JPH1145825A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法

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JPH1145825A
JPH1145825A JP9198845A JP19884597A JPH1145825A JP H1145825 A JPH1145825 A JP H1145825A JP 9198845 A JP9198845 A JP 9198845A JP 19884597 A JP19884597 A JP 19884597A JP H1145825 A JPH1145825 A JP H1145825A
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capacitor
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Abstract

(57)【要約】 【課題】導電性高分子を酸化皮膜上に形成する場合、被
覆率が低下する。 【解決手段】固体電解質に導電性高分子を用いた固体電
解コンデンサにおいて、導電性高分子層4の形成の一部
又は総てを化学酸化重合で実施する際、酸化剤を酸化皮
膜3が形成されたタンタル焼結体1に充填し、しかる後
に、酸化剤が溶出しない溶液に導電性高分子モノマーを
溶解した溶液に焼結体1を浸漬し、導電性高分子層4を
形成することにより、細孔中に充填した酸化剤の拡散を
防止し、細孔中に高効率且つ高被覆率で導電性高分子層
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固体電解コンデンサ
の製造方法に関し、特に導電性高分子を固体電解質とし
て用いる固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タンタル、アルミニウム等の弁作用金属
を利用した電解コンデンサは広く一般に利用されてい
る。これら電解コンデンサは、焼結体あるいはエッチン
グ箔の形状で誘電体層の表面積を拡大(拡面化)するこ
ことにより、小型で大きな容量を得ることが出来ること
が特徴である。しかしながら、電解質として二酸化マン
ガン、あるいはエチレングリコール等の電解液を用いて
いる為に、高周波でのインピーダンスが大きいという欠
点がある。
【0003】近年、電子機器の小型化、高機能化が進行
するにつれて、電気回路の高周波化、デジタル化が進行
し、コンデンサにも高周波での特性が優れたものが求め
られるようになってきた。こうした要求に対応する為
に、従来の電解質より数百倍高い導電率を有する導電性
高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサが
提案されている。これらの固体電解コンデンサの電解質
としては、導電性高分子としてポリピロール等の複素五
員環化合物にドーパントを添加して導電性を発現させた
ものが利用され、従来の電解コンデンサにない優れた周
波数特性を有している。
【0004】こうした電解コンデンサは、電解質の導電
率が高いことから高周波での特性が優れるのみならず、
電解質形成の為に熱履歴を加える必要がないので酸化皮
膜が損傷することがなく、二酸化マンガン等の熱分解生
成物を電解質に用いた電解コンデンサに比べて、信頼性
に優れるという特徴がある。
【0005】導電性高分子を酸化皮膜上に形成する方法
としては、主に化学酸化重合と電解酸化重合の2種類が
ある。
【0006】電解酸化重合法の場合、絶縁体である酸化
皮膜上に電荷を存在させることが出来ない為に、化学酸
化重合で形成した導電性高分子あるいは二酸化マンガン
でプレコート層を形成し、しかる後に、電解酸化重合で
導電性高分子を形成する手段が開示されている。
【0007】しかしながら、焼結体あるいはエッチング
ピット中に電解酸化重合で導電性高分子を形成する場
合、細孔内部と外部間に電解強度の差が生じやすく、こ
の為電解強度が強い細孔の外側に優先的に導電性高分子
