JP4269351B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に係り、特に、導電性高分子からなる固体電解質層の形成を改善した方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、タンタル、アルミニウム等の弁作用金属からなるとともに微細孔やエッチングピットを備えた陽極電極の表面に、誘電体となる酸化皮膜層を形成し、この酸化皮膜層から電極を引き出して構成されている。
【0003】
そして、酸化皮膜層からの電極の引き出しは、導電性を有する電解質層により行っている。したがって、電解コンデンサにおいては電解質層が真の陰極を担うことになる。例えば、アルミニウム電解コンデンサでは、液状の電解質を真の電極として用い、陰極電極はこの液状電解質と外部端子との電気的な接続を担っているにすぎない。
【0004】
このように真の陰極として機能する電解質層には、酸化皮膜層との密着性、緻密性、均一性などが求められる。特に、陽極電極の微細孔やエッチングピットの内部における密着性が電気的な特性に大きな影響を及ぼしており、従来数々の電解質層が提案されている。
【0005】
固体電解コンデンサは、イオン伝導であるために高周波領域でのインピーダンス特性に欠ける液状の電解質の代わりに導電性を有する固体の電解質を用いるもので、なかでも二酸化マンガンや7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られている。その一方で、各種の導電性高分子についての検討が重ねられており、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)に着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在している。
【0006】
例えば、巻回型のコンデンサ素子にPEDTからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、図6に示すように、化成→コンデンサ素子形成→浸漬法によるEDTと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージングという製造工程によって作製される。以下には、この製造工程について、図7および図8を参照して簡単に説明する。
【0007】
まず、図8に示すように、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔1の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピット8を形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層4を形成する(化成)。陽極箔1と同様に、図7に示すような陰極箔2も、アルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。また、図7に示すように、陽極箔1および陰極箔2には、それぞれの電極を外部に接続するためのリード線6、7を、ステッチ、超音波溶接等の公知の手段により接続する。なお、6a,7aは、リード線6,7の丸棒部である。
【0008】
次に、以上のようにして表面に酸化皮膜層4が形成された陽極箔1とエッチングピット8のみが形成された陰極箔2とを、図7に示すようにセパレータ3を介して巻回して、コンデンサ素子10を形成する。そして、このコンデンサ素子10を3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤の混合溶液(重合液)に浸漬することにより、この重合液をコンデンサ素子10に含浸する。あるいはまた、コンデンサ素子10をEDTと酸化剤溶液に交互に浸漬して含浸する。いずれの場合でも、コンデンサ素子10にEDTと酸化剤を含浸した後、重合反応させ、図8に示すようなポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)からなる固体電解質層5を生成する。
【0009】
この後、コンデンサ素子1を図示していない外装ケースに挿入する。続いて、外装ケース内にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を付着して熱硬化させることによって、コンデンサ素子10の外周に外装樹脂を被覆し(樹脂封止)、固体電解コンデンサを完成する。なお、このように樹脂封止を行うと、酸化皮膜層4が損傷して漏れ電流特性が低下するため、樹脂封止後に、コンデンサ定格電圧に応じた電圧を印加して高温のエージングを行うことにより酸化皮膜層4を修復し、特性の向上を計っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の方法によって作製された固体電解コンデンサにおいては、次のような問題点がある。
▲1▼ショートが発生する。
▲2▼静電容量が小さく、等価直列抵抗(ESR)が高く、バラツキも大きい。
