JPWO2002036295A1 - ワイヤ放電加工方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

ワイヤ電極(1)による加工経路におけるコーナ部入口から第1の所定距離(Lpre)前(点A)から放電エネルギを漸次低減させながら加工を行う第1の工程と、コーナ部入口(点B)においてワイヤ電極(1)及び被加工物(2)の相対移動を停止させる第2の工程と、前記相対移動の停止を所定の判断基準により解除する第3の工程と、点Bからコーナ部通過(点C)位置から第2の所定距離(L)通過(点D)まで、前記放電エネルギを、コーナ形状により決定される第1の条件と要求仕様により決定される第2の条件の中の少なくともどちらかに応じた所定の低減割合にて、点Aの放電エネルギに対して低減した状態で加工を行う第4の工程と、点Dから第3の所定距離(Lpost)通過(点E)まで前記放電エネルギを漸次増大させながら加工を行う第5の工程からなる。コーナ部の加工において、加工形状精度及び加工生産性の向上を両立することができる。

Description

技術分野
この発明は、ワイヤ電極と被加工物との極間に加工電力を供給し放電により被加工物の加工を行うワイヤ放電加工方法及び装置の改良に関し、特にコーナ部の加工における加工形状精度及び生産性の向上に関するものである。
背景技術
第10図は、従来のワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、図において、1はワイヤ電極、2は被加工物、3はワイヤボビン、4は加工液、5a及び5bはワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液4を供給する加工液供給手段である加工液ノズル、6はキャプスタンローラ、7はピンチローラ、8は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、9は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、10はXテーブル8を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、11はYテーブル9を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、12は加工電力供給手段、13は極間電圧検出手段、14は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ6及びピンチローラ7によりワイヤ電極1を挟持して牽引しワイヤ電極1を走行させ、ワイヤ電極1と被加工物2を対向させ、加工液ノズル5a及び5bによりワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液4を供給しながら、前記極間に加工電力供給手段12により放電エネルギである加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル8及びYテーブル9等によりワイヤ電極1と被加工物2とを相対移動させて被加工物2を所定の輪郭形状に加工する。前記位置決め手段によるワイヤ電極1と被加工物2との相対位置決め制御及び電気加工条件の制御等は制御手段14により統括される。
第11図は、従来のワイヤ放電加工装置によるコーナ部の加工例を示す説明図であり、図において、1はワイヤ電極、2は被加工物、15aは外側コーナ、15bは内側コーナ、A乃至Eの経路はワイヤ電極1による被加工物2の加工経路を示している。
第11図の(a)はエッジ状コーナ部を加工する場合を、第11図の(b)は円弧状コーナ部を加工する場合を示している。
例えば第11図の(a)に示すように、ワイヤ電極1を経路A→C→Eと進行させて被加工物2のエッジ状コーナ部を加工する場合、外側コーナ部15a及び内側コーナ部15bに、実線で示すような丸みを帯びただれが生じることが知られている。この原因としてはワイヤ電極1の剛性が低いことが挙げられる。即ち、これはワイヤ電極1と被加工物2間に生じる放電反力によって、ワイヤ電極1に撓みが生じ、ワイヤ電極1の実際の加工経路はA→B→D→Eとなり、外側コーナ部15aにおいては余分に加工され、内側コーナ部15bにおいては加工残りが生じてしまうためである。また、このだれの大きさは放電反力が大きくなる程、即ち加工速度が速くなる程大きくなり、通常の荒加工では数10μm〜数100μm程度になる。
また、第11図の(b)の円弧状コーナ部を加工する場合においても、同様の理由により、ワイヤ電極1を経路A→B→F→D→Eと進行させて加工する場合のワイヤ電極1の実際の加工経路はA→B→G→D→Eとなり、第11図の(a)と同様に外側コーナ部15a及び内側コーナ部15bにおいてだれが生じる。
以上のように、コーナ部の加工においては、エッジ状コーナ部及び円弧状コーナ部にだれが生じ、加工形状精度が低下するという問題点があった。
このようなコーナ部の加工における被加工物のコーナ部のだれを防止する技術として、日本国特許第2571077号公報、日本国特開平8−39356号公報及び日本国特開2000−84743号公報等が開示されている。これらの従来技術は、コーナ部の前後でワイヤ電極の被加工物に対する相対移動速度、電気加工条件等を変更してコーナ部の加工中にワイヤ電極の撓みを少なくすることにより、コーナ部分の加工精度を向上させるものである。
しかし、これらの従来技術においては、コーナ部の加工時にワイヤ電極の撓みを少なくするために直線加工時よりも放電エネルギを大幅に減少させてコーナ部の加工を行っており、加工速度の大幅な低下を伴うものである。このような加工速度の大幅な低下は、ワイヤ放電加工装置に求められる性能として加工精度と共に加工生産性が重要視される昨今の状況を鑑みれば、致命的な問題であると言える。
