JP4314774B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に係り、特に、コンデンサ素子内の水分量を適切なものとして、漏れ電流特性の向上を図った固体電解コンデンサの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特開平2−15611号公報等)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、その開口端部に封口ゴムを装着して加締め加工によって封止し、コンデンサの定格電圧に応じた電圧を印加してエージングを行って固体電解コンデンサを作成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、耐電圧特性の向上を図るべく、上記のような従来の製造方法をさらに改良した方法として、コンデンサ素子に適量の水分を付与するために、固体電解質層を形成した後に、コンデンサ素子を耐湿槽等に所定時間放置することにより、コンデンサ素子の表面に所定量の水分を付与する方法が提案されている。
【0008】
すなわち、この製造方法においては、固体電解質層を形成した後に、水蒸気を満たした耐湿槽等にコンデンサ素子を放置し、コンデンサ素子の表面に水分を付着させた後、外装ケースに収納し、その後、コンデンサ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成する方法が用いられている。なお、耐湿槽としては、例えば、湿度40〜95%、温度20〜85℃の恒温恒湿槽が用いられ、この恒温恒湿槽内にコンデンサ素子を10〜180分放置することにより、コンデンサ素子の表面に水分を付着させている。
しかしながら、上記のような水分付与工程では、コンデンサ素子に付与される水分量にばらつきが発生し、その結果、製品のLC値に大きなばらつきが発生していた。
【0009】
また、従来の水分付与工程では、コンデンサ素子に水分が充分に付与されるものの、酸化皮膜の修復に使用される水分量はわずかであるため、コンデンサ素子内に水分が残留してしまい、この過剰な水分が酸化皮膜と水和して、電極箔のESRが上昇してしまうという問題点があった。
【0010】
さらに、PEDT等の導電性ポリマー中に水分が取り込まれることにより、固体状の導電性ポリマーがゲル化して電導率が低下してしまうという問題点もあった。また、コンデンサ素子内に残留した水分が、コンデンサ素子内の反応残留物(残留した酸化剤)を溶解し、アルミニウム箔を腐食する等の影響を及ぼし、その結果、全体として静電容量を低下させる原因となっていた。
【0011】
また、コンデンサ素子に適量の水分が付与された場合には、エージング中に酸化皮膜の修復が良好に行われて強固な酸化皮膜が形成されるが、この水分量が少ないと、強固な酸化皮膜が形成されない。そのため、リードタイプの固体電解コンデンサにおいては、コンデンサを回路基板に搭載する際に、リード線にストレスがかかると、酸化皮膜が損傷を受けて、漏れ電流が増大するという問題点があった。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
【0012】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、コンデンサ素子内の水分量の管理を簡便なものとし、漏れ電流特性の向上を図った固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、コンデンサ素子に付与する水分量のばらつきを防止することができると共に、漏れ電流特性の向上を可能とすることができる固体電解コンデンサの製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明者は、再化成に必要な水分量について検討し、この水分量を従来の水分付与工程を経ずにコンデンサ素子に供給することができる方法について種々の検討を行った結果、コンデンサ素子を外装ケース内に挿入する際に、このケース内に所定量のホウ酸化合物を存在させることにより、上記課題を解決することができることが判明したものである。
【0015】
(固体電解コンデンサの製造方法)
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。続いて、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入する際に、ケース内に所定量のホウ酸化合物を存在させ、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
【0016】
(ホウ酸化合物)
ホウ酸化合物としては、例えばホウ酸又はホウ砂を用いることができる。また、外装ケースに存在させるホウ酸化合物の量は、エージング工程においてその化合物が放出する水分量によって規定される。通常、再化成に必要な水分量は1〜2mgであるが、エージング工程においてホウ酸化合物から放出される水分量は、ホウ酸の場合25%、ホウ砂の場合50%であるため、外装ケースに存在させるホウ酸は4〜8mg、ホウ砂は2〜4mgが望ましい。
【0017】
このホウ酸化合物は、エージング工程の際に外装ケースの中にあれば良く、ケースの内壁や封口ゴムの内側に付着させたり、導電性ポリマーを形成したコンデンサ素子自体に付着させても良い。また、ホウ酸化合物の外装ケース等への付着方法としては、巻き止めテープの粘着剤等の接着剤をケース内壁等の所望の部位に塗布し、その上にホウ酸化合物を振りかける方法等を用いることができる。
また、外装ケース内にホウ酸化合物を存在させる時期は、導電性ポリマーを形成した後が好ましい。導電性ポリマーの重合前では、重合時の加熱によって水分が放出されてしまうからである。
【0018】
なお、ホウ酸化合物以外にも、100〜180℃のエージング温度で水分を放出する化合物であって、固体電解コンデンサの特性に悪影響を与えない化合物あれば同様に適用することができる。例えば、この温度範囲で水を放出する化合物としては、分子内脱水を起こす、ホウ酸、リン酸、リン酸の金属塩、リン酸のアンモニウム塩、リン酸鉱物、フタル酸塩等を挙げることができる。
【0019】
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0020】
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜58wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
【0021】
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
【0022】
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
【化1】
【0023】
(作用・効果)
上記のように、コンデンサ素子を外装ケース内に挿入する際に、外装ケース内にホウ酸化合物を存在させることにより良好な結果が得られた理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、コンデンサ素子を外装ケース内に挿入する際に、外装ケース内にホウ酸化合物を存在させると、その後のエージング工程における加熱・電圧印加によって、ケース内のホウ酸化合物から水が放出され、その水によって酸化皮膜が修復されるため、酸化皮膜の特性が向上する。
その結果、良好な酸化皮膜が形成されるので、固体電解コンデンサの初期の漏れ電流特性が向上し、リード線にストレスがかかった際の漏れ電流特性も向上する。
【0024】
【実施例】
続いて、以下のようにして製造した実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が5φ×2.8Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。
一方、所定の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を、その重量比が1:2となるように注入し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。
そして、有底筒状の外装ケースの底にホウ酸の粉末を4mg注ぎ込み、このケース内にコンデンサ素子を挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、21V、1時間電圧印加してエージングを行い、リードタイプの固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は16WV、定格容量は39μFである。
【0025】
(実施例2)
外装ケースの底にホウ砂の粉末を2mg注ぎ込み、このケース内にコンデンサ素子を挿入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(従来例)
外装ケース内にホウ酸化合物を存在させることなく、このケース内にコンデンサ素子を挿入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0026】
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例1〜2及び従来例の固体電解コンデンサの初期特性を表1に示す。また、JISC5101−1の端子強度試験に準じてリード線にストレスを加え、その後に漏れ電流を測定した。
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2においては、漏れ電流は従来例の約1/3程度となった。また、リードストレス後の漏れ電流は、従来例の1.0〜1.5%と大幅に減少した。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、コンデンサ素子内の水分量の管理を簡便なものとし、漏れ電流特性の向上を図った固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成し、
この固体電解質を形成したコンデンサ素子をケースに挿入する際に、前記ケース内に粉末のホウ酸化合物を存在させ、
前記コンデンサ素子をケース内に挿入した後、ケースの開口部を封止し、その後エージング処理を行うことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記ホウ酸化合物が、ホウ酸又はホウ砂であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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