【0011】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ショートの発生を防止可能で、しかも、十分な静電容量を保持すると共に等価直列抵抗(ESR)を低く維持可能な、バラツキの小さい固体電解コンデンサを製造可能な優れた方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、コンデンサ素子に対する3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤の含浸量を、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量の75〜85%の範囲内に限定することを特徴としている。この構成により、コンデンサ素子内部にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)が良好に形成されるため、十分な静電容量を保持できると共に、等価直列抵抗(ESR)を低く維持できる。
【0013】
以上のようなEDTと酸化剤の含浸量の限定は、本発明者が、前述した従来方法によるコンデンサの製造段階においてコンデンサ素子の状態の詳細な観察と電気特性の測定とを重ねることにより、ショートの発生や電気特性の低下の原因がPEDTの形成不良にあるものと推測し、この不良の分析と状態改善のために検討した結果、導き出されたものである。この一連の研究内容については、後で説明する。
【0014】
また、本発明において、コンデンサ素子にEDTと酸化剤を含浸する際には、EDTと酸化剤の混合溶液を含浸することができる。また、EDTを含浸した後に酸化剤溶液を含浸することもできるし、酸化剤溶液を含浸した後にEDTを含浸することもできる。ここで、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量をA、前者の含浸法の混合溶液中におけるEDTの含有率をBとした場合に、後者の含浸法におけるEDTの含浸量は、A×Bの75〜85%の範囲内であり、酸化剤溶液の含浸量は、A×(1−B)の75〜85%の範囲内である。
【0015】
さらに、本発明においては、EDTと酸化剤の含浸に際して、含浸液中にコンデンサ素子を浸漬する浸漬法を採用することも可能であるが、コンデンサ素子に対して含浸液を注入する注入法を採用することがより望ましい。すなわち、注入法を採用した場合の方が、第1に、含浸する液量の管理が容易であり、第2に、原料効率が低下することがない。第3に、酸化剤溶液の特性の変化がないので、安定した特性を得ることができる。また、ショートの発生もない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明による固体電解コンデンサの製造方法の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。本実施の形態において、固体電解コンデンサは、図1に示すように、化成→コンデンサ素子形成→注入法によるEDTと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージングという製造工程によって作製される。以下には、この製造工程について、図7および図8を参照して簡単に説明する。
【0017】
[1.製造工程]
図1に示すように、本実施の形態において、化成からコンデンサ素子形成に至るまでの手順は、前述した従来技術の手順と同様である。すなわち、図8に示すように、陽極箔1を粗面化してその表面に酸化皮膜層4を形成する(化成)と共に、陰極箔2を粗面化し、これらの陽極箔1と陰極箔2をセパレータ3を介して巻回して、コンデンサ素子10を形成する。
【0018】
次に、このコンデンサ素子10に対して含浸し得る液体の最大容量の75〜85%の範囲内の含浸量で、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤をコンデンサ素子10に含浸する。この含浸は、コンデンサ素子10に対してEDTと酸化剤の混合溶液(重合液)を注入することによって行う。あるいはまた、コンデンサ素子10に対してEDTと酸化剤溶液を交互に注入するか、酸化剤溶液とEDTを交互に注入することによって行う。いずれの場合でも、注入は、コンデンサ素子10に対してシリンジから液体を吐出する方法で行う。
【0019】
このようにして、コンデンサ素子10にEDTと酸化剤を含浸した後、重合反応させ、図8に示すようなポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)からなる固体電解質層5を生成する。
【0020】
本実施の形態において、このように固体電解質層5を形成した後の手順は、前述した従来技術の手順と同様である。すなわち、固体電解質層5を形成したコンデンサ素子1を、図示していない外装ケースに挿入し、この外装ケース内にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を付着して熱硬化させることによって、コンデンサ素子10の外周に外装樹脂を被覆し(樹脂封止)、固体電解コンデンサを完成する。そして、この後に、コンデンサ定格電圧に応じた電圧を印加して高温のエージングを行うことにより、樹脂封止に起因して損傷した酸化皮膜層4を修復する。
