JP2005044835A - 半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】Si基板上にエピタキシャル積層された誘電体薄膜を有し、しかも、特性ばらつきや駆動力の低下がない半導体装置を提供する。
【解決手段】基板(11)と、前記基板上にエピタキシャル成膜されたロッキングカーブ半値幅が1度以内で膜厚が0.7nm以上10.0nm以下の誘電体薄膜(12)とを具備する半導体装置である。前記誘電体薄膜は、ZrON、HfON、またはCeONからなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体薄膜を有する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ZrOやHfOなどからなる誘電体薄膜は、Si基板上にエピタキシャルに積層することができなかった。さらに、こうした材料は酸素伝導率が高温において高いため、酸素が誘電体薄膜中を移動して基板が酸化され、その結果、Si基板と誘電体薄膜との間には界面層が形成されてしまう。例えば、Si基板上に形成されたHfSiO膜をアニールした場合には、Si基板とHfSiO膜との界面にSiO層が成長することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
それゆえ、こうした材料をトランジスタのゲート絶縁膜として用いようとしても、トランジスタ作製プロセスにおいてゲート絶縁膜中にムラが生じて特性ばらつきが発生したり、トランジスタ駆動力が低下してしまうという問題があった。
【0004】
【非特許文献1】
T.Ino et al.,ISTC, 98(2002)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Si基板上にエピタキシャル積層された誘電体薄膜を有し、しかも、特性ばらつきや駆動力の低下がない半導体装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様にかかる半導体装置は、基板と、前記基板上にエピタキシャル成膜されたロッキングカーブ半値幅が1度以内で膜厚が0.7nm以上10.0nm以下の誘電体薄膜とを具備し、前記誘電体薄膜は、ZrON、HfON、CeON、または下記一般式(1)で表わされる化合物からなることを特徴とする。
【0007】
Me(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3) 一般式(1)
(上記一般式(1)中、Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。xおよびyは、0<x<0.75,0≦y<1,0<x+0.25y<1,3<8x+6y<6を満たす実数であり、かつ下記数式(2)で表わされる関係を、1.7%以内の精度で満たす。)
(aMeON×4/3−aMeO×2/3)×x+aLn×y+aMeO×2×(1−x−y)=r×aSiGe数式(2)
(ただし、aMeONは欠陥蛍石型立方晶MeON結晶の面内格子定数、aLnは欠陥蛍石型立方晶Ln結晶の面内格子定数、aMeOは蛍石型立方晶MeO結晶の面内格子定数、aSiGeはSi(1−z)Geなる組成で表され、0≦z≦1であるような立方晶SiまたはSiGe基板結晶の面内格子定数である。rは有理数であり、規約分数で表記した場合に、分子および分母のいずれの絶対値も5以下となる値である。)
本発明の他の態様にかかる半導体装置は、基板と、前記基板上にロッキングカーブ半値幅が1度以上15度以下の配向性をもって積層された膜厚0.7nm以上10.0nm以下の誘電体薄膜とを具備し、前記誘電体薄膜は、ZrON、HfON、CeON、または下記一般式(1)で表わされる化合物からなることを特徴とする。
【0008】
Me(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3) 一般式(1)
(上記一般式(1)中、Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。xおよびyは、0<x<0.75,0≦y<1,0<x+0.25y<1,3<8x+6y<6を満たす実数である。)
本明細書において、“MeON結晶”、“Ln結晶”および“MeO結晶”なる用語は、こうした組成で各元素を含有するものに限定されない。その存在が理論的に予測され、格子定数等の物性も十分な精度で理論的に予測され得る全ての結晶構造が、これらに包含されることが意図される。例えば、LnとしてPrが含有されるLn結晶の場合には、Prのみならず、Pr12も含まれる。
【0009】
【発明の実施の形態】
