JP6627324B2 - Pc/abs樹脂組成物、及び樹脂成形品 - Google Patents
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Description
特許文献1には、最終成形された熱可塑性樹脂の表面上に紫外線硬化型アクリル系ハードコート剤を塗布、硬化させ、ハードコート層を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、軋み音の発生を抑制ないし低減させるために、表面処理剤としてフッ素系やシリコーン系のコーティング組成物をABS樹脂の表面上に塗布する技術が開示されている。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、優れた摺動性が得られ、軋み音を抑制可能なPC/ABS樹脂組成物、及び樹脂成形品を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係るPC/ABS樹脂組成物は、(X)PC/ABS樹脂と、(Y)グラフト共重合体と、を含有する。
前記(X)PC/ABS樹脂の含有量を100重量部とすると、前記(Y)グラフト共重合体の含有量が1〜25重量部である。
上記(Y)グラフト共重合体の主鎖が、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が1〜20重量%である。
上記(Y)グラフト共重合体の側鎖が、(b−1)スチレンと、(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つと、を含有する(B)ビニル共重合体から成る。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体と、前記(b−1)スチレンと、前記(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つとの含有量の合計を100重量部とすると、前記(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が60〜95重量部である。
この構成により、優れた摺動性が得られるPC/ABS樹脂組成物を提供することができる。
更に、この構成により、特に良好な摺動性を有するPC/ABS樹脂組成物が得られる。
優れた摺動性および摺動時の軋み音抑制性能が得られるPC/ABS樹脂組成物、及び樹脂成形品を提供することができる。
本実施形態に係るPC/ABS樹脂組成物は、(X)PC/ABS樹脂と、(Y)グラフト共重合体と、を含有する。
これにより、(X)PC/ABS樹脂本来の優れた機械物性が維持されるとともに、優れた摺動性を有するPC/ABS樹脂組成物が得られる。
本実施形態に係る(X)PC/ABS樹脂は、(x−1)ポリカーボネート樹脂(以下、単にPC樹脂と呼称する場合がある)と(x−2)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(以下、単にABS樹脂と呼称する場合がある)との混合樹脂である。
本実施形態に係る(Y)グラフト共重合体の主鎖は、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る。(Y)グラフト共重合体の側鎖は、(b−1)スチレンと、(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つと、のビニル共重合体から成る。
本実施形態に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と、(B)ビニル共重合体と、を含有する。(B)ビニル共重合体は、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体に含浸されている。
本実施形態に係る(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体では、構造単位での酢酸ビニルの含有量が、1〜20重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることが更に好ましい。
本実施形態に係る(B)ビニル共重合体は、(b−1)スチレンと、(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つと、(b−3)t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートと、(b−4)重合開始剤と、から成るビニル単量体組成物により構成される。
t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(T10=51℃)
t−ヘキシルパーオキシピバレート(T10=53℃)
t−ブチルパーオキシピバレート(T10=55℃)
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(T10=59℃)
ジラウロイルパーオキサイド(T10=62℃)
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(T10=65℃)
2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(T10=66℃)
t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルヘキサノエート(T10=70℃)
ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(T10=71℃)
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(T10=72℃)
ジベンゾイルパーオキサイド(T10=74℃)
2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(T10=51℃)
2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(T10=65℃)
