JP7441484B2 - ポリカーボネート繊維とその製造方法、およびそれを含む繊維強化プラスチック用シート、ならびに繊維強化プラスチック - Google Patents

ポリカーボネート繊維とその製造方法、およびそれを含む繊維強化プラスチック用シート、ならびに繊維強化プラスチック Download PDF

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本発明は、ポリカーボネート樹脂を含み、表面に特定の成分を含む繊維処理剤が付着しているポリカーボネート繊維とその製造方法、およびそれを含む繊維強化プラスチック用シート、ならびに繊維強化プラスチックに関する。
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的物性を有することから、繊維強化プラスチック材料のマトリックス相として用いられている。例えば、特許文献1~2には、ポリカーボネート樹脂とガラス繊維を含むポリカーボネート樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチック材料が提案されている。
特許文献1~2に記載のポリカーボネート樹脂組成物をプレス成形して繊維強化プラスチック材料を得る際、取扱い性が劣るという問題があった。そこで、成形時の取扱い性を改善するために、強化繊維とマトリックス樹脂となるポリカーボネート繊維を混合して繊維強化プラスチック用成形用基材とすることが行われている。例えば、特許文献3には、強化繊維と、メルトボリュームフローレイトが18cm3/10分であるポリカーボネート樹脂を溶融紡糸したフィラメントを切断して得られた繊維を用いた繊維強化プラスチック用成形用基材を成形して繊維強化プラスチックを得ることが記載されている。また、特許文献4には複屈折率および破断伸度が特定の範囲を満たす、成形品のマトリックス相樹脂用ポリカーボネートマルチフィラメント糸が開示されている。
特許5275689号 特開2014-129489号公報 特開2014-51555号公報 特開平04-146210号公報
しかしながら、特許文献3に記載のメルトボリュームフローレイトが18cm3/10分間であるポリカーボネート樹脂は、分子量が高いことから、紡糸性が劣るという問題があった。また、特許文献4には、繊維強化プラスチック成形品のマトリックス樹脂となる、ポリカーボネートマルチフィラメント糸について、繊維処理剤(一般的には油剤とも称される。)が付着していないか、付着している場合は脱落しやすい繊維処理剤が好ましいことを開示しているが、カード通過性や抄紙工程での分散性等の工程性を鑑みると、ポリカーボネート繊維の表面に長期間付着しても、ポリカーボネート樹脂に影響を与えにくい繊維処理剤を用いることが求められている。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、紡糸性が良好であり、繊維表面にポリカーボネート樹脂を劣化させにくい繊維処理剤が付着され、工程性が良好なポリカーボネート繊維とその製造方法、およびそれを含む繊維強化プラスチック用シート、ならびに繊維強化プラスチックを提供する。
本発明は、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むポリカーボネート繊維であり、前記ポリカーボネート繊維の表面には、前記ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤が付着しており、前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含むことを特徴とする、ポリカーボネート繊維に関する。
本発明はまた、ポリカーボネート繊維の製造方法であり、紡糸前の数平均分子量(Mn)が9000以上16000以下であり、紡糸前の重量平均分子量(Mw)が22000以上36000以下であるポリカーボネート樹脂、または前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む混合物を用意する工程、前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む樹脂成分を250℃以上350℃以下の温度で溶融紡糸し、紡糸フィラメントとする工程、および前記紡糸フィラメントの繊維表面に対し、ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤を付着させる工程を含み、前記繊維処理剤が、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含むことを特徴とする、ポリカーボネート繊維の製造方法に関する。
本発明は、また、前記のポリカーボネート繊維と、強化繊維を含む繊維強化プラスチック用シートであり、前記繊維強化プラスチック用シートは、繊維強化プラスチック用シートの質量を100質量%としたときに、強化繊維23.5質量%以上80質量%以下と、ポリカーボネート繊維を20質量%以上76.5質量%以下含むことを特徴とする繊維強化プラスチック用シートに関する。
本発明は、また、強化繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化プラスチックであり、前記繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含み、前記マトリックス樹脂は、前記のポリカーボネート繊維が溶融したものであり、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むことを特徴とする繊維強化プラスチックに関する。
本発明によると、紡糸性が良好であり、繊維表面にポリカーボネート樹脂を劣化させにくい繊維処理剤が付着され、工程性が良好なポリカーボネート繊維とその製造方法、およびこれを含む繊維強化プラスチック用シート、ならびに繊維強化プラスチックを提供することができる。
本発明者らは、ポリカーボネート繊維の紡糸性を高めるとともに、ポリカーボネート樹脂を劣化させずポリカーボネート繊維のカード通過性やエアレイド不織布を生産する際の繊維ウェブ形成性、湿式不織布生産時の抄紙工程での分散性等の工程性を高めることについて鋭意検討した。その結果、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むポリカーボネート繊維において、該ポリカーボネート繊維の表面にアルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む繊維処理剤を所定量付着させることで、工程性が高まる上、該繊維処理剤がポリカーボネート樹脂を劣化させにくいことを見出した。
また、上述したポリカーボネート繊維を繊維強化プラスチックのマトリックス相(マトリックス樹脂)として用いた場合、具体的にはポリカーボネート繊維と強化繊維を含む繊維強化プラスチック用シートを加熱、加圧することで得られる、マトリックス相がポリカーボネート樹脂で構成される繊維強化プラスチックにおいて、繊維表面に上述した繊維処理剤が付着されたポリカーボネート繊維を溶融させてマトリックス相を形成することで、ポリカーボネート樹脂の劣化が抑えられ、得られる繊維強化プラスチックの機械的特性が向上することを見出した。それゆえ、前記ポリカーボネート繊維は、繊維強化プラスチック用として好適に用いることができ、繊維強化プラスチックにおいて、前記ポリカーボネート繊維は溶融してマトリックス相となる。
前記ポリカーボネート繊維は、紡糸性や強度を高める観点から、ポリカーボネート樹脂を60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、75質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましい。前記ポリカーボネート繊維に含まれるポリカーボネート樹脂の割合の上限は特に限定されず、実質的に、前記メルトフローレートを満たすポリカーボネート樹脂からなるものであってもよい。ここで、「実質的に」という用語は、通常、製品として提供される樹脂は安定剤等の添加剤を含むこと、および/または繊維の製造に際して各種添加剤が添加されることから、ポリカーボネート樹脂のみからなり、他の成分を全く含まない形態の繊維が得られないことを考慮して使用している。前記ポリカーボネート繊維において、ポリカーボネート樹脂以外の他の成分の含有量は30質量%以下であることが好ましい。前記他の成分としては、他の樹脂成分や添加剤が挙げられる。前記他の樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドなどのホモポリマーや共重合体の他、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などが挙げられる。前記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤などが挙げられる。
本発明のポリカーボネート繊維は添加剤として難燃剤を含むことが好ましい。ポリカーボネート樹脂は熱可塑性樹脂の中でも難燃性の高い樹脂であり、自己消火性を有している。ポリカーボネート樹脂に対し、最適な難燃剤を適量添加することで、難燃性がさらに高いものとなる。ポリカーボネート樹脂をマトリックス相とした繊維強化プラスチック製品は難燃性が求められる用途に対し、好ましく使用することができる。高い難燃性が要求される用途としては、例えば、電気、電子機器用の筐体や補強材(より具体的には、OA機器、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、タブレットPC、デジタルビデオカメラなどの携帯電子機器、エアコンその他家電製品などの筐体や各種電子機器の筐体に貼り付け、部分的に補強するリブ等の補強材が挙げられる。);自動車や二輪車、鉄道車両といった各種車両の構造部品(より具体的には、自動車や二輪車の各種フレーム、各種ビーム、ドア、トランクリッド、サイドパネル、アッパーバックパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラーなどの外板またはボディー部品及びその補強材、インストルメントパネル、シートフレームなどの内装部品、ガソリンタンク、燃料電池搭載車両における水素ガスタンク、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、吸気系部品、また鉄道車両用の座席用部材、外板パネル、外板パネルに貼り付ける補強材、天井パネルなどが挙げられる。);航空機用の部品(例えば、ウィングレット、スポイラーなどの部品が挙げられる。);土木、建材用の建設用部材(例えば、各種支柱、パネル、補強材などの建設用部材が挙げられる。)といったものがあり、本発明のポリカーボネート繊維およびそれを用いて製造した繊維強化プラスチックは前記の用途に好ましく用いられる。
本発明のポリカーボネート繊維を構成するポリカーボネート樹脂に対し添加できる難燃剤は特に限定されず、種々の難燃剤をポリカーボネート樹脂に添加することができる。前記難燃剤としては、有機リン系化合物、ハロゲン系有機化合物、シリコーン系化合物、メラミン等の窒素含有有機化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマス、また、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、赤リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸などの無機リン系化合物、カーボンファイバー、グラスファイバー、などの繊維、膨張黒鉛、シリカ、シリカ系ガラス溶融物などが用いられるが、好ましくはハロゲン系有機化合物、有機リン系化合物、及びシリコーン系化合物からなる群から選ばれる1種以上が用いられ、より好ましくは有機リン系化合物の難燃剤である縮合リン酸エステルの使用である。
(縮合リン酸エステル)
縮合リン酸エステルは、ハロゲン化リン(例えば、オキシ塩化リン)と、ポリヒドロキシル化合物(例えば、二価のフェノール系化合物)、及びヒドロキシル化合物(例えば、フェノール(またはアルキルフェノール))との反応生成物である。縮合リン酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトールジホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート(RDX)およびビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BDP)が挙げられる。縮合リン酸エステルは、ハロゲンを含有するものであってよい。好ましくは、環境への影響の観点から、ハロゲンを含有しないノンハロゲン縮合リン酸エステルが用いられる。
縮合リン酸エステルは、常温(25℃)で固体であることが好ましい。常温で気体又は液体であると、繊維中に含まれる縮合リン酸エステルが繊維表面から揮発又は染み出す場合がある。