ZrO,HfOなどの蛍石型立方晶構造の酸化物と、Y、La、およびZrなどの欠陥蛍石型結晶構造の酸化物や窒化物は、互いにいかなる比率でも固溶することが可能である。例えば、蛍石型結晶構造を有するZrO,HfOなどに、欠陥蛍石型結晶構造の物質を混晶化させることによって格子定数を変化させ、Si基板との格子整合が改善されるように調整すれば、Si基板上にエピタキシャル成長させることが可能である。一方で、蛍石型酸化物に欠陥蛍石型窒化物を混晶化させた場合には、蛍石型酸化物結晶中の酸素の伝導経路を窒素で塞ぐことができる。したがって、酸素伝導率が低下して、高温における界面層成長が抑制される。エピタキシャル膜であれば、加熱微結晶発生による特性ばらつきの問題も発生しない。本発明は、こうした知見に基づいてなされたものである。
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(実施例1)
図1に、本実施例にかかる半導体装置における積層構造を表わす断面図を示す。
【0012】
図示するように、基板11上には誘電体薄膜12および電極13が順次形成されている。基板11としては、例えばシリコン基板が用いられる。
【0013】
誘電体薄膜12を形成するに当たっては、まず、シリコン基板11に希フッ酸処理を施して自然酸化膜を除去し、表面の電気伝導率を3〜6Ωcm程度に制御しておく。こうして清浄化されたシリコン基板11上に、スパッタリング法によってZrONをエピタキシャル積層する。例えば、ZrONセラミックターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを使用する。基板温度を800℃〜600℃、ターゲットパワーを200W〜50W、およびスパッタガス圧を0.5Pa〜0.2Paといった条件でスパッタ成膜することで、誘電体薄膜12としてのZrON膜を、シリコン基板11上にエピタキシャル成長させることができる。
【0014】
誘電体薄膜12の膜厚は、0.7nm以上10.0nm以下の範囲内である。0.7nm未満の場合には、ゲート絶縁膜の電気絶縁性が十分でなく、リーク電流が大きすぎてトランジスタ特性が低下する。一方、10.0nmを越えると、誘電率が大きいZrONであってもゲートチャネル領域に加わる電界が十分でなく、チャネル長が90nm以下のトランジスタでは必要な特性が得られなくなる。
【0015】
また、誘電体薄膜12は、ロッキングカーブ半値幅が1度以内である。1度を越えると、エピタキシャルゲート絶縁膜中の欠陥密度が増えることにより、チャネル領域の移動度の低下などを引き起こすからである。
【0016】
電極13は、例えば次のような手法によりZrON膜12の上に形成することができる。まず、ZrON膜12の上に多結晶Siを約200nm成膜した後、不純物をインプラントする。不純物としては、例えばAs,B,P等を用いることができる。続いて、800℃〜1100℃程度で活性化アニールを行なうことで電気伝導性を生じさせることによって、上部電極13とする。上部電極13とシリコン基板11との間のキャパシタンスを測定すれば、ZrON絶縁膜のSiO換算膜厚が得られる。
【0017】
本発明の実施形態にかかる半導体装置は、図2に示すようなMOSFETとすることができる。図示する半導体装置においては、素子分離絶縁膜26が形成されたシリコン基板21の素子領域に、ゲート絶縁膜22を介してゲート電極23が配置されている。シリコン基板21内のゲート絶縁膜22を挟む位置には、高濃度不純物拡散領域からなるソース領域24およびドレイン領域25が形成され、これらによってMOSトランジスタが構成される。
【0018】
本実施例において誘電体薄膜12として堆積されるZrONは、欠陥蛍石型の結晶構造であり、蛍石型結晶構造を有するZrOと基本的な骨組みは同一である。図3を参照して、これについて説明する。図3には、MeOとMeとの固溶の例を模式的に示した。図中、31は、Me原子(Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Th,Ti,Ge,およびSnから選択される少なくとも一種の元素である。)の位置、32は酸素原子または窒素原子の位置、33は酸素原子または窒素原子が存在しない空隙の位置を表わしている。
【0019】
ZrOとZrONとの違いは、結晶中の酸素のサイトが一部窒素と置換あるいは欠損していることのみである。したがって、ZrOとZrとは、いかなる組成でも互いに固溶することが可能である。実際、ZrON自身が(ZrO+Zr)/2=ZrONと記述することが可能である。同様の任意組成における固溶現象は、MeOとMeとの間にもみられる(ただしMeは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)。
