JP4877820B2 - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解コンデンサに関する。
一般に固体電解コンデンサは、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)などの弁作用金属からなる陽極を陽極酸化することによりその表面に主に酸化物からなる誘電体層を形成し、この誘電体層の上に電解質層を形成し、その上に陰極層を形成することにより構成されている。電解質層としては、たとえば、化学重合法により形成したポリピロールからなる第1導電性高分子層と、電解重合法により形成したポリピロールからなる第2導電性高分子層とを積層した構造のものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開平4−48710号公報
しかしながら、このような従来の固体電解コンデンサでは、誘電体層と電解質層との界面で剥離が生じ、静電容量が低下するという問題があった。特に高温試験や部品実装時のリフロー工程などで熱処理が施された場合には、界面での剥離がさらに顕著となり、静電容量がさらに低下(劣化)する。このため、近年の固体電解コンデンサには、こうした特性の改善が強く求められている。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電容量の劣化を抑制することが可能な固体電解コンデンサを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極と、導電性高分子層を含む陰極との間において、該導電性高分子層と接して設けられた誘電体層を備え、導電性高分子層と誘電体層との界面に空孔が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、静電容量の劣化を抑制することが可能な固体電解コンデンサが提供される。
以下、本発明を具現化した実施形態について図面に基づいて説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。図1は本実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す概略断面図である。図2は図1の固体電解コンデンサにおける陽極体近傍の拡大図であり、陽極体を構成する金属粒子1つ分の断面構造に相当する。
本実施形態の固体電解コンデンサは、図1に示すように、陽極体1と、この陽極体1の表面に形成された誘電体層2と、誘電体層2の上に形成された導電性高分子層3と、この導電性高分子層3の上に形成された陰極層4と、を備えている。そして、図2に示すように、導電性高分子層3と誘電体層2との界面には空孔3aが形成されている。こうした空孔3aは、その内面に誘電体層2が露出した状態で、導電性高分子層3と誘電体層2との界面に沿って点在している。ここで、本実施形態の「空孔」とは、導電性高分子層3と誘電体層2との界面において、誘電体層2側の導電性高分子層3の表面の凹部に対して、該凹部の内部が空洞となっている状態を示す。
具体的な固体電解コンデンサの構成は以下の通りである。
陽極体1は、弁作用金属からなる金属粒子の多孔質焼結体で構成され、その内部に弁作用金属からなる陽極リード1aの一部が埋め込まれている。ここで、陽極リード1aおよび陽極体1を構成する弁作用金属としては、絶縁性の酸化膜を形成できる金属材料であり、たとえば、ニオブ、タンタル、チタン(Ti)などが採用される。また、上述の弁作用金属同士の合金を採用してもよい。
誘電体層2は、弁作用金属の酸化物からなる誘電体で構成され、陽極リード1aおよび陽極体1の表面上に設けられている。たとえば、弁作用金属がニオブ金属から構成される場合には、誘電体層2は酸化ニオブ(Nb)となる。また、本実施形態では、誘電体層2内にはフッ素(F)が含まれ、フッ素は誘電体層2の陽極側に偏在している。具体的には、フッ素は誘電体層2の厚さ方向(誘電体層2の陰極側から陽極側に向う方向)に濃度分布を有し、フッ素の濃度は誘電体層2と陽極体1との界面で最大となっている。