縮合リン酸エステルは、その数平均分子量が200以上2000以下であるものが好ましく用いられる。数平均分子量が200以上2000以下の縮合リン酸エステルを5質量%以上30質量%以下とポリカーボネート樹脂を60質量%以上含む混合物は紡糸性が向上し、かつ得られるポリカーボネート繊維は十分な難燃性を発揮する。縮合リン酸エステルの割合は、それと混合するポリカーボネート樹脂の種類、および最終的に得ようとする繊維の繊度等に応じて、選択される。縮合リン酸エステルは、当該縮合リン酸エステル、ポリカーボネート樹脂、ならびに必要に応じて混合される他の樹脂および他の添加剤との混合物の全質量の5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上25%以下であるとより好ましく、10質量%を超え20質量%以下であると特に好ましく、11質量%以上16%以下であると最も好ましい。縮合リン酸エステルの割合が小さいと、ポリカーボネート繊維およびそれを用いて製造される繊維集合物や繊維強化プラスチックが十分な難燃性能を発揮できなくなるおそれがある。縮合リン酸エステルの割合が30質量%を超えると、縮合リン酸エステルの影響で、縮合リン酸エステルを含むポリカーボネート樹脂の溶融時の流動性が極めて高くなり、溶融紡糸が困難となるおそれがある。
前記ポリカーボネート樹脂は、紡糸性が良好という観点から、溶融紡糸前および溶融紡糸後に測定した数平均分子量(Mn)が9000以上16000以下であることが好ましい。前記ポリカーボネート樹脂の数平均分子量が前記範囲を満たすことで、該ポリカーボネート樹脂が溶融したときの流動性が良好になり、容易に溶融紡糸できるだけでなく、本発明のポリカーボネート繊維を用いて繊維強化プラスチックを製造する際、該ポリカーボネート繊維を溶融させた、溶融状態のポリカーボネート樹脂が高い流動性を示す。そのため、強化繊維の間に形成されるわずかな隙間にも溶融したポリカーボネート樹脂が含浸しやすくなることで、得られる繊維強化プラスチックの内部に空洞が残りにくくなり、耐衝撃性や曲げ強度等の機械的特性が向上しやすくなる。さらに、製造時の加熱、加圧の条件を、より低温、低圧力にしても十分な機械的強度を有する繊維強化プラスチックが得られるようになる。紡糸性、溶融した際の流動性、繊維強化プラスチックのマトリックス相になる繊維として使用した際、繊維強化プラスチックの機械的強度をより高める観点から、前記ポリカーボネート樹脂は、溶融紡糸前及び溶融紡糸後に測定した数平均分子量(Mn)が15500以下であることがより好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂の溶融紡糸前および溶融紡糸後に測定した数平均分子量の下限は、入手しやすく、コストを低減する観点から、10000以上であることがより好ましく、11000以上であることが特に好ましく、11500以上であることが最も好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂は、紡糸性が良好という観点から、溶融紡糸前および溶融紡糸後に測定した重量平均分子量(Mw)が22000以上36000以下であることが好ましい。前記ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が前記範囲を満たすことで、該ポリカーボネート樹脂が溶融したときの流動性が良好になり、容易に溶融紡糸できるだけでなく、本発明のポリカーボネート繊維を用いて繊維強化プラスチックを製造する際、該ポリカーボネート繊維を溶融させた、溶融状態のポリカーボネート樹脂が高い流動性を示す。そのため、強化繊維の間に形成されるわずかな隙間にも溶融したポリカーボネート樹脂が含浸しやすくなることで、得られる繊維強化プラスチックの内部に空洞が残りにくくなり、耐衝撃性や曲げ強度等の機械的特性が向上しやすくなる。さらに、製造時の加熱、加圧の条件を、より低温、低圧力にしても十分な機械的強度を有する繊維強化プラスチックが得られるようになる。紡糸性、溶融した際の流動性、繊維強化プラスチックのマトリックス相になる繊維として使用した際、繊維強化プラスチックの機械的強度をより高める観点から、溶融紡糸前および溶融紡糸後に測定した重量平均分子量(Mw)が35000以下であることがより好ましく、34500以下であることが特に好ましく、34000以下であることが最も好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂の溶融紡糸前および溶融紡糸後に測定した重量平均分子量(Mw)は、入手しやすく、コストを低減する観点から、25000以上であることがより好ましく、26000以上であることが特に好ましく、27000以上であることが最も好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂は、溶融紡糸後に測定した数平均分子量(Mn)が9000以上16000以下であることにより、この繊維を用いて製造される繊維強化プラスチックの機械的特性の向上、および繊維強化プラスチックを製造する際の、溶融したポリカーボネート樹脂の強化繊維間への含浸性を高めることができる。また、ポリカーボネート樹脂を入手しやすく、コストを低減する観点から、前記ポリカーボネート樹脂の溶融紡糸後に測定した数平均分子量(Mn)は、10000以上15000以下であることが好ましく、10500以上14000以下であることがより好ましく、11000以上13500以下であることが特に好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂は、溶融紡糸後に測定した重量平均分子量(Mw)が22000以上32000以下であることにより、該繊維を用いて製造される繊維強化プラスチックの機械的特性の向上、および繊維強化プラスチックを製造する際の、溶融したポリカーボネート樹脂の強化繊維間への含浸性を高めることができる。また、前記ポリカーボネート樹脂の溶融紡糸後に測定した重量平均分子量は、ポリカーボネート樹脂を入手しやすく、コストを低減し、かつ、得られるポリカーボネート繊維を用いた繊維強化プラスチック材料の機械的強度を高める観点から、24000以上31000以下であることが好ましく、26000以上30000以下であることがより好ましく、26500以上29500以下であることが特に好ましい。
本発明の一実施形態において、原料となる樹脂ペレット、および溶融紡糸により得られたポリカーボネート繊維に含まれるポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ装置を用いて測定することができる。例えば、試料(ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート繊維)をテトラヒドロフラン(THF)に加え、緩やかに攪拌して溶解する。次に、試料を溶解させた溶液をフィルターで濾過し、測定用試料溶液を得る。ゲル浸透クロマトグラフ装置GPC(gel permeation chromatography)に測定用試料溶液を100μL注入して、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定する。検出器として示差屈折率(RI)検出器を備えるゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)等が使用できる。そして、カラムとして、昭和電工株式会社 製 Shodex(登録商標)のKF-G(1本)、KF-805L(2本)、KF-800D(1本)を使用し、標準試料として、単分散ポリスチレンを用い、カラム恒温槽の温度を40℃として測定できる。
前記ポリカーボネート樹脂は、ISO 1133に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度300℃、荷重1.2kgf)が40g/10分以上であることが好ましい。前記ポリカーボネート樹脂のメルトフローレートが上記範囲を満たすことで、ポリカーボネート繊維の紡糸性が高められるだけでなく、溶融された該ポリカーボネート繊維をマトリックス相として含む繊維強化プラスチックの耐衝撃性等の機械的特性が向上しやすくなる。前記ポリカーボネート樹脂は、強化繊維間へのポリカーボネート樹脂の含浸性が高まるという点から、MFRが45g/10分以上であることがより好ましく、50g/10分以上であることが特に好ましく、52g/10分以上であることが最も好ましい。前記ポリカーボネート樹脂において、MFRの上限は特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂の流動性が高くなりすぎること、および得られる繊維強化プラスチックの機械的物性の点から、140g/10分以下であることが好ましく、125g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることが特に好ましく、80g/10分以下であることが最も好ましい。
前記ポリカーボネート繊維は、特に限定されないが、例えば、前記ポリカーボネート樹脂を単独で溶融紡糸することで得ることができる。あるいは、前記ポリカーボネート樹脂に、必要に応じて他の熱可塑性樹脂や難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤といった各種添加剤を混合した後、溶融紡糸することで得ることができる。他の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6およびナイロン66等の脂肪族ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
前記ポリカーボネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の「ノバレックス M7020A」、「ノバレックス M7020J」(ノバレックスは登録商標)、および「ユーピロン H4000」(ユーピロンは登録商標)等の市販品を用いても良い。
前記ポリカーボネート繊維の表面には、ポリカーボネート繊維100質量部あたり、繊維処理剤が0.05質量部以上3質量部以下の割合で付着している。前記ポリカーボネート繊維の表面に付着している繊維処理剤の割合は、ポリカーボネート繊維の生産性、ポリカーボネート繊維を用いて繊維強化プラスチック用シートや繊維強化プラスチックを作製する際の工程性、得られる繊維強化プラスチック材料の機械的特性を考慮するとポリカーボネート繊維100質量部あたり0.08質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましく、0.15質量部以上0.8質量部以下であることが特に好ましく、0.2質量部以上0.6質量部以下であることが最も好ましい。
前記ポリカーボネート繊維において、前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む。これにより、ポリカーボネート繊維のカード通過性や抄紙工程における分散性等の工程性が良好になるとともに、ポリカーボネート繊維を構成するポリカーボネート樹脂を劣化させにくく、必要に応じて水洗で繊維処理剤を脱落させやすい。また、繊維強化プラスチック用シートを製造する際の生産性が高められ、得られる繊維強化プラスチックの機械的強度も高いものが得られやすくなる。好ましくは、前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を80質量%以上含み、より好ましくは90質量%以上含み、さらにより好ましくは95質量%以上含み、特に好ましくは、100質量%からなる。
前記ポリカーボネート繊維にアルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%含む繊維処理剤を付着させることで、繊維強化プラスチック用シートを、カード機を用いた乾式法で製造する場合、カード機の工程においてポリカーボネート繊維のカード通過性が向上し、静電気の発生が抑えられる。また、繊維強化プラスチック用シートを、抄紙機を用いた湿式法で製造する場合、ポリカーボネート繊維と強化繊維を水中に入れて分散させ、抄紙用スラリーを得るが、このとき水中にポリカーボネート繊維が均一に分散しやすくなる。
