JPWO2003072620A1 - 熱可塑性樹脂組成物、及びエンジニアリングプラスチック組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体を構成する単量体をグラフト重合することにより得られ、クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることを特徴とするものである。この熱可塑性樹脂組成物をエンジニアリングプラスチックと共に用いた場合、エンジニアリングプラスチックの特性を損なうことなく、流動性を改善できる。本発明のエンジニアリングプラスチック組成物は、各種OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器のハウジングや各種部品、自動車部品などの分野において好適に用いられる。
Description
技術分野
本発明は、優れた流動性改良性を有する熱可塑性樹脂組成物、および流動性、耐剥離性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れたエンジニアリングプラスチック組成物に関する。
背景技術
エンジニアリングプラスチックは、その優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等の様々な分野において幅広く利用されている。しかしながら、例えばポリカーボネート樹脂の場合、成形加工温度が高く、溶融流動性に劣るという問題点を有している。
一方、近年においては、それらの成形品が、複写機、ファックス、パソコンなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などのハウジングや部品などの場合には、形状が複雑になること、リスやボブなどの凸凹が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。
ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良にあたっては、(1)マトリクス樹脂であるポリカーボネート自体を低分子量化する方法が一般的である。また、(2)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)とのポリマーアロイ組成物、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)等のスチレン系樹脂とのポリマーアロイ組成物、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)とのポリマーアロイ組成物などのスチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ化による流動性改良が報告されている(特公昭38−15225号公報、特公昭43−6295号公報、特公昭43−13384号公報)。
また、さらなる流動性の改良を目的として、(3)ポリエステルオリゴマーを添加する方法(特公昭54−21455号公報)、(4)ポリカーボネートのオリゴマーを添加する方法(特開平3−24501号公報)、(5)低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法(特公昭52−784号公報、特開平11−181198号公報)、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体(特開平11−35831号公報)を添加する方法、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下に、スチレンを重合して得られる重合体を添加する方法(特開2000−239477号公報)が提案されている。
しかしながら、(1)ポリカーボネート自体の分子量を低分子量化する方法は、流動性が大きく向上するものの、必要以上の分子量低下はポリカーボネートの優れた耐衝撃性や耐熱性を損なう。また、耐薬品性が低下することからも、ポリカーボネートの優れた特性を保持したまま低分子量化により溶融流動性を向上させるには限界がある。
また、(2)ABS樹脂やHIPS等とスチレン樹脂とのポリマーアロイ化は、耐熱性、耐衝撃性、流動性の優れた特性を生かし、多くの成形材料分野に使用されている。しかしながら、近年の射出成形品の形状の複雑化や、リスやボブなどの凸凹が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、さらなるポリカーボネート系樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。このようなポリマーアロイ組成物で有効な流動性を得るためには、ABS樹脂等の配合が多くする必要があり、耐熱性、耐衝撃性、難燃性といったポリカーボネートの優れた特徴を保持したまま流動性を向上させるには限界がある。
また、(3)ポリエステルオリゴマーを添加する方法や(4)ポリカーボネートオリゴマーを添加する方法は、流動性の改良には有効であるものの、ポリカーボネートの優れた耐熱性や耐衝撃性が大きく低下するという問題がある。
また、(5)低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法は、いずれも耐熱性を保持したままで、ある程度の溶融流動性の改良が可能である。しかしながら、低分子量のスチレン単独重合体においては、その流動性改質効果が不十分であるうえ、相溶性が不十分であるために、成形品に表層剥離が生じやすいこと、またそれに伴う衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が充分でない問題点を残している。これらの相溶性を改良するために低分子量のAS樹脂、SP値が9.3を超えて11.5未満の極性基を有する芳香族ビニル系樹脂、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物とからなる共重合体等を添加する方法が報告されている(特開平8−127686号公報、特開平11−181197号公報、特開2000−239477号公報)。
しかしながら、それらは、実施例等にも記述されているように、低分子量のスチレンと極性モノマーとからなる単なる共重合体であり、相溶性の改良により表層剥離は改良されるが、依然としてその流動性改良効果が充分でなく、流動性を上げるために多量に添加すれば耐衝撃性が低下するという問題がある。
また、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体を添加する方法、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体を添加する方法では、ポリカーボネート樹脂の良好な耐熱性を保持したまま著しい溶融流動性の改良が可能である。しかしながら、相溶性が充分でなく、成形品に表層剥離が生じやすいこと、また、それに伴う衝撃強度あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が充分でないという問題点を残している。
以上のことから、従来技術においては、そのいずれもがポリカーボネートに代表されるエンジニアリングプラスチックの優れた特性を損なうことなく、溶融流動性を改良するという点では未だ不十分であった。
発明の開示
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、エンジニアリングプラスチックの特徴(耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)が改良される熱可塑性樹脂組成物、及びそれを含有したエンジニアリングプラスチック組成物を目的とする。
本発明の要旨は、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合することにより得られ、クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物にある。
前記クロロホルムに溶解する可溶成分は、質量平均分子量が10000〜50000であることが好ましく、10000〜30000であることが更に好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、キャピラリー式レオメーターにより測定した溶融粘度が、300Pa.s以下であることが好ましい。
前記重合体(A)は、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)、又はポリオルガノシロキサンを主成分とする重合体(A−2)であることが好ましい。
前記重合体(B)は、少なくとも1種類のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)からなる群より選ばれる1種類であることが好ましい。
また、前記重合体(B)は、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)であることが更に好ましい。
また、本発明の要旨は、前記熱可塑性樹脂組成物からなるエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤(D)にある。
更に本発明の要旨は、エンジニアリングプラスチック(C)100質量部に対して、前記流動性向上剤(D)0.1〜100質量部を配合することを特徴とするエンジニアリングプラスチック組成物にある。
エンジニアリングプラスチック(C)は、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることが好ましい。なお、「主成分」とは、含有量が50質量%以上であることを意味する。
また、前記エンジニアリングプラスチック組成物100質量部に対して、無機充填材(E)が1〜100質量部添加されてなることが好ましい。
前記無機充填材(E)は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維からなる繊維状補強剤であることが好ましい。
また、前記エンジニアリングプラスチック組成物100質量部に対して、難燃剤(F)0.1〜30質量部が添加されてなることが好ましい。
更に、上記エンジニアリングプラスチック組成物合計量100質量部に対して、ノンドリップ剤(G)を0.05〜5質量部が添加されてなるものが好ましい。
前記前記難燃剤(F)は、リン酸エステル化合物であることが好ましい。
また、前記ノンドリップ剤(G)は、フルオロオレフィン系樹脂であることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤(D))]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合することにより得られたものであって、
クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000の範囲内にある。
また、この熱可塑性樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチックの流動性向上剤として好適なものであり、エンジニアリングプラスチックの優れた特性(耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等)を損なうことなく、その溶融流動性(成形加工性)を向上させることができる。
ここで、上記“ポリカーボネート樹脂”とは、ビスフェノールAとホスゲン又はジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルを反応させて得られるようなビスフェノールA骨格を有する、一般に知られたポリカーボネート樹脂を示す。
また、上記“ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)”とは、重合体(A)10質量%と、ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)とを二軸押出機により270℃で溶融混練した後、射出成形機等により成形試片を作製し、後述するテープ剥離試験により表層剥離(層状剥離)が観察されるものを示す。
他方、“ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)”とは、重合体(B)10質量%と、ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)とを用いて、上述した方法と同様に成形試片を作製し、テープ剥離試験により表層剥離(層状剥離)が観察されないものを示す。
テープ剥離試験(碁盤目剥離試験:JIS K−5400)とは、上記のようにして得られた成形試片の表面に、カッターナイフで1mm2のマス目を100個作り、その部分に粘着テープを十分に密着させた後、勢いよく剥し、剥離したマス目を目視で確認することにより、耐表層剥離性を評価するものである。
また、成形試片の突き出しピン跡に、カッターナイフで斜め水平に切り込みを入れ、表層が剥離するか否かを目視により確認することによって、より厳しい評価試験を行うことができる。
本明細書では、上述した両試験によっても表層剥離が確認されないものを「ポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体(B)」とし、少なくとも一方の試験で表層剥離が確認されたものを「ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)」と定義する。
上記ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを主成分とする共重合体(A−2)、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のアルキル基の炭素数が2以上のアルキルアクリレートからなり、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする共重合体(A−1)、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等の芳香族ビニル重合体を主成分とする共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を主成分とする共重合体等が挙げられる。これらの中でも、樹脂自体の溶融粘度が低く、エンジニアリングプラスチックの流動性改良効果が大きいポリオルガノシロキサンを主成分とする重合体(A−2)、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)としては、そのガラス転移温度(Tg)が25℃以下であることが好ましく、より好ましくは0℃以下であり、更に好ましくは−20℃以下である。ガラス転移温度が25℃を超える場合、優れた流動性改良効果と耐衝撃性等の機械特性のバランスを損なう可能性がある。
上記ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート共重合体等の少なくとも1種以上のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メタクリロニトリル共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体等のアルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびポリカーボネートを主成分とする重合体が挙げられる。これらのうちでは、エンジニアリングプラスチックの優れた特性(耐熱性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その溶融流動性(成形加工性)等の改良にも有効な、少なくとも1種以上のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)がより好ましい。更に、これらの中でも、流動性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性、熱安定性に優れる点で、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−2)が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)としては、そのガラス転移温度(Tg)が25℃より高いことが好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、最も好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低い場合、優れた流動性改良効果と耐熱性等の機械特性のバランスを損なう可能性がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、このように、グラフト重合を行った熱可塑性樹脂組成物を用いると、この熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)が表層剥離を生じさせることなく、外観、衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が一層優れたものとなる。
また、上記重合体(B)を構成する単量体全てが重合体(A)にグラフト結合していることが好ましいが、この熱可塑性樹脂組成物をエンジニアリングプラスチック(C)の流動性向上剤として使用する場合、そのエンジニアリングプラスチック(C)が本来有する耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)等が改良される範囲においては、重合体(B)を構成する単量体全てが重合体(A)とグラフト結合していなくても特に問題はない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、重合体(A)と重合体(B)との割合は、重合体(A)と重合体(B)の両方が存在する範囲においては特に制限はないが、流動性と機械物性のバランスを考慮すると、重合体(A)が1〜80質量%、重合体(B)が20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは重合体(A)が3〜70質量%、重合体(B)が30〜97質量%であり、さらに好ましくは重合体(A)が5〜40質量%、重合体(B)が60〜95質量%であり、最も好ましくは重合体(A)が10〜30質量%、重合体(B)が70〜90質量%である。
重合体(A)が1質量%より少ない場合には、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。また、重合体(A)の全てが重合体(B)とグラフト結合していることが好ましいが、重合体(A)が80質量%より多い場合、重合体(A)の全てが重合体(B)とグラフト結合を生成することが困難となり、熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)が表層剥離を生じ、外観、衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が低下する恐れがある。
また、重合体(A)と重合体(B)のグラフト重合体の全てが非架橋のグラフト重合体であることが好ましいが、優れた流動性改質の特性を損なわない範囲であれば、グラフト重合体の全てが非架橋である必要はなく、クロロホルムやアセトン等の有機溶媒に不溶の架橋構造体が一部存在していても特に問題はない。
熱可塑性樹脂組成物は、溶媒不溶の一部の架橋構造体を除く、クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることが、成形性と耐熱性、耐衝撃性等の物性とのバランスから好ましく、より好ましい下限は15000であり、更に好ましくは18000であり、最も好ましくは20000である。また、より好ましい上限は70000であり、更に好ましくは50000であり、最も好ましくは30000である。なお、クロロホルムへの可溶成分には、重合体(A)と重合体(B)からなる非架橋のグラフト重合体、並びにグラフトされていない重合体(A)、グラフトされていない重合体(B)のうち少なくとも1種類以上が含まれている。
上記可溶成分の質量平均分子量が10000より小さい場合、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性や剛性等の種々の機能を低下させる可能性がある。また、成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ等の外観不良といった問題が発生する可能性が高くなる恐れがある。
一方、上記質量平均分子量が100000より大きくなると、熱可塑性樹脂組成物自体の溶融粘度も高くなり、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、溶融粘度が300Pa.s以下のものを用いることが好ましい。
なお、前記溶融粘度は、キャピラリー式レオメーター(例えばボーリン製社ツインクアピラリーレオメーターRH7)を用い、ノズルD=1mm、L/D=16、バレル温度=170℃、せん断速度=3000sec−1の条件で測定した溶融粘度をいう。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合する。重合法としては、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合におけるリビングアニオン重合や、TEMPO系、RAFT系、ATRP系といったリビングラジカル重合等により、重合体(A)と重合体(B)を連続的に重合する方法(i)等が挙げられる。
