JP4778241B2 - ハードコート品 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品表面にハードコート層が設けられたハードコート品に関する。
芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、自己消火性(難燃性)等に優れていることから、電気・電子・OA機器、光学部品、精密機械、自動車、保安・医療、建材、雑貨等の幅広い分野に使用されている。しかしながら、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品は、耐擦傷性等に劣るという問題点を有している。そのため、耐擦傷性が必要とされる、光ディスク等の光学情報記録媒体、自動車用ランプカバー等の光学レンズ、窓材等の建材、車両用グレージング材等としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品表面にハードコート層を設けたハードコート品が用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。
ハードコート層は、成形品表面に、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が配合されたハードコート剤を塗布し、硬化させて形成される。しかしながら、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品は、耐薬品性(ハードコート耐性)に劣るという問題点を有している。そのため、ハードコート品は、ハードコート剤が成形品に接触することによって割れ(クラック)が発生し、外観不良となるという問題点を有している。
また、近年、ハードコート品の大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等の要望が高まっており、成形性(溶融流動性)に優れた芳香族ポリカーボネート系樹脂が求められている。しかしながら、通常、芳香族ポリカーボネート樹脂は非晶性であるため、成形加工温度が高く、溶融流動性に劣るという問題点を有している。
芳香族ポリカーボネート系樹脂の成形性を向上させる方法としては、(1)芳香族ポリカーボネート系樹脂を低分子量化し、溶融流動性を高める方法がよく知られている。
また、ハードコート耐性の高い成形品としては、(2)特定の分子量分布および粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート系樹脂を射出成形した窓材(特許文献5)、(3)特定の離型剤、リン系安定剤および紫外線吸収剤を特定量含有し、かつ加熱処理による質量減少が少ない芳香族ポリカーボネート系樹脂を射出成形した成形品(特許文献6)、(4)芳香族ポリカーボネート系樹脂を射出プレス成形した成形品であって、厚み(D(mm))に対するゲート部から流動末端までの距離(L(mm))の比L/Dが150以上である成形品(特許文献7)が提案されている。
しかしながら、(1)の方法は、溶融流動性が大きく向上するものの、必要以上の分子量低下は芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品の耐熱性、耐衝撃性、とりわけ耐薬品性を損なう。そのため、ハードコート剤による割れ(クラック)、そして外観不良が顕著に発生するという問題がある。よって、成形品の優れた特性を保持したまま、芳香族ポリカーボネート系樹脂の低分子量化によって芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性を向上させるには限界があり、しかも、ハードコート剤の適用が制限される。
また、(2)〜(4)の成形品においては、ハードコート耐性のある程度の向上はみられるものの、未だ不充分であり、また、成形品の材料である芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性も不充分なため、ハードコート品の大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等の要望に充分に応えるものではない。また、ハードコート品の品質にバラツキが多い等の問題点があり、実用的ではない。
このように、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品の優れた特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を損なうことなく、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能であり、かつ外観に優れたハードコート品は、これまで得られていない。
特開平3−275769号公報 特開平5−17706号公報 特開平5−179157号公報 特開平3−230397号公報 特開2001−354781号公報 特開2004−35611号公報 特開2004−35609号公報
本発明の目的は、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品の優れた特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を損なうことなく、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能であり、かつ外観に優れたハードコート品を提供することにある。
本発明のハードコート品は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)を配合した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品表面にハードコート層が設けられたハードコート品であって、前記流動性向上剤(B)が、芳香族ビニル単量体(b1)0.5〜99.5質量%、下記式(I)で表される単量体(b2)0.5〜99.5質量%、および他の単量体(b3)0〜40質量%からなる単量体混合物[ただし、単量体(b1)〜(b3)の合計は100質量%である。]を重合して得られる重合体であることを特徴とするものである。
Figure 0004778241
(式(I)中、R1 は水素原子またはメチル基であり、R2 は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
本発明のハードコート品は、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品の優れた特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を損なうことなく、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能であり、かつ外観に優れる。
〔芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)〕