前記ポリカーボネート繊維は、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む繊維である。ポリカーボネート樹脂は耐薬品性が比較的低い熱可塑性樹脂であり、繊維処理剤の成分によってはポリカーボネート樹脂が悪影響を受ける可能性がある。また、本発明のポリカーボネート繊維は、紡糸性や繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として使用するときの流動性を考慮して、MFRが40g/10分以上のポリカーボネート樹脂を使用することが好ましいが、MFRが大きい、すなわち溶融時の粘性が低いポリカーボネート樹脂は平均分子量が小さく、分子鎖の長さが短いポリカーボネート分子の割合が多いと考えられる。このようなポリカーボネート樹脂は、平均分子量が大きく、分子鎖の長さが長いポリカーボネート分子の割合が多いポリカーボネート樹脂と比較して、界面活性剤や有機溶剤といった各種化学薬品から、より強く影響を受けると推測されることから、本発明のポリカーボネート繊維に使用する繊維処理剤は、ポリカーボネート樹脂に対し、劣化を促進するといった作用ができるだけ小さいものが求められる。上述したアルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む繊維処理剤を用いることで、ポリカーボネート樹脂に対し、繊維処理剤が影響を与えにくくなる、あるいは与える影響が小さくなると推測される。
前記アルキルリン酸エステル塩は、下記一般式(1)~(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤であることが好ましい。
前記一般式(1)において、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基のいずれでもよい。また、前記一般式(1)において、X1、X2は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X1、X2のうち少なくとも一方は水素ではない。前記一般式(2)において、R1、R2は炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基のいずれでもよい。また、前記一般式(2)において、X3は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステル塩において、炭化水素基(すなわち、R、R1、R2で示される炭化水素基)の炭素数が8以上24以下であることで、繊維処理剤の親水性、疎水性のバランスがとれるため、アルキルリン酸エステル塩そのものの繊維表面への定着性に優れ、ポリカーボネート繊維の水への分散性、およびカード通過時の静電気発生を抑える効果がいずれも良好なものとなる。炭素数が8以上24以下の炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、パルミチル基、セチル基、イソパルミチル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基、オレイル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられ、これらの混合アルキル基も挙げられる。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステル塩において、R、R1およびR2で表される炭化水素基の炭素数は8以上20以下が好ましく、8以上18以下がより好ましく、8以上16以下が特に好ましい。
前記アルキルリン酸エステル塩は、一般式(1)で表されるモノアルキルリン酸エステル塩および/または一般式(2)で表されるジアルキルリン酸エステル塩を含んでよいが、少なくとも、一般式(1)で表されるモノアルキルリン酸エステル塩を含むことが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が、下記一般式(3)~(4)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤であることが好ましい。
前記一般式(3)において、R3は炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基のいずれでもよい。また、前記一般式(1)において、X4、X5は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X4、X5のうち少なくとも一方は水素ではない。kは重量平均で0.5~20、好ましくは1~5の数を示す。前記一般式(4)において、R4、R5は炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基のいずれでもよい。また、前記一般式(4)において、X6は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示し、m、nはそれぞれ重量平均で0.5~20、好ましくは1~5の数を示す。
前記一般式(3)、または一般式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩において、一般式(3)においてR3で表される炭化水素基の炭素数、および一般式(4)においてR4、R5で表される炭化水素基の炭素数は8以上24以下であることで、繊維処理剤の親水性、疎水性のバランスがとれるため、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩そのものの繊維表面への定着性に優れ、ポリカーボネート樹脂を含む繊維の水への分散性、およびカード通過時の静電気発生を抑える効果がいずれも良好なものとなる。炭素数が8以上24以下の炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、パルミチル基、セチル基、イソパルミチル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基、オレイル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられ、これらの混合アルキル基も挙げられる。一般式(3)、または一般式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩において、R3、R4およびR5で表される炭化水素基の炭素数は8以上20以下が好ましく、8以上18以下がより好ましく、8以上16以下が特に好ましい。
前記一般式(3)、または一般式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩は、エチレンオキサイドが付加重合されている。付加重合されたエチレンオキサイドの付加数は特に限定されないが、一般式(3)、または一般式(4)において、重量平均で0.5~20となる付加数、好ましくは一般式(3)または一般式(4)において、重量平均で1~5となる付加数で付加されている。付加されたエチレンオキサイドの数が前記範囲を満たすことで当該ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を含む繊維処理剤の親水性、疎水性のバランスがとれるため、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩そのものの繊維表面への定着性に優れ、ポリカーボネート樹脂を含む繊維の水への分散性、およびカード通過時の静電気発生を抑える効果がいずれも良好なものとなる。
前記一般式(1)、または一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステル塩、および前記一般式(3)、または一般式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩は、部分中和物、または完全中和物のいずれであってもよい。また、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示されるが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩またはカリウム塩がより好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
前記繊維処理剤は、2種類以上のアルキルリン酸エステル塩や2種類以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を組み合わせて使用してもよい。2種類以上のアルキルリン酸エステル塩やポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を併用する例として、炭化水素基の種類が異なるものを併用したり、カリウム塩とナトリウム塩を併用したりすることが挙げられる。また、前記繊維処理剤は、ポリカーボネート樹脂に影響をあたえない成分であれば、前記ポリカーボネート繊維のカード通過性、静電気防止性、水分散性等を考慮してアルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩以外の界面活性剤を有効成分として含んでもよい。
前記繊維処理剤は、前記式(1)~(4)で表されるアニオン系界面活性剤、すなわち前記一般式(1)または一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステル塩や、前記一般式(3)または一般式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩の含有量が大きいほど、この繊維処理剤が付着しているポリカーボネート繊維の制電性や親水性が良好となるだけでなく、ポリカーボネート繊維を構成するポリカーボネート樹脂に与える影響も小さくなると考えられる。前記繊維処理剤は、前記一般式(1)~(4)で表されるアニオン系界面活性剤を70質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらにより好ましく、85質量%以上含むことがさらにより好ましく、90質量%以上含むことがさらにより好ましく、95質量%以上含むことがさらにより好ましい。繊維処理剤の有効成分が実質的にアルキルリン酸エステル塩やポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩だけであってもよいことから、前記繊維処理剤における前記一般式(1)~(4)で表されるアニオン系界面活性剤の含有率の上限は100質量%である。前記繊維処理剤は、前記一般式(1)で表されるアルキルリン酸エステル塩および前記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらにより好ましく、85質量%以上含むことがさらにより好ましく、90質量%以上含むことがさらにより好ましく、95質量%以上含むことがさらにより好ましく、100質量%含むことが特に好ましい。
前記繊維処理剤は、前記一般式(1)~(4)で表されるアニオン系界面活性剤以外の他の成分を含んでいてもよい。前記繊維処理剤は、他の成分を30質量%以下含んでもよく、25質量%以下含むことが好ましく、20質量%以下含むことがより好ましい。前記他の成分としては、従来の合成繊維の繊維処理剤として使用されている界面活性剤、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができるが、アニオン系界面活性剤および/または両性界面活性剤であることが好ましい。アニオン系界面活性剤としては、例えば、サルフェート型(例えば、アルキルサルフェート)、スルホネート型(例えば、パラフィン(アルカン)スルホネート)、カルボン酸型(例えば、脂肪酸塩)、およびホスフェート型(例えば、POEアルキル(炭素数が8以上24以下))ホスフェート、アルキルホスフェート)等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アンモニウム型(例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(炭素数が8以上24以下))、ベンザルコニウム型(例えば、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(炭素数が8以上24以下))、およびアルキルアミン型(例えばモノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩)等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型(例えば、ジアルキル(炭素数が8以上24以下)ジアミノエチルベタイン、アルキル(炭素数が8以上24以下)ジメチルベンジルベタイン)アルキルアミンオキサイド型(例えば、アルキル(炭素数が8以上24以下)ジメチルアミンNオキシド)、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アミノ酸型(例えば、アルキル(炭素数が8以上24以下)グルタミン酸塩)、およびグリシン型(例えば、ジアルキル(炭素数が8以上24以下)ジアミノエチルグリシン、アルキル(炭素数が8以上24以下)ジメチルベンジルグリシン)等が挙げられる。
