JP2005135853A - 固体電解質、ならびに電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 作動特性を安定に確保することが可能な電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 コンデンサ素子1のうちの電解質層13が導電性高分子と共にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含むように、電解コンデンサを構成する。電解質層13中において、水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散し、そのプロトン供与性高分子の分散性が向上するため、誘電体層12により構成された細孔12Hの奥深くまでプロトン供与性高分子が入り込みやすくなる。誘電体層12が損傷することにより拡面化領域Rの上端近傍において欠損部12X1が発生したり、あるいは下端近傍において欠損部12X2が生じたとしても、プロトン供与性高分子に基づく自己修復機構を利用して陽極11の表層が再び酸化(陽極酸化)されることにより誘電体層12(修復部12Y1,12Y2)が追加形成されるため、欠損部12X1,12X2の双方が自己修復される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、導電性高分子を含んで構成された固体電解質、ならびに固体電解質層を備えた電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
近年、高周波用途に適した電子部品のうちの1つとして、多様な電子機器に電解コンデンサが搭載されている。この電解コンデンサに関しては、例えば、電子機器のデジタル化、小型化および高速化が加速的に進行している情勢下において、大容量化や低インピーダンス化が要望されていると共に、動作安定性や動作信頼性の確保、ならびに高寿命化も併せて要望されている。
電解コンデンサは、例えば、陽極としての弁作用金属層と、その弁作用金属層の表層が陽極酸化されることにより形成された酸化皮膜よりなる誘電体層と、陰極としての電解質層および導電体層とがこの順に積層された構造を有している。
この電解コンデンサは、電解質層の種類に応じて2種類に大別される。すなわち、液体材料により構成された電解質層(電解液)を備え、主にイオン伝導性を利用した導電特性を有する液体電解コンデンサと、錯塩や導電性高分子などの固体材料により構成された電解質層(固体電解質層)を備え、主に電子伝導性を利用した導電特性を有する固体電解コンデンサである。これらの2種類の電解コンデンサを作動特性の安定性の観点において比較すると、例えば、電解液を含んでいる液体電解コンデンサでは電解液の漏洩や蒸発に起因して作動特性が経時劣化し得るが、電解液を含んでいない固体電解コンデンサでは電解液の漏洩や蒸発に起因した作動特性の経時劣化が起こり得ないため、今後主流になり得る電解コンデンサとして、最近では液体電解コンデンサに代えて固体電解コンデンサに関する研究開発が活発に進められている。この固体電解コンデンサに関する研究過程では、例えば、漏れ電流特性、インピーダンス特性および耐熱特性などの一連の作動特性を考慮して、固体電解質層の主要部が、二酸化マンガンや錯塩から、電子供与性または電子吸引性の物質(ドーパント)がドープされた共役系の導電性高分子に急速に移行しつつある。
ところで、電解コンデンサでは、一般に、高容量化を実現するために、弁作用金属層が拡面化(または粗面化)されて微細な表面凹凸構造を有しているため、この弁作用金属層の表層として形成された誘電体層も同様に微細な表面凹凸構造を有している。この微細な表面凹凸構造を有する誘電体層は、例えば、電解コンデンサが被る各種要因に起因して、作動特性の劣化を誘発し得る深刻な損傷を被るおそれがある。この「電解コンデンサが被る各種要因」としては、例えば、無負荷状態で長期間に渡って放置された場合に生じる自然劣化、急激な温度変化、電気的衝撃(過電圧、逆電圧または過大なリップル電流の印加等)、あるいは物理的衝撃などが挙げられる。誘電体層が損傷して部分的に欠損すると、その誘電体層の欠損部を通じて弁作用金属層と電解質層との間に不要な電流(漏れ電流)が流れるため、電解コンデンサが短絡しやすくなる。この短絡を防止する上では、例えば、電解コンデンサが誘電体層の欠損部を自己修復する機能(以下、単に「自己修復機能」という。)を有していることが望ましい。
この点に関して、液体電解コンデンサは、自己修復機能を本質的に有している。すなわち、液体電解コンデンサでは、誘電体層が損傷して部分的に欠損すると、その誘電体層の欠損部に露出した弁作用金属層が、イオン伝導性を有する電解液と接触する。これにより、弁作用金属層が電解液に接触している状態において液体電解コンデンサに定格電圧が印加されると、電解液を利用して弁作用金属層が再酸化(陽極酸化)されることにより誘電体層が新たに追加形成されるため、誘電体層の欠損部が修復され、漏れ電流の電流経路が遮断される。これに対して、固体電解コンデンサは、電解質層(電解液)がイオン伝導性を有している液体電解コンデンサとは異なり、電解質層(固体電解質層)が実質的にイオン伝導性を有していないため、自己修復機能を本質的に有していない。すなわち、固体電解コンデンサでは、誘電体層に生じた欠損部が極小であれば、漏れ電流に起因して発生したジュール熱の影響を受けて固体電解質層が部分的に不導体化するため、結果として漏れ電流の電流経路が遮断され得るが、誘電体層の欠損部が大きくなると、上記した固体電解質層の不導体化現象を利用しても漏れ電流の電流経路を遮断しきれなくなる。
そこで、従来より、固体電解コンデンサに自己修復機能を付与することにより、作動特性を安定に確保するための検討がなされている。具体的には、例えば、電解液と固体電解質層(導電性高分子)とを併用することにより電解質層を構成した固体電解コンデンサが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特開平11−283874号公報 特開2000−021689号公報