上記重合体(A)と重合体(B)を連続的に重合する方法(i)としては、重合体(A)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和基を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(B)を合成する方法、重合体(B)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(A)を合成する方法が挙げられる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい製造方法としては、重合体(A)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和基を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(B)を合成する方法について説明する。
(マクロモノマーの合成)
マクロモノマーの合成方法としては、例えば、水、乳化剤と、ポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)を形成する単量体混合物100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体0.5〜5質量部、重合開始剤、連鎮移動剤等の混合物に、必要に応じて重合触媒を添加し、高温下で重合を行い、マクロモノマーを合成する。
上記乳化剤としては、例えば、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン乳化剤が挙げられる。
上記ノニオン性乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アルキルセルロースが挙げられる。
上記アニオン性乳化剤の具体例としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンおよび脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合物のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられる。
上記カチオン性乳化剤の具体例としては、脂肪族アミン塩類、第四アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
上記両性イオン乳化剤の具体例としては、アルキルベタイン等が挙げられる。
上記ポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)の調製に用いられる単量体混合物のアルキルアクリレートとしては、炭素数が2〜20のアルキル基を有するのがよく、そのアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。その具体例としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、3−メチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エイコシルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、流動性及びコストを考慮すると、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレートが好ましく、特に、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
上記不飽和基を2つ以上有する単量体の具体例としては、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができるが、エンジニアリングプラスチック組成物の流動性を考慮すると、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートは3つのアリル基を有するが、最初に反応するアリル基の反応性と、二番目、三番目に反応するアリル基の反応性とは異なる)等の反応性の異なる2種以上の不飽和基を有する単量体が好ましい。
また、上記以外にも、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の芳香族ビニル単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する化合物、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボン酸基、カルボン酸無水物、ジカルボン酸、ハロゲン基、ハロゲン化カルボニル等の官能基を含有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート等の共重合可能な成分の1種または2種以上を重合成分全体の50質量%以下となるように併用することができる。耐衝撃性のバランスを考慮すると、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
上記重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
レドックス系開始剤の具体例としては、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット、ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が挙げられる。
また、上記連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、上記以外のマクロモノマーの合成方法としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン等のグラフト交叉剤の存在下に、環状オルガノシロキサンを重合する方法を挙げることができる。
上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の環状オルガノシロキサンが用いられ、3〜6員環のものが好ましく用いられる。このような環状オルガノシロキサンの例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等を挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記グラフト交叉剤は、ポリオルガノシロキサンを調製する際には反応せず、その後のグラフト重合の際に反応する官能基を有するシロキサンであり、その具体例としては次式(1)〜(4)で表される化合物を示すことができる。
なお、上記式(1)〜(4)中、R1、R3はメチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、nは0、1または2であり、pは1〜6の整数である。
これらの中では、上記式(1)で表される単位を形成し得る(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンは、グラフト効率が高いため効率的にグラフト鎖を形成することが可能であり、これを用いた場合、耐衝撃性がより優れたものになるので好ましい。(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンの中では、メタクリロイルオキシアルキルシロキサンが好ましく、その具体例としてδ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
上記式(2)で表される単位を形成し得るビニルシロキサンとしては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記式(3)で表される単位を形成し得るメルカプトシロキサンとしては、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン等を挙げることができる。
また、上記式(4)で表される単位を形成し得る化合物としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
このようにポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤0.5〜5質量部を共重してマクロモノマーを合成することができる。
上記マクロモノマーにおいて、流動性、耐衝撃性、耐剥離性のバランスを考慮すると、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤を0.7〜5質量部有することがより好ましく、更に好ましくは1〜3質量部である。不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤が0.5質量部より少ない場合は、上記マクロモノマーが、重合体(B)と必要充分なグラフト結合を形成しない恐れがあり、熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、マクロモノマーが表層剥離を生じ、外観、衝撃強度、あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が低下する可能性がある。また、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤の含量が多すぎると、熱可塑性樹脂組成物に占めるクロロホルム等の有機溶媒に不溶な架橋構造体の割合が多くなり、優れた流動性改良効果を損なう恐れがある。
上記マクロモノマーの質量平均分子量は、特に制限はなく、優れた流動性を損なわない範囲であれば、架橋体であっても構わないが、諸物性のバランスを考慮すると、クロロホルムへの可溶成分の分子量が5000〜100000であることが好ましく、より好ましい下限は10000であり、更に好ましくは20000である。また、より好ましい上限は70000であり、更に好ましくは50000である。質量平均分子量が5000より小さい場合、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性や剛性等の種々の機能を低下させる可能性がある。また、成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ等の外観不良といった問題が発生する可能性が高くなる恐れがある。また、流動性を向上させるマクロモノマーの寄与が小さくなり、充分な流動性改良効果が得られない恐れがある。
また、マクロモノマーの質量平均分子量が100000より大きくなると、溶融粘度が高くなり、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。また、相溶性成分の寄与が小さくなるため耐剥離性やそれに伴う諸物性が低下する恐れがある。
(重合体(B)を形成するビニル系単量体又はその混合物の重合)
上述したマクロモノマーの重合系中に、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を形成する、少なくとも1種類以上のビニル系単量体、重合開始剤、連鎖移動剤等を含む混合物を供給し、高温下で重合を行う。
上記ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を形成するビニル系単量体、又はその混合物としては、メチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のビニル系単量体、又はそれらビニル系単量体混合物、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、メチルメタクリレート/スチレン、メチルメタクリレート/アクリロニトリル等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステル単量体、及びポリカーボネートを形成するビスフェノールAとジフェニルカーボネート単量体混合物等が挙げられる。これらのうちでは、エンジニアリングプラスチック(C)の耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性を損なうことなく、またその流動性(成形加工性)等の改良にも有効であるメチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のビニル系単量体またはビニル系単量体混合物、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、メチルメタクリレート/スチレン、メチルメタクリレート/アクリロニトリル等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物がより好ましく、さらにそれらの中でも流動性、難燃性、耐衝撃性、熱安定性のバランスを考慮すると、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物が最も好ましい。
上記重合開始剤、連鎖移動剤等としては、マクロモノマーの重合の際、使用したものと同じものが適用できる。
以上説明したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物をエンジニアリングプラスチック(C)と共に用いた場合、エンジニアリングプラスチック(C)が本来有する、耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性が損なわれることなく、流動性(成形加工性)を向上することができる。
[エンジニアリングプラスチック(C)]
本発明のエンジニアリングプラスチック(C)としては、従来より知られている各種の熱可塑性エンジニアリングプラスチックであれば特に制限はなく、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができる。これらの中でも、流動性改良効果を考慮すると、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等が好ましく、ポリカーボネートがより好ましい。また、これらは、単独または2種以上を用いることができる。
また、上記ポリカーボネートとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系ポリカーボネート等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。
上記エンジニアリングプラスチック(C)の分子量は、所望に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はない。ただし、エンジニアリングプラスチック(C)がポリカーボネートの場合、粘度平均分子量は10000〜50000であるのが好ましく、15000〜30000であるのがより好ましい。
エンジニアリングプラスチック(C)は、従来より知られている各種の方法で製造することができる。エンジニアリングプラスチック(C)が、例えば、ポリカーボネートで、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン系ポリカーボネートを製造する場合には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを原料として用い、アルカリ水溶液および溶剤の存在下にホスゲンを吹き込んで反応させる方法や、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンと炭酸ジエステルとを、触媒の存在下にエステル交換させる方法が挙げられる。
また、本発明のエンジニアリングプラスチック(C)としては、エンジニアリングプラスチックが本来有する優れた耐熱性、耐衝撃性、難燃性を損なわない範囲、例えば50質量%以下(エンジニアリングプラスチック100質量%に対し)であれば、ABS、HIPS、PS、PAS等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー等のエンジニアリングプラスチック以外の熱可塑性樹脂を配合したエンジニアリングプラスチック樹脂を主成分とするエンジニアリングプラスチック系の各種ポリマーアロイを使用することも可能である。
[エンジニアリングプラスチック組成物1 (C)+(D)]
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物において、熱可塑性樹脂組成物((流動性向上剤(D))とエンジニアリングプラスチック(C)との割合は、所望の物性等に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はないが、エンジニアリングプラスチック組成物が、エンジニアリングプラスチック(C)の性能(耐熱性、衝撃強度等)を低下させることなく有効な流動性改良効果を得るためには、エンジニアリングプラスチック(C)100質量部に対して、熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)0.1〜100質量部、より好ましくは1〜30質量部、更に好ましくは2〜10質量部を用いるのがよい。
さらに、本発明のエンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、従来より知られている各種の添加剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等を配合してもよい。例えば、成形品の強度、剛性、さらには難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などを含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他のエンジニアリングプラスチック組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
上記エンジニアリングプラスチック組成物の具体的な物性値は、所望に応じて適宜調整すればよく、本発明において特に制限はない。ただし、流動性に関しては、後述する実施例の測定条件に従った溶融流動性が、ベース樹脂に対して少なくとも3割程度向上することが好ましい。
また、衝撃強度に関しては、ASTM D256に準拠して試験を行った際に、アイゾット衝撃強度が700J/m以上であることが好ましい。
また、耐剥離性に関しては、上述したテープ剥離試験に準拠して、表層剥離が観察されないことが好ましい。
また、耐熱性に関しては、ASTM D648に準拠して試験を行った際に、荷重たわみ温度が125℃以上であることが好ましい。
また、難燃性に関しては、JIS K7201に準拠して試験を行った際に、LOI(酸素指数)が25%以上であることが好ましい。
このような物性を併せ持つエンジニアリングプラスチック組成物は、流動性と耐熱性と外観と衝撃強度のバランスに非常に優れているといえる。
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物は、少なくともエンジニアリングプラスチック(C)と、上述した熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)を混合(混練)することにより得られる。
混合の方法としては、従来より知られている各種の配合方法および混練方法を用いることができ、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
また、予め熱可塑性樹脂組成物の比率が大きくなるように、熱可塑性樹脂組成物とエンジニアリングプラスチック(C)とを混合したマスターバッチを調製し、その後マスターバッチとエンジニアリングプラスチック(C)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
[無機充填材(E)]
本発明において用いられる使用される無機充填材(E)としては特に制限はないが、その例としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、クレー、珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅紛、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維ありはウィスカー、芳香族ポリアミド繊維などが挙げられるが、好ましくはミルドファイバー、カットファイバー、ガラスパウダー等と呼称され市販されているガラス繊維、ピッチ系及びPAN系等の炭素繊維から選ばれた繊維状補強剤である。これらの繊維は単独もしくは併用して用いられ、またこの繊維に各種表面処理を施したものを用いることもできる。
ガラス繊維としては特に制限はないが、平均繊維直径5〜15μm、平均繊維長さ2〜5mmのガラス繊維が好ましく用いられる。炭素繊維としても特に制限はなく、PAN系及びピッチ系のいずれでもよいが、平均繊維直径6〜9μm、平均繊維長さ3〜8mmのカーボン繊維が好ましく用いられる。
[強化エンジニアリングプラスチック組成物 (C)+(D)+(E)]
