金属電極膜2の
上にN型熱電膜3と同様に、P型熱電膜4をパターン形
成する。この場合、P型熱電膜4は、Bi2Te3とSb
2Te3を交互に積層して成膜する。このように、低温で
各半導体層5,6および7,8を成膜すると、きれいな
界面を有する短周期の交互積層膜ができる。
【0040】図10に示すように、例えば、SOG(Sp
in on Glass)膜をスピンオンして、熱電膜3,4を覆
うように熱伝導率の低い断熱膜10を形成する。次い
で、図11に示すように、各熱電膜3,4の上面に付着
した断熱膜10をフォトレジストおよびフッ化水素酸を
用いて、パターンエッチングする。この断熱膜10の除
去は、レーザの照射により行ってもよい。
【0041】図12に示すように、金属電極膜9をリフ
トオフ法等を用いて両熱電膜3,4の上面を覆うように
パターン形成する。この場合、断熱膜10の表面は、両
熱電膜3,4の表面と面一になるようカットしてもよ
い。そして、図1に示すように、熱伝導率の高い材料か
らなる絶縁薄膜11を金属電極膜9および断熱膜10上
に形成する。
【0042】上記のように形成した熱電変換素子にアニ
ール処理を施す。この場合、アニール処理は、例えば、
窒素雰囲気で300℃、2時間行う。特に、このアニー
ル処理では、各熱電膜3,4の材料や成膜時の成膜温度
を適当に設定すれば、熱電膜の膜質をさらに高めること
ができる。
【0043】表2に、Bi2Te3とSb2Te3を交互に
積層した熱電膜のアニール前後の電気抵抗率および熱電
能を示す。
【0044】
【表2】
【0045】これによれば、アニールを施す前後におい
て電気抵抗率はほとんど変化しないが、熱電能では大幅
な向上がみられた。すなわち、アニールによって、半導
体層5,6,7,8の内部応力が除去されて歪がなくな
り、膜質が良好になり、その結果、熱電変換効率が向上
する。なお、この場合、アニールは、熱電膜3,4が断
熱膜10等によって封じ込められた状態で行われるの
で、テルルの再蒸発はなく化学量論組成からのずれを起
こすことはない。
【0046】なお、上記説明においては、一対の熱電膜
3,4を有する熱電変換素子を例としたが、これを3次
元的に広げることも可能である。すなわち、上記製造方
法ではリフトオフ法を用いているので、横方向への拡大
にはマスクパターンを広げるようにすればよい。また、
上方向に拡大するときは、絶縁薄膜11を基板として、
その上に上記の製造方法で金属電極膜2,9、各熱電膜
3,4、断熱膜10等を成膜し、所望の段数、例えば3
段(図13参照)になるまで成膜を繰り返して形成すれ
ばよい。
【0047】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多く
の修正および変更を加え得ることができる。例えば、上
記実施形態においては、熱電膜は2種類の異なる化合物
半導体を積層して成膜したが、2種類に限らず、それ以
上の種類の化合物半導体を積層して熱電膜を成膜するよ
うにしてもよい。また、化合物半導体の材料は、Bi2
Te3、Bi2Se3、Sb2Te3、Bi2Te3に限ら
ず、他のVb−VIb族カルコゲン化合物を用いてもよ
い。
【0048】
【発明の効果】以上のように、この発明によると、複数
の異なる化合物半導体を積層して熱電膜を成膜する場
合、熱電膜の成膜を低温で行うことにより、熱電膜の結
晶に、c軸が基板面に対して垂直以外の方向に成長する
結晶を含ませることができる。したがって、通電方向を
膜厚方向とした熱電膜における電気抵抗が下がり、高効
率の熱電性能を有する熱電変換素子を提供することがで
きる。
【0049】また、熱電膜の成膜を低温で行うと、熱電
膜の界面を平滑、例えば、熱電膜の界面の凹凸の高低差
を最大10nmとすることができ、界面をきれいに形成
できる。そのため、一層当たり数nm程度の薄い膜厚の
交互積層膜を形成しても、熱電性能を十分に発揮させる
ことができる。
【0050】さらに、熱電膜を低温で成膜すれば、熱電
膜の構成元素の蒸気圧の違いからくる化合物半導体の組
成ずれを防止できるので、本来の熱電性能を発揮でき
る。また、低温で成膜すると、一般的なフォトレジスト
の使用が可能となるので、簡易に任意のパターンに形成
することができ、作製コストを低減できる。しかも、低
温成膜に適したリフトオフ法を用いることができるの
で、平面サイズが10μm角程度の微細な熱電膜のパタ
ーンを形成でき、良好な熱電性能が得られ、理想的な立
方体形状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱電変換素子の断面
【図2】N型熱電膜の断面図