しかしながら、上記した電解液と固体電解質層(導電性高分子)とを併用する従来の固体電解コンデンサでは、電解液を含んでいる点において液体電解コンデンサと構成的に相違していないため、依然として電解液の漏洩や蒸発に起因して作動特性が経時劣化し得るという問題があった。特に、この種の電解コンデンサでは、電解質層全体の導電率が固体電解質層(導電性高分子)の導電率と電解液の導電率との総和として規定されるため、電解液が漏洩または蒸発して欠損すると、その欠損分だけ電解質層全体の導電率が大きく低下するおそれがある。このことから、固体電解コンデンサの作動特性を確保する上では、自己修復機能の付与と作動特性の確保とを両立することが可能な技術の確立が急務である。また、固体電解コンデンサの量産性を考慮すれば、その固体電解コンデンサを容易かつ安定に製造することが可能な技術の確立も重要である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、作動特性を安定に確保することが可能な固体電解質、ならびに固体電解質層を備えた電解コンデンサを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、本発明の電解コンデンサを容易かつ安定に製造することが可能な電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
本発明に係る固体電解質は、導電性高分子と共にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含んで構成されているものである。
本発明に係る固体電解質では、主成分としての導電性高分子と共に副成分としてのプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含んでおり、その水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散する。これにより、導電性高分子と共にプロトン供与性高分子のみを含み、水溶性高分子を含んでいない場合と比較して、プロトン供与性高分子の分散性が向上する。
本発明に係る電解コンデンサは、第1の電極層、誘電体層、固体電解質層および第2の電極層がこの順に積層された積層構造を有し、固体電解質層が導電性高分子と共にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含んで構成されているものである。
本発明に係る電解コンデンサでは、固体電解質層中において、水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散し、そのプロトン供与性高分子の分散性が向上するため、例えば、誘電体層により構成された細孔の奥深くまでプロトン供与性高分子が入り込みやすくなる。
本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、単量体にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を添加して酸化重合させることにより、導電性高分子と共にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含む固体電解質層を生成するステップと、この固体電解質層を使用して、第1の電極層、誘電体層、固体電解質層および第2の電極層がこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサを形成するステップとを含むようにしたものである。
本発明に係る電解コンデンサの製造方法では、導電性高分子と共にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含む固体電解質層を備えた電解コンデンサを安定に製造する上で、既存の容易な製造技術のみしか使用しない。
本発明に係る固体電解質によれば、水溶性高分子を媒体として利用することによりプロトン供与性高分子の分散性が向上する構成的特徴に基づき、この固体電解質を使用して作動特性を安定に確保することが可能な本発明の電解コンデンサを構成することができる。
本発明に係る電解コンデンサによれば、固体電解質層中においてプロトン供与性高分子の分散性が向上し、そのプロトン供与性高分子が細孔の奥深くまで入り込みやすい構成的特徴に基づき、誘電体層が損傷して欠損部が生じたとしても、その欠損部の周辺にプロトン供与性高分子が存在するため、プロトン供与性高分子を利用して欠損部が自己修復される。これにより、欠損部の存在に起因する漏れ電流の電流経路が遮断されるため、短絡の発生可能性が低くなる。しかも、この電解コンデンサでは、固体電解質層の導電率が、副成分としてのプロトン供与性高分子および水溶性高分子の導電率ではなく、主成分としての導電性高分子の導電率に基づいて支配的に規定されるため、その導電率は、水溶性高分子が保有している水の漏洩や蒸発に起因して著しく経時劣化せず、ほぼ一定に維持される。したがって、作動特性を安定に確保することができる。
本発明に係る電解コンデンサの製造方法によれば、既存の容易な製造技術のみを使用して固体電解質層を安定に製造することが可能な製法的特徴に基づき、電解コンデンサを容易かつ安定に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る電解コンデンサの構成について説明する。図1は、電解コンデンサ10の断面構成を表している。なお、本発明の「固体電解質」は電解コンデンサ10の一部を構成するものであるため、その「固体電解質」に関しては以下で併せて説明する。
本実施の形態に係る電解コンデンサ10は、例えば、図1に示したように、コンデンサ素子1に通電用の陽極リード2および陰極リード3が接続され、そのコンデンサ素子1が陽極リード2および陰極リード3を部分的に露出させるようにモールド樹脂4により周囲を覆われた構造を有している。
コンデンサ素子1は、電解コンデンサ10の主要部として電気的反応を生じるものであり、例えば、陽極11(第1の電極層)と、この陽極11の周囲を部分的に覆うように設けられた誘電体層12と、この誘電体層12の周囲を覆うように設けられた電解質層13と、この電解質層13の周囲を部分的に覆うように設けられた陰極14(第2の電極層)とを含んで構成されている。すなわち、図1に示した電解コンデンサ10は、例えば、コンデンサ素子1が陽極11を1つだけ含んで構成されており、すなわち陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14に基づく電気的反応部位(積層単位)を1つだけ有する単層型構造を有している。
陽極11は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)またはニオブ(Nb)などの弁作用金属により構成されている。より具体的には、陽極11は、例えば、アルミニウム(Al)またはチタン(Ti)のエッチング箔や、タンタル(Ta)またはニオブ(Nb)の焼結体などにより構成されている。
誘電体層12は、弁作用金属よりなる陽極11の表層が陽極酸化されることにより形成された酸化皮膜である。この誘電体層12は、例えば、陽極11がアルミニウムよりにより構成されている場合には、そのアルミニウムの酸化物としての酸化アルミニウム(Al2 3 ;アルミナ)により構成されている。
