JP2006135191A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを有する固体電解コンデンサを製造することが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供すること。
【解決手段】 表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する準備工程と、前記弁作用金属基体の前記誘電体層上に、プロトン供与性高分子化合物を付着させる付着工程と、前記プロトン供与性高分子化合物が付着した前記誘電体層上に、導電性高分子化合物を構成する単量体及び該単量体を酸化重合させるための酸化剤を付着させ、前記単量体を重合させることにより、前記誘電体層上に固体電解質層を形成する重合工程と、を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【選択図】 図3
【解決手段】 表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する準備工程と、前記弁作用金属基体の前記誘電体層上に、プロトン供与性高分子化合物を付着させる付着工程と、前記プロトン供与性高分子化合物が付着した前記誘電体層上に、導電性高分子化合物を構成する単量体及び該単量体を酸化重合させるための酸化剤を付着させ、前記単量体を重合させることにより、前記誘電体層上に固体電解質層を形成する重合工程と、を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【選択図】 図3
Description
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
近年、電子機器のデジタル化、小型化、高速化がますます加速されている。このような状況下、各種電子機器に多用される高周波用途に適した電子部品の一つである電解コンデンサには、従来にも増して大容量化、高周波動作時の低インピーダンス化が要求されるとともに、動作安定性、信頼性、及び、更なる長寿命化が熱望されている。
電解コンデンサは、一般に、アルミニウム、タンタル等から成るいわゆる弁作用金属層と、その表面が陽極酸化されることにより形成される酸化皮膜からなる誘電体層と、電解質層と、グラファイトや銀等からなる導電体層とが順次積層された構造を有している。
このような電解コンデンサは、電解質材料の性状により、液体電解コンデンサと固体電解コンデンサの2種に大別される。前者は、電解質材料として液状の電解質(電解液)を含有する電解質層を備えるものであり、後者は、電解質材料として固体状の電解質(錯塩、導電性ポリマー等)を含有する電解質層を備えるものである。これらを諸特性の観点から比較すると、前者は、電解質の漏洩あるいは蒸発(ドライアップ)に起因する経時劣化を本質的に引き起こし易いのに対し、後者はそのようなおそれが殆どない。
かかる利点に基づいて、最近では固体電解コンデンサの研究開発が活発に行われており、特に、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等の観点から、開発・実用化の焦点は、二酸化マンガンや錯塩を用いたものからポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等に電子供与性や電子吸引性の物質(ドーパント)をドープさせた共役系の導電性高分子を用いたものへと急速に移行しつつある。
ところで、上述した一般的な構成の電解コンデンサでは、通常、高容量化のために弁作用金属層が粗面化・拡面化され、その表面は微細な凹凸形状となっている。よって、その弁作用金属層上に形成される誘電体層も同様に微細凹凸形状となっている。誘電体層は、電解コンデンサが無負荷状態で長期間放置された場合に生じる自然劣化、急激な温度変化、電気的衝撃(過電圧、逆電圧、又は過大なリップル電流印加)、物理的な衝撃の付加といった要因によって、その機能の消失に至る甚大な損傷を受けるおそれがある。このような損傷が生じると、電解コンデンサは漏れ電流の増大、ひいては短絡といった現象を引き起こす。そのため、このような短絡の発生を防止するためには、電解コンデンサが、誘電体層の損傷部分を自ら修復する機能(以下、「自己修復機能」という)を有していることが望ましい。
これに関し、上述の電解液等を用いた液体電解コンデンサにおいては、損傷部分に出現(露呈)した弁作用金属が電解液と接触することになる。この電解液中にはイオン性分子又は化合物が含有されており、電解コンデンサに所定の定格電圧が印加されれば、イオン性分子又は化合物から生成される酸素によって弁作用金属が酸化され、誘電体層の損傷部分が再生される。これに対して、固体電解コンデンサは、電解質がイオン伝導性を実質的に有していないため、上述のような自己修復機能を本質的に有していない。そのため、誘電体層に極めて局所的な損傷部分が出現すると、そこに電流経路が形成されることになる。電流の発生によりジュール熱が局所的に生じ、それによって固体電解質の一部が不導体化して、結果として漏れ電流の電流経路が遮断される場合もあるが、損傷状態、損傷領域が多大であれば電流経路を遮断しきれなくなり、短絡に至ってしまう場合があるという欠点があった。
そこで、導電性高分子タイプの固体電解コンデンサに対し、その優れた特性及び物性を維持しつつ、自己修復機能を付与する試みがなされており、例えば、電解質として電解液と導電性高分子化合物とを併用した電解コンデンサが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平11−283874号公報
特開2000−21689号公報
しかしながら、上述のように電解液と導電性高分子化合物とを併用した電解コンデンサは、電解質中に電解液を含む点において電解液タイプの電解コンデンサと相違せず、電解液の漏洩や蒸発に起因する経時劣化を十分に抑制し難いといった問題を有している。
そのため、電解質中に電解液を含有させることなく、固体電解コンデンサに自己修復機能を付与することが望まれている。
