JP5134173B2 - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に係り、特に、高耐電圧が要求される固体電解コンデンサの歩留まりを向上させることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、図5に示すようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して固体電解コンデンサを作成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、上述したような固体電解コンデンサが車載用として用いられるようになってきている。通常、車載用回路の駆動電圧は12Vであり、固体電解コンデンサには25Vの高耐電圧が要求される。しかしながら、上述したような従来の製造方法によりこのような高耐電圧品を製造した場合、エージング工程でショートが発生する割合が高く、歩留まりが低いという欠点があった。
【0008】
また、近年、環境問題から高融点の鉛フリー半田が用いられるようになり、半田リフロー温度が200〜220℃から230〜270℃へとさらに高温化している。しかしながら、このような高温下におかれる半田リフローを行うと耐電圧が低下するという欠点があり、そのため、高温リフロー半田付けを行った場合でも、耐電圧特性が劣化しない固体電解コンデンサの開発が切望されていた。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
【0009】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、鉛フリーリフローによる耐電圧特性の劣化を防止することができ、高耐電圧品を製造する場合の歩留まりを向上させることができる固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、高耐電圧品を製造する場合に、エージング工程でショートが発生する割合が高くなる原因について種々検討を重ねた結果、以下の結論に達したものである。すなわち、通常、導電性ポリマーを形成した後のコンデンサ素子内には、導電性ポリマーの他に、重合反応に関与しなかったモノマーや酸化剤及びその他の反応残余物が存在している。そして、これらの導電性ポリマー以外の物質の耐電圧は導電性ポリマーの耐電圧より低いため、これらの物質が固体電解コンデンサの耐電圧を低下させていると考えられる。
【0011】
そこで、本発明者等は、これらの反応残余物が存在していても、固体電解コンデンサの耐電圧を向上させると共に、鉛フリーリフローによる耐電圧特性の劣化を防止すべく検討を重ねた結果、コンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させることによって、固体電解コンデンサの耐電圧を向上させることができることが判明したものである。
【0012】
(固体電解コンデンサの製造方法)
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。続いて、このコンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物の溶液を含浸して、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させ、その後に、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤とを所定の溶媒と共に混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
【0013】
(ビニル基を有する化合物)
ビニル基を有する化合物としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと記す)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を用いることができるが、なかでもPVAがより好ましい。
また、これらビニル基を有する化合物の溶媒としては、これらの化合物が溶解するものであれば良く、主として水が用いられる。また、ビニル基を有する化合物溶液の濃度は、0.005wt%〜1.5wt%が好ましく、より好ましくは0.01wt%〜0.5wt%である。ビニル基を有する化合物溶液の濃度がこの範囲外の場合、効果が低下した。その理由は、ビニル基を有する化合物溶液の濃度が1.5wt%以上であると、電極箔表面に形成されたエッチングピット内でビニル基を有する化合物の厚い層又はビニル基を有する化合物の固まりが形成され、その後のPEDT等の導電性ポリマーの重合工程で導電性ポリマーの形成状態が悪化するためであると考えられる。
【0014】
(ホウ酸化合物)
ホウ酸化合物としては、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸のアンモニウム塩、金属塩等のホウ酸塩、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル等を用いることができるが、なかでも、ホウ酸を用いることが望ましい。
また、これらホウ酸化合物の溶媒としては、これらの化合物が溶解するものであれば良く、主として水、グリセリン等を用いることができる。また、ホウ酸化合物溶液の濃度は、0.1wt%〜10wt%が好ましく、より好ましくは3wt%〜7wt%である。ホウ酸化合物溶液の濃度がこの範囲外の場合、効果が低下した。その理由は、ホウ酸化合物溶液の濃度が0.1wt%未満では、溶液中のホウ酸化合物が少ないため、形成される結合体の量が十分ではなく、一方、10wt%を越えると、理由は定かではないが、結合体を形成した後の余剰のホウ酸が悪影響を及ぼして、ESRが上昇するからである。
【0015】
(ビニル基を有する化合物及びホウ酸化合物をコンデンサ素子内の両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させる方法)
上記ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体をコンデンサ素子内の両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させる方法としては、ビニル基を有する化合物及びホウ酸化合物の混合溶液に浸漬する方法、または、ビニル基を有する化合物の溶液とホウ酸化合物の溶液に別々に浸漬する方法を用いることができる。
【0016】
なお、本発明においては、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物が水素結合等で結合体を形成し、この結合体が電極箔の酸化皮膜上に付着して層を形成することにより、固体電解質と酸化皮膜の密着性が向上するので、ビニル基を有する化合物の溶液とホウ酸化合物の溶液に別々に浸漬する方法においては、コンデンサ素子を両溶液に続けて(順次)浸漬しても良いし、一方の溶液に浸漬し、乾燥した後、他方の溶液に浸漬しても良い。なお、ビニル基を有する化合物の溶液とホウ酸化合物の溶液に浸漬する順序は限定されない。
