JPWO2005030819A1 - エンジニアリングプラスチック用流動性向上剤およびこれを含有する熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、近年においては、それらの成形品が、大型化、薄肉化、形状複雑化、高性能化、環境問題等に伴って、ポリカーボネート樹脂の優れた特徴を損なうことなく溶融流動性を向上させ、射出成形性を高める樹脂改質剤およびこれを用いた熱可塑性樹脂組成物が求められている。
ポリカーボネート樹脂の特徴(耐熱性、透明性等)を損なうことなく溶融流動性を改良する方法としては、マトリクス樹脂であるポリカーボネート樹脂自体を低分子量化する方法が一般的である。また、特定のスチレン系樹脂とのポリマーアロイ化による流動性改良(例えば特許文献1、2)、特定のメタクリレート系樹脂とのポリマーアロイ化による流動性改良(例えば特許文献3)が提案されている。
また、さらなる流動性の改良を目的として、ポリエステルオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献4)、ポリカーボネートのオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献5)、低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法(例えば特許文献6〜8)が提案されている。
近年、自動車ヘッドランプ等の大型化の要望が高まる中、ランプカバーについても、大型化および軽量薄肉化の要望が高まっている。芳香族ポリカーボネート樹脂からなるランプカバーの優れた特性を損なうことなく、ランプカバーを大型化および軽量薄肉化するためには、芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた特性を維持しつつ、さらに溶融流動性に優れた材料、すなわち射出成形等による成形性に優れた材料が必要とされる。
樹脂の成形性を向上させる方法としては、(1)樹脂を低分子量化し、溶融流動性を高める方法が一般的である。
また、特許文献9,10等には、耐熱性に優れたランプカバーとして、(2)9,9−ビス(4−オキシフェニレン)フルオレン構造単位や1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂よりなるランプカバーが提案されている。
第一に、ポリカーボネート樹脂の分子量を低分子量化する方法は、流動性が大きく向上するものの、必要以上の分子量低下はポリカーボネートの優れた耐熱性や耐薬品性を損なう。また、耐衝撃性が著しく低下することからも、ポリカーボネート樹脂の優れた特性を保持したまま低分子量化により溶融流動性を向上させるには限界がある。
また、特定のスチレン系共重合体や特定のアクリル系共重合体とポリマーアロイ化する方法においては、耐剥離性と流動性バランスが、未だ不十分である。更に特定のスチレン系共重合体を用いる方法は溶融流動性に優れるものの、相溶性が未だ不十分のため成形品に表層剥離が生じやすく、外観や機械物性が大きく低下する。また、特定のアクリル系共重合体は相溶性に優れ、透明性が良好であるが、溶融流動性の改良効果が小さいため、近年要求される溶融流動性の向上効果を得るにはアクリル系共重合体の配合が多くする必要があり、耐熱性や耐衝撃性等のポリカーボネートの優れた特徴を保持したまま流動性を向上させるには限界がある。
また、ポリエステルオリゴマーを添加する方法やポリカーボネートオリゴマーを添加する方法は、流動性の改良には有効であるものの、ポリカーボネートの優れた耐熱性や耐衝撃性が著しく低下するという問題がある。
更に低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法では、少量添加である程度の耐熱性を保持したままで溶融流動性の改良が可能であるものの、未だ相溶性が不十分であるため、成形品に表層剥離が生じやすく、それに伴う衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が充分でないという問題点を残している。
また、上記の従来法により、ランプカバーを大型化および軽量薄肉化するためには、次のような問題点があった。
例えば上記(1)の方法である芳香族ポリカーボネート樹脂自体の分子量を低分子量化は、溶融粘度が低下し、溶融流動性が大きく向上するものの、分子量が低下するにつれて、耐熱性や耐衝撃性等の機械特性が低下し、さらに自動車等のランプカバーに必要とされる耐ガソリン性等の耐薬品性も損なわれる。そのため、低分子量化により、芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた特徴を保持したまま成形性を向上させるには限界があり、現在は、これらの特性を損なわないレベルに低分子量化した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、成形温度を限界近くまで高くした成形が行われている。しかしながら、成形温度を過度に上げることは、シルバー等の外観不良の発生を引き起こし、成形不具合が増加するという問題を生じる。
また、上記(2)の方法については、耐熱性については非常に良好であるものの、溶融粘度が高すぎて溶融流動性が悪く、成形性が不十分である上、耐衝撃性等の特性や、耐薬品性などが著しく低下するという問題点を残している。
このように、従来技術においては、芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた特性を損なうことなく、成形性および耐薬品性が改良されたランプカバーは得られていない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、エンジニアリングプラスチックの耐熱性、耐剥離性、さらには透明性等を損なうことなく、その溶融流動性(成形加工性)と耐薬品性を向上させることができる流動性向上剤、およびこれを用いた樹脂組成物、並びにこれを用いた製品を提供することを目的とする。また、本発明は、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた特徴を損なうことなく、成形性および耐薬品性が改良されたランプカバーを提供することを目的とする。なお、本発明でいうランプカバーとは自動車のヘッドランプレンズやカバー等照明燈に用いるレンズやカバー等を含む。