ところで、電解質中に電解液を含まない固体電解コンデンサは、自己修復機能の点以外に、更に以下の欠点を有している。すなわち、固体電解コンデンサにおいては、その高容量化を実現するために、弁作用金属層の表面に誘電体層が形成されてなる弁作用金属基体の粗面化・拡面化された部分に導電性高分子化合物をできるだけ充填して理論容量に近づけているが、完全に充填することは困難であり、特に化学酸化重合により導電性高分子化合物からなる電解質層を形成する場合には、充填がより困難となって、理論容量に近い容量を得ること、すなわち、十分な容量出現率を得ることが難しいという欠点がある。
また、固体電解コンデンサには、優れた耐電圧性も要求されている。耐電圧性は、固体電解コンデンサに自己修復機能を付与することによって向上させることができるが、それ以外の方法で耐電圧性を向上させるためには、誘電体層の厚みを厚くすることが有効である。しかしながら、誘電体層の厚みを厚くすると容量が小さくなる傾向があり、優れた耐電圧性と十分な容量とを同時に得ることが困難である。
このように、従来の固体電解コンデンサは、十分な容量出現率を得ることが困難であるとともに、自己修復機能を有していないために、優れた耐電圧性を得ることが困難であるという問題を有していた。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを有する固体電解コンデンサを製造することが可能な固体電解コンデンサの製造方法及びその製造方法により製造された固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する準備工程と、上記弁作用金属基体の上記誘電体層上に、プロトン供与性高分子化合物を付着させる付着工程と、上記プロトン供与性高分子化合物が付着した上記誘電体層上に、導電性高分子化合物を構成する単量体及び該単量体を酸化重合させるための酸化剤を付着させ、上記単量体を重合させることにより、固体電解質層を形成する重合工程と、を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
かかる製造方法では、付着工程により誘電体層上にプロトン供与性高分子化合物を付着させた後に、単量体及び酸化剤を付着させて重合を行っているため、固体電解質層中にはプロトン供与性高分子化合物が含有されることとなる。そして、プロトン供与性高分子化合物を含有することで固体電解質層にはイオン伝導性が付与され、得られる固体電解コンデンサは十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを得ることができる。
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法において、上記付着工程は、上記弁作用金属基体を上記プロトン供与性高分子化合物と溶媒とを含む溶液に浸漬した後、該溶液から引き上げ、上記溶媒を除去することにより行うことが好ましい。
ここで、上記溶媒としては、上記プロトン供与性高分子化合物を溶解又は分散可能なものを用いることができる。また、この溶媒の除去は、例えば上記溶液が付着した状態の弁作用金属基体を乾燥することによって行うことができる。
かかる付着工程によれば、弁作用金属基体の誘電体層にプロトン供与性高分子化合物を効率的に且つ十分に付着させることができる。そのため、得られる固体電解コンデンサは、より十分な容量出現率とより優れた耐電圧性とを得ることができる。
更に、本発明の固体電解コンデンサの製造方法において、上記プロトン供与性高分子化合物は、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するものであることが好ましい。
かかるプロトン供与性高分子化合物は、分散性が良好であり、固体電解質層に優れたイオン伝導性を付与することができる。そのため、かかるプロトン供与性高分子化合物を用いた固体電解コンデンサの製造方法によれば、より十分な容量出現率とより優れた耐電圧性とを有する固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明はまた、上記本発明の固体電解コンデンサの製造方法により製造されたものであることを特徴とする固体電解コンデンサを提供する。
かかる固体電解コンデンサは、上述した本発明の固体電解コンデンサの製造方法により製造されているため、十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを得ることができる。
本発明によれば、十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを有する固体電解コンデンサを得ることが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記本発明の固体電解コンデンサの製造方法により製造されており、十分な容量出現率と優れた耐電圧性とを有する固体電解コンデンサを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
[固体電解コンデンサ]
まず、本発明の固体電解コンデンサの製造方法により製造される本発明の固体電解コンデンサについて説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサの一例を示す模式断面図である。図1に示すように、固体電解コンデンサ1は、陽極導出線8及び陰極導出線10が接続された固体電解コンデンサ素子18が、樹脂モールド層16で覆われた構成を有している。また、陽極導出線8、陰極導出線10には外部陽極端子12、外部陰極端子14がそれぞれ接続されている。そして、固体電解コンデンサ素子18は、交互に一定間隔で配置された電極2(第1の電極層)と電極6との間に誘電体層4が設けられたものである。また、電極2及び誘電体層4から弁作用金属基体5が構成されている。