が形成されてしまい、コンデンサとしては十分な被覆率
が得られないという欠点がある。また電解酸化重合法
は、個々のコンデンサ素子毎に電流値を制御する必要が
ある為に、工業的生産を行う場合には簡便な方法とは言
い難い。
【0008】一方、化学酸化重合法で導電性高分子を形
成する場合、大量のコンデンサ素子を一括処理できるの
で比較的簡便な方法で工業的生産が可能である。この
為、近年、化学酸化重合法で導電性高分子を形成する技
術についても盛んに研究されており、以下のような報告
がある。
【0009】(1)米国特許(United Stat
ed Patent Number)4,697,00
1には、ドデシルベンゼルスルホン酸第二鉄などを酸化
剤とするピロールの重合例が開示されている。
【0010】(2)電気化学及び工業物理化学 第64
巻1号(1996年1月、電気化学協会出版)には、ピ
ロールモノマーと界面活性剤(アルキルナフタレンスル
ホン酸ナトリウム)を含む水溶液と、硫酸第二鉄と界面
活性剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)を
含む酸化剤水溶液を用いて化学酸化重合を行う方法が開
示されている。ここに開示されている技術は、焼結体を
ピロールモノマーを含む水溶液に浸漬した後、硫酸第二
鉄を酸化剤として含む水溶液に浸漬するという操作を繰
り返してポリピロール層を形成する方法である。
【0011】(3)特開平8−45790号公報並びに
特開平7−70294号公報には、導電性高分子モノマ
ーと酸化剤と水からなる重合溶液を用いる化学酸化重合
法が開示されている。ここに開示されている技術は、導
電性高分子モノマーと酸化剤をともに溶解する溶媒を用
いてこれに水を2重量%以上添加する方法である。
【0012】(4)次に、化学酸化重合法の工程順番と
して、特願平8−118076号公報には、図5に示す
ように、焼結体をモノマー溶液に浸漬する工程(A1)
とモノマー溶液を乾燥・重合する工程(A2)と、酸化
剤溶液に浸漬する工程(A3)と酸化剤溶液を乾燥・重
合する工程(A4)をこの順番で行う化学酸化重合法が
開示されている。
【0013】また、上記電気化学及び工業物理化学 第
64巻1号に開示されている重合方法も、同様に、焼結
体をモノマー溶液に浸漬する工程(A1)、酸化剤溶液
に浸漬する工程(A3)の順番であることが記述されて
いる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の技術には次のような課題があった。
【0015】(1)電気化学及び工業物理化学 第64
巻1号、特開平8−45790号公報に開示されている
化学酸化重合法で導電性高分子層を形成すると、コンデ
ンサとして十分な被覆率が得られず、基板実装時に漏れ
電流が著しく増大するという欠点が生じる。
【0016】その理由を図4〜6を用いて説明する。図
4(a),(b)は電気化学及び工業物理化学第64巻
1号あるいは特開平8−45790号公報に開示されて
いる従来技術で導電性高分子4を形成し、公知の技術で
組立てた固体電解コンデンサの模式的断面図及び拡大断
面図である。
【0017】図4(a)に示すように、固体電解コンデ
ンサは、陽極リード2を植立したタンタル焼結体1の表
面に酸化皮膜4、導電性高分子層4、カーボン層5及び
銀ペースト層6を順次形成し、次で外部電極端子7,8
を取り出したのちエポキシ樹脂10で外装して完成され
る。
【0018】図4(b)には、導電性高分子層4がコン
デンサ素子(焼結体)内部まで十分に形成されていない
様子とコンデンサ素子表面に十分な膜厚の導電性高分子
層4を形成できていない様子を模式的に示している。図
4(b)において15は空隙である。
【0019】図5は前記従来技術の導電性高分子層形成
工程の工程フローチャート図である。図6(a)〜
(d)は図5の各工程における導電性高分子層の形成過
程を説明する為の焼結体表面の模式的断面図である。
【0020】図6(a)は導電性高分子モノマー溶液浸
漬工程(A1)における酸化皮膜3表面近傍の様子を示