また、第2の発明の要旨は、エンジニアリングプラスチック(B)に、前記エンジニアリングプラスチック用流動性向上剤を配合してなる熱可塑性樹脂組成物にある。
また、第3の発明の要旨は、前記熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られた成形品、自動車用部材、ランプカバーにある。
また、本発明のポリカーボネート樹脂系アロイからなるランプカバーは、従来品の優れた透明性や耐熱性を損なうことなく、自動車ヘッドランプ等に必要な耐ガソリン性等の耐薬品性と溶融流動性(成形性)が著しく優れていることから、近年要望高まっている自動車用の大型・薄肉ヘッドランプカバーに好適に利用できる。
〔流動性向上剤〕
本発明のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤(以下、単に流動性向上剤という)は、芳香族ビニル単量体単位(a1)0.5〜99.5質量%、エステル基がフェニル基、または置換フェニル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)0.5〜99.5質量%、その他の単量体単位(a3)0〜40質量%(a1〜a3の合計が100質量%)とからなり、その重量平均分子量が5000〜150000である共重合体からなる。
この様な流動性向上剤は、ポリカーボネート樹脂に代表されるエンジニアリングプラスチックと溶融成形時に相分離挙動を有し、成形品の使用温度領域では耐剥離性が良好なレベルの相溶性(親和性)を有しており、エンジニアリングプラスチックの特徴(耐熱性、耐剥離性等)を損なうことなく、従来にない著しい溶融流動性(成形加工性)改良効果と耐薬品性改良効果を発現する。
芳香族ビニル単量体単位(a1)を構成する芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上併用することができる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンが好ましい。
共重合体中の芳香族ビニル単量体単位(a1)の含有量は0.5〜99.5質量%である。芳香族ビニル単量体単位(a1)の含有量が、99.5質量%を越えるとエンジニアリングプラスチックとの相溶性が不十分となることから、その混合物の成形品は層状剥離を引き起こし、外観や機械特性を損なう場合がある。また、芳香族ビニル単量体単位(a1)の含有量が、0.5質量%未満であると、エンジニアリングプラスチックと相溶性がよすぎるため、溶融時に著しい流動性向上効果をもたらす相分離挙動を十分に形成することができない場合があるとともに、耐薬品性の改良効果が低下する傾向にある。
これらのバランスを考えると、共重合体中の芳香族ビニル単量体単位(a1)の含有量は、98質量%以下が好ましく、より好ましくは96質量%以下でありさらに好ましくは93質量%以下であり、最も好ましくは90質量%以下である。
また、この含有量は10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、最も好ましくは75質量%以上である。
エステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)を構成する単量体としては、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロルフェニル(メタ)アクリレート、ジクロルフェニル(メタ)アクリレート、トリクロルフェニル(メタ)アクリレート等を挙げられ、これらを単独あるい2種以上併用することができる。これらの中でもフェニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
エステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の含有量が、0.5質量%未満であると、エンジニアリングプラスチックとの相溶性が不十分となることから、流動性向上剤とエンジニアリングプラスチックとを配合した樹脂組成物を成形した成形品が層状剥離を引き起こし、概観や機械特性を損なう場合がある。
また、エステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の含有量が、99.5質量%を越えるとエンジニアリングプラスチックと相溶性がよすぎるため、溶融時に著しい流動性向上効果をもたらす相分離挙動を十分に形成することができない場合がある。
これらのバランスを考えるとエステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の使用量は、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下、最も好ましくは25質量%以下である。
また、前記使用量は2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、最も好ましくは10質量%以上である。
他の単量体単位(a3)を構成する単量体は、α,β−不飽和単量体であり、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、安息香酸ビニル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等の共重合可能な成分を1種または2種以上を重合体中0〜40質量%の範囲内で用いることができる。
上記単量体の含有量が40質量%を超えると、エンジニアリングプラスチックに流動性向上剤を配合した熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐薬品性改良効果が低下する傾向にある。
共重合体中の他の単量体単位(a3)の好ましい含有量は、30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは5質量%以下である。