このコンデンサ素子1の主要部である電解質層13は、主成分としての導電性高分子と共に、副成分としてのプロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントを含んで構成されている。すなわち、電解質層13は、導電性高分子よりなる固体材料を主成分として構成されたいわゆる固体電解質であり、この種の電解質層13を備えたコンデンサ素子1は、いわゆる固体電解コンデンサ素子である。
導電性高分子は、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種である。この「誘導体」としては、例えば、ポリチオフェンの誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。この導電性高分子は、単量体(モノマー)が酸化重合反応することにより生成されたものである。
プロトン供与性高分子は、プロトンを供与する(プロトンを自由に移動させる)ことが可能ないわゆるプロトン伝導性高分子であり、水溶性高分子を媒体として分散された状態において電解コンデンサ10に自己修復機能を付与するものである。このプロトン供与性高分子の含有量は、例えば、導電性高分子の含有量に対して(導電性高分子の含有量を100重量%としたときに)0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.1重量%〜45重量%、より好ましくは0.2重量%〜40重量%である。このプロトン供与性高分子の含有量とは、電解質層13を形成する際の仕込み量、すなわち導電性高分子を生成する際の材料投入量に基づく値である。このプロトン供与性高分子の含有量が0.01重量%未満になると、電解コンデンサ10の自己修復機能が不十分となり、一方、50重量%よりも大きくなると、電解コンデンサ10の諸特性(容量,漏れ電流特性,インピーダンス特性,耐熱特性等)が劣化し得るため、その電解コンデンサ10の自己修復機能や諸特性を確保する上では、プロトン供与性高分子の含有量は上記範囲内であるのが好ましい。
このプロトン供与性高分子は、例えば、主鎖としての高分子骨格に、プロトンを供与可能な官能基(以下、単に「プロトン供与性官能基」という。)を含む側鎖が結合されたものである。この「高分子骨格」は、例えば、ポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸(ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種である。また、「プロトン供与性官能基」とは、例えば、スルホン酸基、リン酸基およびカルボキシル基を含む含む群のうちの少なくとも1種であり、好ましくは強酸基であるスルホン酸基およびリン酸基のうちの少なくとも1種である。上記にて列挙した「高分子骨格」および「プロトン供与性官能基」を有するプロトン供与性高分子としては、例えば、スルホン酸基が側鎖として結合されたポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリイミドや、リン酸基が側鎖として結合されたポリ(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
特に、プロトン供与性高分子としては、例えば、プロトン供与性官能基としてスルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するものが好ましく、より具合的には、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するポリフルオロエチレンが好ましい。この種のポリフルオロエチレンとしては、例えば、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を末端に有するフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとがそれぞれ単量体として共重合されたものが好ましい。この種のポリフルオロエチレンとしては、具体的には、例えば、下記の化1に示した構造式を有するものが挙げられる。
Figure 2005135853
(化1に示した構造式中、p,q,m,nはいずれも整数であり、pは概ね3〜20、好ましくは5〜15であり、qは概ね1〜1000、好ましくは1〜500であり、mは概ね1〜5、好ましくは1〜3であり、nは概ね1〜5、好ましくは1〜3である。)
水溶性高分子は、水を保有し、プロトン供与性高分子を分散させることが可能なものであり、例えば、ポリビニルアルコールおよびセルロースを含む群のうちの少なくとも1種である。この水溶性高分子の含有量は、例えば、導電性高分子の含有量に対して(導電性高分子の含有量を100重量%としたときに)0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.1重量%〜45重量%、より好ましくは0.2重量%〜40重量%である。この水溶性高分子の含有量とは、上記したプロトン供与性高分子の含有量と同様に、電解質層13を形成する際の仕込み量、すなわち導電性高分子を生成する際の材料投入量に基づく値である。この水溶性高分子の含有量が0.01重量%未満になると、電解コンデンサ10の自己修復機能が不十分となり、一方、50重量%よりも大きくなると、電解コンデンサ10の諸特性(容量,漏れ電流特性,インピーダンス特性,耐熱特性等)が劣化し得るため、その電解コンデンサ10の自己修復機能や諸特性を確保する上では、水溶性高分子の含有量は上記範囲内であるのが好ましい。
ドーパントは、導電性高分子の導電性を高めるためのものであり、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩(例えばパラトルエンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルナフタレンスルホン酸およびその塩(例えばイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)、ならびにリン酸を含む群のうちの少なくとも1種である。
陰極14は、例えば、カーボン(グラファイト)と銀(Ag)とがこの順に積層された積層構造を有している。