本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物は、上述したエンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、無機充填材(E)を主成分として含有する組成物である。
ここで、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)の配合比(合計100重量%)は、エンジニアリングプラスチック(C)50〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜99質量%、流動性向上剤(D)が50〜1質量%好ましく、より好ましくは40〜5質量%である。エンジニアリングプラスチック(C)が50質量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、流動性向上剤(D)が1質量%未満では流動性の改良効果が不十分である。さらに好ましい両樹脂の配合比は、エンジニアリングプラスチック(C)80〜99質量%、最も好ましくは90〜98質量%、流動性向上剤(D)が20〜1質量%、最も好ましくは10〜2質量%である。
また、無機充填材(E)の配合量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。無機充填材(E)の含量が1質量部未満であると、目的とする強度、剛性、耐熱性を得ることができない可能性があり、また、100質量部を超えると、溶融流動性が低下し、溶融成形が著しく困難になる場合がある。好ましい無機充填材含量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量%に対して、5〜80質量部であることが好ましく、最も好ましくは20〜50質量部であるが、成形品の強度、剛性、耐熱性、流動性等の要求特性を考慮して、無機充填材の種類、エンジニアプラスチック(C)の種類と量、流動性向上剤(D)の種類と量などをもとに総合的に判断して決定される。
さらに、本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物は、必要に応じて、従来より知られている各種の添加剤、安定剤、相溶化剤、強化剤、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等のアンチドリッピング剤を配合してもよい。例えば、成形品の難燃性を向上させるために、無機系、金属塩系、ハロゲン系、リン系、シリコーン系等の各種難燃剤とフルオロオレフィン等のアンチドリッピング剤等を含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他の熱可塑性樹脂組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
次に、本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物の製造方法について説明する。上記強化エンジニアリングプラスチック組成物は、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、無機充填材(E)を好ましくは上述した割合で、さらに必要に応じて、難燃剤、ノンドリップ剤、コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体などの他の各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができるが、単軸押出成形機、多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、溶融混練時にベントより強制排気して可能な限り揮発成分をあるレベルまで除去することができるベント付き溶融混練成形機、特にベント付き溶融混練押出成形機の採用が好ましい。
また、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることができる。
溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜330℃の範囲で適宜選択される。
なお、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)以外の含有成分は、あらかじめ、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
[難燃剤(F)]
本発明に用いられる難燃剤(F)としては特に制限はないが、具体的にはハロゲン化ビスフェノールA,ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン系化合物と酸化アンチモンなどの難燃助剤の組み合わせからなるハロゲン系難燃剤、有機リン酸エステル系化合物等にリン系難燃剤、分岐型のフェニルシリコーン化合物等のシリコーン系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも環境に優しい点、コスト、流動性、難燃性等の機械特性バランスに優れる点で、リン酸エステル化合物が特に好ましい。
リン酸エステル化合物としては、特に制限はなく、ハロゲンを含まないものが好ましく、例えば、次式(5)で示されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
ここで、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。式(5)において、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。
また置換されている場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基など、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
また、式(5)において、2価以上の有機基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニレン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン等がある。
リン酸エステル化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合物などを例示できる。
上記リン酸エステル化合物は、特に制限はないが、金型付着防止性、高温で薄肉成形品を成形するような場合には、モノマー含有量が3質量%以下のものの使用が好ましい場合がある。さらに、酸価(JISK6751による測定)が1mgKOH/g以下のものが熱安定性の点から好ましい場合がある。また、耐湿性や耐熱性の点から、フェノールにアルキル基などの置換基があるリン酸エステル化合物の使用が好ましい場合がある。
ここで、市販のハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、トリフェニルホスフェート(「TPP」、大八化学工業株式会社製)、トリキシレニルホスフェート(「TXP」、大八化学工業(株)製)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(「CR−733S」、大八化学工業(株)製)、1,3−フェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX200」、大八化学工業(株)製)、1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX201」、大八化学工業(株)製)、4,4’−ビフェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX202」、大八化学工業(株)製)などを挙げることができる。
[難燃エンジニアリングプラスチック組成物(C)+(D)+(F)]
難燃剤(F)の含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは、2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。ここで、1質量部未満であると、目的とする難燃性を得ることができない可能性があり、また、30質量部を超えると、耐熱性の低下、衝撃強度の低下が起る場合がある。したがって、難燃剤(F)の含有量は、成形品の難燃要求特性を考慮して、難燃剤の種類、エンジニアリングプラスチック(C)の種類と量、流動性向上剤(D)の種類と量などをもとに総合的に判断して決定される。
本発明の難燃性エンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、熱安定剤を含有することができる。熱安定剤としては、難燃性エンジニアリングプラスチック組成物の熱酸化劣化をさらに防止する添加剤であり、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを例示することができる。これらの中でも、リン系酸化防止剤、特に亜リン酸エステル化合物が好ましく用いられる。亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸の水素がアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基などにより、それぞれ独立に置換されたエステル化合物である。
上記亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、トリス(イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリナフチルホスファイト、クレジルジフェニルホスファイト、キシレニルジフェニルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスファイトなどを例示できる。これらのなかで、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが好ましく用いられる。
上記亜リン酸エステル化合物の含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。ここで亜リン酸エステル化合物の含有量が0.01質量部未満では、耐熱酸化安定性改善効果が薄く、2質量部を越えると、耐熱性が低下、成形時のガス発生などの不都合が発生する恐れがある。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的として、更にノンドリップ剤(G)を含有することができる。ノンドリップ剤(G)としてはフルオロオレフィン樹脂を主成分とするフルオロオレフィン系樹脂を含有することができ、ここでフルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体、複合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体、テトラフルオロエチレン重合体とアクリル系樹脂等のビニル系樹脂との複合体等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であり、特に好ましくは500000〜10000000である。本発明で適用できるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
また、上記ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、テフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD1、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
上記ノンドリップ剤(F)は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部含有していることが好ましく、より好ましくは、0.1〜2質量部である。ここで、ノンドリップ剤の含有量が0.05質量部未満であると、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でない場合があり、5質量部を越えても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、例えば、UL−94の燃焼試験などにより、他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、耐衝撃性、均一性の向上を目的として、更にコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体を含有することができる。その含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量部である。
上記コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体とは、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状態)である。このグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分がもとの形態を保っている。この配合されたゴム状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層剥離を起こさない効果が得られる。
上記コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、種々なものを挙げることができる。市販のものとしては、例えば、ハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
これらの中で、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜10アルキル基を有するものが好適である。具体的には、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、アルキルアクリレート類70質量%以上と、これと共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30質量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜添加して反応させてもよい。
ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他のビニル系重合体、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよい。この重合反応は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法によって行うことができる。特に、乳化重合法が好適である。
このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、ゴム状重合体を20質量%以上含有していることが好ましい。このようなコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には60〜80質量%のn−ブチルアクリレートと、スチレン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのMAS樹脂弾性体が挙げられる。これらの中でも、ポリシロキサンゴム成分が5〜95質量%とポリアクリル(メタ)アクリレートゴム成分95〜5質量%とが、分離できないように相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体が好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この複合ゴム系グラフト共重合体の市販品としては、メタブレンS−2001(三菱レイヨン株式会社製)などが挙げられる。
また、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、無機充填材を含有させることができる。無機充填材は、成形品の剛性、更には難燃性を一層向上させることができる。
無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などをあげることができる。これらの中でも、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填材が好ましい。
また、タルクとしては、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。タルクなどの無機充填材の平均粒径は0.1〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無機充填材、特にタルクを含有させることにより、剛性向上効果に加えて、難燃剤の配合量を減少させることができる。
上記無機充填材は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)の合計100質量部に対して、1〜100質量部含有されていることが好ましく、より好ましくは、2〜50質量部である。ここで、無機充填材が1質量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100質量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
また、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、流動性向上剤(B)、難燃剤(C)の他に、各種添加剤成分を必要により含有することができる。
上記各種添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。これら任意成分の配合量は、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の具体的な物性値は、所望に応じて適宜調整すればよく、特に制限はない。ただし、流動性に関しては、ベース樹脂に対して2割〜3割向上することが好ましい。なお、流動性の評価方法は、UL94燃焼試験に準拠して行われる。
また、衝撃強度に関しては、ASTM D256に準拠して、アイゾット衝撃強度が400J/m以上であることが好ましい。
また、耐剥離性に関しては、上述したテープ剥離試験に準拠して、表層剥離が観察されないことが好ましい。
また、耐熱性に関しては、ASTM D648に準拠して、荷重たわみ温度が90℃〜110℃以上であることが好ましい。
以上説明したように、上記のような物性を併せ持つ本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れている。
次に、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の製造方法について説明する。
上記難燃エンジニアリングプラスチック組成物は、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、難燃剤(F)を好ましくは上述した割合で、さらに必要に応じて、ノンドリップ剤、コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体などの他の各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができるが、単軸押出成形機、多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、溶融混練時にベントより強制排気して可能な限り揮発成分をあるレベルまで除去することができるベント付き溶融混練成形機、特にベント付き溶融混練押出成形機の採用が好ましい。
また、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることができる。たとえば、リン酸エステル化合物等の難燃剤以外の原料成分を溶融混練し、この混練物にリン酸エステル化合物等の難燃剤を、好ましくは溶融状態で供給する方法、エンジニアリングプラスチックとリン酸エステル化合物等の難燃剤をまず溶融混練し、ついで流動性向上剤と混練する方法などを例示できる。
溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。
なお、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)以外の含有成分は、あらかじめ、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
このようにして得られた各エンジニアリングプラスチック組成物は、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形などの、従来より知られている各種の成形法により成形することにより、所望の形状の各種成形品を得ることができる。
本発明の各エンジニアリングプラスチック組成物から得られる成形品は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器のハウジングや各種部品、さらには自動車部品などの他の分野においても、好適に用いられる。