2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(T10=67℃)
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じ、上記以外の添加物を含有していてもよい。このような添加物としては、潤滑剤、無機難燃剤、有機難燃剤、無機充填剤、有機無機充填剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤、着色剤、エンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。
無機難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
有機難燃剤としては、例えば、ハロゲン系、リン系等の難燃剤などが挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、金属粉、タルク、ガラス繊維などが挙げられる。
有機無機充填剤としては、例えば、カーボン繊維、木粉などが挙げられる。
エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
本実施形態に係るPC/ABS樹脂組成物は、熱可塑性樹脂であるため、射出成形や押出し成形などにより、容易に様々な形状に成形することが可能である。本実施形態に係るPC/ABS樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品は、機械物性、及び摺動性に優れるため、電気部品、電子部品、機械部品、精密機器部品、自動車部品などの広い分野で利用することができる。
[エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物の製造]
製造例1−1〜1−14及び比較製造例1−1〜1−4について、表1に示す組成でエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を製造した。この一例として、製造例1−1に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物の製造プロセスを以下に示す。なお、他の製造例及び比較製造例に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物も、製造例1−1と同様のプロセスで製造した。
内容積5Lのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、更に懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名「ウルトラセン510」、東ソー株式会社製、VAc含有量6%、MFR=2.5(g/10min)800gを入れ、攪拌して分散させた。
比較製造例1−1に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物では、(B)ビニル共重合体を含有していない。
比較製造例1−3に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物では、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が上記実施形態よりも少ない。
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(各実施例及び各比較例では、適宜、以下の3種類のうちいずれか1つを用いている。)
(I)「ウルトラセン510」、東ソー株式会社製、VAc含有量6%、MFR=2.5(g/10min)
(II)「ウルトラセン537」、東ソー株式会社製、VAc含有量15%、MFR=3.0(g/10min)
(III)「ウルトラセン750」、東ソー株式会社製、VAc含有量32%、MFR=30(g/10min)
LDPE:低密度ポリエチレン(「スミカセンG401」住友化学株式会社製、密度=0.926g/cm3)
St:スチレン
GMA:メタクリル酸グリシジル
AN:アクリロニトリル
MEC:t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート
R355:ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド
BW:ベンゾイルパーオキサイド(「ナイパーBW」、10時間半減期温度=74℃、日油株式会社製)
[(Y)グラフト共重合体の製造]
製造例2−1〜2−14及び比較製造例2−1〜2−4について、表2に示すように、それぞれ製造例1−1〜1−14及び比較製造例1−1〜1−4に係るエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を用いて(Y)グラフト共重合体を製造した。この一例として、製造例2−1に係る(Y)グラフト共重合体の製造プロセスを以下に示す。なお、他の製造例及び比較製造例に係る(Y)グラフト共重合体も、製造例2−1と同様のプロセスで製造した。
まず、製造例1−1で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物をラボプラストミル一軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)で200℃にて溶融混練し、グラフト化反応させることにより主鎖がエチレン−酢酸ビニル共重合体から成り、側鎖がポリ(St/GMA)から成る(Y)グラフト共重合体を得た。
[PC/ABS樹脂組成物の製造]
実施例1−1〜1−17及び比較例1−1〜1−6について、表3に示す配合割合で、(x−1)PC樹脂(商品名「タフロンA2200」、標準グレード、出光興産株式会社製、表3中で「PC」と示す)と、(x−2)ABS樹脂(商品名「スタイラック321」、標準グレード、旭化成ケミカルズ株式会社製、表3中で「ABS」と示す)と、に対して、上記の(Y)グラフト共重合体を適宜所定量ドライブレンドし、240℃に設定した二軸押出機にて溶融混練し、PC/ABS樹脂組成物を得た。