さらに、ワイヤ放電加工の断線防止電源制御やワイヤ電極線の改良に伴い、ワイヤ放電加工の加工速度は、例えば最大加工速度で200〜250mm/min乃至350〜400mm/min程度まで急速に向上し、即ちワイヤ電極と被加工物との極間に投入される放電エネルギが増加している。従って、放電反力の増大により加工中のワイヤ電極の撓みがより大きくなってきている。このような最近の状況下では、従来技術を用いてコーナ部の加工における所望の精度を維持しようとする場合には、コーナ部での速度低下の割合が大きくなり、投入される放電エネルギの増大にもかかわらず、結果として高速化の効果が相殺されてしまうという問題点があった。
以上のように、被加工物のコーナ部の加工におけるコーナ部の加工形状精度の向上と共に、このコーナ部における加工時間の増大を最小限に抑えることにより加工生産性の向上を実現することが非常に重要である。
コーナ部における加工時間の増大を抑えるための方法として、加工経路を補正する方法が知られているが、このような方法ではワイヤ電極が撓んだ状態のままコーナ部が加工されるので、被加工物の上面から中段面、さらに下面までの全てにわたってコーナ部の形状精度を改善することは不可能であった。従って、コーナ部の加工形状精度を被加工物の上面から中段面、さらに下面までの全てにわたって向上させるためには、ワイヤ電極の撓みを極力少なくするようにし、即ち放電エネルギをコーナ部で極力減少させ、極力遅い速度でコーナ部の加工を行う方法しかないと考えられており、従来技術では、被加工物のコーナ部の加工における加工形状精度及び加工生産性の向上を両立することができないという問題点があった。
発明の開示
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、コーナ部の加工において、加工形状精度及び加工生産性の向上を両立することができるワイヤ放電加工方法及び装置を得ることを目的とする。
この発明に係るワイヤ放電加工方法は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、前記ワイヤ電極による加工経路のコーナ部入口から第1の所定距離前から前記放電エネルギを漸次低減させながら加工を行う第1の工程と、前記コーナ部入口において前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動を停止させる第2の工程と、前記相対移動の停止を所定の判断基準により解除する第3の工程と、前記ワイヤ電極による加工経路の前記コーナ部及びこのコーナ部通過後から第2の所定距離通過まで、前記放電エネルギを、前記コーナ部の半径及び角度の大きさ等のコーナ形状により決定される第1の条件と所望の加工形状精度等要求仕様により決定される第2の条件の中の少なくともどちらかに応じた所定の低減割合にて、前記コーナ部入口から第1の所定距離前の放電エネルギに対して低減した状態で加工を行う第4の工程と、前記ワイヤ電極による加工経路の前記第2の所定距離通過後から第3の所定距離通過まで前記放電エネルギを漸次増大させながら加工を行う第5の工程からなるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第1の工程及び第5の工程の少なくともどちらかにおける加工において、前記放電エネルギの時間変化率を略一定とするものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第1の工程及び第5の工程の少なくともどちらかにおける加工において、パルス休止時間又は平均極間電圧を距離の2次式の関数となるように変化させるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第3の工程における所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が所定の基準値以上になるかであるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第3の工程における所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるか、又は、平均極間電圧が所定の基準値以上になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるかであるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記基準値として前記コーナ部の内側コーナ部及び外側コーナ部に対応した別々の基準値を持ち、前記第3の工程における所定の判断基準に用いる基準値として製品側となるコーナ側の基準値を用いるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第2の所定距離を前記コーナ部の通過点から前記ワイヤ電極全体が方向変換後の加工溝内に完全に入る点までの距離又はこの距離に準ずる距離とするものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工方法は、前記第2の工程乃至第4の工程において、前記コーナ部加工前(例えば前記第1の工程)における設定値よりも、ワイヤテンションの設定値を上げること及び加工液噴流の圧力又は流量の設定値を下げること、の少なくともどちらかを行うものである。