しており、導電性高分子モノマー13Aと導電性高分子
モノマーの溶媒14Aがタンタル焼結体1の細孔内に十
分に充填されている様子を模式的に示している。図6
(b)は導電性高分子モノマー溶液の乾燥工程(A2)
における酸化皮膜3表面近傍の様子を示す図である。導
電性高分子モノマーがピロールのような蒸気圧が大きい
液体の場合、充填された導電性高分子モノマー13Aの
揮発が著しい。図6(b)では、コンデンサ素子表面及
び細孔内に保持されている導電性高分子モノマー13A
と導電性高分子モノマー溶媒14Aの量が揮発して減少
している様子を示している。
【0021】図6(c)は酸化剤溶液浸漬工程(A3)
における酸化皮膜3表面近傍の様子を示す図である。こ
こでは、酸化剤11と酸化剤溶媒12が細孔内に充填さ
れ、酸化剤11は接触した導電性高分子モノマー13A
を重合させる。従来の反応溶液の組み合わせ、例えば、
ピロールモノマー水溶液と硫酸第二鉄水溶液の組み合わ
せの場合、溶媒が同じ水なので、細孔内に保持されてい
たピロール13Aは拡散し易い。その為、ピロール13
Aと酸化剤11との接触は酸化皮膜表面から離れたとこ
ろで生じやすく、細孔内の酸化皮膜3上に十分に導電性
高分子層を形成できない。その結果、被覆率が悪いとい
う欠点を生じる。
【0022】同時に、細孔内で拡散したピロール13A
は、素子表面に向けて移動してくるので、素子表面から
進入する酸化剤11と表面近傍で優先的に反応し、表面
の細孔入り口近傍に優先的にポリピロールが形成され
る。通常、ポリピロールの形成は、導電性高分子モノマ
ー溶液と酸化剤溶液への焼結体の浸漬を複数回繰り返す
ので、重合サイクルの初期にコンデンサ素子表面の細孔
入り口近傍に導電性高分子層が優先的に形成され、その
後、導電性高分子モノマーあるいは酸化剤が細孔内に入
らなくなる為、細孔内の酸化皮膜上に導電性高分子層4
が均一に形成されず、図4(b)に示したように被覆率
が悪くなる。
【0023】また、当然ながら、ピロールの拡散は、コ
ンデンサ素子表面でも起こるので、コンデンサ素子表面
からピロールが拡散し、素子表面から消失した部分に
は、ポリピロールが形成されない為、素子表面のポリピ
ロール膜厚は不均一になる。特に、重合回数が少ない場
合には、微視的には酸化皮膜3上にポリピロールが形成
されていない部分もある。
【0024】コンデンサを基板に実装する時、酸化皮膜
に外装樹脂の熱応力がかかり、酸化皮膜3が損傷し、漏
れ電流が大きくなる場合があるが、酸化皮膜3上にポリ
ピロール層が形成されていれば、漏れ電流の増大によっ
て局所的に酸化皮膜が発熱し、その上に形成されたポリ
ピロール層は熱酸化されて、やがて導電性を失う。その
結果、酸化皮膜欠陥部へ電流が遮断されるので、一時的
に漏れ電流が増大してもやがて正常レベルまで戻る。
【0025】ところが、酸化皮膜上にポリピロール層が
ない場合、当然、前述したような絶縁修復は起こらない
ので、漏れ電流増大が顕在化して問題になる。また、ポ
リピロール層が酸化皮膜上に形成されていても、その膜
が薄い場合、基板実装後に漏れ電流が増大する欠点が生
じるので十分な膜厚を確保する必要がある。
【0026】ポリピロール層が薄い場合、基板実装にお
いて漏れ電流が増大する原因は明らかではないが、原因
のひとつとして、基板実装時の熱応力でポリピロール層
にずれが生じ、微視的領域で酸化皮膜上にポリピロール
層が形成されていない部分が生じ、前述した理由により
漏れ電流が増大すると考えられる。
【0027】一方、ポリピロール層が厚い場合、前述し
た基板実装における漏れ電流の問題は解決できるが、コ
ンデンサのESR(等価直列抵抗)が増大する欠点が生
じる。従来技術では、ポリピロール膜厚が不均一になり
やすいので、適正な範囲内に膜厚を制御して形成するこ
とが困難であった。
【0028】図6(d)は酸化剤溶液乾燥工程(A4)
における酸化皮膜表面近傍の様子を示す図である。ここ
では、前記酸化剤溶液浸漬工程(A3)において酸化剤
溶液中に拡散しない細孔中に保持されたピロールと酸化
剤が反応してポリピロールを形成する。