前記ポリカーボネート繊維の繊度は特に限定されるものではないが、0.5dtex以上20dtex以下であることが好ましく、0.8dtex以上10dtex以下であることがより好ましい。繊度が0.5dtex以上であると、繊維の紡糸安定性が良好である。繊度が20dtex以下であると、緻密で均一な地合の不織布が得られやすい。また、前記ポリカーボネート繊維の繊維長は、特に限定されるものではないが、例えば、2mm以上150mm以下であることが好ましく、3mm以上100mm以下であることがより好ましく、5mm以上75mm以下であることが特に好ましい。
なお、前記ポリカーボネート繊維の繊度および繊維長は、繊維強化プラスチック用シートに用いる場合は、後述する繊維強化プラスチック用シートの製造方法によって適宜選定するとよい。例えば、繊維強化プラスチック用シートが、カード機で作製した繊維ウェブ(乾式法)を用いた不織布である場合、前記ポリカーボネート繊維の繊度は0.8dtex以上20dtex以下であることが好ましく、1.1dtex以上15dtex以下であることがより好ましく、1.4dtex以上10dtex以下であることが特に好ましい。このとき、前記ポリカーボネート繊維の繊維長は20mm以上100mm以下であることが好ましく、26mm以上75mm以下であることがより好ましく、30mm以上65mm以下であることが特に好ましい。また、繊維強化プラスチック用シートを構成する繊維ウェブがエアレイ法で作製される場合、前記ポリカーボネート繊維の繊度は0.8dtex以上20dtex以下であることが好ましく、1.1dtex以上15dtex以下であることがより好ましく、1.4dtex以上10dtex以下であることが特に好ましい。このとき、前記ポリカーボネート繊維の繊維長は2mm以上100mm以下であることが好ましく、5mm以上90mm以下であることがより好ましく、5mm以上85mm以下であることが特に好ましく、8mm以上80mm以下であることが最も好ましい。繊維強化プラスチック用シートを構成する繊維ウェブを湿式抄紙法(湿式不織布或いは単に抄紙法とも称される。)で作製する場合、繊維強化プラスチック用ポリカーボネート繊維の繊度は0.8dtex以上20dtex以下であることが好ましく、1.1dtex以上15dtex以下であることがより好ましく、1.4dtex以上10dtex以下であることが特に好ましい。このとき、前記繊維強化プラスチック用ポリカーボネート繊維の繊維長は2mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましく、3mm以上10mm以下であることが特に好ましい。
前記ポリカーボネート繊維の単繊維強度は特に限定されないが、後述する繊維強化プラスチック用シートの生産性、および繊維強化プラスチック用シートの取り扱い性を考慮すると、単繊維強度が0.85cN/dtex以上であることがより好ましく、0.9cN/dtex以上であることが特に好ましい。前記ポリカーボネート繊維の単繊維強度の上限は、特に限定されるものではないが、入手しやすさおよびコストの観点から、10cN/dtex以下であることが好ましく、7.5cN/dtex以下であることがより好ましい。なお、前記ポリカーボネート繊維において、単繊維伸度は特に限定されないが10%以上300%以下であることが好ましく、15%以上250%以下であることがより好ましく、20%以上200%以下であることが特に好ましい。本発明の一実施形態において、ポリカーボネート繊維の単繊維伸度は、JIS L 1015:2010に準じて測定した伸び率をいい、ポリカーボネート繊維の単繊維強度は、JIS L 1015:2010に準じて測定した引張強度をいう。
本発明のポリカーボネート繊維は、特に限定されないが、例えば、下記の工程を含む製造方法で作製することができる。
(1)紡糸前の数平均分子量(Mn)が9000以上16000以下であり、紡糸前の重量平均分子量(Mw)が22000以上36000以下であるポリカーボネート樹脂、または、前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む混合物を用意する。
(2)前記ポリカーボネート樹脂、または、前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む混合物を250℃以上350℃以下の温度で溶融紡糸し、紡糸フィラメントとする。
(3)前記紡糸フィラメント(ポリカーボネート繊維)の繊維表面に対し、ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む繊維処理剤を付着させる。
前記ポリカーボネート樹脂および前記繊維処理剤としては、上述したものを好適に用いることができる。
前記混合物は、上述したように必要に応じて他の樹脂や添加剤を含むことができる。ポリカーボネート繊維の難燃性を向上させる観点から、添加剤として、上述した難燃剤を好適に用いることができる。好ましくは、難燃剤として縮合リン酸エステルを用いる。前記混合物は、縮合リン酸エステルを当該縮合リン酸エステル、ポリカーボネート樹脂、ならびに必要に応じて混合される他の樹脂および他の添加剤との混合物の全質量の5質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。
前記溶融紡糸時の紡糸ドラフトは、例えば、50~800倍にしてもよく、100~700倍にしてもよい。前記紡糸ドラフトは、引取り速度(m/分)/吐出線速度(m/分)で求めることができる。前記紡糸ドラフトが50倍以上であれば、紡糸線上で張力が付与され、糸揺れが顕著にならず、安定的に紡糸フィラメントを得ることができる。一方、紡糸ドラフトが800倍以下であれば、紡糸線上で張力が高くなり過ぎることで発生する糸切れの頻度が減少し、安定的に紡糸フィラメントを得ることができる。
前記繊維処理剤の付与は、通常の油剤の付与工程と同様に行うことができ、特に限定されない。繊維処理剤を前記紡糸フィラメントに付与する方法としては、例えば、繊維処理剤を水で希釈した希釈液に紡糸フィラメント(ポリカーボネート繊維)を浸漬し、必要に応じて乾燥することで、ポリカーボネート繊維の繊維表面に繊維処理剤を付着させる方法や、繊維処理剤を水で希釈した希釈液を紡糸フィラメント(ポリカーボネート繊維)に噴霧することで付着させる方法の他、ロールタッチ法などの方法で付与できる。このとき、前記紡糸フィラメント(ポリカーボネート繊維)は溶融紡糸を行った後、延伸処理を行っていない、未延伸状態の紡糸フィラメントであってもよいし、溶融紡糸後の紡糸フィラメントに対し、1.1倍以上6倍以下の延伸倍率で延伸処理を行ったものであってもよい。また、繊維処理剤の付与後、必要に応じて捲縮を付与してもよい。
以下、前記ポリカーボネート繊維を含む繊維強化プラスチック用シートについて説明する。本発明の繊維強化プラスチック用シートは、前記ポリカーボネート繊維と強化繊維を含む。前記繊維強化プラスチック用シートは、繊維強化プラスチック用シートの質量を100質量%としたときに、強化繊維を23.5質量%以上80質量%以下と、前記ポリカーボネート繊維を20質量%以上76.5質量%以下含む。強化繊維および前記ポリカーボネート繊維の含有量を上述した範囲にすることで、この繊維強化プラスチック用シートを用いた繊維強化プラスチックの機械的強度が高まる。前記繊維強化プラスチック用シートは、繊維強化プラスチック用シートの質量を100質量%としたときに、強化繊維を25質量%以上75質量%以下と、前記ポリカーボネート繊維を25質量%以上75質量%以下含むことが好ましく、強化繊維を30質量%以上70質量%以下と、前記ポリカーボネート繊維を30質量%以上70質量%以下含むことがより好ましく、強化繊維を35質量%以上65質量%以下と、前記ポリカーボネート繊維を35質量%以上65質量%以下含むことが特に好ましく、強化繊維を35質量%以上45質量%以下と、熱可塑性樹脂繊維を55質量%以上65質量%以下含むことが最も好ましい。
前記強化繊維としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維とも称され、より具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維が挙げられる。)、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維といった高強度かつ低伸度の合成繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ガラス繊維やセラミックス繊維(具体的には炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ケイ素(シリコン)とチタンまたはジルコニアの炭化物を繊維にしたチラノ繊維(チラノおよびチラノ繊維は登録商標)等が挙げられる。)などの各種無機繊維等を用いることができる。強化繊維は得られる繊維強化プラスチックに対して求められる物性によって選択することができる。すなわち、繊維強化プラスチックに対し、衝撃に対する粘り強さや靭性が求められる場合、補強繊維として高強度で適度な伸度を有している合成繊維、より好ましくは芳香族ポリアミド繊維、特に好ましくはポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を含むことが好ましい。また、強度が重視される用途に繊維強化プラスチックを使用するのであれば、強化繊維として、繊維自体がより高強度の繊維、具体的には炭素繊維や各種無機繊維を強化繊維として含むことが好ましい。また、前記強化繊維は複数種類選択して使用してもよい。強化繊維を複数種類選択して使用する例として、強化繊維として炭素繊維と芳香族ポリアミド繊維を含む繊維強化プラスチック、強化繊維としてガラス繊維と芳香族ポリアミド繊維を含む繊維強化プラスチックが挙げられる。
前記強化繊維として、芳香族ポリアミド繊維を含む場合、前記芳香族ポリアミド繊維の単繊維伸度は特に限定されないが、単繊維伸度が2%以上であることが好ましい。前記芳香族ポリアミド繊維の単繊維伸度が2%以上であると、変形や衝撃に対し、強化繊維が変形しやすくなるため、この強化繊維を用いた繊維強化プラスチックが衝撃を受けた際、強化繊維が適度に伸びて塑性変形に沿うようになり、それゆえ衝撃を吸収しやすく、耐衝撃性や破壊靭性が向上する。前記強化繊維の単繊維伸度は、得られる繊維強化プラスチックの破壊靭性や耐衝撃性等の機械的強度を高める観点から、2.5%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましい。また、前記芳香族ポリアミド繊維の単繊維伸度の上限は特に限定されないが、得られる繊維強化プラスチックの機械的強度の観点から、10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。
前記強化繊維として芳香族ポリアミド繊維を使用する場合、得られる繊維強化プラスチックの機械的強度を高める観点から、単繊維強度が16cN/dtex以上であることが好ましく、18cN/dtex以上であることがより好ましく、20cN/dtex以上であることが特に好ましく、20.5cN/dtex以上であることが最も好ましい。前記芳香族ポリアミド繊維の単繊維強度の上限は、特に限定されるものではないが、入手しやすさおよびコストの観点から、40cN/dtex以下であることが好ましく、35cN/dtex以下であることがより好ましい。
前記強化繊維として、炭素繊維を含んでいる場合、前記炭素繊維の単繊維伸度は特に限定されないが、単繊維伸度が0.2%以上3%以下であることが好ましく、0.3%以上2.5%以下であるとより好ましく、0.4%以上2%以下であると特に好ましい。前記炭素繊維の単繊維伸度が、前記の範囲を満たすことで、後述する炭素繊維の単繊維強度と合わせて、炭素繊維が高強度、低伸度の補強繊維となり、この炭素繊維で強化された繊維強化プラスチックは機械的強度や剛性に優れたものとなり、各種車両や航空機の骨組みといった各種構造材料に適したものとなる。
前記強化繊維として炭素繊維を使用する場合、得られる繊維強化プラスチックの機械的強度を高める観点から、単繊維強度が6cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることがより好ましく、10cN/dtex以上であることが特に好ましい。前記炭素繊維の単繊維強度の上限は、特に限定されるものではないが、入手しやすさおよびコストの観点から、45cN/dtex以下であることが好ましく、40cN/dtex以下であることがより好ましく、35cN/dtex以下であることが特に好ましく、30cN/dtex以下であることが最も好ましい。なお、炭素繊維はその原料の違いから、アクリロニトリルから製造されるPAN系炭素繊維と、石油由来のピッチから製造されるピッチ系炭素繊維があるが、前記単繊維強度、引張伸度を満たす炭素繊維であれば特に限定されることなく使用することができる。また、炭素繊維は、未使用の炭素繊維の他、一度繊維シートや繊維強化プラスチック等に加工した後、端材となった繊維シートや繊維強化プラスチック、或いは使用済みとなった繊維強化プラスチックや廃棄された繊維強化プラスチック等を回収し、薬品を使った化学処理や熱処理で炭素繊維以外の有機物を除去することで得られたリサイクル炭素繊維(再生炭素繊維、再利用炭素繊維とも称されている)も使用することができる。