【0017】
また、ビニル基を有する化合物溶液への浸漬温度は、ビニル基を有する化合物が溶媒に溶解し得る温度で良く、常温〜100℃前後が好ましい。また、浸漬時間は5秒以上が好ましい。コンデンサ素子あるいは電極箔をビニル基を有する化合物溶液に浸漬すると、表面張力によってビニル基を有する化合物溶液が電極箔のエッチングピットに直ちに浸透していくからである。
【0018】
また、乾燥温度は、ビニル基を有する化合物溶液の溶媒が蒸発すれば良いので、常温〜150℃が好ましく、乾燥時間は3分以上が好ましい。また、乾燥方法としては、通常、熱風、赤外線方式の乾燥炉等が用いられるが、ビニル基を有する化合物溶液の溶媒を蒸発させることができるものであれば良く、真空乾燥等を用いることもできる。
【0019】
また、ビニル基を有する化合物をコンデンサ素子内の両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させた後、加熱処理すると初期特性が向上することが分かった。その理由は、ビニル基を有する化合物の末端基の疎水性が増すことにより、酸化皮膜と固体電解質の密着性が向上するためと考えられる。また、この加熱温度は120〜250℃が好ましく、より好ましくは150〜200℃である。加熱温度がこの範囲外の場合、効果が低下した。その理由は、加熱温度が120℃未満では、ビニル基を有する化合物の末端基の疎水化等の反応が十分に進行せず、一方、250℃を越えると、ビニル基を有する化合物の熱劣化が起こって効果が低減するためであると考えられる。
【0020】
なお、この加熱処理は、ビニル基を有する化合物を両極電極箔の誘電体酸化皮膜層上に付着させ、その後にホウ酸化合物を両極電極箔の誘電体酸化皮膜層上に付着させた後でも良いし、ホウ酸化合物を両極電極箔の誘電体酸化皮膜層上に付着させ、その後にビニル基を有する化合物を両極電極箔の誘電体酸化皮膜層上に付着させた後でも良い。さらに、混合溶液を用いた場合も、加熱処理を行うと同様の効果が得られる。
【0021】
(ビニル基を有する化合物及びホウ酸化合物をコンデンサ素子内の両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させる時期)
さらに、本発明者等は、上記ビニル基を有する化合物及びホウ酸化合物をコンデンサ素子内の両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させる時期について種々検討した。その結果、導電性ポリマーを形成する工程の前の段階であれば、どの段階でも良いことが判明した。すなわち、その時期は、上述したように、修復化成前であっても良いし、コンデンサ素子を形成する前に電極箔に付着させても良く、例えば、以下の(1)〜(4)の方法が考えられる。
【0022】
なお、(1)の方法は上述した製造方法に相当する。また、下記の(1)〜(4)の方法の中で、コンデンサ素子に修復化成を施した後、このコンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物の溶液を含浸して、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させ、その後に、このコンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成することができる(1)の方法が最も好適である。なお、下記の方法で樹脂封止を行わなくても、本発明の効果に変わりはない。
【0023】
(1)修復化成後…図1参照
化成→コンデンサ素子形成→修復化成→ビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液に浸漬→重合性モノマーと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージング
(2)コンデンサ素子形成後〜修復化成前…図2参照
化成→コンデンサ素子形成→ビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液に浸漬→修復化成→重合性モノマーと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージング
【0024】
(3)コンデンサ素子形成前…図3参照
化成→両極電極箔の少なくともいずれか一方をビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液に浸漬(又は塗布後、乾燥処理)→コンデンサ素子形成→修復化成→重合性モノマーと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージング
(4)コンデンサ素子形成前…図4参照
化成→セパレータをビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液に浸漬(又は塗布後、乾燥処理)→コンデンサ素子形成→修復化成→重合性モノマーと酸化剤の含浸→重合→外装ケースへの挿入→樹脂封止→エージング
【0025】
なお、上記(3)及び(4)の方法において、ビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液を、浸漬あるいは塗布することにより、電極箔あるいはセパレータに付着させる場合、まず、ビニル基を有する化合物あるいはホウ酸化合物のいずれか一方を付着させ、その後にコンデンサ素子を形成し、さらに他方の化合物を付着させても良い。
また、これらの方法におけるビニル基を有する化合物溶液及びホウ酸化合物溶液の濃度、温度、含浸時間、乾燥温度、乾燥時間等は、上述した条件と同様である。
【0026】
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0027】
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜57wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
【0028】
(減圧)
重合工程で減圧すると、さらに好適である。その理由は、加熱重合時に減圧すると、重合と共に残存物を蒸散させることができるからである。なお、減圧の程度は、10〜360mmHg程度の減圧状態とすることが望ましい。
【0029】
(浸漬工程)
コンデンサ素子を混合液に浸漬する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まるが、φ5×3L程度のコンデンサ素子では5秒以上、φ9×5L程度のコンデンサ素子では10秒以上が望ましく、最低でも5秒間は浸漬することが必要である。なお、長時間浸漬しても特性上の弊害はない。
また、このように浸漬した後、減圧状態で保持すると好適である。その理由は、揮発性溶媒の残留量が少なくなるためであると考えられる。減圧の条件は上述した重合工程での減圧条件と同様である。
【0030】
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
【0031】
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
