JP3493605B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法

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JP3493605B2
JP3493605B2 JP2001072533A JP2001072533A JP3493605B2 JP 3493605 B2 JP3493605 B2 JP 3493605B2 JP 2001072533 A JP2001072533 A JP 2001072533A JP 2001072533 A JP2001072533 A JP 2001072533A JP 3493605 B2 JP3493605 B2 JP 3493605B2
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electrolytic capacitor
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健二 荒木
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固体電解コンデンサ
の製造方法に関し、特に導電性高分子を固体電解質層と
する固体電解コンデンサを製造する方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化、高速化、デジ
タル化に伴って固体電解コンデンサの分野においても小
型、大容量で高周波領域でのインピーダンスが低いコン
デンサが強く要求されている。
【0003】従来、固体電解コンデンサは、タンタルや
アルミニウム等の弁作用を有する金属粉末を焼結した多
孔質陽極体の表面を酸化して誘電体皮膜を形成し、その
上に二酸化マンガンや二酸化鉛等の固体電解質層を形成
している。しかし、これら固体電解質層の抵抗が高いた
めに、高周波領域での等価直列抵抗が高く、インピーダ
ンスが大きいという問題があり、上記の要求に答えられ
ない課題があった。
【0004】この課題を解決するために、上記多孔質陽
極体の表面を電気化学的に陽極酸化し、誘電体皮膜を形
成させた後、この誘電体皮膜上に従来の固体電解質に比
べて電導率の高いポリピロール、ポリチオフェン等の複
素五員環化合物やポリアニリン等の導電性高分子の固体
電解質層を形成したコンデンサが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、誘電体
皮膜で覆われた多孔質体素子の空孔壁の表面全体に導電
性高分子層を被覆することが難しい。そのために、その
固体電解コンデンサの高周波での容量出現の減少や等価
直列抵抗の増大が生じる問題があった。
【0006】図4は従来の固体電解コンデンサの製造方
法において多孔質体素子の細孔内への導電性高分子層の
化学酸化重合形成状態を示す素子要部の模式図である。
【0007】従来技術では、図4(a)に示すように、
表面に誘電体皮膜3が形成された多孔質体素子6を酸化
剤溶液に浸漬して素子空孔部10内に酸化剤(表示して
いない)を付着させ、次いでモノマー溶液に浸漬を行う
と、浸漬を行った時点から、化学酸化重合が始まり、モ
ノマーが素子空孔部10の細部にまで浸透するまでに電
解質である導電性高分子層11が形成されてしまう。こ
の結果、図4(b)のように、素子空孔部10の入り口
が導電性高分子層11で詰まってしまい、次回の処理工
程で、酸化剤またはモノマーが素子空孔部10内に浸透
しなくなってしまう。
【0008】空孔部での導電性高分子層形成用モノマー
(以下、単にモノマーと称す)の化学酸化重合反応を促
進し、コンデンサの容量出現率を改善する技術が特開平
11―74157号公報、特開平11―219862号
公報、特開2000―21686号公報に開示されてい
る。
【0009】特開平11―74157号公報の技術で
は、次のように、化学酸化重合により導電性高分子層が
形成される。即ち、まず誘電体皮膜を形成した弁作用金
属の多孔質体をモノマー、酸化剤及びドーパントを含む
溶液(以下、反応液という)中に浸漬し、そのまま、所