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルまたはホスゲンとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)は、分岐状のものであってもよい。分岐状の芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の場合、芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族ポリヒドロキシ化合物等とが併用される。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAが好ましい。さらに、難燃性を高める目的で、これら芳香族ジヒドロキシ化合物は、スルホン酸テトラアルキルホスホニウム、臭素原子、またはシロキサン構造を有する基で置換された構造を有していてもよい。
芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。分岐状の芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)を得る場合の芳香族ポリヒドロキシ化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物(100モル%)に対して、好ましくは0.01〜10モル%であり、さらに好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の分子量の調節、末端基の調節等の目的で、一価芳香族ヒドロキシ化合物、またはそのクロロホルメート体等の一価芳香族ヒドロキシ化合物誘導体を用いてもよい。一価芳香族ヒドロキシ化合物およびその誘導体としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキルフェノール、これらの誘導体等が挙げられる。これら一価芳香族ヒドロキシ化合物および/またはその誘導体の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物(100モル%)に対して、通常0.1〜10モル%であり、好ましくは1〜8モル%である。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)には、難燃性を高める目的で、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーを共重合させたり、成形時の溶融流動性を向上させる目的で、ジカルボン酸またはジカルボン酸クロライド等の誘導体を共重合させてもよい。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10000〜40000が好ましく、12000〜30000がより好ましく、14000〜26000が特に好ましい。また、2種以上の芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)を含む樹脂材料として、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と後述の他の樹脂および/またはエラストマーとを組み合わせた芳香族ポリカーボネート系ポリマーアロイを用いてもよい。
〔他の樹脂、エラストマー〕
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物には、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)が本来有する優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、自己消火性(難燃性)等を損なわない範囲、具体的には芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下の範囲で、必要に応じて他の樹脂および/またはエラストマーを配合してもよい。
他の樹脂としては、ポリスチレン(PSt)、スチレン系ランダム共重合体(アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)等)、スチレンと無水マレイン酸との交互共重合体、グラフト共重合体(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、これらの共重合体等のポリエステル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単位を有する共重合体等のアクリル系樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリウレタン;シリコーン樹脂;シンジオタクチックPS;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリアリレート;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホンポリアミドイミド;ポリアセタール等、各種汎用樹脂またはエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
エラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンゴム;ポリエステル系エラストマー;スチレン−ブタジエンゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン−プロピレンゴム等のポリオレフィン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;アクリル系エラストマー;ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム等を含有する、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン樹脂(MAS樹脂)に代表されるコアシェル型の耐衝撃性改良剤等が挙げられる。
〔流動性向上剤(B)〕
流動性向上剤(B)は、芳香族ビニル単量体(b1)0.5〜99.5質量%、下記式(I)で表される単量体(b2)0.5〜99.5質量%、および他の単量体(b3)0〜40質量%からなる単量体混合物[ただし、単量体(b1)〜(b3)の合計は100質量%である。]を重合して得られる重合体である。
Figure 0004778241
(式(I)中、R1 は水素原子またはメチル基であり、R2 は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
流動性向上剤(B)は、溶融成形時には、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と相分離挙動を示し、かつ成形品の使用温度領域では、耐剥離性が良好なレベルとなるような、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性(親和性)を示すため、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の特性(耐熱性、耐衝撃性等)を損なうことなく、従来にない著しい溶融流動性(成形性)および耐薬品性の向上効果を発現する。