導電性高分子層3は、電解質層として機能し、誘電体層2の表面上に設けられている。この導電性高分子層3は、化学重合法により形成された第1導電性高分子層と、電解重合法により形成された第2導電性高分子層との積層膜となっている。そして、第1導電性高分子層には誘電体層2側の表面に複数の凹部が設けられ、該凹部の内部が空洞となることにより、第1導電性高分子層と誘電体層2との界面には複数の空孔3aが形成されている。こうした空孔3aは、図2に示すように、その内面に誘電体層2が露出した状態で、第1導電性高分子層と誘電体層2との界面に沿って点在して分布している。また、空孔3aは所定の孔径Dおよび所定の間隔Lを有して分布している。なお、導電性高分子層3(第1導電性高分子層および第2導電性高分子層)の材料としては、導電性を有する高分子材料であれば特に限定されないが、導電性に優れたポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフランなどの材料が採用される。
陰極層4は、カーボン粒子を含む層からなるカーボン層4aと、銀粒子を含む層からなる銀ペースト層4bとの積層膜で構成され、導電性高分子層3の上に設けられている。こうした陰極層4および導電性高分子層3により陰極が構成される。
本実施形態では、さらに陰極層4の上に導電性接着材5を介して平板状の陰極端子6が接続され、陽極リード1aに平板状の陽極端子7が接続されている。そして、陽極端子7および陰極端子6の一部が、図1のように外部に引き出される形で、エポキシ樹脂などからなるモールド外装体8が形成されている。陽極端子7および陰極端子6の材料としては、ニッケル(Ni)などの導電性材料を用いることができ、モールド外装体8から露出した陽極端子7および陰極端子6の端部は、折り曲げて本固体電解コンデンサの端子として機能させる。
なお、陽極体1は本発明の「陽極」、誘電体層2は本発明の「誘電体層」、導電性高分子層3は本発明の「導電性高分子層」、及び空孔3aは本発明の「空孔」の一例である。
(製造方法)
次に、図1に示す本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
(工程1)陽極リード1aの周囲に、陽極リード1aの一部を埋め込むように成形された弁作用を有する金属粒子からなる成形体を真空中で焼結することにより、多孔質焼結体からなる陽極体1を形成する。この際、金属粒子間は溶着される。
(工程2)陽極体1をフッ化アンモニウム水溶液中において陽極酸化を行うことにより、陽極体1の周囲を覆うように弁作用金属の酸化物からなる誘電体層2を形成する。この際、誘電体層2にはフッ素が取り込まれ、フッ素は誘電体層2の陽極側(誘電体層2と陽
極体1との界面)に偏在して分布する。
(工程3)誘電体層2の表面上に、化学重合法を用いて第1導電性高分子層を形成する(第1ステップ)。具体的には、化学重合法では、酸化剤を用いてモノマーを酸化重合することにより第1導電性高分子層を形成する。本実施形態では、化学重合の設定温度を所定の振幅で、且つ、所定の周期で変動させて行うことにより、誘電体層2と第1導電性高分子層との界面に沿って複数の空孔3aを発生させている。
引き続き、第1導電性高分子層の表面上に、電解重合法を用いて第2導電性高分子層を形成する(第2ステップ)。具体的には、電解重合法では、第1導電性高分子層を陽極とし、モノマーおよび電解質を含む電解液中において外部陰極との間で電解重合することにより第2導電性高分子層を形成する。
このようにして、誘電体層2上に第1導電性高分子層と第2導電性高分子層との積層膜からなる導電性高分子層3を形成し、誘電体層2と導電性高分子層3との界面に沿って複数の空孔3aを点在させる。
(工程4)導電性高分子層3上にカーボンペーストを塗布、乾燥することによりカーボン層4aを形成する。さらに、このカーボン層4a上に銀ペーストを塗布、乾燥することにより銀ペースト層4bを形成する。これにより、導電性高分子層3上にカーボン層4aと銀ペースト層4bとの積層膜からなる陰極層4が形成される。
(工程5)平板状の陰極端子6上に導電性接着材5を塗布した後、この導電性接着材5を介して陰極層4と陰極端子6とを接触させた状態で乾燥させることにより、陰極層4と陰極端子6とを接続する。また、陽極リード1a上に平板状の陽極端子7をスポット溶接により接続する。