まず、本発明の固体電解コンデンサの製造方法により製造される本発明の固体電解コンデンサについて説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサの一例を示す模式断面図である。図1に示すように、固体電解コンデンサ1は、陽極導出線8及び陰極導出線10が接続された固体電解コンデンサ素子18が、樹脂モールド層16で覆われた構成を有している。また、陽極導出線8、陰極導出線10には外部陽極端子12、外部陰極端子14がそれぞれ接続されている。そして、固体電解コンデンサ素子18は、交互に一定間隔で配置された電極2(第1の電極層)と電極6との間に誘電体層4が設けられたものである。また、電極2及び誘電体層4から弁作用金属基体5が構成されている。
図2は、固体電解コンデンサ1の要部を模式的に示す断面図であり、電極2、誘電体層4、電極6及び樹脂モールド層16が積層されている状態をより詳細に示すものである。図2において、固体電解コンデンサ1は、電極2、誘電体層4、固体電解質層20及び導電体層22,24が順次積層された構成を有している。このように導電体層22,24から電極26(第2の電極層)が構成されており、また固体電解質層20及び電極26から電極6が構成されている。
(陽極)
電極2は、固体電解コンデンサ1において陽極として機能するものである。その表面には粗面化又は拡面化処理が施されて微細な凹凸形状が形成されており、これにより表面積が増大されて固体電解コンデンサ1の高容量化が図られている。電極2を構成する材料としては、電解コンデンサに一般に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等のいわゆる弁作用金属が挙げられる。これらの中ではアルミニウム又はタンタルが比較的好ましく用いられる。これらの弁作用金属により構成される電極2は、弁作用金属層とも呼ばれている。また、電極2の厚さは通常好ましくは1〜500μm程度とされる。
電極2は、固体電解コンデンサ1において陽極として機能するものである。その表面には粗面化又は拡面化処理が施されて微細な凹凸形状が形成されており、これにより表面積が増大されて固体電解コンデンサ1の高容量化が図られている。電極2を構成する材料としては、電解コンデンサに一般に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等のいわゆる弁作用金属が挙げられる。これらの中ではアルミニウム又はタンタルが比較的好ましく用いられる。これらの弁作用金属により構成される電極2は、弁作用金属層とも呼ばれている。また、電極2の厚さは通常好ましくは1〜500μm程度とされる。
(誘電体層)
誘電体層4は、電極2表面の凹凸形状に沿ってその表面を覆うように形成されている。誘電体層4は、通常電気絶縁性を有する金属酸化皮膜(例えば、電極2がアルミニウムである場合は酸化アルミニウム皮膜)から成り、電極2の表層部を所定の方法で酸化することで簡易に形成される。また、誘電体層4の厚さは、通常1nm〜1μmとされる。
誘電体層4は、電極2表面の凹凸形状に沿ってその表面を覆うように形成されている。誘電体層4は、通常電気絶縁性を有する金属酸化皮膜(例えば、電極2がアルミニウムである場合は酸化アルミニウム皮膜)から成り、電極2の表層部を所定の方法で酸化することで簡易に形成される。また、誘電体層4の厚さは、通常1nm〜1μmとされる。
(陰極)
固体電解質層20は、拡面化により形成された電極2の微細凹凸面上の誘電体層4に沿ってその凹部を埋めるように形成されている。固体電解質層20の厚さは、上記凹凸面を覆うことができるような厚さが望ましく、好ましくは1〜100μm程度とされる。かかる固体電解質層20は、後述する本発明の固体電解コンデンサの製造方法における付着工程及び重合工程を経て形成されるものであり、少なくとも導電性高分子化合物とプロトン供与性高分子化合物とを含有して成るものである。
固体電解質層20は、拡面化により形成された電極2の微細凹凸面上の誘電体層4に沿ってその凹部を埋めるように形成されている。固体電解質層20の厚さは、上記凹凸面を覆うことができるような厚さが望ましく、好ましくは1〜100μm程度とされる。かかる固体電解質層20は、後述する本発明の固体電解コンデンサの製造方法における付着工程及び重合工程を経て形成されるものであり、少なくとも導電性高分子化合物とプロトン供与性高分子化合物とを含有して成るものである。
ここで、導電性高分子化合物としては、通常使用されるものを使用することができ、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン及びこれらの誘導体等を用いることができ、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
プロトン供与性高分子化合物は、プロトンを供与する(プロトンを自由に移動させる)ことが可能な、いわゆるプロトン伝導性高分子化合物である。このプロトン供与性高分子化合物は、例えば、主鎖としての高分子骨格に、プロトンを供与可能な官能基(以下、「プロトン供与性官能基」という)を含む側鎖が結合されたものである。
主鎖としての高分子骨格としては、例えば、ポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸(ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
また、プロトン供与性官能基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等が挙げられ、これらの中では比較的強酸基であるスルホン酸基又はリン酸基がより好ましい。
上述の高分子骨格及びプロトン供与性官能基を有するものとしては、スルホン酸基が結合した、ポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリイミド及びこれらの誘導体、並びに、リン酸基が結合した、ポリ(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましく用いられる。
