JP5303085B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に係り、特に、コンデンサ素子にモノマー溶液と酸化剤溶液を含浸する際の方法及び条件に改良を施した固体電解コンデンサの製造方法に関するものである。
すなわち、上述したような従来の製造方法によって得られた固体電解コンデンサを、横型又は縦型の表面実装用チップ部品とし、高温リフロー半田付けを行うと、リフロー半田時に静電容量が減少し、漏れ電流が上昇するといった問題点があった。特に、近年、環境問題から高融点の鉛フリー半田が用いられるようになり、半田リフロー温度が200〜220℃から、230〜270℃へとさらに高温化しているため、高温リフロー半田付けを行った場合でも、金属ケースや封口ゴムの膨れが生じず、特性も劣化しない固体電解コンデンサの開発が切望されていた。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
本発明者等は、一旦乾燥させたコンデンサ素子に水分を吸着させてその特性を調べたところ、水分量が少ないほど、初期特性、リフロー特性及びリフロー後の信頼性が向上することが判明した。
次に、サイズが6.3〜10φ、6〜8Lの範囲でそれぞれ大きさの異なる複数のコンデンサ素子について、吸着させる水分量を変えて調べたところ、いずれのサイズにおいても、水分量が一定値より少ないと良好な結果が得られた。
この水分量は、1.0mg/素子以下が好ましく、さらに好ましくは0.7mg/素子以下である。また、この水分量に調製するためには、通常の乾燥方法を用いることができる。すなわち、100℃以上の温度で、一定時間保持する等の方法を用いることができる。
陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子を形成する。一方、所定の容器に重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを入れて混合し、コンデンサ素子をこの混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。
その後に、コンデンサ素子を60〜120℃で10〜60分間乾燥させ、コンデンサ素子の水分量が1.0mg/素子以下となるように調製し、このコンデンサ素子を有底筒状のケースに収納し、開口部をゴム封口し、エージングを行って固体電解コンデンサを完成する。
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
また、酸化剤としては、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜55wt%が好ましい。
EDTと酸化剤(溶媒を含まず)の混合比は、重量比で1:0.9〜1:2.2の範囲が好適であり、1:1.3〜1:2.0の範囲がより好適である。この範囲外ではESRが上昇する。
その理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、モノマーに対する酸化剤の量が多過ぎると、相対的に含浸されるモノマーの量が低下するので、形成されるPEDTの量が低下してESRが上昇する。一方、酸化剤の量が少なすぎると、モノマーを重合するのに必要な酸化剤が不足して、形成されるPEDTの量が低下してESRが上昇する。
コンデンサ素子を混合液に浸漬する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まるが、φ5×2L程度のコンデンサ素子では5秒以上、φ8×4L程度のコンデンサ素子では10秒以上が望ましく、最低でも5秒間は浸漬することが必要である。なお、長時間浸漬しても特性上の弊害はない。
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
上記のように、導電性ポリマーを形成したコンデンサ素子を外装ケースに収納する前のコンデンサ素子の水分量を1.0mg/素子以下とすることにより、リフロー時の熱による水分の気化を低減することができるので、水分の気化によって誘電体酸化皮膜とPEDTとの界面状態が悪くなることに起因する静電容量の低下やESRの上昇を防止することができる。
なお、Aグループに属する実施例1〜3及び比較例1は、コンデンサ素子の形状が6.3φ×6L、定格電圧は16WV、定格容量は39μFであり、Bグループに属する実施例4〜5及び比較例2は、コンデンサ素子の形状が8φ×7L、定格電圧は16WV、定格容量は82μFであり、Cグループに属する実施例6〜7及び比較例3は、コンデンサ素子の形状が10φ×8L、定格電圧は16WV、定格容量は180μFである。
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が6.3φ×6Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して修復化成を行った後、100℃、10分乾燥を行った。
一方、カップ状の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その重量比が1:0.8となるように注入し、混合液を調製した。そして、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、1時間加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。その後、このコンデンサ素子を100℃で30分間乾燥し、コンデンサ素子の水分量をそれぞれ、0.5、0.7、1.0mg/素子に調製した。そして、このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴム封口してエージングを行い、固体電解コンデンサを作成した。なお、これらの固体電解コンデンサの定格電圧は16WV、定格容量は39μFである。
(比較例1)
コンデンサ素子の水分量が1.5mg/素子である他は、上記の実施例1〜3と同様にして固体電解コンデンサを作成した。
素子形状が8φ×7Lである他は、上記の実施例1〜3と同様にして固体電解コンデンサを作成した。なお、定格電圧は16WV、定格容量は82μFである。
(比較例2)
コンデンサ素子の水分量が1.5mg/素子である他は、上記の実施例4〜5と同様にして固体電解コンデンサを作成した。
素子形状が10φ×8Lである他は、上記の実施例1〜3と同様にして固体電解コンデンサを作成した。なお、定格電圧は16WV、定格容量は180μFである。
(比較例3)
コンデンサ素子の水分量が1.5mg/素子である他は、上記の実施例6〜7と同様にして固体電解コンデンサを作成した。
上記の方法により得られた実施例1〜7及び比較例1〜3の各固体電解コンデンサについて、初期特性、リフロー特性及びリフロー後のサージ試験を行ったところ、表1に示したような結果が得られた。なお、リフロー試験条件は、ピーク温度250℃、230℃以上30秒保持であり、サージ試験条件は、前述のリフロー試験後に、サージ電圧18.4Vの充放電を125℃の下で1000回行ったものである。
以上述べたように、本発明によれば、量産工程において、初期特性、リフロー特性及びリフロー後の信頼性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
Claims (3)
- 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成し、所定のケースに収納する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記導電性ポリマーを形成したコンデンサ素子を乾燥させることにより、所定のケースに収納する前のコンデンサ素子の水分量を、8〜10φ、7〜8Lの範囲で素子のサイズに依らず1.0mg/素子以下に調製することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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