【0021】
[2.作用]
以上の製造工程によれば、コンデンサ素子内部に十分な量のPEDTが良好に形成されるため、十分な静電容量を保持できると共に、等価直列抵抗(ESR)を低く維持できる。すなわち、前述したように、本発明は、前述した従来方法によるコンデンサの製造段階においてコンデンサ素子の状態の詳細な観察と電気特性の測定とを重ねることにより、ショートの発生や電気特性の低下の原因がPEDTの形成不良にあるものと推測し、この不良の分析と状態改善のために検討した結果、導き出されたものである。以下には、この一連の研究内容について説明する。
【0022】
▲1▼ショートの原因がPEDTによる丸棒部間の接合にあることの判明
まず、前述した従来方法でコンデンサを作製する場合において、ショートの原因を検討したところ、次のことが判明した。すなわち、コンデンサ素子をEDTもしくは酸化剤溶液に浸漬した際には、リード線6,7の丸棒部6a,7aの表面にEDTおよび酸化剤溶液が表面張力によって這い上がって付着し、重合後に、両側の丸棒部6a,7aの表面に生成されたPEDTが接合していることが判明した。このことから、PEDTによる両側の丸棒部6a,7a間の接合がショートの原因であるものとの推測を導き出した。
【0023】
▲2▼特性低下の原因が丸棒部表面のPEDT以外にあることの判明
さらに、以上のように丸棒部6a,7aの表面に形成されたPEDTを除去し、この状態でコンデンサ素子の電気特性を測定したところ、静電容量が小さく、等価直列抵抗(ESR)が高く、かつ、バラツキが大きいという結果を得た。
【0024】
▲3▼素子両端面にPEDTがはみ出している場合に特性が低いことの判明
そのため、コンデンサ素子をより詳細に観察したところ、重合後のPEDTがコンデンサ素子の両端面にはみ出すように形成されているものが多く、このようにPEDTがはみ出した状態で形成されたコンデンサ素子は、静電容量が小さく、等価直列抵抗(ESR)が高いものが多いことが判明した。
【0025】
▲4▼ショートや特性低下の原因がPEDTの形成不良であるとの推測
そこで、このような観察結果について、次のような推測を導き出した。すなわち、重合反応後に形成されるPEDTが、何らかの理由によってコンデンサ素子外部に押し出され、内部に形成されたPEDTの量が減少し、その結果、静電容量は低下し、等価直列抵抗(ESR)が上昇するものとの推測である。
【0026】
▲5▼PEDTの形成不良が生じる原因の考察
さらに、以上のようなPEDTの形成不良が生じる原因を考察した。
すなわち、含浸後に溶媒を揮発させる際に、コンデンサ素子内部から表面に移動する溶媒がコンデンサ素子内部のEDTもしくは酸化剤をコンデンサ素子外表面まで押し出す結果、コンデンサ素子内部のEDTもしくは酸化剤が減少するというものである。そのため、重合後にコンデンサ素子の外表面にPEDTが形成され、コンデンサ素子内部のPEDTの量は少なくなる。
【0027】
▲6▼EDTと酸化剤の含浸量の低減によってPEDTの形成不良を防止できることの判明
そこで、以上のようなPEDTの形成不良の発生を防止して、ショートの発生や特性低下を解消するために検討を重ねたところ、含浸するEDTと酸化剤溶液の量を低減することによって、PEDTの形成不良を防止できることが判明した。
【0028】
▲7▼含浸量の低減によってPEDTの形成不良を防止できる理由の考察
以上のように、EDTと酸化剤の含浸量の低減によってPEDTの形成不良を防止できる理由について、次のように考察した。
【0029】
まず、EDTと酸化剤の含浸量を少なくすると、PEDTが丸棒部に這い上がることがないため、ショートの発生を防止できる。
【0030】
EDTと酸化剤の含浸量が少ないと、溶媒の量も少なくなり、乾燥、揮発する溶媒の量も減少するので、溶媒が揮発する際にコンデンサ素子の外表面に押し出されるEDTもしくは酸化剤の量も少なくなる。したがって、コンデンサ素子内部で形成されるPEDTの量が減少することはないため、静電容量が低下することもなく、等価直列抵抗(ESR)が上昇することもない。
【0031】
さらに、重合反応時に加熱する場合があるが、この際にも本発明の構成によって、コンデンサの特性が向上する。すなわち、加熱した時、熱はコンデンサ素子の外部から与えられることになり、コンデンサ素子の表面近傍から重合が進行してPEDTが形成する。この際に形成した多孔質固体状のPEDTへ、内部のEDTもしくは酸化剤溶液が移動して、コンデンサ素子内部のEDTもしくは酸化剤溶液が減少し、結果として、内部に生成するPEDTが減少して、コンデンサの特性が劣化する。ところが、EDTと酸化剤の含浸量が少ないと、外部からの熱がコンデンサ素子内部にまで速やかに伝導して、内部に十分な量のPEDTが生成し、特性が劣化することがない。