流動性向上剤(B)は、重合前の単量体混合物中の各単量体の混合比(質量%)と、重合後の重合体中の各単量体構成単位の含有量(質量%)とが一致していることが好ましい。このような重合体を得るためには、単量体混合物の重合率を90質量%以上とすることが好ましく、95質量%以上とすることがより好ましく、97質量%以上とすることがさらに好ましい。重合率が90質量%以上であれば、重合前の単量体混合物中の各単量体の混合比(質量%)と重合後の重合体中における各単量体構成単位の含有量(質量%)とはほぼ一致する。重合率が90質量%未満である場合には、単量体混合物中の各単量体の混合比(質量%)と重合後の重合体中に含まれる単量体構成単位の含有量(質量%)が異なる可能性がある。
芳香族ビニル単量体(b1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル単量体(b1)の含有量は、単量体混合物(100質量%)中、0.5〜99.5質量%である。芳香族ビニル単量体(b1)の含有量がこの範囲にあれば、流動性向上剤(B)は、優れた溶融流動性および耐薬品性の向上効果を発現する。
芳香族ビニル単量体(b1)の含有量が99.5質量%を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性が不充分となり、結果、成形品が層状剥離を引き起こし、外観および機械特性を損なう場合がある。芳香族ビニル単量体(b1)の含有量が0.5質量%未満であると、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性が良くなりすぎるため、溶融時に相分離挙動を充分に発揮することができず、溶融流動性の向上効果が低下するとともに、耐薬品性の向上効果が低下する傾向にある。
外観および機械特性と、溶融流動性および耐薬品性とのバランスを考えると、芳香族ビニル単量体(b1)の含有量は、98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、93質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下が特に好ましい。また、芳香族ビニル単量体(b1)の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
式(I)で表される単量体(b2)としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸ジブロモフェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸モノクロルフェニル、(メタ)アクリル酸ジクロルフェニル、(メタ)アクリル酸トリクロルフェニル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、(メタ)アクリル酸フェニルが特に好ましい。本発明において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
単量体(b2)の含有量は、単量体混合物(100質量%)中、0.5〜99.5質量%である。単量体(b2)の含有量がこの範囲にあれば、流動性向上剤(B)は、優れた相溶性(耐剥離性)の向上効果を発現する。
単量体(b2)の含有量が0.5質量%未満であると、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性が不充分となり、結果、成形品が層状剥離を引き起こし、外観および機械特性を損なう場合がある。単量体(b2)の含有量が99.5質量%を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性が良くなりすぎるため、溶融時に相分離挙動を充分に発揮することができず、溶融流動性の向上効果が低下するとともに、耐薬品性の向上効果が低下する傾向にある。
外観および機械特性と、溶融流動性および耐薬品性とのバランスを考えると、単量体(b2)の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。また、単量体(b2)の含有量は、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
流動性向上剤(B)を構成する重合体は、上述の特性を損なわない範囲において、必要に応じて、芳香族ビニル単量(b1)および単量体(b2)と共重合可能な他の単量体(b3)を0〜40質量%含んでもよい。
他の単量体(b3)は、α,β−不飽和単量体である。このような単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、フタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アリル、1,3−ブチレンジメタクリレート等の反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;安息香酸ビニル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の単量体(b3)の含有量は、単量体混合物(100質量%)中、0〜40質量%である。単量体(b3)の含有量が40質量%を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性および耐薬品性の向上効果が低下する傾向にある。他の単量体(b3)の含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
流動性向上剤(B)は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性に優れることから、これを含む芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品の透明性は良好となる。流動性向上剤(B)を構成する重合体を、芳香族ビニル単量体(b1)と式(I)で表される単量体(b2)の二成分系とし、さらにこれらの含有量を、特定範囲内とすることで、極めて高度な透明性を発現させることが可能となる。
極めて高度な透明性を発現する重合体としては、芳香族ビニル単量体(b1)0.5〜40質量%と、単量体(b2)60〜99.5質量%とからなる重合体(B1)(両者の合計量は100質量%である)、芳香族ビニル単量体(b1)60〜99.5質量%と、単量体(b2)0.5〜40質量%とからなる重合体(B2)(両者の合計量は100質量%である)の2つが挙げられる。
流動性向上剤(B)を構成する重合体の質量平均分子量は、5000〜200000が好ましい。質量平均分子量が5000未満であると、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性、剛性等の種々の特性を低下させる可能性がある。また、溶融成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ、シルバー等の成形品の外観不良といった問題が発生する可能性が高くなるおそれがある。高温時の透明性が良好な成形品(ヘイズの温度依存性が小さい成形品)が必要な場合は、重合体の質量平均分子量は高い方がよい。したがって、重合体の質量平均分子量は10000以上が好ましく、15000以上がより好ましく、30000以上がさらに好ましく、40000以上が特に好ましい。
