JP6379614B2 - 長繊維ペレットとそれを射出成型して得られる成形体 - Google Patents
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Description
一般的に、炭素繊維強化ポリカーボネート樹脂は、チョップドファイバーと呼ばれる3〜6mmに切断した炭素繊維や、ミルドファイバーと呼ばれる1mm未満に粉砕した炭素繊維とポリカーボネート樹脂を押出機で混練することで製造されている。
しかしながら近年は、更に高度な機械特性が求められる傾向にあり、より長い繊維で強化された長繊維ペレットが注目されている。
また、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂と長繊維充填剤、並びにゴム変性スチレン系グラフト共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物が提示されている。実施例にはガラス長繊維強化ポリカーボネート樹脂が提示されており、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂からなるマスターバッチを用いている。
また、本発明の第二の態様は、前述の長繊維ペレットを、射出成形して得られる成形体である。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂であり、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法で反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
2価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォンが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、少なくともビスフェノールAを用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネートが好ましい。
酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ピリジン等のアミン化合物が挙げられる。溶媒としては、例えば、塩化メチレンクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
また、反応促進のために、例えば、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩等の触媒を用いてもよい。反応温度は、通常0〜40℃で、反応時間は数分間〜5時間である。
この場合の反応温度は、生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応系の圧力は、反応の初期段階から減圧とし、アルコール又はフェノール類を留出させながら、反応を完結させる。
反応を促進するためには、エステル交換反応に通常用いられる触媒を用いてもよい。また、適当な分子量調整剤等を適宜用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ノバレックス7020R、7022R、7022A、7025R、ユーピロンH−3000、H−2000、S−3000、S−2000(以上、三菱エンジニアリングプラスチックス社製);タフロンA1700、A1900、A2200、A2500、R2200、タフロンネオAG1760、AG1950、AG2530(以上、出光興産社製);ワンダーライトPC−110、PC−115、PC−122、PC−175(以上、奇美実業社製);パンライトL−1225LM、L−1225L、L−1225Y、L−1250Y(以上、帝人社製);カリバー301−4、301−6、301−10、301−15、301−22、301−30、301−40(以上、住化スタイロンポリカーボネート社製)が挙げられる。
本発明で用いるコアシェル型グラフト共重合体(B)は、一般的なコアシェル型グラフト共重合体である。
具体的には、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等のジエン系コアシェル型ゴム質重合体;アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体樹脂(ASA樹脂)、アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂等のアクリル系コアシェル型ゴム質重合体;シリコーン/アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂、シリコーン/アクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体樹脂等のシリコーン系コアシェル型ゴム質重合体;及びこれらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレート等による変性品が挙げられる。
これらの内では、シリコーン系コアシェル型ゴム質重合体が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
コアシェル型グラフト共重合体は、市販品を用いることができる。例えば、メタブレンS−2001、S−2006、S−2030、S−2100、SRK200、SX−005、SX−006、W−450A、E−901、C−223A、C−215A(以上、三菱レイヨン社製)が挙げられる。
本発明で用いる炭素繊維(C)は、PAN系(HT、IM、HM)、ピッチ系(GP、HM)、レーヨン系のいずれも使用可能であるが、高い強度が得られる点から、PAN系が好ましい。
炭素繊維(C)の繊維径は5〜12μmが好ましく、6〜8μmがより好ましい。繊維径が5μm以上であれば、繊維の表面積が小さくなり、成形性が向上する。繊維径が12μm以下であれば、繊維のアスペクト比が大きくなり、補強効果が優れる。炭素繊維の繊維径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系サイジング剤、ウレタン系サイジング剤、ナイロン系サイジング剤、オレフィン系サイジング剤が挙げられる。これらの内では、エポキシ系サイジング剤が好ましい。