(工程6)トランスファーモールド法を用いてエポキシ樹脂からなるモールド外装体8を周囲に形成する。この際、陽極リード1a、陽極体1、誘電体層2、導電性高分子層3、及び陰極層4を内部に収納するとともに、陽極端子7および陰極端子6の端部を外部(相反する方向)に引き出すように形成する。
(工程7)モールド外装体8から露出した陽極端子7および陰極端子6の先端部を下方に折り曲げ、モールド外装体8の下面に沿って配置する。この両端子の先端部は、固体電解コンデンサの端子として機能し、実装基板に固体電解コンデンサを電気的に接続するために使用される。
以上の工程を経て、本実施形態の固体電解コンデンサが製造される。
以下の実施例および比較例では、陰極層まで形成した固体電解コンデンサを作製し、その特性評価を行った。
(実施例1)
実施例1では、上述実施形態の製造方法における各工程(工程1〜工程4)に対応した工程を経て固体電解コンデンサA1を作製した。
(工程1A)電解酸化被膜(誘電体層)形成後のニオブ多孔質焼結体の容量と電解電圧の積であるCV値が150,000μF・V/gとなるニオブ金属粉末を用意する。このニオブ金属粉末を用いて陽極リード1aの一部を埋め込むようにして成型し、真空中において1200℃程度で焼結する。これにより、ニオブ多孔質焼結体からなる陽極体1を形
成する。この際、ニオブ金属粒子間は溶着される。以下、特に断らない限り、各実施例および比較例におけるCV値は150,000μF・V/gである。
(工程2A)焼結された陽極体1に対して、約60℃に保持した約0.1重量%のフッ化アンモニウム水溶液中において約10Vの定電圧で約10時間陽極酸化を行う。これにより、陽極体1の周囲を覆うようにフッ素を含む酸化ニオブからなる誘電体層2を形成する。この際、フッ素は誘電体層2の厚さ方向に濃度分布を有し、フッ素の濃度は誘電体層2と陽極体1との界面で最大となる。
(工程3A)誘電体層2が形成された陽極体1を、酸化剤溶液に浸漬して誘電体層2上に酸化剤を付着させる。そして、恒温槽内において温度制御された状態で、酸化剤が付着した誘電体層2をピロールモノマー蒸気中に保持し、誘電体層2上でピロールモノマーを中心温度25℃(振幅2.0℃、周期10分)で40分間重合させる(第1ステップ)。このようにして、誘電体層2上にポリピロールからなる第1導電性高分子層を形成する。この際、誘電体層2と第1導電性高分子層との界面に沿って複数の空孔3aが点在して形成される。上述の温度制御では、こうした空孔3aは、その内面に誘電体層2が露出した状態で界面に発生し、平均孔径10nmおよび隣接する空孔間の平均間隔50nm(平均孔径の5倍)の状態に仕上がる。これは、上述のような温度制御を行うことで、反応初期段階で誘電体層表面に発生する気泡が導電性高分子層内に取り込まれやすくなるとともに、取り込まれた気泡が成長あるいは互いに集結するようになったためと推察される。なお、本発明における孔径Dとしては、陽極体近傍の断面SEM(走査電子顕微鏡)像などから100個程度の空孔を抽出し、空孔断面の内径の最大値を孔径として、その孔径の平均値より求める平均孔径を採用している。また、隣接する空孔間の間隔Lは、同様にして100箇所程度の隣接空孔間における空孔端から空孔端までの間隔を抽出し、その間隔の平均値より求める平均間隔を採用している。
引き続き、第1導電性高分子層を陽極とし、ピロールモノマーおよび電解質を含む電解液中において外部陰極との間で電解重合することにより、第1導電性高分子層上にさらに第2導電性高分子層を所定の厚さで形成する(第2ステップ)。
このようにして、誘電体層2上に第1導電性高分子層と第2導電性高分子層との積層膜からなる導電性高分子層3を形成するとともに、誘電体層2と導電性高分子層3との界面に沿って複数の空孔3aを点在させる。
(工程4A)導電性高分子層3上にカーボンペーストを塗布、乾燥することによりカーボン粒子を含む層からなるカーボン層4aを形成し、このカーボン層4a上に銀ペーストを塗布、乾燥することにより銀粒子を含む層からなる銀ペースト層4bを形成する。これにより、導電性高分子層3上にカーボン層4aと銀ペースト層4bとの積層膜からなる陰極層4を形成する。