定の時間、反応液中に浸漬し、反応液中で誘電体皮膜の
表面に導電性高分子層を形成する。あるいは、誘電体皮
膜を形成した弁作用金属の多孔質体を反応液中に浸漬し
て誘電体皮膜表面に、反応液を吸着して反応液から多孔
質体を引き上げ、空気中で化学酸化重合を進行させて誘
電体皮膜表面に導電性高分子層を形成する。誘電体皮膜
表面に導電性高分子層が形成される間は、多孔質体ある
いは多孔質体内部の温度は多孔質体外部の溶液温度より
高く保持することがなされる。本技術においては、多孔
質体あるいは多孔質体内部の温度は多孔質体外部の溶液
温度より高く保持することにより、多孔質体内部の化学
酸化重合反応速度を外部の重合反応速度より速くして多
孔質体内部の細孔中への導電性高分子層の生成を増加さ
せようとするものである。
【0010】しかしながら、この技術においては、多孔
質体内部の温度コントロ―ルが難しく細孔中の導電性高
分子層の生成量にバラツキが生じる課題があった。
【0011】特開平11―219862号公報の技術で
は、弁作用金属の焼結体を酸化して表面に酸化皮膜(誘
電体皮膜)を形成した多孔質体をモノマー溶液と酸化剤
溶液とに個別に浸漬して酸化皮膜上に導電性高分子層が
形成される。特に、モノマー溶液から引き上げられた多
孔質体を酸化剤溶液に浸漬させる時間を、多孔質体に含
まれるモノマーの30%が拡散により流出する時間以下
として、多孔質体外部へのモノマーの流出を抑制し、さ
らに反応温度を低下させて、多孔質体内部の導電性高分
子層の収率を向上させている。
【0012】この技術においては、多孔質体外部へのモ
ノマーの流出量を一定に制御することが難しく、多孔質
体内部の導電性高分子層の収率にバラツキが生じ、コン
デンサ容量が安定しない課題があった。
【0013】また、特開2000―21686号公報の
技術では、まず、多孔質体(誘電体皮膜)の外側を第1
の導電性高分子層で被覆した後、第2の導電性高分子層
を誘電体皮膜内部に形成する。第1の導電性高分子層を
化学酸化重合で形成する際には、第2の導電性高分子層
を形成する場合よりも酸化剤濃度を高め、重合速度を大
きくして細孔以外の表面、即ち誘電体皮膜外部表面を優
先的に被覆するようにしている。
【0014】この技術では、多孔質体の外側が第1の導
電性高分子層で被覆されてしまうために、第2の導電性
高分子層を細孔内部に形成する際に、細孔内部への第2
の導電性高分子層形成用の薬液の浸透が阻害されやす
く、細孔内部への導電性高分子層形成が抑制される課題
があった。
【0015】従って、本発明の目的は、上記の従来技術
の問題点を解決し、容量出現率と等価直列抵抗値の改善
された導電性高分子を電解質に用いた固体電解コンデン
サの製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の固体電解コンデ
ンサの製造方法は、表面に弁作用金属の酸化膜からなる
誘電体皮膜が形成された多孔質体素子を酸化剤溶液に接
触させた後、次いで誘電体皮膜を導電性高分子の電解質
層形成用のモノマー溶液に接触させ、誘電体皮膜表面に
導電性高分子からなる電解質層を酸化重合反応によって
形成する工程とを含み、酸化剤溶液およびモノマー溶液
各々に酸化重合反応を遅延する酸化重合遅延剤を含有
させたことを特徴とする。
【0017】酸化重合遅延剤は、重合禁止剤とも呼ば
れ、酸化剤とモノマーが接触した時に、化学酸化重合が
直ちに起こることを禁止し、化学酸化重合反応が起こる
ことを遅らせる働きをする添加剤である。
【0018】モノマーとしては、ピロール,ピロール誘
導体,チオフェン,チオフェン誘導体またはアニリンを
使用することができ、酸化重合遅延剤として、オキシウ
ム化合物,ニトロ化合物,ニトロソ化合物,ニトロキシ
ド系化合物,キノン系化合物やフェノール系化合物を使
用できる。
【0019】また、酸化剤としては、スルフォン酸第二
鉄塩,硫酸,過酸化水素等を使用することができる。
【0020】本発明では、導電性高分子からなる電解質
を化学酸化重合する際に、酸化重合遅延剤を用いること
により、導電性高分子層の重合開始時間に遅延をもたら
し、モノマー及び酸化剤溶液を十分に細孔内部に浸透さ