そして、プロトン供与性高分子化合物としては、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するものが更に好ましく、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するポリフルオロエチレン及びその誘導体が特に好ましい。この種のポリフルオロエチレンとしては、末端にスルホン酸基を有するパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレンを単量体単位とする共重合体であることが好ましく、具体的には、例えば、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
式(1)中、pは概ね3〜20、好ましくは5〜15、qは概ね1〜1000、好ましくは1〜500、mは概ね1〜5、好ましくは1〜3、nは概ね1〜5、好ましくは1〜3の整数である。
これらのプロトン供与性高分子化合物は、優れたイオン伝導性を有し、固体電解質層20において酸化種として機能し、或いは、周囲に不可避的に存在する水又は酸素による金属の酸化反応触媒等として機能するものと考えられる。そのため、上述した誘電体層4を構成する酸化皮膜が熱衝撃又は物理的若しくは化学的な衝撃等を受けて損傷した場合には、その損傷部位において固体電解質層20が陽極と接触するようになり、上記のプロトン供与性高分子化合物による酸化作用又は触媒作用によって陽極が酸化され、酸化皮膜の再生が可能となる。これにより誘電体層4の絶縁性が回復・保持される。すなわち、プロトン供与性高分子化合物を固体電解質層20に含有させることにより、固体電解コンデンサ1に自己修復機能を付与することができる。その結果、固体電解コンデンサは、優れた耐電圧性と十分な容量出現率とを得ることができる。
また、固体電解質層20におけるプロトン供与性高分子化合物の含有量は、導電性高分子化合物100質量部に対して0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜45質量部であることがより好ましく、0.2〜40質量部であることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、自己修復機能が不十分となる傾向がある。一方、含有量が50質量部を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、固体電解コンデンサとしての諸特性(容量、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等)が低下する傾向がある。
固体電解質層20中には、上記のプロトン供与性高分子化合物に加えて、更にスルホサリチル酸等のスルホン酸系化合物、リン酸尿素、モノn−ブトキシエチルホスフェート等のリン酸エステル化合物、マレイン酸、安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸、ヒドロキシカルボン酸等のカルボン酸化合物を添加してもよい。これらの添加により、自己修復機能が向上する傾向がある。
固体電解質層20は、上記のプロトン供与性高分子化合物とともに、更に水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。水溶性高分子化合物は、水を保有し、プロトン供与性高分子化合物を分散させることが可能なものであり、例えば、ポリビニルアルコール及びセルロース等が挙げられる。
これらの水溶性高分子化合物は、プロトン供与性高分子化合物を分散させるための媒体として機能し、固体電解質層20におけるプロトン供与性高分子化合物の分散性を飛躍的に向上させて優れたイオン伝導性を得ることができる。これにより、固体電解コンデンサに優れた自己修復機能を付与することができる。
この水溶性高分子化合物の固体電解質層20における含有量は、導電性高分子化合物100質量部に対して0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜45質量部であることがより好ましく、0.2〜40質量部であることが特に好ましい。この水溶性高分子化合物の含有量が0.01質量部未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、自己修復機能が不十分となる傾向がある。一方、含有量が50質量部を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、固体電解コンデンサとしての諸特性(容量、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等)が低下する傾向がある。
固体電解質層20は、更にドーパントを含有することが好ましい。ドーパントは、導電性高分子化合物の導電性を高めるためのものであり、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(例えば、パラトルエンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルナフタレンスルホン酸及びその塩(例えば、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等)、並びにリン酸等が挙げられる。
これらのドーパントを含有させることにより、固体電解質層20は優れた電子伝導性を得ることができ、高い容量を得ることができる。
この固体電解質層20上に形成された電極26を構成する導電体層22,24の材料としては、例えば、カーボンや金属等を用いることができ、導電体層22としてカーボン、導電体層24として銀を用いることができる。なお、電極26は、導電体層22,24の2層構造に限定されず、3層以上で構成されていてもよい。
陽極導出線8、陰極導出線10、外部陽極端子12及び外部陰極端子14は、固体電解コンデンサ素子18を通電させるために利用されるものであり、例えば、いずれも鉄(Fe)または銅(Cu)などの導電性材料や、これらの導電性材料にめっき処理(例えば錫(Sn)めっき、または錫鉛(SnPb)めっき)が施された材料により構成されている。
樹脂モールド層16は、固体電解コンデンサ1の外装を構成するものであり、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料により構成されている。