陽極リード2および陰極リード3は、コンデンサ素子1を通電させるために利用されるものであり、例えば、いずれも鉄(Fe)または銅(Cu)などの導電性材料や、これらの導電性材料にめっき処理(例えば錫(Sn)めっき、または錫鉛(SnPb)めっき)が施された材料により構成されている。陽極リード2は、例えば、一端側がコンデンサ素子1の陽極11に溶接されていると共に、他端側がモールド樹脂4の側方に露出し、そのモールド樹脂4の側方から下方まで周り込むように折り曲げられた構造を有している。陰極リード3は、例えば、陽極リードと同様の構成を有しており、すなわち一端側が導電性の接着層20を介してコンデンサ素子1の陰極14に接続されていると共に、他端側がモールド樹脂4の側方に露出し、そのモールド樹脂4の側方から下方まで周り込んで陽極リード2の他端側と対向するように折り曲げられた構造を有している。なお、陽極リード2は必ずしも陽極11に溶接されていなければならないわけではなく、例えば、その陽極リード2はかしめ加工を利用して陽極11に接続されていてもよい。
モールド樹脂4は、電解コンデンサ10の外装を構成するものであり、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料により構成されている。
次に、図2を参照して、電解コンデンサ10の詳細な構成について説明する。図2は、図1に示したコンデンサ素子1の断面構成を部分的に拡大して表している。なお、図2では、コンデンサ素子1と共にモールド樹脂4も併せて示している。
コンデンサ素子1は、例えば、図2に示したように、上記した陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有している。このコンデンサ素子1では、陽極11の表面積を増大させることにより高容量化を実現するために、その陽極11に拡面化処理(または粗面化処理)が施されており、すなわち陽極11が微細な表面凹凸構造を有している。この陽極11上に形成されている誘電体層12は、陽極11の表面凹凸構造に対応して微細な表面凹凸構造を有しており、すなわち凹構造として複数の細孔12Hを構成している。この電解質層13は、誘電体層12に隣接する側において複数の細孔12Hに部分的に入り込んでいると共に、陰極14に隣接する側においてほぼ平坦な表面構造を有している。陰極14は、電解質層13の表面構造に対応してほぼ平坦な表面構造を有している。
このコンデンサ素子1では、上記した陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14が積層された積層構造中に、その誘電体層12により形成された複数の細孔12Hを含む拡面化領域Rが構成されている。この拡面化領域Rとは、陽極11、誘電体層12および電解質層13が積層された積層構造のうち、その誘電体層12の最下端から最上端に至る領域である。特に、電解質層13中において、水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散されているため、そのプロトン供与性高分子が細孔12Hの奥深くまで入り込んでいる。具体的には、例えば、拡面化領域Rの厚さをTとした場合、細孔12Hにプロトン供与性高分子が入り込んでいる深さDは、厚さTに対して約30%〜60%である(D/T=0.3〜0.6)。
次に、図1〜図3を参照して、図1および図2に示した電解コンデンサ10の製造方法について説明する。図3は、電解コンデンサ10の製造工程の流れを説明するためのものである。
電解コンデンサ10を製造する際には、まず、コンデンサ素子1を形成する。このコンデンサ素子1の形成手順は、例えば、以下の通りである。
すなわち、まず、陽極11の形成材料として弁作用金属箔を準備したのち、化学的または電気化学的エッチングを使用して弁作用金属箔に拡面化処理を施すことにより、微細な表面凹凸構造を有する陽極11を形成する(ステップS101)。この弁作用金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やチタン箔などを使用する。なお、陽極11の形成材料としては、例えば、上記した弁作用金属箔に代えて、タンタルまたはニオブなどの弁作用金属の焼結体も使用することが可能である。
続いて、陽極11の表層を陽極酸化することにより、酸化皮膜よりなる誘電体層12を形成する(ステップS102)。この誘電体層12としては、例えば、陽極11としてアルミニウム拡面化箔を使用した場合には、酸化アルミニウム(Al2 3 ;アルミナ)よりなる誘電体層12を形成することが可能である。この誘電体層12を形成する際には、例えば、陽極11を化成溶液に浸漬させたのち、その陽極12に電圧を印加することにより、陽極酸化反応を進行させるようにする。この化成溶液としては、例えば、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウムまたは有機酸アンモニウムなどの緩衝溶液を使用し、好ましくは有機酸アンモニウムとしてアジピン酸アンモニウムの水溶液を使用する。なお、陽極12に印加する電圧は、例えば、誘電体層12の形成厚さに応じて数V〜数百Vの範囲内で自由に設定可能である。なお、陽極11を形成する際には、例えば、上記したように、拡面化処理が施されていない未処理の弁作用金属箔を使用し、その弁作用金属箔に拡面化処理を別途施すようにしてもよいし、あるいは拡面化処理に要する手間を省くために、予め拡面化処理が施された処理済みの弁作用金属箔を使用するようにしてもよい。また、陽極11に誘電体層12を形成する際には、例えば、あらかじめ酸化皮膜が部分的に形成された陽極11(拡面化処理済みの弁作用金属箔)を使用し、この陽極11を切断することにより酸化皮膜が形成されていない面(切断面)を露出させたのちに、その切断面に酸化皮膜を別途形成することにより、陽極11の周囲全体を覆うように誘電体層12を形成するようにしてもよい。
続いて、単量体にプロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントを添加することにより、これらの単量体、プロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントを含む単量体溶液を調製したのち、その単量体溶液に陽極11を浸漬させる。そして、単量体溶液中の単量体を陽極11の表面にて酸化重合させることにより、導電性高分子を生成する。この導電性高分子を生成する際には、重合開始剤(酸化剤)を使用して単量体を酸化重合させるようにし、この重合開始剤としては、例えば、ヨウ素または臭素などのハロゲン化物、五フッ化ケイ素などの金属ハロゲン化物、硫酸などのプロトン酸、三酸化硫黄などの酸素化合物、硫酸セリウムなどの硫酸塩、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などの過酸化物、あるいはパラトルエン酸鉄などの鉄塩などを使用する。これにより、陽極11の周囲を覆うように、導電性高分子と共にプロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントを含む電解質層13が形成される(ステップS103)。