【0020】
この系の化合物は、MeOおよびMeに加えて、Ln(ただしLnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuおよびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素)も任意組成にて固溶することが可能であるという特徴を有する。Lnも、ZrONと同様に欠陥蛍石型結晶構造であり、基本的な結晶構造がMeOやMeと同一であることによる。図4を参照して、これについて説明する。図4には、MeOとLnとの固溶の例を模式的に示した。図中、41は、Me原子またはLn原子の位置である。MeはSi,Zr,Hf,Ce,Th,Ti,Ge,Sn,およびPbから選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびUから選択される少なくとも一種の元素である。42は酸素原子の位置、43は酸素原子が存在しない空隙の位置であり、44は、酸素原子が本来の位置から矢印方向へ変位している様子を表わしている。
【0021】
MeOの場合、Me:O=1:2なので、43の空隙は存在しない。Lnが固溶すると、(Me+Ln):O 比が 1:2よりは酸素が少ない状態になる。したがって41の周囲に43の空隙が一定の割合で存在するようになる。Lnの濃度が高くなるにつれて空隙の存在割合は増大する。
【0022】
酸素原子が本来の位置から変位することにより、エピタキシャル成長における格子定数のマッチングを任意に設計することができる。また、この物質系のバンドギャップを任意に設計できる点でも有利である。酸素原子が本来の位置から変位した結晶からなる絶縁膜は、例えば、トランジスタにおけるエピタキシャルなゲート絶縁膜や、キャパシタにおけるエピタキシャルな絶縁膜などとして有用である。
【0023】
上述したようなLnを固溶させて混晶化することによって、結晶中に酸素空孔が発生するので、酸素移動度を高める効果がある。このため、Meを同時に混晶化させて、酸素移動度を下げることが不可欠である。
【0024】
100面を露出させたSi基板の格子定数は0.5430nm程度であるから、110方向の格子定数は√2倍の0.7679nm程度となる。一方で、ZrONは、厳密な意味での格子定数は1.0140nmの立方晶であるが、蛍石型構造の立方晶ジルコニアに対して酸素や窒素における二倍周期の変調構造が発生しているだけである。このため、半分の0.5070nmと見なすことができる。この値をa’ZrONとする。Siの格子定数aSiとa’ZrONとは、以下のような関係式を満たす。
【0025】
(3×a’ZrON−2×aSi)/(2×aSi)=−0.97%
すなわち、三格子長のZrONと、二格子長のSiとにおける格子定数の違いは0.97%と極僅かである。このため、図5に示すようにZrON膜は、シリコン基板上にエピタキシャル成長する。図5(a)中、51はシリコン基板の第一層を表わし、53および54は、それぞれシリコン基板の−110方向(b軸ととる)および110方向(a軸ととる)を表わす。また、図5(b)中、52はZrONの第一層を表わし、55および56は、それぞれZrONの100方向(a軸ととる)および010方法(b軸ととる)を表わしている。
【0026】
このとき、前述の数式(2)における有理数rは、既約分数表示で3/2と書ける。この場合は分子が3、分母が2であり、各々の絶対値が5以下であるとの条件に合致している。
【0027】
このような長周期マッチングによるエピタキシャル成長の類似例として、Si基板上のエピタキシャルTiN膜が存在する。この場合は、4格子長のTiN(aTiN=0.4235nm)と3格子長のSiが長周期マッチングすることでエピタキシャル成長した。したがって、格子定数の面からは、ZrONがSi基板上にエピタキシャル成長する可能性は充分に高いと言える。一方で、あまりに整合周期が長いマッチングは現実的ではなく、分子・分母の絶対値は5以下に限られると考えられる。
【0028】
上述したようにZrONはZrOとZrとの混晶と見なすことができるので、両者の中間的な電気伝導性を示すことが予想される。ZrOは比誘電率20程度、バンドギャップ5.5eV程度の絶縁体である。一方のZrは、バンドギャップ0.4eV程度の絶縁体であるが、誘電率は測定されていない。しかしながら、一般的にバンドギャップが狭くなれば誘電率の電子寄与分が増大する。このため、Zrの誘電率は、ZrOより大きいことが予想される。すなわち、ZrONは誘電率が20以上の絶縁体であると予想される。
【0029】
ZrOとZrとの混晶比率は任意に設定することができるので、誘電率やバンドギャップの値を両者の間の値に設定することも可能である。