【0029】重合は図5のA1からA4の工程を複数回
繰り返すので、工程A4完了後に過剰な酸化剤がコンデ
ンサ素子に残留している場合、これに続く、ピロール溶
液浸漬工程(A1)で残留した酸化剤がピロールと反応
し、ポリピロールを形成するが、この時も、同様に、コ
ンデンサ素子に残留していた酸化剤がピロール溶液中に
溶出拡散してしまう為、細孔内に十分な被覆率を有する
程、導電性高分子を形成することができないのみらら
ず、表面においても十分な膜厚を確保することが困難で
ある。
【0030】その理由は、ピロールモノマー溶液浸漬工
程では、硫酸第二鉄が水に対して可溶性なので、細孔中
に予め保持した硫酸第二鉄は、ピロール水溶液中に溶出
拡散するからである。
【0031】特開平8−45790号公報に開示されて
いる技術に関しても、導電性高分子モノマーと酸化剤を
ともに溶解する溶媒を用いているので、同様に、細孔中
に予め保持した導電性高分子モノマーは、酸化剤溶液中
に溶出拡散してしまい、目的とするコンデンサ素子内で
の導電性高分子の形成反応が生じにくいのみならず、酸
化剤と導電性高分子モノマーの反応がコンデンサ素子の
表面で優先的に起こり、コンデンサとして十分な被覆率
を得ることができないという欠点が生じる。
【0032】以上説明したように、従来技術では、酸化
剤が導電性高分子モノマー溶液に溶出拡散し、コンデン
サ素子上で重合反応を効率よく出来ないことに起因する
欠点があった。
【0033】(2)特開平7−70294号公報に開示
されている技術の欠点は、コンデンサとして十分な被覆
率を得ることができないことである。その理由は、重合
溶液を−30℃以下の低温に保持するので、重合溶液の
粘度が高く、焼結体表面の細孔中に十分充填できないか
らである。
【0034】(3)特願平8−118076号公報に開
示されている工程順番に関する技術の欠点は、コンデン
サとして十分な被覆率を得ることができないことであ
る。その理由は、導電性高分子モノマーがピロールのよ
うな常温常湿で液体である場合、導電性高分子モノマー
溶液乾燥時(図5工程A2、図6(b))、導電性高分
子モノマーは溶媒と一緒に蒸発してしまう。特に、ピロ
ールのような蒸気圧が大きいものは、酸化剤溶液浸漬前
において残留する導電性高分子モノマー量を常に一定量
に制御することは困難であるので、導電性高分子の形成
量にバラツキが生じる為である。
【0035】本発明の目的は前述した課題を解決し、十
分な被覆率を有し、且つ、基板実装時に漏れ電流が増大
することのない固体電解コンデンサの製造方法を提供す
ることにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意検討し
た結果、前述した欠点を解決する手段を見出した。その
手段は、化学酸化重合法で導電性高分子を形成する際、
特定の溶液組成からなる酸化剤液と導電性高分子モノマ
ー溶液を用いて導電性高分子を形成する方法である。
【0037】すなわち本発明の固体電解コンデンサの製
造方法は、弁作用金属の焼結体表面にその金属の酸化被
膜を誘電体層として形成する工程と、前記誘電体層上に
導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程を含
む固体電解コンデンサの製造方法において、前記固体電
解質層の形成工程の少くとも一部は、誘電体層が形成さ
れた焼結体を酸化剤を含む溶液に浸漬したのちとり出し
酸化剤溶液を蒸発させる工程と、前記酸化剤が溶解しな
い溶液に導電性高分子モノマーを溶解したモノマー溶液
に焼結体を浸漬したのちとり出しモノマー溶液を蒸発さ
せ導電性高分子層を形成する工程とを含むことを特徴と
するものである。
【0038】例えば、前記酸化剤はFe3+、Cu2+、Z
2+等の遷移金属イオンとアルキルベンゼルスルホン
酸、アルキルナフタレンスルホン酸等の電子供与基を有
する芳香族化合物からなる塩であり、且つ、前記導電性
高分子モノマーを溶解した溶液は水からなる特定の重合
溶液の組み合わせである。
【0039】さらに、この系において導電性高分子モノ