この発明に係るワイヤ放電加工装置は、加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、加工液供給手段により前記極間に加工液を供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、前記ワイヤ電極による加工経路のコーナ部入口から第1の所定距離前から前記放電エネルギを漸次低減させるように前記加工電力供給手段を制御し、前記コーナ部入口において前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動を停止させ、この相対移動の停止を所定の判断基準により解除して前記相対移動を再開するように前記位置決め手段を制御し、前記ワイヤ電極による加工経路の前記コーナ部及びこのコーナ部通過後から第2の所定距離通過まで、前記放電エネルギを、前記コーナ部の半径及び角度の大きさ等のコーナ形状により決定される第1の条件と所望の加工形状精度等要求仕様により決定される第2の条件の中の少なくともどちらかに応じた所定の低減割合にて、前記コーナ部入口から第1の所定距離前の放電エネルギに対して低減するように前記加工電力供給手段を制御し、前記ワイヤ電極による加工経路の前記第2の所定距離通過後から第3の所定距離通過まで前記放電エネルギを漸次増大させるように前記加工電力供給手段を制御する制御手段を備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記放電エネルギの制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、パルス休止時間又は平均極間電圧を制御するものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記放電エネルギを漸次低減又は増大する制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、前記放電エネルギの時間変化率を略一定とするものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記放電エネルギを漸次低減又は増大する制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、前記パルス休止時間又は平均極間電圧を距離の2次式の関数となるように変化させるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が所定の基準値以上になるかであるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるか、又は、平均極間電圧が所定の基準値以上になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるかであるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記基準値として前記コーナ部の内側コーナ部及び外側コーナ部に対応した別々の基準値を持ち、前記所定の判断基準に用いる基準値として製品側となるコーナ側の基準値を用いるものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記第2の所定距離を前記コーナ部の通過点から前記ワイヤ電極全体が方向変換後の加工溝内に完全に入る点までの距離又はこの距離に準ずる距離とするものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記コーナ部入口における前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動の停止から、前記コーナ部通過後から第2の所定距離通過までの加工の間、前記コーナ部加工前における設定値よりも、ワイヤテンションの設定値を上げること及び加工液噴流の圧力又は流量の設定値を下げること、の少なくともどちらかの制御を前記制御手段により行うものである。
発明を実施するための最良の形態
実施の形態1.
第1図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、図において、1はワイヤ電極、2は被加工物、3はワイヤボビン、4は加工液、5a及び5bはワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液4を供給する加工液供給手段である加工液ノズル、6はキャプスタンローラ、7はピンチローラ、8は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、9は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、10はXテーブル8を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、11はYテーブル9を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、12は加工電力供給手段、13は極間電圧検出手段、16は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ6及びピンチローラ7によりワイヤ電極1を挟持して牽引しワイヤ電極1を走行させ、通常直径0.05mmから0.3mm程度のワイヤ電極1と被加工物2を対向させ、加工液ノズル5a及び5bによりワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液4を供給しながら、前記極間に加工電力供給手段12により放電エネルギである加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル8及びYテーブル9等によりワイヤ電極1と被加工物2とを相対移動させて被加工物2を所定の輪郭形状に加工する。前記位置決め手段によるワイヤ電極1と被加工物2との相対位置決め制御及び電気加工条件の制御等は制御手段16により統括される。
以下において、この発明に係るワイヤ放電加工装置により被加工物2のコーナ部の加工を行う場合について説明する。