[固体電解コンデンサの製造方法]
次に、以上のような構成を有する固体電解コンデンサ1を製造するための本発明の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
次に、以上のような構成を有する固体電解コンデンサ1を製造するための本発明の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
図3は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法の手順の一例を示すフロー図である。図3に示すように、まず、弁作用金属(第1の電極層用の部材)の表面を化学的又は電気化学的エッチングにより粗面化又は拡面化して電極(弁作用金属層)2を形成する(ステップS11;第1の電極層形成工程)。次に、電極2の表面(粗面化又は拡面化された部位)を陽極酸化して酸化皮膜を生じさせ、誘電体層4を形成する(ステップS12;誘電体層形成工程)。このときの陽極酸化は、具体的には、電極2を化成溶液に浸漬し、その電極2を正極として一定の電圧を印加することにより実施できる。また、印加電圧は、形成する酸化皮膜の膜厚に応じて適宜決定することができ、通常数ボルト〜数百ボルト程度の電圧に設定される。さらに、化成溶液としては、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、有機酸アンモニウム等の緩衝溶液を好ましく用いることができ、特に、有機酸アンモニウムであるアジピン酸アンモニウム水溶液を用いることが好ましい。このようにして、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体5の準備を完了する(準備工程)。
なお、電極2を形成する際には、例えば、上記したように、粗面化又は拡面化処理が施されていない未処理の弁作用金属を使用し、その弁作用金属に粗面化又は拡面化処理を別途施すようにしてもよいし、あるいは粗面化又は拡面化処理に要する手間を省くために、予め粗面化又は拡面化処理が施された処理済みの弁作用金属を使用するようにしてもよい。また、電極2上に誘電体層4を形成する際には、例えば、あらかじめ酸化皮膜が部分的に形成された電極2を使用し、この電極2を切断することにより酸化皮膜が形成されていない面(切断面)を露出させた後に、その切断面に酸化皮膜を別途形成することにより、電極2の周囲全体を覆うように誘電体層4を形成するようにしてもよい。
次に、弁作用金属基体5の誘電体層4上に、プロトン供与性高分子化合物を付着させる(ステップS13;付着工程)。この付着工程は、例えば、プロトン供与性高分子含有溶液中に弁作用金属基体5を浸漬するか、又は、プロトン供与性高分子含有溶液を弁作用金属基体5に塗布すること等により行うことができる。以下、浸漬により付着工程を行う場合について説明する。
まず、プロトン供与性高分子化合物と、これを溶解又は分散可能な溶媒とを混合したプロトン供与性高分子含有溶液を調製する。次に、この溶液に弁作用金属基体5を浸漬し、誘電体層4表面にプロトン供与性高分子含有溶液を付着させる。その後、弁作用金属基体5をプロトン供与性高分子含有溶液から引き上げ、乾燥させて溶媒を除去することによって、弁作用金属基体5にプロトン供与性高分子化合物を付着させることができる。
ここで、プロトン供与性高分子化合物としては先に説明したものを用いることができ、この溶媒としては、例えば、プロパノール、エタノール等のアルコール類を用いることができる。プロトン供与性高分子含有溶液におけるプロトン供与性高分子化合物の濃度は、溶液全量を基準として、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。このプロトン供与性高分子化合物の濃度が0.01質量%未満であると、濃度が上記範囲内である場合と比較して、自己修復機能が不十分となる傾向がある。一方、濃度が5質量%を超えると、濃度が上記範囲内である場合と比較して、固体電解コンデンサとしての諸特性(容量、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等)が低下する傾向がある。
また、プロトン供与性高分子含有溶液には、上述した水溶性高分子化合物やドーパント等を必要に応じて添加することができる。
プロトン供与性高分子含有溶液に弁作用金属基体5を浸漬させる時間は特に制限されないが、例えば、30秒〜30分間とすることが好ましい。
また、乾燥時の条件については、溶媒を十分に除去することが可能な温度及び時間で行うことが好ましいが、必ずしも溶媒を完全に除去する必要はない。なお、乾燥を行わずに付着工程を終了してもよい。
上記付着工程において、弁作用金属基体5をプロトン供与性高分子含有溶液から引き上げた後に、弁作用金属基体5の洗浄を行ってもよい。洗浄は、水、アルコール等を洗浄液とし、これを弁作用金属基体5に吹き付ける方法や、洗浄液中に弁作用金属基体5を浸漬する方法等により行うことができる。これにより、弁作用金属基体5にプロトン供与性高分子化合物が過剰に付着することを防止することができる。プロトン供与性高分子化合物が過剰に付着した場合には、固体電解コンデンサとしての諸特性(容量、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等)が低下する傾向がある。なお、プロトン供与性高分子化合物の過剰な付着は、プロトン供与性高分子含有溶液の濃度を適切な範囲に調節することによっても防止することができる。
また、上記付着工程において、弁作用金属基体5を乾燥した後に更に熱処理を行ってもよい。熱処理は、例えば、乾燥機などで、50〜180℃、5〜60分間の条件で行うことができる。これにより、プロトン供与性高分子化合物を安定化させることができ、固体電解コンデンサの容量出現率及び耐電圧性を向上させることができる。