以上説明したように、本発明の各エンジニアリングプラスチック組成物は、本発明の熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)を所定量含有したものであるので、耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性に優れると共に、流動性(成形加工性)に優れるものである。すなわち、このエンジニアリングプラスチック組成物を用いることにより、各種物性に優れると共に、複雑な形状や薄型の成形品を含む任意の形状の成形品を容易、かつ安定に成形することができる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
[熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)の製造]
(流動性向上剤1)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート10部、アリルメタクリレート0.1部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.05部、n−オクチルメルカプタン0.1部の混合物を18分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル27部、スチレン63部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.45部、n−オクチルメルカプタン1.8部の混合物を162分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
この得られたエマルションの固形分を測定したところ24.2%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、22000であった。
(流動性向上剤2)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート30部、アリルメタクリレート0.3部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.15部、n−オクチルメルカプタン0.3部の混合物を54分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン1.4部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
上記エマルションの固形分を測定したところ24.6%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、22000であった。
(流動性向上剤3)
環状ジメチルシロキサンオリゴマー100部、グラフト交叉剤であるγ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部の混合液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を溶解した蒸留水310部を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPAの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、コンデンサーおよび攪拌翼を備えたセパラブルフラスコにドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを仕込み、10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、上記予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間上記温度を維持した後に冷却した。次いで、この反応物を室温で12時間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ラテックスを得た。このようにして得られたラテックスの固形分濃度は18.5%であり、粒子径分布は単一のピークを示し、質量平均粒子径は60nmであった。
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ラテックスL−1を30部(固形分)計り取り、蒸留水295部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン1.4部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
上記エマルションの固形分を測定したところ24.5%であった。また、このエマルションを酢酸カルシウム水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は30000であった。
(流動性向上剤4)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート30部、アリルメタクリレート0.3部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.15部の混合物を54分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン0.35部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
得られたエマルションの固形分を測定したところ24.6%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、120000であった。
上記流動性向上剤1〜4で用いたモノマー組成(部)、得られた熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)の質量平均分子量(Mw)、各流動性向上剤のポリカーボネート樹脂に非相容な重合体(A)セグメント及び非相溶な重合体セグメント(B)のガラス転移温度(℃)をまとめて表1に示す。
表中、BAはブチルアクリレート、AMAはアリルメタクリレート、ANはアクリロニトリル、Stはスチレンを示す。
(実施例1〜3、比較例1〜3)[エンジニアリングプラスチック組成物]
上記のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)および各成分を表2に示す割合(質量比)で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC:ポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS−2000F」、三菱エンジニアリングプラスチック製)
AS樹脂:SAN樹脂(「SR05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万、ガラス転移温度90℃)
実施例1〜3、比較例1〜3で製造されたエンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(8)難燃性の評価を行った。その結果を表2に示す。
(性能評価方法)
(1)固形分
重合後のエマルションを170℃で30分間乾燥した後、質量を測定し、固形分を求めた。
(2)質量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、溶離液クロロホルム、ポリメチルメタクリレート換算で測定した。
(3)溶融粘度
樹脂組成物の溶融粘度は、キャピラリー式レオメーター(ボーリン製社ツインクアピラリーレオメーターRH7)を用い、ノズルD=1mm、L/D=16、バレル温度=170℃、せん断速度=3000sec−1の条件で測定した。
(4)溶融流動性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物のスパイラルフロー長さSFLを射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。
(5)表層剥離(耐剥離性)
成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥離状態を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好
×:表層剥離見られる
(6)荷重たわみ温度(耐熱性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/4インチの成形品を成形した。
成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、アニールは行わず、荷重は1.82MPaとした。
(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/8インチの成形品を得た。得られた成形品のIz衝撃強度をASTM D256に準拠して測定した。なお、測定温度は23℃とした。
(8)難燃性
JIS K7201に準拠、酸素指数法(L0I)による燃焼試験を行い、材料が燃焼を持続するのに必要な酸素中の容量パーセントで表される最低酸素濃度を測定した。
表2の結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例1で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、含有された熱可塑性樹脂組成物の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例2で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、含有された熱可塑性樹脂組成物がAS樹脂であったため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、熱可塑性樹脂組成物を含有していないため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
(実施例4〜9、比較例4〜9)[強化エンジニアリングプラスチック組成物]
各成分を表3及び表4に示す割合(質量比)で混合し、サイドフィーダーを備えた二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、290℃で溶融混練し、強化エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC樹脂1:ポリカーボネート樹脂(出光石油化学(株)製タフロンFN1700)
AS樹脂−1:SAN樹脂(宇部サイコン(株)製SR 05B、Mw6.3万)
ガラス繊維1:CS03MAFT737K25(旭ファイバーグラス製、平均繊維長さ3mm、平均繊維直径13μ、集束剤ウレタン系)
炭素繊維1:TR06U/B4E(三菱レイヨン製、平均繊維長さ6mm、平均繊維直径7μ、集束剤ウレタン系)
実施例4〜9、比較例4〜9で製造された強化エンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(9)曲げ強度、曲げ弾性率の評価を行った。
(9)曲げ強度、曲げ弾性率
得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/4インチの試験片を得た。
得られた成形品の曲げ強度及び曲げ弾性率をASTM D790に準拠して測定した。なお、測定温度は23℃とした。
表3および表4から明らかなように、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、剛性、強度、耐熱性、流動性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例4および7で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例5および8で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がAS樹脂−1であったため、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
また、比較例6、9では、流動性向上剤を使用していないため、得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
(実施例10〜15、比較例10〜15)[難燃エンジニアリングプラスチック組成物]
各成分を表5又は表6に示す割合(質量比)で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC−1:ポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS−2000F」、三菱エンジニアリングプラスチック製)
SAN−1:SAN樹脂(「SR 05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万)
難燃剤:トリフェニルフォスフィン(大八化学製)
ノンドリップ剤:テフロン(登録商標) CD−1(旭ICIフルオロポリマー社製)
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC−2:ポリカーボネート樹脂(PC−1)、ABS樹脂(「UX 050」、宇部サイコン株式会社製)、SAN樹脂(「SR 30B」宇部サイコン株式会社製、Mw11.7万)を表6に示した割合で配合したもの。
SAN−1:SAN樹脂(「SR 05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万)
難燃剤:トリフェニルフォスフィン(大八化学製)
ノンドリップ剤:テフロン(登録商標) CD−1(旭ICIフルオロポリマー社製)
実施例10〜15、比較例10〜15で製造された難燃エンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(10)難燃性の評価を行った。
ここでの難燃性は次のようにして評価した。
(10)難燃性
得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/8インチの試験片を得た。得られた5個の成形品の難燃性を、アンダーライターズラボラトリーズインコーポレーションのブレチン94 材料分類のための燃焼試験UL94/V−0、V−1、V−2に示される試験法に基づいて評価した。なお、UL94についての各Vの等級の基準は概略次の通りである。
V−0:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が5秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−1:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−2:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつこれらの試料が脱脂綿に着火する微粒炎を落下する。
また、UL94は全試験棒が特定のV等級に合格しなければ、その等級に分類してはならない旨を規定している。この条件を満たさない場合には、その5個の試験棒は最も成績の悪い1個の試験棒の等級を与えられる。例えば1個の試験棒がV−2に分類される場合には、5個の全試験棒に対する等級はV−2である。
表5から明らかなように、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例10で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例11で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がSAN−1であったため、実施例10〜12で得られた熱可塑性樹脂組成物に比べ、充分な流動性を得られないだけでなく、衝撃強度においても劣っていた。
また、比較例12では、流動性向上剤を使用していないため、得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られないだけでなく、衝撃強度においても劣っていた。
また、比較例13で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、表6から明らかなように、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例14で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がSAN−1であったため、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、流動性向上剤を使用していないため、得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
産業上の利用可能性
本発明の熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)をエンジニアリングプラスチック(C)と共に用いた場合、エンジニアリングプラスチック(C)の特性を損なうことなく、流動性を改善できる。
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物によれば、耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性に優れると共に、流動性(成形加工性)に優れるものである。また、このエンジニアリングプラスチック組成物を用いることにより、各種物性に優れると共に、複雑な形状や薄型の成形品を含む任意の形状の成形品を容易、かつ安定に成形することができ、工業的に非常に有益なものである。
本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物によれば、無機充填材強化エンジニアリングプラスチックの優れた特徴(強度、剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐剥離性)が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)が改良され、特に強度、剛性、耐熱性、流動性バランスに優れた無機充填材強化エンジニアリングプラスチック組成物を提供することが可能となり、工業的に非常に有益である
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物によれば、ポリカーボネートに代表されるエンジニアリングプラスチックの優れた耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等の特性を損なうことなく、その溶融流動性(成形加工性)が改良され、それらの特性のバランスに優れた難燃エンジニアリングプラスチック組成物を提供することが可能となり、工業的に非常に有益である。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。その為、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、優れた流動性改良性を有する熱可塑性樹脂組成物、および流動性、耐剥離性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れたエンジニアリングプラスチック組成物に関する。
背景技術
エンジニアリングプラスチックは、その優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等の様々な分野において幅広く利用されている。しかしながら、例えばポリカーボネート樹脂の場合、成形加工温度が高く、溶融流動性に劣るという問題点を有している。
一方、近年においては、それらの成形品が、複写機、ファックス、パソコンなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などのハウジングや部品などの場合には、形状が複雑になること、リスやボブなどの凸凹が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。
ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良にあたっては、(1)マトリクス樹脂であるポリカーボネート自体を低分子量化する方法が一般的である。また、(2)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)とのポリマーアロイ組成物、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)等のスチレン系樹脂とのポリマーアロイ組成物、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)とのポリマーアロイ組成物などのスチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ化による流動性改良が報告されている(特公昭38−15225号公報、特公昭43−6295号公報、特公昭43−13384号公報)。