また、重合体の質量平均分子量が200000を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融粘度も高くなり、充分な溶融流動性の向上効果が得られない可能性がある。なお、耐薬品性のみを向上させたい場合においては、重合体の質量平均分子量が200000を超えても特に問題はない。著しい溶融流動性の向上効果が必要な場合は、重合体の質量平均分子量は低い方がよい。したがって、重合体の質量平均分子量は170000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、120000以下がさらに好ましく、100000以下が特に好ましい。
流動性向上剤(B)を構成する重合体の分子量分布、すなわち質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、小さい方が好ましい。分子量分布は、4.0以下が好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.0以下が特に好ましい。分子量分布が4.0を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融粘度も高くなり、充分な溶融流動性の向上効果が得られない可能性がある。
流動性向上剤(B)を構成する重合体の製造方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等が挙げられる。これらのうち、回収方法が容易である点で懸濁重合法、乳化重合法が好ましい。なお、乳化重合法の場合は、重合体中の残存塩が芳香族ポリカーボネート系樹脂の熱分解を引き起こすおそれがある。そのため、乳化重合の際には、カルボン酸塩乳化剤等を用い、重合体を酸析凝固等により回収をする、またはリン酸エステル等のノニオンアニオン系乳化剤等を用い、重合体を酢酸カルシウム塩等を用いた塩析凝固により回収することが好ましい。
流動性向上剤(B)の配合量は、所望の物性等に応じて適宜決定すればよい。芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を低下させることなく有効な溶融流動性の向上効果を得るためには、流動性向上剤(B)の配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と他の樹脂および/またはエラストマーとの合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。流動性向上剤(B)の配合量が0.1質量部未満であると、充分な溶融流動性の向上効果が得られないおそれがある。流動性向上剤(B)の配合量が30質量部を超えると、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の優れた機械特性を損なうおそれがある。流動性向上剤(B)配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と他の樹脂および/またはエラストマーとの合計100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。また、流動性向上剤(B)配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と他の樹脂および/またはエラストマーとの合計100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
〔添加剤〕
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物には、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の優れた特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を損なわない範囲で、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤等の各種安定剤;無機充填剤、難燃剤、ノンドリップ剤、帯電防止剤、離型剤、光拡散材、ブルーイング剤、染料、赤外線吸収剤、耐衝撃性改質剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
〔芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物〕
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)、必要に応じて他の樹脂および/またはエラストマー、各種添加剤を、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合することによって調製することができる。
各種添加剤のブレンドは、一段階で実施してもよく、二段階以上に分けて実施してもよい。二段階に分けて実施する方法としては、例えば、あらかじめ各種添加剤をブレンドした後、これと、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)とをブレンドする方法;芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の一部と各種添加剤および流動性向上剤(B)とをブレンド、つまり各種添加剤を芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)で希釈して、各種添加剤のマスターバッチとした後、このマスターバッチと芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とをブレンドする方法が挙げられる。
本発明における芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、とりわけ透明性に優れた成形品を提供することが可能である。より具体的には、厚さ2mmの成形品のヘイズが0.1〜5%の範囲にある透明性を有する成形品を提供することが可能である。また、流動性向上剤(B)として上述の重合体(B1)または重合体(B2)を用いた場合には、厚さ3mmの成形品のヘイズが0.1〜2%の範囲にある優れた透明性を有する成形品を提供することが可能である。
また、本発明における芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、実試用温度領域内(室温〜高温)において透明性が保たれた成形品を提供することが可能である。ここでいう高温とは、60〜100℃の範囲である。
〔成形品〕
本発明における成形品は、上述の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物をそのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、注型成形法等の公知の溶融成形法で溶融成形することにより得られる。