本発明の一実施形態において、強化繊維の単繊維伸度は、JIS L 1015:2010に準じて測定した伸び率をいい、強化繊維の単繊維強度は、JIS L 1015:2010に準じて測定した引張強度をいう。
前記強化繊維の繊維長は特に限定されないが、得られる繊維強化プラスチックの機械的強度の観点から、繊維長が2mm以上150mm以下であると好ましく、3mm以上100mm以下であるとより好ましい。強化繊維の繊維長が2mm未満であると、繊維強化プラスチックの機械的強度が低くなる。一方、強化繊維の繊維長が150mmを超えると、シート作製時の生産性が劣る。
前記強化繊維の繊度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5dtex以上20dtex以下であることが好ましく、0.8dtex以上10dtex以下であることがより好ましい。繊度が0.5dtex以上であると、繊維を入手しやすい。繊度が20dtex以下であると、不織布をはじめとする繊維集合物にしやすく、緻密で均一な地合の繊維強化プラスチック用シートが得られやすい。
本発明の繊維強化プラスチック用シートは、生産性の観点から、繊維ウェブまたは不織布の形態であることが好ましく、不織布であることがより好ましい。前記不織布は、湿式不織布であってもよく、乾式不織布であってもよい。湿式不織布の場合、不織布を構成する繊維ウェブは、湿式法(湿式抄紙法とも称される。)で作製することができる。乾式不織布の場合、不織布を構成する繊維ウェブは、カード機等の機械を用いて作製してもよく、エアレイ法で作製してもよい。
前記繊維強化プラスチック用シートの目付は、特に限定されないが、例えば、取扱い性の観点から、目付が5g/m2以上であることが好ましく、8g/m2以上であることがより好ましい。また、前記繊維強化プラスチック用シートは、成形性の観点から、目付が500g/m2以下であることが好ましく、400g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう目付は繊維強化プラスチック用シート1枚あたりの目付である。前記繊維強化プラスチック用シートの1枚あたりの目付は5g/m2以上500g/m2以下であるが、最終的に得られる繊維強化プラスチックを厚さのあるものに仕上げる場合には、前記目付の範囲にあるシートを複数枚重ね、目付が500g/m2を超える積層シートにして繊維強化プラスチックとしてもよい。
本発明の一実施形態において、繊維強化プラスチックは、前記強化繊維とマトリックス樹脂を含み、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、前記強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含む。前記繊維強化プラスチックは、好ましくは、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、前記強化繊維を25体積%以上75体積%以下の割合で含み、より好ましくは、前記強化繊維を30体積%以上70体積%以下の割合で含み、特に好ましくは、前記強化繊維を35体積%以上65体積%以下の割合で含み、最も好ましくは強化繊維を35体積%以上45体積%以下の割合で含む。
前記マトリックス樹脂は、前記ポリカーボネート繊維が溶融して強化繊維間に含浸したものであり、前記ポリカーボネート繊維由来のポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む。前記マトリックス樹脂に含まれるポリカーボネート樹脂は、繊維強化プラスチックの機械的特性の向上、および繊維強化プラスチックを製造する際の、強化繊維間への含浸性を高めるため、繊維強化プラスチック成形体を試料として測定した数平均分子量(Mn)が15000以下であることが好ましく、14000以下であることがより好ましく、13000以下であることがさらにより好ましく、12000以下であることが特に好ましい。また、前記マトリックス樹脂に含まれるポリカーボネート樹脂は、入手しやすく、コストを低減する観点から、得られた繊維強化プラスチックを試料として測定した数平均分子量(Mn)が8000以上であることが好ましく、9000以上であることがより好ましく、9500以上であることがさらにより好ましく、10000以上であることが特に好ましい。また、前記マトリックス樹脂に含まれるポリカーボネート樹脂は、繊維強化プラスチックの機械的特性の向上、および繊維強化プラスチックを製造する際の、強化繊維間への含浸性を高めるため、得られた繊維強化プラスチックを試料として測定した重量平均分子量(Mw)が30000以下であることが好ましく、27000以下であることがより好ましく、26000以下であることがさらにより好ましく、25500以下であることが特に好ましい。また、前記マトリックス樹脂に含まれるポリカーボネート樹脂は、入手しやすく、コストを低減する観点から、得られた繊維強化プラスチックを試料として測定した重量平均分子量(Mw)が20000以上であることが好ましく、22000以上であることがより好ましく、22500以上であることがさらにより好ましく、23000以上であることが特に好ましい。
前記マトリックス樹脂は、耐衝撃性等の機械的強度をより高める観点から、前記ポリカーボネート樹脂を60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことがさらにより好ましく、特に好ましくは実質的にポリカーボネート樹脂からなるものである。ここで、「実質的に」という用語は、通常、製品として提供される樹脂は安定剤等の添加剤を含むこと等を考慮して使用している。前記マトリックス樹脂において、ポリカーボネート樹脂以外の他の成分の含有量は30質量%以下であることが好ましい。前記他の成分としては、他の樹脂成分や添加剤が挙げられる。前記他の樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドなどのホモポリマーや共重合体の他、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などが挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、繊維強化プラスチック用シートに用いたものと同様の物を用いればよい。
前記繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂である前記ポリカーボネート樹脂は、強化繊維間へのポリカーボネート樹脂の含浸性が高まるという点から、ISO 1133に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度300℃、荷重1.2kgf)が40g/10分以上であることが好ましく、45g/10分以上であることがより好ましく、50g/10分以上であることが特に好ましく、52g/10分以上であることが最も好ましい。前記ポリカーボネート樹脂において、MFRの上限は特に限定されないが、繊維強化プラスチックの機械的物性の点から、140g/10分以下であることが好ましく、125g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることが特に好ましく、80g/10分以下であることが最も好ましい。
本発明の一実施形態において、繊維強化プラスチックは、前記繊維強化プラスチック用シートを適宜に積層した積層体を成形することで得ることができる。具体的には、前記繊維強化プラスチック用積層体を前記ポリカーボネート繊維の融点以上の温度で加熱処理することで、前記熱ポリカーボネート繊維を溶融させて、強化繊維間に含浸させることで、繊維強化プラスチックを得ることができる。すなわち、加熱処理により、ポリカーボネート繊維が溶融してマトリックス樹脂となる。成形方法としては、加熱処理を行うことができる方法であればよく、特に限定されない。例えば、プレス成形、スタンパブル成形等を用いることができる。強化繊維とポリカーボネート繊維を含む繊維強化プラスチック用シートの積層体を用いることにより、成形性がよくなり、強化繊維に対するマトリックス樹脂の含浸性が良好になる。
前記繊維強化プラスチックは、JIS K 7074:1998(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)のA法(3点曲げによる曲げ試験方法)に準じて測定した曲げ強度が200MPa以上であることが好ましく、250MPa以上であることがより好ましく、280MPa以上であることが特に好ましい。曲げ強度が上述した範囲であると、繊維強化繊維強化プラスチックが曲げに対して十分な強度を有するため、各種構造材料、具体的には自動車を始めとした各種車両や航空機の構造材料として好適に用いることができる。このような繊維強化プラスチックは、本発明のポリカーボネート繊維をマトリックス樹脂とし、強化繊維として高強度で低伸度の強化繊維、具体的には炭素繊維、ボロン繊維、ガラス繊維やセラミックス繊維(炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、シリコンとチタンまたはジルコニアの炭化物を繊維にしたチラノ繊維(チラノおよびチラノ繊維は登録商標)等が例示できる。)などの各種無機繊維等を用いた繊維強化プラスチックとすることで容易に得ることができる。なお、前記繊維強化プラスチックの曲げ強度の上限は、特に限定されないが、750MPa以下であってもよく、650MPa以下であってもよく、600MPa以下であってもよい。
前記繊維強化プラスチックは、JIS K 7074:1998(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)のA法(3点曲げによる曲げ試験方法)に準じて測定した曲げ弾性率が8GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、15GPa以上であることが特に好ましい。曲げ弾性率が上述した範囲であると、繊維強化繊維強化プラスチックが曲げに対して十分な剛性を有するため各種構造材料、具体的には自動車を始めとした各種車両や航空機の構造材料として好適に用いることができる。このような繊維強化プラスチックは、本発明のポリカーボネート繊維をマトリックス樹脂とし、強化繊維として高強度で低伸度の強化繊維、具体的には炭素繊維、ボロン繊維、ガラス繊維やセラミックス繊維(炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ケイ素(シリコン)とチタンまたはジルコニアの炭化物を繊維にしたチラノ繊維(チラノおよびチラノ繊維は登録商標)等が例示できる。)などの各種無機繊維等を用いた繊維強化プラスチックとすることで得ることができる。なお、前記繊維強化プラスチック曲げ弾性率の上限は、特に限定されないが、50GPa以下であってもよく、40GPa以下であってもよく、35GPa以下であってもよい。
前記繊維強化プラスチックは、JIS K 7111に準じて測定したシャルピー衝撃強度が45kJ/m2以上であり、好ましくは50kJ/m2以上であり、より好ましくは55kJ/m2以上である。シャルピー衝撃強度が上述した範囲であると、耐衝撃性が良好であり、キャリーケースといった各種搬送用容器や、精密機械や電子機器の筐体に使用する繊維強化プラスチックとして好適に用いることができる。このような繊維強化プラスチックは、本発明のポリカーボネート繊維をマトリックス樹脂とし、強化繊維として比較的単繊維伸度の大きい強化繊維、具体的には各種芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維といった合成繊維を用いた繊維強化プラスチックとすることで得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下に、各種測定方法について説明する。
(ポリカーボネート樹脂のメルトフローレート)
ポリカーボネート樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に準じて、温度300℃、荷重1.2kgfの条件下で測定した。
(ポリカーボネート樹脂の分子量分布測定)
ポリカーボネート樹脂(紡糸前)、或いはポリカーボネート繊維または繊維強化プラスチックに含まれるポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)により、ポリスチレン換算分子量分布を算出した。測定には、検出器として示差屈折率(RI)検出器を備えるゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)を使用した。