また、さらなる流動性の改良を目的として、(3)ポリエステルオリゴマーを添加する方法(特公昭54−21455号公報)、(4)ポリカーボネートのオリゴマーを添加する方法(特開平3−24501号公報)、(5)低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法(特公昭52−784号公報、特開平11−181198号公報)、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体(特開平11−35831号公報)を添加する方法、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下に、スチレンを重合して得られる重合体を添加する方法(特開2000−239477号公報)が提案されている。
しかしながら、(1)ポリカーボネート自体の分子量を低分子量化する方法は、流動性が大きく向上するものの、必要以上の分子量低下はポリカーボネートの優れた耐衝撃性や耐熱性を損なう。また、耐薬品性が低下することからも、ポリカーボネートの優れた特性を保持したまま低分子量化により溶融流動性を向上させるには限界がある。
また、(2)ABS樹脂やHIPS等とスチレン樹脂とのポリマーアロイ化は、耐熱性、耐衝撃性、流動性の優れた特性を生かし、多くの成形材料分野に使用されている。しかしながら、近年の射出成形品の形状の複雑化や、リスやボブなどの凸凹が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、さらなるポリカーボネート系樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。このようなポリマーアロイ組成物で有効な流動性を得るためには、ABS樹脂等の配合が多くする必要があり、耐熱性、耐衝撃性、難燃性といったポリカーボネートの優れた特徴を保持したまま流動性を向上させるには限界がある。
また、(3)ポリエステルオリゴマーを添加する方法や(4)ポリカーボネートオリゴマーを添加する方法は、流動性の改良には有効であるものの、ポリカーボネートの優れた耐熱性や耐衝撃性が大きく低下するという問題がある。
また、(5)低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法は、いずれも耐熱性を保持したままで、ある程度の溶融流動性の改良が可能である。しかしながら、低分子量のスチレン単独重合体においては、その流動性改質効果が不十分であるうえ、相溶性が不十分であるために、成形品に表層剥離が生じやすいこと、またそれに伴う衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が充分でない問題点を残している。これらの相溶性を改良するために低分子量のAS樹脂、SP値が9.3を超えて11.5未満の極性基を有する芳香族ビニル系樹脂、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物とからなる共重合体等を添加する方法が報告されている(特開平8−127686号公報、特開平11−181197号公報、特開2000−239477号公報)。
しかしながら、それらは、実施例等にも記述されているように、低分子量のスチレンと極性モノマーとからなる単なる共重合体であり、相溶性の改良により表層剥離は改良されるが、依然としてその流動性改良効果が充分でなく、流動性を上げるために多量に添加すれば耐衝撃性が低下するという問題がある。
また、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体を添加する方法、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体を添加する方法では、ポリカーボネート樹脂の良好な耐熱性を保持したまま著しい溶融流動性の改良が可能である。しかしながら、相溶性が充分でなく、成形品に表層剥離が生じやすいこと、また、それに伴う衝撃強度あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が充分でないという問題点を残している。
以上のことから、従来技術においては、そのいずれもがポリカーボネートに代表されるエンジニアリングプラスチックの優れた特性を損なうことなく、溶融流動性を改良するという点では未だ不十分であった。
発明の開示
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、エンジニアリングプラスチックの特徴(耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)が改良される熱可塑性樹脂組成物、及びそれを含有したエンジニアリングプラスチック組成物を目的とする。
本発明の要旨は、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合することにより得られ、クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物にある。
前記クロロホルムに溶解する可溶成分は、質量平均分子量が10000〜50000であることが好ましく、10000〜30000であることが更に好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、キャピラリー式レオメーターにより測定した溶融粘度が、300Pa.s以下であることが好ましい。
前記重合体(A)は、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)、又はポリオルガノシロキサンを主成分とする重合体(A−2)であることが好ましい。
前記重合体(B)は、少なくとも1種類のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)からなる群より選ばれる1種類であることが好ましい。
また、前記重合体(B)は、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)であることが更に好ましい。
また、本発明の要旨は、前記熱可塑性樹脂組成物からなるエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤(D)にある。
更に本発明の要旨は、エンジニアリングプラスチック(C)100質量部に対して、前記流動性向上剤(D)0.1〜100質量部を配合することを特徴とするエンジニアリングプラスチック組成物にある。
エンジニアリングプラスチック(C)は、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることが好ましい。なお、「主成分」とは、含有量が50質量%以上であることを意味する。
また、前記エンジニアリングプラスチック組成物100質量部に対して、無機充填材(E)が1〜100質量部添加されてなることが好ましい。
前記無機充填材(E)は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維からなる繊維状補強剤であることが好ましい。
また、前記エンジニアリングプラスチック組成物100質量部に対して、難燃剤(F)0.1〜30質量部が添加されてなることが好ましい。
更に、上記エンジニアリングプラスチック組成物合計量100質量部に対して、ノンドリップ剤(G)を0.05〜5質量部が添加されてなるものが好ましい。
前記前記難燃剤(F)は、リン酸エステル化合物であることが好ましい。
また、前記ノンドリップ剤(G)は、フルオロオレフィン系樹脂であることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤(D))]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合することにより得られたものであって、
クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000の範囲内にある。
また、この熱可塑性樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチックの流動性向上剤として好適なものであり、エンジニアリングプラスチックの優れた特性(耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等)を損なうことなく、その溶融流動性(成形加工性)を向上させることができる。
ここで、上記“ポリカーボネート樹脂”とは、ビスフェノールAとホスゲン又はジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルを反応させて得られるようなビスフェノールA骨格を有する、一般に知られたポリカーボネート樹脂を示す。
また、上記“ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)”とは、重合体(A)10質量%と、ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)とを二軸押出機により270℃で溶融混練した後、射出成形機等により成形試片を作製し、後述するテープ剥離試験により表層剥離(層状剥離)が観察されるものを示す。
他方、“ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)”とは、重合体(B)10質量%と、ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)とを用いて、上述した方法と同様に成形試片を作製し、テープ剥離試験により表層剥離(層状剥離)が観察されないものを示す。
テープ剥離試験(碁盤目剥離試験:JIS K−5400)とは、上記のようにして得られた成形試片の表面に、カッターナイフで1mm2のマス目を100個作り、その部分に粘着テープを十分に密着させた後、勢いよく剥し、剥離したマス目を目視で確認することにより、耐表層剥離性を評価するものである。
また、成形試片の突き出しピン跡に、カッターナイフで斜め水平に切り込みを入れ、表層が剥離するか否かを目視により確認することによって、より厳しい評価試験を行うことができる。
本明細書では、上述した両試験によっても表層剥離が確認されないものを「ポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体(B)」とし、少なくとも一方の試験で表層剥離が確認されたものを「ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)」と定義する。
上記ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを主成分とする共重合体(A−2)、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のアルキル基の炭素数が2以上のアルキルアクリレートからなり、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする共重合体(A−1)、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等の芳香族ビニル重合体を主成分とする共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を主成分とする共重合体等が挙げられる。これらの中でも、樹脂自体の溶融粘度が低く、エンジニアリングプラスチックの流動性改良効果が大きいポリオルガノシロキサンを主成分とする重合体(A−2)、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)としては、そのガラス転移温度(Tg)が25℃以下であることが好ましく、より好ましくは0℃以下であり、更に好ましくは−20℃以下である。ガラス転移温度が25℃を超える場合、優れた流動性改良効果と耐衝撃性等の機械特性のバランスを損なう可能性がある。
上記ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート共重合体等の少なくとも1種以上のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メタクリロニトリル共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体等のアルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびポリカーボネートを主成分とする重合体が挙げられる。これらのうちでは、エンジニアリングプラスチックの優れた特性(耐熱性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その溶融流動性(成形加工性)等の改良にも有効な、少なくとも1種以上のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)がより好ましい。更に、これらの中でも、流動性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性、熱安定性に優れる点で、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−2)が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)としては、そのガラス転移温度(Tg)が25℃より高いことが好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、最も好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低い場合、優れた流動性改良効果と耐熱性等の機械特性のバランスを損なう可能性がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、このように、グラフト重合を行った熱可塑性樹脂組成物を用いると、この熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)が表層剥離を生じさせることなく、外観、衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が一層優れたものとなる。
また、上記重合体(B)を構成する単量体全てが重合体(A)にグラフト結合していることが好ましいが、この熱可塑性樹脂組成物をエンジニアリングプラスチック(C)の流動性向上剤として使用する場合、そのエンジニアリングプラスチック(C)が本来有する耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)等が改良される範囲においては、重合体(B)を構成する単量体全てが重合体(A)とグラフト結合していなくても特に問題はない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、重合体(A)と重合体(B)との割合は、重合体(A)と重合体(B)の両方が存在する範囲においては特に制限はないが、流動性と機械物性のバランスを考慮すると、重合体(A)が1〜80質量%、重合体(B)が20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは重合体(A)が3〜70質量%、重合体(B)が30〜97質量%であり、さらに好ましくは重合体(A)が5〜40質量%、重合体(B)が60〜95質量%であり、最も好ましくは重合体(A)が10〜30質量%、重合体(B)が70〜90質量%である。
重合体(A)が1質量%より少ない場合には、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。また、重合体(A)の全てが重合体(B)とグラフト結合していることが好ましいが、重合体(A)が80質量%より多い場合、重合体(A)の全てが重合体(B)とグラフト結合を生成することが困難となり、熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)が表層剥離を生じ、外観、衝撃強度、実用上重要なウエルド外観、面衝撃が低下する恐れがある。
また、重合体(A)と重合体(B)のグラフト重合体の全てが非架橋のグラフト重合体であることが好ましいが、優れた流動性改質の特性を損なわない範囲であれば、グラフト重合体の全てが非架橋である必要はなく、クロロホルムやアセトン等の有機溶媒に不溶の架橋構造体が一部存在していても特に問題はない。
熱可塑性樹脂組成物は、溶媒不溶の一部の架橋構造体を除く、クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることが、成形性と耐熱性、耐衝撃性等の物性とのバランスから好ましく、より好ましい下限は15000であり、更に好ましくは18000であり、最も好ましくは20000である。また、より好ましい上限は70000であり、更に好ましくは50000であり、最も好ましくは30000である。なお、クロロホルムへの可溶成分には、重合体(A)と重合体(B)からなる非架橋のグラフト重合体、並びにグラフトされていない重合体(A)、グラフトされていない重合体(B)のうち少なくとも1種類以上が含まれている。
上記可溶成分の質量平均分子量が10000より小さい場合、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性や剛性等の種々の機能を低下させる可能性がある。また、成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ等の外観不良といった問題が発生する可能性が高くなる恐れがある。
一方、上記質量平均分子量が100000より大きくなると、熱可塑性樹脂組成物自体の溶融粘度も高くなり、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、溶融粘度が300Pa.s以下のものを用いることが好ましい。
なお、前記溶融粘度は、キャピラリー式レオメーター(例えばボーリン製社ツインクアピラリーレオメーターRH7)を用い、ノズルD=1mm、L/D=16、バレル温度=170℃、せん断速度=3000sec−1の条件で測定した溶融粘度をいう。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合する。重合法としては、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合におけるリビングアニオン重合や、TEMPO系、RAFT系、ATRP系といったリビングラジカル重合等により、重合体(A)と重合体(B)を連続的に重合する方法(i)等が挙げられる。
上記重合体(A)と重合体(B)を連続的に重合する方法(i)としては、重合体(A)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和基を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(B)を合成する方法、重合体(B)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(A)を合成する方法が挙げられる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい製造方法としては、重合体(A)の側鎖または末端に、少なくとも1つ以上の不飽和基を有するマクロモノマーを合成し、その存在下で重合体(B)を合成する方法について説明する。
(マクロモノマーの合成)
マクロモノマーの合成方法としては、例えば、水、乳化剤と、ポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)を形成する単量体混合物100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体0.5〜5質量部、重合開始剤、連鎮移動剤等の混合物に、必要に応じて重合触媒を添加し、高温下で重合を行い、マクロモノマーを合成する。
上記乳化剤としては、例えば、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン乳化剤が挙げられる。
上記ノニオン性乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アルキルセルロースが挙げられる。
上記アニオン性乳化剤の具体例としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンおよび脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合物のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられる。
上記カチオン性乳化剤の具体例としては、脂肪族アミン塩類、第四アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
上記両性イオン乳化剤の具体例としては、アルキルベタイン等が挙げられる。