マーがピロールである時、前記目的を達成する優れた固
体電解コンデンサを提供することが可能である。
【0040】また、導電性高分子モノマーがピロールの
場合、導電性高分子の形成工程の工程順番は、酸化剤を
含む溶液に浸漬する工程、前記酸化剤溶液を蒸発させる
工程、前記酸化剤が溶解しない溶液に導電性高分子モノ
マーを溶解した導電性高分子モノマー溶液に浸漬する工
程、前記導電性高分子モノマー溶液を蒸発させる工程で
ある方が好ましい。
【0041】以上説明した方法によれば、ポリピロール
膜厚を制御して均一に形成することができる。ポリピロ
ール膜厚は薄い場合、基板実装時に漏れ電流が増大する
欠点が生じる。一方、厚い場合には、ESR(等価直列
抵抗)が増大する欠点が生じる。従って、適切な膜厚に
制御することが重要である。適切な膜厚は、5μm以上
100μm以下、好ましくは、7μm以上20μm以下
である。
【0042】
【作用】以下、本発明の手段が前述した課題を解決でき
る作用を図1、図3及び図4を用いて説明する。
【0043】前述したように、従来の化学酸化重合法
は、図4(a),(b)で説明したように、コンデンサ
として十分な被覆率を得ることができないという欠点
と、基板実装時の熱ストレスに耐えうる程十分な膜厚の
導電性高分子層4を形成することが困難であるという欠
点があった。
【0044】これに対して、本発明の化学酸化重合法で
は、図1(a),(b)に示すように、コンデンサとし
て十分な被覆率を有するとともに、基板実装時の熱スト
レスに耐えうる十分な膜厚の導電性高分子層4を形成す
ることができる。
【0045】その理由は、図3(c)に示すように、細
孔中に予め保持された酸化剤11が導電性高分子として
のピロールモノマーの溶媒(水)14に溶出しないので
細孔中に保持され、保持された酸化剤11にピロールモ
ノマー13が接し、ピロールポリマーが形成されるの
で、細孔中でも十分な導電性高分子層が形成されるから
である。同時に、表面においても酸化剤はコンデンサ素
子表面に保持されているので、均一に導電性高分子層4
を形成できる。
【0046】さらに、導電性高分子がピロールの場合、
化学酸化重合の工程順番は酸化剤溶液への浸漬並びに乾
燥工程を先に設けた方が好ましい。その理由は、細孔内
に導電性高分子モノマーと酸化剤を順次充填する化学酸
化重合法の場合、導電性高分子の形成量は先に充填した
物質の量で決まる。前述したように、導電性高分子モノ
マーがピロールの場合、ピロールの蒸気圧が高いので、
ピロールを先に充填し乾燥すると、酸化剤溶液浸漬直前
のピロール量を制御することは困難である。これに対し
て、酸化剤溶液を先に充填し乾燥すると、Fe3+、Cu
2+、Zn2+等の遷移金属イオンとアルキルベンゼンスル
ホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等の電子供与基
を有する芳香族化合物からなる酸化剤そのものは揮発し
ないので、酸化剤溶液から引き上げた時に細孔中に保持
した量を導電性高分子モノマー溶液に浸漬する迄保持し
ている。酸化剤溶液から引き上げた時に細孔中に保持し
た量は、酸化剤溶液の粘度及び引き上げ速度を制御する
だけで容易に制御できるので、導電性高分子形成量を制
御できる。故に、十分な被覆率を有し、基板実装時に漏
れ電流増大がない優れたコンデンサを製造することが可
能である。
【0047】以上説明したような作用は、重合溶液に関
する特定溶液の組み合わせから生じる。すなわち、酸化
剤は公知材料であるFe3+、Cu2+、Zn2+等の遷移金
属イオンとアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフ
タレンスルホン酸等の電子供与基を有する芳香族化合物
からなる塩を用いるが、導電性高分子モノマー溶液とし
て、酸化剤が溶解しない溶液を選定した点に起因して生
じる。
【0048】この点に関しては、従来技術、例えば、電
気化学及び工業物理化学 第64巻1号(1996年1
月、電気化学協会出版)に開示されている重合溶液の組