単量体、プロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントとしては、例えば、以下の材料を使用する。すなわち、単量体としては、例えば、アニリン、ピロール、チオフェン、フランおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種を使用することにより、導電性高分子として、例えば、上記したように、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種を生成する。具体的には、例えば、単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェンを使用することにより、導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンを生成する。プロトン供与性高分子としては、例えば、上記したように、主鎖としての高分子骨格にプロトン供与性官能基を含む側鎖が結合されたものとして、スルホン酸基が側鎖として結合されたポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリイミドや、リン酸基が側鎖として結合されたポリ(メタ)アクリル酸や、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖が結合されたポリフルオロエチレンを使用し、具体的にはスルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖が結合されたポリフルオロエチレンを使用する。このスルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖が結合されたポリフルオロエチレンとしては、例えば、上記の化1に示した構造式を有し、すなわちスルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を末端に有するフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとをそれぞれ単量体として共重合させたものが好ましい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびセルロースを含む群のうちの少なくとも1種を使用し、具体的にはポリビニルアルコールを使用する。ドーパントとしては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩(例えばパラトルエンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルナフタレンスルホン酸およびその塩(例えばイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)、ならびにリン酸を含む群のうちの少なくとも1種を使用し、具体的にはイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムを使用する。なお、酸化重合反応を利用して導電性高分子を生成する際には、例えば、上記したように、単量体溶液に陽極11を浸漬させる代わりに、その単量体溶液を陽極11に塗布するようにしてもよい。
続いて、電解質層13の周囲を覆うように、陰極14を形成する(ステップS104))。この陰極14を形成する際には、例えば、電解質層13の周囲にカーボンペーストを塗布して乾燥させたのち、そのカーボンペースト上にさらに銀ペーストを塗布して乾燥させることにより、これらのカーボンペースト層と銀ペースト層との積層構造を有するようにする。これにより、陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子1が完成する(図1および図2参照)。
コンデンサ素子1を形成したのち、このコンデンサ素子1を使用して電解コンデンサ10を組み立てる。すなわち、まず、例えば、コンデンサ素子1のうちの陽極11に陽極リード2を溶接して接続させると共に、陰極14に導電性の接着層20を介して陰極リード3を接続させる(ステップS105)。なお、コンデンサ素子1に対する陽極リード2の接続方法としては、例えば、溶接に代えてかしめ加工を使用するようにしてもよい。
最後に、陽極リード2および陰極リード3が露出するようにコンデンサ素子1の周囲をモールド樹脂4で被覆する(ステップS106)。これにより、コンデンサ素子1に陽極リード2および陰極リード3が接続され、そのコンデンサ素子1が陽極リード2および陰極リード3を露出させるようにモールド樹脂4により周囲を覆われた構造を有する電解コンデンサ10が完成する(図1参照)。
本実施の形態に係る電解コンデンサ10では、コンデンサ素子1のうちの電解質層13が、主成分としての導電性高分子と共に、副成分としてのプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含むようにしたので、以下の理由により、作動特性を安定に確保することができる。
図4は、本実施の形態に係る電解コンデンサ10に対する比較例としての電解コンデンサに関する問題点を説明するものであり、図2に示した断面構成に対応する断面構成を表している。なお、図4に示したコンデンサ素子101(陽極111,誘電体層112,電解質層113,陰極114)およびモールド樹脂104は、それぞれコンデンサ素子1(陽極11,誘電体層12,電解質層13,陰極14)およびモールド樹脂4に対応するものである。
すなわち、電解コンデンサ(固体電解コンデンサ)に自己修復機能を付与する手法を検討した際に、電解液を使用せずに電解コンデンサに自己修復機能を付与し得る手法としては、例えば、図4に示したように、主成分としての導電性高分子と共に、副成分として自己修復機能を付与するプロトン供与性高分子を含むように電解質層113を構成する手法が考えられる。この比較例の電解コンデンサでは、電解質層113に導電性高分子と共にプロトン供与性高分子が含まれているため、作動時において誘電体層112が損傷して部分的に欠損することにより欠損部が生じたとしても、そのプロトン供与性高分子に基づく自己修復機構を利用して誘電体層112の欠損部が修復されるものと考えられる。しかしながら、比較例の電解コンデンサでは、プロトン供与性高分子の分散性が不十分であり、そのプロトン供与性高分子が細孔112Hの奥深くまで入り込みにくいため、誘電体層112の欠損部を十分に修復し得ないおそれがある。具体的には、図4に示したように、拡面化領域Rの上端近傍に生じた誘電体層112の欠損部112X1に関しては、その欠損部112X1の周辺にプロトン供与性高分子が存在するため、そのプロトン供与性高分子を利用して陽極111が再酸化(陽極酸化)されることにより誘電体層112(修復部112Y1)が追加形成され、その修復部112Y1に基づいて欠損部112X1が修復される。一方、拡面化領域Rの下端近傍に生じた誘電体層112の欠損部112X2に関しては、その欠損部112X2の周辺にプロトン供与性高分子が存在しないため、そのプロトン供与性高分子を利用して欠損部112X2を修復し得ない。この結果、比較例の電解コンデンサでは、欠損部112X1の存在に起因する漏れ電流の電流経路を遮断し得る一方で、欠損部112X2の存在に起因する漏れ電流の電流経路を遮断し得ないおそれがあるため、短絡の発生可能性が高くなる。