表面処理することによって、引張り強度、曲げ強度が向上するという利点が得られる。上記表面処理された炭素繊維は、市販品を用いてもよい。
本発明の長繊維ペレットは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、コアシェル型グラフト共重合体(B)、及び炭素繊維(C)を含有する。
更に必要に応じて、公知の安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、加工助剤、離型剤、難燃剤、フルオロオレフィン等の添加剤を配合してもよい。
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及びコアシェル型グラフト共重合体(B)を含有する、樹脂組成物である。
溶融状態の樹脂組成物を得るには、次の2つの方法を採用することができる。
(ロ)予め調製した芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及びコアシェル型グラフト共重合体(B)の樹脂組成物を、押出機に投入して溶融する。
本発明の長繊維ペレットは、以下の(1)〜(3)の工程で製造することができる。
(1)押出機を用いて溶融状態の前記樹脂組成物を得る。
(2)前記押出機の先端に取付けたダイに炭素繊維(C)を供給し、前記押出機から押出された溶融状態の樹脂組成物及び炭素繊維(C)を複合化する。
(3)前記工程で得られた複合体を、150℃以下に冷却した後、4〜14mmに切断する。
これらの切断不良が生じると、長繊維ペレットに、樹脂で被覆されていない炭素繊維が混入し、取扱い性が悪化する。
本発明の成形体は、長繊維ペレットを、射出成形することによって得られる。
本発明の成形体を得る際には、他の樹脂とドライブレンドして成形してもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂ペレットとドライブレンドすることにより、成形体中の炭素繊維量を調整することができる。
曲げ試験:
幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmの短冊試験片を用い、ISO178に準じて3点曲げ試験を実施した。
ノッチ付きの試験片を用い、ISO179に準じて実施した。
ISO75に準じて、0.45MPaで測定した。
得られたペレット50個を取り出して目視評価した。
◎:切断不良のペレットが5個未満。
〇:切断不良のペレットが5個以上、20個未満。
×:切断不良のペレットが20個以上。
尚、切断不良のペレットとは、ペレットが繊維軸方向に沿って縦に割れしてしまう不良や、繊維がペレット長とおおよそ同じ長さに切断されずに炭素繊維の切断が不充分な状態の不良ペレットをいう。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1):
ノバレックス7022A(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
メタブレンS−2006(三菱レイヨン社製、シリコーン系コアシェル型ゴム質重合体)
パイロフィルCFトウ TR50S 15L、サイジング剤JJ(三菱レイヨン社製、エポキシ系サイジング剤処理、目付1,000mg/m、引張強度4,900MPa、引張弾性率240GPa、繊維径7μm)
パイロフィルCFトウ TR50S 15L、サイジング剤RN(三菱レイヨン社製、ウレタン系サイジング剤処理、目付1,000mg/m、引張強度4,900MPa、引張弾性率240GPa、繊維径7μm)
芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1) 95部、コアシェル型グラフト共重合体(B−1) 5部をドライブレンドし、30φ二軸押出機に3.4kg/hで供給しながら溶融混練した。
前記押出機の先端に取付けた電線被覆ダイを300℃に設定し、ここに、炭素繊維(C−1)のトウを供給する。該ダイを用いて、10m/minのライン速度で、溶融した樹脂組成物及び炭素繊維(C−1)のトウを連続的に複合化した。
次いで、この複合体を40℃に冷却した後、切断することで、長さ8mm、炭素繊維含有率15%の長繊維ペレットを製造した。
得られた長繊維ペレットを、シリンダー温度300℃、金型温度80℃で射出成形することで、試験片を作成した。
ドライブレンドした樹脂の供給量を3.5kg/hとし、ライン速度を25m/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、長さ8mm、炭素繊維含有率30%の長繊維ペレットを製造した。
実施例1と同様にして、試験片を作成した。
炭素繊維(C−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、長さ8mm、炭素繊維含有率15%の長繊維ペレットを製造した。
実施例1と同様にして、試験片を作成した。
コアシェル型グラフト共重合体(B−1)を用いず、芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)を100部としたこと以外は、実施例2と同様にして、長さ8mm、炭素繊維含有率30%の長繊維ペレットを製造した。
得られた長繊維ペレットは、切断不良の割れペレットが多く、射出成形機のホッパーに入らずに、試験片を作成できなかった。
Claims (2)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜89質量%、コアシェル型グラフト共重合体(B)1〜10質量%、及び、長さ4〜14mmの炭素繊維(C)10〜40質量%を含有する、長繊維ペレット。
- 請求項1記載の長繊維ペレットを、射出成形して得られる成形体。
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