【化1】
【0032】
(作用・効果)
上記のように、所定の時期に、コンデンサ素子にビニル基を有する化合物とホウ酸化合物からなる結合体を両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させることにより、鉛フリーリフローによる耐電圧特性の劣化を防止することができると共に、エージング工程でショートが発生する割合を大幅に低減することができる。
このような効果が得られる理由は、この結合体がビニル基を有する化合物とホウ酸化合物との反応により形成され、この結合体が電極箔の誘電体皮膜上に付着して層を形成し、固体電解質と誘電体皮膜の密着性が向上し、さらにこの層の耐電圧が高いので、コンデンサの耐電圧が向上するものと考えられる。
【0033】
特に、PVAとホウ酸を用いた場合には、エステル化合物からなる結合体を形成し、このエステル化合物は誘電体皮膜中に浸透せずに、皮膜表面に付着して良好な層を形成するため、良好な特性が得られるものと考えられる。
そして、上述したように、ビニル基を有する化合物を含有させた後、加熱処理を行うと、ビニル基を有する化合物の末端基と誘電体酸化皮膜乃至導電性ポリマーとの接合性が向上して、初期特性、特に静電容量とESR特性が向上すると考えられる。
【0034】
【実施例】
続いて、以下のようにして製造した実施例、比較例及び従来例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が5φ×2.8Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。修復化成後、このコンデンサ素子を0.05wt%のPVA水溶液に25℃で1分間浸漬し、その後、100℃で10分間乾燥した。その後に、5wt%のホウ酸水溶液に浸漬し、175℃で加熱処理した。
一方、所定の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を混合し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、250mmHg程度の減圧状態で保持し、次いで同じ条件下で120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。
そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、120分、33Vの電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は15μFである。
【0035】
(実施例2)
修復化成後、コンデンサ素子を0.05wt%のポリ酢酸ビニル水溶液に25℃で1分間浸漬し、その後、100℃で10分間乾燥した。その後に、5wt%のホウ酸水溶液に浸漬し、175℃で加熱処理した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0036】
(比較例)
修復化成後、コンデンサ素子を0.05wt%のPVA水溶液に25℃で1分間浸漬し、その後、100℃で10分間乾燥し、ホウ酸水溶液には浸漬しなかった。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(従来例)
修復化成後、PVA水溶液及びホウ酸水溶液のいずれにも浸漬することなく、導電性ポリマーを形成した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0037】
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例1〜2、比較例及び従来例の固体電解コンデンサ各50個のそれぞれについて、エージング時のショートの数を調べたところ、表1に示したような結果が得られた。また、ショートの発生しなかった良品について、ピーク温度250℃、230℃以上30秒保持の鉛フリーリフローを行った後、32.5Vの充放電を125℃の下で1000回行うサージ試験を行い、ショート電圧を測定したところ、表1に示したような結果が得られた。
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、コンデンサ素子にPVA溶液あるいはポリ酢酸ビニル溶液とホウ酸溶液の両方を両極電極箔の酸化皮膜層上に付着させた実施例1及び実施例2においては、初期特性、エージング後のショート数、サージ後のショート電圧は、いずれも比較例あるいは従来例に比べて良好であった。さらに、PVA溶液とホウ酸溶液を用いた実施例1の方が、ポリ酢酸ビニル溶液とホウ酸溶液を用いた実施例2より良好な結果が得られた。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、鉛フリーリフローによる耐電圧特性の劣化を防止することができ、高耐電圧品を製造する場合の歩留まりを向上させることができ、さらに初期特性も良好な固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャート
【図2】本発明に係る固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャート
【図3】本発明に係る固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャート
【図4】本発明に係る固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャート
【図5】従来技術による固体電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャート
Claims (6)
- 表面に酸化皮膜層が形成された陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子内に、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を前記陽極電極箔及び前記陰極電極箔の前記酸化皮膜層上に付着させたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記ビニル基を有する化合物が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記ホウ酸化合物が、ホウ酸又はホウ砂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
- 表面に酸化皮膜層が形成された陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にビニル基を有する化合物とホウ酸化合物の溶液を含浸して、ビニル基を有する化合物とホウ酸化合物とからなる結合体を前記陽極電極箔及び前記陰極電極箔の前記酸化皮膜層上に付着させ、その後に導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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