溶融成形法としては、射出成形法が好ましい。射出成形法としては、通常の射出成形法だけでなく、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、断熱金型成形法、急速加熱冷却金型成形法、超高速射出成形法等が挙げられる。これらのうち、射出プレス成形は、成形温度の低減が可能な成形法であり、外観および色相の良好な成形品を得ることができることから、好適である。
また、あらかじめ押出成形法等により作製した、上述の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物からなるポリカーボネートシートまたはフィルムに、ハードコート層を設け、該ハードコート層を有するポリカーボネートシートまたはフィルムを金型内に装着した後、金型内に芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を射出し、ハードコート層を有するポリカーボネートシートまたはフィルムと、成形品とを一体化する方法を用いてもよい。
〔ハードコート品〕
本発明のハードコート品は、上述の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品表面にハードコート層が設けられたものである。
ハードコート層は、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品の表面、または該成形品の表皮材となるポリカーボネートシートまたはフィルムの表面に、ハードコート剤を塗布し、硬化させて形成される。
ハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤、他の有機樹脂系ハードコート剤等が挙げられる。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものである。シリコーン樹脂系ハードコート剤としては、例えば、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物等)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、3官能シロキサン単位に相当する化合物と4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物等)とを含む化合物の部分加水分解縮合物、これら部分加水分解縮合物にコロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物等が挙げられる。これら部分加水分解縮合物は、さらに2官能性のシロキサン単位および1官能性のシロキサン単位を含んでよい。また、これら部分加水分解縮合物には、縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)等が含まれる。
また、これら部分加水分解縮合物は、必要に応じて任意の有機溶剤、水、これらの混合物に溶解または分散させてもよい。有機溶剤としては、成形品と反応したり、成形品を溶解しないものが好ましく、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコール、エーテル類、エステル類等が挙げられる。また、シリコーン樹脂系ハードコート剤には、ハードコート層の表面を平滑にするために、各種界面活性剤、例えば、シロキサン系界面活性剤、フッ化アルキル系界面活性剤等を添加してもよい。長期間の耐候性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いハードコート層が必要な場合は、シリコーン樹脂系ハードコート剤が好ましい
他の有機樹脂系ハードコート剤としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂等が挙げられる。これらのうち、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、コロイダルシリカと(メタ)アクリロイルアルコキシシランとを縮合して得られる有機無機ハイブリッド(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレート;有機無機ハイブリッドビニル化合物等のモノマーまたはオリゴマーが好ましい。本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
これら他の有機樹脂系ハードコート剤は、得られるハードコート層の要求性能に応じて、適宜選択すればよい。また、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。得られるハードコート層の要求性能を調整することが容易であることから、2種以上を併用することが好ましい。
他の有機樹脂系ハードコート剤のうち、耐熱性、耐薬品性、耐候性、および成形品との密着性に優れたハードコート層が得られることから、1種類または2種類の単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートと、1分子内に少なくとも2個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレートとを含む組成物が好適である。
ハードコート層は、各種の樹脂からなるプライマー層(第1層)と、該プライマー層上に形成されたシリコーン樹脂系ハードコート剤からなるトップ層(第2層)とを有するものであってもよい。
プライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分およびポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂;ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレート等の各種多官能アクリル樹脂等を挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、アクリル樹脂または多官能アクリル樹脂を50質量%、好ましくは60質量%以上含有するものが好ましく、アクリル樹脂およびウレタンアクリレートからなるものが特に好ましい。
ハードコート剤には、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料、帯電防止剤等の各種添加剤または添加助剤を添加してもよい。
粘度調整剤としては、ハードコート剤の特性を損なわず、かつ成形品と反応したり、成形品を溶解しないものであればよく、例えば、ハードコート剤に用いられる各種樹脂の低粘度のもの、各種有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、n−ブタノール、i−ブタノール等のアルコール、酢酸n−ブチル、酢酸ジエチレングリコール等のエステル類等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて用いることが好ましい。