【図3】P型熱電膜の断面図
【図4】低温成膜した熱電膜のX線回折結果を示す図
【図5】低温成膜した熱電膜の界面の凹凸を示す図
【図6】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図7】リフトオフ法の手順を示す図
【図8】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図9】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図10】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図11】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図12】熱電変換素子の製造手順を示す断面図
【図13】熱電変換素子を3段に形成したときの断面図
【図14】従来の通電方向が界面に対して平行の場合の
熱電変換素子を示し、(a) は断面図、(b) は平面図
【図15】従来の通電方向が界面に対して垂直の場合の
熱電変換素子の断面図
【図16】従来の高温成膜した熱電膜の界面の凹凸を示
す図
【図17】従来の成膜温度とビスマス、テルルの原子数
比との関係を示す図
【図18】従来のビスマス、テルルの原子数比と熱電能
との関係を示す図
【図19】従来の高温成膜した熱電膜のX線回折結果を
示す図
【符号の説明】
1 基板 2,9 金属電極膜 3 N型熱電膜 4 P型熱電膜 10 断熱膜 11 絶縁薄膜

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成された第1電極膜と、該第
    1電極膜上に複数の異なる化合物半導体が積層されて成
    膜された熱電膜と、該熱電膜上に形成された第2電極膜
    とからなり、通電方向が前記熱電膜の厚さ方向とされ、
    前記熱電膜の結晶構造は、そのc軸が基板面に垂直に成
    長する結晶と、これ以外の方向に成長する結晶とから構
    成されたことを特徴とする熱電変換素子。
  2. 【請求項2】 c軸が基板面に垂直以外の方向に成長す
    る結晶は、垂直に成長する結晶より多いことを特徴とす
    る請求項1記載の熱電変換素子。
  3. 【請求項3】 熱電膜の界面には凹凸が形成され、該凹
    凸の高低差が最大10nmとされたことを特徴とする請
    求項1または2記載の熱電変換素子。
  4. 【請求項4】 化合物半導体は、Vb−VIb族カルコゲ
    ン化合物材料を含むことを特徴とする請求項1ないし3
    のいずれかに記載の熱電変換素子。
  5. 【請求項5】 基板上に第1電極膜を形成し、前記第1
    電極膜の上に複数の異なる化合物半導体を結晶のc軸が
    基板面に垂直以外に成長するときの温度で積層して熱電
    膜を成膜し、該熱電膜の上に第2電極膜を形成すること
    を特徴とする熱電変換素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 基板上に第1電極膜を形成し、化合物半
    導体の構成元素の再蒸発するときの温度より低い温度で
    複数の異なる化合物半導体を前記第1電極膜の上に積層
    して熱電膜を成膜し、該熱電膜の上に第2電極膜を形成
    することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 基板上に第1電極膜を形成し、レジスト
    の耐熱温度より低い温度で複数の異なる化合物半導体を
    前記第1電極膜の上に積層して熱電膜を成膜し、該熱電
    膜の上に第2電極膜を形成することを特徴とする熱電変
    換素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 熱電膜を形成した後に、アニール処理を
    施すことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記
    載の熱電変換素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 アモルファス状態の第1電極膜上に、レ
    ジストを用いて室温〜140℃で熱電膜をパターン形成
    しながら成膜することを特徴とする請求項5ないし8の
    いずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
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