せた後、重合が開始するようにしたために、細孔内部ま
で充分に導電性高分子層を充填形成でき、導電性高分子
を電解質とする固体電解コンデンサの容量出現率と等価
直列抵抗値を改善できる。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て、図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0022】まず、弁作用を有するタンタル金属粉末に
固体電解コンデンサの陽極となるタンタルワイヤ1を埋
め込んで加圧成形した後焼結して多孔質の陽極体2を形
成する。次いで陽極体2をリン酸水溶液中において、電
気化学的に陽極酸化して陽極体2の表面に酸化タンタル
(Ta25)の誘電体皮膜3を形成して多孔質体素子6
を作製する(図1、図2(a))。
【0023】次に、誘電体皮膜3が形成された多孔質体
素子6を酸化剤溶液7に所定の時間浸漬し(図2
(b))、乾燥を行った後、図2(c)のように、酸化
重合遅延剤を含むモノマー溶液(モノマー/酸化重合遅
延剤混合溶液8)に所定の時間浸漬した後、多孔質体素
子6を酸化剤溶液7から引き上げ、空気中で乾燥する。
【0024】上記の図2(b)〜図2(c)の工程を数
回(3〜10回程度)繰返して実施する。この工程によ
り、多孔質体素子6の誘電体皮膜3の細孔内と表面には
所定の厚さの導電性高分子からなる電解質層4が形成さ
れる。
【0025】酸化剤溶液7としては、p―トルエンスル
フォン酸第二鉄,ドデシルベンゼンスルフォン酸第二
鉄,ベンゼンスルフォン酸第二鉄、ナフタレンスルフォ
ン酸第二鉄等)のスルフォン酸第二鉄塩やその他硫酸ま
たは過酸化水素溶液が使用できる。
【0026】モノマー溶液としては、ピロール,チオフ
ェンまたはそれらの誘導体(3,4―エチレンジオキシ
チオフェンや3,4―ジメチルピロール等)やアニリン
が使用できる。
【0027】また、酸化重合遅延剤としては、パラ―ベ
ンゾキノンジオキシム,ジエチルケトンオキシム等のオ
キシウム化合物、ジニトロベンゼン,ニトロトルエン,
2、2―ジフェニル―ピクリル―ヒドラジル,ピクリン
酸等のニトロ化合物、N―ニトロソフェニルヒドロキシ
ルアミンアンモニウム塩,ニトロソトルエン,ニトロソ
ベンゼン等のニトロソ化合物、2、2、6、6―テトラ
メチル―1―ピペリジニルオキシ,4、4―ジメチル―
3―オキサゾリニルオキシ,2、2、5、5―テトラメ
チル―1―ピロリジニルオキシ,5、5―ジメチル―1
―ピロリン―N―オキシド,2、5、5―トリメチル―
1―ピロリン、N―ターシャリブチル―α―フェニルニ
トロン,α―(4―ピリジル―1―オキシド)―N―タ
ーシャリブチルニトロン,2―メチル―2―ニトロソプ
ロパン、2―ヒドロキシメチル―2―ニトロソプロパ
ン,2、4、6―トリ―ターシャリブチル―ニトロソベ
ンゼン,ニトロソデュレン,ピリジン―N―オキシド等
のニトロキシド系化合物、ベンゾキノン,ナフトキノ
ン,ハイドロキノン,メチルハイドロキノン,ハイドロ
キノンモノメチルエーテル,2、5―ジフェニル―p―
ベンゾキノン,モノ―t―ブチル―p―ベンゾキノン等
のキノン系化合物、カテコール,ピロガロール,2、6
―ジ―t―ブチル―4―メチルフェノール,フェノー
ル,カテコール,レゾルシン,ナフトール等のフェノー
ル系化合物を使用できる。
【0028】酸化重合遅延剤は、モノマー溶液に0.1
〜20wt%で添加されるが、好ましい添加量は1〜2
0wt%である。酸化重合遅延剤の最も好ましい添加量
は、1〜10wt%である。酸化重合遅延剤の添加量が
0.1wt%よりも少ない場合には、誘電体皮膜3の細
孔内壁の誘電体皮膜3の表面への電解質層4の被覆率が
著しく減少する。また、酸化重合遅延剤の添加量が20
wt%を越える場合には、モノマーの酸化重合反応が著
しく抑制されるために、電解質層4が細孔内壁ばかりで
なく、外部表面にも析出しにくくなる。
【0029】次に、上記工法にて、電解質層4を形成
後、カーボンペーストおよび銀ペーストを電解質層4表
面に順次形成することによって陰極層5を形成し、コン
デンサ素子を完成する。このコンデンサ素子のタンタル