これに対して、本実施の形態に係る電解コンデンサ10では、図2に示したように、導電性高分子およびプロトン供与性高分子に加えて水溶性高分子を含むように電解質層13が構成されているため、その電解質層13中では、水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散される。この場合には、電解質層113が導電性高分子と共にプロトン供与性高分子のみを含み、水溶性高分子を含んでいない比較例の電解コンデンサ(図4参照)と比較して、水溶性高分子を媒体とした分散作用を利用する分だけプロトン供与性高分子の分散性が向上し、そのプロトン供与性高分子が細孔12Hの奥深くまで入り込みやすくなるため、プロトン供与性高分子に基づく自己修復機構を利用して誘電体層12の欠損部を十分に修復し得る。具体的には、図2に示したように、拡面化領域Rの上端近傍に生じた誘電体層12の欠損部12X1に関しては、その欠損部12X1の周辺にプロトン供与性高分子が存在するため、そのプロトン供与性高分子を利用して陽極11が再酸化(陽極酸化)されることにより誘電体層12(修復部12Y1)が追加形成され、その修復部12Y1に基づいて欠損部12X1が修復される。一方、拡面化領域Rの下端近傍に生じた誘電体層12の欠損部12X2に関しても同様に、その欠損部12X2の周辺にプロトン供与性高分子が存在するため、そのプロトン供与性高分子を利用して誘電体層12(修復部12Y2)が追加形成され、その修復部12Y2に基づいて欠損部12X2が修復される。この結果、欠損部12X1,12X2の双方の存在に起因する漏れ電流の電流経路を遮断しるため、短絡の発生可能性が低くなる。しかも、この電解コンデンサ10では、電解質層13の導電率が、副成分としてのプロトン供与性高分子および水溶性高分子の導電率ではなく、主成分としての導電性高分子の導電率に基づいて支配的に規定されるため、その導電率は、水溶性高分子が保有している水の漏洩や蒸発に起因して著しく経時劣化せず、ほぼ一定に維持される。したがって、本実施の形態に係る電解コンデンサ10では、作動特性を安定に確保することができるのである。特に、この作動特性の安定化に基づき、電解コンデンサ10を長寿命化することもできる。
また、本実施の形態に係る電解コンデンサ10の製造方法では、上記した作動特性を安定に確保することが可能な電解コンデンサ10を製造するために、既存の電解コンデンサの製造工程において使用される既存の容易な製造技術しか使用せず、新規かつ煩雑な製造技術を使用しない。しかも、その既存の製造技術のみを使用して電解コンデンサ10を安定に製造することが可能である。したがって、本実施の形態では、電解コンデンサ10を容易かつ安定に製造することができる。
また、本実施の形態に係る電解質層13では、主成分としての導電性高分子と共に副成分としてのプロトン供与性高分子および水溶性高分子を含むようにしたので、上記したように、水溶性高分子を媒体としてプロトン供与性高分子が分散し、そのプロトン供与性高分子の分散性が向上する。したがって、この電解質層13を使用することにより、作動特性を安定に確保することが可能な本実施の形態の電解コンデンサ10を構成することができる。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1〜3)
以下の手順を経て、電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、陽極として拡面化処理済みのアルミニウム箔(15mm×15mm)を準備し、そのアルミニウム箔を化成溶液としてのアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬させたのち、アルミニウム箔に電圧(=23V)を印加して陽極酸化反応を進行させることにより、そのアルミニウム箔の表層に酸化アルミニウム皮膜よりなる誘電体層を形成した。続いて、エタノール16.5mLと蒸留水13.5mLとの混合液中に単量体として3、4−エチレンジオキシチオフェン0.56g、プロトン供与性高分子としてスルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するポリフルオロエチレン(20%;Dupon社製Nafion(商品名))0.14g、水溶性高分子としてポリビニルアルコール、ならびにドーパントとしてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム水溶液(40%;花王株式会社製ペレックス NBL(商品名))4.8gを添加することにより単量体溶液を調製すると共に、蒸留水20mL中に重合開始剤として硫酸セリウム1.2gを溶解させることにより、重合開始剤溶液として硫酸セリウム溶液を調製した。続いて、誘電体層が設けられた陽極を単量体溶液中に浸漬させることにより、その陽極の表面に単量体溶液を付着させたのち、引き続き陽極を重合開始剤溶液中に浸漬させることにより、その重合開始剤溶液を使用して単量体溶液中の単量体を酸化重合させた。この酸化重合反応の結果、導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンが生成され、この導電性高分子と共にプロトン供与性高分子、水溶性高分子およびドーパントを含む電解質層が誘電体層の周囲を覆うように形成された。この電解質層を形成する際には、上記した電解質層の形成手順を10回繰り返すことにより、最終的に電解質層の厚さが5μmとなるようにし、特に、酸化重合反応の完了時ごとに蒸留水やエタノールで電解質層を洗浄することにより、未反応の単量体や重合開始剤を随時除去した。続いて、電解質層の周囲にカーボンペーストを10μmの厚さとなるように塗布したのち、さらにカーボンペースト上に銀ペーストを20μmの厚さとなるように塗布することにより、これらのカーボンペースト層と銀ペースト層との積層構造を有するように陰極を形成した。これにより、陽極、誘電体層、電解質層および陰極がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子が形成された。最後に、コンデンサ素子に銅製の陽極リードおよび陰極リードを接続させたのち、モールド樹脂としてエポキシ樹脂で陽極リードおよび陰極リードが部分的に露出するようにコンデンサ素子の周囲を覆うことにより、電解コンデンサを製造した。