【0030】
以上に基づき、本発明の実施形態においては、下記一般式(1)で表わされる化合物が誘電体薄膜の一つとして用いられる。
【0031】
Me(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3) 一般式(1)
上記一般式(1)中、Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。xおよびyは、0<x<0.75,0≦y<1,0<x+0.25y<1,3<8x+6y<6を満たす実数であり、かつ下記数式(2)で表わされる関係を、1.7%以内の精度で満たす。1.7%以内の精度で満たされていれば、エピタキシャル成長する例が存在するからである。
【0032】
(aMeON×4/3−aMeO×2/3)×x+aLn×y+aMeO×2×(1−x−y)=r×aSiGe数式(2)
ただし、aMeONは欠陥蛍石型立方晶MeON結晶の面内格子定数、aLnは欠陥蛍石型立方晶Ln結晶の面内格子定数、aMeOは蛍石型立方晶MeO結晶の面内格子定数、aSiGeはSi(1−z)Geなる組成で表わされ、0≦z≦1であるような立方晶SiまたはSiGe基板結晶の面内格子定数である。rは有理数であり、規約分数で表記した場合に、分子および分母のいずれの絶対値も5以下となる値である。
【0033】
参考のために、Si基板上にエピタキシャル成長ではないZrSiON膜を作製し、その熱的安定性を調べた。窒素が導入されていないZrSiO膜では、酸素透過性が高いことから、ZrSiO膜とSi基板との間に界面SiO層が急激に成長してしまう。ZrSiON膜では、800℃まではほとんど膜の電気的特性は変化せず、膜中酸素の透過阻止による界面SiO成長を抑制できたことが確認された。
【0034】
エピタキシャル膜状態ではない場合でも酸素透過を抑制する効果を有しているので、エピタキシャル状態となっていれば酸素透過の抑制効果がさらに高いことが予測される。
【0035】
(実施例2)
実施例1において誘電体薄膜として成長されたZrONにおけるZrを、Hfに変更することも可能である。HfONの格子定数は10.07となり、ZrONより小さいので、ミスマッチは1.65%と大きくなるが、エピタキシャル成長には支障がないと予想される。
【0036】
この場合、100%未満の任意の量でYを固溶させてもよい。HfOにYを混晶化させると、格子定数が大きくなることが知られている。こうした混晶化によって、上述したミスマッチを低減することが可能である。格子定数を大きくするための混晶化物質は、希土類酸化物ならばいずれを用いてもよい。例えば、La、Ce、Pm、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc等を混晶化させた場合も、同様の効果が期待される。
【0037】
参考のために、Si基板上にエピタキシャル成長ではないHfSiON膜を作製し、その熱的安定性を調べた。この場合も、ZrSiON膜と同様の効果があることが確認された。
【0038】
(実施例3)
HfON系混晶の格子定数を大きくする混晶化物質として、希土類においてはLaが最大の効果が期待できる。このLaを混晶化させることによって、Si(001)面上の110方向とのマッチングが可能になる。図6のグラフには、Si(001)面上の110方向にマッチング可能な組成の例を示した。Ce,Pr,Nd,およびSmなども同様の効果が得られる。グラフにおける線上の組成にて、Si(001)基板の110方向にエピタキシャル成長が可能である。
【0039】
ただし、図6のグラフに示したのは、Si(001)面の110方向と、HfON系混晶の100方向とのマッチングする条件である。異なる面上に異なるマッチングする場合では、必ずしも同図の線上の組成ではない。一般的には、本発明の実施形態の条件を満たした際にマッチング可能である。
【0040】
(実施例4)
誘電体薄膜としてCeOを成長させる場合は、Si基板の111面上にエピタキシャル成長することが知られている。この場合も、Ceを混晶化させることが可能である。しかしながら、CeOの格子定数はSi基板とほとんど同じであるため、Ceを混晶化させると格子定数が小さくなってしまう。前述の実施例1と類似した格子マッチングを取ることも可能である。また、前述の実施例2、3に示したように、Yなどの希土類酸化物を混晶化させてもよい。
【0041】
CeやYなどを混晶化させることによって、薄膜結晶の格子定数や結合手の状態などが変化し、Si基板の100面上にエピタキシャル成長するようになる可能性も高い。この際のCeO,Ce,およびY各物質の混晶化比率は、前記一般式(1)においてMeをCeとし、LnをYとした場合の比率になる。