ワイヤ1と陰極層5の銀ペーストに外部リード端子を接
続した後、エポキシ樹脂等の外装樹脂にてコンデンサ素
子を外装することにより目的のコンデンサが製造され
る。
【0030】なお、上記の実施の形態では、酸化重合遅
延剤は、モノマー溶液へ混合したが、酸化剤溶液へ混合
してもよく、また、モノマー溶液および酸化剤溶液の両
方に添加することもできる。酸化剤溶液に酸化重合遅延
剤を添加する場合には、その添加量は、モノマー溶液に
添加する場合と同様である。
【0031】酸化重合遅延剤をモノマー溶液および酸化
剤溶液の両方に添加する場合には、両者への添加量の総
和が0.1〜20wt%となるように調整する。酸化重
合遅延剤をモノマー溶液および酸化剤溶液の両方に添加
する場合の酸化重合遅延剤の好ましい総和添加量は1〜
20wt%であり、最も好ましい総和添加量は、1〜1
0wt%である。酸化重合遅延剤の総和添加量が0.1
wt%よりも少ない場合には、細孔内壁の電解質層4の
被覆率が著しく減少する。また、酸化重合遅延剤の総和
添加量が20wt%を越える場合には、モノマーの酸化
重合反応が著しく抑制されるために、電解質層4が細孔
内壁ばかりでなく、外部表面にも形成されにくくなる。
【0032】陽極体の弁作用を有する金属粉末として
は、上記のTaの他にAl,Nb,Ti等を使用するこ
とができる。
【0033】次に、本発明の実施の形態の動作について
図3を参照して説明する。
【0034】図4を参照して上述したように、従来技術
では、多孔質体素子6を酸化剤溶液に浸漬して素子空孔
部10内に酸化剤を付着させ、次いでモノマー溶液に浸
漬を行うと、浸漬を行った時点から、化学酸化重合が始
まり、モノマーが素子空孔部10の細部にまで浸透する
までに電解質である導電性高分子層11が形成されてし
まう。この結果、素子空孔部10の入り口が導電性高分
子層11で詰まってしまい、次回の処理工程で、酸化剤
またはモノマーが素子空孔部10内に浸透しなくなって
しまう。
【0035】本発明では、少なくともモノマー溶液およ
び酸化剤溶液のいずれか一方に酸化重合遅延剤を混入さ
せたために、多孔質体素子6の表面でモノマーと酸化剤
が接触する場合には、酸化重合遅延剤も同時にモノマー
および酸化剤に接触することになる。そのために、多孔
質体素子6をモノマー溶液に浸漬した時点からは、酸化
重合遅延剤の作用のために化学酸化重合反応が始まらな
い。従って、重合開始が始まるまでに素子の細孔部にモ
ノマーが浸透するために、素子空孔部まで導電性高分子
層が形成されるとともに、空孔部入り口での導電性高分
子層による詰まりもなくなる。
【0036】以下、図2を参照し、本発明を実施例に基
づいて、具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
のみ限定されるものではない。
【0037】(実施例1)タンタルワイヤの植立された
1辺が1mmの直方体のタンタル微粉末焼結体ペレット
を0.1重量%硝酸水溶液中で33Vで陽極酸化してそ
の表面に誘電体皮膜を形成して多孔質体素子6を得た
(図2(a))。
【0038】次に、p―トルエンスルホン酸第二鉄の4
0wt%メチルアルコール溶液の酸化剤溶液7に誘電体
皮膜が形成された多孔質体素子6を1分間浸漬(図2
(b))後、素子を酸化剤溶液7から取り出し室温で乾
燥した。
【0039】次いで、ピロール溶液に酸化重合遅延剤と
してp―ベンゾキノンを10wt%濃度添加したモノマ
ー/酸化重合遅延剤混合溶液8に1分間浸漬(図2
(c))後、多孔質体素子6をモノマー/酸化重合遅延
剤混合溶液8から取り出し、30分間空気中で保持し
た。この工程を3回繰り返してポリピロールの導電性高
分子層を多孔質体素子6の表面に形成させた後、表面に
導電性高分子層の形成された多孔質体素子6をブチルア
ルコールで30分間洗浄した。なお、ブチルアルコール
の代わりにイソプロピルアルコールを使用して洗浄する
こともできる。
【0040】更にカーボンペーストおよび銀ペーストを
電解質層4表面に塗布・乾燥して陰極層5を形成させコ
ンデンサ素子を完成する。このコンデンサ素子のタンタ