ワイヤ電極1の被加工物2に対する相対移動経路が例えば円弧状コーナ部を有する場合において、使用するワイヤ電極1の直径及び種類、被加工物の材質及び板厚、パルス休止時間、ワイヤテンション(直線加工におけるもの)等の加工条件を設定すると共に、コーナ部の加工のために設定する必要のあるコーナ制御用パラメータを設定し、制御手段16内の記憶手段に記憶させる。このコーナ制御用パラメータは、例えば以下に示すものである。即ち、コーナ制御前区間距離(Lpre)、コーナ部入口でのパルス休止時間(OFFpre)、コーナ部入口での平均極間電圧(VGpre)、コーナ部加工中のパルス休止時間(OFFcorner)、コーナ部加工中の平均極間電圧(VGcorner)、コーナ制御後区間距離(Lpost)である。
第2図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工方法を示す説明図であり、第2図の(a)は円弧状コーナ部の加工工程の説明図、第2図の(b)はパルス休止時間を制御して円弧状コーナ部を加工する場合の加工制御の説明図、第2図の(c)は平均極間電圧を制御して円弧状コーナ部を加工する場合の加工制御の説明図である。また、図中のOFF、VG、E及びvはそれぞれパルス休止時間、平均極間電圧、放電エネルギ及びワイヤ電極の被加工物に対する相対移動速度であり、Lpre、OFFpre、VGpre、OFFcorner、VGcorner及びLpostは前記コーナ制御用パラメータ、OFFiniはコーナ部入口からコーナ制御前区間距離Lpre前の位置(点A)における電気加工条件でのパルス休止時間、VGiniは点Aにおける電気加工条件での平均極間電圧、Rは加工経路が描くコーナ部の半径、Pは加工液噴流の圧力又は流量、Tはワイヤテンションである。
第2図の(a)において、A乃至Eの経路はワイヤ電極1による加工経路を示している。この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工方法では、まず、ワイヤ電極1が円弧状コーナ部の入口Bからコーナ制御前区間距離(Lpre)離れた点である点Aに到達した時から、円弧状コーナ部入口Bに到達するまで、パルス休止時間OFF又は平均極間電圧VGを、例えば距離の2次式の関数となるような次式(1)又は(2)に従って変化させる。
OFF=OFFini+{(OFFpre−OFFini)/Lpre}・{(Lpre−S1)}                    (1)
VG=VGini+{(VGpre−VGini)/Lpre}・{(Lpre−S1)}                        (2)
ここで、S1はコーナ部入口Bまでの残距離である。
第3図は第2図(a)のLpre(点Aから点B)における放電エネルギEの変化を示す説明図であり、図において、Einiはコーナ部入口からコーナ制御前区間距離Lpre前の位置(点A)における電気加工条件での放電エネルギ、Epreはコーナ部入口(点B)での放電エネルギ、l(実線)は放電エネルギの時間変化率を一定とする線、l(破線)は例えば日本国特開平8−39356号公報に開示された距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合の放電エネルギの時間変化を示す曲線、l(一点鎖線)はこの発明の実施の形態1に係る前記式(1)又は(2)に従ってパルス休止時間等を制御する場合の放電エネルギの時間変化を示す曲線である。放電エネルギと加工速度は比例関係にあることから、点AからBまでの所要時間は、lの場合はtとなり、lの場合tとなる。
この発明の実施の形態1に係る前記式(1)又は(2)に従ってパルス休止時間等を制御する場合の放電エネルギの時間変化l(一点鎖線)は略時間変化率が一定となっており、距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合の放電エネルギの時間変化l(破線)に比べて、点AからBまでの所要時間を短縮することができ、より短時間で適切にパルス休止時間又は平均極間電圧をコーナ部入口までに変化させワイヤ電極の撓みを効果的に減少させることができる。
また、第3図のlのように放電エネルギの時間変化率が略一定である場合と、lのように距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合を比較すると、第3図の例えば点A通過後の時間tにおいて、距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合のlの方が放電エネルギの変化率が大きい。従って、距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合は、例えば第4図の(a)及び(b)に示すように、放電反力がFからFに急激に小さくなり、ワイヤ電極1の撓みが急に小さくなるために短絡が発生しやすくなる。
以上のように、放電エネルギの時間変化率が略一定である場合であるlの方が、距離の1次式に従ってパルス休止時間等を制御する場合であるlに比べ、点AからBまでの所要時間を短縮することができると共に、加工安定性を向上することができ、Lpre(点Aから点B)において加工形状精度を向上することができる。
次に、第2図の(a)の点B(円弧状コーナ部入口)まで到達したならば、第2図の(b)又は(c)に示すように、パルス休止時間OFF又は平均極間電圧VGをコーナ部入口でのパルス休止時間OFFpre又はコーナ部入口での平均極間電圧VGpreに維持すると共にワイヤ電極1の被加工物2に対する相対移動速度を零にする。また、前記相対移動速度を零にすると共に、ワイヤテンションTをコーナ部加工前の設定加工条件のワイヤテンション以上にし、加工液噴流の圧力又は流量Pをコーナ部加工前の設定加工条件の加工液噴流の圧力又は流量以下にする。