【0042】
(実施例5)
図7に、本実施例にかかる半導体装置における積層構造を表わす断面図を示す。
【0043】
図示するように、シリコン基板71上には誘電体薄膜72および電極73が順次形成されている。
【0044】
誘電体薄膜72を形成するに当たっては、まず、シリコン基板71に希フッ酸処理を施して自然酸化膜を除去し、表面の電気伝導率を3〜6Ωcm程度に制御しておく。こうして清浄化されたシリコン基板71上に、スパッタリング法によってZrONを高い配向性を持たせて積層する。例えば、ZrONセラミックターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを使用する。基板温度を800℃〜600℃、ターゲットパワーを200W〜50W、およびスパッタガス圧を0.5Pa〜0.2Paといった条件でスパッタ成膜する。実施例1との違いは装置の到達真空度が低く、1×10−4パスカル程度の簡易真空槽内で成膜することである。
【0045】
到達真空度が低い簡易真空槽を用いる装置は、装置の価格が安いという点でプロセス上の利点がある。こうした装置でも、シリコン基板上にZrON薄膜を成膜することは可能である。しかしながら、ZrONがSi基板上にエピタキシャル成長をしたと言うよりはむしろ、シリコン基板に対してZrON微結晶の配向が認められる状態で積層されているという状態であることが予想される。こうした絶縁膜のロッキングカーブの半値幅は、1度以上15度以下である。
【0046】
例えばX線結晶回折法により誘電体薄膜72を観察した結果、図7に示されるように、エピタキシャル成長が不完全で微結晶粒界が存在し、各微結晶の方位角度は、最頻方向に対して15度以内の分散値に収まっていることが確認された。むしろ配向が認められると言うべき状態の薄膜でも、混晶化させる物質の組成によっては、その影響は実用上問題にならない程度である可能性が高い。
【0047】
例えば、ZrO,HfOなどを主成分とするセラミックコンデンサなどにおいて、Yなどを混晶化させた場合には、微結晶粒界に沿った伝導度を下げる効果を示すことが知られている。
【0048】
ゲート絶縁膜の欠陥レベルが、配向が認められる程度より劣る場合には、実用にならない可能性が高い。膜の乱雑性が高く、膜中の微結晶粒子が様々な方向を向いた多結晶状態の薄膜をゲート絶縁膜として用いた場合、結晶の方向の違いによって誘電率などが異なることが予想される。そのような薄膜で微細なトランジスタのゲート絶縁膜を作製した場合には、各トランジスタ毎に特性がばらつくおそれがある。
【0049】
したがって、不完全なエピタキシャル膜においても、薄膜結晶の配向が認められる状態であることが好ましい。非常に高い性能が要求される状態では、完全なエピタキシャル状態になっていることがより好ましい。
【0050】
(実施例6)
図8に、本実施例の半導体装置における積層構造を表わす断面図を示す。図示するように、シリコン基板91上には、エピタキシャル積層されたHfO膜92、エピタキシャル積層されたHfON膜93および電極94が形成される。本実施例においては、HfO膜92およびHfON膜93の積層構造によって、誘電体薄膜が形成される。こうした構造においては、シリコン基板91近傍に窒素が存在しないといった特徴がある。
【0051】
シリコン基板91に接触する領域における窒素は、シリコン基板91の表面平坦性に影響を及ぼすため、界面の窒素は充分に低減することが望まれる。多層構造の絶縁膜を作製することによって、シリコン基板91との界面における窒素を十分に低減することができる。例えば、シリコン基板上にHfOをエピタキシャルに積層し、さらに上にHfONをエピタキシャルに積層する。さらに、その上にHfOをエピタキシャルに積層して、三層構造としてもよい。
【0052】
また、Hfの一部を、ZrやCeやThなどの四価元素、あるいはYやLaなどの三価の希土類元素で置き換えても同様の効果が得られる。三価元素、四価元素で置き換えることもできる。一種のみの元素で置換しても、複数種の元素を用いてもよい。また、酸素と窒素との組成比も、上述した比率に限らず同様の効果が得られる比率が存在する。
【0053】
(実施例7)
シリコン基板に接触する領域における窒素を低減するには、傾斜組成膜により絶縁膜を形成するといった手法も採用することができる。
【0054】
図9には、本実施例の半導体装置における積層薄膜の断面図を示す。
【0055】
図示するように、シリコン基板101上には、エピタキシャル積層されたHfON膜102および電極103が順次形成されている。HfON膜102は、シリコン基板101側の組成がHfOであり、一方、シリコン基板から遠い部分の組成はHfであるような傾斜組成膜である。