ステップS11〜S13に並行して、上述した導電性高分子化合物を構成する単量体と、これを酸化重合させるための酸化剤とを含む重合溶液を調製する(ステップS14)。この重合溶液には、上述した水溶性高分子化合物やドーパント等を必要に応じて添加することができる。この重合溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、水やアルコール等の極性溶媒等が用いられる。アルコールとしては、エタノール及びブタノールが好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、単量体としては、例えば、アニリン、ピロール、チオフェン、フラン及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらを重合させることによって、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン及びこれらの誘導体等の導電性高分子化合物を得ることができる。なお、導電性高分子化合物としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を生成するために、単量体としては3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いることが好ましい。
単量体の重合に用いる酸化剤としては、ヨウ素、臭素等のハロゲン化物、五フッ化珪素等の金属ハロゲン化物、硫酸等のプロトン酸、三酸化イオウ等の酸素化合物、硫酸セリウム等の硫酸塩、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等の過酸化物、パラトルエン酸鉄等の鉄塩等が挙げられる。また、ドーパントとしての機能をも有する酸化剤を用いてもよく、かかる酸化剤を用いるとともに、更にこれとは別のドーパントを用いてもよい。酸化剤とドーパントの両方の機能を有する材料としては、例えば、パラトルエンスルホン酸鉄等のドーパントとして先に例示したものの鉄塩等が挙げられる。
ここで、重合溶液における固形分濃度は、10〜60質量%であることが好ましい。固形分濃度が10質量%未満であると、固形分濃度が上記範囲内である場合と比較して、所望の厚みの固体電解質層を形成するまでに重合処理を多くの回数行う必要が生じ、工程時間が長くなるとともに、高温信頼性の向上が不十分となる傾向がある。一方、固形分濃度が60質量%を超えると、固形分濃度が上記範囲内である場合と比較して、弁作用金属基体の粗面化又は拡面化された部分に単量体が導入されにくく、導電性高分子化合物の充填が不十分となって、固体電解コンデンサの高容量化及び高温信頼性の向上が不十分となる傾向がある。
重合溶液が水溶性高分子化合物を含有する場合、その含有量は、単量体100質量部に対して0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜45質量部であることがより好ましく、0.2〜40質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、得られる固体電解コンデンサの自己修復機能が不十分となる傾向がある。一方、含有量が50質量部を超えると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、得られる固体電解コンデンサの諸特性(容量、漏れ電流値、インピーダンス特性、耐熱性等)が低下する傾向がある。
そして、かかる重合溶液中に弁作用金属基体5を浸漬させるか、又は、重合溶液を弁作用金属基体5に塗布すること等により、弁作用金属基体5の誘電体層4上に重合溶液を付着させる(ステップS15)。次いで、誘電体層4上に付着した重合溶液中に含まれる単量体を酸化剤により化学酸化重合せしめ、誘電体層4上に固体電解質層20を形成させる(ステップS16;重合工程)。
なお、上記重合工程においては、単量体と酸化剤とを含有する重合溶液を用いて固体電解質20を形成しているが、単量体と酸化剤とを別々の溶液として用意してもよい。この場合、弁作用金属基体5をそれぞれの溶液中に交互に浸漬させるか、又は、弁作用金属基体5にそれぞれの溶液を交互に塗布すること等により、単量体と酸化剤とを接触せしめ、単量体の化学酸化重合を行うことができる。
重合工程において、単量体の重合は、単量体及び酸化剤が付着した状態の弁作用金属基体5を空気中で放置することによって行うことができるが、単量体の重合反応を促進させるために、単量体及び酸化剤が付着した弁作用金属基体5を高温環境下で放置してもよい。また、放置時間は特に制限されず、使用する重合溶液の組成や固形分濃度、又はその他の条件に合わせて適宜決定することができる。
また、単量体の重合を行った後に、弁作用金属基体5の洗浄及び乾燥を行ってもよい。ここで、洗浄は、水、アルコール等を洗浄液とし、これを弁作用金属基体5に吹き付ける方法や、洗浄液中に弁作用金属基体5を浸漬する方法等により重合組成物の不純物を除去することにより行われる。また、乾燥は、弁作用金属基体5に付着した洗浄液等の液体を除去可能な温度で行われる。
本発明において重合工程は、少なくとも1回行えばよいが、複数回繰り返して行ってもよい。重合工程を複数回繰り返して行うことで、所望の厚さの固体電解質層20を形成することができる。
なお、重合工程を行うにあたって、誘電体層4表面にはプロトン供与性高分子化合物が付着していることとなるが、このプロトン供与性高分子化合物は、重合工程後、固体電解質層20中に含有されることとなる。
次に、固体電解質層20上に、導電性部材(第2の電極層用の部材)を積層させ電極26を形成する(ステップS17;第2の電極層形成工程)。積層は、例えば、導電性部材をペースト状にしたものを固体電解質層20上に塗布して導電体層22を形成し、その上に異なる導電性部材をペースト状にしたものを更に塗布して導電体層24を形成することによって実施することができる。具体的には、例えば、固体電解質層20上にカーボンペーストを塗布して乾燥させた後、銀ペーストを塗布して乾燥させることによって、導電体層22,24を形成することができる。