【0032】
▲8▼含浸し得る最大容量の75〜85%の含浸量の場合に優れた特性が得られることの判明
さらに、EDTと酸化剤の含浸量を詳細に検討した結果、コンデンサ素子に対するEDTと酸化剤の含浸量をコンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量の75〜85%の範囲内とした場合には、コンデンサ素子内部に十分な量のPEDTを良好に形成して、十分な静電容量を安定的に保持できると共に、等価直列抵抗(ESR)を低く維持できることが判明した。
【0033】
すなわち、EDTと酸化剤の含浸量が85%以下の場合には、▲7▼で述べたように、溶媒の量が少ないため、溶媒の揮発によってコンデンサ素子の表面近傍部分に押し出される量も少なくなる。したがって、コンデンサ素子内部に十分な量のPEDTが良好に形成されるため、十分な静電容量を保持できると共に、等価直列抵抗(ESR)を低く維持できる。また、重合反応中に加熱する場合も、外部からの熱がコンデンサ素子内部にまで速やかに伝導して、同様に内部に十分な量のPEDTが形成されて、良好なコンデンサ特性を得ることができる。
【0034】
しかしながら、EDTと酸化剤の含浸量が75%に満たない場合には、含浸量が少なすぎて十分なPEDTを形成することができなくなるため、静電容量は低下し、等価直列抵抗(ESR)が高くなってしまう。
【0035】
▲9▼含浸法の検討
また、本発明において、コンデンサ素子にEDTと酸化剤を含浸する際の含浸法を検討したところ、EDTと酸化剤の混合溶液を含浸することもできるし、EDTと酸化剤を個別に順次含浸する(EDTを含浸した後に酸化剤溶液を含浸するか、あるいは、酸化剤溶液を含浸した後にEDTを含浸する)こともできることが判明した。
【0036】
ここで、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量をA、前者の含浸法の混合溶液中におけるEDTの含有率をBとした場合に、後者の含浸法におけるEDTの含浸量は、A×Bの75〜85%の範囲内であり、酸化剤溶液の含浸量は、A×(1−B)の75〜85%の範囲内である。ここで、EDTの含有率Bの許容可能な範囲は、5〜35wt%であり、酸化剤溶液の含有率(1−B)の許容可能な範囲は、65〜95wt%である。
【0037】
さらに、液体中にコンデンサ素子を浸漬する浸漬法を採用することも可能であるが、コンデンサ素子に対して液体を注入する注入法を採用することがより望ましいことも判明した。すなわち、注入法を採用した場合、以下のような利点がある。
【0038】
第1に、シリンジで液を定量吐出して、その液をコンデンサ素子に含浸させるので、浸漬法によってコンデンサ素子に表面張力によって含浸させるのに比べて、含浸する液量の管理が容易である。また、浸漬法によると、場合によっては、リード線の丸棒部の表面に、EDTならびに酸化剤溶液が表面張力によって這い上がって付着し、重合後に生成したPEDTが両側の丸棒部を接合し、ショートの原因となる。
【0039】
第2に、浸漬法の場合は、原料効率が低下する。すなわち、EDTと酸化剤溶液の混合溶液に浸漬する場合、この溶液中のEDTの酸化剤による重合が進んでPEDTが生成し、このPEDTは最終的に廃棄することになる。また、EDTに浸漬し、次いで酸化剤溶液に浸漬する場合、EDTを含浸した際にコンデンサ素子に付着するEDTの幾分かが、酸化剤溶液に含浸した時に、酸化剤溶液に溶解する。そして、この溶解したEDTは酸化剤溶液と反応してPEDTとなり、このPEDTも廃棄することになる。酸化剤溶液に浸漬した後に、EDTに浸漬する場合も、同様に、廃棄しなければならないPEDTが生成する。このように、浸漬法によると、廃棄しなければならないPEDTが生成するので、原料効率が低下する。さらに、浸漬法によると、コンデンサ素子の側面にも、EDT、酸化剤溶液、またはこれらの混合溶液が付着し、PEDTが生成することになるが、このPEDTは不必要なので、その分原料効率が低下し、場合によっては、PEDTがケースと接触して、ショートの原因ともなる。
【0040】
第3に、前述したように、EDTと酸化剤溶液の混合溶液においても、EDTと酸化剤を別々に含浸する場合の後に浸漬する液においても、EDTが酸化剤と反応するので、液の状態が変化し、このことによって、EDTとの重合状態も変化して、コンデンサの特性のバラツキの原因となる。これに対して、注入法では、このようなことはなく、安定した特性を得ることができる。
【0041】
[3.他の実施の形態]
なお、本発明は、前述したような実施の形態に限定されるものではなく、他にも本発明の範囲内で多種多様な形態を実施可能である。
【0042】