み合わせ、すなわち、硫酸第2鉄水溶液とピロール水溶
液の組合せとは異なる概念から生じたものである。
【0049】また、導電性高分子をピロールに限定した
時の酸化剤溶液と導電性高分子モノマー溶液の浸漬順番
に起因する作用も本発明の新規な点である。
【0050】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。図1(a),(b)は本発
明の第1の実施の形態を説明する為の固体電解コンデン
サの断面図及び拡大断面図、図2は製造工程を示すフロ
ーチャート図、図3(a)〜(d)は高分子層の形成状
態を示す模式図である。以下図1〜図3を用いて説明す
る。
【0051】第1の実施の形態は、公知の技術で陽極リ
ード2を植立したタンタル焼結体1上に酸化皮膜3を形
成したタンタル焼結体素子(1×1×1mm3 )上に、
以下の手順で導電性高分子層4を形成した。先ず、酸化
剤溶液として50重量%ブチルナフタレンスルホン酸第
2鉄イソプロピルアルコール溶液、モノマー溶液として
4重量%ピロール水溶液(ピロールモノマー13と水1
4)を用意した。これらの溶液を用いて、図2の工程フ
ローチャートに従って重合を行った。
【0052】すなわち、図3(a)に示すように、タン
タル焼結体1を酸化剤溶液中に10分浸漬して、酸化剤
11と酸化剤溶媒12を細孔内に充填した(工程S
1)。次に、図3(b)に示すように、酸化剤の溶媒1
2を室温で10分乾燥して除去した(工程S2)。その
後、図3(c)に示すように、ピロール水溶液中に10
分浸漬してポリピロールを形成した(工程S3)。続い
て、図3(d)に示すように、余分なピロール水溶液を
除去する為に室温で10分乾燥した(工程S4)。以
上、工程S1からS4までの一連の操作を10回繰り返
して図1(b)に示すように、導電性高分子層4を酸化
皮膜3上に形成した。
【0053】その後、公知の技術により、カーボン層
5、銀ペースト層6を形成し、さらに導電性接着剤9を
形成し外部電極端子7,8を取り出した後、エポキシ樹
脂10で外装して図1(a),(b)に示す構造の固体
電解コンデンサを完成させた。
【0054】この固体電解コンデンサは、図1(b)中
の拡大図に示すように、細孔内部まで十分に導電性高分
子層4が形成されており、このコンデンサの被覆率は9
0%であった。ここで算出した被覆率は次のような手順
で測定したコンデンサ容量の比率である。
【0055】まず公知の技術で酸化皮膜を形成した後、
40重量%の硫酸水溶液中にコンデンサ素子を浸漬して
容量を測定する。次に、完成したコンデンサの容量を測
定する。
【0056】また、酸化皮膜3上に形成されたポリピロ
ールの膜厚は、コンデンサ素子表面で10μmであっ
た。このコンデンサ100個を240℃のリフロー炉に
通して基板に実装したところ、漏れ電流の著しい増大を
生じるサンプルはなかった。以上説明した諸特性を表1
に示す。
【0057】コンデンサ素子表面のポリピロールの膜厚
(以下、ポリピロールの膜厚と略す)が5μm以上であ
る時、酸化皮膜上はすべてポリピロール層が形成されて
いる。この場合、コンデンサを基板に実装し、その時の
外装樹脂であるエポキシ樹脂の熱応力により酸化皮膜に
欠陥が生じ、漏れ電流が増大しても、欠陥への電流の集
中により、欠陥部近傍の酸化皮膜が発熱し、欠陥部分の
上部のポリピロール層はこの熱により酸化され、絶縁化
する。欠陥上部のポリピロール層が絶縁化し、欠陥部分
への電流が遮断されるので、コンデンサの漏れ電流は小
さくなり、やがて基板実装前のレベル程度にまで復帰す
る(以下、この作用を絶縁修復作用と称す)。
【0058】これに対して、ポリピロール層の膜厚が5
μmより薄い場合、酸化皮膜表面を微視的に見ると、ポ
リピロール層で被覆されていない部分が存在する。この
場合、コンデンサを基板に実装するときのエポキシ樹脂
の熱応力によりポリピロール層で被覆されていない部分
の酸化皮膜に欠陥が生じた場合は、ポリピロール層の絶
縁修復作用が起こらないので、漏れ電流が増大したまま
の状態になり、コンデンサの機能を失う。