上記ポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)の調製に用いられる単量体混合物のアルキルアクリレートとしては、炭素数が2〜20のアルキル基を有するのがよく、そのアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。その具体例としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、3−メチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エイコシルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、流動性及びコストを考慮すると、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレートが好ましく、特に、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
上記不飽和基を2つ以上有する単量体の具体例としては、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができるが、エンジニアリングプラスチック組成物の流動性を考慮すると、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートは3つのアリル基を有するが、最初に反応するアリル基の反応性と、二番目、三番目に反応するアリル基の反応性とは異なる)等の反応性の異なる2種以上の不飽和基を有する単量体が好ましい。
また、上記以外にも、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の芳香族ビニル単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する化合物、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボン酸基、カルボン酸無水物、ジカルボン酸、ハロゲン基、ハロゲン化カルボニル等の官能基を含有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート等の共重合可能な成分の1種または2種以上を重合成分全体の50質量%以下となるように併用することができる。耐衝撃性のバランスを考慮すると、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
上記重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
レドックス系開始剤の具体例としては、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリット、ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が挙げられる。
また、上記連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、上記以外のマクロモノマーの合成方法としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン等のグラフト交叉剤の存在下に、環状オルガノシロキサンを重合する方法を挙げることができる。
上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の環状オルガノシロキサンが用いられ、3〜6員環のものが好ましく用いられる。このような環状オルガノシロキサンの例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等を挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記グラフト交叉剤は、ポリオルガノシロキサンを調製する際には反応せず、その後のグラフト重合の際に反応する官能基を有するシロキサンであり、その具体例としては次式(1)〜(4)で表される化合物を示すことができる。
なお、上記式(1)〜(4)中、R1、R3はメチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、nは0、1または2であり、pは1〜6の整数である。
これらの中では、上記式(1)で表される単位を形成し得る(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンは、グラフト効率が高いため効率的にグラフト鎖を形成することが可能であり、これを用いた場合、耐衝撃性がより優れたものになるので好ましい。(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンの中では、メタクリロイルオキシアルキルシロキサンが好ましく、その具体例としてδ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
上記式(2)で表される単位を形成し得るビニルシロキサンとしては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記式(3)で表される単位を形成し得るメルカプトシロキサンとしては、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン等を挙げることができる。
また、上記式(4)で表される単位を形成し得る化合物としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
このようにポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤0.5〜5質量部を共重してマクロモノマーを合成することができる。
上記マクロモノマーにおいて、流動性、耐衝撃性、耐剥離性のバランスを考慮すると、ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)100質量部に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤を0.7〜5質量部有することがより好ましく、更に好ましくは1〜3質量部である。不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤が0.5質量部より少ない場合は、上記マクロモノマーが、重合体(B)と必要充分なグラフト結合を形成しない恐れがあり、熱可塑性樹脂組成物、及びこれを含むエンジニアリングプラスチック組成物の成形品において、マクロモノマーが表層剥離を生じ、外観、衝撃強度、あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が低下する可能性がある。また、不飽和基を2つ以上有する単量体、又はグラフト交叉剤の含量が多すぎると、熱可塑性樹脂組成物に占めるクロロホルム等の有機溶媒に不溶な架橋構造体の割合が多くなり、優れた流動性改良効果を損なう恐れがある。
上記マクロモノマーの質量平均分子量は、特に制限はなく、優れた流動性を損なわない範囲であれば、架橋体であっても構わないが、諸物性のバランスを考慮すると、クロロホルムへの可溶成分の分子量が5000〜100000であることが好ましく、より好ましい下限は10000であり、更に好ましくは20000である。また、より好ましい上限は70000であり、更に好ましくは50000である。質量平均分子量が5000より小さい場合、相対的に低分子量物が多くなるため、耐熱性や剛性等の種々の機能を低下させる可能性がある。また、成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ等の外観不良といった問題が発生する可能性が高くなる恐れがある。また、流動性を向上させるマクロモノマーの寄与が小さくなり、充分な流動性改良効果が得られない恐れがある。
また、マクロモノマーの質量平均分子量が100000より大きくなると、溶融粘度が高くなり、充分な流動性改質効果が得られない可能性がある。また、相溶性成分の寄与が小さくなるため耐剥離性やそれに伴う諸物性が低下する恐れがある。
(重合体(B)を形成するビニル系単量体又はその混合物の重合)
上述したマクロモノマーの重合系中に、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を形成する、少なくとも1種類以上のビニル系単量体、重合開始剤、連鎖移動剤等を含む混合物を供給し、高温下で重合を行う。
上記ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を形成するビニル系単量体、又はその混合物としては、メチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のビニル系単量体、又はそれらビニル系単量体混合物、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、メチルメタクリレート/スチレン、メチルメタクリレート/アクリロニトリル等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステル単量体、及びポリカーボネートを形成するビスフェノールAとジフェニルカーボネート単量体混合物等が挙げられる。これらのうちでは、エンジニアリングプラスチック(C)の耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性を損なうことなく、またその流動性(成形加工性)等の改良にも有効であるメチルメタクリレート、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のビニル系単量体またはビニル系単量体混合物、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物、メチルメタクリレート/スチレン、メチルメタクリレート/アクリロニトリル等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物がより好ましく、さらにそれらの中でも流動性、難燃性、耐衝撃性、熱安定性のバランスを考慮すると、アクリロニトリル/スチレン等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物から選ばれるビニル系単量体混合物が最も好ましい。
上記重合開始剤、連鎖移動剤等としては、マクロモノマーの重合の際、使用したものと同じものが適用できる。
以上説明したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物をエンジニアリングプラスチック(C)と共に用いた場合、エンジニアリングプラスチック(C)が本来有する、耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の優れた特性が損なわれることなく、流動性(成形加工性)を向上することができる。
[エンジニアリングプラスチック(C)]
本発明のエンジニアリングプラスチック(C)としては、従来より知られている各種の熱可塑性エンジニアリングプラスチックであれば特に制限はなく、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができる。これらの中でも、流動性改良効果を考慮すると、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等が好ましく、ポリカーボネートがより好ましい。また、これらは、単独または2種以上を用いることができる。
また、上記ポリカーボネートとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系ポリカーボネート等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系ポリカーボネートが挙げられる。
上記エンジニアリングプラスチック(C)の分子量は、所望に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はない。ただし、エンジニアリングプラスチック(C)がポリカーボネートの場合、粘度平均分子量は10000〜50000であるのが好ましく、15000〜30000であるのがより好ましい。
エンジニアリングプラスチック(C)は、従来より知られている各種の方法で製造することができる。エンジニアリングプラスチック(C)が、例えば、ポリカーボネートで、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン系ポリカーボネートを製造する場合には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを原料として用い、アルカリ水溶液および溶剤の存在下にホスゲンを吹き込んで反応させる方法や、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンと炭酸ジエステルとを、触媒の存在下にエステル交換させる方法が挙げられる。
また、本発明のエンジニアリングプラスチック(C)としては、エンジニアリングプラスチックが本来有する優れた耐熱性、耐衝撃性、難燃性を損なわない範囲、例えば50質量%以下(エンジニアリングプラスチック100質量%に対し)であれば、ABS、HIPS、PS、PAS等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー等のエンジニアリングプラスチック以外の熱可塑性樹脂を配合したエンジニアリングプラスチック樹脂を主成分とするエンジニアリングプラスチック系の各種ポリマーアロイを使用することも可能である。
[エンジニアリングプラスチック組成物1 (C)+(D)]
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物において、熱可塑性樹脂組成物((流動性向上剤(D))とエンジニアリングプラスチック(C)との割合は、所望の物性等に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はないが、エンジニアリングプラスチック組成物が、エンジニアリングプラスチック(C)の性能(耐熱性、衝撃強度等)を低下させることなく有効な流動性改良効果を得るためには、エンジニアリングプラスチック(C)100質量部に対して、熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)0.1〜100質量部、より好ましくは1〜30質量部、更に好ましくは2〜10質量部を用いるのがよい。
さらに、本発明のエンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、従来より知られている各種の添加剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等を配合してもよい。例えば、成形品の強度、剛性、さらには難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などを含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他のエンジニアリングプラスチック組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
上記エンジニアリングプラスチック組成物の具体的な物性値は、所望に応じて適宜調整すればよく、本発明において特に制限はない。ただし、流動性に関しては、後述する実施例の測定条件に従った溶融流動性が、ベース樹脂に対して少なくとも3割程度向上することが好ましい。
また、衝撃強度に関しては、ASTM D256に準拠して試験を行った際に、アイゾット衝撃強度が700J/m以上であることが好ましい。
また、耐剥離性に関しては、上述したテープ剥離試験に準拠して、表層剥離が観察されないことが好ましい。
また、耐熱性に関しては、ASTM D648に準拠して試験を行った際に、荷重たわみ温度が125℃以上であることが好ましい。
また、難燃性に関しては、JIS K7201に準拠して試験を行った際に、LOI(酸素指数)が25%以上であることが好ましい。
このような物性を併せ持つエンジニアリングプラスチック組成物は、流動性と耐熱性と外観と衝撃強度のバランスに非常に優れているといえる。
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物は、少なくともエンジニアリングプラスチック(C)と、上述した熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)を混合(混練)することにより得られる。
混合の方法としては、従来より知られている各種の配合方法および混練方法を用いることができ、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
また、予め熱可塑性樹脂組成物の比率が大きくなるように、熱可塑性樹脂組成物とエンジニアリングプラスチック(C)とを混合したマスターバッチを調製し、その後マスターバッチとエンジニアリングプラスチック(C)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
[無機充填材(E)]
本発明において用いられる使用される無機充填材(E)としては特に制限はないが、その例としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、クレー、珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅紛、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維ありはウィスカー、芳香族ポリアミド繊維などが挙げられるが、好ましくはミルドファイバー、カットファイバー、ガラスパウダー等と呼称され市販されているガラス繊維、ピッチ系及びPAN系等の炭素繊維から選ばれた繊維状補強剤である。これらの繊維は単独もしくは併用して用いられ、またこの繊維に各種表面処理を施したものを用いることもできる。
ガラス繊維としては特に制限はないが、平均繊維直径5〜15μm、平均繊維長さ2〜5mmのガラス繊維が好ましく用いられる。炭素繊維としても特に制限はなく、PAN系及びピッチ系のいずれでもよいが、平均繊維直径6〜9μm、平均繊維長さ3〜8mmのカーボン繊維が好ましく用いられる。
[強化エンジニアリングプラスチック組成物 (C)+(D)+(E)]
本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物は、上述したエンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、無機充填材(E)を主成分として含有する組成物である。
ここで、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)の配合比(合計100重量%)は、エンジニアリングプラスチック(C)50〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜99質量%、流動性向上剤(D)が50〜1質量%好ましく、より好ましくは40〜5質量%である。エンジニアリングプラスチック(C)が50質量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、流動性向上剤(D)が1質量%未満では流動性の改良効果が不十分である。さらに好ましい両樹脂の配合比は、エンジニアリングプラスチック(C)80〜99質量%、最も好ましくは90〜98質量%、流動性向上剤(D)が20〜1質量%、最も好ましくは10〜2質量%である。
また、無機充填材(E)の配合量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。無機充填材(E)の含量が1質量部未満であると、目的とする強度、剛性、耐熱性を得ることができない可能性があり、また、100質量部を超えると、溶融流動性が低下し、溶融成形が著しく困難になる場合がある。好ましい無機充填材含量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量%に対して、5〜80質量部であることが好ましく、最も好ましくは20〜50質量部であるが、成形品の強度、剛性、耐熱性、流動性等の要求特性を考慮して、無機充填材の種類、エンジニアプラスチック(C)の種類と量、流動性向上剤(D)の種類と量などをもとに総合的に判断して決定される。
さらに、本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物は、必要に応じて、従来より知られている各種の添加剤、安定剤、相溶化剤、強化剤、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等のアンチドリッピング剤を配合してもよい。例えば、成形品の難燃性を向上させるために、無機系、金属塩系、ハロゲン系、リン系、シリコーン系等の各種難燃剤とフルオロオレフィン等のアンチドリッピング剤等を含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他の熱可塑性樹脂組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