【0056】
この場合の組成傾斜効果、および各種元素の置換効果は、前述の実施例6の場合と同様であり同様の効果が得られる。
【0057】
傾斜租成膜を成膜するには、例えばスパッタ成膜で行なう場合、成膜初期段階ではアルゴンガスを主成分とし、窒素および酸素を含有する雰囲気ガスを用いて、成膜中には雰囲気ガス中の酸素を減少させるといった手法を用いることができる。
【0058】
(実施例8)
シリコン基板上にHfONをエピタキシャル積層した上に、さらにアモルファスなSiOやSiなどを積層させることも可能である。アモルファスSiOやSiなどを積層することによって、ゲート不純物が活性化アニール後にゲート絶縁膜中へ浸透することを抑制する効果が得られる。アモルファスなSiOやSiなどは、例えばスパッタリング法により形成することができる。Siターゲットを用いてアルゴンと酸素との混合雰囲気中で成膜する、または、SiOやSiなどのターゲットを用いてアルゴン雰囲気中で成膜するといった方法などが挙げられる。あるいは、ゾルゲル法などを採用して、アモルファスなSiOを積層することも可能である。
【0059】
このようにして作製したSiOやSiなどの膜の上に電極を作製することによって、本実施例の半導体装置が得られる。
【0060】
なお、HfON膜は、前述の実施例7において説明したような傾斜組成膜としてもよい。あるいは、前述の実施例6で説明したように窒素含有量の異なる複数の膜の積層膜とすることもできる。こうした場合には、シリコン基板に接触する領域の窒素を低減することができるので、基板の表面平坦性を向上させるという効果も得られる。
【0061】
(実施例9)
シリコン基板上にエピタキシャルに(HfO(La1−x膜などを作製し、このエピタキシャル膜の上に高配向のHfONなどを積層することも可能である。この場合には、(HfO(La1−xなどの高誘電率ではあるが高い酸素透過性と、HfONなどの酸素透過率の低さといった、お互いの短所を補いながら長所を保つような効果が得られる。
【0062】
高配向のHfONは、例えば(実施例5)で述べたような簡易真空装置にて低コストで成膜することができる。
【0063】
このようにして作製した高配向のHfON膜の上に電極を作製することによって、本実施例の半導体装置が得られる。
【0064】
(実施例10)
シリコン基板上にHfONをエピタキシャル積層し、この上に酸素イオン導電性の低い物質からなる膜を積層させることも可能である。例えば、AlNやMgOやCaOやSrOやBaOなどが挙げられる。こうしたイオン非導電性膜を形成することによって、活性化アニール時の酸素移動による界面層形成を抑制する効果が得られる。
【0065】
このようにして作製したイオン非導電性膜の上に電極を作製することによって、本実施例の半導体装置が得られる。
【0066】
(実施例11)
シリコン基板上に誘電体薄膜を成膜するにあたって、CVD法を採用することもできる。例えば、原料ガスとしてZr(t−OBu)、アンモニアを使い、ガス圧0.2torr〜5.0torr、基板温度500℃〜900℃の条件において、ZrON薄膜をシリコン基板上に作製することができる。原料ガスとしては、tetrakis−diethylamido−Hfなどを用いることも可能ある。
【0067】
ALDのようなCVDの手法でも、主な成膜条件は同様とすることができる。
【0068】
(実施例12)
上述した実施例における誘電体薄膜は、MBEにより成膜することも可能である。ただしHf金属などは融点が高く、抵抗加熱によって蒸発させることが困難であるので、低融点化合物を用いたり、高周波加熱などを用いる手法なども有用である。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の一態様によれば、Si基板上にエピタキシャル積層された誘電体薄膜を有し、しかも、特性ばらつきや駆動力の低下がない半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる半導体装置における積層構造を表わす断面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の断面図。
【図3】MeOとMeとの固溶の例を表わす模式図。
【図4】MeOとLnとの固溶の例を表わす模式図。
【図5】実施例1の誘電体薄膜におけるエピタキシャル接合部分の原子配列を表わす概略図。
【図6】実施例3におけるHf(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3)の組成を表わすグラフ図。
【図7】本発明の他の実施形態にかかる半導体装置における積層構造を表わす断面図。