この範囲は共重合体中の芳香族ビニル単量体単位(a1)が0.5〜40質量%であって、エステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)が60〜99.5質量%(両者の合計量が100質量%)とした場合と、共重合体中の芳香族ビニル単量体単位(a1)が60〜99.5質量%であって、エステル基がフェニル基、または置換フェニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)が0.5〜40質量%である場合の2つがある。
重量平均分子量が5000未満であると、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性や剛性等の種々の機能を低下させる可能性がある。また、溶融成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイやシルバー等の成形品の外観不良といった問題が発生する可能性も高くなる恐れがある。上記範囲において、高温時の透明性(ヘイズの温度依存性)が良好なものが必要な場合は、質量平均分子量が高い方が好ましく、好ましい質量平均分子量は10000以上であり、より好ましくは15000以上であり、さらに好ましくは30000以上であり、最も好ましくは40000以上である。
また、上記質量平均分子量が150000を越えると、流動性向上剤を添加した樹脂組成物の溶融粘度も高くなり、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。
著しい流動性向上効果が必要な場合は、質量平均分子量を120000以下とすることが好ましく、最も好ましくは100000以下である。
以上説明したように、本発明の流動性向上剤をエンジニアリングプラスチックと共に用いた場合、エンジニアリングプラスチックが本来有する、耐熱性、耐剥離性、さらには透明性等の優れた特性が損なわれることなく、流動性(成形加工性)と耐薬品性を向上することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いるエンジニアリングプラスチック(B)としては、従来より知られている各種の熱可塑性エンジニアリングプラスチックであれば特に制限はなく、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができる。
また、高度に耐熱性に優れ、溶融流動性が必要とされる耐熱ABS等の特殊なスチレン系樹脂や耐熱アクリル系樹脂なども本発明におけるエンジニアリングプラスチックとして例示することができる。これらの中でも、流動性改良効果を考慮すると、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等が好ましく、芳香族ポリカーボネート(C)がより好ましい。また、これらは、単独または2種以上を用いることができる。
また、上記芳香族ポリカーボネート(C)としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系ポリカーボネート等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。
エンジニアリングプラスチック(B)は、従来より知られている各種の方法で製造することができる。例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン系ポリカーボネートを製造する場合には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを原料として用い、アルカリ水溶液および溶剤の存在下にホスゲンを吹き込んで反応させる方法や、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンと炭酸ジエステルとを、触媒の存在下にエステル交換させる方法が挙げられる。
流動性向上剤(A)とエンジニアリングプラスチック(B)の配合割合は、所望の物性等に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はないが、エンジニアリングプラスチックの性能(耐熱性、衝撃強度等)を低下させることなく有効な流動性改良効果を得るためには、エンジニアリングプラスチック100質量部に対して、流動性向上剤(A)0.1〜30質量部を配合することが好ましい。流動性向上剤(A)の配合量が0.1質量部未満であると、充分な改良効果得られない恐れがある。また、流動性向上剤(A)の配合量が30質量部を越えるとエンジニアリングプラスチックの優れた機械特性を損なう恐れがある。流動性向上剤(A)の好ましい配合量は1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上であり、更に好ましくは3質量部以上である。また、この配合量は25質量部以下でることが好ましく、更に好ましくは15質量部以下であり、最も好ましくは10質量部以下である。
この様な配合方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
また、予め流動性向上剤の比率が大きくなるように、流動性向上剤(A)とエンジニアリングプラスチック(B)とを混合したマスターバッチを調製し、その後マスターバッチとエンジニアリングプラスチック(B)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
本発明のランプカバーにおいては、このようなポリカーボネート系アロイを用いることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂(C)が本来有する、耐熱性、耐剥離性、さらには透明性等の優れた特性が損なわれることなく、溶融流動性(成形性)と耐薬品性を向上することが可能である。
流動性向上剤(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(C)の混合方法としては、従来より知られている各種の配合方法および混錬方法を用いることができ、例えばヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単純スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
流動性向上剤(A)の好ましい含有量の下限は1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上である。また、流動性向上剤(A)の好ましい含有量の上限は15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。