ルワイヤ1と陰極層5の銀ペーストに外部リード端子を
接続した後、エポキシ樹脂等の外装樹脂にて外装するこ
とにより目的のコンデンサを製造した。
【0041】(実施例2)実施例1の導電性高分子層形
成用のピロールの代わりにチオフェンに変更した以外は
実施例1と同様な方法でコンデンサを完成させた。
【0042】即ち、多孔質体素子6を得た(図2
(a))後、p―トルエンスルホン酸第二鉄の40wt
%メチルアルコール溶液の酸化剤溶液7に多孔質体素子
6を1分間浸漬(図2(b))後、素子を酸化剤溶液7
から取り出し室温で乾燥した。
【0043】次いで、チオフェン溶液に酸化重合遅延剤
としてp―ベンゾキノンを10wt%濃度添加したモノ
マー/酸化重合遅延剤混合溶液8に1分間浸漬(FI
G.3C)後、多孔質体素子6をモノマー/酸化重合遅
延剤混合溶液8から取り出し、30分間空気中で保持し
た。この工程を3回繰り返してポリチオフェンの導電性
高分子層を多孔質体素子6表面に形成させた後、表面に
導電性高分子層の形成された多孔質体素子6をブチルア
ルコールで30分間洗浄した。なお、ブチルアルコール
の代わりにイソプロピルアルコールを使用して洗浄する
こともできる。
【0044】(実施例3)タンタルワイヤの植立された
1辺が1mmの直方体のタンタル微粉末焼結体ペレット
を0.1重量%硝酸水溶液中で33Vで陽極酸化してそ
の表面に誘電体皮膜を形成して多孔質体素子6を得た
(図2(a))。
【0045】次に、p―トルエンスルホン酸第二鉄の4
0wt%メチルアルコール溶液の酸化剤溶液7に酸化重
合遅延剤としてp―ベンゾキノンを5wt%添加した。
この溶液に誘電体皮膜が形成された多孔質体素子6を1
分間浸漬(図2(b))後、素子を酸化剤溶液7から取
り出し室温で乾燥した。
【0046】次いで、ピロール溶液に酸化重合遅延剤と
してp―ベンゾキノンを5wt%濃度添加したモノマー
/酸化重合遅延剤混合溶液8に1分間浸漬(図2
(c))後、多孔質体素子6をモノマー/酸化重合遅延
剤混合溶液8から取り出し、30分間空気中で保持し
た。この工程を3回繰り返してポリピロールの導電性高
分子層を多孔質体素子6の表面に形成させた後、表面に
導電性高分子層の形成された多孔質体素子6をブチルア
ルコールで30分間洗浄した。
【0047】更にカーボンペーストおよび銀ペーストを
電解質層4表面に塗布・乾燥して陰極層5を形成させコ
ンデンサ素子を完成する。このコンデンサ素子のタンタ
ルワイヤ1と陰極層5の銀ペーストに外部リード端子を
接続した後、エポキシ樹脂等の外装樹脂にて外装するこ
とにより目的のコンデンサを製造した。
【0048】上記の本発明の説明では、弁作用金属の多
孔質体を陽極酸化して形成した誘電体皮膜表面に導電性
高分子の電解質層を形成する場合について説明したが、
本発明は弁作用金属の有機金属化合物を熱分解して形成
した多孔質の誘電体皮膜に導電性高分子の電解質層を被
覆して固体電解コンデンサを製造する場合にも適用でき
ることはいうまでもない。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、少な
くともモノマーの溶液および酸化剤溶液のいずれか一方
に酸化重合遅延剤を混合して重合開始時期を遅らせるこ
とによって次のような効果が得られる。 (1)多孔質体の細孔部入り口の導電性高分子層による
閉塞が防止できるために、細孔部内部の導電性高分子層
による被覆率が向上する。 (2)その結果、高周波数での容量出現率が高くなり、
等価直列抵抗も低減でき、特性の向上した固体電解コン
デンサを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の固体電解コンデンサの製
造方法により製造されたコンデンサの断面図である。
【図2】本発明の固体電解コンデンサの製造方法の工程
を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明の固体電解コンデンサの製造方法の導電
性高分子層の化学酸化重合形成工程における酸化重合遅
延剤の作用について説明するための素子要部の模式図で
ある。
【図4】従来の固体電解コンデンサの製造方法における