ハードコート剤の成形品への塗布は、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の公知の塗布方法のから、成形品の形状に応じた塗布方法を適宜選択して行うことができる。これらのうち、複雑な形状に対応しやすく、かつ膜厚制御の容易さの点で、ディップコート法、フローコート法、およびスプレーコート法が好ましい。
ハードコート剤の硬化は、有機溶剤を使用している場合には有機溶媒を揮発させ、その後、これに紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射および/または加熱することにより行うことができる。
本発明のハードコート品は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、外観に優れることから、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具、雑貨等の各種用途に有用である。また、大型化、軽量薄肉化、形状複雑化、高性能化が可能であることから、車輌用グレージング材、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、温室等の窓ガラス、ガレージ、アーケード等の屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバー、太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、パチンコ機等の遊技機用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイド等)等の幅広い用途に有用である。特に、CD、CD−R、DVD、MD等の各種光学情報記録媒体;ヘッドランプ、インナーレンズ、リアランプ等の各種自動車用ランプカバー;フロントドアウインドウ(ウインドシールド)、リアドアウインドウ、クォーターウインドウ、バックウインドウ、バックドアウインドウ、サンルーフ、ルーフパネル、各種窓材等の建築・車両用グレージング材に好適である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
(製造例1)
流動性向上剤(B−1)の製造:
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水295部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。ついで、セパラブルフラスコ内に、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ロンガリット0.3部を蒸留水5部に溶かしたものを加え、その後、スチレン80部、メタクリル酸フェニル20部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.2部、n−オクチルメルカプタン0.5部の混合物を180分かけて滴下した。その後、80℃で60分間攪拌し、重合体エマルションを得た(重合率は98%)。
0.7%の割合で硫酸を溶解した水溶液300部を撹拌しながら70℃に加温し、この中に得られた重合体エマルションを徐々に滴下して、重合体を凝固させた。析出物を分離、洗浄した後、75℃で24時間乾燥し、重合体(流動性向上剤(B−1))を得た。質量平均分子量(Mw)は49000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
(製造例2)
流動性向上剤(B−2)の製造:
スチレンを87.5部、メタクリル酸フェニル12.5部、n−オクチルメルカプタンの量を0.5部から0.2部に変更した以外は、製造例1と同様の方法により重合体(流動性向上剤(B−2))を得た(重合率は98%)。質量平均分子量(Mw)は97000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
(製造例3)
流動性向上剤(B−3)の製造:
スチレンを20部、メタクリル酸フェニル80部、n−オクチルメルカプタンの量を0.5部から2部に変更した以外は、製造例1と同様の方法により重合体(流動性向上剤(B−3))を得た(重合率は99%)。質量平均分子量(Mw)は27000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
(製造例4)
流動性向上剤(B’−4)の製造:
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、リン酸カルシウム0.4部、蒸留水150部を仕込み、ついでスチレン96部、メタクリル酸n−ブチル4部、過酸化ベンゾイル1.2部を溶解した混合物を加え、しばらく攪拌した後、窒素バブリングを30分実施した。窒素雰囲気下、80℃で4時間攪拌し、さらに90℃で1時間攪拌を行った。沈殿物を分離、洗浄した後、75℃で24時間乾燥し、重合体(流動性向上剤(B’−4))を得た(重合率は97%)。質量平均分子量(Mw)は150000、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。
製造例1〜4における各成分の仕込み量(部)、重合様式、重合率、得られた重合体の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表1に示した。なお、表中、Stはスチレン、PhMAはメタクリル酸フェニル、BAはアクリル酸n−ブチル、BPOは過酸化ベンゾイルである。また、重合率は、得られた重合体の固形物の質量換算により算出した。また、質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPC法(溶離液:クロロホルム)により測定した。
Figure 0004778241
(実施例1〜4、比較例1〜3)
芳香族ポリカーボネート系樹脂として以下のものを用意した。
PC1:芳香族ポリカーボネート系樹脂、「パンライトL1225WS」、帝人化成(株)製、粘度平均分子量2.1万。
PC2:芳香族ポリカーボネート系樹脂、「パンライトL1225ZL」、帝人化成(株)製、粘度平均分子量1.8万。
流動性向上剤、および芳香族ポリカーボネート系樹脂を、表2に示す配合(合計100部)で混合し、さらに紫外線吸収剤(「チヌビン329」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.3部、酸化防止剤(「イルガノックス1076」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.1部、熱安定剤(「アデカスタブ2112」、旭電化工業(株)製)0.1部を加え、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械(株)製)に供給し、280℃で溶融混練し、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を得た。
得られた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、10cm角の平板成形品を得た。