なお、電解コンデンサとしては、水溶性高分子の含有量が導電性高分子の含有量に対して(導電性高分子の含有量を100重量%としたときに)12重量%(0.067g;実施例1)、15重量%(0.084g;実施例2)および36重量%(0.202g;実施例3)となるように添加量を調整すると共に、プロトン供与性高分子の含有量が導電性高分子の含有量に対して5重量%(実施例1〜3間において共通)となるように添加量を調整することにより、3種類の電解コンデンサを形成した。
(比較例1)
導電性高分子と共にドーパントのみを含み、プロトン供与性高分子および水溶性高分子の双方を含まないように電解質層を形成した点を除き、実施例1〜3と同様の製造手順を経て電解コンデンサを製造した。
(比較例2)
導電性高分子と共にドーパントおよびプロトン供与性高分子を含み、水溶性高分子を含まないように電解質層を形成した点を除き、実施例1〜3と同様の製造手順を経て電解コンデンサを製造した。
これらの実施例1〜3および比較例1,2の電解コンデンサに関して諸特性を調べたところ、以下の結果が得られた。
すなわち、まず、電解コンデンサの自己修復能力を調べたところ、表1に示した結果が得られた。表1は、電解コンデンサの自己修復状況に関する実験結果を表している。電解コンデンサの自己修復状況を調べる際には、超音波(120Hz)を30秒間に渡って印加して誘電体層を意図的に損傷させたのち、電圧(14V)を印加して誘電体層を自己修復させる試験サイクルを20回に渡って繰り返すことにより、各電解コンデンサの自己修復の有無を調べた。この際、各電解コンデンサごとに20個の試験サンプルを用意し、各電解コンデンサに関して、20個の試験サンプルのうち、20回の試験サイクル後に自己修復しきれなかった個数を「未修復個数(個)」として表1に示した。この「未修復個数」に関して一例を挙げて説明すれば、例えば、表1中の「実施例1」に関する「未修復個数=2」とは、実施例1の電解コンデンサを使用して20回に渡って試験サイクルを繰り返したところ、20個の試験サンプルのうち、18個に関して自己修復現象が確認され、残りの2個に関して自己修復現象が確認されなかったことを意味している。なお、表1には、参考までに、実施例1〜3および比較例1,2の組成(プロトン供与性高分子,水溶性高分子)も併せて示している。
Figure 2005135853
表1に示した結果から判るように、電解質層がプロトン供与性高分子および水溶性高分子の双方を含んでいない比較例1の電解コンデンサでは未修復個数が18個であり、電解質層がプロトン供与性高分子のみを含み、水溶性高分子を含んでいない比較例2の電解コンデンサでは未修復個数が8個であった。すなわち、電解質層にプロトン供与性高分子を含有させることにより、電解コンデンサの自己修復能力が向上して未修復個数が減少したものの、その未修復個数は実験個数の半数程度に留まった。これに対して、電解質層がプロトン供与性高分子および水溶性高分子の双方を含んでいる実施例1〜3の電解コンデンサでは、未修復個数が1〜2個であった。すなわち、電解質層にプロトン供与性高分子に加えて水溶性高分子を含有させることにより、電解コンデンサの自己修復能力が飛躍的に向上し、未修復個数が激減した。このことから、実施例1〜3の電解コンデンサでは、比較例1,2の電解コンデンサと比較して自己修復能力が飛躍的に向上し、作動特性を安定に確保し得ることが確認された。
なお、具体的にデータを示して説明しないが、水溶性高分子の含有量を12重量%(実施例1)、15重量%(実施例2)および36重量%(実施例3)の上下で変化させながら同様に電解コンデンサの自己修復能力を調べたところ、水溶性高分子の含有量を0.01重量%〜50重量%とすることにより作動特性を確保し得ることが確認された。また、同様に、具体的にデータを示して説明しないが、プロトン供与性高分子の含有量を5重量%の上下で変化させながら電解コンデンサの自己修復能力を調べたところ、プロトン供与性高分子の含有量を0.01重量%〜50重量%とすることにより作動特性を確保し得ることも確認された。
続いて、電解質層中におけるプロトン供与性高分子の分散状況を調べたところ、図5および図6に示した結果が得られた。図5および図6は電解質中におけるプロトン供与性高分子の分散状況に関するEPMA(Electron Probe Micro-Analyzer )結果を表しており、図5は上記した実施例2の電解コンデンサに関する結果を示し、図6は上記した比較例2の電解コンデンサに関する結果を示している。図5および図6では、いずれもほぼ上側半分の領域が電解コンデンサを構成する陽極に対応する領域を表しており、矢印で「拡面化領域」と示した領域(赤色領域,黄色領域,緑色領域,水色領域)が図2または図4に示した拡面化領域に対応している。特に、図5および図6では、プロトン供与性高分子としてのNafionに含まれているフッ素元素(F)の存在密度を色別に表しており、すなわち水色,緑色,黄色、赤色の順に存在密度が大きいことを表している(水色=存在密度最小,赤色=存在密度最大)。
図5および図6に示した結果から判るように、実施例2(図5参照)および比較例2(図6参照)のいずれの電解コンデンサに関しても、プロトン供与性高分子が細孔に入り込んでいる様子が観察された。しかしながら、プロトン供与性が細孔に入り込んでいる深さを実施例2と比較例2との間で比較すると、電解質層に水溶性高分子が含有されていない比較例2では、プロトン供与性高分子の存在密度が最も大きいことを表している赤色領域が細孔内に最大で20%程度しか見られず、すなわち細孔の最大深さに対してプロトン供与性高分子が20%程度しか入り込んでいないのに対して、電解質層に水溶性高分子が含有されている実施例2では、赤色領域が細孔内に最大で60%程度も見られ、すなわち拡面化領域の厚さに対してプロトン供与性高分子が60%程度まで達していた。このことから、実施例2の電解コンデンサでは、比較例2の電解コンデンサと比較して、プロトン供与性高分子の分散性が向上することが確認された。