前記Lpreの区間(点Aから点B)を加工中に次第に放電エネルギを小さくしてき、入口Bまでにワイヤ電極1の撓みを十分に取るが、この区間が短すぎる場合には、十分に放電エネルギが減少していたとしてもコーナ部入口(第2図の点B)に到達した時点においてワイヤ電極1の撓みが取りきれずに残ったままであり、前記相対移動速度を零に維持している時間を長くする必要が生じる。あるいは、反対に急激に放電エネルギが減少することによりワイヤ電極1の撓みが急激に取れ、被加工物2と接触して短絡が発生する。また、前記相対移動速度を零に維持している時間が長くなることは、加工中のワイヤ電極1と被加工物2との極間間隙が常に等しい定常状態であっても、ワイヤ電極1の振動により被加工物2の中段部では特に過大加工が発生しまう可能性が高くなり、例えば内側コーナ部ではえぐれを生じてしまう可能性が大きくなるので好ましくない。従ってコーナ部入口までにワイヤ電極の撓みを十分に取っておく必要があり、そのためにLpreには直線加工中のワイヤ電極1の撓み量よりも十分に大きな距離が設定されている。
OFFpre又はVGpreの設定値によってコーナ部入口での放電エネルギが決定されるが、コーナ部入口で十分に放電エネルギが小さくなっていない場合には、前記相対移動速度を零にすることによる急激なワイヤ電極1の停止により被加工物2の加工面に縦筋が残る。さらに、Lpreが短すぎた場合と同様に前記相対移動速度を零にする時間が長くなる。従って、このような問題が発生しないように、コーナ部入口までに放電エネルギが十分に小さくなるようにOFFpre、VGpreの値が設定されている。
しかし、前記のようにLpre及びOFFpre又はVGpreを設定しても、コーナ部入口に到達する時点では、ワイヤ電極1の被加工物2に対する相対移動が極微小速度で行われている。このような場合には、前記相対移動の略反対方向にワイヤ電極1が少なからず撓んでいることは言うまでもなく、ワイヤ電極1の撓みが零となっていることはありえない。従って、コーナ部入口でワイヤ電極1の被加工物2に対する相対移動速度を零(相対移動停止)としてこの状態を一定時間維持することにより、完全にワイヤ電極1の撓みを取り除くことが可能となる。
前記相対移動停止時に、前記相対移動速度を零にすると共に、ワイヤテンションTをコーナ部加工前の設定加工条件のワイヤテンション以上に変更し、加工液噴流の圧力又は流量Pをコーナ部加工前の設定加工条件の加工液噴流の圧力又は流量以下に変更することにより、前記相対移動停止時のワイヤ電極1の振動を抑制できること及びより強くなったワイヤテンションによりワイヤ電極1の撓みを取り除こうとする力が大きくなり、より早くワイヤ電極1の撓みを取り除くことができることから、被加工物中段部に発生しやすい過大加工をさらに抑制でき、加工形状精度及び加工生産性の向上を両立することができる。
前記相対移動停止時間が短すぎる場合には、ワイヤ電極の撓みを十分に取り除くことができなくなるため、だれが残り、反対に前記相対移動停止時間が長すぎる場合には、ワイヤ電極の振動により特に被加工物の中段部を過大加工をしてしまう恐れがある。高精度化を実現するためには、前記相対移動停止時間の設定を例えば1秒単位で正確に設定することが重要となる。日本国特開2000−84743号公報に記載されているような経過時間のみで前記相対移動停止時間を設定する場合にはあらゆる加工条件に応じて最適な停止時間を求めるのは難しく、前記のような問題が発生しやすい。例えば、様々な加工条件等の設定値に対応して最適な前記相対移動停止時間を求めようとした場合は、実際に行われると考えられるあらゆる加工条件を想定して前記相対移動停止時間の実験式又はテーブルを作っておく必要があり、現実問題として非常に困難である。また、ユーザが前記相対移動停止時間を入力するようにした場合でも、試し加工を実際に何度も行わなければならない。
第5図は、この発明の実施の形態1に係るコーナ部入口(第2図の点B)での前記相対移動停止を解除する条件設定方法を示す説明図であり、図において、fは放電周波数、VGは平均極間電圧、THfは放電周波数の基準値、THVG1は平均極間電圧の基準値、THfはワイヤ電極の撓みを若干許容する場合の放電周波数の基準値、THVG2はワイヤ電極の撓みを若干許容する場合の平均極間電圧の基準値、tsはTHf又はTHVG1に対応する前記相対移動停止時間、tsはTHf又はTHVG2に対応する前記相対移動停止時間である。
どのような加工であっても前記相対移動停止によりワイヤ電極の撓みがなくなるにつれ、極間の状態は開放状態に近づき、第5図のように放電周波数fが零に近づくと共に平均極間電圧VGが開放状態での平均極間電圧(オープン電圧)へ近づく。このオープン電圧は無負荷電圧及びパルス休止時間に依存し、ワイヤ放電加工装置の持っている静電容量及びインダクタンスにより決定される。前記静電容量及びインダクタンスはワイヤ放電加工装置の機械の相違による加工特性の違いをなくすために、どの機械においても略一定となっている。従って、この発明では、前記オープン電圧をある機械における無負荷電圧のパラメータ設定数とパルス休止時間のパラメータ設定数の組み合わせ分だけ測定しておけばよい。また、この測定作業において実際に被加工物の加工を行う必要もないため、前記相対移動停止の解除条件として用いる平均極間電圧の基準値を簡単に決定することができる。
このように、コーナ部入口での前記相対移動停止を解除する条件としては、放電周波数が前記所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が前記所定の基準値以上になるかを判断基準として用いることができる。
また、放電周波数の基準値の設定であれば何kHz以下と絶対値で指定しても、直線時の何%というように相対値で指定してもよく、これら平均極間電圧又は放電周波数の基準値をコーナ部の半径R及びコーナ部角度のコーナ形状に応じて、例えばRが大きくワイヤ電極の撓み量がある程度許されるような場合には、前記相対移動停止時間が短くなるような基準値(平均極間電圧の基準値は低め(THVG2)、放電周波数の基準値は高め(THf))に変更することにより、コーナ部の加工形状精度を向上させながら、さらに加工時間を短縮することができる。