例えば、EDTを含浸した後に酸化剤溶液を含浸する場合に、EDTのみを含浸することも可能であるが、EDTと揮発性溶媒とを混合したモノマー溶液を含浸することも可能である。このようにEDTを揮発性溶媒で希釈することにより以下のような利点がある。すなわち、コンデンサ素子の容量に対して、含浸するEDTの量が少ないと、EDTを注入しても素子全体に含浸されないことがある。しかしながら、このような場合、揮発性溶媒で希釈すれば、注入する容量を増加させることができ、このことによって、コンデンサ素子全体に含浸させることができ、コンデンサ素子の内部により緻密で均一なPEDTを形成することができる。
【0043】
また、前記実施の形態においては、EDTと酸化剤の含浸に際して、シリンジから含浸液を吐出してコンデンサ素子に注入しているが、含浸液の具体的な注入法は適宜選択可能である。また、EDTと酸化剤の含浸は、このような注入法に限定されるものではなく、浸漬法を採用することも可能であるが、前述した通り、一般的には注入法を採用することが望ましい。すなわち、注入法を採用した場合の方が、第1に、含浸する液量の管理が容易であり、第2に、原料効率が低下することがない。第3に、酸化剤の特性の変化がないので、安定した特性を得ることができる。また、ショートの発生もない。
【0044】
また、本発明は、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量に対してEDTと酸化剤の含浸量の範囲を限定するものであるため、具体的な酸化剤や溶媒の種類は適宜選択可能である。これに関連して、コンデンサ素子に含浸する重合液中におけるEDTと酸化剤の含有率は、前述した許容範囲内で自由に選択可能である。すなわち、EDTの含有率の許容可能な範囲は5〜35wt%であり、酸化剤溶液の含有率の許容可能な範囲は65〜95wt%である。
【0045】
【実施例】
より具体的に、図7の構造を持つ固体電解コンデンサとして、次の表1に示す製造仕様により、EDTと酸化剤の含浸量の異なる複数種類の固体電解コンデンサを作製した。
【表1】
Figure 0004269351
【0046】
ここで、EDTと酸化剤の含浸量、すなわち、重合液の注入量の異なる複数種類の固体電解コンデンサとしては、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量に対して、重合液の注入量をそれぞれ、100%(比較例1)、90%(比較例2)、85%(実施例1)、80%(実施例2)、75%(実施例3)、70%(比較例3)、60%(比較例4)としてPEDTを形成してなる7種類の固体電解コンデンサを作製した。
【0047】
そして、これらの固体電解コンデンサについて、静電容量(Cap)、tanδ、漏れ電流(LC)、等価直列抵抗(ESR)の初期特性をそれぞれ測定したところ、図2〜図5に示す結果が得られた。ここで、測定条件は、Cap:120Hz、tanδ:120Hz、LC:定格電圧2分、ESR:100kHz、である。また、次の表2は、図2〜図5の結果を集計した表である。
【表2】
Figure 0004269351
【0048】
この表2および図2から明らかなように、静電容量(Cap)については、比較例1〜4が28.6〜32.6(μF)であるのに対し、本発明に係る実施例1〜3は、32.5〜33.6(μF)と高い値を示している。また、表2および図5から明らかなように、等価直列抵抗(ESR)については、比較例1〜4が0.062〜0.080とかなり高いのに対し、実施例1〜3は、0.045〜0.049Ωと格段に低くなっている。さらに、表2および図3から明らかなように、tanδについても、比較例1〜4が0.048〜0.054であるのに対し、実施例1〜3は、0.043〜0.045と低くなっている。
【0049】
このように、比較例1〜4に比べて、本発明に係る実施例1〜3は、十分に高い静電容量を保持すると共に、tanδと等価直列抵抗(ESR)を低く維持することができる。
【0050】
さらに、実施例1、2と比較例2について、150℃、6.3Vの条件で高温負荷試験を行い、10時間経過後、20時間経過後の静電容量変化率(ΔCap)特性、tanδ、漏れ電流(LC)、等価直列抵抗(ESR)をそれぞれ測定したところ、次の表3に示す結果が得られた。
【表3】
Figure 0004269351
【0051】
この表3から明らかなように、等価直列抵抗(ESR)については、20時間経過後に比較例2が0.077Ωまで上昇しているのに対し、実施例2は0.060Ωであり、実施例1は0.049Ωという低い値を維持している。また、tanδについても、20時間経過後に比較例2が0.037であるのに対し、実施例2は0.031まで、実施例1は0.026までそれぞれ低下している。
【0052】
一方、静電容量については、20時間経過後に比較例2と実施例1が共に10%近く低下しているが、表2に示すように、実施例1の初期の静電容量は比較例2より高いため、20時間経過後でも実施例1の静電容量は比較例2の静電容量より高い。さらに、実施例2の静電容量変化率は、20時間経過後でも−4.4%にすぎない。
【0053】