(製造例1)流動性向上剤(A−1)の製造
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、リン酸カルシウム0.4部、蒸留水150部を仕込み、次いでスチレン80部、フェニルメタクリレート20部、AIBN1部、t−ブチルメルカプタン0.5部を溶解した混合物を加え、しばらく攪拌後、窒素バブリングを30分実施した。窒素雰囲気下、80℃で4時間攪拌し、さらに90℃で1時間攪拌を行い重合を終了した。沈殿物を分離洗浄後、75℃で24時間乾燥し流動性向上剤(A−1)を得た。質量平均分子量(Mw)は、92000であった。
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ロンガリット0.3部を蒸留水5部に溶かして加え、その後スチレン80部、フェニルメタクリレート20部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.2部、n−オクチルメルカプタン0.3部の混合物を180分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、重合を終了した。次いで0.7%の割合で硫酸を溶解した水溶液300部を70℃に加温し攪拌した。この中に得られた重合体エマルションを徐々に滴下して凝固を行った。析出物を分離洗浄後、75℃で24時間乾燥し24時間乾燥し流動性向上剤(A−2)を得た。質量平均分子量(Mw)は、77000であった。
n−オクチルメルカプタンの量を0.3部から0.5部に変更する以外は製造例2と同様の方法により流動性向上剤(A−3)を得た。質量均分子量(Mw)は、50000であった。
(製造例4)流動性向上剤(A−4)の製造
n−オクチルメルカプタンの量を0.3部から1部に変更する以外は製造例2と同様の方法により流動性向上剤(A−4)を得た。質量均分子量(Mw)は、27100であった。
(製造例5)流動性向上剤(A−5)の製造
フェニルメタクリレート20部、n−オクチルメルカプタン0.3部をフェニルメルメタクリレート19部、メチルアクリレート1部、n−オクチルメルカプタン2部に変更する以外は製造例2と同様の方法により流動性向上剤(A−5)を得た。質量均分子量(Mw)は、14300であった。
モノマー組成スチレン80部、フェニルメタクリレート19部をスチレン60部、フェニルメタクリレート39部に変更する以外は製造例5と同様の方法により流動性向上剤(A−6)を得た。質量均分子量(Mw)は、13800であった。
(製造例7)流動性向上剤(A−7)の製造
モノマー組成スチレン80部、フェニルメタクリレート19部をスチレン25部、フェニルメタクリレート74部に変更する以外は製造例5と同様の方法により流動性向上剤(A−7)を得た。質量均分子量(Mw)は、13800であった。
モノマー組成スチレン80部、フェニルメタクリレート19部、メチルアクリレート1部をスチレン96部、ブチルアクリレート4部に変更する以外は製造例5と同様の方法により流動性向上剤(B−1)を得た。質量均分子量(Mw)は、14000であった。
(製造例9)流動性向上剤(B−2)の製造
モノマー組成スチレン80部、フェニルメタクリレート20部、n−オクチルメルカプタン0.3部をフェニルメタクリレート74部、メチルメタクリレート25部、メチルアクリレート1部、n−オクチルメルカプタン0.4部に変更する以外は製造例2と同様の方法により流動性向上剤(B−2)を得た。質量均分子量(Mw)は、60000であった。
上記製造例1〜9で製造した共重合体用の単量体組成、得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)、重合様式を表1に示した。
St:スチレン、PhMA:フェニルメタクリレート、MA:メチルアクリレート、BA:ブチルアクリレート、MMA:メチルメタクリレート
得られた流動性向上剤およびポリカーボネート樹脂を表2に示す質量比で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物について、後述する(1)〜(5)の評価を行った。その結果を表2に示す。
(1)溶融流動性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物のスパイラルフロー長さSFLを射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。
(2)耐薬品性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、15cm角の平板を作成、これを切断し厚さ2mm、15cm×2.5cmの成形品を得た。試験片を120℃で2時間アニール処理後、カンチレバー試験を行い、薬品塗布による試験片の破断時間を測定した。測定条件は試験温度23℃、荷重10MPa、溶媒トルエン/イソオクタン=1/1vol%で実施した。
成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥理状態を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好
×:表層剥離が見られる
(4)荷重たわみ温度(耐熱性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/4インチの成形品を成形した。成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、アニールは行わず、荷重は1.82MPaとした。
(5)透明性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ3mm、5cm角の平板の成形品を成形した。
成形品の全光線透過率、ヘイズをASTM D1003に準拠して23℃と100℃で測定した。
一方、比較例1で得られたエンジニアリングプラスチック樹脂組成物は、相溶性が不十分なため、良好な耐剥離性が得られなかった。
また、比較例2で得られたエンジニアリングプラスチック樹脂組成物は、流動性向上剤が芳香族ビニル化合物を含んでおらずかつ相溶性が良すぎるため、充分な流動性と耐薬品性が得られなかった。