前記相対移動停止前にワイヤ電極の撓みを取り除くことが不十分であり前記相対移動停止時間が長くなるような状態が生じた場合には、第6図に示すように内側コーナ部において前記停止時間が長すぎる場合は被加工物2の中段部にえぐれを生じやすく、内側コーナ部が製品となる場合には製品部分にこのようなえぐれ部分が残ってしまうことになる。このような場合において、内側コーナ部と外側コーナ部でそれぞれ別々の基準値(放電周波数の基準値又は平均極間電圧の基準値)を持ち、内側コーナ部側又は外側コーナ部側のどちらかが製品となるため、製品側の基準値を参照して、前記相対移動停止を解除すればよい。
また、例えば内側コーナ部と外側コーナ部でそれぞれ別々の基準値を持つ場合において、内側コーナ部では被加工物中段部に前記のえぐれ部が生じやすいため、このようなえぐれ部の発生を防止するために前記相対移動停止時間を短くするような基準値の設定とし、外側コーナでは確実にワイヤ電極の撓みを取れるように前記相対移動停止時間を長くするような基準値の設定とすることもできる。
以上のように放電周波数が前記所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が前記所定の基準値以上になるかを判断基準として用いる代わりに、放電周波数が基準値以下になるか又は平均極間電圧が基準値以上になるか、及び前記相対移動停止時間が基準時間以上になるか、の2つを判断基準として用いることもできる。放電周波数と前記相対移動停止時間でみる場合には、放電周波数が基準値を下回るか、前記相対移動停止時間が基準時間以上になるかの早い時点で前記相対移動停止を解除し、平均極間電圧と前記相対移動停止時間でみる場合には、平均極間電圧が基準値を上回るか、前記相対移動停止時間が基準時間以上になるかの早い時点で前記相対移動停止を解除する。このような場合において、前記基準時間を若干長めに設定しておき、例えば前記相対移動停止を解除する条件として平均極間電圧と前記相対移動停止時間の2つを見ている場合において、加工中に何らかの問題、例えば短絡気味の加工を行ってしまい平均極間電圧が前記相対移動停止中に十分に増大しない場合等でも、前記相対移動停止時間が前記基準時間以上となった場合に前記相対移動停止を解除することにより、コーナ部で前記相対移動停止の解除が行われなくなることを防ぐことができる。
次に、第2図の(a)の円弧部分(点Bから点C)と下記式(3)で表される距離L(点Cから点D)の間、即ち点Bから点Dまでの加工中は、パルス休止時間OFF又は平均極間電圧VGをOFFini≦OFFcorner≦OFFpreなるパルス休止時間OFFcorner、又はVGini≦VGcorner≦VGpreなる平均極間電圧VGcornerとすることにより放電エネルギを小さく維持したまま加工する。
L=(d/2+g−R)/tan(θ/2)+d/2       (3)
ここで、dはワイヤ電極の直径、gは放電ギャップ、Rは加工経路が描くコーナ部の半径、θはコーナ部角度である。また、L≦0となる場合はL=0とする。
具体的には、コーナ部の半径Rが大きい程、又はコーナ部角度θが大きい程、コーナ部のだれが発生しにくいと考えられ、ワイヤ電極の撓みが若干許容されるのでOFFcorner又はVGcornerの制御量を変更する割合(例えばOFFini又はVGiniに対するOFFcorner又はVGcornerの比率)を小さくする。
このようなコーナ部の半径R及びコーナ部角度θの大きさと前記制御量を変更する割合との関係は、例えば実験により求めておくことができる。
以上のようにコーナ部の半径R及びコーナ部角度θの大きさ並びに要求される被加工物の加工形状精度等に対応した前記制御量を変更する割合を予め求めておき、例えば第1図の制御手段16内の記憶手段に保存しておき、加工条件に応じて呼び出せばよい。
このように前記制御量を変更する割合を必要最小限として、放電エネルギを必要以上に低減させないため、加工時間の増大を抑制することができる。
コーナ部では、第7図の(a)に示すように加工液が方向変換前の方向4aへ流れようとするため、ワイヤ電極1が方向変換前の方向にも撓みやすい(たわみ方向G)が、第7図の(b)に示すようにワイヤ電極1全体が方向変換後の加工溝内に完全に入るまで(コーナ通過後の点Cから式(3)で規定される距離Lだけ離れた点Dまで)又はこの方向変換後の加工溝内に完全に入る位置(点D)の近傍まで放電エネルギ等をコーナ部における設定値と同様の値に維持する。
日本国特開2000−84743号公報に開示されたワイヤ放電加工方法及び装置では、この所定の距離L上の加工経路終点をワイヤ電極1の断面円形状の前半分が方向変換後の加工溝内に入るまで(例えば第7図の(b)の点D’)としており(従って式(3)とはLの値が異なる)、第7図の(a)に示すように加工液の流れ4aによりワイヤ電極1は方向変換前の方向へ撓みやすい状態であるにもかかわらず、点D’で加工速度及び放電エネルギ等の設定を戻し始めるので、例えば第8図のようにコーナ部の出口側に凸部を生じる可能性がある。
この発明においては、前記所定の距離Lを式(3)で規定される値、即ち第7図の(b)のコーナ通過後の点Cからワイヤ電極1全体が方向変換後の加工溝内に完全に入る点Dまでの距離、又はこの距離に準ずる距離としており、加工液流れ(第7図の(a)の4a)によるワイヤ電極の撓みが発生しなくなるまで放電エネルギ等をコーナ部における設定値と同様の値に維持しているため、コーナ出口側に凸部を生じさせることがなくコーナ部加工形状精度をより向上させることができる。
次に、ワイヤ電極1が第2図の(a)の点Dに到達したならば、点Eに到達するまでの間に、パルス休止時間又は平均極間電圧を、例えば距離の2次式の関数となるような次式(4)又は(5)に従って変化させ、コーナ部加工前の値に戻す。