具体的には、ポリカーボネート樹脂を含む試料(ペレット、繊維、または繊維強化プラスチック)をテトラヒドロフラン(THF)に対し、ポリカーボネート樹脂が0.1wt/vol%になるように秤量して加え、緩やかに攪拌して溶解した。次に、試料を溶解させた溶液から未溶解の試料(例えば、試料が繊維強化プラスチックであるときの強化繊維等)を除去するため、この溶液をフィルターでろ過して測定用試料溶液を得た。得られた測定用試料溶液を、前記ゲル浸透クロマトグラフ装置に対し、流速を1.0mL/分、注入量100μLの条件で注入して数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定した。
測定する際、カラムとして昭和電工株式会社製のShodex(登録商標) KF-G(1本)、KF-805L(2本)、KF-800D(1本)を使用し、カラム恒温槽の温度を40℃として測定した。
(単繊維強度および引張伸度)
JIS L 1015:2010に準じて、引張試験機を用いて、繊維切断時の荷重値および伸度を測定し、それぞれ単繊維強度および引張伸度とした。
(繊度および繊維長)
JIS L 1015:2010に準じて測定した。
(繊維処理剤の付着量)
繊維表面への繊維処理剤の付着量は、東海計器株式会社製のR-II型迅速残脂抽出装置を用い、迅速抽出法により測定した。まず、繊維処理剤の付着量を測定する繊維を約4g採取し、カード機にかけて繊維ウェブとし、得られた繊維ウェブの質量(Wf(g))を測定した。質量を測定した繊維ウェブを金属製の筒(内径16mm、長さ130mm、底部がすり鉢状で最底部には直径1mmの孔があるもの)に充填した後、上部よりメタノール10mLを投入した。繊維の表面に付着していた繊維処理剤が、投入したメタノールに溶解し、前記金属製の筒の底部の孔より滴下するので、底部の穴から滴下してくるメタノールを、アルミニウム製の皿に加熱しながら受け、メタノールを蒸発させた。このとき、滴下してくるメタノールを集めるアルミニウム製の皿は、きれいに洗浄した後、乾燥機で充分に乾燥させたものを使用するが、メタノールを受ける前に質量(アルミニウム製の皿のみの質量:W1(g))を測定しておいた。金属製の筒内のメタノールを全てアルミニウム製の皿に移し、メタノールを完全に蒸発させることで、アルミニウム製の皿には繊維より抽出した繊維処理剤が残る。繊維処理剤が残留しているアルミニウム製の皿の質量(W2(g))を測定し、繊維表面への繊維処理剤の付着量を、次の数式1から算出した。
[式中、
1は、アルミニウム製の皿の質量を示し、
2は、アルミニウム製の皿および繊維処理剤の合計質量を示し、
fは、試料として使用した繊維の質量を示す。]
(繊維体積含有率)
繊維体積含有率を測定する繊維強化プラスチックの試料を100mg秤量する。秤量した試料にジクロロメタン100mLを加え、室温(25℃)で2週間緩やかに攪拌し、これを45μmのフィルターで濾過し、残渣を充分なジクロロメタンで洗浄し乾燥した。次に、残渣を加圧して解し、再度ジクロロメタン100mLに加え、室温(25℃)で1週間緩やかに攪拌し、45μmのフィルターで濾過し、残渣を充分なジクロロメタンで洗浄し乾燥することでマトリックス樹脂を完全に除去し、強化繊維の質量を測定した。前記繊維強化プラスチック試料の質量を100%とし、強化繊維の質量含有率を得、次に各々の密度から体積換算し、繊維体積含有率を算出した。
(繊維強化プラスチックの曲げ強度)
JIS K 7074:1998(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)のA法(3点曲げによる曲げ試験方法)に準拠し、得られた繊維強化プラスチックから幅15mm、長さ100mm、厚さ2mmの試料を作製し、株式会社島津製作所製のオートグラフ(登録商標)AG-100kN ISを使用して、支点間距離を80mmとして試験速度5mm/minにて曲げ強度を測定した。
(繊維強化プラスチックの曲げ弾性率)
JIS K 7074:1998(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)のA法(3点曲げによる曲げ試験方法)に準拠し、得られた繊維強化プラスチックから幅15mm、長さ100mm、厚さ2mmの試料を作製し、株式会社島津製作所製のオートグラフ(登録商標)AG-100kN ISを使用して、支点間距離を80mmとして試験速度5mm/minにて曲げ弾性率を測定した。
(繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃強度)
JIS K 7111:2012に準拠し、厚さ2mm、長さ80mm、幅10mmの試験片(エッジワイズ、1号試験片、C切欠き)を用い、ひょう量5Jにて測定した。具体的には、上記試験片を60mm間隔の梁上へセットし、上部よりハンマーを振りおろし、下部の梁上へセットした上記試験片を破壊した。破壊する際の吸収エネルギーよりシャルピー衝撃強度を算出した。
強化繊維として、下記の繊維を用いた。強化繊維の物性を表1に示した。
(1)強化繊維1:パラ系芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「テクノーラ(登録商標)」、繊度1.7dtex、繊維長51mm、密度1.39g/cm3
(2)強化繊維2:パラ系芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「テクノーラ(登録商標)」、繊度1.7dtex、繊維長6mm、密度1.39g/cm3
(3)強化繊維3:パラ系芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「トワロン(登録商標)」、繊度1.7dtex、繊維長50mm、密度1.44g/cm3
(4)強化繊維4:パラ系芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「トワロン(登録商標)」、繊度1.7dtex、繊維長1mm、密度1.44g/cm3
(5)強化繊維5:炭素繊維、東邦テナックス株式会社製「HTC140X」、繊度0.7dtex、繊維長50mm、密度1.8g/cm3
(6)強化繊維6:市販されている再生炭素繊維。繊度0.38dtex、繊維長30~60mm、密度1.8g/cm3
(実施例1)
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ノバレックス(登録商標) 7020J」、以下において、単に「PC樹脂1」とも記す。)を用意した。該ポリカーボネート樹脂のMFRは63g/10分であり、紡糸前の数平均分子量(Mn)は13000であり、紡糸前の重量平均分子量(Mw)は28500であり、密度は1.2g/cm3であった。該ポリカーボネート樹脂を、紡糸ノズル(孔径0.6mm)を用い、紡糸温度を300℃として溶融押出し、延伸倍率(紡糸ドラフト)を360倍として、繊度7.8dtexの紡糸フィラメントを得た。
得られた紡糸フィラメントに対し、有効成分として、ドデシルリン酸エステルカリウム塩(ラウリルリン酸エステルカリウム塩)を35質量%、炭化水素基としてオクチル基を含むポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム(POEオクチルエーテルリン酸カリウム)65質量%含む繊維処理剤(以下、この繊維処理剤を繊維処理剤1と称す。)を用意し、繊維処理剤1の濃度が3質量%となるように水で希釈し、この希釈液に対し、前記紡糸フィラメントを浸漬し、繊維処理剤1の希釈溶液が含浸された紡糸フィラメントをクリンパロールに導入し、クリンパロールにて捲縮を付与すると同時に、余分な希釈溶液を絞り落とした。その後、100℃、15分の乾燥工程を経て繊維表面の水分を蒸発、乾燥させてからカッターにて繊維長51mmに切断して、実施例1の繊維を得た。乾燥した実施例1の繊維を用いて、前記の方法で、実施例1の繊維における繊維処理剤の付着量を測定したところ、ポリカーボネート繊維100質量部に対し、繊維処理剤が0.35質量部付着していた。
(実施例2)
繊維処理剤1の希釈溶液を含浸させて紡糸フィラメントに対し、クリンパロールを使用せず、表面がゴムで覆われている2本のロール間で挟むことで過剰な希釈溶液を絞り落とした後、乾燥させず、すなわち紡糸フィラメントが湿潤した状態で繊維長が5mmになるように切断して、実施例2の繊維を得た。
(実施例3)
原料となるポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社が販売するポリカーボネート樹脂(商品名「ユーピロン(登録商標) H4000」以下において、単に「PC樹脂2」とも記す。)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例3の繊維(繊維長5mm)を得た。なお、このポリカーボネート樹脂(「ユーピロン(登録商標) H4000」)は、紡糸前の数平均分子量(Mn)が12600、紡糸前の重量平均分子量(Mw)が29200、重量平均分子量と数平均分子量の比率(Mw/Mn)が2.3である。また、得られたポリカーボネート繊維を試料として測定した、紡糸後の数平均分子量(Mn)が12100、紡糸後の重量平均分子量(Mw)が28500、重量平均分子量と数平均分子量の比率(Mw/Mn)が2.4である。
(実施例4~6、比較例1~2)
前記繊維処理剤1の他、下記の表2に示す繊維処理剤を用意した。前記繊維処理剤1の代わりにこれらの繊維処理剤を用いて、繊維処理剤の有効成分濃度が3%となる繊維処理剤の希釈溶液を作製した。表3に示すように繊維処理剤1の希釈溶液の代わりに繊維処理剤2~6の希釈溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして、繊維(繊維長5mm)を作製した。
(実施例7)
原料となるポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社が販売するポリカーボネート樹脂(商品名「ユーピロン(登録商標) H4000」)を用意する。該ポリカーボネート樹脂と縮合リン酸エステルを、縮合リン酸エステル系難燃剤の配合量が12質量%となるよう混合した。前記縮合リン酸エステル系難燃剤は化学式が[(CH3)2C6H3O]2P(O)OC6H4OP(O)[OC6H3(CH3)2]2で表される芳香族縮合リン酸エステル(商品名PX-200、大八化学工業株式会社製)である。前記ポリカーボネート樹脂と前記縮合リン酸エステル系難燃剤の混合物を使用して溶融紡糸を行い、紡糸フィラメントの繊度を8.8dtexとしたこと以外は実施例4と同じ方法で溶融紡糸を行い、実施例7の繊維を得た。
(比較例3)
ナイロン樹脂(宇部興産株式会社製「UBEナイロン(登録商標)SF1018A」、数平均分子量18000、紡糸前の密度1.14g/cm3、以下において、単に「PA樹脂」とも記す。)を用い、紡糸温度を280℃とした以外は、実施例2と同様にし、繊維長が6mmの比較例3の繊維を得た。
(参考例1)
実施例3において、繊維処理剤を含浸させる前の紡糸フィラメントを、繊維長が5mmになるように切断して、参考例1の繊維とした。
得られた実施例1~7、比較例1~3、および参考例1の繊維について、繊度、繊維長、単繊維強度、引張伸度を上述したとおりに測定し、その結果等を以下の表3、表4に示した。
上記表3、表4の結果から分かるように、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む繊維処理剤が付着されている実施例1~7のポリカーボネート繊維は、単繊維強度が高く、繊維処理剤が付着されていない参考例1のポリカーボネート繊維の単繊維強度とほぼ同等であり、いずれも1.0cN/dtexを超えていた。一方、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%未満含む繊維処理剤が付着されている比較例1および2は、単繊維強度が0.83cN/dtex以下であり、低かった。
(実施例8)
<繊維強化プラスチック用シートの作製>
上記で得られた実施例1のポリカーボネート繊維と強化繊維1を、下記表5に示す含有量になるように混合して、パラレルカード機を用いて、目付100g/m2のカードウェブを得た。得られた繊維ウェブをニードルパンチ処理に付し繊維同士を交絡させた。ニードルパンチ処理は、40番手の針(バーブの数:9個)を用いて、針深度を10mmとし、ペネ数が120本/cm2となる条件でニードルパンチ処理を実施し、繊維強化プラスチック用シートを得た。
<繊維強化プラスチック用積層体の作製>
上記で得られた繊維強化プラスチック用シート(不織布)を、不織布製造方向の長手方向と、不織布製造方向の長手方向に対して垂直になる方向が、それぞれ交互になるように24枚積層して繊維強化プラスチック用積層体を得た。
<繊維強化プラスチックの作製>