また、比較例3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、流動性向上剤を含有していないため、充分な流動性と耐薬品性が得られなかった。
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ロンガリット0.3部を蒸留水5部に溶かして加え、その後スチレン87.5部、フェニルメタクリレート12.5部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.2部、n−オクチルメルカプタン0.5部の混合物を180分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、重合を終了した。次いで0.7%の割合で硫酸を溶解した水溶液300部を70℃に加温し攪拌した。この中に得られた重合体エマルションを徐々に滴下して凝固を行った。析出物を分離洗浄後、75℃で24時間乾燥し24時間乾燥し流動性向上剤(A−8)を得た。質量平均分子量(Mw)は、49000であった。
n−オクチルメルカプタンの量を0.5部から0.2部に変更する以外は製造例10と同様の方法により流動性向上剤(A−9)を得た。質量均分子量(Mw)は、98000であった。
上記製造例10〜11で製造した共重合体用の単量体組成、得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)、重合様式を表3に示した。
St:スチレン、PhMA:フェニルメタクリレート
得られた流動性向上剤およびポリカーボネート樹脂を表4に示す質量比で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物について、後述する(1)〜(5)の評価を行った。その結果を表4に示す。
PC3:ポリカーボネート樹脂(「パンライトL1225ZL」、帝人化成製、粘度平均分子量1.9万)
(1)溶融流動性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物のスパイラルフロー長さSFLを射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。
(2)耐薬品性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、15cm角の平板を作成、これを切断し厚さ2mm、12cm×3.5cmの成形品を得た。試験片を120℃で2時間アニール処理後、1/4楕円試験を行い、薬品塗布による4時間後の試験片の限界応力値(MPa)を測定した。測定条件は試験温度23℃、溶媒トルエン/イソオクタン=1/1vol%で実施した。
(3)表層剥離(耐剥離性)
成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥理状態を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好
×:表層剥離が見られる
(4)荷重たわみ温度(耐熱性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/4インチの成形品を成形した。120℃で2時間アニール処理後成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、荷重は1.82MPaとした。
(5)透明性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、5cm×10cmの平板の成形品を成形した。
成形品の全光線透過率、ヘイズをASTM D1003に準拠して23℃と100℃で測定した。
一方、比較例4、5で得られたエンジニアリングプラスチック樹脂組成物は、流動性向上剤を含有していないため、充分な流動性と耐薬品性のバランスが得られなかった。
実施例9で得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、10cm×10cmの平板の成形品を成形した。この平板にUV硬化によるハードコート処理を実施後、計装化面衝撃試験(ハイドロショット)を実施した。全吸収エネルギーは30Jであり、破壊形態は延性破壊であった。
(比較例6)
比較例5で得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用いる以外は実施例10と同様の方法により、厚さ2mm、10cm×10cmの平板の成形品を成形した。この平板にUV硬化によるハードコート処理を実施後、計装化面衝撃試験(ハイドロショット)を実施した。全吸収エネルギーは5Jであり、破壊形態は脆性破壊であった。
モノマー組成を、スチレン90部、フェニルメタクリレート10部に変更する以外は製造例10と同様の方法により流動性向上剤(A−10)を得た。質量均分子量(Mw)は、51000であった。
(製造例13)流動性向上剤(B−3)の製造
モノマー組成を、スチレン100部に変更する以外は製造例10と同様の方法により流動性向上剤(B−3)を得た。質量均分子量(Mw)は、55000であった。
上記製造例12、13で製造した共重合体用の単量体組成、得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)、重合様式を表5に示した。
St:スチレン、PhMA:フェニルメタクリレート
[ポリカーボネート樹脂系アロイの製造および成形品の評価]
重合体(A−8)(A−10)(A−3)および(B−3)と、表6に示す各成分とを、表6に示す割合(質量比)で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、ポリカーボネート樹脂系アロイを得た。
以下、表6中の略号および使用した材料について記す。
PC−4:ポリカーボネート樹脂(「パンライトL−1225Z−100」、帝人化成製、粘度平均分子量2.2万)
PC−5:ポリカーボネート樹脂(「パンライトL−1225ZL−100」、帝人化成製、粘度平均分子量1.9万)
(性能評価方法)
(1)溶融流動性
得られたポリカーボネート樹脂系アロイのスパイラルフロー長さ(SFL)を、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。