こうして、固体電解コンデンサ素子18を形成した後、電極に陽極導出線8及び陰極導出線10を接続する。続いて、それぞれの導出線の一部が外部に露呈するように固体電解コンデンサ素子18全体を樹脂モールド層16で被覆した後、陽極導出線8及び陰極導出線10にそれぞれ外部陽極端子12及び外部陰極端子14を接続することにより、固体電解コンデンサ1を得る(ステップS18)。その後、更にエージング処理を施すことが好ましい(ステップS19;後処理工程)。エージング処理は、固体電解コンデンサ1の外部陽極端子12及び外部陰極端子14に一定の電圧を印加することにより行うことができ、これにより、固体電解コンデンサ1の製造が完了する。
このようにして製造される固体電解コンデンサ1では、上記付着工程及び重合工程を経てプロトン供与性高分子化合物を含む固体電解質層20が形成されている。このプロトン供与性高分子化合物は、優れたイオン伝導性を有し、固体電解質層20において酸化種として機能し、或いは、周囲に不可避的に存在する水又は酸素による金属の酸化反応触媒等として機能するものと考えられる。そのため、上述した誘電体層4を構成する酸化皮膜が熱衝撃又は物理的若しくは化学的な衝撃等を受けて損傷した場合には、その損傷部位において固体電解質層20が陽極と接触するようになり、上記のプロトン供与性高分子化合物による酸化作用又は触媒作用によって陽極が酸化され、酸化皮膜の再生が可能となる。これにより誘電体層4の絶縁性が回復・保持される。すなわち、プロトン供与性高分子化合物を固体電解質層20に含有させることにより、固体電解コンデンサ1に自己修復機能を付与することができる。その結果、固体電解コンデンサ1は、優れた耐電圧性と十分な容量出現率とを得ることができる。
また、自己修復機能を有する上記固体電解コンデンサ1に対してステップS19のエージング処理を実施すると、誘電体層4に欠陥が生じていても、その修復を効率よく行うことが可能となる。また、このようなエージング処理の有無に拘わらず、固体電解コンデンサ1の使用中にも誘電体層4の損傷が生じ、漏れ電流が不都合に増大してしまうことがある。この場合にも、固体電解質の金属酸化能又は酸化触媒能によって、誘電体層4の損傷部30が自己修復される。そのため、固体電解コンデンサ1は、優れた耐電圧性と十分な容量出現率とを高水準で達成することができる。
なお、本実施形態においては、図1に示す層構造のチップ型の固体電解コンデンサ1についてその構造及び製造方法の一例を説明したが、本発明の固体電解コンデンサはこれに限定されるものではなく、図2に示す層構造を一層のみ有する形態であってもよく、また、かかる層構造を巻回して成る巻回型の固体電解コンデンサであってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順を経て、電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、陽極として拡面化処理済みのアルミニウム箔(3.5mm×6.5mm)を準備し、このアルミニウム箔表面の陽極となるべき部分(陽極部)と陰極を形成すべき部分(陰極形成部)とを区画すべき位置に、これらを区画するための絶縁物を形成した。このアルミニウム箔を化成溶液としてのアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬させた後、アルミニウム箔に6Vの電圧を印加して陽極酸化反応を進行させることにより、そのアルミニウム箔の表層に酸化アルミニウム皮膜よりなる誘電体層を形成した(準備工程)。
以下の手順を経て、電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、陽極として拡面化処理済みのアルミニウム箔(3.5mm×6.5mm)を準備し、このアルミニウム箔表面の陽極となるべき部分(陽極部)と陰極を形成すべき部分(陰極形成部)とを区画すべき位置に、これらを区画するための絶縁物を形成した。このアルミニウム箔を化成溶液としてのアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬させた後、アルミニウム箔に6Vの電圧を印加して陽極酸化反応を進行させることにより、そのアルミニウム箔の表層に酸化アルミニウム皮膜よりなる誘電体層を形成した(準備工程)。
続いて、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するポリフルオロエチレン溶液(Nafion(登録商標)溶液 SE20192(商品名、Dupont社製)を、Nafion(登録商標)濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈したもの)をプロトン供与性高分子含有溶液として準備した。この溶液中に、上記の誘電体層が形成されたアルミニウム箔を5分間浸漬した後引き上げ、このアルミニウム箔を水、エタノールで洗浄し、自然乾燥させた(付着工程)。
次に、導電性高分子化合物を構成する単量体としての3,4−エチレンジオキシチオフェン(商品名:BAYTRON(登録商標)M、Bayel社製)0.9g、パラトルエンスルホン酸鉄溶液(商品名:BAYTRON(登録商標)C−B50、Bayel社製)10.81g、及びブタノール2.63gを混合し、重合溶液を調製した。この溶液中に、上記の誘電体層が形成されたアルミニウム箔を1分間浸漬した後引き上げて、重合溶液が付着した状態で空気中で30分間放置した。これにより、アルミニウム箔に付着した重合溶液中の単量体を酸化重合させた。次いで、このアルミニウム箔を15分間流水洗浄し、100℃で5分間乾燥した。この重合溶液への浸漬から乾燥までの重合処理を3回繰り返し、誘電体層上に厚さ1μmの固体電解質層を形成した(重合工程)。
次に、固体電解質層上に導電体層としてのカーボンペースト層を厚さ3μmとなるように塗布し、更にカーボンペースト層上に導電体層としての銀ペースト層を厚さ20μmとなるように塗布した。これにより、カーボンペースト層及び銀ペースト層からなる陰極を形成した。以上により、陽極、誘電体層、固体電解質層及び陰極がこの順に積層された構造を有するコンデンサ素子を得た。