このようにして、実施例1における固体電解コンデンサA1が作製される。
(実施例2)
実施例2では、工程3Aの第1ステップにおける温度制御条件を、周期10分(中心温度25℃、振幅2.0℃)から周期5分(中心温度25℃、振幅2.0℃)に代えて空孔を形成する以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサA2を作製した。なお、この条件による空孔は、平均孔径1nmおよび平均間隔5nm(平均孔径の5倍)の状態で形成される。
(実施例3〜9)
実施例3〜9では、工程3Aの第1ステップにおける温度制御を、周期10分(中心温
度25℃、振幅2.0℃)から周期10秒、7分、8分、13分、17分、20分、60分(中心温度25℃、振幅2.0℃)に代えて空孔を形成する以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサA3〜A9を作製した。なお、こうした条件による空孔は、表1に示す平均孔径および平均間隔(対平均孔径比)の状態で形成される。
(実施例10)
実施例10では、工程3Aの第1ステップにおける温度制御条件を、振幅2.0℃(中心温度25℃、周期10分)から振幅5.0℃(中心温度25℃、周期10分)に代えて空孔を形成する以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサA10を作製した。なお、この条件による空孔は、平均孔径10nmおよび平均間隔20nm(平均孔径の2倍)の状態で形成される。
(実施例11〜18)
実施例11〜18では、工程3Aの第1ステップにおける温度制御を、振幅2.0℃(中心温度25℃、周期10分)から振幅10.0℃、4.0℃、3.0℃、1.7℃、1.5℃、1.3℃、1.0℃、0.2℃(中心温度25℃、周期10分)に代えて空孔を形成する以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサA11〜A18を作製した。なお、こうした条件による空孔は、表2に示す平均孔径および平均間隔(対平均孔径比)の状態で形成される。
(比較例)
比較例では、工程3Aの第1ステップにおける温度制御条件を、従来条件と同じ温度一定(温度25℃)にして第1導電性高分子層を形成する以外は、実施例1と同様にして固体電解コンデンサXを作製した。なお、この条件では誘電体層との界面に空孔が発生することなく第1導電性高分子層が形成される。
(評価)
まず、実施例1の固体電解コンデンサA1における陽極体近傍の断面観察を行った。図3(A)は陽極体を構成する多孔質焼結体の断面SEM像であり、図3(B)はこの断面SEM像に対応した陽極体近傍の模式図である。図3より明らかなように、複数の空孔3aが誘電体層2と導電性高分子層3との界面に沿って点在して形成されているとともに、その内面に誘電体層2と導電性高分子層3が露出して形成されていることが分かる。
次に、固体電解コンデンサについて静電容量維持率を評価した。表1は各種固体電解コンデンサの静電容量維持率の評価結果(平均孔径依存)を示し、表2は各種固体電解コンデンサの静電容量維持率の評価結果(平均間隔依存)を示す。
静電容量維持率は、高温放置試験前後での静電容量を用いて、以下の式(1)により算出される。なお、この値が100に近い程、静電容量の劣化が少ないことを表している。
静電容量維持率(%)=(高温放置試験後の静電容量/高温放置試験前の静電容量)×100 ・・・(1)
静電容量の測定条件は以下の通りである。
静電容量(固体電解コンデンサの周波数120Hzでの静電容量)は、各種固体電解コンデンサに対して、高温放置試験前と、高温放置試験として固体電解コンデンサを105℃に保持した恒温槽中で2000時間経過した後とにLCRメータを用いて測定した。