成形品の片面に、硬化後の膜厚が8μmになるように、スプレーコート法にて、ハードコート剤(ハードコート用紫外線硬化型塗料、「UV−7605B」、日本合成化学工業(株)製のn−ブタノール溶液)を塗布した。1分間放置した後、成形品を60℃の加熱炉中に入れて90秒間の加熱により塗膜から有機溶剤を揮発させた。その後、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを用い、波長340〜380nmの紫外線を、積算光量が3000mJ/cm2 となるように照射して塗膜を硬化させ、成形品の表面にハードコート層を形成し、ハードコート品を得た。
得られた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物およびハードコート品について、後述の(1)〜(9)の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004778241
(評価方法)
(1)溶融流動性:
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物のスパイラルフロー長さ(SFL)を、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の厚さは2mm、幅は15mmとした。
(2)耐薬品性:
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ2mm、15cm角の平板を作製し、これを切断して厚さ2mm、15cm×2.5cmの成形品を得た。試験片を120℃で2時間アニール処理した後、カンチレバー試験を行い、薬品塗布による試験片の破断時間を測定した。測定は、試験温度:23℃、荷重:20MPa、溶媒:トルエン/イソオクタン=1/1vol比で実施した。
(3)表層剥離性(耐剥離性):
(2)で得られた成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥離状態を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好。
×:表層剥離が見られる。
(4)荷重たわみ温度(耐熱性):
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、厚さ1/4インチの成形品を成形した。成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。アニール処理は120℃で1時間実施し、荷重は1.82MPaとした。
(5)ハードコート層の密着性:
JIS K−5400に記載されている碁盤目剥離試験の方法に準じて、ハードコート品のハードコート層に碁盤目の切れ目を付けた試験片を作製し、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を試験片に貼り付けた後、該テープを速やかに90度の方向に引っ張って剥離させ、ハードコート品表面に残った碁盤目の数を数え、この数をハードコート層の密着性の指標とし、剥離なし(○)、一部剥離あり(×)で評価した。
(6)外観:
ハードコート品のハードコート層表面を太陽光の下、肉眼により観察し、シルバーおよびクラックの発生の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:シルバーまたはクラックの発生なし。
△:シルバーまたはクラックの発生あり。
×:シルバーおよびクラックの発生あり。
(7)ヘイズ:
ハードコート品のヘイズをASTM D1003に準拠して23℃で測定した。
(8)面衝撃試験:
グラフィックインパクトテスター(東洋精機工業(株)製)を使用し、ハードコート品のハードコート層の面衝撃試験を実施し、全吸収エネルギー(J)を測定した。測定条件は、撃芯径:1/2インチ、受け台の径:3インチ、落下高さ:60cm、ウエイト質量:14.5kgとした。
(9)破壊形態:
(8)の試験後のハードコート品の破壊形態を目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
○:延性およびそれに類する破壊。
×:脆性およびそれに類する破壊。
表2の結果から明らかなように、実施例1〜4においては、成形品の耐熱性、耐剥離性、透明性を損なうことなく、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性および成形品の耐薬品性の著しい向上が見られ、これから得られるハードコート品は、ハードコート層の密着性、外観、耐衝撃性が良好であった。
一方、比較例1においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の相溶性が不充分なため、良好な耐剥離性が得られず、溶融流動性および耐薬品性の向上も得られなかった。そして、これから得られるハードコート品は、ハードコート層の密着性、外観、耐衝撃性に劣っていた。
また、比較例2、3においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物が流動性向上剤(B)を含んでおらず、充分な流動性および耐薬品性が得られなかった。特に、比較例2においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性が不充分であり、比較例3においては、成形品の耐薬品性が低下するため、これらから得られるハードコート品は、外観および耐衝撃性が大きく低下した。
本発明のハードコート品は、芳香族ポリカーボネート系樹脂からなる成形品の優れた特性(透明性、耐熱性、耐衝撃性等)を損なうことなく、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能であり、かつ外観に優れることから、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具、雑貨等の各種用途に有用である。殊に、大型化、軽量薄肉化、形状複雑化、高性能化に対応できることから、光学情報記録媒体、自動車用ランプカバー、建築・車両用グレージング材に好適であり、その奏する産業上の効果は格別である。

Claims (1)

  1. 芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)を配合した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品表面にハードコート層が設けられたハードコート品であって、
    前記流動性向上剤(B)が、芳香族ビニル単量体(b1)0.5〜99.5質量%、下記式(I)で表される単量体(b2)0.5〜99.5質量%、および他の単量体(b3)0〜40質量%からなる単量体混合物[ただし、単量体(b1)〜(b3)の合計は100質量%である。]を重合して得られる重合体であることを特徴とするハードコート品。
    Figure 0004778241
    (式(I)中、R1 は水素原子またはメチル基であり、R2 は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
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