上記で得られた繊維強化プラスチック用積層体を、予め離型処理を施したステンレス製凹型の下金型へセットし、同じく予め離型処理を施したステンレス製凸型の上金型を降下させ、圧力5MPa、温度280℃で3分間保持し、マトリックス樹脂となるポリカーボネート繊維を溶融させた。次いで、金型内へ冷却水を通し金型を冷却開始すると同時に、圧力15MPaで加圧し、金型温度が100℃まで降下した段階で成型品を取り出すことで、約2mm厚の繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例9)
<繊維強化プラスチック用シートの作製>
上記で得られた実施例2のポリカーボネート繊維と強化繊維2を、下記表5に示す含有量になるように混合して、湿式抄紙法により、目付200g/m2の繊維ウェブを得た。この繊維ウェブに、145℃に設定したヤンキードライヤー(圧力2MPa)を用いて加熱加圧処理を1分間行い、熱接着不織布を得た。
<繊維強化プラスチック用積層体の作製>
上記の湿式抄紙法で得られた不織布(繊維強化プラスチック用シート)を、不織布製造方向の長手方向と、不織布製造方向の長手方向に対して垂直になる方向が、それぞれ交互になるように12枚積層して繊維強化プラスチック用積層体を得た。
<繊維強化プラスチックの作製>
上記で得られた繊維強化プラスチック用積層体を用い、実施例8の場合と同様の手順で、約2mm厚の繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例10)
実施例2のポリカーボネート繊維および強化繊維2の含有量を表1に示したとおりにした以外は、実施例9と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例11)
繊維強化プラスチックの作製において、冷却時の加圧を20MPaにした以外は、実施例9と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例12)
強化繊維1に代えて強化繊維3を用いた以外は、実施例8と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例13)
実施例2のポリカーボネート繊維に代えて実施例3のポリカーボネート繊維を用いた以外は、実施例9と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例14)
強化繊維1に代えて強化繊維5を用いた以外は、実施例8と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(実施例15)
上記で得られた実施例7のポリカーボネート繊維と強化繊維6を、下記表5に示す含有量になるように混合して、パラレルカード機を用いて、目付300g/m2のカードウェブを得た。得られた繊維ウェブをニードルパンチ処理に付し繊維同士を交絡させて繊維強化プラスチック用シートを得た。
上記で得られた繊維強化プラスチック用シート(不織布)を、不織布製造方向の長手方向と、不織布製造方向の長手方向に対して垂直になる方向が、それぞれ交互になるように6枚積層して繊維強化プラスチック用積層体を得た。
<難燃性繊維強化プラスチックの作製>
上記で得られた繊維強化プラスチック用積層体を、予め離型処理を施したステンレス製凹型の下金型へセットし、同じく予め離型処理を施したステンレス製凸型の上金型を降下させ、圧力20MPa、温度270℃で3分間保持し、マトリックス樹脂となるポリカーボネート繊維を溶融させた。次いで、金型内へ冷却水を通し金型を冷却開始すると同時に、圧力15MPaで加圧し、金型温度が100℃まで降下した段階で成形品を取り出すことで、約2mm厚の繊維強化プラスチックを作製した。
(比較例4)
強化繊維は用いず、実施例1のポリカーボネート繊維のみを用いた以外は、実施例9と同様にして、繊維シート、積層体および成形体を作製した。
(比較例5)
実施例2のポリカーボネート繊維に代えて比較例3の繊維を用いた以外は、実施例9と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
(比較例6)
実施例2のポリカーボネート繊維に代えて比較例1の繊維を用いた以外は、実施例9と同様にして、繊維強化プラスチック用シート、繊維強化プラスチック用積層体および繊維強化プラスチックを作製した。
実施例8~15、比較例4~6の繊維強化プラスチック用シートの諸物性、および得られた繊維強化プラスチックを用いて測定した、強化繊維の体積含有率(Vf)、曲げ強度、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度等の測定結果を下記表5および表6に示した。
<難燃性の評価>
実施例15の繊維強化プラスチックに対し、以下の方法で燃焼試験を行い、その難燃性を確認した。
実施例15で得られた繊維強化プラスチック(厚さ2mm)を縦×横が125mm×13mmとなるように裁断し、繊維強化プラスチック片の縦方向が垂直方向となるように保持した。このとき、鉛直方向に垂らしている繊維強化プラスチック片の先端から鉛直方向に30cmとなる位置に脱脂綿を広げて載置し、燃焼試験時に溶融した樹脂のドリップがあれば着火するようにした。そして、繊維強化プラスチック片の先端(即ち、保持されている先端とは逆の先端)に、ガスバーナーの火炎を10秒間接触させ、繊維強化プラスチック片がどのように燃焼するか確認した。
実施例15の繊維強化プラスチック片は、ガスバーナーの火炎を接触させたことで赤熱状態となっているものの、所定時間経過後、ガスバーナーの炎を試料から遠ざけると直ちに赤熱状態が消え、煙も発生しなかった。また、ガスバーナーの炎が接触している時や、ガスバーナーの炎を遠ざけた後に溶融樹脂が発生することがなかったため、脱脂綿への着火は発生しなかった。この結果から、実施例15の繊維強化プラスチックは、難燃剤を12質量%配合したポリカーボネート樹脂をマトリックス樹脂とすることで、十分な機械的強度を有し、かつ高い難燃性も有する繊維強化プラスチックとなっていることが確認できた。
実施例のポリカーボネート繊維と、引張伸度が2%以上であり、かつ繊維長が2mm以上150mm以下の強化繊維を含む繊維強化プラスチック用シートを用いた実施例8~13の繊維強化プラスチックは、シャルピー衝撃強度が45kJ/m2以上であり、機械的強度に優れていた。なお、実施例9および11において、繊維強化プラスチック用シート中の強化繊維の含有量は同じであるが、繊維強化プラスチックの強化繊維の体積含有率が異なるのは、実施例11の方が冷却時の加圧が高く、溶融した熱可塑樹脂繊維(マトリックス樹脂)がより多く系外に流れたためである。
一方、強化繊維を含まない繊維シートを用いた比較例4で得られた成形体は、シャルピー衝撃強度が10kJ/m2未満であり、機械的強度が劣っていた。
実施例9の成形体と比較例6の成形体を比較すると、使用した強化繊維の種類とその割合、成形体にする際の加熱温度、樹脂溶融時の加圧等が同一条件であるが、実施例9の成形体のシャルピー強度は69.5kJ/m2であるのに対し、比較例6の成形体のシャルピー強度は約半分の34.5kJ/m2となっている。実施例9の成形体で使用したポリカーボネート繊維と、比較例6で使用したポリカーボネート繊維を比較すると、実施例9の成形体で使用したポリカーボネート繊維(実施例2)は、繊維表面に付着している繊維処理剤が、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含んでいるのに対し、比較例6の成形体で使用したポリカーボネート繊維(比較例1)は、繊維表面に付着している繊維処理剤が、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を含んでおらず、繊維処理剤の違いによって、ポリカーボネート繊維を構成するポリカーボネート樹脂の劣化の度合が異なり、得られた成形体のシャルピー強度にも差が出たと考えられる。
実際のところ、上述した表3、表4に示されているように、実施例2のポリカーボネート繊維と比較例1のポリカーボネート繊維を比較すると、実施例2の繊維は単繊維強度が1.23cN/dtexであるのに対し、比較例1の繊維は単繊維強度が0.83cN/dtexであった。
実施例13の繊維強化プラスチックと実施例14の繊維強化プラスチックを比較すると、より単繊維強度が大きい繊維、具体的には、高強度の炭素繊維を使用して強化した繊維強化プラスチック(実施例14)は、炭素繊維よりも単繊維強度が小さいアラミド繊維を使用して強化した繊維強化プラスチック(実施例13)よりも曲げ強度、曲げ弾性率が大きくなっていた。この結果から、高強度、低伸度の繊維を使用することで、得られる繊維強化プラスチックは剛性が高く、機械的強度がより大きいものとなることが分かる。一方、より単繊維伸度が大きい繊維、具体的には、高強度で単繊維伸度が2%以上であるアラミド繊維を使用して強化した繊維強化プラスチック(実施例13)は、低伸度の炭素繊維を使用した繊維強化プラスチックと比較して、シャルピー衝撃強度がより大きいものとなっている。この結果から、高強度で、比較的伸度を残している繊維(具体的には単繊維伸度が2%以上)の繊維を使用することで、得られる繊維強化プラスチックは衝撃に対する粘り(耐衝撃性)が大きく、破壊靭性の大きいものとなることが分かる。
本発明のポリカーボネート繊維は、特定の成分を含む繊維処理剤を使用して仕上げることで、紡糸、延伸工程、および必要に応じて所定の繊維長に切断することで完成品となったポリカーボネート繊維が一定期間保管状態に置かれても、比較的耐薬品性の低いポリカーボネート樹脂の劣化が進行しにくくなり、製造時の単繊維強度が維持できる。そのため、ポリカーボネート繊維を用いた繊維シート、特にカード法にて繊維シートにする乾式不織布では、カード通過性が良好であり、乾式不織布の生産性が向上する。ポリカーボネート樹脂の劣化が進行していない、或いは劣化がわずかであることから、本発明のポリカーボネート繊維は様々な繊維製品、例えば、各種フィルター用ろ材(一例として換気扇フィルター、空気調和機、空気清浄機など気体を通過させるフィルターのろ材、水などの液体を通過させるフィルターのろ材が挙げられる)や絶縁性の繊維シートに使用することができる。
本発明のポリカーボネート繊維は、繊維に含まれるポリカーボネート樹脂の流動性が良好であること、および保管期間中に繊維処理剤に起因するポリカーボネート樹脂の劣化が進みにくい、或いは劣化がわずかであることから、本発明のポリカーボネート繊維と各種強化繊維を混綿した繊維シート、およびそれを加熱成形することで得られる繊維強化プラスチック成形体とすることが好ましい。本発明のポリカーボネート繊維であれば、ポリカーボネート樹脂の劣化が進んでいないため、繊維強化プラスチックとした際、高い耐衝撃性を有するものとなる。
また、本発明のポリカーボネート繊維は、好ましくは縮合リン酸エステルを難燃剤として使用することで、ポリカーボネート樹脂の機械的特性を維持したまま、高い難燃性を付与できる。このようなポリカーボネート繊維、およびそれを用いて得られる繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックを用いた各種部材、特に、高い機械的特性と、高い難燃性が求められる各種車両の構造部品や航空機の構造部品、軽量化、小型化が求められる各種電気機器、各種電子機器用の筐体や補強材といった用途に好ましく用いられる。

Claims (18)

  1. ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むポリカーボネート繊維であり、
    前記ポリカーボネート繊維の表面には、前記ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤が付着しており、
    前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含み、
    前記アルキルリン酸エステル塩は、下記一般式(1)~(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩は、下記一般式(3)~(4)からなる群から選ばれる少なくともアニオン系界面活性剤であることを特徴とする、ポリカーボネート繊維。
    Figure 0007441484000012
    Figure 0007441484000013
    前記一般式(1)において、Rは炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 1 、X 2 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 1 、X 2 のうち、少なくとも一方は水素ではない。前記一般式(2)において、R 1 、R 2 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 3 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。
    Figure 0007441484000014