表1に示すように、従来の比較例(固体電解コンデンサX)に対し、誘電体層と導電性高分子層との界面に各平均孔径を有する空孔を設けた実施例1〜9(固体電解コンデンサA1〜A9)では静電容量維持率の劣化が低減され、空孔の介在により静電容量の劣化が抑制されていることが分かる。これは、熱負荷が加えられた場合に誘電体層と導電性高分子層との熱膨張率の差に起因して発生する応力が、界面に介在する空孔が変形(膨張・収縮)することにより緩和され、これに伴い誘電体層と導電性高分子層との間での剥離が抑制されるためであると推察される。
また、こうした実施例の中で空孔の平均孔径が1nm〜50nmの範囲では、静電容量維持率の劣化をさらに低減させることができる。特に空孔の平均孔径が10nmの場合には上記効果がもっとも顕著となる。なお、空孔の平均孔径が0.5nmの場合に静電容量維持率の劣化抑制効果が小さいのは、界面に介在する空孔が小さいためにその変形による応力緩和効果が十分得られていないためと推察される。また、空孔の平均孔径が70nmの場合には、界面に介在する空孔により誘電体層と導電性高分子層との接触面積が小さくなり、誘電体層と導電性高分子層との間で剥離した場合と同じ状態となっているためと推察される。
表2に示すように、従来の比較例(固体電解コンデンサX)に対し、誘電体層と導電性高分子層との界面に各平均間隔で分布する空孔を設けた実施例1、実施例10〜18(固体電解コンデンサA1、A10〜A18)では静電容量維持率の劣化が低減され、空孔の介在により静電容量の劣化が抑制されていることが分かる。また、こうした実施例の中で隣接する空孔間の平均間隔が平均孔径の2倍〜10倍の範囲で分布する場合には、静電容量維持率の劣化をさらに低減させることができる。特に空孔間の平均間隔が平均孔径の5倍の場合には上記効果がもっとも顕著となる。なお、空孔間の平均間隔が平均孔径の1.5倍の場合に静電容量維持率の劣化抑制効果が小さいのは、高密に分布する空孔の存在により誘電体層と導電性高分子層との接触面積が小さくなり、誘電体層と導電性高分子層との間で剥離した場合と同じ状態となっているためと推察される。また、空孔間の平均間隔が平均孔径の12倍の場合には、界面に介在する空孔が少ないためにその変形による応力緩和効果が十分得られていないためと推察される。
本実施形態の固体電解コンデンサによれば、以下の効果を得ることができる。
(1)誘電体層2と導電性高分子層3との界面に空孔3aを点在して設けたことで、熱負荷が加えられた場合に誘電体層2と導電性高分子層3との熱膨張率の差に起因して発生する応力が、界面に介在する空孔3aが変形(膨張・収縮)することにより緩和され、これに伴い誘電体層2と導電性高分子層3との間での剥離を抑制することができる。この結果、静電容量の劣化が抑制された固体電解コンデンサを得ることができる。
(2)空孔3aを、その内面に誘電体層2が露出した状態で、導電性高分子層3と誘電体層2との界面に設けたことで、界面近傍における導電性高分子層3の膨張あるいは収縮が、空孔3a内に露出する誘電体層2の露出面に沿って生じやすくなり、より効果的に空孔3aを変形させることができる。このため、界面で生じる誘電体層2と導電性高分子層3との間での剥がれをより確実に抑制することができ、静電容量維持率の劣化をさらに低減することができる。
(3)導電性高分子層3の表面凹部内を空洞とした空孔3aを設けたことで、誘電体層
2よりも可塑性を有する導電性高分子層3によって空孔3aがより変形しやすくなるので、上記(1)および(2)の効果をより顕著に享受することができるようになる。
(4)誘電体層2と導電性高分子層3との界面に介在させる空孔3aの孔径を、平均孔径で1nm〜50nmの範囲としたことで、上記(1)〜(3)の効果をより顕著に得ることができる。
(5)誘電体層2と導電性高分子層3との界面に介在させる空孔3aを、隣接する空孔間の平均間隔が平均孔径の2倍〜10倍の範囲となるように分布したことで、少なくとも上記(1)〜(3)の効果をより顕著に得ることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態(実施例)に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態(実施例)も本発明の範囲に含まれうるものである。