OFF=OFFcorner−{(OFFcorner−OFFini)/Lpost}×(S2)                    (4)
VG=VGcorner−{(VGcorner−VGini)/Lpost}×(S2)                        (5)
ここで、Lpostは距離L加工後に短絡・断線等を発生させることないように設定された所定の距離(点DからEまでの距離)、S2は点Dからの距離である。
このように放電エネルギの時間変化率を略一定とするようにコーナ部加工前の値に戻すため、コーナ制御後区間距離Lpost(点Dから点E)においても、前記コーナ制御前区間距離Lpre(点Aから点B)における説明と同様の効果を奏する。
実施の形態2.
第9図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工方法を示す説明図であり、第9図の(a)はエッジ状コーナ部の加工工程の説明図、第9図の(b)はパルス休止時間OFFを制御してエッジ状コーナ部を加工する場合の加工制御の説明図、第9図の(c)は平均極間電圧VGを制御してエッジ状コーナ部を加工する場合の加工制御の説明図である。第9図において、実施の形態1の第2図と同一符号は同一又は相当部分を示している。また、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工装置の構成及び動作は実施の形態1の第1図の説明と同様である。
第9図におけるコーナ制御は、実施の形態1の第2図において点BからCまでがない場合に相当し、実施の形態1の式(3)のLの計算において加工経路が描くコーナ部の半径Rを零とした場合に相当する。
産業上の利用可能性
以上のように、この発明に係るワイヤ放電加工方法及び装置は、ワイヤ放電加工作業に用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第2図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工方法を示す説明図である。
第3図は、コーナ制御前区間距離における放電エネルギの変化を示す説明図である。
第4図は、放電反力の急激な変化により短絡が発生した場合を示す説明図である。
第5図は、この発明の実施の形態1に係るコーナ部入口での相対移動停止を解除する条件設定方法を示す説明図である。
第6図は、コーナ部の加工例を示す説明図である。
第7図は、コーナ部の加工例を示す説明図である。
第8図は、コーナ部の加工例を示す説明図である。
第9図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工方法を示す説明図である。
第10図は、従来のワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第11図は、従来のワイヤ放電加工装置によるコーナ部の加工例を示す説明図である。

Claims (17)

  1. ワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法において、
    前記ワイヤ電極による加工経路のコーナ部入口から第1の所定距離前から前記放電エネルギを漸次低減させながら加工を行う第1の工程と、
    前記コーナ部入口において前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動を停止させる第2の工程と、
    前記相対移動の停止を所定の判断基準により解除する第3の工程と、
    前記ワイヤ電極による加工経路の前記コーナ部及びこのコーナ部通過後から第2の所定距離通過まで、前記放電エネルギを、前記コーナ部の半径及び角度の大きさ等のコーナ形状により決定される第1の条件と所望の加工形状精度等要求仕様により決定される第2の条件の中の少なくともどちらかに応じた所定の低減割合にて、前記コーナ部入口から第1の所定距離前の放電エネルギに対して低減した状態で加工を行う第4の工程と、
    前記ワイヤ電極による加工経路の前記第2の所定距離通過後から第3の所定距離通過まで前記放電エネルギを漸次増大させながら加工を行う第5の工程からなることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  2. 請求の範囲1において、前記第1の工程及び第5の工程の少なくともどちらかにおける加工において、前記放電エネルギの時間変化率を略一定とすることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  3. 請求の範囲1において、前記第1の工程及び第5の工程の少なくともどちらかにおける加工において、パルス休止時間又は平均極間電圧を距離の2次式の関数となるように変化させることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  4. 請求の範囲1において、前記第3の工程における所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が所定の基準値以上になるかであることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  5. 請求の範囲1において、前記第3の工程における所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるか、又は、平均極間電圧が所定の基準値以上になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるかであることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  6. 