その後、陰極側に導電性接着剤を用いて導電性の陰極リードを接続し、陽極側に抵抗溶接機で導電性の陽極リードを接続した。そして、エポキシ樹脂で陽極リード及び陰極リードが部分的に露出するようにコンデンサ素子の周囲を覆って樹脂モールド層を形成することで、固体電解コンデンサを作製した。
(実施例2〜4)
プロトン供与性高分子含有溶液のNafion(登録商標)濃度を、実施例2においては1質量%、実施例3においては2.5質量%、実施例4においては5質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の固体電解コンデンサを作製した。
プロトン供与性高分子含有溶液のNafion(登録商標)濃度を、実施例2においては1質量%、実施例3においては2.5質量%、実施例4においては5質量%とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の固体電解コンデンサを作製した。
(比較例1)
付着工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の固体電解コンデンサを作製した。
付着工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の固体電解コンデンサを作製した。
(容量出現率の評価)
実施例1〜4及び比較例1の固体電解コンデンサを構成する拡面化処理済みのアルミニウム箔の陰極形成部(3.5mm×4.5mm)について、固体電解質層を形成する前に予め理論容量を測定しておいた。すなわち、それぞれのアルミニウム箔を電解液(アジピン酸アンモニウム水溶液)に浸漬し、HEWLETT PACKARD社製のLCRメータ 4284Aを用いて周波数120Hzにより理論容量を測定した。
実施例1〜4及び比較例1の固体電解コンデンサを構成する拡面化処理済みのアルミニウム箔の陰極形成部(3.5mm×4.5mm)について、固体電解質層を形成する前に予め理論容量を測定しておいた。すなわち、それぞれのアルミニウム箔を電解液(アジピン酸アンモニウム水溶液)に浸漬し、HEWLETT PACKARD社製のLCRメータ 4284Aを用いて周波数120Hzにより理論容量を測定した。
一方、実施例1〜4及び比較例1の固体電解コンデンサについて、それぞれHEWLETT PACKARD社製のIMPEDANCE/GAIN−PHASE ANALYZER 4194Aにより静電容量を測定した。この固体電解コンデンサとしての静電容量と、予め測定しておいた理論容量とから、下記式により容量出現率(%)を求めた。
容量出現率=(固体電解コンデンサとしての静電容量/理論容量)×100
その結果を表1に示す。
容量出現率=(固体電解コンデンサとしての静電容量/理論容量)×100
その結果を表1に示す。
(耐電圧性の評価)
実施例1〜4及び比較例1の固体電解コンデンサを10個ずつ用意し、それぞれに対して0Vから100mV/秒の割合で徐々に電圧を印加していき、電流が立ち上がったところ(電流が急激に流れ始めたところ)の電圧(V)を耐電圧として測定した。その結果を表1に示す。なお、表中の耐電圧の値は、10個測定した平均値である。
実施例1〜4及び比較例1の固体電解コンデンサを10個ずつ用意し、それぞれに対して0Vから100mV/秒の割合で徐々に電圧を印加していき、電流が立ち上がったところ(電流が急激に流れ始めたところ)の電圧(V)を耐電圧として測定した。その結果を表1に示す。なお、表中の耐電圧の値は、10個測定した平均値である。
表1に示した結果から明らかなように、本発明の固体電解コンデンサ(実施例1〜4)によれば、比較例1の固体電解コンデンサと比較して、優れた耐電圧性及び十分な容量出現率が得られることが確認された。なお、優れた耐電圧性が得られたことから、実施例1〜4の固体電解コンデンサは自己修復機能を有しているものと考えられる。
1…固体電解コンデンサ、2…電極(第1の電極層)、4…誘電体層(誘電体)、5…弁作用金属基体、6…電極、8…陽極導出線、10…陰極導出線、12…外部陽極端子、14…外部陰極端子、16…樹脂モールド層、18…固体電解コンデンサ素子、20…固体電解質層、22、24…導電体層、26…電極(第2の電極層)、30…損傷部、32…修復部。
Claims (4)
- 表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する準備工程と、
前記弁作用金属基体の前記誘電体層上に、プロトン供与性高分子化合物を付着させる付着工程と、
前記プロトン供与性高分子化合物が付着した前記誘電体層上に、導電性高分子化合物を構成する単量体及び該単量体を酸化重合させるための酸化剤を付着させ、前記単量体を重合させることにより、固体電解質層を形成する重合工程と、
を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記付着工程は、前記弁作用金属基体を前記プロトン供与性高分子化合物と溶媒とを含む溶液に浸漬した後、前記溶液から引き上げ、前記溶媒を除去することにより行うことを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記プロトン供与性高分子化合物が、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の固体電解コンデンサの製造方法により製造されたものであることを特徴とする固体電解コンデンサ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009246288A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Nippon Chemicon Corp | 固体電解コンデンサ |
JP2021520218A (ja) * | 2018-04-02 | 2021-08-19 | バイオロジカル ダイナミクス,インク. | 誘電体材料 |
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2004
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