多孔質体素子の細孔内への導電性高分子層の化学酸化重
合形成状態を説明するための素子要部の模式図である。
【符号の説明】
1 タンタルワイヤ 2 陽極体 3 誘電体皮膜 4 電解質層 5 陰極層 6 多孔質体素子 7 酸化剤溶液 8 モノマー/酸化重合遅延剤混合溶液 10 素子空孔部 11 導電性高分子層

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に弁作用金属の酸化膜からなる誘電
    体皮膜が形成された多孔質体素子を酸化剤溶液に接触さ
    せる第1の工程と、前記誘電体皮膜を導電性高分子の電
    解質層形成用のモノマー溶液に接触させ、前記誘電体体
    皮膜表面に前記導電性高分子の電解質層を酸化重合反応
    によって形成する第2の工程とを含み、前記酸化剤溶液
    および前記モノマー溶液の各々が前記酸化重合反応を遅
    延する酸化重合遅延剤を添加されている固体電解コンデ
    ンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記モノマーがピロール,ピロール誘導
    体,チオフェン,チオフェン誘導体およびアニリンの中
    から選択された一つである請求項1記載の固体電解コン
    デンサの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化重合遅延剤が、オキシウム化合
    物,ニトロ化合物,ニトロソ化合物,ニトロキシド系化
    合物およびキノン系化合物の中から選択された一つの化
    合物である請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記酸化剤溶液へ添加された前記酸化重
    合遅延剤添加濃度が0.1〜20wt%である請求項
    1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記モノマー溶液へ添加された前記酸化
    重合遅延剤添加濃度が0.1〜20wt%である請求
    項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記酸化剤溶液および前記モノマー溶液
    の両方に添加された前記酸化重合遅延剤添加総和濃度
    が0.1〜20wt%である請求項1記載の固体電解コ
    ンデンサの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記酸化剤が、スルフォン酸第二鉄塩,
    硫酸および過酸化水素の中から選択された一つである請
    求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記弁作用金属が、Ta,Al,Nbお
    よびTiの中から選択された一つである請求項1記載の
    固体電解コンデンサの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記酸化剤溶液がメチルアルコールを含
    む請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第1の工程と、前記第2の工程と
    が3回以上繰り返される請求項1記載の固体電解コンデ
    ンサの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記第2の工程の後に、前記導電性高
    分子層の形成された前記誘電体皮膜の表面をブチルアル
    コールおよびイソプロピルアルコールから選択された一
    つのアルコールで洗浄する工程を含む請求項1記載の固
    体電解コンデンサの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記第2の工程の後に、前記導電性高
    分子層の表面に陰極層を形成する工程を含む請求項1記
    載の固体電解コンデンサの製造方法。
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