JP4560875B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に係り、特に、ショートの発生を防止し、電気的特性の安定化を図ることができるように改良を施した固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)に着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDTからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
そして、所定の径を有する巻軸を用いて、上記のようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)と酸化剤溶液をそれぞれ吐出して、コンデンサ素子内でEDTの重合反応を促進し、PEDTからなる固体電解質層を生成する。
【0007】
この後、コンデンサ素子を外装ケースに挿入し、外装ケース内にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を付着して熱硬化させることによって、コンデンサ素子の外周に外装樹脂を被覆し(樹脂封止)、固体電解コンデンサを完成する。なお、このように樹脂封止を行うと、酸化皮膜層が損傷して漏れ電流特性が低下するため、樹脂封止後に、コンデンサ定格電圧に応じた電圧を印加して高温のエージングを行うことにより酸化皮膜層を修復し、特性の向上を図っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような固体電解コンデンサには種々のタイプがあるが、最近では大型品の開発が進められている。そこで、本発明者等は、種々の固体電解コンデンサについて、それぞれ電気的特性を調べたところ、大型化が進むにつれて、巻回素子の径が大きくなると、特性がばらつく場合があり、また、漏れ電流が増大したり、ショートの発生が多くなることが判明した。
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ショートの発生を防止し、電気的特性の安定化を図ることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、コンデンサ素子の巻軸径と固体電解コンデンサの電気的特性との関係について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、巻回素子の径が大きくなると、巻回時の引っ張り強度が大きくなって、巻軸に負荷される力が大きくなることから、巻軸径を大きくする必要があるため、従来より大型品のコンデンサ素子の巻回に用いられている巻軸の径は1.8mmφ以上であるが、本発明者等は、巻回素子の径が等しいコンデンサ素子について、その巻軸径を種々変えて、所望の電気的特性が得られる巻軸径を調べた結果、巻軸径が1.5mmφ以下の場合に良好な結果が得られることが判明したものである。
【0011】
まず、本発明者等は、巻軸径が大きくなると、電気的特性がばらつく場合があり、また、漏れ電流が増大したり、ショートの発生が多くなることに鑑み、その原因を検討した結果、以下の結論に達したものである。
すなわち、巻回したコンデンサ素子に固体電解質層を形成するに際し、吐出法を用いた場合には、まず、モノマーを巻回素子に吐出し、その後に酸化剤を吐出し、加熱、重合してポリマーを形成する。ここで、巻回素子の巻軸径が1.5mmφを超えると、この部分にモノマー及び酸化剤(特に、酸化剤)が侵入することが分かった。ところが、モノマー及び酸化剤の吐出量は一定量に保たれているため、結果として、コンデンサ素子に吐出されるモノマー及び酸化剤の量がばらつくことになり、コンデンサ素子に形成される固体電解質層が均一ではなくなる。その結果、固体電解コンデンサの電気的特性がばらつくことになったと考えられる。
【0012】
また、巻軸部分に侵入したモノマー及び酸化剤によって、巻軸部分においてポリマーが生成され、そのポリマーが巻軸部分からはみ出てくることがあり、そのポリマーが電極引き出し手段を接合して、漏れ電流の増大やショートを引き起こすと考えられる。
さらに、吐出を一気に行わずに、コンデンサ素子の電極箔とセパレータが巻回された部分に、所定量ずつ何回かに分けて吐出する方法も考えられるが、この方法では、吐出工程が長時間化することになり望ましいものではない。
【0013】
そこで、本発明者等は、巻軸径を種々変えて、所望の電気的特性が得られる巻軸径を調べたところ、巻軸径を1.5mmφ以下とした場合に良好な結果が得られることが判明したものである。
なお、巻線巻回時の引っ張り強度によって巻軸に加わる力に耐え得るようにするため、巻軸の径の下限値は、1.0mmφ以上であることが望ましく、1.2mmφ以上であることがより望ましい。
【0014】
このように巻軸径を1.5mmφ以下とした場合に良好な結果が得られた理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、巻軸径を1.5mmφ以下とした場合には、巻軸部分にモノマー及び酸化剤が侵入したとしても、その量は少ないため、コンデンサ素子に吐出されるモノマー及び酸化剤の量のばらつきを低減することができる。その結果、コンデンサ素子に形成される固体電解質層を均一化することができ、これにより固体電解コンデンサの電気的特性を安定化することができると考えられる。
【0015】
また、巻軸径を1.5mmφ以下とすることにより、従来と比べて巻軸部分に侵入するモノマー及び酸化剤の量が少なくなるため、巻軸部分で形成されるポリマーも少なくなり、そのポリマーが巻軸部分からはみ出てくることもなくなる。
その結果、電極引き出し手段が接合されて、漏れ電流の増大やショートを引き起こすといった問題も生じない。さらに、巻軸部分に侵入する無駄なモノマー及び酸化剤の量が減るので、コストの削減にもなる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
なお、実施例1は巻軸径を1.2mmφとし、比較例1は巻軸径を1.8mmφとして、以下のようにして固体電解コンデンサを作製し、電気的特性を調べたところ、表1に示すような結果が得られた。
【0017】
(実施例1)
巻軸径を1.2mmφとして、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して、素子形状が10φ×8Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子にEDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱して、PEDTからなる固体電解質層を形成した。そして、このコンデンサ素子をアルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、開口部をゴム封口した。なお、定格電圧は16WV、定格容量は150μFである。
【0018】
(比較例1)
巻軸径を1.8mmφとし、その他の条件は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0019】
【表1】
Figure 0004560875
【0020】
表1において、比較例1の値はショートした以外のものの値であるが、表1から明らかなように、比較例1においては、50個中17個にショートが発生した。これに対し、実施例1においては、ショートが発生したものは皆無であった。
また、比較例1においては、巻軸部分からモノマー及び酸化剤が侵入し、さらに、巻軸部分から下へ落下することがあった。その結果、比較例1においてはコンデンサ素子に吐出されるモノマー及び酸化剤の量が少なくなり、そのために静電容量が低下し、漏れ電流及びESRが上昇したと考えられる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、巻回素子の巻軸径を適切な範囲に設定することにより、ショートの発生を防止し、電気的特性の安定化を図ることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。

Claims (1)

  1. 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に対して3,4−エチレンジオキシチオフェン及び酸化剤を一定量吐出することにより、ポリエチレンジオキシチオフェンを生成する固体電解コンデンサの製造方法において、
    前記コンデンサ素子の巻軸径を、1.0mmφ以上1.5mmφ以下としたことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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