以上のような初期特性と高温負荷試験の測定結果は、本発明に係るEDTと酸化剤の含浸量の限定による効果を実証するものである。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、コンデンサ素子に対するEDTと酸化剤の含浸量を、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量の75〜85%の範囲内に限定することにより、ショートの発生を防止可能で、しかも、十分な静電容量を保持すると共に等価直列抵抗(ESR)を低く維持可能な、バラツキの小さい固体電解コンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図2】重合液の注入量の異なる複数種類の固体電解コンデンサについて、静電容量の初期特性を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図3】重合液の注入量の異なる複数種類の固体電解コンデンサについて、tanδの初期特性を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図4】重合液の注入量の異なる複数種類の固体電解コンデンサについて、漏れ電流(LC)の初期特性を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図5】重合液の注入量の異なる複数種類の固体電解コンデンサについて、等価直列抵抗(ESR)の初期特性を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図6】従来技術による固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明が対象とするコンデンサ素子の一例を示す分解斜視図である。
【図8】図7のコンデンサ素子の陽極箔を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1…陽極箔
2…陰極箔
3…セパレータ
4…酸化皮膜層
5…固体電解質層
6,7…リード線
6a,7a…丸棒部
8…エッチングピット
10…コンデンサ素子

Claims (6)

  1. 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤とを含浸して化学重合によるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)を生成する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子に対する3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤の含浸量は、コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量の75〜85%の範囲内であることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. コンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤の混合溶液を含浸することを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. コンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を含浸した後に、酸化剤溶液を含浸することを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. コンデンサ素子に、酸化剤溶液を含浸した後に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を含浸することを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. コンデンサ素子に含浸し得る液体の最大容量をA、コンデンサ素子に3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)と酸化剤の混合溶液を含浸する際の混合溶液中における3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)の含有率をBとした場合に、コンデンサ素子に対する3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)の含浸量は、A×Bの75〜85%の範囲内であり、コンデンサ素子に対する酸化剤溶液の含浸量は、A×(1−B)の75〜85の範囲内であることを特徴とする請求項3または4記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. コンデンサ素子への液体の含浸を、コンデンサ素子に対して液体を注入する注入法によって行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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