    Figure 0007441484000015
    前記一般式(3)において、R 3 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 4 、X 5 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 4 、X 5 のうち少なくとも一方は水素ではない。kは重量平均で0.5~20の数を示す。前記一般式(4)において、R 4 、R 5 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 6 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示し、m、nはそれぞれ重量平均で0.5~20の数を示す。
  2. 前記繊維処理剤は、一般式(1)で表されるアルキルリン酸エステル塩および一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含む、請求項1に記載のポリカーボネート繊維。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂は、数平均分子量が9000以上16000以下であり、かつ重量平均分子量が22000以上32000以下である、請求項1または2に記載のポリカーボネート繊維。
  4. 単繊維繊度が1dtex以上20dtex以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維。
  5. 単繊維強度が0.85cN/dtex以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維。
  6. 前記ポリカーボネート繊維が難燃剤を含み、前記難燃剤はポリカーボネート繊維中に5質量%以上30質量%以下の割合で含まれている請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維。
  7. 繊維強化プラスチックに用いる、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維の製造方法であって、
    紡糸前の数平均分子量(Mn)が9000以上16000以下であり、紡糸前の重量平均分子量(Mw)が22000以上36000以下であるポリカーボネート樹脂、または、前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む混合物を用意する工程、
    前記ポリカーボネート樹脂、または、前記ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む混合物を250℃以上350℃以下の温度で溶融紡糸し、紡糸フィラメントとする工程、および
    前記紡糸フィラメントの繊維表面に対し、ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤を付着させる工程を含み、
    前記繊維処理剤が、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含むことを特徴とする、ポリカーボネート繊維の製造方法。
  9. 前記混合物がポリカーボネート樹脂に加え、縮合リン酸エステルを含み、
    前記縮合リン酸エステルが前記混合物中に5質量%以上30質量%以下含まれている、請求項に記載のポリカーボネート繊維の製造方法。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維と、強化繊維を含む繊維強化プラスチック用シートであり、
    前記繊維強化プラスチック用シートは、繊維強化プラスチック用シートの質量を100質量%としたときに、強化繊維23.5~80質量%と、ポリカーボネート繊維を20~76.5質量%含むことを特徴とする、繊維強化プラスチック用シート。
  11. 前記強化繊維は繊維長が2mm以上150mm以下である、請求項10に記載の繊維強化プラスチック用シート。
  12. 前記強化繊維が炭素繊維および芳香族ポリアミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10または11に記載の繊維強化プラスチック用シート。
  13. 強化繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化プラスチックであり、
    前記繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含み、前記強化繊維の繊維長は、2mm以上であり、
    前記マトリックス樹脂は、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート繊維が溶融したものであり、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むことを特徴とする、繊維強化プラスチック。
  14. 強化繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化プラスチックであり、
    前記繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含み、
    前記マトリックス樹脂は、ポリカーボネート繊維が溶融したものであり、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含み、
    前記ポリカーボネート繊維は、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むポリカーボネート繊維であり、
    前記ポリカーボネート繊維の表面には、前記ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.15質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤が付着しており、
    前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含み、
    前記アルキルリン酸エステル塩は、下記一般式(1)~(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩は、下記一般式(3)~(4)からなる群から選ばれる少なくともアニオン系界面活性剤であることを特徴とする、繊維強化プラスチック
    Figure 0007441484000016
    Figure 0007441484000017
    前記一般式(1)において、Rは炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 1 、X 2 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 1 、X 2 のうち、少なくとも一方は水素ではない。前記一般式(2)において、R 1 、R 2 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 3 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。
    Figure 0007441484000018
    Figure 0007441484000019
    前記一般式(3)において、R 3 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 4 、X 5 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 4 、X 5 のうち少なくとも一方は水素ではない。kは重量平均で0.5~20の数を示す。前記一般式(4)において、R 4 、R 5 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 6 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示し、m、nはそれぞれ重量平均で0.5~20の数を示す。
  15. 強化繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化プラスチックであり、
    前記繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含み、
    前記マトリックス樹脂は、ポリカーボネート繊維が溶融したものであり、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含み、
    前記ポリカーボネート繊維は、ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むポリカーボネート繊維であり、
    前記ポリカーボネート繊維に含まれるポリカーボネート樹脂は、数平均分子量が9000以上16000以下であり、かつ重量平均分子量が22000以上32000以下であり、
    前記ポリカーボネート繊維の表面には、前記ポリカーボネート繊維100質量部あたり0.05質量部以上3質量部以下の割合で繊維処理剤が付着しており、
    前記繊維処理剤は、アルキルリン酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩からなる群から選ばれる一種以上のアニオン系界面活性剤を70質量%以上含み、
    前記アルキルリン酸エステル塩は、下記一般式(1)~(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩は、下記一般式(3)~(4)からなる群から選ばれる少なくともアニオン系界面活性剤であることを特徴とする、繊維強化プラスチック
    Figure 0007441484000020
    Figure 0007441484000021
    前記一般式(1)において、Rは炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 1 、X 2 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 1 、X 2 のうち、少なくとも一方は水素ではない。前記一般式(2)において、R 1 、R 2 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 3 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。
    Figure 0007441484000022
    Figure 0007441484000023
    前記一般式(3)において、R 3 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 4 、X 5 は同一または異なって、水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示す。ただし、X 4 、X 5 のうち少なくとも一方は水素ではない。kは重量平均で0.5~20の数を示す。前記一般式(4)において、R 4 、R 5 は炭素数8以上18以下のアルキル基を示し、X 6 は水素原子または一価のカチオンとなりえる原子、もしくは一価のカチオンとなりえる原子団を示し、m、nはそれぞれ重量平均で0.5~20の数を示す。
  16. 前記マトリックス樹脂に含まれるポリカーボネート樹脂は、数平均分子量が8000以上15000以下であり、重量平均分子量が20000以上30000以下である、請求項13~15のいずれかに記載の繊維強化プラスチック。
  17. 前記強化繊維が炭素繊維および芳香族ポリアミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項13~16のいずれかに記載の繊維強化プラスチック。
  18. 強化繊維とマトリックス樹脂を含む繊維強化プラスチックの製造方法であり、
    請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート繊維と強化繊維を含む繊維強化プラスチック用シートを用意すること、および
    前記繊維強化プラスチック用シートに含まれるポリカーボネート繊維を溶融して強化繊維間に含浸させることを含み、
    前記マトリックス樹脂は前記ポリカーボネート繊維を溶融したもの由来のポリカーボネート樹脂を50質量%以上含み、
    前記繊維強化プラスチックは、前記繊維強化プラスチックの体積を100体積%としたときに、前記強化繊維を22体積%以上75体積%以下の割合で含む、繊維強化プラスチックの製造方法。
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