請求の範囲4又は5において、前記基準値として前記コーナ部の内側コーナ部及び外側コーナ部に対応した別々の基準値を持ち、前記第3の工程における所定の判断基準に用いる基準値として製品側となるコーナ側の基準値を用いることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  7. 請求の範囲1において、前記第2の所定距離を前記コーナ部の通過点から前記ワイヤ電極全体が方向変換後の加工溝内に完全に入る点までの距離又はこの距離に準ずる距離とすることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  8. 請求の範囲1において、前記第2の工程乃至第4の工程において、前記コーナ部加工前(例えば前記第1の工程)における設定値よりも、ワイヤテンションの設定値を上げること及び加工液噴流の圧力又は流量の設定値を下げること、の少なくともどちらかを行うことを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  9. 加工電力供給手段によりワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給し、加工液供給手段により前記極間に加工液を供給し、位置決め手段により前記ワイヤ電極及び被加工物を相対移動させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置において、
    前記ワイヤ電極による加工経路のコーナ部入口から第1の所定距離前から前記放電エネルギを漸次低減させるように前記加工電力供給手段を制御し、
    前記コーナ部入口において前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動を停止させ、この相対移動の停止を所定の判断基準により解除して前記相対移動を再開するように前記位置決め手段を制御し、
    前記ワイヤ電極による加工経路の前記コーナ部及びこのコーナ部通過後から第2の所定距離通過まで、前記放電エネルギを、前記コーナ部の半径及び角度の大きさ等のコーナ形状により決定される第1の条件と所望の加工形状精度等要求仕様により決定される第2の条件の中の少なくともどちらかに応じた所定の低減割合にて、前記コーナ部入口から第1の所定距離前の放電エネルギに対して低減するように前記加工電力供給手段を制御し、
    前記ワイヤ電極による加工経路の前記第2の所定距離通過後から第3の所定距離通過まで前記放電エネルギを漸次増大させるように前記加工電力供給手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  10. 請求の範囲9において、前記放電エネルギの制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、パルス休止時間又は平均極間電圧を制御することを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  11. 請求の範囲9又は10において、前記放電エネルギを漸次低減又は増大する制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、前記放電エネルギの時間変化率を略一定とすることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  12. 請求の範囲10において、前記放電エネルギを漸次低減又は増大する制御を前記制御手段により前記加工電力供給手段を制御することにより行う場合に、前記パルス休止時間又は平均極間電圧を距離の2次式の関数となるように変化させることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  13. 請求の範囲9又は10において、前記所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか又は平均極間電圧が所定の基準値以上になるかであることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  14. 請求の範囲9又は10において、前記所定の判断基準が、放電周波数が所定の基準値以下になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるか、又は、平均極間電圧が所定の基準値以上になるか若しくは前記相対移動の停止時間が基準時間以上になるかであることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  15. 請求の範囲13又は14において、前記基準値として前記コーナ部の内側コーナ部及び外側コーナ部に対応した別々の基準値を持ち、前記所定の判断基準に用いる基準値として製品側となるコーナ側の基準値を用いることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  16. 請求の範囲9又は10において、前記第2の所定距離を前記コーナ部の通過点から前記ワイヤ電極全体が方向変換後の加工溝内に完全に入る点までの距離又はこの距離に準ずる距離とすることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  17. 請求の範囲9又は10において、前記コーナ部入口における前記ワイヤ電極及び被加工物の相対移動の停止から、前記コーナ部通過後から第2の所定距離通過までの加工の間、前記コーナ部加工前における設定値よりも、ワイヤテンションの設定値を上げること及び加工液噴流の圧力又は流量の設定値を下げること、の少なくともどちらかの制御を前記制御手段により行うことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
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