実施例2−2では、製造例2−1で得られた(Y)グラフト共重合体の含有量が3重量部((X)を100重量部とした場合)であるPC/ABS樹脂組成物を製造した。
比較例2−1に係るPC/ABS樹脂組成物は、(Y)グラフト共重合体を用いずに、(X)PC/ABS樹脂のみにより製造した。
実施例1−1〜1−17及び比較例1−1〜1−6で得られたPC/ABS樹脂組成物を射出成形機によって成形することにより、実施例1−1〜1−17及び比較例1−1〜1−6で得られた評価材を作製した。射出成形の条件としては、バレル温度を245℃とし、金型温度を80℃とした。
・引張り強さ
JIS K−7113に準拠し、試験速度50mm/minとして行った。引張り強さの目標値は、(X)PC/ABS樹脂の種類に応じて決定され、40MPa以上とした。
JIS K−7203に準拠し、試験速度2mm/minとして行った。曲げ弾性率の目標値は、(X)PC/ABS樹脂の種類に応じて決定され、1.5GPa以上とした。
試験機:オリエンテック株式会社製 摩擦摩耗試験機 EFM−III−F
評価材:内径20mm、外径25.6mmの円筒材
評価材材質:表3に示す組成のPC/ABS樹脂組成物
相手材:内径20mm、外径25.6mmの円筒材
相手材材質:(1)炭素鋼(S45C)、(2)ニートPC/ABS樹脂
試験条件(相手材材質が(1)の場合):荷重50N、線速度15cm/sec
試験条件(相手材材質が(2)の場合):荷重20N、線速度15cm/sec
試験時間:100分間
本試験では、各相手材材質(1)(2)について、それぞれ各評価材の摩耗量(mg)及び動摩擦係数を求めた。
摩耗量及び動摩擦係数の目標値は、(X)PC/ABS樹脂の種類に応じて決定される。本実施例及び比較例では、相手材が(1)炭素鋼(S45C)の場合において、摩耗量の目標値を2.0mg以下とし、動摩擦係数の目標値を0.25以下とした。また、相手材が(2)ニートPC/ABS樹脂である場合において、摩耗量の目標値を5.0mg以下とし、動摩擦係数の目標値を0.25以下とした。なお、ここでいう(2)ニートPC/ABS樹脂とは、(Y)グラフト共重合体を含んでいない(X)PC/ABS樹脂のことである。
得られた評価材を、軋み音評価試験用のプレート(60mm×100mm×2mm)に切り出してバリ取りを行った後、温度25℃、湿度50%でそれぞれ12時間状態調整した。また、相手材用のプレート(50mm×25mm×2mm)として、ニートPC/ABS樹脂のプレートと、ステンレス製のプレートも準備した。
軋み音リスク値4〜5:軋み音発生のリスクがやや高い
軋み音リスク値6〜10:軋み音発生のリスクが高い
PC:「タフロンA2200」、標準グレード、出光興産株式会社製
ABS:「スタイラック321」、標準グレード、旭化成ケミカルズ株式会社製
PC/ABS:「Bayblend T65XF」、Bayer製
(実施例について)
・機械物性
実施例1−1〜1−17に係る評価材ではいずれも、引張り強さが40MPa以上の大きい値であり、曲げ弾性率が1.5GPa以上の高い値であった。
実施例1−1〜1−17に係る評価材ではいずれも、相手材を(1)炭素鋼(S45C)とするスラスト式摩擦摩耗試験において、摩耗量が2.0mg以下、動摩擦係数が0.25以下の低い値が得られた。
実施例1−1〜1−17に係る評価材ではいずれも、相手材を(1)炭素鋼(S45C)及び(2)ニートPC/ABS樹脂とした場合の摺動時の軋み音リスク値が3以下の小さい値であった。
(X)PC/ABS樹脂のみを用いる比較例1−1では、相手材を(1)炭素鋼(S45C)とするスラスト式摩擦摩耗試験において、摩耗量が2.0(mg)、動摩擦係数が0.25を上回っていた。また、比較例1−1では、相手材を(2)ニートPC/ABS樹脂とするスラスト式摩擦摩耗試験において、摩耗量が5.0(mg)、動摩擦係数が0.25を上回っていた。更に、比較例1−1では、相手材を(1)炭素鋼(S45C)及び(2)ニートPC/ABS樹脂とした場合の軋み音リスク値が3を上回っていた。
比較製造例2−3に係る(Y)グラフト共重合体を用いた比較例1−5では、相手材を(1)炭素鋼(S45C)とするスラスト式摩擦摩耗試験において、摩耗量が2.0(mg)を上回っていた。また、比較例1−4では、相手材を(2)ニートPC/ABS樹脂とするスラスト式摩擦摩耗試験において、動摩擦係数が0.25を上回っていた。更に、比較例1−4では、相手材を(2)ニートPC/ABS樹脂とした場合の軋み音リスク値が3を上回っていた。
Claims (2)
-
(X)PC/ABS樹脂と、(Y)グラフト共重合体と、を含有し、
前記(X)PC/ABS樹脂の含有量を100重量部とすると、前記(Y)グラフト共重合体の含有量が1〜25重量部であり、
前記(Y)グラフト共重合体の主鎖が、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体から成り、
前記(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が1〜20重量%であり、
前記(Y)グラフト共重合体の側鎖が、(b−1)スチレンと、(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つと、を含有する(B)ビニル共重合体から成り、
前記(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体と、前記(b−1)スチレンと、前記(b−2)アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの少なくとも1つとの含有量の合計を100重量部とすると、前記(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が60〜95重量部である、軋み音抑制PC/ABS樹脂組成物。
-
請求項1記載のPC/ABS樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品。
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