【図8】本発明の他の実施形態にかかる半導体装置における積層構造を表わす断面図。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる半導体装置における積層構造を示す断面図。
【符号の説明】
11…シリコン基板,12…誘電体薄膜,13…電極,21…シリコン基板,22…ゲート絶縁膜,23…ゲート電極,24…ソース領域,25…ドレイン領域,26…素子分離絶縁膜,31…Me原子の位置,32…酸素原子または窒素原子の位置,33…酸素原子または窒素原子が存在しない空隙の位置,41…Me原子またはLn原子の位置,42…酸素原子の位置,43…酸素原子が存在しない空隙の位置,44…本来の位置からの酸素原子の変位,51…シリコン基板の第一層,52…ZrONの第一層,53…シリコン基板の−110方向(b軸),54…シリコン基板の110方向(a軸),55…ZrONの100方向(a軸),55…ZrONの010方向(b軸),71…シリコン基板,72…基板に対して高配向に接合されたMe(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3)膜,73…電極,81…シリコン基板,82…多結晶状態のMe(1−y)LnyO(2−2x−y/2)(4x/3),83…電極,91…シリコン基板,92…HfO膜,93…HfON膜,94…電極,101…シリコン基板,102…組成傾斜膜(Hf(x+3z)2y(2x+3y)4zなど),103…電極。

Claims (5)

  1. 基板と、前記基板上にエピタキシャル成膜されたロッキングカーブ半値幅が1度以内で膜厚が0.7nm以上10.0nm以下の誘電体薄膜とを具備し、前記誘電体薄膜は、ZrON、HfON、CeON、または下記一般式(1)で表わされる化合物からなることを特徴とする半導体装置。
    Me(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3) 一般式(1)
    (上記一般式(1)中、Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。xおよびyは、0<x<0.75,0≦y<1,0<x+0.25y<1,3<8x+6y<6を満たす実数であり、かつ下記数式(2)で表わされる関係を、1.7%以内の精度で満たす。)
    (aMeON×4/3−aMeO×2/3)×x+aLn×y+aMeO ×2×(1−x−y)=r×aSiGe数式(2)
    (ただし、aMeONは欠陥蛍石型立方晶MeON結晶の面内格子定数、aLnは欠陥蛍石型立方晶Ln結晶の面内格子定数、aMeOは蛍石型立方晶MeO結晶の面内格子定数、aSiGeはSi(1−z)Geなる組成で表され、0≦z≦1であるような立方晶SiまたはSiGe基板結晶の面内格子定数である。rは有理数であり、規約分数で表記した場合に、分子および分母のいずれの絶対値も5以下となる値である。)
  2. 前記誘電体薄膜は、複数のエピタキシャル成膜された電気的絶縁膜からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記誘電体薄膜上に積層された非イオン導電性膜をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  4. 基板と、前記基板上にロッキングカーブ半値幅が1度以上15度以下の配向性をもって積層された膜厚0.7nm以上10.0nm以下の誘電体薄膜とを具備し、前記誘電体薄膜は、ZrON、HfON、CeON、または下記一般式(1)で表わされる化合物からなることを特徴とする半導体装置。
    Me(1−y)Ln(2−2x−y/2)(4x/3) 一般式(1)
    (上記一般式(1)中、Meは、Si,Zr,Hf,Ce,Sm,Th,U,Ti,Ge,およびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、Lnは、Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,およびScからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。xおよびyは、0<x<0.75,0≦y<1,0<x+0.25y<1,3<8x+6y<6を満たす実数である。)
  5. 前記基板は、ソース領域およびドレイン領域が離間して形成された半導体基板であり、前記誘電体薄膜は、その上にゲート電極が形成されたゲート絶縁膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
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