【0059】また、ポリピロール層の膜厚が100μm
を越えると、固体電解質として二酸化マンガンを用いた
従来のコンデンサのESRと同等レベルに達してしま
い、高周波でのインピーダンスが小さいという従来のコ
ンデンサにはない長所を失うことになる。
【0060】従って、コンデンサ素子表面のポリピロー
ルの膜厚は5μm以上100μm以下にする必要があ
る。
【0061】次に第2の実施の形態について説明する。
この第2の実施の形態では第1の実施の形態で用いた酸
化剤溶液を、50重量%ドデシルベンゼルスルホン酸第
2鉄イソプロピルアルコール溶液に代えて実施した。
【0062】完成したこのコンデンサも第1の実施の形
態と同様に細孔内部まで十分に導電性高分子層4が形成
されていた。このコンデンサの被覆率は92%であっ
た。また、酸化皮膜上に形成されたポリピロール層の膜
厚は、コンデンサ素子表面で15μmであった。第1の
実施の形態と同様に、このコンデンサ100個を240
℃のリフロー炉に通して基板に実装したところ、漏れ電
流の著しい増大を生じるサンプルはなかった。以上説明
した諸特性を表1に示す。 [比較例1]比較例を図4から図6を用いて説明する。
【0063】第1の実施の形態と同様にして酸化皮膜を
形成したコンデンサ素子と、酸化剤として50重量%硫
酸第2鉄水溶液、モノマー溶液として4重量%ピロール
水溶液を用意した。これらの溶液を用いて、図5の工程
フローチャートに従って重合を行った。
【0064】すなわち、図6(a)に示すように、タン
タル焼結体1をピロール水溶液中に10分浸漬して、ピ
ロールを細孔内に充填した(工程A1)。次に、図6
(b)に示すように室温で10分乾燥し、ピロール及び
水を除去した(工程A2)。その後、図6(c)に示す
ように、硫酸第2鉄水溶液中に10分浸漬してポリピロ
ールを形成した(工程A3)。続いて、硫酸第2鉄酸化
剤溶液を除去する為に室温で10分乾燥した(工程A
4)。以上、工程A1からA4までの一連の操作を10
回繰り返して導電性高分子層4を酸化皮膜3上に形成し
た。
【0065】その後、公知の技術により、カーボン層
5、銀ペースト層6を形成し、さらに外部電極端子7,
8を取り出した後、エポキシ樹脂10で外装して固体電
解コンデンサを完成させた。完成した固体電解コンデン
サの断面は図4(a),(b)のような構造であった。
【0066】この固体電解コンデンサは、図4(b)の
拡大図に示すように、細孔内部には空隙15が存在し、
十分に導電性高分子層4が形成されていないため、この
コンデンサの被覆率は60%であった。また、酸化皮膜
上に形成されたポリピロールの膜厚は、コンデンサ素子
表面で最も薄い部分は1μm以下であり、第1,第2の
実施の形態より明らかに薄く、不均一であった。このコ
ンデンサ100個を240度のリフロー炉に通して基板
に実装したところ、30個の漏れ電流不良が発生した。
以上説明した諸特性を表1に示す。 [比較例2]比較例1の酸化剤溶液に代えてp−トルエ
ンスルホン酸第2鉄メタノール溶液を用いて、同様にし
て、固体電解コンデンサを製作した。
【0067】この固体電解コンデンサも比較例1と同様
に、細孔内部では十分に導電性高分子層4が形成されて
いない部分があり、このコンデンサの被覆率は65%で
あった。その模式的断面図も図4(a),(b)で表さ
れる。また、酸化皮膜上に形成されたポリピロールの膜
厚は、コンデンサ素子表面で最も薄い部分は1μm以下
であり、第1,第2の実施の形態より明らかに薄く、不
均一であった。このコンデンサ100個を240℃のリ
フロー炉に通して基板に実装したところ、25個の漏れ
電流不良が発生した。以上説明した諸特性を表1に示
す。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば次
の2つの効果が得られる。第1に、被覆率が高い固体電
解コンデンサを製造することができる。第2に、基板実
装における著しい漏れ電流の増大がない固体電解コンデ
ンサを製造することができる。
【0070】これらの理由は、ともに、導電性高分子層