次に、本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物の製造方法について説明する。上記強化エンジニアリングプラスチック組成物は、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、無機充填材(E)を好ましくは上述した割合で、さらに必要に応じて、難燃剤、ノンドリップ剤、コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体などの他の各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができるが、単軸押出成形機、多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、溶融混練時にベントより強制排気して可能な限り揮発成分をあるレベルまで除去することができるベント付き溶融混練成形機、特にベント付き溶融混練押出成形機の採用が好ましい。
また、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることができる。
溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜330℃の範囲で適宜選択される。
なお、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)以外の含有成分は、あらかじめ、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
[難燃剤(F)]
本発明に用いられる難燃剤(F)としては特に制限はないが、具体的にはハロゲン化ビスフェノールA,ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン系化合物と酸化アンチモンなどの難燃助剤の組み合わせからなるハロゲン系難燃剤、有機リン酸エステル系化合物等にリン系難燃剤、分岐型のフェニルシリコーン化合物等のシリコーン系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも環境に優しい点、コスト、流動性、難燃性等の機械特性バランスに優れる点で、リン酸エステル化合物が特に好ましい。
リン酸エステル化合物としては、特に制限はなく、ハロゲンを含まないものが好ましく、例えば、次式(5)で示されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
ここで、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。式(5)において、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。
また置換されている場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基など、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
また、式(5)において、2価以上の有機基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニレン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン等がある。
リン酸エステル化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合物などを例示できる。
上記リン酸エステル化合物は、特に制限はないが、金型付着防止性、高温で薄肉成形品を成形するような場合には、モノマー含有量が3質量%以下のものの使用が好ましい場合がある。さらに、酸価(JISK6751による測定)が1mgKOH/g以下のものが熱安定性の点から好ましい場合がある。また、耐湿性や耐熱性の点から、フェノールにアルキル基などの置換基があるリン酸エステル化合物の使用が好ましい場合がある。
ここで、市販のハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、トリフェニルホスフェート(「TPP」、大八化学工業株式会社製)、トリキシレニルホスフェート(「TXP」、大八化学工業(株)製)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(「CR−733S」、大八化学工業(株)製)、1,3−フェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX200」、大八化学工業(株)製)、1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX201」、大八化学工業(株)製)、4,4’−ビフェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル(「PX202」、大八化学工業(株)製)などを挙げることができる。
[難燃エンジニアリングプラスチック組成物(C)+(D)+(F)]
難燃剤(F)の含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは、2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。ここで、1質量部未満であると、目的とする難燃性を得ることができない可能性があり、また、30質量部を超えると、耐熱性の低下、衝撃強度の低下が起る場合がある。したがって、難燃剤(F)の含有量は、成形品の難燃要求特性を考慮して、難燃剤の種類、エンジニアリングプラスチック(C)の種類と量、流動性向上剤(D)の種類と量などをもとに総合的に判断して決定される。
本発明の難燃性エンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、熱安定剤を含有することができる。熱安定剤としては、難燃性エンジニアリングプラスチック組成物の熱酸化劣化をさらに防止する添加剤であり、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを例示することができる。これらの中でも、リン系酸化防止剤、特に亜リン酸エステル化合物が好ましく用いられる。亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸の水素がアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基などにより、それぞれ独立に置換されたエステル化合物である。
上記亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、トリス(イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリナフチルホスファイト、クレジルジフェニルホスファイト、キシレニルジフェニルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスファイトなどを例示できる。これらのなかで、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが好ましく用いられる。
上記亜リン酸エステル化合物の含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。ここで亜リン酸エステル化合物の含有量が0.01質量部未満では、耐熱酸化安定性改善効果が薄く、2質量部を越えると、耐熱性が低下、成形時のガス発生などの不都合が発生する恐れがある。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的として、更にノンドリップ剤(G)を含有することができる。ノンドリップ剤(G)としてはフルオロオレフィン樹脂を主成分とするフルオロオレフィン系樹脂を含有することができ、ここでフルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体、複合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体、テトラフルオロエチレン重合体とアクリル系樹脂等のビニル系樹脂との複合体等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であり、特に好ましくは500000〜10000000である。本発明で適用できるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
また、上記ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、テフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD1、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
上記ノンドリップ剤(F)は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部含有していることが好ましく、より好ましくは、0.1〜2質量部である。ここで、ノンドリップ剤の含有量が0.05質量部未満であると、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でない場合があり、5質量部を越えても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、例えば、UL−94の燃焼試験などにより、他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、耐衝撃性、均一性の向上を目的として、更にコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体を含有することができる。その含有量は、エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量部である。
上記コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体とは、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状態)である。このグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分がもとの形態を保っている。この配合されたゴム状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層剥離を起こさない効果が得られる。
上記コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、種々なものを挙げることができる。市販のものとしては、例えば、ハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
これらの中で、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜10アルキル基を有するものが好適である。具体的には、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、アルキルアクリレート類70質量%以上と、これと共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30質量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜添加して反応させてもよい。
ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他のビニル系重合体、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよい。この重合反応は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法によって行うことができる。特に、乳化重合法が好適である。
このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、ゴム状重合体を20質量%以上含有していることが好ましい。このようなコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には60〜80質量%のn−ブチルアクリレートと、スチレン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのMAS樹脂弾性体が挙げられる。これらの中でも、ポリシロキサンゴム成分が5〜95質量%とポリアクリル(メタ)アクリレートゴム成分95〜5質量%とが、分離できないように相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体が好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この複合ゴム系グラフト共重合体の市販品としては、メタブレンS−2001(三菱レイヨン株式会社製)などが挙げられる。
また、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物には、必要に応じて、無機充填材を含有させることができる。無機充填材は、成形品の剛性、更には難燃性を一層向上させることができる。
無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などをあげることができる。これらの中でも、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填材が好ましい。
また、タルクとしては、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。タルクなどの無機充填材の平均粒径は0.1〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無機充填材、特にタルクを含有させることにより、剛性向上効果に加えて、難燃剤の配合量を減少させることができる。
上記無機充填材は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)および流動性向上剤(B)の合計100質量部に対して、1〜100質量部含有されていることが好ましく、より好ましくは、2〜50質量部である。ここで、無機充填材が1質量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100質量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
また、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、流動性向上剤(B)、難燃剤(C)の他に、各種添加剤成分を必要により含有することができる。
上記各種添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。これら任意成分の配合量は、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の具体的な物性値は、所望に応じて適宜調整すればよく、特に制限はない。ただし、流動性に関しては、ベース樹脂に対して2割〜3割向上することが好ましい。なお、流動性の評価方法は、UL94燃焼試験に準拠して行われる。
また、衝撃強度に関しては、ASTM D256に準拠して、アイゾット衝撃強度が400J/m以上であることが好ましい。
また、耐剥離性に関しては、上述したテープ剥離試験に準拠して、表層剥離が観察されないことが好ましい。
また、耐熱性に関しては、ASTM D648に準拠して、荷重たわみ温度が90℃〜110℃以上であることが好ましい。
以上説明したように、上記のような物性を併せ持つ本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れている。
次に、本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物の製造方法について説明する。
上記難燃エンジニアリングプラスチック組成物は、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)、難燃剤(F)を好ましくは上述した割合で、さらに必要に応じて、ノンドリップ剤、コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体などの他の各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができるが、単軸押出成形機、多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、溶融混練時にベントより強制排気して可能な限り揮発成分をあるレベルまで除去することができるベント付き溶融混練成形機、特にベント付き溶融混練押出成形機の採用が好ましい。
また、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることができる。たとえば、リン酸エステル化合物等の難燃剤以外の原料成分を溶融混練し、この混練物にリン酸エステル化合物等の難燃剤を、好ましくは溶融状態で供給する方法、エンジニアリングプラスチックとリン酸エステル化合物等の難燃剤をまず溶融混練し、ついで流動性向上剤と混練する方法などを例示できる。
溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。
なお、エンジニアリングプラスチック(C)と流動性向上剤(D)以外の含有成分は、あらかじめ、エンジニアリングプラスチック(C)、流動性向上剤(D)あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
このようにして得られた各エンジニアリングプラスチック組成物は、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形などの、従来より知られている各種の成形法により成形することにより、所望の形状の各種成形品を得ることができる。
本発明の各エンジニアリングプラスチック組成物から得られる成形品は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器のハウジングや各種部品、さらには自動車部品などの他の分野においても、好適に用いられる。
以上説明したように、本発明の各エンジニアリングプラスチック組成物は、本発明の熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)を所定量含有したものであるので、耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性に優れると共に、流動性(成形加工性)に優れるものである。すなわち、このエンジニアリングプラスチック組成物を用いることにより、各種物性に優れると共に、複雑な形状や薄型の成形品を含む任意の形状の成形品を容易、かつ安定に成形することができる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
[熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)の製造]
(流動性向上剤1)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート10部、アリルメタクリレート0.1部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.05部、n−オクチルメルカプタン0.1部の混合物を18分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル27部、スチレン63部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.45部、n−オクチルメルカプタン1.8部の混合物を162分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
この得られたエマルションの固形分を測定したところ24.2%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、22000であった。
(流動性向上剤2)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート30部、アリルメタクリレート0.3部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.15部、n−オクチルメルカプタン0.3部の混合物を54分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン1.4部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
上記エマルションの固形分を測定したところ24.6%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、22000であった。
(流動性向上剤3)