上記実施例では、ニオブ金属を採用した例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、タンタルやチタンなどの弁作用金属あるいはその合金であれば、その表面に形成される誘電体層と導電性高分子層との界面に空孔を導入することで、対応する上記効果を享受することができる。
上記実施例では、ポリピロールからなる導電性高分子層を採用した例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフランなどの導電性高分子層であれば、上述のような温度制御を施すにより誘電体層との界面に空孔を導入することがき、対応する上記効果を享受することができる。
上記実施形態では、誘電体層上に導電性高分子層を形成する際に、所定の温度制御を行うことにより導電性高分子層と導電体層との界面に空孔を生じさせた例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、陽極体の表面に誘電体層を形成する際に、誘電体層の表面近傍にマイクロピット(微細な凹部)を生じさせた後、従来の温度制御で導電性高分子層を形成することによりマイクロピットに対応して空孔を設けるようにしてもよい。この方法では、誘電体層の形成後に、酸系の薬液処理により誘電体層のマイクロピットを顕在化させることで、導電性高分子層の形成後に生じる空孔の大きさを制御することが可能である。このように製造された固体電解コンデンサにおいても、導電性高分子層と誘電体層との界面に空孔を介在させることができ、少なくとも上記(1)および(2)の効果を享受することができる。
次に、本件発明の上記実施の形態から把握できる請求項以外の技術思想を、その効果とともに記載する。
陽極の表面を酸化することにより誘電体層を形成する第1の工程と、前記誘電体層上に導電性高分子層を形成する第2の工程と、を備える固体電解コンデンサの製造方法において、前記第2の工程は、化学重合法により前記誘電体層上に第1導電性高分子層を形成する第1ステップと、電解重合法により前記第1導電性高分子層上に第2導電性高分子層を形成する第2ステップと、を含み、前記第1ステップでは、化学重合時の処理温度を所定の振幅で、且つ、所定の周期で変動させて行い、前記誘電体層との界面に空孔を形成していることを特徴とした固体電解コンデンサの製造方法。
(6)本製造方法によれば、上記(1)〜(5)に記載のような好適な固体電解コンデンサを製造することができる。
(7)本製造方法によれば、化学重合法における温度制御条件の変更で、導電性高分子層を構成する第1導電性高分子層と誘電体層との界面に空孔が導入された固体電解コンデ
ンサを製造することができ、静電容量の劣化が抑制された固体電解コンデンサを容易に実現することができる。
本実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す概略断面図。 図1の固体電解コンデンサにおける陽極体近傍の拡大図。 (A),(B)実施例1の固体電解コンデンサにおける陽極体近傍の断面SEM像およびこの断面SEM像に対応した陽極体近傍の模式図。
符号の説明
1 陽極体、1a 陽極リード、2 誘電体層、3 導電性高分子層、3a 空孔、4
陰極層、4a カーボン層、4b 銀ペースト層、5 導電性接着材、6 陽極端子、7 陰極端子、8 モールド外装体。

Claims (3)

  1. 陽極と、導電性高分子層を含む陰極との間において、該導電性高分子層と接して設けられた誘電体層を備え、
    前記導電性高分子層と前記誘電体層との界面に空孔が形成され
    前記空孔は前記導電性高分子層の表面に形成される凹部により構成されていることを特徴とした固体電解コンデンサ。
  2. 前記空孔の孔径は、平均孔径で1nm〜50nmの範囲であることを特徴とした請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記空孔は、隣接する空孔間の平均間隔が平均孔径の2倍〜10倍の範囲で分布していることを特徴とした請求項1または2のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
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