なお、具体的にデータを示して説明しないが、上記したように、本発明の電解コンデンサに関してプロトン供与性高分子の含有量を0.01重量%〜50重量%の間で変化させながらそのプロトン供与性高分子の分散状況を調べたところ、細孔の最大深さに対してプロトン供与性高分子が入り込んでいる深さは30%〜60%程度であった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、上記実施の形態および実施例では、図1に示したように、電解コンデンサ10が陽極11を1つだけ含み、すなわち電解コンデンサ10が陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14に基づく電気的反応部位(積層単位)を1つだけ有する単層型構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図7に示したように、電解コンデンサ10が陽極11を複数含み、すなわち電解コンデンサ10が陽極11、誘電体層12、電解質層13および陰極14に基づく電気的反応部位(積層単位)を複数(例えば3つ)有する積層型構造を有するようにしてもよい。この積層型の電解コンデンサ10は、上記した積層単位を複数有している上、例えば、各陽極11が導電性のスペーサ30を介して互いに電気的に接続されていると共に、接着層20が各陰極14と陰極リード3の間だけでなく各陰極14間にも設けられている点を除き、図1に示した電解コンデンサ10と同様の構成を有している。この場合においても、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。なお、図7では、例えば、電解コンデンサ10が上記した積層単位を3つ有する場合について示しているが、この積層単位の数は必ずしも3つに限らず、自由に変更可能である。
本発明に係る固体電解質、ならびに電解コンデンサおよびその製造方法は、電気的反応を生じる主要部が高導電率を有する機能性高分子(導電性高分子)などの固体材料により構成された固体電解コンデンサなどに適用することが可能である。
本発明の一実施の形態に係る電解コンデンサの断面構成を表す断面図である。 図1に示したコンデンサ素子の断面構成を部分的に拡大して表す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る電解コンデンサの製造工程の流れを説明するための流れ図である。 本発明の一実施の形態に係る電解コンデンサに対する比較例としての電解コンデンサに関する問題点を説明するための断面図である。 本発明の電解コンデンサに関する電解質層中のプロトン供与性高分子の分散状況(EPMA測定結果)を表す図である。 比較例の電解コンデンサに関する電解質層中のプロトン供与性高分子の分散状況(EPMA測定結果)を表す図である。 本発明の一実施の形態に係る電解コンデンサの構成に関する変形例を表す断面図である。
符号の説明
1…コンデンサ素子、2…陽極リード、3…陰極リード、4…モールド樹脂、10…電解コンデンサ、11…陽極、12…誘電体層、12X1,12X2…欠損部、12Y1,12Y1…修復部、13…電解質層、14…陰極、R…拡面化領域。




































Claims (13)

  1. 導電性高分子と共に、プロトン供与性高分子および水溶性高分子を含んで構成されている
    ことを特徴とする固体電解質。
  2. 前記導電性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1記載の固体電解質。
  3. 前記プロトン供与性高分子は、ポリフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種を主鎖として有するものである
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
  4. 前記プロトン供与性高分子は、スルホン酸基およびリン酸基を含む群のうちの少なくとも1種を含む側鎖を有するものである
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質。
  5. 前記プロトン供与性高分子は、スルホン酸基を含むパーフルオロアルキルエーテル側鎖を有するものである
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の固体電解質。
  6. 前記プロトン供与性高分子の含有量は、前記導電性高分子の含有量に対して0.01重量%以上50重量%以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の固体電解質。
  7. 前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコールおよびセルロースを含む群のうちの少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の固体電解質。
  8. 前記水溶性高分子の含有量は、前記導電性高分子の含有量に対して0.01重量%以上50重量%以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質。
  9. さらに、導電性を高めるためのドーパントを含んでいる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の固体電解質。
  10. 前記ドーパントは、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩およびその塩、ならびにリン酸を含む群のうちの少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項9記載の固体電解質。
  11. 第1の電極層、誘電体層、固体電解質層および第2の電極層がこの順に積層された積層構造を有し、
    前記固体電解質層が、導電性高分子と共に、プロトン供与性高分子および水溶性高分子を含んで構成されている
    ことを特徴とする電解コンデンサ。
  12. 前記誘電体層により形成された複数の細孔を含む拡面化領域が構成され、この複数の細孔に前記固体電解質層が部分的に入り込んでおり、
    前記細孔に前記プロトン供与性高分子が入り込んでいる深さは、前記拡面化領域の厚さに対して30%以上60%以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項11記載の電解コンデンサ。
  13. 単量体にプロトン供与性高分子および水溶性高分子を添加して酸化重合させることにより、導電性高分子と共に前記プロトン供与性高分子および前記水溶性高分子を含む固体電解質層を生成するステップと、
    この固体電解質層を使用して、第1の電極層、誘電体層、前記固体電解質層および第2の電極層がこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサを形成するステップと
    を含むことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。







































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