環状ジメチルシロキサンオリゴマー100部、グラフト交叉剤であるγ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部の混合液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を溶解した蒸留水310部を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPAの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、コンデンサーおよび攪拌翼を備えたセパラブルフラスコにドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを仕込み、10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、上記予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間上記温度を維持した後に冷却した。次いで、この反応物を室温で12時間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ラテックスを得た。このようにして得られたラテックスの固形分濃度は18.5%であり、粒子径分布は単一のピークを示し、質量平均粒子径は60nmであった。
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ラテックスL−1を30部(固形分)計り取り、蒸留水295部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン1.4部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
上記エマルションの固形分を測定したところ24.5%であった。また、このエマルションを酢酸カルシウム水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は30000であった。
(流動性向上剤4)
冷却管および攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(「ラテムルASK」、花王(株)製)(固形分28%)1.0部(固形分)、蒸留水290部を仕込み、窒素雰囲気下に水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を蒸留水5部に溶かして加え、その後ブチルアクリレート30部、アリルメタクリレート0.3部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.15部の混合物を54分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第一段目の重合を完了した。
これに、さらに硫酸第一鉄0.0004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0012部、ロンガリット0.5部を、蒸留水5部に溶かして加え、その後アクリロニトリル21部、スチレン49部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.35部、n−オクチルメルカプタン0.35部の混合物を126分かけて滴下した。その後60分間攪拌し、第二段目の重合を完了してエマルションを得た。
得られたエマルションの固形分を測定したところ24.6%であった。また、このエマルションを希硫酸水溶液中に注ぎ、生じた沈殿物を乾燥したところ、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量(Mw)は、120000であった。
上記流動性向上剤1〜4で用いたモノマー組成(部)、得られた熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)の質量平均分子量(Mw)、各流動性向上剤のポリカーボネート樹脂に非相容な重合体(A)セグメント及び非相溶な重合体セグメント(B)のガラス転移温度(℃)をまとめて表1に示す。
表中、BAはブチルアクリレート、AMAはアリルメタクリレート、ANはアクリロニトリル、Stはスチレンを示す。
(実施例1〜3、比較例1〜3)[エンジニアリングプラスチック組成物]
上記のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤)および各成分を表2に示す割合(質量比)で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC:ポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS−2000F」、三菱エンジニアリングプラスチック製)
AS樹脂:SAN樹脂(「SR05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万、ガラス転移温度90℃)
実施例1〜3、比較例1〜3で製造されたエンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(8)難燃性の評価を行った。その結果を表2に示す。
(性能評価方法)
(1)固形分
重合後のエマルションを170℃で30分間乾燥した後、質量を測定し、固形分を求めた。
(2)質量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、溶離液クロロホルム、ポリメチルメタクリレート換算で測定した。
(3)溶融粘度
樹脂組成物の溶融粘度は、キャピラリー式レオメーター(ボーリン製社ツインクアピラリーレオメーターRH7)を用い、ノズルD=1mm、L/D=16、バレル温度=170℃、せん断速度=3000sec−1の条件で測定した。
(4)溶融流動性
得られたエンジニアリングプラスチック組成物のスパイラルフロー長さSFLを射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。
(5)表層剥離(耐剥離性)
成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥離状態を目視観察した。その結果の評価基準は以下の通りである。
○:剥離なく良好
×:表層剥離見られる
(6)荷重たわみ温度(耐熱性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/4インチの成形品を成形した。
成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、アニールは行わず、荷重は1.82MPaとした。
(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)
得られたエンジニアリングプラスチック組成物を用い、射出成形機(「IS−100」、東芝機械(株)製)により、肉厚1/8インチの成形品を得た。得られた成形品のIz衝撃強度をASTM D256に準拠して測定した。なお、測定温度は23℃とした。
(8)難燃性
JIS K7201に準拠、酸素指数法(L0I)による燃焼試験を行い、材料が燃焼を持続するのに必要な酸素中の容量パーセントで表される最低酸素濃度を測定した。
表2の結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例1で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、含有された熱可塑性樹脂組成物の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例2で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、含有された熱可塑性樹脂組成物がAS樹脂であったため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物は、熱可塑性樹脂組成物を含有していないため、実施例1〜3で得られたエンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
(実施例4〜9、比較例4〜9)[強化エンジニアリングプラスチック組成物]
各成分を表3及び表4に示す割合(質量比)で混合し、サイドフィーダーを備えた二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、290℃で溶融混練し、強化エンジニアリングプラスチック組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC樹脂1:ポリカーボネート樹脂(出光石油化学(株)製タフロンFN1700)
AS樹脂−1:SAN樹脂(宇部サイコン(株)製SR 05B、Mw6.3万)
ガラス繊維1:CS03MAFT737K25(旭ファイバーグラス製、平均繊維長さ3mm、平均繊維直径13μ、集束剤ウレタン系)
炭素繊維1:TR06U/B4E(三菱レイヨン製、平均繊維長さ6mm、平均繊維直径7μ、集束剤ウレタン系)
実施例4〜9、比較例4〜9で製造された強化エンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(9)曲げ強度、曲げ弾性率の評価を行った。
(9)曲げ強度、曲げ弾性率
得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/4インチの試験片を得た。
得られた成形品の曲げ強度及び曲げ弾性率をASTM D790に準拠して測定した。なお、測定温度は23℃とした。
表3および表4から明らかなように、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、剛性、強度、耐熱性、流動性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例4および7で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例5および8で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がAS樹脂−1であったため、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
また、比較例6、9では、流動性向上剤を使用していないため、得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例4〜9で得られた強化エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
(実施例10〜15、比較例10〜15)[難燃エンジニアリングプラスチック組成物]
各成分を表5又は表6に示す割合(質量比)で混合し、二軸押出機(機種名「TEM−35」、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC−1:ポリカーボネート樹脂(「ユーピロンS−2000F」、三菱エンジニアリングプラスチック製)
SAN−1:SAN樹脂(「SR 05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万)
難燃剤:トリフェニルフォスフィン(大八化学製)
ノンドリップ剤:テフロン(登録商標) CD−1(旭ICIフルオロポリマー社製)
以下、表中の略号および使用した材料について記す。
PC−2:ポリカーボネート樹脂(PC−1)、ABS樹脂(「UX 050」、宇部サイコン株式会社製)、SAN樹脂(「SR 30B」宇部サイコン株式会社製、Mw11.7万)を表6に示した割合で配合したもの。
SAN−1:SAN樹脂(「SR 05B」、宇部サイコン株式会社製、Mw6.3万)
難燃剤:トリフェニルフォスフィン(大八化学製)
ノンドリップ剤:テフロン(登録商標) CD−1(旭ICIフルオロポリマー社製)
実施例10〜15、比較例10〜15で製造された難燃エンジニアリングプラスチック組成物について、(1)固形分、(2)質量平均分子量(Mw)、(3)溶融粘度、(4)溶融流動性、(5)表層剥離性(耐剥離性)、(6)荷重たわみ温度(耐熱性)、(7)Iz衝撃強度(耐衝撃性)、(10)難燃性の評価を行った。
ここでの難燃性は次のようにして評価した。
(10)難燃性
得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/8インチの試験片を得た。得られた5個の成形品の難燃性を、アンダーライターズラボラトリーズインコーポレーションのブレチン94 材料分類のための燃焼試験UL94/V−0、V−1、V−2に示される試験法に基づいて評価した。なお、UL94についての各Vの等級の基準は概略次の通りである。
V−0:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が5秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−1:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−2:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつこれらの試料が脱脂綿に着火する微粒炎を落下する。
また、UL94は全試験棒が特定のV等級に合格しなければ、その等級に分類してはならない旨を規定している。この条件を満たさない場合には、その5個の試験棒は最も成績の悪い1個の試験棒の等級を与えられる。例えば1個の試験棒がV−2に分類される場合には、5個の全試験棒に対する等級はV−2である。
表5から明らかなように、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、流動性、耐熱性、耐剥離性、及び衝撃強度のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例10で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例11で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がSAN−1であったため、実施例10〜12で得られた熱可塑性樹脂組成物に比べ、充分な流動性を得られないだけでなく、衝撃強度においても劣っていた。
また、比較例12では、流動性向上剤を使用していないため、得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例10〜12で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られないだけでなく、衝撃強度においても劣っていた。
また、比較例13で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、表6から明らかなように、使用された流動性向上剤において、クロロホルムへの可溶成分の質量平均分子量が大きすぎるため、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例14で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、使用された流動性向上剤がSAN−1であったため、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性が得られなかった。
また、比較例15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、流動性向上剤を使用していないため、得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物は、実施例13〜15で得られた難燃性エンジニアリングプラスチック組成物に比べ、充分な流動性を得られなかった。
産業上の利用可能性
本発明の熱可塑性樹脂組成物(流動性向上剤D)をエンジニアリングプラスチック(C)と共に用いた場合、エンジニアリングプラスチック(C)の特性を損なうことなく、流動性を改善できる。
本発明のエンジニアリングプラスチック組成物によれば、耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性に優れると共に、流動性(成形加工性)に優れるものである。また、このエンジニアリングプラスチック組成物を用いることにより、各種物性に優れると共に、複雑な形状や薄型の成形品を含む任意の形状の成形品を容易、かつ安定に成形することができ、工業的に非常に有益なものである。
本発明の強化エンジニアリングプラスチック組成物によれば、無機充填材強化エンジニアリングプラスチックの優れた特徴(強度、剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐剥離性)が損なわれることなく、その流動性(成形加工性)が改良され、特に強度、剛性、耐熱性、流動性バランスに優れた無機充填材強化エンジニアリングプラスチック組成物を提供することが可能となり、工業的に非常に有益である
本発明の難燃エンジニアリングプラスチック組成物によれば、ポリカーボネートに代表されるエンジニアリングプラスチックの優れた耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等の特性を損なうことなく、その溶融流動性(成形加工性)が改良され、それらの特性のバランスに優れた難燃エンジニアリングプラスチック組成物を提供することが可能となり、工業的に非常に有益である。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。その為、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
Claims (16)
- ポリカーボネート樹脂に非相溶性な重合体(A)の存在下、ポリカーボネート樹脂に相溶性または親和性のある重合体(B)を構成する単量体をグラフト重合することにより得られ、
クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜100000であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜50000であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記クロロホルムに溶解する可溶成分の質量平均分子量が10000〜30000であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- キャピラリー式レオメーターにより測定した溶融粘度が、300Pa.s以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記重合体(A)は、ガラス転移温度が25℃以下であるポリアルキルアクリレートを主成分とする重合体(A−1)、又はポリオルガノシロキサンを主成分とする重合体(A−2)であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記重合体(B)が、少なくとも1種類のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体を主成分とし、ガラス転移温度が25℃を超える重合体(B−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体を主成分とする重合体(B−3)からなる群より選ばれる1種類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記重合体(B)が、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体を主成分とする重合体(B−2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるエンジニアリングプラスチック用流動性向上剤(D)。
- エンジニアリングプラスチック(C)100質量部に対して、請求項8記載の流動性向上剤(D)0.1〜100質量部を配合することを特徴とするエンジニアリングプラスチック組成物。
- 前記エンジニアリングプラスチック(C)が、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項9に記載のエンジニアリングプラスチック組成物。
- 請求項9記載のエンジニアリングプラスチック組成物100質量部に対して、無機充填材(E)が1〜100質量部添加されてなるエンジニアリングプラスチック組成物。
- 前記無機充填材(E)がガラス繊維及び/又は炭素繊維からなる繊維状補強剤であることを特徴とする請求項11記載のエンジニアリングプラスチック組成物。
- 請求項9記載のエンジニアリングプラスチック組成物の合計量100質量部に対して、難燃剤(F)0.1〜30質量部添加されてなるエンジニアリングプラスチック組成物。
- エンジニアリングプラスチック(C)および流動性向上剤(D)の合計100質量部に対して、ノンドリップ剤(G)が0.05〜5質量部添加されてなる請求項13記載のエンジニアリングプラスチック組成物。
- 前記難燃剤(F)が、リン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項13記載のエンジニアリングプラスチック組成物。
- 前記ノンドリップ剤(G)が、フルオロオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項14記載のエンジニアリングプラスチック組成物。
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