なお、ランプカバーの大型化・薄肉化のためには、上記SFLが200mm以上の範囲内であることが好ましい。
(2)耐薬品性
得られたポリカーボネート樹脂系アロイを用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、15cm角の平板を作成、これを切断し、厚さ2mm、3.5cm×15cmの成形品(試験片)を得た。
試験片を120℃で2時間アニール処理後、1/4楕円法溶剤試験(定歪試験)を行い、溶媒塗布後60分後のクラック発生位置を測定し、限界応力(MPa)を計算した。測定条件は試験温度23℃、溶媒[トルエン/イソオクタン=1/1vol%]で実施した。
なお、自動車等のランプカバーとして用いるためには、上記耐薬品性が8.5MPa以上の範囲内であることが好ましい
成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥理状態を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好
×:表層剥離が見られる
得られたポリカーボネート樹脂系アロイを用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/4インチの成形品を成形した。
成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、アニールは行わず、荷重は1.82MPaとした。
なお、自動車等のランプカバーとして用いるためには、上記耐熱性が120℃以上の範囲内であることが好ましい
得られたポリカーボネート樹脂系アロイを用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、5cm角の平板の成形品を成形した。成形品の全光線透過率およびヘイズをASTM D1003に準拠して23℃で測定した。
なお、ランプカバーとしては、上記全光線透過率が88%以上の範囲内であることが好ましい。また、ヘイズが2%以下の範囲内であることが好ましい。
得られたポリカーボネート樹脂系アロイを用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、5cm角の平板の成形品を成形した。成形品にHIDランプ(「HID Handy Light Pro NN13000」、松下電工(株)製)を当て、レンズ外観(強力光源下での外観)を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:無色透明で良好
×:曇りが観察される
一方、比較例7で得られたポリカーボネート樹脂系アロイの成形品は、実施例11〜15のポリカーボネート樹脂系アロイを用いて得られた成形品に比べ、耐剥離性や透明性が悪く、レンズ外観も不良であった。これは、重合体B−1とPC−4との相溶性が不十分なためと考えられる。
また、共重合体(A−8)(A−10)(A−3)を含有していない比較例8、9で得られたポリカーボネート樹脂系アロイの成形品は、実施例11〜15で得られたポリカーボネート樹脂系アロイの成形品に比べ、大型・薄肉ランプカバーとするのに充分な溶融流動性と耐薬品性のバランスが得られなかった。
Claims (11)
- 芳香族ビニル単量体単位(a1)0.5〜99.5質量%、エステル基がフェニル基または置換フェニル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)0.5〜99.5質量%、その他の単量体単位(a3)0〜40質量%(a1〜a3の合計が100質量%)とからなり、その重量平均分子量が5000〜150000である重合体(A)からなるエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤。
- 重合体(A)の重量平均分子量が5000〜100000である請求項1記載のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤。
- 重合体(A)が、芳香族ビニル単量体単位(a1)50〜99.5質量%と、エステル基がフェニル基または置換フェニル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a2)0.5〜50質量%とからなる重合体であることを特徴とする請求項1記載のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤。
- (メタ)アクリル酸エステル系単量体単位(a2)がフェニルメタクリレート単量体単位であることを特徴とする請求項1記載のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤。
- 重合体(A)が、懸濁重合または乳化重合により得られたものであることを特徴とする請求項1記載のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤。
- エンジニアリングプラスチック(B)に、請求項1記載のエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤を配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
- エンジニアリングプラスチック(B)100質量部にエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤0.1〜30質量部を配合してなる請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物。
- エンジニアリングプラスチック(B)が、ポリカーボネート系樹脂であることを特徴とする請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られた成形品。
- 請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られた自動車用部材。
- 請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより得られたランプカバー。
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