の形成を化学酸化重合で実施する際、酸化剤をコンデン
サ素子の細孔中に充填し、しかる後に、酸化剤が溶出し
ない溶液に導電性高分子モノマーを溶解した溶液にコン
デンサ素子を浸漬し、導電性高分子層を形成することに
より、細孔中に充填した酸化剤の溶出拡散を防止できる
ので、導電性高分子層の膜厚を均一に制御できる為であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明する為の固体
電解コンデンサの断面図及び拡大断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明する為のフロ
ーチャート図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明する為の導電
性高分子形成状態を示す模式図である。
【図4】従来技術により製作された固体電解コンデンサ
の断面図及び拡大断面図である。
【図5】従来の固体電解コンデンサの製造方法を説明す
る為のフローチャート図である。
【図6】従来の化学酸化重合法における導電性高分子形
成状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 タンタル焼結体 2 陽極リード 3 酸化皮膜 4 導電性高分子層 5 カーボン層 6 銀ペースト層 7,8 外部電極端子 9 導電性接着剤 10 エポキシ樹脂 11 酸化剤 12 酸化剤溶媒 13 ピロールモノマー 14 ピロールモノマーの溶媒
フロントページの続き (72)発明者 荒井 智次 富山県下新川郡入善町入膳560番地 富山 日本電気株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弁作用金属の焼結体表面にその金属の酸
    化被膜を誘電体層として形成する工程と、前記誘電体層
    上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程
    を含む固体電解コンデンサの製造方法において、前記固
    体電解質層の形成工程の少くとも一部は、誘電体層が形
    成された焼結体を酸化剤を含む溶液に浸漬したのちとり
    出し酸化剤溶液を蒸発させる工程と、前記酸化剤が溶解
    しない溶液に導電性高分子モノマーを溶解したモノマー
    溶液に焼結体を浸漬したのちとり出しモノマー溶液を蒸
    発させ導電性高分子層を形成する工程とを含むことを特
    徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 導電性高分子層の形成工程の工程順番
    が、焼結体を酸化剤を含む溶液に浸漬したのちとり出し
    酸化剤溶液を蒸発させる工程、前記酸化剤が溶解しない
    溶液に導電性高分子モノマーを溶解したモノマー溶液に
    焼結体を浸漬したのちとり出しモノマー溶液を蒸発させ
    る工程であることを特徴とする請求項1記載の固体電解
    コンデンサの製造方法。
  3. 【請求項3】 酸化剤がFe3+、Cu2+、Zn2+等の遷
    移金属イオンとアルキルベンゼルスルホン酸、アルキル
    ナフタレンスルホン酸等の電子供与基を有する芳香族化
    合物からなる塩であり、且つ、導電性高分子モノマーを
    溶解した溶液が水であることを特徴とする請求項1又は
    請求項2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 【請求項4】 導電性高分子モノマーがピロールである
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記
    載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 【請求項5】 ピロールからなる固体電解質層の厚さを
    5μm以上とする請求項4記載の固体電解コンデンサの
    製造方法。
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